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特表2024-531414全ゲノム解析に基づいて真核生物の種を特定する方法、及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】全ゲノム解析に基づいて真核生物の種を特定する方法、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20240822BHJP
   C40B 40/06 20060101ALI20240822BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240822BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALN20240822BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z ZNA
C40B40/06
C12N15/09 110
C12Q1/6876 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510454
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 CN2022083950
(87)【国際公開番号】W WO2023024508
(87)【国際公開日】2023-03-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520101410
【氏名又は名称】中国医学科学院薬用植物研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ソン ジンユアン
(72)【発明者】
【氏名】チー グイホン
(72)【発明者】
【氏名】シュー ウェンジエ
(72)【発明者】
【氏名】ハオ リージュン
(72)【発明者】
【氏名】ガン ユートン
(72)【発明者】
【氏名】シン ティアンイー
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QQ02
4B063QQ04
4B063QQ07
4B063QQ08
4B063QQ09
4B063QQ28
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QQ62
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR42
4B063QR62
4B063QR66
4B063QR72
4B063QR73
4B063QR76
4B063QR77
4B063QR78
4B063QS03
4B063QS25
4B063QS34
4B063QS36
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】
全ゲノム解析に基づく真核生物試料の種の特定方法、及びその使用が本出願に開示され、検出対象の試料の種の特定は、スクリーニングによって得られる種特異的標的配列によって達成される。本発明の種の特定方法は良好な特異性、高感度及び良好な反復性を有し、大規模な専門的な機器に頼ることなく迅速な種特定を達成することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全ゲノム解析に基づく真核生物種の特定方法であって、
i)特定される種の全ゲノム配列に基づいて小断片ゲノムライブラリを構築する工程と、
ii)前記小断片ゲノムライブラリ中の配列を選択的にスクリーニングして、iv)における検出の必要性に基づいて、又はデータベース中に含まれる全ゲノム注釈ファイル及び種配列情報に従って、広範囲候補標的配列ライブラリを得る工程と、
iii)前記小断片ゲノムライブラリ又は前記広範囲候補標的配列ライブラリ中の配列を関連種の全ゲノム配列とアラインメントし、前記特定される種の前記関連種の全ゲノム配列に基づいて、前記特定される種にのみ存在する配列を選択して、特異的標的配列ライブラリを構築する工程と、
iv)検出対象の真核生物試料のゲノムDNAを入手し、前記特異的標的配列ライブラリ中の配列に基づいて前記真核生物試料の種の特定を行い、前記ゲノムDNAが前記特異的標的配列ライブラリ中の前記配列を含むか否かを検出し、これにより、前記真核生物試料と前記特定される種との間の同一性を判定する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
i)において、前記特定される種の全ゲノム配列は、長さKのL-K+1個の断片に分割され、前記小断片ゲノムライブラリが構築され、前記小断片ゲノムライブラリ中の各断片のコピー数が計算され、次いで、各断片のゲノム位置が、各断片を前記全ゲノム配列とアラインメントすることによって決定され、Lは前記全ゲノム配列の長さを表し、Kは前記ライブラリ中の前記断片の長さを表す請求項1に記載の方法。
【請求項3】
i)において、前記特定される種は動物、植物又は真菌に由来する請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ii)において、PAMモチーフが前記小断片ゲノムライブラリ中の各断片について検出され、PAMを有する配列が抽出され、前記広範囲候補標的配列ライブラリが構築される請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記PAMは、5’末端に配列番号10に記載のアミノ酸配列又は3’末端に配列番号11に記載のアミノ酸配列を有するPAMである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
iii)において、前記特定される種にのみ存在する前記配列は、高い種内保存及び大きい種間差異を有する領域内で選択され、前記特異的標的配列ライブラリが構築される請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記特定される種にのみ存在する前記配列は、前記関連種の全ゲノム配列からの少なくともn塩基差異を有する候補標的配列であり、nは3以上である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
iii)において、前記特定される種にのみ存在する複数の異なる配列が選択され、前記特異的標的配列ライブラリが構築される請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項9】
iv)において、検出対象の前記真核生物試料は、動物、植物、又は真菌に由来する試料である請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項10】
検出対象の前記真核生物試料は、単一種に由来する試料又は複数種に由来する試料の混合物である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
検出対象の前記真核生物試料は、冬虫夏草、サナギタケ、ヤクヨウダイオウ、ショウヨウダイオウ、アカシカ又はトナカイに由来する試料である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
iv)において、遺伝子編集システム又は配列決定が前記検出に使用される請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項13】
iv)において、蛍光シグナル分子を用いるCRISPR/Casシステムが前記検出に使用される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
iv)において、前記検出を行う前に、前記特異的標的配列にマッチするツールライブラリが、前記検出に使用される技術に基づいて予め構築される請求項12に記載の方法。
【請求項15】
iv)において、ゲノム編集システムが前記検出に使用され、crRNA、及び任意選択の、前記特異的標的配列にマッチするtracrRNAのツールライブラリが予め構築される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
