(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】軌道上での作業投入を実施する作業車両
(51)【国際特許分類】
B61D 15/00 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
B61D15/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512144
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2022072525
(87)【国際公開番号】W WO2023025595
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514318345
【氏名又は名称】プラッサー ウント トイラー エクスポート フォン バーンバウマシーネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Plasser & Theurer, Export von Bahnbaumaschinen, Gesellschaft m.b.H.
【住所又は居所原語表記】Johannesgasse 3, A-1010 Wien, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハンスペーター メイヤー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ カイザー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヴァイタースベアガー
(57)【要約】
本発明は、軌道(39)上での作業投入を実施する作業車両(2)であって、レール走行装置(11)上に支持されて軌道(39)上を走行可能である車両フレーム(1)と、車両フレーム(1)に結合されている走行キャビン(21)と、作業投入のための割り当てられた機能を有する様々な構造物と、を備える作業車両(2)に関する。この場合、構造物は、予め規定されたインタフェース(23)を有する自立形の機能モジュール(12~22)として形成されており、かつねじ結合によって車両フレーム(1)にかつ/または互いに結合されている。予め規定されたインタフェース(23)は、さらなる適合なしに、異なる機能モジュール(11~22)の相互連結を可能にする。すべてのモジュール(11~22)は、溶接工程および適合工程なしの最終組み立てにおける接合可能性を可能にすべく、一通りモジュールの幾何学形状とモジュールの機能とに関してチェックされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道(39)上での作業投入を実施する作業車両(2)であって、
レール走行装置(11)上に支持されて前記軌道(39)上を走行可能である車両フレーム(1)と、
前記車両フレーム(1)に結合されている走行キャビン(21)と、
作業投入のための割り当てられた機能を有する様々な構造物と、
を備える作業車両(2)において、
前記構造物は、予め規定されたインタフェース(23)を有する自立形の機能モジュール(12~22)として形成されており、かつねじ結合によって前記車両フレーム(1)にかつ/または互いに結合されている、
ことを特徴とする作業車両(2)。
【請求項2】
機械式および電気式および/または液圧式および/または空気圧式のインタフェース(23)が予め規定されていることを特徴とする、請求項1記載の作業車両(2)。
【請求項3】
予め規定された前記インタフェース(23)は、特に、互いに直交する2つの方向でそれぞれの前記機能モジュール(12~22)の調整を可能にする接合要素を有することを特徴とする、請求項1または2記載の作業車両(2)。
【請求項4】
予め規定された前記インタフェース(23)は、互いに一意的な幾何学的な嵌合形状を有する接合要素を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の作業車両(2)。
【請求項5】
前記車両フレーム(1)は、2つの側方の長手方向梁(3)を有しており、前記長手方向梁(3)の上縁が、車両床(28)を規定し、かつ少なくとも1つの機能モジュール(11~15)は、床下モジュールとして前記車両床(28)よりも下に配置されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の作業車両(2)。
【請求項6】
それぞれの前記長手方向梁(3)は、長手方向梁上弦材(4)と長手方向梁下弦材(5)とを有しており、前記長手方向梁上弦材(4)と前記長手方向梁下弦材(5)とは、互いに等間隔に配置される複数の結合要素(6)によって互いに結合されていることを特徴とする、請求項5記載の作業車両(2)。
【請求項7】
