(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】水素貯蔵-圧縮システム
(51)【国際特許分類】
F17C 11/00 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
F17C11/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512155
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 EP2022073088
(87)【国際公開番号】W WO2023025657
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521455006
【氏名又は名称】ジーアールゼット・テクノロジーズ・エスアー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンジェルコ・シュミート
(72)【発明者】
【氏名】モーリッツ・ルービン
(72)【発明者】
【氏名】タイ・スン
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティノス・バルディス
(72)【発明者】
【氏名】フリードリーン・ホルデナー
(72)【発明者】
【氏名】ノリス・ギャランダート
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA09
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB05
3E172BB13
3E172BC06
3E172BC07
3E172BC08
3E172BD03
3E172DA90
3E172EA10
3E172EA12
3E172EA13
3E172EA35
3E172EB05
3E172FA01
3E172FA24
3E172FA28
3E172KA03
(57)【要約】
水素貯蔵システム(1)は、ケーシング(2)と、少なくとも1つの複数容器ユニット(4)を形成する複数の貯蔵-圧縮容器(6)と、貯蔵-圧縮容器のそれぞれの中に収容された水素貯蔵を行うように構成された金属水素化物(MH)とを備える。前記少なくとも1つの複数容器ユニットの複数の貯蔵-圧縮容器は、ガス流チューブにより直接流体連結状態で相互連結され、それにより複数の容器内のガス圧が実質的に同一となる。複数の貯蔵-圧縮容器は、ケーシングのチャンバ(16)の内部に取り付けられ、ケーシングは、前記少なくとも1つの複数容器ユニットの漏れを試験するために前記チャンバ内に真空を維持するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素貯蔵-圧縮システム(1)であって、ケーシング(2)と、少なくとも1つの複数容器ユニット(4)を形成する複数の貯蔵-圧縮容器(6)と、前記貯蔵-圧縮容器のそれぞれの中に収容された水素の貯蔵-圧縮を行うように構成された金属水素化物(MH)とを備え、前記少なくとも1つの複数容器ユニットの前記複数の貯蔵-圧縮容器は、ガス流チューブにより直接流体連結状態で相互連結され、それにより前記複数の容器内のガス圧が実質的に同一となり、前記複数の貯蔵-圧縮容器は、前記ケーシングのチャンバ(16)の内部に取り付けられ、前記ケーシングは、前記少なくとも1つの複数容器ユニットの漏れを試験するために前記チャンバ内に真空を維持するように構成される、水素貯蔵-圧縮システム(1)において、前記ケーシングに対して連結された真空ポンプ(19)を備える真空システム(18)をさらに備える、水素貯蔵-圧縮システム(1)。
【請求項2】
前記ケーシングの内部に取り付けられた前記貯蔵-圧縮容器のそれぞれを加熱するように構成された加熱システム(20)をさらに備える、請求項1に記載の水素貯蔵-圧縮システム。
【請求項3】
前記加熱システムは、前記水素貯蔵-圧縮容器の上または中に取り付けられた電気加熱素子(21)を備える、請求項2に記載の水素貯蔵-圧縮システム。
【請求項4】
前記電気加熱素子(21)は、前記水素貯蔵-圧縮容器の一方の端部に取り付けられ、伝熱ジャケットまたは伝熱層(22)が、前記加熱素子から前記貯蔵-圧縮容器の他方の端部に向かって前記貯蔵-圧縮容器に沿っておよび前記貯蔵-圧縮容器にわたって延在する、請求項3に記載の水素貯蔵-圧縮システム。
【請求項5】
前記加熱システムは、前記ケーシングの前記チャンバ内に加熱された流体を注入するように構成された、前記ケーシングへの加熱流体入口(3b)を備える、請求項2に記載の水素貯蔵-圧縮システム。
【請求項6】
前記加熱された流体は蒸気である、請求項5に記載の水素貯蔵-圧縮システム。
【請求項7】
前記ケーシングの内部に取り付けられた前記貯蔵-圧縮容器のそれぞれを冷却するように構成された冷却システム(24)をさらに備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の水素貯蔵-圧縮システム。
【請求項8】
前記冷却システムは、前記ケーシングの前記チャンバ内に冷却流体を注入するように構成された、前記ケーシングへの冷却流体入口(3a)を備える、請求項7に記載の水素貯蔵-圧縮システム。
【請求項9】
前記冷却流体は空気または水である、請求項8に記載の水素貯蔵-圧縮システム。
【請求項10】
各貯蔵-圧縮容器が、管状容器壁部(6a)と、前記管状容器壁部の両端部を閉じる端部キャップ(6b、6c)とを備え、各貯蔵-圧縮容器の前記管状容器壁部は、1.5cm~10cmの範囲内の直径Dを有し、前記少なくとも1つの複数容器ユニット(4)の前記複数の貯蔵-圧縮容器の中の隣接し合う容器が、0.02×D~1×Dの範囲内の長さを有する間隙(G)だけ離間される、請求項1から9のいずれか一項に記載の水素貯蔵-圧縮システム。
【請求項11】
各貯蔵-圧縮容器の前記管状容器壁部の前記直径Dは、2cm~8cmの範囲内であり、好ましくは3cm~6cmの範囲内である、請求項10に記載の水素貯蔵-圧縮システム。
【請求項12】