iv)において、配列決定が前記検出に使用され、前記特異的標的配列にマッチするプライマー対のツールライブラリが予め構築される請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記特定される種は冬虫夏草であり、iii)において、前記特異的標的配列は配列番号1に記載のヌクレオチド配列である請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記特定される種はヤクヨウダイオウであり、iii)において、前記特異的標的配列は配列番号2に記載のヌクレオチド配列である請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記特定される種はアカシカであり、iii)において、前記特異的標的配列は配列番号3に記載のヌクレオチド配列である請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項20】
前記特定される種は冬虫夏草であり、iv)において、以下のプライマー対が前記検出に使用される
ITS4F:5’-GGAAGTAAAAGTCGTAACAAGG-3’(配列番号4)
ITS5R:5’-TCCTCCGCTTATTGATATGC-3’(配列番号5)
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項21】
前記特定される種はヤクヨウダイオウであり、iv)において、以下のプライマー対が前記検出に使用される
Ro_1F:5’-CCAAATTGCCCGAAGCCTATG-3’(配列番号6)
Ro_1R:5’-ATCGCTTTCCGACCCACAAT-3’(配列番号7)
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項22】
前記特定される種はアカシカであり、iv)において、以下のプライマー対が前記検出に使用される
Ce_17F:5’-ACAGAAGTGATGGTTGCT-3’(配列番号8)
Ce_17R:5’-AGAATCCTAGGAAGAACTGG-3’(配列番号9)
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項23】
真核生物種の特定のための特異的標的配列ライブラリを構築する方法であって、
a)特定される種を選択し、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の種の特定方法に従って前記特定される種の1つ以上の特異的標的配列をスクリーニングする工程と、
b)前記特定される種の前記1つ以上の特異的標的配列を組み合わせて、前記特異的標的配列ライブラリを構築する工程と
を含む、方法。
【請求項24】
真核生物種の特定の特異的標的配列を検出するためのツールライブラリを構築する方法であって、
A)特定される種を選択し、請求項23に記載の方法に従って前記特異的標的配列ライブラリを構築する工程と、
B)前記検出に使用される技術に基づいて、前記特異的標的配列にマッチするツールライブラリを構築する工程と
を含む、方法。
【請求項25】
前記検出に使用される技術は遺伝子編集又は配列決定である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ツールライブラリはcrRNAライブラリ又はプライマーライブラリである請求項25に記載の方法。
【請求項27】
中国医薬物質をそれらの対応する類似物質から区別する方法であって、
I)特定される種として前記中国医薬物質又は類似物質を使用し、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の方法に従って特異的標的配列をスクリーニングする工程と、
II)検出対象の医薬試料のゲノムDNAを入手し、前記ゲノムDNAが前記特異的標的配列を含むか否かを検出し、これにより検出対象の前記医薬試料と前記中国医薬物質又は前記類似物質との間の同一性を判定する工程と
含む、方法。
【請求項28】
食品、医薬又は健康製品の安全性検出の方法であって、
1)食品用の真核生物、医薬用の真核生物、又は健康製品用の真核生物を特定される種として採用し、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の方法に従って特異的標的配列をスクリーニングする工程と、
2)検出対象の食品、医薬又は健康製品のゲノムDNAを入手し、前記ゲノムDNAが前記特異的標的配列を含むか否かを検出して、検出対象の前記食品、医薬又は健康製品と前記特定される種との間の同一性を判定する工程と
を含む、方法。
【請求項29】
配列番号1に記載のヌクレオチド配列である、冬虫夏草の種の特定のための種特異的標的配列、
配列番号2に記載のヌクレオチド配列である、ヤクヨウダイオウの種の特定のための種特異的標的配列、又は
配列番号3に記載のヌクレオチド配列である、アカシカの種の特定のための種特異的標的配列
である、種特異的標的配列。
【請求項30】
真核生物の種特異的標的配列を増幅するためのプライマー対であって、
前記真核生物がヤクヨウダイオウである場合の、Ro_1F:5’-CCAAATTGCCCGAAGCCTATG-3’(配列番号6)及びRo_1R:5’-ATCGCTTTCCGACCCACAAT-3’(配列番号7)のプライマー対、
前記真核生物がアカシカである場合の、Ce_17F:5’-AGCAGAAGTGATGGTTGCTG-3’(配列番号8)及びCe_17R:5’-AAGAATCCTAGGAAGAACTGGT-3’(配列番号9)のプライマー対
を含む、プライマー対。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、真核生物種の特定の技術分野に関し、具体的には、全ゲノム解析に基づく真核生物種の特定方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
種の特定は、人間の発展の歴史全体に付随し、自然探求、社会的発展及び科学研究に密接に関連する。人間はまだ地球上のすべての生命体を特定できていないが、特定方法に関する継続的な開発は、我々の他の生命体への理解及び実現を強化している。多数の科学研究者が、多様で、広く分布し、複雑で、区別が困難な種の特定及び分類に常に関与している。初期段階において、種の特定は、主に、形態学的特徴、化学組成等の種の表現型に基づいて行われるが、表現型は環境、成長段階等の因子によって影響を受けるという事実に起因して、表現型は種間の相違の根本的な理由を反映することができない。この期間中、読み取り及び精度におけるDNA配列決定技術の継続的な改善は、全ゲノムのレベルでの種の配列決定及び解析を容易にしている。全ゲノムデータを有する種の数の爆発的な増大とともに、全ゲノム解析に基づく種特定戦略が可能となる。種のすべての遺伝情報を保有するキャリアとして、全ゲノムは、ある種が他の種と区別され特異性を示すことへの基本的な理由を明らかにする。それゆえ、全ゲノムに基づく新しい特定方法は、種の特定に対する将来の開発方向も表す。同時に、バイオインフォマティクスの急速な開発及び分子生物学の特定基礎も、全ゲノムデータに基づく種の特定の達成のための強力なサポートを提供している。DNAバーコード技術等の分子生物学的特定方法の継続的な開発により、ある適用範囲内で利用可能な異なるDNAバーコードが見出されている。その一方で、配列決定技術の連続的な反復並びにコンピュータハードウェア及びソフトウェアの開発により、ゲノム解析能力も大いに強化され、これらの両方が、全ゲノムのレベルでの種の特定の達成のための強力なサポートを提供する。
【0003】
