(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】T細胞製品およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20240822BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240822BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240822BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20240822BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20240822BHJP
C12N 15/87 20060101ALN20240822BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20240822BHJP
C07K 14/725 20060101ALN20240822BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240822BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240822BHJP
C12N 15/19 20060101ALN20240822BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240822BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240822BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240822BHJP
【FI】
A61K35/17
C12N5/10 ZNA
A61P35/00
C12N5/0783
C12N15/63 Z
C12N15/87 Z
C07K19/00
C07K14/725
C07K16/28
C12N15/12
C12N15/19
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/113 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512961
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 CN2022114587
(87)【国際公開番号】W WO2023025207
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】202110976183.0
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523436056
【氏名又は名称】賽斯尓▲チン▼生物技術(上海)有限公司
【氏名又は名称原語表記】CELLS & GENES BIOTECH(SHANGHAI)CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】Room 305,Building 1,No.538 Cailun Road,China(Shanghai)Pilot Free Trade Zone,Pudong New Area,Shanghai 201203,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 林紅
(72)【発明者】
【氏名】朱 向陽
(72)【発明者】
【氏名】劉 武青
(72)【発明者】
【氏名】于 世鈞
(72)【発明者】
【氏名】辛 鵬程
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲麗▼
(72)【発明者】
【氏名】楊 星星
(72)【発明者】
【氏名】占 一帆
(72)【発明者】
【氏名】▲韋▼ 小越
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
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4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB65
4C087CA12
4C087MA66
4C087NA06
4C087ZB26
4H045AA10
4H045DA50
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
被験者に施用するためのT細胞製品およびその使用を提供するが、前記製品は少なくとも1種の他家T細胞を含み、前記他家T細胞は少なくとも1種の前記被験者の少なくとも1種のT細胞に外来のものと認識されるMHC分子を発現する。前記T細胞製品はドナーの範囲を拡大し、被験者の免疫反応を活性化させることができる。また、腫瘍を治療する薬物の製造における前記T細胞製品の使用を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者に施用するためのT細胞製品であって、少なくとも1種の他家T細胞を含み、前記他家T細胞は少なくとも1種の被験者の少なくとも1種のT細胞に外来のものと認識されるMHC分子を発現し、前記被験者の少なくとも1種のTCRが前記MHC分子を認識すると同種異系反応(alloreaction)を起こすT細胞製品。
【請求項2】
前記他家T細胞は免疫拒絶反応を低減または消失させる操作をされていない、請求項1に記載のT細胞製品。
【請求項3】
前記免疫拒絶反応を低減または消失させる操作は、他家T細胞のCD52遺伝子をノックアウトすること、および/または他家T細胞のHLA-I分子を改変することを含む、請求項2に記載のT細胞製品。
【請求項4】
前記他家T細胞における被験者の同種異系反応を起こしうる分子は修飾されていない、請求項1~3のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項5】
前記被験者の同種異系反応を起こしうる分子は前記他家T細胞のMHC分子を含む、請求項4に記載のT細胞製品。
【請求項6】
前記被験者は腫瘍患者を含む、請求項1~5のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項7】
前記腫瘍は固形腫瘍および/または非固形腫瘍を含む、請求項6に記載のT細胞製品。
【請求項8】
前記他家T細胞の由来は前記被験者と異なる由来である、請求項1~7のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項9】
前記他家T細胞は前記被験者と異なる2つ以上のドナー由来のものである、請求項1~8のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項10】
前記他家T細胞は1種の前記被験者の少なくとも1種のT細胞に外来のものと認識されるMHC分子を発現する、請求項1~9のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項11】
前記他家T細胞は2種以上の前記被験者の少なくとも1種のT細胞に外来のものと認識されるMHC分子を発現する、請求項1~10のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項12】
前記MHC分子はMHC Iおよび/またはMHC IIを含む、請求項1~11のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項13】
前記他家T細胞はヘルパーT細胞(Th)および/または細胞傷害性T細胞(CTL)を含む、請求項1~12のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項14】
前記被験者の少なくとも1種の前記TCRは前記MHC分子を認識して前記被験者のTH-1免疫反応を促進させる、請求項1~13のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項15】
前記他家T細胞の前記被験者において移植片対宿主病(GVHD)を起こすリスクを低下させる能力を有する、請求項1~14のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項16】
工学的改造されていない前記他家T細胞と比較すると、前記工学的改造された前記他家T細胞では、前記他家T細胞の前記被験者において移植片対宿主病(GVHD)を起こすリスクが低下した、請求項1~15のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項17】
前記工学的改造は、前記他家T細胞におけるCD3に関連する遺伝子、TRAC遺伝子および/またはTRBC遺伝子の発現および/または活性を下方調節する工程を含む、請求項16に記載のT細胞製品。
【請求項18】
工学的改造されていない前記他家T細胞と比較すると、前記工学的改造され前記他家T細胞におけるCD3に関連する遺伝子、TRAC遺伝子および/またはTRBC遺伝子の発現および/または活性が下方調節された、請求項16~17のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項19】
前記工学的改造は遺伝子突然変異および/または遺伝子サイレンシングを含む、請求項15~17のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項20】
前記工学的改造は、前記他家T細胞に、アンチセンスRNA、siRNA、shRNA、CRISPR/Cas系、RNA編集系、RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、Mega-TALヌクレアーゼ、TALENs 、Sleeping beautyトランスポゾン系およびメガヌクレアーゼ(Meganucleases)からなる群から選ばれる1種または複数種の物質を施用することを含む、請求項16~19のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項21】
前記工学的改造は、前記他家T細胞にCRISPR/Cas系を施用することを含む、請求項16~20のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項22】
前記工学的改造は、前記他家T細胞に前記CD3に関連する遺伝子、TRAC遺伝子および/またはTRBC遺伝子のエクソン部分を標的とするsgRNAを施用することを含む、請求項16~21のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項23】
少なくとも1種の前記他家T細胞は修飾された後、抗体およびその抗原結合断片、キメラ抗原受容体(CAR)、サイトカインおよび/またはケモカインを発現する、請求項1~22のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項24】
少なくとも1種の前記他家T細胞は修飾された後、抗体およびその抗原結合断片、キメラ抗原受容体(CAR)、サイトカインおよび/またはケモカインをコードする核酸を含む、請求項1~23のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項25】
前記修飾は、前記他家T細胞に前記核酸を形質移入することを含む、請求項24に記載のT細胞製品。
【請求項26】
前記形質移入はウイルス形質移入および/または非ウイルス形質移入を含む、請求項25に記載のT細胞製品。
【請求項27】
前記非ウイルス形質移入はプラスミドを使用する、請求項26に記載のT細胞製品。
【請求項28】
前記プラスミドは環状プラスミドまたはスーパーコイルプラスミドである、請求項27に記載のT細胞製品。
【請求項29】