前記貯蔵-圧縮容器同士の間の前記間隙(G)は、0.1×D~0.5×Dの範囲内である、請求項10または11に記載の水素貯蔵-圧縮システム。
【請求項13】
前記貯蔵-圧縮容器は、60cm~200cmの範囲内の長さを有し、好ましくは80cm~150cmの範囲内の長さを有する、請求項10から12のいずれか一項に記載の水素貯蔵-圧縮システム。
【請求項14】
前記ガス流チューブ(5)は、前記管状容器壁部の軸に対応する軸方向へと実質的に延在するキャップチューブセクション(8a)と、前記軸方向に対して実質的に直交方向に延在し前記キャップチューブセクション(8a)の第1の端部に対して溶接される横方向チューブセクション(8b)とを備えるT字形状連結チューブ(8)を備え、前記端部キャップチューブセクション(8a)の第2の端部が、前記貯蔵-圧縮容器の入口キャップ(6a)に対して溶接される、請求項10から13のいずれか一項に記載の水素貯蔵-圧縮システム。
【請求項15】
前記横方向チューブセクション(8b)の端部が、隣接し合うまたは対向し合う貯蔵-圧縮容器の横方向チューブセクションの端部に対して溶接される、請求項14に記載の水素貯蔵-圧縮システム。
【請求項16】
列の一方の端部の貯蔵-圧縮容器が、前記入口キャップから隣接する貯蔵-圧縮容器の横方向チューブセクションの一端部まで延在する「L字」型またはエルボ形状連結チューブ(8c)を備える、請求項15に記載の水素貯蔵-圧縮システム。
【請求項17】
前記少なくとも1つの複数容器ユニットの前記複数の貯蔵-圧縮容器は、列状に配置され、前記容器の軸(A)同士が、相互に対して平行である、請求項1から16のいずれか一項に記載の水素貯蔵-圧縮システム。
【請求項18】
各複数容器ユニットが、入口/出口(7)を覆う前記入口キャップの内方側部に位置決めされたフィルタ(9)を備え、それにより金属水素化物粒子が前記入口/出口を通り前記チャンバから漏れるのを防止する、請求項1から17のいずれか一項に記載の水素貯蔵-圧縮システム。
【請求項19】
前記フィルタ(9)は、前記入口キャップに対して外周部にて溶接された焼結金属ディスクを含むまたは焼結金属ディスクからなる、請求項18に記載の水素貯蔵-圧縮システム。
【請求項20】
前記複数容器ユニットおよび前記ガス流チューブは、ステンレス鋼または他の耐水素材料から作製される、請求項1から19のいずれか一項に記載の水素貯蔵-圧縮システム。
【請求項21】
複数の複数容器ユニット(4)が、共通圧力にて水素ガスを収容するように構成された貯蔵-圧縮モジュール(10)を形成する複数容器ユニットのスタックとして構成される、請求項1から20のいずれか一項に記載の水素貯蔵-圧縮システム。
【請求項22】
好ましくは50bar超の、より好ましくは200bar超の高圧にて水素を吸収および放出するための、ならびに好ましくは40℃未満の温度変化で、より好ましくは20℃~30℃の範囲内の温度変化で、最小限の温度変化を伴いつつ実質的に定圧で前記水素を放出するための、近等圧水素供給システムとして使用される、請求項1から21のいずれか一項に記載の水素貯蔵-圧縮システム。
【請求項23】
ラビリンスシールシステムからの水素ガス漏れ流を例えば機械式ガス圧縮機またはクライオポンプなどの装置の吸引圧力まで圧縮するために使用される、請求項1から21のいずれか一項に記載の水素貯蔵-圧縮システム。
【請求項24】
振動を抑え脈動を抑えた様式でガス網中にまたは圧縮水素貯蔵システム中に水素を送給するために使用される、請求項1から21のいずれか一項に記載の水素貯蔵-圧縮システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属水素化物を利用した水素の貯蔵および圧縮を行うための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素貯蔵は、再生可能エネルギーによる化石燃料技術からの脱却において重要な一手段である。ガスの圧縮、水素の液化、および固体物質中への吸収を含む様々な貯蔵方法が考えられてきた。
【0003】
金属水素化物は、水素の貯蔵および圧縮を目的として高い関心を集めている。なぜならば、多数の金属および合金が、多量の水素を可逆的に吸収し、加熱により水素を圧縮することが可能であるからである。
【0004】
吸収前に、分子状水素が金属水素化物の表面にて分離される。次いで分離後に、2つのH原子が再結合することによってH2を形成する。材料中への水素吸収反応は、典型的には発熱性であり(熱を発生する)、水素分離反応は、逆に吸熱性である(熱を吸収する)。
【0005】
金属水素化物貯蔵-圧縮システムは、放出に必要な熱を加えることにより所要の高圧レベルにおいて水素の放出および供給を等圧にておよび無脈動で行う貯蔵-圧縮機ユニットとして使用することができる。
【0006】
多くの用途における貯蔵-圧縮要件に適応するために、水素貯蔵-圧縮システムは、複数の容器を典型的に備え、これらの容器は、組み立てられた継手により相互連結され、典型的には弁機構により区画される。水素吸収時の発熱反応および水素放出時の吸熱反応と、その場合に容器内の温度によって吸収率および放出率ならびに圧力に影響が及ぶこととを鑑みると、送達および貯蔵機能を最適化するためには、プロセスの正確な制御および貯蔵システムのある程度の複雑性が必要となるが、この後者はシステムの確実性を低下させる場合がある。また、従来の金属水素化物による水素貯蔵タンクは、加熱フェーズ、吸収、または放出の際における熱伝導要件に関して多くの場合において理想的なものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の1つの目的は、使用およびメンテナンスにおいて効率的、コンパクト、安全、かつ容易である水素貯蔵-圧縮システムを提供することである。
【0009】
製造および動作において費用対効果の高い水素貯蔵-圧縮システムを提供することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、請求項1に記載の水素貯蔵-圧縮システムを提供することにより達成された。
