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特表2024-531431真核細胞で発現するタンパク質変異体のライブラリーの調製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】真核細胞で発現するタンパク質変異体のライブラリーの調製
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20240822BHJP
   C40B 40/06 20060101ALI20240822BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240822BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240822BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240822BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C12Q1/02
C40B40/06 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N5/10
C12N15/09 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510636
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2022073549
(87)【国際公開番号】W WO2023025834
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】21193102.7
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518237439
【氏名又は名称】イオンタス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パルティバン コタイ ナチャル デヴィ
(72)【発明者】
【氏名】マカファーティ ジョン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA11
4B063QQ42
4B063QR80
4B063QX01
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA01
4B065CA60
(57)【要約】
真核細胞のゲノムの遺伝子座を同定する方法であって、前記遺伝子座は、バインダー配列の挿入の候補である、方法が本明細書に記載される。バインダーの多様なレパートリーをコードするDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーを作製する方法も本明細書に記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真核細胞のゲノムの遺伝子座を同定する方法であって、前記遺伝子座は、バインダー配列の挿入の候補であり、前記方法は、
a.ランディングパッド配列を提供するステップ;
b.前記ランディングパッド配列を前記真核細胞に導入するステップ;
c.トランスポゾンを介した組み込みにより、前記真核細胞の前記ゲノムに前記ランディングパッド配列をランダムに組み込むステップ;
d.クローンであって、そのゲノムに組み込まれたランディングパッド配列を有するクローンを選択するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
e.単一コピーの組み込みについてスクリーニングするさらなるステップ;
f.前記遺伝子座を同定するさらなるステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
g.バインダーをコードする1つ又は複数の導入遺伝子を含むドナーDNA配列を前記ランディングパッド配列に組み込む追加のステップ;
h.前記ドナーDNAの組み込みについてスクリーニングする追加のステップ
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ランディングパッド配列は、部位特異的ヌクレアーゼの認識配列を含み、好ましくは、前記ヌクレアーゼ認識配列は、メガヌクレアーゼ認識配列、ジンクフィンガーヌクレアーゼ認識配列、TALEヌクレアーゼ認識配列又は核酸ガイド付きヌクレアーゼ認識配列、好ましくはメガヌクレアーゼ認識配列、好ましくはI-SceIメガヌクレアーゼ認識配列である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ドナーDNAを前記細胞内に組み込むステップgは、前記細胞内に部位特異的ヌクレアーゼを提供することを含み、前記ヌクレアーゼは、前記ランディングパッドに含まれる前記認識配列を切断する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ドナーDNAの組み込みについてスクリーニングするステップhは、前記ドナーDNAによってコードされる前記1つ又は複数のバインダーのディスプレイについてスクリーニングすることを含む、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ドナーDNAは、組み込み効率を高めるために相同性アームをさらに含む、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ランディングパッド配列及び/又は前記ドナーDNA配列は、選択可能なマーカーを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
バインダーの多様なレパートリーをコードするDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーを構築するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法で同定された遺伝子座の使用。
【請求項10】
少なくとも10個、10個、10個、10個、10個、10個又は10個の異なるバインダーの多様なレパートリーを発現する真核細胞クローンのインビトロライブラリーであって、各細胞は、組換えDNAを含み、バインダー又はバインダーのサブユニットをコードするドナーDNAは、前記細胞DNAの少なくとも第1及び/又は第2の固定遺伝子座に組み込まれ、前記1つ又は複数の遺伝子座は、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法によって同定され、好ましくは、前記1つ又は複数の遺伝子座は、NLN遺伝子、TNIK遺伝子、PARP11遺伝子、RAB40B遺伝子、ABI2遺伝子、RNF19B遺伝子、PKIA遺伝子又はFTCD遺伝子から選択される遺伝子内にあり、より好ましくは、前記1つ又は複数の遺伝子座は、NLN遺伝子、TNIK遺伝子又はRAB40B遺伝子内、最も好ましくはNLN遺伝子内にある、真核細胞クローンのインビトロライブラリー。
【請求項11】
前記1つ又は複数の遺伝子座は、前記遺伝子のイントロン内にあり、好ましくは、前記1つ若しくは複数の遺伝子座は、前記イントロンのオープンクロマチン領域内にあり、及び/又は前記1つ若しくは複数の遺伝子座は、前記イントロンのエンハンサー領域内にある、請求項10に記載の真核細胞クローンのインビトロライブラリー。
【請求項12】
前記1つ又は複数の遺伝子座は、前記NLN遺伝子のNLN-207のイントロン1、2又は6内にある、請求項10又は11に記載の真核細胞クローンのインビトロライブラリー。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか一項に記載のライブラリーから同定されたバインダー。
【請求項14】
バインダーの多様なレパートリーをコードするDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーを作製する方法であって、
前記バインダーをコードするドナーDNA分子及び真核細胞を提供するステップ;
前記ドナーDNAを前記細胞内に導入し、且つ前記細胞内に部位特異的ヌクレアーゼを提供するステップであって、前記ヌクレアーゼは、細胞DNAの認識配列を切断し、前記認識配列は、前記ドナーDNAが前記細胞DNAに組み込まれることになる組み込み部位を作成するために、NLN遺伝子、TNIK遺伝子、PARP11遺伝子、RAB40B遺伝子、ABI2遺伝子、RNF19B遺伝子、PKIA遺伝子又はFTCD遺伝子内、好ましくはNLN遺伝子、TNIK遺伝子又はRAB40B遺伝子内、より好ましくはNLN遺伝子内にあり、組み込みは、前記細胞に内在するDNA修復機構を通して起こり、それにより前記細胞DNAに組み込まれたドナーDNAを含む組換え細胞を作成する、ステップ;及び
前記組換え細胞を培養してクローンを作製し、それにより前記バインダーのレパートリーをコードするドナーDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーを提供するステップ
を含む方法。
【請求項15】
前記認識配列は、前記遺伝子のイントロン内にあり、好ましくは、前記認識配列は、前記イントロンのオープンクロマチン領域内にあり、及び/又は前記認識配列は、前記イントロンのエンハンサー領域内にある、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記認識配列は、前記NLN遺伝子のNLN-207のイントロン1、2又は6内にある、請求項14又は15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真核細胞クローンのライブラリーの作製、特にバインダーの多様なレパートリーをコードするDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーに関する。さらに、本発明は、真核細胞のゲノムの遺伝子座を同定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2015/166272号パンフレットは、バインダーの多様なレパートリーをコードするDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーを作製する方法を記載している。この方法では、部位特異的ヌクレアーゼを使用して細胞DNAの認識配列を切断し、バインダーをコードするドナーDNAを組み込むことができる組み込み部位を作成する。
【0003】
しかしながら、国際公開第2015/166272号パンフレットの方法は、バインダーの高度な多様性、及び/又はバインダーの均一な組み込み、及び/又はバインダーの均一な転写を特徴とするライブラリーの生成を可能にするために、真核細胞のゲノムの特定の遺伝子座における適切な認識配列の選択に依存する。国際公開第2015/166272号パンフレットは、このような認識配列又は遺伝子座の広範なリストを提供していない。
【0004】
従って、真核細胞のゲノムにおける、バインダー配列の挿入の候補である遺伝子座を同定する方法及びライブラリーを作製する方法に使用され得る適切な認識配列を含む真核生物のゲノムの特定の遺伝子座が当技術分野で継続的に必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、真核細胞のゲノムの遺伝子座を同定する方法が提供され、前記遺伝子座は、バインダー配列の挿入の候補であり、前記方法は、
a.ランディングパッド配列を提供するステップ;
b.ランディングパッド配列を真核細胞に導入するステップ;
c.トランスポゾンを介した組み込みにより、真核細胞のゲノムにランディングパッド配列をランダムに組み込むステップ;
d.クローンであって、そのゲノムに組み込まれたランディングパッド配列を有するクローンを選択するステップ
を含む。
【0006】
この態様による方法は、本出願に関連して、「本発明による遺伝子座を同定する方法」又は「遺伝子座を同定する方法」などと呼ばれ得る。
【0007】
いくつかの実施形態では、本発明による遺伝子座を同定する方法は、以下のさらなるステップを含む:
e.単一コピーの組み込みについてスクリーニングするステップ;
f.遺伝子座を同定するステップ。
【0008】
いくつかの実施形態では、本発明による遺伝子座を同定する方法は、以下の追加のステップを含む:
g.バインダーをコードする1つ又は複数の導入遺伝子を含むドナーDNA配列をランディングパッド配列に組み込むステップ;
h.ドナーDNAの組み込みについてスクリーニングするステップ。
【0009】
いくつかの実施形態では、本発明による遺伝子座を同定する方法は、ランディングパッド配列が部位特異的ヌクレアーゼの認識配列を含むようなものである。好ましくは、ヌクレアーゼ認識配列は、メガヌクレアーゼ認識配列、ジンクフィンガーヌクレアーゼ認識配列、TALEヌクレアーゼ認識配列又は核酸ガイド付きヌクレアーゼ認識配列、より好ましくはメガヌクレアーゼ認識配列、最も好ましくはI-SceIメガヌクレアーゼ認識配列である。
【0010】
いくつかの実施形態では、本発明による遺伝子座を同定する方法では、ドナーDNAを細胞内に組み込むステップgは、細胞内に部位特異的ヌクレアーゼを提供することを含み、ヌクレアーゼは、ランディングパッドに含まれる認識配列を切断する。いくつかの実施形態では、本発明による遺伝子座を同定する方法では、ドナーDNAの組み込みについてスクリーニングするステップhは、ドナーDNAによってコードされる1つ又は複数のバインダーのディスプレイについてスクリーニングすることを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、ドナーDNAは、組み込み効率を高めるために相同性アームをさらに含む。いくつかの実施形態では、ランディングパッド配列及び/又はドナーDNA配列は、選択可能なマーカーを含む。
【0012】
一態様では、バインダーの多様なレパートリーをコードするDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーを構築するための、本発明による遺伝子座を同定する方法で同定された遺伝子座の使用が提供される。この態様による使用は、本出願に関連して、「本発明による遺伝子座の使用」などと呼ばれ得る。
【0013】
一態様では、バインダーの多様なレパートリーをコードするDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーを作製する方法が提供され、この方法は、
- バインダーをコードするドナーDNA分子及び真核細胞を提供するステップ;
- ドナーDNAを細胞内に導入し、且つ細胞内に部位特異的ヌクレアーゼを提供するステップであって、ヌクレアーゼは、細胞DNAの認識配列を切断し、認識配列は、ドナーDNAが細胞DNAに組み込まれることになる組み込み部位を作成するために、NLN遺伝子、TNIK遺伝子、PARP11遺伝子、RAB40B遺伝子、ABI2遺伝子、RNF19B遺伝子、PKIA遺伝子又はFTCD遺伝子内にあり、組み込みは、細胞に内在するDNA修復機構を通して起こり、それにより細胞DNAに組み込まれたドナーDNAを含む組換え細胞を作成する、ステップ;及び
- 組換え細胞を培養してクローンを作製し、それによりバインダーのレパートリーをコードするドナーDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーを提供するステップ
を含む。
【0014】
この態様による方法は、本出願に関連して、「本発明によるライブラリーを生成する方法」、又は「ライブラリーを生成する方法」、又は「ライブラリーを作製する方法」などと呼ばれ得る。「本発明による方法」は、本発明による遺伝子座を同定する方法及び本発明によるライブラリーを生成する方法の両方を指す。
【0015】
いくつかの実施形態では、本発明によるライブラリーを生成する方法では、認識配列は、NLN遺伝子、TNIK遺伝子又はRAB40B遺伝子内にある。好ましくは、認識配列は、NLN遺伝子内にある。
【0016】
いくつかの実施形態では、本発明によるライブラリーを生成する方法では、認識配列は、遺伝子のイントロン内にある。いくつかの実施形態では、認識配列は、イントロンのオープンクロマチン領域内にある。いくつかの実施形態では、認識配列は、イントロンのエンハンサー領域内にある。
【0017】
少なくとも第1及び第2のサブユニット(即ちFab又はIgGフォーマット内に提示される抗体VH及びVLドメインなどの別個のポリペプチド鎖)を含む多量体バインダーでは、複数のサブユニットがドナーDNAの同じ分子上にコードされ得る。しかしながら、異なるサブユニットを別々の遺伝子座に組み込むことが望ましい場合があり、その場合、サブユニットは、別個のドナーDNA分子上に提供され得る。これらは、ヌクレアーゼによる組み込みの同じサイクル内で組み込むか、又は一方若しくは両方の組み込みステップでヌクレアーゼによる組み込みを使用して順次組み込むことができる。
【0018】
多量体バインダーをコードする真核細胞クローンのライブラリーを作製する方法は、
第1のサブユニットをコードするDNAを含む真核細胞を提供し、且つ第2のバインダーサブユニットをコードするドナーDNA分子を提供するステップ、
ドナーDNAを細胞内に導入し、且つ細胞内に部位特異的ヌクレアーゼを提供するステップであって、ヌクレアーゼは、細胞DNAの認識配列を切断し、認識配列は、ドナーDNAが細胞DNAに組み込まれることになる組み込み部位を作成するために、NLN遺伝子、TNIK遺伝子、PARP11遺伝子、RAB40B遺伝子、ABI2遺伝子、RNF19B遺伝子、PKIA遺伝子又はFTCD遺伝子内にあり、組み込みは、細胞に内在するDNA修復機構を通して起こり、それにより細胞DNAに組み込まれたドナーDNAを含む組換え細胞を作成する、ステップ
を含み得る。これらの組換え細胞は、多量体バインダーの第1及び第2のサブユニットをコードするDNAを含み、これらの組換え細胞を培養して両方のサブユニットを発現させることができる。多量体バインダーは、別々にコードされるサブユニットの発現及び構築によって得られる。
【0019】
上記の例では、ヌクレアーゼによる組み込みを使用して、第2のサブユニットをコードするDNAを、第1のサブユニットをコードするDNAを既に含む細胞に組み込む。第1のサブユニットは、本発明の技術又は任意の他の適切なDNA組み込み法を使用して事前に導入することができる。代替的なアプローチでは、ドナーDNAを導入する第1のサイクルでヌクレアーゼによる組み込みを使用して、第1のサブユニットを組み込み、続いて同じアプローチ又は任意の他の適切な方法のいずれかによって第2のサブユニットを導入する。ヌクレアーゼによるアプローチが複数の組み込みサイクルで使用される場合、異なる部位特異的ヌクレアーゼを任意選択により使用して、異なる認識部位におけるヌクレアーゼによるドナーDNA組み込みを促進することができる。多量体バインダーをコードする真核細胞クローンのライブラリーを作製する方法は、
第1のサブユニットをコードする第1のドナーDNA分子を提供し、且つ真核細胞を提供するステップ、
第1のドナーDNAを細胞に導入し、且つ細胞内に部位特異的ヌクレアーゼを提供するステップであって、ヌクレアーゼは、細胞DNAの認識配列を切断し、認識配列は、ドナーDNAが細胞DNAに組み込まれることになる組み込み部位を作成するために、NLN遺伝子、TNIK遺伝子、PARP11遺伝子、RAB40B遺伝子、ABI2遺伝子、RNF19B遺伝子、PKIA遺伝子又はFTCD遺伝子内にあり、組み込みは、細胞に内在するDNA修復機構を通して起こり、それにより細胞DNAに組み込まれた第1のドナーDNAを含む組換え細胞の第1のセットを作成する、ステップ、
組換え細胞の第1のセットを培養して、第1のサブユニットをコードするDNAを含むクローンの第1のセットを作製するステップ、
第2のサブユニットをコードする第2のドナーDNA分子をクローンの第1のセットの細胞に導入するステップであって、第2のドナーDNAは、クローンの第1のセットの細胞DNAに組み込まれ、それにより細胞DNAに組み込まれた第1及び第2のドナーDNAを含む組換え細胞の第2のセットを作成する、ステップ、及び
組換え細胞の第2のセットを培養して、クローンの第2のセットを作製するステップであって、クローンは、多量体バインダーの第1及び第2のサブユニットをコードするDNAを含み、それにより多量体バインダーのレパートリーをコードするドナーDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーを提供する、ステップ
を含み得る。
【0020】
本明細書で使用される「本発明によるライブラリーを生成する方法」及び「本発明による方法」は、多量体バインダーをコードする真核細胞クローンのライブラリーを作製する上記の方法も指す。
【0021】
ドナーDNAの細胞DNAへの部位特異的に組み込みにより組換え細胞を作成し、この組換え細胞を培養してクローンを作製することができる。従って、ドナーDNAが組み込まれた個々の組換え細胞は、細胞のクローン集団(「クローン」)を生成するために複製され、各クローンは、1つの元の組換え細胞に由来する。従って、この方法は、ドナーDNAが問題なく組み込まれた細胞の数に対応する数のクローンを生成する。クローンの集合体は、バインダーのレパートリーをコードするライブラリーを構成する(又はバインダーサブユニットが別々の回で組み込まれる中間段階でクローンがバインダーサブユニットのセットをコードし得る)。従って、本発明の方法は、バインダーのレパートリーをコードするドナーDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーを提供することができる。
【0022】
従って、一態様では、バインダーの多様なレパートリーをコードするDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーが提供され、このライブラリーは、本発明による遺伝子座の使用及び/又は本発明によるライブラリーを生成する方法によって得られる。この態様によるこのようなライブラリーは、本出願に関連して、「本発明のライブラリー」などと呼ばれ得る。
【0023】
本発明の方法は、細胞DNAの固定遺伝子座又は複数の固定遺伝子座に組み込まれたドナーDNAを含むクローンのライブラリーを生成することができる。「固定」とは、遺伝子座が細胞間で同じであることを意味する。従って、ライブラリーの生成に使用される細胞は、ドナーDNAを組み込むことができる細胞DNA内のユニバーサルランディング部位を表す固定遺伝子座にヌクレアーゼ認識配列を含み得る。部位特異的ヌクレアーゼの認識配列は、細胞DNAの1つ又は複数の位置に存在し得る。従って、一態様では、少なくとも10個、10個、10個、10個、10個、10個又は10個の異なるバインダーの多様なレパートリーを発現する真核細胞クローンのインビトロライブラリーが提供され、各細胞は、組換えDNAを含み、バインダー又はバインダーのサブユニットをコードするドナーDNAは、細胞DNAの固定遺伝子座に組み込まれ、遺伝子座は、本発明による方法によって同定される。本発明による真核細胞クローンのインビトロライブラリーも提供され、バインダー又はバインダーのサブユニットをコードするドナーDNAは、細胞DNAの少なくとも第1及び/又は第2の固定遺伝子座に組み込まれ、前記1つ又は複数の固定遺伝子座は、本発明による方法によって同定される。本明細書で使用される「本発明のライブラリー」などは、真核細胞クローンのこのようなインビトロライブラリーも指す。
【0024】
本発明に従って作製されたライブラリーは、様々な方法で利用することができる。ライブラリーを培養してバインダーを発現させ、それによりバインダーの多様なレパートリーを作製することができる。ライブラリーは、所望の表現型の細胞についてスクリーニングされ得、表現型は、細胞によるバインダーの発現から生じる。従って、一態様では、所望の表現型の細胞についてスクリーニングする方法が提供され、表現型は、細胞によるバインダーの発現から生じ、この方法は、
本発明のライブラリーを作製する方法によってライブラリーを提供するか、又は本発明による遺伝子座の使用によってライブラリーを提供するか、又は本発明によるライブラリーを提供するステップ、
ライブラリー細胞を培養してバインダーを発現させるステップ、及び
所望の表現型が示されるか否かを検出するステップ
を含む。
【0025】
この態様による方法は、「本発明による所望の表現型の細胞についてスクリーニングする方法」などと呼ばれ得る。本明細書で使用される「本発明による方法」は、所望の表現型の細胞についてスクリーニングする上記の方法も指す。
【0026】
ライブラリー細胞を培養してバインダーを発現させ、続いて所望の表現型がライブラリーのクローンで示されるかどうかを検出する表現型スクリーニングが可能である。細胞の読み出しは、内因性若しくは外因性のレポーター遺伝子の発現、分化状態、増殖、生存、細胞サイズ、代謝又は他の細胞との相互作用の変化などの細胞挙動の変化に基づき得る。所望の表現型が検出されると、所望の表現型を示すクローンの細胞を回収することができる。次いで、任意選択により、バインダーをコードするDNAを回収したクローンから単離し、細胞内で発現されたときに所望の表現型を生じさせるバインダーをコードするDNAを提供する。
【0027】
真核細胞ライブラリーが使用されている主な目的は、目的の標的を認識するバインダーのスクリーニング方法にある。従って、一態様では、目的の標的に対するバインダーを同定するためのスクリーニング方法が提供され、前記方法は、
本発明のライブラリーを作製する方法によってライブラリーを提供するか、又は本発明による遺伝子座の使用によってライブラリーを提供するか、又は本発明によるライブラリーを提供するステップ、
ライブラリーの細胞を培養してバインダーを発現させるステップ、
バインダーを標的に曝露して、1つ又は複数の同種バインダーが存在する場合、それによる標的の認識を可能にするステップ、
標的が同種バインダーによって認識されるかどうかを検出するステップ
を含む。
【0028】
この態様による方法は、「本発明による目的の標的に対するバインダーを同定するためのスクリーニング方法」又は「バインダーを同定するためのスクリーニング方法」などと呼ばれ得る。本明細書で使用される「本発明による方法」は、目的の標的に対するバインダーを同定するための上記のスクリーニング方法も指す。
【0029】
このような方法では、ライブラリーを培養してバインダーを発現させ、このバインダーを標的に曝露して、1つ又は複数の同種バインダーが存在する場合、それによる標的の認識を可能にし、標的が同種バインダーによって認識されるかどうかを検出する。このような方法では、バインダーを細胞表面にディスプレイすることができ、所望の特性を有するバインダーをディスプレイするライブラリーのクローンを単離することができる。従って、所望の機能的特性又は結合特性を有するバインダーをコードする遺伝子を含む細胞をライブラリー内で同定することができる。遺伝子を回収して、これをバインダーの作製に使用するか又はさらなるエンジニアリングに使用してバインダーの誘導体ライブラリーを作成し、特性が改善されたバインダーを得ることができる。
【0030】
一態様では、本発明は、本発明のライブラリーから同定されたバインダー、例えば本発明による目的の標的に対するバインダーを同定するためのスクリーニング方法を使用して同定されたバインダーも包含する。好ましいバインダーは、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0031】
