(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】バッテリ及びバッテリ制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240822BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240822BHJP
G01R 31/00 20060101ALI20240822BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20240822BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H01M10/48 P
H01M10/48 301
G01R31/00
H02J7/02 H
H02J7/00 P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510458
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2022073385
(87)【国際公開番号】W WO2023025753
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】102021121742.3
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591018763
【氏名又は名称】ベバスト エスエー
【氏名又は名称原語表記】Webasto SE
【住所又は居所原語表記】Kraillinger Strasse 5,82131 Stockdorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100153822
【氏名又は名称】増田 重之
(72)【発明者】
【氏名】サマンサ ツィムニク
【テーマコード(参考)】
2G036
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G036AA22
2G036AA23
2G036AA28
2G036BA12
2G036BB08
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB01
5G503CA11
5G503CB09
5G503CB11
5G503EA08
5G503EA09
5G503FA06
5G503FA18
5H030AA06
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
本発明は、バッテリを、特にバッテリ管理システムを有する高電圧バッテリを、動作させるための方法に関し、この方法では、
- 少なくとも一つのバッテリ・セルのセル電圧を判定するステップと、
- 少なくとも一つのバッテリ・セルの関連するセル・パック電圧を判定するステップと、
- 主制御ユニットのマイクロプロセッサ上で、分析プログラムによって、セル電圧及びセル・パック電圧を評価するステップであって、規定された測定周期内に、セル電圧が、規定されたセル・エラー値だけ低下し、セル・パック電圧が、規定されたパック・エラー値だけ低下する場合、過熱の警告メッセージが起動される、評価するステップと
が実行される。本発明は、その上、この方法が実行され得るバッテリを、特に高電圧バッテリ(HVバッテリ)を、包含する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主基板(11)を備える主制御ユニット(10)を有するバッテリ管理システム(BMS)を有し、複数のセル・パック(31.1、...、31.n)を備えるバッテリ(1)を動作させるための方法であって、熱イベント(熱暴走)に関する検査が一定の測定周期で実行される方法において、
少なくとも一つのバッテリ・セルのセル電圧を判定するステップと、
前記少なくとも一つのバッテリ・セルの関連するセル・パック電圧を判定するステップと、
前記主制御ユニット(10)のマイクロプロセッサ上で、分析プログラムによって、前記セル電圧及び前記セル・パック電圧を評価するステップであって、規定されたイベント時間内に、
a)前記セル電圧が、規定されたセル・エラー値だけ低下し、
b)前記セル・パック電圧が、規定されたパック・エラー値だけ低下する場合、
過熱の警告メッセージが起動される、評価するステップと
が実行されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記セル・エラー値が、前記測定周期の前のセル電圧と比較して少なくとも60%であり、特に少なくとも70%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パック・エラー値が、少なくとも、前記セル・エラー値の±10%に相当し、理想的には±5%に相当することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
