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特表2024-531430抗原特異的T細胞受容体とキメラ補助刺激受容体との組合せ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】抗原特異的T細胞受容体とキメラ補助刺激受容体との組合せ
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240822BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240822BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240822BHJP
   C07K 14/725 20060101ALN20240822BHJP
   C07K 14/715 20060101ALN20240822BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N15/12
C12N5/0783
C07K14/725
C07K14/715
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510623
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2022073443
(87)【国際公開番号】W WO2023025779
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】21192987.2
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517419917
【氏名又は名称】メディジーン イミュノテラピーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(72)【発明者】
【氏名】ビュルデック,マヤ
(72)【発明者】
【氏名】ムッツェ,キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】プリンツ,ペトラ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムブレヒト,アンジェリカ
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA46
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、多機能である、TCRおよび補助刺激受容体を発現する、すなわち2種以上のタンパク質を分泌する免疫細胞を指す。例示的な免疫細胞は、(i)PRAMEペプチドSLLQHLIGLに特異的なT細胞受容体(TCR)またはNY-ESO-1ペプチドSLLMWITQCに特異的なTCRならびに(ii)PD-1に由来する細胞外ドメイン(CD279)および4-1BBに由来する細胞内ドメイン(CD137)を含むキメラ補助刺激受容体を発現する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)抗原特異的TCR、および
(B)キメラ補助刺激受容体
を発現する細胞を含む細胞集団であって、
少なくとも2種のタンパク質を分泌する細胞を含む細胞集団。
【請求項2】
前記キメラ補助刺激受容体が、
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン、
- 膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含み、
前記細胞集団が、少なくとも2種のタンパク質を分泌する細胞を含む、請求項2に記載の細胞集団。
【請求項3】
前記キメラ補助刺激受容体が、
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン、
- PD-1由来である膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含み、
前記細胞集団が、少なくとも2種のタンパク質を分泌する細胞を含む、請求項2に記載の細胞集団。
【請求項4】
(A)
- 配列番号35のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号36のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号37のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、ならびに
- 配列番号38のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号39のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号40のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖
を含むNY-ESO-1/LAGE-1特異的TCR;ならびに
(B)
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン、
- 膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含むキメラ補助刺激受容体
を発現する細胞を含み、
前記細胞集団が、少なくとも2種のタンパク質を分泌する細胞を含む、請求項3に記載の細胞集団。
【請求項5】
(A)
- 配列番号2のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、ならびに
- 配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖
を含むPRAME特異的T細胞受容体(TCR);ならびに
(B)
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン、
- 膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含むキメラ補助刺激受容体
を発現する細胞を含み、
少なくとも2種のタンパク質を分泌する細胞を含む、請求項1から3に記載の細胞集団。
【請求項6】
少なくとも3種のタンパク質を分泌する細胞を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞集団。
【請求項7】
少なくとも4種のタンパク質を分泌する細胞を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞集団。
【請求項8】
少なくとも5種のタンパク質を分泌する細胞を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞集団。
【請求項9】
前記タンパク質が、エフェクタータンパク質、刺激性サイトカインおよび化学誘引性サイトカインからなる群から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞集団。
【請求項10】
前記エフェクタータンパク質が、Gzm-B、IFN-γ、Perforin、TNF-α、TNF-β、MIP-1αからなる群から選択される、請求項9に記載の細胞集団。
【請求項11】
前記エフェクタータンパク質が、Gzm-B、IFN-γ、Perforin、TNF-α、TNF-βからなる群から選択される、請求項10に記載の細胞集団。
【請求項12】
前記刺激性サイトカインが、GM-CSF、IL-2、IL-5、IL-7、IL-8、IL-9、IL-12からなる群から選択される、請求項9から11に記載の細胞集団。
【請求項13】
前記刺激性サイトカインが、GM-CSF、IL-2、IL-7、IL-8、IL-9、IL-12からなる群から選択される、請求項9から12に記載の細胞集団。
【請求項14】
前記化学誘引性サイトカインが、IP-10およびMIP-1βから選択される、請求項9から13に記載の細胞集団。
【請求項15】
前記タンパク質が、Gzm-B、IFN-γ、Perforin、TNF-α、TNF-β、MIP-1α、GM-CSF、IL-2、IL-5、IL-7、IL-8、IL-9、IL-12、IP-10およびMIP-1βからなる群から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞集団。
【請求項16】
前記タンパク質が、Gzm-B、IFN-γ、Perforin、TNF-α、TNF-β、GM-CSF、IL-2、IL-8、MIP-1βおよびIP-10からなる群から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞集団。
【請求項17】
前記タンパク質が、Gzm-B、IFN-γ、Perforin、TNF-α、TNF-β、GM-CSF、IL-2、MIP-1βからなる群から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞集団。
【請求項18】
前記タンパク質が、IFN-γGzm-B、およびIP-10からなる群から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞集団。
【請求項19】
前記タンパク質が、IFN-γおよびGzm-Bからなる群から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞集団。
【請求項20】
前記TCRが、配列番号34に記載されるアミノ酸配列を有するNY-ESOペプチドまたはその一部、好ましくはそのHLA-A2結合形態に結合することが可能である、請求項4および6から19のいずれか一項に記載の細胞集団。
【請求項21】
前記HLA-A2が、HLA-A02:01、HLA-A02:02、HLA-A02:04またはHLA-A02:09にコードされる分子、好ましくはHLA-A2:01にコードされる分子である、請求項20に記載の細胞集団。
【請求項22】
前記TCRが、アミノ酸配列SLLQHLIGL(配列番号1)を有するPRAMEペプチドもしくはその一部、またはそのHLA-A2結合形態に結合することが可能である、請求項5から19のいずれか一項に記載の細胞集団。
【請求項23】
前記HLA-A2が、HLA-A02:01、HLA-A02:02、HLA-A02:04またはHLA-A02:09にコードされる分子である、請求項22に記載の細胞集団。
【請求項24】
PD-1由来のポリペプチドを含有する前記細胞外ドメインが配列番号28の配列を含み、
4-1BB由来のポリペプチドを含有する前記細胞内ドメインが、配列番号32の配列を含む、請求項3から23のいずれか一項に記載の細胞集団。
【請求項25】
前記膜貫通ドメインがPD-1に由来し、好ましくは、PD-1由来のポリペプチドを含有する前記膜貫通ドメインが配列番号30の配列を含み、好ましくは、前記キメラ補助刺激受容体が配列番号26の配列を含む、請求項3から24のいずれか一項に記載の細胞集団。
【請求項26】
がんの処置において使用するための、先行する請求項のいずれか一項に記載の細胞集団。
【請求項27】
(A)抗原特異的TCR、および
(B)キメラ補助刺激受容体
を発現する標的特異的免疫細胞であって、
少なくとも2種のタンパク質を分泌する標的特異的免疫細胞。
【請求項28】
前記キメラ補助刺激受容体が、
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン、
- 膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含み、
前記標的特異的免疫細胞が、少なくとも2種のタンパク質を分泌する、請求項27に記載の標的特異的免疫細胞。
【請求項29】
前記キメラ補助刺激受容体が、
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン、
- PD-1由来である膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含み、
前記標的特異的免疫細胞が、少なくとも2種のタンパク質を分泌する、請求項28に記載の標的特異的免疫細胞。
【請求項30】
(A)
- 配列番号35のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号36のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号37のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、ならびに
- 配列番号38のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号39のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号40のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖
を含むNY-ES O-1/LAGE-1特異的TC;
(B)
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン、
- 膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含むキメラ補助刺激受容体
を発現し、
少なくとも2種のタンパク質を分泌する、請求項27から29のいずれか一項に記載の標的特異的免疫細胞。
【請求項31】
(A)
- 配列番号2のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、ならびに
- 配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖
を含むPRAME特異的T細胞受容体(TCR);ならびに
(B)
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン、
- 膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含むキメラ補助刺激受容体
を発現し、
少なくとも2種のタンパク質を分泌する、請求項27から29のいずれか一項に記載の標的特異的免疫細胞。
【請求項32】
少なくとも3種のタンパク質を分泌する、請求項27から31のいずれか一項に記載の標的特異的免疫細胞。
【請求項33】
少なくとも4種のタンパク質を分泌する、請求項27から32のいずれか一項に記載の標的特異的免疫細胞。
【請求項34】
少なくとも5種のタンパク質を分泌する、請求項27から33のいずれか一項に記載の標的特異的免疫細胞。
【請求項35】
前記タンパク質が、エフェクタータンパク質、刺激性サイトカインおよび化学誘引性サイトカインからなる群から選択される、請求項27から34のいずれか一項に記載の標的特異的免疫細胞。
【請求項36】
前記エフェクタータンパク質が、Gzm-B、IFN-γ、Perforin、TNF-α、TNF-β、MIP-1αからなる群から選択される、請求項35に記載の標的特異的免疫細胞。
【請求項37】
前記エフェクタータンパク質が、Gzm-B、IFN-γ、Perforin、TNF-α、TNF-βからなる群から選択される、請求項36に記載の標的特異的免疫細胞。
【請求項38】
前記刺激性サイトカインが、GM-CSF、IL-2、IL-5、IL-7、IL-8、IL-9、IL-12からなる群から選択される、請求項35から37のいずれか一項に記載の標的特異的免疫細胞。
【請求項39】
前記刺激性サイトカインが、GM-CSF、IL-2、IL-7、IL-8、IL-9、IL-12からなる群から選択される、請求項35から38のいずれか一項に記載の標的特異的免疫細胞。
【請求項40】
前記化学誘引性サイトカインが、IP-10およびMIP-1βから選択される、請求項35から39のいずれか一項に記載の標的特異的免疫細胞。
【請求項41】
前記タンパク質が、Gzm-B、IFN-γ、Perforin、TNF-α、TNF-β、MIP-1α、GM-CSF、IL-2、IL-5、IL-7、IL-8、IL-9、IL-12、IP-10およびMIP-1βからなる群から選択される、請求項27から40のいずれか一項に記載の標的特異的免疫細胞。
【請求項42】
前記タンパク質が、Gzm-B、IFN-γ、Perforin、TNF-α、TNF-β、GM-CSF、IL-2、IL-8、MIP-1βおよびIP-10からなる群から選択される、請求項27から41のいずれか一項に記載の標的特異的免疫細胞。
【請求項43】
前記タンパク質が、Gzm-B、IFN-γ、Perforin、TNF-α、TNF-β、GM-CSF、IL-2、MIP-1βからなる群から選択される、請求項27から42のいずれか一項に記載の細胞集団。
【請求項44】
前記タンパク質が、IFN-γ、Gzm-B、およびIP-10からなる群から選択される、請求項27から43のいずれか一項に記載の標的特異的免疫細胞。
【請求項45】
前記タンパク質が、IFN-γおよびGzm-Bからなる群から選択される、請求項27から44のいずれか一項に記載の標的特異的免疫細胞。
【請求項46】
前記TCRが、配列番号34に記載されるアミノ酸配列を有するNY-ESOペプチドまたはその一部、好ましくはそのHLA-A2結合形態に結合することが可能である、請求項30および32から45のいずれか一項に記載の標的特異的免疫細胞。
【請求項47】
前記HLA-A2が、HLA-A02:01、HLA-A02:02、HLA-A02:04またはHLA-A02:09にコードされる分子、好ましくはHLA-A2:01にコードされる分子である、請求項46に記載の標的特異的免疫細胞。
【請求項48】
前記TCRが、アミノ酸配列SLLQHLIGL(配列番号1)を有するPRAMEペプチドもしくはその一部、好ましくはそのHLA-A2結合形態に結合することが可能である、請求項31から45のいずれか一項に記載の標的特異的免疫細胞。
【請求項49】
前記HLA-A2が、HLA-A02:01、HLA-A02:02、HLA-A02:04またはHLA-A02:09にコードされる分子である、請求項48に記載の標的特異的免疫細胞。
【請求項50】
PD-1由来のポリペプチドを含有する前記細胞外ドメインが、配列番号28の配列を含み、
4-1BB由来のポリペプチドを含有する前記細胞内ドメインが、配列番号32の配列を含む、請求項29から49のいずれか一項に記載の標的特異的免疫細胞。
【請求項51】
前記膜貫通ドメインがPD-1に由来し、好ましくは、PD-1由来のポリペプチドを含有する前記膜貫通ドメインが配列番号30の配列を含み、好ましくは、前記キメラ補助刺激受容体が配列番号26の配列を含む、請求項29から50のいずれか一項に記載の標的特異的免疫細胞。
【請求項52】
リンパ球である、請求項27から51のいずれか一項に記載の標的特異的免疫細胞。
【請求項53】
がんの処置において使用するための、請求項27から52のいずれか一項に記載の標的特異的免疫細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多機能である、TCRおよび補助刺激受容体を発現する、すなわち2種以上のタンパク質を分泌する免疫細胞に関する。例示的な免疫細胞は、(i)PRAMEペプチドSLLQHLIGLに特異的なT細胞受容体(TCR)またはNY-ESO-1ペプチドSLLMWITQCに特異的なTCRならびに(ii)PD-1に由来する細胞外ドメイン(CD279)および4-1BBに由来する細胞内ドメイン(CD137)を含むキメラ補助刺激受容体を発現する。
【背景技術】
【0002】
PRAMEは、様々な腫瘍、好ましくはメラノーマにおいて発現される腫瘍関連抗原である。さらに、PRAMEは、ブドウ膜メラノーマなどの転移に関する独立したバイオマーカーとして(Fiedl et al., Clin Cancer Res 2016 March; 22(5): 1234-1242)、およびDLBCLの予後マーカーとして(Mitsuhashi et al., Hematology 2014, 1/2014)記載されている。PRAMEは、精巣を除く正常組織では発現されない。この発現パターンは、MAGE、BAGEおよびGAGEなどの他のがん精巣(CT)抗原の発現パターンに類似している。コードされたタンパク質は、レチノイン酸受容体のリプレッサーとして作用し、この機能によってがん細胞の成長に有利に働くと考えられる。選択的スプライシングによって複数の転写バリアントが生じる。トリプルネガティブ乳がんにおけるPRAMEの過剰発現は、上皮間葉転換の誘導によりがん細胞の運動を促進することも判明している(Al-Khadairi et al., Journal of Translational Medicine 2019; 17: 9)。慢性リンパ性白血病ではPRAMEの欠失が報告されているが、この遺伝子はB細胞では発現していないので、これに機能的な関連性はなく、欠失は生理的な免疫グロブリン軽鎖の再配列の結果である。CT抗原PRAMEについて記載された特徴に基づくと、TCR指向性細胞ベースの免疫療法を使用することによって様々なタイプのがんの処置に好適な標的となる。そのためには、抗原に対する特異性が高く、細胞産物がサイトカインの放出、細胞毒性および増殖を含む腫瘍クリアランスに必要なエフェクター機能を発揮できるTCRが必要である。