1つの床下モジュールがトラクションモジュール(14)として形成されており、かつ前記トラクションモジュール(14)は内燃機関(37)を有しており、前記内燃機関(37)は、発電機(44)および/またはポンプ分配ギヤボックス(46)に連結されていることを特徴とする、請求項5または6記載の作業車両(2)。
【請求項8】
少なくとも1つの機能モジュール(12~22)が、ガイド上で前記車両フレーム(1)に対して移動可能に形成されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の作業車両(2)。
【請求項9】
移動可能な前記機能モジュール(12~22)が、補助フレーム(25)上に取り付けられていることを特徴とする、請求項8記載の作業車両(2)。
【請求項10】
前記車両フレーム(1)は、長手方向(7)で3つのセクション(8,9)に区分されており、一方の端部側のセクション(8)上には、前記走行キャビン(21)が配置されており、他方の端部側のセクション(8)上には、クレーンモジュール(12)または別のキャビン(21)が配置されており、かつ中央のセクション(9)上には、別の機能モジュール(12~22)が構築されていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の作業車両(2)。
【請求項11】
前記機能モジュール(12~22)の装着用の、前記車両フレーム(1)の寸法と、遵守すべき建築限界とにより予め与えられた装着スペース(29~32)が、鉛直の方向(33)、長手方向(7)および横方向(34)で複数のセグメントに区分されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の作業車両(2)。
【請求項12】
制御装置(24)内にモジュール式の制御ソフトウェアが装備されており、異なる機能モジュール(12~22)に、固有のソフトウェアモジュール(40)が割り当てられており、かつ前記ソフトウェアモジュール(40)は、別々に制限解除可能であることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の作業車両(2)。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の作業車両(2)を組み立てる方法であって、
前記車両フレーム(1)を、選択した機能モジュール(12~22)に適合された寸法設定を伴って製造し、各機能モジュール(12~22)をまず自立形のユニットとして前組み立てし、前組み立てした前記機能モジュール(12~22)を前記車両フレーム(1)にかつ/または互いにねじ固定することを特徴とする方法。
【請求項14】
それぞれの前組み立てした前記機能モジュール(12~22)を組み込み前に診断装置(38)を用いて運転することを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
制御装置(24)内に装備されるモジュール式の制御ソフトウェアを、組み込まれる前記機能モジュール(12~22)に適合させることを特徴とする、請求項13または14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道上での作業投入を実施する作業車両であって、レール走行装置上に支持されて軌道上を走行可能である車両フレームと、車両フレームに結合されている走行キャビンと、作業投入のための割り当てられた機能を有する様々な構造物と、を備える作業車両に関する。加えて本発明は、作業車両を組み立てる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上位概念部に記載の作業車両は、オーストリア国特許出願公開第520066号明細書において公知である。割り当てられた機能を有する構造物として、作業台と、作業バスケットを有するクレーンとが配置されている。作業投入中、車両には、複数のエネルギアキュムレータモジュール(蓄電池パック)から電気的なエネルギが供給される。
【0003】
オーストリア国実用新案第16702号明細書は、類似の作業車両を開示しており、この作業車両では、同じくエネルギアキュムレータモジュールによる供給が実施される。長さに関し、作業車両の構造物は、複数のセクションに区分されている。これらのセクションの1つは、通行可能な運転室であり、運転室内には、エネルギアキュムレータモジュールが格納されている。モジュール配置が変更されることにより、それぞれ異なるエンクロージャ高さ、ひいてはそれぞれ異なる空間高さが達成可能である。こうして、車両屋根内に凹部を設けることが可能とされ、この凹部内には、運転停止位置にある間、作業台を下げておくことが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の根底にある課題は、冒頭で挙げた形態の作業車両を、車両上にそれぞれ異なる構造物を効率的に配置することができるように改良することである。さらに、本発明の課題は、作業車両を組み立てる相応の方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明において、上記課題は、独立請求項1および13の特徴によって解決される。従属請求項は、本発明の有利な構成を提示する。