遺伝子編集は、生物のゲノムを人工的に改変するために使用される遺伝子操作手段である。この技術は、現在、主に以下のヌクレアーゼを使用する:ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)及びクラスター化され規則的に間隔を置いた短鎖パリンドローム反復(CRISPR)/CRISPR関連タンパク質(CRISPR/Cas)。CRISPR/Casシステムは、部位特異的編集の目的を達成するために特定の配列を認識することができる、新世代のゲノム編集技術である。Jennifer A.Doudna、Feng Zhang及びJin Wang等は、DETECTR、SHERLOCK及びHOLMES等の方法を連続的に開発し、それらをウイルス、細菌及び真核生物のゲノム編集に成功裏に応用した。例えば、植物バイオテクノロジーの分野において、遺伝子編集手段は、新規特性を有する植物品種を開発するための新規育種技術として植物ゲノムを操作するために主に使用される(例えば、Kangquan Yinら、Progress and prospects in plant genome editing、Nature Plants、3、17107(2017)における記録を参照)。
【0004】
現在、先行技術は、主に、特定の遺伝子機能領域において特定の種を区別することができる配列をスクリーニングすることである。スクリーニングに利用できる遺伝子データベースが小さいため、得ることができる標的配列は極めて有限であり、標的配列の特異性が不十分であり、オフターゲット(標的外)エラー等を起こしやすく、異なる種の特定の必要性を十分に満たすことができない。特に、特定の領域において極めて類似した又はさらには同じ配列を有する関連種の特定の必要性を満たすことは困難である。生物のすべての遺伝情報を含む全ゲノムは、種の特定のための理想的なデータベースである。全ゲノムアラインメントによる種特異的配列のスクリーニング及びその検出は、種の特定に関する将来の開発方向である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kangquan Yinら、Progress and prospects in plant genome editing、Nature Plants、3、17107(2017)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本出願は、全ゲノム解析に基づく真核生物種の特定方法を提案する。本出願の方法(以下、GA法とも称する)は、種を正確に特定することができ、とりわけ特定される種と関連する種との間の区別を満たし、ゲノム編集、配列決定等(これらに限定されない)を含む様々な検出手段の使用を介して特異的配列を正確に特定することができ、その結果として種の正確な特定を達成することができる特異的標的配列ライブラリを、ゲノム解析に基づいて見出す。先行技術と比較して、本出願のGA法は、バイオインフォマティクス分析の方法を介して、種のゲノム全体からバルクでこの種にのみ存在する特異的標的配列ライブラリをスクリーニングして取得し、また、オフターゲット等のエラーのリスクを考慮し、種特定の精度を改善して、最終的に真核生物種の特定に関する正確な判断を達成する。
【0007】
本出願は、全ゲノム解析に基づく真核生物種の特定方法であって、
i)特定される種の全ゲノム配列に基づいて小断片ゲノムライブラリを構築する工程と、
ii)上記小断片ゲノムライブラリ中の配列を選択的にスクリーニングして、その後の検出の必要性に基づいて、又はデータベース中に含まれる全ゲノム注釈ファイル及び種配列情報等に従って、広範囲(extensive)候補標的配列ライブラリを得る工程と、
iii)上記小断片ゲノムライブラリ又は上記広範囲候補標的配列ライブラリ中の配列を関連種の全ゲノム配列とアラインメントし(整列させ)、特定される種の関連種の全ゲノム配列に基づいて、特定される種中にのみ存在する特異的配列を選択して、特異的標的配列ライブラリを構築する工程と、
iv)選択された特異的標的配列に基づいて真核生物試料の種特定を行う工程と
を含む方法に関する。検出される複数の真核生物試料のゲノムDNAが入手され、ゲノムDNAが、上記特異的標的配列ライブラリ中の配列を含むか否かについて検出され、これにより、検出対象の試料及び特定される種の同一性(identity)が判定される。特異的標的配列ライブラリ中の配列が検出された場合、上記複数の真核生物試料は特定される種との同一性を有すると判定され、特異的標的配列ライブラリ中の配列が検出されなかった場合、上記複数の真核生物試料は同一性を有さないと判定される。
【0008】
いくつかの好ましい実施形態では、i)において、特定される種の全ゲノム配列が長さKの(L-K+1)個の断片に分割され、小断片ゲノムライブラリが構築され、その中の各断片のコピー数が計算され、次いで、後続の工程におけるより良好な配列アラインメントを容易にするために、各断片のゲノム位置が、各断片を全ゲノム配列とアラインメントすることによって決定され、Lは全ゲノム配列の長さを表し、Kはライブラリ中の断片の長さを表す。
【0009】
いくつかの好ましい実施形態では、i)において、特定される種は、真核生物におけるいずれの種であってもよい。例として、特定される種は、それぞれ動物、植物、真菌等の生物の異なる界に由来する。
【0010】
明細書において特定される種の全ゲノム配列は、公知の公的データベースから、又は従来の方法による全ゲノム配列決定によって得ることができる。
【0011】
式ii)において、小断片ゲノムライブラリ中の配列がスクリーニングされ、特定の領域に限定されるのではなく、特定される種の全ゲノムの範囲から広範囲候補標的配列を抽出することを可能にし、その結果、得られる標的配列は広く分布し、これは、その後、オフターゲット等のリスクを排除するのに寄与する。
【0012】
いくつかの好ましい実施形態では、ii)において、PAMモチーフが小断片ゲノムライブラリ中の各断片について検出され、PAMを有する配列が抽出され、広範囲候補標的配列ライブラリが構築される。本明細書におけるPAM(プロトスペーサー隣接モチーフ、protospacer adjacent motif)は、当業者によって、後の特異的配列の検出のために用いられるゲノム編集システムに基づいて決定されることが可能で、例えば、後の検出のためにCRISPR/Cas12aシステムを使用する場合、5’末端におけるTTTV(配列番号10)又は3’末端におけるVAAA(配列番号11)のPAMを選択することができる。
【0013】
iii)において、好ましくは、関連種の全ゲノム配列とアラインメントされる前に、小断片ゲノムライブラリ又は広範囲候補標的配列ライブラリ中の配列を、特定される種の複数の(例えば、すべての)既知のゲノム配列とアラインメントすることができ、特定される種の複数の既知のゲノム配列に正確にマッチすることができる配列は、小断片ゲノムライブラリ又は広範囲候補標的配列からスクリーニングされ、特定される種の一次候補標的配列ライブラリが構築される。続いて、一次候補標的配列ライブラリは関連種の全ゲノム配列とアラインメントされ、特定される種にのみ存在する配列が選択されて、特異的標的配列ライブラリが構築される。
【0014】
iii)において、高い種内保存及び大きい種間差異を有する領域内で特定される種にのみ存在する配列を選択して、特異的標的配列ライブラリを構築することが好ましい。オフターゲット効果を考慮すると、関連種(例えば、類似(混入)物質)の全ゲノム配列と少なくともn塩基差異(n≧3)を有する配列を選択することが好ましい。好ましくは、標的配列の特異性は、n値を増加させることによってさらに改善されることが可能であり、又は所定の数範囲内の標的配列は、n値を調整することによってスクリーニングされることが可能である。
【0015】
本開示において、iii)において、好ましくは、特異的標的配列ライブラリは、検出対象の試料及び特定される種の同一性を判定するためのその後の実験において使用されるように、特定される種にのみ存在する複数の異なる配列を選択することによって構築することができる。
【0016】
本開示では、検出される真核生物試料は、任意の真核生物由来の試料、例えば、動物、植物、又は真菌由来の試料であってもよい。例として、検出される真核生物試料は、冬虫夏草(オフィオコルディセプス・シネンシス、Ophiocordyceos sinensis)、ヤクヨウダイオウ(レウム・オフィキナレ、シンシュウダイオウ、Rheum officinale)、アカシカ(セルバス・エラフス、Cervus elaphus)、サナギタケ(コルディセプス・ミリタリス、Cordyceps militaris)、ショウヨウダイオウ(レウム・パルマツム、Rheum palmatum)又はトナカイ(ランギファー・タランドゥス、Rangifer tarandus)由来の試料であってもよい。いくつかの実施形態では、検出される真核生物試料は、単一の種源に由来する試料又は複数の種源に由来する試料の混合物である。