【0003】
NY-ESO-1およびLAGE-1は、がん/精巣抗原のファミリーに属する重要な免疫治療標的抗原である。がん/精巣抗原は、様々な悪性腫瘍および精巣の胚細胞で発現されるが、他の成体組織では発現されない。
【0004】
TCR改変T細胞を用いる免疫療法が成功するかどうかは、標的抗原の選択だけでなく、抗原特異性および感受性の高いTCRの選択に応じて変わる。さらなる課題、特に固形腫瘍の処置における課題は、免疫抑制腫瘍微小環境(TME)がTCR改変T細胞の有効性、適合性および持続性に悪影響を及ぼすことである。阻害性サイトカインおよび必須代謝因子の欠乏に加え、T細胞はTMEにおいて阻害性チェックポイントPD-1/PD-L1軸に直面し、T細胞の浸潤低下と、それらの枯渇がもたらされる。その結果、TCR改変T細胞に、阻害性免疫抑制TMEを克服する形質をもたせる新たな戦略が必要とされる。より詳細には、特異性が高く、増殖、サイトカイン放出および細胞毒性が増強された、NY-ESO-1またはPRAMEなどの特異的抗原を標的とするTCR改変T細胞が望まれる。
【発明の概要】
【0005】
これらの必要性を克服するために、本発明は、サイトカイン放出、増殖および細胞毒性が増強された抗原、例えばPRAMEまたはNY-ESO-1を標的とする特異性の高いT細胞、特に2種以上のサイトカインを分泌する多機能性免疫細胞の生成を可能にする、高アビディティTCRとキメラ補助刺激受容体との組合せを提供する。
【0006】
本発明は、
(A)抗原特異的TCR、および
(B)キメラ補助刺激受容体
を発現する標的特異的免疫細胞であって、
少なくとも2種のタンパク質を分泌する標的特異的免疫細胞を指す。
【0007】
よって、本発明の一実施形態は、
(A)
- 配列番号35のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号36のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号37のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、ならびに
- 配列番号38のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号39のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号40のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖
を含むNY-ESO-1/LAGE-1特異的TCR、
(B)
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン、
- 膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含むキメラ補助刺激受容体
を含む細胞を提供することである。
【0008】
使用されるNY-ESO-1特異的TCRは、アミノ酸配列SLLMWITQC(配列番号34)を有するNY-ESO-1ペプチドもしくはその一部、またはそのHLA-A2結合形態に結合することが可能である。これは、高い機能的アビディティおよび有利な腫瘍細胞認識および殺傷特性をもたらす。補助刺激受容体は、チェックポイント阻害軸PD-1/PD-L1を逆転させ、特に抑制性TMEにおいてT細胞の機能を改善する。よって、本発明のTCRとキメラ補助刺激受容体との組合せは、特異性が高く、増殖、サイトカイン放出および細胞毒性が増強されたNY-ESO-1の標的化の改良を可能にする。
【0009】
本発明の別の実施形態は、
(A)
- 配列番号2のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、ならびに
- 配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖
を含むPRAME特異的T細胞受容体(TCR);ならびに
(B)
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン
- 膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含むキメラ補助刺激受容体
を含む細胞を提供することである。
【0010】
使用されるPRAME特異的TCRは、アミノ酸配列SLLQHLIGL(配列番号1)を有するPRAMEペプチドもしくはその一部、またはそのHLA-A2結合形態に結合することが可能である。これは、高い機能的アビディティおよび有利な腫瘍細胞認識および殺傷特性をもたらす。特に、本発明のTCRは、先行技術で開示されたTCRよりも高い機能的アビディティを有し、試験腫瘍細胞株を最もよく認識し、PRAME陽性腫瘍細胞をより効率的に溶解する。補助刺激受容体は、チェックポイント阻害軸PD-1/PD-L1を逆転させ、特に抑制性TMEにおいてT細胞の機能を改善する。よって、本発明のTCRとキメラ補助刺激受容体との組合せは、特異性が高く、増殖、サイトカイン放出および細胞毒性が増強されたPRAMEの標的化の改良を可能にする。
【0011】
一部の実施形態では、PRAME特異的TCRは、SLLQHLIGLのHLA-A02:01、HLA-A02:02、HLA-A02:04またはHLA-A02:09結合形態に結合することが可能である。PRAMEエピトープであるSLLQHLIGLもしくはその一部、またはそのHLA-A2結合形態への結合により、とりわけ、TCRを形質導入またはトランスフェクトした細胞によるIFN-γ分泌が誘導される。
【0012】
一部の実施形態ではTCRは、配列番号8と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号9と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域を含む。より具体的実施形態では、TCRは、配列番号8のアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号9のアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域を含む。TCRは、配列番号10と同一であるかまたは少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する定常TCRα領域および配列番号11と同一であるかまたは少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する定常TCRβ領域を含む。
【0013】
キメラ補助刺激受容体は、PD-1に由来する膜貫通ドメインを含んでもよい。具体的実施形態では、キメラ補助刺激受容体の配列は、配列番号26の配列を含んでもよい。
【0014】
したがって、さらなる態様は、
- 配列番号2のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、ならびに
- 配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖
を含むPRAME特異的T細胞受容体(TCR)をコードする核酸;ならびに
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン、
- 膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含むキメラ補助刺激受容体をコードする核酸
を含む組成物に関する。
【0015】
さらに、一態様は、
- 配列番号2のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、ならびに
- 配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖
を含むPRAME特異的T細胞受容体(TCR)をコードする核酸;ならびに
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン、
- 膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含むキメラ補助刺激受容体をコードする核酸
を含む核酸に関する。
【0016】
したがって、さらなる態様は、
- 配列番号35のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号36のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号37のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、ならびに
- 配列番号38のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号39のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号40のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖
を含むNY-ESO-1特異的T細胞受容体(TCR)をコードする核酸;ならびに
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン、
- 膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含むキメラ補助刺激受容体をコードする核酸
を含む組成物に関する。
【0017】
さらに、一態様は、
- 配列番号35のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号36のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号37のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、ならびに
- 配列番号38のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号39のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号40のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖
を含むNY-ESO-1特異的T細胞受容体(TCR)をコードする核酸;ならびに
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン、
- 膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含むキメラ補助刺激受容体をコードする核酸
を含む核酸に関する。
【0018】
さらなる態様は、PRAME特異的TCRおよびキメラ補助刺激受容体の配列を含む核酸を含むベクターを指す。別の態様は、NY-ESO-1特異的TCRおよびキメラ補助刺激受容体の配列を含む核酸を含むベクターを指す。核酸組成物および/またはベクターを含む細胞も包含される。
【0019】
典型的には、細胞は、末梢血リンパ球(PBL)または末梢血単核細胞(PBMC)である。具体的実施形態では、細胞はT細胞である。
【0020】
多機能性免疫細胞
よって、本発明の1つの目的は、
(A)抗原特異的TCR
(B)キメラ補助刺激受容体
を発現する細胞を含む細胞集団であって、
少なくとも2種のタンパク質を分泌する、細胞集団を指す。
【0021】
一部の実施形態では、キメラ補助刺激受容体は、
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン、
- PD-1由来の膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含み、
細胞集団は、少なくとも2種のタンパク質を分泌する細胞を含む。
【0022】
本発明のさらなる態様は、
(A)抗原特異的TCR、および
(B)本明細書に記載されているキメラ補助刺激受容体
を発現する標的特異的免疫細胞であって、
少なくとも2種のタンパク質を分泌する標的特異的免疫細胞を指す。
【0023】
一部の実施形態では、細胞は、少なくとも3種のタンパク質、例えば少なくとも4種または少なくとも5種のタンパク質を分泌する。
【0024】
さらなる態様は、本明細書において定義される細胞、組成物、核酸およびベクターを含む医薬組成物を指す。さらなる態様は、がん処置のための本明細書において定義される細胞、組成物、核酸およびベクターを指す。
【0025】
驚くべきことに、本発明者らは、本明細書で定義されているキメラ補助刺激受容体を発現するTCR-T細胞が、本明細書で定義されているキメラ補助刺激受容体を欠くTCR-T細胞と比較してより高い多機能性を示すことを見出した。トランスジェニックT細胞のより高い多機能性は、in vivoでのより高い多機能性および抗腫瘍活性を指し、臨床転帰と相関する。
【0026】
特に、本発明者らは、標的特異的、例えばPRAME特異的またはNY-ESO-1特異的TCRと、本明細書で定義されているキメラ補助刺激受容体との両方を発現する細胞集団が、少なくとも2種のタンパク質、例えば少なくとも3種のタンパク質、少なくとも4種のタンパク質、少なくとも5種のタンパク質を分泌する細胞を含むことを示すことができた。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】PD1-41BBの同時発現は、TCR発現レベルを変化させない。 CD8+ T細胞を健康なドナーから単離し、IL-7およびIL-5の存在下でCD3/CD28抗体で活性化させた。活性化した細胞に、T23.8-2.1-027-004(=TCR)またはT23.8-2.1-027-004とPD1-41BB(=TCR_PD1-41BB)との組合せの配列を含有するレトロウイルス粒子を形質導入した。同じ方法で調製した非形質導入(=UT)CD8+ T細胞を対照として使用した。導入遺伝子の形質導入効率および発現レベルをTCR-β鎖(TRBV09)およびPD-1の抗体染色と、その後のフローサイトメトリーによる分析によって決定した。
図2】TCRトランスジェニックT細胞の機能的アビディティは、PD1-41BBの同時発現によって変更されない。 TCRトランスジェニックT細胞集団の機能的アビディティを漸増量のSLLQHLIGL(SLL)-ペプチド(10-5M~10-10M)を負荷したPD-L1トランスジェニックT2細胞との共培養におけるIFN-γ放出として測定する。最大半量のIFN-γ放出をTCRトランスジェニックエフェクターT細胞の機能的アビディティに関する尺度とする。左のグラフは共培養の20時間後にELISAによって決定したIFN-γ濃度の絶対値を示し、右のグラフは相対値の非線形回帰を示す。PD1-41BBの同時発現により、PD-L1陽性標的細胞に応答するTCRトランスジェニックT細胞によって放出されるIFN-γレベルが増加し、この同時発現はT細胞の機能的アビディティを変更させない。
図3】HLA-A02サブタイプの認識はPD1-41BBの同時発現によって変更されない。 TCR形質導入T細胞の、選択したHLA-A02下位対立遺伝子陽性リンパ芽球様細胞株(LCL; EBV形質転換B細胞)とのE:T比1:1(20.000個のT細胞/ウェル)でのin vitro共培養。IFN-γ濃度を10-5MのSLL-ペプチドを加えたLCLとの共培養の20時間後のELISAによって決定した。PD1-41BBを用いて、および用いないで形質導入したTCRトランスジェニックT細胞は、A02:01と比較して同様のレベルでHLA-A02下位対立遺伝子A02:02、A02:04およびA02:09によってコードされたMHC分子によって提示されたSLL-ペプチドを認識した。
図4】潜在的ペプチドのオフターゲット毒性のリスク回避の成功。 潜在的オフターゲット毒性のリスクを低下させるために、SLL-ペプチドと比較して最大4つのアミノ酸が異なる191個の部分的に相同なペプチド(ミスマッチ(MM)ペプチド)をExpitope 2.0(登録商標)を使用して選択した。10-6MのMMペプチドまたはSLL-ペプチドを負荷したPD-L1トランスジェニックT2細胞を使用するプレスクリーニング共培養において、TCR-形質導入T細胞によって認識された33個のMMペプチドを同定した(データは示さず)。これらの33個のMMペプチドを、エピトープ(ペプチド)がPRAME陰性標的細胞株SNB-19のプロテアソームによって内因的に処理された場合に、TCRトランスジェニックエフェクターT細胞によるIFN-γ放出を誘導するそれらの可能性について調査した。最大5個のMMペプチドをコードするin vitro転写(ivt)RNAをSNB-19細胞に電気穿孔させた。プレスクリーニング共培養(MM01、MM26、MM66)において、TCRトランスジェニックT細胞中最も多くのIFN-γ放出を誘導したMMペプチドを「ミディジーン」構築物(約400bp)として個々に試験した。他のMMペプチドすべてを5個のMMペプチドをコードするミニジーン構築物(ペプチドあたり約90bp)として試験した。SLL-ペプチドをコードするミディジーン構築物を陽性対照として使用した。すべてのRNA構築物は、陽性対照TCRによって認識されるエピトープを含んだ。IFN-γ濃度を、トランスフェクトSNB-19細胞のTCRトランスジェニックエフェクターT細胞との共培養の20時間後に決定した。検出されたIFN-γレベルは、細胞内処理されたMMペプチドが認識されていないことを示す。したがって、すべてのMMペプチドは、リスク回避が可能であり、潜在的オフターゲット毒性をもたらす可能性はない。さらに、PD1-41BBの同時発現は、TCR単独で見られるMMペプチドの認識パターンを変更しなかった。
図5】頻度の高いHLAを網羅するLCLライブラリーを使用してもオフターゲット毒性は同定されなかった。 潜在的オフターゲット毒性を評価するために、PD1-41BBを用いて、および用いないで形質導入したTCR形質導入T細胞を、白色人種の集団において最も頻度の高いHLA-A、HLA-BおよびHLA-C対立遺伝子を網羅する36種のリンパ芽球細胞株(LCL)集団からなるライブラリーと共培養した。これらのLCLは、多種多様な内因的に発現したペプチドを発現し、適合したHLA-A2分子または最も頻度の高い他のHLA分子で提示された内因性ペプチドの認識により潜在的交差反応性を同定するのに役立つ。IFN-γ濃度をLCLとの共培養の20時間後のELISAによって決定した。SLL-ペプチドを負荷したHLA-A02:01陽性LCLを陽性対照とした。TCRトランスジェニックT細胞は、LCL番号5と共培養した場合に非常に低レベルのIFN-γのみを分泌し、低レベルのPRAME発現をqPCRによって確認することができた。いずれの他のLCLも、トランスジェニックTCRまたはPD1-41BBと組み合わせてトランスジェニックTCRを発現するエフェクターT細胞によって認識されなかった。したがって、オフターゲット毒性はこの安全性モデルにおいて同定することができなかった。
図6】正常細胞のパネルを使用してもオフターゲット毒性は同定されなかった。 様々な組織を起源とする正常細胞との共培養により、重要な健康組織のオフターゲット認識の可能性を分析した。陽性対照として、正常細胞にSLL-ペプチドを負荷した。共培養上清中のIFN-γ濃度を共培養の20時間後のELISAによって決定した。健康な細胞のオフターゲット認識は観察されなかった。PRAME陽性成熟樹状細胞(DC)のみが非形質導入T細胞のバックグラウンドを超えるTCRトランスジェニックT細胞におけるIFN-γ放出を誘発したが、成熟DCの前駆細胞(単球および未成熟DC)は、T細胞によるIFN-γ放出をもたらさなかった。PD1-41BBを添加してもPRAME特異的TCRを発現するT細胞の安全性プロファイルは変化しなかった。(ヒト腎上皮細胞(HREpC)、ヒト腎皮質上皮細胞(HRCEpC)、腎近位尿細管上皮細胞(RPTEC)、正常ヒト肺線維芽細胞(NHLF)、ヒト骨芽細胞(HOB)、単球(Mono)、未成熟DC(iDC)、成熟DC(mDC)、iCell心筋細胞2(iCardio))。
図7-1】PD1-41BBは、PD-L1を発現する腫瘍細胞に応答してIFN-γの特異的放出を増強する。 (A)腫瘍細胞株におけるPRAME-mRNA発現レベルをリアルタイム定量的PCRによって決定し、ハウスキーピング遺伝子GUSBに対して正規化した。