セル・エラー値の後に、パック・エラー値が判定されるイベント時間が、3秒未満、主に2秒未満、特に1.5秒未満であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記バッテリの充電モードにおける前記測定周期が、0.5ミリ秒~2秒、有利には1ミリ秒~1.5秒、理想的には1.5ミリ秒~1秒であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
特に車両が前記バッテリによって駆動される、前記バッテリの動作モードにおける前記測定周期が、0.5ミリ秒~1秒、有利には0.5ミリ秒~500ミリ秒、理想的には0.5ミリ秒~100ミリ秒であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
車両を駆動せず、充電プロセスを実行することもない、前記バッテリのアイドル・モードにおける前記測定周期が、10ミリ秒よりも長く、有利には2秒よりも長く、理想的には5秒よりも長いことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記評価ユニットによって、少なくとも一つの更なる状態測定値が受け取られて評価され、その間隔及び/又は頻度が、前記少なくとも一つの更なる状態測定値に基づいて適合されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも一つの状態値又は状態値の組合せが、
前記バッテリの前記動作モードからの時間間隔と、
前記バッテリの前記充電モードからの時間間隔と、
特に前記それぞれの測定周期の間及びその前の前記バッテリの温度と、
前記それぞれの測定周期の前の、特に規定された導入期間における前記バッテリの温度グラフと、
特に局地的条件による温度の影響も予期される外側領域の温度と
のグループから得られることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
高電圧バッテリ(HVバッテリ)の形式のバッテリ(1)であって、少なくとも、
複数のセル・パック(31.1、...、31.n)及び関連するセルを有するセル・コンパートメント(30)と、
主基板(11)、主プロセッサ(4)及び複数の電子要素(5.1、5.2、5.3)を有する主制御ユニット(10)と
のバッテリ要素を備えるバッテリ(1)において、
パック電圧用の少なくとも一つのパック測定ユニットが設けられ、また
少なくとも一つのセル/セル電圧用の少なくとも一つのセル測定ユニット、及び分析プログラムによってデジタル及び/又はアナログの測定データを処理するマイクロプロセッサ(5)、前記マイクロプロセッサ(5)及び前記分析プログラムによって、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法が実行され得る
ことを特徴とするバッテリ(1)。
【請求項11】
特に、少なくとも一つのセル・パック(31.1、...、31.n)に、又はその上に、少なくとも一つの温度センサ(7)を備えるバッテリ(1)であって、前記温度センサ(7)が、前記主制御ユニット(10)に、データを搬送するやり方で接続されている、ことを特徴とする、請求項10に記載のバッテリ(1)。
【請求項12】
特に、少なくとも一つのセル・パック(31.1、...、31.n)に、又はその上に、少なくとも一つの圧力センサ(6)を備えるバッテリ(1)であって、前記圧力センサ(6.1、6.2)が、前記主制御ユニット(10)に、データを搬送するやり方で接続されている、ことを特徴とする、請求項10又は11に記載のバッテリ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルによる、バッテリを動作させるための方法と、請求項10のプリアンブルによるバッテリとに関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリ、特に多数のセル・パックを有するHVバッテリは、電気的状態及び物理的状態に関して監視される。これは、熱的状況を監視すること、特に、いわゆる熱故障(熱暴走)を検知することも含む。バッテリ又はバッテリ・システムの一つ又は複数のセルにおける熱イベントを検知するために、バッテリの内部の圧力又は圧力グラフが評価される。この圧力測定は、たとえばバッテリ管理システム(BMS)の一部としてたとえば主基板上に配置され得る圧力センサによって実行される。そのような「熱イベント」(熱暴走)は、たとえば電流負荷などの外部の影響なしで、化学プロセスによって発熱が独立して強まり、同時に化学プロセスが加速される状態である。
【0003】
