(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】(R)-3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン及び(S)-3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン又は(R)N-メチル-1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミン及び(S)N-メチル-1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミンの非ラセミ混合物を含む組成物、並びにその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/36 20060101AFI20240822BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240822BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240822BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240822BHJP
A61P 25/32 20060101ALI20240822BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240822BHJP
A61P 25/36 20060101ALI20240822BHJP
A61P 25/30 20060101ALI20240822BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20240822BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240822BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61K31/36
A61P25/22
A61P25/18
A61P25/24
A61P25/32
A61P25/14
A61P25/36
A61P25/30
A61K31/198
A61P43/00 121
A61P25/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510674
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 CA2022051269
(87)【国際公開番号】W WO2023019369
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524066269
【氏名又は名称】ファーマラ バイオテック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カディシュ、ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ハウエル、レオナルド
(72)【発明者】
【氏名】カウル、ハープリート
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA13
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA57
4C086MA59
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA05
4C086ZA12
4C086ZA18
4C086ZC39
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA56
4C206KA01
4C206KA17
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZA02
4C206ZA05
4C206ZA12
4C206ZA18
4C206ZC39
4C206ZC75
(57)【要約】
本出願は、式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む組成物を含み、ここで(R)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物は、(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物と比較して、エナンチオマー当量としてより多い量で前記組成物中に存在する。例えば、精神障害を処置するために、これらの組成物を使用する方法も含まれる。式(R)-I及び(S)-Iの化合物は、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)及びN-メチル-1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミン(MBDB)のエナンチオマーを含む。治療有効量の(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を使用して、様々な疾患、障害又は病状を処置する方法も本出願に含まれる。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む組成物であって、
【化1】
式中、R
1は、CH
3又はCH
2CH
3であり、
(R)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物は、(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物と比較して、エナンチオマー当量としてより多い量で前記組成物中に存在する、組成物。
【請求項2】
前記組成物が、エナンチオマー当量で約70%~約99%の前記式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びにエナンチオマー当量で約1%~約30%の前記式(S)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、エナンチオマー当量で約70%~約79.9%の前記式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びにエナンチオマー当量で約20.1%~約30%の前記式(S)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、エナンチオマー当量で約70%~約75%の前記式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びにエナンチオマー当量で25%~約30%の前記式(S)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、エナンチオマー当量で約75%~約79.9%の前記式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びにエナンチオマー当量で約20.1%~約25%の前記式(S)-Iの化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、エナンチオマー当量で約80%~約89.9%の前記式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びにエナンチオマー当量で約10.1%~約20%の前記式(S)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、エナンチオマー当量で約80%~約85%の前記式(R)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びにエナンチオマー当量で約15%~約20%の前記式(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、エナンチオマー当量で約85%~約89.9%の前記式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びにエナンチオマー当量で約10.1%~約15%の前記式(S)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、エナンチオマー当量で約90%~約99%の前記式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びにエナンチオマー当量で約1%~約10%の前記式(S)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、エナンチオマー当量で約90%~約95%の前記式(R)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びにエナンチオマー当量で約5%~約10%の前記式(S)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、エナンチオマー当量で約95%~約99%の前記式(R)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びにエナンチオマー当量で約1%~約5%の前記式(S)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、エナンチオマー当量で約80%の前記式(R)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びにエナンチオマー当量で約20%の前記式(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
R
1がCH
3であり、前記式(R)-Iの化合物が(R)-3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン((R)-MDMA)であり、前記式(S)-Iの化合物が(S)-3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン((S)-MDMA)である、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
R
1がCH
2CH
3であり、前記式(R)-Iの化合物が(R)-N-メチル-1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミン((R)-MBDB)であり、前記式(S)-Iの化合物が(S)-N-メチル-1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミン((S)-MBDB)である、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が医薬組成物であり、前記組成物が1又は複数の医薬上許容可能な担体をさらに含む、請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、鼻腔内投与用又は舌下投与用に製剤化されている、請求項1~請求項15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置する方法であって、
【化2】
式中、
R
1は、CH
3及びCH
2CH
3から選択され、
前記方法は、治療有効量の請求項1~請求項16のいずれか一項に記載の1又は複数の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項18】
R
1がCH
3であり、前記式Iの化合物がラセミ3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
R
1がCH
2CH
3であり、前記式Iの化合物がラセミN-メチル-1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミン(MBDB)である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記1又は複数の組成物の前記投与が、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の前記ラセミ混合物による処置と比較して、有害な副作用が少ない、請求項17~請求項19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記有害な副作用が、神経毒性、高体温、及び物質使用障害のうちの1又は複数から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置から利益を得る前記疾患、障害又は病状が、心理療法から利益を得るいずれかの疾患、障害又は病状である、請求項17~請求項21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
心理療法から利益を得る前記疾患、障害又は病状が、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、社交不安障害、鬱病、アルコール嗜癖、及び摂食障害のうちの1又は複数である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記1又は複数の組成物が、前記疾患、障害又は病状を処置するために心理療法と組み合わせて投与される、請求項17~請求項23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記1又は複数の組成物が、前記心理療法の有効性を改善する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置から利益を得る前記疾患、障害又は病状が、1又は複数の精神障害である、請求項17~請求項21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記1又は複数の精神障害が、不安障害、気分障害、発達障害、物質使用障害及び嗜癖、摂食障害、人格障害及び精神病性障害のうちの1又は複数から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記不安障害が、強迫性障害(OCD)、社交不安障害、恐怖症、パニック障害及び心的外傷後ストレス障害(PTSD)のうちの1又は複数から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記不安障害が社交不安障害である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記不安障害がPTSDである、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記気分障害が、鬱病及び双極性障害の一方又は両方から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記発達障害が自閉症スペクトラム障害(ASD)である、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記物質使用障害及び嗜癖が、アルコール中毒、薬物乱用、薬物依存症及び強迫的ギャンブリングのうちの1又は複数から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記物質使用障害がオピオイド使用障害である、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記摂食障害が、食欲不振及び過食症から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記人格障害が、境界性人格障害及び依存性人格障害から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
前記精神病性障害が、統合失調症及び現実からの離隔を引き起こす他の障害から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項38】
前記1又は複数の精神障害が、自閉症スペクトラム障害(ASD)、鬱病及び薬物依存症のうちの1又は複数から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項39】
前記鬱病が臨床的鬱病である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記臨床的鬱病が緩和ケア対象におけるものである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記1又は複数の組成物が、心理療法前、心理療法中及び/又は心理療法後に投与される、請求項22~請求項25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記1又は複数の組成物が、前記心理療法中及び/又は前記心理療法後に投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記心理療法が、行動心理療法、曝露ベースの心理療法、認知心理療法、及び精神力学的指向性心理療法から選択される、請求項41又は請求項42に記載の方法。
【請求項44】
請求項1~請求項16のいずれか一項に記載の治療有効量の1又は複数の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状を処置する方法。
【請求項45】
前記1又は複数の症状が、全般的不安、臨床的不安、過敏性、不適切な発話、常同症、社会的引きこもり、反復的行動及び多動性から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項44又は請求項45に記載の方法であって、前記治療有効量の1又は複数の組成物の投与が、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置と比較して、有害な副作用が少なく、
【化3】
式中、
R
1は、CH
3及びCH
2CH
3から選択される、
又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物である、方法。
【請求項47】
式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置から利益を得る前記疾患、障害又は病状が、L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)による処置から利益を得る疾患、障害又は病状である、請求項17~請求項21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
1又は複数の組成物が、L-DOPAと組み合わせて投与される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記1又は複数の組成物が、L-DOPAの処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置するためのL-DOPAの有効性を改善する、請求項47又は請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記1又は複数の組成物が、L-DOPA誘導性ジスキネジアを減少させることによってL-DOPAの前記有効性を改善する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記1又は複数の組成物が、機能障害性(disabling)ジスキネジア無しにL-DOPAの抗パーキンソン病の効果(benefit)の持続時間を増大することによって、L-DOPAの前記有効性を改善する、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記1又は複数の組成物が、L-DOPA誘導性パーキンソン病精神症を減少させることによってL-DOPAの前記有効性を改善する、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
L-DOPAによる処置から利益を得る前記疾患、障害又は病状が、パーキンソン病である、請求項47~請求項52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置から利益を得る前記疾患、障害又は病状が、ジスキネジアである、請求項17~請求項21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置から利益を得る前記疾患、障害又は病状が、L-DOPA誘導性パーキンソン病精神症である、請求項19~請求項21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
請求項1~請求項16のいずれか一項に記載の治療有効量の1又は複数の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、パーキンソン病を処置する方法。
【請求項57】
前記対象がヒトである、請求項17~請求項56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置するための方法であって、治療有効量の(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項59】
前記治療有効量の(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の前記投与が、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置と比較して、有害な副作用が少ない、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置から利益を得る前記疾患、障害又は病状が、心理療法から利益を得るいずれかの疾患、障害又は病状である、請求項58又は請求項59に記載の方法。
【請求項61】
心理療法から利益を得る前記疾患、障害又は病状が、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、社交不安障害、鬱病、アルコール嗜癖、及び摂食障害のうちの1又は複数から選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物が、前記疾患、障害又は病状を処置するために心理療法と組み合わせて投与される、請求項60又は請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物が、心理療法の有効性を改善する、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置から利益を得る前記疾患、障害又は病状が、1又は複数の精神障害である、請求項58又は請求項59に記載の方法。
【請求項65】
前記1又は複数の精神障害が、不安障害、気分障害、発達障害、物質使用障害及び嗜癖、摂食障害、人格障害及び精神病性障害のうちの1又は複数から選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記不安障害が、強迫性障害(OCD)、社交不安障害、恐怖症、パニック障害及び心的外傷後ストレス障害(PTSD)のうちの1又は複数から選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記不安障害が社交不安障害である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記不安障害がPTSDである、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記気分障害が、鬱病及び双極性障害の一方又は両方から選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項70】
前記発達障害が自閉症スペクトラム障害(ASD)から選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項71】
前記物質使用障害及び嗜癖が、アルコール中毒、薬物乱用、薬物依存症及び強迫的ギャンブリングのうちの1又は複数から選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項72】
前記物質使用障害がオピオイド使用障害である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記摂食障害が、食欲不振及び過食症から選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項74】
前記人格障害が、境界性人格障害及び依存性人格障害から選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項75】
前記精神病性障害が、統合失調症及び現実からの離隔を引き起こす他の障害から選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項76】
前記1又は複数の精神障害が、自閉症スペクトラム障害(ASD)、鬱病及び薬物依存症のうちの1又は複数から選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項77】
前記鬱病が臨床的鬱病である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記臨床的鬱病が緩和ケア対象におけるものである、請求項77に記載の方法。前記(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物が、心理療法前、心理療法中及び/又は心理療法後に投与される、請求項58~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物が、前記心理療法中及び/又は前記心理療法後に投与される、請求項74に記載の方法。
【請求項80】
前記心理療法が、行動心理療法、曝露ベースの心理療法、認知心理療法、及び精神力学的指向性心理療法から選択される、請求項74又は請求項75に記載の方法。
【請求項81】
自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状を処置する方法であって、治療有効量の(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項82】
前記1又は複数の症状が、全般的不安、臨床的不安、過敏性、不適切な発話、常同症、社会的引きこもり、反復的行動及び多動性から選択される、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記治療有効量の(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の前記投与が、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置と比較して、有害な副作用が少ない、請求項81又は請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記有害な副作用が、神経毒性、高体温、物質使用障害、及び心毒性のうちの1又は複数から選択される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記(R)-MDMAが、99%よりも大きいエナンチオマー純度を有する、請求項58~請求項84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記対象がヒトである、請求項58~請求項85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物が、鼻腔内投与用に製剤化されている、請求項58~請求項85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物が、舌下投与用に製剤化されている、請求項58~請求項85のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年8月20日に出願された同時係属中の米国仮特許出願第63/235,460号及び2022年1月12日に出願された同時係属中の米国仮特許出願第63/298,820号の優先権の利益を主張し、これらの両方の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)とN-メチル-1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミン(MBDB)との非ラセミ混合物を含む組成物、及び治療処置においてこれらの組成物を使用する方法に関する。本出願はさらに、(R)-MDMAを使用する様々な新規治療処置を含む。