図7-2】(B)PD1-41BBを有する、および有さないTCRトランスジェニックT細胞を異なるレベルのPRAMEおよびPD-L1を発現する様々な適応症のHLA-A02:01陽性腫瘍細胞株と共培養した。PD-L1の安定した発現を可能にするため、いくつかの腫瘍細胞にPD-L1を形質導入した(TD)。さらに、抗体染色とその後のフローサイトメトリー分析により、一部の細胞株はIFN-γ処理によりPD-L1の誘導性発現(ind)を示したが、他の細胞株はIFN-γ処理なしでもある程度のレベルの内因性PD-L1発現(end)を既に示していたことが決定された。非形質導入T細胞を対照として使用した。IFN-γ濃度を共培養の20時間後にELISAによって決定した。PD1-41BBの同時発現は、PD-L1陽性腫瘍細胞に応答したIFN-γの放出を増強した。
図8】PD1-41BBは、3次元(3D)腫瘍細胞スフェロイドに対する特異的細胞毒性応答を増強する。 PD1-41BBを有する、および有さないTCRトランスジェニックT細胞を、異なるレベルのPRAMEおよびPD-L1を発現するHLA-A02:01陽性腫瘍細胞株由来の3次元(3D)腫瘍細胞スフェロイドと共培養した。腫瘍スフェロイドに対する細胞毒性は、Incucyte Zoom(登録商標)またはS3(登録商標)デバイスを使用して、4時間ごとに画像を記録し、20日間にわたる赤色蛍光の消失によって判定した。新鮮な腫瘍細胞スフェロイドを3、7、10、13、および16日目に共培養プレートに移した。PD1-41BBの発現は、腫瘍細胞に繰り返し曝露される困難な環境において、T細胞のエフェクター機能および適合性に有益な効果をもたらす。腫瘍細胞スフェロイドを複数回負荷する過程で、PD1-41BB発現エフェクターT細胞は、トランスジェニックTCRのみを発現するエフェクターT細胞と比較して、腫瘍細胞成長をより良好に制御することができる。
図9】PD1-41BBは、PD-L1を発現する腫瘍細胞に応答してTCRトランスジェニックT細胞の増殖を増加させる。 PD1-41BBを有する、および有さないTCRトランスジェニックT細胞を、エフェクター対標的比が1:1で、異なるレベルのPRAMEおよびPD-L1を発現するHLA-A02:01陽性腫瘍細胞株と共培養した。未形質導入T細胞を対照として使用した。7日後に、共培養においてT細胞のX倍の増殖を総細胞数から計算した。PD1-41BBの同時発現は、PD-L1陽性腫瘍細胞に応答した増殖および/または生存を増強した。
図10】PD1-41BBを同時発現するT細胞は、in vivoで強力な抗腫瘍反応性を示す。 5×10個のPD-L1トランスジェニックMelA375腫瘍細胞を18匹の免疫不全(NOD/Shi-scid/IL-2Rγnull)マウスに皮下注射した。1週間後に、マウスを、それぞれ6匹のマウスを含む3つの処置群に分配した。マウスに、(TCR_PD1-41BB)を含むかもしくは(TCR)PD1-41BBを含まない10×10個のTCR陽性細胞(細胞総数が16×10個)または等数の非形質導入T細胞(UT)を注射した。腫瘍体積を1週間に2~3回測定した。PD1-41BBを発現するエフェクターT細胞は、in vivoで腫瘍細胞成長を制御することができたが、トランスジェニックTCRのみを発現するエフェクターT細胞は非形質導入T細胞と比較してほとんど効果を有さなかった。
図11-1】PD1-41BBを発現するPRAMEを標的とするTCR-T細胞は、PD1-41BBを欠くPRAMEを標的とするTCR-T細胞と比較してより高い多機能性を示す。PD1-41BBを有するかまたは有さないTCRトランスジェニックT細胞を、IsoLight(登録商標)技術(IsoPlexis)を使用して、それらの単一細胞多機能性(2種以上のサイトカインの放出)に関して分析した。PD-L1を過剰発現する、PRAME陽性MelA375腫瘍細胞との共培養後に、単一CD8+T細胞を32T細胞サイトカイン/タンパク質の分泌について評価し、未刺激TCR-T細胞と比較した。 (A)PD1-41BBを発現するTCR-T細胞は、PD1-41BBを欠くTCR-T細胞と比較して、多機能性T細胞のより高いパーセンテージを示した。灰色の様々な色調は、単一のT細胞によってどれくらい多くのサイトカインが同時に放出されたかを示す。
図11-2】(B)多機能性強度指数(PSI)は、様々な分泌されたサイトカインの強度と多機能性T細胞のパーセンテージを乗算することによって計算した。PD1-41BBを発現するTCR-T細胞は、PD1-41BBを欠くTCR-T細胞と比較して、より高い多機能性強度指数(PSI)を示した。放出された様々なサイトカインの分類により、優れたPSIには、エフェクターサイトカイン(Gzm-B、IFN-γ、Perforin、TNF-α、TNF-β)および刺激性サイトカイン(GM-CSF、IL-2、IL-7、IL-8、IL-9、IL-12)の貢献度が高く、次いで化学誘引性サイトカイン(IP-10、MIP-1β)の貢献度が高いことが明らかになった。調節性サイトカイン(IL-10、IL-22)および炎症性サイトカイン(IL-6およびMCP-1)放出の程度はより低かった。
図11-3】(C)多機能性ヒートマップを使用する単一細胞ポリサイトカイン放出の詳細な分析により、PD1-41BBを有するおよび有さないTCR-T細胞ではそれらのポリサイトカインのシグネチャーが異なることが示された。とりわけ、PD1-41BBを発現するTCR-T細胞は、4~10種のサイトカインを同時に分泌する単一細胞をより高い割合で含有した。
図12-1】PD1-41BBを発現するNY-ESO-1を標的とするTCR-T細胞は、PD1-41BBを欠くNY-ESO-1を標的とするTCR-T細胞と比較してより高い多機能性を示す。PD1-41BBを有するかまたは有さないTCRトランスジェニックT細胞を、IsoLight(登録商標)技術(IsoPlexis)を使用して、それらの単一細胞多機能性(2種以上のサイトカインの放出)に関して分析した。PD-L1を過剰発現するNY-ESO-1陽性MelA375およびMel624.38腫瘍細胞との共培養後に、単一CD8+T細胞を32T細胞サイトカイン/タンパク質の分泌について評価し、非形質導入TCR-T細胞と比較した。 (A)PD1-41BBを発現するTCR-T細胞は、PD1-41BBを欠くTCR-T細胞と比較して、多機能T細胞のより高いパーセンテージを示した。灰色の様々な色調は、単一のT細胞によってどれくらい多くのサイトカインが同時に放出されたかを示す。
図12-2】(B)多機能強度指数(PSI)は、様々な分泌されたサイトカインの強度と多機能T細胞のパーセンテージを乗算することによって計算した。PD1-41BBを発現するTCR-T細胞は、PD1-41BBを欠くTCR-T細胞と比較して、より高い多機能性強度指数(PSI)を示した。放出された様々なサイトカイン/溶解性タンパク質の分類により、優れたPSIには、エフェクターサイトカイン(Gzm-B、IFN-γ、MIP-1α、Perforin、TNF-α、TNF-β)および刺激性サイトカイン(GM-CSF、IL-2、IL-5、IL-8、IL-9、IL-12)の貢献度が高く、次いで化学誘引性サイトカイン(IP-10、MIP-1β、RANTES)の貢献度が高いことが明らかになった。調節性サイトカイン(IL-4、IL-10、IL-22、sCD137、TGF-β1)および炎症性サイトカイン(IL-6、IL-17FおよびMCP-1)放出の程度はより低かった。
図12-3】(C)多機能性ヒートマップを使用する単一細胞ポリサイトカイン放出の詳細な分析により、PD1-41BBを有するおよび有さないTCR-T細胞ではそれらのポリサイトカインのシグネチャーが異なることが示された。とりわけ、PD1-41BBを発現するTCR-T細胞は、2~6種のサイトカインを同時に分泌する単一細胞をより高い割合で含有した。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の詳細な記載
本発明が、その好ましい実施形態のうちのいくつかについて詳細に説明される前に、以下の一般的定義を提供する。
【0029】
以下に例示的に記載されるように、本発明は、本明細書において具体的に開示されていないいずれかの要素(単数または複数)、制限(単数または複数)の非存在下で、好適に実践され得る。
【0030】
本発明は、特定の実施形態に関しておよび特定の図を参照して記載されるが、本発明はそれらにではなく特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0031】
本記載および特許請求の範囲において用語「含む(comprising)」が使用される場合、それは他の要素を排除しない。本発明の目的のために用語「からなる(consisting of)」は、用語「を構成する(comprising of)」の好ましい実施形態であると考えられる。以下で、群が少なくとも一定数の実施形態を含むと定義される場合、これは、好ましくはこれらの実施形態だけからなる群を開示するとも理解される。
【0032】
本発明の目的のために用語「得られた(obtained)」は、用語「得ることができる(obtainable)」の好ましい実施形態であると考えられる。以下で、例えば抗体が具体的な供給源から得ることができると定義される場合、これはこの供給源から得られる抗体を開示するとも理解される。
【0033】
不定冠詞または定冠詞が単数名詞、例えば「a」、「an」または「the」を参照して使用される場合、これは、他に具体的に述べられている場合を除いてその名詞の複数を含む。本発明の文脈において、用語「約(about)」または「およそ(approximately)」は、当業者が問題となる特質の技術的効果をまだ確保すると理解する正確さの区間を記す。用語は、±10%、好ましくは±5%の示された数値からの偏差を典型的には示す。
【0034】
技術的用語は、それらの一般的な意味または当業者にとっての意味で使用される。具体的な意味が特定の用語によって伝えられる場合、用語の定義は以下にその用語が使用される文脈において与えられる。
【0035】
TCRバックグラウンド
TCRは、2つの異なる、別々のタンパク質鎖、すなわちTCRアルファ(α)鎖およびTCRベータ(β)鎖から構成される。TCRα鎖は、可変(V)、連結(J)および定常(C)領域を含む。TCRβ鎖は、可変(V)、多様性(D)、連結(J)および定常(C)領域を含む。TCRα鎖とTCRβ鎖の両方の再配列V(D)J領域は、超可変領域(CDR、相補性決定領域)を含有し、これらの中で、CDR3領域は、特異的エピトープ認識を決定する。C末端領域において、TCRα鎖とTCRβ鎖の両方は、疎水性膜貫通ドメインを含有し、短い細胞質側末端で終わる。
【0036】
典型的には、TCRは、1つのα鎖と1つのβ鎖のヘテロ二量体である。このヘテロ二量体は、ペプチドを提示するMHC分子に結合し得る。
【0037】
本発明の文脈における用語「可変TCRα領域」または「TCRα可変鎖」または「可変ドメイン」は、TCRα鎖可変領域を指す。本発明の文脈における用語「可変TCRβ領域」または「TCRβ可変鎖」は、TCRβ鎖可変領域を指す。
【0038】
TCR遺伝子座および遺伝子は、国際免疫遺伝学(IMGT)TCR学名命名法(IMGTデータベース、www. IMGT.org;Giudicelli, V., et al., IMGT/LIGM-DB, the IMGT(登録商標) comprehensive database of immunoglobulin and T cell receptor nucleotide sequences, Nucl. Acids Res., 34, D781-D784 (2006). PMID: 16381979;T cell Receptor Factsbook, LeFranc and LeFranc, Academic Press ISBN 0-12- 441352-8)を使用して命名される。
【0039】
標的
一部の実施形態では、キメラ補助刺激受容体と組み合わせて本発明において提供されるTCRは、(ヒト)PRAME(配列番号1)に由来するペプチドに結合することが可能である点が有利である。したがって、前記TCRは、PRAME-SLLとも呼ばれる、配列番号1に示されているPRAMEペプチドに対して特異的である。本発明の文脈において、用語「に対して特異的」は、TCRが標的に特異的に結合することを意味する。PRAME(メラノーマにおいて優先的に発現される抗原(Preferntially Expressed Antigen in Melanoma)、Uniprot受託番号P78395)は、MAPE(腫瘍において優先的に発現されるメラノーマ抗原)およびOIP4(OPA相互作用タンパク質4)とも称され、未知の機能を有するCT抗原であることが報告されている。PRAMEは、メラノーマおよび白血病、および慢性骨髄腫に関連するタンパク質コード遺伝子である。この遺伝子に関連するジーンオントロジー(GO)という注釈は、レチノイン酸受容体結合を含む。PRAMEタンパク質は、転写抑制因子として機能し、レチノイン酸受容体RARA、RARBおよびRARGを介してレチノイン酸のシグナル伝達を阻害する。PRAMEタンパク質は、レチノイン酸による細胞増殖、分化、アポトーシスの停止を防ぐ。
【0040】
一部の実施形態では、本発明は、キメラ補助刺激受容体と、配列番号1に示されているPRAMEアミノ酸配列内に含まれるペプチドに結合することが可能なTCR(表1を参照されたい)との組合せを提供する。用語「結合することが可能」は、前記ペプチドに前記TCRが特異的に結合することを意味する。用語「特異的(に)結合」は、一般に、TCRが、その抗原結合部位を介して、ランダムな無関係の非標的抗原に対するよりも、意図した抗原標的に結合しやすいことを示す。特に、用語「特異的に結合する」は、TCRの結合特異性が、その抗原標的に対して、非標的抗原に対する結合特異性よりも少なくとも約5倍、好ましくは10倍、より好ましくは25倍、さらに好ましくは50倍、最も好ましくは100倍以上大きいことを示す。配列番号1に示されているアミノ酸配列からなるPRAMEペプチドは、本明細書において「抗原性標的」または「SLL-ペプチド」とも称される。したがって、配列番号1に示されているアミノ酸配列からなるPRAMEペプチドは、本発明のTCRの標的エピトープであるか、またはそれを含む。
【0041】
用語「エピトープ」は、一般に、抗原上の部位、典型的には、結合ドメインが認識する(ポリ)ペプチドを指す。用語「結合ドメイン」は、最も広い意味で、「抗原結合部位」を指し、すなわち、抗原標的上の特異的エピトープに結合し/それと相互作用する分子のドメインを特徴とする。抗原性標的は、単一のエピトープを含んでもよいが、典型的には少なくとも2つのエピトープを含み、抗原のサイズ、立体構造、および型に応じて任意の数のエピトープを含み得る。用語「エピトープ」は、一般に、線状エピトープと立体構造エピトープとを包含する。線状エピトープは、アミノ酸一次配列で構成される連続したエピトープであり、典型的には少なくとも2個またはそれより多いアミノ酸を含む。立体構造エピトープは、標的抗原、特に標的(ポリ)ペプチドのフォールディングによって並置された非連続アミノ酸によって形成されている。
【0042】
本発明者らは、本発明のTCRによって認識される最小のアミノ酸配列が、PRAMEのアミノ酸配列(配列番号1)に相当することを見出した。詳細には、本発明のTCRは、アミノ酸配列SLLQHLIGL(配列番号1)を含むかまたはそれからなるアミノ酸配列、特に添付の実施例に示されているHLA-A2結合形態を(特異的に)認識することが示されている。この選択的認識は、いくつかの固定位置のみを示す、TCRの認識モチーフによって得られ得る。配列SLLQHLIGL(配列番号1)のアミノ酸LLQおよび特にHLIは、この認識モチーフの一部である。
【0043】
一部の実施形態は、
(A)
- 配列番号2のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、ならびに
- 配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖
を含むPRAME特異的T細胞受容体(TCR);ならびに
(B)
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン
- 膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含むキメラ補助刺激受容体
を含む細胞を指し、
細胞は、2種を超えるタンパク質を分泌する。
【0044】
他の実施形態は、
(A)
- 配列番号35のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号36のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号37のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、ならびに
- 配列番号38のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号39のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号40のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖
を含むNY-ESO-1特異的T細胞受容体(TCR)
ならびに
(B)
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン
- 膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含むキメラ補助刺激受容体
を含む細胞を指し、
細胞は、2種を超えるタンパク質を分泌する。
【0045】
TCR特異的配列
よって、本発明の組合せにおいて使用される例示的なTCRは、
- 配列番号2のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、ならびに
- 配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖
を含む。
【0046】
一部の実施形態では、TCRは、配列番号8と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号9と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域を含む。
【0047】
「少なくとも80%同一」、特に「少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する」は、本明細書で使用される場合、アミノ酸配列が、示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であることを含む。
【0048】
複数の配列間のパーセント同一性の決定は、好ましくは、Vector NTI Advance(商標)10プログラム(Invitrogen Corporation、Carlsbad CA、USA)のAlignXアプリケーションを使用して達成される。このプログラムは、修正されたClustal Wアルゴリズム(Thompson et al., 1994. Nucl Acids Res. 22: pp. 4673-4680; Invitrogen Corporation; Vector NTI AdvanceTM 10 DNA and protein sequence analysis software. User's Manual, 2004, pp.389-662)を使用する。パーセント同一性の決定は、AlignXアプリケーションの標準パラメーターを用いて実施される。
【0049】
具体的実施形態では、TCRは、配列番号8のアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号9のアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域を含む。
【0050】
一部の実施形態での実施例を見ると分かるように、TCRは、PRAME、特にPRAMEのエピトープSLLQHLIGL(配列番号1)に対して特異的であり、他のエピトープまたは抗原に対しては非常に低い交差反応性しか示さない。
【0051】
具体的実施形態では、本明細書に記載されているTCRは、配列番号10と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する定常TCRα領域および配列番号11と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する定常TCRβ領域を含む。
【0052】
したがって、より詳細には、一部の実施形態では、TCRは、配列番号8と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRα領域、配列番号9と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域、配列番号10と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する定常TCRα領域および配列番号11と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する定常TCRβ領域を含んでもよい。