【0006】
その際、構造物は、予め規定されたインタフェースを有する自立形の機能モジュールとして形成されており、かつねじ結合によって車両フレームにかつ/または互いに結合されている。機能モジュールは、内在する機能、入力および出力により、システム限界および予め規定されたインタフェースにより、ならびに別の機能モジュールおよび全体機械機能との相互作用により特徴付けられている。このような自立形の機能モジュールは、前組み立てされ、綿密にチェックされた後、作業車両内の組み込みが実施される。場合によっては、前もってモジュール表面の塗装も実施され、その結果、車両は、モジュール装着後、既に作業投入準備が整っている。予め規定されたインタフェースは、さらなる適合なしに、異なる機能モジュールの相互連結を可能にする。前もって実施されるチェックは、予め規定された同じインタフェースを有する診断装置を用いて実施される。特に、診断装置は、汎用の測定兼検査装置と、それぞれの自立形の機能モジュールの機械式の取り付け用の接合要素と、様々な機能モジュールを動作制御する制御装置と、を有している。装着前のモジュール診断およびシステム検査は、車両運転開始のために要する時間を最適化する。すべてのモジュールは、溶接工程および適合工程なしの最終組み立て時の接合可能性を可能にすべく、一通りモジュールの幾何学形状とモジュールの機能とに関してチェックされる。
【0007】
本発明に係る車両は、包括的なモジュールチェックと、場合によっては行い得る修正とにより、高い運転信頼性を示す。モジュールチェック時の早期のエラー認識と、モジュール装着後のシステム認証とにより、エラーコストは最小化される。加えて、個々の機能モジュールの使用限界が予め与えられており、検査可能である。モジュール機能の相互作用も、前もって分かっている。既知の車両コンセプトと比べて少ない個数の部品バリエーションは、運転信頼性をさらに向上させる。
【0008】
機能モジュールの編成が変更されるとき、1度前もって実施された型式検査と適合表示とは、簡略化された後続承認に至る。複数の個別型式検査の代わりの適合表示の利用と、より迅速な組み立てとが、製造過程の所要時間を減らす。新たなモジュール組み合わせは、簡単に、新しい機能による車両の使用機能および使用範囲の拡張を可能にする。
【0009】
特に、従来の機械的な構造の排除と、最終組み立て時の溶接作業の回避とが、エラーの回避に貢献する。総じて、モジュール式の構造は、保守作業の簡略化と、技術的な適合の簡単な後付けとを提供する。寿命サイクルが尽きたときには、簡単な解体と、原材料のリサイクルとが実施可能である。
【0010】
有利には、予め規定されたインタフェースは、機械式および電気式および/または液圧式および/または空気圧式のインタフェースとして形成されている。個々の機能モジュールのインタフェースは、直接互いに、またはモジュール式のラインを用いて結合される。これらのラインは、規定されたチャネルおよびラインガイド内に位置決めされ、例えばコネクタ、フランジまたは迅速継手として形成されているインタフェースに位置固定されている。特に、インタフェースは、個々の機能モジュールの取り付け、エネルギ供給、通信および診断に用いられる。対応する診断装置は、有意義には、電気系統、液圧系統、圧縮空気、燃料、水、オイルおよび様々な補助剤(例えば内燃機関用の尿素溶液)用のユニバーサルインタフェースを有している。
【0011】
さらなる改善に際し、予め規定されたインタフェースは、特に、互いに直交する2つの方向でそれぞれの機能モジュールの調整を可能にする接合要素を有している。これにより、最終組み立て中、モジュールの正確な位置決めが保証されている。機械式のインタフェースあるいは接合要素は、正確に合致し、かつねじ結合によって固定可能である。これにより、最終組み立て時に、溶接作業を省略することができる。接合結合は、熱膨張等に基づく体積および長さの膨張のための補償を行う。最終組み立て時、個々の機能モジュールは、逐次、プラットフォームとして用いられる車両フレーム上で互いに接合され、このとき、規定された機械式のインタフェースは、取り付けに用いられる。例えば、取り付けは、穴パターンを介して、ねじ結合と弾性的なサスペンションとを伴って実施される。その際、一意的な接合場所が割り当てられており、これにより、構成部品の衝突が回避される。
【0012】
一発展形態では、予め規定されたインタフェースが、互いに一意的な幾何学的な嵌合形状を有する接合要素を有している。これを用いて一意的な結合が予め与えられており、これによりインタフェースエラーが回避される。好ましくは、ポカヨケの原理、例えば一意的な姿勢ポジションの設定のための形状コーディングが使用される。
【0013】