【背景技術】
【0003】
3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)は、一般にエクスタシー(E)又はモリーとして知られており、1912年にメルクによって最初に開発された精神賦活薬である。MDMAは、今日ではしばしば娯楽的に使用されている。しかしながら、MDMAの最初の使用は、心理療法の補助としてのものであった。より最近では、MDMAは、様々な臨床試験、例えば、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、進行期の病気に関連する不安、及び自閉症成人における社会的不安のためのMDMA支援心理療法を調査することで研究されている。MDMAは現在、米国食品医薬品局(FDA)により、PTSDの処置のためのブレークスルー療法の指定を与えられている。
【0004】
MDMAは、一般に入手可能であり、ラセミ体として消費される。MDMAのラセミ体は、高体温及び神経毒性などの有害作用の可能性を有することも知られている。しかしながら、研究は、MDMAの異性体の効果の定性的な違いを示している。証拠は、MDMAのR異性体が、副作用プロファイルが低減されたMDMAラセミ体の治療効果の一部を維持しながら、改善された治療指数を提供し得ることを示唆している(Pittsら、Psychopharmacology 235,377-392,2018、Curryら、Neuropharmacology.2018 January;128:196-206、Huotら、Journal of Neuroscience,2011,31(19)7190-7198、Setolaら、Mol.Pharmacol.63:1223-1229,2003)。MDMAのエナンチオマーの治療可能性を決定するためのさらなる調査が必要である。
【0005】
一般にエデン(Eden)又はメチル-ジェイ(Methyl-J)として知られているN-メチル-1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミン(MBDB)は、アミンの隣のアルファ炭素に結合したメチル基の代わりにエチル基を有するMDMAの類似体である。MDMAと同様に、MBDBもエンタクトゲンとして分類される。MBDBも一般に入手可能であり、ラセミ体として消費される。したがって、各エナンチオマー又はMBDBの向社会性(prosocial)、治療的及び毒物学的効果のさらなる調査も必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)は、一般にラセミ体として投与される。ヒトにおける社会的行動におけるMDMAのラセミ体の効果が研究されている。MDMAのラセミ体は、高体温や神経毒性などの有害作用を示し、薬物乱用の可能性があることが知られている。MDMAのRエナンチオマー((R)-MDMA)は、神経毒性及び低体温などの有害作用のリスクがより低い向社会性作用を有することが示されている。しかしながら、MDMAのSエナンチオマー((S)-MDMA)は、より強力なエナンチオマーであり、刺激活性を有するが、より多くの有害作用を示すことが知られている。(R)-MDMA単独の使用は、刺激活性の喪失及びSエナンチオマーから提供される任意の相乗効果をもたらすであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本出願人は、より多量のRエナンチオマーを含むMDMAのエナンチオマーの様々な非ラセミ混合物を調査して、Sエナンチオマーの高体温及び神経毒性などの有害作用の発生を減少させながら所望の向社会性効果を達成するのに十分な量のRエナンチオマーを含み、さらに、治療有効性のために十分な量のSエナンチオマーを含む組成物を開発する。本出願の組成物はまた、薬物乱用の可能性が低い。N-メチル-1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミン(MBDB)のエナンチオマーについても同様の研究を行う。これらの詳細な研究を通して、本出願人は、ラセミ混合物の現在の使用に関連する望ましくない効果を最小限に抑えながら所望の有効性を提供するために、これらの有益な治療化合物の2つのエナンチオマーの比の最適範囲を含む組成物を開発する。
【0008】
本出願では、本出願人はまた、自閉症スペクトラム障害、緩和患者における臨床的鬱病及び物質使用障害(例えば、オピオイド使用障害)の治療としての使用を含む、MDMA及びMBDBの(R)-エナンチオマーの新しい治療的使用を記載している。
【0009】
したがって、本出願は、式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む組成物を含む。
【0010】
【0011】
式中、R1は、CH3又はCH2CH3であり、
(R)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物は、(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物と比較して、エナンチオマー当量としてより多い量で組成物中に存在する。
【0012】
本出願はまた、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置の有害な副作用を低減する方法を含む。
【0013】
【0014】
式中、
R1はCH3及びCH2CH3から選択される、
本方法は、治療有効量の本出願の1又は複数の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0015】
本出願は、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置する方法を含む。
【0016】
【0017】
式中、
R1はCH3及びCH2CH3から選択され、
本方法は、治療有効量の本出願の1又は複数の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0018】
本出願はまた、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置するための方法であって、治療有効量の(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を含む。
【0019】
本出願の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明及び特定の例は、本出願の実施形態を示しているが、単なる例示として与えられており、特許請求の範囲は、これらの実施形態によって限定されるべきではなく、全体として説明と一致する最も広い解釈が与えられるべきであることを理解されたい。
【0020】
本出願は、添付の図面及び表を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】メタンフェタミン(左側構造)及び3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)(右側構造)の二次元分子構造を示す。矢印は、エナンチオマーを生じさせる各構造中のキラル炭素を示す。
【0022】
【
図2】新奇性(novelty)、社会性(sociability)及び社会的新奇性(social novelty:Soc Nov)の試験の前に生理食塩水注射を投与したC57マウス(黒塗りのバー)及びBTBRマウス(白抜きのバー)における社会選好性(social preference)手順の各段階中の試験区画への総進入を示すグラフである。
【0023】
【
図3】試験前に生理食塩水注射を投与したC57マウス(黒塗りのバー)及びBTBRマウス(白抜きのバー)における社会選好性順の各段階中の選好のベースライン系統差を示すグラフである。バーは群平均を表し、エラーバーは標準誤差平均(SEM)を表す。両方の系統は、新奇性選好対照試験中の同等の無差を示すが(上のグラフ)、自閉症様表現型と一致し、BTBRマウスは、社会性段階(中央のグラフ)及び社会的新奇性段階(下のグラフ)における社会回避性(social avoidance)を示すことに留意されたい。
【0024】
【
図4】C57マウス(左のグラフ)及びBTBRマウス(右のグラフ)における社会的新奇性試験中の区画進入に対する、生理食塩水(白抜きの四角)又は様々な用量のメタンフェタミン(丸)、ラセミMDMA(比較組成物1、黒塗りのひし形)、S(+)-MDMA((比較組成物3、上向き三角形)又はR(-)-MDMA(例示的組成物7、下向き三角形)の効果を示すグラフである。用量はmg/kgで表され、対数スケールで示される。
【0025】
【
図5】C57マウス(左のグラフ)及びBTBRマウス(右のグラフ)における新奇性選好性試験中にダミーマウスと過ごす時間に対する、生理食塩水(白抜きの四角)又は様々な用量のメタンフェタミン(丸)、ラセミMDMA(比較組成物1、黒塗りのひし形)、S(+)-MDMA((比較組成物3、上向き三角形)又はR(-)-MDMA(例示的組成物7、下向き三角形)の効果を示すグラフである。記号は群平均を表し、SEMが記号のサイズより小さい場合を除き、エラーバーはSEMを表す。破線は、空のカップを含む区画に対するダミーを含む区画の無差を示す。用量はmg/kgで表され、対数スケールで示される。生理食塩水を受けたC57及びBTBRは、この試験では本質的に同一の挙動を示し、新奇ダミーマウスについてわずかな選好を示すことに留意されたい。
【0026】
【
図6】C57マウス(左のグラフ)及びBTBRマウス(右のグラフ)における新奇性選好性試験中に初対面マウス(stranger mouse)と過ごす時間に対する、生理食塩水(白抜きの四角)又は様々な用量のメタンフェタミン(丸)、ラセミMDMA(比較組成物1、黒塗りのひし形)、S(+)-MDMA((比較組成物3、上向き三角形)又はR(-)-MDMA(例示的組成物7、下向き三角形)の効果を示すグラフである。記号は群平均を表し、SEMが記号のサイズより小さい場合を除き、エラーバーはSEMを表す。破線は、初対面マウスを含む区画に対するダミーを含む区画の無差を示す。用量はmg/kgで表され、対数スケールで示される。生理食塩水を投与されたBTBRは、この試験において予想される自閉症様の社会回避性を示し、初対面マウスの回避を示すことに留意されたい。
【0027】
【
図7】C57マウス(左のグラフ)及びBTBRマウス(右のグラフ)における社会的新奇性選好性試験中に初対面マウスと過ごす時間に対する、生理食塩水(白抜きの四角)又は様々な用量のメタンフェタミン(丸)、ラセミMDMA(比較組成物1、黒塗りのひし形)、S(+)-MDMA((比較組成物3、上向き三角形)又はR(-)-MDMA(例示的組成物7、下向き三角形)の効果を示すグラフである。記号は群平均を表し、SEMが記号のサイズより小さい場合を除き、エラーバーはSEMを表す。破線は、新しい初対面マウスを含む区画に対する現在は見慣れたマウスを含む区画の無差を示す。用量はmg/kgで表され、対数スケールで示される。生理食塩水を投与されたBTBRは、この試験において予想される自閉症様の社会回避性を示し、初対面マウスの回避を示すことに留意されたい。
【0028】
【
図8】10mg/kgまでの用量のC57マウスにおける区画進入(左上のグラフ)、新奇性選好(右上のグラフ)、社会性(左下のグラフ)及び社会的新奇性選好(右下のグラフ)に対する、生理食塩水(四角)、ラセミMDMA(比較組成物1、黒丸及び白丸)、S(+)-MDMA(比較組成物3、黒丸)、R(-)-MDMA(例示的組成物7、白丸)及び例示的組成物2(i)(80% R(-)-MDMA及び20% S(+)-MDMA、灰色の丸)の効果を示すグラフである。
【0029】
【
図9】C57マウス(左のグラフ)対BTBRマウス(右のグラフ)における新奇性選好に対する、特定のエナンチオマー比での生理食塩水(斜線バー)及び3.0mg/kgのMDMAの効果を示すグラフである:生理食塩水(斜線バー、左から1番目のバー)、100% S(+)-MDMA(比較組成物3、左から2番目のバー)、ラセミMDMA(50% R(-)-MDMA及び50% S(+)-MDMA、比較組成物1、左から3番目のバー)、例示的組成物2(i)(80% R(-)-MDMA及び20% S(+)-MDMA、左から4本目)及び100% R(-)-MDMA(例示的組成物7、左から5本目)。したがって、薬物の総用量は同じままである(3.0mg/kg)が、投与される用量のエナンチオマー組成は群間で異なる。
【0030】
【
図10】C57マウス(左のグラフ)及びBTBRマウス(右のグラフ)における社会性に対する、特定のエナンチオマー比での生理食塩水及びMDMA(3.0mg/kg)の効果を示す:生理食塩水(斜線バー、左から1番目のバー)、100% S(+)-MDMA(比較組成物3、左から2番目のバー)、ラセミMDMA(50% R(-)-MDMA及び50% S(+)-MDMA、比較組成物1、左から3番目のバー)、例示的組成物2(i)(80% R(-)-MDMA及び20% S(+)-MDMA、左から4本目)及び100% R(-)-MDMA(例示的組成物7、左から5本目)。より暗いバーはより多くのS-MDMAを示し、より明るいバーはより多くのR-MDMAを示す。薬物の総用量は同じままである(3.0mg/kg)が、投与される用量のエナンチオマー組成は群間で異なる。
【0031】
【
図11】c57マウス(左のグラフ)及びBTBRマウス(右のグラフ)における社会的新奇性選好性試験(見慣れたマウスよりも新しい初対面マウスの選好)に対する、特定のエナンチオマー比での生理食塩水及び3.0mg/kg MDMAの効果を示すグラフである:生理食塩水(斜線バー、左から1番目のバー)、100% S(+)-MDMA(比較組成物3、左から2番目のバー)、ラセミMDMA(50% R(-)-MDMA及び50% S(+)-MDMA、比較組成物1、左から3番目のバー)、例示的組成物2(i)(80% R(-)-MDMA及び20% S(+)-MDMA、左から4本目)及び100% R(-)-MDMA(例示的組成物7、左から5本目)。より暗いバーはより多くのS-MDMAを示し、より明るいバーはより多くのR-MDMAを示す。したがって、薬物の総用量は同じままである(3.0mg/kg)が、投与される用量のエナンチオマー組成は群間で異なる。
【0032】
【
図12】C57マウス(左のグラフ)及びBTBRマウス(右のグラフ)における社会的新奇性選好性試験中に評価された、2つの別個の区画への進入回数(探索行動/自発運動活性の代用尺度)に対する特定のエナンチオマー比での、特定のエナンチオマー比での生理食塩水(斜線バー)及び3.0mg/kg MDMAの効果を示すグラフである:生理食塩水(斜線バー、左から1番目のバー)、100% S(+)-MDMA(比較組成物3、左から2番目のバー)、ラセミMDMA(50% R(-)-MDMA及び50% S(+)-MDMA、比較組成物1、左から3番目のバー)、例示的組成物2(i)(80% R(-)-MDMA及び20% S(+)-MDMA、左から4本目)及び100% R(-)-MDMA(例示的組成物7、左から5本目)。
【0033】
【
図13】C57マウス(塗りつぶされた丸)及びBTBRマウス(塗りつぶされた丸)におけるコア温度(左パネル)及び自発運動活性(右パネル)に対する生理食塩水注射の効果を示すグラフである。記号は群平均を表し、SEMが記号のサイズより小さい場合を除き、エラーバーはSEMを表す。各パネルの下のバーは、部屋の照明がいつオン又はオフになったかを示している。
【0034】
【
図14】C57マウス(塗りつぶされた丸)及びBTBRマウス(白抜きの丸)におけるコア温度に対する種々の用量のラセミMDMA(例えば比較組成物1)の効果を示す。記号は群平均を表し、SEMが記号のサイズより小さい場合を除き、エラーバーはSEMを表す。各パネルの下のバーは、部屋の照明がいつオン又はオフになったかを示している。
【0035】
【
図15】C57マウス(塗りつぶされた丸)及びBTBRマウス(白抜きの丸)における自発運動活性に対する様々な用量のラセミMDMA(50% R(-)-MDMA及び50% S(+)-MDMA、比較組成物1)の効果を示す。記号は群平均を表し、SEMが記号のサイズより小さい場合を除き、エラーバーはSEMを表す。各パネルの下のバーは、部屋の照明がいつオン又はオフになったかを示している。100mg/kgの用量で致死率が予想されたので、この用量での注射は、出勤日の開始時及び室内灯で投与され、したがって、ここに示されるデータトレースの期間中継続した。
【0036】
【
図16】C57マウス(塗りつぶされた丸)及びBTBRマウス(白抜きの丸)におけるコア温度に対する様々な用量(3mg/kg、10mg/kg、18mg/kg、30mg/kg)のS-MDMA(比較組成物3)の効果を示す。記号は群平均を表し、SEMが記号のサイズより小さい場合を除き、エラーバーはSEMを表す。各パネルの下のバーは、部屋の照明がいつオン又はオフになったかを示している。
【0037】
【
図17】C57マウス(塗りつぶされた丸)及びBTBRマウス(白抜きの丸)における自発運動活性に対する様々な用量(3mg/kg、10mg/kg、18mg/kg、30mg/kg)のS-MDMA(例えば比較組成物3)の効果を示す。記号は群平均を表し、SEMが記号のサイズより小さい場合を除き、エラーバーはSEMを表す。各パネルの下のバーは、部屋の照明がいつオン又はオフになったかを示している。
【0038】
【
図18】C57マウス(塗りつぶされた丸)対BTBRマウス(白抜きの丸)における、u-オピオイドアゴニストであるフェンタニルの0.3mg/kg(左上)、1mg/kg(右上のグラフ)、3mg/kgの自発運動効果を示す。右下のグラフは、注射後4時間の総活動の自発運動効果の用量効果関数を示す。記号は群平均を表し、SEMが記号のサイズより小さい場合を除き、エラーバーはSEMを表す。用量はmg/kgで表され、対数スケールで示される。アスタリスクは生理食塩水との有意差を示し、ポンド記号は用量内での系統間の有意差を示す。
【0039】
【
図19】C57マウス(塗りつぶされた丸)対BTBRマウス(白抜きの丸)における、S-メタンフェタミンの0.3mg/kg(左上)、1mg/kg(右上のグラフ)、3mg/kgの自発運動効果を示す。右下のグラフは、注射後4時間の総活動の自発運動効果の用量効果関数を示す。記号は群平均を表し、SEMが記号のサイズより小さい場合を除き、エラーバーはSEMを表す。用量はmg/kgで表され、対数スケールで示される。
【0040】
【
図20】C57マウス(左)及びBTBRマウス(右)のコア温度に対する、0% R(-)-MDMA対100% S(+)-MDMA(黒丸、例えば比較組成物3)、50% R(-)-MDMA対50% S(+)-MDMA(半白/半黒の丸、例えば比較組成物1)、80% R(-)-MDMA対20% S(+)-MDMA(灰色の円、例えば例示的組成物2(i))、又は100% R(-)-MDMA対0% S(+)-MDMA(白丸、例えば例示的組成物7)の比での10mg/kgのMDMAの効果を示す。記号は群平均を表し、SEMが記号のサイズより小さい場合を除き、エラーバーはSEMを表す。下パネルは、コア温度に対するMDMAエナンチオマーの影響の視覚化を可能にするために、上の図(0から240分)からの時間-活性データをバーに折り畳んだコア温度の要約図を表す。
【0041】
【
図21】c57マウス(左)及びBTBRマウス(右)の自発運動活性に対する、0% R(-)-MDMA対100% S(+)-MDMA(黒丸、例えば比較組成物3)、50% R(-)-MDMA対50% S(+)-MDMA(半白/半黒の丸、例えば比較組成物1)、80% R(-)-MDMA対20% S(+)-MDMA(灰色の円、例えば例示的組成物2(i))、又は100% R(-)-MDMA対0% S(+)-MDMA(白丸、例えば例示的組成物7)の比での10mg/kgのMDMAの効果を示す。記号は群平均を表し、SEMが記号のサイズより小さい場合を除き、エラーバーはSEMを表す。下パネルは、運動活性に対するMDMAエナンチオマーの影響の視覚化を可能にするために、上の図(0から240分)からの時間-活性データをバーに折り畳んだ自発運動の要約図を表す。
【0042】
【
図22】C57マウス(左)及びBTBRマウス(右)のコア温度に対する、0% R(-)-MDMA対100% S(+)-MDMA(黒丸、例えば比較組成物3)、50% R(-)-MDMA対50% S(+)-MDMA(半白/半黒の丸、例えば比較組成物1)、80% R(-)-MDMA対20% S(+)-MDMA(灰色の円、例えば例示的組成物2(i))、又は100% R(-)-MDMA対0% S(+)-MDMA(白丸、例えば例示的組成物7)の比での30mg/kgのMDMAの効果を示す。記号は群平均を表し、SEMが記号のサイズより小さい場合を除き、エラーバーはSEMを表す。下パネルは、コア温度に対するMDMAエナンチオマーの影響の視覚化を可能にするために、上の図(0から240分)からの時間-活性データをバーに折り畳んだコア温度の要約図を表す。
【0043】
【
図23】C57マウス(左上)及びBTBRマウス(右上)の自発運動活性に対する、0% R(-)-MDMA対100% S(+)-MDMA(黒丸、例えば比較組成物3)、50% R(-)-MDMA対50% S(+)-MDMA(半白/半黒の丸)(例えば比較組成物1)、80% R(-)-MDMA対20% S(+)-MDMA(灰色の円、例えば例示的組成物2(i))、又は100% R(-)-MDMA対0% S(+)-MDMA(白丸、例えば例示的組成物7)の比での30mg/kgのMDMAの効果を示す。記号は群平均を表し、SEMが記号のサイズより小さい場合を除き、エラーバーはSEMを表す。下パネルは、運動活性に対するMDMAエナンチオマーの影響の視覚化を可能にするために、上の図(0から240分)からの時間-活性データをバーに折り畳んだ自発運動の要約図を表す。
【0044】
【
図24】C57マウス(塗りつぶされた丸)及びBTBRマウス(白抜きの丸)における生理食塩水又は様々な用量のラセミMDMA(左パネル、例えば比較組成物1)若しくはS-MDMA(右パネル、例えば比較組成物3)の自発運動効果を示す。記号は群平均を表し、SEMが記号のサイズより小さい場合を除き、エラーバーはSEMを表す。用量はmg/kgで表され、対数スケールで示される。点に隣接する数字は、薬物投与の8時間以内に死亡した動物の数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
I.定義
別段の指示がない限り、このセクション及び他のセクションに記載された定義及び実施形態は、当業者によって理解されるように、それらが適切である本明細書に記載された本出願のすべての実施形態及び態様に適用可能であることが意図される。
【0046】
本出願の範囲を理解する上で、本明細書で使用される「含む(comprising)」という用語及びその派生語は、記載された特徴、要素、構成要素、群、整数、及び/又は工程の存在を指定するが、他の記載されていない特徴、要素、構成要素、群、整数、及び/又は工程の存在を排除しないオープンエンドの用語であることを意図している。上記は、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの派生語などの同様の意味を有する単語にも適用される。
【0047】
本明細書で使用される「本出願の組成物」という用語は、本明細書に記載の式(R)-I及び(S)-Iの化合物並びに/又はその塩及び/若しくは溶媒和物の非ラセミ混合物を含む任意の組成物、並びに、本明細書に記載の(R)-I並びに/又はその塩及び/若しくは溶媒和物を含む任意の組成物を指す。
【0048】
本明細書で使用される「からなる(consisting)」という用語及びその派生語は、記載された特徴、要素、構成要素、群、整数、及び/又は工程の存在を指定するが、他の記載されていない特徴、要素、構成要素、群、整数、及び/又は工程の存在を排除するクローズドの用語であることを意図している。
【0049】
本明細書で使用される「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、記載された特徴、要素、構成要素、群、整数、及び/又は工程、並びに特徴、要素、構成要素、群、整数、及び/又は工程の基本的かつ新規な特性(複数可)に実質的に影響を及ぼさないものの存在を指定することを意図している。
【0050】
本明細書で使用される「実質的に(substantially)」、「約(about)」、及び「およそ(approximately)」などの程度の用語は、最終結果が大きく変化しないように、修飾された用語の妥当な逸脱量を意味する。これらの程度の用語は、修飾された用語の少なくとも±5%の偏差を、この偏差が修飾する単語の意味を否定しない場合には含むと解釈されるべきである。
【0051】
本出願で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の言及を含む。
【0052】
「追加の」又は「第2の」構成要素を含む実施形態では、本明細書で使用される第2の構成要素は、他の構成要素又は第1の構成要素と化学的に異なる。「第3の」構成要素は、他の構成要素、第1の構成要素、及び第2の構成要素とは異なり、さらに列挙される構成要素又は「追加の」構成要素も同様に異なる。
【0053】
本明細書で使用される「及び/又は」という用語は、列挙された項目が個別に又は組み合わせて存在するか、又は使用されることを意味する。事実上、この用語は、列挙された項目の「少なくとも1つ」又は「1又は複数」が使用されるか、又は存在することを意味する。
【0054】
本明細書で使用される「対象」という用語は、哺乳動物を含む動物界のすべてのメンバーを含み、適切にはヒトを指す。したがって、本出願の方法は、ヒト治療及び獣医学用途の両方に適用可能である。
【0055】
本明細書で使用される「MDMA」という用語は、IUPAC名:1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-N-メチルプロパン-2-アミン、又は化学名:3,4-メチレンジオキシメタンフェタミンを有し、以下の化学式を有する化合物を指す。
【0056】
【0057】
本明細書で使用される「(R)-MDMA」という用語は、IUPAC名:(2R)-1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-N-メチルプロパン-2-アミン、又は化学名:(R)-3,4-メチレンジオキシメタンフェタミンを有し、以下の化学式を有する化合物を指す。
【0058】
【0059】
本明細書で使用される「(S)-MDMA」という用語は、IUPAC名:(2S)-1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-N-メチルプロパン-2-アミン、又は化学名:(S)-3,4-メチレンジオキシメタンフェタミンを有し、以下の化学式を有する化合物を指す。