【0011】
本明細書においては、水素貯蔵-圧縮システムが開示される。この水素貯蔵-圧縮システムは、ケーシングと、少なくとも1つの複数容器ユニットを形成する複数の貯蔵-圧縮容器と、貯蔵-圧縮容器のそれぞれの中に収容された水素の貯蔵-圧縮を行うように構成された金属水素化物(MH)とを備える。前記少なくとも1つの複数容器ユニットの複数の貯蔵-圧縮容器は、ガス流チューブにより直接流体連結状態で相互連結され、それにより複数の容器内のガス圧が実質的に同一となる。
【0012】
複数の貯蔵-圧縮容器は、ケーシングのチャンバの内部に取り付けられ、ケーシングは、前記貯蔵-圧縮容器の漏れを試験するために前記チャンバ内に真空を維持するように構成される。水素貯蔵-圧縮システムは、ケーシングに対して連結された真空ポンプを備える真空システムをさらに備える。
【0013】
真空ポンプは、例えば少なくとも水素貯蔵-圧縮容器の加熱フェーズの最中などの水素貯蔵-圧縮システムの動作中にケーシングチャンバの内部に真空を発生させるように構成され得る。
【0014】
一実施形態では、水素貯蔵-圧縮システムは、ケーシングの内部に取り付けられた貯蔵-圧縮容器のそれぞれを加熱するように構成された加熱システムをさらに備える。
【0015】
有利な一実施形態では、加熱システムは、水素貯蔵-圧縮容器の上に取り付けられた電気加熱素子を備える。
【0016】
有利な一実施形態では、加熱システムは、水素貯蔵-圧縮容器の上または中に取り付けられた電気加熱素子を備える。
【0017】
有利な一実施形態では、電気加熱素子は、水素貯蔵-圧縮容器の一方の端部に取り付けられ、伝熱ジャケットまたは伝熱層が、加熱素子から貯蔵-圧縮容器の他方の端部に向かって貯蔵-圧縮容器に沿っておよび貯蔵-圧縮容器にわたって延在する。
【0018】
一実施形態では、加熱システムは、ケーシングのチャンバ内に加熱された流体を注入するように構成された、ケーシングへの加熱流体入口を備える。
【0019】
有利な一実施形態では、加熱流体は蒸気である。
【0020】
有利な一実施形態では、熱媒油または熱媒水などの他の熱媒体が、加熱流体として使用され得る。
【0021】
有利な一実施形態では、水素貯蔵-圧縮システムは、ケーシングの内部に取り付けられた貯蔵-圧縮容器のそれぞれを冷却するように構成された冷却システムをさらに備える。
【0022】
有利な一実施形態では、冷却システムは、ケーシングのチャンバ内に冷却流体を注入するように構成された、ケーシングへの冷却流体入口を備える。
【0023】
一実施形態では、冷却流体は空気である。
【0024】
一実施形態では、冷却流体は水である。
【0025】
有利な一実施形態では、各貯蔵-圧縮容器の管状容器は、1.2cm~10cmの範囲内の外径Dを有する。前記モジュールの前記複数の貯蔵-圧縮容器の中の隣接し合う容器は、0.02×D~1×Dに相当する距離範囲内の間隙Gだけ離間され、好ましくは0.05×D~0.5×Dの範囲内の間隙Gだけ離間される。
【0026】
有利な一実施形態では、各貯蔵-圧縮容器の管状容器の外径Dは、2cm~8cmの範囲内であり、好ましくは3cm~6cmの範囲内であり、例えば4cm~5cmの範囲内である。
【0027】
有利な一実施形態では、貯蔵-圧縮容器同士の間の間隙Gは、0.1×D~0.4×Dの範囲内である。
【0028】
貯蔵-圧縮容器は、30cm~600cmの範囲内の長さLを有し得る。有利な一実施形態では、製造上、設置上、およびメンテナンス上における実用性を考慮して、貯蔵-圧縮容器は60cm~200cmの範囲内の長さを有し、好ましくは80cm~150cmの範囲内の長さを有する。
【0029】
有利な一実施形態では、ガス流チューブは、管状容器壁部の軸に対応する軸方向へと実質的に延在するキャップチューブセクションと、前出の軸方向に対して実質的に直交方向に延在しキャップチューブセクションの第1の端部に対して溶接される横方向チューブセクションとを有するT字形状連結チューブを備え、端部キャップチューブセクションの第2の端部が、貯蔵-圧縮容器の入口キャップに対して溶接される。
【0030】
有利な一実施形態では、横方向チューブセクションの端部が、隣接し合うまたは対向し合う貯蔵-圧縮容器の横方向チューブセクションの端部に対して溶接される。
【0031】
有利な一実施形態では、列の一方の端部の貯蔵-圧縮容器が、入口キャップから隣接する貯蔵-圧縮容器の横方向チューブセクションの一端部まで延在するL字型またはエルボ形状連結チューブを備える。
【0032】
一実施形態では、1つの複数容器ユニットの複数の貯蔵-圧縮容器は、列状に配置され、容器の軸A同士が、相互に対して平行である。
【0033】
別の実施形態では、1つの複数容器ユニットの複数の貯蔵-圧縮容器は、ガス流チューブが2つの列の間に位置決めされるように、対向状態に配置された2つの平行列状に配置され、容器の軸A同士が、相互に対して平行である。
【0034】
有利な一実施形態では、各複数容器ユニットが、入口/出口を覆う入口キャップの内方側部に位置決めされたフィルタを備え、それにより金属水素化物粒子がこの入口/出口を通りチャンバから漏れるのを防止する。
【0035】
有利な一実施形態では、フィルタは、入口キャップに対して外周部にて溶接された焼結金属ディスクを含むまたは焼結金属ディスクからなる。
【0036】
有利な一実施形態では、管状容器壁部、入口キャップおよび端部キャップ、ならびにガス流チューブは、耐水素性、耐圧性、および耐熱性の、ならびに容易に溶接可能な金属から作製される。かかる金属は、ステンレス鋼、改質炭素鋼、アルミニウム合金、またはCu-Ni合金であることが可能である。
【0037】
有利な一実施形態では、複数の複数容器ユニットが、共通圧力にて水素ガスを収容するように構成された貯蔵-圧縮モジュールを形成する複数容器ユニットのスタックとして構成される。
【0038】
有利な一実施形態では、このモジュールのこれらの複数容器ユニットは、共に流体相互連結され、水素消費および発生システムに対してさらに連結するための弁に対して連結される。
【0039】