有利であるのは、2つの側方の長手方向梁を有しており、長手方向梁の上縁が車両床を規定し、少なくとも1つの機能モジュールが、床下モジュールとして車両床よりも下に配置されている車両フレームである。これにより、車両床を、機能モジュールの床上装着用のスペースと、機能モジュールの床下装着用のスペースとの間の仕切り平面と見なすことができる。それぞれの装着スペースは、サイズおよび形状の点で長手方向梁の配置および寸法設定によって可変である。長手方向梁に剛結されている横方向梁の配置も、同じくそれぞれの装着スペースに影響を及ぼす。
【0014】
有利には、それぞれの長手方向梁は、長手方向梁上弦材と長手方向梁下弦材とを有しており、長手方向梁上弦材と長手方向梁下弦材とは、互いに等間隔に配置される複数の結合要素によって互いに結合されている。この場合、下弦材の構造形態は、床下装着用のスペースをともに規定する。各下弦材は、結合要素(ストラット)を介して、割り当てられた上弦材に、標準化された形式で結合されている。この設計により、機能モジュールのための装着スペースを制限することなく、フレームの曲げ剛性、引っ張り-圧縮-剛性およびねじり剛性が強化される。
【0015】
本発明の有意義な一発展形態では、1つの床下モジュールがトラクションモジュールとして形成されており、トラクションモジュールは内燃機関を有しており、内燃機関は、発電機および/またはポンプ分配ギヤボックスに連結されている。車両を動かすこのようなトラクションモジュールは、別の機能モジュールにもエネルギを供給する。
【0016】
有利であるのは、少なくとも1つの機能モジュールが、ガイド上で車両フレームに対して移動可能に形成されている配置である。これを用いて、車両重心のポジションを、レール走行装置に対する重量分布を最適化すべく、移動することができる。この重量トリミングのために、対応する機能モジュールは、有段式または無段式に長手方向および横方向で移動可能である。
【0017】
好ましくは、移動可能な機能モジュール、例えばタンク、パワーパック等は、補助フレーム上に取り付けられている。この場合、横方向での装着ポジションの変更は、補助フレーム上でのそれぞれの機能モジュールの側方の移動によって実施される。
【0018】
本発明の別の一改良形態では、車両フレームは長手方向で3つのセクションに区分されており、一方の端部側のセクション上には、走行キャビンが配置されており、他方の端部側のセクション上には、クレーンモジュールまたは別のキャビンが配置されており、中央のセクション上には、別の機能モジュールが構築されている。この長手方向ビルディングブロックコンセプトの場合、機能モジュールの装着のための装着スペースは、幅に関しては不変であり、長さおよび高さに関しては可変である。特に、中央のセクションは、それぞれ異なる機能モジュールの配置を可能にすべく、長手方向で可変である。
【0019】
選択された機能モジュールの有利な編成のために、車両フレームの寸法と、遵守すべき建築限界とによって予め与えられた装着スペースは、鉛直の方向、長手方向および横方向で複数のセグメントに区分されている。好ましくは、4つのセグメント(例えばボギー、キャビン、屋根上構造物および床下アッセンブリ)が鉛直の方向で配置され、10個のセグメント(例えば緩衝器および牽引フック、キャビン、クレーン、積載面等)が長手方向で配置され、3つのセグメント(例えば運転士席、助手席等)が横方向で配置されている。
【0020】
さらなる改善に際し、制御装置内にモジュール式の制御ソフトウェアが装備されており、異なる機能モジュールに固有のソフトウェアモジュールが割り当てられており、かつソフトウェアモジュールは、別々に制限解除可能である。制御ソフトウェアのこのモジュール式のコンセプトは、予め与えられたモジュールカタログから選択可能な機能モジュールに適合性があり、制御ソフトウェアは、機械機能のそれぞれのコンフィギュレーションに適合可能である。
【0021】
説明した作業車両を組み立てる本発明に係る方法では、車両フレームを、選択した機能モジュールに適合された寸法設定を伴って製造し、各機能モジュールをまず自立形のユニットとして前組み立てし、前組み立てした機能モジュールを車両フレームにかつ/または互いにねじ固定する。この場合、車両フレームはプラットフォームとして用いられ、プラットフォームは、幅、長さおよび高さに関して、規定された標準にしたがって変更され、スケーリングすることができる。
【0022】
従来の車両コンセプトと比較して少ない個数の構成部品バリエーションにより、さらなる利点が生じる。製造コストが低下し、かつロジスティクスが、機能モジュールおよびモジュールコンポーネントの最小在庫管理によって簡略化される。高い詳細度は、装着構成群および個別部品の簡単な理解と一意的な割り当てとを可能にする。この装着コンセプトは、高回数の繰り返しを提供し、規格部品バリエーションの少ない共通部品が使用される。加えて、CAD装着ツール(例えば、装着補助手段としての装着された状態での個々の構成部品の3D表示またはバーチャル・リアリティまたはオーグメンテッド・リアリティ)が簡略化され、標準化された装着を可能にする。