【0060】
【0061】
本明細書で使用される「MBDB」という用語は、IUPAC名:1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-N-メチルブタン-2-アミン、又は化学名:N-メチル-1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミンを有し、以下の化学式を有する化合物を指す。
【0062】
【0063】
本明細書で使用される「(R)-MBDB」という用語は、IUPAC名:(2R)-1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-N-メチルブタン-2-アミン、又は化学名:(R)-N-メチル-1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミンを有し、以下の化学式を有する化合物を指す。
【0064】
【0065】
本明細書で使用される「(S)-MBDB」という用語は、IUPAC名:(2S)-1-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-N-メチルブタン-2-アミン、又は化学名:(S)-N-メチル-1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミンを有し、以下の化学式を有する化合物を指す。
【0066】
【0067】
本明細書で使用される「医薬組成物」という用語は、医薬使用のための物質の組成物を指す。
【0068】
「医薬使用」という用語は、対象の処置に適合することを意味する。
【0069】
「医薬上許容可能な」という用語は、対象の処置に適合することを意味する。
【0070】
「医薬上許容可能な塩」という用語は、対象の処置に適した、又は対象の処置に適合する酸付加塩を意味する。
【0071】
対象の処置に適した、又は対象の処置に適合する酸付加塩は、任意の基礎化合物の任意の非毒性の有機付加塩又は無機酸付加塩である。
【0072】
本明細書で使用される「溶媒和物」という用語は、適切な溶媒の分子が結晶格子に組み込まれている化合物又は化合物の塩を意味する。適切な溶媒は、投与される投与量で生理学的に許容される。
【0073】
本明細書で使用される、本出願の組成物あるいは(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の「治療有効量」という用語は、対象に投与された場合、臨床的結果を含む有益な結果又は所望の結果をもたらすのに十分な量を指し、したがって、「治療有効量」又はその同義語は、それが適用される文脈に依存する。したがって、本明細書で使用される場合、「治療有効量」は、疾患又は病状を処置、防止又は阻害するのに十分な化合物又は組成物の量を意味することを意図している。そのような量に対応する本出願の所与の化合物又は組成物の量は、所与の化合物又は組成物、医薬製剤、投与経路、疾患又は障害の種類、処置される対象の同一性などの様々な因子に応じて変化するが、それにもかかわらず、当業者によって日常的に決定することができる。
【0074】
本明細書で使用される「投与される」という用語は、細胞培養又は対象のいずれかにおける細胞への、適用又は(R)-MDMA、その医薬上許容可能な塩及び/又は溶媒和物の組成物の治療有効量の投与を意味する。
【0075】
本明細書で使用され、当技術分野でよく理解されている「処置するため(to treat)」、「処置すること(treating)」及び「処置(treatment)」という用語は、臨床的結果を含む有益な結果又は所望の結果を得るためのアプローチを意味する。任意の疾患、障害又は病状に関する有益な臨床的結果又は所望の臨床的結果の例としては、検出可能又は検出不能にかかわらず、範囲の縮小、安定化(すなわち、悪化しない)状態、拡大の防止、進行の遅延又は減速、状態の改善又は緩和、及び鎮静(部分的であろうと全体的であろうと)が挙げられるが、これらに限定されない。「処置するため(To treat)」、「処置すること(treating)」及び「処置(treatment)」はまた、処置を受けない場合の予想される生存と比較して、生存を延長することを意味し得る。本明細書で使用される「処置するため(to treat)」、「処置すること(treating)」及び「処置(treatment)」はまた、予防的処置を含む。
【0076】
疾患、障害又は病状を「緩和する(Palliating)」とは、疾患、障害又は病状を処置しない場合と比較して、疾患、障害又は病状の程度及び/又は望ましくない臨床徴候が軽減されること、及び/又は進行の時間経過が遅くなるか又は長くなることを意味する。
【0077】
本明細書で使用される「防止(prevention)」若しくは「予防(prophylaxis)」という用語、又はそれらの同義語は、患者が疾患、障害若しくは病状に罹患するか、又は疾患、障害若しくは病状に関連する症候を呈するリスク又は確率の低減を指す。
【0078】
本明細書で使用される「オン時間」という用語は、L-DOPAの抗パーキンソン病効果の持続時間を意味する。
【0079】
例えば、本出願の処置方法、使用、組成物及び/又はキットに関して使用される場合、対象、例えば「それを必要とする」対象は、本出願の組成物あるいは(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の投与から利益を得る疾患、障害又は病状について診断及び/又は処置された対象である。
【0080】
本明細書で使用される「エナンチオマー当量」という用語は、エナンチオマーが塩及び/又は溶媒和物として存在するかどうかにかかわらず、式Iの化合物の各エナンチオマー、すなわち(R)-I及び(S)-Iの塩基化合物のモル量を指す。したがって、(R)-I及び(S)-Iの各々のエナンチオマー当量のパーセントは、(R)-I又は(S)-Iのいずれかのモル量を(R)-I及び(S)-Iの両方の総モル量で割ったものによって定義される。任意のアニオン形成塩及び/又は溶媒和物形成溶媒の量は除外され、(R)-I及び(S)-Iの各々のエナンチオマー当量のパーセントを決定する際には考慮されない。
【0081】
II.本出願の非ラセミ組成物
本出願は、式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む組成物を含む。
【0082】
【0083】
式中、R1は、CH3又はCH2CH3であり、
(R)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物は、(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物と比較して、エナンチオマー当量としてより多い量で組成物中に存在する。
【0084】
いくつかの実施形態では、組成物は、エナンチオマー当量で約70%~約99%の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びにエナンチオマー当量で約1%~約30%の式(S)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、組成物は、エナンチオマー当量で約70%~約79.9%の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びにエナンチオマー当量で約20.1%~約30%の式(S)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、組成物は、エナンチオマー当量で約70%~約75%の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びにエナンチオマー当量で25%~約30%の式(S)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物を含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、組成物は、エナンチオマー当量で約75%~約79.9%の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びにエナンチオマー当量で約20.1%~約25%の式(S)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、組成物は、エナンチオマー当量で約80%~約89.9%の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びにエナンチオマー当量で約10.1%~約20%の式(S)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物を含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、組成物は、エナンチオマー当量で約80%~約85%の式(R)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びにエナンチオマー当量で約15%~約20%の式(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、組成物は、エナンチオマー当量で約80%の式(R)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びにエナンチオマー当量で約20%の式(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、組成物は、エナンチオマー当量で約85%~約89.9%の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びにエナンチオマー当量で約10.1%~約15%の式(S)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、組成物は、エナンチオマー当量で約90%~約99%の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びにエナンチオマー当量で約1%~約10%の式(S)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、組成物は、エナンチオマー当量で約90%~約95%の式(R)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びにエナンチオマー当量で約5%~約10%の式(S)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、組成物は、エナンチオマー当量で約95%~約99%の式(R)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びにエナンチオマー当量で約1%~約5%の式(S)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、R1はCH3であり、式(R)-Iの化合物は(R)-3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン((R)-MDMA)であり、式(S)-Iの化合物は(S)-3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン((S)-MDMA)である。
【0096】
いくつかの実施形態では、R1はCH2CH3であり、式(R)-Iの化合物は(R)-N-メチル-1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミン((R)-MBDB)であり、式(S)-Iの化合物は(S)-N-メチル-1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミン((S)-MBDB)である。
【0097】
(R)-MDMA及び(S)-MDMA(R1がCH3である、式(R)-Iの化合物及び式(S)-Iの化合物)は、様々な合成プロセスによって調製することができる。特定のプロセスの選択は、当業者の理解の範囲内である。例えば、(R)-MDMA及び(S)-MDMAは、例えば、Dunlapら(2018),ACS Chem Neurosci;9(10):2408-2427;Llabresら(2014),European J.of Med.Chem.81(2014)35-46;Huotら(2011),J Neurosci.(2011)May 11;31(19):7190-7198及びFelimら、Chem Res Toxicol.2010 23(1):211-9に開示される方法によって調製され得る。
【0098】
(R)-MBDB及び(S)-MBDB(R1がCH2CH3である、式(R)-Iの化合物及び式(S)-Iの化合物)は、様々な合成プロセスによって調製することができる。特定のプロセスの選択は、当業者の理解の範囲内である。例えば、上記の(R)-MDMA及び(S)-MDMAを調製する方法、又は同時係属中の米国仮出願第63/201,609号、米国仮出願第63/203,099号、米国仮出願第63/201,610号、及び米国仮出願第63/203,101号に開示されている方法によって、(R)-MBDB及び(S)-MBDBを調製することができる。
【0099】
あるいは、式(R)-Iの化合物及び式(S)-Iの化合物は、当技術分野で公知のエナンチオマー分離方法を使用して、例えばクロマトグラフィー、結晶化又はラセミ混合物から個々のエナンチオマーを単離するための他のかかる方法を使用して入手可能である。
【0100】
いくつかの実施形態では、式(R)-Iの化合物及び/又は式(S)-Iの化合物は、塩として提供される。適切な塩の選択は、当業者によって行われ得る。基礎医薬化合物からの医薬上許容可能な塩の形成に一般に適していると考えられる酸は、例えば、P.Stahlら、Camille G.(eds.)and Handbook of Pharmaceutical Salts.Properties,Selection and Use.(2002)Zurich:Wiley VCH;S.Bergeら、Journal of Pharmaceutical Sciences 1977 66(1)1-19;P.Gould,International J.of Pharmaceutics(1986)33 201-217;Andersonら、The Practice of Medicinal Chemistry(1996)、Academic Press,New York;及びThe Orange Book(Food&Drug Administration,Washington,D.C.(ウェブサイト上))によって論じられている。
【0101】
いくつかの実施形態では、対象の処置に適した、又は対象の処置に適合する酸付加塩は、任意の非毒性の有機付加塩又は無機酸付加塩である。適切な塩を形成する例示的な無機酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸及びリン酸、並びにオルトリン酸一水素ナトリウム及び硫酸水素カリウムなどの酸性金属塩が挙げられる。適切な塩を形成する例示的な有機酸としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸及びトリカルボン酸が含まれる。そのような有機酸の例は、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、桂皮酸、マンデル酸、サリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、p-トルエンスルホン酸、並びにメタンスルホン酸、エタンスルホン酸及び2-ヒドロキシエタンスルホン酸などの他のスルホン酸である。いくつかの実施形態では、例示的な酸付加塩としては、酢酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、カンファ酸塩(camphorates)、カンファスルホン酸塩(camphorsulfonates)、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩(「メシル酸塩」)、ナフタレンスルホン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩としても知られる)なども挙げられる。いくつかの実施形態では、塩は、水和、溶媒和又は実質的に無水のいずれかの形態で存在する。一般に、酸付加塩は、水及び様々な親水性有機溶媒により可溶性であり、一般に、それらの遊離塩基形態と比較してより高い融点を示す。
【0102】
式(R)-I又は式(S)-Iの化合物の塩は、当業者に公知の方法によって、例えば、塩が沈殿する媒体中又は水性媒体中で、(R)-I又は(S)-Iを等量などのある量の酸と反応させ、続いて凍結乾燥することによって形成され得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、式(R)-Iの化合物及び/又は式(S)-Iの化合物は、溶媒和物として提供される。溶媒和物としては、例えば、医薬上許容可能な溶媒を用いて作製されたものが挙げられる。このような溶媒としては、例えば、水(得られた溶媒和物を水和物と呼ぶ)、エタノールなどが挙げられる。適切な溶媒は、投与される投与量で生理学的に許容される。
【0104】
一般に、溶媒和物は、化合物を適切な溶媒に溶解し、冷却によって、又は逆溶剤を使用して溶媒和物を単離することによって形成される。溶媒和物は、典型的には、周囲条件下で乾燥又は共沸される。特定の溶媒和物を形成するための適切な条件の選択は、当業者によって行われ得る。
【0105】
式(R)-Iの化合物及び式(S)-Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物は、様々な多形形態でさらに存在してもよく、任意の多形又はその混合物が企図され、その形態が本出願の範囲内に含まれる。
【0106】
いくつかの実施形態では、式(R)-Iの化合物及び式(S)-Iの化合物は、両方とも遊離塩基形態である。いくつかの実施形態では、式(R)-Iの化合物及び式(S)-Iの化合物は、両方とも酸塩形態である。
【0107】
式(R)-Iの化合物及び式(S)-Iの化合物並びに/又はその塩及び/若しくは溶媒和物は、インビボ投与に適した生物学的に適合性の形態で対象に投与するための医薬組成物に適切に製剤化される。したがって、一実施形態では、本出願の組成物は医薬組成物であり、1又は複数の医薬上許容可能な担体をさらに含む。
【0108】
本出願の医薬組成物は、当業者によって理解されるように、選択された投与経路に応じて様々な形態で対象に投与される。例えば、本出願の組成物は、経口、吸入、非経口、頬側、舌下、鼻、直腸、膣、パッチ、ポンプ、ミニポンプ、局所又は経皮投与によって投与され、それに応じて医薬組成物が製剤化される。いくつかの実施形態では、投与は、周期的又は連続的な送達のためのポンプによるものである。適切な組成物の選択及び調製のための従来の手順及び成分は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(2000-20th edition)及び1999年に公開されたThe United States Pharmacopeia:The National Formulary(USP 24 NF19)に記載されている。
【0109】
非経口投与には、胃腸(GI)管以外の全身送達経路が含まれ、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、経上皮、経鼻、肺内(例えば、エアロゾルの使用による)、クモ膜下腔内、直腸及び局所(パッチ又は他の経皮送達デバイスの使用を含む)投与様式が含まれる。非経口投与は、選択された期間にわたる連続注入によるものであり得る。
【0110】
いくつかの実施形態では、本出願の組成物は、例えば、不活性希釈剤又は同化可能な食用担体と共に経口投与され、又は硬質若しくは軟質シェルゼラチンカプセルに封入されてもよく、又は錠剤に圧縮されてもよく、又は食事の食物に直接組み込まれてもよい。経口治療的投与のために、組成物は、エクシピエント(excipient)と共に組み込まれ、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、カプレット、ペレット、顆粒、ロゼンジ、チューインガム、粉末、シロップ、エリキシル、ウエハー、水溶液又は懸濁液などの形態で使用され得る。錠剤の場合、使用される担体としては、ラクトース、コーンスターチ、クエン酸ナトリウム及びリン酸の塩が挙げられる。医薬上許容可能なエクシピエントとしては、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロース又はリン酸カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)が挙げられる。錠剤は、当技術分野で周知の方法によってコーティングされる。経口投与用の錠剤、カプセル、カプレット、ペレット又は顆粒の場合、活性成分の放出を制御するように設計されたEudragits(商標)などのpH感受性腸溶コーティングが任意に使用される。経口剤形はまた、改良型放出製剤、例えば即時放出製剤及び時間放出製剤を含む。改良型放出製剤の例としては、例えば、コーティング錠、浸透圧送達デバイス、コーティングカプセル、マイクロカプセル化ミクロスフェア、例えば分子篩型粒子のような凝集粒子、又は繊維状パケットに凝集又は保持された微細中空透過性繊維束又は細断中空透過性繊維の形態で使用される、例えば、持続放出(SR)、延長放出(ER、XR又はXL)、時間放出又は時限放出、制御放出(CR)、又は連続放出(CR又はコンチン)が挙げられる。時限放出組成物は、例えば、リポソーム中に、又は組成物がマイクロカプセル化、多重コーティングなどによって示差的に分解可能なコーティングで保護されているリポソーム中に製剤化することができる。リポソーム送達システムには、例えば、小さい単層小胞、大きい単層小胞及び多層小胞が含まれる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリンなどの様々なリン脂質から形成され得る。カプセル形態での経口投与のために有用な担体又は希釈剤には、ラクトース及び乾燥コーンスターチが含まれる。
【0111】
いくつかの実施形態では、経口投与用の液体製剤は、例えば溶液、シロップ又は懸濁液の形態をとるか、又は使用前に水又は他の適切なビヒクル(複数可)で再構成するための乾燥製品として適切に提供される。水性懸濁液及び/又はエマルジョンを経口投与する場合、本出願の組成物は、乳化剤及び/又は懸濁化剤と組み合わせた油性相に適切に懸濁又は溶解される。所望であれば、特定の甘味剤及び/又は香味剤及び/又は着色剤を添加する。いくつかの実施形態では、経口投与用のそのような液体製剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロース又は水素化食用脂肪)などの医薬上許容可能な添加剤;乳化剤(例えば、レシチン又はアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル又はエチルアルコール);防腐剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチル若しくはプロピル又はソルビン酸)を用いて従来の手段によって調製される。有用な希釈剤には、ラクトース及び高分子量ポリエチレングリコールが含まれる。
【0112】
いくつかの実施形態では、本出願の組成物は、固体又は半固体組成物として製剤化される。いくつかの実施形態では、本出願の組成物は、錠剤、頬側錠剤、トローチ、カプセル、カプレット、ペレット、顆粒、ロゼンジ、チューインガム、粉末、シロップ、エリキシル、ウエハー、水溶液又は懸濁液として製剤化される。いくつかの実施形態では、本出願の組成物は、錠剤又はカプセルとして製剤化される。いくつかの実施形態では、本出願の組成物は、錠剤として製剤化される。
【0113】
本出願の組成物を凍結乾燥し、得られた凍結乾燥物は、例えば注射用製品の調製に使用することも可能である。
【0114】
いくつかの実施形態では、本出願の組成物は非経口投与される。例えば、本出願の組成物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製される。いくつかの実施形態では、分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、DMSO、及びアルコールを含む又は含まないそれらの混合物中、及び油中で調製される。保存及び使用の通常の条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するために保存剤を含有する。当業者は、適切な製剤を調製する方法を知っているであろう。非経口投与のために、本出願の組成物の滅菌溶液が通常調製され、溶液のpHが適切に調整され、緩衝される。静脈内使用の場合、溶質の総濃度は、調製物を等張性にするように制御されるべきである。眼投与の場合、軟膏又は滴下可能な液体は、例えば、アプリケータ又は点眼器などの当技術分野で公知の眼送達システムによって送達される。いくつかの実施形態では、そのような製剤は、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルアルコールなどの粘膜模倣薬、ソルビン酸、EDTA又は塩化ベンジルクロムなどの防腐剤、及び通常量の希釈剤又は担体を含む。肺投与の場合、希釈剤又は担体は、エアロゾルの形成を可能にするために適切であるように選択される。
【0115】
いくつかの実施形態では、本出願の組成物は、従来のカテーテル法又は注入を使用することを含む、注射による非経口投与のために製剤化されている。注射用組成物は、例えば、防腐剤が添加された、単位剤形(例えばアンプル)又は複数回投与容器で提供される。いくつかの実施形態では、組成物は、油性ビヒクル又は水性ビヒクル中の滅菌懸濁液、溶液又はエマルジョンとして製剤化され、懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散剤などの製剤化剤を含有する。すべての場合において、形態は無菌でなければならず、容易な注射可能性が存在する程度に流動性でなければならない。あるいは、本出願の組成物は、使用前に適切なビヒクル、例えば滅菌発熱物質非含有水で再構成するための滅菌粉末形態であることが適切である。
【0116】
MDMA(±)3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン、「エクスタシー」)は、共感、社会性、及び対人親近感を増大するため、娯楽的に使用されると報告されている。臨床研究及びいくつかの動物研究を通して、MDMA代謝はかなり複雑であることが知られている。それは2つの主な肝臓代謝経路を含む:(1)例えば(±)-4-ヒドロキシ-3-メトキシメタンフェタミン(HMMA)、及び/又はグルクロニド/硫酸コンジュゲーを生成するための、O-脱メチル化;(2)例えば(±)-3,4-メチレンジオキシアンフェタミン(MDA)及び3,4-ジヒドロキシメタンフェタミン(DHMA)、(±)-3,4-ジヒドロキシアンフェタミン(HHA)を生成するための、グリシンとコンジュゲートした対応する安息香酸誘導体のN-脱アルキル化、脱アミノ化及び酸化(Baumann MHら、Drug Metab Dispos.2009;37(11):2163-70)。
【0117】
