(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】CD155に対する抗体および抗原結合フラグメント、その使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240822BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240822BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240822BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240822BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240822BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20240822BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C07K16/28
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/13
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K39/395 Y
A61K48/00
A61K31/711
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510508
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 US2021046855
(87)【国際公開番号】W WO2023022729
(87)【国際公開日】2023-02-23
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524064069
【氏名又は名称】タスリフ ファーマシューティカル,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】TASRIF PHARMACEUTICAL, LLC
【住所又は居所原語表記】380 Main Street Box 38, Farmingdale, NY 11735 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】110003487
【氏名又は名称】弁理士法人東海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カリム,アフタブ,エス.
(72)【発明者】
【氏名】ホルゲイト,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ハーン,アーロン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB26
4C085AA14
4C085AA25
4C085BB11
4C085BB36
4C085CC23
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C086AA01
4C086AA02
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4C086MA01
4C086MA04
4C086MA55
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZB26
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA54
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
ポリオウイルス受容体(PVR)に特異的なヒト化抗体または抗原結合フラグメントは、核酸、ペプチド、タンパク質、薬物、および放射性医薬品を癌細胞に標的化する抗体薬物コンジュゲート(ADC)を調製するために使用される。これらの抗体は、PVR(CD155)への結合によりPVRがTIGITに結合するのを遮断するするチェックポイント遮断に使用され得る。ヒト化抗体は、単独でまたは本分野で知られている他のチェックポイント阻害剤と組み合わせてのいずれかで使用される。ヒト化抗体は、PVR-DNAM-1軸を調節してT細胞またはNK細胞上のDNAM1(CD226)発現を上方制御し、それによって免疫監視メカニズムを回復する。抗体はCAR-T細胞またはCAR NK細胞に組み込まれる。二重特異性抗体は、抗CD155抗体または抗原結合フラグメントを組み込んで、T細胞またはNK細胞と結合してCD155を発現する癌と闘うことによって産生される。抗CD155抗体はネクチン4に結合するため、ネクチン4を発現する癌の標的化が可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の重鎖可変領域および軽鎖可変領域から構成されるポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメントをコードする核酸配列:
(a)配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号18、配列番号20、配列番号24、配列番号25または配列番号26のうちの1つから選択される重鎖可変領域、および
(b)配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号22または配列番号23のうちの1つから選択される軽鎖可変領域。
【請求項2】
以下を含むポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメント:
(a)配列番号18、配列番号20、配列番号24、配列番号25または配列番号26のうちの1つから選択される重鎖可変領域、および
(b)配列番号19、配列番号21、配列番号22または配列番号23のうちの1つから選択される軽鎖可変領域。
【請求項3】
CD155(PVR)を発現する腫瘍の治療のためにヒトに投与されるプロドラッグまたは薬物にコンジュゲートした、請求項2に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項4】
前記薬物またはプロドラッグが以下のいずれか1つに由来する、請求項3に記載の抗体または抗原結合フラグメント:核酸、ベドンチン(vedontin)、ピロロベンゾジアゼピン、リポソーム化ドキソルビシン、トポイソメラーゼ阻害剤、MMAE、MMAF、DM1、パクリタキセル、テモゾロミド、ドキソルビシン、デルクステカン、放射線増感剤、テシリン、ドカクステル(docaxtel)およびPARP阻害剤。
【請求項5】
前記抗体または抗原結合フラグメントは、CD155(PVR)に結合し、CD155(PVR)のTIGITへの結合を遮断する、請求項2に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項6】
前記抗体または抗原結合フラグメントは、CD155(PVR)に結合し、CD155(PVR)のCD96への結合を遮断する、請求項2に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項7】
CD155(PVR)に結合する第1の部分と、以下のうちの少なくとも1つと結合する第2の部分と、を含む二重特異性抗体または抗原結合フラグメントを含む、請求項2に記載の抗体または抗原結合フラグメント:(a)T細胞上のCD3、および(b)NK細胞上のNKp46。
【請求項8】
CD155(PVR)に結合する第1の部分と、以下のうちの少なくとも1つと結合する第2の部分とを含む二重特異性抗体または抗原結合フラグメントを含む、請求項2に記載の抗体または抗原結合フラグメント:(a)トランスフェリン受容体1および(b)トランスフェリン受容体2。
【請求項9】
前記ポリオウイルス受容体に結合する第1の部分と、1型インスリン様増殖因子受容体に結合する第2の部分とを含む二重特異性抗体または抗原結合フラグメントを含む、請求項2に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項10】
前記ポリオウイルス受容体に結合する第1の部分と、単一ドメイン抗体FC5を含む第2の部分とを含む二重特異性抗体または抗原結合フラグメントを含む、請求項2に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項11】
前記抗体または抗原結合フラグメントは、非ヒト霊長類のCD155(PVR)に結合する、請求項2に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項12】
前記抗体または抗原結合フラグメントは、腫瘍上に発現されるCD155に結合し、ADCCまたはCDCを介して前記腫瘍に対する免疫応答を誘発する、IgG1アイソタイプを有する、請求項2に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項13】
前記抗体または抗原結合フラグメントは、CD155(PVR)に結合し、その後、以下のうちの少なくとも1つにおいてDNAM1(CD226)が上昇する、請求項2に記載の抗体または抗原結合フラグメント:(a)T細胞および(b)NK細胞。
【請求項14】
CD155に対する前記抗体または抗原結合フラグメントは、ヒトに投与され、前記抗体または抗原結合フラグメントは、前記ヒトにおいてCD155に結合し、ポリオウイルスがCD155(PVR)に結合するのを遮断する、請求項2に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項15】
CD155に対する前記抗体または抗原結合フラグメントは、CTLA4、PD1、PDL1、CD112R、OX40、TIGIT、NKG2A、CEACAM1、B7H3、B7-H4、VISTA、LAG3、CD137、KIR、TIM1、TIM3、LAIR1、HVEM、BTLA、CD160、CD200、CD200R、およびA2rからなる群から選択される免疫チェックポイント分子に対する抗体と組み合わせて、癌の治療のためにヒトに投与される、請求項2に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項16】
前記抗体または抗原結合フラグメントは、S241Pヒンジ変異を有するIgG4アイソタイプを含む、請求項2に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項17】
CD155に対する前記抗体または抗原結合フラグメントは、以下(a)I-124、(b)ガリウム68、または(c)ルテチウム177、(d)CTスキャン用の造影剤、(e)MRIスキャン用の造影剤、および(f)PETスキャン用の診断剤のいずれかの標識を含む、請求項2に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項18】
CD155に対する前記抗体または抗原結合フラグメントは、サイトカインまたは遺伝子編集酵素の以下のmRNA(a)IL2をコードするmRNA、(b)IL7をコードするmRNA、および(c)IL12をコードするmRNA、(d)IL15をコードするmRNA、(e)IL21をコードするmRNA、(f)IFNガンマをコードするmRNA、(g)IFNアルファをコードするmRNA、(h)GMCSFをコードするmRNA、(i)Cas9をコードするmRNA、(j)Casl2aをコードするmRNA、および(k)Cas13をコードするmRNA、のうちの1つをコードするmRNAにコンジュゲートされる、請求項2に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項19】
静脈内、動脈内、腫瘍内、くも膜下腔内、筋肉内、皮下、膀胱内、腹腔内、および対流促進送達を介する、からなる群からの少なくとも1つによって投与される、請求項2に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項20】
以下の重鎖可変領域および軽鎖可変領域から構成されるポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメントを産生する細胞株:
(a)配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号18、配列番号20、配列番号24、配列番号25または配列番号26のうちの1つから選択される重鎖可変領域、および
(b)配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号22または配列番号23のうちの1つから選択される軽鎖可変領域。
【請求項21】
以下の重鎖可変領域、配列番号2CDR1、配列番号27のCDR2、および配列番号4のCDR3、ならびに以下の軽鎖可変領域、配列番号6のCDR1、配列番号7のCDR2、および配列番号28のCDR3から構成されるヒト化抗体および抗原結合フラグメント。
【請求項22】
以下の重鎖可変領域、配列番号2のCDR1、配列番号29のCDR2、および配列番号4のCDR3、ならびに以下の軽鎖可変領域、配列番号6のCDR1、配列番号7のCDR2、および配列番号30のCDR3から構成されるヒト化抗体および抗原結合フラグメント。
【請求項23】
以下の重鎖可変領域、配列番号2のCDR1、配列番号27のCDR2、および配列番号4のCDR3、ならびに以下の軽鎖可変領域、配列番号6のCDR1、配列番号7のCDR2、および配列番号28のCDR3から構成されるヒト化抗体および抗原結合フラグメント。
【請求項24】
以下の重鎖可変領域、配列番号2のCDR1、配列番号29のCDR2、および配列番号4のCDR3、ならびに以下の軽鎖可変領域、配列番号6のCDR1、配列番号7のCDR2、および配列番号30のCDR3から構成されるヒト化抗体および抗原結合フラグメント。
【請求項25】
以下の重鎖可変領域、配列番号2のCDR1、配列番号27のCDR2、および配列番号4のCDR3、ならびに以下の軽鎖可変領域、配列番号6のCDR1、配列番号7のCDR2、および配列番号28のCDR3から構成されるヒト化抗体および抗原結合フラグメント。
【請求項26】
以下の重鎖可変領域、配列番号2のCDR1、配列番号31のCDR2、および配列番号4のCDR3、ならびに以下の軽鎖可変領域、配列番号6のCDR1、配列番号7のCDR2、および配列番号28のCDR3から構成されるヒト化抗体および抗原結合フラグメント。
【請求項27】
以下の重鎖可変領域、配列番号2CDR1、配列番号29のCDR2、および配列番号4のCDR3、ならびに以下の軽鎖可変領域、配列番号6のCDR1、配列番号7のCDR2、および配列番号28のCDR3から構成されるヒト化抗体および抗原結合フラグメント。
【請求項28】
以下の重鎖可変領域、配列番号2のCDR1、配列番号27のCDR2、および配列番号4のCDR3、ならびに以下の軽鎖可変領域、配列番号6のCDR1、配列番号7のCDR2、および配列番号30のCDR3から構成されるヒト化抗体および抗原結合フラグメント。
【請求項29】
以下の重鎖可変領域、配列番号2のCDR1、配列番号29のCDR2、および配列番号4のCDR3、ならびに以下の軽鎖可変領域、配列番号6のCDR1、配列番号7のCDR2、および配列番号30のCDR3から構成されるヒト化抗体および抗原結合フラグメント。
【請求項30】
以下を含むポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメント:
(a)配列番号1、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、または配列番号13のうちの1つから選択される重鎖可変領域、ここで、前記重鎖可変領域は、以下を含み:
(i)配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン;
(ii)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、ここで;
(1)CDR2の6位のアスパラギンは、アラニン、グルタミン酸、リジン、グルタミン、セリン、もしくはスレオニンのうちの1つで置換される;および/または
(2)CDR2の8位のアスパラギン酸は、グルタミン酸、グリシン、もしくはアルギニンのうちの1つで置換される;および/または
(3)CDR2の9位のスレオニンは、グルタミン酸またはリジンのうちの1つで置換される;
(iii)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR3ドメイン、
(b)配列番号5、配列番号14、配列番号15、配列番号16、または配列番号17のうちの1つから選択される軽鎖可変領域、ここで、前記軽鎖可変領域は、以下を含み:
(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン;
(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン;
(iii)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR3ドメイン;ここで、CDR3の4位のアスパラギンは、アラニン、グルタミン酸、グリシン、リジン、グルタミン、またはセリンのうちの1つで置換される。
【請求項31】
ポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体の重鎖可変領域であって、前記重鎖可変領域は、配列番号1、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、または配列番号13のうちの1つから選択され、ここで、前記重鎖可変領域は、以下を含む:
(i)配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン;
(ii)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、ここで;