【0053】
さらにより具体的実施形態では、TCRは、配列番号8のアミノ酸配列を有する可変TCRα領域、配列番号9のアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域、配列番号10のアミノ酸配列を有する定常TCRα領域および配列番号11のアミノ酸配列を有する定常TCRβ領域を含んでもよい。
【0054】
したがって、具体的実施形態では、TCRは、配列番号24と同一であるかまたはそれと少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有するTCRα鎖、および配列番号22と同一であるかまたはそれと少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有するTCRβ鎖を含んでもよい。
【0055】
他の実施形態では、TCRは、NY-ESO-1、特にNY-ESO-1のエピトープSLLMWITQC(配列番号34)に特異的であり、他のエピトープまたは抗原に対して非常に低い交差反応性しか示さない。
【0056】
よって、本発明の組合せにおいて使用される例示的なTCRは、
- 配列番号35のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号36のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号37のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、ならびに
- 配列番号38のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号39のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号40のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖
を含む。
【0057】
一部の実施形態ではTCRは、配列番号41と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号42と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域を含む。
【0058】
より具体的な実施形態では、TCRは、配列番号41のアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号42のアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域を含む。
【0059】
一部の実施形態では、TCRは、配列番号43と同一であるかまたは少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有するTCRα鎖および配列番号44と同一であるかまたは少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有するTCRβ鎖を含む。
【0060】
一部の実施形態では、TCRは、配列番号43のアミノ酸配列を有するTCRα鎖および配列番号44のアミノ酸配列を有するTCRβ鎖を含んでもよい。
【0061】
改変
一部の実施形態では、TCRのアミノ酸配列および/またはキメラ補助刺激受容体は、1つまたは複数の表現型に影響しない置換を含んでもよい。
【0062】
「表現型に影響しない置換」は、「保存的アミノ酸置換」とも称される。「保存的アミノ酸置換」の概念は、当業者によって理解されており、好ましくは、正電荷残基(H、K、およびR)をコードするコドンは、正電荷残基をコードするコドンで置換され、負電荷残基(DおよびE)をコードするコドンは、負電荷残基をコードするコドンで置換され、中性極性残基(C、G、N、Q、S、T、およびY)をコードするコドンは、中性極性残基をコードするコドンで置換され、中性非極性残基(A、F、I、L、M、P、V、およびW)をコードするコドンは、中性非極性残基をコードするコドンで置換されることを意味する。これらのバリエーションは、自発的に生じてもよく、ランダム突然変異誘発によって導入されてもよく、または定方向突然変異誘発によって導入されてもよい。これらの変化は、これらのポリペプチドの本質的な特性を破壊することなくなされ得る。当業者は、バリアントアミノ酸および/またはそれらをコードする核酸を容易かつ日常的にスクリーニングし、これらのバリエーションがリガンド結合能を実質的に低下させるかまたは破壊するかどうかを当技術分野で公知の方法によって決定することができる。
【0063】
当業者は、TCRをコードする核酸および/またはキメラ補助刺激受容体も改変され得ることを理解する。核酸配列全体における有益な改変は、配列のコドン最適化を含む。発現したアミノ酸配列内に保存的置換をもたらす変更がなされ得る。これらのバリエーションは、機能に影響を及ぼさないTCR鎖のアミノ酸配列の相補性決定領域および非相補性決定領域においてなされ得る。通常、付加と欠失は、CDR3領域において行うべきではない。
【0064】
本発明の一部の実施形態によれば、TCRおよび/またはキメラ補助刺激受容体のアミノ酸配列は、検出可能な標識、治療剤または薬物動態改変部分を含むように改変される。
【0065】
検出可能な標識に関する非限定的な例は、放射標識、蛍光標識、核酸プローブ、酵素および造影試薬である。TCRに付随し得る治療剤としては、放射性化合物、免疫調節薬、酵素または化学療法剤が挙げられる。治療剤は、化合物が標的部位でゆっくり放出され得るように、TCRに連結したリポソームによって封入され得る。このことによって、体内での輸送中の損傷が避けられ、TCRの関連する抗原提示細胞への結合後に、治療剤、例えば、毒素が最大の効果を有することが保障される。治療剤の他の例は、
【0066】
ペプチド細胞毒素、すなわちリシン、ジフテリア毒素、シュードモナス細菌外毒素A、DNaseおよびRNaseなどの、哺乳動物の細胞を殺滅する能力を有するタンパク質またはペプチドである。小分子細胞毒性剤、すなわち700ダルトン未満の分子量を有する、哺乳動物の細胞を殺滅する能力を有する化合物。このような化合物は、細胞毒性作用を有することが可能な毒性金属を含有し得る。さらに、これらの小分子細胞毒製剤は、プロドラッグ、すなわち細胞毒性剤を放出するために、生理的条件下で、崩壊されるかまたは変換される化合物も含むことが理解されるべきである。このような薬剤としては、例えば、ドセタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、メイタンシン誘導体、ラシェルマイシン、カリチアマイシン、エトポシド、イフォスファミド、イリノテカン、ポルフィマーナトリウム フォトフリンII、テモゾロミド、トポテカン、グルクロン酸トリメトレキサート、ミトキサントロン、オーリスタチンE、ビンクリスチンおよびドキソルビシン;放射性核種、例えば、ヨウ素131、レニウム186、インジウム111、イットリウム90、ビスマス210および213、アクチニウム225およびアスタチン213が挙げられる。例えば、キレート剤、免疫刺激薬としても知られる免疫賦活剤、すなわち、免疫応答を刺激する免疫エフェクター分子によって放射性核種をTCRまたはその誘導体に付随させ得る。例示的な免疫賦活剤は、IL-2およびIFN-γなどのサイトカイン、抗T細胞またはNK細胞決定基抗体(例えば、抗CD3、抗CD28または抗CD16)を含む抗体またはその断片;抗体様結合特性を有する代替タンパク質足場;スーパー抗原、すなわちポリクローナルT細胞活性化および大量のサイトカイン放出をもたらすT細胞の非特異的活性化を引き起こす抗原、およびその変異体;IL-8、血小板因子4、メラノーマ成長刺激タンパク質などのケモカイン、補体活性化因子;異種タンパク質ドメイン、同種タンパク質ドメイン、ウイルス/細菌タンパク質ドメイン、ウイルス/細菌ペプチドである。
【0067】
治療剤は、好ましくは、免疫エフェクター分子、細胞毒性剤および放射性核種からなる群から選択され得る。好ましくは、免疫エフェクター分子はサイトカインである。
【0068】
薬物動態改変部分は、例えば、少なくとも1つのポリエチレングリコール繰り返し単位、少なくとも1つのグリコール基、少なくとも1つのシアリル基またはそれらの組合せであってもよい。少なくとも1つのポリエチレングリコール繰り返し単位、少なくとも1つのグリコール基、少なくとも1つのシアリル基は、当業者に公知のいくつかの方法によって付随させ得る。好ましい実施形態では、ユニットはTCRに共有結合により連結される。本発明によるTCRは、1つまたはいくつかの薬物動態改変部分によって改変されてもよい。特に、TCRの可溶性形態は、1つまたはいくつかの薬物動態改変部分によって改変される。薬物動態改変部分は、治療薬の薬物動態プロファイルに対する有益な変化、例えば、血漿中半減期の改善、免疫原性の低減または増強、および溶解度の改善を達成し得る。
【0069】
TCRおよび/またはキメラ補助刺激受容体は、例えば、免疫原性を低下させる、流体力学的サイズ(溶液中のサイズ)溶解度および/もしくは安定性を増加させる(例えば、タンパク質分解に対する保護を増強させることによって)ならびに/または血清中半減期を延長するために、追加の機能性部分を付加することによって改変され得る。
【0070】
他の有用な機能性部分および改変には、患者の体内で本発明のTCRを有するエフェクター宿主細胞を遮断するために使用され得る「自殺」または「安全スイッチ」が含まれる。1つの例は、Gargett and Brown Front Pharmacol. 2014; 5: 235に記載された誘導性カスパーゼ9(iCasp9)「安全スイッチ」である。簡潔には、その二量体化がAP1903/CIPなどの小分子二量体化薬に依存し、改変されたエフェクター細胞においてアポトーシスの急速な誘導をもたらすカスパーゼ9ドメインを発現させるために、エフェクター宿主細胞は周知の方法によって改変される。この系は、例えば、欧州特許第2173869号明細書に記載されている。他の「自殺」「安全スイッチ」に関する例は、当技術分野において公知であり、例えば、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)、CD20の発現とそれに続く抗CD20抗体を使用する枯渇、またはmycタグ(Kieback et al, Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Jan 15;105(2):623-8)がある。
【0071】
グリコシル化パターンが変更されたTCRも本明細書において予想される。当技術分野で公知であるように、グリコシル化パターンは、アミノ酸配列に依存し(例えば、以下で議論される特定のグリコシル化アミノ酸残基の存在または非存在)および/またはタンパク質が産生される宿主細胞もしくは生物に依存し得る。ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N連結またはO連結されている。N連結は、炭水化物部分のアスパラギン残基の側鎖への結合を指す。結合分子へのN連結グリコシル化部位の付加は、アスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-トレオニン(ここで、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)から選択される1つまたは複数のトリペプチド配列を含有するように、アミノ酸配列を変更することによって、従来より達成されている。O連結グリコシル化部位は、1つまたは複数のセリンまたはトレオニン残基の出発配列への付加またはそれによる置換によって導入され得る。
【0072】
TCRのグリコシル化の別の手段は、グリコシドのタンパク質への化学的連結または酵素的連結によるものである。使用される連結方式によって、糖類は、(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)遊離スルフヒドリル基、例えば、システインのスルフヒドリル基、(d)遊離ヒドロキシル基、例えば、セリン、トレオニン、もしくはヒドロキシプロリンのヒドロキシル基、(e)芳香族残基、例えば、フェニルアラニン、チロシン、もしくはトリプトファンの芳香族残基、または(f)グルタミンのアミド基に結合され得る。同様に、脱グリコシル化(すなわち、結合分子上に存在する炭水化物部分の除去)は、例えば、TCRをトリフルオロメタンスルホン酸に曝露することによって化学的に、またはエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼを用いることによって酵素的に達成され得る。
【0073】
小分子化合物などの薬物をTCR、特に本発明のTCRの可溶性形態に付加することも考えられる。連結は、共有結合、または静電力によるなど非共有結合的相互作用によって達成され得る。当技術分野で公知の様々なリンカーは、薬物コンジュゲートを形成するために用いることができる。
【0074】
TCR、特に本発明のTCRの可溶性形態は、それぞれの分子(タグ)の特定、追跡、精製および/または単離を補助する追加のドメインを導入するためにさらに改変され得る。よって、一部の実施形態では、TCRα鎖またはTCRβ鎖は、エピトープタグを含むように改変されてもよい。
【0075】
エピトープタグは、本発明のTCRに組み込むことができるタグの有用な例である。エピトープタグは、特異的抗体の結合を可能にし、したがって、患者の体内の可溶性TCRもしくは宿主細胞または培養(宿主)細胞の結合および移動の特定および追跡を可能にするアミノ酸の短いストレッチである。エピトープタグと、故にタグ付けされたTCRの検出は、いくつかの異なる技法を使用して達成され得る。
【0076】
タグは、前記タグに対して特異的な結合分子(抗体)の存在下で細胞を培養することによって、本発明のTCRを有する宿主細胞の刺激および増殖のためにさらに用いることができる。
【0077】
一般的に、TCRは、一部の事例では、TCRの標的抗原との親和性およびオフレートを改変する様々な変異で改変され得る。特に、変異は、親和性を増加させるおよび/またはオフレートを低下させる場合がある。よって、TCRの少なくとも1つのCDRおよびその可変ドメインフレームワーク領域が変異し得る。
【0078】
しかし、好ましい実施形態では、TCRのCDRは、改変されないかまたは実施例におけるTCRに関するようにin vitro親和性成熟を受けない。このことは、CDRが天然に存在する配列を有することを意味する。これは有利であり得る。in vitro親和性成熟によって、TCR分子に対する免疫原性がもたらされ得るからである。これより、治療効果および処置を低下または不活性化する抗薬物抗体の産生がもたらされ、ならびに/または有害作用が誘導される場合がある。
【0079】
変異は、1つまたは複数の置換、欠失または挿入であってもよい。これらの変異は、当技術分野で公知の任意の好適な方法、例えば、Example in Sambrook, Molecular Cloning - 4th Edition (2012) Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている、ポリメラーゼ連鎖反応、制限酵素に基づくクローニング、ライゲーションに依存しないクローニング手順によって導入され得る。
【0080】
交差反応性のリスクを伴う理論的に予測できないTCR特異性は、内因性TCR鎖と外因性TCR鎖の間の誤対合に起因して生じ得る。TCR配列の誤対合を避けるために、組換えTCR配列は、マウス化されたまたは最低限にマウス化されたCα領域およびCβ領域を含有するように改変されてもよく、これはいくつかの異なる形質導入されたTCR鎖の正しい対合を効率的に増強することが示された技術である。TCRのマウス化(すなわち、ヒトCαおよびCβ領域をそれらのマウスのカウンターパートによって交換すること)は、宿主細胞におけるTCRの細胞表面での発現を改善するために通常適用される技法である。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、マウス化TCRは、CD3共受容体とより効率的に会合する;および/または優先的に互いに対合し、所望の抗原特異性のTCRを発現するようex vivoで遺伝子改変されているが、それらの「オリジナルの」TCRを依然として保持および発現するヒトT細胞上で混合TCRを形成しにくいと考えられる。
【0081】
マウス化TCRの発現の改善を代表する9つのアミノ酸が特定されており(Sommermeyer and Uckert, J Immunol. 2010 Jun 1; 184(11):6223-31)、TCRαおよび/またはβ鎖定常領域におけるアミノ酸残基のうちの1つまたはすべてをそれらのマウスのカウンターパート残基で置換することが予測される。この技法は、「最低限のマウス化(minimal murinization)」とも称され、細胞表面の発現を増強するという利点をもたらすが、同時に、アミノ酸配列における「外来の」アミノ酸残基の数を低減し、それによって、免疫原性のリスクを低減する。
【0082】
一部の実施形態は、本明細書に記載されている単離されたTCRを指し、TCRは、一本鎖タイプのものであり、TCRα鎖およびTCRβ鎖は、リンカー配列によって連結している。
【0083】
好適な一本鎖TCR形態は、可変TCRα領域に対応するアミノ酸配列によって構成された第1のセグメント、TCRβ鎖定常領域細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合した可変TCRβ領域に対応するアミノ酸配列によって構成された第2のセグメント、および第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結するリンカー配列を含む。あるいは、第1のセグメントは、TCRβ鎖可変領域に対応するアミノ酸配列によって構成されていてもよく、第2のセグメントは、TCRα鎖定常領域細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合したTCRα鎖可変領域配列に対応するアミノ酸配列によって構成されていてもよい。上記一本鎖TCRは、第1の鎖と第2の鎖の間にジスルフィド結合をさらに含んでもよく、リンカー配列の長さとジスルフィド結合の位置は、第1のセグメントと第2のセグメントの可変ドメイン配列が実質的にネイティブT細胞受容体におけるのと同様に変異によって配向されるようなものである。より具体的には、第1のセグメントは、TCRα鎖定常領域細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合したTCRα鎖可変領域配列に対応するアミノ酸配列によって構成されていてもよく、第2のセグメントは、TCRβ鎖定常領域細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合したTCRβ鎖可変領域に対応するアミノ酸配列によって構成されていてもよく、かつジスルフィド結合は、第1の鎖と第2の鎖の間にもたらされてもよい。リンカー配列は、TCRの機能を損なわない任意の配列であってもよい。
【0084】
本発明の文脈において、「機能性」TCRαおよび/またはβ鎖融合タンパク質は、例えば、少なくとも実質的な生物学的活性を維持する、アミノ酸の付加、欠失または置換によって改変されたTCRまたはTCRバリアントを意味することになる。TCRのαおよび/またはβ鎖の場合には、このことは、両方の鎖が、その生物学的機能、特に前記TCRの特異的ペプチド-MHC複合体への結合、および/または特異的ペプチド:MHC相互作用の際の機能的シグナル伝達を発揮するTCR(改変されていないαおよび/もしくはβ鎖を有するかまたは別の発明の融合タンパク質αおよび/またはβ鎖を有する)を形成することが可能なままであることを意味することになる。
【0085】
具体的実施形態では、TCRは、機能性TCRαおよび/またはβ鎖融合タンパク質であるよう改変されてもよく、ここで、前記エピトープタグは、6から15アミノ酸、好ましくは9から11アミノ酸の長さを有する。別の実施形態では、TCRは、機能性T細胞受容体(TCR)αおよび/またはβ鎖融合タンパク質であるように改変されてもよく、ここで、前記TCRαおよび/またはβ鎖融合タンパク質は、いずれも離れて配置されているかまたはタンデムに直接配置されている2つ以上のエピトープタグを含む。融合タンパク質の実施形態は、融合タンパク質がその生物学的活性(単数または複数)(「機能性」)を維持する限り、2、3、4、5またはさらに多くのエピトープタグを含有し得る。
【0086】