送達経路に基づくラットにおけるMDMAのCmaxの顕著な差が観察されている(Baumann MHら、Drug Metab Dispos.2009;37(11):2163-70)。2mg/kgでは、最大MDMA濃度は、腹腔内経路(210ng/ml)及び皮下経路(196ng/ml)で約200ng/mlであったが、経口経路(46ng/ml)ではより低かった。より高用量(10mg/kg)では、腹腔内投与経路(2257ng/ml)及び皮下投与経路(1130ng/ml)を介したCmaxは、経口経路(966ng/ml)よりも高かった。
【0118】
ラセミの3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)の(R)-エナンチオマー及び(S)-エナンチオマーは異なる用量-濃度曲線を示すことも知られている。MDMA、MDA、DHMA、DHMA硫酸塩、HMMA、HMMA硫酸塩、及びHMMAグルクロニドは、ヒト尿中に実質的な量で排泄されることが示されている(Schwaninger AEら、Biochem Pharmacol.2012;83(1):131-8)。クレアチニン正規化後、硫酸HMMAを除くすべての化合物について、2つのエナンチオマー(個々の代謝産物のR-及びS-)間の統計学的に有意な差が観察された。MDMA、DHMA及び硫酸HMMAではより高いR-エナンチオマーCmaxが観察されたが、硫酸DHMA、HMMA、HMMAグルクロニド及びMDAではS-エナンチオマーがより高かった。エラー!参照ソースが見つからない。
【0119】
口腔粘膜は、時折、薬物吸収部位として使用される。錠剤又はトローチ剤を口腔内で完全に溶解させる舌下投与は、口腔上皮の透過性を利用し、ニトログリセリン及びオキシトシンなどのいくつかの強力な親油性薬物、さらには経口鎮静剤トリアゾラムの投与経路である。
【0120】
MDMAは、MDMA支援心理療法を介して外傷後ストレス障害(PTSD)を処置するための第3相試験における有効性を実証している。これは、複雑な薬理学を有し、脳内の複数の受容体に影響を及ぼすことが知られている。
【0121】
いくつかの実施形態では、鼻腔内投与は、中枢神経系(CNS)への精神薬理学的薬剤の送達への直接的経路及び間接的経路の両方を提供すると考えられている。嗅覚上皮及び呼吸上皮への鼻腔内の沈着及び吸収後の嗅覚神経経路及び三叉神経経路を介した直接的な鼻から脳への輸送は、CNSへの薬物送達の障害である血液脳関門(BBB)を回避する非侵襲的手段を提供する。いくつかの実施形態では、他の投与経路(例えば、経口投与)と比較して、鼻腔内は、初回通過代謝を回避することによって、使いやすさ、全身曝露の低減、薬物開始の迅速化、コンプライアンスの増大、及びバイオアベイラビリティの向上を提供する(Kellerら、Drug Deliv.and Transl.Res.12,735-757(2022))。
【0122】
したがって、いくつかの実施形態では、舌下投与及び鼻腔内投与は薬物破壊を回避する。いくつかの実施形態では、舌下投与及び鼻腔内投与は、胃酸並びに腸及び肝臓の酵素を迂回することによって薬物破壊を回避する。
【0123】
いくつかの実施形態では、舌下吸収及び鼻腔内吸収は、例えば経口投与を使用する場合、腸取り込みと比較してより効率的である。いくつかの実施形態では、舌下投与又は鼻腔内投与を用いた薬物効果の発現は、経口投与を用いた同じ薬物効果の発現と比較してより速い。
【0124】
いくつかの実施形態では、経口投与と比較して、舌下投与又は鼻腔内投与を使用すると、より良好な薬物吸収及び代謝プロファイルが達成される。いくつかの実施形態では、舌下投与又は鼻腔内投与を使用すると、経口投与と比較して肝臓代謝がより抑制される。いくつかの実施形態では、経口投与によって同じ生物学的効果を達成するための活性成分の用量と比較して、舌下投与又は鼻腔内投与によって生物学的効果を達成するためには、より低い用量の活性成分、例えばMDMAが使用される。いくつかの実施形態では、舌下投与又は鼻腔内投与は、経口投与と比較して、活性成分、例えばMDMAについてより良好なバイオアベイラビリティ及びより良好な安全性プロファイルを提供する。
【0125】
したがって、いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む組成物は、鼻腔内投与又は使用のために製剤化されている。
【0126】
したがって、いくつかの実施形態では、本出願はまた、式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む鼻腔内組成物を含む。
【0127】
【0128】
式中、R1は、CH3又はCH2CH3であり、
(R)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物は、(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物と比較して、エナンチオマー当量としてより多い量で組成物中に存在する。
【0129】
いくつかの実施形態では、鼻腔内組成物中の非ラセミ混合物中の式(R)の化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びに(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物の量又はエナンチオマー当量は、上記の通りである。
【0130】
いくつかの実施形態では、式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びに(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物の非ラセミ混合物を含む組成物は、本明細書に記載の疾患、障害又は病状のいずれかの処置における使用又は投与のためのものである。
【0131】
いくつかの実施形態では、経鼻投与のための組成物は、エアロゾル、滴剤、ゲル及び粉末として都合よく製剤化されている。鼻腔内投与又は吸入による投与のために、本出願の組成物は、対象によって圧搾又はポンプ輸送されるポンプスプレー容器からの溶液、乾燥粉末製剤又は懸濁液の形態で、又は加圧容器又はネブライザーからのエアロゾルスプレーの提示として都合よく送達される。エアロゾル組成物は、典型的には、生理学的に許容可能な水性又は非水性溶媒中に本出願の組成物の溶液又は微細懸濁液を含み、通常、例えば霧化装置と共に使用するためのカートリッジ又はリフィルの形態をとる密封容器内の滅菌形態で単回又は複数回の投与量で提供される。あるいは、密閉容器は、使用後の廃棄を目的とした計量弁を備えた単回用量鼻吸入器又はエアロゾルディスペンサなどの一体型分配装置である。剤形がエアロゾルディスペンサを含む場合、それは、例えば圧縮空気などの圧縮ガス又はフルオロクロロ炭化水素などの有機噴射剤である噴射剤を含む。適切な噴射剤としては、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ヘプタフルオロアルカン、二酸化炭素又は別の適切なガスが挙げられるが、これらに限定されない。加圧エアロゾルの場合、投与単位は、計量された量を送達するための弁を提供することによって適切に決定される。いくつかの実施形態では、加圧容器又はネブライザーは、本出願の組成物の溶液又は懸濁液を含有する。吸入器又は注入器で使用するためのカプセル及びカートリッジ(例えばゼラチンから作製される)は、例えば、本出願の組成物とラクトース又はデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含有して製剤化されている。エアロゾル剤形はポンプ噴霧器の形態をとることもできる。
【0132】
いくつかの実施形態では、式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む鼻腔内医薬組成物は、ポンプ噴霧器と共に使用するためのエアロゾルとして製剤化されている。
【0133】
いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む鼻腔内医薬組成物は、粉末である。いくつかの実施形態では、粉末は乾燥粉末である。いくつかの実施形態では、乾燥粉末は、使用前又は投与前に適切なビヒクルで再構成されるように製剤化されている。いくつかの実施形態では、適切なビヒクルは、滅菌発熱物質非含有水である。
【0134】
いくつかの実施形態では、粉末は、吸入器又は注入器での使用又は投与のために製剤化されている。したがって、いくつかの実施形態では、乾燥粉末は、吸入器又は注入器で使用するためのカプセル及びカートリッジとして使用又は投与するために製剤化されている。
【0135】
いくつかの実施形態では、乾燥粉末は、適切な粉末基剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、適切な粉末基剤は、ラクトース又はデンプンを含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む鼻腔内医薬組成物は、水をさらに含む。したがって、いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む鼻腔内医薬組成物は、水をさらに含み、水性鼻腔内医薬組成物である。
【0137】
いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む鼻腔内医薬組成物は、溶液、懸濁液又はエマルジョンである。いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む鼻腔内医薬組成物は、溶液である。
【0138】
いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む水性鼻腔内医薬組成物は、滴剤の形態での鼻への投与のために製剤化されている。いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む水性鼻腔内医薬組成物は、鼻スプレーとしての投与のために製剤化されている。いくつかの実施形態では、鼻スプレーは、患者によって圧搾又は圧送されるポンプスプレー容器から溶液又は懸濁液の形態で、又は加圧容器又はネブライザーからのエアロゾルスプレーの提示として送達される。いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む水性鼻腔内医薬組成物は、ポンプ噴霧器と共に使用するためのエアロゾルとして製剤化されている。
【0139】
いくつかの実施形態では、水が、鼻腔内医薬組成物中に、組成物の約50重量%~約75重量%、約50重量%~約70重量%、約50重量%~約65重量%、約33重量%~約75重量%、約55重量%~約70重量%又は約55重量%~約65重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、水が、組成物の約50重量%、約60重量%、約65重量%又は約70%の量で存在する。いくつかの実施形態では、水が、組成物の約55重量%~約65重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、水が、組成物の約60重量%である。
【0140】
頬側投与又は舌下投与に適した組成物には、錠剤、ロゼンジ、及びトローチ剤が含まれ、ここで、本出願の組成物は、糖、アカシア、トラガカント、又はゼラチンなどの担体及びグリセリンと共に製剤化されている。直腸投与のための組成物は、好都合には、カカオバターなどの従来の坐剤基剤を含有する坐剤の形態である。
【0141】
いくつかの実施形態では、本出願の組成物は、舌下投与又は使用のために製剤化されている。
【0142】
したがって、いくつかの実施形態では、本出願はまた、式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む舌下組成物を含む。
【0143】
【0144】
式中、R1は、CH3又はCH2CH3であり、
(R)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物は、(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物と比較して、エナンチオマー当量としてより多い量で組成物中に存在する。
【0145】
いくつかの実施形態では、本出願の舌下組成物中の非ラセミ混合物中の化合物の量又はエナンチオマー当量は、上記の通りである。
【0146】
いくつかの実施形態では、非ラセミ混合物を含む舌下組成物は、本明細書に記載の疾患、障害又は病状のいずれかの処置に使用される。
【0147】
いくつかの実施形態では、舌下組成物は、錠剤、ドロップ、ストリップ、スプレー、ロゼンジ又は発泡性錠剤として製剤化されている。
【0148】
本出願の組成物の坐剤形態は、膣投与、尿道投与及び直腸投与に有用である。そのような坐剤は、一般に、室温で固体であるが体温で融解する物質の混合物から構築される。そのようなビヒクルを作製するために一般的に使用される物質には、テオブロマ油(カカオバターとしても知られる)、グリセリン化ゼラチン、他のグリセリド、水素化植物油、様々な分子量のポリエチレングリコールの混合物及びポリエチレングリコールの脂肪酸エステルが含まれるが、これらに限定されない。例えば、坐剤剤形のさらなる考察については、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th Ed.,Mack Publishing,Easton,PA,1980,pp.1530-1533を参照されたい。
【0149】
いくつかの実施形態では、本出願の組成物は、約40mg~約180mgの式(R)-Iの化合物及び式(S)-Iの化合物の両方並びに/又はその塩及び/若しくは溶媒和物を含む。いくつかの実施形態では、本出願の組成物は、40mg、60mg、75 mg、80mg、100mg、120mg又は125 mgの式(R)-Iの化合物及び式(S)-Iの化合物の両方並びに/又はその塩及び/若しくは溶媒和物を含む。いくつかの実施形態では、投与様式に応じて、本出願の組成物は、約0.05重量%~約99重量%又は約0.10重量%~約70重量%の式(R)-Iの化合物及び式(S)-Iの化合物の両方、並びに/又はその塩及び/若しくは溶媒和物と、約1重量%~約99.95重量%又は約30重量%~約99.90重量%の1又は複数の医薬上許容可能な担体とを含む医薬組成物であり、すべての重量パーセントは全組成物に基づく。
【0150】
いくつかの実施形態では、式(R)-Iの化合物及び式(S)-Iの化合物並びに/又はその塩及び/若しくは溶媒和物は、有効量で、例えば、式Iの化合物並びに/又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置から利益を得るか、又は式Iの化合物並びに/又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物と組み合わせて心理療法から利益を得る疾患、障害又は病状を処置又は防止するための有効量で、組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、有効量は、下記の方法及び使用のセクションに記載されるように決定される。
【0151】
いくつかの実施形態では、本出願の組成物は、追加の治療剤と、任意に1又は複数の医薬上許容可能な担体とを含む、医薬組成物である。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、式Iの化合物並びに/又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置から利益を得るか、又は式Iの化合物並びに/又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物と組み合わせて心理療法による処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置するのに有用な公知の薬剤である。
【0152】
III.本出願の方法及び使用
(i)本出願の組成物の方法及び使用
いくつかの実施形態では、医薬組成物を含む本出願の組成物は、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置の有害な副作用を低減する方法において使用することができる。
【0153】
【0154】
式中、
R1はCH3及びCH2CH3から選択され、
本方法は、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む治療有効量の1又は複数の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0155】
本出願はさらに、式I又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置の有害な副作用を低減するための、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物の使用、式I又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置の有害な副作用を低減するための医薬を調製するための、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物の使用、並びに式I又は医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置の有害な副作用を低減するために使用するための、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1つ又は複数の組成物を含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、有害な副作用は、神経毒性、高体温、及び物質使用障害のうちの1又は複数から選択される。いくつかの実施形態では、物質使用障害は、薬物乱用又は薬物依存症である。いくつかの実施形態では、物質使用障害は、式Iの化合物の薬物乱用である。
【0157】
いくつかの実施形態では、有害な副作用は、高体温及び神経毒性のうちの1又は複数から選択される。
【0158】
報告では、MDMAの長期使用が心臓弁線維形成及び心臓弁膜症(VHD)などの機能不全をもたらし得ることが示唆されている(Setolaら、Mol.Pharmacol.63:1223-1229,2003)。したがって、いくつかの実施形態では、有害な副作用は心毒性である。いくつかの実施形態では、心毒性は心臓弁線維形成及び機能不全である。いくつかの実施形態では、心毒性は心臓弁膜症である。したがって、いくつかの実施形態では、有害な副作用は心臓弁膜症である。
【0159】
本出願はまた、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置する方法を含む。
【0160】
【0161】
式中、
R1はCH3及びCH2CH3から選択され、
本方法は、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む治療有効量の1又は複数の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0162】
本出願はさらに、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置するための、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物の使用、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置するための医薬の調製のための、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物の使用、並びに式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置するために使用するための、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1つ又は複数の組成物を含む。
【0163】
いくつかの実施形態では、R1はCH3であり、上記に定義される方法及び使用における式Iの化合物はラセミ3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)である。
【0164】
いくつかの実施形態では、R1はCH2CH3であり、上記に定義される方法及び使用における式Iの化合物はラセミN-メチル-1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミン(MBDB)である。
【0165】
本出願人は、BTBRマウスにおけるS(+)-MDMA及びMDMAのラセミ組成物が用量依存的な温度上昇を誘発することを示した。しかしながら、式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びに(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物の非ラセミ混合物を含む例示的組成物及び純粋なR(-)-MDMAの組成物は、コア温度に有意な効果を誘発しなかった。高体温は、細胞損傷及び神経毒性をもたらすことが知られている(Walter and Carraretto,Crit Care.2016 Jul 14;20(1):199)。
【0166】
したがって、いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物の投与又は使用は、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置と比較して、有害な副作用が少ない。
【0167】
したがって、いくつかの実施形態では、本出願は、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置する方法を含む。
【0168】
【0169】
式中、
R1はCH3及びCH2CH3から選択され、
本方法は、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む治療有効量の1又は複数の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含み、
本方法は、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置と比較して、有害な副作用が少ないことをさらに含む。
【0170】
本出願はさらに、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置し、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置と比較して有害な副作用が少ない、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物の使用、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置し、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置と比較して有害な副作用が少ない医薬の調製のための、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物の使用、並びに式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置し、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置と比較して有害な副作用を低減させるために使用するための、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1つ又は複数の組成物を含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、有害な副作用は、神経毒性、高体温、及び物質使用障害のうちの1又は複数から選択される。いくつかの実施形態では、物質使用障害は、薬物乱用又は薬物依存症である。いくつかの実施形態では、物質使用障害は、式Iの化合物の薬物乱用である。
【0172】
いくつかの実施形態では、有害な副作用は、高体温及び神経毒性のうちの1又は複数から選択される。いくつかの実施形態では、有害な副作用は、高体温である。
【0173】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、社交不安障害、鬱病、アルコール嗜癖、及び摂食障害の1又は複数を含むがこれらに限定されない、心理療法から利益を得る任意の疾患、障害又は病状である。
【0174】
いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物は、疾患、障害又は病状を処置するために心理療法と組み合わせて投与又は使用される。いくつかの実施形態では、1又は複数の組成物は、心理療法の有効性を改善する。いくつかの実施形態では、心理療法は、精神障害のためのものである。
【0175】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状は、1又は複数の精神障害である。いくつかの実施形態では、1又は複数の精神障害は、不安障害、気分障害、発達障害、物質使用障害及び嗜癖、摂食障害、人格障害及び精神病性障害のうちの1又は複数から選択される。いくつかの実施形態では、物質使用障害は、薬物乱用又は薬物依存症である。
【0176】
いくつかの実施形態では、不安障害は、強迫性障害(OCD)、社交不安障害、恐怖症、パニック障害及び心的外傷後ストレス障害(PTSD)のうちの1又は複数から選択される。いくつかの実施形態では、不安障害は、社交不安障害である。いくつかの実施形態では、不安障害は、PTSDである。
【0177】
いくつかの実施形態では、気分障害は、鬱病及び双極性障害の一方又は両方から選択される。
【0178】
いくつかの実施形態では、発達障害は、自閉症スペクトラム障害(ASD)から選択される。いくつかの実施形態では、発達障害は、アスペルガー症候群である。
【0179】
いくつかの実施形態では、物質使用障害及び嗜癖は、アルコール中毒、薬物乱用、薬物依存症及び強迫的ギャンブリングのうちの1又は複数から選択される。いくつかの実施形態では、薬物依存症は、オピオイド依存症である。いくつかの実施形態では、物質使用障害は、オピオイド使用障害である。
【0180】
いくつかの実施形態では、摂食障害は、食欲不振及び過食症から選択される。
【0181】
いくつかの実施形態では、人格障害は、境界性人格障害及び依存性人格障害から選択される。
【0182】
いくつかの実施形態では、精神病性障害は、統合失調症及び現実からの離隔を引き起こす他の障害から選択される。
【0183】
いくつかの実施形態では、1又は複数の精神障害は、自閉症スペクトラム障害(ASD)、鬱病及び薬物依存症のうちの1又は複数から選択される。いくつかの実施形態では、鬱病は、例えば緩和ケア対象におけるものにおける臨床的鬱病である。
【0184】
いくつかの実施形態では、1又は複数の精神障害は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、摂食障害及びアルコール中毒から選択される。いくつかの実施形態では、1又は複数の精神障害は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)である。
【0185】
いくつかの実施形態では、1又は複数の精神障害は、自閉症スペクトラム障害(ASD)、鬱病、及び物質使用障害から選択される。いくつかの実施形態では、鬱病は、例えば緩和ケア対象におけるものにおける臨床的鬱病である。いくつかの実施形態では、物質使用障害は、オピオイド使用障害である。
【0186】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状は、自閉症スペクトラム障害である。
【0187】