(1)CDR2の6位のアスパラギンは、アラニン、グルタミン酸、リジン、グルタミン、セリン、もしくはスレオニンのうちの1つで置換される;および/または
(2)CDR2の8位のアスパラギン酸は、グルタミン酸、グリシン、もしくはアルギニンのうちの1つで置換される;および/または
(3)CDR2の9位のスレオニンは、グルタミン酸またはリジンのうちの1つで置換される;
(iii)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR3ドメイン。
【請求項32】
ポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体の軽鎖可変領域であって、前記軽鎖可変領域は、配列番号5、配列番号14、配列番号15、配列番号16、または配列番号17のうちの1つから選択され、ここで、前記軽鎖可変領域は、以下を含む:
(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン;
(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン;
(iii)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR3ドメイン;ここで、CDR3の4位のアスパラギンは、アラニン、グルタミン酸、グリシン、リジン、グルタミン、またはセリンのうちの1つで置換される。
【請求項33】
以下を含むポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメント:
(a)以下を含む重鎖可変領域:
(i)配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン;
(ii)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、ここで;
(1)CDR2の6位のアスパラギンは、アラニン、グルタミン酸、リジン、グルタミン、セリン、もしくはスレオニンのうちの1つで置換される;および/または
(2)CDR2の8位のアスパラギン酸は、グルタミン酸、グリシン、もしくはアルギニンのうちの1つで置換される;および/または
(3)CDR2の9位のスレオニンは、グルタミン酸またはリジンのうちの1つで置換される;
(iii)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR3ドメイン。
(b)以下を含む軽鎖可変領域:
(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン;
(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン;
(iii)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR3ドメイン;ここで、CDR3の4位のアスパラギンは、アラニン、グルタミン酸、グリシン、リジン、グルタミン、またはセリンのうちの1つで置換される。
【請求項34】
以下を含むポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体の重鎖可変領域:
(i)配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン;
(ii)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、ここで;
(1)CDR2の6位のアスパラギンは、アラニン、グルタミン酸、リジン、グルタミン、セリン、もしくはスレオニンのうちの1つで置換される;および/または
(2)CDR2の8位のアスパラギン酸は、グルタミン酸、グリシン、もしくはアルギニンのうちの1つで置換される;および/または
(3)CDR2の9位のスレオニンは、グルタミン酸またはリジンのうちの1つで置換される;
(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3ドメイン。
【請求項35】
以下を含むポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体の軽鎖可変領域:
(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン;
(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン;
(iii)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR3ドメイン;ここで、CDR3の4位のアスパラギンは、アラニン、グルタミン酸、グリシン、リジン、グルタミン、またはセリンのうちの1つで置換される。
【請求項36】
前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域がそれぞれ、以下のうちの1つである、請求項1に記載のポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメント:
(i)配列番号18および配列番号19;
(ii)配列番号20および配列番号21;
(iii)配列番号18および配列番号22;
(iv)配列番号20および配列番号23;
(v)配列番号24および配列番号22;
(vi)配列番号26および配列番号22:
(vii)配列番号25および配列番号22;
(viii)配列番号24および配列番号23;または
(ix)配列番号25および配列番号23。
【請求項37】
前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域がそれぞれ、以下のうちの1つである、請求項7に記載のポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメント:
(i)配列番号20および配列番号21;
(ii)配列番号20および配列番号23;または
(iii)配列番号25および配列番号23。
【請求項38】
以下の配列番号のうちの1つを含む、IgGアイソタイプのポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体の重鎖可変領域:
i)配列番号9;
ii)配列番号10;
iii)配列番号11;
iv)配列番号12;または
v)配列番号13。
【請求項39】
以下の配列番号のうちの1つを含む、IgGアイソタイプのポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体の軽鎖可変領域:
i)配列番号14;
ii)配列番号15;
iii)配列番号16;または
iv)配列番号17。
【請求項40】
以下を含むIgGアイソタイプのポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメント:
(a)以下のうちの1つからの重鎖可変領域:
i)配列番号9;
ii)配列番号10;
iii)配列番号11;
iv)配列番号12;または
v)配列番号13;および
(b)以下のうちの1つからの軽鎖可変領域:
i)配列番号14;
ii)配列番号15;
iii)配列番号16;または
iv)配列番号17。
【請求項41】
配列番号1の以下の修飾のうちの1つを含む、IgGアイソタイプのポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体の重鎖可変領域:
i)54位のアスパラギンをアラニンで置換すること;
ii)54位のアスパラギンをグルタミンで置換すること;
iii)54位のアスパラギンをセリンで置換すること;
iv)56位のアスパラギンをグルタミン酸で置換すること;
v)56位のアスパラギンをグリシンで置換すること;または
vi)57位のスレオニンをグルタミン酸で置換すること。
【請求項42】
配列番号5の以下の修飾のうちの1つを含む、IgGアイソタイプのポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体の軽鎖可変領域:
i)92位のアスパラギンをアラニンで置換すること;
ii)92位のアスパラギンをグルタミン酸で置換すること;または
iii)92位のアスパラギンをグルタミンで置換すること。
【請求項43】
92位のアスパラギンを(i)アラニン;(ii)グルタミン酸;またはグルタミンのいずれかで置換することによって形成される配列番号5の修飾のうちの1つを含む、IgGアイソタイプのポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体の軽鎖可変領域。
【請求項44】
以下のうちの1つを含む、IgGアイソタイプのポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体の重鎖可変領域:
(i)配列番号20;または
(ii)配列番号25。
【請求項45】
以下のうちの1つを含む、IgGアイソタイプのポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体の軽鎖可変領域:
(i)配列番号21;または
(ii)配列番号23。
【請求項46】
以下を含むIgGアイソタイプのポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメント:
(a)配列番号18を含む重鎖可変領域;
(b)配列番号19を含む軽鎖可変領域。
【請求項47】
以下を含むIgGアイソタイプのポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメント:
(a)配列番号20を含む重鎖可変領域;
(b)配列番号21を含む軽鎖可変領域。
【請求項48】
以下を含むIgGアイソタイプのポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメント:
(a)配列番号18を含む重鎖可変領域;
(b)配列番号22を含む軽鎖可変領域。
【請求項49】
以下を含むIgGアイソタイプのポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメント:
(a)配列番号20を含む重鎖可変領域;
(b)配列番号23を含む軽鎖可変領域。
【請求項50】
以下を含むIgGアイソタイプのポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメント:
(a)配列番号24を含む重鎖可変領域;
(b)配列番号22を含む軽鎖可変領域。
【請求項51】
以下を含むIgGアイソタイプのポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメント:
(a)配列番号24を含む重鎖可変領域;
(b)配列番号22を含む軽鎖可変領域。
【請求項52】
以下を含むIgGアイソタイプのポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメント:
(a)配列番号25を含む重鎖可変領域;
(b)配列番号22を含む軽鎖可変領域。
【請求項53】
以下を含むIgGアイソタイプのポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメント:
(a)配列番号24を含む重鎖可変領域;
(b)配列番号23を含む軽鎖可変領域。
【請求項54】
以下を含むIgGアイソタイプのポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメント:
(a)配列番号25を含む重鎖可変領域;
(b)配列番号23を含む軽鎖可変領域。
【請求項55】
以下を含むポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメント:
(a)配列番号1の重鎖可変領域、ここで、少なくとも7個のアミノ酸残基は、5、9、12、20、24、38、40、41、44、67、68、70、76、84、87、91、111、112、および116位;からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸残基の位置で改変される、
(b)配列番号5の軽鎖可変領域、ここで、少なくとも7個のアミノ酸残基は、3、9、10、13、20、21、43、63、77、78、80、87、および100位からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸残基の位置で改変される。
【請求項56】
前記重鎖可変領域において改変された前記少なくとも7個のアミノ酸残基は、12、40、44、67、76、112、および116位にある、請求項55に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項57】
前記軽鎖可変領域において改変された前記少なくとも7個のアミノ酸残基は、9、20、21、43、77、78、および100位にある、請求項55に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項58】
前記重鎖可変領域のCDR2は、55、57、または58位で改変された少なくとも1つのアミノ酸残基を有する、請求項55に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項59】
前記軽鎖可変領域のCDR2は、92位で改変された少なくとも1つのアミノ酸残基を有する、請求項58に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項60】
以下を含むポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメント:
(a)配列番号1の重鎖可変領域、ここで、6~20個のアミノ酸残基がCDRドメインの外側で改変され、
(b)配列番号5の軽鎖可変領域、ここで、6~14個のアミノ酸残基が前記CDRドメインの外側で改変される。
【請求項61】
(a)前記重鎖可変領域において改変された前記アミノ酸残基は、5、9、12、20、24、38、40、41、44、67、68、70、83、84、87、91、111、112、および116位からなる群から選択される位置であり、
(b)前記軽鎖可変領域において改変された前記アミノ酸残基は、3、9、10、13、20、21、43、63、77、78、80、87、および100位からなる群から選択される位置である、請求項60に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項62】
3位の前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸残基は、バリンまたはグルタミンのいずれかである、請求項61に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項63】
63位の前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸残基は、スレオニンまたはセリンのいずれかである、請求項61に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項64】
3位の前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸残基は、バリンまたはグルタミンのいずれかであり、63位の前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸残基はスレオニンまたはセリンのいずれかである、請求項60に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項65】
以下を含むポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメント:
(a)配列番号1の重鎖可変領域、ここで、アミノ酸残基が以下の位置で改変され:
(i)12位のVがリジンまたはアルギニンに変更される、
(ii)40位のSがプロリンまたはアラニンに変更される、
(b)配列番号5の軽鎖可変領域、ここで、アミノ酸残基が以下の位置で改変され:
(i)9位のKがセリンに変更される、
(ii)43位のSがアラニンに変更される。
【請求項66】
請求項1~36のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸ポリヌクレオチド酸またはプラスミド。
【請求項67】
少なくとも1つのマーカー化合物にコンジュゲートされた、請求項1~66のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項68】
前記少なくとも1つのマーカー化合物は、I-124、フルオロフォア、またはIR800色素である、請求項67に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項69】
少なくとも1つの薬物にコンジュゲートされた、請求項1~66のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項70】
前記少なくとも1つの薬物は、パクリタキセル、ドキソルビシン、またはテモゾロミドである、請求項69に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項71】
少なくとも1つの治療用核酸にコンジュゲートされた、請求項1~66のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項72】
前記少なくとも1つの治療用核酸は、サイレンシングRNA(siRNA)、長RNA、shRNA、リボザイム、メッセンジャーRNA、プラスミドDNA、または非プラスミド二本鎖DNAである、請求項71に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項73】
前記抗体または抗原結合フラグメントは、IgGアイソタイプのものである、請求項1~66のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項74】