前記プラスミドは抗体およびその抗原結合断片、キメラ抗原受容体(CAR)、サイトカインおよび/またはケモカインをコードする核酸を含む、請求項27~28のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項30】
前記核酸はssDNAおよび/またはdsDNAを含む、請求項24~29のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項31】
前記プラスミドは細菌から生成するプラスミドを含む、請求項27~30のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項32】
前記プラスミドはナノプラスミド(Nanoplasmid)および/またはミニサークルDNA(minicircle DNA)ベクターを含む、請求項27~31のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項33】
前記形質移入は安定形質移入および/または一過性形質移入を含む、請求項25~32のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項34】
前記一過性形質移入はエレクトロポレーションを含む、請求項33に記載のT細胞製品。
【請求項35】
前記一過性形質移入はmRNA形質移入を含む、請求項33~34のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項36】
前記安定形質移入はトランスポゾン系の使用および/または遺伝子編集ノックインの使用を含む、請求項33~35のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項37】
前記遺伝子編集の方法は、CRISPR/Cas系、RNA編集系ADAR、RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、Mega-TALヌクレアーゼ、TALENsおよびメガヌクレアーゼ(Meganucleases)からなる群から選ばれる1種または複数種である、請求項36に記載のT細胞製品。
【請求項38】
前記トランスポゾン系はSleeping beautyトランスポゾン系を含む、請求項36~37のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項39】
前記プラスミドは前記遺伝子編集ノックインにおいてドナープラスミドとされる、請求項27~38のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項40】
前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、微生物のゲノム由来の核酸分子またはその断片の含有量が前記形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約10%(w/w)以下を占める、請求項27~39のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項41】
前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、微生物のゲノム由来の核酸分子またはその断片の含有量が前記形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約2%(w/w)以下を占める、請求項40に記載のT細胞製品。
【請求項42】
前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、微生物のゲノム由来の核酸分子またはその断片の含有量が前記形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約5‰(w/w)以下を占める、請求項40~41のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項43】
前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、微生物のゲノム由来の核酸分子またはその断片の含有量が前記形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約1‰(w/w)以下を占める、請求項40~42のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項44】
前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、前記大きさが少なくも約48 kbの核酸分子またはその断片の含有量が形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約10%(w/w)以下を占める、請求項27~43のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項45】
前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、前記大きさが少なくも約48 kbの核酸分子またはその断片の含有量が形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約2%(w/w)以下を占める、請求項44に記載のT細胞製品。
【請求項46】
前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、前記大きさが少なくも約48 kbの核酸分子またはその断片の含有量が前記形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約5‰(w/w)以下を占める、請求項44~45のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項47】
前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、前記大きさが少なくも約48 kbの核酸分子またはその断片の含有量が前記形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約1‰(w/w)以下を占める、請求項44~46のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項48】
前記大きさが少なくも約48 kbの核酸分子またはその断片の大きさは少なくとも約10 Mbである、請求項44~47のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項49】
前記大きさが少なくも約48 kbの核酸分子またはその断片の大きさは少なくとも約10 Mbである、請求項44~48のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項50】
前記大きさが少なくも約48 kbの核酸分子またはその断片は微生物由来のものである、請求項44~49のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項51】
前記微生物は、細菌、真菌、放線菌、マイコプラズマ、クラミジア、リケッチアおよびスピロヘータからなる群から選ばれる1種または複数種である、請求項50に記載のT細胞製品。
【請求項52】
前記微生物はグラム陰性菌を含む、請求項50~51のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項53】
前記微生物は大腸菌を含む、請求項50~52のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項54】
前記プラスミドはデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)で処理されている、請求項27~53のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項55】
前記DNaseは非特異的に線形DNAを切断することができる、請求項54に記載のT細胞製品。
【請求項56】
前記DNaseはエキソヌクレアーゼである、請求項54~55のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項57】
前記処理はMg
2+およびCa
2+の存在下において前記形質移入混合物を前記DNaseと接触させることを含む、請求項54~56のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項58】
前記DNase処理を経た後、前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、微生物のゲノム由来の核酸分子またはその断片の含有量が前記形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約10%(w/w)以下を占める、請求項57に記載のT細胞製品。
【請求項59】
前記DNase処理を経た後、前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、前記大きさが少なくも約48 kbの核酸分子またはその断片の含有量が形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約10%(w/w)以下を占める、請求項57に記載のT細胞製品。
【請求項60】
前記抗体またはその抗原結合断片は二重特異性抗体を含む、請求項23~59のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項61】
前記抗体またはその抗原結合断片は二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)を含む、請求項23~60のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項62】
前記CARは抗原結合ドメイン、ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、共刺激ドメインおよびシグナル伝達ドメインを含む、請求項23~61のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項63】
前記抗原結合ドメインは特異的に腫瘍関連抗原(TAA)に結合する、請求項62に記載のT細胞製品。
【請求項64】
前記抗原結合ドメインは特異的に一つまたは複数の腫瘍関連抗原に結合する、請求項63に記載のT細胞製品。
【請求項65】
前記抗原結合ドメインは特異的にGPC3およびCD73に結合する、請求項62~64のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項66】
前記抗原結合ドメインは特異的にGPC3およびCD147に結合する、請求項62~65のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項67】
前記抗原結合ドメインは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、単一ドメイン抗体、ナノ抗体およびその抗原結合断片からなる群から選ばれる、請求項62~66のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項68】
前記ヒンジ領域は、CD28、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-G、HLA-DQ、HLA-DP、HLA-DR、CD8、Fc、IgG、IgD、4-1BB、CD4、CD27、CD7およびPD1といったタンパク質から選ばれるポリペプチド由来のものを含む、請求項62~67のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項69】