有利な一実施形態では、複数の前記複数容器ユニットが、共通の水素発生および消費システムまたは水素発生および消費網に対して連結するために支持構造部内に積層状態で組み立てられる。
【0040】
一実施形態では、本発明による水素貯蔵-圧縮システムが、好ましくは50bar超の、より好ましくは200bar超の高圧にて水素を吸収および放出することが可能であり、ならびに好ましくは40℃未満の温度変化で、より好ましくは20℃~30℃の範囲内の温度変化で、最小限の温度変化を伴いつつ実質的に定圧で水素を放出することが可能である、近等圧および無脈動の水素供給システムとして使用され得る。
【0041】
一実施形態では、本発明による水素貯蔵-圧縮システムが、ラビリンスシールシステムからの水素ガス漏れ流を例えば機械式ガス圧縮機またはクライオポンプなどの装置の吸引圧力まで圧縮するために使用され得る。
【0042】
一用途では、有利には、水素貯蔵-圧縮システムは、好ましくは50bar超の、より好ましくは200bar超の高圧にて水素を吸収および放出するための、ならびに好ましくは40℃未満の温度変化で、より好ましくは20℃~30℃の範囲内の温度変化で、最小限の温度変化を伴いつつ実質的に定圧で水素を放出するための、近等圧水素供給システムとして使用され得る。
【0043】
一用途では、有利には、水素貯蔵-圧縮システムは、ラビリンスシールシステムからの水素ガス漏れ流を例えば機械式ガス圧縮機またはクライオポンプなどの装置の吸引圧力まで圧縮するために使用され得る。
【0044】
一用途では、有利には、水素貯蔵-圧縮システムは、振動を抑え脈動を抑えた様式でガス網中に水素を送給するために使用され得る。
【0045】
本発明の他の目的および利点が、特許請求の範囲ならびに以下の詳細な説明および添付の図面から明らかになろう。
【0046】
以下、添付の図面を参照として本発明を説明する。これらの図面は、本発明の実施形態を例として示す。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】熱媒体の供給を介した加熱および冷却が行われる、本発明の一実施形態による水素貯蔵-圧縮システムの概略断面図である。
【
図2】電気抵抗加熱により所要の加熱力が供給される、本発明の別の実施形態による水素貯蔵-圧縮システムの概略断面図である。
【
図3】均一な温度分布を確保するために追加の熱スプレッダシステムを用いた、電気抵抗加熱により所要の加熱力が供給される、本発明の別の実施形態による水素貯蔵-圧縮システムの概略断面図である。
【
図4】
図1~
図3のモジュールの複数容器貯蔵ユニットの概略断面図である。
【
図5】
図4のユニットの中の1つの貯蔵-圧縮容器の概略断面図である。
【
図6a】本発明の実施形態による水素貯蔵システムのケーシング内の容器の断面構成の概略図である。
【
図6b】本発明の実施形態による水素貯蔵システムのケーシング内の容器の断面構成の概略図である。
【
図7】本発明の一実施形態による、中程度の温度差を伴いつつ高圧縮比を実現するために異なる金属水素化物材料を用いた複数の圧縮ステージの組合せの圧力(In P)対逆温度(1000/T)のグラフである。
【
図8】例えば機械式ガス圧縮機またはクライオポンプなどの装置のラビリンスシールからの水素漏れ流が圧縮されてこの装置の吸込み圧力まで戻される、この装置に対して結合された本発明の一実施形態による水素貯蔵-圧縮システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図を参照すると、本発明の実施形態による水素貯蔵-圧縮システム1は、耐圧ケーシング2と、このケーシングにより形成されるチャンバ16の内部に取り付けられた1つまたは複数の貯蔵-圧縮モジュール10とを備える。貯蔵-圧縮モジュールは、1つまたは複数の水素ソース(図示せず)および1つまたは複数の水素コンシューマ(図示せず)に対して流体連結するためのものである。支持構造部(図示せず)が、ケーシングの内部に貯蔵-圧縮モジュールを支持するために設けられてもよい。貯蔵-圧縮モジュール10は、複数の貯蔵-圧縮容器6を備え、各容器6は、以降においてさらに詳細に説明するように水素を貯蔵するように構成された金属水素化物MHを収容する。
【0049】
水素ソースは、例えば水または他の水素含有分子から水素を生成するために再生可能エネルギーを利用する電解装置などであってもよい。水素コンシューマは、例えば水素ガスから電気を生成するための燃料電池か、あるいは移動式用途向けの圧縮水素貯蔵タンクまたは水素をさらに貯蔵もしくは消費するための他のデバイスの形態などであってもよい。
【0050】
本発明の実施形態による水素貯蔵-圧縮システム使用の一例は、水素発生システムが光起電力パネルにより生成される太陽光エネルギーを水素ガスに変換することによって生成される水素を貯蔵および圧縮することである。次いで、水素ガスは、獲得されたエネルギーを保存する燃料として機能し、これは中でも特に燃料電池、内燃機関、またはガスタービンを含む種々のエネルギー変換システムを使用して電気エネルギー、機械エネルギー、または熱エネルギーへと変換され得る。さらに、ハンドリングおよび貯蔵をより容易にするために例えばメタンまたはアンモニアなどの種々のガスを生成することを含む、他の代替形態が考えられ得る。したがって、水素貯蔵システムは、単体デバイスにおいてバッファおよび圧縮機の両方としての役割を果たし得る。
【0051】
本発明の一実施形態による水素貯蔵-圧縮システムの典型的な用途の他の例は、以下の通りである。
- 水素車両の燃料補給用の水素の貯蔵および圧縮。
- 上記と同様の用途において、別のソース(風力、水力発電等)から電気供給されるもの。
- 化学プロセスの副産物として生成され後に発電のために使用される水素の貯蔵および圧縮。
- 上記の用途のいずれかにおいて、次いで水素が例えば化学反応用の前駆物質としてまたは熱エネルギー生成用の燃料としてなど、他の目的のために使用されるもの。
- ラビリンスシールを有する装置における水素漏れ流の圧縮および再注入。
【0052】