前記抗体または抗原結合フラグメントは、IgG4アイソタイプのものであり、IL-12にコンジュゲートされる、請求項73に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項75】
請求項1~66のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合フラグメントを含むキメラ抗原受容体T細胞。
【請求項76】
請求項1~36のいずれか1項に記載の抗体、抗原結合フラグメント、または抗体もしくは抗原結合フラグメントをコードするDNAを患者に注射するステップを含む、癌を治療する方法であって、前記注射は、静脈内注射、筋肉内注射、動脈内注射、髄腔内注射、脳室内注射、腫瘍内注射、皮下注射、またはリンパ管内注射のうちの少なくとも1つである、方法。
【請求項77】
前記注射は、脳脊髄液への注射である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記注射は、カテーテルを介した脳腫瘍への注射である、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記抗体または抗原結合フラグメントの注射が薬物にコンジュゲートされ、腫瘍に注射される、請求項76に記載の方法。
【請求項80】
a)請求項1~66のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合フラグメント;およびb)成分であって、前記成分は、生物標識、放射性標識、蛍光プローブ、抗腫瘍薬、サイトカイン、アジュバント、毒素、放射性医薬品または核酸である成分を含む、コンジュゲート。
【請求項81】
以下を含むポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメント:
(a)配列番号1、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、または配列番号13のうちの1つから選択される重鎖可変領域、ここで、前記重鎖可変領域は、以下を含み:
(i)配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン;
(ii)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、ここで;
(1)CDR2の6位のアスパラギンが、アラニン、グルタミン酸、リジン、グルタミン、セリン、もしくはスレオニンのうちの1つで置換される;および/または
(2)CDR2の8位のアスパラギン酸が、グルタミン酸、グリシン、もしくはアルギニンのうちの1つで置換される;および/または
(3)CDR2の9位のスレオニンが、グルタミン酸またはリジンのうちの1つで置換される;
(iii)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR3ドメイン。
(b)配列番号5、配列番号14、配列番号15のうちの1つから選択される軽鎖可変領域、ここで、前記軽鎖可変領域は、以下を含み:
(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン;
(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン;
(iii)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR3ドメイン;ここで、CDR3の4位のアスパラギンは、アラニン、グルタミン酸、グリシン、リジン、グルタミン、またはセリンのうちの1つで置換される、
(iv)3位の前記軽鎖可変領域のアミノ酸残基は、バリンまたはグルタミンのいずれかであり、63位の前記軽鎖可変領域のアミノ酸残基はスレオニンまたはセリンのいずれかである。
【請求項82】
以下からの重鎖可変領域および軽鎖可変領域を有する抗原結合フラグメントを含むキメラ抗原受容体T細胞またはキメラ抗原受容体NK細胞:(a)配列番号18、配列番号20、配列番号24、配列番号25または配列番号26の1つから選択される重鎖可変領域、および(b)配列番号19、配列番号21、配列番号22または配列番号23のうちの1つから選択される軽鎖可変領域。
【請求項83】
配列番号1、配列番号18、配列番号20、配列番号24、配列番号25または配列番号26のうちの1つから選択される重鎖可変領域および配列番号5、配列番号19、配列番号21、配列番号22または配列番号23のうちの1つから選択される軽鎖可変領域を含む、ネクチン4およびCD155(PVR)の両方に結合する抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項84】
前記抗体または抗原結合フラグメントは、ネクチン4のTIGITへの結合を遮断する、請求項83に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項85】
ネクチン4に結合する第1の部分とT細胞上のCD3に結合する第2の部分とを含む二重特異性抗体または抗原結合フラグメントを含む、請求項83に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項86】
ネクチン4に結合する第1の部分とNK細胞上の受容体に結合する第2の部分とを含む二重特異性抗体または抗原結合フラグメントを含む、請求項83に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項87】
フルオロフォアにコンジュゲートされ、哺乳類に投与され、抗体コンジュゲートは、以下の少なくとも1つを発現する腫瘍に結合して蓄積する、請求項83に記載の抗体または抗原結合フラグメント:CD155(PVR)またはネクチン4。
【請求項88】
前記抗体または抗原結合フラグメントは、PVRに結合し、T細胞またはNK細胞上のDNAM1(CD226)の上昇を引き起こす、請求項83に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項89】
D171抗体コンジュゲートが腫瘍によって内在化される、前記D171抗体コンジュゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照
本出願には、2021年8月19日に作成され、27KBを含むCD155 Sequence Listing_ST25という名前のファイルに電子配列表が含まれており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は概して、モノクローナル抗体を利用した疾患の治療に関する。本開示は、特に、本明細書に開示される抗CD155抗体または抗原結合フラグメント(抗体フラグメント)を用いて、CD155(PVR)またはネクチン4(または両方)のいずれかを発現する細胞を標的化することに関する。本出願で開示されるCD155に対する抗体は、ポリオウイルス受容体に結合し、さらにネクチン4にも結合する。CD155およびネクチン4は、多くの原発腫瘍および転移腫瘍で過剰発現される受容体である。CD155およびネクチン4は、チェックポイント分子、T細胞免疫グロブリンおよびITIMドメイン(TIGIT)のリガンドとしても特定されている。
【背景技術】
【0003】
CD155/PVRおよび受容体のファミリーは、ヒトおよびその他の動物のさまざまな組織に存在する。マウスでは、CD155のマウスオルソログは、Tage4として知られている。CD155およびネクチン4は、新規チェックポイントとして記載されている。CD155/PVR受容体は正常な発達において役割を果たして得るが、この受容体は、多形神経膠芽腫(GBM)、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)を含む乳癌、白血病(AMLを含む)、肉腫、卵巣癌、結腸癌、膵臓癌、肺癌、および悪性末梢神経鞘腫瘍などの稀ではあるが致死性の高い癌などの悪性腫瘍を含む特定の病理学的状態で過剰発現される。CD155/PVRは、細胞接着、運動性、アポトーシス、増殖、および転移において役割を果たす。修飾ポリオウイルスは、腫瘍への直接局所投与により、CD155/PVRを過剰発現する癌を治療するためのベクターとして利用されている。
【0004】
世界中の人口の大多数がポリオウイルスに対するワクチン接種を受けており、ポリオウイルスベースの治療薬は全身投与すると免疫系によって無力化される可能性が高いため、癌に対する修飾ポリオウイルス治療薬の全身投与は実現不可能である。
【0005】
CNS癌および全身癌を治療できる、CD155に対する抗体ベースの治療薬があれば有利である。このようなCD155抗体は、血液脳関門を通過することによって、またはそれ自体の治療薬として、もしくは別の治療薬の送達剤としてのいずれかの他の経路のいずれかを通じて中枢神経系に侵入することもできる。本開示では、マウスCD155/PVRを標的とするモノクローナル抗体が、全身投与により中枢神経系に進入し得、インビボで脳にGL261腫瘍を有するマウスにおいて血液脳関門を通過できることが示される。実施形態では、ヒトおよびマウスのCD155/PVRを標的とするモノクローナル抗体は、内部移行可能であり、mRNAなどのペイロードを送達および発現するために利用されることも示されている。ヒトの血液脳関門を通過する抗体およびペプチドが知られている。例えば、トランスフェリン受容体に対する抗体または抗原結合フラグメントは、動物モデルおよびさらに最近ではヒトにおいて血液脳関門を通過することが示されている。FC5およびFC44などの単一ドメイン抗体またはポリペプチドの配列も本分野で公知であり、FC5およびFC44は血液脳関門を通過する。血液脳関門通過分子を組み込んだ治療薬が臨床試験に入っているか、臨床試験に入ることになる。インスリン受容体およびインスリン成長因子1受容体に対する抗体またはリガンドは、血液脳関門を通過し、本発明に記載の抗CD155抗体に融合できるペプチドおよびタンパク質のさらに他の例である。実施形態では、抗CD155抗体は、抗CD155抗体が血液脳関門を通過できるようにするために、化学的に、または組換え分子生物学のいずれかを通じてタンパク質またはペプチドと融合される。D171、Ab825、およびその任意のヒト化バージョンを含む抗CD155抗体は、FC5、FC44、抗1型インスリン様増殖因子受容体(IGF1R)、ならびに(トランスフェリン受容体1またはトランスフェリン受容体2に対する)抗トランスフェリン受容体抗体、および抗原結合フラグメントなどのペプチドまたはタンパク質(または抗体)に融合もしくは化学的にライゲーションするか、または組換え技術で生成することができる。このような構築物は、抗CD155抗体の血液脳関門の通過を促進する。
【発明の概要】
【0006】
CD155およびネクチン4は、新規チェックポイントとして記載されており、これらの新規チェックポイントの役割は免疫腫瘍学において非常に重要である。CD155がT細胞免疫グロブリンおよびITIMドメイン(TIGIT)に結合すると、T細胞およびNK細胞が阻害される。最近、ネクチン4がTIGITに結合することも示されており、それによって、ネクチン4を発現する腫瘍は免疫細胞、特にT細胞を阻害すると考えられている。さらに、可溶性CD155レベルは概して、CD155を過剰発現する腫瘍患者の方が高くなる。膜性CD155および可溶性CD155(sCD155)のレベルの上昇は、DNAM1(CD226)を下方制御することによって少なくとも部分的に免疫抑制効果を有し得る。CD155に対する本発明に記載の抗体は、CD155(膜性または可溶性CD155)に結合することができ、DNAM1(CD226)の上方制御をもたらす。また、CD155およびネクチン4の両方に結合する抗体を使用して、CD155またはネクチン4のいずれかを過剰発現する癌(またはCD155とネクチン4の両方を発現する癌)を標的にし得る。抗CD155抗体は、チェックポイント経路を遮断するために使用することもできるし、またはそれらは、CD155(またはネクチン4)に結合し、さらにT細胞またはNK細胞にも結合する二重特異性抗体を産生するために使用することもでき、これにより、T細胞またはNK細胞が関与して腫瘍細胞を死滅させることができる。現在までに、CD155を標的とするADCは臨床試験中ではなく、FDAによって承認されたものはない。しかし、ネクチン4を標的とするエンフォルツマブベドンチン(Enfortumab Vedontin)は、膀胱癌の治療用としてFDAに承認されたADCである。抗体薬物コンジュゲートは、CD155(またはネクチン4)を過剰発現する癌患者を治療するために、本明細書に記載のヒト化抗体を使用して調製され得る。この開示の一部として、CD155に対する抗体がペイロードを送達することが示されている。この場合、CD155を過剰発現する癌細胞にmRNAが送達され、発現された。さらに、CD155またはネクチン4に結合する抗原結合フラグメントは、ネクチン4またはCD155のいずれかを発現する腫瘍の治療のために免疫細胞(すなわち、CAR T細胞およびCAR NK細胞)のキメラ抗原受容体に組み込むことができる。CD155に対する抗体または抗原結合フラグメントは、チロシンキナーゼ阻害剤およびPARP阻害剤などの他の小分子治療薬と組み合わせて使用したり、ならびに既知のチェックポイント標的に対する抗体と組み合わせて使用したりすることもできる。本開示の抗体は、CTLA4、PD1、PDL1、CD112R、OX40、TIGIT、NKG2A、CEACAM1、B7H3、B7-H4、VISTA、LAG3、CD137、KIR、TIM1、TIM3、LAIR1、HVEM、BTLA、CD160、CD200、CD200RおよびA2r、ならびに本分野でよく知られている他のチェックポイントを標的とする1つ以上のチェックポイント阻害剤と組み合わせて使用され得る。
【0007】
実施形態では、本明細書で説明されるCD155およびネクチン4に対する抗体および抗原結合フラグメントは、セラノスティクスとして開発され得、CD155に対する抗体または抗原結合フラグメントは、癌の診断または治療のいずれかために、以下の(a)I-124、(b)ガリウム68または(c)ルテチウム177のうちの1つの放射性標識を含む。
【0008】
本開示は、CD155およびネクチン4に対するモノクローナル抗体を用いた様々な疾患の治療に関する。本開示の実施形態は、治療薬;CD155に結合できる非ウイルスリガンドを含む組成物を患者に投与することを含む哺乳類における全身性障害または神経障害を治療する方法であり、リガンドは、神経障害または全身性障害を治療するために治療薬にコンジュゲートされる。実施形態では、神経障害は原発性または転移性脳腫瘍である。実施形態では、神経障害または全身性障害は、以下の原発性または転移性癌(i)多形神経膠芽腫;(ii)神経芽腫;(iii)希突起膠腫、(iv)神経膠腫、(v)星状細胞腫、(vi)未分化星状細胞腫、ならびに(vii)髄膜腫、ならびに(viii)乳癌、肺癌、腎臓癌、膵臓癌および転移性黒色腫の原発性または転移性癌からなる群からの少なくとも1つである。実施形態では、障害は、(i)乳癌(TNBCを含む);(ii)肺腺癌;(iii)黒色腫;(iv)卵巣癌;(v)AML;(vi)肉腫;(vii)白血病;(viii)膀胱癌;(ix)膵臓癌;(x)子宮頸癌;(xi)結腸直腸癌;(xii)類表皮癌;(xiii)肝細胞癌;(xiv)悪性神経膠腫;(xv)悪性末梢神経鞘腫瘍および黒色腫からなる群からの少なくとも1つであり、実施形態では、腫瘍はCD155を過剰発現する。実施形態では、腫瘍はネクチン4を過剰発現する。実施形態では、腫瘍はCD155とネクチン4の両方を発現する。
【0009】
実施形態では、リガンドは、以下からなる群からの少なくとも1つである:(i)CD155またはネクチン4に対する抗体;(ii)CD155またはネクチン4に対する抗原結合フラグメント。実施形態では、リガンドは血液脳関門を通過するものである。実施形態では、融合タンパク質は、CD155に結合する第1のセグメントと、治療薬である第2のセグメントとを含む。実施形態では、抗体または抗原結合フラグメントは治療薬にコンジュゲートされており、治療薬は、(ii)プロドラッグ;(iii)siRNA;(iv)アンチセンスDNAまたはRNA;(v)メッセンジャーRNA;および(vi)CRISPR用のガイドRNA;(vii)プラスミド;(vii)一本鎖または二本鎖のオリゴヌクレオチド(RNAまたはDNA);(viii)ペプチド;(ix)タンパク質;(x)遺伝子および(xi)毒素からなる群からの少なくとも1つである。実施形態では、リガンドは、ネクチン、ネクチン2(CD112)、ネクチン4、Neel、PVRL1、Necl-1、Necl-4、ポリオウイルス受容体関連1タンパク質、またはポリオウイルス受容体関連2タンパク質に結合できる。実施形態では、抗体または抗原結合フラグメント薬物コンジュゲートは、治療薬を封入するリポソームまたは脂質ナノ粒子(LNP)をさらに含む。実施形態では、リポソームは、リガンドに架橋されたペグ化リポソームである。実施形態では、リガンドは、D171抗体、またはD171重鎖可変領域の配列もしくはD171軽鎖可変領域の配列に対して75%超の相同性を有する重鎖可変領域配列もしくは軽鎖可変領域配列を有する抗体である。
【0010】
実施形態では、抗CD155抗体は、CD155の細胞内、膜貫通、または細胞外エピトープに特異的に結合する。実施形態では、D171はCD155のアミノ酸35~50に特異的に結合する。実施形態では、CD155に対する抗体または抗原結合フラグメントは腫瘍に結合し、癌性増殖または腫瘍に対する免疫応答を誘発する。実施形態では、完全抗体、抗原結合フラグメント、Fab、Fab2、Fc、ならびにscFv、軽鎖および/または重鎖の可変領域からなる群から選択される少なくとも1つの抗体は、T細胞またはNK細胞または他の免疫細胞と結合するため、あるいは抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)または補体依存性細胞傷害(CDC)を刺激するために、CD155に結合する第1の成分を含み、第2の成分がエフェクター細胞に結合する。実施形態では、少なくとも1つは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、およびキメラ抗体から選択される。実施形態では、エフェクター細胞は、ナチュラルキラー細胞および細胞傷害性T細胞を含むリンパ球からなる群からの少なくとも1つである。実施形態では、抗体は、静脈内、動脈内、腫瘍内、くも膜下腔内、筋肉内、皮下、膀胱内(つまり、膀胱)、腹腔内、および対流促進送達を介する、からなる群からの少なくとも1つの方法によって投与される。