前記膜貫通ドメインは、CD27、CD7、PD1、TRAC、TRBC、CD28、CD3e、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137およびCD154といったタンパク質から選ばれるポリペプチド由来のものを含む、請求項62~68のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項70】
前記共刺激ドメインは、CD28、CD137、CD27、CD2、CD7、CD8、OX40、CD226、DR3、SLAM、CDS、ICAM-1、NKG2D、NKG2C、B7-H3、2B4、FcεRIγ、BTLA、GITR、HVEM、DAP10、DAP12、CD30、CD40、CD40L、TIM1、PD-1、LFA-1、LIGHT、JAML、CD244、CD100、ICOSおよびCD83のリガンドといったタンパク質から選ばれるポリペプチド由来のものを含む、請求項62~69のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項71】
前記シグナル伝達ドメインは、CD3ζ、FcRγ(FCER1G)、FcγRIIa、FcRβ(FcεR1b)、 CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD79a、CD79b、DAP10、DAP12、Igα受容体、Igβ受容体、BLV gp30(bovine leukemia virus gp30、牛白血病ウイルスgp30)、EBV(Ep-stein-Barr virus、エプスタイン・バール・ウイルス)LMP2A 、猴免疫缺陷病毒(Simian Immunodeficiency Virus、サル免疫不全ウイルス)PBj14 Nefおよび免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)といったタンパク質から選ばれるポリペプチド由来のものを含む、請求項62~70のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項72】
前記サイトカインは、IL-1、IL-7、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17A、IL-17F、IL-18、IL-21、IL-23、TNFα、CXCL1、CD38、CD40、CD69、IgG、IP-10、L-17A、 MCP-lおよびPGE2からなる群から選ばれる、請求項23~71のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項73】
前記ケモカインは、CCL1-CCL28およびCXCL1-CXCL17からなる群から選ばれる、請求項23~72のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項74】
少なくとも1種の前記他家T細胞は、形質移入を経た後、少なくとも1種の前記核酸を含むプラスミドを含む、請求項24~73のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項75】
少なくとも1種の前記他家T細胞は1種のキメラ抗原受容体(CAR)、または1種の二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)を発現する、請求項61~74のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項76】
少なくとも1種の前記他家T細胞は2種以上のタンパク質を発現する、請求項1~75のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項77】
少なくとも2種の異なる前記キメラ抗原受容体(CAR)および/またはサイトカインを発現する前記他家T細胞が所定の比率で混合される、請求項23~76のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項78】
さらに、前記被験者の自家由来のT細胞を含む、請求項1~77のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項79】
前記T細胞製品は、さらに、1種または複数種のほかの修飾されたT細胞を含み、前記ほかの修飾されたT細胞は相応する修飾されていないT細胞と比較すると、生体の同種異系反応を起こす能力が低下した、請求項1~78のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項80】
前記ほかの修飾されたT細胞は相応する修飾されていないT細胞と比較すると、MHC分子の発現および/または活性が低下した、請求項1~79のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項81】
請求項1~80のいずれかに記載のT細胞製品と、薬学的に許容される補助剤とを含む薬物組成物。
【請求項82】
前記補助剤は注射に適する、請求項81に記載の薬物組成物。
【請求項83】
前記補助剤は腫瘍内注射に適する、請求項81~82のいずれかに記載の薬物組成物。
【請求項84】
請求項1~80のいずれかに記載のT細胞製品と、注射用器材とを含むキット。
【請求項85】
薬物の製造における請求項1~80のいずれかに記載のT細胞製品、請求項81~83のいずれかに記載の薬物組成物および/または請求項84に記載のキットの使用であって、前記薬物は腫瘍の予防、緩和、治療に用いられる使用。
【請求項86】
前記腫瘍は固形腫瘍を含む、請求項85に記載の使用。
【請求項87】
前記薬物は注射に適するように調製される、請求項85~86のいずれかに記載の使用。
【請求項88】
前記薬物は腫瘍内注射に適するように調製される、請求項85~87のいずれかに記載の使用。
【請求項89】
腫瘍微環境を改善する方法であって、被験者に請求項1~80のいずれかに記載のT細胞製品、請求項81~83のいずれかに記載の薬物組成物および/または請求項84に記載のキットを施用する工程を含む方法。
【請求項90】
腫瘍を予防、緩和、治療する方法であって、被験者に請求項1~80のいずれかに記載のT細胞製品、請求項81~83のいずれかに記載の薬物組成物および/または請求項84に記載のキットを施用する工程を含む方法。
【請求項91】
前記施用は注射を含む、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記施用は腫瘍内注射を含む、請求項90~91のいずれかに記載の方法。
【請求項93】
前記施用は1回以上の腫瘍内注射を含む、請求項90~92のいずれかに記載の方法。
【請求項94】
腫瘍の予防、緩和、治療に用いられる、請求項1~80のいずれかに記載のT細胞製品、請求項81~83のいずれかに記載の薬物組成物および/または請求項84に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、生物医薬の分野に関し、具体的に、T細胞製品およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の汎用型CART細胞(UCART)の主な設計の考え方は、標的細胞の殺傷を目的とするものである。このような考え方の下、CARTは体内において長期間生存することが必要である。よって、UCARTの実際の応用において、二つの主要な問題、すなわち、UCARTの施用を受ける被験者の生体に対する殺傷(GVHD)、およびUCARTの同種異系反応(alloreaction)による被験者の生体からの拒絶を同時に解決する必要がある。現在のUCARTの設計の考え方は、生体から拒絶されるという問題を避けるために、主にGVHDおよび同種異系反応の排除に集中しているが、このような設計は腫瘍の治療効率に影響することがある。
【0003】
同時にこの二つの問題を解決し、そして有効に腫瘍の微環境を改善するというのは、現在のUCARTの細胞治療には挑戦的なことである。
【0004】
そのため、有効に治療効果を向上させる、新規な「汎用型」T細胞製品の獲得が期待されている。
【発明の概要】
【0005】
本出願は、被験者に施用するための少なくとも一つの機能分子を工学的に発現させてGVHDの可能性を大幅に低下させたT細胞製品およびその使用を提供する。同時に、前記T細胞製品には、少なくとも1種の同種異系免疫反応を起こしうる他家T細胞が含まれ、当該細胞は少なくとも1種のMHC分子を発現し、前記MHC分子は被験者の少なくとも1種のT細胞に外来のものと認識される。本出願において、前記T細胞製品は、以下の特性のうちの少なくとも一つを有する:(1)他家T細胞の由来に対する要求が低くなるか無く、場合によって異なるドナー由来の他家T細胞を混合して使用することができる;(2)他家T細胞によって発現されるMHC分子(たとえば、ヒトHLA遺伝子型)の種類に対する要求が低くなるか無い;(3)他家T細胞による被験者の移植片対宿主病(GVHD)の発生のリスクを低下させる;(4)有効に被験者の腫瘍内における免疫反応を向上させるために特異的に他家T細胞の同種異系反応を起こしうる機能を残す;(5)より有効に被験者の腫瘍内における免疫反応(たとえば、TH-1免疫反応)を向上させるために特異的に複数のドナー由来のものを混合することによって他家T細胞の同種異系反応を起こしうる機能を残す;(6)さらに1種または複数種の必要なタンパク質を発現する(たとえば、非ウイルスの方法によって形質移入して発現させる);(7)有効に被験者の体内腫瘍微環境を改善する;(8)腫瘍内注射が可能である;(9)顕著に製造コストを低下させる。また、本出願は、薬物組成物の製造、腫瘍を治療する薬物の製造および/または腫瘍微環境の改善における前記T細胞製品の使用を提供する。
【0006】
一つの側面では、本出願は、被験者に施用するためのT細胞製品であって、少なくとも1種の他家T細胞を含み、前記他家T細胞は少なくとも1種の前記被験者の少なくとも1種のT細胞に外来のものと認識されるMHC分子を発現し、前記被験者の少なくとも1種のTCRが前記MHC分子を認識すると同種異系反応(alloreaction)を起こすT細胞製品を提供する。
【0007】
ある実施形態において、前記少なくとも1種の他家T細胞は免疫拒絶反応を低減または消失させる操作をされていない。
【0008】
ある実施形態において、前記免疫拒絶反応を低減または消失させる操作は、他家T細胞のCD52遺伝子をノックアウトすること、および/または他家T細胞のHLA-I分子を改変することを含む。
【0009】
ある実施形態において、前記少なくとも1種の他家T細胞における被験者の同種異系反応を起こしうる分子は修飾されていない。
【0010】
ある実施形態において、前記被験者の同種異系反応を起こしうる分子は前記他家T細胞のMHC分子を含む。
【0011】
ある実施形態において、前記被験者は腫瘍患者を含む。
【0012】
ある実施形態において、前記腫瘍は固形腫瘍および/または非固形腫瘍を含む。
【0013】
ある実施形態において、前記他家T細胞の由来は前記被験者と異なる由来である。
【0014】
ある実施形態において、前記他家T細胞は前記被験者と異なる2つ以上のドナー由来のものである。
【0015】
ある実施形態において、前記他家T細胞は1種の前記被験者の少なくとも1種のT細胞に外来のものと認識されるMHC分子を発現する。
【0016】
ある実施形態において、前記他家T細胞は2種以上の前記被験者の少なくとも1種のT細胞に外来のものと認識されるMHC分子を発現する。
【0017】
ある実施形態において、前記MHC分子はMHC Iおよび/またはMHC IIを含む。
【0018】
ある実施形態において、前記他家T細胞はヘルパーT細胞(Th)および/または細胞傷害性T細胞(CTL)を含む。
【0019】
ある実施形態において、前記被験者の少なくとも1種の前記TCRは前記MHC分子を認識して前記被験者のTH-1免疫反応を促進させる。
【0020】
ある実施形態において、前記のT細胞製品は前記他家T細胞の前記被験者において移植片対宿主病(GVHD)を起こすリスクを低下させる能力を有する。