本発明の一態様によれば、水素貯蔵システム1は、ケーシング2に対して連結された真空システム18を備える。この真空システムは、ケーシングチャンバ16に対して真空ポンプ連結ライン3aを介して連結された真空ポンプ19を備え、この真空ポンプ19は、ケーシングチャンバ16内に真空を生成するように構成される。
【0053】
ケーシングチャンバ内の真空は、1つまたは複数の目的を果たし得る。
【0054】
一実施形態では、真空生成は、水素を収容する貯蔵-圧縮モジュール10からのガス漏出があるか否かを試験するために利用され得る。かかる漏出は、真空システム18の排気流中において漏出ガスを直接的に検出することにより検出および定量化され得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、水素貯蔵システムの保全性を試験するために、この真空試験は継続的にまたは断続的に実施されてもよく、いくつかの実施形態では、これらの試験は水素貯蔵システムの最初の使用前に、および/または例えば計画されたメンテナンス間隔などの特定の間隔を、または例えば故障もしくは修理後などに特定の間隔をおいて実施されてもよい。
【0056】
ケーシング2は、典型的には0.1mbar未満であるチャンバ16内の真空圧に耐えるように構成され、換言すれば少なくとも約1barであるケーシングに対する外圧に耐えるように構成される。
【0057】
いくつかの実施形態では、真空システム18は、水素貯蔵-圧縮容器6の表面からケーシング2への対流熱伝導を低下させる目的をさらに果たし得る。したがって、加熱素子21から生成される熱エネルギーは、水素容器の周辺よりもむしろ水素容器の内容物を加熱するために使用される。
【0058】
かようなシステムにおいて、水素貯蔵-圧縮システム1は、貯蔵-圧縮容器6を直接的に加熱するために各貯蔵-圧縮容器6に対して結合された電気加熱素子21を備える加熱システム20を備え得る。
【0059】
例えば
図2に示すような一実施形態では、電気加熱素子21は、貯蔵-圧縮容器6内に取り付けられ得る。
【0060】
例えば
図3に示すような一実施形態では、電気加熱素子21は、貯蔵-圧縮容器6の外部に取り付けられてもよく、熱伝導要素22が、発生した熱を拡散し貯蔵-圧縮容器6内の温度勾配を低下させるために容器の壁部上に設けられ得る。熱伝導要素22は、例えば銅またはアルミニウムなどの熱伝導性の高い材料からなるものであってもよい。
【0061】
したがって、電気加熱が加熱フェーズの最中または水素放出による吸熱プロセスの最中に印加された場合に、対流によるケーシングに対する熱伝導が真空によって防止される。
図2では、水素放出の最中における貯蔵-圧縮容器6の直接電気加熱を用いた一実施形態を示す。この実施形態では、水素吸収フェーズの最中における冷却は、冷却流体連結部3cを経由してケーシングチャンバ16内に注入される具体的には空気である冷却流体を使用する冷却システム24によって実施され得る。冷却流体は、強制対流のための流体循環を発生させるためのベンチレータまたはガスポンプによってケーシングチャンバの内部で循環され得る。
【0062】
図3に示す本発明の別の実施形態では、電気加熱素子21は、均一な温度分布を確保するために熱伝導要素22で補足されてもよい。
【0063】
図1に示す別の実施形態では、加熱システム20は、蒸気などの加熱された流体が吸熱フェーズの最中にケーシングのチャンバ16内に注入され得るようにするための加熱流体注入連結部3bを備える。蒸気は、弁Vにより制御されるドレイン連結部3dを経由して排出され得る。図示する実施形態では、冷却システム24は、例えば水などの冷却流体が冷却流体連結部3cを経由してケーシングのチャンバ16内に注入され、ドレイン連結部3dを経由して排出されることによって実現され得る。しかし、加熱流体用の連結部は、冷却流体に対しても使用されてもよく、換言すれば例えば加熱流体ソースと冷却流体ソースとの間の弁システムなどにより切り替えられる単一の入口が設けられてもよいと言える。また、弁システムにより真空ポンプおよびドレイン回路のそれぞれに対して連結された、真空ポンプおよびドレインのための単一の出口が存在してもよい。
【0064】
貯蔵-圧縮モジュール10は、例えば圧力逃し弁、バーストディスク、または所定の安全閾値にて貯蔵-圧縮容器6内の圧力を逃がすように構成された他の構成要素などを備えた、過圧逃がしシステム23に対して連結されてもよい。
【0065】
ガス流チューブ5により相互連結される複数の貯蔵-圧縮容器6が、複数容器ユニット4を形成し得る。各貯蔵-圧縮モジュール10が、1つまたは複数の複数容器ユニット4を備え得る。各複数容器ユニット4の複数の貯蔵-圧縮容器6は、それらの容器6が実質的に同一ガス圧となり、したがって水素の吸収および放出において並行的に動作するように、容器同士の間に弁または圧力隔離手段を用いることなく直接流体連結状態で相互に流体連結される。各貯蔵-圧縮容器6は、中にチャンバ13を有し、このチャンバ13は、当分野では本質的に周知であるような水素を貯蔵するように構成された金属水素化物MHを収容する。例えばPCT/EP2020/059860などに記載されるような様々な金属水素化物が、これらの容器内に充填されてもよい。
【0066】
単一の容器を使用する場合とは対照的に複数の容器に水素ガスボリュームを分けることにより、発熱反応および吸熱反応の最中により優れた熱伝導をもたらす間隔Gによって相互に隔てられ得る、高い表面積対容積比を有する小型容器を実現することが可能となる。さらに、それぞれの複数容器ユニット4の貯蔵容積は、複数容器ユニット4の熱伝導特性および挙動を本質的に変化させることなく、さらなる貯蔵-圧縮容器6を追加することによって容易に拡大することができる。1つの複数容器ユニット4の複数の貯蔵-圧縮容器6は、好ましくは
図4に示すような二次元方向列に整列された状態で、相互に対して本質的に平行に配置され得る。
【0067】
貯蔵-圧縮モジュール10を形成する複数の複数容器ユニット4は、相互に積層され得る、および/または相互に隣接配置され得る。有利には、1つまたは複数の貯蔵-圧縮モジュール10を形成する複数容器ユニット4は、実質的に円筒状のケーシング2内に十分に収まるように、