そのような監視機構は、たとえばDE 10 2018 210 975 B4によって示されており、バッテリ制御ユニットの主基板上に配置された圧力センサによって熱イベントが検知される。圧力センサを主基板に組み込むには、この目的のために主基板を物理的に更に大きくする必要があり、それによって、主基板をバッテリに組み込むのが困難になり、ASIL規格に従って主基板上の圧力センサからのデータを検証するのが更に複雑になるので不利である。
【0004】
或いは、熱暴走を監視するために、セルが過熱していることの結果としてセルの電解質から放出されるCO2を検知することが知られている。この解決策には、セルの発熱と、バッテリの内部又は外部の特定のポイントにおける適切なセンサによるCO2の識別との間に、時間的オフセットがあるという短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、熱暴走の、改善された、詳細にはより高速の検知を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明による、請求項1の特徴による方法と、請求項10の特徴によるバッテリとによって達成される。有利な構成は、それぞれの関連する従属請求項に規定されている。
【0007】
したがって、この目的は、特に主マイクロプロセッサを有する主制御ユニット付きのバッテリ管理システム(BMS)を有するバッテリを、特に高電圧バッテリを、動作させるための方法によって達成され、熱イベント(熱暴走)に関する監視又は検査は、反復方法によって、詳細には一定の測定周期で実行される。その上、バッテリは、少なくとも一つのセル・パックを、詳細には複数のセル・パックを備える。
【0008】
本発明による方法では、
- 少なくとも一つの(バッテリ)セルのセル電圧を判定するステップと、
- 少なくとも一つのバッテリ・セルの関連するセル・パック電圧を判定して、特に主制御ユニットのマイクロプロセッサ上の分析プログラムによってセル電圧及びセル・パック電圧を評価するステップとが実行される。評価に基づいて、規定されたイベント時間内に、セル電圧が規定されたセル・エラー値だけ低下して、セル・パック電圧が規定されたパック・エラー値だけ同様に低下したら、過熱の警告メッセージが起動される。
【0009】
ここの過熱の警告メッセージとは、たとえば使用中の車両の運転者といったバッテリのユーザに、特に音声認識可能に又は視覚的に警告して、安全な動作及び/又はスイッチ・オフのために、バッテリの少なくとも部分的なスイッチ・オフ又は他のステップを起動する任意の警告信号及び/又は制御信号を意味するものと理解されたい。
【0010】
改善された方法の変形形態では、セル・エラー値は、測定周期の前のセル電圧と比較して少なくとも60%であり、特に少なくとも70%である。したがって、たとえば出力セル電圧が4Vであるなら、限界のセル・エラー値=0.6×4Vとなる。
【0011】
更に改善された方法の変形形態では、パック・エラー値は、セル・エラー値と相関し、セル・エラー値の大きさに、少なくとも±10%、理想的には±5%の変動範囲で相当する。
【0012】
驚くべきことに、短絡によるセル電圧の突然の低下は、必ずしも熱暴走を引き起こすわけではないが、無視できる個々の場合を除いて、セル電圧及びセル・パック電圧における前述の突然の低下がそれぞれの熱暴走に先行することが判明している。
【0013】
改善された方法の変形形態では、セル・エラー値の後に、パック・エラー値が実行又は判定されるイベント時間は、3秒未満、主に2秒未満、特に1.5秒未満である。
【0014】
方法の改善の一つには、充電モード、動作モード及びアイドル・モードに関連して、測定周期、すなわち測定の間隔及び/又は頻度を異なる長さに設計できる。
【0015】
有利には、充電モードは、外部からの充電電圧が高く、特に重要なプロセスであるので、頻繁な測定周期が選択されるべきである。これは、0.5ミリ秒~2秒、有利には1ミリ秒~1.5秒、理想的には1.5ミリ秒~1秒にするべきである。この場合「充電モード」は、車両が、たとえば制動過程において、発電モードでバッテリを短時間充電する動的充電プロセスではなく、固定された充電スタンドによってバッテリを充電することを意味する。
【0016】
バッテリの動作モードにおける測定周期は、通常、安全ルーチン及び製造業者による仕様によって規定される。この測定周期は、0.5ミリ秒~1秒、有利には0.5ミリ秒~500ミリ秒、理想的には0.5ミリ秒~100ミリ秒にするべきである。ここの「動作モード」は、バッテリが、モータ、車両などを動作させるために使用され、すなわち、特に、静止した列における充電モードや停止状態ではないことを意味する。
【0017】
バッテリのアイドル・モードでは、一実施形態は、電力を節約してバッテリの有用性を延長するために測定周期を延長する。アイドル・モードにおける測定周期は、10ミリ秒よりも長く、有利には2秒よりも長く、理想的には5秒よりも長くするべきである。ここの「アイドル・モード」は、バッテリが静止した充電スタンドで充電されているのでも、動作モードでもないことを意味する。