【0021】
ある実施形態において、工学的改造されていない前記他家T細胞と比較すると、前記工学的改造された前記他家T細胞では、前記他家T細胞の前記被験者において移植片対宿主病(GVHD)を起こすリスクが低下した。
【0022】
ある実施形態において、前記工学的改造は、前記他家T細胞におけるCD3に関連する遺伝子、TRAC遺伝子および/またはTRBC遺伝子の発現および/または活性を下方調節する工程を含む。
【0023】
ある実施形態において、工学的改造されていない前記他家T細胞と比較すると、前記工学的改造され前記他家T細胞におけるCD3に関連する遺伝子、TRAC遺伝子および/またはTRBC遺伝子の発現および/または活性が下方調節された。
【0024】
ある実施形態において、前記工学的改造は遺伝子突然変異および/または遺伝子サイレンシングを含む。
【0025】
ある実施形態において、前記工学的改造は、前記他家T細胞に、アンチセンスRNA、siRNA、shRNA、CRISPR/Cas系、RNA編集系、RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、Mega-TALヌクレアーゼ、TALENs 、Sleeping beautyトランスポゾン系およびメガヌクレアーゼ(Meganucleases)からなる群から選ばれる1種または複数種の物質を施用することを含む。
【0026】
ある実施形態において、前記工学的改造は、前記他家T細胞にCRISPR/Cas系を施用することを含む。
【0027】
ある実施形態において、前記工学的改造は、前記他家T細胞に前記CD3に関連する遺伝子、TRAC遺伝子および/またはTRBC遺伝子のエクソン部分を標的とするsgRNAを施用することを含む。
【0028】
ある実施形態において、少なくとも1種の前記他家T細胞は修飾された後、抗体およびその抗原結合断片、キメラ抗原受容体(CAR)、サイトカインおよび/またはケモカインを発現する。
【0029】
ある実施形態において、少なくとも1種の前記他家T細胞は修飾された後、抗体およびその抗原結合断片、キメラ抗原受容体(CAR)、サイトカインおよび/またはケモカインをコードする核酸を含む。
【0030】
ある実施形態において、前記修飾は前記他家T細胞に前記核酸を形質移入することを含む。
【0031】
ある実施形態において、前記形質移入はウイルス形質移入および/または非ウイルス形質移入を含む。
【0032】
ある実施形態において、前記非ウイルス形質移入はプラスミドを使用する。
【0033】
ある実施形態において、前記プラスミドは環状プラスミドまたはスーパーコイルプラスミドである。
【0034】
ある実施形態において、前記プラスミドは抗体およびその抗原結合断片、キメラ抗原受容体(CAR)、サイトカインおよび/またはケモカインをコードする核酸を含む。
【0035】
ある実施形態において、前記核酸はssDNAおよび/またはdsDNAを含む。
【0036】
ある実施形態において、前記プラスミドは細菌から生成するプラスミドを含む。
【0037】
ある実施形態において、前記プラスミドはナノプラスミド(Nanoplasmid)および/またはミニサークルDNA(minicircle DNA)ベクターを含む。
【0038】
ある実施形態において、前記形質移入は安定形質移入および/または一過性形質移入を含む。
【0039】
ある実施形態において、前記一過性形質移入はエレクトロポレーションを含む。
【0040】
ある実施形態において、前記一過性形質移入はmRNA形質移入を含む。
【0041】
ある実施形態において、前記安定形質移入はトランスポゾン系および/または遺伝子編集ノックインを使用する。
【0042】
ある実施形態において、前記遺伝子編集の方法は、CRISPR/Cas系、RNA編集系ADAR、RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、Mega-TALヌクレアーゼ、TALENsおよびメガヌクレアーゼ(Meganucleases)からなる群から選ばれる1種または複数種である。
【0043】
ある実施形態において、前記トランスポゾン系はSleeping beautyトランスポゾン系を含む。
【0044】
ある実施形態において、前記プラスミドは前記遺伝子編集ノックインにおいてドナープラスミドとされる。
【0045】
ある実施形態において、前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、微生物のゲノム由来の核酸分子またはその断片の含有量が前記形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約10%(w/w)以下を占める。
【0046】
ある実施形態において、前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、微生物のゲノム由来の核酸分子またはその断片の含有量が前記形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約2%(w/w)以下を占める。
【0047】
ある実施形態において、前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、微生物のゲノム由来の核酸分子またはその断片の含有量が前記形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約5‰(w/w)以下を占める。
【0048】
ある実施形態において、前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、微生物のゲノム由来の核酸分子またはその断片の含有量が前記形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約1‰(w/w)以下を占める。
【0049】
ある実施形態において、前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、前記大きさが少なくも約48kbの核酸分子またはその断片の含有量が形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約10%(w/w)以下を占める。
【0050】
ある実施形態において、前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、前記大きさが少なくも約48kbの核酸分子またはその断片の含有量が形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約2%(w/w)以下を占める。
【0051】
ある実施形態において、前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、前記大きさが少なくも約48kbの核酸分子またはその断片の含有量が前記形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約5‰(w/w)以下を占める。
【0052】
ある実施形態において、前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、前記大きさが少なくも約48kbの核酸分子またはその断片の含有量が前記形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約1‰(w/w)以下を占める。
【0053】
ある実施形態において、前記大きさが少なくも約48kbの核酸分子またはその断片の大きさは少なくとも約1Mbである。
【0054】
ある実施形態において、前記大きさが少なくも約48kbの核酸分子またはその断片の大きさは少なくとも約10Mbである。
【0055】
ある実施形態において、前記大きさが少なくも約48kbの核酸分子またはその断片は微生物由来のものである。
【0056】
ある実施形態において、前記微生物は、細菌、真菌、放線菌、マイコプラズマ、クラミジア、リケッチアおよびスピロヘータからなる群から選ばれる1種または複数種である。
【0057】
ある実施形態において、前記微生物はグラム陰性菌を含む。
【0058】
ある実施形態において、前記微生物は大腸菌を含む。
【0059】
ある実施形態において、前記プラスミドはデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)で処理されている。
【0060】
ある実施形態において、前記DNaseは非特異的に線形DNAを切断することができる。
【0061】
ある実施形態において、前記DNaseはエクソヌクレアーゼである。
【0062】
ある実施形態において、前記処理はMg2+およびCa2+の存在下において前記形質移入混合物を前記DNaseと接触させることを含む。
【0063】
ある実施形態において、前記DNase処理を経た後、前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、微生物のゲノム由来の核酸分子またはその断片の含有量が前記形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約10%(w/w)以下を占める。
【0064】
ある実施形態において、前記DNase処理を経た後、前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、前記大きさが少なくも約48kbの核酸分子またはその断片の含有量が形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約10%(w/w)以下を占める。
【0065】
ある実施形態において、前記抗体またはその抗原結合断片は二重特異性抗体を含む。
【0066】
ある実施形態において、前記抗体またはその抗原結合断片は二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)を含む。
【0067】
ある実施形態において、前記CARは抗原結合ドメイン、ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、共刺激ドメインおよびシグナル伝達ドメインを含む。
【0068】
ある実施形態において、前記CARの抗原結合ドメインは特異的に一つまたは複数の腫瘍関連抗原に結合することができる。
【0069】
ある実施形態において、前記CARの抗原結合ドメインは特異的にGPC3およびCD73に結合することができる。
【0070】
ある実施形態において、前記CARの抗原結合ドメインは特異的にGPC3およびCD147に結合することができる。
【0071】
ある実施形態において、前記抗原結合ドメインは特異的に腫瘍関連抗原(TAA)に結合する。
【0072】
ある実施形態において、前記抗原結合ドメインは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、単一ドメイン抗体、ナノ抗体およびその抗原結合断片からなる群から選ばれる。
【0073】
ある実施形態において、前記ヒンジ領域は下記タンパク質から選ばれるポリペプチド由来のものを含む:CD28、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-G、HLA-DQ、HLA-DP、HLA-DR、CD8、Fc、IgG、IgD、4-1BB、CD4、CD27、CD7およびPD1。
【0074】
ある実施形態において、前記膜貫通ドメインは下記タンパク質から選ばれるポリペプチド由来のものを含む:CD27、CD7、PD1、TRAC、TRBC、CD28、CD3e、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137およびCD154。
【0075】