図6aに示すように実質的に正方形に配置され得る(断面において見た場合に)。また、本発明の範囲から逸脱することなく、貯蔵-圧縮モジュールの複数容器ユニットは、
図6bに概略的に示すように、正方形配置の場合に比べてより小型のボリュームフットプリントでケーシングチャンバ16を充填するために様々な他の幾何学的様式で配置されてもよい。より一般的には、図示するような列で配置された貯蔵-圧縮容器6の複数容器ユニット4が有利ではあるが、水素貯蔵-圧縮容器は、本発明の範囲から逸脱することなく様々な他の幾何学的様式で配置および相互連結されてもよい。
【0068】
各貯蔵-圧縮容器6は、管状容器壁部6aを備え、この容器壁部6aは、一方の端部においては端部キャップ6bによりおよび他方の端部においては入口キャップ6cにより閉じられる。入口キャップ6cは、入口/出口7を備える。
【0069】
図5に示す実施形態では、入口/出口7は、ガス流チューブ5のT字形状連結チューブ8に対して溶接された入口キャップの実質的に中心に位置決めされたオリフィスを備える。複数容器ユニット4の容器の列の一方の端部にある貯蔵-圧縮容器6が、エルボ形状またはL字型連結チューブ8cを備えるが、その他の貯蔵-圧縮容器6はいずれも、実質的に同一であり、実質的に同一のT字形状連結チューブ8を備える。
【0070】
T字形状連結チューブ8のそれぞれが、管状容器壁部6aの軸Aの方向へと入口キャップ6cから実質的に軸方向に延在するキャップチューブセクション8aと、キャップチューブセクション8aの端部に対して溶接された横方向チューブセクション8bとを備える。
【0071】
隣接し合う貯蔵-圧縮容器同士の間の間隙Gは、複数容器ユニット4のスタックを通過する流体の強制対流による吸熱反応または発熱反応の最中における優れた熱伝導を可能にする役割を果たす。
【0072】
また、貯蔵-圧縮容器の、具体的には管状容器壁部6aの長さは、各複数容器ユニット4の容積を増大または縮小するために必要に応じて容易に設定することができ、さらにここでは熱伝導特性を実質的に変更することなく設定することができる。したがって、複数容器ユニットの熱挙動は、本システムの貯蔵容積とは実質的に無関係となり得る。
【0073】
重量、製造における実用性、および経済性を考慮した、金属水素化物を用いた水素の貯蔵および圧縮のための最適な熱伝導プロセスが、1.2cm~10cmの範囲内の、好ましくは2cm~6cmの範囲内の、例えば約4.5cmの直径Dをそれぞれが有する貯蔵-圧縮容器6を用いることによって実現され得る。
【0074】
製造上、設置上、およびメンテナンス上における実用性を考慮した各貯蔵-圧縮容器の実用長さLは、50cm~600cmの範囲内であってもよいが、好ましくは80cm~200cmの範囲内であり、例えば60cm~150cmの範囲内である。
【0075】
好ましくは、容器壁部材料は、ステンレス鋼、または例えば改質炭素鋼、アルミニウム合金、もしくはCu-Ni合金などの他の耐水素鋼から作製され、端部キャップ6b、6cは、例えばオービタル溶接プロセス(TiG溶接)などにより管状容器壁部6aの両端部に対して溶接される。製造プロセスでは、端部キャップ6bが、最初に管状容器壁部6aの一方の端部に対して溶接され、次いで金属水素化物粒子が、容器6の内部容積の約70%~100%まで他方の端部を介して充填され、次いで入口キャップ6cが、管状容器壁部6aの他方の端部に対して溶接され得る。
【0076】
容器壁部、端部キャップ、およびガス流チューブは、好ましくはステンレス鋼から作製されるが、例えば改質炭素鋼、アルミニウム合金、またはCu-Ni合金などの他の溶接可能金属から作製されてもよい。また、本発明の範囲から逸脱することなく、複合材料が容器壁部、端部キャップ、およびガス流チューブに対して使用されてもよい。
【0077】
入口キャップ6cは、管状容器壁部6aに対して溶接される前に、T字形状連結チューブ8に対して溶接される。入口キャップはフィルタ9をさらに備えてもよく、このフィルタ9は、入口/出口7を覆う入口キャップの内部に取り付けられ、水素をガス流チューブ5内に通過させつつも金属水素化物粒子がガス流チューブ5内に進入するのを防止するように構成される。
【0078】
有利な一実施形態では、フィルタ9は焼結ステンレス鋼ディスクから作製され、このディスクは、入口キャップ6cの内方側部に対して外周部9aにて溶接され得る。材料が類似していることから、溶接の実施は容易である。さらに、入口キャップ6cおよびフィルタ9に同様または同一の材料が使用されるため、溶接連結部は、頑丈であり、熱膨張率が類似していることにより高い熱膨張力を被らない。
【0079】
したがって、入口キャップがT字形状連結チューブに対して溶接された各貯蔵-圧縮容器6は、製造プロセスの最中には一体構成要素を構成し、前記一体構成要素同士は、隣接し合う貯蔵-圧縮容器の横方向チューブセクション8bの端部15同士を共に溶接して溶接連結部11を形成することによって、共に連結される。また、ガス流チューブ5は、ステンレス鋼から、または入口キャップ6cおよび端部キャップ6bならびに管状容器壁部6aに使用されるものと同一もしくは同様の組成物および同一もしくは同様のグレードの他の耐水素鋼から作製されてもよい。これらのガス流チューブ5は、横方向チューブセクション8bの端部15にて共に溶接されるため、製造プロセスの最中に高い費用対効果でありながらきわめて確実かつ安全な構成で、所望の貯蔵総容積に応じてさらなる貯蔵-圧縮容器6を容易に追加することができる。
【0080】
入口キャップ6cおよび端部キャップ6bは、管状容器壁部6aとの溶接面を形成する円形エッジを機械加工することを含むスタンプ成形プロセスによって実質的に形成され得る。また、これにより、高圧耐性を有しながらも製造が経済的であり、所望の用途にとって必要となり得る容積に関して自由度の高い、特に頑丈な構造体を確保することが可能となる。
【0081】