【0011】
実施形態では、完全抗体、抗原結合フラグメント、Fab、Fab2、Fc、およびscFv、またはCD155に結合する第1の成分を含む他の抗原結合フラグメントならびに抗体依存性細胞媒介性細胞毒性または補体依存性細胞毒性(CDC)を刺激するためのエフェクター細胞に結合する第2の成分からなる群から選択される少なくとも1つの抗体。本開示の実施形態は、全身投与または局所投与のいずれかによって中枢神経系に治療薬を送達する方法である。一実施形態では、抗CD155抗体または抗原結合フラグメントは、哺乳類の血液脳関門を通過することができ、CD155を標的とする非ウイルスリガンドを哺乳類の血流に投与することを含み、非ウイルスリガンドは治療薬とコンジュゲートされる。実施形態では、哺乳類は脳腫瘍を有する。実施形態では、哺乳類は、腫瘍ではない脳の有害な症状に苦しむ。一実施形態では、抗CD155抗体または抗原結合フラグメントは、それ自体が治療薬であるか、またはそれは、腎臓癌、膵臓癌、卵巣癌、肺癌、結腸癌、および悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)などの肉腫などの全身性疾患の治療のための治療薬を送達する。
【0012】
実施形態では、核酸ベースの薬物は、抗CD155抗体または抗原結合フラグメントにコンジュゲートされる。実施形態では、核酸ベースの薬物は、CD155にも結合する抗ネクチン4抗体にコンジュゲートされる。本開示の実施形態は、ヒト化D171抗体またはヒト化Ab825を含む組成物である。本開示の実施形態は、C末端から10アミノ酸を超えるセレノシステイン残基を含むヒト化Ab825などのヒト化抗CD155抗体である。
【0013】
本開示の実施形態は、ADCCを増強するために最適化されたFc領域を含むヒト化D171抗体またはヒト化Ab825抗体である。本開示の実施形態は、CDCに対して最適化されたヒト化D171抗体またはヒト化Ab825抗体である。本開示の実施形態は、MRI/CT用の造影剤にコンジュゲートされたヒト化D171抗体またはヒト化Ab825抗体である。本開示の実施形態は、PETスキャン用の診断薬にコンジュゲートされたヒト化D171抗体またはヒト化Ab825抗体である。本開示の実施形態は、IR800などの蛍光プローブにコンジュゲートされたヒト化D171抗体またはヒト化Ab825抗体である。本開示の実施形態は、放射線増感剤にコンジュゲートされたヒト化D171抗体またはヒト化Ab825抗体である。本開示の実施形態は、キレーターにコンジュゲートされたヒト化D171抗体またはヒト化Ab825抗体である。本開示の実施形態は、放射性同位体にコンジュゲートされたヒト化D171抗体またはヒト化Ab825抗体である。本開示の実施形態は、mRNA、siRNA、RNAまたはDNAオリゴヌクレオチド、一本鎖または二本鎖DNAなどの核酸治療薬にコンジュゲートされたヒト化D171抗体またはヒト化A8b25抗体である。本開示の実施形態は、ヒト化D171抗体またはヒト化Ab825抗体であり、ヒト化D171抗体またはヒト化Ab825抗体は治療薬である。本開示の実施形態は、ヒト化D171抗体またはヒト化Ab825抗体であり、ヒト化D171抗体またはヒト化Ab825は、TIGITへのCD155(ポリオウイルス受容体)の結合を遮断する。本開示の実施形態は、ヒト化D171抗体またはヒト化Ab825抗体であり、ヒト化D171抗体またはヒト化Ab825抗体は、TIGITへのネクチン4の結合を遮断する。
【0014】
本開示の実施形態は、ヒト化D171抗体またはヒト化Ab825抗体であり、ヒト化D171抗体またはヒト化Ab825は、CD155(ポリオウイルス受容体)を遮断し、その後、NK細胞またはT細胞(または両方)上のDNAM1の発現を上方制御する。本開示の実施形態は、ヒト化D171抗体またはヒト化Ab825抗体であり、ヒト化D171抗体またはヒト化Ab825は、CD155(ポリオウイルス受容体)を遮断し、その後、T細胞上のDNAM1の発現を上方制御する。上記のすべては、CD155およびネクチン4に対する抗原結合フラグメントにも当てはまる。
【0015】
本開示の実施形態は、CD155に結合する抗体または抗原結合フラグメントを投与するステップを含む、CD155を過剰発現する哺乳類における腫瘍の範囲を特定する方法であり、抗体または抗原結合フラグメントは標識とコンジュゲートされている。実施形態では、標識は、放射性同位体、発色団、フルオロフォア、および酵素からなる群から選択される少なくとも1つである。実施形態では、標識は、ガンマ線または陽電子放出放射性同位体、磁気共鳴画像造影剤、X線造影剤、および超音波造影剤からなる群から選択される。実施形態では、セレノシステイン残基は、標識をCD155に対する抗体または抗原結合フラグメントとコンジュゲートさせるために利用される。実施形態では、イメージング(画像化)は、CT、超音波、MRI、SPECTおよびPETからなる群から選択される少なくとも1つの技術によって行われる。実施形態では、イメージングは、術前、術中、および術後からなる群から選択される少なくとも1つの期間中に実行される。本開示の実施形態は、血液脳関門を越えて治療薬を送達する方法であり、治療薬は抗CD155抗体または抗原結合フラグメントにコンジュゲートされる。上記は、以下の詳細な説明がより良く理解できるように、本開示の特徴をかなり広範に概説した。本開示の追加の特徴および利点を以下に説明し、これらは特許請求の範囲の主題を形成する。実施形態では、原発腫瘍または転移腫瘍はCD155を過剰発現する。実施形態では、原発腫瘍または転移腫瘍はネクチン4を過剰発現する。
【0016】
実施形態では、本開示に記載される抗CD155抗体または抗原結合フラグメントは、CD155陽性腫瘍の治療のための治療用キメラ抗原受容体T細胞(CART)または治療用キメラ抗原受容体NK細胞の一部として発現される。実施形態では、本開示に記載されるヒト化抗体または抗原結合フラグメントは、ネクチン4陽性腫瘍の治療のための治療用キメラ抗原受容体T細胞(CART)または治療用キメラ抗原受容体NK細胞の一部として発現される。
【0017】
実施形態では、抗CD155抗体または抗原結合フラグメントは血液脳関門を通過することができる。実施形態では、融合タンパク質は少なくとも2つのセグメントを含み、第1のセグメントはCD155またはネクチン4に結合し、第2のセグメントは血液脳関門の通過を促進する。実施形態では、細胞治療薬は、CD155および/またはネクチン4に結合する抗原結合フラグメントを発現するT細胞を含む。実施形態では、方法はさらに、リポソームまたはポリエチレンイミン(PEI)ポリマーまたは脂質ナノ粒子(LNP)を含む。実施形態では、ヒト化D171抗体またはD171抗体に対して少なくとも90%の相同性を有する抗体は、CD155のアミノ酸35~50に特異的に結合する。実施形態では、抗CD155抗体または抗原結合フラグメントは、CD155および/またはネクチン4を発現する原発または転移腫瘍に結合し、結合後、原発または転移腫瘍に対する免疫応答を誘発する。
【0018】
実施形態では、完全抗体、抗原結合フラグメント、Fab、Fab2、Fc、scFvからなる群から選択される少なくとも1つの抗体またはフラグメントは、CD155に結合する第1の成分およびエフェクター細胞に結合する第2の成分を含む。実施形態では、完全抗体、抗原結合フラグメント、Fab、Fab2、Fc、scFvからなる群から選択される少なくとも1つは、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体から選択される。実施形態では、患者は、抗体もしくは抗原結合フラグメント、または上記の抗体のいずれか1つの抗体(もしくは抗原結合フラグメント)をコードするDNAを患者に注射することによって治療され得、注射は、静脈内注射、動脈内注射、筋肉内注射、髄腔内注射、脳室内注射、腫瘍内注射、皮下注射、またはリンパ管内注射、小胞内注射(すなわち、膀胱癌またはCNSの心室腫瘍)および腫瘍内注射および対流促進送達を介するのうちの少なくとも1つである。
【0019】
本開示の実施形態は、CD155を標的とする非ウイルスリガンドを哺乳類の血流に投与することを含む、哺乳類の血液脳関門を越えて治療薬を送達する方法であり、非ウイルスリガンドは治療薬とコンジュゲートされる。実施形態では、非ウイルスリガンドは、本出願に記載されるモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントである。実施形態では、治療薬はリポソームに封入され、リポソームは、CD155および/またはネクチン4に結合するモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントにコンジュゲートされる。実施形態では、哺乳類は脳腫瘍を有する。実施形態では、哺乳類は脳の有害な症状を有しており、脳の有害な症状は腫瘍ではない。実施形態では、治療薬は抗CD155抗体または抗原結合フラグメントにコンジュゲートされる。実施形態では、治療薬は抗CD155抗体または抗CD155抗原結合フラグメントにコンジュゲートされ、脳、脳幹、脊髄、または脳内の他のCD155発現細胞の運動ニューロンの治療のために哺乳動物に投与される。本開示の実施形態は、別の治療用抗体の抗体または抗原結合フラグメントを抗CD155抗体または抗原結合フラグメントに融合させることによって、哺乳類の脳に抗体を送達する方法である。実施形態では、治療用抗体または治療用抗原結合フラグメントは、化学的、抗体操作、またはアビジン-ビオチンベースの架橋からなる群から選択される方法によって、抗CD155抗体または抗原結合フラグメントに融合される。
【0020】
実施形態では、CD155に結合する抗CD155抗体または抗原結合フラグメントは、それ自体が治療薬である。実施形態では、抗ネクチン4抗体または抗原結合フラグメントは、それ自体が治療薬である。本開示の実施形態は、標識とコンジュゲートしたCD155を標的とする非ウイルスリガンドを投与するステップ;および脳腫瘍をイメージングするステップを含む、CD155を過剰発現する哺乳類における腫瘍の範囲を特定する方法である。実施形態では、標識は、放射性同位体、発色団、フルオロフォア、および酵素からなる群から選択される少なくとも1つである。実施形態では、標識は、ガンマ線または陽電子放出放射性同位体、磁気共鳴画像造影剤、X線造影剤、および超音波造影剤からなる群から選択される。実施形態では、抗体または抗原結合フラグメント内のセレノシステイン残基は、標識を非ウイルスリガンドとコンジュゲートさせるために利用される。実施形態では、イメージング(画像化)は、CT、超音波、MRI、SPECTおよびPETからなる群から選択される少なくとも1つの技術によって行われる。実施形態では、イメージングは、術前、術中、および術後からなる群から選択される少なくとも1つの期間中に実行される。
【0021】
実施形態では、ヒトポリオウイルス受容体に対するヒト抗体またはヒト化抗体は、一実施形態として、疾患の診断または治療のための治療薬としてレポーター分子への化学量論的コンジュゲートを促進するためにセレノシステイン残基で修飾される。実施形態では、ヒトポリオウイルス受容体に対するヒト抗体またはヒト化抗体は、腫瘍細胞などのCD155を過剰発現する標的細胞に送達されるナノ粒子に直接結合または封入されたいずれかの小薬物分子などの治療薬とコンジュゲートされる。実施形態では、ヒトポリオウイルス受容体に対するヒト抗体またはヒト化抗体は、腫瘍細胞などのCD155受容体を過剰発現する標的細胞の非手術時、術前、術中または術後の診断または治療のために、フルオロフォアまたは他のレポーター分子にコンジュゲートされる。
【0022】
実施形態では、ヒトポリオウイルス受容体に対するヒト抗体またはヒト化抗体は、抗体操作または化学結合のいずれかを通じて治療用ペプチドと融合される。実施形態では、ヒトポリオウイルス受容体に対するヒト抗体またはヒト化抗体は、二重特異性抗体を産生するために、化学的または抗体操作のいずれかによって別の治療用抗体(または抗原結合フラグメント)と融合され、1つの成分は、ヒトポリオウイルス受容体に対するヒト抗体またはヒト化抗体(または抗原結合フラグメント)である。実施形態では、ヒトポリオウイルス受容体に対するヒト抗体またはヒト化抗体は、CD155を過剰発現する腫瘍細胞に結合する。
【0023】
実施形態では、ヒトポリオウイルス受容体に対するヒト抗体またはヒト化抗体は、ネクチン4を過剰発現している腫瘍細胞にも結合する。本開示の実施形態は、C末端から10個のアミノ酸を超えるセレノシステイン残基;ADCCを強化するために最適化されたFc領域;CDCの最適化;MRI/CT用の造影剤との結合;PETスキャン用の診断薬との結合;蛍光プローブとの結合;放射線増感剤との結合;キレート剤との結合;放射性同位体との結合;治療薬との結合;からなる群から選択される少なくとも1つを含む、ヒト化D171抗体もしくはヒト化Ab825、またはD171抗体と同様の配列を有する抗体であり、ヒト化抗CD155抗体は治療薬である。本開示の実施形態は、ポリオウイルス受容体に結合し、ポリオウイルス受容体のTIGITへの結合を阻害する、本明細書に開示されるヒト化抗CD155抗体または抗原結合フラグメントを含む。別の実施形態は、ネクチン4に結合し、ネクチン4がTIGITに結合するのを阻害する、本明細書に開示されるヒト化抗CD155抗体および抗原結合フラグメントを含む。
【0024】
上記は、以下の詳細な説明がより良く理解できるように、本開示の特徴をかなり広範に概説した。本開示の追加の特徴および利点を以下に説明し、これらは特許請求の範囲の主題を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本開示の上記および他の強化および目的が達成される方法を得るために、添付の図面に示されるその特定の実施形態を参照して、上で簡単に説明した本開示のより具体的な説明を行う。これらの図面は本開示の典型的な実施形態のみを示しており、したがって本開示の範囲を限定するものとみなされないことを理解されたい。
【0026】
【
図1】マウス抗IL13アルファ2抗体およびマウス抗CD155抗体が、インビボでGL261腫瘍内のBBBを通過し、マウスIL13アルファ2(mIL13アルファ2)およびマウスCD155(mCD155)に結合することを示す。フルオロフォア標識マウス抗IL13アルファ2受容体抗体およびフルオロフォア標識抗CD155抗体を試験マウスに注射した。フルオロフォア標識抗体は血液脳関門を通過し、C57B16マウスのGL261腫瘍に蓄積した。GL261腫瘍は、マウスCD155およびマウスIL13アルファ2受容体の両方の受容体を発現する。
【
図2】インビトロでリポソームに封入されたeGFP mRNAにコンジュゲートしたD171モノクローナル抗体が内在化し、GFPがU87腫瘍内で発現されることを示す。U87腫瘍はヒトCD155を過剰発現する。ヒトCD155に対するD171モノクローナル抗体がリポソームに封入されたeGFP mRNAとコンジュゲートされ、D171抗体で機能化されたリポソームを含有する10ng/ウェルのeGFPコードRNAに24時間曝露した後、U87細胞におけるeGFP蛍光を記録した。3つの細胞密度を調査した。
【
図3】リポソームに封入されたフルオレセイン標識mRNAおよびフルオレセインとコンジュゲートしたヒトCD155に対するD171抗体が、U87細胞の約80%で検出されたことを示す。D171コンジュゲートは、インビトロでU87細胞に内在化する。U87細胞はCD155を過剰発現することが知られている。
【
図4】U87MG腫瘍を有するマウスにおけるAb825-VT680および対照VT680の注射後72時間の腫瘍生物発光および色素蛍光イメージングの比較を示す。Ab825-VT680コンジュゲートは、インビボでU87MG腫瘍に結合し、蓄積する。対照マウスは未処理か、またはVT680色素のみのいずれかで処理された。蛍光イメージングで実証されたように、蛍光標識抗CD155抗体で処理したマウスは腫瘍内に蓄積を示した。生物発光により、蛍光蓄積領域が生物発光イメージングで見られる腫瘍領域と相関していることが示された。
【
図5】抗CD155抗体および抗原結合フラグメントの潜在的な作用のメカニズムを示す。CD155-TIGIT相互作用およびCD155-CD96相互作用(図示せず)は、チェックポイント遮断の標的である。抗CD155抗体および抗原結合フラグメントは、(a)ADCC、(c)チェックポイント遮断、(d)放射線免疫療法、(e)抗体薬物コンジュゲート(ADC)、(f)一方がCD155に結合し、他方がT細胞上のCD3などの第2の受容体に結合する二重特異性抗体のために、および(g)抗CD155 CAR TまたはCAR NK細胞を調製するために使用され得る。抗CD155抗体および抗原結合フラグメントはネクチン4にも結合し、本明細書で説明される構築物はネクチン4を標的にすることもできる。
【
図6】ヒト化モノクローナル抗体VH3 N54S D56G/Vk2 N92Q(サンプル2)およびVH3 N54S D56G/Vk3N92Q(サンプル3)およびVH4 N54S D56G/Vk3N92Q(サンプル4)を用いた50人の患者サンプルにおけるDC T細胞アッセイを示す。試験した抗体および対照ごとの増殖の頻度(増殖のある患者サンプルの%)および刺激指数(SI)が表示されている。
【
図7】CD155(PVR)に対するヒト化抗体と細胞膜受容体PVRおよびネクチン4との強力かつ特異的な結合を実証する結合アッセイの結果を示す。細胞固定はない。インバースヒット(Inverse Hit)は、PVRの天然リガンドであるCD226(DNAM1)およびTIGITで見られる。アッセイは5000超の膜受容体で行われた。PVRとネクチン4には強く特異的な結合が見られた。TIGITおよびCD226では、これらの受容体がPVRのリガンドであり、アッセイ内で内因性PVRに結合してインバースヒットスポットが生成されるため、インバースヒット(白いスポット)が見られた。