【0018】
この実施形態は、評価ユニットによって受け取られて評価される少なくとも一つの更なる状態測定値によって更に改善され得、測定の間隔及び/又は頻度は、少なくとも一つの更なる状態測定値に基づいて適合される。
【0019】
そのような追加の状態測定値は、原理的に、バッテリの動作及び安全性に影響するすべての変数に影響を及ぼす。以下のグループから得られる状態値又は状態値の組合せは、特に影響力のある因子であることが判明している。
【0020】
・バッテリの動作モード又は充電モードからの時間間隔(充電モードの後であっても、バッテリのアイドル状態が持続するにつれて、重大な熱イベントが生じる可能性が低くなる)。
【0021】
・特にそれぞれの測定周期の間及びその前のバッテリ温度(重大な熱イベントが生じる可能性が非常に低い冷たいバッテリの温度よりも、過熱されている可能性があるバッテリの温度をまず頻繁に検査するべきである)。
【0022】
・それぞれの測定周期の前の、特に規定された導入期間におけるバッテリの温度グラフ(熱イベントの可能性は、しばしば非常に高温になる可能性があるバッテリの履歴の方が顕著の全くみられない使用履歴よりも、はるかに高いと推測され得る)。
【0023】
・特に局地的条件による温度の影響も予期される外側領域の温度(砂漠地帯における真昼のバッテリのアイドル・モードの開始後と比較して、冬の北半球地方における夜のアイドル・モードでは、バッテリに対する全く異なる熱的影響が予期される)。
【0024】
本発明は、特に高電圧バッテリ(HVバッテリ)の形式のバッテリも包含し、これは、少なくとも、一つ又は複数のセル・パック及び関連する(バッテリ)セル、主制御ユニット、主プロセッサ、並びに複数の電子要素といったバッテリ要素を備え、(セル)パック電圧を判定するための少なくとも一つのパック測定ユニットが設けられ、また、少なくとも一つのセル/セル電圧を判定するための少なくとも一つのセル測定ユニット、及び分析プログラムによって測定データを処理するマイクロプロセッサ、マイクロプロセッサ及び分析プログラムによって、前述の変形形態のうち一つによる方法が実行され得る。この場合、マイクロプロセッサは、主プロセッサと同一のもの、又は主(マイクロ)プロセッサと通信するものであってよい。
【0025】
この場合、(アナログ)測定値及び/又は及び、それから直接的又は間接的に生成されたデータは、ソフトウェアによって区別なく使用され得る。したがって、測定値と(測定)データは、反対のことが何か明確に述べられていなければ、概して同意語と理解されるべきである。したがって、場合により必要なアナログ・デジタル変換器(ADC)と、既知のやり方で処理したり転送したりするための他のハードウェア要素及びソフトウェア要素とは、当業者によって提供されるはずである。
【0026】
このバッテリは、一実施形態において、温度センサを備え、且つ/又はデータを搬送するやり方で温度センサに接続され、温度センサは、特に、少なくとも一つのセル・パックに、又はこのセル・パック上に配置されている。温度センサは、特にマイクロプロセッサ及び/又は主制御ユニットに、データを搬送するやり方で接続される。有利には、温度センサは、バッテリ・ハウジングにおけるバッテリの内部に配置される。しかしながら、温度センサは外部センサでもあり得る。
【0027】
このバッテリは、更なる実施形態では、少なくとも一つの圧力センサを、特に少なくとも一つのセル・パックに、又はこのセル・パック上に、圧力センサを備え、圧力センサは、マイクロプロセッサ及び/又は主制御ユニットに、データを搬送するやり方で直接的又は間接的に接続される。
【0028】
この場合、「接続された」又は「接続した」は、限定的な意味に理解されるべきではなく、電圧源及び電流源に対する一つ又は複数の接続と、データを搬送する通信との両方を意味する。通信は、特に通常のバス技術又はシリアル・インターフェースのうち一つの形式で、分離した個々のケーブル経由で行われ得、或いは電流を搬送する一つ又は複数の個別のケーブル上で変調され得る。
【0029】
この解決策には、特定のセル・パック又はセル・パックのグループにおける熱イベントが、特に他のセンサ又は検知装置に頼ることなく直ちに識別されるという大きな利点がある。
【0030】