したがって、複数容器ユニット4は、貯蔵-圧縮容器6同士が共に溶接された場合には、複数の貯蔵-圧縮容器に対して単一の入出口を有する。また、この入出口は、1つまたは複数の弁Vを介して他の複数容器ユニット4に対して連結され、複数容器ユニット4同士は、1つのユニットの容器同士の間の間隙Gと寸法上において同様の間隙を間に有するスタック状態にあり、それにより吸熱反応および発熱反応の最中における熱伝導のためにシステム2の各容器の周囲における自然対流または強制対流をもたらす。
【0082】
例えば二層、三層、または四層などの複数の層を成す複数容器ユニット4の貯蔵-圧縮容器6を相互連結することにより、弁に対して単一の共通入出口を有する単一の流体相互連通貯蔵ユニットを形成することが可能である。次いで複数のこれらのユニットが、相互に隣接状態で積層もしくは配置されるか、または相互に対して積層および配置の両方がなされることにより、例えばPCT/EP2020/059860などにおいて説明されるように各ユニットが所望のシーケンスにおいて個別に充填および消費され得る水素貯蔵システムのモジュールを形成してもよい。また、前出の特許出願文献において説明されているように、それぞれ異なるユニットまたはモジュールにおいて、低圧動作および高圧動作ごとに異なる金属水素化物を用いることが可能である。
【0083】
プロセスの説明-品質管理
ケーシング2は、別個の試験設備を必要とすることなく真空下における漏れ試験の実施を可能にする。この漏れ試験は、水素貯蔵-圧縮システム1の初回の使用前または使用の最中に実施され得る。初回の使用前、ヘリウムが、水素貯蔵-圧縮容器6の内部に少なくとも水素貯蔵-圧縮容器の設計に基づく最大動作圧力(すなわち「設計圧力」)まで充填され得る。いくつかの例では、地域の条例および法令を順守するためにさらなる高圧が必要となる(例えば設計圧力の10%超、25%超、50%超、またはさらには100%超など)。水素ではなくヘリウムを使用する理由は、品質試験の完了まで金属水素化物材料の活性化を防ぐためである。これは、一体的な圧力および漏れ試験の第1のステップであり、設計圧力におけるシステムの構造的保全性を確認する。
【0084】
次のステップとして、真空ポンプ19は、ケーシングチャンバ16内の空気を排気するように動作される。圧力は、典型的には0.1mbar未満(絶対圧力)に減圧される。ヘリウム検出器が、ヘリウム濃度を計測するためにケーシングチャンバの排出流中に位置決めされる。ヘリウム検出器は、質量分析計をベースとするものであってもよい。水素貯蔵-圧縮容器6からケーシングチャンバ16への漏れ流量は、ヘリウム濃度に基づき直接的に計測され得る。漏れ流量は、特定の品質閾値未満である必要があり、この閾値は典型的には2.0E-6mbar*l/sに設定される。
【0085】
例えば
図1に示すような直接電気加熱を用いた実施形態におけるこの特徴のさらなる利点は、ケーシングチャンバ16が常時真空下に維持されるため、圧縮動作中に漏れ流量を継続的にモニタリングすることが可能である点である。かかる例では、真空システム18により、潜在的な漏出の継続的なモニタリングが可能になり、手動検査の必要性が解消される。漏れ検出器は、ヘリウムだけではなく水素のモニタリングも行うことが可能であり、これは質量分析計の場合には一般的である。したがって、この例では、貯蔵-圧縮容器が雰囲気環境に対して直接的にさらされる他の水素貯蔵オプションと比較した場合に確実性および安全性が向上する。
【0086】
動作プロセスの説明-直接電気加熱を用いた実施形態
例として有利な一構成では、圧縮水素の流量増加または圧縮水素の連続流の確保を目的として並列連結された複数の複数容器ユニット4からなる単一の貯蔵-圧縮モジュール10が使用され得る。圧縮の全サイクルが、初期供給圧力(典型的には10~50bar)から送達圧力(典型的には50~950bar)まで、単一ステージまたは複数ステージの圧縮において実施される。以降の段落では、以下のフェーズすなわち(i)加熱、(ii)放出、(iii)冷却、および(iv)吸収を含む圧縮の全サイクルについて説明する。以降において示される例示の数値は、単一ステージおよびバッチ構成における35bar(入口)から350bar(出口)までの典型的な圧縮サイクルについて有効なものである(不連続水素圧縮)。
【0087】
加熱フェーズおよび放出フェーズ
加熱フェーズの開始時には、水素は、例えば約30℃の温度および例えば約35barの圧力にて水素貯蔵-圧縮容器6の水素吸収金属水素化物材料中に存在する。電気加熱システム20、21は、システム温度の上昇および結果としてシステム圧力の上昇に必要な熱出力を供給するために作動される。
【0088】
図3の例示の実施形態では、熱が、熱伝導性の高い材料(例えば銅)から作製された熱スプレッダを介して金属水素化物へ伝導され、それにより軸方向および径方向における迅速な熱伝導と温度差縮小とが可能になる。径方向における熱伝導は、周囲環境中よりも各水素貯蔵-圧縮容器6の中心方向に向かって大幅により迅速に進行する。これは、中に水素貯蔵-圧縮容器6が封入されるケーシング2のチャンバ16の内部に真空を用いることにより環境への熱損失を最小限に抑制することによって実現され得る。
【0089】
水素貯蔵-圧縮容器6は、例えばp1=35barおよびT1=30℃のそれぞれからp2=350barおよびT2=ca.150℃などまで加熱される。このプロセスは、実質的な定圧(例えばp2=circa(ca.)350barなど)およびほぼ定温(例えばT2=ca.150℃など)にて水素放出を継続することができる。放出反応は吸熱性であるため、システムは、金属水素化物が水素の大半を放出してしまうまで熱供給を必要とする。
【0090】
冷却および吸収フェーズ
放出サイクルの終了時に、水素貯蔵-圧縮容器6は、例えばT2=ca.150℃からT1=ca.30℃まで冷却される。この冷却フェーズの最中に、水素圧力は、例えばp2=350barからp1<35barまで低下する。真空チャンバは、冷却流体連結ライン3c上の弁Vを開くことにより例えば空気などの冷却流体で充填される。水素貯蔵-圧縮容器の冷却は、この冷却流体を流すことにより実現され、この流体流量および結果としての冷却能力は、ファンまたはガス圧縮機により調整され得る。水素貯蔵-圧縮容器6の表面上における熱放散効率は、熱伝導性の高い層22によりさらに強化される。