ある実施形態において、前記共刺激ドメインは下記タンパク質から選ばれるポリペプチド由来のものを含む:CD28、CD137、CD27、CD2、CD7、CD8、OX40、CD226、DR3、SLAM、CDS、ICAM-1、NKG2D、NKG2C、B7-H3、2B4、FcεRIγ、BTLA、GITR、HVEM、DAP10、DAP12、CD30、CD40、CD40L、TIM1、PD-1、LFA-1、LIGHT、JAML、CD244、CD100、ICOSおよびCD83のリガンド。
【0076】
ある実施形態において、前記シグナル伝達ドメインは下記タンパク質から選ばれるポリペプチド由来のものを含む:CD3ζ、FcRγ(FCER1G)、FcγRIIa、FcRβ(FcεR1b)、 CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD79a、CD79b、DAP10、DAP12、Igα受容体、Igβ受容体、BLV gp30(bovine leukemia virus gp30、牛白血病ウイルスgp30)、EBV(Ep-stein-Barr virus、エプスタイン・バール・ウイルス)LMP2A 、サル免疫不全ウイルス(Simian Immunodeficiency Virus)、PBj14 Nefおよび免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)。
【0077】
ある実施形態において、前記サイトカインは、IL-1、IL-7、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17A、IL-17F、IL-18、IL-21、IL-23、TNFα、CXCL1、CD38、CD40、CD69、IgG、IP-10、L-17A、 MCP-lおよびPGE2からなる群から選ばれる。
【0078】
ある実施形態において、前記ケモカインは、CCL1-CCL28およびCXCL1-CXCL17からなる群から選ばれる。
【0079】
ある実施形態において、少なくとも1種の前記他家T細胞は、形質移入を経た後、少なくとも1種の前記核酸を含むプラスミドを含む。
【0080】
ある実施形態において、少なくとも1種の前記他家T細胞は1種のキメラ抗原受容体(CAR)、または1種の二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)を発現する。
【0081】
ある実施形態において、少なくとも1種の前記他家T細胞は2種以上のタンパク質を発現する。
【0082】
ある実施形態において、前記CARをコードする遺伝子は配列番号2あるいは配列番号11または12で示される配列を含む。
【0083】
ある実施形態において、前記CARは配列番号10で示されるアミノ酸配列を含む。
【0084】
ある実施形態において、少なくとも2種の異なる前記キメラ抗原受容体(CAR)および/またはサイトカインを発現する前記他家T細胞が所定の比率で混合される。
【0085】
ある実施形態において、前記T細胞製品は、さらに、前記被験者の自家由来のT細胞を含む。
【0086】
ある実施形態において、前記T細胞製品は、さらに、1種または複数種のほかの修飾されたT細胞を含み、前記ほかの修飾されたT細胞は相応する修飾されていないT細胞と比較すると、生体の同種異系反応を起こす能力が低下した。
【0087】
ある実施形態において、前記ほかの修飾されたT細胞は相応する修飾されていないT細胞と比較すると、MHC分子の発現および/または活性が低下した。
【0088】
もう一つの側面では、本出願は、本出願に記載のT細胞製品と、薬学的に許容される補助剤とを含む薬物組成物を提供する。
【0089】
ある実施形態において、前記補助剤は注射に適する。
【0090】
ある実施形態において、前記補助剤は腫瘍内注射に適する。
【0091】
もう一つの側面では、本出願は、本出願に記載のT細胞製品と、注射用器材とを含むキットを提供する。
【0092】
もう一つの側面では、本出願は、薬物の製造における本出願に記載のT細胞製品、本出願に記載の薬物組成物および/または本出願に記載のキットの使用であって、前記薬物は腫瘍の予防、緩和、治療に用いられる使用を提供する。
【0093】
ある実施形態において、前記腫瘍は固形腫瘍を含む。
【0094】
ある実施形態において、前記薬物は注射に適するように調製される。
【0095】
ある実施形態において、前記薬物は腫瘍内注射に適するように調製される。
【0096】
もう一つの側面では、本出願は、腫瘍微環境を改善する方法であって、被験者に本出願に記載のT細胞製品、本出願に記載の薬物組成物および/または本出願に記載のキットを施用する工程を含む方法を提供する。
【0097】
もう一つの側面では、本出願は、腫瘍を予防、緩和、治療する方法であって、被験者に本出願に記載のT細胞製品、本出願に記載の薬物組成物および/または本出願に記載のキットを施用する工程を含む方法を提供する。
【0098】
ある実施形態において、前記施用は注射を含む。
【0099】
ある実施形態において、前記施用は腫瘍内注射を含む。
【0100】
ある実施形態において、前記施用は1回以上の腫瘍内注射を含む。
【0101】
もう一つの側面では、本出願は、腫瘍の予防、緩和、治療に用いられる、本出願に記載のT細胞製品、本出願に記載の薬物組成物および/または本出願に記載のキットを提供する。
【0102】
当業者は下記の詳細な記述から容易に本出願のほかの側面および優勢を洞察することができる。下記の詳細な記述には、本出願の例示的な実施形態しか提示および記述されていない。当業者に認識できるように、本出願の内容は、当業者が本出願に係る発明の趣旨および範囲を逸脱しないように公開された具体的な実施形態を変更することができるようになっている。相応的に、本出願の図面および明細書における記述は例示的なものに過ぎず、制限的なものではない。
【0103】
本出願に係る発明の具体的な特徴は添付された請求の範囲で示される通りである。下記で詳細に記述された例示的な実施形態および図面を参照すると、本出願に係る発明の特徴および優勢をよりよく理解することができる。図面に対する簡単な説明は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【
図1A】異なる個体由来のT細胞が特異的な一つの他家PBMCと異なるレベルの同種異系反応が生じることを示す。しかし、複数のドナー由来のものを混合した本出願に係る他家T細胞が前記の特異的な他家PBMCと強烈な同種異系反応が生じることが保証される。
【
図1B】異なる個体由来のT細胞が特異的な一つの他家PBMCと異なるレベルの同種異系反応が生じることを示す。しかし、複数のドナー由来のものを混合した本出願に係る他家T細胞が前記の特異的な他家PBMCと強烈な同種異系反応が生じることが保証される。
【
図2】異なるドナー由来のものを混合した本出願に係る他家T細胞が他家PBMCと同種異系反応が生じられることを示す。
【
図3】一つまたは複数のドナー由来の本出願に係る他家T細胞がCAR分子を発現できることを示す。
【
図4】本出願に係るT細胞が長期間CAR分子を発現できることを示す。
【
図5A】本出願に係る他家T細胞が同時に2種類以上の分子を発現できることを示す。
【
図5B】本出願に係る他家T細胞が同時に2種類以上の分子を発現できることを示す。
【
図6】工学的改造および/または修飾された本出願に係る他家T細胞が同時に複数の分子を発現し、そして腫瘍細胞を殺傷した後、特異的に発現する分子以外、別のサイトカインを放出することができることを示す。
【
図7】A-Fは工学的改造および/または修飾された本出願に係る他家T細胞が特異的に腫瘍細胞を殺傷できることを示す。
【
図8】一つまたは複数のドナー由来の本出願に係る他家T細胞の腫瘍細胞を殺傷する能力が同等であることを示す。
【
図9A】一つまたは複数のドナー由来の本出願に係る他家T細胞の腫瘍細胞を殺傷した後の上清が同等の免疫細胞を動員する能力を有することを示す。
【
図9B】一つまたは複数のドナー由来の本出願に係る他家T細胞の腫瘍細胞を殺傷した後の上清が同等の免疫細胞を動員する能力を有することを示す。
【
図10A】一つまたは複数のドナー由来の本出願に係る他家T細胞の腫瘍細胞を殺傷した後の上清が有する免疫細胞を活性化させる能力が同等で(9A)、活性化したPBMCがK562細胞を殺傷する能力を有することを示す。
【
図10B】一つまたは複数のドナー由来の本出願に係る他家T細胞の腫瘍細胞を殺傷した後の上清が有する免疫細胞を活性化させる能力が同等で(9A)、活性化したPBMCがK562細胞を殺傷する能力を有することを示す。
【
図11】A-Bは複数のドナー由来の工学的改造および/または修飾された本出願に係る他家T細胞が分子を発現する能力を示す。
【
図12】工学的改造および/または修飾された複数のドナー由来の本出願に係る他家T細胞の混合物が有効に腫瘍細胞を殺傷できることを示す。
【
図13】工学的改造および/または修飾された複数のドナー由来の本出願に係る他家T細胞の混合物の上清がPBMCと協同して有効に腫瘍細胞を殺傷できることを示す。
【
図14】工学的改造および/または修飾された複数のドナー由来の本出願に係る他家T細胞の混合物の標的細胞を殺傷した後の上清が有効にT細胞および/またはNK細胞を活性化させることができることを示す。
【
図15】A-Cは工学的改造および/または修飾された本出願に係る他家T細胞の腫瘍細胞を殺傷した後の上清がT/NK細胞を活性化させることができることを示す。
【
図16】工学的改造および/または修飾された本出願に係る他家T細胞が標的細胞によって複数回活性化増幅、再生および/または凍結保存することができることを示す。
【
図17】工学的改造および/または修飾された本出願に係る他家T細胞が有効に腫瘍細胞を殺傷できることを示す。
【
図18】工学的改造および/または修飾された本出願に係る他家T細胞の腫瘍細胞を殺傷した後の細胞上清液がBy-StandでPBMCにおけるT細胞を活性化させることができることを示す。
【
図19】工学的改造および/または修飾された本出願に係る他家T細胞が複数回活性化して増幅した後、腫瘍細胞を殺傷した後の細胞上清がBy-StandでPBMCにおけるNK細胞を活性化させることができることを示す。
【
図20】工学的改造および/または修飾された本出願に係る他家T細胞が有効に体内の腫瘍体積を減少させることができることを示す。
【
図21】工学的改造および/または修飾された複数のドナー由来の本出願に係る他家T細胞の混合物の標的細胞を殺傷した後の上清液におけるXCLの発現量が上昇したことを示す。
【
図22】工学的改造および/または修飾された複数のドナー由来の本出願に係る他家T細胞の混合物の標的細胞を殺傷した後の上清液が有効にcDC1細胞を動員することができることを示す。
【
図23】工学的改造および/または修飾された複数のドナー由来の本出願に係る他家T細胞の混合物の標的細胞を殺傷した後の上清液が有効にT/NK細胞を動員することができることを示す。
【
図24A】工学的改造および/または修飾された複数のドナー由来の本出願に係る他家T細胞の標的細胞を殺傷した後の細胞上清液がBy-StandでPBMCにおけるNK細胞を活性化させることができることを示す。
【
図24B】工学的改造および/または修飾された複数のドナー由来の本出願に係る他家T細胞の標的細胞を殺傷した後の細胞上清液がBy-StandでPBMCにおけるT細胞を活性化させることができることを示す。
【
図25】工学的改造および/または修飾された複数のドナー由来の本出願に係る他家T細胞の標的細胞を殺傷した後の細胞上清液によって活性化されたPBMCが顕著にK562細胞を殺傷する効率を向上させることができることを示す。
【
図26】工学的改造および/または修飾された本出願に係る他家T細胞が明らかに腫瘍の生長を抑制する効果を示す。
【
図27】工学的改造および/または修飾された本出願に係る他家T細胞が腫瘍内の複数回の注射によって有効に体内の腫瘍を殺傷して腫瘍体積を減少させることができることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0105】
以下、特定の具体的な実施例で本願の発明の実施形態を説明するが、当業者は本明細書で公開された内容から容易に本願の発明のほかの利点および効果がわかる。
【0106】
用語の定義