好ましいのは、本発明による機能性TCRαおよび/またはβ鎖融合タンパク質であり、ここで、前記エピトープタグは、以下に限定されないが、CD20もしくはHer2/neuタグ、または他の従来のタグ、例えば、myc-タグ、FLAG-タグ、T7-タグ、HA(ヘマグルチニン)-タグ、His-タグ、S-タグ、GST-タグ、もしくはGFP-タグから選択され、myc、T7、GST、GFPタグは、既存の分子に由来するエピトープである。対照的に、FLAGは、高い抗原性のために設計された合成エピトープタグである(例えば、米国特許第4,703,004号明細書および同第4,851,341号明細書を参照されたい)。高品質の試薬をその検出に使用することが可能であるため、mycタグが好ましくは使用され得る。エピトープタグは、当然のことながら、抗体による認識の他に、1つまたは複数の追加の機能を有してもよい。これらのタグの配列は文献に記載されており、当業者に周知である。
【0087】
キメラ補助刺激受容体
抗原特異的TCR(例えば、PRAME特異的TCRまたはNY-ESO-1特異的TCR)と組み合わせて使用されるキメラ補助刺激受容体は、
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン、
- 膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含む。
【0088】
本明細書において、抗原特異的TCR、例えばPRAME特異的TCRまたはNY-ESO-1特異的TCRと組み合わせて使用されるキメラ補助刺激受容体は、PD-1(例えば、ヒトPD-1)由来の細胞外ドメインを含有する細胞外ドメインを特に含んでもよい。この文脈では、用語「由来の」は、細胞外ドメインに含有されるポリペプチドが、それぞれ、PD-1(例えば、ヒトPD-1)の少なくとも一部、好ましくはPD-1の細胞外ドメインを含むことを特に意味する。PD-1由来の細胞外ドメインを含むキメラ補助刺激受容体は、PD-L1、PD-L2またはPD-1の他の阻害性リガンドに対して結合活性を有する。本明細書で使用される場合、用語PD-1「由来の」は、PD-1(例えば、ヒトPD-1)の天然の配列またはその一部(例えば、細胞外ドメイン)と比較して、最大0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれより多いアミノ酸が、置換、欠失、および/または挿入されていることも可能にする。
【0089】
一実施形態では、PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメインは、配列番号28に示される配列または配列番号28と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。具体的実施形態では、PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメインは、配列番号28に示される配列を含む。
【0090】
本発明の一実施形態では、キメラ補助刺激受容体は、PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメインを含み、ヒトまたはマウスのPD-1、例えば、配列番号28に示されているヒトPD-1の細胞外ドメインのアミノ酸配列と比較して、最大0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸置換(好ましくは、保存的または高度に保存的な置換)、欠失および/または挿入を有するアミノ酸配列を含む。
【0091】
本明細書において、抗原特異的TCR、例えばPRAME特異的TCRまたはNY-ESO-1特異的TCRと組み合わせて使用されるキメラ補助刺激受容体は、細胞外ドメインと細胞内ドメインとの間で作動可能に連結された膜貫通ドメインをさらに含む。一般に、膜貫通ドメインは、特定の膜貫通ドメインに限定されない。好ましくは、膜貫通ドメインは、融合タンパク質を発現する細胞(例えば、T細胞)の膜における融合タンパク質の安定な固定を可能にし、それぞれ細胞外ドメインのPD-L1への結合をさらに可能にし、PD-L1への結合時に、4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメインへのシグナル伝達を可能にする。
【0092】
好ましい実施形態では、キメラ補助刺激受容体の膜貫通ドメインは、PD-1由来ある。一実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号30に示される配列または配列番号30と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。具体的実施形態では、PD-1由来のポリペプチドを含有する膜貫通ドメインは、配列番号30に示される配列を含む。
【0093】
本明細書において、抗原特異的TCR、例えばPRAME特異的TCRまたはNY-ESO-1特異的TCRと組み合わせて使用されるキメラ補助刺激受容体は、4-1BB(例えば、「41BB」と称される)由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン、好ましくは4-1BB(例えば、ヒト4-1BB)の細胞内ドメインを特に含んでもよい。この文脈では、用語「由来の」は、細胞内ドメインに含有されるポリペプチドが、それぞれ、4-1BB(例えば、ヒト4-1BB)の少なくとも一部、好ましくは4-1BBの細胞内ドメインを含むことを特に意味する。4-1BB由来の細胞内ドメインを含むキメラ補助刺激受容体は、PD-L1、PD-L2もしくはPD-1の別の阻害性リガンドによる刺激により、前記キメラ補助刺激受容体を発現するT細胞の増殖率を増加させることが可能であり、および/またはキメラ補助刺激受容体を発現していない対応するT細胞と比較して、前記キメラ補助刺激受容体を発現しているT細胞のエフェクター機能(IFN-γ放出の増加および/または細胞毒性の増加など)を増大させることが可能である。本明細書で使用される場合、用語4-1BB「由来の」は、4-1BB(ヒトまたはマウスの、好ましくはヒトの4-1BB)の天然の配列またはその一部(例えば、細胞内ドメン)と比較して、最大0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれより多いアミノ酸が、置換、欠失、および/または挿入されていることも可能にする。一実施形態では、4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメインは、配列番号32に示される配列または配列番号32と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。具体的実施形態では、4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメインは、配列番号32に示される配列を含む。
【0094】
「少なくとも80%同一」、特に「少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する」は、本明細書で使用される場合、アミノ酸配列が、示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であることを含む。
【0095】
複数の配列間のパーセント同一性の決定は、好ましくは、Vector NTI Advance(商標) 10プログラム(Invitrogen Corporation、Carlsbad CA、USA)のAlignXアプリケーションを使用して達成される。このプログラムは、改変Clustal Wアルゴリズムを使用する(Thompson et al., 1994. Nucl Acids Res. 22: pp. 4673-4680;Invitrogen Corporation;Vector NTI AdvanceTM10 DNA and protein sequence analysis software. User's Manual, 2004, pp.389-662)。パーセント同一性の決定は、AlignXアプリケーションの標準パラメーターを用いて実施される。
【0096】
核酸、核酸組成物およびベクター
本発明は、抗原特異的TCR、特に本明細書に記載されているNY-ESO-1またはPRAME特異的TCRをコードする核酸、ならびに対応する核酸組成物および前記核酸を含むベクターを包含する。
【0097】
PRAME特異的TCRの関連する領域およびドメインをコードするヌクレオチド配列は、表1に示されている:
【0098】
【表1】
【0099】
キメラ補助刺激受容体の関連する領域およびドメインをコードするヌクレオチド配列は、表2に示されている:
【0100】
【表2】
【0101】
したがって、さらなる態様は、
- 配列番号2のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、ならびに
- 配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖
を含むPRAME特異的T細胞受容体(TCR)をコードする核酸;ならびに
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン、
- 膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含むキメラ補助刺激受容体をコードする核酸
を含む組成物に関する。
【0102】
さらに、一態様は、
- 配列番号2のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、ならびに
- 配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖
を含むPRAME特異的T細胞受容体(TCR)をコードする核酸;ならびに
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン、
- 膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含むキメラ補助刺激受容体をコードする核酸
を含む核酸に関する。
【0103】
さらに、さらなる態様は、
- 配列番号35のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号36のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号37のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、ならびに
- 配列番号38のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号39のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号40のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖
を含むNY-ESO-1特異的T細胞受容体(TCR)をコードする核酸;ならびに
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン、
- 膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含むキメラ補助刺激受容体をコードする核酸
を含む組成物に関する。
【0104】
さらに、一態様は、
- 配列番号35のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号36のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号37のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、ならびに
- 配列番号38のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号39のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号40のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖
を含むNY-ESO-1特異的T細胞受容体(TCR);ならびに
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン、
- 膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含むキメラ補助刺激受容体をコードする核酸
を含む核酸に関する。
【0105】
さらなる態様は、PRAME特異的TCRおよびキメラ補助刺激受容体の配列を含む核酸を含むベクターを指す。別の態様は、NY-ESO-1特異的TCRおよびキメラ補助刺激受容体の配列を含む核酸を含むベクターを指す。核酸組成物および/またはベクターを含む細胞も包含される。
【0106】
「核酸分子」は、一般的に、DNAまたはRNAのポリマーを意味し、一本鎖または二本鎖であってもよく、天然源から合成または得られてもよく(例えば、単離および/または精製されてもよく)、天然、非天然または改変されたヌクレオチドを含有してもよく、および天然、非天然または改変されたヌクレオチド間の連結、例えば、未改変オリゴヌクレオチドのヌクレオチド間に見られるホスホジエステルの代わりに、ホスホロアミデート連結またはホスホロチオエート連結などを含有してもよい。好ましくは、本明細書に記載の核酸は組換え体である。本明細書で使用される場合、用語「組換え体」は、(i)天然もしくは合成核酸セグメントを、生細胞中で複製し得る核酸分子に連結することによって、生細胞の外側で構築される分子、または(ii)上記(i)に記載されたものの複製から得られる分子を指す。本発明の目的として、複製は、in vitro複製であっても、またはin vivo複製であってもよい。核酸は、当技術分野で公知の、または市販の(例えば、Genscript、Thermo Fisherおよび同様の会社からの)手順を使用して、化学合成および/または酵素的ライゲーション反応に基づいて構築され得る。例えば、Sambrook et al.を参照されたく、核酸は、天然に存在するヌクレオチドまたは分子の生物学的安定性を増加させるか、またはハイブリダイゼーションの際に形成される二本鎖の物理的安定性を高めるように設計された様々な改変ヌクレオチド(例えば、Sambrook et al. 2001を参照されたい)(例えば、ホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチド)を使用して化学的に合成され得る。核酸は、組換えTCRおよび/あるいはキメラ補助刺激受容体、ポリペプチド、もしくはタンパク質、またはその機能性部分もしくは機能性バリアントのいずれかをコードする任意のヌクレオチド配列を含み得る。
【0107】
例えば、本開示は、単離または精製された核酸のバリアントであって、バリアント核酸が、本明細書に記載のTCRをコードするヌクレオチド配列と、少なくとも75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一なヌクレオチド配列を含む、バリアントも提供する。このようなバリアントヌクレオチド配列は、PRAMEまたはNY-ESO-2、特にPRAMEのエピトープSLLQHLIGL(配列番号1)または配列番号34のNY-ESO-1のエピトープを特異的に認識する機能的TCRをコードする。
【0108】
例えば、本開示は、単離または精製された核酸のバリアントであって、バリアント核酸が、本明細書に記載のキメラ補助刺激受容体と、少なくとも75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一なヌクレオチド配列を含む、バリアントも提供する。このようなバリアントヌクレオチド配列は、本明細書に記載されている機能的キメラ補助刺激受容体をコードする。
【0109】
本明細書の他の箇所で既に記載されているように、TCRおよび/またはキメラ補助刺激受容体をコードする核酸は改変されてもよい。核酸配列全体における有用な改変は、コドン最適化であり得る。翻訳されたアミノ酸配列内に保存的置換をもたらす変更がなされ得る。TCRに関して、これらのバリエーションは、機能に影響を及ぼさないTCR鎖のアミノ酸配列の相補性決定領域および非相補性決定領域においてなされ得る。通常、付加と欠失は、CDR3領域において行うべきではない。
【0110】
別の実施形態は、本明細書に記載されているTCRおよびキメラ補助刺激受容体をコードする核酸を含むベクターを指す。
【0111】
ベクターは、好ましくは、プラスミド、シャトルベクター、ファージミド、コスミド、発現ベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクターもしくは粒子および/または遺伝子治療において使用されるベクターである。
【0112】
「ベクター」は、核酸配列を、コードされたポリペプチドの合成が起こり得る好適な宿主細胞中に運ぶための能力を有する任意の分子または組成物である。典型的には、および好ましくは、ベクターは、所望の核酸配列(例えば、本発明の核酸)を組み込むために、当技術分野で公知の組換えDNA技法を使用して操作された核酸である。ベクターは、DNAもしくはRNAを含んでもよく、ならびに/またはリポソームおよび/もしくはウイルス粒子を含んでもよい。ベクターは、プラスミド、シャトルベクター、ファージミド、コスミド、発現ベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクターもしくは粒子および/または遺伝子治療において使用されるベクターであってもよい。ベクターは、複製開始点として、宿主細胞における複製を可能とする核酸配列を含んでもよい。ベクターは、1つまたは複数の選択可能なマーカー遺伝子および当業者にとって公知の他の遺伝要素も含んでもよい。ベクターは、好ましくは、前記核酸の発現を可能にする配列に作動可能に連結した本発明による核酸を含む発現ベクターである。
【0113】
好ましくは、ベクターは発現ベクターである。より好ましくは、ベクターは、レトロウイルス、より具体的には、γ-レトロウイルスまたはレンチウイルスのベクターである。
【0114】
当業者は、キメラ補助刺激受容体配列ならびにTCR鎖のTCR-α鎖およびTCR-β鎖の配列が、1つの核酸、例えば1つのベクターに含まれ得ることを理解する。この場合、配列は、内部リボソーム進入部位(IRES)の配列あるいはブタツェコウイルス(P2A)由来のまたはThosea asignaウイルス2Aペプチド(T2A)もしくは口蹄疫ウイルス2Aペプチド(F2A)のような他の種由来の2Aペプチド配列と連結されており(Szymczak et al.: Development of 2A peptide-based strategies in the design of multicistronic vectorsに記載されている)、形質導入細胞内でウイルスプロモーターの制御下にある単一のメッセンジャーRNA(mRNA)分子を発現させる。
【0115】
具体的実施形態では、細胞は、本明細書に記載されているTCRおよびキメラ補助刺激受容体をコードする核酸または前記核酸を含むベクターを含んでもよい。
【0116】
用語「トランスフェクション」と「形質導入」は交換可能であり、外因性核酸配列が、宿主細胞、例えば、真核宿主細胞に導入されるプロセスを指す。核酸配列の導入または移入は、上述の方法に限定されないが、電気穿孔、微量注射、遺伝子銃送達、リポフェクション、スーパーフェクションおよびレトロウイルスまたは形質導入もしくはトランスフェクションに好適な他のウイルスによる上述の感染を含む任意の数の手段よって達成され得る。TCRのクローニングおよび外因性発現の方法は、例えば、Engels et al.(Relapse or eradication of cancer is predicted by peptide-major histocompatibility complex affinity. Cancer Cell, 23(4), 516-26. 2013)に記載されている。一次ヒトT細胞のレンチウイルスベクターによる形質導入は、例えば、Cribbs "simplified production and concentration of lentiviral vectors to achieve high transduction in primary human T cells" BMC Biotechnol. 2013; 13: 98に記載されている。
【0117】
本明細書で記載および提供されている核酸分子またはベクターを含む本発明に関連して記載および提供される細胞は、本発明の抗原特異的TCR、例えばPRAME特異的TCRまたはNY-ESO-1特異的TCR、およびキメラ補助刺激受容体を安定してまたは一過的に(例えば、安定して)発現する(構成的にまたは状況的に)ことができるのが好ましい。宿主細胞には、一般に、任意の好適な核酸分子またはベクターによって形質導入または形質転換され得る。一実施形態では、宿主細胞には、上記のように、本発明の融合タンパク質またはその一部(例えば、ECD、TMD、および/またはICD)をコードする核酸分子を含むレトロウイルスまたはレンチウイルス(例えば、レトロウイルス)ベクターにより形質導入される。