【
図8】HAP1細胞、ベロ細胞およびU87細胞を用いた、CD155に対するヒト化モノクローナル抗体のEC50による細胞結合研究。HCVRのN54Q D56EまたはN54S D56EまたはLCVRのN92Eを備えたバリアントと比較した場合、重鎖可変領域(HCVR)にN54S D56Gを有するバリアントおよび軽鎖可変領域(LCVR)にN92Qを有するバリアントは、CD155との結合親和性がより高かった。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書に示される詳細は、例として、本開示の好ましい実施形態を例示的に説明することのみを目的とするものであり、かつ本開示のさまざまな実施形態の原理および概念的な態様について、最も有用で容易に理解できると考えられる説明を提供する目的で提示されている。この点について、本開示の基本的な理解に必要以上に詳細に本開示の構造的詳細を示す試みは行われておらず、図面を伴う説明により、本開示のいくつかの形態が実際にどのように具体化され得るかが当業者には明らかとなる。
【0028】
以下の定義と説明は、以下の例で明確かつ曖昧なく変更されない限り、または意味の適用によって構成が無意味になるか本質的に無意味になる場合を除き、任意の将来の構成を制御することを意図している、または意図される。用語の構成によって意味がなくなったり、本質的に意味がなくなったりする場合、その定義はWebster’s Dictionary第3版から引用する必要がある。
【0029】
本明細書で使用される場合、「コンジュゲートした」とは、リガンドが、化学的、静電気的、または分子生物学のあらゆるツールを使用してリガンドと治療薬の融合構築物を作成することによって行われるが、これらに限定されないことを含む、治療薬に結合するあらゆる様式を指す。「分子生物学のすべてのツール」という記述には、慣習のキメラ抗原受容体の製造を含むが、これに限定されず、ここで、抗体または抗原結合フラグメントは、癌を含むがこれに限定されない疾患を排除するためのCAR T細胞療法においてキメラ抗原受容体に組み込まれる。
【0030】
免疫グロブリン(Ig)としても知られる抗体(Ab)は、形質細胞によって産生される大きなY字型のタンパク質で、細菌およびウイルスなどの異物を識別して中和するために免疫系によって使用される。抗体は、抗原と呼ばれる外来標的の固有の部分を認識する。抗体の「Y」の各先端には、抗原上の1つの特定のエピトープ(鍵に類似した構造)に特異的なパラトープ(錠に類似した構造)が含まれており、これら2つの構造が正確に結合できるようになる。
【0031】
二重特異性モノクローナル抗体(BsMAb、BsAb)は、2つの異なるモノクローナル抗体のフラグメントで構成され、結果的に2つの異なるタイプの抗原に結合する人工タンパク質である。このアプローチの最も広く使用されている用途は癌免疫療法であり、BsMAbは細胞傷害性細胞(T細胞上のCD3のような受容体など)と腫瘍細胞上の受容体に同時に結合して腫瘍細胞を死滅させるように設計されている。
【0032】
血液脳関門(BBB)は、中枢神経系(CNS)において循環血液を脳細胞外液(BECF)から分離する高度に選択的な透過性関門である。血液脳関門は毛細血管内皮細胞によって形成されており、これらは少なくとも0.1Dmという極めて高い電気抵抗率を持つ密着結合によって接続されている。血液脳関門は、受動拡散によって水、一部のガス、脂溶性分子の通過を可能にするだけでなく、神経機能に重要なグルコースおよびアミノ酸などの分子の選択的輸送も可能にする。
【0033】
コンジュゲートしたには、分子結合、化学結合、および静電結合が含まれますが、これらに限定されない。分子結合の例は抗体エンジニアリングである。化学結合の例は共有結合である。静電結合の例はビオチンおよびストレプトアビジンである。
【0034】
CD155は、免疫グロブリンスーパーファミリーのI型膜貫通糖タンパク質である。CD155は霊長類の細胞ポリオウイルス感染に関与しているため、一般にポリオウイルス受容体(PVR)として知られており、CD155の正常な細胞機能は上皮細胞間の細胞間接着結合の確立にある。CD155は3つの細胞外免疫グロブリン様ドメインD1~D3を持つ膜貫通タンパク質であり、D1はウイルスによって認識される。同義語にはPVR;CD155;HVED;NECL5;Necl-5;PVS;およびTAGE4が含まれる。
【0035】
融合タンパク質またはキメラタンパク質は、もともと別々のタンパク質をコードしていた2つ以上の遺伝子の結合によって生成されたタンパク質である。この融合遺伝子の翻訳により、元のタンパク質のそれぞれに由来する機能特性を備えた単一または複数のポリペプチドがもたらされる。
【0036】
融合タンパク質は、分子生物学技術、または2つの抗体もしくは抗原結合フラグメントの化学的結合を通じて生成される。
【0037】
実施形態では、抗体は、標識、架橋剤、または共有結合修飾による修飾に利用可能な官能基を有する。実施形態では、抗体上の官能基は、第一級アミン、スルフヒドリル基、炭水化物、セレノシステイン、または非天然アミノ酸の組み込みである。
【0038】
実施形態では、架橋剤を使用して、遺伝子、ポリペプチド、または小分子を抗体に連結することができる。実施形態では、架橋剤はヘテロ二官能性架橋剤であり得る。実施形態では、ヘテロ二官能性架橋剤は、スクシンイミジルアセチルチオアセテート(SATA)、スクシンイミジルトランス-4-(マレイミジルメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)、N-((2-ピニルジチオ)エチル)-4-アジドサシルアミド(PEAS;AET)、4-アジド-2,3,5,6-テトラフルオロ安息香酸、スクシンイミジルエステル(ATFB、SE)、ベンゾフェノン-4-マレイミド、ベンゾフェノン-4-イソチオシアネート、4-ベンゾイル安息香酸、スクシンイミジルエステル、ヨードアセトアミドアジド、ヨードアセトアミドアルキン、Click-iT マレイミド DIBOアルキン、アジド(PEO)4プロピオン酸、スクシンイミジルエステル、アルキン、スクシンイミジルエステル、またはClick-iT スクシンイミジルエステル DIBOアルキンである。別の実施形態では、架橋剤は、ペプチド架橋剤感受性のカテプシン切断であり得る。別の実施形態では、架橋剤は、クリックケミストリー用のBCNを有するアジド架橋剤などの部位特異的架橋に使用されるものであり得る。利用可能なリンカーを使用して、アジド(N3)を使用したクリックケミストリーに基づいて抗体をペイロードに架橋することができる。反応性官能基は各末端で同じである。反応性末端は、多くの場合、第一級アミンおよびスルフヒドリル基を標的とする。実施形態では、アジドは、銅触媒によるアジド-アルキン付加環化反応を介してアルキンと反応する。別の実施形態では、金属を含まないアジド-アルキン反応をコンジュゲートに使用することができる。実施形態では、架橋剤は、UV照射時に利用可能な部位と非特異的に反応する。
【0039】
ヒト抗体は、ヒト系もしくは他の哺乳類系で、または酵母もしくはファージ技術を使用して生成される抗体である。ヒト化抗体は、ヒトで自然に産生される抗体変異体との類似性を高めるためにタンパク質配列が修飾された非ヒト種からの抗体である。「ヒト化」のプロセスは通常、ヒトへの投与用に開発されたモノクローナル抗体(例えば、抗癌剤として開発された抗体)に適用される。特定の抗体を開発するプロセスに非ヒト免疫系(マウスにおけるそれなど)での生成が含まれる場合、ヒト化が必要になる場合がある。この方法で産生された抗体のタンパク質配列は、ヒトに自然に存在する相同抗体とは部分的に異なるため、ヒト患者に投与すると免疫原性を示す可能性がある。
【0040】
抗体のヒト化には、非ヒト抗体内の潜在的な免疫原性配列の除去が含まれる。免疫原性配列の代わりに、ヒトに対する免疫原性の低い配列が挿入され得る。特定の抗体をヒト化するには多くの方法がある。実施形態では、特定の非ヒト抗体をヒト化するには1年超かかる場合がある。実施形態では、ヒト抗体は、1)構造を検討してどの配列がヒトに対して免疫原性となるかを決定する、2)ヒトに対して免疫原性となる配列を除去する、3)抗体がその標的受容体に結合する能力を維持または改善する、4)標的受容体への抗体の結合を評価する、5)悪い免疫原性応答をスクリーニングする、6)悪い免疫原性応答の原因となる配列を除去するによってヒト化される。実施形態では、ソフトウェアを使用して、除去される可能性のある免疫原性配列を特定する。実施形態では、ソフトウェアで特定された配列を除去した後でも依然として悪い免疫原性応答があり、ソフトウェアは正確ではない。実施形態では、どの配列を除去するかを決定するためにインビトロ研究が行われる。異なる当事者が特定の抗体をヒト化する場合、特定の抗体の配列は異なる可能性がある。潜在的なアスパラギン酸異性化部位および脱アミド化を受けやすい部位を除去するには、CDRの変異が必要になる場合がある。CDRの変異は結合に影響を与える可能性があるため、抗体のヒト化はフレームワーク残基に限定されることがよくある。不安定な部位のヒト化と変異の目標は、注入反応のリスクと免疫原性のリスクを低く抑え、CDR内の潜在的な脱アミド化および異性化部位を安定化することである。ヒト化後でも、異なるヒト化抗体は、異なる解離定数(Kd)、サイトカイン放出アッセイでの異なるプロファイル、EpiscreenおよびDC TCell Episcreenアッセイに基づく異なる免疫原性プロファイルを有し得る。抗体D171またはAb825のヒト化はこれまで教示されておらず、本発明で初めて教示される。Ab825は、ヒト化変異体と比較した場合、注入反応のリスクが最も高いことが判明した。
【0041】
実施形態では、抗CD155抗体は、血液脳関門を越えて治療抗体をナビゲートするために、別の治療抗体に融合され得る。実施形態では、承認された治療用抗体は、単独では血液脳関門を通過することができない。実施形態では、抗CD155抗体は神経を通って逆行してCNSに進入する。実施形態では、抗CD155抗体は血液-CSF関門を通って移動する。
【0042】
リガンドは、生物学的目的を果たすために生体分子と複合体を形成する物質(通常は小分子)である。タンパク質とリガンドの結合では、通常、リガンドはシグナルトリガー分子であり、標的タンパク質上の部位に結合する。本明細書に記載される多くの例において、リガンドが結合する標的タンパク質は細胞上の受容体である。CD155に結合する抗体または抗原結合フラグメントは、CD155のリガンドとみなされる。
【0043】
非ウイルスとは、ウイルスとみなされるのに十分な構造を欠く、DNA/RNAセグメントおよびタンパク質を含む任意のポリペプチドを意味する。非ウイルスにはさらに、ウイルスで始まりウイルスの一部を切断してポリペプチドを生成するプロセスを通じて生成される任意の複雑なポリペプチドを除外する。
【0044】
ポリペプチドは、アミノ酸残基が直鎖状に連なったものであり、ポリペプチドと呼ばれる。タンパク質には少なくとも1つの長いポリペプチドが含まれる。約20~30未満の残基を含む短いポリペプチドは、タンパク質とはほとんどみなされず、一般にペプチド、または場合によってはオリゴペプチドと呼ばれる。個々のアミノ酸残基は、ペプチド結合および隣接するアミノ酸残基によって結合される。
【0045】
タンパク質は、1つ以上のアミノ酸残基の長鎖からなる大きな生体分子、つまり高分子である。タンパク質は主にそれらのアミノ酸配列が互いに異なり、アミノ酸配列はそれらの遺伝子のヌクレオチド配列によって決定され、そして通常、アミノ酸配列によってタンパク質が特定の三次元構造に折りたたまれ、その活性が決定される。
【0046】
受容体は、通常、細胞の細胞膜表面内に埋め込まれており、細胞の外部から化学シグナルを受け取るタンパク質分子である。このような化学シグナルが受容体に結合すると、何らかの形の細胞/組織反応、例えば細胞の電気活動の変化が引き起こされる。この意味で、受容体は内因性の化学シグナルを認識して応答するタンパク質分子である。CD155はポリオウイルス受容体としても知られている。
【0047】
「治療有効量」とは、患者の腫瘍量を排除もしくは軽減するか、または転移を予防、遅延もしくは阻害する量である。用量は、腫瘍の性質、患者の病歴、患者の状態、細胞傷害性薬物の併用の可能性、および投与方法など、多くのパラメータによって異なる。投与方法には、注射(例えば、非経口、皮下、静脈内、腹腔内、くも膜下腔内、対流促進など)が含まれ、その場合、PVRに結合する分子または複合体は、非毒性の薬学的に許容される担体中で提供される。
【0048】
マウス(マウスCD155に対する)細胞株とヒト(ヒトCD155に対する)細胞株の両方において、これらの細胞株のそれぞれのポリオウイルス受容体に対するモノクローナル抗体を使用して、(例として)レポーター分子EGFPのmRNAまたは遺伝子の送達は、核酸を封入したリポソームにコンジュゲートした抗CD155を介してCD155を発現する細胞に送達された。D171抗体を使用して、CD155を発現するU87腫瘍にリポソームに封入されたmRNAを送達した。D171のmRNAコンジュゲートを送達すると、GFPのmRNAが発現した。この送達システムは、結果に基づいて他の核酸および薬物にも拡張可能である。抗CD155モノクローナル抗体は予期せず中枢神経系に入り、腫瘍をコーティングした。この発見の潜在的な応用には、血液脳関門またはCNSへの侵入を妨げる他の関門を通過するリガンドおよびリガンドコンジュゲートのトランスサイトーシスを促進するためのCD155の利用が含まれ、トランスフェリン受容体の潜在的な代替手段を提供する。治療用ペプチドまたはタンパク質と、CD155に対する抗体またはCD155に対する抗原結合フラグメントとの融合は、血液脳関門またはCNSへの侵入を妨げる他の関門を通過する経路を提供し得る。CD155に対する抗体は、ヒトおよびマウス細胞株のCD155に結合し、インビトロでマウスおよびヒト細胞により内在化される。マウスCD155に対する抗体は、インビボで腫瘍に結合し、血液脳関門を通過する。抗CD155抗体は、CD155腫瘍を診断し、術前、術中、および術後にCD155腫瘍の境界を定めるためのインビボでの診断可能性を有する。抗CD155抗体は、抗体指向性細胞傷害性などの免疫系の誘導を単独で、または他のペプチド、ポリペプチド、もしくは抗体と融合した抗CD155抗体のいずれかとして、治療の可能性を有し得る。毒素、タンパク質、ペプチド、薬物小分子、遺伝子、メッセンジャーRNA、およびオリゴヌクレオチドなどのRNAまたはDNAベースの薬物などのさまざまなカーゴ。上記のそれぞれを抗CD155抗体に直接結合することもでき、または、CD155に対する抗体は、毒素、タンパク質、ペプチド、薬物小分子、遺伝子、メッセンジャーRNA、オリゴヌクレオチドなどのRNAまたはDNAベースの薬物を封入するナノ粒子/リポソームに結合させることができる。抗CD155抗体-PVRなどのリガンド-PVR相互作用は、血液脳関門を通過する巨大分子のトランスサイトーシス経路として機能し得、トランスフェリンの代替となることが証明され得る。血液脳関門を通過する抗CD155抗体またはPVRに結合する任意のリガンドは、抗CD155抗体または他のPVRリガンドに融合またはコンジュゲートした薬物、タンパク質、ペプチド、ポリペプチドのトランスポーターとしても機能し得る。
【0049】
本開示で使用され得るリガンドは、抗CD155 ABを含むがこれに限定されず、さらに、CD155(および/またはネクチン4)に結合する抗体および抗原結合フラグメントの融合タンパク質、ならびにそのような抗体および抗原結合フラグメントの融合タンパク質が含まれる。なおもさらに、リポソームのリガンドコンジュゲートおよびRNAもしくはDNAまたは修飾核酸もしくは他の治療薬の封入化、ならびにリポソームを含まない核酸または他の治療薬のリガンドコンジュゲートが含まれる。
【0050】
実施形態では、血液脳関門を通過することができる、CD155に対する抗体は、抗原結合フラグメント(Fab、FcV)、ヒト化抗CD155抗体、結合リポソーム/ナノ粒子を標的とする抗CD155抗体、および毒素、遺伝子、DNAまたはRNAベースの薬物または他の治療薬を含む封入されたまたは封入されていない治療薬;腫瘍の診断のため、または非手術時、術前、術中もしくは術後の腫瘍の輪郭を描くのに役立つ腫瘍もしくは腫瘍縁の特定のための、蛍光プローブまたは造影剤と結合した抗CD155抗体;を含むがこれらに限定されない群から選択され;抗CD155抗体は、タンパク質、ペプチド、毒素、または他の抗体もしくは抗原結合フラグメントに融合させて、トランスサイトーシスのためにCD155を利用して血液脳関門を通って送達することができ、通過すると、CD155もしくは融合タンパク質のいずれか、またはその両方がCNS内の標的細胞に結合することができ;CD155に対する非コンジュゲート抗体は、それがCNSおよびCD155発現が高い非CNS腫瘍において、抗体指向性細胞傷害性または補体指向性細胞傷害性を誘発する場合、治療薬として機能し得る。
【0051】
マウスの抗CD155抗体は予想外に血液脳関門を通過し、腫瘍に結合した。抗体は通常、BBBを通過しない。ポリオウイルス自体は、CNSに侵入するための他の経路を有する。実施形態では、抗体は神経疾患の治療に使用される。実施形態では、腫瘍がない場合に血液脳関門を越えて物質を送達することが有益であり得る。実施形態では、神経疾患は脳腫瘍ではない。抗体は、重鎖、軽鎖、Fab、Fc、scFv、炭水化物、可変領域、および定常領域を含むがこれらに限定されない様々な部分から構成される。
【0052】
抗体は、糖修飾、定常領域のアミノ酸の変更、異なるヒトmAhアイソタイプ(IgG4など)の使用、安定なリンカーを使用して同位体をmAhに連結、切断可能なリンカーを使用して薬物をmAhに連結、シグナル伝達ペプチドと融合したmAb可変領域のDNAをT細胞に挿入してCARの発現を誘導すること、および2つのmAbの領域を架橋すること、を含むがこれらに限定されない方法で修飾され得る。
【0053】