【0017】
いくつかの好ましい実施形態では、特定される種は、菌界の冬虫夏草であり、iii)において、特異的標的配列は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列である。
配列番号1:TTTGGGAGTGGTGACTCGATAATGA
【0018】
いくつかの好ましい実施形態では、特定される種は、植物界のヤクヨウダイオウであり、iii)において、特異的標的配列は、配列番号2に示されるヌクレオチド配列である。
配列番号2:AATATGGTTATGTTATATTAATAAA
【0019】
いくつかの好ましい実施形態では、特定される種は、動物界のアカシカであり、iii)において、特異的標的配列は、配列番号3に示されるヌクレオチド配列である。
配列番号3:TTTATGCACCTGATGATTTTCTACG
【0020】
本開示では、iv)において、検出に関して、特異的配列を認識するための当該技術分野で公知の任意の検出技術/手段を使用することができる。いくつかの好ましい実施形態では、iv)において、遺伝子編集システム及び配列決定等の配列認識手段を検出に使用して、特異的標的配列が検出対象の試料中に存在するか否かを判定することができる。
【0021】
いくつかの好ましい実施形態では、iv)において、検出をより簡単かつより直接的にし、同時に高感度を維持するために、ゲノム編集システム、好ましくは蛍光シグナル分子を用いるCRISPR/Casシステム(CRISPR/Cas9システム、CRISPR/Cas12aシステム、CRISPR/Cas12bシステム、及びCRISPR/Cas13システム等)が、検出に使用される。
【0022】
本開示では、iv)において、検出を行う前に、特異的標的配列にマッチするツールライブラリ(crRNAライブラリ及びプライマーライブラリ等)が、ゲノムDNAの配列検出において使用される異なる技術(遺伝子編集技術、配列決定技術等が挙げられるが、これらに限定されない)に基づいて予め構築される。さらに好ましい実施形態では、iv)において、ゲノム編集システムが検出に使用され、特異的標的配列にマッチするCRISPR RNA(crRNA)及び任意選択のtracrRNAのツールライブラリが予め構築される。他の好ましい実施形態では、iv)において、配列決定が検出に使用され、特異的標的配列にマッチするプライマー対のツールライブラリが予め構築される。
【0023】
いくつかの好ましい実施形態では、特定される種は冬虫夏草であり、iv)において、以下のプライマー対が検出に使用される。
ITS4F:5’-GGAAGTAAAAGTCGTAACAAGG-3’(配列番号4)
ITS5R:5’-TCCTCCGCTTATTGATATGC-3’(配列番号5)
【0024】
いくつかの好ましい実施形態では、特定される種はヤクヨウダイオウであり、iv)において、以下のプライマー対が検出に使用される。
Ro_1F:5’-CCAAATTGCCCGAAGCCTATG-3’(配列番号6)
Ro_1R:5’-ATCGCTTTCCGACCCACAAT-3’(配列番号7)
【0025】
いくつかの好ましい実施形態では、特定される種はアカシカであり、iv)において、以下のプライマー対が検出に使用される。
Ce_17F:5’-AGCAGAAGTGATGGTTGCTG-3’(配列番号8)
Ce_17R:5’-AAGAATCCTAGGAAGAACTGGT-3’(配列番号9)
【0026】
さらに好ましい実施形態では、プライマー配列の両端でチオ修飾を行うことを選択し、これにより増幅効率及び検出感度をさらに改善することが可能である。
【0027】
本開示では、一例として、所望のゲノム編集システムは、室温増幅試薬、緩衝液、Casタンパク質、crRNA、ヌクレアーゼ不含水、及び蛍光シグナル分子(ssDNA蛍光レポーター遺伝子等)を少なくとも含む。例えば、検出対象の生体試料のゲノムDNAを基質として使用して、上記の所望のゲノム編集システムが検出に使用される。種特異的標的配列が存在することが特定された場合、この反応系は蛍光を発生する。測定された蛍光値とブランク対照との間に有意差がある場合、検出されるべき試料は、特定される種との同一性を有すると判定され、測定された蛍光値とブランク対照との間に有意差がない場合、検出されるべき試料は、特定される種との同一性を有さないと判定される。
【0028】
本開示において、室温増幅試薬は、実際の状況に応じて当業者によって選択されるいずれの公知の増幅試薬であってもよく、緩衝液及びCasタンパク質は、使用されるゲノム編集システムに従って決定されてもよい。具体的には、CRISPR/Cas12aシステムを例にとると、ERA増幅試薬、NEBuffer2.1及びLba Cas12a(Cpf1)を選択することができ、蛍光シグナル分子Poly_C_FQ(5’-FAM-CCCCCCCCCC(配列番号12)-BHQ-3’)を選択することができる。crRNA、ヌクレアーゼ不含水及び検出対象の試料のゲノムDNAを添加した後、増幅反応がチューブの底で行われ、検出試薬(NEBuffer2.1、Lba Cas12a、crRNA及びヌクレアーゼ不含水)がチューブキャップ上で反応する。例として、検出は、CRISPR/Cas12aシステムを下記表1に示される反応系とともに使用して行われる。反応系が40℃で20分間インキュベートされた後、チューブキャップの検出試薬が短い遠心分離によって底部に沈降させられ、すべての試薬が完全に混合され、室温で10分間インキュベートされる。4μLのPoly_C_FQ(400nM)が上記の系と混合され、次いで37℃でインキュベートされ、マイクロプレートリーダーによりλex483nm/λem535nm(これらの波長は選択された蛍光シグナル分子に従って決定することができる)でそれぞれ0分、3分、6分、9分、12分、15分、25分、35分、45分及び60分で蛍光値が検出される。検出結果とブランク対照の検出結果との間に有意差がある(P<0.01)場合、検出対象の試料は特定される種との同一性を有すると判定されることが可能で、検出結果とブランク対照の検出結果との間に有意差がない場合、検出対象の試料は特定される種との同一性を有さないと判定されることが可能である。
【0029】
【表1】
【0030】
上記の方法は、異なる適用シナリオにおける真核生物試料の種の特定に使用することができ、その特定は、特定される種について上記の方法を実施する工程と、蛍光検出結果に基づいて、検出対象の試料と特定される種との間の同一性を判定する工程とを含む。
【0031】
1つの実施形態では、本出願は、真核生物種の特定のための標的配列ライブラリの構築における上記の種の特定方法の使用であって、特定される種が選択され、特定される種の1つ以上の特異的標的配列が、上記の種の特定方法によるスクリーニングによって得られ、特定される種の1つ以上の特異的標的配列が組み合わされて標的配列ライブラリが構築される使用に関する。
【0032】
あるいは、本出願は、真核生物種の特定のための特異的標的配列ライブラリを構築する方法であって、
a)特定される種を選択し、上記の種の特定方法に従って特定される種の1つ以上の特異的標的配列をスクリーニングする工程と、
b)特定される種の1つ以上の特異的標的配列を組み合わせて、特異的標的配列ライブラリを構築する工程と
を含む方法に関する。
【0033】
あるいは、本出願は、真核生物種の特定の特異的標的配列を検出するためのツールライブラリを構築する方法であって、
A)特定される種を選択し、上記の特異的標的配列ライブラリを構築する方法に従って標的配列ライブラリを構築する工程と、
B)検出に使用される技術(この技術は、配列検出方法の多様性に従って、遺伝子編集、配列決定技術等を含んでもよいが、これらに限定されない)に基づいて、上記特異的標的配列にマッチするツールライブラリ(crRNAライブラリ、プライマーライブラリ等が挙げられるが、これらに限定されない)を構築する工程と
を含む方法に関する。
【0034】
あるいは、本出願は、中国医薬物質をそれらの対応する類似物質から区別する方法であって、