本発明の様々な特徴を以下にさらに説明する。本明細書全体を通して使用される見出しは、案内を補助するためのみのものであり、決定的なものとして解釈されるべきではなく、異なるセクションに記載される特徴は、本発明のすべての態様に関連し得ること及び適宜組み合わされ得ることに留意されたい。
【0032】
実験のパートに示されるように、本発明の新たな遺伝子座などの本発明の態様は、組み込み効率の向上及び安定した抗体発現などの利点と関連する。
【0033】
真核細胞
本発明の方法、使用及びライブラリーを含む本発明の態様で好ましい真核細胞及び真核細胞クローンは、以下に定義される。真核細胞に関するすべての選好は、真核細胞クローンにも適用され得ることを理解されたい。
【0034】
真核細胞は、好ましくは、高等真核細胞であり、12×10個の塩基対(bp)のゲノムサイズを有する出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)よりも大きいゲノムを有する細胞として定義される。高等真核細胞は、例えば、2×10個の塩基対を超えるゲノムサイズを有し得る。これには、例えば、哺乳動物細胞、トリ細胞、昆虫細胞又は植物細胞が含まれる。真核細胞は、哺乳動物細胞に限定されない。好ましくは、真核細胞は、哺乳動物細胞、例えばマウス又はヒトの細胞である。より好ましくは、真核細胞は、ヒト細胞である。真核細胞は、初代細胞であり得るか又は細胞株であり得る。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、抗体及びタンパク質の発現に一般的に使用されるが、HEK293細胞などの任意の代替の安定細胞株も本発明に使用することができる。これらの使用を可能にする外来DNAの初代細胞への効率的な導入の方法が利用可能である(例えば、最大95%の効率及び生存率が達成されるエレクトロポレーションにより、http://www.maxcyte.com/technology/primary-cells-stem-cells.php)。
【0035】
遺伝子座を同定する方法又はライブラリーを生成する方法に含まれるヌクレアーゼによる組み込みの特定の利点は、ヌクレアーゼ切断の非存在下での相同組換えがあまり効果的ではない、より大きいゲノムを有する高等真核細胞へのバインダー遺伝子の組み込みに関する。酵母(例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae))は、哺乳動物細胞よりもゲノムが小さく、相同性アームによって誘導される相同組換えは(ヌクレアーゼによる切断がない場合)、高等真核細胞と比較して外来DNAを導入する効果的な方法である。ヌクレアーゼによる組み込みは、例えば、代謝経路のエンジニアリングなど、個々の酵母細胞への複数の遺伝子の効率的な組み込みの問題を解決するために酵母細胞で使用されているが(米国特許出願公開第2012/0277120号明細書)、この研究は、バインダーのライブラリーの導入を取り入れておらず、高等真核細胞のライブラリーの構築の問題にも対処していない。
【0036】
好ましい真核細胞は、Tリンパ球系細胞(例えば、初代T細胞又はT細胞株)又はBリンパ球系細胞である。特に好ましくは、TCR発現を欠く細胞株を含むTCRライブラリーで使用するための初代T細胞又はT細胞由来細胞株である[23、24、25]。好ましいBリンパ球系細胞は、B細胞、プレB細胞又はプロB細胞及びこれらのいずれかに由来する細胞株である。
【0037】
初代B細胞又はB細胞株でのライブラリーの構築は、抗体ライブラリーの構築に特に有用であろう。これらの真核細胞は、遺伝子座を同定する方法及びライブラリーを作製する方法において好ましい。Breous-Nystromら[15]は、マウスプレB細胞株(1624-5)でライブラリーを生成した。ニワトリB細胞由来細胞株DT40(ATCC CRL-2111)は、バインダーのライブラリーの構築に特に有望である。DT40は、細胞分裂の速度が比較的速い小さい細胞株である。バインダーのレパートリーは、内因性配列を標的とするZFN、TALEヌクレアーゼ若しくはCRISPR/Cas9を使用して、又はメガヌクレアーゼ認識部位を含み得る事前に組み込まれた異種部位を標的とすることにより、特定の遺伝子座を標的にすることができる。DT40細胞は、抗体を発現するため、内因性ニワトリ抗体可変ドメインの破壊の有無にかかわらず、抗体遺伝子座内の抗体遺伝子を標的とすることが有利である。DT40細胞は、ニワトリ抗体遺伝子座に生じる内因性の多様化を利用した自律多様化ライブラリー系(ADLib系)と呼ばれるニワトリIgMの生成のためのインビトロ系の基礎としても使用されている。この内因性の多様化の結果として、新たな特異性を生成することが可能である。ここで説明するヌクレアーゼによるアプローチは、ADLibと組み合わせて使用して、さらなる多様化の可能性を秘めた、異種の供給源(例えば、ヒト抗体可変領域のレパートリー又は合成由来の代替足場)からのバインダーの多様なライブラリーをニワトリIgG遺伝子座と組み合わせることができる。同様の利点を、Nalm6などのヒトB細胞株にも適用することができる[26]。
【0038】
遺伝子座を同定する方法及びライブラリーを作製する方法において好ましい他の好ましいB系細胞株には、マウスプレB細胞株1624-5及びプロB細胞株Ba/F3などの株が含まれる。Ba/F3は、IL-3に依存し[27]、その使用は、本明細書の他の箇所で論じられている。最後に、「Cancer Cell Line Encyclopaedia」[28]又は「COSMIC catalogue of somatic mutations in cancer」[29]に列挙されているものを含むいくつかのヒト細胞株が好ましい。
【0039】
本発明によるライブラリーを作製する方法及びライブラリーにおいて、真核細胞は、好ましくは、ドナーDNAのクローン真核細胞の集団への導入、例えばドナーDNAの特定の細胞株の細胞への導入によって作製される単一のタイプの細胞である。異なるライブラリークローン間の主な有意な違いは、ドナーDNAの組み込みによるものである。
【0040】
真核細胞ウイルス系
真核細胞クローンのライブラリーを作製する方法及び得られたライブラリーなどの本発明の態様の利点は、真核細胞の発現系に基づくウイルスディスプレイ系、例えばバキュロウイルスディスプレイ又はレトロウイルスディスプレイに適用することができる[1、2、3、4]。このアプローチでは、各細胞は、ウイルス粒子に取り込むことができるバインダーをコードする。レトロウイルス系の場合、コードするmRNAがパッケージ化され、コードされたバインダーが細胞表面に提示されることになる。バキュロウイルス系の場合、遺伝子とコードされたタンパク質との関連を維持するために、バインダーをコードする遺伝子のバキュロウイルス粒子内への封入が必要となるであろう。これは、バキュロウイルスゲノムのエピソームコピーを有する宿主細胞を使用して達成することができる。代わりに、組み込まれたコピーが、特定のヌクレアーゼ(部位特異的組み込みを促進するために使用されるものとは異なる)の作用の後に遊離し得る。多量体バインダー分子の場合、一部のパートナーは、細胞DNA内にコードされ、1つ又は複数のパートナーの遺伝子がウイルス内にパッケージされ得る。
【0041】
核酸の導入
本明細書に記載の方法は、核酸の真核細胞への導入を含む。遺伝子座を同定する方法では、ランディングパッド配列(即ち核酸)が導入され、好ましくはドナーDNA配列が導入される。ライブラリーを生成する方法では、ドナーDNA分子が導入される。特段の記載がない限り、核酸の導入は、DNA分子の真核細胞への導入を指す。
【0042】
トランスフェクション、感染又はエレクトロポレーションを含め、核酸を真核細胞に導入するための多くの方法が記載されている。多数の細胞のトランスフェクションは、本明細書に記載されるようにポリエチレンイミン-媒介トランスフェクションを含む標準的な方法によって可能である。加えて、5分で1010個の細胞を高効率にエレクトロポレーションする方法も利用可能である(例えば、http://www.maxcyte.com)。
【0043】
ライブラリーを生成する方法では、多量体結合対のメンバー(例えば、抗体遺伝子のVH遺伝子及びVL遺伝子)又は同じバインダー分子の異なる部分でさえも異なるプラスミドに導入されるコンビナトリアルライブラリーを作成することができる。別個のバインダー又はバインダーサブユニットをコードする別個のドナーDNA分子の導入は、同時に又は順次行うことができる。例えば、抗体軽鎖を、トランスフェクション又は感染によって導入し、細胞を増殖させ、必要に応じて選択することができる。次いで、他の成分をその後の感染又はトランスフェクションステップで導入することができる。一方又は両方のステップには、特定のゲノム遺伝子座へのヌクレアーゼによる組み込みが含まれ得る。
【0044】
核酸の組み込み
遺伝子座を同定する方法又はライブラリーを生成する方法は、真核細胞のゲノムへの核酸の組み込みを含む。これに関連して、ゲノム及び細胞DNAという用語は、互換的に使用することができる。特に明記されていない限り、組み込みは、真核細胞のゲノムへのDNA分子の組み込みを指す。核酸は、ゲノム(即ち細胞DNA)に組み込まれ、核酸が組み込み部位に挿入された連続したDNA配列を有する組換えDNAを形成する。本発明では、組み込みは、細胞に内在する天然のDNA修復機構によって媒介される。
【0045】
核酸の組み込みは、ランダム又は特異的であり得る。核酸のランダムな組み込みは、好ましくは、トランスポゾンを介した組み込みによる真核細胞のゲノムへの核酸のランダムな組み込みを指す。本明細書では、組み込み部位は、特定の配列によって定義されない。遺伝子座を同定する方法は、ランディングパッド配列の真核細胞へのランダムな組み込みを含む。
【0046】
「トランスポゾン」、又は「トランスポゾンベクター」、又は「転位要素」という用語は、本明細書では、当業者によって慣習的且つ通常の理解で使用される。トランスポゾンは、非部位特異的な方法で細胞DNAに組み込むことができる遺伝要素であり、ランディングパッド配列を担持する又はそれに隣接するようにエンジニアリングされると、この配列が細胞DNAのランダムな位置に挿入される。当業者は、適切なトランスポゾンを認識しており、その多くが、PiggyBac系などとして市販されており、その一例が本明細書の実験セクションで示される。PiggyBac系は、例えば、Wilson et al.Molecular Therapy vol.15 no.1,139-145 jan.2007;Kim et al.Mol Cell Biochem(2011)354:301-309);Galvan et al.Immunother.2009 October;32(8):837-844にさらに説明されている。一般に、PiggyBac系は、2つのベクターを利用する。ヘルパーPBaseベクターと呼ばれる1つのベクターは、トランスポザーゼをコードする。トランスポゾンベクターと呼ばれる他方のベクターは、置き換えられる領域を囲む2つの末端反復(TR)を含む。宿主細胞に送達されるランディングパッドは、当技術分野で標準的な分子技術を使用してこの領域にクローニングすることができる。PBaseベクター及びPiggyBacトランスポゾンベクターが標的細胞に同時トランスフェクトされると、ヘルパーから産生されたトランスポザーゼがトランスポゾン上の2つのTRを認識し、2つのTRを含む隣接領域を宿主細胞DNAに挿入する。組み込みは、典型的には、TTAA配列を含む宿主染色体部位で起こり、TTAA配列は、組み込まれた断片の2つの側面に複製される。トランスポゾンは、宿主細胞のゲノムの単一の遺伝子座(単一コピー組み込み)又は複数の遺伝子座(複数コピー組み込み)に組み込むことができる。
【0047】
核酸の特異的組み込みでは、組み込み部位は、特定の配列によって定義される。特異的組み込みに関連して、核酸は、ドナーDNA、ドナーDNA分子又はドナーDNA配列と呼ばれ得る。
【0048】
特異的組み込みは、核酸を細胞に導入することによって起こすことができ、部位特異的ヌクレアーゼが組み込み部位を作成することが可能になり、ドナーDNAを組み込むことが可能になる。これに関連して、特異的組み込みは、ヌクレアーゼによる組み込みと呼ばれ得る。細胞は、DNAが組み込まれるのに十分な時間培養し続けることができる。これは、通常、(i)ドナーDNAが部位特異的ヌクレアーゼによって形成された組み込み部位に組み込まれた組換え細胞及び任意選択による(ii)ドナーDNAが所望の組み込み部位以外の部位に組み込まれた細胞及び/又は任意選択による(iii)ドナーDNAが組み込まれていない細胞を含む細胞の混合集団をもたらす。従って、所望の組換え細胞及び得られるクローンは、他の真核細胞をさらに含む混合集団で提供され得る。本明細書の他の箇所に記載の選択方法を使用して、所望の細胞及びクローンを選択するか、又は前記所望の細胞及びクローンの前記混合集団を濃縮することができる。
【0049】
上記で説明したように、組み込みは、細胞に内在する天然のDNA修復機構によって媒介される。真核細胞における内因性DNA修復機構には、相同組換え、非相同末端結合(NHEJ)及びマイクロホモロジー誘導末端結合が含まれる。このようなプロセスによる組み込みの効率は、細胞DNAに二本鎖切断(DSB)を導入することで向上させることができ、I-Sce1などの希少な切断エンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)を使用した40,000倍の効率向上が報告されている[48、49、50]。
【0050】
Flp-In系などの系に関与する部位特異的組換えとは異なり[16]、本発明における組み込みは、外因性リコンビナーゼ又はエンジニアリングされたリコンビナーゼ認識部位を必要としない。従って、遺伝子座を同定する方法及びライブラリーを生成する方法は、好ましくは、DNA分子のリコンビナーゼによる組み込みのステップを含まない。さらに、遺伝子座を同定する方法及びライブラリーを生成する方法における真核細胞は、好ましくは、部位特異的リコンビナーゼの組換え部位を欠いている。リコンビナーゼ及びヌクレアーゼによるドナーDNAの細胞DNAへの特異的組み込みの機構及び実用性は、Jasin 1996によって議論されているように極めて明確である[50]。
【0051】
対照的に、部位特異的ヌクレアーゼの使用を含む特異的組み込みは、ヌクレアーゼ作用を伴い、細胞DNA内に切断又はニックを生じさせ、相同組換え又はNHEJなどの内因性細胞修復機構に曝されて修復される。リコンビナーゼベースのアプローチでは、認識部位の事前組み込みが絶対に必要であるため、このような方法では、前段階として「ホットスポット」組み込み部位を細胞DNAにエンジニアリングする必要がある。ヌクレアーゼによる組み込みでは、ヌクレアーゼをエンジニアリングするか又はCRISPR:Cas9の場合にはガイドRNAによって誘導して、内因性認識配列、即ち細胞DNAに自然に発生する核酸配列を認識することが可能である。最後に、実用的なレベルでは、ヌクレアーゼによるアプローチは、バインダーの大きいライブラリーを作成するのに必要なレベルでの導入遺伝子の特異的組み込みでより効率的である。
【0052】
遺伝子座を同定する方法又はライブラリーを生成する方法においてドナーDNAが組み込まれるDNA修復機構は、ドナーDNAの設計及び/又は部位特異的ヌクレアーゼ選択により、ある程度まで予め決定するか又はバイアスをかけることができる。
【0053】
相同組換えは、修復の鋳型として相同配列(例えば、別の対立遺伝子からの)を使用して二本鎖切断を修復するために細胞が使用する天然の機構である。相同組換えは、ゲノムへの挿入(導入遺伝子を含む)、欠失及び点突然変異を導入するために細胞工学で利用されてきた。相同組換えは、ドナーDNA上に相同性アームを提供することによって促進される。従って、ドナーDNAは、好ましくは相同性アームを含む。高等真核細胞をエンジニアリングする当初のアプローチでは、典型的には、ドナープラスミド内の5~10kbの相同性アームを使用して、目的の部位への標的組み込みの効率を高めた。相同組換えは、ゲノムサイズがわずか12.5×10bpの酵母などの真核生物に特に適しており、より大きいゲノムを有する高等真核細胞、例えば、3000×10bpの哺乳動物細胞と比較してより効果的である。
【0054】
相同組換えは、細胞DNAのニックによって誘導することもでき[52]、これは、細胞DNAへのヌクレアーゼによる組み込みのための経路としても役立ち得る。従って、遺伝子座を同定する方法又はライブラリーを生成する方法に含まれるドナーDNAの組み込みは、好ましくは、細胞DNAへのニックの導入を含む。2つの異なる経路が、ニックDNAでの相同組換えを促進することが示されている。1つの経路は、Rad51/Brca2を利用する二本鎖切断での修復に本質的に類似しているのに対して、もう1つの経路は、Rad51/Brca2によって阻害され、一本鎖DNA又はニック二本鎖ドナーDNAを優先的に使用する[51]。
【0055】
非相同末端結合(NHEJ)は、相同鋳型を必要とせずにDNAの末端が直接再ライゲーションされるゲノムの二本鎖切断を修復する代替機構である。ゲノムDNAのヌクレアーゼによる切断は、非相同性ベースの機構を介して導入遺伝子の組み込みを促進することもできる。NHEJは、インフレームエクソンをイントロンに組み込む簡単な手段を提供するか又はプロモーター:遺伝子カセットのゲノムへの組み込みを可能にする。非相同法の使用は、相同性アームを欠くドナーベクターの使用を可能にし、それによりドナーDNAの構築が単純になる。
【0056】
末端相同性の短い領域を使用してDNA末端を再結合することに注目し、マイクロホモロジーによる末端結合と呼ばれる、4bpのマイクロホモロジーが二本鎖切断での修復を誘導するために利用され得るという仮説が立てられた[50]。
【0057】
部位特異的ヌクレアーゼ
本発明は、部位特異的ヌクレアーゼ及びそれらの認識配列の使用を含む。一方では、遺伝子座を同定する方法は、ランディングパッド配列を提供することを含み、ランディングパッド配列は、好ましくは、部位特異的ヌクレアーゼの認識配列を含む。より好ましくは、この方法は、細胞内に部位特異的ヌクレアーゼを提供することを含み、ヌクレアーゼは、ランディングパッドに含まれる認識配列を切断する。他方では、ライブラリーを生成する方法は、細胞DNAの認識配列を切断する部位特異的ヌクレアーゼを提供することを含む。好ましい部位特異的ヌクレアーゼを以下に定義する。部位特異的ヌクレアーゼに関するすべての選好は、対応する認識部位にも準用され得ることを理解されたい。
【0058】
部位特異的ヌクレアーゼは、認識配列への特異的結合に続いて細胞DNAを切断し、それによりドナーDNAの組み込み部位を作成する。これに関連して、部位、標的部位、認識部位及び認識配列という用語は、互換的に使用することができる。ヌクレアーゼは、二本鎖切断又は一本鎖切断(ニック)を引き起こし得る。ヌクレアーゼ媒介DNA切断は、内因性細胞DNA修復機構によってバインダー遺伝子の部位特異的組み込みを促進する。
【0059】
遺伝子座を同定する方法又はライブラリーを生成する方法では、使用される真核細胞は、部位特異的ヌクレアーゼによって認識される内因性配列を含み得るか、又は認識配列が細胞DNAにエンジニアリングされ得る。さらに、部位特異的ヌクレアーゼは、細胞に対して外因性、即ち選択されたタイプの細胞では自然に発生し得ない。
【0060】
遺伝子座を同定する方法又はライブラリーを生成する方法では、部位特異的ヌクレアーゼは、ドナーDNAの導入前、導入後又は導入と同時に導入することができる。ドナーDNAが、バインダーに加えてヌクレアーゼをコードするか、又はドナーDNAと同時に同時トランスフェクト若しくは別の方法で導入される別個の核酸にコードすることが便利であり得る。ライブラリーのクローンは、任意選択により、部位特異的ヌクレアーゼをコードする核酸を保持し得るか、又はこのような核酸は、細胞に単に一過性にトランスフェクトされ得る。
【0061】
実施形態では、本発明による遺伝子座を同定する方法は、本明細書の他の箇所で定義されるように、ドナーDNAを細胞内に組み込むステップを含み、前記ステップは、部位特異的ヌクレアーゼを細胞内に提供することを含み、ヌクレアーゼは、ランディングパッドに含まれる認識配列を切断する。
【0062】
任意の適切な部位特異的ヌクレアーゼを本発明と共に使用することができる。部位特異的ヌクレアーゼは、天然に存在する酵素又はエンジニアリングされた変異体であり得る。細胞DNAで稀にのみ生じる配列を認識するか又は認識するようにエンジニアリングできるヌクレアーゼなどの特に適したいくつかの既知のヌクレアーゼが存在する。
【0063】
好ましくは、部位特異的ヌクレアーゼは、1つ又は2つの異なる認識配列のみを認識する。これは、細胞ごとに1つ又は2つのドナーDNA分子のみが組み込まれるようにするはずであるために有利である。
【0064】
部位特異的ヌクレアーゼによって認識される配列の希少性は、認識配列が比較的長い場合により高い。好ましくは、認識配列は、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30ヌクレオチドの長さを有する。好ましくは、認識配列は、10から40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21若しくは20ヌクレオチド又は12から40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21若しくは20ヌクレオチドの長さを有する。
【0065】
好ましい部位特異的ヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALEヌクレアーゼ及びCRISPR/Cas系などの核酸誘導(例えば、RNA誘導)ヌクレアーゼである。一本鎖切断を生じさせるエンジニアリングされた形態が知られているが、これらのそれぞれは二本鎖切断を生じさせる。実施形態では、ランディングパッド配列は、対応するヌクレアーゼ認識配列を含む。
【0066】
メガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼとしても知られる)は、すべての生物界に存在し、且つ比較的長い配列(12~40bp)を認識するヌクレアーゼである。長い認識配列を考慮すると、真核細胞のゲノムに存在しないか又は比較的希にのみ存在する。メガヌクレアーゼは、配列/構造に基づいて5つのファミリー(LAGLIDADG(配列番号76)、GIY-YIG(配列番号77)、HNH、His-Cys box及びPD-(D/E)XKファミリー)に分類される。最もよく研究されているファミリーは、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)由来のよく特徴付けられたI-SceIメガヌクレアーゼを含むLAGLIDADGファミリーである。I-SceIは、18bpの認識配列(5’TAGGGATAACAGGGTAAT、配列番号70)を認識して切断し、4bpの3’オーバーハングが残る。別の一般的に使用される例は、クラミドモナス・ラインハルティ(Chlamydomonas reinhardtii)の単細胞緑藻類の葉緑体に由来し、22bpの配列を認識するI-CreIである[30]。認識配列が変更されたいくつかのエンジニアリングされた変異体が形成されている[31]。メガヌクレアーゼは、ゲノム工学における部位特異的ヌクレアーゼの使用の最初の例を表す[49、50]。リコンビナーゼベースのアプローチと同様に、I-SceI及びその他のメガヌクレアーゼの使用には、標的とする適切な認識配列のゲノム内への事前の挿入又は内因性認識配列を認識するためのメガヌクレアーゼのエンジニアリングが必要である[30]。このアプローチにより、HEK293細胞の目標の効率(組み込まれた欠陥GFP遺伝子の相同性による「修復」によって判断される)が、I-SceIの使用により細胞の10~20%で達成された[32]。
【0067】
メガヌクレアーゼの好ましいクラスは、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼである。これらには、I-SceI、I-ChuI、I-Cre I、CsmI、PI-SceI、PI-TIiI、PI-MtuI、I-CeuI、I-SceII、I-SceIll、HO、Pi-CivI、PI-CtrI、PI-AaeI、PI-BsuI、PI-DhaI、PI-DraI、PI-MavI、PI-MchI、PI-Mfu、PI-MflI、PI-MgaI、PI-MgoI、PI-MinI、PI-MkaI、PI-MleI、PI-MrnaI、PI-MshI、PI-MsmI、PI-MthI、PI-Mtu、PI-MxeI、PI-NpuI、PI-PfuI、PI-RmaI、PI-SpbI、PI-SspI、PI-FacI、PI-MjaI、PI-PhoI、Pi-TagI、PI-ThyI、PI-Tko I、I-Msol及びPI-TspI;好ましくはI-SceI、I-CreI、I-ChuI、l-DmoI、I-CsmI、PI-SceI、PI-PfuI、PI-TliI、PI-MtuI及びI-Ceulが含まれる。実施形態では、ランディングパッド配列は、対応するヌクレアーゼ認識配列を含む。
【0068】
近年、配列特異的なDNA結合ドメインを非特異的なヌクレアーゼに融合させて特注のDNA結合ドメインを介して誘導された、設計された配列特異的なヌクレアーゼを形成することにより、新規な配列特異的なヌクレアーゼの設計を可能にするいくつかの方法が開発されている。結合特異性は、ジンクフィンガードメインなどのエンジニアリングされた結合ドメインによって誘導することができる。これらは、分子の認識に関与し、DNA配列を認識するために自然界で使用される、亜鉛イオンによって安定化された小さいモジュラードメインである。ジンクフィンガードメインのアレイは、配列特異的結合のためにエンジニアリングされ、II型制限酵素Fok1の非特異的DNA切断ドメインに連結させてジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を形成する。このようなZFNは、本明細書では、好ましい部位特異的ヌクレアーゼである。ZFNを使用して、ゲノム内の特定の部位に二本鎖切断を形成することができる。Fok1は、偏性二量体であり、切断を生じさせるために2つのZFNを近接して結合する必要がある。エンジニアリングされたヌクレアーゼの特異性は、互いにヘテロ二量体のみを形成するようにエンジニアリングされた2つの異なるFok1変異体を形成することによって強化され、それらの毒性が低下した[33]。このような偏性ヘテロ二量体ZFNは、薬物選択を必要とせずに標的細胞の5~18%で相同性による組み込みを達成することが示されている[21、34、35]。5%超の周波数で最大8kbのインサートの組み込みが、選択なしで実証されている。
【0069】
規定の特異性のDNA結合ドメインをエンジニアリングする能力は、転写活性化因子様エフェクター(TALE)分子のキサントモナス(Xanthomonas)細菌での発見によってさらに単純化された。これらのTALE分子は、33~35個のアミノ酸の単量体のアレイからなり、各単量体は、標的配列内の単一の塩基を認識する[37]。このモジュールの1:1の関係により、目的のどのDNA標的にも結合するようにエンジニアリングされたTALE分子を設計することが比較的容易になった。これらの設計されたTALEをFok1に結合させることにより、新規の配列特異的TALEヌクレアーゼを形成することが可能になった。TALENとしても知られるTALEヌクレアーゼは、本出願において好ましい部位特異的ヌクレアーゼであり、多数の部位(即ち認識配列)に対して設計され、効率的な遺伝子改変活性の高い成功率を示す[38]。TALEヌクレアーゼ技術の他のバリエーション及び強化版が開発されており、これらを、遺伝子座を同定する方法又はライブラリーを生成する方法で部位特異的ヌクレアーゼとして使用することができる。これらには、TALEヌクレアーゼ結合ドメインがメガヌクレアーゼに融合された「メガTALEN」[39]及び単一のTALEヌクレアーゼ認識ドメインが切断を行うために使用される「コンパクトTALEN」[40]が含まれる。