【0118】
一部の実施形態では、細胞(例えば、標的特異的免疫細胞または本明細書において言及されている細胞もしくは細胞の集団を含む)は、末梢血リンパ球(PBL)または末梢血単核球(PBMC)である。細胞は、ナチュラルキラー細胞またはT細胞であってもよい。好ましくは、細胞はT細胞である。T細胞は、CD4+またはCD8+T細胞であってもよい。一部の実施形態では、細胞は、幹細胞様メモリーT細胞である。
【0119】
幹細胞様メモリーT細胞(TSCM)は、自己再生能および長期間存続する能力によって特徴付けられる、分化の程度の低いCD8+またはCD4+T細胞の亜集団である。in vivoでこれらの細胞がそれらの抗原に遭遇すると、これらは、一部の静止したままのTSCMと共に、セントラルメモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリーT細胞(TEM)および最終分化エフェクターメモリーT細胞(TEMRA)へとさらに分化する(Flynn et al., Clinical & Translational Immunology (2014))。これらの残っているTSCM細胞は、in vivoで耐性免疫記憶を構築する能力を示し、したがって、養子T細胞療法に関する重要なT細胞亜集団であると考えられる(Lugli et al., Nature Protocols 8, 33-42 (2013) Gattinoni et al., Nat. Med. 2011 Oct; 17(10): 1290-1297)。幹細胞メモリーT細胞亜集団にT細胞プールを限定するために、免疫磁気選択を使用することができる。(Riddell et al. 2014, Cancer Journal 20(2): 141-44)を参照されたい。
【0120】
医薬組成物、医学的処置およびキット
本発明の別の態様は、抗原特異的TCR、例えばNY-ESO-1特異的TCRもしくはPRAME特異的TCR、およびキメラ補助刺激受容体を含むか、または本明細書に記載されている前記分子をコードする核酸分子を含む細胞を含む医薬組成物、抗原特異的TCR、例えばNY-ESO-1特異的TCRもしくはPRAME特異的TCR、およびキメラ補助刺激受容体をコードする核酸、抗原特異的TCR、例えばNY-ESO-1特異的TCRもしくはPRAME特異的TCRをコードする核酸、およびキメラ補助刺激受容体をコードする核酸を含む組成物、本明細書に記載されている対応するベクターを指す。
【0121】
本発明のこれらの活性成分は、好ましくは、許容される担体または担体材料と混合した用量で、このような医薬組成物によって、疾患が処置されるかまたは少なくとも緩和され得るように使用される。このような組成物は、(活性成分および担体に加えて)、当技術分野の公知の状態である充填材料、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤および他の材料を含み得る。
【0122】
用語「薬学的に許容される」は、活性成分の生体活性の有効性を妨げない、非毒性材料を定義する。担体の選択は、適用に依存する。
【0123】
医薬組成物は、活性成分の活性を増強するかまたは処置を補う追加の成分を含有してもよい。このような追加の成分および/または因子は、相乗効果を達成するかまたは有害もしくは望ましくない作用を最小限にするための、医薬組成物の一部であり得る。
【0124】
本発明の活性成分の製剤化または調製および適用/薬物治療のための技法は、"Remington's Pharmaceutical Sciences", Mack Publishing Co., Easton, PA, latest editionに公開されている。適当な適用は、非経口適用、例えば、筋肉内、皮下、髄内注射および髄腔内、直接脳室内、静脈内、節内、腹腔内または腫瘍内注射である。静脈内注射は、患者にとって好ましい処置である。
【0125】
好ましい実施形態によれば、医薬組成物は、注入または注射である。
【0126】
注射用組成物は、少なくとも1つの有効成分、例えば、抗原特異的TCR、例えばNY-ESO-1特異的TCRまたはPRAME特異的TCR、およびキメラ補助刺激受容体を含む増殖T細胞集団(例えば、処置される患者に対して自己であるかまたは同種間である)を含む薬学的に許容される流体組成物である。有効成分は、通常、生理的に許容される担体中に溶解されるかまたは懸濁され、さらに、組成物は、乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤などの少量の1つまたは複数の非毒性補助剤を含んでもよい。本開示の融合タンパク質と共に使用するのに有用な、このような注射用組成物は従来的なものであり、適当な製剤は、当業者に周知である。
【0127】
典型的には、医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む。
【0128】
したがって、本発明の別の態様は、医薬として使用するための、本明細書に記載されている細胞、本明細書に記載されている組成物、本明細書に記載されている核酸、および/または本明細書に記載されているベクターを指す。
【0129】
一部の実施形態は、がんの処置において使用するための、本明細書に記載されている細胞、本明細書に記載されている組成物、本明細書に記載されている核酸、および/または本明細書に記載されているベクターを指す。
【0130】
一実施形態では、がんは、血液がんまたは固形腫瘍である。
【0131】
血液がんは、固形腫瘍を形成せず、したがって、体内に主に分散される血液のがんとも言われる。血液がんの例は、白血病、リンパ腫または多発性骨髄腫である。固形腫瘍には2つの主要なタイプ、すなわち肉腫および癌が存在する。肉腫は、例えば、血管、骨、脂肪組織、靭帯、リンパ管、筋肉または腱の腫瘍である。具体的実施形態では、がんは固形腫瘍である。
【0132】
一実施形態では、がんは、前立腺がん、子宮がん、甲状腺がん、精巣がん、腎がん、膵臓がん、卵巣がん、食道がん、非小細胞肺がん、肺腺癌、扁平上皮癌、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、メラノーマ、肝細胞癌、頭頚部がん、胃がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、胃腺癌、胆管細胞癌、乳がん、膀胱がん、骨髄性白血病および急性リンパ芽球性白血病、癌、肉腫または骨肉腫からなる群から選択される。
【0133】
本明細書に記載されている改変T細胞を含む組成物は、公知の技法に従って、養子免疫療法のための方法および組成物において、または本開示に基づいて、当業者に明らかとなるそのバリエーションにおいて利用することができる。
【0134】
一部の実施形態では、細胞は、最初に、それらを培養培地から回収し、次いで、細胞を洗浄し、培地および投与に好適な容器系(「薬学的に許容される」担体)において、治療有効量で濃縮することによって製剤化される。好適な注入培地は、任意の等張培地製剤、典型的には、通常生理食塩水、Normosol R(Abbott)またはPlasma-Lyte A(Baxter)であってもよいが、水中5%のデキストロースまたは乳酸リンゲル液も利用することができる。注入培地にヒト血清アルブミンを補充してもよい。
【0135】
組成物中の有効治療のための細胞数は、典型的には、10より多い細胞、かつ最大10、10または10以下の細胞であり、1010より多い細胞でもよい。細胞数は、組成物が、その中に含まれる細胞の種類に応じて意図される最終的用途に応じて変わることになる。本発明において提供される用途では、細胞は、一般的には1リットル以下の体積中にあり、500ml以下、さらには250mlまたは100ml以下であってもよい。したがって、所望の細胞の密度は、典型的には1ml当たり10を超える細胞であり、一般的には1ml当たり10を超え、一般的には1ml当たり10を超える。臨床的に関連する数の免疫細胞は、10、1010または1011の細胞に累積的に等しいかまたはそれを超える複数の注入物中に配分され得る。本発明において提供される医薬組成物は、種々の形態、例えば、固体、液体、粉体、水性、または凍結乾燥形態であってもよい。好適な医薬担体の例は、当技術分野において公知である。このような担体および/または添加剤は、従来の方法によって製剤化することができ、好適な用量で対象に投与することができる。安定化剤、例えば、脂質、ヌクレアーゼ阻害剤、ポリマーおよびキレート剤は、組成物を体内での分解から保護することができる。注射による投与が意図される組成物中には、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定化剤および等張剤のうちの1つまたは複数が含まれてもよい。
【0136】
本発明において提供される抗原特異的TCR、例えばNY-ESO-1特異的TCRまたはPRAME特異的TCR、およびキメラ補助刺激受容体をコードするヌクレオチド配列を含むウイルスベクター粒子は、キットとしてパッケージングされ得る。キットは、任意選択で、1つまたは複数の成分、例えば、使用説明書、デバイス、および追加の試薬、ならびに本方法を実践するためのコンポーネント、例えば、チューブ、容器およびシリンジを含んでもよい。例示的なキットは、組換えTCRおよびキメラ補助刺激受容体をコードする核酸、組換えポリペプチド、または本発明において提供されるウイルスを含んでもよく、任意選択で、使用説明書、対象においてウイルスを検出するためのデバイス、組成物を対象に投与するためのデバイス、および組成物を対象に投与するためのデバイスを含んでもよい。
【0137】
抗原特異的TCR、例えばNY-ESO-1特異的TCRまたはPRAME特異的TCR、およびキメラ補助刺激受容体をコードするヌクレオチドを含むキットも本発明において企図される。目的の配列(例えば、組換えTCR)をコードするウイルスベクターおよび任意選択で免疫チェックポイント阻害剤をコードするポリヌクレオチド配列を含むキットも、本明細書において企図されている。
【0138】
本明細書において企図されるキットは、本明細書に開示されたTCRおよび/またはキメラ補助刺激受容体のうちのいずれか1つまたは複数をコードするポリヌクレオチドの存在を検出するための方法を実行するためのキットも含む。特に、このような診断キットは、適当な増幅プライマーおよび検出プライマーならびに本明細書に開示されたTCRおよび/またはキメラ補助刺激受容体をコードするポリヌクレオチドを検出するために、ディープシーケンシングを実施するための他の関連試薬のセットを含んでもよい。さらなる実施形態では、本発明におけるキットは、抗体または他の結合分子などの、本明細書に開示されたTCRおよび/またはキメラ補助刺激受容体を検出するための試薬を含んでもよい。診断キットは、本明細書に開示されたTCRおよび/またはキメラ補助刺激受容体をコードするポリヌクレオチドの存在を決定するため、または本明細書に開示されたTCRおよび/またはキメラ補助刺激受容体の存在を決定するための説明書も含有し得る。キットは、説明書を含有してもよい。説明書は、典型的には、キットに含まれる成分、対象の適切な状態を決定するための方法を含む投与のための方法、適切な投薬量、および適切な投与方法を説明する有形の表現を含む。説明書は、処置時間の持続期間にわたって対象をモニタリングするためのガイダンスも含み得る。
【0139】
本発明において提供されるキットは、本明細書に記載の組成物を対象に投与するためのデバイスも含み得る。医薬またはワクチンを投与するための、当技術分野で公知の種々のデバイスのいずれかが、本発明において提供されるキットに含まれてもよい。例示的なデバイスとしては、以下に限定されないが、皮下注射針、静脈注射針、カテーテル、無針注射デバイス、吸入器、および液体ディスペンサー、例えば、点眼器が挙げられる。典型的には、キットのウイルスを投与するためのデバイスは、キットのウイルスに対応するものであり、例えば、高圧注射用デバイスなどの無針注射用デバイスは、高圧注射によって損傷を受けなかったウイルスと共に、キット中に含まれてもよいが、典型的には、高圧注射によって損傷を受けたウイルスと共に、キット中に含まれることはない。
【0140】
サイトカイン放出
TCRと補助刺激分子、例えばPD1-4BBとの両方を発現する細胞は、サイトカイン放出の増強を示す。集団によって多量に分泌されるサイトカイン/溶解性タンパク質は、とりわけ、IFN-γ、Gzm-B、およびIP-10、MIP-1βである。
【0141】
驚くべきことに、免疫細胞、特に本明細書で定義されているキメラ補助刺激受容体を発現するTCR-T細胞は、本明細書で定義されているキメラ補助刺激受容体を欠くTCR-T細胞と比較してより高い多機能性を示す。
【0142】
トランスジェニックT細胞のより高い多機能性は、in vivoでのより高い多機能性および抗腫瘍活性を指し、臨床転帰と相関する。
【0143】
用語「多機能性」は、タンパク質が、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種のタンパク質を分泌することを意味する。
【0144】
当業者は、細胞が抗原特異的な刺激を受けた後、例えば、MHC分子中に抗原を提示する抗原提示細胞と接触した場合に、細胞がタンパク質を分泌することを理解する。
【0145】
特に、細胞集団は、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、1%、1.5%、2%、3%、4%、4.5%の多機能性細胞のような、かなりのパーセンテージの細胞を含む。
【0146】
特に、細胞集団は、少なくとも1%、好ましくは少なくとも1.5%、より好ましくは1.75%の3種以上のタンパク質を発現するかなりのパーセンテージの細胞を含む。
【0147】
一部の実施形態では、多機能性強度指数は、80以上、好ましくは90以上、より好ましくは100以上である。
【0148】
多機能性強度指数(PSI)は、様々な分泌されたサイトカインの強度と多機能性T細胞のパーセンテージを乗算することによって計算した。
【0149】
特に、本発明者らは、標的特異的、例えばPRAME特異的またはNY-ESO-1特異的な、TCRと、本明細書で定義されているキメラ補助刺激受容体との両方を発現する細胞集団が、少なくとも2種のタンパク質、例えば少なくとも3種のタンパク質、少なくとも4種のタンパク質、少なくとも5種のタンパク質を分泌する細胞を含むことを示すことができた。
【0150】
したがって、本発明の別の態様は、T細胞の集団が本明細書で定義されているかなりの割合の多機能性T細胞を含むかどうかを示すことによって、T細胞の集団の効力を示すin vitroアッセイを指す。
【0151】
よって、一般に、エフェクタータンパク質、刺激性サイトカインおよび化学誘引性サイトカインの群から選択される少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種のタンパク質を分泌する、非常に強力な標的特異的T細胞が望まれる。
【0152】
特に、本発明は、免疫細胞の集団の効力を示すin vitroアッセイであって、
- 細胞の第1の集団のうちの多機能性免疫細胞の割合を測定するステップと、
- 免疫細胞の第1の集団の効力を評価するステップと、T細胞の第2の集団の効力を評価するステップ
とを含み、第2の集団と比較して、第1の集団における多機能性細胞の割合の増加が、第1の集団が第2の集団より高い効力を有することを示す、in vitroアッセイを指す。
【0153】
多機能性免疫細胞の集団の測定は、IsoLight(登録商標)技術(Isoplexis)によって行うことができる。
【0154】
したがって、エフェクタータンパク質、刺激性サイトカインおよび化学誘引性サイトカインの群から選択される少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種のタンパク質を分泌する標的特異的T細胞を含むT細胞集団が望まれる。
【0155】
エフェクタータンパク質は、Gzm-B、IFN-γ、Perforin、TNF-α、TNF-β、MIP-1αからなる群から選択することができる。
【0156】
一実施形態では、刺激性サイトカインは、GM-CSF、IL-2、IL-7、IL-8、IL-9、IL-12からなる群から選択することができる。一実施形態では、刺激性タンパク質は、GM-CSF、IL-2およびIL-8から選択される。一実施形態では、刺激性タンパク質はGM-CSFである。
【0157】
化学誘引性サイトカインは、IP-10およびMIP-1βから選択することができる。
【0158】
一部の実施形態では、少なくとも2種のタンパク質を分泌する細胞は各々、Gzm-B、IFN-γ、Perforin、TNF-α、TNF-β、MIP-1α、GM-CSF、IL-2、IL-5、IL-7、IL-8、IL-9、IL-12、IP-10およびMIP-1βからなる群から選択されるタンパク質のうちの少なくとも1種を分泌する。一部の実施形態では、少なくとも2種のタンパク質を分泌する細胞は各々、Gzm-B、IFN-γ、Perforin、TNF-α、TNF-β、GM-CSF、IL-2、IL-8、MIP-1βおよびIP-10からなる群から選択されるタンパク質のうちの少なくとも1種を分泌する。一部の実施形態では、少なくとも2種のタンパク質を分泌する細胞は各々、IFN-γ、Gzm-B、GM-CSF、MIP-1βおよびIP-10からなる群から選択されるタンパク質のうちの少なくとも1種を分泌する。一部の実施形態では、少なくとも2種のタンパク質を分泌する細胞は各々、IFN-γ、Gzm-B、GM-CSFからなる群から選択されるタンパク質のうちの少なくとも1種を分泌する。一部の実施形態では、少なくとも2種のタンパク質を分泌する細胞は各々、IFN-γ、Gzm-B、およびIP-10からなる群から選択されるタンパク質のうちの少なくとも1種を分泌する。一部の実施形態では、少なくとも2種のタンパク質を分泌する細胞は各々、IFN-γおよびGzm-Bからなる群から選択されるタンパク質のうちの少なくとも1種を分泌する。
【0159】
典型的には、細胞集団は、かなりの量のIL-6および/またはIL-10を分泌する細胞を含まない。
【0160】
よって、一部の実施形態は、(A)本明細書で定義されているPRAME特異的TCRおよび(B)本明細書で定義されているキメラ補助刺激受容体を発現するT細胞であって、エフェクタータンパク質、刺激性サイトカインおよび化学誘引性サイトカインからなる群から選択される少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種のタンパク質を分泌する、T細胞を指す。
【0161】
したがって、一部の実施形態は、(A)本明細書で定義されているPRAME特異的TCRおよび(B)本明細書で定義されているキメラ補助刺激受容体を発現するT細胞を含む細胞集団であって、エフェクタータンパク質、刺激性サイトカインおよび化学誘引性サイトカインからなる群から選択される少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種のタンパク質を分泌するT細胞を含む細胞集団を指す。
【0162】
他の実施形態は、(A)本明細書で定義されているNY-ESO-1特異的TCRおよび(B)本明細書で定義されているキメラ補助刺激受容体を発現するT細胞であって、エフェクタータンパク質、刺激性サイトカインおよび化学誘引性サイトカインからなる群から選択される少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種のタンパク質を分泌する、T細胞を指す。
【0163】
したがって、一部の実施形態は、(A)本明細書で定義されているNY-ESO-1特異的TCRおよび(B)本明細書で定義されているキメラ補助刺激受容体を発現するT細胞を含む細胞集団であって、エフェクタータンパク質、刺激性サイトカインおよび化学誘引性サイトカインからなる群から選択される少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種のタンパク質を分泌するT細胞を含む細胞集団を指す。
【0164】
実験
【0165】
[実施例1]
PD1-41BBの同時発現は、TCR発現レベルを変化させない。
トランスジェニックTCR T23.8-2.1-027-004(=TCR)およびPD1-41BBと組み合わせたTCR(=TCR_PD1-41BB)の試験および特徴付けのためのエフェクターT細胞を調製するために、CD8+ T細胞を健康なドナーから単離し、IL-7およびIL-5の存在下でCD3/CD28抗体で活性化させた。活性化細胞に、TCRの配列またはPD1-41BBに連結したTCRの配列のいずれかを含有するレトロウイルス粒子を形質導入した。同じ方法で調製した非形質導入(=UT)CD8+ T細胞を対照として使用した。導入遺伝子の形質導入効率および発現レベルをTCR-β鎖(TRBV09)およびPD-1の抗体染色と、その後のフローサイトメトリーによる分析によって、14日目に決定した。