いくつかの実施形態では、自閉症スペクトラム障害は、自閉症、アスペルガー症候群、小児崩壊性障害、レット症候群、及び別段特定されない広汎性発達障害から選択される。
【0188】
本出願はまた、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む治療有効量の1又は複数の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状を処置する方法を含む。
【0189】
本出願はさらに、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状を処置するための、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物の使用、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状を処置するための医薬を調製するための、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物の使用、並びに、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状を処置するために用いるための上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物を含む。
【0190】
いくつかの実施形態では、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状は、全般的不安、臨床的不安、過敏性、不適切な発話、常同症、社会的引きこもり、反復的行動及び多動性から選択される。
【0191】
いくつかの実施形態では、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状は、常同症及び社会的引きこもりから選択される。いくつかの実施形態では、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状は、常同症である。いくつかの実施形態では、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状は、社会的引きこもりである。したがって、いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む組成物は、向社会性活性を促進するために使用するためのものである。
【0192】
本出願人は、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む組成物が、自閉症スペクトラム障害のインビボマウスモデルにおいて向社会性行動を促進することを示した。上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む組成物は、自閉症スペクトラム障害のマウスモデルにおいて自発運動活性に影響を及ぼさないことがさらに示されている。本出願人は、BTBRマウスにおけるS(+)-MDMA及びMDMAのラセミ組成物が用量依存的な温度上昇を誘発することを示した。しかしながら、式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びに(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物の非ラセミ混合物を含む例示的組成物及び純粋なR(-)-MDMAの組成物は、コア温度に有意な効果を誘発しなかった。高体温は、細胞損傷及び神経毒性をもたらすことが知られている(Walter and Carraretto,Crit Care.2016 Jul 14;20(1):199)
【0193】
さらに、マウスの常同症又は過剰刺激は、S-MDMA及び高用量のラセミMDMAを投与されたマウスで見られるが、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む組成物では見られないことが示されている。
【0194】
したがって、いくつかの実施形態では、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状を処置するための、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物の投与又は使用は、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置と比較して、有害な副作用が少ない。
【0195】
したがって、本出願はまた、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置と比較して、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状を処置し、有害な副作用が少ない方法を含む。
【0196】
【0197】
式中、
R1はCH3及びCH2CH3から選択され、
本方法は、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む治療有効量の1又は複数の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0198】
本出願はさらに、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状を処置し、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置と比較して有害な副作用が少ない、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物の使用、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の病状を処置し、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置と比較して有害な副作用が少ない、医薬の調製のための上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物の使用、並びに自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状を処置し、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置と比較して有害な副作用を低減させるために使用するための、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1つ又は複数の組成物を含む。
【0199】
いくつかの実施形態では、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状は、常同症及び社会的引きこもりから選択され、有害な副作用は、高体温、常同症及び神経毒性から選択される。いくつかの実施形態では、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状は、常同症及び社会的引きこもりから選択され、有害な副作用は、高体温及び神経毒性から選択される。いくつかの実施形態では、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状は、常同症及び社会的引きこもりから選択され、有害な副作用は、高体温から選択される。
【0200】
いくつかの実施形態では、自閉症スペクトラム障害は、DSM-IVによって定義されるように、1又は複数の症状が以下から選択される:(i)社会的交流における定性的障害;(ii)コミュニケーションの定性的障害;並びに(iii)行動、関心及び活動の制限された反復的及び常同的パターン。
【0201】
いくつかの実施形態では、1又は複数の症状は、社会的交流における定性的障害から選択される。
【0202】
いくつかの実施形態では、社会的交流における定性的障害は、社会的交流を調節するための視線、顔面表情、身体姿勢、及びジェスチャを含む複数の非言語的行動の使用における顕著な障害;発達レベルに適した仲間関係を形成できないこと;(c)他人と楽しみ、興味、又は成果を共有しようとする自発的なものの欠如(例えば、関心対象を示す、持ってくる、又は指摘することの欠如による);(d)社会的又は感情的な相互関係の欠如のうちの1又は複数を含む。
【0203】
いくつかの実施形態では、コミュニケーションの定性的障害は、話し言葉の発達の遅延又は完全な欠如(ジェスチャ又は身ぶりなどの代替のコミュニケーションモードを介して補う試みを伴わない);適切な発話をする個体において、他者との会話を開始又は持続する能力の著しい障害;言語又は固有言語の常同的及び反復的な使用;及び発達レベルに適した多様で自発的なごっこ遊び又は社会的模倣遊びの欠如のうちの1又は複数を含む。
【0204】
いくつかの実施形態では、行動、関心、及び活動の制限された反復的かつ常同的なパターンは、以下のうちの1又は複数を含む:強度又は集中のいずれかにおいて異常である1又は複数の常同的かつ制限された関心のパターンへの包括的な没頭;特定の機能的でないルーチン又は儀式への明らかに柔軟性のない順守;常同的及び反復的な運動癖(例えば、手又は指のフラップ若しくはツイスト又は複雑な全身運動);対象物の一部への持続的な没入。
【0205】
いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物は、第2の薬剤又は「アドオン」療法として投与又は使用される。
【0206】
いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物は、心理療法前、心理療法中及び/又は心理療法後に投与される。いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物は、心理療法中及び/又は心理療法後に投与される。
【0207】
いくつかの実施形態では、心理療法は、行動心理療法、曝露ベースの心理療法、認知心理療法、及び精神力学的指向性心理療法から選択される。
【0208】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状は、L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)による処置から利益を得る任意の疾患、障害又は病状である。
【0209】
いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物は、L-DOPAによる処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置するためにL-DOPAと組み合わせて投与又は使用される。いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物は、L-DOPAの有効性を改善する。いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物は、L-DOPAの有効性を改善するためにL-DOPAと組み合わせて投与又は使用される。
【0210】
いくつかの実施形態では、L-DOPAによる処置から利益を得る疾患、障害又は病状は、パーキンソン病である。
【0211】
本出願はまた、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む治療有効量の1又は複数の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、パーキンソン病を処置するための方法を含む。
【0212】
本出願はさらに、パーキンソン病を処置するための、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物の使用、パーキンソン病を処置するための医薬を調製するための本出願の1又は複数の組成物の使用、並びに、パーキンソン病を処置するために使用するための、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物を含む。
【0213】
いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物は、パーキンソン病を処置するためにL-DOPAと組み合わせて投与又は使用される。いくつかの実施形態では、1又は複数の組成物は、パーキンソン病を処置するためのL-DOPAの有効性を改善する。いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物は、パーキンソン病を処置するためのL-DOPAの有効性を改善するためにL-DOPAと組み合わせて投与又は使用される。
【0214】
いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物は、L-DOPA誘導性ジスキネジアを減少させることによってL-DOPAの有効性を改善する。
【0215】
したがって、いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状は、ジスキネジアである。いくつかの実施形態では、ジスキネジアは、L-DOPA誘導性ジスキネジアである。
【0216】
いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物は、L-DOPAの抗パーキンソン病の効果(例えばオン時間)の持続時間を増大させることによってL-DOPAの有効性を改善する。いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物は、機能障害性(disabling)ジスキネジア無しにL-DOPAの抗パーキンソン病の効果(benefit)の持続時間を増大させることによってL-DOPAの有効性を改善する。
【0217】
いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物は、L-DOPA誘導性パーキンソン病精神症を減少させることによってL-DOPAの有効性を改善する。
【0218】
したがって、いくつかの実施形態では、式Iの化合物又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のラセミ混合物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状は、L-DOPA誘導性パーキンソン病精神症である。
【0219】
「L-DOPA誘導性ジスキネジアを減少させる」又は「L-DOPA誘導性パーキンソン病精神症を減少させる」とは、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物の存在下における、本出願の1又は複数の組成物の非存在下であることを除いて他の点で同一である条件と比較しての、ジスキネジアの検出可能又は検出不能にかかわらない、程度の任意の縮小、安定化(すなわち、悪化しない)状態、進行の遅延又は減速、改善又は緩和、及び鎮静(部分的であろうと全体であろうと)を意味する。
【0220】
「L-DOPAの抗パーキンソン病の効果の持続時間を増大させる」とは、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物の非存在下であることを除いて他の点で同一である条件と比較しての、L-DOPAの抗パーキンソン病の効果の持続時間の任意の増大を意味する。
【0221】
「機能障害性(disabling)ジスキネジア無しにL-DOPAの抗パーキンソン病の効果の持続時間を増大させる」とは、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む1又は複数の組成物の非存在下であることを除いて他の点で同一である条件と比較しての、機能障害性(disabling)ジスキネジア無しにL-DOPAの抗パーキンソン病の効果の持続時間の任意の増大を意味する。
【0222】
L-DOPA誘導性ジスキネジア及び/又は精神症の評価のための方法は、例えば、Foxら、2006 Arch Neurol 63:1343-1344;Gomez-Ramirezら、2006,Mov Disord 21:839-846;Visanjiら、2006,Mov Disord 21:1879-1891;Huotら、Journal of Neuroscience,2011,31(19)7190-7198、及びFoxら、2010 Can J Neurol Sci 37:86-95)に見出されるものなど、当技術分野で周知であることが当業者には理解されよう。
【0223】
いくつかの実施形態では、有効量に相当する、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む所与の組成物の量は、所与の組成物(複数可)、医薬製剤、投与経路、病状、疾患又は障害の種類、処置されている対象の同一性などの因子に応じて変化するが、それでも当業者によって日常的に決定することができる。一実施形態では、有効量は、それによる処置後に、特に処置なしの疾患、障害又は病状の症候と比較して、任意の疾患、障害又は病状の症候の改善又は低減として現れる量である。
【0224】
いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む組成物は、少なくとも週に1回投与される。いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む組成物は、約2週間に1回、約3週間に1回、又は約1ヶ月に1回投与される。いくつかの実施形態では、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む組成物は、約1週間に1回~約1日に1回投与される。いくつかの実施形態では、本出願の組成物は、1日に2回、3回、4回、5回又は6回投与される。処置期間の長さは、疾患、障害又は病状の重症度、対象の年齢、適用の組成物の濃度及び/又は活性、及び/又はそれらの組み合わせなどの様々な因子に依存する。
【0225】
処置に使用される、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む組成物の有効投与量は、特定の処置計画の経過にわたって増大又は減少し得ることも理解されよう。投与量の変化は、当技術分野で公知の標準的な診断アッセイによって生じ、明らかになり得る。場合によっては、長期投与が必要である。例えば、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む組成物は、対象を処置するのに十分な量及び期間で対象に投与される。
【0226】
いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は非ヒト動物である。いくつかの実施形態では、対象はイヌである。いくつかの実施形態では、対象はネコである。したがって、本出願の組成物、方法及び使用は、ヒト及び獣医学の両方の疾患、障害及び病状を対象とする。
【0227】
上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む組成物は、単独で、又は心理療法による処置から利益を得る疾患、障害若しくは病状を処置するのに有用な他の公知の薬剤と組み合わせて使用される。心理療法による処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置するのに有用な他の薬剤と組み合わせて使用される場合、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む組成物がこれらの薬剤と同時期に(contemporaneously)投与される実施形態である。本明細書で使用される場合、2つの物質の対象への「同時期の投与(contemporaneous administration)」とは、それらの両方が同時に個体において活性であるように2つの物質のそれぞれを提供することを意味する。投与の正確な詳細は、互いの存在下での物質の薬物動態に依存し、薬物動態が適切であれば、物質を互いの数時間以内に投与すること、又は一方の物質を他方の投与の24時間以内に投与することさえ含み得る。適切な投与レジメンの設計は、当業者にとって日常的である。特定の実施形態では、物質は、実質的に同時に、すなわち互いに数分以内に、又はすべての物質を含有する単一の組成物で投与される。本出願のさらなる実施形態は、薬剤の組み合わせが非同時期に対象に投与されることである。
【0228】
上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む組成物の投与量は、化合物の薬力学的特性、投与様式、レシピエントの年齢、健康及び体重、症候の性質及び程度、処置の頻度及びもしあれば同時処置の種類、並びに処置される対象における化合物のクリアランス速度などの多くの要因に応じて変化する。当業者は、上記の因子に基づいて適切な投与量を決定することができる。いくつかの実施形態では、本出願の組成物は、臨床応答に応じて必要に応じて調整される適切な投与量で最初に投与される。
【0229】
(ii)(R)-MDMAの方法及び使用
MDMA((R)-MDMA)のRエナンチオマーは、MDMAラセミ体の治療効果を維持しながら、改善された毒物学的プロファイルを有することが示されている。
【0230】
したがって、(R)-MDMA は、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置の有害な副作用が少ない方法において使用することができ、本方法は、治療有効量の(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0231】
本出願はさらに、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置の有害な副作用を軽減するための(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の使用;ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置の有害な副作用を低減するための医薬を調製するための(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の使用、並びに、ラセミMDMA又は医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置の有害な副作用を低減するために使用するための(R)-MDMAの使用を含む。
【0232】
いくつかの実施形態では、有害な副作用は、神経毒性、高体温、及び物質使用障害のうちの1又は複数から選択される。いくつかの実施形態では、物質使用障害は、薬物乱用又は薬物依存症である。いくつかの実施形態では、物質使用障害は、式Iの化合物の薬物乱用である。
【0233】
したがって、いくつかの実施形態では、有害な副作用は、高体温及び神経毒性のうちの1又は複数である。
【0234】
報告では、MDMAの長期使用が心臓弁線維形成及び心臓弁膜症(VHD)などの機能不全をもたらし得ることが示唆されている。したがって、いくつかの実施形態では、有害な副作用は心毒性である。いくつかの実施形態では、心毒性は心臓弁線維形成及び機能不全である。いくつかの実施形態では、心毒性は心臓弁膜症である。したがって、いくつかの実施形態では、有害な副作用は心臓弁膜症である。
【0235】
したがって、(R)-MDMAは、例えば、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置から利益を得る様々な疾患、障害又は病状の処置に有用であり得る。
【0236】
したがって、本出願はまた、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置するための方法であって、治療有効量の(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を含む。
【0237】
本出願はさらに、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置するための(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の使用、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置するための医薬の調製のための(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の使用、並びに、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置するための使用のための(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を含む。
【0238】
本出願人は、BTBRマウスにおけるS(+)-MDMA及びMDMAのラセミ組成物が用量依存的な温度上昇を誘発することを示した。しかしながら、式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む例示的組成物及び純粋なR(-)-MDMAの組成物は、コア温度に有意な効果を誘発しなかった。高体温は、細胞損傷及び神経毒性をもたらすことが知られている(Walter and Carraretto,Crit Care.2016 Jul 14;20(1):199)。
【0239】
いくつかの実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の投与又は使用は、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置と比較して、有害な副作用が少ない。
【0240】
したがって、いくつかの実施形態では、本出願は、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置し、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置と比較して有害な副作用が少ない方法であって、
治療有効量の(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を含む。
【0241】
本出願はさらに、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置し、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置と比較して有害な副作用が少ない(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の使用、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置し、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置と比較して有害な副作用が少ない医薬の調製のための(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の使用、並びに、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置し、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置と比較して有害な副作用が少ない使用のための(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を含む。
【0242】
いくつかの実施形態では、有害な副作用は、神経毒性、高体温、及び物質使用障害のうちの1又は複数から選択される。いくつかの実施形態では、物質使用障害は、薬物乱用又は薬物依存症である。いくつかの実施形態では、物質使用障害は、式Iの化合物の薬物乱用である。
【0243】
いくつかの実施形態では、有害な副作用は、高体温及び神経毒性のうちの1又は複数から選択される。いくつかの実施形態では、有害な副作用は、高体温である。