【0070】
近年、ゲノム中の特定の配列に二本鎖切断又は一本鎖切断を誘導する別の系が記述されている。「クラスター化され、規則的に間隔が空いている短い回文の反復(CRISPR)及びCRISPR関連(Cas)」系と呼ばれるこの系は、細菌の防御機構に基づいている[41]。CRISPR/Cas系は、遺伝子座を同定する方法又はライブラリーを生成する方法において好ましい部位特異的ヌクレアーゼである。CRISPR/Cas系は、短いパリンドロームリピートに隣接する短い相補的な一本鎖RNA(CRISPR RNA又はcrRNA)を介してDNAの切断を標的とする。一般的に使用される「タイプII」系では、RNAを標的とするプロセシングは、パリンドロームリピートと相補的な配列を有するトランス活性化crRNA(tracrRNA)の存在に依存する。tracrRNAのパリンドロームリピート配列へのハイブリダイゼーションはプロセシングを引き起こす。プロセシングされたRNAは、Cas9ドメインを活性化し、その活性をDNA内の相補配列に誘導する。この系は、単一のRNA転写産物からCas9切断を誘導するように単純化され、ゲノム内の多くの異なる配列に誘導されている[42、43]。ゲノム切断に対するこのアプローチは、短いRNA配列を介した誘導により、切断特異性のエンジニアリングを比較的単純にするという利点を有する。従って、ゲノムDNAの部位特異的切断を達成するためのいくつかの異なる方法が存在する。上記のように、これにより、内因性細胞DNA修復機構によるドナープラスミドの組み込み率が向上する。
【0071】
ライブラリーを生成する方法では、メガヌクレアーゼ、ZFN、TALEヌクレアーゼ又はCRISPR/Cas9系などの核酸ガイド系の部位特異的ヌクレアーゼとしての使用により、ゲノム内の内因性遺伝子座の標的化が可能になる。
【0072】
代わりに、遺伝子座を同定する方法及びライブラリーを生成する方法では、メガヌクレアーゼ、ZFN及びTALEヌクレアーゼを含む部位特異的ヌクレアーゼの異種認識部位(即ち認識配列)を予め導入することができる。ヌクレアーゼによる標的化を使用して、ベクターDNAを用いて又は二本鎖オリゴヌクレオチドを用いてさえ、相同組換え又はNHEJによる認識配列の挿入を促進することができる[45]。別法として、非特異的標的化法を使用して、トランスポゾンによる組み込みの使用によって部位特異的ヌクレアーゼの認識配列を導入することができる[46]。低力価で適用されるレンチウイルスなどのウイルスベースの系を使用して、認識配列を導入することもできる。
【0073】
部位特異的ヌクレアーゼは、1つのプラスミドに導入される単一の遺伝子によってコードされ得るのに対して、ドナーDNAは、第2のプラスミド上に存在する。当然のことながら、これらの要素の2つ以上を同じプラスミドに組み込む組み合わせを使用することができ、それにより遺伝子座を同定する方法又はライブラリーを生成する方法で導入されるプラスミドの数を減らすことによって標的化の効率を高めることができる。加えて、ヌクレアーゼを事前に組み込むことも可能であり得、トランスポザーゼで実証されているように、ヌクレアーゼ活性の時間的制御を可能にするために誘導することもできる[46]。最後に、ヌクレアーゼは、組換えタンパク質又はタンパク質:RNA複合体として導入することができる(例えば、CRISPR:Cas9などのRNA誘導ヌクレアーゼの場合)。
【0074】
認識配列
前述したように、ライブラリーを生成する方法は、細胞DNA中の認識配列を切断する部位特異的ヌクレアーゼを提供することを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、認識配列は、ノイロリシン(NLN)遺伝子内にある。使用される真核細胞は、部位特異的ヌクレアーゼによって認識される内因性配列を含み得るか、又は認識配列は、本明細書で前述したように細胞DNA内にエンジニアリングされ得る。ノイロリシン遺伝子(ヒト配列:Uniprot Q9BYT8、ENSEMBL遺伝子id ENSG00000123213)は、Pro10-Tyr11結合でニューロテンシンを切断して、ニューロテンシン(1~10)及びニューロテンシン(11~13)の形成をもたらすメタロペプチダーゼM3タンパク質ファミリーのメンバーをコードする。ノイロリシン遺伝子の例示的な配列は、配列番号1で表される。いくつかの実施形態では、認識配列は、配列番号1を含む、それから本質的になるか若しくはそれからなるヌクレオチド配列又は配列番号1と少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有するヌクレオチド配列で表される核酸分子内にある。
【0076】
いくつかの実施形態では、認識配列は、TRAF2及びNCK相互作用キナーゼ(TNIK)遺伝子(Uniprot Q9UKE5、ENSEMBL遺伝子id ENSG00000154310)内にある。TNIK遺伝子の例示的な配列は、配列番号2で表される。いくつかの実施形態では、認識配列は、タンパク質モノ-ADP-リボシルトランスフェラーゼ11(PARP11)遺伝子(Uniprot Q9NR21、ENSEMBL遺伝子id ENSG00000111224)にある。PARP11遺伝子の例示的な配列は、配列番号3で表される。いくつかの実施形態では、認識配列は、RAB40B遺伝子(メンバーRAS癌遺伝子ファミリー、Uniprot Q12829、ENSEMBL遺伝子id ENSG00000141542)内にある。RAB40B遺伝子の例示的な配列は、配列番号4で表される。いくつかの実施形態では、認識配列は、ablインタラクター2(ABI2)遺伝子(Uniprot Q9NYB9、ENSEMBL遺伝子id ENSG00000138443)内にある。ABI2遺伝子の例示的な配列は、配列番号5で表される。いくつかの実施形態では、認識配列は、リングフィンガータンパク質19B(RNF19B)遺伝子(Uniprot Q6ZMZ0、ENSEMBL遺伝子id ENSG00000116514)内にある。RNF19B遺伝子の例示的な配列は、配列番号6で表される。いくつかの実施形態では、認識配列は、cAMP依存性プロテインキナーゼ阻害剤α(PKIA)遺伝子(Uniprot P61925、ENSEMBL遺伝子id ENSG00000171033)内にある。PKIA遺伝子の例示的な配列は、配列番号7で表される。いくつかの実施形態では、認識配列は、ホルミミドイルトランスフェラーゼシクロデアミナーゼ(FTCD)遺伝子(Uniprot O95954、ENSEMBL遺伝子id ENSG00000160282)内にある。FTCD遺伝子の例示的な配列は、配列番号8で表される。
【0077】
いくつかの実施形態では、認識配列は、NLN遺伝子、TNIK遺伝子又はRAB40B遺伝子内にある。
【0078】
いくつかの実施形態では、認識配列は、配列番号1~8を含む、それから本質的になるか若しくはそれからなるヌクレオチド配列又は配列番号1~8と少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有するヌクレオチド配列で表される核酸分子内にある。
【0079】
いくつかの実施形態では、認識配列は、NLN、TNIK、PARP11、RAB40B、ABI2、RNF19B、PKIA又はFTCD遺伝子、好ましくはNLN、TNIK又はRAB40B遺伝子から選択される遺伝子のイントロン内にある。イントロンは、本明細書では、当業者によって慣習的に且つ通常理解されるものとして使用される。
【0080】
NLNのイントロン内の認識配列は、好ましくは、NLN-207のイントロン1(イントロン1~2)のイントロン2(イントロン2~3)又はイントロン6(イントロン6~7)内にある。TNIKのイントロン内の認識配列は、好ましくは、TNIK-04(Ensembl ID ENST00000436636.7)のイントロン2(イントロン2~3)内にある。PARP11のイントロン内の認識配列は、好ましくは、PARP11-205(Ensembl ID ENST00000450737.2)のイントロン1(イントロン1~2)内にある。RAB40Bのイントロン内の認識配列は、好ましくは、RAB40B-206(Ensembl ID ENST00000571995.6)のイントロン1(イントロン1~2)内にある。ABI2のイントロン内の認識配列は、好ましくは、ABI2-203(Ensembl ID ENST00000261018.12)のイントロン1(イントロン1~2)内にある。RNF19Bのイントロン内の認識配列は、好ましくは、RNF19B-201(Ensembl ID ENST00000235150.5)のイントロン1(イントロン1~2)内にある。PKIAのイントロン内の認識配列は、好ましくは、PKIA-202(Ensembl ID ENST00000396418.7)のイントロン1(イントロン1~2)内にある。FTCDのイントロン内の認識配列は、好ましくは、FTCDNL1-201(Ensembl ID ENST00000416668.5)のイントロン3(イントロン3~4)内にある。
【0081】
好ましい実施形態では、認識配列は、ノイロリシン遺伝子のイントロン内にある。ヒトノイロリシン(NLN)遺伝子の標準的な転写産物は、13個のエクソンを含むNLN-201(Ensembl転写産物ID:ENST00000380985.10)である。代替転写産物は、7個のエクソンを含むNLN-207(Ensembl転写産物ID:ENST00000509935.2)である。いくつかの実施形態では、認識配列は、ノイロリシン遺伝子のNLN-201のイントロン1(NLN-201のイントロン1~2;例示的な配列:配列番号9)内にある。いくつかの実施形態では、認識配列は、ノイロリシン遺伝子のNLN-201のイントロン2(NLN-201のイントロン2~3;例示的な配列:配列番号10)内にある。いくつかの実施形態では、認識配列は、ノイロリシン遺伝子のNLN-201のイントロン3(NLN-201のイントロン3~4;例示的な配列:配列番号11)内にある。いくつかの実施形態では、認識配列は、ノイロリシン遺伝子のNLN-201のイントロン4(NLN-201のイントロン4~5;例示的な配列:配列番号12)内にある。いくつかの実施形態では、認識配列は、ノイロリシン遺伝子のNLN-201のイントロン5(NLN-201のイントロン5~6;例示的な配列:配列番号13)内にある。いくつかの実施形態では、認識配列は、ノイロリシン遺伝子のNLN-201のイントロン6(NLN-201のイントロン6~7;例示的な配列:配列番号14)内にある。いくつかの実施形態では、認識配列は、ノイロリシン遺伝子のNLN-201のイントロン7(NLN-201のイントロン7~8;例示的な配列:配列番号15)内にある。いくつかの実施形態では、認識配列は、ノイロリシン遺伝子のNLN-201のイントロン8又はNLN-207のイントロン1(NLN-201のイントロン8~9又はNLN-207のイントロン1~2;例示的な配列:配列番号16)内にある。いくつかの実施形態では、認識配列は、ノイロリシン遺伝子のNLN-201のイントロン9又はNLN-207のイントロン2(NLN-201のイントロン9~10又はNLN-207のイントロン2~3;例示的な配列:配列番号17)内にある。いくつかの実施形態では、認識配列は、ノイロリシン遺伝子のNLN-201のイントロン10又はNLN-207のイントロン3(NLN-201のイントロン10~11又はNLN-207のイントロン3-4;例示的な配列:配列番号18)内にある。いくつかの実施形態では、認識配列は、ノイロリシン遺伝子のNLN-201のイントロン11又はNLN-207のイントロン4(NLN-201のイントロン11~12又はNLN-207のイントロン4~5;例示的な配列:配列番号19)内にある。いくつかの実施形態では、認識配列は、NLN-201ノイロリシン遺伝子のイントロン12(NLN-201のイントロン12~13;例示的な配列:配列番号20)内にある。いくつかの実施形態では、認識配列は、NLN-207ノイロリシン遺伝子のイントロン5(NLN-207のイントロン5~6;例示的な配列:配列番号21)内にある。いくつかの実施形態では、認識配列は、NLN-207ノイロリシン遺伝子のイントロン6(NLN-207のイントロン6~7;例示的な配列:配列番号22)内にある。
【0082】
好ましいイントロンは、NLN遺伝子のNLN-207のイントロン1、2及び6である。いくつかの実施形態では、認識配列は、配列番号16、17、22を含む、本質的にそれらからなるか若しくはそれらからなるヌクレオチド配列又は配列番号は16、17、22と少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有するヌクレオチド配列で表される核酸分子内にある。
【0083】
好ましくは、認識配列は、配列番号15又は配列番号23と少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有する塩基配列を含むか、それから本質的になるか又はそれらからなる。
【0084】
いくつかの実施形態では、特に、認識配列が、上記のようにNLN、TNIK、PARP11、RAB40B、ABI2、RNF19B、PKIA又はFTCD遺伝子から選択される遺伝子のイントロン内にある場合、認識配列は、イントロンのオープンクロマチン領域内にある。
【0085】
いくつかの実施形態では、特に、認識配列が、上記のようにNLN、TNIK、PARP11、RAB40B、ABI2、RNF19B、PKIA又はFTCD遺伝子から選択される遺伝子のイントロン内にある場合、認識配列は、イントロンのエンハンサー領域内にある。
【0086】
本明細書で使用される「オープンクロマチン」、又は「ユークロマチン」、又は「ルーズクロマチン」は、転写が許容可能である構造を指すのに対して、「ヘテロクロマチン」又は「タイト」若しくは「クローズド」クロマチンは、よりコンパクトであり、且つDNA鋳型へのアクセスを得る必要がある因子に対してより反応しない。
【0087】
認識配列の分布
本発明による方法における部位特異的ヌクレアーゼの認識配列は、ゲノムDNA又は細胞内で安定に受け継がれるエピソームDNA内に存在し得る。従って、ドナーDNAは、細胞DNAのゲノム遺伝子座又はエピソーム遺伝子座に組み込まれ得る。好ましくは、ゲノム遺伝子座は、遺伝子座を同定する方法によって同定される。
【0088】
その最も単純な形態では、バインダーをコードする単一の遺伝子(バインダー遺伝子)は、真核細胞ゲノム内の単一の部位を標的とする。特定の結合活性又は細胞表現型を実証する細胞の同定は、所望の特性をコードする遺伝子の直接の単離を可能にする(例えば、mRNA又はゲノムDNAからのPCRによって)。これは、細胞DNAで一度発生する、部位特異的ヌクレアーゼの固有の認識配列を使用することによって促進される。従って、ライブラリーの形成に使用される細胞は、単一の固定遺伝子座、即ちすべての細胞における1つの同一遺伝子座にヌクレアーゼ認識配列を含み得る。このような細胞から作製されたライブラリーは、固定遺伝子座に組み込まれた、即ちライブラリーのすべてのクローンの細胞DNA内の同じ遺伝子座に発生するドナーDNAを含む。
【0089】
任意選択により、認識配列は、細胞DNAに複数回発生し得るため、細胞は、ドナーDNAの2つ以上の潜在的な組み込み部位を有する。これは、二倍体細胞又は倍数体細胞の典型的な状態であり、認識配列は、一対の染色体の対応する位置、即ち複製遺伝子座に存在する。このような細胞から作製されたライブラリーは、複製固定遺伝子座に組み込まれたドナーDNAを含み得る。例えば、二倍体細胞から作製されたライブラリーは、二重固定遺伝子座に組み込まれたドナーDNAを有し得、三倍体細胞から作製されたライブラリーは、三重固定遺伝子座に組み込まれたドナーDNAを有し得る。多くの適切な哺乳動物細胞は二倍体であり、本発明による哺乳動物細胞ライブラリーのクローンは、二重固定遺伝子座に組み込まれたドナーDNAを有し得る。
【0090】
部位特異的ヌクレアーゼによって認識される配列は、細胞DNAの2つ以上の独立した遺伝子座に発生し得る。従って、ドナーDNAは、複数の独立した遺伝子座に組み込むことができる。二倍体細胞又は倍数体細胞のライブラリーは、複数の独立した固定遺伝子座及び/又は複製固定遺伝子座に組み込まれたドナーDNAを含み得る。
【0091】
複数の遺伝子座(複製遺伝子座又は独立した遺伝子座)に認識配列を含む細胞では、各遺伝子座は、ドナーDNAの分子の潜在的な組み込み部位を表す。ドナーDNAを細胞に導入すると、細胞内に存在するヌクレアーゼ認識配列の全数で組み込みが起こり得るか、又はドナーDNAがこれらの潜在的な部位のすべてではないが一部に組み込まれ得る。例えば、第1及び第2の固定遺伝子座(例えば、二重固定遺伝子座)に認識配列を含む二倍体細胞からライブラリーを作製する場合、得られるライブラリーは、ドナーDNAが第1の固定遺伝子座に組み込まれたクローン、ドナーDNAが第2の固定遺伝子座に組み込まれたクローン及びドナーDNAが第1及び第2の固定遺伝子座の両方に組み込まれたクローンを含み得る。
【0092】
従って、ライブラリーを作製する方法には、細胞内の複数の固定遺伝子座の部位特異的ヌクレアーゼ切断及び複数の固定遺伝子座でのドナーDNAの組み込みが含まれ得る。上記のように、同じ認識配列の複数のコピーが存在する場合(例えば、二倍体細胞又は倍数体細胞の内因性遺伝子座を標的とするときに生じる)では、特に効率的な標的化機構が使用される場合、2つのバインダー遺伝子が組み込まれ、1つの遺伝子のみが標的に特異的であり得る。これは、バインダー遺伝子が単離されると、続くスクリーニングで解決することができる。
【0093】
場合により、細胞ごとに2つ以上のバインダーを導入することが望ましいであろう。例えば、二重特異性バインダーは、2つの異なる抗体が一緒になって生成することができ、これらは、個々のバインダーには存在しない特性を有し得る[47]。これは、二重固定遺伝子座の両方の対立遺伝子に異なる抗体遺伝子を導入するか、又は本明細書に記載の方法を使用して異なる抗体集団を独立した固定遺伝子座に標的化することによって達成することができる。さらに、バインダー自体を複数鎖(例えば、Fab又はIgGフォーマット内に提示される抗体VH及びVLドメイン)から構成することができる。この場合、異なるサブユニットを異なる遺伝子座に組み込むことが望ましいであろう。これらは、ヌクレアーゼによる組み込みの同じサイクル内で組み込むことができ、一方又は両方の組み込みステップでヌクレアーゼによる組み込みを使用して順次組み込むことができる。
【0094】
ランディングパッド配列
遺伝子座を同定する方法のステップ(a)では、ランディングパッド配列が提供される。本明細書で使用される「ランディングパッド配列」は、特定のゲノム遺伝子座におけるドナーDNA分子の組み込み又は「ランディング」を誘導するヌクレオチド配列を指すと解釈することができる。ランディングパッド配列は、一般に、部位特異的リコンビナーゼ又は部位特異的ヌクレアーゼによって認識されるヌクレオチド配列(「認識配列」)を含み、目的の1つ又は複数の導入遺伝子、例えば本明細書で後述するバインダー又は選択可能なマーカーをコードする導入遺伝子を含むドナーDNA分子の部位特異的リコンビナーゼによる組み込み又はヌクレアーゼによる組み込みを可能にする。実施形態では、ランディングパッド配列は、部位特異的ヌクレアーゼの認識配列を含む。好ましい認識配列は、本明細書の他の箇所で定義される。
【0095】
任意選択により、ランディングパッド配列は、抗生物質に対する耐性を付与する遺伝子のような選択可能なマーカーなどの、ランディングパッド配列がそれらのゲノムに組み込まれたクローンのスクリーニング及び/又は選択を容易にする追加のヌクレオチド配列を含み得る。ランディングパッド配列は、任意選択により、プロモーター又は他の調節領域などの、ドナーDNA配列がランディングパッド配列に組み込まれたクローンのスクリーニング及び/又は選択を容易にするヌクレオチド配列をさらに含み得る。非限定的な例として、ランディングパッド配列の部位特異的ヌクレアーゼ認識部位に隣接するプロモーターは、部位特異的ヌクレアーゼによる細胞DNA切断後の導入遺伝子のゲノム組み込みに続いて、プロモーターを有していない目的の導入遺伝子に機能的に連結することができる。次いで、得られた導入遺伝子の発現を、スクリーニング及び/又は選択の目的で使用することができる。
【0096】
ランディングパッド配列が組み込まれたクローンの選択
遺伝子座を同定する方法のステップ(d)は、クローンであって、そのゲノムに組み込まれたランディングパッド配列を有するクローンを選択するステップを含む。ランディングパッド配列が、抗生物質(ブラストサイジン又はピューロマイシンなど)に対する耐性を付与する遺伝子のような選択可能なマーカーを含む場合、抗生物質の存在下で細胞を培養することによってクローンを選択することができる。代わりに、クローンは、サザンブロッティング又はPCRなどの当技術分野における標準的な分子ツールボックス法を使用してスクリーニング及び/又は選択することができる。クローンの選択は、クローンのスクリーニングを含み得る。例えば、Schuldiner et al.(2018)Dev Cell 14:227-238(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている逆PCR(iPCR)を、転位要素の挿入部位のマッピングに使用することができる。代わりに、Potter and Luo(2010)PLoS ONE 5(4):e1016(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているスプリンケレットPCR(spPCR:スプリンケレット)を使用し得る。スプリンケレットPCRは、オーバーハング粘着性末端をもたらすゲノムDNAの消化を含む。制限酵素は、ランディングパッド配列内での切断には必要ない。粘着性末端には、リン酸化されておらず、安定したヘアピンループ及び互換性のある粘着性末端を含む二本鎖オリゴヌクレオチド(スプリンケレット)が連結されている。次いで、2回のネストPCRを行って、トランスポゾン挿入部位とアニールスプリンケレットとの間のゲノム配列を増幅する。これに続いて、例えば別のネスト化プライマーを用いたサンガー配列決定又は当業者に公知の任意の他の核酸配列決定方法を使用して、PCR産物の配列決定が行われる。例としては、サンガー配列決定、単一分子リアルタイム配列決定、イオントレント配列決定、パイロ配列決定、イルミナ配列決定、コンビナトリアルプローブアンカー合成、ライゲーションによる配列決定(SOLiD配列決定)、Nanopore配列決定及びGenapSys配列決定などが挙げられる。配列決定のサンプル調製、装置及びプロトコルは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Head,Ordoukhanian and Salomon(Eds),Next Generation Sequencing:Methods and Protocols,Humana Press,NJ,USA(2018)のような標準ハンドブックで論じられ、その多くは、例えば、Illumina(CA,USA)及びPacific Biosciences(CA,USA)などから市販されている。
【0097】
上記のスクリーニング及び/又は選択方法を使用して、トランスポゾン要素の単一のコピーのみを有するクローン及びこれによりそれらのゲノムに組み込まれたランディングパッド配列を選択することができる。
【0098】
代わりに、単一コピー組み込みについてのスクリーニングを、全ゲノム配列決定(WGS)を使用して実施し、続いて当技術分野で利用可能な標準的なバイオインフォマティクスツールを使用してゲノム構築を行うことができる。代わりに、単一コピー組み込みについてのスクリーニングは、ランディングパッド配列へのその組み込みの後に目的の導入遺伝子の発現の定量化によって行うことができる。発現は、当業者に公知の標準アッセイ(例えば、qPCR、ウェスタンブロッティング、ELISA)によってmRNA又はタンパク質のレベルで評価することができる。発現は、市販のデバイスを使用する蛍光活性化セルソーティング(FACS)などの分光法を使用して評価することもできる。非限定的な例として、細胞膜結合バインダーをコードする導入遺伝子は、ランディングパッドの細胞DNAへの組み込みの後、ランディングパッドに組み込むことができる。次いで、バインダーに対する蛍光標識抗体をFACSと共に使用して発現レベルを定量化し、バインダーの単一コピー組み込みでクローンを選択することができる。FACSベースの単一コピー組み込みスクリーニング及び選択の例は、本明細書の実験セクションにさらに示される。
【0099】
これらのクローンは、本明細書の他の箇所に記載されるように、バインダーの均一な組み込み及び/又は均一な転写によって特徴付けられるライブラリーの構築に使用できるため特に有用である。
【0100】
実施形態では、遺伝子座を同定する方法は、(e)(ランディングパッド配列の)単一コピー組み込みについてスクリーニングするステップ、及び(f)遺伝子座(ランディングパッド配列が組み込まれた)遺伝子座を同定するステップをさらに含む。ステップ(f)は、上記の配列決定方法のいずれかによって行うことができる。
【0101】
遺伝子座及び使用
真核細胞のゲノムの遺伝子座を同定する方法に関連して、「遺伝子座」は、バインダー配列の挿入の候補であるゲノム遺伝子座を指す。従って、このような方法によって同定される遺伝子座を使用して、遺伝子座でバインダーをコードする1つ又は複数の導入遺伝子を含むドナーDNA配列を組み込むことによって本発明によるライブラリーを構築することができる。好ましくは、このような使用では、ドナーDNAは、この遺伝子座でランディングパッド配列に組み込まれる。
【0102】
好ましい実施形態では、本発明による遺伝子座の使用は、
- 本発明による遺伝子座を同定する方法によって遺伝子座を同定するステップ;
- バインダーをコードするドナーDNA分子及び真核細胞を提供するステップ;
- ドナーDNAを細胞内に導入し、且つ細胞内に部位特異的ヌクレアーゼを提供するステップであって、ヌクレアーゼは、細胞DNAの認識配列を切断し、認識配列は、前記遺伝子座において、ドナーDNAが細胞DNAに組み込まれることになる組み込み部位を作成し、組み込みは、細胞に内在するDNA修復機構を通して起こり、それにより細胞DNAに組み込まれたドナーDNAを含む組換え細胞を作成する、ステップ;及び
- 組換え細胞を培養してクローンを作製し、それによりバインダーのレパートリーをコードするドナーDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーを提供するステップ
を含む。
【0103】
本発明によるライブラリーを作製する方法に関連するすべての好ましい実施形態は、この好ましい実施形態による方法に準用される。
【0104】
ドナーDNA
ライブラリーを生成する方法及び好ましくは遺伝子座を同定する方法も、ドナーDNAを組み込むことを含む。好ましいドナーDNAは、このセクションに記載される。