モノクローナル抗体ベース(mAbベース)の治療薬は、抗腫瘍mAb、血管新生阻害、T細胞チェックポイント遮断、放射線免疫療法、抗体薬物コンジュゲート、二重特異性抗体、およびキメラ抗原受容体T細胞を含む多くの機能を有するが、これらに限定されない。本発明の一実施形態には二重特異性抗体が含まれ、ここで、1つの抗体または抗原結合フラグメントは腫瘍細胞上に発現するCD155(またはネクチン4)に結合し、抗体または抗原結合フラグメントは、T細胞上のCD3(T細胞受容体)に結合し、それによってT細胞を腫瘍細胞に近づけて、T細胞媒介による腫瘍の死滅を強化する。別の実施形態には二重特異性抗体が含まれ、ここで、1つの抗体または抗原結合フラグメントが腫瘍細胞上のCD155(またはネクチン4)に結合し、別の抗体または抗原結合フラグメントは、(すなわち、CD16、NKG2D、SLAM受容体、またはNK細胞上のNKp46、NKp44、もしくはNKp30などの天然の細胞傷害性受容体など)NK細胞上の受容体に結合し、それによりNK細胞を腫瘍細胞に近づけて、NK細胞媒介による腫瘍の死滅を強化する。腫瘍特異的IgGの免疫媒介効果には、ADCC、オプソニン化、およびCDCが含まれるが、これらに限定されない。腫瘍特異的IgGの直接的な効果は、リガンドを遮断し、受容体の二量体化を阻害し、そしてアポトーシスシグナル伝達を誘導することである。抗CD155抗体および抗原結合フラグメントを、増殖因子受容体またはFC5もしくはFC44またはトランスフェリン受容体(Tfr1またはTfr2)などの1型インスリンに結合する抗体または抗原結合フラグメントとともに組み込んだ二重特異性製剤は、血液脳関門を通過しやすくするために調製され得る。
【0054】
神経腫瘍学用のモノクローナル抗体の開発に対する潜在的な制限は、BBBを通過できないことである。脳腫瘍を標的とするモノクローナル抗体は、まず(抗体が血管内腔からBBBを通過して脳および中枢神経系に入る場合)BBBを通って、腫瘍に直接注射して(対流促進療法)、または髄腔内(髄液中)に直接注射してのいずれかで中枢神経系に入る必要がある。筋肉または神経を通る逆行性など、CNSへの侵入のための他のメカニズムが提案される必要がある。モノクローナル抗体がCNSに進入した後でのみ、原発性頭蓋内脳腫瘍にそれが結合できる(脳腫瘍が末梢に転移している場合、抗体はCNSに進入せずに腫瘍に結合できる)。
【0055】
実施形態では、mRNAは、抗CD155抗体または抗原結合フラグメントにコンジュゲートしたリポソーム内に封入される場合、細胞内に内在化され得る。抗CD155抗体D171は、ポリオウイルス受容体のアミノ酸残基35~50でポリオウイルス受容体に結合する。実施形態では、ヒトCD155に対するヒト化抗体は、アンチセンスDNAもしくはアンチセンスRNA、または天然もしくは化学的に修飾された残基を有するプラスミドもしくは遺伝子を含むリポソームにコンジュゲートされる。別の実施形態では、リポソームは、天然の残基または化学的に修飾された残基を有するmRNAを含む。ヒトCD155に対するヒト化抗体および結合リポソームは、血液脳関門を通過し、mRNAまたは核酸治療薬をCD155発現細胞に送達することができる。
【0056】
本開示は、リガンドコンジュゲートを介したmRNAおよび遺伝子を含む治療薬のウイルス送達を含み、モノクローナル抗体などのリガンドがCD155/PVRに結合し、薬物またはmRNA/遺伝子の発現(mRNA/遺伝子)の機能を可能にする治療薬の内在化およびその後の放出をもたらす。リポソームに封入されたmRNAにコンジュゲートしたD171抗体は、内在化可能であり、mRNAがインビトロで腫瘍細胞で発現されたCD155発現細胞にペイロードを送達できることが本明細書で示されている。この概念実証は、ヒト化抗CD155抗体薬物コンジュゲートを用いて核酸治療薬およびその他の薬物を細胞に送達するための基礎を築く。
【0057】
実施形態では、リガンドは、1)PVR/CD155に対する抗体、2)PVR/CD155に結合する抗体または抗原結合フラグメント、一部がCD155/PVRに結合し、他の部分がジフテリアなどの毒素である、PVR/CD155に結合する融合タンパク質、3)抗体または抗原結合フラグメントがCD155/PVRに結合する、核酸または遺伝子などの治療薬またはプロドラッグにコンジュゲートした抗体または抗原結合フラグメント、であり得る。治療薬またはプロドラッグ、例えばドキソルビシン、siRNA、アンチセンスDNAもしくは他のアンチセンス分子、タンパク質もしくは酵素もしくはペプチドもしくはサイトカインをコードするメッセンジャーRNA、Cas9 mRNA、Cas12a mRNAおよびCRISPR用のガイドRNA、または裸のDNA遺伝子もしくはプラスミド。CD155に対する抗体または抗原結合フラグメントは、サイトカインの以下のmRNA(a)IL2をコードするmRNA、および(b)IL7をコードするmRNA、および(c)IL12をコードするmRNA、(d)IL15をコードするmRNA、(e)IL21をコードするmRNA、(f)IFNガンマをコードするmRNA、および(g)IFNアルファをコードするmRNA、および(i)GM-CSFをコードするmRNAのうちの1つをコードするmRNAにコンジュゲートされ得る。
【0058】
実施形態では、ヒト化抗CD155抗体は、ニューロン、星状細胞、再生中の筋肉、および脊髄を標的とするために使用され得る。CD155に対する抗体またはフラグメントまたは融合構築物に対する抗体は、単独またはコンジュゲートのいずれかとして、腫瘍の全範囲または腫瘍切除範囲の特定において、術前、術中、または術後の診断的役割を果たす。実施形態では、GBM患者は、血液脳関門を通過するか、または腫瘍に直接注射される、CD155に対する蛍光標識抗体で術前に治療され、抗体蛍光の輪郭は、腫瘍切除に関して術中の外科医をガイドする。
【0059】
可溶性CD155は、可溶性CD155を添加して抗CD155抗体に結合させることにより、抗CD155抗体コンジュゲートの過剰摂取に対する解毒剤として機能させ得る。さらに、一実施形態では、抗CD155抗体の抗体薬物コンジュゲートによる患者の治療に先立って、最初に非コンジュゲート抗CD155抗体を投与して正常細胞上のCD155を遮断する。その後、抗CD155抗体薬物コンジュゲートを追加すると、CD155を過剰発現する腫瘍に向けられる。CD155に対する抗体またはフラグメントまたは融合構築物は、単独またはコンジュゲートのいずれかとして、脳内の腫瘍を、PETスキャン、MRI、核スキャン、CTスキャン、超音波、および本分野で標準的な他のイメージング様式などのイメージングメカニズムによって、脳内の腫瘍の範囲で、特定するための診断用途を有する。
【0060】
IV.結論
CD155の機能は完全にはわかっていないが、CD155はTIGIT(IgおよびITIMドメインを持つT細胞免疫受容体)、CD226(DNAM1)、およびCD96に結合することが示された。腫瘍の予後バイオマーカーである可溶性CD155は、CD155陽性腫瘍から分泌されることが多く、DNAM1との結合において機能し得る。膜性CD155および可溶性CD155は免疫系を抑制するように機能し得、その結果、CD155陽性腫瘍の増殖を可能にする。抗CD155抗体で可溶性CD155または膜性CD155を遮断すると、免疫抑制を逆転させることができる。抗CD155抗体によるCD155の遮断は、CD155のTIGITへの結合も遮断し、したがってCD155-TIGIT結合によって伝達される阻害シグナルを減少させることができる。したがって、CD155は新規チェックポイントであり、抗CD155抗体によるCD155調節は、複数の作用のメカニズムを使用して癌を治療するための新規経路を提供する。CD155は筋肉および腎臓などの正常組織では低レベルで見られるが、CD155は多くの異なる癌で過剰発現しているため、CD155は多種多様な悪性腫瘍の治療における新規でありながら一般的な標的となっている。同様に、本発明に記載されているように、本発明のモノクローナル抗体は、CD155だけでなく、別の腫瘍マーカーであるネクチン4にも結合した。本発明のモノクローナル抗体がネクチン4に結合することが初めて示された。本発明のヒト化抗体に関連するモノクローナル抗体D171およびAB825(Ab825およびAB825は、本明細書および図および特許請求の範囲では互換的に使用される)は、ネクチン4に結合することがこれまで示されたことはなかった。最近、ネクチン4がTIGITに結合することが示された。一実施形態では、本発明の抗体は、ネクチン4およびPVRの両方のTIGITとの結合を遮断し、それによってT細胞などの免疫細胞への阻害シグナルを遮断する。別の実施形態では、CD155に対する抗体または抗原結合フラグメントは、追加の薬物、細胞療法、またはチェックポイント分子に対する抗体から構成される免疫調節剤と組み合わせて、癌の治療のためにヒトに投与される。CD155に対する抗体または抗原結合フラグメントは、CTLA4、PD1、PDL1、CD112R、OX40、TIGIT、NKG2A、CEACAM1、B7H3、B7-H4、VISTA、LAG3、CD137、KIR、TIM1、TIM3、LAIR1、HVEM、BTLA、CD160、CD200、CD200RおよびA2r.からなる群から選択される免疫チェックポイント分子に対する抗体から構成される追加の免疫調節剤と組み合わせてヒトに投与される。
【0061】
実施形態では、抗CD155抗体または抗原結合フラグメントは、抗トランスフェリン受容体抗体または抗原結合フラグメントなどの血液脳関門を通過することが知られている抗体または抗原結合フラグメント(または血液脳関門を通過するFC5抗体もしくは抗原結合フラグメント)に融合される。抗CD155抗体または抗原結合フラグメントは、化学的または組換え技術のいずれかによって血液脳関門を通過する抗体(または抗原結合フラグメント)に結合させることができ、それにより抗CD155抗体が血液脳関門を通過できるようにする。別の実施形態では、本発明に記載の抗体を含む二重特異性抗体は、腫瘍上のCD155(またはネクチン4)およびT細胞上のCD3に結合する。別の実施形態では、本発明に記載の抗体の1つ以上を含む二重特異性抗体は腫瘍上のCD155(またはネクチン4)に結合し、二重特異性抗体の別の部分はNK細胞上の受容体(すなわち、NK細胞上のCd16、SLAM受容体、NKp46、NKp44、またはNKp30)に結合する。実施形態では、抗CD155抗体または抗原結合フラグメントは、抗トランスフェリン受容体抗体または抗原結合フラグメントなどの血液脳関門を通過することが知られている抗体または抗原結合フラグメント(または血液脳関門を通過するFC5抗体もしくは抗原結合フラグメント)に融合される。抗CD155抗体または抗原結合フラグメントは、化学的または組換え技術のいずれかによって血液脳関門を通過する抗体(または抗原結合フラグメント)に結合させることができ、それにより抗CD155抗体が血液脳関門を通過できるようにする。本発明の抗体は、PVR(CD155)に結合して遮断する。本発明のヒト化モノクローナル抗体は、ポリオウイルス受容体を遮断し、ポリオウイルスがポリオウイルス受容体(PVR;CD155)に結合するのを妨げることにより、ポリオウイルスに曝露された患者を治療するために使用され得る。
【0062】
一実施形態では、本発明の抗体をヒトを含む哺乳類に投与して、T細胞上のDNAM1(CD226)の発現を上昇させることによってHIVなどの感染症を治療することもできる。同様に、別の実施形態では、本発明の抗体は、T細胞およびNk細胞上のDNAM1の発現を上昇させることによって敗血症を治療するために使用され得る。本発明のCD155に対するヒト化抗体の過剰摂取は、可溶性CD155を投与してヒト化抗体に結合し、その効果を中和することによって治療できると考えられる。本発明の別の実施形態では、AB825、D171、または任意のヒト化抗体は、ヒトPVRを発現する動物においてインビボでPVR(CD155)に結合する。ヒトPVRは、発現されたトランスジーンであってもよく、またはヒトPVRは、マウスに移植されたU87腫瘍細胞などのヒト細胞上で発現されてもよい。この研究以前には、Ab825または本発明のヒト化抗体のいずれかは、生きた動物にインビボで注射されることはなかった。別の実施形態では、本発明に記載されるAb825およびCD155に対するヒト化抗体は、アフリカミドリザル由来のベロ細胞に結合することが示されており、したがって、これらの抗体は、非ヒト霊長類のPVR(CD155)に結合する(
図8)。
【0063】
D171抗体は、リポソームに封入されたmRNAにコンジュゲートされ、ヒトU87MG腫瘍内にうまく送達され、発現された抗CD155抗体である。抗CD155抗体(D171)が内在化し、D171にコンジュゲートしたリポソームmRNAが内在化して発現されたことが初めて示された。この研究は、本発明におけるD171、AB825および関連するヒト化抗体の抗体薬物コンジュゲートを作製するための基礎的なサポートを提供した。D171の内在化およびヒト腫瘍細胞にペイロードを運ぶその能力もまた、本発明の実施形態である。eGFP-RNA含有リポソームおよびフルオレセインRNA含有リポソームを用いた取り込み実験では、試験した他のすべてのコンジュゲートよりも抗CD155抗体コンジュゲートの明らかな優位性が示されたが、これは入手可能な少量で試験が可能な低濃度でのみであった。さらに、これらの結果は、コンジュゲート内のヒト特異的またはマウス特異的の両方のタイプのCD155抗体で得られたため、この結果の堅牢性が強化されている。mRNAは、U87腫瘍内に内在化された後に発現された。別の実験では、D171抗体にコンジュゲートしたリポソームに封入されたフルオレセイン標識mRNAを投与すると、U87細胞の80%超がフルオレセインで標識化された。この研究は、D171、Ab825、および本発明のヒト化抗体などの他の関連抗体の抗体薬物コンジュゲートを作製するための基礎的な裏付けを初めて提供した。本発明におけるD171、Ab825およびヒト化抗体の内在化能、ならびにヒト腫瘍にペイロードを運ぶその能力もまた、本発明の実施形態である。これらの結果の他に、抗IL-13アルファ2コンジュゲートリポソームのみが、マウスバージョン(GL261)またはヒトバージョン(U87MG)のさまざまな実験において、穏やかではあるが反復的な取り込みを示した。フルオレセインによるRNA蛍光標識は、ハイコンテンツイメージング(High Content Imaging)画像取得の場合、蛍光色素退色に対する感度が低い別のより強力な蛍光色素に置き換えることができる。機能性リポソームの取り込みは、インビボ条件に近い条件である(10%血清を含む)完全培地中で調査された。機能化リポソーム中のeGFPコードRNAの10、50または100ng/ウェルを、3つの密度のGL261またはU87MG細胞に適用した。抗CD155抗体コンジュゲートは、入手可能な量が非常に多いため、10ngRNA/ウェルでしか試験できなかった。結果は、マウスおよびヒト抗体コンジュゲートについて、試験したすべての細胞密度で抗CD155抗体コンジュゲートリポソームの10ngRNA/ウェルを適用した後、細胞蛍光が繰り返し増加することを示す。
【0064】
抗CD155抗体のヒト化
Ab825は、抗CD155抗体D171と配列を共有する抗体である。D171は、1985年にNobisら(J General Virology)によって初めて記載された。配列データは、D171抗体の重鎖可変領域(VH)が、Ab825の重鎖可変領域(VH)配列と90%超の同一の配列を有することを示した。D171抗体の軽鎖可変領域(VL)およびD171のCDRも、Ab825と配列において顕著な重複を持っている。D171とAb825の配列におけるこのような高度な相同性を考慮すると、両方の抗体を別々にヒト化する必要はなかった。Ab825配列は、潜在的な免疫原性配列を除去することによってヒト化された。Ab825は、潜在的な脱アミド化および異性化部位についても分析され、そのうちの3つはAb825のCDR内にあった。ヒト化に加えて、潜在的に不安定な部位が変異され、その後、抗体のパネルの結合特性が試験された。
【0065】
次に、最も最適な結合特性を持つヒト化抗CD155抗体をサイトカイン放出アッセイで、注入反応のリスク、増殖反応についてのEpiscreen DC T細胞アッセイ、5,000を超える既知の膜受容体のパネルとのオフターゲットおよびオンターゲット結合、ならびにPVRの結合部位のエピトープマッピングについて、試験した。抗体はまた、サルCD155(アフリカミドリザル-ベロ細胞)に結合する能力に基づいて選択された。免疫原性配列の代わりに、ヒトに対する免疫原性の低い配列が挿入された。抗体は最初にフレームワーク領域で変異し、バリアントの結合および安定性について試験された。抗体がPVR受容体に結合する能力を評価した。PVR受容体への結合は、多数の変異体において維持または改善または悪化した。実施形態では、ソフトウェアを使用して、除去される可能性のある免疫原性配列を特定する。ソフトウェアで特定された配列を削除した後でも、不良な免疫原性反応が残る可能性がある。ヒト化した後でも、さまざまな変異がヒト化抗体の結合または免疫原性に予測できない影響を与える。Ab825配列を、免疫原性およびCDRの不安定性/易罹病性(アスパラギン酸異性化部位または高リスクもしくは中リスクの脱アミド化部位など)について分析し、これらのいずれかがCDRの立体構造、ひいては抗原結合(つまり、CD155への結合)に影響を与える可能性がある。無差別の中親和性および高親和性のMHCクラス2結合配列も、ヒト化のために同定された。CDR内の不安定な配列の変更の予測不可能な性質と、CD155への結合に対するフレームワーク残基の影響により、生成されたCD155に対するヒト化抗体および易罹病性低下抗体を、CD155陽性HAP細胞およびCD155ノックアウトHAP細胞株で試験した。
【0066】