【0244】
いくつかの実施形態では、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、社交不安障害、鬱病、アルコール嗜癖、及び摂食障害の1又は複数を含むがこれらに限定されない、心理療法から利益を得る任意の疾患、障害又は病状である。
【0245】
いくつかの実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物は、疾患、障害又は病状を処置するために心理療法と組み合わせて投与又は使用される。いくつかの実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物は、心理療法の有効性を改善する。いくつかの実施形態では、心理療法は、精神障害のためのものである。
【0246】
いくつかの実施形態では、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状は、1又は複数の精神障害である。いくつかの実施形態では、1又は複数の精神障害は、不安障害、気分障害、発達障害、物質使用障害及び嗜癖、摂食障害、人格障害及び精神病性障害のうちの1又は複数から選択される。いくつかの実施形態では、物質使用障害は、薬物乱用又は薬物依存症である。
【0247】
いくつかの実施形態では、不安障害は、強迫性障害(OCD)、社交不安障害、恐怖症、パニック障害及び心的外傷後ストレス障害(PTSD)のうちの1又は複数から選択される。いくつかの実施形態では、不安障害は、社交不安障害である。いくつかの実施形態では、不安障害は、PTSDである。
【0248】
いくつかの実施形態では、気分障害は、鬱病及び双極性障害の一方又は両方から選択される。
【0249】
いくつかの実施形態では、発達障害は、自閉症スペクトラム障害(ASD)から選択される。いくつかの実施形態では、発達障害は、アスペルガー症候群である。
【0250】
いくつかの実施形態では、物質使用障害及び嗜癖は、アルコール中毒、薬物乱用、薬物依存症及び強迫的ギャンブリングのうちの1又は複数から選択される。いくつかの実施形態では、薬物依存症は、オピオイド依存症である。いくつかの実施形態では、物質使用障害は、オピオイド使用障害である。
【0251】
いくつかの実施形態では、摂食障害は、食欲不振及び過食症から選択される。
【0252】
いくつかの実施形態では、人格障害は、境界性人格障害及び依存性人格障害から選択される。
【0253】
いくつかの実施形態では、精神病性障害は、統合失調症及び現実からの離隔を引き起こす他の障害から選択される。
【0254】
いくつかの実施形態では、1又は複数の精神障害は、自閉症スペクトラム障害(ASD)、鬱病及び薬物依存症のうちの1又は複数から選択される。いくつかの実施形態では、鬱病は、例えば緩和ケア対象におけるものにおける臨床的鬱病である。
【0255】
いくつかの実施形態では、1又は複数の精神障害は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、摂食障害及びアルコール中毒から選択される。いくつかの実施形態では、1又は複数の精神障害は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)である。
【0256】
いくつかの実施形態では、1又は複数の精神障害は、自閉症スペクトラム障害(ASD)、鬱病及び薬物依存症から選択される。いくつかの実施形態では、鬱病は、例えば緩和ケア対象におけるものにおける臨床的鬱病である。いくつかの実施形態では、物質使用障害は、オピオイド使用障害である。
【0257】
いくつかの実施形態では、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置から利益を得る疾患、障害又は病状は、自閉症スペクトラム障害である。
【0258】
いくつかの実施形態では、自閉症スペクトラム障害は、自閉症、アスペルガー症候群、小児崩壊性障害、レット症候群、及び別段特定されない広汎性発達障害から選択される。
【0259】
本出願はまた、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状を処置する方法であって、治療有効量の(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法も含む。
【0260】
本出願はさらに、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状を処置するための(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の使用、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状を処置するための医薬を調製するための(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の使用、並びに、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状を処置するために使用するための(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を含む。
【0261】
いくつかの実施形態では、1又は複数の症状は、全般的不安、臨床的不安、過敏性、不適切な発話、常同症、社会的引きこもり、反復的行動及び多動性から選択される。
【0262】
いくつかの実施形態では、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状は、常同症及び社会的引きこもりから選択される。いくつかの実施形態では、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状は、常同症である。いくつかの実施形態では、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状は、社会的引きこもりである。したがって、いくつかの実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物は、向社会性活動を促進するための使用のためのものである。
【0263】
本出願人は、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物が、自閉症スペクトラム障害のインビボマウスモデルにおいて向社会性行動を促進することを示した。上記の(R)-MDMA及び式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む組成物は、自閉症スペクトラム障害のマウスモデルにおいて自発運動活性に影響を及ぼさないことがさらに示されている。本出願人は、BTBRマウスにおけるS(+)-MDMA及びMDMAのラセミ組成物が用量依存的な温度上昇を誘発することを示した。しかしながら、式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びに(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物の非ラセミ混合物を含む例示的組成物及び純粋なR(-)-MDMAの組成物は、コア温度に有意な効果を誘発しなかった。高体温は、細胞損傷及び神経毒性をもたらすことが知られている(Walter and Carraretto,Crit Care.2016 Jul 14;20(1):199)
【0264】
さらに、マウスの常同症又は過剰刺激は、S-MDMA及び高用量のラセミMDMAを投与されたマウスで見られるが、上記の式(R)-Iの化合物又はその塩及び/若しくは溶媒和物と(S)-I又はその塩及び/若しくは溶媒和物との非ラセミ混合物を含む組成物では見られないことが示されている。
【0265】
したがって、いくつかの実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の投与又は使用は、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置と比較して、有害な副作用が少ない。
【0266】
したがって、本出願はまた、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状を処置し、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置と比較して有害な副作用が少ない方法であって、
治療有効量の(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を含む。
【0267】
本出願はさらに、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状を処置し、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置と比較して有害な副作用が少ない(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の使用、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状を処置し、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置と比較して有害な副作用が少ない医薬の調製のための(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の使用、並びに、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状を処置し、ラセミMDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物による処置と比較して有害な副作用が少ない使用のための(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を含む。
【0268】
いくつかの実施形態では、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状は、常同症及び社会的引きこもりから選択され、有害な副作用は、高体温、常同症及び神経毒性から選択される。いくつかの実施形態では、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状は、常同症及び社会的引きこもりから選択され、有害な副作用は、高体温及び神経毒性から選択される。いくつかの実施形態では、自閉症スペクトラム障害の1又は複数の症状は、常同症及び社会的引きこもりから選択され、有害な副作用は、高体温から選択される。
【0269】
いくつかの実施形態では、自閉症スペクトラム障害は、DSM-IVによって定義されるように、1又は複数の症状が以下から選択される:(i)社会的交流における定性的障害;(ii)コミュニケーションの定性的障害;並びに(iii)行動、関心及び活動の制限された反復的及び常同的パターン。
【0270】
いくつかの実施形態では、1又は複数の症状は、社会的交流における定性的障害から選択される。
【0271】
いくつかの実施形態では、社会的交流における定性的障害は、社会的交流を調節するための視線、顔面表情、身体姿勢、及びジェスチャを含む複数の非言語的行動の使用における顕著な障害;発達レベルに適した仲間関係を形成できないこと;(c)他人と楽しみ、興味、又は成果を共有しようとする自発的なものの欠如(例えば、関心対象を示す、持ってくる、又は指摘することの欠如による);(d)社会的又は感情的な相互関係の欠如のうちの1又は複数を含む。
【0272】
いくつかの実施形態では、コミュニケーションの定性的障害は、話し言葉の発達の遅延又は完全な欠如(ジェスチャ又は身ぶりなどの代替のコミュニケーションモードを介して補う試みを伴わない);適切な発話をする個体において、他者との会話を開始又は持続する能力の著しい障害;言語又は固有言語の常同的及び反復的な使用;及び発達レベルに適した多様で自発的なごっこ遊び又は社会的模倣遊びの欠如のうちの1又は複数を含む。
【0273】
いくつかの実施形態では、行動、関心、及び活動の制限された反復的かつ常同的なパターンは、以下のうちの1又は複数を含む:強度又は集中のいずれかにおいて異常である1又は複数の常同的かつ制限された関心のパターンへの包括的な没頭;特定の機能的でないルーチン又は儀式への明らかに柔軟性のない順守;常同的及び反復的な運動癖(例えば、手又は指のフラップ若しくはツイスト又は複雑な全身運動);対象物の一部への持続的な没入。
【0274】
いくつかの実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物は、第2の薬剤又は「アドオン」療法として投与又は使用される。
【0275】
いくつかの実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物は、心理療法前、心理療法中及び/又は心理療法後に投与される。いくつかの実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物は、心理療法中及び/又は心理療法後に投与される。
【0276】
いくつかの実施形態では、心理療法は、行動心理療法、曝露ベースの心理療法、認知心理療法、及び精神力学的指向性心理療法から選択される。
【0277】
本出願はまた、パーキンソン病を処置するための方法であって、治療有効量の(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法も含む。
【0278】
本出願はさらに、パーキンソン病を処置するための(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の使用、パーキンソン病を処置するための医薬を調製するための(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の使用、並びに、パーキンソン病を処置するために使用するための(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を含む。
【0279】
いくつかの実施形態では、(R)-MDMAは、99%よりも高いエナンチオマー純度を有する。
【0280】
いくつかの実施形態では、有効量に対応する、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の量は、医薬製剤、投与経路、病状、疾患又は障害の種類、処置されている対象の同一性などの因子に応じて変化するが、それでも当業者によって日常的に決定することができる。一実施形態では、有効量は、それによる処置後に、特に処置なしの疾患、障害又は病状の症候と比較して、任意の疾患、障害又は病状の症候の改善又は低減として現れる量である。
【0281】
一実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物は、少なくとも週に1回投与される。しかし、別の実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物は、2週間、3週間又は1ヶ月に約1回から、対象に投与される。別の実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物は、約1週間に1回~約1日に1回投与される。別の実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物は、1日に2、3、4、5又は6回投与される。処置期間の長さは、疾患、障害又は病状の重症度、対象の年齢、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の濃度及び/又は活性、並びに/又はそれらの組み合わせなどの様々な因子に依存する。処置に使用される(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の有効投与量は、特定の治療計画の経過にわたって増大又は減少し得ることも理解されよう。投与量の変化は、当技術分野で公知の標準的な診断アッセイによって生じ、明らかになり得る。場合によっては、長期投与が必要である。例えば、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物は、対象を処置するのに十分な量及び持続時間で対象に投与される。
【0282】
一実施形態では、対象は哺乳動物である。別の実施形態では、対象はヒトである。一実施形態では、対象は非ヒト動物である。一実施形態では、対象はイヌである。一実施形態では、対象はネコである。したがって、本出願の方法及び使用は、ヒト及び獣医学の両方の疾患、障害及び病状を対象とする。
【0283】
(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物は、単独で、又は心理療法の処置で利益を得る疾患、障害若しくは病状を処置するのに有用な他の公知の薬剤と組み合わせて使用される。心理療法による処置から利益を得る疾患、障害又は病状を処置するのに有用な他の薬剤と組み合わせて使用される場合、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物がこれらの薬剤と同時期に投与される実施形態である。本明細書で使用される場合、2つの物質の対象への「同時期の投与」とは、それらの両方が同時に個体において活性であるように2つの物質のそれぞれを提供することを意味する。投与の正確な詳細は、互いの存在下での2つの物質の薬物動態に依存し、薬物動態が適切であれば、2つの物質を互いの数時間以内に投与すること、又は一方の物質を他方の投与の24時間以内に投与することさえ含み得る。適切な投与レジメンの設計は、当業者にとって日常的である。特定の実施形態では、2つの物質は、実質的に同時に、すなわち互いに数分以内に、又は両方の物質を含有する単一の組成物で投与される。本出願のさらなる実施形態は、薬剤の組み合わせが非同時期に対象に投与されることである。
【0284】
(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の投与量は、化合物の薬力学的特性、投与様式、レシピエントの年齢、健康及び体重、症候の性質及び程度、処置の頻度及びもしあれば同時処置の種類、並びに処置される対象における(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のクリアランス速度などの多くの因子に依存して変動する。当業者は、上記の因子に基づいて適切な投与量を決定することができる。
【0285】
いくつかの実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の投与量は、約40mg~約180mgである。いくつかの実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の投与量は、約40mg、約60mg、約75mg、約80mg、約100mg、約120mg又は約125mである。いくつかの実施形態では、投与様式に応じて、本出願の組成物は、約0.05重量%~約99重量%又は約0.10重量%~約70重量%の(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物と、約1重量%~約99.95重量%又は約30重量%~約99.90重量%の1又は複数の医薬上許容可能な担体とを含む医薬組成物であり、すべての重量パーセントは全組成物に基づく。
【0286】
(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物は、1又は複数担体を使用して組成物に従来の様式で適切に製剤化されている。したがって、本出願はまた、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物と、担体とを含む組成物を含む。本出願の化合物は、インビボ投与に適した生物学的に適合性の形態で対象に投与するための医薬組成物に適切に製剤化されている。したがって、本出願は、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物と、医薬上許容可能な担体とを含む医薬組成物をさらに含む。
【0287】
本出願の実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の医薬組成物は、本明細書に記載される疾患、障害又は病状のいずれかの処置に使用される。
【0288】
(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物は、当業者によって理解されるように、選択された投与経路に応じて様々な形態で対象に投与される。例えば、上記の「本出願の非ラセミ組成物」のセクションに記載されている様々な投与形態及び投与経路がある。
【0289】
ラットにおいて送達経路に基づくMDMAのCmaxの顕著な差が観察されている(Baumann MHら、Drug Metab Dispos.2009;37(11):2163-70)。2mg/kgでは、最大MDMA濃度は、腹腔内経路(210ng/ml)及び皮下経路(196ng/ml)で約200ng/mlであったが、経口経路(46 ng/ml)ではより低かった。より高用量(10mg/kg)では、腹腔内投与経路(2257ng/ml)及び皮下投与経路(1130ng/ml)を介したCmaxは、経口経路(966ng/ml)よりも高かった。
【0290】
ラセミの3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)の(R)-エナンチオマー及び(S)-エナンチオマーは異なる用量-濃度曲線を示すことも知られている。MDMA、MDA、DHMA、DHMA硫酸塩、HMMA、HMMA硫酸塩、及びHMMAグルクロニドは、ヒト尿中に実質的な量で排泄されることが示されている(Schwaninger AEら、Biochem Pharmacol.2012;83(1):131-8)。クレアチニン正規化後、硫酸HMMAを除くすべての化合物について、2つのエナンチオマー(個々の代謝産物の(R)-及び(S)-)間の統計学的に有意な差が観察された。MDMA、DHMA及び硫酸HMMAではより高いR-エナンチオマーCmaxが観察されたが、硫酸DHMA、HMMA、HMMAグルクロニド及びMDAではS-エナンチオマーがより高かった。エラー!参照ソースが見つからない。
【0291】
口腔粘膜は、時折、薬物吸収部位として使用される。錠剤又はトローチ剤を口腔内で完全に溶解させる舌下投与は、口腔上皮の透過性を利用し、ニトログリセリン及びオキシトシンなどのいくつかの強力な親油性薬物、さらには経口鎮静剤トリアゾラムの投与経路である。
【0292】
MDMAは、MDMA支援心理療法を介して外傷後ストレス障害(PTSD)を処置するための第3相試験における有効性を実証している。これは、複雑な薬理学を有し、脳内の複数の受容体に影響を及ぼすことが知られている。
【0293】
いくつかの実施形態では、鼻腔内投与は、中枢神経系(CNS)への精神薬理学的薬剤の送達への直接的経路及び間接的経路の両方を提供すると考えられている。嗅覚上皮及び呼吸上皮への鼻腔内の沈着及び吸収後の嗅覚神経経路及び三叉神経経路を介した直接的な鼻から脳への輸送は、CNSへの薬物送達の障害である血液脳関門(BBB)を回避する非侵襲的手段を提供する。さらに、いくつかの実施形態では、他の投与経路(例えば、経口投与)と比較して、鼻腔内は、初回通過代謝を回避することによって、使いやすさ、全身曝露の低減、薬物開始の迅速化、コンプライアンスの増大、及びバイオアベイラビリティの向上を提供する(Kellerら、Drug Deliv.and Transl.Res.12,735-757(2022))。
【0294】
したがって、いくつかの実施形態では、舌下投与及び鼻腔内投与は薬物破壊を回避する。いくつかの実施形態では、舌下投与及び鼻腔内投与は、胃酸並びに腸及び肝臓の酵素を迂回することによって薬物破壊を回避する。
【0295】
いくつかの実施形態では、舌下吸収及び鼻腔内吸収は、例えば経口投与を使用する場合、腸取り込みと比較してより効率的である。いくつかの実施形態では、舌下投与又は鼻腔内投与を用いた薬物効果の発現は、経口投与を用いた同じ薬物効果の発現と比較してより速い。
【0296】
いくつかの実施形態では、経口投与と比較して、舌下投与又は鼻腔内投与を使用すると、より良好な薬物吸収及び代謝プロファイルが達成される。いくつかの実施形態では、舌下投与又は鼻腔内投与を使用すると、経口投与と比較して肝臓代謝がより抑制される。いくつかの実施形態では、経口投与によって同じ生物学的効果を達成するための活性成分の用量と比較して、舌下投与又は鼻腔内投与によって生物学的効果を達成するためには、より低い用量の活性成分、例えばMDMAが使用される。いくつかの実施形態では、舌下投与又は鼻腔内投与は、経口投与と比較して、活性成分、例えばMDMAについてより良好なバイオアベイラビリティ及びより良好な安全性プロファイルを提供する。
【0297】
したがって、いくつかの実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の組成物は、鼻腔内又は舌下の投与又は使用のために製剤化されている。いくつかの実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の組成物は、鼻腔内の投与又は使用のために製剤化されている。
【0298】
したがって、いくつかの実施形態では、本出願はまた、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を含む鼻腔内組成物を含む。
【0299】
いくつかの実施形態では、MDMA((R)-MDMA)又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物のRエナンチオマーは、上記の通りである。
【0300】
いくつかの実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を含む鼻腔内組成物は、本明細書中に記載される疾患、障害又は病状のいずれかの処置における使用又は投与のためのものである。
【0301】
いくつかの実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を含む鼻腔内組成物は、エアロゾル、液滴、ゲル及び粉末として都合よく製剤化されている。鼻腔内投与又は吸入による投与のために、本出願の組成物は、対象によって圧搾又はポンプ輸送されるポンプスプレー容器からの溶液、乾燥粉末製剤又は懸濁液の形態で、又は加圧容器又はネブライザーからのエアロゾルスプレーの提示として都合よく送達される。エアロゾル組成物は、典型的には、生理学的に許容可能な水性又は非水性溶媒中に本出願の組成物の溶液又は微細懸濁液を含み、通常、例えば霧化装置と共に使用するためのカートリッジ又はリフィルの形態をとる密封容器内の滅菌形態で単回又は複数回の投与量で提供される。あるいは、密閉容器は、使用後の廃棄を目的とした計量弁を備えた単回用量鼻吸入器又はエアロゾルディスペンサなどの一体型分配装置である。剤形がエアロゾルディスペンサを含む場合、それは、例えば圧縮空気などの圧縮ガス又はフルオロクロロ炭化水素などの有機噴射剤である噴射剤を含む。適切な噴射剤としては、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ヘプタフルオロアルカン、二酸化炭素又は別の適切なガスが挙げられるが、これらに限定されない。加圧エアロゾルの場合、投与単位は、計量された量を送達するための弁を提供することによって適切に決定される。いくつかの実施形態では、加圧容器又はネブライザーは、本出願の組成物の溶液又は懸濁液を含有する。吸入器又は注入器で使用するためのカプセル及びカートリッジ(例えばゼラチンから作製される)は、例えば、本出願の組成物とラクトース又はデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含有して製剤化されている。エアロゾル剤形はポンプ噴霧器の形態をとることもできる。