【0105】
ドナーDNAは、通常、環状DNAであり、プラスミド又はベクターとして提供することができる。もう1つの可能性としては、線状DNAである。ドナーDNA分子は、細胞DNAに組み込まれる1つ又は複数のドナーDNA配列に加えて、細胞DNAに組み込まれない領域を含み得る。DNAは、典型的には二本鎖であるが、場合により一本鎖DNAを使用することもできる。ドナーDNAは、バインダーをコードする1つ又は複数の導入遺伝子を含み、例えばプロモーター:遺伝子カセットを含み得る。
【0106】
最も単純なフォーマットでは、二本鎖環状プラスミドDNAを使用して相同組換えを促進することができる。これには、ゲノムDNAの切断部位に隣接するDNA配列と相同な導入遺伝子に隣接するDNA領域が必要である。線状化二本鎖プラスミドDNA又はPCR産物又は合成遺伝子を使用して、相同組換え及びNHEJ修復経路の両方を促進するできる。二本鎖DNAの代替として、一本鎖DNAを使用して相同組換えを促進することが可能である[52]。一本鎖DNAを生成するための一般的なアプローチは、糸状バクテリオファージからプラスミドへの一本鎖複製起点を含めることである。
【0107】
効率的な相同組換えを促進するためにアデノ随伴ウイルス(AAV)などの一本鎖DNAウイルスを使用され、効率が数桁向上することが示されている[53、54]。AAV系などの系は、遺伝子座を同定する方法及びライブラリーを生成する方法では、ヌクレアーゼによる切断と共に使用することができる。両方の系の利点を、遺伝子座を同定する方法及びライブラリーを生成する方法に適用することができる。AAVベクターのパッケージング限界は4.7kbであるが、標的ゲノムDNAのヌクレアーゼ消化の使用により、これを低減し、より大きい導入遺伝子構築物を組み込むことが可能になる。
【0108】
ドナーDNAの分子は、単一のバインダー又は複数のバインダーをコードすることができる。任意選択により、バインダーの複数のサブユニットは、ドナーDNAの分子ごとにコードすることができる。いくつかの実施形態では、ドナーDNAは、多量体バインダーのサブユニットをコードする。
【0109】
実施形態では、本発明による遺伝子座を同定する方法は、(g)ランディングパッド配列にバインダーをコードする1つ又は複数の導入遺伝子を含むドナーDNA配列を組み込むステップ、及び(h)ドナーDNAの組み込みについてスクリーニングするステップをさらに含む。追加の実施形態では、ステップ(g)は、細胞内に部位特異的ヌクレアーゼを提供するステップを含み、ヌクレアーゼは、ランディングパッドに含まれる認識配列を切断する。より好ましい実施形態では、ステップ(h)は、ドナーDNAによってコードされる1つ又は複数のバインダーのディスプレイについてスクリーニングすることを含む。
【0110】
ドナーDNAのプロモーター及びドナーDNAが組み込まれたクローンの選択
遺伝子座を同定する方法及びライブラリーを生成する方法では、ドナーDNAは、バインダーをコードする1つ又は複数の導入遺伝子を含む。ドナーDNAをコードすることによるバインダーの転写は、通常、バインダーをコードする配列をプロモーターの制御下及び任意選択により転写のための1つ又は複数のエンハンサー要素の制御下に置くことによって達成される。プロモーター(及び任意選択により他の遺伝子制御要素)は、ドナーDNA分子自体に含まれ得る。代わりに、バインダーをコードする配列は、ドナーDNA上のプロモーターを欠き得、代わりに部位特異的ヌクレアーゼによって生成される組み込み部位へのその挿入の結果として、細胞DNA上のプロモーター、例えば内因性プロモーター又は事前に組み込まれた外因性プロモーターと機能的に連結した状態に置くこともできる。
【0111】
ドナーDNAは、ドナーDNAを含む又は発現する細胞の選択を可能にする遺伝要素などの、1つ又は複数のさらなるコード配列をさらに含み得る。このような要素は、選択可能なマーカーと呼ばれ得る。上述したバインダーをコードする配列と同様に、このような要素は、ドナーDNA上のプロモーターと会合され得るか、又は固定遺伝子座でのドナーDNAの組み込みの結果としてプロモーターの制御下に置かれ得る。後者の配置は、これらの細胞が選択のための遺伝要素を発現するはずであるため、所望の部位にドナーDNAが組み込まれた細胞を特異的に選択する便利な手段を提供する。これは、例えば、ブラストサイジン又はピューロマイシンなどの負の選択剤に対する耐性を付与する遺伝子であり得る。1つ又は複数の選択ステップを適用して、ドナーDNAが欠損している細胞又はドナーDNAが正しい位置に組み込まれていない細胞などの不要な細胞を除去することができる。
【0112】
膜固定バインダーの発現自体を、選択可能なマーカーの形態として使用できる。例えば、IgG又はscFv-Fc融合としてフォーマットされた抗体遺伝子のライブラリーが導入される場合、抗体を発現する細胞を、本明細書に記載の方法を使用して表面発現Fcを認識する二次試薬を使用して選択することができる。外因性プロモーターの制御下での、導入遺伝子をコードするドナーDNAを用いた最初のトランスフェクションで、バインダーの一過性発現(及び細胞表面発現)が起こり、(例えば、1~2個の抗体遺伝子/細胞の標的組み込みを達成するために)一過性発現が弱まるのを待つ必要がある。
【0113】
代替として、膜係留要素(例えば、PDGF受容体膜貫通ドメインに融合した本例のFcドメイン)をコードする構築物を、バインダー配列が導入される前に予め組み込むことができる。この膜係留要素が、プロモーターを欠いてるか、又は先行するエクソンと共にフレーム外のエクソン内にコードされている場合、表面発現が損なわれる。次いで、新しいドナー分子の標的組み込みが、(例えば、欠陥のある係留要素の上流にあるイントロンにプロモーター又は「インフレーム」エクソンを標的とすることによって)この欠陥を修正することができる。フレームの「修正エクソン」もバインダーをコードする場合、バインダーと膜係留要素との間に融合が生じ、両方の表面発現が起こる。従って、正しく標的化された組み込みにより、膜係留要素のインフレーム単独の発現又は新しいバインダーとの融合の一部としての発現が起こる。さらに、新しいバインダーのライブラリーが膜係留要素を欠き、これらが正しく組み込まれていない場合、それらは選択されない。従って、細胞表面でのバインダー自体の発現を使用して、正しく標的化されて組み込まれた細胞集団を選択することができる。
【0114】
クローンの数及びライブラリーの多様性
遺伝子座を同定する方法によって同定された遺伝子座は、バインダーの多様なレパートリーをコードするDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーの構築に使用することができる。同様に、ライブラリーを生成する方法は、バインダーの多様なレパートリーをコードするDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーを生成するためのものである。本出願に関連して、ライブラリーは、特段の記載がない限り、これらの方法の1つによって得ることができるバインダーの多様なレパートリーをコードするDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーを指す。好ましいライブラリー及びその特性は、このセクションで定義される。
【0115】
10~1010の酵母ディスプレイライブラリーは、以前に構築されており、集団の免疫化又は事前の選択なしでバインダーが得られることが実証されている[9、55、56、57]。以前に公表された哺乳動物ディスプレイライブラリーの多くは、高等真核生物由来の細胞を使用する場合のライブラリーのサイズ及び変動性の制限を考慮して、免疫ドナーに由来する抗体遺伝子又は高濃度抗原特異的Bリンパ球さえも使用していた。本発明の方法における遺伝子標的化の効率の結果、酵母などのより単純な真核生物について記載されたものと一致する、哺乳動物細胞などの高等真核細胞において大きいナイーブライブラリーを構築することができる。
【0116】
ドナーDNAを細胞DNAに組み込んだ後、得られた組換え細胞を培養してそれらの複製を可能にし、最初に作製された各組換え細胞から細胞のクローンを生成する。従って、各クローンは、部位特異的ヌクレアーゼによって形成された組み込み部位にドナーDNAが組み込まれた1つの元の細胞に由来する。本発明による方法は、高効率及び高忠実度のドナーDNAの組み込みに関連し、本発明によるライブラリーは、少なくとも100、10、10、10、10、10、10、10又は1010個のクローンを含み得る。
【0117】
この理論に拘束されることなく、ヌクレアーゼによる組み込みを使用することにより、トランスフェクトされた哺乳動物細胞の10%以上を標的にすることが可能である。1010個を超える細胞(例えば、2×10個の細胞/mlで増殖する5リットルの細胞から)を増殖及び形質転換することも実行可能である。このような多数の細胞のトランスフェクションは、本明細書に記載されるポリエチレンイミン媒介トランスフェクションを含む標準的な方法を使用して行うことができる。加えて、方法は、1010個の細胞の5分での高効率なエレクトロポレーションに利用可能である(例えば、http://www.maxcyte.com)。従って、本発明のアプローチを使用して、10個を超えるクローンのライブラリーを形成することが可能である。
【0118】
ライブラリーを形成するために使用されるドナーDNA分子の集団が、同じ配列の複数のコピーを含む場合、同じバインダーをコードするDNAを含む2つ以上のクローンを得ることができる。例えば、本明細書の他の箇所で詳述するように、部位特異的ヌクレアーゼの2つ以上の認識配列が存在する場合、クローンが、2つ以上の異なるバインダーをコードするドナーDNAを含み得る場合もあり得る。従って、ライブラリーの多様性は、コード又は発現される異なるバインダーの数に関して、得られるクローンの数と異なり得る。
【0119】
ライブラリー中のクローンは、好ましくは、バインダーのレパートリーの1つ又は2つのメンバーをコードするドナーDNAを含み、且つ/又は好ましくはバインダーのレパートリーの1つ又は2つのメンバーのみを発現する。細胞ごとの異なるバインダーの数が限られていることは、所与の標的に対してライブラリーをスクリーニングする場合に同定された特定のバインダーをコードするクローン及び/又はDNAを同定する際に有利である。これは、クローンがバインダーのレパートリーの単一のメンバーをコードする場合に最も簡単である。しかしながら、ライブラリーから選択されたクローンが少数の異なるバインダーをコードする場合、例えばクローンがバインダーのレパートリーの2つのメンバーをコードし得る場合、所望のバインダーの適切なコードDNAを同定することも容易である。本明細書の他の箇所で論じられるように、二倍体細胞が各染色体コピー上に1つの二重固定遺伝子座を含み、ドナーDNAを一方又は両方の固定遺伝子座に組み込むことができるため、1つ又は2つのバインダーをコードするクローンを、二倍体ゲノムの染色体コピーごとに1回発生する部位特異的ヌクレアーゼの認識配列を選択することによって生成することが特に便利である。従って、ライブラリーのクローンは、それぞれバインダーのレパートリーの1つ又は2つのメンバーのみを発現し得る。
【0120】
ライブラリーの細胞の表面にディスプレイされるバインダーは、同じ細胞にディスプレイされた他のバインダーと同一(同じアミノ酸配列を有する)であり得る。ライブラリーは、それぞれがバインダーのレパートリーの単一のメンバーをディスプレイする細胞のクローン又は細胞ごとにバインダーのレパートリーの複数のメンバーをディスプレイするクローンから構成され得る。代わりに、ライブラリーは、バインダーのレパートリーの単一のメンバーをディスプレイするいくつかのクローン及びバインダーのレパートリーの複数(例えば、2つ)のメンバーをディスプレイするいくつかのクローンを含み得る。
【0121】
従って、本発明によるライブラリーは、バインダーのレパートリーの2つ以上のメンバーをコードするクローンを含み得、ドナーDNAは、二重固定遺伝子座又は複数の独立した固定遺伝子座に組み込まれる。
【0122】
上記のように、対応するクローンが1つのバインダーのみを発現する場合、バインダーの対応するコードDNAを同定するのが最も容易である。典型的には、ドナーDNAの分子は、単一のバインダーをコードする。バインダーは、ドナーDNAの分子が、多量体バインダーの様々なサブユニットに対応する複数の遺伝子又はオープンリーディングフレームを含むように多量体であり得る。
【0123】
本発明によるライブラリーは、少なくとも100、10、10、10、10、10、10、10又は1010の異なるバインダーをコードし得る。バインダーが多量体である場合、多様性は、バインダーの1つ又は複数のサブユニットによって提供され得る。多量体バインダーは、1つ又は複数の可変サブユニットを1つ又は複数の定常サブユニットと組み合わせることができ、定常サブユニットは、ライブラリーのすべてのクローンにわたって同一である(又はより限定された多様性である)。多量体バインダーのライブラリーの生成では、バインダーサブユニットの第1のレパートリーがバインダーサブユニットの第2のレパートリーのいずれかと対を形成できる場合、組み合わせ多様性が可能である。
【0124】
ライブラリーの特徴及び形態
本発明による方法は、多くの有利な特性を有する真核細胞ライブラリーの構築を可能にする。ライブラリーは、好ましくは、以下の特徴のいずれか1つ又は複数を有する:
1.多様性。ライブラリーは、少なくとも100、10、10、10、10、10、10又は10個の異なるバインダーをコード及び/又は発現し得る。
2.均一な組み込み。ライブラリーは、固定遺伝子座又は細胞DNAの限られた数の固定遺伝子座に組み込まれたドナーDNAを含むクローンから構成され得る。従って、ライブラリー中の各クローンは、固定遺伝子座又は複数の固定遺伝子座の少なくとも1つにドナーDNAを含む。好ましくは、クローンは、細胞DNAの1つ又は2つの固定遺伝子座に組み込まれたドナーDNAを含む。本明細書の他の箇所で説明されるように、組み込み部位は、部位特異的ヌクレアーゼの認識配列にある。組換えDNAを作製するためのドナーDNAの組み込みは、本明細書の他の箇所で詳細に説明されており、組み込み部位の数に応じて異なる結果が生じ得る。ライブラリーの生成に使用される細胞内に単一の潜在的な組み込み部位が存在する場合、ライブラリーは、単一の固定遺伝子座に組み込まれたドナーDNAを含むクローンのライブラリーになる。従って、ライブラリーのすべてのクローンは、細胞DNAの同じ位置にバインダー遺伝子を含む。代わりに、複数の潜在的な組み込み部位が存在する場合、ライブラリーは、複数の固定遺伝子座及び/又は異なる固定遺伝子座に組み込まれたドナーDNAを含むクローンのライブラリーであり得る。好ましくは、ライブラリーの各クローンは、第1及び/又は第2の固定遺伝子座に組み込まれたドナーDNAを含む。例えば、ライブラリーは、ドナーDNAが第1の固定遺伝子座に組み込まれているクローン、ドナーDNAが第2の固定遺伝子座に組み込まれているクローン及びドナーDNAが第1及び第2の固定遺伝子座の両方に組み込まれているクローンを含み得る。好ましい実施形態では、ライブラリー中のクローンに1つ又は2つの固定遺伝子座のみ存在するが、特定の用途で望ましい場合、複数の遺伝子座にドナーDNAを組み込むことが可能である。従って、いくつかのライブラリーでは、各クローンは、いくつかの固定遺伝子座、例えば3つ、4つ、5つ又は6つの固定遺伝子座のいずれか1つ又は複数に組み込まれたドナーDNAを含み得る。別々の部位に組み込まれたバインダーサブユニットを含むライブラリーの場合、ライブラリーのクローンは、第1の固定遺伝子座に組み込まれた第1のバインダーサブユニットをコードするDNA、第2の固定遺伝子座に組み込まれた第2のバインダーサブユニットをコードするDNAを含み得、クローンは、第1及び第2のサブユニットを含む多量体バインダーを発現する。
3.均一な転写。ライブラリーの異なるクローン間のバインダーの転写の相対レベルは、ドナーDNAが制御された数の遺伝子座及び異なるクローンの同じ遺伝子座(固定遺伝子座)に組み込まれるため、制御された限度内に維持される。バインダー遺伝子の比較的均一な転写は、ライブラリー中のクローン上又はクローンからのバインダーの発現に匹敵するレベルをもたらす。ライブラリーの細胞の表面にディスプレイされるバインダーは、同じ細胞にディスプレイされた他のバインダーと同一であり得る(同じアミノ酸配列を有する)。ライブラリーは、それぞれがバインダーのレパートリーの単一のメンバーをディスプレイする細胞のクローン又は細胞ごとにバインダーのレパートリーの複数のメンバーをディスプレイするクローンから構成され得る。代わりに、ライブラリーは、バインダーのレパートリーの単一のメンバーをディスプレイするいくつかのクローン及びバインダーのレパートリーの複数(例えば、2つ)のメンバーをディスプレイするいくつかのクローンを含み得る。好ましくは、ライブラリーのクローンは、バインダーのレパートリーの1つ又は2つのメンバーを発現する。例えば、本発明による真核細胞クローンのライブラリーは、少なくとも10、10、10、10、10、10又は10の異なるバインダー、例えばIgG、Fab、scFv又はscFv-Fc抗体断片のレパートリーを発現することができ、各細胞は、細胞DNAの固定遺伝子座に組み込まれたドナーDNAを含む。ドナーDNAは、バインダーをコードし、ドナーDNAが固定遺伝子座に組み込まれた細胞の選択のための遺伝要素をさらに含み得る。ライブラリーの細胞は、外因性部位特異的ヌクレアーゼをコードするDNAを含み得る。
【0125】
ライブラリーのこれら及び他の特徴は、本明細書の他の箇所にさらに記載される。
【0126】
本発明は、他の真核細胞の非存在下でのライブラリークローンの集団としての純粋な形態のライブラリー又は他の真核細胞と混合されたライブラリーのいずれかに拡張される。他の細胞は、同じタイプ(例えば、同じ細胞株)の真核細胞又は異なる細胞であり得る。さらなる利点は、スクリーニングを促進又は拡大するため又は本明細書に記載される若しくは当業者に明らかであろう他の用途のために、本発明による2つ以上のライブラリーを組み合わせるか、又は本発明によるライブラリーを第2のライブラリー若しくは第2の細胞集団と組み合わせることによって得ることができる。
【0127】
本発明によるライブラリー、ライブラリーから得られた1つ又は複数のクローン又はライブラリーからバインダーをコードするDNAが導入された宿主細胞を、細胞培養培地に提供することができる。細胞を培養し、次いで、濃縮して、輸送又は保管に便利な細胞ペレットを形成することができる。
【0128】
ライブラリーは、通常、インビトロで提供される。ライブラリーは、培養培地に懸濁したライブラリーの細胞を含む細胞培養フラスコなどの容器又はライブラリーを含む真核細胞のペレット若しくは濃縮懸濁液を含む容器に入れられ得る。ライブラリーは、容器内の真核細胞の少なくとも75%、80%、85%又は90%を構成し得る。
【0129】
本発明のライブラリーのためにドナーDNAが組み込まれる固定遺伝子座は、本発明によるライブラリーを生成する方法の認識配列の位置に対応することを理解されたい。従って、本明細書に記載される認識配列の位置に関するすべての選好は、本発明のライブラリーの固定遺伝子座にも適用可能である。
【0130】
バインダー
本発明による「バインダー」は、バインダー分子であり、別の分子に対する特異的結合パートナーを表す。特異的結合パートナーの典型的な例は、抗体-抗原及び受容体-リガンドである。
【0131】
ライブラリーによってコードされるバインダーのレパートリーは、通常、共通の構造を共有し、1つ又は複数の多様性の領域を有する。従って、ライブラリーは、ペプチド又はscFv抗体分子などの所望の分子構造クラスのメンバーの選択を可能にする。例えば、バインダーは、共通の構造を共有し、且つ1つ又は複数のアミノ酸配列多様性の領域を有するポリペプチドであり得る。
【0132】
これは、抗体分子のレパートリーを考慮することで説明することができる。これらは、それらの配列の1つ又は複数の領域が異なる共通の構造クラスの抗体分子、例えばIgG、Fab、scFv-Fc又はscFvであり得る。抗体分子は、典型的には、主に抗原認識に関与する領域であるそれらの相補性決定領域(CDR)に配列変化を有する。本発明のバインダーのレパートリーは、1つ又は複数のCDRで異なる抗体分子のレパートリーであり得、例えば6つすべてのCDRにおいて又は重鎖CDR3及び/若しくは軽鎖CDR3などの1つ又は複数の特定のCDRにおいて配列多様性が存在し得る。
【0133】
抗体分子及び他のバインダーは、本明細書の他の箇所でより詳細に記載されている。しかしながら、本発明の可能性は、抗体ディスプレイを超えて、受容体、リガンド、個々のタンパク質ドメイン及び代替タンパク質足場を含むペプチド又はエンジニアリングされたタンパク質のライブラリーのディスプレイを含むように拡張される[58、59]。ヌクレアーゼによる部位特異的組み込みを使用して、他のディスプレイ系を用いて以前にエンジニアリングされた他のタイプのバインダーのライブラリーを作成することができる。これらの多くは、DARPin及びリポカリン、アフィボディ及びアドヒロンなどの単量体結合ドメインに関与する[58、59、152]。真核細胞、特に哺乳動物細胞でのディスプレイは、より複雑な多量体標的を含むバインダー又は標的を単離してエンジニアリングする可能性も開く。例えば、T細胞受容体(TCR)は、T細胞上で発現し、抗原提示細胞上のMHC分子との複合体で提示されるペプチドを認識するように進化してきた。TCRのレパートリーをコード及び発現するライブラリーを生成することができ、このライブラリーをスクリーニングして、本明細書の他の箇所でさらに記載されるように、MHCペプチド複合体への結合を同定することができる。
【0134】
多量体バインダーの場合、バインダーをコードするドナーDNAは、1つ又は複数のDNA分子として提供することができる。例えば、個々の抗体VHドメイン及びVLドメインが別々に発現される場合、これらは、ドナーDNAの別々の分子にコードされ得る。ドナーDNAは、複数の組み込み部位で細胞DNAに組み込まれ、例えばVHのバインダー遺伝子が1つの遺伝子座に組み込まれ、VLのバインダー遺伝子が第2の遺伝子座に組み込まれる。別個のバインダーサブユニットをコードするドナーDNAを導入する方法は、本明細書の他の箇所でより詳細に記載される。代わりに、多量体バインダーの両方のサブユニット又は一部が、固定遺伝子座に組み込まれるドナーDNAの同じ分子上にコードされ得る。
【0135】
バインダーは、抗体分子又は抗原結合部位を含む非抗体タンパク質であり得る。抗原結合部位は、フィブロネクチン若しくはシトクロムBなどのような非抗体タンパク質足場上のペプチドループの配置により又はタンパク質足場内のループのアミノ酸残基をランダム化又は突然変異させて所望の標的に結合させることにより提供することができる[60、61、62]。抗体模倣体のタンパク質足場は、少なくとも1つのランダム化ループを有するフィブロネクチンIII型ドメインを含むタンパク質(抗体模倣体)が記載されている国際公開第0034784号パンフレットに開示されている。1つ又は複数のペプチドループ、例えば抗体VH CDRループのセットが移植される適切な足場は、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーの任意のドメインメンバーによって提供することができる。足場は、ヒト又は非ヒトタンパク質であり得る。
【0136】
非抗体タンパク質足場の抗原結合部位の使用は、以前に再考察されている[63]。典型は、安定な骨格及び1つ又は複数の可変ループを有するタンパク質であり、1つ又は複数のループのアミノ酸配列が特異的又はランダムに突然変異されて、標的抗原を結合させる抗原結合部位が形成される。このようなタンパク質には、S.アウレウス(S.aureus)由来のプロテインAのIgG結合ドメイン、トランスフェリン、テトラネクチン、フィブロネクチン(例えば、第10フィブロネクチンIII型ドメイン)及びリポカリンが含まれる。他のアプローチには、例えば「ノッチン」又はサイクロチド足場に基づく小さい拘束ペプチドが含まれる[64]。特にジスルフィド結合の正しい形成に関連して、それらのサイズが小さく、複雑であることを考えると、これらの足場に基づく新規バインダーの選択での真核細胞の使用には利点があり得る。自然界におけるこれらのペプチドの共通の機能を考えると、これらの足場に基づくバインダーのライブラリーは、イオンチャネル及びプロテアーゼの遮断における特定の用途の小さい高親和性バインダーの生成において有利であり得る。
【0137】
抗体配列及び/若しくは抗原結合部位に加えて、バインダーは、例えば折り畳まれたドメインなどのペプチド若しくはポリペプチドを形成する他のアミノ酸を含むか、又は抗原に結合する能力に加えて別の機能的特性を分子に付与することができる。バインダーは、検出可能な標識を担持し得るか、又は毒素若しくは標的化部分若しくは酵素に(例えば、ペプチジル結合又はリンカーを介して)コンジュゲートし得る。例えば、バインダーは、触媒部位(例えば、酵素ドメイン内)及び抗原結合部位を含み得、抗原結合部位は抗原に結合し、従って触媒部位が抗原を標的とする。触媒部位は、例えば、切断によって抗原の生物学的機能を阻害し得る。
【0138】
抗体分子
抗体分子は好ましいバインダーである。抗体分子は、全抗体又は免疫グロブリン(Ig)であり得、4つのポリペプチド鎖(2つの同一の重鎖及び2つの同一の軽鎖)を有する。重鎖と軽鎖は対を形成し、それぞれが、抗原結合部位を含むVH-VLドメイン対を有する。重鎖及び軽鎖は、定常ドメイン:軽鎖CL並びに重鎖CH1、CH2、CH3及びときにCH4(第5のドメインCH4は、ヒトIgM及びIgEに存在する)も含む。2つの重鎖は、柔軟なヒンジ領域でジスルフィド架橋によって結合されている。抗体分子は、VH及び/又はVLドメインを含み得る。
【0139】
抗体分子の最も一般的な天然フォーマットは、2つの同一の重鎖及び2つの同一の軽鎖からなるヘテロ四量体であるIgGである。重鎖及び軽鎖は、4本鎖の逆平行ベータシート及び3本鎖の逆平行ベータシートからなる保存された二次構造を有するモジュラードメインから構成され、単一のジスルフィド結合によって安定化されている。抗体の重鎖は、それぞれN末端可変ドメイン(VH)及び3つの比較的保存された「定常」免疫グロブリンドメイン(CH1、CH2、CH3)を有するの対して、軽鎖は、1つのN末端可変ドメイン(VL)及び1つの定常ドメイン(CL)を有する。ジスルフィド結合は、個々のドメインを安定化させ、共有結合を形成して4本の鎖を安定した複合体に結合する。軽鎖のVL及びCLは、重鎖のVHとCH1と会合し、これらの要素を単独で発現してFab断片を形成することができる。CH2及びCH3ドメイン(「Fcドメイン」とも呼ばれる)は、別のCH2:CH3対と会合して、「Y」の先端にある重鎖及び軽鎖の可変ドメインを有する四量体Y字型分子を形成する。CH2及びCH3ドメインは、免疫系内のエフェクター細胞及び補体成分との相互作用に関与する。組み換え抗体は、IgGフォーマットで又はFab(VH:CH1の二量体と軽鎖からなる)として以前から発現されている。加えて、柔軟なリンカーをコードするDNAと遺伝的に融合したVH及びVL断片をコードするDNAからなる、一本鎖Fv(scFv)と呼ばれる人工構築物を使用することができる。
【0140】
バインダーは、ヒト抗体分子であり得る。従って、定常ドメインが存在する場合、これらは、好ましくはヒト定常ドメインである。
【0141】