次に、本発明の更なる詳細及び利点が、図面に示された例示的な実施形態に基づいてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】熱イベント(熱暴走)の開始時における電圧グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1が示すHVバッテリ1の概略設計は、基本的な構成要素としてのバッテリ・ハウジング15と、その内部の主制御ユニット10、スイッチ・ボックス20及びセル・コンパートメント30とを有する。セル・コンパートメント30は、横の破線によって示された複数のセル・パック31.1、...、31.nに分割されている。それぞれのセル・パック31.1、...、31.nが、関連するセル測定基板32.1、...、32.nを有する。主制御ユニット10及びその主基板11は、LVラインによって、中央の制御・供給ユニット2に、データ及び電流を搬送するやり方で接続されている。非常に概略的に示されているように、バッテリ1は、HVラインによって一つ又は複数の負荷3に接続されている。
【0033】
HV+ラインは、スイッチ・ボックス20及びそこの接触器8へとルーティングされ、HV-ラインは接触器9へとルーティングされている。その上、予充電接触器として働く接触器12を動作させるために、スイッチ・ボックス20におけるHV+ライン上に補助電流経路が設けられている。その上、スイッチ・ボックス20には電流センサ24が設けられており、他のフューズ、抵抗器又は更なる構成要素は示されていない。主基板11は、スイッチ・ボックス20又はスイッチ・ボックス20の中の個別の構成要素や部品に接続されており、これは、この場合、詳細には区別されていない。主基板11は、複数の超小型電子/電子要素5.1、5.2、5.3及び主マイクロプロセッサ4を備える。この場合、基本的に、熱イベントを識別して、適切な警告信号や制御信号を送信するための個別のマイクロプロセッサ5が設けられる。
【0034】
図1は、少なくとも一つの圧力センサ6.1、6.2を補助的に配置するための複数の取付け位置を示しており、すなわち、主制御ユニット10の主基板11上及び/又はスイッチ・ボックス20の中である。任意選択の温度センサ7.1、7.2のための2つの有利な取付け位置が、同様に示されており、すなわち、セル・ボード32.2のうち一つの上及び/又はセル・コンパートメント30の内部である。付加的な任意選択のCO
2センサは、同等の位置に配置されるべきである。
【0035】
前述のセンサは、反応がやや遅いが、監視ルーチンに含有されると、論理的な観点から、急速な温度上昇は、たとえば常に結果として熱イベントにも関連するため、電圧降下や可能性のある熱イベントを検証するのに非常に役立ち得る。
【0036】
図2のグラフにおいて、熱イベント(熱暴走)の場合のHVバッテリの状態に関する試験が実験室において実行され、
図2の電圧グラフ及びCO
2グラフに基づいて示されている。実線で示されたセル電圧12のグラフはC軸の値に関連しており、破線で示されたセル・パック電圧13はB軸に関連している。更に、比較のために、CO
2濃度のグラフ(×1000ppm)が一点鎖線で示されており、A軸に関連する。t
1=3秒においてセルの短絡が生じ、その後、セル電圧は、初期の約4.1Vからほぼ0V(セル・エラー値)まで低下する。数ミリ秒のイベント時間で、セル・パック電圧13が続き、一つのステップで当初の393Vから約389V(パック・エラー値)まで降下する。セル電圧12は、後に少し回復し、ほぼ0.5Vの低レベルにとどまる。CO
2濃度14は、明瞭な遅延を伴って続き、t
2=3.3秒にようやくCO
2センサが確実に検知可能なほぼ10,000ppmの値に達する。
【0037】
この場合、確実な識別のための前述の10,000ppmの値は、センサの感度に大部分依拠する。代替基準変数の場合には、HVバッテリ又は車両の動作中に、通常のCO2濃度の少なくとも1.5~2倍になるなど、通常のCO2濃度の数倍の発生で、確実に識別される。
【0038】
したがって、電圧グラフを比較することにより、過熱の警告メッセージが約0.3秒早く起動され得る。
【符号の説明】
【0039】
1 バッテリ
2 制御・供給ユニット
3 負荷
4 主マイクロプロセッサ
5 マイクロプロセッサ
5.1、5.2、5.3 (超小型)電子素子
6.1、6.2 圧力センサ
7 温度センサ
8 接触器
9 接触器
10 主制御ユニット
11 主基板
12 接触器
13 セル電圧(V)の電圧グラフ
13 セル・パック電圧(V)の電圧グラフ
15 CO2の濃度(1000ppm)のグラフ
15 バッテリ・ハウジング
20 スイッチ・ボックス
23 副マイクロプロセッサ
24 電流センサ
30 セル・コンパートメント
31 セル・パック(31.1、...、31.n)
32 セル測定基板(32.1、...、32.n)
35 低い方のレベル
36 高い方のレベル
【手続補正書】
【提出日】2024-04-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主基板(11)を備える主制御ユニット(10)を有するバッテリ管理システム(BMS)を有し、複数のセル・パック(31.1、...、31.n)を備えるバッテリ(1)を動作させるための方法であって、熱イベント(熱暴走)に関する検査が一定の測定周期で実行される方法において、