【0302】
いくつかの実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を含む鼻腔内組成物は、ポンプ噴霧器と共に使用するためのエアロゾルとして製剤化されている。
【0303】
いくつかの実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を含む鼻腔内組成物は、粉末である。いくつかの実施形態では、粉末は乾燥粉末である。いくつかの実施形態では、乾燥粉末は、使用前又は投与前に適切なビヒクルで再構成されるように製剤化されている。いくつかの実施形態では、適切なビヒクルは、滅菌発熱物質非含有水である。
【0304】
いくつかの実施形態では、粉末は、吸入器又は注入器での使用又は投与のために製剤化されている。したがって、いくつかの実施形態では、乾燥粉末は、吸入器又は注入器で使用するためのカプセル及びカートリッジとして使用又は投与するために製剤化されている。
【0305】
いくつかの実施形態では、乾燥粉末は、適切な粉末基剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、適切な粉末基剤は、ラクトース又はデンプンを含む。
【0306】
いくつかの実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を含む鼻腔内組成物は、水をさらに含む。したがって、いくつかの実施形態では、鼻腔内医薬組成物は、水をさらに含み、水性鼻腔内医薬組成物である。
【0307】
いくつかの実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を含む鼻腔内組成物は、溶液、懸濁液又はエマルジョンである。いくつかの実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を含む鼻腔内組成物は、溶液である。
【0308】
いくつかの実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を含む水性鼻腔内組成物は、点鼻薬の形態での鼻への投与のために製剤化されている。いくつかの実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を含む水性鼻腔内組成物は、鼻スプレーとしての投与のために製剤化されている。いくつかの実施形態では、鼻スプレーは、患者によって圧搾又は圧送されるポンプスプレー容器から溶液又は懸濁液の形態で、又は加圧容器又はネブライザーからのエアロゾルスプレーの提示として送達される。いくつかの実施形態では、水性鼻腔内医薬組成物は、ポンプ噴霧器と共に使用するためのエアロゾルとして製剤化されている。
【0309】
いくつかの実施形態では、水は、鼻腔内医薬組成物中に、組成物の約50重量%~約75重量%、約50重量%~約70重量%、約50重量%~約65重量%、約33重量%~約75重量%、約55重量%~約70重量%又は約55重量%~約65重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、水は、組成物の約50重量%、約60重量%、約65重量%又は約70%の量で存在する。いくつかの実施形態では、水は、組成物の約55重量%~約65重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、水は、組成物の約60重量%である。
【0310】
頬側投与又は舌下投与に適した組成物には、錠剤、ロゼンジ、及びトローチ剤が含まれ、ここで、本出願の組成物は、糖、アカシア、トラガカント、又はゼラチンなどの担体及びグリセリンと共に製剤化されている。直腸投与のための組成物は、好都合には、カカオバターなどの従来の坐剤基剤を含有する坐剤の形態である。
【0311】
いくつかの実施形態では、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物の組成物は、舌下の投与又は使用のために製剤化されている。
【0312】
したがって、いくつかの実施形態では、本出願はまた、(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物を含む舌下組成物を含む。
【0313】
いくつかの実施形態では、舌下組成物(R)-MDMA又はその医薬上許容可能な塩及び/若しくは溶媒和物は、本明細書中に記載される疾患、障害又は病状のいずれかの処置において使用又は投与される。
【0314】
いくつかの実施形態では、舌下組成物は、錠剤、ドロップ、ストリップ、スプレー、ロゼンジ又は発泡性錠剤として製剤化されている。
【実施例】
【0315】
以下の非限定的な例は、本出願の例示である。
【0316】
実施例1:本出願の例示的組成物
例示的組成物1(ALA001):90%~99%(R)-MDMA、1%~10%(S)-MDMA
【0317】
例示的組成物2(ALA002):80%~89.9%(R)-MDMA、10.1%~20%(S)-MDMA
【0318】
例示的組成物2(i):80%(R)-MDMA及び20%(S)-MDMA。80%(R)-MDMA及び20%(S)-MDMAを生理的0.9%に溶解した。例示的組成物2(i)を、以下の実施例において種々の用量、例えば3mg/kg及び10mg/kgで試験した。
【0319】
例示的組成物3(ALA003):70%~79.9%(R)-MDMA、20.1%~30%(S)-MDMA
【0320】
例示的組成物4(ALA004):90%~99%(R)-MBDB,1%~10%(S)-MBDB
【0321】
例示的組成物5(ALA005):80%~89.9%(R)-MBDB、10.1%~20%(S)-MBDB
【0322】
例示的組成物6(ALA006):70%~79.9%(R)-MBDB、20.1%~30%(S)-MBDB
【0323】
例示的組成物7:(R)-MDMA(>99% Rエナンチオマー)
【0324】
比較組成物1:ラセミMDMA
【0325】
比較組成物2:ラセミMBDB
【0326】
比較組成物3:(S)-MDMA(>99% Sエナンチオマー)
【0327】
以下のインビボ試験では、すべての薬物、(R)-MDMA、(S)-MDMA及び対照薬物を0.9%生理食塩水に溶解し、1ml/100g体重の一定体積で投与した。
【0328】
生物学的データ
実施例2:行動実験
社会的交流試験
MDMAの効果を試験するために、具体的にはMDMAの向社会性効果を試験するために使用されてきた社会的交流試験は、Morley and McGregnor Eur J Pharmacol.2000;408:41-9に記載されており、本出願の例示的組成物及び比較組成物を試験するために使用される。
【0329】
対象(マウス)を試験手順に慣れさせ、攻撃的な対象をスクリーニングするために、社会的交流試験を2回行う。最初のセッション中、対象は、本出願の例示的組成物、比較組成物又は生理食塩水の注射を受け、清潔なケージで30分間隔離される。次いで、各対象を、30×18cmの透明なプレキシガラス試験チャンバ内で10分間、同じ処置群からの見慣れない重量一致同種異系と対にする。攻撃的な対象を分離するために、実験者が最初の試験日の間存在する。除去された対象はいずれも、各処置条件が等しい数の非侵襲性対象を有するように、新しいナイーブ対象と置き換えられる。
【0330】
第2の試験セッションは、試験中に実験者が室内に存在しないことを除いて、同じ対、処置、及び手順を使用して48時間後に行われる。試験場内では、対象は自由に動き回って対話することができ、多様な観察可能な挙動を可能にする。2回目の試験日に、社会的ペアリングをビデオ録画し、社会的行動の持続期間を、実験条件を知らない観察者によってJWatcher又はBORIS(Friard and Gamba,Methods Ecol Evol.2016;7(11)1325-1330)を使用して定量化する。3つの行動の持続時間をスコア化する:肛門生殖器の調査(同種異系の肛門生殖器領域を嗅ぐ)、一般的な調査(肛門生殖器以外を嗅ぐ、身づくろい、及び同種異系の追従)、及び隣接する横臥(並んで接触又は寄せ合い行動)。これらの行動は、各ペアについて平均化され、次いで合計されて総社会的交流スコアが生成され、それに対して統計分析が実行される。
【0331】
自発運動行動
本出願の例示的組成物及び比較組成物の自発運動活性に対する効果を、45×39×37cmのオープンフィールドチャンバーで試験し、16×16の光セルをチャンバーから2.5cm離して配置する。マウスを、チャンバーに1時間入れる直前に、本出願の例示的組成物、比較組成物又は生理食塩水(n=13/群)で処置する。試験は、暗く密閉された空間で行われる。隣接するフォトセルの累積的なビーム切断は、自発運動活動の尺度として記録される。
【0332】
恐怖条件づけ及び消去
本出願の例示的組成物及び比較組成物の条件づけフリージングに対する効果を、ラセミMDMAを試験するために以前に使用された確立されたプロトコル(Youngら、2015,Transl Psychiatry.5:1-8)を用いて評価した。この以前の研究との整合性のために、C57BL/6マウスをこの実験で使用する。手短に言えば、マウスを1日目に誘引恐怖条件づけ、3日目に恐怖消去訓練、及び4日目に消去試験に曝露する。誘引恐怖条件づけは、条件刺激(CS)トーン(80dB,4.5kHz,30s)と、非条件刺激(US)足ショック(1mA、2s)との一回のペアリングからなる。消去訓練は、条件づけからの新しい状況で48時間後に行われる。(R)-MDMA、(S)-MDMA、又は生理食塩水(n=6~7/群)を3日目、訓練の30分前に投与した。消去訓練は、45秒間隔の4C(S)トーン再曝露の準最適レジメンからなる。消去試験を24時間後に実施して、条件づけフリージングに対する処置の持続効果を決定する。消去試験は、訓練と同じ状況で実施され、処置が施されないことを除いて同じ手順に従う。これらの実験を通して、フリージング率(条件付き応答)は、5秒ごとに非呼吸運動の有無をスコア化することによって推定される。
【0333】
実施例3:神経毒性試験
神経毒性投与及び組織採取
Itzhakら、Psychopharmacol.2003;166:241-248から修正された投薬レジメンにおいて、対象は、連続する2日に2時間間隔で2回投与される本出願の例示的組成物、比較組成物又は生理食塩水の合計4回の注射を受ける。処置中対象は隔離されており、2回目の1日投与の2時間後にホームケージに戻す。処置後、対象を2つの群に分ける。最終注射の48時間後、群1の対象を麻酔し、4%ホルムアルデヒドを経心腔的に灌流する。それらの脳を一晩、後固定し、次いで、15%スクロースに48時間浸漬し、冷却したメチルブタン中で凍結し、35μmで切片化し、免疫組織化学による分析まで-20℃で保存する。群2の対象は、最後の注射の14日後に頸椎脱臼によって安楽死させる。それらの脳を取り出し、前頭前皮質、線条体及び海馬を迅速に切開し、その後の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)又はウェスタンブロットによる分析のために-80℃で保存する。
【0334】
体温モニタリング
2時間間隔で2回与えられる、本出願の例示的組成物及び比較組成物の体温に対する効果を、直腸温度計を用いてモニターする(n=5/群)。測定は、22±2℃の周囲室温で30分ごとに行う。モニタリング中、マウスは個々の保持ケージに分離される。
【0335】
考察
(R)-MDMAは、MDMAのラセミ混合物を含む比較組成物よりも神経毒性が低い。
【0336】
本出願の例示的組成物ALA001は、MDMAのラセミ混合物を含む比較組成物よりも良好な神経毒性プロファイルを提示する。
【0337】
(R)-MDMAは、本出願の例示的組成物ALA001よりも神経毒性が低いが、本出願の例示的組成物ALA001は、MDMAのラセミ混合物を含む比較組成物により類似した主観的心理経験(subjective psychological experience)を有する。
【0338】
実施例4:ラットモデルにおける研究
自閉症スペクトラム障害のラットモデルにおける研究
序論
自閉症スペクトラム障害(ASD)は、2つの主要な行動クラスターによって定義される複雑な神経発達障害である。行動の第1の群は、社会的コミュニケーション及び社会的交流の欠損によって定義され、行動の第2の群は、行動、興味、及び思考の反復的かつ柔軟性のないパターンからなる。2016年に、自閉症及び発達障害モニタリングネットワーク(Autism and Developmental Disabilities Monitoring Network)は、ASDの有病率を54人の子供のうち1人であると推定し、ASDが少年の間では少女と比べて4.3倍多いと述べた。過去数十年にわたって、ASDの報告された発生率は米国で増大しているが、ASDの病因はあまり理解されていない。ASDの神経学的基礎をよりよく理解するために、研究のためにASDのげっ歯類モデルが開発されている。インスリン抵抗性、糖尿病誘導性腎症及びフェニルケトン尿症に関する研究のために最初に飼育されたBTBR T+Itpr3tf/Jマウス(BTBR)は、強力で一貫した自閉症関連行動を示すとしておよそ10年前に特定された。したがって、自閉症様BTBRマウス及びC57BL/6J(C57)バックグラウンドストックにおける社会性を増大させ反復的行動を減少させる新規な薬物の同定は、ASDの状況において治療的に有用である。BTBRマウスの背側腹部にしばしば見られる禿頭パッチは、この系統のすべてのマウスによって示される反復的な身づくろい及び「散髪(barbering)」行動によるものであり、ヒトASDに特徴的な自己指向的行動の割合が高いことと一致する。したがって、歪みに対して盲検を維持する能力は困難である。
【0339】
実施例4に記載される研究では、雄BTBR及びC57マウスを使用して、ラセミ3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)(例えば、比較組成物1、MDMA))、その構成要素Sエナンチオマー(例えば、比較組成物3、(S)-MDMA))及びRエナンチオマー(例えば、例示的組成物7、(R)-MDMA)、並びに(R)-MDMA又はその塩及び/若しくは溶媒和物並びに(S)-MDMA又はその塩及び/若しくは溶媒和物の非ラセミ混合物を含むカスタマイズされた組成物であって、(R)-MDMA又はその塩及び/若しくは溶媒和物が、社会選好性の自閉症関連アッセイにおいて、並びにこれらの薬物の安全性及び乱用責任の研究において、(S)-MDMA又はその塩及び/若しくは溶媒和物(例えば例示的な組成物2(i))と比較して、エナンチオマー当量としてより多い量で組成物中に存在するカスタマイズされた組成物の効果を評価した。
図1は、メタンフェタミン(左の構造)及び3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA、右の構造)の二次元分子構造を提供する。薬理学的に、エナンチオマーは、効力及び有効性の量的差異、並びに作用機序又は内受容性効果の質的差異を含む、非常に異なる生物学的効果を有し得る。メタンフェタミンの場合、S(+)-エナンチオマーは、強力かつ持続的な精神賦活作用を有する乱用された精神賦活薬であるが、R(-)-エナンチオマーは、これらの作用のいずれかを誘発する効力が100倍を超えて低い。MDMAの場合、両方のエナンチオマーは、互いに種類が異なる効果を誘発するが、同様の用量で活性である。それらの類似の化学構造に基づいて、メタンフェタミンを、社会選好性試験におけるMDMAの効果を比較するための陽性対照化合物として選択した。両化合物は、高用量で自発運動刺激効果を誘発すると予想されたが、メタンフェタミンは向社会性効果を誘発しないと予想された。
【0340】
一般的な動物の取り扱い
成体雄C57マウス及びBTBRマウスを、それぞれCharles River Laboratories及びThe Jackson LaboratoryからUniversity of Arkansas for Medical Sciencesに輸送した。到着したら、マウスを、系統に応じてケージあたり3匹、自由に摂取可能な食物及び水と共に収容した。マウスをUAMS施設に少なくとも48時間順化させた後、任意の実験手順を実施した。
【0341】
薬物投与:
すべての薬物を0.9%生理食塩水に溶解し、1ml/100g体重の一定体積で投与した。これらの研究で利用されたすべての薬物は塩酸(HCl)塩として合成されていたので、それらをすべての溶液の調製前に塩として秤量した。すべての濃度のすべての薬物が、通常のpHで水溶液に容易に溶解する。強制経口投与ストレスの行動障害効果を伴わずに、強制経口投与に典型的な薬物動態パラメータを模倣するように、すべての薬物の注射を腹腔内(IP)投与した。
【0342】
社会選好性試験法
このアッセイを、環境光、音、及びヒトの接触が厳密に制御された専用の調整室において、成体雄C57マウス及びBTBRマウス(群あたりn=6)で行った。社会選好性チャンバーは、2つのポリカーボネート箱(幅13.5cm×高さ22.5cm×深さ31.0cm)からなり、粗いテクスチャの黒色ABSプラスチックで床を張り、1.25インチのPVC T接合部によって互いに接続されている。赤外線光ビームエミッタ/検出器アレイが、T接合部と各選好区画との各交差部に取り付けられ、マウスが装置を横切ると、各選好区画への進入時又は各選好区画からの退出時に光ビームを遮断する。ビーム遮断は、インターフェースのあるコンピュータ上のカウンタを開始又は停止させ、各区画で費やされた時間の自動収集を可能にした。各試験の最後に、データを、各区画で過ごした時間(秒単位)、各区画への進入回数、及び進入後の各区画で過ごした平均時間として報告した。社会選好性試験を反復的に行い、各試験対象は、以下に記載される4つの異なる段階を完了した。試験セッションの間に、チャンバーを、UAMS Department of Laboratory Animal Medicineによって提供される消毒剤製品で内部を拭き取ることによって消毒した。週の終わり(手順のすべての段階が完了したとき)に、各装置を分解し、すべての部品を消毒した。社会選好性セッション中には食物も水も入手できなかったが、直後にホームケージで入手可能であった。
【0343】
段階1-馴化
選好性試験の前に一回の馴化セッションを行い、各区画は同一の空のワイヤメッシュペンシルカップ(直径9.0cm×高さ10.5cm)を含んでいた。このセッション中、マウスの体重を測定し、注射は行わず、対象をT接合部に導入し、両方の選好区画を30分間探索させた。この馴化セッションは、動物が装置に慣れ、2つの区画のうちの1つに対して強い初期バイアスを有する動物をスクリーニングすることを可能にするための手順的対照として行われた。1つの一回の選好区画内で合計時間の75%を超える時間を過ごす対象がさらなる研究から除外されるように、事前の除外基準が確立されていたが、これらの研究における対象でこの除外基準に当たるものはいなかった。週末の試験を防止するために、馴化セッションは常に月曜日又は火曜日に行われた。
【0344】
段階2-新奇性の選好
一回の新奇性選好セッションは馴化試験の翌日に行われ、ここで一方の区画は空のワイヤメッシュカップを含み、他方の区画は新奇なダミーマウスを内部に有する同一のワイヤメッシュカップを含んでいた。ダミーマウス(左区画又は右区画)の位置は、対象間で釣り合っていた。ダミーマウスは、長さ2.5インチの白色3/4インチPVCパイプから構築され、一端にジップタイが取り付けられ(尾を模倣するため)、他端に2つの赤色ドットが描かれていた(目を模倣するため)。このセッション中、マウスの体重を測定し、注射を投与し、30分間の前処置期間にはホームケージに戻した。次いで、マウスをT接合部に導入し、両方の選好区画を15分間探索させた。これらの試験は、観察された薬物効果が単にマウスの生得的な新奇性選好の増強によるものではないことを確実にするために手順上の対照として行われた。新奇性選好セッションは、週末の試験を防止するために、常に火曜日又は水曜日に行われた。
【0345】
段階3-社会性試験
新奇性選好性試験の翌日に一回の社会性セッションが行われ、ここで一方の区画はダミーマウスを内部に有するワイヤメッシュカップを含み、他方の区画は以前は空であったカップの内部に雄の初対面NIH Swissマウスを含んでいた。ワイヤメッシュカップは、視覚的、嗅覚的、聴覚的、及び限られた触覚的接触を可能にしたが、傷害をもたらし得る攻撃的行動を防止した。ダミーマウス(左区画又は右区画)の位置は、前日の新奇性試験中と各対象について同じままであり、それにより、対象全体での初対面マウスとの位置の釣り合いを取った。初対面NIH Swissマウスは、ダミーPVCマウスと質量及び外観が類似しており、実験対象(C57及びBTBRマウス)とは別にコロニー施設に収容した。実験対象が初めて初対面マウスに遭遇したのは、それらが収容されている区画に入ったときであった。このセッション中、マウスの体重を測定し、前日と同じ注射を投与し、30分間の前処置期間にわたってホームケージに戻した。次いで、マウスをT接合部に導入し、両方の選好区画を15分間探索させた。社会性試験は、週末の試験を防止するために、常に水曜日又は木曜日に行われた。
【0346】
段階4-社会的新奇性選好
一回の社会的新奇性選好セッションが社会性試験の翌日に行われ、一方の区画は、前日と同じNIH Swissマウスを内部に含むワイヤメッシュカップを含み(現在は「見慣れた」マウスと呼ばれる)、他方の区画は、社会性試験中にダミーマウスを以前に含んでいたカップの内部に新たな雄の初対面NIH Swissマウスを含んでいた。ワイヤメッシュカップは、視覚的、嗅覚的、聴覚的、及び限られた触覚的接触を可能にしたが、傷害をもたらし得る攻撃的行動を防止した。今や見慣れたNIH Swissマウス(左区画又は右区画)の位置は、前日の社会性試験中と各対象について同じままであり、それにより、対象全体での新たな初対面NIH Swissマウスとの位置の釣り合いを取った。以前同様、新たな初対面NIH Swissマウスは実験対象(C57及びBTBRマウス)とは別にコロニー施設に収容されており、実験対象が初めて遭遇したのは、それらが収容される区画に入ったときであった。このセッション中、マウスの体重を測定し、前日と同じ注射を投与し、30分間の前処置期間にわたってホームケージに戻した。次いで、マウスをT接合部に導入し、両方の選好区画を15分間探索させた。社会的新奇性試験は、週末の試験を防止するために、常に木曜日又は金曜日に行われた。
【0347】
社会選好性試験結果
自発運動活性に対する薬物効果
選好区画への総進入の定量化は、様々な用量の様々な試験薬の自発運動刺激効果の代用測定を提供した。自発運動刺激作用の誘導が選好評価を与えるので、これにより、社会選好性手順で試験することができる薬物用量の限界が確立された(なぜならば、マウスは各区画における社会的刺激に注意を向けなくなり、代わりに自発運動行動に時間を費やしているからである。)。運動活動は、社会選好性試験の異なる段階にわたって変化したが、これは一部には、馴化セッションが新奇性、社会性及び社会的新奇性試験(それぞれ15分)の2倍の長さ(30分)であるためであるが、マウスが新奇環境において高レベルの探索行動を発したためでもある。したがって、チャンバへの連続的な曝露にわたって試験装置への慣れが増大するにつれて、進入の数は減少した。
【0348】
図2は、いかなる薬物注射も無い条件下でのC57(黒塗りのバー)及びBTBR(白抜きのバー)における運動活動の上記減少傾向を示す。薬物注射の非存在下でのC57マウスとBTBRマウスとの間で自発運動活性のベースライン差も観察され、その結果、BTBR対象は、社会選好性手順のすべての段階中で、より多くの進入を常に示した。
【0349】
C57及びBTBRマウスのベースライン活性は社会性試験から社会的新奇性試験(マウスが装置に最大限に慣れているときの最終試験段階)まで変化しなかったので、様々な処置薬の自発運動刺激効果を決定するために、この段階の間の薬物効果に焦点を当てた。(進入はすべての試験について収集されたが、初期の方の段階(earlier phases)の進入に対する薬物効果は、段階間での装置への慣れの変化の混乱の影響のために信頼性が低い可能性があることに留意されたい。)
【0350】
C57マウス(
図3、黒いバーを参照)では、生理食塩水の投与後におよそ20回の進入が観察された。
【0351】
メタンフェタミン(陽性対照)、ラセミMDMA(例えば、比較組成物1)及びS(+)-MDMA(例えば、比較組成物3)の注射は、用量依存的に進入を150回超まで増大させ、3.0mg/kgメタンフェタミン、10.0mg/kgラセミMDMA(例えば比較組成物1)及び10.0mg/kg S(+)-MDMA(例えば比較組成物3)後の社会選好性の評価を混乱させる自発運動刺激効果を示した(
図4参照)。対照的に、10.0mg/kgのR(-)-MDMA(例えば、例示的組成物7)の投与は区画進入を増大させなかった。
【0352】
しかし、BTBRマウス(
図4、右パネルの白抜きのバーを参照)では、生理食塩水の投与後におよそ40回の進入が観察され、これは、
図2に以前記載された自発運動活性のより大きなベースラインレベルと一致した。
【0353】
ラセミMDMA(例えば、比較組成物1)の注射は、用量依存的に進入を5.6mg/kgで100回近くまで増大させ、C57よりもBTBRマウスにおいてより強力な自発運動刺激効果を示唆した。単回用量のS(+)-MDMA(例えば比較組成物3)を試験すると、C57マウスと同様に、3.0mg/kgのS(+)-MDMA(例えば比較組成物3)が、3.0mg/kgのラセミMDMA(例えば比較組成物1)とほぼ同等の進入を誘発した。ラセミMDMA(例えば比較組成物1)又はS(+)-MDMA(例えば比較組成物3)のいずれの用量も進入を100回超までは増大させなかったので、すべての試験用量が以下に記載する社会選好性結果を示す。
【0354】
新奇性選好に対する薬物効果
C57マウス(
図5、左のグラフを参照)は、生理食塩水の投与後に各区画でおよそ等しい時間を費やしており、ダミーマウスに対しては空のカップに比べて強い選好を示さなかった。メタンフェタミン、S(+)-MDMA(例えば比較組成物3)又はR(-)-MDMA(例えば、例示的組成物7)の注射は新奇性選好に系統的効果を及ぼさなかったが、ラセミMDMA(例えば比較組成物1)の投与は5.6mg/kg用量でダミーマウスの回避を誘発した。
【0355】
BTBRマウス(
図5、右のグラフを参照)も、C57と同様に、生理食塩水の投与後に各区画でおよそ等しい時間が費やされたため、ダミーマウスに対しては空のカップに比べて強い選好を示さなかった。
【0356】
ラセミMDMA(例えば比較組成物1)又はS(+)-MDMA(例えば比較組成物3)の用量は、新奇性選好にいかなる効果も誘発しなかった。試験薬のいずれも新奇性選好を増大させなかったので、その後の試験における社会選好性のいかなる強化も、(そうでなければ向社会性利益について混同される可能性がある)新奇対象の動機づけ特性の変化などの新奇性関連効果によって混同される可能性は低い。
【0357】
社会性に対する薬物効果
C57マウスは、生理食塩水の投与後に、ダミーを含む区画よりもわずかに少ない時間を、初対面マウスを含む区画で過ごしており、初対面マウスのわずかな回避を示した(
図6、左のグラフを参照)。
【0358】
メタンフェタミン又はS(+)-MDMA(例えば比較組成物3)の注射は社会性に体系的な影響を及ぼさなかったが、ラセミMDMAの投与は、初対面マウスと過ごした時間の用量依存的な増大を誘発し、3.0mg/kgの用量でダミーよりも初対面マウスに対する適度な選好が生じた。社会性に対する最大の効果は、10.0mg/kgのR(-)-MDMAの投与によって誘発された(例えば、例示的組成物7)。興味深いことに、社会性を増大させたこれらの用量のラセミMDMA(例えば比較組成物3)及びR(-)-MDMA(例えば、例示的組成物7)は、自発運動活性(