I)特定される種として上記中国医薬物質又は類似物質を使用し、上記の種の特定方法に従って特異的標的配列をスクリーニングする工程と、
II)検出対象の医薬試料のゲノムDNAを入手し、そのゲノムDNAが上記特異的標的配列を含むか否かを検出し、これにより、検出対象の医薬試料と上記中国医薬材料又は類似物質との同一性を判定する工程と
を含む方法に関する。
【0035】
あるいは、本出願は、食品、医薬又は健康製品の安全性検出の方法であって、
1)食品用の真核生物、医薬用の真核生物、又は健康製品用の真核生物を特定される種として採用し、上記の種の特定方法に従って特異的標的配列をスクリーニングする工程と、
2)検出対象の食品、医薬又は健康製品のゲノムDNAを入手し、そのゲノムDNAが上記特異的標的配列を含むか否かを検出して、真核生物試料と特定される種との間の同一性を判定する工程と
を含む方法に関する。この検出を通して、偽の及び劣悪な生物種に由来する食品、医薬及び健康製品を見つけることができ、これにより食品、医薬及び健康製品の安全性が確保される。
【0036】
本出願は、
配列番号1に記載のヌクレオチド配列である、冬虫夏草の種の特定のための種特異的標的配列、
配列番号2に記載のヌクレオチド配列である、ヤクヨウダイオウの種の特定のための種特異的標的配列、又は
配列番号3に記載のヌクレオチド配列である、アカシカの種の特定のための種特異的標的配列
である種特異的標的配列に関する。
【0037】
本出願は、真核生物の種特異的標的配列を増幅するためのプライマー対であって、
真核生物がヤクヨウダイオウである場合の、Ro_1F:5’-CCAAATTGCCCGAAGCCTATG-3’(配列番号6)及びRo_1R:5’-ATCGCTTTCCGACCCACAAT-3’(配列番号7)のプライマー対、又は
真核生物がアカシカである場合の、Ce_17F:5’-AGCAGAAGTGATGGTTGCTG-3’(配列番号8)及びCe_17R:5’-AAGAATCCTAGGAAGAACTGGT-3’(配列番号9)のプライマー対
を含むプライマー対に関する。
【0038】
種の特定のために本明細書に記載される方法を使用する場合、その方法は、特定される種をその関連種から区別することができ、種レベルで真核生物の正確な特定を正確に達成する。この方法は、中国医薬物質類似物質の特定、食品安全性、並びに医薬及び健康製品の安全性において好ましい役割を果たすことができる。この方法は、強い特異性、高い感度及び良好な再現性を有し、大規模な専門的な装置に頼ることなく生物学的試料の迅速な種特定を達成することができ、従って広範な用途の見通しを有することができる。
【0039】
以下では、本出願の解決手段の目的、技術的特徴及び技術的効果を説明するために、図面と組み合わせて本出願の例示的な実施形態がさらに説明されるが、本発明の解決手段は、他の説明されていない特徴、利点等も有してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本開示における技術的解決手段又は関連技術をより明確に示すために、実施例又は関連技術説明において使用されることが必要とされる図面が、以下に簡潔に紹介される。以下の図面は、本開示の単なる例であり、本出願の保護範囲はそれらに限定されない。
【0041】
図1図1は、本開示のGA法を示す例示的なフローチャートである。
図2図2は、菌界、動物界及び植物界からの特定される異なる種の候補標的配列に関連する情報を示す表である。
図3図3は、冬虫夏草、ヤクヨウダイオウ、及びアカシカの特異的標的配列、並びに各特異的標的配列にマッチしたcrRNAを示す。
図4図4は、特定される種の特異的標的配列についての特異性分析の図である。
図5図5は、冬虫夏草試料(パネルA)、ヤクヨウダイオウ試料(パネルB)及びアカシカ試料(パネルC)並びにそれらの類似物質の蛍光検出結果を示す。
図6図6は、アカシカ及びその類似物質であるトナカイの配列決定検出結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、実施例により本出願を詳細に説明するが、それは、本出願への不利な限定を何ら意味するものではない。本開示は、本出願を詳細に説明し、その特定の実施形態も開示した。当業者にとって、本出願の趣旨及び範囲から逸脱しない範囲で、本出願の特定の実施形態に対して様々な修正及び改良を行うことは明らかであろう。
【0043】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有し、その通常理解される意味は、例えば、Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed.、J.Wiley & Sons(ニューヨーク、ニューヨーク州、1994);Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual、Cold Springs Harbor Press(コールド・スプリング・ハーバー(Cold Springs Harbor)、ニューヨーク州、1989);Current Protocols in Molecular Biology又はCurrent Protocols in Immunology、John Wiley & Sons、ニューヨーク、ニューヨーク州(2009);Perbal、A Practical Guide to Molecular Cloning(1984)に見ることができる。
【0044】
文脈において明確に別段の示唆がない限り、本明細書における用語「又は」は「及び」を含むことを意図し、本明細書における用語「及び」は「又は」を含むことを意図している。明示的に特段の記載がない限り、本明細書における単数形の用語はその複数形を包含し、本明細書における複数形の用語はその単数形を包含する。
【0045】
別段の記載がない限り、本明細書における用語「comprise(含む)」、「comprises(含む)」、及び「comprising(含む)」、又はその等価な語句(「contain(含有する)」、「containing(含有する)」、「include(含む)」、及び「including(含む)」等)は、オープンエンドモードの表現であり、「含むがそれに限定されない」と理解されるべきであり、これは、他の不特定の要素、構成要素、及び工程が、既に列挙されたものに加えて含まれてもよいことを意味する。
【0046】
別段の記載がない限り、本明細書における用語「全ゲノム」は、生物の全ゲノム配列だけでなく、細胞小器官のゲノム(葉緑体ゲノム等)も包含する。
【実施例
【0047】
図1は、本出願のGA法の例示的なフローチャートを示す。GA法は、冬虫夏草、ヤクヨウダイオウ、及びアカシカの特定プロセスと組み合わせた実施例によってさらに記載されるが、本出願の範囲はそれらに限定されない。
【0048】
以下の実施例において具体的な条件を示さない実験方法は、従来の条件に従って実施する。別段の記載がない限り、製造業者が示されていない以下の実施例で使用される試薬、材料又はデバイスは、市販されている従来の製品である。
【0049】
実施例1:冬虫夏草の小断片ゲノムライブラリを構築し、それから広範囲候補標的配列を得る
1.1 冬虫夏草の小断片ゲノムライブラリの構築
特定される種として使用した冬虫夏草の全ゲノムデータ(アセンブリアクセッション番号:GCA_002077885.1)をNCBIデータベース(https://www.ncbi.nlm.nih.gov)からダウンロードし、冬虫夏草の全ゲノム配列を、Jellyfish(v1.1.12)を用いて25bp長のL-25+1(L=全ゲノム配列長)個の断片に分割し、冬虫夏草の小断片ゲノムライブラリを構築した。
【0050】
1.2 広範囲候補標的配列の入手
上記で構築した冬虫夏草の小断片ゲノムライブラリからPAMを有する配列を抽出した(PAMの5’末端はTTTV(配列番号10)を有するか、又はその3’末端はVAAA(配列番号11)を有する)。冬虫夏草の全ゲノム配列からPAMを有する3,432,386個の候補標的配列をスクリーニングし、重複を除去した後、PAMを有する1,385,096個の広範囲候補標的配列を得た。
【0051】
実施例2:種の特定のための冬虫夏草の特異的標的配列のスクリーニング