【0166】
分析により、構築物TCR(90.2%)とTCR_PD1-41BB(82%)の両方で高い形質導入率が達成され得ることが実証される(図1)。PD-1発現は、非形質導入(UT)エフェクターT細胞およびTCR形質導入エフェクターT細胞において検出することができない。しかしながら、PD-1抗体のTCR PD1-41BB形質導入T細胞への結合は、トランスジェニックTCRの発現と相関するPD1-41BBの発現レベルが高いことを示す。PD1-41BBの同時発現は、トランスジェニックTCRのみを発現するエフェクターT細胞において測定されたレベルに匹敵するTCR発現レベルをもたらす。これにより、PD1-41BBスイッチ受容体とトランスジェニックTCRの同時発現がT細胞において可能であり、細胞表面で等モル発現になることを実証する。
【0167】
[実施例2]
TCRトランスジェニックT細胞の機能的アビディティは、PD1-41BBの同時発現によって変更されない。
機能的アビディティは、トランスジェニックTCRおよびペプチド-MHC複合体などの個々の非共有結合性相互作用の複数の親和性の強さの蓄積を指す。このように、エフェクターT細胞の機能的アビディティは、ペプチド感受性の尺度となる。高いペプチド感受性を付与するTCRは、より少ない量のペプチドを認識することができる。PD1-41BB受容体の同時発現がTCRトランスジェニックエフェクターT細胞のペプチド感受性に影響を及ぼすかどうかを調査するために、これらを、必要とされるHLA(HLA-A2:01)を有し、PD1-41BBとのライゲーションを可能にするためにPD-L1を過剰発現するPD-L1トランスジェニックT2細胞(T2_PD-L1)と共培養した。
【0168】
T2_PD-L1細胞に漸増量のSLLQHLIGL(SLL)-ペプチド(10-5M~10-10M)を負荷し、トランスジェニックTCRなし(UT)、トランスジェニックTCRのみ(TCR)またはTCRとPD1-41BBとの組合せ(TCR_PD1-41BB)のいずれかを発現するエフェクターT細胞と、1:1のE:Tで(20.000個の細胞)共培養した。IFN-γ ELISAを共培養の20時間後に実施し、T2_PD-L1細胞が提示した異なる濃度のペプチドを負荷した場合のエフェクターT細胞の反応性を評価した(図2)。最大半量のIFN-γ放出をTCRトランスジェニックエフェクターT細胞の機能的アビディティに関する尺度とする。左のグラフでは、IFN-γの絶対レベルが示され、一方、右のグラフは、相対値について計算された非線形回帰曲線を示す。IFN-γの絶対値を通して示されているように、PD1-41BBの同時発現は、トランスジェニックTCRのみを発現するエフェクターと比較して、T細胞によって分泌されるIFN-γの総量を増加させる。しかしながら、非線形回帰曲線は、PD1-41BBの発現に関わらず、全体的な機能的活性が同等であることを示している。したがって、TCR-トランスジェニックT細胞のペプチド感受性は、リガンドPD-L1の存在下でもPD1-41BBスイッチ受容体の同時発現によって変更されない。
【0169】
[実施例3]
HLA-A02サブタイプの認識はPD1-41BBの同時発現によって変更されない。
HLA-A2タンパク質は、わずかに異なるアミノ酸配列をもたらす異なるHLA-A02下位対立遺伝子によってコードされ得る。HLA-A02:01に関連してその同族ペプチドを認識する特異的TCRは、別のHLA-A02下位対立遺伝子によって提示されるペプチドを必ずしも認識しない。TCRに基づく細胞療法を成功させるために必要とされる遺伝形質を定義し、患者コホートの拡大を可能にするために、TCRを最も一般的なHLA-A02下位対立遺伝子に関連して特徴付ける(図3)。
【0170】
トランスジェニックTCRなし(UT)、トランスジェニックTCRのみ(TCR)、またはTCRとPD1-41BBとの組合せ(TCR_PD1-41BB)のいずれかを発現するT細胞を、選択されたHLA-A02下位対立遺伝子(HLA-A02:XX)を有するリンパ芽球様細胞株(LCL;EBV形質転換B細胞)とE:T比1:1(20.000個の細胞/ウェル)で共培養した。トランスジェニックTCRによる認識を可能にするために、LCLに10-5MのSLL-ペプチドを負荷した。IFN-γ濃度を共培養の20時間後にELISAによって決定した。
【0171】
TCRトランスジェニックエフェクターT細胞は、A02:01と比較して同様のレベルでHLA-A02下位対立遺伝子A02:02、A02:04およびA02:09によってコードされるMHC分子によって提示されたSLL-ペプチドを認識した。この認識パターンは、PD1-41BBの同時発現によって変更されず、以前の結果と一致している。TCRトランスジェニックエフェクターT細胞は、PD1-41BBの同時発現とは無関係に、4つの異なるHLA-A02下位対立遺伝子に関連してSLL-ペプチドを認識する。
【0172】
[実施例4]
潜在的ペプチドのオフターゲット毒性のリスク回避の成功。
TCRが特定のペプチド(例えばSLL-ペプチド)だけでなく、元のペプチドと高い配列相同性を共有する他のペプチドも認識する場合、オフターゲット毒性が生じる可能性がある。特定のペプチドと高い配列類似性を示し、TCRに認識される可能性のある適当なペプチド候補を同定するために、Expitope 2.0(登録商標)[Jaravine V, Mosch A, Raffegerst S, et al. Expitope 2.0: a tool to assess immunotherapeutic antigens for their potential cross-reactivity against naturally expressed proteins in human tissues. BMC Cancer 2017;17(1):892.]のような計算ツールを使用することができる。このツールは、ゲノムデータ、トランスクリプトームデータおよびプロテオミクスデータに基づいて、ミスマッチ(MM)の可能性が最も高いペプチドを予測する。Expitope 2.0(登録商標)検索を適用することによって、特定のSLL-ペプチドと比較して最大4個のアミノ酸の相違を示す191個のMMペプチドを同定することができた。10-6MのMMペプチドまたはSLL-ペプチドを負荷したPD-L1トランスジェニックT2細胞を使用するプレスクリーニング共培養において、TCR-形質導入T細胞によって認識された33個のMMペプチドを同定した。高濃度のペプチドを外因的に負荷しても、内因的にプロセシングされ提示されたペプチドが必ずしも生理的に認識されるとは限らないため、33個のMMペプチドを、エピトープ(ペプチド)がin vitro転写RNA(ivtRNA)から翻訳され、PRAME陰性標的細胞株SNB-19において内因的にプロセシングされた場合に、TCRトランスジェニックエフェクターT細胞によるIFN-γ放出を誘導する可能性について調査した。最大5個のMMペプチドをコードするIvtRNAをSNB-19細胞に電気穿孔させた。プレスクリーニング共培養(MM01、MM26、MM66)において、TCRトランスジェニックT細胞中最も多くのIFN-γ放出を誘導したMMペプチドを「ミディジーン」構築物(約400bp)として個々に試験した。他のMMペプチドすべてを5個のMMペプチドをコードするミニジーン構築物(ペプチドあたり約90bp)として試験した。SLL-ペプチドをコードするミディジーン構築物を陽性対照として使用した。ivtRNAトランスフェクションの成功を確認するために、すべてのRNA構築物は、陽性対照TCRによって認識されるエピトープを含んだ。IFN-γ濃度を、トランスフェクトSNB-19細胞のTCRトランスジェニックエフェクターT細胞との共培養の20時間後に決定した。すべてのトランスフェクトSNB-19細胞は、陽性対照TCRによって認識され、トランスフェクションの成功を確認した(図4)。SLL-ペプチドをコードするivtRNA構築物でトランスフェクトしたSNB-19細胞は、PD1-41BBを有する、および有さないTCRトランスジェニックT細胞によって認識されたが、細胞内でプロセシングされたMMペプチドはいずれも認識されなかった。したがって、すべてのMMペプチドは、リスク回避が可能であり、オフターゲット毒性をもたらす可能性はない。
【0173】
[実施例5]
頻度の高いHLAを網羅するLCLライブラリーを使用してもオフターゲット毒性は同定されなかった。
TCRトランスジェニックT細胞の他のHLAアロタイプとの交差反応性の可能性に関する情報を得るために、白色人種の集団で最も頻度の高いHLA-A、-Bおよび-C対立遺伝子を網羅するリンパ芽球系細胞株(LCL)のライブラリーを標的細胞として使用した。これらのLCLは、多種多様な内因的に発現したペプチドを発現し、適合したHLA-A2分子または最も頻度の高い他のHLA分子で提示された内因性ペプチドの認識により潜在的交差反応性を同定するのに役立つ。特定のHLAアロタイプの交差認識が検出されると、それぞれのHLA対立遺伝子を有する患者は臨床研究から除外されることになる。トランスジェニックTCRなし(UT)、トランスジェニックTCRのみ(TCR)またはTCRとPD1-41BBとの組合せ(TCR_PD1-41BB)のいずれかを発現するT細胞を、36種類のLCLとE:T比1:1で共培養した。IFN-γ濃度を共培養の20時間後にELISAによって決定した。PD1-41BBを有する、および有さないTCRトランスジェニックT細胞は、陽性対照としての役割を果たすSLL-ペプチドを負荷したHLA-A02:01陽性LCLを認識した(図5)。いずれの外因性ペプチドも有さない1つのHLA-A02:01 LCLとの共培養でのみ、IFN-γが放出された。この細胞株では、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって低レベルのPRAME-RNAが検出されたため、わずかな認識は、HLA-A2が提示するSLL-ペプチドのオンターゲット認識であった可能性が高い。他のLCLはいずれも、トランスジェニックTCRまたはPD1-41BBと組み合わせたトランスジェニックTCRを発現するエフェクターT細胞によって認識されなかった。したがって、適合したHLA-A2分子または最も頻度の高い他のHLA分子に提示された内因性ペプチドの認識に起因するオフターゲット毒性は検出できなかった。
【0174】
[実施例6]
正常細胞のパネルを使用してもオフターゲット毒性は同定されなかった。
この実験の目的は、PD1-41BBを有する、および有さない、PRAME特異的TCRトランスジェニックT細胞によって引き起こされる可能性のあるオンターゲット/オフ腫瘍およびオフターゲットの毒性を評価することである。HLA-A02:01陽性の初代正常細胞および必須組織または器官を代表する人工多能性幹細胞(iPS)由来の細胞株を、TCR形質導入T細胞による認識について試験した。個々の標的の特性に合わせ、細胞を共培養開始の1~7日前に、製造業者の使用説明書に従った細胞密度で播種し、平底ウェルで単層培養した。オンターゲット/オフ腫瘍と潜在的なオフターゲット毒性とを区別するために、試験したすべての正常細胞のPRAME mRNA発現を定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって解析した。10-5Mのペプチドを負荷した標的細胞は、内部陽性対照(SLL-ペプチド)としての役割を果たした。IFN-γ濃度を共培養の20時間後にELISAによって決定した。特異的SLL-ペプチドを負荷した正常細胞はすべて、PD1-41BBを有する、および有さない、TCRトランスジェニックT細胞によって認識された(図6)。ペプチドを負荷しなかった場合、成熟樹状細胞(mDC)のみが、非形質導入細胞のバックグラウンドを超えるIFN-γレベルをもたらした。mDCはPRAMEを発現するので、この認識はHLA-A2によって提示されたSLL-ペプチドのオンターゲット認識によるものである。他の標的細胞はいずれも、トランスジェニックTCRまたはPD1-41BBと組み合わせたトランスジェニックTCRを発現するエフェクターT細胞によって認識されなかった。したがって、内因性ペプチドの認識に起因するオフターゲット毒性は観察されなかった。
【0175】
[実施例7]
PD1-41BBは、PD-L1を発現する腫瘍細胞に応答してIFN-γの特異的放出を増強する。
腫瘍細胞上のPD-L1とT細胞上のPD-1との相互作用は通常、T細胞の活性を低下させる阻害シグナルをもたらす。PD1-41BBはこのシグナルを逆転させ、トランスジェニックTCRがその同族ペプチド-MHC複合体と結合した場合にT細胞反応性を増大させる。TCRトランスジェニックT細胞の反応性に及ぼすPD1-41BB同時発現の影響を試験するために、PD1-41BBを有するかまたは有さないエフェクターT細胞を、リガンドPD-L1を発現する腫瘍細胞と共培養した。この共培養には、特異的抗原PRAMEを異なるレベルで発現する様々な適応症由来の腫瘍細胞を選択した(図7A)。腫瘍細胞株におけるPRAME-RNA発現レベルをリアルタイム定量的PCRによって決定し、ハウスキーピング遺伝子GUSBに対して正規化した。10個の腫瘍細胞株はPRAME発現を示したが、4個の腫瘍細胞株ではPRAME mRNAの発現を検出することができなかった。しかし、これら4個のPRAME陰性腫瘍細胞株はPD1-41BBリガンドPD-L1を発現し、PD1-41BBがトランスジェニックTCR-T細胞の特異性に悪影響を及ぼさないことを確認するための陰性コントロールとして機能した。PD-L1の発現レベルは抗体染色とその後のフローサイトメトリー分析によって決定した。安定した発現を可能にするため、いくつかの腫瘍細胞にPD-L1を形質導入した(TD)。一部の腫瘍細胞株ではPD-L1の内因性(end)発現が示されたが、他の細胞株ではIFN-γで処理することによりPD-L1の発現を誘導することができた(ind)。発現を誘導するのに使用したIFN-γレベルは、抗原を認識する特異的T細胞との共培養実験において生じたレベルに匹敵した。腫瘍細胞における内因性PD-L1発現レベルは、一般に、IFN-γ処理によってさらに上昇させることができた(end、ind)。
【0176】
PD1-41BB同時発現がサイトカイン放出に及ぼす影響を決定するために、PD1-41BBを有する、および有さないTCRトランスジェニックT細胞を、異なるレベルのPRAMEおよびPD-L1を発現する選択したHLA-A02:01陽性腫瘍細胞株と共培養した(図7B)。非形質導入(UT)T細胞を対照として使用した。TCRトランスジェニックT細胞と腫瘍細胞とをE:T比1:1(20.000個の細胞)で共培養し、共培養の20時間後にELISAでIFN-γ濃度を測定した。PD1-41BBの同時発現は、PD-L1陽性腫瘍細胞に応答したIFN-γの放出を増強させ、PD1-41BBの同時発現が、PD-L1陽性腫瘍細胞に応答したT細胞反応性を改善させることを示した。同時に、PD-L1発現を示すPRAME陰性腫瘍細胞は認識されないことから、PD1-41BBの同時発現はTCRトランスジェニックT細胞の特異性に影響を及ぼさないことが実証された。サイトカイン放出の増加は、トランスジェニックTCR T細胞が特異的PRAME抗原を認識した場合にのみ観察される。
【0177】
[実施例8]
PD1-41BBは、3D腫瘍細胞スフェロイドに対する特異的細胞毒性応答を増強する。
PD1-41BBの同時共発現が細胞毒性に有益な影響を及ぼすかどうかを決定するために、TCRトランスジェニックT細胞をPD-L1陽性3D腫瘍細胞スフェロイドと共培養した(図8)。この3次元腫瘍細胞スフェロイドは固形腫瘍のin vitroモデルとして役立つはずである。実施例7で導入した腫瘍細胞パネルから、異なるレベルのPRAME発現を示し、赤色蛍光タンパク質(NucLight-Red)を発現した3つのHLA-A02:01陽性腫瘍細胞株を選択した。腫瘍スフェロイドに対する細胞毒性は、Incucyte Zoom(登録商標)またはS3(登録商標)デバイスを使用して、4時間ごとに画像を記録し、20日間にわたる赤色蛍光の消失によって判定した。PD1-41BBの同時共発現がT細胞適合と回復力に及ぼす影響を調査するために、新鮮な腫瘍細胞スフェロイドを3日目、7日目、10日目、13日目および16日目に共培養プレートに移した。腫瘍細胞に繰り返し曝露されるこの厳しい環境において、PD1-41BBの発現は、T細胞のエフェクター機能および適合性に有益な効果を有する。腫瘍細胞スフェロイドを複数回負荷する過程で、PD1-41BB発現エフェクターT細胞は、トランスジェニックTCRのみを発現するエフェクターT細胞と比較して、腫瘍細胞成長をより良好に制御することができる。さらに、PRAME陰性PD-L1陽性腫瘍細胞は、PD1-41BBの発現とは無関係にトランスジェニックTCR T細胞によって標的とされなかった。したがって、PD1-41BBを同時発現するT細胞は完全に抗原依存性のままであるが、PD-L1陽性3D腫瘍細胞スフェロイドに対する特異的細胞毒性応答は増強される。
【0178】
[実施例9]
PD1-41BBは、PD-L1を発現する腫瘍細胞に応答してTCRトランスジェニックT細胞の増殖を増加させる。
PD1-41BBを同時発現するTCRトランスジェニックT細胞のエフェクター機能および回復力の増加は、PD-L1陽性腫瘍細胞に応答したサイトカイン放出および細胞毒性の増強によって決定された(実施例7、8)。特に、腫瘍細胞スフェロイドを複数回負荷した後でも、腫瘍細胞の制御がより良好であることは、抑制的な腫瘍細胞環境におけるT細胞適合性の増加を示しており、T細胞のより良好な生存または増殖とも関連している可能性がある。PD1-41BBスイッチ受容体に含まれる4-1BBシグナル伝達ドメインは、T細胞の増殖率を高める補助刺激をもたらすことが知られている(Choi et al., 4-1BB signaling activates glucose and fatty acidmetabolism to enhance CD8+T cell proliferation; 2017)。PD1-41BBがそのリガンドPD-L1と相互作用する場合にも、このT細胞増殖の増加を観察することができるかどうかを調査するために、TCRトランスジェニックT細胞を、異なるレベルのPRAME抗原を発現するPD-L1陽性腫瘍細胞と共培養した(図9)。TCRトランスジェニックT細胞およびHLA-A02:01陽性腫瘍細胞株をE:Tが1:1で共培養し、非形質導入T細胞(UT)を対照として使用した。PD-L1陽性腫瘍細胞との共培養におけるT細胞のX倍増殖を測定するために、細胞を7日目に回収し、MACSQuant(登録商標)X Analyzerを使用して総細胞数を決定した。フローサイトメトリーベースの細胞計数により、共培養中に依然として存在する可能性のあるT細胞と腫瘍細胞とを容易に区別することが可能であった。予測されたように、非形質導入T細胞は、増殖に必要とされる特異的TCR刺激が存在しないため、PRAME陽性腫瘍細胞に応答して増殖しなかった。トランスジェニックTCR-T細胞は、特異的抗原PRAMEのレベルに依存すると思われる方法で、PD-L1陽性腫瘍細胞に応答して増殖した。PD1-41BBの同時発現は、トランスジェニックTCRのみを発現するT細胞と比較して、PD-L1陽性腫瘍細胞に応答して増殖と生存を、抗原レベル依存的に増強した。したがって、TCRトランスジェニックT細胞におけるPD1-41BBの発現は、増殖率を改善し、阻害性PD-L1受容体を含有する困難な腫瘍細胞環境における細胞の生存率向上に寄与する。
【0179】
[実施例10]
PD1-41BBを同時発現するT細胞は、in vivoで強力な抗腫瘍反応性を示す。
PD1-41BBの同時発現は、in vitroアッセイにおいてTCRトランスジェニックT細胞の抗腫瘍エフェクター機能を増加させた。TCRトランスジェニックT細胞へのPD1-41BBのこの正の効果をin vivoで確認するために、本発明者らは、免疫不全(NOD/Shi-scid/IL-2Rγnull)マウスおよびPRAME/HLA-A02:01陽性メラノーマ細胞株MelA375を使用するマウスモデルを開発した。固形腫瘍の免疫抑制環境を模倣するために、MelA375細胞にPD-L1を形質導入した。5×10個のPD-L1トランスジェニックMelA375を皮下注射した1週間後に、マウスは触知可能な腫瘍を発症した。この時点で、マウスを、それぞれ6匹含む処置群に分配した。マウスに、(TCR_PD1-41BB)を含むかもしくは(TCR)PD1-41BBを含まない10×10個のTCR陽性細胞(細胞総数が16×10個)または等量の非形質導入T細胞(UT)を注射した。腫瘍体積を1週間に2~3回測定した。腫瘍体積が1000mmを超えたマウスを屠殺した。非形質導入T細胞で処置したマウスの腫瘍は急速に成長し、T細胞注射後2~4週間以内に最大腫瘍体積に達した(図10)。トランスジェニックTCRのみを発現するエフェクターT細胞は腫瘍成長にほとんど影響を与えなかった。PD1-41BBを同時発現するT細胞のみが腫瘍を拒絶することができ、処置の3.5週間後に腫瘍が消失した。これらのデータは、in vitroで強力な抗腫瘍反応性を示すPRAME特異的TCRとPD1-41BBとを組み合わせることで、in vivoモデルで侵襲的に増殖する腫瘍細胞を排除できる高効率のT細胞が得られることを示している。