本出願において、用語「T細胞製品」とは、通常、被験者に施用できる、T細胞を含む治療用製品である。本出願において、前記T細胞製品は細胞治療に使用することができる。たとえば、前記T細胞製品は治療効果のあるタンパク質(たとえば、キメラ抗原受容体、抗体またはその抗原結合タンパク質、サイトカインおよび/またはケモカイン)を発現できるT細胞を含んでもよい。本出願において、前記T細胞製品は腫瘍の治療に使用することができる。ある場合、前記T細胞製品は注射(たとえば、腫瘍内注射)などの投与手段により、被験者に施用することができる。本出願において、前記T細胞製品は個別化のものでもよく、たとえば、必要な被験者の実際のニーズに応じて設計することができる。
【0107】
本出願において、用語「T細胞」とは、通常、胸腺から生成する細胞である。前記T細胞は様々な細胞が仲介する免疫反応に関与することができる。本出願において、前記T細胞は胸腺細胞、ナイーブT細胞、未熟なT細胞、成熟したT細胞、静止T細胞または活性化したT細胞を含んでもよい。ある場合、いくつかのマーカーで前記T細胞を分類することができる。たとえば、前記T細胞はヘルパーT細胞(CD4+T細胞)、細胞傷害性T細胞(CTL;CD8+T細胞)、CD4+CD8+T細胞および/またはCD4-CD8-T細胞を含む。たとえば、前記T細胞は以下のマーカーのうちの1種または複数種を発現してもよい:CD3、CD4、CD8、CD27、CD28、CD45RA、CD45RO、CD62L、CD127、CD197およびHLA-DR。
【0108】
本出願において、用語「ヘルパーT細胞(Th)」とは、通常、エフェクターT細胞で、前記ヘルパーT細胞はほかのBとT細胞および/またはマクロファージの活性化および機能を促進させることができる。本出願において、前記ヘルパーT細胞はCD4+T細胞でもよい。前記ヘルパーT細胞は、活性化の場合、生体の適応性免疫反応を促進させることができる。ある場合、前記ヘルパーT細胞は抗原特異的な免疫反応に関与することができる。前記ヘルパーT細胞は、さらに、たとえば、異なる転写因子、分泌するサイトカインおよび/またはケモカインによって異なるサブタイプに分化しうる。たとえば、異なる免疫細胞の動員および/または異なる免疫反応機序の協調が可能である。前記ヘルパーT細胞は、Th1細胞、Th2細胞、Th17細胞および/または制御性T細胞(Treg)を含んでもよい。
【0109】
本出願において、用語「TH-1免疫反応」とは、通常、Th1細胞が関与する免疫反応である。Th1細胞は主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIまたはクラスII分子によって提示される抗原を認識することができる。Th1細胞は細胞内の病原体(たとえば、マクロファージにおけるファゴソームに存在する病原体)の認識および/または除去に関与することができる。本出願において、前記TH-1免疫反応はTh1細胞(たとえば、Th1細胞の表面のCD40Lとマクロファージ、B細胞または樹状細胞の表面に発現されるCD40が生じる相互作用)および/またはそれによって分泌される物質(たとえば、IFNγ)により、ほかの免疫細胞(たとえば、マクロファージ、B細胞、細胞傷害性T細胞)を活性化させる機能(たとえば、殺傷溶解機能)を含んでもよい。本出願において、前記TH-1免疫反応は腫瘍の殺傷作用に関与することもできる。たとえば、細胞傷害性T細胞を活性化させ、腫瘍細胞を標的として殺傷することができる。たとえば、細胞傷害性T細胞の生存能力および/または記憶能力を増強させることができる。
【0110】
本出願において、用語「細胞傷害性T細胞(CTL)」とは、通常、CD8+T細胞である。前記細胞傷害性T細胞は適応性免疫反応に関与し、細胞内の病原体の免疫防御および腫瘍の殺傷において作用を発揮することができる前記細胞傷害性T細胞の表面はCD8+共受容体を発現することができる。前記細胞傷害性T細胞はMHCクラスI分子によって提示される抗原に対して免疫反応することができる。たとえば、前記細胞傷害性T細胞はリンパ球および/または感染された標的細胞に発現されたFas受容体および/またはFasリガンドに結合して後者のアポトーシスを誘導することができる。たとえば、前記細胞傷害性T細胞は多くのサイトカイン(たとえば、IFNγ、TNFα)を生成することができる。たとえば、腫瘍微環境における前記細胞傷害性T細胞はサイトカインの細胞傷害性によって腫瘍細胞を殺傷することができる。本出願において、前記細胞傷害性T細胞はTc1、Tc2、Tc9、Tc17および/またはCD8+Tregを含んでもよい。
【0111】
本出願において、用語「他家T細胞」とは、通常、被験者と異なる由来のT細胞である。たとえば、前記他家T細胞は一つの前記被験者と異なるドナー由来のものでもよい。ある場合、前記他家T細胞は二つ以上(たとえば、二つ、三つ、四つまたはそれ以上)の前記被験者と異なるドナー由来のものでもよい。本出願において、前記他家T細胞はMHC分子を発現することができる。ある場合、前記MHC分子のうちの少なくとも1種は前記被験者の少なくとも1種のT細胞に「外来」の(たとえば、前記被験者の生体によって生成するものに属しない)MHC分子と認識されることができる。本出願において、前記他家T細胞は直接ドナーから得られるT細胞でもよい。ある場合、前記他家T細胞は改造されたものでもよい。たとえば、工学的改造によって前記他家T細胞の前記被験者において移植片対宿主病(GVHD)を起こすリスクを低下させることができる。たとえば、修飾によって前記他家T細胞が少なくとも1種の前記被験者の疾患の治療に必要なタンパク質を発現できるようにさせることができる。
【0112】
本出願において、用語「被験者」は、通常、哺乳動物、たとえば、ヒト、非ヒト霊長類動物(たとえば、サル、テナガザル、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、アカゲザル)、家畜(たとえば、イヌやネコ)、農場動物(たとえば、ニワトリやカモのような家禽、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ)および実験動物(たとえば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)を指す。ヒトの被験者は胎児、新生児、嬰児、青少年および成人の被験者を含んでもよい。被験者は、動物疾患モデル、たとえば、マウスモデル、および当業者に既知のほかの動物モデルを含んでもよい。本出願において、必要な被験者は患者、たとえば、腫瘍患者を含んでもよい。
【0113】
本出願において、用語「外来」とは、通常、任意の生体、細胞、組織または系から導入された物質あるいは生体、細胞、組織または系の外で生成した物質である。たとえば、前記他家T細胞によって発現される少なくとも1種のMHC分子は、前記被験者の少なくとも1種のT細胞に前記外来のもの(たとえば、前記被験者の外で生成したMHC分子)と認識されることができる。
【0114】
本出願において、用語「MHC分子」とは、通常、主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex、MHC)で、一組の動物の主要組織適合抗原をコードする遺伝子群の総称である。ヒトのMHCはHLA(human leukocyte antigen、HLA、ヒト白血球抗原)複合体とも呼ばれる。MHCの多型性のため、それによってコードされる分子の構造、組織分布および機能の違いにより、MHCクラスI、MHCクラスII、MHCクラスIIIの遺伝子に分かれ、それぞれMHCクラスI分子、MHCクラスII分子、MHCクラスIII分子をコードする。本出願において、前記MHC分子は抗原をMHC提示に伝送するタンパク質も含んでもよい。MHCクラスI分子は前記有核細胞の表面に分布してもよい。MHCクラスI分子はCD8+T細胞に抗原を提示する過程に関与してもよい。MHCクラスII分子はB細胞、単核球/マクロファージおよび樹状細胞などの抗原提示細胞の表面に分布してもよい。MHCクラスII分子は処理された抗原断片をCD4+T細胞に提示することができる。MHCクラスII分子は移植拒絶反応を起こす可能性がある。
【0115】
本出願において、用語「TCR」とは、通常、T細胞の表面の特異的受容体である。前記T細胞受容体はヘテロ二量体で、二つの異なるサブユニットで構成されてもよい。T細胞受容体の大半(たとえば、95%以上、96%以上、97%以上など)はαサブユニットおよびβサブユニットで構成され、各ペプチド鎖は、また、可変領域(V領域)、定常領域(C領域)、膜貫通領域および細胞内領域などの部分に分かれる。本出願において、前記TCRは任意のTCRまたは機能性断片、たとえば、MHC分子に結合した特異的抗原性ペプチド、すなわち、MHC-ペプチド複合体に結合するTCRの抗原結合部分を含んでもよい。入れ替えて使用できるTCRの「抗原結合部分」または「抗原結合断片」とは、TCRのドメインの部分を含有するが、全長TCRが結合する抗原(たとえば、MHC-ペプチド複合体)に結合する分子である。ある場合、抗原結合部分はTCRの可変ドメイン、たとえば、TCRの可変α鎖および可変β鎖を含有してもよいが、それは特異的MHC-ペプチド複合体に結合するための結合部位を形成するのに十分で、たとえば、一般的に、各鎖が3つの相補性決定領域を含有する場合である。
【0116】
本出願において、用語「ドナー」とは、通常、移植物の由来となる種である。たとえば、前記ドナーは死亡状態にあるものでもよく、生存状態にあるものでもよい。本出願において、前記ドナーは健康状態のものでもよい。たとえば、前記ドナーは腫瘍に罹患しなくてもよい。前記ドナーは、哺乳動物、たとえば、ヒト、非ヒト霊長類動物(たとえば、サル、テナガザル、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、アカゲザル)、家畜(たとえば、イヌやネコ)、農場動物(たとえば、ニワトリやカモのような家禽、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ)および実験動物(たとえば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)でもよい。本出願において、前記被験者および前記ドナーは同時に同様の種、たとえば、同時にヒトでもよい。たとえば、前記ドナーは前記被験者と遺伝的に類似しないドナー、前記被験者とクロスマッチが不適合のドナー、および/または前記被験者とクロスマッチが適合のドナーも含んでもよい。
【0117】
本出願において、用語「同種異系反応(alloreaction)」とは、通常、ドナー由来の臓器、組織および/または細胞による免疫反応である。前記同種異系反応は免疫系が同種抗原または「同種異系抗原」または異なるHLAハプロタイプを発現する細胞に応答して生じる刺激および反応を含んでもよい。本出願において、前記同種異系反応は、ドナー由来の臓器、組織および/または細胞が被験者に対して生じる刺激および反応を含んでもよく、被験者がドナー由来の臓器、組織および/または細胞に対して生じる刺激および反応を含んでもよい。たとえば、前記同種異系反応は移植片対宿主病(GVHD)を含んでもよい。たとえば、前記同種異系反応は移植拒絶反応を含んでもよい。
【0118】
本出願において、用語「移植片対宿主病(GVHD)」とは、通常、外来の(たとえば、ドナー由来の)臓器、組織および/または細胞が被験者に対して生じる急性または慢性の免疫反応である。たとえば、同一の種のほかの個体(ある場合、ひいてはHLA適合のもの)から得られる臓器、組織および/または細胞は被験者に前記移植片対宿主病をさせてもよい。前記GVHDは被験者の腸の表皮および/または肝臓に症状が生じてもよい。ある場合、前記GVHDは皮膚、肝臓、胃および/または腸の炎症反応を起こしてもよい。ある場合、前記GVHDは慢性のもので、よく見られる症状が皮疹および/または口腔潰瘍を含んでもよい。前記GVHDは、現在、治癒できないことが多い。
【0119】