バインダーは、抗体断片又は一本鎖抗体分子などのより小さい抗体分子フォーマットであり得る。例えば、抗体分子は、リンカーペプチドによって結合されたVHドメイン及びVLドメインからなるscFv分子であり得る。scFv分子では、VHドメインとVLドメインがVH-VL対を形成し、VH及びVLの相補性決定領域が一緒になって抗原結合部位を形成する。
【0142】
抗体抗原結合部位を構成する他の抗体断片には、限定されないが、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなるFab断片;(ii)VHドメイン及びCH1ドメインからなるFd断片、(iii)単一の抗体のVLドメイン及びVHドメインからなるFv断片;(iv)VH又はVLドメインからなるdAb断片[65、66、67];(v)分離されたCDR領域;(vi)2つの連結されたFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;(vii)VHドメイン及びVLドメインがペプチドリンカーによって連結され、2つのドメインが会合して抗原結合部位を形成することを可能にするscFv[68、69];(viii)二重特異性一本鎖Fv二量体(国際出願PCT/US92/09965号明細書);及び(ix)遺伝子融合によって構築された多価又は多重特異的断片である「ダイアボディ」(国際公開第94/13804号パンフレット)[70]が含まれる。Fv、scFv又はダイアボディ分子は、VHドメインとVLドメインを連結するジスルフィド架橋の取り込みによって安定させることができる[71]。
【0143】
例えば、Fab2、Fab3、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ及びミニボディ(低分子免疫タンパク質)を含め、1つ又は複数の抗体抗原結合部位を含む様々な他の抗体分子がエンジニアリングされている。抗体分子及びそれらの構築及び使用の方法が記載されている[72]。
【0144】
結合断片の他の例としては、抗体ヒンジ領域からの1つ又は複数のシステインを含む少数の残基が重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端に付加されている点でFab断片とは異なるFab’及び定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’断片であるFab’-SHが挙げられる。
【0145】
dAb(ドメイン抗体)は、抗体の小さい単量体抗原結合断片、即ち抗体の重鎖又は軽鎖の可変領域である。VH dAbは、ラクダ科動物(ラクダ、ラマなど)に自然に発生し、標的抗原でラクダ科動物を免疫し、抗原特異的B細胞を単離し、個々のB細胞由来のdAb遺伝子を直接クローニングすることにって作製することができる。dAbは、細胞培養でも作製可能である。それらの小さいサイズ、良好な溶解性及び温度安定性により、特に生理学的に有用であり、選択及び親和性成熟に適している。ラクダ科動物VH dAbは、「ナノボディTM」という名称で治療用に開発された。
【0146】
合成抗体分子は、例えば、Knappikら[73]又はKrebsら[74]によって記載されているように、適切な発現ベクター内で合成されて構築されたオリゴヌクレオチドによって生成された遺伝子からの発現によって形成することができる。
【0147】
二重特異性抗体又は二官能性抗体は、2つの異なる可変領域が同じ分子内で組み合わされた第2世代のモノクローナル抗体を形成する[75]。それらの使用は、新しいエフェクター機能を動員する能力又は腫瘍細胞の表面にあるいくつかの分子を標的にする能力から、診断分野及び治療分野の両方で実証されている。二重特異性抗体が使用される場合、これらは、様々な方法[76]で製造できる、例えば化学的に又はハイブリッドハイブリドーマから調製できる従来の二重特異性抗体であり得るか、又は上述の二重特異性抗体断片のいずれかであり得る。これらの抗体は、化学的方法[77、78]又は体細胞法[79、80]によって得ることができるが、同様に、ヘテロ二量体化が強制されるのを可能にし、従って求められている抗体の精製プロセスを容易にする遺伝子工学技術によって優先的に得ることができる[81]。二重特異性抗体の例としては、特異性の異なる2つの抗体の結合ドメインを使用し、短い柔軟なペプチドを介して直接連結することができるBiTETM技術による抗体が挙げられる。これは、短い1本のポリペプチド鎖上の2つの抗体を結合させる。ダイアボディ及びscFvは、可変ドメインのみを使用してFc領域なしで構築することができ、抗イディオタイプ反応の影響を潜在的に低減し得る。
【0148】
二重特異性抗体は、IgG全体として、二重特異性Fab’2として、Fab’PEGとして、ダイアボディとして又は二重特異性scFvとして構築することができる。さらに、2つの二重特異性抗体を、当技術分野で公知の常法を使用して連結し、4価抗体を形成することができる。
【0149】
二重特異性全抗体とは対照的に、二重特異性ダイアボディも特に有用であり得る。適切な結合特異性のダイアボディ(及び抗体断片などの他の多くのポリペプチド)を容易に選択することができる。ダイアボディの一方のアームが一定のままであり、例えば目的の抗原に対する特異性を有する場合、もう一方のアームが様々であり、且つ適切な特異性の抗体が選択されるライブラリーを作成することができる。二重特異性全抗体は、Ridgewayら、1996年[82]に記載されているような代替の工学的方法によって作製することができる。
【0150】
本発明によるライブラリーを使用して、目的の1つ又は複数の抗原に結合する抗体分子を選択することができる。ライブラリーからの選択については、以下に詳細に記載する。選択後、抗体分子を異なるフォーマットに、且つ/又は追加の特徴を含むようにエンジニアリングすることができる。例えば、選択された抗体分子を、上記の抗体フォーマットの1つなどの異なるフォーマットに変換することができる。選択された抗体分子及び選択された抗体分子のVH及び/又はVL CDRを含む抗体分子は本発明の態様である。抗体分子及びそれらをコードする核酸は、単離された形態で提供することができる。
【0151】
抗体断片は、酵素、例えばペプシン若しくはパパインによる消化などの方法によって且つ/又は化学還元によるジスルフィド架橋の切断によって抗体分子から出発して得ることができる。別の方法では、抗体断片は、当業者に周知の遺伝子組換え技術、又は例えば自動ペプチド合成装置によるペプチド合成、又は核酸合成及び発現によって得ることができる。
【0152】
モノクローナル抗体及びその他の抗体を得て、組換えDNA技術の技術を使用して、標的抗原に結合する他の抗体又はキメラ分子を作製することが可能である。このような技術は、抗体の免疫グロブリン可変領域又はCDRをコードするDNAを、異なる免疫グロブリンの定常領域又は定常領域とフレームワーク領域に導入することを含み得る。例えば、欧州特許出願公開第A-184187号明細書、英国特許出願公開第2188638A号明細書、欧州特許出願公開第A-239400号明細書及びこれらに続く多くの文献を参照されたい。
【0153】
抗体分子は、ライブラリーから選択し、次いで修飾することができ、例えば、抗体分子のインビボ半減期は、化学修飾、例えばPEG化又はリポソームへの取り込みによって増加させることができる。
【0154】
バインダー遺伝子の供給源
モノクローナル抗体の生成の従来の経路は、マウスやウサギのような実験動物の免疫系を利用して高親和性抗体のプールを生成し、次いで、高親和性抗体を、ハイブリドーマ技術を使用して単離する。本発明のライブラリーは、免疫から生じる抗体を同定するための代替経路を提供する。VH遺伝子及びVL遺伝子は、免疫された動物のB細胞から増幅し、真核細胞ライブラリーへの導入のための適切なベクターにクローニングし、続いてこれらのライブラリーから選択することができる。ファージディスプレイ及びリボソームディスプレイにより、非常に大きいライブラリー(10個を超えるクローン)を構築することができ、免疫化なしでもヒト抗体の単離が可能となる。本発明によるライブラリーの作製は、このような方法と共に使用することもできる。一連のファージディスプレイ選択に続いて、バインダーの選択された集団を、本明細書に記載されるようにヌクレアーゼによる組み込みによって真核細胞に導入することができる。これにより、他の系(例えば、ファージディスプレイ)に基づく非常に大きいライブラリーの最初の使用によってバインダーの集団を濃縮することが可能になる一方、上記のように真核細胞を使用する効率的なスクリーニングが可能になる。従って、本発明は、ファージディスプレイ及び真核細胞ディスプレイの両方の最良の特徴を組み合わせて、定量的スクリーニング及び選別でのハイスループット系を提供することができる。
【0155】
ファージディスプレイ及び酵母ディスプレイを使用して、十分なサイズのディスプレイライブラリーが使用されれば、免疫化に頼らずにバインダーを生成することも可能であることが以前に実証された。例えば、10個を超えるクローンの非免疫抗体ライブラリーから複数のバインダーが生成された[83]。これにより、従来の免疫経路では困難であった標的に対するバインダーの生成、例えば種間で保存されている「自己抗原」又はエピトープに対する抗体の生成が可能になる。例えば、ヒト/マウスの交差反応性バインダーは、同じ標的のヒトバージョン、続いてマウスバージョンの連続的な選択によって濃縮することができる。ほとんどの目的の標的に対してヒトを特異的に免疫化することは不可能であるため、この容易さは、治療アプローチに好まれるヒト抗体の生成を可能にする上で特に重要である。
【0156】
これまでの哺乳動物ディスプレイの例では、ライブラリーのサイズ及び質が限定されていて、バインダーは、例えば、免疫化又は既存のバインダーのエンジニアリングから、バインダー用に事前に濃縮されたレパートリーを使用してのみ生成されてきた。真核細胞、特に高等真核細胞で大きいライブラリーを作製する能力により、非免疫バインダー又は以前に別の系内で選択されていなかったバインダーから出発して、これらのライブラリーから直接バインダーを単離する可能性がもたらされる。本発明によるライブラリーを作製することにより、非免疫源からバインダーを生成することが可能である。これにより、複数の供給源からのバインダー遺伝子を使用する可能性が開かれる。バインダー遺伝子は、抗体遺伝子などの天然供給源のPCRに由来し得る。バインダー遺伝子は、抗体ファージディスプレイライブラリーなどの既存のライブラリーから再クローニングして、標的細胞へのヌクレアーゼによる組み込みに適したドナーベクターにクローニングすることもできる。バインダーは、元来は完全に又は部分的に合成することができる。さらに、様々なタイプのバインダーが、本明細書の他の箇所に記載されており、例えば、バインダー遺伝子は、抗体をコードし得るか、又は代替の足場[58、59]、ペプチド、若しくはエンジニアリングされたタンパク質、若しくはタンパク質ドメインをコードし得る。
【0157】
バインダーディスプレイ
本発明に関連して構築されたライブラリーを培養して、可溶性分泌型又は膜貫通型のいずれかでバインダーを発現させることができる。発現したバインダーは、それらをコードする細胞の表面に保持される場合に「ディスプレイ」されたと言われる。これに関連して、「バインダーディスプレイ」、「表面上/表面でのディスプレイ」、「細胞上のディスプレイ」及び「バインダーのディスプレイ」などのような用語を互換的に使用することができる。これに関連して、ライブラリーは、ディスプレイ又はディスプレイライブラリーと呼ばれることもある。
【0158】
好ましくは、発現されたバインダーがディスプレイされるライブラリーは、目的の標的に対するスクリーニングのためのバインダーのレパートリーを提供することになる。
【0159】
バインダーは、細胞表面におけるバインダーの細胞外ディスプレイのために、膜貫通ドメインなどの膜固定を含むか、又はそれに連結することができる。これには、GPI認識配列などの膜局在シグナル又はPDGF受容体の膜貫通ドメインなどの膜貫通ドメインへのバインダーの直接融合が含まれ得る[84]。細胞表面におけるバインダーの保持は、同じ細胞内で発現する別の細胞表面に保持された分子との会合によって間接的に行うこともできる。この会合した分子自体は、直接係留されていない軽鎖パートナーと会合した係留抗体重鎖などのヘテロ二量体バインダーの一部であり得る。
【0160】
細胞表面固定化は、バインダーの選択を容易にするが、多くの適用例では、無細胞の分泌型バインダーを調製する必要がある。分泌型バインダーを細胞表面受容体に付着させる再捕捉法を使用して、膜係留と可溶性分泌を組み合わせることが可能になる。1つのアプローチは、バインダーのライブラリーを、分泌型バインダーを捕捉するように機能し得る同じ細胞内で発現する膜固定分子と会合できる分泌型分子としてフォーマットすることである。例えば、抗体又は抗体Fcドメインに融合したバインダー分子の場合、膜係留Fcは、同じ細胞内で発現している分泌型バインダー分子を「サンプリング」することができ、その結果、発現しているバインダー分子の単量体画分がディスプレイされ、残りが二価の形で分泌される(米国特許第8,551,715号明細書)。代替は、プロテインAなどの係留IgG結合ドメインを使用することである。
【0161】
分泌型抗体を、それらを産生する細胞で保持する他の方法は、Kumarら(2012)[85]で再考察されており、マイクロドロップ内での細胞のカプセル化、マトリックス支援捕捉、親和性捕捉表面ディスプレイ(ACSD)、分泌及び捕捉技術(SECANT)並びに「コールド捕捉」[85]を含む。ACSD及びSECANT[85]の例では、ビオチン化を使用して、細胞表面のストレプトアビジン又は捕捉抗体の固定化が促進される。捕捉された分子は、分泌型抗体を捕捉する。SECANTの例では、インビボでの分泌型分子のビオチン化が起こる。「コールド捕捉」技術を使用すると、分泌型抗体を、分泌型分子に対する抗体を使用して産生細胞で検出することができる。これは、分泌型抗体と細胞のグリコカリックスとの会合によるものであると提案されている[86]。代わりに、分泌産物は、エンドサイトーシスされる前に細胞表面の抗体を染色することによって捕捉されることが示唆されている[87]。上記の方法は、集団内の高発現クローンの同定に使用されているが、会合が細胞表面で十分に長持ちすれば、結合特異性の同定に潜在的に適応させ得る。
【0162】
バインダーが細胞表面に直接係留されている場合でも、可溶性産物を生成することが可能である。例えば、選択されたバインダーをコードする遺伝子を回収して、膜固定配列を欠く発現ベクターにクローニングすることができる。代わりに、膜貫通ドメインが、組換え部位、例えばOreリコンビナーゼのROX認識部位に挟まれたエクソン内にコードされる発現構造を使用することができる[88]。膜貫通ドメインをコードするエクソンは、Dreリコンビナーゼをコードする遺伝子でのトランスフェクションによって除去して、発現を分泌型に切り替えることができる。
【0163】
上記の方法のいずれか又は他の適切なアプローチを使用して、ライブラリーのクローンによって発現されるバインダーがそれらの発現細胞の表面にディスプレイされるようにすることができる。
【0164】
Fcドメインに融合した哺乳動物細胞の表面でのscFvsのディスプレイ
多くの抗体ファージディスプレイライブラリーは、scFvをディスプレイするようにフォーマットされているが、真核細胞ディスプレイ系では、Fab又はIgGフォーマットでの提示を可能にする。IgG/Fab発現の可能性を最大限に活用するために、特に他のディスプレイ系からのscFvを使用する場合、細菌発現系内の選択された連結VH及びVLドメインを得て、適切な定常ドメインに融合した真核細胞系内でそれらを発現させる必要がある。元のVH鎖とVL鎖の対が維持されるように、scFv集団を免疫グロブリン(Ig)又は断片抗原結合(Fab)フォーマットに変換する方法を本明細書で説明する。本発明では、VH鎖とVL鎖の元の対を維持しながら、scFvとしてフォーマットされた個々のクローン、オリゴクローナルミックス又は全集団を使用する変換が可能である。この方法は、新しい「スタッファー」DNA断片をもたらす中間体の非複製性「ミニサークル」DNAの生成によって進む。環状DNAは、(例えば、制限消化又はPCRによって)線状化され、元のVH及びVL断片の相対位置を変化させて、それらの間に「スタッフド」DNAを配置する。線状にした後、生成物を、選択したベクター、例えば哺乳動物発現ベクターにクローニングすることができる。このようにして、VHとVL以外のすべての要素を置き換えることができる。細菌発現のための要素は、哺乳動物の発現及び代替パートナーへの融合のための要素に置き換えることができる。完全な変換プロセスでは、大腸菌(E.coli)の形質転換ステップを1回行うのみで、それぞれが固有のlg又はFabフォーマットされた組換え抗体をコードするプラスミドを有する細菌コロニーの集団が生成される。scFvからIgG/Fabへの変換を超えて、この方法を利用して、任意の2つの連結されたDNA要素を再フォーマットしてベクターにクローニングし、再フォーマット後に各DNA要素が元の対を維持しながら異なるDNA制御機構に囲まれるようにすることができる。中間体の非複製性環状中間体を介して進む本方法とは対照的に、これらの要素を置き換えるために2つの連続したクローニングステップが使用される以前の方法が記載されている[117]。
【0165】
バインダー又はバインダーの集団を再構築する方法は、scFvをIg又はその断片、例えばFabに変換することを含み得る。この方法は、scFvをコードする核酸を、元の可変VH及びVL鎖の対が維持されるように、免疫グロブリン(Ig)又はFabフォーマットなどのその断片をコードするDNAに変換することを含み得る。好ましくは、この変換は、非複製性「ミニサークル」DNAであり得る環状DNA中間体を介して進む。この方法では、Ig又はFab DNAをコードするプラスミドを有する細菌形質転換体を直接生成するために大腸菌(E.coli)の1回の形質転換が必要である。
【0166】
この方法は、モノクローナルクローン、オリゴクローナルクローン又はポリクローナルクローンの再フォーマット化に使用することができる。この方法を使用して、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ又はリボソームディスプレイを含む一般的に使用される任意のディスプレイ技術から出力集団全体を「まとめて」変換することができる。
【0167】
より一般的には、この方法は、任意の2つの接続されたDNA要素をベクターに再フォーマットすることを可能にし、この再フォーマットでは、DNA要素が別々のプロモーターの制御下でクローニングされるか、又は代替の制御要素によって分離されるが、元のDNA対が維持される。
【0168】
バインダーをコードするDNAの単離及び任意選択の再構築に続いて、そのDNAをさらなる細胞に導入して、本明細書の他の箇所に記載されるような誘導体ライブラリーを形成し得るか、又は目的の1つ若しくは複数の特定のバインダーをコードするDNAを発現のために宿主細胞に導入し得る。宿主細胞は、ライブラリーが得られたライブラリーの細胞と比較して異なるタイプであり得る。一般に、DNAはベクターで提供される。宿主細胞に導入されたDNAは、宿主細胞の細胞DNAに組み込むことができる。次いで、分泌型可溶性抗体分子を発現する宿主細胞を選択することができる。
【0169】
1つ又は複数のバインダーをコードする宿主細胞を培地に入れ、培養して1つ又は複数のバインダーを発現させることができる。
【0170】
誘導体ライブラリー
ライブラリーを作製する方法に続いて、1つ又は複数のライブラリークローンを選択し、これを使用してさらなる第2世代のライブラリーを作製することができる。本明細書に記載されるように真核細胞にDNAを導入することによってライブラリーが生成される場合、このライブラリーを培養してバインダーを発現させることができ、目的のバインダーを発現する1つ又は複数のクローンを、例えば標的に対するバインダーを同定する方法によって標的に対してバインダーを選択することによって回収することができる。その後、これらのクローンを使用して、好ましくはライブラリーを作製する方法により、バインダーの第2のレパートリーをコードするDNAを含む誘導体ライブラリーを生成することができる。
【0171】
誘導体ライブラリーを生成するために、1つ又は複数の回収したクローンのドナーDNAを突然変異させて、バインダーの第2のレパートリーを提供する。突然変異は、1つ又は複数のヌクレオチドの付加、置換又は欠失であり得る。バインダーがポリペプチドである場合、突然変異は、1つ又は複数のアミノ酸の付加、置換又は欠失により、コードされたバインダーの配列を変化させることである。突然変異は、抗体分子の1つ又は複数のCDRなどの1つ又は複数の領域に焦点を当てることができ、本明細書の他の箇所に記載されるように、1つ又は複数の多様性の領域において異なる共通の構造クラスのバインダーのレパートリーを提供する。
【0172】
誘導体ライブラリーを生成することは、1つ又は複数の回収したクローンからドナーDNAを単離し、DNAに突然変異を導入して、バインダーの第2のレパートリーをコードするドナーDNA分子の誘導体集団を提供し、且つドナーDNA分子の誘導体集団を細胞に導入して、バインダーの第2のレパートリーをコードするDNAを含む細胞の誘導体ライブラリーを形成することを含み得る。
【0173】
ドナーDNAの単離は、クローンからDNAを得、且つ/又はそのDNAを同定することを含み得る。このような方法は、例えば、PCRにより、回収したクローンからバインダーをコードするDNAを増幅すること及び突然変異を導入することを包含し得る。DNAを配列決定し、突然変異DNAを合成することができる。
【0174】
代わりに、突然変異を、クローン内のDNAに突然変異を誘発することによって1つ又は複数の回収したクローンのドナーDNAに導入することができる。従って、誘導体ライブラリーは、例えば、トリDT40細胞における内因性突然変異により、DNAの単離を必要とせずに1つ又は複数のクローンから形成することができる。
【0175】
抗体のディスプレイ自体が誘導体ライブラリーの形成に特に適している。抗体遺伝子が単離されると、様々な突然変異誘発アプローチ(例えば、エラーが起こりやすいPCR、オリゴヌクレオチド誘導突然変異誘発、鎖シャッフル)を使用して、改良された変異体を選択することができる関連するクローンのディスプレイライブラリーを形成することが可能である。例えば、選択されたVHクローンの集団、オリゴクローナルミックス又は集団をコードするDNAを鎖シャッフルすることで、適切な抗体フォーマットをコードし、且つVL鎖の適切にフォーマットされたレパートリーをコードするベクターにサブクローニングすることができる[118]。代わりに、VHの例を再び使用して、VHクローン、オリゴミックス又は集団を、適切にフォーマットされた軽鎖パートナー(例えば、IgG又はFabフォーマットされた重鎖と会合のためのVL-CL鎖)の集団をコードして発現する真核細胞の集団に導入することができる。VH集団は、免疫された動物のB細胞又は選択されたファージ集団からのscFv遺伝子を含む、上記の任意の供給源から生じ得る。後者の例では、選択されたVHを軽鎖のレパートリーにクローニングすることにより、1つのステップで鎖シャッフルと(例えば、IgGフォーマットに)再フォーマットすることとを組み合わせることができる。
【0176】
真核細胞におけるディスプレイの特別な利点は、選択/スクリーニングステップの厳密性を制御する能力である。抗原濃度を下げることにより、集団内で最も高い親和性バインダーを発現する細胞を、親和性の低いクローンと区別することができる。フローサイトメトリーを使用する親和性成熟プロセスの可視化及び定量化は、ナイーブライブラリーの陽性率を早期に示し、選別中の選択したクローンと親集団の親和性の直接比較が可能となるため、真核細胞ディスプレイの大きい利点である。選別後、個々のクローンの親和性を、様々な抗原濃度でのプレインキュベーション及びフローサイトメトリーでの分析により、又は均質な時間分解蛍光(TRF)アッセイで、又は表面プラズモン共鳴(SPR)(Biacore)を使用して決定することができる。
【0177】
目的の標的に対するバインダーを同定するスクリーニング。上記のように、真核細胞ライブラリーは、標的を認識するバインダーのスクリーニング方法で使用することができる。このような方法は、
本発明のライブラリーを作製する方法によってライブラリーを提供するか、又は本発明による遺伝子座の使用によってライブラリーを提供するか、又は本発明によるライブラリーを提供するステップ、
ライブラリーの細胞を培養してバインダーを発現させるステップ、
バインダーを標的に曝露し、1つ又は複数の同種バインダーが存在する場合、それによる標的の認識を可能にするステップ、及び
標的が同種バインダーによって認識されるかどうかを検出するステップ
を含み得る。
【0178】
この態様による方法は、本出願に関連して、標的に対するバインダーを同定する方法と呼ばれ得る。これに関連して、バインダーの選択又はバインダーのスクリーニングもこのような方法を指す。
【0179】
標的に対するバインダーを同定する方法は、様々な標的分子クラス、例えばタンパク質、核酸、炭水化物、脂質、小分子を使用して実施することができる。標的は、可溶性の形態で提供することができる。標的は、検出を容易にするために標識することができ、例えば蛍光標識を担持し得るか又はビオチン化され得る。標的特異的バインダーを発現する細胞は、直接的又は間接的に標識された標的分子を使用して単離することができ、バインダーは、標識された分子を捕捉する。例えば、バインダーと標的の相互作用を介して、蛍光標識された標的に結合した細胞を、フローサイトメトリー又はFACSによって検出して選別し、所望の細胞を単離することができる。サイトメトリーを含む選択には、直接的に蛍光標識された標的分子又は二次試薬で検出できる分子で標識された標的分子が必要であり、例えばビオチン化標的を細胞に添加し、細胞表面への結合をストレプトアビジン-フィコエリトリンなどの蛍光標識ストレプトアビジンで検出することができる。さらなる可能性は、磁気ビーズ若しくはアガロースビーズなどの固体表面の標的に結合する標的分子又は二次試薬を固定して、標的に結合する細胞の濃縮を可能にすることである。例えば、バインダーと標的の相互作用を介してビオチン化標的に結合する細胞は、ストレプトアビジンでコーティングされた基質、例えばストレプトアビジンでコーティングされたビーズ上に単離することができる。
【0180】
標的に対するバインダーを同定する方法で使用されるライブラリーでは、ライブラリーの効果的な提示を確実にするために、オーバーサンプリング、即ちライブラリー内に存在する独立したクローンの数よりも多くのクローンをスクリーニングすることが好ましい。本発明によって提供される非常に大きいライブラリーからのバインダーの同定は、流動選別によって行うことができるが、これは、特にライブラリーをオーバーサンプリングする場合、数日かかるであろう。代替として、最初の選択は、回収可能な抗原、例えばストレプトアビジンでコーティングされた磁気ビーズに回収されるビオチン化抗原の使用に基づき得る。従って、ストレプトアビジンでコーティングされた磁気ビーズを使用して、ビオチン化抗原に結合した細胞を捕捉することができる。磁気ビーズによる選択は、唯一の選択方法として使用することができるか、又はこれは、例えば、発現レベルの高いクローンと親和性の高いクローンを区別する、優れた分解能を達成できるフローサイトメトリーと共に行うこともできる[56、57]。
【0181】