【0023】
本方法の一発展形態では、それぞれの前組み立てした機能モジュールを組み込み前に診断装置を用いて運転する。こうして、組み込み前に、可能性のあるエラーまたはウイークポイントをなくすために、各機能モジュールの幾何学的なかつ機能的なチェックが実施される。具体的には、モジュール診断は、最終組み立てのための、個々の機能モジュールの定量的な計測および評定と、機能的なシステムの定性的な評価とのための検査装置を用いた方法である。これを用いて達成される品質確保と、機能ユニットの定量的な性能査定のための高速検査法による一貫したバリデーションとは、トレーサビリティマネジメントおよびオブソレッセンスマネジメントのための評価および記録に用いられる。
【0024】
さらなる改善に際し、制御装置内に装備されるモジュール式の制御ソフトウェアを、組み込まれる機能モジュールに適合させる。選択され組み上げられる各機能モジュールのために、制御ソフトウェアの対応する部分がアクティベートされ、解放される。これにより、機械制御部の構造化プログラミングが容易化される。加えて、個々の機能モジュールおよび制御構成単位の交換による、変更された要求および法規的な前提への適合が、簡単に実施可能である。
【0025】
本発明について、以下に例示的に添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図6】車両コンセプトの概略側面図および概略平面図である。
【
図7】それぞれ異なる車両コンフィギュレーションの概略図である。
【
図8】クレーンと昇降台とを備える車両コンフィギュレーションの概略図である。
【
図9】発電機を有するトラクションモジュールの概略図である。
【
図10】ポンプ分配ギヤボックスを有するトラクションモジュールの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1~
図3は、モジュールビルディングブロックシステムに基づく作業車両2用の例示的な車両フレーム1を示している。車両フレーム1の主要素は、2つの側方の長手方向梁3であり、長手方向梁3は、それぞれ1つの上弦材4と1つの下弦材5とを有している。それぞれの上弦材4と、対応する下弦材5とは、複数の結合要素(ストラット)6により結合されており、これらの結合要素6は、互いに車両長手方向7で等間隔に配置されている。これを用いて長さの異なる車両フレーム1を製造することができるように、車両フレーム1の標準化されたスケーリングが予め与えられている。
【0028】
車両フレーム1は、2つの端部側のセクション8と、その中間に位置する中央のセクション9とに区分される。各端部側のセクション8において、長手方向梁3は、横方向梁10に剛結されている。これらの横方向梁10には、モジュール式に構成されるレール走行装置11用の回転ピンと受けとが配置されている。任意選択的に、中央のセクション8には、別の横方向梁10がクレーンモジュール12用の受けとして位置決めされている。この横方向梁10のポジションは、長手方向7で、結合要素6によって予め与えられたスケーリングに沿って自由に選択可能である。特に、それぞれの下弦材5は、中央のセクション9にのみ配置されている。
【0029】
本発明によれば、車両フレーム1の寸法設定は、選択された機能モジュール11~22に適合される。この選択は、予め与えられた車両要求に由来する。その際、前もって実施される設計段階で、モジュールカタログが作成される。モジュールカタログでは、各機能モジュール11~22が、すべての機能および予め規定されたインタフェース23とともに確定される。さらに続いて、仕様書設定を満たすための、すべての可能な機能モジュール11~22およびそれらの組み合わせ可能性の確定が実施される。このとき、位置決め条件および使用限界の遵守が求められる(建築限界、軌間、線路等級、規格および法規)。不可能な組み合わせのための排除基準も規定されている。有利には、コンピュータ実装されたモジュールコンフィギュレータ内で、相応のアルゴリズムが使用される。これを用いて、機能モジュール11~22および機械機能は、使用限界、技術的な寿命および排除する基準を考慮しつつ、自動化されて組み合わせ可能である。この自動化されたモジュールコンフィギュレーションの場合、国毎に固有の状況も顧慮される。コストおよび価格のビルディングブロックを提供するために、モジュールコンフィギュレータは、コスト計算アルゴリズムによって拡張可能である。付加的に、モジュールライブラリからモジュール組み合わせを選択するためのCADアルゴリズムによる車両2のバーチャルコンフィギュレーションが有意義である。
【0030】