上記のように、CD155としても知られるポリオウイルス受容体(PVR)は、神経膠芽腫、悪性髄膜腫、悪性末梢神経鞘腫瘍、膵臓癌、肺癌、および結腸直腸癌を含むGI悪性腫瘍、トリプルネガティブ(TNBC)を含む乳癌を含む多くの癌で過剰発現される。ポリオウイルス受容体は、受容体密度は低いものの 、脳および脊髄の運動ニューロンなどの細胞の健康な組織にも自然に存在する。さまざまな程度の効率でCD155に結合できる抗体が知られている。このような既知の抗体の一例は、重鎖および軽鎖が本明細書においてAb825と称されるヒトIgG1キメラ抗体に組み込まれたマウス抗体である。Ab825は、ヒトCD155に対するマウス抗体であるD171に由来する。Ab825の重鎖可変領域(本明細書ではVH0と称する)および軽鎖可変領域(本明細書ではVK0と称する)は、ヒトおよび非ヒト霊長類のポリオウイルス受容体に結合する。重鎖可変領域VH0は配列番号1として開示され、軽鎖可変領域VK0は配列番号5として開示される。VH0、CDR1、CDR2、およびCDR3の相補性決定領域(CDR)は、それぞれ配列番号2、配列番号3、および配列番号4として開示される。VK0、CDR1、CDR2、およびCDR3のCDRは、それぞれ配列番号6、配列番号7、および配列番号8として開示される。配列番号1~配列番号31に列挙されるアミノ酸配列、CDR定義およびタンパク質配列決定はKabatによる。
【0067】
抗体をより安定にし、抗体を生きた人間の治療および診断目的に使用する場合の免疫原性と毒性を最小限に抑えるために、本発明の一態様は、この重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VK)領域の修飾およびヒト化を含む。このような抗体または抗原結合フラグメントを形成するために、設計された可変領域遺伝子を、ヒトIgG1またはIgG4重鎖定常ドメインおよびヒトカッパ軽鎖定常ドメインをコードするベクターにクローニングした。キメラ抗体およびヒト化抗体(IgG4 S241Pを含む)をCHO細胞で一時的に発現させ、プロテインAで精製し、Biacore(表面プラズモン共鳴)を使用してPVRへの結合を試験した。
【0068】
抗体の結合特性に必須であると考えられる可変領域内の重要な制約アミノ酸を同定するために、Ab825抗体可変領域の構造モデルを作成および分析した。この構造分析に基づいて、Ab825ヒト化バリアントの生成に使用できる配列セグメントの大規模な予備セットが同定された。これらのセグメントは、ヒトMHCクラスII対立遺伝子に結合するペプチドのインシリコ分析のために選択および分析され、既知の抗体配列関連T細胞エピトープと比較された。ヒトMHCクラスIIに対する重要な非ヒト生殖細胞結合因子として同定された配列セグメント、または我々の分析で有意なヒットを記録した配列セグメントは廃棄された。これにより、セグメントのセットが減少し、セグメント間の接合部に潜在的なT細胞エピトープが含まれていないことを確認するために、上記と同様にこれらの組み合わせが再度分析された。選択された配列セグメントは、重要なT細胞エピトープを欠いた完全な可変領域配列に組み立てられた。ヒト化抗体の熱安定性と凍結融解安定性も測定した。
【0069】
上記の分析を利用して、5つの可変領域重鎖(VH1~VH5と指定)および4つの可変領域軽鎖(VK1~VK4と指定)が結合特性が強化されたものとして同定された。これらの領域は、以下の配列番号によって開示される:
【表1-1】
【表1-2】
【0070】
一実施形態では、本発明は、IgGアイソタイプのポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメントである。この抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号2のCDR1および配列番号4のCDR3を有する、配列番号1、9、10、11、12、または13のいずれか1つからの重鎖可変領域を有する。CDR2は配列番号3になるが、以下の修飾が1つ以上ある:
(1)CDR2の6位のアスパラギンが、アラニン、グルタミン酸、リジン、グルタミン、セリン、もしくはスレオニンのうちの1つで置換される;および/または
(2)CDR2の8位のアスパラギン酸が、グルタミン酸、グリシン、もしくはアルギニンのうちの1つで置換される;および/または
(3)CDR2の9位のスレオニンが、グルタミン酸またはリジンのうちの1つで置換される。
【0071】
軽鎖可変領域は、配列番号6のCDR1および配列番号7のCDR2を有する配列番号5、14、15、16、または17のいずれか1つである。CDR3は配列番号8であるが、CDR3の4番目の位置のアスパラギンが、アラニン、グルタミン酸、グリシン、リジン、グルタミン、またはセリンの1つで置換されている。
【0072】
別の実施形態では、ポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメントは、IgGアイソタイプである。しかしながら、この実施形態では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、それらのCDRに関して定義される。例えば、重鎖可変領域には、配列番号2のVH0 CDR1および配列番号4のVH0 CDR3が含まれる。繰り返すが、VH0 CDR2は配列番号3になるが、以下の修飾が1つ以上ある:
(1)CDR2の6位のアスパラギンが、アラニン、グルタミン酸、リジン、グルタミン、セリン、もしくはスレオニンのうちの1つで置換される;および/または
(2)CDR2の8位のアスパラギン酸が、グルタミン酸、グリシン、もしくはアルギニンのうちの1つで置換される;および/または
(3)CDR2の9位のスレオニンが、グルタミン酸またはリジンのうちの1つで置換される。
【0073】
軽鎖可変領域は、配列番号6のVK0 CDR1および配列番号7のVK0 CDR2を有する。VK0 CDR3は配列番号8であるが、CDR3の4番目の位置のアスパラギンが、アラニン、グルタミン酸、グリシン、リジン、グルタミン、またはセリンの1つで置換されている。より好ましい抗体の実施形態は、前述の重鎖可変領域VH1~VH5(配列番号9~13)および軽鎖可変領域VK1~VK4(配列番号14~17)の特定の組み合わせから開発された。VH3およびVH4は、VK2およびVK3とともに、T細胞エピトーププロファイルに基づいて最良の可変重鎖および軽鎖ヒト化バリアントの一つであると考えられた。VKまたはVkは交換できるように使用される。ここでは、VHおよびVhも交換できるように使用される。
【0074】
VH N54およびVK N92(一文字のアミノ酸記号とアミノ酸位置番号を使用)で同定された潜在的な脱アミド部位、およびVHD56に関連する潜在的な異性化部位に対処するために、まず、VH0/VK0キメラ抗体の変異によって一連のアミノ酸置換(VH N54およびVK N92の潜在的なシーケンス易罹病性については6件、VH D56については5件)をVHおよびVK領域に個別に導入した。VH0/VK0における置換の易罹病性減少には、VH N54Q、N54S、D56EおよびD56GとVK N92EおよびN92Qの変異が含まれ、VH0/VK0のこれらのバリアントは、ポリオウイルス受容体への結合について試験され、結合の分析の結果、次いで、VH3/VK2、VH3/VK3およびVH4/VK3の特定の好ましいヒト化バリアントに組み合わせて組み込まれるように選択された。これらの修飾されたVHおよびVK領域には、次の配列と名称がある:
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0075】
これらのVHおよびVK領域を使用して、ポリオウイルス受容体(CD155)に対する9つの好ましい抗体(または抗原結合フラグメント)が同定され、それぞれ以下の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を有する:
(i)VH3 N54Q D56E[配列番号18]およびVK2 N92E[配列番号19];
(ii)VH3 N54S D56G[配列番号20]およびVK2 N92Q[配列番号21];
(iii)VH3 N54Q D56E[配列番号18]およびVK3 N92E[配列番号22];
(iv)VH3 N54S D56G[配列番号20]およびVK3 N92Q[配列番号23];
(v)VH4 N54Q D56E[配列番号24]およびVK3 N92E[配列番号22];
(vi)VH4 N54S D56E[配列番号26]およびVK3 N92E[配列番号22]:
(vii)VH4 N54S D56G[配列番号25]およびVK3 N92E[配列番号22];
(viii)VH4 N54Q D56E[配列番号24]およびVK3 N92Q[配列番号23];
(ix)VH4 N54S D56G[配列番号25]およびVK3 N92Q[配列番号23]。
【0076】
これら9つの抗体をさらに試験したところ、最も好ましい結合プロファイルが、抗体(ii)VH3 N54S D56G[配列番号20]およびVK2 N92Q[配列番号21];(iv)VH3 N54S D56G[配列番号20]およびVK3 N92Q[配列番号23];および(ix)VH4 N54S D56G[配列番号25]およびVK3 N92Q[配列番号23]で見つかったことが示唆された。
【0077】
上記の抗体に加えて、本発明は、抗体を構成する新規な重鎖可変領域および軽鎖可変領域を包含することを意図している。例えば、配列番号9~13および18、20、および24~26で特定されるVH領域、ならびに配列番号14~17、19、および21~23で特定されるVK領域は、それぞれ、別個の発明とみなされる。本発明におけるヒト化抗体は、PVR(CD155)だけでなくネクチン4(PVRL4)にも結合することが示された。この抗体と本発明に記載の抗原結合フラグメントの二重特異性により、本発明に記載の抗体で治療できる腫瘍の範囲が広がる。D171およびAb825に関連する本発明のヒト化抗体は、PVRに結合することに加えてネクチン4にも結合することが初めて示された。D171およびAB825、またはそれらのバリアントのいずれかがネクチン4に結合することはこれまで示されていませんでした。
【0078】
別の実施形態は、以下を含む、ポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメントを含む:
(a)配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号18、配列番号20、配列番号24、配列番号25または配列番号26のうちの1つから選択される重鎖可変領域、
(b)配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号22または配列番号23のうちの1つから選択される軽鎖可変領域。
【0079】
以下は、上記の抗体および抗原結合フラグメントを含むいくつかの実施形態である。上記の抗体または抗原結合フラグメントは、ネクチン4を発現する腫瘍の治療のためのプロドラッグまたは薬物にコンジュゲートされ得る。上記の抗体または抗原結合フラグメントは、CD155(PVR)を発現する腫瘍の治療のためのプロドラッグまたは薬物に結合され得る。別の実施形態は上記の抗体薬物コンジュゲートを含み、薬物またはプロドラッグが以下:核酸、ベドンチン(vedontin)、ピロロベンゾジアゼピン、リポソーム化ドキソルビシン、トポイソメラーゼ阻害剤、MMAE、MMAF、DM 1、パクリタキセル、テモゾロミド、ドキソルビシン、デルクステカン、放射線増感剤、テシリン、ドカクステル(docaxtel)およびPARP阻害剤のいずれか1つに由来する。一実施形態は、上記の抗体または抗原結合フラグメントを含み、抗体または抗原結合フラグメントは、CD155(PVR)に結合し、CD155(PVR)のTIGITへの結合を遮断する。一実施形態は、上記の抗体または抗原結合フラグメントを含み、抗体または抗原結合フラグメントはネクチン4に結合し、Tネクチン4のIGITへの結合を遮断する。一実施形態は、非ヒト霊長類のCD155(PVR)に結合する上記の抗体または抗原結合フラグメントを含む。一実施形態は、上記の抗体または抗原結合フラグメントを含み、抗体または抗原結合フラグメントはネクチン4に結合する。別の実施形態は、上記の抗体または抗原結合フラグメントを含み、抗体または抗原結合フラグメントは、以下の(a)T細胞および(b)NK細胞の少なくとも1つのDNAMイオンの上昇をもたらすCD155(PVR)に結合する。別の実施形態は、ポリオウイルス受容体またはネクチン4のいずれかに結合する抗体または抗原結合フラグメントと、T細胞上のCD3に結合する二重特異性抗体または抗原結合フラグメントの第2の部分とから構成される二重特異性抗体または抗原結合フラグメントを含む。別の実施形態は、ポリオウイルス受容体またはネクチン4のいずれかに結合する上記の抗体または抗原結合フラグメントと、NK細胞上の受容体に結合する二重特異性抗体または抗原結合フラグメントの第2の部分とから構成される二重特異性抗体または抗原結合フラグメントを含む。別の実施形態は、CD155に対する抗体または抗原結合フラグメントは、ヒトに投与され、抗体または抗原結合フラグメントは、ヒトにおいてCD155に結合し、ポリオウイルスがCD155に結合するのを防止する抗体または抗原結合フラグメントを含む。
【0080】
別の実施形態は、請求項63に記載の抗体または抗原結合フラグメントを含み、CD155に対する抗体または抗原結合フラグメントは、CTLA4、PD1、PDL1、CD112R、OX40、TIGIT、NKG2A、CEACAM1、B7H3、B7-H4、VISTA、LAG3、CD137、KIR、TIM1、TIM3、LAIR1、HVEM、BTLA、CD160、CD200、CD200R、およびA2rからなる群から選択される免疫チェックポイント分子に対する抗体と組み合わせて、癌の治療のためにヒトに投与される。別の実施形態は、請求項63に記載の抗体を含み、CD155に対する抗体は、S241Pヒンジ変異またはS228Pヒンジ変異を有するIgG4アイソタイプを含む。別の実施形態は、請求項63に記載の抗体または抗原結合フラグメントを含み、CD155に対する抗体または抗原結合フラグメントは、以下(a)I-124、(b)ガリウム68、または(c)ルテチウム177、(d)CTスキャン用の造影剤、(e)MRIスキャン用の造影剤、および(f)PETスキャン用の診断剤のいずれかの標識を含む。別の実施形態は、請求項63に記載の抗体または抗原結合フラグメントを含み、CD155に対する抗体または抗原結合フラグメントは、以下のサイトカインのmRNAまたは遺伝子編集酵素のmRNA (a)IL2をコードするmRNA、(b)IL7をコードするmRNA、および(c)IL12をコードするmRNA、(d)IL15をコードするmRNA、(e)IL21をコードするmRNA、(f)IFNガンマをコードするmRNA、(g)IFNアルファをコードするmRNA、(h)GMCSFをコードするmRNA、(i)Cas9をコードするmRNA、(j)Casl2aをコードするmRNA、または(k)Cas13をコードするmRNA、のうちの1つをコードするmRNAにコンジュゲートされる。別の実施形態は、上記の抗原結合フラグメントを含むCAR T細胞またはCAR NK細胞を含む。別の実施形態は、上記の抗体または抗原結合フラグメントを含み、CD155に対する抗体または抗原結合フラグメントは、腫瘍上に発現されたCD155に結合し、ADCCまたはCDCを介して腫瘍に対する免疫応答を誘発する。実施形態は、D171抗体コンジュゲートが含まれ、D171抗体コンジュゲートは、CD155を発現する腫瘍に結合し、D171抗体コンジュゲートは腫瘍によって内在化される。
【0081】
別の実施形態は、配列番号1の重鎖可変領域および配列番号5の軽鎖可変領域を有する抗体または抗原結合フラグメントを含み、抗体または抗原結合フラグメントはネクチン4に結合する。本発明のこの抗体または抗原結合フラグメントは、ネクチン4のTIGITへの結合を遮断する。この抗体または抗原結合フラグメントは、ネクチン4を発現する腫瘍の治療用のプロドラッグまたは薬物にコンジュゲートされ得る。配列番号1の重鎖可変領域および配列番号5の軽鎖可変領域を含む抗体または抗原結合フラグメントであって、抗体または抗原結合フラグメントはPVRに結合し、DNAMイオンT細胞またはNK細胞の上昇を引き起こす。
【実施例】
【0082】
CD155およびネクチン4に対するヒト化抗体および抗原結合フラグメントの発明
【0083】
実施例1.チェックポイント遮断
CD155およびネクチン4はそれぞれTIGITのリガンドとして記載されている。TIGITは免疫細胞上で発現されるため、CD155とTIGITの結合、またはネクチン4とTIGITの結合は、T細胞またはNK細胞の阻害につながる。本発明の抗体によるCD155またはネクチン4の遮断は、CD155またはネクチン4(または両方)のいずれかがTIGITに結合することを妨げる。PVRはTIGITの天然リガンドである(Alteber et al in Cancer Discovery in May 2021)。PVRはCD226およびCD96の天然リガンドでもある。D171は、PVR(CD155)がTIGITに結合するのを遮断することが示されている(Yu et al in 2009 in Nature Immunuology Volume 10 (9) Supplementary Figure 4b and 4c)。Rechesら(Journal of Immunotherapy of Cancer in 2020)は、ネクチン4がTIGITのリガンドであることを示した。D171抗体はPVRにも結合し、PVRがCD96に結合するのを遮断する(Meyer et al Journal of Biological Chemistry Vol 284 (4) pages 2235-2244 see also page 2242)。
【0084】
実施例2.T細胞およびNK細胞エンゲージャー
CD155およびネクチン4に結合する本発明の抗体または抗原結合フラグメントを使用して、二重特異性抗体または二重特異性抗原結合フラグメントを作製することができる。二重特異性抗体または二重特異性抗原結合フラグメントは、二重特異性分子がCD155およびCD3(またはネクチン4およびCD3)に結合する本発明の実施形態である。the Journal of Cancer in 2019 Vol 10 page 5153のMaらは、CD3およびCD155を標的とする二重特異性抗体を作製した。これらの二重特異性は膀胱癌に対して活性があることが示された。さらなる例は、CD155(またはネクチン4)とNK細胞上の受容体と結合して免疫細胞を関与させ、CD155(またはネクチン4)を発現する腫瘍を破壊する二重特異性を含む。本明細書に開示される抗体および抗原結合フラグメントは、二重特異性抗体に組み込むことができる。