本出願において、用語「腫瘍内注射」とは、通常、直接腫瘍細胞団および/または腫瘍微環境に施用することである。本出願において、前記腫瘍微環境は腫瘍形成環境を含んでもよく、それは腫瘍の生存、発展または拡散に構造および/または機能上の環境を提供する。腫瘍微環境は細胞、分子、線維芽細胞、細胞外基質および血管で構成されてもよく、これらは腫瘍を形成する一つまたは複数の腫瘍細胞を囲んでフィードする。腫瘍微環境における細胞または組織の実例は、腫瘍脈管系、腫瘍浸潤リンパ球、細網線維芽細胞、血管内皮前駆細胞(EPC)、癌関連線維芽細胞、周皮細胞、ほかの基質細胞、細胞外マトリックス(ECM)、樹状細胞、抗原提示細胞、T細胞、制御性T細胞、マクロファージ、好中球およびほかの腫瘍に近い免疫細胞を含むが、これらに限定されない。腫瘍微環境の細胞機能に影響する例は、サイトカインおよび/またはケモカインの生成、サイトカインに対する反応、抗原の加工およびペプチド抗原の提示、白血球の走化性および遷移の調節、遺伝子発現の調節、補体活性化、シグナル経路の調節、細胞が仲介する細胞傷害性、細胞が仲介する免疫、体液免疫応答およびほかの先天性または適応性免疫応答を含むが、これらに限定されない。これらの細胞機能を調節する効果を測定する。
【0120】
本出願において、用語「薬物組成物」とは、通常、患者、たとえば、ヒト患者への施用に適する組成物である。本出願における薬物組成物は治療有効量の1種または複数種の本出願の抗体構築体を含む。薬物組成物は、さらに、1種または複数種の(薬学的に有効な)ビヒクル、安定化剤、賦形剤、希釈剤、可溶化剤、界面活性剤、乳化剤、防腐剤および/または助剤の適切な製剤を含んでもよい。たとえば、組成物の許容される成分は使用される投与量および濃度において受け手に毒性がない。本出願の薬物組成物は液体、冷凍および凍結乾燥の組成物を含むが、これらに限定されない。
【0121】
本出願において、用語「腫瘍」とは、通常、悪性転換前および悪性の癌である。前記腫瘍は、原発性腫瘍(たとえば、その細胞が対象の体内の元の腫瘍の部位以外の部位に遷移していないもの)および続発性腫瘍(たとえば、転移、腫瘍細胞の元の腫瘍の部位と異なる続発部位への遷移による腫瘍)、再発性癌および難治性癌を含んでもよい。前記腫瘍は固形腫瘍および非固形腫瘍を含んでもよい。
【0122】
本出願において、用語「デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)」とは、通常、DNA骨格におけるホスホジエステル結合を切断できる酵素である。前記DNaseはヌクレアーゼの1種でもよい。前記DNaseは(たとえば、弱塩基性の条件において)二本鎖DNAをデオキシヌクレオチドに消化することができる。たとえば、前記DNaseは環状またはスーパーコイルの核酸分子またはその断片(たとえば、閉環の二本鎖DNAおよび/またはスーパーコイルのDNA)に基本的に活性がなくてもよい(たとえば、切断できない)。たとえば、前記DNaseは線形二本鎖DNAを切断することができる。たとえば、前記DNaseはDNAエクソヌクレアーゼでもよい。たとえば、前記DNaseはエクソヌクレアーゼVでもよい。たとえば、前記DNaseはATP依存性DNase、たとえば、Plasmid-SafeTM ATP-Dependent DNaseでもよい。
【0123】
本出願において、用語「一過性形質移入」とは、通常、細胞に形質移入された外因性遺伝子が前記細胞自身のゲノムに組み込まれない形質移入の手段である。前記一過性形質移入は外因性遺伝子の短期間(たとえば、少なくとも約1日、少なくとも約2日)の快速発現を実現させることができる。前記一過性形質移入で細胞に形質移入される外因性遺伝子は前記細胞の生長および/または分裂につれて段々失われることがある。前記一過性形質移入は、操作が簡便、試験周期が短い、発現効率が高い、安全および遺伝子のスクリーニングが不要な群から選ばれる優勢を有することが可能である。前記一過性形質移入の操作工程は当業者によく知られているものでもよい。たとえば、前記一過性形質移入はリポフェクション法によるものでもよい。たとえば、前記一過性形質移入はエレクトロポレーション法によるものでもよい。前記一過性形質移入は形質移入試薬、たとえば、FuGENE6を使用してもよい。
【0124】
本出願において、用語「安定形質移入」とは、通常、外来の核酸分子を導入して形質移入された細胞のゲノムに組み込むことである。たとえば、前記外因性遺伝子を形質移入された細胞のゲノムに組み込む。
【0125】
本出願において、用語「形質移入混合物」とは、通常、形質移入に必要な混合物である。本出願において、前記形質移入混合物は導入しようとする1種または複数種の材料(たとえば、ポリヌクレオチド)を含んでもよい。たとえば、前記形質移入混合物は形質移入される外因性遺伝子をコードする核酸分子を含んでもよい。たとえば、前記形質移入混合物は前記核酸分子を含むベクターを含んでもよい。たとえば、前記形質移入混合物は、さらに、不純物(ある場合、前記不純物は核酸分子またはその断片)を含んでもよい。本出願において、前記不純物は微生物由来の核酸分子またはその断片を含んでもよい。前記ベクターが持つ不純物は前記ベクターが持つ不純物(たとえば、前記ベクターの骨格と相同もしくは非相同の核酸分子またはその断片)を含んでもよい。
【0126】
本出願において、用語「核酸分子の合計含有量」とは、通常、前記形質移入混合物における、すべてのヌクレオチドを有する物質の合計質量である。たとえば、前記ヌクレオチドを有する物質は前記核酸分子またはその断片および前記材料を含んでもよい。
【0127】
本出願において、用語「微生物」とは、通常、古細菌ドメイン(Archaea)、細菌ドメイン(Bacteria)および/または真核生物ドメイン (Eucarya)からの真核および原核の微生物の種である。たとえば、前記微生物は、細菌、ウイルス、真菌、放線菌、リケッチア、マイコプラズマ、クラミジアおよび/またはスピロヘータを含んでもよい。本出願において、用語「細菌」とは、通常、任意の種類の原核生物で、原核生物界のうちのすべての門における原核生物を含む。前記細胞は、球菌、桿菌、螺旋菌、スフェロプラスト、プロトプラストを含んでもよい。前記細菌は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌を含んでもよい。「グラム陽性」および「グラム陰性」とは、グラム染色法による染色パターンで、本分野でよく知られている(たとえば、FinegoldおよびMartin, DiagnosticMicrobiology (診断微生物学),第六版,CV Mosby St. Louis,第13-15頁(1982)を参照する)。
【0128】
本出願において、用語「微生物のゲノム由来の核酸分子またはその断片」とは、通常、前記微生物のゲノム由来の核酸分子または核酸分子の断片である。微生物のゲノム由来の情報はA genomic catalog of Earth’s microbiomes,Nature Biotechnology (2020)を参照する。
【0129】
本出願において、用語「グラム陰性菌」とは、通常、グラム染色において使用される一次染料が残らないが、二次染色剤に染色される細菌である。そのため、グラム陰性菌は、通常、グラム染色法において赤色を示す。前記グラム陰性菌の細胞壁におけるペプチドグリカンの含有量が低いが、脂質の含有量が高い。たとえば、前記グラム陰性菌の細胞壁はリポ多糖層を有してもよい。たとえば、前記グラム陰性菌は、大腸菌、緑膿菌、プロテウス菌、赤痢菌、肺炎桿菌、ブルセラ菌、インフルエンザ菌、パラインフルエンザ菌、カタル球菌、アシネトバクター属、エルシニア属、レジオネラ・ニューモフィラ、百日咳菌、パラ百日咳菌、赤痢菌属、パスツレラ属、コレラ菌、ビブリオ・パラヘモリティカスおよび/またはプレジオモナス・シゲロイデスを含んでもよい。
【0130】
本出願において、用語「大腸菌」とは、通常、Escherichia coliである。大腸菌は腸内細菌科エスケリキア属に属する。
【0131】
本出願において、用語「プラスミド」とは、通常、遺伝物質を含む構築体である。前記プラスミドは遺伝物質(たとえば、一つまたは複数の核酸配列)を細胞内へ送れるように設計されている。前記プラスミドは任意の由来の一本鎖または二本鎖核酸(たとえば、DNAまたはRNA)の自律複製配列を含んでもよい。前記プラスミドは本出願において用語「ベクター」と入れ替えて使用することができる。前記プラスミドは様々な配置を有してもよく、たとえば、線形プラスミド、環状プラスミドまたはスーパーコイルプラスミドでもよい。前記線形プラスミドは線状のDNA分子でもよい。前記スーパーコイルプラスミドは2本の完全な構造を維持する核酸鎖(たとえば、共有結合閉環DNA、cccDNA)を含み、そしてスーパーコイルの配置をしてもよい。前記環状プラスミドは少なくとも1本の核酸鎖が完全な環状構造を維持しているものでもよい。前記プラスミドは細胞のゲノムに組み込まれていないものでもよい。
【0132】
本出願において、用語「遺伝子編集」とは、通常、ゲノムに対して核酸の挿入、欠失および/または置換の操作を行うことである。前記遺伝子編集は相同組換修復(HDR)、非相同末端結合(NHEJ)または一塩基改変によって実現させることができる。前記遺伝子編集は当業者によく知られている遺伝子編集ツール、たとえば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)システム、TALENシステムおよび/またはCRISPR技術を利用することができる。
【0133】
本出願において、用語「遺伝子編集ノックイン」とは、通常、一つの遺伝子工学の過程で(たとえば、knock-inと呼んでもよい)、当該過程は遺伝部位におけるDNA配列情報に対する一対一の内因性部位に見られない配列情報の置換または挿入に関する。前記遺伝子編集は遺伝子相同組換えを利用することができる。たとえば、遺伝子相同組換えを利用し、外因性機能的遺伝子(ゲノムに存在しなかったか、失活した遺伝子)を細胞に導入してゲノムにおける相同配列と相同組換えをすることで、それをゲノムに挿入して細胞内で発現させる。たとえば、前記遺伝子編集ノックインは外因性遺伝子が細胞のゲノムの少なくとも一部を置換できるようにさせることができる。前記遺伝子編集ノックインはCRISPR技術を利用し、部位特異的「標的ノックイン」を実現させることができる。
【0134】
本出願において、用語「トランスポゾン系」とは、通常、ドナーのポリヌクレオチド(たとえば、プラスミド)から切り出して標的(たとえば、細胞のゲノムDNA)に組み込むことができるシステムである。前記ポリヌクレオチドはトランスポザーゼによって標的に組み込まれてもよい。前記トランスポゾン系はトランスポザーゼを含んでもよい。前記トランスポザーゼは転移して転移の機能的核酸-タンパク質複合体を仲介することができる。前記トランスポゾン系はトランスポゾン末端を含んでもよい。前記トランスポゾン末端はトランスポザーゼまたはインテグラーゼとの複合体の形成に必要なヌクレオチド配列のみを示すものでもよい。前記トランスポゾン末端は二本鎖核酸DNAでもよい。ある場合、前記トランスポゾン末端は転移反応において、トランスポゾンと機能的核酸-タンパク質複合体を形成してもよい。
【0135】
本出願において、用語「ナノプラスミド」とは、通常、nanoplasmidで、すなわち、一つまたは複数の脂質に基づいたナノベクター、重合ナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤に基づいた乳液、樹状重合体、バッキーボール(buckyball)、ナノ糸、ウイルス様粒子、ペプチドまたはタンパク質に基づいた粒子(たとえば、アルブミンナノ粒子)および/またはナノ材料を用いた組成物(たとえば、脂質-重合体ナノ粒子)から生成するナノ粒子である。ある場合、前記ナノプラスミドの大きさは約100ナノメートル以下である。
【0136】
本出願において、用語「ミニサークルDNAベクター」とは、通常、親プラスミド(Parental Plasmid、PP)が部位特異的組み換えをした産物である。前記ミニサークルDNAベクターは超螺旋DNA分子である。組み換え酵素の作用下において、親プラスミドは二つの環状DNAに転換し、一方は大量の細菌骨格配列を含有し、ミニプラスミド(Miniplasmid、MP)と呼び、もう一方は標的遺伝子のみを含有する真核発現フレームワークで、すなわち、ミニサークルDNA(Minicircle、MC)である。前記ミニサークルDNAベクターは真核発現カセットからなるものでもよい。