少なくとも一つのバッテリ・セルのセル電圧を判定するステップと、
前記少なくとも一つのバッテリ・セルの関連するセル・パック電圧を判定するステップと、
前記主制御ユニット(10)のマイクロプロセッサ上で、分析プログラムによって、前記セル電圧及び前記セル・パック電圧を評価するステップであって、規定されたイベント時間内に、
a)前記セル電圧が、規定されたセル・エラー値だけ低下し、
b)前記セル・パック電圧が、規定されたパック・エラー値だけ低下する場合、
過熱の警告メッセージが起動される、評価するステップと
が実行されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記セル・エラー値が、前記測定周期の前のセル電圧と比較して少なくとも60%であり、特に少なくとも70%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パック・エラー値が、少なくとも、前記セル・エラー値の±10%に相当し、理想的には±5%に相当することを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
セル・エラー値の後に、パック・エラー値が判定されるイベント時間が、3秒未満、主に2秒未満、特に1.5秒未満であることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記バッテリの充電モードにおける前記測定周期が、0.5ミリ秒~2秒、有利には1ミリ秒~1.5秒、理想的には1.5ミリ秒~1秒であることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
特に車両が前記バッテリによって駆動される、前記バッテリの動作モードにおける前記測定周期が、0.5ミリ秒~1秒、有利には0.5ミリ秒~500ミリ秒、理想的には0.5ミリ秒~100ミリ秒であることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
車両を駆動せず、充電プロセスを実行することもない、前記バッテリのアイドル・モードにおける前記測定周期が、10ミリ秒よりも長く、有利には2秒よりも長く、理想的には5秒よりも長いことを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記評価ユニットによって、少なくとも一つの更なる状態測定値が受け取られて評価され、その間隔及び/又は頻度が、前記少なくとも一つの更なる状態測定値に基づいて適合されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも一つの状態値又は状態値の組合せが、
前記バッテリの前記動作モードからの時間間隔と、
前記バッテリの前記充電モードからの時間間隔と、
特に前記それぞれの測定周期の間及びその前の前記バッテリの温度と、
前記それぞれの測定周期の前の、特に規定された導入期間における前記バッテリの温度グラフと、
特に局地的条件による温度の影響も予期される外側領域の温度と
のグループから得られることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
高電圧バッテリ(HVバッテリ)の形式のバッテリ(1)であって、少なくとも、
複数のセル・パック(31.1、...、31.n)及び関連するセルを有するセル・コンパートメント(30)と、
主基板(11)、主プロセッサ(4)及び複数の電子要素(5.1、5.2、5.3)を有する主制御ユニット(10)と
のバッテリ要素を備えるバッテリ(1)において、
パック電圧用の少なくとも一つのパック測定ユニットが設けられ、また
少なくとも一つのセル/セル電圧用の少なくとも一つのセル測定ユニット、及び分析プログラムによってデジタル及び/又はアナログの測定データを処理するマイクロプロセッサ(5)、前記マイクロプロセッサ(5)及び前記分析プログラムによって、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法が実行され得る
ことを特徴とするバッテリ(1)。
【請求項11】
特に、少なくとも一つのセル・パック(31.1、...、31.n)に、又はその上に、少なくとも一つの温度センサ(7)を備えるバッテリ(1)であって、前記温度センサ(7)が、前記主制御ユニット(10)に、データを搬送するやり方で接続されている、ことを特徴とする、請求項10に記載のバッテリ(1)。
【請求項12】
特に、少なくとも一つのセル・パック(31.1、...、31.n)に、又はその上に、少なくとも一つの圧力センサ(6)を備えるバッテリ(1)であって、前記圧力センサ(6.1、6.2)が、前記主制御ユニット(10)に、データを搬送するやり方で接続されている、ことを特徴とする、請求項
10に記載のバッテリ(1)。
【国際調査報告】