【0085】
実施例3.抗体薬物コンジュゲート(ADC)。
抗体薬物コンジュゲート(ADC)は本発明の実施形態であり、ここで、記載された抗体は、ベドンチン(Vedontin)、デルクステカン、およびテシリンなどの薬物にコンジュゲートされ、これらの薬物は本発明の抗体にコンジュゲートされ、CD155またはネクチン4(または両方)を発現する腫瘍に送達される。CD155を標的とするADCは、治療薬の送達に組み込まれ得る。標的受容体もチェックポイント分子であることを考慮すると、CD155に対するこれらのADCは複数の作用のメカニズムを有する。抗体薬物コンジュゲートは、カテプシン感受性ペプチド架橋剤を含むがこれに限定されない、本分野で知られている様々なリンカーを介してコンジュゲートされ得る。抗体または抗原結合フラグメントは、MMAE、MMAF、パクリタキセル、テモゾロミド、ドキソルビシン(リポソームドキソルビシンを含む)、デルクステカン、トポイソメラーゼ阻害剤、放射線増感剤、放射性標識抗体または抗原結合フラグメント、テシリン、任意のピロロベンゾジアゼピン(PBD)、DM1、ベドンチンおよびドカクステルならびにルカパリブなどのPARP阻害剤のような少なくとも1つの薬物とコンジュゲートしてもよい(抗体薬物コンジュゲート)。配列番号1の重鎖可変領域および配列番号5の軽鎖可変領域を含む抗体または抗原結合フラグメントは、フルオロフォアにコンジュゲートされ、そして、哺乳類に投与すると、抗体コンジュゲートが哺乳類のCD155(PVR)を発現する腫瘍に結合して蓄積した(
図4)。
【0086】
実施例4.ADC。
mRNAを含む核酸送達を備えたADC。CD155発現癌におけるmRNAの送達および発現を伴う、レポーター分子EGFPのmRNAを封入するリポソームの抗CD155コンジュゲート。抗体または抗原結合フラグメントは、抗体または抗原結合フラグメントを介して送達される1つ以上の治療用核酸にコンジュゲートされることもでき、ここで、治療用核酸は、サイレンシングRNA、shRNA、長RNA、リボザイム、メッセンジャーRNA、プラスミドDNA、または非プラスミド二本鎖DNA、ならびに短い一本鎖DNAおよび二本鎖DNAのうちのいずれか1つ以上である。抗体薬物コンジュゲートはまた、本発明の抗体または抗原結合フラグメントをmRNAとコンジュゲートする(リポソームに封入されるか、またはポリマーと複合体化される)ことによって調製され得、ここで、mRNAは、ペプチド、タンパク質(IL12、IL15、またはIL2など)および酵素(遺伝子編集酵素Cas9またはCas12a、およびCas13などの他のCas酵素など)をコードする。D171抗体コンジュゲートは、D171抗体コンジュゲートがCD155を発現する腫瘍に結合し、D171抗体コンジュゲートが腫瘍によって内在化される場合に形成された(
図2および
図3)。mRNAペイロードは、抗CD155抗体にコンジュゲートされて、ワクチンを含むポリペプチドおよびタンパク質をコードするmRNAを送達することができる。
【0087】
実施例5.DNAM1-CD155軸。
DNAM1(CD226)の上昇は、CD155の遮断(膜性CD155または可溶性CD155の遮断)を伴う抗CD155抗体を投与することによって達成され得る。DNAM1-CD155軸は、細胞膜上でのCD155の発現、または可溶性CD155として分泌されたCD155の発現がDNAM1(CD226)発現を下方制御する場合に記載される。CD155に対するヒト化モノクローナル抗体を用いた治療的介入は、抗CD155抗体が癌またはHIV感染症(またはDNAM1(CD226)が下方制御される他の疾患)の患者に投与される本発明の実施形態である。本発明のヒト化抗CD155抗体による膜性CD155または可溶性CD155の遮断は、T細胞およびNK細胞上のDNAM1(CD226)の発現を増加させる。DNAM1の上昇により免疫監視メカニズムが再確立される。Carlstenら(Journal of Immunology in 2009 Volume 183 page 4921)は、CD155腫瘍がNK細胞上のCD155を下方制御することを示した。Sethらは、2011年のthe Journal of Biological Chemistryで、抗CD155抗体がT細胞内のCD226(DNAM1)を上方制御することを示した。CD155に対する本出願に開示される抗体または抗原結合フラグメントは、敗血症の治療に使用され得る。
【0088】
実施例6.CAR TおよびCAR NK。
CAR T細胞およびCAR NK細胞。キメラ抗原受容体T細胞およびキメラ抗原受容体NK細胞は、本発明に記載のヒト化抗原結合フラグメントを用いて調製され得る。CAR T細胞およびCAR NK細胞は、CD155(PVR)またはネクチン4のいずれかを過剰発現する癌(またはCD155とネクチン4の両方を発現する腫瘍)を標的とするために使用され得る。例えば、配列番号25などのHCVRおよび配列番号23などのLCVRから構成されるヒト化抗原結合フラグメントを、CAR T細胞およびCAR NK細胞に組み込むことができる。
【0089】
実施例7.ADCCおよびCDC。
ADCCおよびCDCは、抗体が腫瘍細胞に結合し、次いでエフェクター細胞が抗体でコーティングされた癌細胞を破壊するメカニズムである。CD155に対する抗体は、癌細胞に結合してコーティングすると、ADCCまたはCDCを促進することができる。抗CD155抗体のFc領域は、ADCCまたはCDC用にさらに最適化され得る。
【0090】
実施例8.セラノスティクス(Theranostics)。
本明細書に記載するCD155に対する抗体または抗原結合フラグメントは、フルオロフォア、IR800色素などの少なくとも1つのマーカー化合物にコンジュゲートされ得る。抗体および抗原結合フラグメントは、診断用のI-124またはガリウム68または治療用のルテチウム177などの放射性標識で簡単に放射性標識され得る。本開示に記載される抗体または抗原結合フラグメントは、フルオロフォア、IR800色素などの少なくとも1つのマーカー化合物にコンジュゲートされ得る。
【0091】
実施例9.IgG4 S241Pアイソタイプ。
本明細書に記載される抗体または抗原結合フラグメントは、IgGアイソタイプ、例えばIgG1、IgG2またはIgG4、ならびにIgEおよびIgMアイソタイプであり得る。一実施形態では、CD155に対するヒト化抗体は、S241Pヒンジ変異またはS228Pヒンジ変異を有するIgG4アイソタイプを含む。
【0092】
実施例10.PVRを遮断する受動的免疫。
本明細書で開示される抗体は、ポリオウイルス受容体(CD155)に結合し、ポリオウイルスがポリオウイルス受容体(CD155)に結合するのを遮断することが知られているD171に関連している(Nobis et al 1985 in Journal of General Virology Vol 66 page 2563)。本明細書に開示されるヒト化抗体は、ポリオウイルス受容体を遮断し、ヒトにおいてポリオウイルスがポリオウイルス受容体に結合するのを遮断することができる。本発明の抗体は、ポリオウイルスに曝露された感受性のある個体に受動免疫を提供するために患者に投与することができる。
【0093】
実施例11.エピトープマッピング。
CD155およびネクチン4に結合するヒト化モノクローナル抗体を使用したPVRおよびネクチン4の線形および3Dエピトープマッピングは、ペプチド切除アプローチを使用して実行され、ここで、CD155またはネクチン4抗原の親和性は、固定化されたテストモノクローナル抗体で捕捉される。未結合ペプチドの洗浄による免疫複合体のタンパク質分解を制限する(GluCおよびLysC消化)。次いで、親和性結合ペプチドの溶出を高分解能質量分析法で分析する。次に、抗体の有無による抗原ペプチドプロファイルの比較によるペプチドの同定が分析される。
【0094】
実施例12.ヒト化Ab825およびD171
Ab825の配列分析により、欠陥のあるさまざまな部位が特定されたことが示された。Ab825(配列番号1)の重鎖可変領域(HCVR)は、18位(バリン)および64位(フェニルアラニン)に潜在的な高親和性無差別MHCクラス2アンカー残基を有する。Ab825(配列番号5)の軽鎖可変領域(LCVR)は、2位(イソロイシン)および53位(チロシン)に潜在的な高親和性無差別MHCクラス2アンカー残基を有する。Ab825のHCVR(配列番号1)はまた、32位(チロシン)、48位(イソロイシン)および93位(バリン)に潜在的なP1中親和性無差別MHCクラス2アンカー残基を有する。Ab825(配列番号5)のLCVRはまた、3位(バリン)、4位(メチオニン)、29位(バリン)、47位(ロイシン)に潜在的なP1中親和性無差別MHCクラス2アンカー残基を有する。D171またはAb825の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のヒト化は、本発明以前には記載も教示もされていなかった。さらに、抗CD155抗体または抗原結合フラグメントを安定化する変異を有するCDRにおけるAb825の潜在的な脱アミド部位および潜在的な異性化部位の安定化は、本発明の重要な部分である。CDRの変異は結合に影響を与える可能性が高く、実際、重鎖可変領域(HCVR)のN54およびD56の変異、ならびに軽鎖可変領域(LCVR)のN92の変異で試験されたヒト化バリアントの多くは、EC50によって証明されるように、ベロ細胞、Hap細胞およびU87細胞では結合が著しく減少した(
図8)。HCVRのN54S D56GおよびLCVRのN92Qは最も最適な結合特性を有しており、これらの変異はHCVRおよびLCVRのCDR配列内にあった。脱アミド化を受けやすいと同定された配列番号1のVH(Asn)54の位置は、とりわけアミノ酸 アラニン、グルタミン酸、リジン、グルタミン、セリンおよびトレオニンで変異され得る。異性化を受けやすいと同定された配列番号1のVH Asp56は、とりわけアミノ酸 グルタミン酸、アルギニンまたはトレオニンで変異され得、配列番号1のVH T57は、とりわけグルタミン酸またはリジンで変異され得る。配列番号5のVkN92も潜在的な脱アミド部位として同定されており、とりわけアミノ酸、アラニン、グルタミン酸、グリシン、リジン、グルタミンまたはセリンで変異され得る。
【0095】
DC T細胞アッセイは、ヒト化抗CD155抗体の異なるバリアントが異なる程度の免疫原性を有することを示した。
図6のデータは、9日目、10日目、および11日目における50人のドナーからの増殖反応の頻度パーセントを示す。HCVR VH4 N54S D56G(配列番号25)およびLCVR Vk3 N92Q(配列番号23)を有する抗体は、免疫原性が最も低く、増殖頻度が最も低く、そして平均刺激指数(SI)が最も低く、FDA承認のハーセプチンで観察されたものよりも免疫原性がさらに低かった。サイトカイン放出アッセイは、HCVR VH4 N54S D56G(配列番号25)およびLCVR Vk3 N92Q(配列番号23)を有する抗体が、対照アービタックス(Erbitux)と同様のプロファイルで注入反応のリスクが最も低いことも示した。HCVR VH4 N54S D56G(配列番号25)およびLCVR Vk3 N92Q(配列番号23)を有する抗体は、サイトカイン放出アッセイにおいてAb825(VH0/Vk0)よりも注入反応のリスクがはるかに低い。さらに、ヒト化変異体は、5000を超える細胞膜受容体に対して試験した場合、PVRおよびネクチン4に結合することが判明した(
図7)。本明細書に開示されるAb825およびAb825のヒト化バリアントは、本発明以前にはネクチン4に結合することは知られていなかった。結果に基づいて、ヒト化Ab825、D171、およびAb825はネクチン4に結合すると予想される。さらに、CD155に対する主要なヒト化モノクローナル抗体は、nM未満の解離定数を有しており、したがって高い親和性が確認された。配列番号23(LCVR)および配列番号25(HCVR)によって定義されるIgG4(S241P)を有するモノクローナル抗体は、表面プラズモン共鳴においてKd=0.3nMを有した。
【0096】
実施例13.ヒト化マウスでの試験。
一時的にヒト化したマウスに、CD155を発現する(ルシフェラーゼを含む)ヒト腫瘍が移植され、CD155に対するヒト化IgG4 S241P抗体を、1組のマウスに単独で、または他のチェックポイント阻害剤と組み合わせてマウスにIV投与し、腫瘍のサイズを生物発光イメージングで記録する。同様に、ヒト化抗CD155抗体および抗CD3抗体を有する二重特異性抗体を、マウスの1つのグループで試験する。別のマウスグループは、ヒト化抗CD155マウスとカテプシン感受性ペプチド架橋剤とコンジュゲートしたデルクステカンを用いて調製されたADCを用いて試験される。マウスの1つの対照グループは、未処理のマウスである。一時的にヒト化したマウスは本分野でよく知られており、ヒト腫瘍をヒト血液を用いて短期間研究することができる。
【0097】
同様に、本発明は、抗体および抗原結合フラグメントだけでなく、抗体または抗原結合フラグメントをコードするDNA、および抗体または抗原結合フラグメントをコードするヌクレオチド配列を含む任意の他のポリヌクレオチドまたはプラスミドも企図する。本発明はまた、本出願に開示される抗体または抗原結合フラグメントのいずれかを産生する任意の細胞株を含む。本明細書に開示され特許請求される組成物および方法はすべて、本開示に照らして過度の実験を行うことなく作製および実行することができる。本発明の組成物および方法を好ましい実施形態に関して説明してきたが、添付の特許請求の範囲によってさらに定義される本発明の概念精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の組成物および方法に変形を適用できることは、当業者には明らかであろう。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-06-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の重鎖可変領域および軽鎖可変領域から構成されるポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメントをコードする核酸配列:
(a)配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号18、配列番号20、配列番号24、配列番号25または配列番号26のうちの1つから選択される重鎖可変領域、および
(b)配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号22または配列番号23のうちの1つから選択される軽鎖可変領域。
【請求項2】
以下を含むポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメント:
(a)配列番号18、配列番号20、配列番号24、配列番号25または配列番号26のうちの1つから選択される重鎖可変領域、および
(b)配列番号19、配列番号21、配列番号22または配列番号23のうちの1つから選択される軽鎖可変領域。
【請求項3】
CD155(PVR)を発現する腫瘍の治療のためにヒトに投与されるプロドラッグまたは薬物にコンジュゲートした、請求項2に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項4】
前記薬物またはプロドラッグが以下のいずれか1つに由来する、請求項3に記載の抗体または抗原結合フラグメント:核酸、ベドンチン(vedontin)、ピロロベンゾジアゼピン、リポソーム化ドキソルビシン、トポイソメラーゼ阻害剤、MMAE、MMAF、DM1、パクリタキセル、テモゾロミド、ドキソルビシン、デルクステカン、放射線増感剤、テシリン、ドカクステル(docaxtel)およびPARP阻害剤。
【請求項5】
前記抗体または抗原結合フラグメントは、CD155(PVR)に結合し、CD155(PVR)のTIGITへの結合を遮断する、請求項2に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項6】
CD155(PVR)に結合する第1の部分と、以下のうちの少なくとも1つと結合する第2の部分と、を含む二重特異性抗体または抗原結合フラグメントを含む、請求項2に記載の抗体または抗原結合フラグメント:(a)T細胞上のCD3、および(b)NK細胞上のNKp46。
【請求項7】
CD155(PVR)に結合する第1の部分と、以下のうちの少なくとも1つと結合する第2の部分とを含む二重特異性抗体または抗原結合フラグメントを含む、請求項2に記載の抗体または抗原結合フラグメント:(a)トランスフェリン受容体1および(b)トランスフェリン受容体2。
【請求項8】
CD155に対する前記抗体または抗原結合フラグメントは、CTLA4、PD1、PDL1、CD112R、OX40、TIGIT、NKG2A、CEACAM1、B7H3、B7-H4、VISTA、LAG3、CD137、KIR、TIM1、TIM3、LAIR1、HVEM、BTLA、CD160、CD200、CD200R、およびA2rからなる群から選択される免疫チェックポイント分子に対する抗体と組み合わせて、癌の治療のためにヒトに投与される、請求項2に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項9】
以下の重鎖可変領域および軽鎖可変領域から構成されるポリオウイルス受容体(CD155)に対する抗体または抗原結合フラグメントを産生する細胞株:
(a)配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号18、配列番号20、配列番号24、配列番号25または配列番号26のうちの1つから選択される重鎖可変領域、および
(b)配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号22または配列番号23のうちの1つから選択される軽鎖可変領域。
【請求項10】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸ポリヌクレオチド酸またはプラスミド。
【国際調査報告】