2.1 特異的標的配列のスクリーニング
本開示において、標的配列を、特定される種のゲノムの範囲内でスクリーニングし、高い種内保存及び強い種間差異を有する領域における標的配列のスクリーニングに優先順位を与えた。標的配列は、関連種の対応する配列と3塩基以上のミスマッチを有していた。上記の条件を同時に満たす複数の標的配列が存在する場合、より多くのコピー数を有する1つ以上の標的配列を好ましく選択した。
【0052】
具体的なスクリーニング工程は以下の通りであった:(1)データ調製:冬虫夏草の開示されたすべてのゲノム配列及びその類似物質であるサナギタケのゲノム配列をNCBIデータベース(https://www.ncbi.nlm.nih.gov)からダウンロードする;(2)冬虫夏草一次候補標的配列のスクリーニング:実施例1で得た広範囲候補標的配列を、Bowtie(v1.1.0)を使用することによって、上記データベースからダウンロードした冬虫夏草の開示されたゲノム配列すべてとアラインメントさせ、冬虫夏草の開示されたゲノム配列すべてと完全にマッチ(合致)し得る配列を広範囲候補標的配列からスクリーニングし、冬虫夏草の一次候補標的配列ライブラリを構築する;(3)冬虫夏草の種間特異的候補標的配列のスクリーニング:(2)で得た一次候補標的配列ライブラリを、Bowtie(v1.1.0)を使用することによって、類似物質であるサナギタケのゲノム配列とアラインメントさせ、類似物質と3塩基以下のミスマッチを有さない配列を特異的標的配列として一次候補標的配列ライブラリからスクリーニングする。
【0053】
上記で得た特異的標的配列を、図3に示すように、Os_target(配列番号1)と命名した。類似物質における特異的標的配列の具体的な分析結果を図4に示した。
【0054】
2.2 特異的標的配列にマッチするcrRNAの設計
以下の実験で使用したゲノム編集システム(CRISPR/Cas12aシステム)及びcrRNA設計原理に従って、図3に示すように、Os_targetにマッチするcrRNAを設計し、Os_crRNA(配列番号13)と命名した。
【0055】
実施例3:GAを介した冬虫夏草の特定
実施例2においてスクリーニングした特定される種の特異的標的配列が、検出対象の試料と特定される種との間の同一性を特異的かつ正確に反映し得るか否かを判断するために、次いで、試料の種の特定を、冬虫夏草試料及びサナギタケ試料並びにこれらの混合物の各々のゲノムDNAに基づいて行った。
【0056】
3.1 冬虫夏草試料及びサナギタケ試料のゲノムDNA抽出及び増幅
冬虫夏草(北京(Beijing)から収集)の試料を採取し、液体窒素に添加し、完全に粉末にし、次いで、各試料の全DNAを、TIANGEN(天根生化科技)によって提供されるキットの使用説明書に従ってTIANamp Genomic DNAキットを使用して抽出した。得られた各試料の全DNAの完全性を0.8%アガロースゲル電気泳動により検出し、次いで、Nanodrop 2000C分光光度計により純度と濃度を検出した。
【0057】
一方、上記の工程に従って、サナギタケ試料のゲノムDNAを抽出し、各試料の全DNAの完全性を0.8%アガロースゲル電気泳動によって検出した。
【0058】
冬虫夏草の標的配列は、そのゲノムのITS領域に位置していたため、この領域のユニバーサルプライマーを実験に使用した。反応の安定性を改善するために、プライマーの両端でのチオ修飾を含むがこれに限定されない操作を使用することができ、その具体的な配列情報は以下の通りであった。
ITS4F:5’-GAAGTAAAAGTCGTAACAAG-3’(配列番号4)
ITS5R:5’-TCTCCGCTTATTGATATC-3’(配列番号5)
【0059】
3.2 ゲノム編集技術に基づく検出対象の試料の種の特定
Os群(冬虫夏草試料の群)、Cm群(サナギタケ試料の群)、Os+Cm群(冬虫夏草+サナギタケ試料の群)及びCK(ブランク対照)群をそれぞれ設定した。
【0060】
以下の種特定用反応系では、crRNAとしてOs_crRNAを使用し、検出する各試料群について、上記で抽出した各群の試料(冬虫夏草、サナギタケ又はこれらの混合物)のゲノムDNAをDNA基質として使用した。実験はNEB製のEnGen Lba Cas12a(Cpf1)を用いて行い、反応系の全量は100μLとした:10μLの10×NEBuffer 2.1、2μLのLba Cas12a(20nM)、3.3μLのcrRNA(300nM)、3μLのDNA基質(10ng/μL)、47μLのERA増幅試薬、4μLのPoly_C_FQ(400nM)及び30.7μLの核不含HO。
【0061】
上記反応系中のERA増幅試薬及びDNA基質を、まず1.5mL遠心管の底に添加した。NEBuffer 2.1、Lba Cas12a、Os_crRNA及びヌクレアーゼ不含HOをチューブキャップの内側に添加し、40℃で20分間インキュベートし、次いで、チューブキャップ中の試薬を、単純な遠心分離又は重力によってチューブの底に迅速に移し、続いて、混合物を37℃で10分間インキュベートし続けた。次いで、これにPoly_C_FQを添加し、37℃でインキュベートし、λex483nm/λem535nmの蛍光を、マイクロプレートリーダーを用いて、それぞれ0分、3分、6分、9分、12分、15分、25分、35分、45分及び60分で検出した。
【0062】
図5のパネルAは、検出対象の各試料群の蛍光検出結果を示した。パネルAに示すように、Os群は蛍光シグナルを生成し、蛍光値は25分で最大に達し、維持され、これは、CK群と統計的に有意な差があった(P<0.01)。Cm群はCK群と一致しており、それらはいずれも蛍光シグナルを生成せず、Cm群の蛍光値とCK群の蛍光値に有意差はなかった(P>0.01)。一方、混合試料群(すなわちOs+Cm群)も、冬虫夏草の試料を含むことに起因して強い蛍光シグナルを生成すことができ、その蛍光値はCK群とは統計的に有意に異なった(P<0.01)。本発明の方法は、検出対象の試料が特定される種と同一性を有するか否かを特異的かつ正確に反映することができるということが分かる。
【0063】
実施例4:ヤクヨウダイオウの小断片ゲノムライブラリを構築し、それから広範囲候補標的配列を得る
4.1 ヤクヨウダイオウの小断片ゲノムライブラリの構築
特定する種として使用したヤクヨウダイオウの葉緑体ゲノムデータ(アセンブリアクセッション番号:MZ998517)をNCBIデータベースからダウンロードし、ヤクヨウダイオウの葉緑体ゲノム配列を、Jellyfish(v1.1.12)を用いて25bp長の断片(L-25+1個、L=葉緑体ゲノム配列長)に分割し、ヤクヨウダイオウの小断片ゲノムライブラリを構築した。
【0064】
4.2 広範囲候補標的配列の入手
上記で構築したヤクヨウダイオウの小断片ゲノムライブラリからPAMを有する配列を抽出し(PAMの5’末端はTTTV(配列番号10)を有するか、又は3’末端はVAAA(配列番号11)を有する)、ヤクヨウダイオウの全ゲノム配列からPAMを有する7,995個の候補標的配列をスクリーニングし、重複を除去した後、PAMを有する6,685個の広範囲候補標的配列を得た。
【0065】
実施例5:種の特定のためのヤクヨウダイオウの特異的標的配列のスクリーニング
5.1 特異的標的配列のスクリーニング
(1)データ調製:ヤクヨウダイオウの開示されたすべての葉緑体ゲノム配列及びその類似物質であるショウヨウダイオウの葉緑体ゲノム配列をNCBIデータベースからダウンロードする;(2)ヤクヨウダイオウ一次候補標的配列のスクリーニング:実施例4で得た広範囲候補標的配列を、Bowtie(v1.1.0)を使用することによって、上記データベースからダウンロードしたヤクヨウダイオウの開示された葉緑体ゲノム配列すべてとアラインメントさせ、ヤクヨウダイオウの開示された葉緑体ゲノム配列すべてと完全にマッチし得る配列を広範囲候補標的配列からスクリーニングし、ヤクヨウダイオウの一次候補標的配列ライブラリを構築する;(3)ヤクヨウダイオウの種間特異的候補標的配列のスクリーニング:(2)で得た一次候補標的配列ライブラリを、Bowtie(v1.1.0)を使用することによって、類似物質であるショウヨウダイオウの葉緑体ゲノム配列とアラインメントさせ、類似物質と3塩基以下のミスマッチを有さない配列を特異的標的配列として一次候補標的配列ライブラリからスクリーニングする。