【0091】
冷却フェーズの終了時に、水素供給部は、例えばp1=35barなどの低動作圧力にて水素を流し得るように開かれる。吸収は発熱性であるため、温度および圧力が実質的に一定に維持されるように熱の排除が必要となる。これは、冷却流体連結ライン3cを通る冷却流体(例えば空気)流により実現される。
【0092】
動作プロセスの説明-加熱流体(例えば蒸気)を用いた加熱と冷却流体(例えば水)を用いた冷却とを含む実施形態
例としての有利な一構成では、圧縮水素の流量増加または圧縮水素の連続流の確保を目的として並列連結された複数の複数容器ユニット4を備えた単一の貯蔵-圧縮モジュール10が使用され得る。圧縮の全サイクルが、初期供給圧力(例えば典型的には10~50bar)から送達圧力(例えば典型的には50~950bar)まで、単一ステージまたは複数ステージにおいて実施される。以降の段落では、以下のフェーズすなわち(i)充填、(ii)加熱、(iii)放出、および(iv)冷却を含む圧縮の全サイクルについて説明する。以降において示される数値は、単一ステージおよびバッチ構成における約35bar(入口)から350bar(出口)までの典型的な圧縮サイクルについて有効なものである(不連続水素圧縮)。この実施形態は、複数ステージおよび/または連続動作への拡張が可能であり、それにより所要温度を低下させ連続的な水素供給を行うことが可能となる。
【0093】
水素貯蔵-圧縮モジュールの充填
水素が、例えば約35barの圧力および例えば約30℃の温度にて供給ラインから送達される。定圧および定温を維持するためには、水素貯蔵-圧縮容器6は、吸収反応が放熱性であるためこのフェーズの最中に連続冷却される必要がある。水素貯蔵-圧縮容器6の冷却は、例えば水などの冷却流体に容器壁部を直接接触させることにより効率的な熱伝導を実現することによって実現される。水素貯蔵-圧縮モジュールの温度は、好ましくは可変速ポンプまたは制御弁により調整される冷却流体(例えば水)流により制御することが可能である。充填プロセスが完了すると、冷却流体(例えば水)は、例えばケーシング2の底部などに配設されたドレイン連結部3dを経由してケーシングチャンバ16から排出される。
【0094】
加熱
本プロセスでは続いて、水素貯蔵-圧縮モジュール10が、例えば約30℃から150℃まで、例えば約35barから350barへの対応する圧力上昇を伴いつつ加熱される。この加熱は、例えば有利には圧縮蒸気などの加熱流体流が、ケーシング2のチャンバ16内に注入され水素貯蔵-圧縮容器6にわたり流れることによって実現される。これは、水の濃度エンタルピーを利用し、加熱プロセスの最中に蒸気と水素貯蔵-圧縮容器の壁部との間の大きな温度差を維持することを可能にする。加熱能力の効率的な制御は、蒸気圧力の調整を行うことにより実現され得る。
【0095】
放出:
次いで、モジュールは、例えば約350barなどの所要圧力にて水素が放出されるように加熱される。同様に前述のフェーズに関して、有利にはこのプロセスに対して圧縮蒸気が使用され得る。
【0096】
冷却:
本プロセスでは、続いて水素貯蔵-圧縮容器6の冷却が行われる。これにより、例えば約150℃などの温度から例えば約30℃の開始温度まで温度が低下する。
【0097】
ある特定の用途における水素貯蔵-圧縮システムの使用例(I)
多くの産業用途において、水素ガスは、いわゆるラビリンスシールの使用によりある一定の体積内に閉じ込められる。かかる例では、閉じ込められた体積からの水素漏れが常に存在する。金属水素化物による水素圧縮機は、この漏れ流を圧縮し、高吸引圧力にてシステムにこの漏れ流を送り戻すために使用され得る。このシステムの典型的な1つの用途は、例えばラビリンスシール往復ピストン圧縮機26または可能性としてはラビリンスシールターボ圧縮機におけるものである。かかる典型的な用途が
図8に示される。ラビリンスシール25からの水素流は、金属水素化物による水素貯蔵-圧縮システム1に吸収され、次いで吸引圧力へと圧縮されることにより、ピストン圧縮機26の吸引流中に等圧にて無脈動で再注入される。金属水素化物による水素貯蔵-圧縮システム1は、ラビリンスシールシステムを使用するあらゆる水素圧縮機に対して使用できる可能性がある。
【0098】
ある特定の用途における水素貯蔵-圧縮システムの使用例(II)
既述の水素貯蔵-圧縮システムの他の一用途は、既存の天然ガスインフラまたは圧縮水素貯蔵システムへの水素の注入であり得る。現行では、従来の往復ピストン圧縮機またはダイヤフラム圧縮機が使用される。しかし、これらのデバイスは、ガスパイプラインにとって有害となる振動およびパルスを誘発する。既述の金属水素化物による水素貯蔵-圧縮システムは、水素を圧縮し、既存の天然ガスグリッド中に水素を等圧にて無脈動かつ無振動で送給するために使用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 水素貯蔵-圧縮システム
2 ケーシング
16 ケーシングチャンバ
3 入口/出口
3a 真空ポンプ連結部
3b 加熱流体連結部
加熱媒体
3c 冷却流体連結部
冷却媒体
3d ドレイン連結部
18 真空システム
19 真空ポンプ
20 加熱システム
21 電気加熱素子
22 熱伝導要素
加熱流体入口
24 冷却システム
冷却流体
10 貯蔵-圧縮モジュール
4 複数容器ユニット
6 貯蔵-圧縮容器
6a 管状容器壁部
6b 端部キャップ
6c 入口キャップ
7 入口/出口
9 フィルタ
9a 外周部
13 貯蔵-圧縮容器チャンバ
MH 金属水素化物
5 ガス流チューブ
8 T字形状連結チューブ
8a キャップチューブセクション
8b 横方向チューブセクション
15 端部
11 溶接連結部
23 過圧逃がしシステム
V 弁
12 支持構造部
制御システム
P 圧力センサ
T 温度センサ
V 弁
自動弁制御
26 ラビリンスシール往復ピストン圧縮機
25 ラビリンスシール
D 貯蔵-圧縮容器直径
G 隣接し合う容器間の間隙距離
L 容器長さ
【国際調査報告】