【0180】
[実施例11]
PD1-41BBを発現するPRAMEを標的とするTCR-T細胞は、PD1-41BBを欠くPRAMEを標的とするTCR-T細胞と比較してより高い多機能性を示す。
PD1-41BBを有するかまたは有さないTCRトランスジェニックT細胞を、IsoLight(登録商標)技術(IsoPlexis)を使用して、それらの単一細胞多機能性(2種以上のサイトカインの放出)に関して分析した。いわゆる「多機能性」T細胞は、複数のタンパク質(特に、サイトカインおよびGzm-Bなどの他のエフェクタータンパク質)を分泌し、それによって、多種多様なエフェクター機能および非常に有効な免疫応答を可能にする。PD-L1を過剰発現する、PRAME陽性のMelA375腫瘍細胞株と共に24時間共培養した後、CD8 Microbeads(Miltenyi Biotec)を使用して腫瘍細胞から単一のCD8 T細胞を分離し、IsoCodeチップ(IsoPlexis)にロードした。32種類のT細胞サイトカイン/タンパク質の分泌を、IsoLightのデバイスおよびIsoSpeakソフトウェア(IsoPlexis)を使用して分析した。PD1-41BBを発現するTCR-T細胞は、PD1-41BBを欠くTCR-T細胞と比較して、2種以上のタンパク質を分泌するT細胞を意味する多機能性T細胞のより高いパーセンテージを示した(図11A)。様々な分泌されたタンパク質/サイトカインの強度と多機能性T細胞の割合を乗算することによって、多機能性強度指数(PSI)を計算した。PD1-41BBを発現するTCR-T細胞は、PD1-41BBを欠くTCR-T細胞と比較して、より高いPSIを示した(図11B)。放出された様々なタンパク質/サイトカインの分類により、優れたPSIには、エフェクタータンパク質サイトカイン(Gzm-B、IFN-γ、Perforin、TNF-α、TNF-β)および刺激性サイトカイン(GM-CSF、IL-2、IL-7、IL-8、IL-9、IL-12)の貢献度が高く、次いで化学誘引性サイトカイン(IP-10、MIP-1β)の貢献度が高いことが明らかになった。調節性サイトカイン(IL-10、IL-22)および炎症性サイトカイン(IL-6およびMCP-1)放出の程度はより低かった。多機能性ヒートマップを使用する単一細胞ポリタンパク質/サイトカイン放出の詳細な分析により、PD1-41BBを有するおよび有さないTCR-T細胞ではそれらのポリタンパク質/サイトカインのシグネチャーが異なることが示された(図11C)。とりわけ、PD1-4BBを発現するTCR-T細胞は、4~10種のタンパク質/サイトカインを同時に分泌するより高い割合の単一細胞を含有し、PD1-4BBを欠くTCR-T細胞と比較してより優れた機能性を示した。PD1-4BBを発現するTCR-T細胞によって放出された主なタンパク質/サイトカインは、エフェクタータンパク質および化学誘引性サイトカインのファミリーに属するGzm-B、IFN-γ、IP-10およびMIP-1βであり、よって、高いTCR-T細胞の機能性および強力な抗腫瘍活性を示し、これは実際に、同じ主要細胞株(MelA375_PD-L1)を使用するin vivo実験においても観察された(図10)。
【0181】
[実施例12]
PD1-41BBを発現するNY-ESO-1を標的とするTCR-T細胞は、PD1-41BBを欠くNY-ESO-1を標的とするTCR-T細胞と比較してより高い多機能性を示す。
PD1-41BBを有するかまたは有さないTCRトランスジェニックT細胞を、IsoLight(登録商標)技術(IsoPlexis)を使用して、それらの単一細胞多機能性(2種以上のサイトカインの放出)に関して分析した。いわゆる「多機能性」T細胞は、複数のタンパク質(特に、サイトカインおよびGzm-Bなどの他のエフェクタータンパク質)を分泌し、それによって、多種多様なエフェクター機能および非常に有効な免疫応答を可能にする。PD-L1を過剰発現する、NY-ESO-1陽性のMelA375またはMel624.38腫瘍細胞株と共に20時間共培養した後、CD8 Microbeads(Miltenyi Biotec)を使用して腫瘍細胞から単一のCD8 T細胞を分離し、IsoCodeチップ(IsoPlexis)にロードした。32種類のT細胞サイトカイン/タンパク質の分泌を、IsoLightのデバイスおよびIsoSpeakソフトウェア(IsoPlexis)を使用して分析した。PD1-41BBを発現するTCR-T細胞は、PD1-41BBを欠くTCR-T細胞と比較して、2種以上のタンパク質を分泌するT細胞を意味する多機能性T細胞のより高いパーセンテージを示した(図12A)。様々な分泌されたタンパク質/サイトカインの強度と多機能性T細胞の割合を乗算することによって、多機能性強度指数(PSI)を計算した。PD1-41BBを発現するTCR-T細胞は、PD1-41BBを欠くTCR-T細胞と比較して、より高いPSIを示した(図12B)。
【0182】
放出された様々なタンパク質/サイトカインの分類により、優れたPSIには、エフェクタータンパク質サイトカイン(Gzm-B、IFN-γ、MIP-1a、Perforin、TNF-α、TNF-β)および刺激性サイトカイン(GM-CSF、IL-12、IL-2、IL-5、IL-8、IL-9)の貢献度が高く、次いで化学誘引性サイトカイン(IP-10、MIP-1β、RANTES)の貢献度が高いことが明らかになった。調節性サイトカイン(IL-4、IL-10、IL-22、sCD137、TGF-β1)および炎症性サイトカイン(CP-1、IL-17FおよびIL8)放出の程度はより低かった。多機能性ヒートマップを使用する単一細胞ポリタンパク質/サイトカイン放出の詳細な分析により、PD1-41BBを有するおよび有さないTCR-T細胞ではそれらのポリタンパク質/サイトカインのシグネチャーが異なることが示された(図1C)。とりわけ、PD1-4BBを発現するTCR-T細胞は、2~6種のタンパク質/サイトカインを同時に分泌するより高い割合の単一細胞を含有し、PD1-4BBを欠くTCR-T細胞と比較してより優れた機能性を示した。PD1-4BBを発現するTCR-T細胞によって放出された主なタンパク質/サイトカインは、Gzm-B、IFN-γ、GM-CSFおよびMIP-1βであり、これらは、エフェクタータンパク質および刺激性サイトカインのファミリーに属し、よって、高いTCR-T細胞の機能性および強力な抗腫瘍活性を示した。
【0183】
本出願は、以下の項目について記載する:
項目1:
(A)
- 配列番号2のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、ならびに
- 配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖
を含むPRAME特異的T細胞受容体(TCR);ならびに
(B)
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン、
- 膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含むキメラ補助刺激受容体
を含む細胞。
【0184】
項目2:TCRが、アミノ酸配列SLLQHLIGL(配列番号1)を有するPRAMEペプチドもしくはその一部、またはそのHLA-A2結合形態に結合することが可能である、項目1に記載の細胞。
【0185】
項目3:HLA-A2が、HLA-A02:01、HLA-A02:02、HLA-A02:04またはHLA-A02:09にコードされる分子である、項目2に記載の細胞。
【0186】
項目4:配列SLLQHLIGL(配列番号1)もしくはその一部、またはそのHLA-A2結合形態への結合により、TCRを形質導入またはトランスフェクトした細胞によるIFN-γ分泌が誘導される、項目1~3のいずれか1つに記載の細胞。
【0187】
項目5:TCRが、配列番号8と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号9と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域を含む、先行する項目のいずれか1つに記載の細胞。
【0188】
項目6:TCRが、配列番号8のアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号9のアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域を含む、先行する項目のいずれか1つに記載の細胞。
【0189】
項目7:TCRが、
配列番号10と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する定常TCRα領域および配列番号11と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する定常TCRβ領域を含む、先行する項目のいずれか1つに記載の細胞。
【0190】
項目8:TCRが、
配列番号10のアミノ酸配列を有する定常TCRα領域および配列番号11のアミノ酸配列を有する定常TCRβ領域を含む、先行する項目のいずれか1つに記載の細胞。
【0191】
項目9:PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメインが、配列番号28の配列を含む、先行する項目のいずれか1つに記載の細胞。
【0192】
項目10:4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメインが、配列番号32の配列を含む、先行する項目のいずれか1つに記載の細胞。
【0193】
項目11:膜貫通ドメインがPD-1に由来する、先行する項目のいずれか1つに記載の細胞。
【0194】
項目12:PD-1由来のポリペプチドを含有する膜貫通ドメインが、配列番号30の配列を含む、先行する項目のいずれか1つに記載の細胞。
【0195】
項目13:キメラ補助刺激受容体が、配列番号26の配列を含む、先行する項目のいずれか1つに記載の細胞。
【0196】
項目14:- 配列番号2のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、ならびに
- 配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖
を含むPRAME特異的TCRをコードする核酸;ならびに
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン、
- 膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含むキメラ補助刺激受容体をコードする核酸
を含む組成物。
【0197】
項目15:- 配列番号2のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、ならびに
- 配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖
を含むPRAME特異的TCRをコードする核酸;ならびに
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン、
- 膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含むキメラ補助刺激受容体をコードする核酸
を含む核酸。
【0198】
項目16:TCRが、アミノ酸配列SLLQHLIGL(配列番号1)を有するPRAMEペプチドもしくはその一部、またはそのHLA-A2結合形態に結合することが可能である、項目14に記載の組成物または項目15に記載の核酸。
【0199】
項目17:HLA-A2が、HLA-A02:01、HLA-A02:02、HLA-A02:04またはHLA-A02:09にコードされる分子である、項目16に記載の組成物または核酸。
【0200】
項目18:配列SLLQHLIGL(配列番号1)もしくはその一部、またはそのHLA-A2結合形態への結合により、TCRを形質導入またはトランスフェクトした細胞によるIFN-γ分泌が誘導される、項目14および16~17に記載の組成物または項目15~17に記載の核酸。
【0201】
項目19:TCRが、配列番号8と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号9と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域を含む、項目14および16~18に記載の組成物または項目15~18に記載の核酸。
【0202】
項目20:TCRが、配列番号8のアミノ酸配列を有する可変TCRα領域および配列番号9のアミノ酸配列を有する可変TCRβ領域を含む、項目14および15~19に記載の組成物または項目15~19に記載の核酸。
【0203】
項目21:TCRが、配列番号10と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する定常TCRα領域および配列番号11と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する定常TCRβ領域を含む、項目14および15~20に記載の組成物または項目15~20に記載の核酸。
【0204】
項目22:TCRが、配列番号10のアミノ酸配列を有する定常TCRα領域および配列番号11のアミノ酸配列を有する定常TCRβ領域を含む、項目14および16~21に記載の組成物または項目15~21に記載の核酸。
【0205】
項目23:Pd-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメインが、配列番号28の配列を含む、項目14および16~22に記載の組成物または項目15~22に記載の核酸。
【0206】
項目24:4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメインが、配列番号32の配列を含む、項目14および16~23に記載の組成物または項目15~23に記載の核酸。
【0207】
項目25:膜貫通ドメインがPD-1に由来する、項目14および16~24に記載の組成物または項目15~24に記載の核酸。
【0208】
項目26:PD-1由来のポリペプチドを含有する膜貫通ドメインが、配列番号30の配列を含む、項目14および16~25に記載の組成物または項目15~25に記載の核酸。
【0209】
項目27:キメラ補助刺激受容体が配列番号26の配列を含む、項目14および16~26に記載の組成物または項目15~26に記載の核酸。
【0210】
項目28:項目15~27に記載の核酸を含むベクター。
【0211】
項目29:項目14および16~27に記載の組成物、項目15~27に記載の核酸または項目28に記載のベクターを含む細胞。
【0212】
項目30:末梢血リンパ球(PBL)または末梢血単核細胞(PBMC)である、項目1~13および項目29に記載の細胞。
【0213】
項目31:T細胞である、項目1~13および項目29~30のいずれか1つに記載の細胞。
【0214】
項目32:項目1~13に記載の細胞、項目29~31に記載の細胞、項目14および16~27に記載の組成物、項目15~27に記載の核酸および/または項目28に記載のベクターを含む医薬組成物。
【0215】
項目33:少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、項目20に記載の医薬組成物。
【0216】
項目34:医薬として使用するための、項目1~13に記載の細胞、項目29~31に記載の細胞、項目14および16~27に記載の組成物、項目15~27に記載の核酸および/または項目28に記載のベクター。
【0217】
項目35:がんの処置において使用するための、項目1~13に記載の細胞、項目29~31に記載の細胞、項目14および16~27に記載の組成物、項目15~27に記載の核酸および/または項目28に記載のベクター。
【0218】
項目36:がんが、好ましくは、メラノーマ、膀胱癌、結腸癌、および乳腺癌、肉腫、前立腺がん、子宮がん、ぶどう膜がん、ぶどう膜メラノーマ、頭頸部扁平上皮がん、滑膜がん、ユーイング肉腫、トリプルネガティブ乳がん、甲状腺がん、精巣がん、腎臓がん、膵臓がん、卵巣がん、食道がん、非小細胞肺がん、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、メラノーマ、肝細胞癌、頭頸部がん、胃がん、子宮内膜がん、結腸直腸がん、胆管癌、乳がん、膀胱がん、骨髄性白血病および急性リンパ芽球性白血病からなる群から選択され、好ましくは、がんが、NSCLC、SCLC、乳がん、卵巣がんまたは結腸直腸がん、肉腫または骨肉腫からなる群から選択される、がんの処置において使用するための、項目1~13に記載の細胞、項目29~31に記載の細胞、項目14および16~27に記載の組成物、項目15~27に記載の核酸および/または項目28に記載のベクター。
【0219】
項目37:
(A)
- 配列番号2のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRα鎖、ならびに
- 配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR2および配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR3を含むTCRβ鎖
を含むPRAME特異的T細胞受容体(TCR);ならびに
(B)
- PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメイン、
- 膜貫通ドメイン、および
- 4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメイン
を含むキメラ補助刺激受容体
を発現する細胞を含む細胞集団であって、
少なくとも2種のタンパク質を分泌する細胞を含む細胞集団。
【0220】
項目38:少なくとも3種のタンパク質を分泌する細胞を含む、項目37に記載の細胞集団。
【0221】
項目39:少なくとも4種のタンパク質を分泌する細胞を含む、項目38に記載の細胞集団。
【0222】
項目40:少なくとも5種のタンパク質を分泌する細胞を含む、項目39に記載の細胞集団。
【0223】
項目41:タンパク質が、エフェクタータンパク質、刺激性サイトカインおよび化学誘引性サイトカインからなる群から選択される、項目40に記載の細胞集団。
【0224】
項目42:エフェクタータンパク質が、Gzm-B、IFN-γ、Perforin、TNF-α、TNF-βからなる群から選択される、項目41に記載の細胞集団。
【0225】
項目43:刺激性サイトカインが、GM-CSF、IL-2、IL-7、IL-8、IL-9、IL-12からなる群から選択される、項目41または42に記載の細胞集団。
【0226】
項目44:化学誘引性サイトカインが、IP-10およびMIP-1βから選択される、項目41から43に記載の細胞集団。
【0227】
項目45:少なくとも2種のタンパク質を分泌する細胞が各々、IFN-γ、Gzm-B、およびIP-10からなる群から選択されるタンパク質のうちの少なくとも1種を分泌する、先行する項目のいずれか1つに記載の細胞集団。
【0228】
項目46:少なくとも2種のタンパク質を分泌する細胞が各々、IFN-γおよびGzm-Bからなる群から選択されるタンパク質のうちの少なくとも1種を分泌する、先行する項目のいずれか1つに記載の細胞集団。
【0229】
項目47:TCRが、アミノ酸配列SLLQHLIGL(配列番号1)を有するPRAMEペプチドもしくはその一部、またはそのHLA-A2結合形態に結合することが可能である、先行する項目のいずれか1つに記載の細胞集団。
【0230】
項目48:PD-1由来のポリペプチドを含有する細胞外ドメインが、配列番号28の配列を含み、
4-1BB由来のポリペプチドを含有する細胞内ドメインが、配列番号32の配列を含む、先行する項目のいずれか1つに記載の細胞集団。
【0231】
項目49:膜貫通ドメインがPD-1に由来し、好ましくは、PD-1由来のポリペプチドを含有する膜貫通ドメインが配列番号30の配列を含み、好ましくは、キメラ補助刺激受容体が配列番号26の配列を含む、先行する項目のいずれか1つに記載の細胞集団。
【0232】
項目50:がんの処置において使用するための、先行する項目のいずれか1つに記載の細胞集団。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図12-1】
図12-2】
図12-3】
【配列表】
2024531430000001.xml
【国際調査報告】