【0066】
上記で得られた特異的標的配列を、図3に示すように、Ro_target(配列番号2)と命名した。類似物質における特異的標的配列の具体的な分析結果を図4に示した。
【0067】
5.2 特異的標的配列にマッチするcrRNAの設計
以下の実験で使用したゲノム編集システム(CRISPR/Cas12aシステム)及びcrRNA設計原理に従って、図3に示すように、Ro_targetにマッチするcrRNAを設計し、Ro_crRNA(配列番号14)と命名した。
【0068】
実施例6:GAを介したヤクヨウダイオウの特定
実施例5においてスクリーニングした特定される種の特異的標的配列が、検出対象の試料と特定される種との間の同一性を特異的かつ正確に反映し得るか否かを判断するために、次いで、試料の種特定を、ヤクヨウダイオウ試料及びショウヨウダイオウ試料並びにこれらの混合物の各々のゲノムDNAに基づいて行った。
【0069】
6.1 ヤクヨウダイオウ試料及びショウヨウダイオウ試料のゲノムDNA抽出
実施例3に記載した方法に従って、ヤクヨウダイオウ試料(冕寧(ミェンニン、Mianning)、四川省(Sichuan)から収集)及びショウヨウダイオウ試料のゲノムDNAを抽出した。
【0070】
実施例5で得たヤクヨウダイオウの特異的標的配列に基づいて、特異的プライマーを設計し、その具体的な配列情報は以下の通りであった。
Ro_1F:5’-CCAAATTGCCCGAAGCCTATG-3’(配列番号6)
Ro_1R:5’-ATCGCTTTCCGACCCACAAT-3’(配列番号7)
【0071】
6.2 ゲノム編集技術に基づく検出対象の試料の種の特定
Ro群(ヤクヨウダイオウ試料の群)、Rp群(ショウヨウダイオウ試料の群)、Ro+Rp群(ヤクヨウダイオウ+ショウヨウダイオウ試料の群)及びCK(ブランク対照)群をそれぞれ設定した。以下の種特定用反応系では、crRNAとしてRo_crRNAを使用し、検出する各試料群について、上記で抽出した各群の試料(ヤクヨウダイオウ試料、ショウヨウダイオウ試料又はこれらの混合物)のゲノムDNAをDNA基質として使用した。
【0072】
上記試料の種特定は、実施例3の「3.2 ゲノム編集技術に基づく検出対象の試料の種の特定」の項に記載の操作工程及び反応条件に従って行った。
【0073】
図5のパネルBは、検出対象の各試料群の蛍光検出結果を示した。パネルBに示すように、Ro群は蛍光シグナルを生成し、蛍光値は25分で最大に達し、維持され、これは、CK群と統計的に有意な差があった(P<0.01)。Rp群はCK群と一致しており、それらはいずれも蛍光シグナルを生成せず、Rp群の蛍光値とCK群の蛍光値に有意差はなかった(P>0.01)。一方、混合試料群(すなわちRo+Rp群)も、ヤクヨウダイオウの試料を含むことに起因して強い蛍光シグナルを生成すことができ、その蛍光値はCK群とは統計的に有意に異なった(P<0.01)。本発明の方法は、検出対象の試料が特定される種と同一性を有するか否かを特異的かつ正確に反映することができるということが分かる。
【0074】
実施例7:アカシカの小断片ゲノムライブラリを構築し、それから広範囲候補標的配列を得る
7.1 アカシカの小断片ゲノムライブラリの構築
特定する種として使用したアカシカの全ゲノムデータ(アセンブリアクセッション番号:GCA_910594005.1)をNCBIデータベースからダウンロードし、アカシカの全ゲノム配列を、Jellyfish(v1.1.12)を用いて25bp長の断片(L-25+1個、L=全ゲノム配列長)に分割し、アカシカの小断片ゲノムライブラリを構築した。
【0075】
7.2 広範囲候補標的配列の入手
上記で構築したアカシカの小断片ゲノムライブラリからPAMを有する配列を抽出し(PAMの5’末端はTTTV(配列番号10)を有するか、又は3’末端はVAAA(配列番号11)を有する)、アカシカの全ゲノム配列からPAMを有する121,153,505個の候補標的配列をスクリーニングし、重複を除去した後、PAMを有する94,378,541個の広範囲候補標的配列を得た。
【0076】
実施例8:種の特定のためのアカシカの特異的標的配列のスクリーニング
8.1 特異的標的配列のスクリーニング
(1)データ調製:アカシカの開示されたすべてのゲノム配列及びその類似物質であるトナカイのゲノム配列をNCBIデータベースからダウンロードする;(2)アカシカ一次候補標的配列のスクリーニング:実施例7で得た広範囲候補標的配列を、Bowtie(v1.1.0)を使用することによって、上記データベースからダウンロードしたアカシカの開示されたゲノム配列すべてとアラインメントさせ、アカシカの開示されたゲノム配列すべてと完全にマッチし得る配列を広範囲候補標的配列からスクリーニングし、アカシカの一次候補標的配列ライブラリを構築する;(3)アカシカの種間特異的候補標的配列のスクリーニング:(2)で得た一次候補標的配列ライブラリを、Bowtie(v1.1.0)を使用することによって、類似物質であるトナカイのゲノム配列とアラインメントさせ、類似物質と3塩基以下のミスマッチを有さない配列を特異的標的配列として一次候補標的配列ライブラリからスクリーニングする。
【0077】
上記で得られた特異的標的配列を、図3に示すように、Ce_target(配列番号3)と命名した。類似物質における特異的標的配列の具体的な分析結果を図4に示した。
【0078】
8.2 特異的標的配列にマッチするcrRNAの設計
以下の実験で使用したゲノム編集システム(CRISPR/Cas12aシステム)及びcrRNA設計原理に従って、図3に示すように、Ce_targetにマッチするcrRNAを設計し、Ce_crRNA(配列番号15)と命名した。
【0079】
実施例9:GAを介したアカシカの特定
実施例8においてスクリーニングした特定される種の特異的標的配列が、検出対象の試料と特定される種との間の同一性を特異的かつ正確に反映し得るか否かを判断するために、次いで、試料の種特定を、アカシカ試料及びトナカイ試料並びにこれらの混合物の各々のゲノムDNAに基づいて行った。
【0080】
9.1 アカシカ試料及びトナカイ試料のゲノムDNA抽出
実施例3に記載した方法に従って、アカシカ試料(アカシカ肉、撫順(フーシュン、Fushun)、遼寧省(Liaoning)から収集)及びトナカイ試料(トナカイ肉)のゲノムDNAを抽出した。
【0081】
実施例8で得たアカシカの特異的標的配列に基づいて、特異的プライマーを設計した。反応の安定性を改善するために、プライマーの両端でのチオ修飾を含むがこれに限定されない操作を使用することができ、その具体的な配列情報は以下の通りであった。
Ce_17F:5’-ACAGAAGTGATGGTTGCG-3’(配列番号8)
Ce_17R:5’-AGAATCCTAGGAAGAACTGT-3’(配列番号9)
【0082】
9.3 ゲノム編集技術を用いて特異的標的配列に基づいて試料を検出する
Ce群(アカシカ試料の群)、Rt群(トナカイ試料の群)、Ce+Rt群(アカシカ+トナカイ試料の群)及びCK(ブランク対照)群をそれぞれ設定した。以下の種特定反応系では、crRNAとしてCe_crRNAを用い、検出する各試料群について、上記で抽出した各群の試料(アカシカ試料、トナカイ試料又はこれらの混合物)のゲノムDNAをDNA基質として用いた。
【0083】
上記試料の種特定は、実施例3の「3.2 ゲノム編集技術に基づく検出対象の試料の種の特定」の項に記載の操作工程及び反応条件に従って行った。
【0084】
図5のパネルCは、検出対象の各試料群の蛍光検出結果を示した。パネルCに示すように、Ce群は蛍光シグナルを生成し、蛍光値は25分で最大に達し、維持され、これは、CK群と統計的に有意な差があった(P<0.01)。Rt群はCK群と一致しており、それらはいずれも蛍光シグナルを生成せず、Rt群の蛍光値とCK群の蛍光値に有意差はなかった(P>0.01)。一方、混合試料群(すなわちCe+Rt群)も、アカシカの試料を含むことに起因して強い蛍光シグナルを生成すことができ、その蛍光値はCK群とは統計的に有意に異なった(P<0.01)。本発明の方法は、検出対象の試料が特定される種と同一性を有するか否かを特異的かつ正確に反映することができるということが分かる。