ディスプレイ技術アプローチのインビトロでの性質は、免疫化では不可能である方法での選択、例えば標的の特定の立体配座状態での選択を制御することを可能にする[90、91]。標的は、化学修飾(フルオレセイン、ビオチン)又は遺伝子融合(例えば、FLAGタグなどのエピトープタグ、若しくは別のタンパク質ドメイン、若しくはタンパク質全体に融合したタンパク質)によってタグ付けすることができる。タグは、核酸(例えば、DNA、RNA又は非生物学的核酸)であり得、タグは、標的核酸に融合した部分であるか、又はタンパク質などの別のタイプの分子に化学的に結合することができる。これは、化学的コンジュゲーション又は酵素的付着によるものであり得る[92]。核酸は、リボソームディスプレイなどの翻訳プロセスによって標的に融合させることもできる。「タグ」は、細胞内で生じる別の修飾(例えば、グリコシル化、リン酸化、ユビキチン化、アルキル化、PAS化、SUMO化及びhttp://dbptm.mbc.nctu.edu.tw/statistics.phpの翻訳後データベース(db-PTM)に記載されているその他の修飾)であり得、二次試薬によって検出することができる。これにより、特定の修飾に基づいて未知の標的タンパク質に結合するバインダーが得られることになる。
【0182】
標的は、その標的分子に結合する既存のバインダー、例えば標的特異的抗体を使用して検出することができる。検出での既存のバインダーの使用は、検出に使用したバインダーとは異なるエピトープを認識するバインダーのライブラリー内でバインダーを同定するというさらなる利点を有する。このようにして、サンドイッチELISAなどの適用例で使用するためのバインダーの対を同定することができた。可能な場合、精製された標的分子が好ましいであろう。代わりに、標的を標的細胞の集団の表面にディスプレイすることができ、バインダーは、ライブラリー細胞の表面にディスプレイされ、この方法は、ライブラリー細胞を標的細胞と接触させることによってバインダーを標的に曝露することを含む。標的を発現する細胞の回収(例えば、標的を発現するビオチン化細胞の使用)により、それらに対するバインダーを発現する細胞の濃縮を可能にする。このアプローチは、強いアビディティ効果の可能性があるため、親和性の低い相互作用が関与する場合に有用となる。
【0183】
標的分子は、検出された分子が(上記したように)細胞結合の同定に利用可能である場合、未精製の組換え体又は未精製の天然標的でもあり得る。加えて、バインダーを発現する細胞への標的分子の結合は、標的分子の検出されている別の分子への会合によって間接的に検出することができ、例えばタグ付き分子を含む細胞溶解物をバインダーのライブラリーと共にインキュベートして、タグ付き分子に対するバインダーだけでなく、その関連パートナータンパク質に対するバインダーも同定することができる。これにより、(例えば、質量分析を使用した)パートナーの検出又は同定に使用できるこれらのパートナーに対する抗体のパネルが得られることになる。細胞分別を使用して、特定の細胞内位置からの標的を濃縮することができる。代わりに、表面又は細胞質画分のビオチン化の差を、真核細胞のディスプレイ用のストレプトアビジン検出試薬と共に使用することもできる[93、94]。界面活性剤で可溶化した標的調製物の使用は、他の方法では調製が困難なGPCR及びイオンチャネルなどの無傷の膜タンパク質に特に有用なアプローチである。界面活性剤の存在は、選択された細胞の追加の増殖なしでのバインダー遺伝子の回収を必要とするバインダーをディスプレイする真核細胞に対して有害な影響を及ぼし得る。
【0184】
同種バインダーによる標的認識の検出に続いて、同種バインダーをコードするDNAを含むクローンの細胞を回収することができる。次いで、バインダーをコードするDNAを回収したクローンから単離(例えば、同定又は増幅)し、それにより標的を認識するバインダーをコードするDNAを得ることができる。
【0185】
例示的なバインダー及び標的は、本明細書の他の箇所で詳述される。典型的な例は、抗体分子のライブラリーであり、このライブラリーを目的の標的抗原への結合についてスクリーニングすることができる。他の例としては、標的MHC:ペプチド複合体に対するTCRのライブラリーのスクリーニング又は標的TCRに対するMHC:ペプチド複合体のライブラリーのスクリーニングが含まれる。
【0186】
TCR:MHCと他の受容体の相互作用
上記で説明したように、標的に対するバインダーを同定する方法におけるバインダー及び標的は、それぞれTCR及びMHC:ペプチド複合体であり得るか又はその逆であり得る。従って、ディスプレイライブラリーは、酵母細胞及び哺乳動物細胞の表面のTCRのライブラリーであり得る。このようなライブラリーを使用して、認識特性が変更されたTCRを選択することができる。代わりに、ディスプレイライブラリーは、TCRによる認識のためのペプチド又はMHC変異体のライブラリーであり得る。
【0187】
T細胞受容体(TCR)は、T細胞上に発現し、抗原提示細胞上のMHC分子との複合体で提示されるペプチドを認識するように進化してきた。TCRは、95%のα及びβヘテロ二量体と、5%のγ及びδヘテロ二量体とからなるヘテロ二量体である。両方の単量体ユニットは、標的との相互作用の促進に関与する3つの可変相補性決定領域(CDR)を有するN末端免疫グロブリンドメインを有する。機能性TCRは、他のサブユニットの複合体内に存在し、シグナル伝達は、CD4及びCD8分子(それぞれクラスI及びクラスIIのMHC分子に特異的)との共刺激によって増強される。抗原提示細胞では、タンパク質が処理され、それ自体、多量体タンパク質複合体の一部であるMHC分子と複合体を形成した細胞表面に提示される。「自己」に由来するペプチドを認識するTCRは、発生中に除去され、この系は、抗原提示細胞上に提示された外来ペプチドを認識して免疫応答を引き起こす準備ができている。ペプチド:MHC複合体の認識の結果は、T細胞の同一性及びその相互作用の親和性に依存する。
【0188】
例えば、自己免疫疾患で生じる病的状態に関与する相互作用を促進するTCR又はMHC:ペプチド複合体をコードする遺伝子を同定することは有用である。例えば、癌のT細胞の再標的化又は既存のT細胞の効果の強化において、結合を変化させる、例えば目的の標的に対する親和性を高めるためにTCRをエンジニアリングすることが望ましいであろう[95]。代わりに、制御性又は抑制性T細胞の挙動は、例えば、特異的なTCRのT細胞への導入又は発現したTCRタンパク質の治療実体としての使用により、癌の免疫療法を指示又は強化するための治療法として変更され得る[96]。
【0189】
酵母細胞及び哺乳動物細胞の表面でのTCRのライブラリーのディスプレイは以前に実証されている。酵母細胞の場合、TCRをエンジニアリングして、それを一本鎖フォーマットで提示する必要があった。TCRとペプチド:MHC複合体との間の相互作用の親和性は低いため、可溶性成分(例えば、この場合にはペプチド:MHC)は、通常、多量体フォーマットで表される。TCR特異性は、MHCクラスI[97]及びMHCクラスII[98]との複合体のペプチド用にエンジニアリングされている。TCRは、変異マウスT細胞(TCRα及びβ鎖を欠く)の表面でも発現しており、結合特性が改善された変異TCRが単離されている[99]。例えば、Chervinらは、レトロウイルス感染によってTCRを導入し、104個のクローンの有効ライブラリーサイズを生成した[100]。ここで提案されるようにバインダーのヌクレアーゼによる組み込みを使用して、同様のアプローチを使用してT細胞をエンジニアリングすることができる。ディスプレイライブラリーは、認識特性が変化したTCRを選択するだけでなく、TCRによる認識のためのペプチド又はMHC変異体のライブラリーのスクリーニングに使用することができる。例えば、ペプチド:MHC複合体は、昆虫細胞にディスプレイされ、多量体フォーマットで提示されるTCRをエピトープマッピングするために使用されている[101]。
【0190】
上記のように、スクリーニング方法は、細胞表面のバインダーのレパートリーをディスプレイし、且つ多量体標的であり得る、可溶性分子として提示される標的を用いてプロービングすることを含み得る。多量体標的に特に有用であり得る代替は、バインダー及び標的が異なる細胞の表面に提示される細胞間相互作用を直接スクリーニングすることである。例えば、目的のTCRの活性化がレポーター遺伝子の発現をもたらした場合、これを使用して、ペプチド:MHCライブラリー内に提示される活性化ペプチド又は活性化MHC分子を同定することができる。この特定の例では、レポーター細胞は、ライブラリーメンバーをコードしないが、ライブラリーメンバーをコードする細胞を識別するために使用することができる。このアプローチは、「ライブラリー対ライブラリー」のアプローチに潜在的に拡張し得る。例えば、上記の例を拡張して、TCRライブラリーをペプチド:MHCライブラリーに対してスクリーニングすることができる。より広い意味では、ある細胞表面に提示されたバインダーのライブラリーを、別の細胞上の結合パートナーを使用してスクリーニングする例は、他のタイプの細胞間相互作用、例えばNotch又はWnt経路内のシグナル伝達を阻害又は活性化するバインダーの同定に拡張することができる。従って、本発明は、細胞間相互作用に基づく認識系を含む代替の細胞ベースのスクリーニング系に使用することができる。
【0191】
一例として、キメラ抗原受容体(「CARS」)は、抗体結合ドメイン(通常、scFvとしてフォーマットされる)とシグナル伝達ドメインとの間の融合を表す。これらは、抗体認識及び腫瘍特異的抗原への結合により、腫瘍細胞を攻撃するようにインビボでT細胞をリダイレクトすることを目的としてT細胞に導入されている。抗体の特異性、フォーマット、抗体親和性、リンカー長、融合シグナル伝達モジュール、T細胞での発現レベル、T細胞のサブタイプ及びCARと他のシグナル伝達分子との相互作用の組み合わせを含むいくつかの異なる因子がこの戦略の成功に影響を与え得る[102、103]。上記の変数を個別に又は組み合わせて取り込んだ初代T細胞のCARの大きいライブラリーを形成する能力は、効果的で最適なCAR構築についての機能的な検索を可能にするであろう。この機能的な「検索」は、インビトロ又はインビボで行うことができる。例えば、Alonso-Camino(2009)は、CEAを認識するscFvをTCR:CD3複合体の鎖に融合し、この遺伝子構築物をヒトJurkat細胞株に導入した[104]。HeLa細胞又は腫瘍細胞のいずれかに存在するCEAと相互作用すると、これらは、初期T細胞活性化マーカーCD69のアップレギュレーションを示した。このアプローチを使用して、培養細胞又は初代細胞を用いて、適切な活性化又は阻害特性を有するCAR融合構築物を同定することができる。
【0192】
CAR構築物のさらなる機能をインビボで評価することができる。例えば、初代マウスT細胞で構築されたCARのライブラリーを腫瘍担持マウスに導入して、腫瘍との接触によって増殖するように刺激されたT細胞クローンを同定することができる。必要に応じて、このT細胞ライブラリーは、上記の方法を使用して、抗原結合特異性に基づいて予め選択することができる。いずれの場合も、バインダーの新しいライブラリーを使用して、既存のバインダー分子(例えば、MHC又はTCR又は抗体可変ドメイン)を置き換えることができる。
【0193】
表現型のスクリーニング
標的に対するバインダーを同定する好ましい方法では、バインダーは、標的に対するバインダーの作用の結果として、細胞シグナル伝達及び/又は細胞挙動を上手に変更する。より好ましい方法では、バインダーは抗体である。
【0194】
リガンド又は受容体に結合することによって細胞シグナル伝達を変更する抗体は、医薬品開発において実績があり、このような治療用抗体の需要は増大し続けている。このような抗体及び他のクラスの機能性バインダーは、インビボ及びインビトロで細胞挙動を制御する可能性も秘めている。しかしながら、細胞挙動を制御して誘導する能力は、特定のシグナル伝達経路を制御する天然リガンドの利用可能性に依存する。残念ながら、幹細胞の分化を制御するリガンド(例えば、FGF、TGF-β、Wnt、Notchスーパーファミリーのメンバー)などの多くの天然リガンドは、多くの場合、無差別な相互作用を示し、発現/安定性プロファイルが不十分なため、利用可能性が限定されている。抗体は、その特異性から、細胞挙動の制御において大きい可能性を秘めている。
【0195】
細胞シグナル伝達を変更する機能性抗体の同定は、クローンの選別、抗体の発現、配列及び結合特性による特性評価、哺乳動物発現系への変換及び機能性細胞ベースのアッセイへの追加を含め、従来、比較的多くの時間と労力を要していた。本明細書に記載の真核細胞ディスプレイのアプローチは、この労力を減少させるが、抗体の作製及び別のレポーター細胞培養物への添加は依然として必要である。従って、好ましい代替は、産生細胞自体をレポーター細胞として使用することにより、細胞シグナル伝達又は細胞挙動に対する結合の影響について、真核細胞で発現されたバインダーのライブラリーを直接スクリーニングすることであり得る。抗体遺伝子の導入後、レポーター遺伝子発現の変化又は表現型の変化を示す得られた細胞集団内のクローンを同定することができる。
【0196】
いくつかの最近の出版物に、抗体遺伝子のレパートリーをレポーター細胞にクローニングすることによる抗体ライブラリーの構築が記載されている[47、105、106]。これらの系は、1つの細胞内で発現とレポーティングを組み合わせ、典型的には、所定の標的に対して選択された抗体の集団を(例えば、ファージディスプレイを使用して)導入する。
【0197】
抗体遺伝子の集団をレポーター細胞に導入して、本明細書に記載の方法によってライブラリーを作製することができ、表現型における抗体による変化(例えば、遺伝子発現又は生存の変化)を有する集団内のクローンを同定することができる。この表現型誘導選択を機能させるために、発現細胞内に存在する抗体遺伝子(遺伝子型)と抗体発現の結果(表現型)との間の連鎖を維持する必要がある。これは、抗体ディスプレイについて記載したように、抗体を細胞表面に係留する[47]か、又は半固体培地を使用して分泌型抗体を産生細胞の近傍に保持する[105]ことによって既に達成されている。代わりに、抗体及び他のバインダーを細胞内に保持することができる[107]。細胞表面又は周囲の培地中に保持されたバインダーは、細胞表面の内因性又は外因性受容体と相互作用して、受容体の活性化を引き起こし得る。これにより、レポーター遺伝子の発現の変化又は細胞の表現型の変化が引き起こされ得る。代替として、抗体は、受容体又はリガンドをブロックして、受容体の活性化を減少させることができる。次いで、細胞の挙動を変化させるバインダーをコードする遺伝子を、作製又はさらなるエンジニアリングのために回収することができる。
【0198】
この「標的による」アプローチの代替として、特定の標的に対して事前に選択されていない「ナイーブ」抗体集団を導入することが可能である[108]。細胞レポーティング系を使用して、挙動が変化した集団のメンバーを同定する。標的に関する事前の知識がないため、この非標的アプローチでは、標的に対する抗体集団の事前濃縮が不可能であるため、大きい抗体のレパートリーが特に必要とされる。このアプローチは、本発明に記載されるヌクレアーゼによる導入遺伝子組み込みの使用から恩恵を受けることになる。
【0199】
「機能的選択」アプローチを、真核細胞、特に哺乳動物細胞などの高等真核細胞のライブラリーを必要とする他の適用例に使用することができる。抗体は、標的への結合が受容体の活性化を引き起こすようなシグナル伝達ドメインに融合させることができる。Kawaharaらは、フルオレセインを標的とする細胞外scFvがスペーサードメイン(Epo受容体のD2ドメイン)と、トロンボポエチン(Tpo)受容体、エリスロポエチン(Epo)受容体、gp130、IL-2受容体及びEGF受容体を含む様々な細胞内サイトカイン受容体ドメインに融合されたキメラ受容体を構築した[109、110、111]。これらを、IL-3依存性proB細胞株(BaF3)[27]に導入し、キメラ受容体は、IL-3非依存性増殖をもたらす、キメラ受容体の抗原依存性活性化を呈することが示された。これと同じアプローチがモデル実験で使用され、BaF3細胞[110]の抗原媒介化学誘引が実証された。このアプローチは、安定培養細胞を超えて、Tpo応答性造血幹細胞[112]又はIL2依存性初代T細胞の生存及び増殖によって例示される初代細胞まで拡張され、Tpo及びIL-2による正常な刺激は、それぞれscFvキメラ受容体のフルオレセインよる刺激に置き換えられた。従って、キメラ抗体-受容体キメラに基づく系を使用して、初代細胞又は安定レポーター細胞における標的依存性遺伝子発現又は表現型の変化を促進することができる。この能力を使用して、シグナル伝達応答を促進する融合バインダー又はこの応答を阻害するバインダーを同定することができる。
【0200】
上記のアプローチの修正版では、抗リゾチーム抗体からの別々のVH及びVLドメインをEpo細胞内ドメインに融合させた[113]。細胞は、リゾチームの添加に応答して増殖し、抗原誘導二量体化又は別々のVH及びVL融合パートナーの安定化を示した。従って、3つの相互作用する要素が、この系での最適な応答のために一緒になる。
【0201】
本明細書では抗体分子を参照して説明するが、標的に対するバインダー(即ち抗体分子)を同定する上記の方法は、他のタイプのバインダーのライブラリーを用いて適合させ、実施することもできる。
【0202】
タンパク質断片の相補性は、哺乳動物細胞におけるタンパク質間相互作用を研究し、且つそれを選択するための代替の系を表す[114、115]。これは、タンパク質間相互作用によるスプリットレポータータンパク質の機能を回復させることを含む。使用されているレポータータンパク質には、ユビキチン、DNAEインテイン、β-ガラクトシダーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、GFP、ホタルルシフェラーゼ、β-ラクタマーゼ、TEVプロテアーゼが含まれる。例えば、このアプローチの最近の例は、哺乳動物膜ツーハイブリッド(MaMTH)アプローチであり、ベイトタンパク質:スプリットユビキチン:パートナータンパク質と融合した転写因子:スプリットユビキチンの会合により、ユビキチン認識が回復し、転写因子が遊離してレポーター遺伝子発現が起こる[116]。この場合も同様に、この相互作用を妨害又は増強するバインダーは、摂動シグナル伝達によって同定することができる。
【0203】
バインダー及びコードDNAの回収及び再フォーマット
バインダーが、標的に対するバインダーを同定する方法によって同定された後、一般的な次のステップでは、バインダーをコードするDNAを単離(例えば、同定又は増幅)する。任意選択により、例えばバインダーを再構成し、且つ/又はコード配列を異なるベクターに挿入するために、バインダーをコードする核酸を修飾することが望ましいであろう。従って、標的に対するバインダーを同定する好ましい方法は、標的を認識するバインダーをコードするDNAを単離することを含む。より好ましい方法を以下に記載する。
【0204】
バインダーが抗体分子である場合、標的に対するバインダーを同定する好ましい方法は、抗体分子をコードするDNAをクローンの細胞から単離するステップ、少なくとも1つの抗体可変領域、好ましくはVH及びVLドメインの両方をコードするDNAを増幅するステップ及びDNAをベクターに挿入して抗体分子をコードするベクターを提供するステップを含む。定常ドメインを有する多量体抗体分子は、可溶性分泌型で発現するために一本鎖抗体分子に変換することができる。
【0205】
抗体は、様々なフォーマットで提示され得るが、抗体がどんなフォーマットで選択されても、抗体遺伝子が単離されると、いくつかの異なるフォーマットで再構成することが可能である。VH又はVLドメインが単離されると、必要なパートナードメインを含む発現ベクターに再クローニングすることができる。
【0206】
標的に対するバインダーを同定するより好ましい方法は、一対のサブユニット(例えば、scFv分子)からなるバインダーを、サブユニットの元の対が維持される異なる分子バインダーフォーマット(例えば、Ig又はFab)に再フォーマットすることを含む再フォーマットステップを含む。このような方法は、本明細書の他の箇所でより詳細に記載され、モノクローナルクローン、オリゴクローナルクローン又はポリクローナルクローンの再フォーマットに使用することができる。この方法を使用して、ファージ、酵母又はリボソームディスプレイを含む一般的に使用される任意のディスプレイ技術から、出力集団全体を「まとめて」変換することができる。
【0207】
本発明の追加の実施形態は、記載の一部を構成する以下の番号付きの項に記載される。
1.真核細胞のゲノムの遺伝子座を同定する方法であって、前記遺伝子座は、バインダー配列の挿入の候補であり、前記方法は、
a.ランディングパッド配列を提供するステップ;
b.ランディングパッド配列を真核細胞に導入するステップ;
c.トランスポゾンを介した組み込みにより、真核細胞のゲノムにランディングパッド配列をランダムに組み込むステップ;
d.クローンであって、そのゲノムに組み込まれたランディングパッド配列を有するクローンを選択するステップ
を含む、方法。
2.e.単一コピーの組み込みについてスクリーニングするさらなるステップ;
f.遺伝子座を同定するさらなるステップ
をさらに含む、第1項に記載の方法。
3.g.バインダーをコードする1つ又は複数の導入遺伝子を含むドナーDNA配列をランディングパッド配列に組み込む追加のステップ;
h.ドナーDNAの組み込みについてスクリーニングする追加のステップ
をさらに含む、第2項に記載の方法。
4.ランディングパッド配列は、部位特異的ヌクレアーゼの認識配列を含む、第1項~第3項のいずれか一項に記載の方法。
5.ヌクレアーゼ認識配列は、メガヌクレアーゼ認識配列、ジンクフィンガーヌクレアーゼ認識配列、TALEヌクレアーゼ認識配列又は核酸ガイド付きヌクレアーゼ認識配列、より好ましくはメガヌクレアーゼ認識配列である、第4項に記載の方法。
6.ヌクレアーゼ認識配列は、I-SceIメガヌクレアーゼ認識配列である、第5項に記載の方法。
7.ドナーDNAを細胞内に組み込むステップgは、細胞内に部位特異的ヌクレアーゼを提供することを含み、ヌクレアーゼは、ランディングパッドに含まれる認識配列を切断する、第4項~第6項のいずれか一項に記載の方法。
8.ドナーDNAの組み込みについてスクリーニングするステップhは、ドナーDNAによってコードされる1つ又は複数のバインダーのディスプレイについてスクリーニングすることを含む、第3項~第7項のいずれか一項に記載の方法。
9.ドナーDNAは、組み込み効率を高めるために相同性アームをさらに含む、第3項~第8項のいずれか一項に記載の方法。
10.ランディングパッド配列及び/又はドナーDNA配列は、選択可能なマーカーを含む、第1項~第9項のいずれか一項に記載の方法。
11.バインダーの多様なレパートリーをコードするDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーを構築するための、第1項~第10項のいずれか一項に記載の方法で同定された遺伝子座の使用。
12.少なくとも10個、10個、10個、10個、10個、10個又は10個の異なるバインダーの多様なレパートリーを発現する真核細胞クローンのインビトロライブラリーであって、各細胞は、組換えDNAを含み、バインダー又はバインダーのサブユニットをコードするドナーDNAは、細胞DNAの固定遺伝子座に組み込まれ、遺伝子座は、第1項~第10項のいずれか一項に記載の方法によって同定される、真核細胞クローンのインビトロライブラリー。
13.バインダー又はバインダーのサブユニットをコードするドナーDNAは、細胞DNAの少なくとも第1及び/又は第2の固定遺伝子座に組み込まれ、前記1つ又は複数の固定遺伝子座は、項1~10のいずれか一項に記載の方法によって同定される、第12項に記載の真核細胞クローンのインビトロライブラリー
14.1つ又は複数の遺伝子座は、NLN遺伝子、TNIK遺伝子、PARP11遺伝子、RAB40B遺伝子、ABI2遺伝子、RNF19B遺伝子、PKIA遺伝子又はFTCD遺伝子から選択される遺伝子内にある、第12項又は第13項に記載の真核細胞クローンのインビトロライブラリー。
15.1つ又は複数の遺伝子座は、NLN遺伝子、TNIK遺伝子又はRAB40B遺伝子内、好ましくはNLN遺伝子内にある、第12項~第14項のいずれか一項に記載の真核細胞クローンのインビトロライブラリー。
16.1つ又は複数の遺伝子座は、遺伝子のイントロン内にある、第12項~第15項のいずれか一項に記載の真核細胞クローンのインビトロライブラリー。
17.1つ又は複数の遺伝子座は、イントロンのオープンクロマチン領域内にある、第12項~第16項のいずれか一項に記載の真核細胞クローンのインビトロライブラリー。
18.1つ又は複数の遺伝子座は、イントロンのエンハンサー領域内にある、第12項~第17項のいずれか一項に記載の真核細胞クローンのインビトロライブラリー。
19.1つ又は複数の遺伝子座は、NLN遺伝子のNLN-207のイントロン1、2又は6内にある、第12項~第18項のいずれか一項に記載の真核細胞クローンのインビトロライブラリー。
20.第12項~第19項のいずれか一項に記載のライブラリーから同定されたバインダー。
21.バインダーの多様なレパートリーをコードするDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーを作製する方法であって、
バインダーをコードするドナーDNA分子及び真核細胞を提供するステップ;
ドナーDNAを細胞内に導入し、且つ細胞内に部位特異的ヌクレアーゼを提供するステップであって、ヌクレアーゼは、細胞DNAの認識配列を切断し、認識配列は、ドナーDNAが細胞DNAに組み込まれることになる組み込み部位を作成するために、NLN遺伝子、TNIK遺伝子、PARP11遺伝子、RAB40B遺伝子、ABI2遺伝子、RNF19B遺伝子、PKIA遺伝子又はFTCD遺伝子内にあり、組み込みは、細胞に内在するDNA修復機構を通して起こり、それにより細胞DNAに組み込まれたドナーDNAを含む組換え細胞を作成する、ステップ;及び
組換え細胞を培養してクローンを作製し、それによりバインダーのレパートリーをコードするドナーDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーを提供するステップ
を含む方法。
22.認識配列は、NLN遺伝子、TNIK遺伝子又はRAB40B遺伝子内にある、第21項に記載の方法。
23.認識配列は、NLN遺伝子内にある、第21項又は第22項に記載の方法。
24.認識配列は、遺伝子のイントロン内にある、第21項~第23項のいずれか一項に記載の方法。
25.認識配列は、イントロンのオープンクロマチン領域内にある、第24項に記載の方法。
26.認識配列は、イントロンのエンハンサー領域内にある、第24項又は第25項に記載の方法。
27.認識配列は、NLN遺伝子のNLN-207のイントロン1、2又は6内にある、第24項~第26項のいずれか一項に記載の方法。
28.バインダーは、抗体分子である、第21項~第27項のいずれか一項に記載の方法。
29.抗体分子は、完全長免疫グロブリン、IgG、Fab、scFv-Fc又はscFvである、第28項に記載の方法。
30.バインダーは、多量体であり、少なくとも第1及び第2のサブユニットを含む、第21項~第29項のいずれか一項に記載の方法。