このように標準化された機能モジュール11~22は、ビルディングブロックシステムにしたがって互いに組み合わせ可能であるとともに、部分的にサイズおよび機能範囲に関してスケーリング可能である。レール走行装置モジュール11およびクレーンモジュール12に加えて、例えば昇降台モジュール13、トラクションモジュール(パワーパック)14、タンクモジュール15、架線およびエネルギ供給モジュール16、工房モジュール17、厚生キャビンモジュール18、技術室モジュール19、積載面モジュール20および走行キャビン21ならびに様々な別のモジュール22が、機能モジュールとして選択可能である。モジュール11~22は、特に顧客毎に固有の要求に即してスケーリング可能である。例えばクレーンの場合、つり上げ荷重およびブーム作業半径が変更可能である。
【0031】
これらの機能モジュール11~22の各々は、予め規定されたインタフェース23を有する自立形のユニットとして形成されている。その際、車両重量を減らし、かつ付設可能なモジュール11~22の個数を増やすために、最大で許容可能な軸重と、それぞれの線路等級とを考慮しつつ、軽量構造が使用される。例えばキャビン17,18,19,21は、アルミニウム鍛錬用合金から製造される。スペード構造(Spatenbauweise)では、5mm~10mmの厚さを有する、レーザ切断されて折り曲げられたアルミニウム薄板が組み上げられる。加えて、高強度の細粒構造用鋼の使用は、材料厚さおよび車両重量を減少させる。
【0032】
それぞれのモジュール11~22の機能次第で、予め規定されたインタフェース23は、機械式、電気式、液圧式、空気圧式およびその他の接続部を有している。特に、他のモジュール11~22および中央の制御装置24との通信用のデータインタフェースが設けられている。個々のモジュール、例えばトラクションモジュール14は、好ましくは、補助フレーム25上に装着されている。その際、それぞれの機能ユニットのための関連するすべてのコンポーネントは、空間的にコンパクトにまとめられている。このように構成される機能モジュール11~22は、容易に運搬可能であり、かつクレーンまたは昇降装置により位置決めされ、装着されることができる。設計の高い詳細度と、一意的な構造とは、それぞれ異なる製造立地での機能モジュール11~22のプレファブリケーションを可能にする。一貫した変更マネジメントは、履歴追跡を保証する。加えて、既存の車両の継続的な技術的な更新および規格に準拠した適合のための、標準化されたレトロフィットマネジメントおよびアップグレードマネジメントが、長期の使用期間を保証するために実施される。
【0033】
新設の車両2の場合、まず、基本型式と駆動コンセプトとが確定される。例えばベースレール走行装置11として、2つのシングルアクスルと2つのボギーとの間での選択がなされる。ベース車両2は、2つのレール走行装置11と、トラクションおよび走行運転用の内蔵されたモジュールを有する車両フレーム1と、車両制御部を有する走行キャビン21と、車両操縦士のための規格に準拠した作業場と、機能モジュール11~22のためのフリースペースとからなっている。運転および停止の基本機能を果たすためのモジュール11~22における最小装備も確定されている。その際、すべての機能モジュール11~22は、2軸のプラットフォームのためにも、4軸のプラットフォームのためにも使用可能である。
【0034】
車両フレーム1はプラットフォームとして用いられ、プラットフォーム上には、最終組み立て中、モジュールビルディングブロックシステムから選択された機能モジュール11~22が構築される。その際、上弦材4は、長手方向7での、規定されたインタフェースを有する標準化された主梁である。各側には、上弦材4と下弦材5との間に、保守コンポーネント用のフリースペース26が存在している。外側には、ケーブルトレイ27が、車両全長にわたって配置されている。長手方向梁3の上縁は、車両床28を規定し、車両床28は、装着スペースを上側の領域と下側の領域とに分割する。
図3に看取可能であるように、長手方向梁3間には、床下装着用のフリースペース29が存在している。任意選択的な中央の横方向梁10と、結合要素6とは、ラインガイド用の貫通部を有している。好ましくは、ラインガイドは、側面で下弦材の領域内に位置決めされており、ケーブルハーネス、液圧式のラインおよび空気圧式のラインのためにスペースを提供する。標準化された機能モジュール11~22の設計は、基本フレーム1上での可変の装着場所を可能にする。
【0035】
作業車両2の組み立てについて、
図4~
図6を参照しながら説明する。まず、床下装着スペース29と床上装着スペース30とは区別される。車両2の運転用のトラクションモジュール14は、好ましくは、床下に配置されている(例えばボギー、パワーパック、変圧器、アキュムレータ等)。その際、トラクションモジュール14は、例えば原動機、発電機、電気駆動部および場合によっては制動エネルギ回生装置を有している。加えて、トラクションモジュール14は、架線-エネルギ供給モジュール16に連結されている。補足的に、例えばアキュムレータ、燃料電池およびその他の新しいエネルギ源(ソーラ設備)が配置されている。
【0036】