【0085】
実施例10:配列決定技術に基づくアカシカ試料及びトナカイ試料の種の特定
実施例8で得たアカシカの特異的標的配列に基づいて、様々な異なる配列検出技術が真核生物試料の種の特定に使用できることを例示的に示すために、Ce_17F及びCe_17R(配列番号8及び配列番号9)のプライマー対を使用して、実施例9で得た検出対象のアカシカ試料及びトナカイ試料のゲノムDNAを特異的に増幅し、増幅産物を配列決定した。結果は、図6に示すように、検出対象の試料が特定される種と一致する場合、配列決定結果において特異的標的配列を含む配列を得ることができ、検出対象の試料が特定される種と不一致である場合、特異的標的配列は増幅産物の配列決定結果に見出せないということを示した。本発明の方法は、検出対象の試料が特定される種と同一性を有するか否かを特異的かつ正確に反映することができるということが分かる。
【0086】
上記実施例3、実施例6、実施例9及び実施例10の結果によれば、本出願の方法は、冬虫夏草試料(真菌)、ヤクヨウダイオウ試料(植物)及びアカシカ試料(動物)を含む各群の試料の種を正確に特定することができ、医薬物質(すなわち、冬虫夏草、ヤクヨウダイオウ及びアカシカ)の品質製品を、それらのそれぞれの一般的な類似物質(すなわち、サナギタケ、ショウヨウダイオウ及びトナカイ)から明確に区別するために使用することができるということが分かる。
【0087】
当業者は、上記の例のいずれかにおける考察が単なる例示であり、本開示の保護範囲がこれらの例に限定されることを含意することを意図しないことを理解すべきである。本開示の概念の下では、上記の例又は異なる例における技術的特徴も組み合わせることができ、工程は任意の順序で実施することができ、上記で説明した本開示の例の異なる態様には多くの他の変更があるが、これらは簡潔にするために詳細には提供されない。本出願の実施例は、添付の請求項の広い範囲内に入るすべてのそのような置換、修正、及び変形を包含することを意図する。それゆえ、本開示の例の趣旨及び原理内で行われるいずれの省略、修正、等価な置換、改善等は、本開示の保護範囲内に含まれるものとする。
【0088】
すべての特許、特許出願及び他の刊行物は、説明及び開示の目的のために、参照により本明細書に明確に組み込まれる。これらの刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示についてのみ提供される。これらの文書の日付に関するすべての記述又は内容に関する表現は、本出願人に利用可能な情報に基づいており、これらの文書の日付又は内容の正確さに関するいかなる承認も構成しない。さらに、いかなる国においても、本明細書におけるこれらの刊行物へのいかなる言及も、その刊行物が当該技術分野における共通の知識の一部になるという是認を構成しない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2024531414000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-02-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全ゲノム解析に基づく真核生物種の特定方法であって、
i)特定される種の全ゲノム配列を、長さKのL-K+1個の断片に分割して、前記特定される種の全ゲノム配列に基づいて小断片ゲノムライブラリを構築し、前記小断片ゲノムライブラリ中の各断片のコピー数を計算し、次いで、前記各断片のゲノム位置を、各断片を前記全ゲノム配列とアラインメントすることによって決定する工程であって、Lは前記全ゲノム配列の長さを表し、Kは前記ライブラリ中の前記断片の長さを表す工程と、
ii)前記小断片ゲノムライブラリ中の各断片についてPAMモチーフを検出し、PAMを有する配列を抽出して、広範囲候補標的配列ライブラリを構築し、広範囲候補標的配列ライブラリを得る工程であって、前記PAMは、5’末端に配列番号10に記載のアミノ酸配列又は3’末端に配列番号11に記載のアミノ酸配列を有するPAMである工程と、
iii)前記広範囲候補標的配列ライブラリ中の配列を関連種の全ゲノム配列とアラインメントし、前記特定される種の前記関連種の全ゲノム配列に基づいて、高い種内保存及び大きい種間差異を有する領域内で前記特定される種にのみ存在する複数の異なる配列を選択して、特異的標的配列ライブラリを構築する工程と、
iv)検出対象の真核生物試料のゲノムDNAを入手し、前記特異的標的配列ライブラリ中の配列に基づいて前記真核生物試料の種の特定を行い、CRISPR/Cas12a遺伝子編集システムを使用することによって、前記ゲノムDNAが前記特異的標的配列ライブラリ中の前記配列を含むか否かを検出し、これにより、前記真核生物試料と前記特定される種との間の同一性を判定する工程であって、前記検出を行う前に、前記特異的標的配列にマッチするcrRNAが、前記CRISPR/Cas12a遺伝子編集システムに基づいて予め構築される工程
を含む、方法。
【請求項2】
i)及びiv)において、前記特定される種又は検出対象の前記真核生物試料は動物、植物又は真菌に由来する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記特定される種にのみ存在する前記複数の異なる配列は、前記関連種の全ゲノム配列からの少なくともn塩基差異を有する候補標的配列であり、nは3以上である請求項に記載の方法。
【請求項4】
検出対象の前記真核生物試料は、単一種に由来する試料又は複数種に由来する試料の混合物である請求項に記載の方法。
【請求項5】
検出対象の前記真核生物試料は、冬虫夏草、サナギタケ、ヤクヨウダイオウ、ショウヨウダイオウ、アカシカ又はトナカイに由来する試料である請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記特定される種は冬虫夏草であり、前記特異的標的配列は配列番号1に記載のヌクレオチド配列であり、前記特異的標的配列にマッチするcrRNAは、配列番号13に記載されたものである請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記特定される種はヤクヨウダイオウであり、前記特異的標的配列は配列番号2に記載のヌクレオチド配列であり、前記特異的標的配列にマッチするcrRNAは、配列番号14に記載されたものである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記特定される種はアカシカであり、前記特異的標的配列は配列番号3に記載のヌクレオチド配列であり、前記特異的標的配列にマッチするcrRNAは、配列番号15に記載されたものである請求項1に記載の方法。
【請求項9】
真核生物種の特定のための特異的標的配列ライブラリを構築する方法であって、
a)特定される種を選択し、請求項に記載の種の特定方法に従って前記特定される種の1つ以上の特異的標的配列をスクリーニングする工程と、
b)前記特定される種の前記1つ以上の特異的標的配列を組み合わせて、前記特異的標的配列ライブラリを構築する工程と
を含む、方法。
【請求項10】
真核生物種の特定の特異的標的配列を検出するためのツールライブラリを構築する方法であって、
A)特定される種を選択し、請求項に記載の方法に従って前記特異的標的配列ライブラリを構築する工程と、
B)前記検出に使用される技術に基づいて、前記特異的標的配列にマッチするツールライブラリを構築する工程と
を含み、前記検出に使用される技術は、CRISPR/Cas12aを用いる遺伝子編集であり、前記ツールライブラリはcrRNAライブラリである、方法。
【請求項11】
中国医薬物質をそれらの対応する類似物質から区別する方法であって、
I)特定される種として前記中国医薬物質又は類似物質を使用し、請求項1に記載の方法に従って特異的標的配列をスクリーニングする工程と、
II)検出対象の医薬試料のゲノムDNAを入手し、CRISPR/Cas12a遺伝子編集システムに基づいて前記ゲノムDNAが前記特異的標的配列を含むか否かを検出し、これにより検出対象の前記医薬試料と前記中国医薬物質又は前記類似物質との間の同一性を判定する工程と
含む、方法。
【国際調査報告】