31.多量体バインダーの多様なレパートリーをコードするDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーを作製する方法であって、各バインダーは、第1及び第2のサブユニットを含み、この方法は、
第1のサブユニットをコードするDNAを含む真核細胞を提供し、且つ第2のバインダーサブユニットをコードするドナーDNA分子を提供するステップ、
ドナーDNAを細胞内に導入し、且つ細胞内に部位特異的ヌクレアーゼを提供するステップであって、ヌクレアーゼは、第12項~第18項のいずれか一項で定義された細胞DNAの認識配列を切断して、ドナーDNAが細胞DNAに組み込まれることになる組み込み部位を作成し、組み込みは、細胞に内在するDNA修復機構を通して起こり、それにより細胞DNAに組み込まれたドナーDNAを含む組換え細胞を作成する、ステップ、及び
組換え細胞を培養して、多量体バインダーの第1及び第2のサブユニットをコードするDNAを含むクローンを作製するステップ
を含む、方法。
32.多量体バインダーの多様なレパートリーをコードするDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーを作製する方法であって、各バインダーは、少なくとも第1及び第2のサブユニットを含み、この方法は、
第1のサブユニットをコードする第1のドナーDNA分子を提供し、且つ真核細胞を提供するステップ、
第1のドナーDNAを細胞内に導入し、且つ細胞内に部位特異的ヌクレアーゼを提供するステップであって、ヌクレアーゼは、第12項~第18項のいずれか一項で定義された細胞DNAの認識配列を切断して、ドナーDNAが細胞DNAに組み込まれることになる組み込み部位を作成し、組み込みは、細胞に内在するDNA修復機構を通して起こり、それにより細胞DNAに組み込まれた第1のドナーDNAを含む組換え細胞の第1のセットを作成する、ステップ、
組換え細胞の第1のセットを培養して、第1サブユニットをコードするDNAを含むクローンの第1のセットを作製するステップ、
第2のサブユニットをコードする第2のドナーDNA分子をクローンの第1のセットの細胞に導入するステップであって、第2のドナーDNAは、クローンの第1のセットの細胞DNAに組み込まれ、それにより細胞DNAに組み込まれた第1及び第2のドナーDNAを含む組換え細胞の第2のセットを作成する、ステップ、及び
組換え細胞の第2のセットを培養して、クローンの第2のセットを作製するステップであって、クローンは、多量体バインダーの第1及び第2のサブユニットをコードするDNAを含み、それにより多量体バインダーのレパートリーをコードするドナーDNAを含む真核細胞クローンのライブラリーを提供する、ステップ
を含む、方法。
33.第2のドナーDNA分子は、細胞内に部位特異的ヌクレアーゼを提供するステップを含む方法によって組み込まれ、ヌクレアーゼは、細胞DNAの認識配列を切断して、ドナーDNAが細胞DNAに組み込まれることになる組み込み部位を作成し、組み込みは、細胞に内在するDNA修復機構を通して起こる、第32項に記載の方法。
34.バインダーのレパートリーは、共通の構造を共有する複数のポリペプチドであり、これらのポリペプチドは、1つ又は複数のアミノ酸配列多様性の領域を有する、第21項~第33項のいずれか一項に記載の方法。
35.バインダーのレパートリーは、1つ又は複数の相補性決定領域の異なる抗体分子のレパートリーである、第21項~第34項のいずれか一項に記載の方法。
36.多量体バインダーは、重鎖可変(VH)ドメイン及び軽鎖可変(VL)ドメインを別個のサブユニットとして含む抗体分子である、第29項~第35項のいずれか一項に記載の方法。
37.多量体バインダーは、全免疫グロブリンである、第36項に記載の方法。
38.多量体バインダーは、IgGである、第36項に記載の方法。
39.多量体バインダーは、Fabである、第36項に記載の方法。
40.第1のサブユニットは、VHドメインを含み、第2のサブユニットは、VLドメインを含む、第36項~第39項のいずれか一項に記載の方法。
41.第1のサブユニットは、VLドメインを含み、第2のサブユニットは、VHドメインを含む、第36項~第39項のいずれか一項に記載の方法。
42.抗体分子は、1つ又は複数の追加のサブユニットをさらに含み、これらのサブユニットは、第1又は第2のサブユニットと同じドナーDNAに導入され得るか、又は細胞DNA内の別々の部位に組み込まれ得る、第36項~第41項のいずれか一項に記載の方法。
43.細胞は、2×10個を超える塩基対のゲノムサイズを有する高等真核細胞である、第21項~第42項のいずれか一項に記載の方法。
44.細胞は、哺乳動物細胞、トリ細胞、昆虫又は植物細胞である、第21項~第43項のいずれか一項に記載の方法。
45.細胞は、哺乳動物であり、好ましくは、細胞は、ヒト細胞である、第44項に記載の方法。
46.細胞は、HEK293細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、Tリンパ球系細胞若しくはBリンパ球系細胞又は「Cancer Cell Line Encyclopedia」若しくは「COSMIC catalogue of somatic mutations in cancer」に記載されている細胞株のいずれかの1つである、第45項に記載の方法。
47.細胞は、初代T細胞又はT細胞株である、第46項に記載の方法。
48.細胞は、初代B細胞、B細胞株、プレB細胞株又はプロB細胞株である、第46項に記載の方法。
49.細胞は、マウスプレB細胞株1624-5、IL-3依存性プロB細胞株Ba/F3又はニワトリDT40 B細胞である、第48項に記載の方法。
50.部位特異的ヌクレアーゼの認識配列は、細胞DNAで1回又は2回のみ発生する、第21項~第49項のいずれか一項に記載の方法。
51.部位特異的ヌクレアーゼは、細胞DNAを切断して、組み込み部位として機能する二本鎖切断を作成する、第21項~第50項のいずれか一項に記載の方法。
52.ヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼである、第21項~第51項のいずれか一項に記載の方法。
53.ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)である、第21項~第51項のいずれか一項に記載の方法。
54.ヌクレアーゼは、TALEヌクレアーゼである、第21項~第51項のいずれか一項に記載の方法。
55.ヌクレアーゼは、核酸ガイドヌクレアーゼである、第21項~第51項のいずれか一項に記載の方法。
56.DNA切断は、CRISPR/Cas系によって誘導される、第55項に記載の方法。
57.ドナーDNAは、相同組換えによって細胞DNAに組み込まれる、第21項~第56項のいずれか一項に記載の方法。
58.ドナーDNAは、非相同末端結合又はマイクロホモロジーによる末端結合によってゲノムDNAに組み込まれる、第21項~第56項のいずれか一項に記載の方法。
59.ドナーDNAは、ドナーDNAが組み込まれる細胞の選択のための遺伝要素を含む、第21項~第58項のいずれか一項に記載の方法。
60.ドナーDNAの細胞DNAへの組み込みは、バインダーの発現及び/又は遺伝子選択要素の発現を、細胞DNA内に存在するプロモーターの制御下に置く、第21項~第59項のいずれか一項に記載の方法。
61.ドナーDNAは、プロモーターに機能的に連結されたバインダーをコードする配列を含む、第21項~第58項のいずれか一項に記載の方法。
62.ライブラリーは、少なくとも100個、10個、10個、10個又は10個のクローンを含み、各クローンは、ドナーDNAの組み込みによって作製された個々の組換え細胞に由来する、第21項~第61項のいずれか一項に記載の方法。
63.ライブラリーは、少なくとも100個、10個、10個、10個又は10個の異なるバインダーをコードする、第21項~第62項のいずれか一項に記載の方法。
64.各クローンは、バインダーのレパートリーの1つ又は2つのメンバーのみをコードする組み込まれたドナーDNAを含む、第21項~第63項のいずれか一項に記載の方法。
65.真核細胞は、二倍体であり、且つ細胞DNAの二重固定遺伝子座における部位特異的ヌクレアーゼの認識配列を含む、第21項~第64項のいずれか一項に記載の方法。
66.各クローンは、バインダーのレパートリーの単一のメンバーをコードする組み込まれたドナーDNAを含む、第21項~第63項のいずれか一項に記載の方法。
67.ドナーDNA分子は、それぞれ単一のバインダー又はバインダーサブユニットをコードする、第21項~第66項のいずれか一項に記載の方法。
68.バインダーは、細胞表面にディスプレイされる、第21項~第67項のいずれか一項に記載の方法。
69.バインダーは、細胞から分泌される、第21項~第68項のいずれか一項に記載の方法。
70.ライブラリーを培養してバインダーを発現させるステップ、
目的のバインダーを発現する1つ又は複数のクローンを回収するステップ、及び
1つ又は複数の回収したクローンから誘導体ライブラリーを生成するステップであって、誘導体ライブラリーは、バインダーの第2のレパートリーをコードするDNAを含む、ステップ
をさらに含む、第21項~第69項のいずれか一項に記載の方法。
71.誘導体ライブラリーを生成するステップは、1つ又は複数の回収したクローンからドナーDNAを単離することと、DNAに変異を導入して、バインダーの第2のレパートリーをコードするドナーDNA分子の誘導体集団を提供することと、ドナーDNA分子の誘導体集団を細胞に導入して、バインダーの第2のレパートリーをコードするDNAを含む細胞の誘導体ライブラリーを形成することとを含む、第70項に記載の方法。
72.誘導体ライブラリーを生成するステップは、クローン内にDNAの変異を誘導することにより、1つ又は複数の回収したクローンのドナーDNAに変異を導入することを含む、第70項に記載の方法。
73.第21項~第72項のいずれか一項に記載の方法によってライブラリーを作製するステップと、ライブラリー細胞を培養してバインダーを発現させるステップとを含む、バインダーの多様なレパートリーを作製する方法。
74.第21項~第72項のいずれか一項に記載の方法によって作製されたライブラリー。
75.所望の表現型の細胞についてスクリーニングする方法であって、表現型は、細胞によるバインダーの発現から生じ、この方法は、
第21項~第72項のいずれか一項に記載のライブラリーを作製する方法によってライブラリーを提供するか、又は第11項に記載の使用によってライブラリーを提供するか、又は第12項~第19項若しくは第74項のいずれか一項に記載のライブラリーを提供するステップ、
ライブラリー細胞を培養してバインダーを発現させるステップ、及び
所望の表現型が示されているかどうかを検出するステップ
を含む、方法。
76.表現型は、バインダーを発現する細胞におけるレポーター遺伝子の発現である、第75項に記載の方法。
77.所望の表現型を作製するバインダーを発現するクローンの細胞を回収するステップをさらに含む、第75項又は第76項に記載の方法。
78.回収したクローンからバインダーをコードするDNAを単離し、それにより所望の表現型を作製するバインダーをコードするDNAを得るステップをさらに含む、第77項に記載の方法。
79.目的の標的に対するバインダーを同定するスクリーニング方法であって、
第21項~第72項のいずれか一項に記載のライブラリーを作製する方法によってライブラリーを提供するか、又は第11項に記載の使用によってライブラリーを提供するか、又は第12項~第19項若しくは第74項のいずれか一項に記載のライブラリーを提供するステップ、
ライブラリーの細胞を培養してバインダーを発現させるステップ、
バインダーを標的に曝露し、1つ又は複数の同種バインダーが存在する場合、それによる標的の認識を可能にするステップ、及び
標的が同種バインダーによって認識されるかどうかを検出するステップ
を含む方法。
80.標的は、可溶性の形態で提供される、第75項又は第79項に記載の方法。
81.標的は、標的細胞の集団の表面にディスプレイされ、バインダーは、ライブラリー細胞の表面にディスプレイされ、この方法は、ライブラリー細胞を標的細胞に接触させることによってバインダーを標的に曝露するステップを含む、第75項又は第79項に記載の方法。
82.バインダーは、抗体分子であり、及び標的は、抗原である、第75項~第81項のいずれか一項に記載の方法。
83.バインダーは、TCRであり、及び標的は、MHC:ペプチド複合体である、第75項~第81項のいずれか一項に記載の方法。
84.同種バインダーによる標的認識を検出するステップと、同種バインダーをコードするDNAを含むクローンの細胞を回収するステップとをさらに含む、第79項~第83項のいずれか一項に記載の方法。
85.バインダーをコードするDNAを回収したクローンから単離し、それにより標的を認識するバインダーをコードするDNAを得るステップをさらに含む、第84項に記載の方法。
86.変異を導入するか、又はDNAを変換して、再構成バインダーをコードする改変DNAにするステップを含む、第78項又は第85項に記載の方法。
87.バインダーは、scFvであり、この方法は、元の可変VH及びVL鎖の対を維持しながら、scFvをコードするDNAをIg又はその断片をコードするDNAに変換するステップを含む、第86項に記載の方法。
88.DNAを宿主細胞に導入するステップをさらに含む、第78項、第85項、第86項又は第87項に記載の方法。
【0208】
一般情報
特段の記載がない限り、本明細書で使用されるすべての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって慣習的且つ通常理解されるのと同じ意味を有し、本開示を考慮して読まれる。
【0209】
配列同一性
所与の配列識別番号(配列番号)によって本明細書で同定される各核酸分子、又はタンパク質断片、又はポリペプチド、又はペプチド、又は誘導ペプチド、又は構築物は、開示されるこの特定の配列に限定されないことを理解されたい。本明細書で同定される各コード配列は、所与のタンパク質断片、若しくはポリペプチド、若しくはペプチド、若しくは誘導ペプチド、若しくは構築物をコードするか、又はそれ自体、タンパク質断片、若しくはポリペプチド、若しくは構築物、若しくはペプチド、若しくは誘導ペプチドである。
【0210】
本出願全体を通して、所与のタンパク質断片、又はポリペプチド、又はペプチド、又は誘導ペプチドをコードする特定のヌクレオチド配列の配列番号(配列番号Xを例にとる)に言及するたびに、それを以下に置き換えることができる:
i.配列番号Xと少なくとも60%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列;
ii.その配列が、遺伝子コードの縮重により、(i)の核酸分子の配列と異なるヌクレオチド配列;又は
iii.ヌクレオチド配列の配列番号Xによってコードされるアミノ酸配列と少なくとも60%のアミノ酸同一性又は類似性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列。
【0211】
配列同一性又は類似性の別の好ましいレベルは70%である。配列同一性又は類似性の別の好ましいレベルは80%である。配列同一性又は類似性の別の好ましいレベルは90%である。配列同一性又は類似性の別の好ましいレベルは95%である。配列同一性又は類似性の別の好ましいレベルは99%である。
【0212】
本出願全体を通して、特定のアミノ酸配列の配列番号(配列番号Yを例にとる)に言及するたびに、それを、アミノ酸配列の配列番号Yと少なくとも60%の配列同一性又は類似性を有する配列を含むアミノ酸配列で表されるポリペプチドに置き換えることができる。配列同一性又は類似性の別の好ましいレベルは70%である。配列同一性又は類似性の別の好ましいレベルは80%である。配列同一性又は類似性の別の好ましいレベルは90%である。配列同一性又は類似性の別の好ましいレベルは95%である。配列同一性又は類似性の別の好ましいレベルは99%である。
【0213】
所与のヌクレオチド配列又はアミノ酸配列とのその同一性又は類似性のパーセンテージによって本明細書に記載される各ヌクレオチド配列又はアミノ酸配列のそれぞれは、さらに好ましい実施形態では、所与のヌクレオチド配列又はアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性又は類似性を有する。
【0214】
各非コード(即ちプロモーター又は別の調節領域の)ヌクレオチド配列は、特定のヌクレオチド配列の配列番号(配列番号Aを例にとる)と少なくとも60%の配列同一性又は類似性を有するヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列によって置き換えることができる。好ましいヌクレオチド配列は、配列番号Aと、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有する。好ましい実施形態では、プロモーターなどのこのような非コードヌクレオチド配列は、少なくとも、当業者に公知であるプロモーターの活性などのこのような非コードヌクレオチド配列の活性を示すか又は発揮する。
【0215】
「相同性」及び「配列同一性」などの用語は、本明細書では互換的に使用される。配列同一性は、配列を比較することによって決定される、2つ以上のアミノ酸(ポリペプチド又はタンパク質)配列間又は2つ以上の核酸(ポリヌクレオチド)配列間の関係として本明細書に記載される。好ましい実施形態では、配列同一性は、2つの所与の配列番号の全長又はその一部に基づいて計算される。その一部は、好ましくは、両方の配列番号の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%又は100%を意味する。当技術分野では、「同一性」は、場合により、このような配列の文字列間の一致によって決定されるアミノ酸配列間又は核酸配列間の配列関連性の程度も指す。2つのアミノ酸配列間の「類似性」は、1つのポリペプチドのアミノ酸配列及びその保存されたアミノ酸置換を第2のポリペプチドの配列と比較することによって決定される。「同一性」及び「類似性」は、限定されないが、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、Bioinformatics and the Cell:Modern Computational Approaches in Genomics,Proteomics and transcriptomics,Xia X.,Springer International Publishing,New York,2018;及びBioinformatics:Sequence and Genome Analysis,Mount D.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,2004に記載されるものを含む、公知の方法によって容易に計算することができる。
【0216】
「配列同一性」及び「配列類似性」は、2つの配列の長さに応じてグローバル又はローカルアラインメントアルゴリズムを使用して、2つのペプチド配列又は2つのヌクレオチド配列のアラインメントによって決定することができる。類似した長さの配列は、配列を全長にわたって最適に整列させるグローバルアラインメントアルゴリズム(例えば、Needleman-Wunsch)を使用して整列させることが好ましい一方、実質的に異なる長さの配列は、ローカルアラインメントアルゴリズム(例えば、Smith-Waterman)を使用して整列させることが好ましい。その結果、配列が、(例えば、デフォルトパラメータを使用するプログラムEMBOSS needle又はEMBOSS waterによって最適に整列された場合に)少なくとも特定の最小パーセンテージ(以下に記載)の配列同一性を共有している場合、これらの配列を、「実質的に同一である」又は「本質的に類似している」と呼ぶことができる。
【0217】
2つの配列が同様の長さを有する場合、グローバルアラインメントを適切に使用して配列同一性が決定される。配列の全長が実質的に異なる場合、Smith-Watermanアルゴリズムを使用するアラインメントなどのローカルアラインメントが好ましい。EMBOSS needleは、Needleman-Wunschグローバルアラインメントアルゴリズムを使用して、2つの配列を全長(完全長)にわたって整列させ、一致の数を最大限にし、ギャップの数を最小限にする。EMBOSS waterは、Smith-Watermanローカルアラインメントアルゴリズムを使用する。一般的には、EMBOSS needle及びEMBOSS waterのデフォルトパラメータには、ギャップオープンペナルティー=10(ヌクレオチド配列)/10(タンパク質)及びギャップ伸長ペナルティー=0.5(ヌクレオチド配列)/0.5(タンパク質)が使用される。ヌクレオチド配列の場合、使用されるデフォルトのスコアリングマトリックスはDNAfullであり、タンパク質の場合、デフォルトのスコアリングマトリックスはBlosum62である(参照により本明細書に組み込まれる、Henikoff&Henikoff,1992,PNAS 89,915-919)。
【0218】
代わりに、パーセンテージ類似性又は同一性は、例えば、FASTA、BLASTなどのアルゴリズムを使用して公開データベースで検索することによって決定することもできる。従って、本発明のいくつかの実施形態の核酸配列及びタンパク質配列は、例えば、他のファミリーメンバー又は関連配列を同定するために、公開データベースで検索を実施するための「問い合わせ配列」としてさらに使用することができる。このような検索は、参照により本明細書に組み込まれる、Altschul,et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-10のBLASTn及びBLASTxプログラム(バージョン2.0)を使用して実行することができる。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラムを使用して、score=100、wordlength=12で実施して、本発明の酸化還元酵素核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索は、BLASTxプログラムを使用して、score=50、wordlength=3で実施して、本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的でギャップのあるアラインメントを得るために、参照により本明細書に組み込まれる、Altschul et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402に記載されているように、Gapped BLASTを利用することができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、BLASTx及びBLASTn)のデフォルトパラメータを使用することができる。ワールドワイドウェブwww.ncbi.nlm.nih.gov/でアクセス可能な米国立生物工学情報センターのホームページを参照されたい。
【0219】
本明細書及びその特許請求の範囲では、「含む」という動詞及びその活用形は、その非限定的な意味で使用され、その語に続く項目が含まれ、具体的に言及されていない項目も除外されないことを意味する。加えて、「からなる」という動詞は、「から本質的になる」に置き換えられ得、本明細書に記載される組成物が、具体的に特定したものとは別の追加の成分を含み得、前記追加の成分は、本発明の固有の特性を変化させないことを意味する。加えて、「からなる」という動詞は、「から本質的になる」に置き換えられ得、これは、本明細書に記載される方法が、具体的に特定したものとは別の追加のステップを含み得、前記追加のステップが本発明の固有の特性を変化させないことを意味する。
【0220】
不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」による要素への言及は、文脈上、要素が1つのみであることが明確に求められない限り、2つ以上の要素が存在する可能性を排除するものではない。従って、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、通常、「少なくとも1つ」を意味する。
【0221】
本明細書で使用される場合、「少なくとも」特定の値は、特定の値以上を意味する。例えば、「少なくとも2つ」は、「2つ以上」、即ち2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、...などと同じであると解釈される。
【0222】
さらに、本明細書及び特許請求の範囲における第1、第2及び第3などの用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも順番又は時系列を説明するものではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書に記載又は例示される以外の順序で機能可能であることを理解されたい。
【0223】
「約」又は「およそ」という語は、数値(例えば、約10)に関連して使用される場合、好ましくはその値がその値(10)の±1%の所与の値であり得ることを意味する。
【0224】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、記載例の1つ又は複数が、単独で又は記載例の少なくとも1つ、最大で記載例のすべてと一緒に存在し得ることを示す。
【0225】
様々な実施形態が本明細書に記載される。本明細書で明らかにされる各実施形態は、特段の記載がない限り、組み合わせて1つにされ得る。
【0226】
本明細書で引用されるすべての特許出願、特許及び刊行物は、すべての定義、主題の放棄又は否認を除いて、且つ組み込まれた材料が本明細書の明示的な開示と矛盾する範囲を除いて(その場合には本開示の言語が優先される)、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0227】
当業者は、本発明の実施で使用することができる、本明細書に記載のものと類似の又は均等な多くの方法及び材料を認識するであろう。実際に、本発明は、記載の方法及び材料に決して限定されない。
【0228】
本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない以下の実施例によって本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0229】
図1】トランスポゾン(TR)隣接I-sceIランディングパッドカセットを含むpInt105ベクターの概略図。ランディングパッドは、短い第1のエクソン(E×1)のプロモーター(mPGK)駆動発現、それに続くI-SceIメガヌクレアーゼ認識配列を含むイントロン配列を含む。注釈:TR - PiggyBacトランスポゾンの逆末端反復;mPGK - マウスホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター;Ex1 - マウスホスホグリセリン酸キナーゼのエクソン1;LHA - 左相同性アーム;I-SceI - メガヌクレアーゼ切断部位;RHA - 右相同性アーム;Ubi - ユビキチンプロモーター;Puro - ピューロマイシン遺伝子;LoxP - クロスオーバー遺伝子座(LoxP及びLox2272は、CREリコンビナーゼ部位である)。