車両床28上には、例えば技術室19、走行キャビン21、電気系統エンクロージャ、乗員キャビン18、工房17、クレーン12および昇降台13が配置されている。前部領域31および後部領域32には、緩衝器と連結装置とが設けられている。これを用いて、被牽引車両を連結することができ、または複数の車両2を互いに連結することができる。加えて、特殊機能用の付設モジュール22(除雪用具、測定装置等)を取着する可能性がある。キャビン21の屋根上は、屋根上構造物16(例えば集電装置、制動抵抗器、ライン等)用のスペースである。
【0037】
鉛直の方向33で、モジュール11~22は、4つのセグメントで上下に装着される。下から開始し、第1セグメントは、例えばレール走行装置11を有している。下弦材5と上弦材4との間の第2セグメントは、例えばトラクションモジュール(パワーパック)14、変圧器モジュール、アキュムレータモジュールおよびタンクモジュール15を収容するために用いられる。車両床28上の第3セグメント内には、例えばキャビン21、クレーンモジュール12および昇降台モジュール13が配置可能である。屋根上の第4セグメントは、例えば集電装置、制動抵抗器および様々な作業機器、例えばラインプッシャを有している。
【0038】
横方向34で、モジュール11~22の装着は、好ましくは、3つのセグメントで実施される。左外および右外には、例えばラインガイド用の保守ダクトが配置されている。その中間には、機能集合体用のセグメントが存在している。
【0039】
長手方向7では、10個までのセグメントの区分が実施される。これらのセグメント内には、例えば相前後して緩衝器および牽引フック、走行キャビン21、厚生キャビン18、工房キャビン17、昇降台13、積載面20、工具室、クレーン12、クレーンキャビン、そして再び緩衝器および牽引フックが配置されている。
【0040】
図6は、鉛直の方向33、長手方向7および横方向34での機能モジュール11~22の装着ポジションの1つのバリエーションを示している。例えば、タンクモジュール15が補助フレーム25上に装着されている。この場合、補助フレーム25上でのタンクモジュール15の側方の移動は、横方向34での装着ポジションの変更を可能にする。長手方向7での装着ポジションの変更は、ガイドに沿った車両フレーム1における補助フレーム25の移動により実施される。鉛直の方向33で、上弦材4と下弦材5との間の結合要素6に沿ったモジュール15の移動は、装着ポジションの変更を生じさせる。
【0041】
モジュール11~22の最終組み立ての前に、モジュール診断が実施される。このようにチェックされたモジュールは、ビルディングブリック原理に類似して互いに接合され、かつ形状結合および力結合によって結合される。同じことは、ラインおよび付加機器の装着にも当てはまる。配向および位置決めは、この場合、一意的に予め与えられており、例えば互いに調整された形状付与によって強制されている。各接合工程は、チェックリストを用いて検査され、工員による自己検査時に検分され、確認される。システム機能は、モジュール11~22および接続ラインの接合後、機械評価によりチェックされ、認証される。
【0042】
モジュール診断の範囲内で、個々のモジュール11~22の定量的な計測および評定と、機能的なシステムの定性的な評価とが、最終組み立てのために実施される。例えばトラクションモジュール(パワーパック)14の場合、以下のチェックが実施される:
-電気的な入力および出力測定
-信号の電気的な分析
-媒体流:燃料、冷却水、付加剤、冷却空気流のチェック
-内燃機関37の熱間測定:電流測定を伴う無負荷の回転数立ち上がり(過渡)
-制御プログラムの検査用のテストプログラム(I/Oチェックおよびアクチュエータチェック)
-重量測定および写真記録
-データマトリクスコードのスキャン等
-振動およびノイズエミッションおよびパーティクルカウンタの特殊測定
-例えば目視検査および検査経過のためのバリデーションチェックリスト
-検査表示(良/不良、リワーク)。
【0043】
概略的に
図5に示す汎用の診断装置38は、すべてのモジュール11~22のチェック用に構成されている。セットアップステーションには、搬入ゾーン、モジュール取り付け部を有する移動式の運搬装置、昇降装置および組み立て工具が存在している。診断装置38自体は、モジュール11~22の機械式のインタフェースに適合されている機械式の取り付け要素と、固有のエネルギ供給部と、電気系統、液圧系統、燃料、付加剤、水、空気、オイル用のユニバーサルインタフェースと、すべての電気的な測定量の検出用の測定機器と、すべての制御信号の生成および処理用の制御装置24と、様々なメディア(例えばDanfoss社のコリオリセンサ)と、時間測定、画像検出および力測定用のセンサと、データマトリクス用のスキャナ(ロットおよび日付)と、トレーサビリティコンポーネント(部品番号と、日付、ロットおよび評価とのひも付け)と、測定技術の校正用のコンポーネントと、を有する汎用の測定兼検査装置である。診断装置38の、
図5に略示するインタフェース23は、検査すべきモジュール11~22の、予め規定されたすべてのインタフェース23に合わせて調整されている。
【0044】