図4参照)又は新奇性選好(
図5参照)に影響を及ぼさなかった。
【0359】
BTBRマウス(
図3、右のバーを参照)では、予測される自閉症様の社会性減少が生理食塩水投与後に観察され、この場合、マウスは、初対面マウスの強い回避を示した。ラセミMDMAの投与は、C57で観察されたのと同様の社会性に対する二相性効果を誘発し、最小試験用量は効果を有さず、中間用量は初対面マウスに対する選好を増大させたが、これらの向社会性効果は最大用量の注射後に観察されなかった。また、C57マウスと同様に、試験したS(+)-MDMA(例えば比較組成物3)の単回用量は、BTBRにおいて社会性を変化させなかった(
図6参照)。C57マウスで観察された向社会性効果からの自発運動効果の解離とは対照的に、BTBRマウスは、運動活性を増大させたラセミMDMA(例えば比較組成物1)用量の投与後にのみ社会性の増大を示した(以前同様)。
【0360】
社会的新奇性選好に対する薬物効果
C57マウスは、生理食塩水の投与後に、現在は見慣れたマウス含む区画よりもわずかに多い時間を、新たな初対面マウスを含む区画で過ごしており、新たな初対面マウスに対するわずかな選好を示した(
図7、左のグラフを参照)。
【0361】
メタンフェタミン又はS(+)-MDMA(例えば比較組成物3)の注射は社会的新奇性選好に体系的な影響を及ぼさなかったが、ラセミMDMA(例えば比較組成物1)の投与は、初対面マウスと過ごした時間の用量依存的な増大を誘発し、3.0mg/kgの用量で現在は見慣れたマウスよりも初対面マウスに対する強い選好が生じた。
【0362】
社会性試験で観察されたように、社会的新奇性選好に対する最大の効果は、10.0mg/kgのR(-)-MDMAの投与によって誘発された(例えば、例示的組成物7)。興味深いことに、社会的新奇性選好を強く増大させたこれらの用量のラセミMDMA(例えば比較組成物1)及びR(-)-MDMA(例えば、例示的組成物7)は、自発運動活性(
図4参照)又は新奇性選好(
図5参照)に影響を及ぼさなかった。
【0363】
BTBRマウス(
図7、右のグラフを参照)では、予測される自閉症様の社会性減少が生理食塩水投与後に観察され、この場合、マウスは、初対面マウスのわずかな回避を示した。すべての用量のラセミMDMA(例えば比較組成物1)の投与は、社会的新奇性選好に対して同様の効果を誘発し、ラセミMDMA(例えば比較組成物1)で処置したBTBRマウスは、いずれの用量でも初対面マウスに対する選好を示した。C57マウスにおいて観察されたS(+)-MDMA(例えば比較組成物3)の向社会性効果の欠如とは異なり、BTBRマウスにおいて試験されたS(+)-MDMA(例えば比較組成物3)の単回用量は、初対面マウスに対する強い選好を誘発した。同様に、C57マウスで観察された向社会性効果からの自発運動効果の解離とは対照的に、試験した最小ラセミMDMA(例えば比較組成物1)用量を除いて、BTBRマウスは、運動活性を増大させた用量のラセミMDMA(例えば比較組成物1)及びS(+)-MDMA(例えば比較組成物3)の投与後に社会的新奇性選好の増大を示した。
【0364】
C57マウスにおける薬物効果の概要
ラセミMDMA(例えば比較組成物1)、S-(+)-MDMA(例えば比較組成物3)は、用量依存的にC57マウスの運動活性を刺激し、10mg/kgの腹腔内投与で100回を超える進入が記録された(
図8、左上のグラフ参照)。対照的に、10mg/kgのR-(-)MDMA(例えば、例示的組成物7)であっても、C57の運動活性に対する刺激効果はない。より高い用量で投与された80%(R)-MDMA及び20%(S)-MDMAを含む例示的組成物2(i)は、いくらかの刺激効果を有するが、S-MDMA(例えば比較組成物3)及びラセミMDMA(例えば比較組成物1)で観察されるものよりも実質的に低い。
【0365】
C57マウスは、10mg/kgのR-MDMA(例えば、例示的組成物7)を投与されると、現在は見慣れたマウスを含む区画より多くの時間を、新たな初対面マウスを含む区画で過ごしており、新たな初対面マウスに対する強い選好を示した(右下のグラフ、
図8)。対照的に、3.0mg/kg及び5.6mg/kgのS-MDMA(例えば比較組成物3)を投与した後でさえ、C57は、現在は見慣れたマウスと比較して、初対面マウスに対する実質的な選好を誘発しない(右下のグラフ、
図8)。ラセミMDMA(例えば比較組成物1)は、見慣れたマウスよりも初対面マウスに対する二相性の用量反応の選好を示し、最大選好は3mg/kg用量で実証された。10mg/kgで投与された例示的組成物2(i)は、ラセミMDMA(例えば比較組成物1)で見られるように、マウスを過度に刺激することなく、初対面マウスに対する強い選好を誘発した。
【0366】
C57対BTBRマウスにおける薬物効果
新奇性選好(空のカップよりも新奇なダミーマウスに対する選好)に対する薬物の影響を研究したところ、データによると、いずれの系統においても体系的作用は観察されなかった(
図9参照)。これは、その後の社会選好性試験で観察された薬物効果が、新奇刺激の顕著性の変化とは対照的に、真に社会的行動に関連することを確実にするための対照実験であった。
【0367】
C57マウスの場合、ラセミ(50/50)MDMA(例えば比較組成物3)、80%(R)-MDMA及び20%(S)-MDMA dを含む例示的組成物2(i)、及び純粋なR-MDMA(例えば、例示的組成物7)は、3.0mg/kgの用量で社会性に有意な効果を誘発するが、純粋なS-MDMA(例えば比較組成物3)の効果は生理食塩水と変わらない(
図10を参照)。BTBRマウスについては、混合物中にR-MDMAが多く存在するほど効果が大きくなるような「用量依存的」効果があるようである(ただし、例示的組成物2(i)-が純粋なR-MDMA(例えば、例示的組成物7)と同一であるため、プラトーが存在する可能性がある)。したがって、例示的組成物2(i)は、ラセミMDMA(例えば比較組成物1)及びS-MDMA(例えば比較組成物3)よりも強い社会性応答を誘発する。
【0368】
C57マウスの場合、例示的組成物2(i)であるラセミ(50/50)MDMA(例えば比較組成物1)、及び純粋なR-MDMA(例えば、例示的組成物7)は、3.0mg/kgの用量で社会性に有意な効果を誘発するが、純粋なS-MDMA(例えば比較組成物3)の効果は生理食塩水と変わらない(
図11を参照)。BTBRマウスについては、R-MDMAが混合物中に多く存在するほど効果が大きくなり、例示的組成物2(i)はR-MDMA(例えば例示的組成物7)とほぼ同様の性能を示すというような「用量依存的」効果が再び見られるようである。
図12で捉えられている自発運動刺激効果と共にこれを考慮することが重要である。C57マウスについては、いずれのMDMA製剤も、進入を有意に変化させなかった。BTBRマウスでは、純粋なS-MDMA(例えば比較組成物3)及びラセミ混合物(例えば比較組成物1)は、この用量で観察された進入回数を増大させたが、80%(R)-MDMA及び20%(S)-MDMAを含む例示的組成物2(i)では運動活性の刺激は観察されず、一方、純粋なR-MDMA(例えば、例示的な組成物7)はこの用量で進入を低減させた。
【0369】
概要:
要約すると、S-MDMA(例えば比較組成物3)及びラセミMDMA(例えば比較組成物3)は、C57マウス(一般集団の代表)及びBTBRマウス(自閉症集団の代表)に対して用量応答刺激効果を有するが、より高い用量(3mg/kg)のR-MDMA(例えば、例示的組成物7)は、BTBRマウスの自発運動活性を抑制することが実証された。80%(R)-MDMA及び20%(S)-MDMAを含む例示的組成物2(i)は、BTBRマウス及びC57マウスにおいて自発運動活性に影響を及ぼさない。
【0370】
向社会性行動に対する例示的組成物2(i)の影響は、BTBRマウス及びC57マウスにおける3mg/kg投与(i.p)で、薬物の影響下にあるマウスが、見慣れたマウスよりも初対面マウスと交流し、一緒に時間を過ごすことを強く選好する社会的新奇性選好性試験を通して十分に捉えられる。初対面マウスと過ごした時間は、ラセミMDMA(例えば比較組成物1)及びS-MDMA(例えば比較組成物3)の影響下で観察された時間よりもはるかに長い。
【0371】
B.コア温度及び運動活動試験方法のラジオテレメトリー
コア温度及び運動活動試験方法のラジオテレメトリー
モノアミン模倣剤は、温度制御、特に、おそらく最も広く研究されているMDMAなどのアンフェタミン誘導体に影響を及ぼし得る(Freedmanら、Psychopharmacology,(2005)183,248-256;Kendrickら、(1977)Annals of Internal Medicine,86,381-387;Parrott,AC(2012)Drug and Alcohol Dependence,121,1-9;Docherty&Green,(2010),British Journal of Pharmacology,160,1029-1044)。したがって、この研究の目的は、C57マウス及びBTBRマウスのコア温度に対する目的の薬物(目的)の影響を研究することであった。例示的組成物2(i)によって実証された社会選好性に基づき、本出願のかかる非ラセミ組成物及び(R)-MDMA(例示的組成物7)の影響を本研究に含めた。
【0372】
このラジオテレメトリーは、環境光、音、及びヒトの接触が厳密に制御された専用の試験室において、成体雄C57マウス及びBTBRマウス(群あたりn=6)で行った。
【0373】
ラジオテレメトリープローブの外科的埋め込みの前に、マウスに3mg/kgのメロキシカムを投与し(IP)、麻酔を4%吸入イソフルランで誘導し、1.5リットル/分の流量で手順全体を通して(必要に応じて)1~3%イソフルランで維持した。各動物の腹部領域を脱毛クリームで処置し、次いで、ヨウ素及びアルコールによる3回の交互のスクラブで消毒した。およそ1.5cmの長さの吻側-尾側切断部を滅菌皮膚ハサミで作製し、腹腔内腔へのアクセスを提供した。次いで、円筒形のガラス封入ラジオテレメトリープローブ(モデルER-4000 E-Mitter,Mini Mitter,Bend,OR、米国)を挿入した。これらのプローブは、15.5mm×6.5mmであり、重量はおよそ1グラムである。筋層には逆切断5-0ビクリル吸収性縫合糸を、皮膚層には5-0ナイロン縫合糸材料を使用して、切開部を閉じた(皮膚層と筋層を別々に)。実験条件の開始の少なくとも7日前に外科手術を行い、切開部が治癒し、動物が正常な体重を回復する時間を得た。手術後、すべての移植マウスを、すべての実験の期間にわたってテレメトリルーム内のプレキシグラスケージに個別に収容した。埋め込まれた送信機は、各ケージの下の受信機(モデルER-4000 Receiver,Mini Mitter Co.,Inc.)に送信される活動及び温度変調信号を生成する。使用後、テレメトリープローブを屠体から取り出し、アルコールスワブで拭き取り、再使用するまで消毒溶液中に保存した。
【0374】
ラジオテレメトリープローブの外科的移植の少なくとも7日後、個々のホームケージ内のマウスをラジオテレメトリーエネルギー装置/受信機の上に置き、プローブに電力を供給し、それらのデータをインターフェース付きコンピュータに送信した。実験セッションを開始すると、コンピュータは、プローブから2種類の更新データを5分間隔で収集した:一方のチャネルではコア温度(℃)、他方では自発運動カウント(受信機の上のプローブの相対位置に応じて任意の単位)。少なくとも60分間のベースラインデータ収集後、マウスをケージから取り出し、生理食塩水又は所与の用量の特定の薬物を注射し、次いでホームケージの24時間のデータ収集に戻した。
【0375】
食物及び水は常にホームケージで自由に入手可能であった。マウスに、少なくとも48時間の間隔をあけた用量で、漸増用量の所与の薬物を注射した。BTBRマウスにおける薬物効果の研究はほとんどないので、試験した最初の薬物用量は、これらの動物において予想外に大きな自発運動効果を誘発することがあった。これらの場合、次に、少なくとも1日のウォッシュアウト期間の後、より少ない薬物用量を試験した。
【0376】
C57マウス及びBTBRマウスにおけるコア温度及び(自発運動活性)LMAに対する生理食塩水注射の効果[ベースラインの確立及びマウス種の特徴]
図13は、C57マウス(塗りつぶされた丸)及びBTBRマウス(塗りつぶされた丸)におけるコア温度(左パネル)及び自発運動活性(右パネル)に対する生理食塩水注射を示す。両系統とも、生理食塩水投与後およそ30分間、一時的に増大したコア温度及びより高い活性レベルを示す。活性はまた、両系統について正常な概日パターンに従う。主観的暗期(subjective dark phase)中により多くの運動活性が記録されたが、興味深いことに、BTBRマウスは、C57よりも高い活性を、このより高い活性に起因すると思われるコア温度の上昇と共に示す。
【0377】
C57マウス及びBTBRマウスにおけるコア温度に対するラセミMDMA注射の用量増大の効果
図14は、C57マウス(塗りつぶされた丸)及びBTBRマウス(白抜きの丸)におけるコア温度に対する種々の用量(10mg/kg、30mg/kg、56mg/kg、100mg/kg)のラセミMDMA(例えば比較組成物1)の効果を示す。100mg/kgの用量で致死率が予想されたので、この用量での注射は、出勤日の開始時に室内灯下で投与され、したがって、ここに示されるデータトレースの期間中継続された。
【0378】
10mg/kgのIP投与では、ラセミMDMA(例えば比較組成物1)は、C57マウス及びBTBRマウスの両方において、注射の30分~1時間後にコア温度の低下を誘導し、その後、安定化した。用量を増大させると、BTBRマウスとC57マウスの両方でコア温度が徐々に増大し、56mg/kgでほぼ2℃の温度上昇であった。
【0379】
C57マウス及びBTBRマウスにおけるLMAに対するラセミMDMA注射の用量増大の効果
図15は、C57マウス(塗りつぶされた丸)及びBTBRマウス(白抜きの丸)における自発運動活性に対する様々な用量のラセミMDMA(例えば、比較組成物1)の効果を示す。30mg/kg、56mg/kg及び100mg/kgを投与したC57についての経時的な自発運動活性のパターン(15を参照)は、運動常同症と一致している:活動の初期増大が観察され、続いて自発運動の抑制が観察され、次いで、MDMAが除去され消失するにつれて活動の「後期」増大が観察される。BTBRにおける運動常同症の証拠はいずれの用量でも観察されなかった。自発運動効果の増大は、上記の
図14に実証されるように、温度の調節に対応する。
【0380】
C57マウス及びBTBRマウスにおけるコア温度に対するS-MDMA注射の用量増大の効果
図16は、C57マウス(塗りつぶされた丸)及びBTBRマウス(白抜きの丸)におけるコア温度に対する様々な用量のS-MDMA(例えば、比較組成物3)の効果を示す。注射後およそ5~8時間からのC57データトレースにおける大きなエラーバーは、1匹の動物が満了する前に重度の低体温を経験したためであったことに留意されたい。平均気温の急激な「跳ね上がり(jump)」は、この対象が死亡後に群平均から除外された結果である。
【0381】
ラセミMDMA(例えば比較組成物1)と同様に、S-MDMA(例えば比較組成物3)は、C57マウスとBTBRマウスの両方において用量依存的な温度上昇を誘発し、重要な違いは、より低用量のS-MDMAがコア温度のより強い変化を誘発することである。S-MDMA(例えば比較組成物3)の18mg/kg i.p投与でのコア温度の跳ね上がり(
図16)は、ラセミMDMA(例えば比較組成物1)の56mg/kg i.p投与で観察されるもの(
図14)よりも大きい。
【0382】
C57マウス及びBTBRマウスにおけるLMAに対するS-MDMA注射の用量増大の効果
図17は、C57マウス(塗りつぶされた丸)及びBTBRマウス(白抜きの丸)における自発運動活性に対する様々な用量のS-MDMA(例えば比較組成物3)の効果を示す。30mg/kgを投与したC57マウスについての経時的な自発運動活性のパターンは、運動常同症と一致している:活動の初期増大が観察され、続いて自発運動の抑制が観察され、次いで、S(+)-MDMAが除去され消失するにつれて活動の「後期」増大が観察される。BTBRにおける運動常同症の証拠はいずれの用量でも観察されなかった。
【0383】
C57マウス及びBTBRマウスにおける漸増用量のフェンタニルの自発運動効果。
図18は、C57マウス(塗りつぶされた丸)対BTBRマウス(白抜きの丸)における、u-オピオイドアゴニストであるフェンタニルの0.3mg/kg(左上)、1mg/kg(右上のグラフ)、3mg/kgの自発運動効果を示す。ラセミMDMA(例えば比較組成物1)及びS(+)-MDMA(例えば比較組成物1)で観察されたデータのパターンとは異なり、フェンタニルの各用量は、BTBRマウスよりもC57マウスにおいてより多くの自発運動活性を誘発したことに留意されたい。したがって、BTBRマウスは、すべての薬物の自発運動効果に対して感受性がより高くはないが、MDMA様薬物の精神刺激効果に対しては特異的に感受性がある。
【0384】
C57マウス及びBTBRマウスにおける漸増用量の精神刺激薬S-メタンフェタミンの自発運動効果。
図19は、C57マウス(塗りつぶされた丸)対BTBRマウス(白抜きの丸)における、S-メタンフェタミンの0.3mg/kg(左上)、1mg/kg(右上のグラフ)、3mg/kgの自発運動効果を示す。ラセミMDMA及びS(+)-MDMAで観察されたデータのパターンとは異なり、S(+)-METHのいずれの用量でも有意な系統差は観察されなかったことに留意されたい。したがって、BTBRマウスは、すべての薬物の自発運動効果に対して感受性がより高くはないが、MDMA様薬物の精神刺激効果に対して特異的には感受性がある。(0.3mg/kgのS(+)-メタンフェタミンは、効果が生理食塩水と異ならなかったので、時間活性曲線は示していない。)
【0385】
10mg/kgのラセミMDMA対S-MDMA対R-MDMA対比較組成物2(i)のコア温度効果及び自発運動活性効果
図20は、C57マウス(左)及びBTBRマウス(右)のコア温度に対する、0% R(-)-MDMA対100% S(+)-MDMA(黒丸)(例えば比較組成物3)、50% R(-)-MDMA対50% S(+)-MDMA(半白/半黒の丸)(例えば比較組成物1)、80% R(-)-MDMA対20% S(+)-MDMA(灰色の円)(例えば例示的組成物2(i))、又は100% R(-)-MDMA対0% S(+)-MDMA(白丸)(例えば例示的組成物7)の比での、10mg/kgのMDMAの効果を示す。C57マウス(左)では、純粋なS(+)-MDMA(例えば、比較組成物3)は温度上昇を誘発したが、混合物(例えば、例示的組成物2(i))も純粋なR(-)-MDMA(例えば、例示的組成物7)も、この用量ではコア温度に有意な効果を誘発しなかった。R(-)-MDMAの存在に応じて温度が減少する傾向があるようだが、これらがヒト集団に生理学的に関連するかどうかの評価はされないまま残っている。
【0386】
BTBRマウス(右)では、純粋なS(+)-MDMA(例えば、比較組成物3)が同様の温度上昇を誘発し、混合物中に存在するS(+)-エナンチオマーが少ないほど、観察された効果は小さくなった。このパターンは以下の30mg/kgで繰り返され、有意差が観察される。
【0387】
図21は、c57マウス(左)及びBTBRマウス(右)の自発運動活性に対する、0% R(-)-MDMA対100% S(+)-MDMA(黒丸)(例えば比較組成物3)、50% R(-)-MDMA対50% S(+)-MDMA(半白/半黒の丸)(例えば比較組成物)、80% R(-)-MDMA対20% S(+)-MDMA(灰色の円)(例えば例示的組成物2(i))、又は100% R(-)-MDMA対0% S(+)-MDMA(白丸)(例えば例示的組成物7)の比での、10mg/kgのMDMAの効果を示す。C57マウス(左)では、純粋なS(+)-MDMA(例えば、比較組成物3)が最大の自発運動刺激を誘発し、この用量でラセミ混合物(例えば、比較組成物1)及び80R/20S混合物(例えば、例示的組成物2(i))でより低い多動性が観察される。純粋なR(-)-MDMA(例えば、例示的組成物7)は、この用量で有意な運動刺激を誘発した。BTBRマウス(右)では、純粋なS(+)-MDMA(例えば、比較組成物3)は運動活性において実質的に大きな刺激を誘発し、混合物中に存在するS(+)-エナンチオマーが少ないほど、より低い活性が観察された。純粋なR(-)-MDMA(例えば、例示的組成物7)及び80/20混合物(例えば、例示的組成物2(i))については、この用量で有意な運動刺激は観察されなかった。
【0388】
驚くべきことに、BTBRマウスにおけるS-MDMA(例えば、比較組成物3)による強い自発運動刺激効果にもかかわらず(
図21)、コア温度は、ラセミMDMA(例えば、比較組成物1)で観察されたものとあまり異ならなかった(
図20参照)。
【0389】
30mg/kgのラセミMDMA対S-MDMA対R-MDMA対例示的組成物2(i)のコア温度効果及び自発運動活性効果
図22は、C57マウス(左)及びBTBRマウス(右)のコア温度に対する、0% R(-)-MDMA対100% S(+)-MDMA(黒丸)(例えば例示的組成物7)、50% R(-)-MDMA対50% S(+)-MDMA(半白/半黒の丸)(例えば比較組成物1)、80% R(-)-MDMA対20% S(+)-MDMA(灰色の円)(例えば例示的組成物2(i))、又は100% R(-)-MDMA対0% S(+)-MDMA(白丸)(例えば例示的組成物7)の比での、30mg/kgのMDMAの効果を示す。C57マウス(左)では、純粋なS(+)-MDMAは有意な高体温を誘発するが、混合物も純粋なR(-)-MDMAもこの用量でコア温度に有意な効果を誘発しなかった。
【0390】
BTBRマウス(右)では、純粋なS(+)-MDMA(例えば、例示的組成物3)は大きな高体温応答を誘発し、混合物中に存在するS(+)-エナンチオマーが少ないほど、より少ない高体温が観察された。純粋なR(-)-MDMA(例えば、例示的組成物7)及び80/20混合物(例えば、例示的組成物2(i)については、この用量ではコア温度に対する有意な効果は観察されなかった。
【0391】
図23は、C57マウス(左上)及びBTBRマウス(右上)の自発運動活性に対する、0% R(-)-MDMA対100% S(+)-MDMA(黒丸)(例えば比較組成物3)、50% R(-)-MDMA対50% S(+)-MDMA(半白/半黒の丸)(例えば比較組成物1)、80% R(-)-MDMA対20% S(+)-MDMA(灰色の円)(例えば例示的組成物2(i))、又は100% R(-)-MDMA対0% S(+)-MDMA(白丸)(例えば例示的組成物7)の比での、30mg/kgのMDMAの効果を示す。30mg/kgの100% S(+)-MDMA(例えば、比較組成物3)は、C57マウスにおいて自発運動の常同症を誘発し、初期の活性の増加、次いで動物が常同症に入る際の低減、次いで注射後240分付近で薬物が除去され消失する際の活性の「第2期」の増大を特徴とする。対照的に、エナンチオマー混合物(例えば、例示的組成物2(i))は、運動活性の時間依存性増大のみを誘発する。興味深いことに、BTBRマウスでは常同症は観察されなかった。
【0392】
C57マウス(左のグラフ)では、ラセミ混合物(例えば、比較組成物1)及び80R/20S混合物(例えば、例示的組成物2(i))は、この用量で、S(+)-エナンチオマーの立体障害効果のために、純粋なS(+)-MDMA(例えば、比較組成物3)よりも高い活性を誘発する。純粋なR(-)-MDMA(例えば、例示的組成物7)は、この用量で有意な運動刺激を誘発しなかった。
【0393】
BTBRマウス(右)では、純粋なS(+)-MDMAは運動活性において大きな刺激を誘発し、混合物中に存在するS(+)-エナンチオマーが少ないほど、より低い活性が観察された。純粋なR(-)-MDMA(例えば、例示的組成物7)については、この用量で有意な運動刺激は観察されなかった。
【0394】
C57マウス及びBTBRマウスにおける生理食塩水又は様々な用量のラセミMDMA及びS-MDMAの自発運動効果。
図24は、C57マウス(塗りつぶされた丸)及びBTBRマウス(白抜きの丸)における生理食塩水又は様々な用量のラセミMDMA(左パネル)(例えば比較組成物1)若しくはS-MDMA(右パネル)(例えば比較組成物3)の自発運動効果を示す。ラセミMDMA(例えば、比較組成物1)及びS(+)-MDMA(例えば、比較組成物3)の両方が古典的な「逆U字型」用量-効果曲線を誘発するのは、高用量が運動常同症を誘発し、その結果、中用量で観察されるよりも総歩行活動が少なくなるからである。興味深いことに、BTBRマウスの用量効果曲線は、ラセミMDMAについて、この二相性パターンに従わない。
【0395】
概要
パイロット第2相臨床試験において、Alicia Danforth、及びCharles Grobb(Danforthら、Psychopharmacology(Berl).2018;235(11):3137-3148)は、MDMA支援心理療法後の自閉症成人における社会的不安症候の迅速かつ永続的な改善を実証した。しかし、ラセミMDMAは、他の研究者によって実証されているように、コア温度の上昇及び心血管事象ももたらす。本研究の目的は、本出願の本発明者らの例示的な非ラセミ組成物の安全性プロファイルを、MDMA及びラセミMDMAの個々の(R)及び(S)エナンチオマーと比較して評価することであった。
【0396】
以下の所見が見出された。
【0397】
ラセミMDMA(例えば、比較組成物1)及びS(+)-MDMA(例えば、比較組成物3)が両方とも古典的な「逆U字型」用量-効果曲線を誘発するのは、高用量が運動常同症を誘発し、その結果、中用量で観察されるよりも総歩行活動が少なくなるからである。興味深いことに、BTBRマウスの用量効果曲線は、ラセミMDMAについて、この二相性パターンに従わない(
図24参照)。
【0398】
10mg/kgと比較して、BTBRは30mg/kgのS-MDMA(例えば、比較組成物3)に対して強い高体温応答を誘発する。ラセミMDMA(例えば、比較組成物1)は両方の用量(10mg/kg及び30mg/kg)で温度上昇をもたらすが、S-MDMAほど顕著ではない(
図22参照)。
【0399】
例示的組成物2(i))(用量にかかわらず)及び生理食塩水は、BTBRマウス及びC57マウスにおいて温度変化の応答を有する(
図20及び
図22を参照)。
【0400】
上記のパートAに記載された社会選好性データと組み合わせると、これらの結果は、BTBRマウスにおいて例示的組成物2(i))などの本出願の非ラセミ組成物を投与すると、マウスは高体温などの重度の有害事象を有することなく生来の社会的不安を克服することを解明する。それにより、例示的組成物などの本出願の非ラセミ組成物は、MDMAの比較的安全な使用をもたらす。
【0401】
本出願は例を参照して説明されたが、特許請求の範囲は例に記載された実施形態によって限定されるべきではなく、全体として説明と一致する最も広い解釈が与えられるべきであることを理解されたい。
【0402】
すべての刊行物、特許及び特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許又は特許出願がその全体が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本出願の用語が、参照により本明細書に組み込まれる文書において異なる定義であることが判明した場合、本明細書で提供される定義は、その用語の定義として機能するものとする。
【国際調査報告】