図2A-2B】ブラストサイジン選択なしでのトランスフェクションの6日後のFc発現を示すドットプロット。AAVS TALENヌクレアーゼの存在下又は非存在下、pINT17-ボコシズマブ及びpINT17-5A10iでトランスフェクトしたHEK293F細胞を図2Aに示す。NLN CRISPRの存在下又は非存在下、pINT74-ボコシズマブ及びpINT74-5A10iでトランスフェクトしたHEK293F細胞を図2Bに示す。
図3A-3B】AAVS TALENヌクレアーゼの存在下、pINT17-ボコシズマブ及び5A10iでトランスフェクトした細胞及びNLN CRISPRの存在下、pINT74-ボコシズマブ及びpINT74-5A10iでトランスフェクトした細胞におけるトランスフェクションの15日後(BSD耐性集団)(図3A)及びトランスフェクションの28日後(図3B)のFc発現を示すヒストグラムオーバーレイプロット。矢印は、AAVS組み込みのヒストグラムプロットを示す。
図4A-4B】NLN CHO-K1遺伝子の構造を図4Aに示し、エクソンを番号付きのボックスで示す。図4Bは、NLN CHOイントロン1の最初の68kbのGC含量を示す。
図5A-5B】図5Aは、NLN CHOイントロン1におけるヌクレアーゼ切断位置を示す。図5Bは、CHO NLNイントロン1の組み込みのためのTALENヌクレアーゼ右アームDNAインサートを示す。
図6】抗ヒトFc抗体で染色することによるフローサイトメトリーベースの分析を使用して測定した、トランスフェクションの2日後の抗体発現プロファイル。左:AAVS遺伝子座に組み込まれた884_01_G01;中央:NLNイントロン1に組み込まれた5A10i;右:NLNイントロン1に組み込まれたボコシズマブ。PcDNAは、ヌクレアーゼなしでのトランスフェクションの略語である。
図7A-7B】抗ヒトFc抗体で染色することによるフローサイトメトリーベースの分析を使用して測定した、BSDに耐性のある細胞におけるトランスフェクションの8日後(図7A)及びトランスフェクションの14日後(図7B)の抗体発現プロファイル。左:AAVS遺伝子座に組み込まれた884_01_G01;中央:NLNイントロン1に組み込まれた5A10i;右:NLNイントロン1に組み込まれたボコシズマブ。示されているパーセンテージは、抗ヒトFc抗体染色細胞集団を示し、示されている数値は、細胞数を示す。PcDNAは、ヌクレアーゼなしでのトランスフェクションの略語である。
図8】抗ヒトFc抗体で染色することによるフローサイトメトリーベースの分析を使用して測定した、BSDに耐性のある細胞におけるトランスフェクションの1日後(左)、トランスフェクションの7日後(中央)及びトランスフェクションの14日後(右)の抗体発現プロファイル。5A10i及びボコシズマブをNLNイントロン1に組み込んだ(pINT58-5A10i及びpINT58-ボコシズマブ)。PcDNAは、ヌクレアーゼなしでのトランスフェクションの略語である。
図9】ブラストサイジン選択なしでのトランスフェクションの7日後(左)及び14日後(中央)に抗ヒトFc抗体で染色することによるフローサイトメトリーベースの分析を使用して測定した組み込み効率(%)。5A10i及びボコシズマブをNLNイントロン1に組み込んだ(pINT58-5A10i及びpINT58-ボコシズマブ)。右図は、ヌクレアーゼを使用しない場合の組み込み効率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0230】
【表1】
【0231】
【表2】
【0232】
【表3】
【実施例
【0233】
実施例1:トランスポゾン媒介組み込みを介してI-SceIメガヌクレアーゼ認識部位が組み込まれたHek293細胞株の生成
1×10個のHek293細胞を、OC100キュベットを用いて、製造者のプロトコルに従ってMaxCyte(MD、USA)エレクトロポレーションを使用して、I-SceIメガヌクレアーゼの認識配列とユビキチンプロモーターによって駆動されるピューロマイシン耐性遺伝子(図1;配列番号59)を含むランディングパッドに隣接するPiggybac(PB)トランスポゾン末端反復(TR)を含むpINT105ベクター、PCDNA 3.0ベクター及びPBaseベクター(mPBトランスポザーゼをコードする)で同時トランスフェクトした。pcDNA 3.0ベクターは、トランスフェクション中のDNA濃度を標準化するためのキャリアとして使用される空ベクターである。PBaseベクターを用いない対照のトランスフェクションも行った。使用したDNAの量を表1に示す。24時間後、トランスフェクトした細胞を、10%DMEM寒天プレートに播種した。プレーティングの24時間後、2μg/mlのピューロマイシンを細胞に添加した。ピューロマイシン選択の2週間後、48個のコロニーを採取して増殖させた。細胞ペレットを、ゲノムDNA抽出のために凍結した。1クローンにつき10個の細胞のバイアル1本を凍結し、液体窒素中で保存した。
【0234】
【表4】
【0235】
Potter and Luo(2010)PLoS ONE 5(4):e1016に記載されているように、20個のクローンを、スプリンケレットPCRを使用してランディングパッド組み込みのゲノム位置にマッピングした。1クローンにつき1μgのゲノムDNAをSau3aで消化した。次いで、スプリンケレットPCRを以下のように行った。
【0236】
ステップ1:スプリンケレットオリゴヌクレオチドをアニーリングするための反応条件
成分の量
SPLNK-BOT(150ng/μl)50μl
SPLNK-GATC-TOP(150ng/μl)50μl
10×NEB緩衝液2 100μl
O 800μl
合計1000μl
95℃で3分間加熱する。ベンチで室温まで放冷する(約30分間)。200μlのアリコートを-20℃で保存した。
【0237】
ステップ2:消化されたゲノムDNAをアニールされたスプリンケレットオリゴヌクレオチドにライゲーションするためのスプリンケレットオリゴヌクレオチドへのライゲーション条件
成分の量
消化されたゲノムDNA 35μl
O 2.5μl
10×NEB リガーゼ緩衝液5μl
アニールされたスプリンケレットオリゴヌクレオチド(ステップ1から)6μl
NEB T4 DNAリガーゼ(400U/μl)1.5μl
合計50μl
室温で2時間以上インキュベートした。1回目のPCRに直接進んだ。
【0238】
ステップ3.1回目のスプリンケレットPCR
1回目のPCR反応
成分の量
ライゲーションされたゲノムDNA 10μl
O 8.25μl
5×Phusion HF緩衝液5μl
10mm dNTP 0.5μl
SPLNK#1.10μM 0.5μl
プライマーPB#1、10μM(表2を参照されたい)0.5μl
Phusion Taq(Finnzymes,FL)0.25μl
合計25μl
1回目のPCRのPCR条件
98℃で75秒間
98℃で20秒間→64℃で15秒間(×2サイクル)
98℃で20秒間→58℃又は64℃で15秒間(3’SPLNK-PB#1は58℃、5’SPLNK-PB#1は64℃、表2)→72℃2分間(×30サイクル)
72℃で7分間
4℃に保持
【0239】
ステップ4.2回目のスプリンケレットPCR
2回目のPCR反応
成分の量
1回目のPCR産物1μl(2倍希釈)
O 31.5μl
5×Phusion HF緩衝液10μl
10mm dNTP 1μl
SPLNK#2、10μM 1μl
プライマーPB#2、10μM(表2を参照されたい)1μl
Phusion Taq 0.5μl
合計50μl
2回目のPCRのPCR条件
98℃で75秒間
98℃で20秒間→59℃又は66℃で15秒間(3’SPLNK-PB#2は59℃、5’SPLNK-PB#2は66℃、表2)→72℃で90秒間(×30サイクル)
72℃で7分間
4℃に保持
【0240】
ステップ5.南極ホスファターゼ/エキソヌクレアーゼI処理AntPho/ExoI反応条件
成分の量
2回目のスプリンケレットPCR産物 20μl
10×NEB AP緩衝液3.0μl
O 3.0μl
NEB 南極ホスファターゼ2.0μl(New England Biolabs,MA,USA)
NEBエキソヌクレアーゼI 2.0μl(New England Biolabs,MA,USA)
合計30μl
【0241】
反応液を37℃で2時間インキュベートし、続いて80℃で15分間インキュベートした。15μlの反応液を、適切な配列決定プライマー(配列番号17、配列番号18、表2)を用いた配列決定に使用した。
【0242】
【表5】
【0243】
転移因子の5’末端のPCRを実行し、0.8%アガロースゲルでチェックして配列決定した。得られた配列をNCBI-blastnを使用してブラストし、各細胞株のゲノム遺伝子座を同定した(表3)。
【0244】
【表6】
【0245】
【表7】
【0246】
クローンごとの配列決定結果は、以下の通りである:クローンA02-Chr.7(配列番号34)、クローンA04-Chr.5(配列番号35)、クローンA05-Chr.3(配列番号36)、クローンA06-Chr.12(配列番号37)、クローンA07-Chr.17(配列番号38)、クローンA08-複数ヒット(配列番号39)、クローンA09-Chr.7(配列番号40)、クローンA10-Chr.11(配列番号41)、クローンB04-Chr.2(配列番号42)、クローンB06-Chr.3(配列番号43)、クローンB07-Chr.1(配列番号44)、クローンB11-Chr.8(配列番号45)、クローンB12-Chr.15(配列番号46)、クローンC01-Chr.17(配列番号47)、クローンC02-Chr.2(配列番号48)、クローンC03-Chr.9(配列番号49)。
【0247】
実施例2:SceIメガヌクレアーゼ及びFGFR1及びFGFR2をドナーDNAとしてトランスフェクトすることによる細胞株のバリデーション
PBトランスポゾン媒介組み込みによって生成されたクローンを、組み込み効率、単一コピーの組み込み分析及び抗体発現について検証した。この目的のために、クローンに、I-SceIメガヌクレアーゼプラスミドの存在下又は非存在下で、Fcフォーマットの抗FGFR1 scFv及び抗FGFR2 scFvを含む2つのドナープラスミドを等しい割合で同時トランスフェクトした。抗FGFR1抗体とa-FGFR2抗体の混合物でのトランスフェクションは、複数の組み込みイベントを含む細胞の割合を調べる機会を提供する。カセット(抗FGFR1など)が正しく組み込まれた個々の細胞では、2回目の組み込みが代替の特異性(即ち抗FGFR2)となる確率が約50:50である。複数の組み込みが頻繁であると、二重陽性クローンの割合が高くなる。ドナープラスミドは、国際公開第2015/166272号パンフレットに記載されている。
【0248】
トランスフェクションを2つのバッチで行った:バッチ1にはクローンA09、A10、B03、B05、B07、B09及びB12が含まれていた。バッチ2には、A02、A04、A05、A06、A07、A08、A11、B01、B04、B06、B10、B11、C01、C02及びC03が含まれていた。トランスフェクションの前日に、細胞又はHEK293-F細胞を0.5×10個の細胞/mlで播種した。トランスフェクション当日に、製造者のプロトコルに従ってMaxcyte(MD,USA)エレクトロポレーションを使用して細胞をトランスフェクトした。ドナーDNA(抗FGFR1及び抗FGFR2)は、すべてのトランスフェクション(対照を含む)のそれぞれで1μgであった。メガヌクレアーゼDNAは20μgであった。HEK293F TALEN細胞を両方のバッチの対照として使用した(国際公開第2015/166272号パンフレットに記載)。対照細胞に、TALENを介した組み込みによってAAVS遺伝子座にバインダーを組み込むことができるAAVS TALEヌクレアーゼプラスミドの存在下又は非存在下で、Fcフォーマットの抗FGFR1 scFv及び抗FGFR2 scFvを含む2つのドナープラスミドを等しい割合でトランスフェクトした。使用したTALEN DNAは、10μg(TAL L)及び10μg(TAL R)であった。
【0249】
トランスフェクトした細胞を10cmのペトリ皿にプレーティングし、トランスフェクションの2日後にブラストサイジン選択を行った。プレート内の培地に、20日目まで3~4日ごとにブラストサイジンを含む新鮮な培地を補充した。ブラストサイジン耐性コロニーをスコアリングして、組み込み効率を計算した。組み込み効率は、0~1%の範囲であり、ヌクレアーゼの存在下と非存在下での倍数差はクローン間で異なっていた。クローンA09、B12及びC03は、他のクローンと比較して、I-SceIメガヌクレアーゼの存在下と非存在下での倍数差が大きいことを示した。これら3つのクローンの中で、C03が最も高い組み込み効率(1%)を示した。残りのクローンの組み込み効率を見ると、A04及びB01は、それぞれ0.5%及び0.6%であった。
【0250】
並行して、トランスフェクトした細胞を懸濁液で培養し、3~4日ごとに培地を交換して、2日目から20日目までBSD選択も行った。20日目に、細胞をFGFR1-Dy633及びFGFR2-Dy488で二重染色した。フローサイトメトリーベースの分析を、Intellicyt IQUEスクリーナー(Sartorius AG,GE)を使用して行った。サイトメーターには、488nm(青色)及び640nm(赤色)レーザー及びPE(LP:-、BP:572/28)とTo-Pro3(LP:-、BP:675/30)用の発光フィルターが装備されていた。FGR1/2染色では、10nMのFGFR1-Dy633及びFGFR2-Dy488を100μLの細胞に添加した。これらを、4℃の暗所で30分間インキュベートした。次いで、900μlの0.1%PBSを添加した後、600×gで2.5分間遠心分離した。細胞を1mlの0.1%BSAで洗浄し、500μlの0.1%BSAに再懸濁した。50μLを取り出して、その後の分析のために96ウェルプレートのウェルに添加した。抗原による細胞の二重染色は、複数コピーの組み込み(細胞ごとに2つ以上の抗体遺伝子が組み込まれている)を示し得る。抗体陰性集団が、トランスフェクトされたすべてのクローンで観察された。これらの母集団を、単一コピー及び複数コピーの組み込み分析の計算から除外した。その結果を表4に示す。
【0251】
【表8】
【0252】
実施例3:バインダーの発現のためのノイロリシン(NLN)遺伝子の評価
NLN遺伝子座のバインダー発現能力を評価するために、プロモーターのないブラストサイジン遺伝子及びNLNにおいて抗PCSK9抗体5A10i又はボコシズマブ(Boco)を発現する遺伝子を含むカセットのゲノム組み込みのための設計を行った。ベクターpINT17-5A10i及びpINT17-ボコシズマブは、国際公開第2015/166272号パンフレットに記載のpD2ベクターの誘導体である第2世代ディスプレイベクターであり、pINT17-BSDベクター(Parthiban et al.2019 mAbs,11:5,884-898に記載)に由来し、pINT17-BSDベクターは、5A10i及びボコシズマブそれぞれを発現する遺伝子を含むカセットが挿入されたAAVS遺伝子座への構成された遺伝子の組み込みを誘導する。
【0253】
カセットの組み込みは、ノイロリシン遺伝子のイントロン2(NLN-207)を標的とするgRNA(TCACTCGTATTACGTTTACA、配列番号50)をカセットに含めることにより、CRISPRを介した組み込みによって達成した。相同組換えを容易にするために、800bpの相同性アームを両端のカセットに含めた。左相同性アーム(LHA)の両側には、5’末端のAsiSI認識部位及び3’末端のNsiI認識部位が配置されていた。右相同性アーム(RHA)の両側には、5’末端のBstZ171認識部位及び3’末端のSbfI認識部位が配置されていた。左相同性アームを、プライマーLHA_AsiSI-Forw(配列番号60)及びNLN_LHA-NsiI-Rev(配列番号61)を使用してPCRによって増幅し、右相同性アームを、プライマーNLN-RHA-BstZ171_Forw(配列番号62)及びRHA_SbfI-Rev(配列番号63)(プライマーは表5に示す)を使用して増幅し、カセットにライゲーションした後、上述の酵素及びライゲーションを使用して、PCR産物並びにベクターpINT17-5A10i及びpINT17-ボコシズマブの制限消化を行った。これにより、pINT74-5A10i(配列番号64)及びpINT74-ボコシズマブ(配列番号65)ベクターが得られ、これらのベクターは、NLNのイントロン2(NLN-207)への構成された遺伝子の組み込みを誘導した。
【0254】
【表9】
【0255】
使用した鋳型配列:NLN Intron 2-CRISPR-1-gBlock(配列番号57)、NLN Intron 2-LHA及びRHA-gBlock(配列番号58)。
【0256】
標的遺伝子座へのカセットの正しい組み込みは、ブラストサイジン耐性遺伝子の発現をもたらし、国際公開第2015/166272号パンフレットに記載されているように、抗生物質の存在下で、正しく組み込まれたクローンを増殖させることを可能にする。国際公開第2015/166272号パンフレットに記載されているように、NLNイントロン2(NLN-207)への組み込み用に設計されたカセットの組み込み効率を、TALENを介した組み込みによるAAVS遺伝子座への組み込み用に設計されたカセットの組み込み効率と比較した。HEK293F細胞を、製造者のプロトコルに従って、Maxcyteエレクトロポレーション(MD,USA)を使用してトランスフェクトした。TALENベクター又はCRISPRベクターを使用しない対照のトランスフェクションも行った。表6にトランスフェクション条件を示す。
【0257】
【表10】
【0258】
トランスフェクション後、細胞をブラストサイジンの存在下又は非存在下でプレーティングした。ブラストサイジン耐性コロニーを、トランスフェクションの12日後にメチレンブルーで染色し、カウントして組み込み効率を測定した。AAVS TALENをトランスフェクトした細胞の組み込み効率は、pINT17-Bocoで0.26%、pINT17-5A10iで0.35%であり、NLN CRISPRをトランスフェクトした細胞の組み込み効率は、pINT74-ボコシズマブで0.23%、pINT74-5A10iで0.53%であった(表7)。
【0259】
【表11】
【0260】
組み込み効率も、抗ヒトFc抗体(BioLegend cat#409304)で染色することによりフローサイトメトリーベースの分析を使用して、BSD選択なしでの細胞のトランスフェクションの6日後にFc発現を測定することによって定量した。フローサイトメトリーベースの分析は、Intellicyt IQUEスクリーナー(Sartorius AG,GE)を使用して行った。サイトメーターには、488nm(青色)及び640nm(赤色)レーザーと、PE(LP:-、BP:572/28)及びTo-Pro3(LP:-、BP:675/30)用の発光フィルターが装備されていた。抗ヒトFc抗体染色では、1×10個の細胞を0.1% BSA PBSで2回洗浄し、100μLの1% BSA PBS(7.5% BSA Fraction V-Gibco(Cat.No:15260037)中の1μlの標識抗体と共に4℃で30分間インキュベートし、光から保護し、PBSで再度洗浄し、分析した。ヌクレアーゼの存在下と非存在下でのFc陽性細胞数の差は、組み込み効率を測定する手段である。ヌクレアーゼ存在下で5A10iをトランスフェクトした細胞は、AAVS TALEN及びNLN CRISPRでそれぞれ3.99%及び3.38%を示す(図2A及び図2B)。
【0261】
並行して、トランスフェクトした細胞を懸濁液で培養し、BSD選択も行った。トランスフェクションの15日後、細胞を抗ヒトFc抗体で染色し、フローサイトメトリーベースの分析を行った。BSD耐性集団は、細胞表面でのFc発現を示し、その発現レベルは、AAVS遺伝子座に組み込まれた細胞とNLN遺伝子座に組み込まれた細胞で類似していた(図3A)。
【0262】
さらに、トランスフェクションの28日後、Fc発現の安定性を、BSD耐性集団を抗ヒトFc抗体で染色することによって試験した。NLN遺伝子座に組み込まれた抗体は、均一な発現を示す(図3B)。
【0263】
実施例4:CHO細胞におけるNLN遺伝子座のバリデーション
この実施例の目的は、CHO-s細胞のノイロリシン(NLN)のイントロン1遺伝子座からの安定した表面抗体の提示を試験することであった。
【0264】
実験手順
抗体遺伝子の組み込みを、CRISPR/Cas9(国際公開第2019/110691号パンフレットに記載)を使用してAAVS遺伝子座で又はTALEN(配列番号66)を使用してNLNイントロン1で行った。CHO-s細胞に、AAVS標的化のための、Dyson et al.2020 mAbs,12:1,1829335に記載されている変異ボコシズマブ抗体遺伝子(pINT157-884_01_G01(配列番号67)を有する標的プラスミドを同時トランスフェクトした。CHO-s細胞に、NLNイントロン1を標的とするボコシズマブ及び5A10i(pINT158-ボコシズマブ(配列番号68)及びpINT158-5A10i(配列番号69)を有する標的プラスミドを同時トランスフェクトした。5A10i及びボコシズマブは、それぞれ十分に機能する抗体及び十分に機能しない抗体であるため、抗体の異なるディスプレイが予想された。これは、ディスプレイされた抗体(実施例3に記載の抗ヒトFc抗体)のFc領域に向けられた二次蛍光抗体によって検出されるシグナル(例えば、MFI)の大きさの変化によって評価することができる。実験は、TALEN pDNAを用いたトランスフェクションの場合に二連で行った(表8及び表10を参照されたい)。図4A及び図4Bは、CHO細胞におけるNLN遺伝子構造を示し、図5A及び図5Bは、NLNイントロン1 TALEN標的化の設計を示す。
【0265】
細胞培養、フローサイトメトリー及び染色
すべてのCHO-S細胞株を、8mM L-Glut(カタログ番号25030-024、Life Technologies,California,USA)を添加したCD Opticho培地(CHO-F細胞用、カタログ番号12681-011、Life Technologies,California,USA)で培養し、典型的には、72/96時間ごとに継代した25mLの培養液中に維持した。選択のためのBSD(ブラストサイジン)濃度は3μg/mlであった。導入遺伝子の組み込み効率を推定するために、BSD選択を行わない重複培養も維持した。
【0266】
抗ヒトFc抗体細胞染色及びフローサイトメトリー分析を、実施例3に記載されているように行った。
【0267】
トランスフェクション
トランスフェクションは、製造者のプロトコルに従ってMaxcyte(MD,USA)トランスフェクションを使用して行った(表6も参照されたい)。TALENを介した組み込みは、国際公開第2015/166272号パンフレットに記載されているように行った。トランスフェクション計画を以下の表8にまとめた。
【0268】
【表12】
【0269】
結果
トランスフェクションの2日後の抗ヒトFc抗体染色
トランスフェクションの2日後、サンプルを、一過性の抗体発現を検出するために抗ヒトFc抗体で染色した。TALEN mRNAをトランスフェクトしたサンプルでは、pcDNAとTALEN pDNAの両方で発現が増加し、抗体遺伝子カセットの早期組み込み/発現を示唆している。5A10iとボコシズマブとの発現プロファイルの差異もそれぞれ抗体の「良好」及び「不良」提示プロファイルによって予想通り観察された(図6)。
【0270】
トランスフェクションの8日後の抗ヒトFc抗体染色(BSD耐性細胞)
トランスフェクションの8日後、BSDの存在下で培養した細胞から採取したサンプルを、抗体細胞表面の発現を検出のために抗ヒトFc抗体で染色した。トランスフェクションの8日後は、細胞が依然として抗生物質選択下にあるため、安定して発現するクリーンな細胞株産生の早期の時点である。これにもかかわらず、5A10iがNLNイントロン1に組み込まれた細胞では、抗ヒトFc抗体陽性細胞が78%を超えるかなりクリーンな集団が観察されたが、おそらく抗体の固有のディスプレイ特性が不十分であることが原因で7%未満のみディスプレイされたボコシズマブが組み込まれた細胞とは対照的である(図7A)。予想通り、pcDNAを使用したトランスフェクションから採取したサンプルは、ヌクレアーゼを介した遺伝子組み込みの非存在下では、ほとんど発現を示さなかった。
【0271】
トランスフェクションの14日後の抗ヒトFc抗体染色(BSD耐性細胞)
トランスフェクションの14日後、BSDの存在下で培養した細胞から採取したサンプルを、抗体の細胞表面での発現の検出のために抗ヒトFc抗体で染色した。5A10iがNLNイントロン1に組み込まれた細胞では、集団全体の明確なシフトが観察された(図7B)。これにより、NLNイントロン1に対する抗体発現の標的化の有用性が確認された。5A10iとボコシズマブとの間には明らかな発現差があり、抗体の生物物理学的特性に基づく細胞表面ディスプレイの発現可能性が確認された。
【0272】
トランスフェクションの8日後及び14日後の組み込み効率(BSD選択なし)
BSDなしで培養した細胞から採取したサンプルを、トランスフェクションの8日後及び14日後の組み込み効率の測定のために抗ヒトFc抗体で染色した。その結果を以下の表9に示す。
【0273】
【表13】
【0274】
トランスフェクションの8日後、抗ヒトFc抗体で染色した、BSDなしで培養した細胞から採取したサンプルの測定値は、抗体-遺伝子組み込み効率のおおよその数値を表している。NLNのイントロン1を標的とする設計の場合、5A10i抗体に基づくと、TALENプラスミドDNA及びTALEN mRNAの両方で約2.5%の組み込み効率が達成された。
【0275】
反復トランスフェクション実験:
以下のトランスフェクションを反復して、NLNのイントロン1の標的化の再現性を確認した(表10)。
【0276】
【表14】
【0277】
BSD耐性細胞
BSDが存在する細胞培養物から採取したサンプルを、トランスフェクションの1日後、7日後及び14日後に抗ヒトFc抗体を使用して染色した。ボコシズマブ及び5A10iの発現プロファイルは、2つの抗体の固有の生物物理学的特性に基づく発現の差を示している。この結果は、哺乳動物ディスプレイのための抗体発現の標的化の再現性と有用性を裏付けている(図8)。
【0278】
トランスフェクションの7日後及びトランスフェクションの14日後に測定した組み込み効率(BSD選択なし)
BSDが存在しない細胞培養物から採取したサンプルを、抗ヒトFc抗体でのトランスフェクションの7日後及び14日後に組み込み効率の測定のために染色した。数値は、ゲート内の陽性細胞の割合(%)を示す。トランスフェクション7日後には最大4.6%の組み込み効率が達成され、トランスフェクションの14日後でもなお3.3%で検出可能であった(図9)。これらの数値は、NLNのイントロン1を標的とする設計で以前に観察された組み込み効率を裏付けている。
【0279】
参考文献
下記及び本開示の任意の箇所に記載されるすべての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
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図3
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図5B
図6
図7A
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図8
図9
【配列表】
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【国際調査報告】