有利には、診断装置38は、データ検出用、フォーマットされたデータベース内での変換用、測定データと、部品番号、ロット、日付および注文番号との割り当て用、データベース内でのデータアーカイブ用、必要に応じた検査証のプリントアウト用、統計学的な評価用および一般的な評価(良/不良)用のERPインタフェースを有している。
【0045】
リワークステーションは、組み立て工具一式、ワークベンチ、媒体タンク、エラーの評価用の機器およびエラー除去用の機器を含んでいる。このようなエラー除去後、再度のチェックを診断装置38を用いて実施すべく、測定ステーションへの戻しが実施される。
【0046】
チェックされ、良と判定されたすべてのモジュール11~22は、最終組み立ての流れの中で、ステップバイステップで接合され、ねじ固定される。インターロッキングブリック式の組み立てブロックの場合のように、すべての機能モジュール11~22は、互いに積み重ねられ、かつ互いにかつ/または車両フレーム1に結合される。この接合工程は、好ましくは、上から下に実施される。代替的には、下から上の接合工程も可能であろう。モジュール配置、装着順序および装着ポジションの設定により、車両2は、軌道39上で、走行可能なクレーンを用いて短時間で組み立て可能である。
【0047】
モジュール装着とモジュール検査との実施後、システム機能が検査され、認証される。このとき、手動のプロセスで、または自動化されたプロセスで、主機能がアクティベートされ、リアクションが測定される。これにより、単純なI/O過程が、かつ複雑なシステム機能も、検査可能であり、認証可能である。その際、使用限界は規定されており、良/不良の査定は、標準化および自動化されて実施することができる。
【0048】
図7を参照しながら、共通部品コンセプトについて説明する。すべてのモジュール11~22のためのベースを、同じ車両フレーム1が形成している。図示の車両2は、構造に関して、それぞれ異なって選択された構造モジュール12~22の点で相違している。例えば、一番上の車両は、走行キャビンモジュール21と、厚生キャビンモジュール18と、プラットフォームを有する工房モジュール17と、技術室モジュール19と、もう1つの走行キャビンモジュール21と、を備えている。真ん中の車両2の場合、荷室を有する工房モジュール17が組み合わされている。下側の車両2は、厚生キャビン18の代わりに、積載面モジュール20を備えている。制御装置24内には、モジュール11~22を動作制御する制御ソフトウェアが装備されている。その際、選択可能な各機能モジュール11~22には、1つのソフトウェアモジュール40が割り当てられている。これらのソフトウェアモジュール40は、それぞれの車両2に構築される機能モジュール11~22に応じて制限解除される。
【0049】
図8は、軌道39上にある組み立て終えた作業車両1を示しており、作業車両1は、クレーンモジュール12と、走行キャビン/クレーンキャビン21と、厚生モジュール/工房モジュール17,18と、昇降台モジュール13と、架線およびエネルギ供給モジュール16と、別の走行キャビン21とを、床上モジュールとして備えている。屋根には、別のモジュール22(例えば様々な作業集合体)が装着されている。床下モジュールとして、トラクションモジュール(パワーパック)14と、燃料用のタンクモジュール15と、液圧オイル用のタンクモジュール15と、様々な別のモジュール22(例えば変圧器モジュール、冷却システムモジュール、制動抵抗器モジュール、バッテリ熱管理システムを有するバッテリモジュール)とが配置されている。
【0050】
選択肢にある2つのトラクションモジュール14を
図9および10に示してある。構想上の構造は、固定の領域と、モジュール式の領域35と、拡張可能な領域36とに分けられている。固定の領域には、例えば内燃機関37、冷却剤冷却器41、給気冷却器42、排気設備43および尿素溶液タンクが格納されている。
【0051】
モジュール式の領域には、トラクションモジュール14が例えばディーゼル電気式のエネルギ源、ハイドロスタティック式のエネルギ源またはハイドロダイナミック式のエネルギ源として用いられるように、それぞれ異なるコンポーネントが配置されている。
図9に示すディーゼル電気式の構成の場合、内燃機関37は、発電機44および液圧ポンプ45に連結されている。
図10に示すハイドロスタティック式の構成の場合、内燃機関37は、ポンプ分配ギヤボックス46に連結されている。拡張可能な領域36には、例えば排気フラップ47が存在している。
【0052】
個々のコンポーネントの結合用に、予め規定された機械式のインタフェース23として結合マウントを有する担持フレーム48が用いられる。場合によっては、担持フレーム48は、補助フレーム25を用いて車両フレーム1に装着される。サービス作業時、ユニット全体が簡単に分解可能である。説明したコンセプトは、別のモジュール、例えばアキュムレータモジュール、液圧モジュール、燃料タンクモジュール、変圧器モジュールまたは冷却設備モジュールにも転用可能である。
【国際調査報告】