【0137】
本出願において、用語「抗体」とは、通常、所定のタンパク質またはペプチドもしくはその断片に反応性のある免疫グロブリンである。抗体は任意の種類からの抗体でもよく、IgG、IgA、IgM、IgDおよびIgEを含むが、これらに限定されず、そして任意のサブタイプ(たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)からの抗体でもよい。抗体はたとえばIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4から選ばれる重鎖定常領域を有してもよい。抗体は、さらに、たとえばκまたはλから選ばれる軽鎖を有してもよい。本出願の抗体は任意の種由来のものでもよい。
【0138】
本出願において、用語「抗原結合断片」とは、通常、抗体分子のある部分で、当該部分はアミノ酸残基を含み、当該アミノ酸残基は抗原と相互作用して抗体に抗原に対する特異性および親和力を付与する。抗原結合断片の実例はFab、Fab’、F(ab)2、Fv断片、F(ab’)2、scFv、di-scFvおよび/またはdAbを含んでもよいが、これらに限定されない。本出願において、用語「Fab」とは、通常、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含有する断片で、そして軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第一定常ドメイン(CH1)を含有する。用語「Fab’」とは、通常、重鎖CH1ドメインのカルボキシ基末端に少量の残基(一つまたは複数のヒンジ領域からのシステインを含む)が付加してFabと異なる断片である。用語「F(ab’)2」とは、通常、Fab’二量体で、ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋で連結した2つのFab断片を含む抗体断片である。用語「Fv」とは、通常、完全な抗原認識と結合部位を含有する最小抗体断片である。ある場合、当該断片は一つの重鎖可変領域と一つの軽鎖可変領域が近接に非共有結合した二量体からなるものでもよい。用語「dsFv」とは、通常、ジスルフィド結合が安定したFv断片で、単一の軽鎖可変領域と単一の重鎖可変領域の間の結合がジスルフィド結合である。用語「aAb断片」とは、VHドメインからなる抗体断片である。本出願において、用語「scFv」とは、通常、抗体の一つの重鎖可変ドメインと一つの軽鎖可変ドメインが柔軟性ペプチドリンカーを介して共有結合してマッチしてなる1価分子である。このようなscFv分子は、NH2-VL-リンカー-VH-COOHまたはNH2-VH-リンカー-VL-COOHのような一般的な構造を有してもよい。
【0139】
本出願において、用語「キメラ抗原受容体」とは、通常、抗原に結合できる細胞外ドメインおよび少なくとも一つの細胞内ドメインを含む融合タンパク質である。CARはキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)の核心パートで、抗原(たとえば、腫瘍特異的抗原および/または腫瘍関連抗原)結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメインおよび細胞内シグナルドメインを含んでもよい。本出願において、前記CARは抗体の抗原(たとえば、CD19)特異性に基づいてT細胞受容体活性化細胞内ドメインと組み合わせることができる。遺伝修飾によってCARを発現するT細胞は標的抗原を発現する悪性細胞を特異的に認識および消滅することができる。CARおよびCAR-T細胞の記述は、たとえば、Sadelain M, Brentjens R, Rivi `ere I. The basicprinciples of chimeric antigen receptor design. Cancer Discov. 2013;3(4):388-398;Turtle CJ, Hudecek M, Jensen MC, Riddell SR. Engineered T cells for anti-cancer therapy. Curr Opin Immunol. 2012;24(5):633-639;Dotti G,Gottschalk S, Savoldo B, Brenner MK. Design and development of therapies using chimeric antigen receptor-expressing T cells. Immunol Rev. 2014;257(1):107-126 ;およびWO2013154760、WO2016014789を参照する。
【0140】
本出願において、用語「汎用型」とは、通常、本出願に記載の移植片対宿主病(GVHD)の問題を解決した細胞である。たとえば、前記汎用型T細胞(U-T細胞)は被験者の移植片対宿主病(GVHD)を起こすことがない。たとえば、前記汎用型T細胞(U-T細胞)はすべての被験者(またはホスト、宿主)に使用することができる。たとえば、前記汎用型T細胞(U-T細胞)は前記被験者にとって他家のT細胞でもよい。
【0141】
本出願において、用語「二重特異性抗体」とは、通常、1種または複数種の抗原における一つ以上のエピトープを認識する可変領域を有する抗体である。二重特異性抗体は、全長抗体、二つまたはそれ以上のVLおよびVHドメインを有する抗体、抗体断片、たとえば、Fab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、共有結合または非共有結合を介して連結した抗体断片を含むが、これらに限定されない。ある場合、前記二重特異性抗体は同様または異なる抗原における2種の異なるエピトープを認識することができる。ある場合、前記二重特異性抗体は2種の異なる抗原を認識することができる。
【0142】
本出願において、用語「抗原結合ドメイン」とは、通常、標的抗原に結合できるドメインである。抗原結合ドメインは特異的に抗原に結合できる部位と抗原受容体およびその断片、抗体またはその抗原結合断片を含んでもよい。抗原結合ドメインは腫瘍関連抗原に結合できるドメインでもよく、前記腫瘍関連抗原は、CD19、CD20、CD22、CD123、CD33/IL3Ra、CD138、CD33、BCMA、CS1、C-Met、EGFRvIII、CEA、 Her2、GD2、MAG3、GPC3およびNY-ESO-1を含むが、これらに限定されない。
【0143】
本出願において、用語「BiTE」とは、通常、二重特異性T細胞エンゲージャー(engager)である。前記BiTEは二つの抗原結合ドメインを有する単一のポリペプチド鎖分子でもよく、この二つの抗原結合ドメインの一方はT細胞抗原に結合し、かつもう一方は標的細胞の表面に存在する抗原に結合する(W005/061547;Baeuerle,Pら(2008)“BiTE(登録商標):A New Class Of Antibodies That Recruit T Cells Drugs of the Future 33:137-147; またはBargouら(2008) “Tumor Regression in Cancer Patients by Very Low Doses of a T Cell-Engaging Antibody/’Science 321:974-977を参照する)。
【0144】
本出願において、用語「約」とは、通常、本出願に係る指定値または数値範囲の30%以内、25%以内、20%以内、15%以内、10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内、0.5%以内または0.05%以内である。本出願において、前記「約」が二つ以上の数値のうちの一つ目の数値の前に置かれた場合、当該シリーズにおける各数値に適用される。
【0145】
発明の詳述
T細胞製品および他家T細胞
一つの側面では、本出願は、被験者(たとえば、必要な被験者)に施用するためのT細胞製品であって、少なくとも1種の他家T細胞を含み、前記他家T細胞は少なくとも1種の前記被験者の少なくとも1種のT細胞に外来のものと認識されるMHC分子を発現し、前記被験者の少なくとも1種の前記TCRが前記MHC分子を認識すると同種異系反応(alloreaction)を起こすT細胞製品を提供する。
【0146】
本出願において、前記少なくとも1種の他家T細胞の被験者の同種異系反応を起こす能力は除去または降下されていない。たとえば、前記T細胞製品において、少なくとも1種の被験者の同種異系反応を起こす能力を維持する他家T細胞を含んでもよい。
【0147】
本出願において、前記少なくとも1種の他家T細胞は免疫拒絶反応を低減または消失させる操作をされていない。
【0148】
本出願において、前記免疫拒絶反応を低減または消失させる操作は、他家T細胞のCD52遺伝子をノックアウトすることを含んでもよい。本出願において、前記免疫拒絶反応を低減または消失させる操作は、他家T細胞のHLA-I分子を改変することを含んでもよい。
【0149】
本出願において、前記少なくとも1種の他家T細胞における被験者の同種異系反応を起こしうる分子は修飾されていない。
【0150】
本出願において、前記被験者の同種異系反応を起こしうる分子は前記他家T細胞のMHC分子をできる含む。
【0151】
本出願において、前記被験者は腫瘍患者を含んでもよい。たとえば、前記腫瘍患者は本出願に係るT細胞製品によって腫瘍を治療すること(たとえば、腫瘍細胞の増殖を抑止すること、および/または腫瘍の疾患経過を緩和すること)、および/または、腫瘍の症状を緩和することができる。たとえば、本出願に係るT細胞製品は前記被験者に必要な細胞治療製品として有用である。
【0152】
本出願において、前記腫瘍は固形腫瘍および/または非固形腫瘍を含んでもよい。たとえば、前記腫瘍は肝臓癌を含んでもよい。
【0153】
本出願において、前記T細胞製品は前記被験者の自家由来のT細胞を含んでもよい。
【0154】
本出願において、前記被験者のT細胞はエフェクターT細胞、ナイーブT細胞、記憶T細胞、ヘルパーT細胞(Th)および/または細胞傷害性T細胞(CTL)を含んでもよい。
【0155】
本出願において、前記被験者のT細胞はTCRを発現することができる。たとえば、前記T細胞はTCRを発現することができ、前記TCRはMHC分子の認識に関与することができる。ある場合、前記被験者のT細胞はMHC分子を認識する能力を有してもよい。
【0156】
本出願において、前記他家T細胞の由来は前記被験者と異なる由来でもよい。本出願において、前記由来は同一の種の異なる個体を含んでもよい。たとえば、前記ドナーは健康なヒトでもよい。たとえば、前記ドナーは腫瘍疾患に罹患していないヒトでもよい。ある場合、前記ドナーは前記被験者と近縁関係がなくてもよい。ある場合、前記ドナーは前記被験者のHLAとマッチしなくてもよい。たとえば、前記由来は前記被験者と同一の種の別の異なる個体を含んでもよい。
【0157】
本出願において、前記他家T細胞は前記被験者と異なる2つ以上のドナー由来のものでもよい。たとえば、前記被験者と同一の種の異なる少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたはそれ以上のドナー由来のものでもよい。
【0158】
本出願において、前記他家T細胞は1種の前記被験者の少なくとも1種のT細胞に外来のものと認識されるMHC分子を発現してもよい。本出願において、前記T細胞製品は前記他家T細胞のMHC(ヒトHLA)マッチに何ら要求もない。ある場合、前記T細胞製品は前記他家T細胞の前記ドナーのMHC(ヒトHLA)マッチの状況および/またはドナーの数に何ら要求もない。本出願に係るT細胞製品は前記ドナーの由来を拡大することができる。
【0159】
本出願において、前記他家T細胞は下記群から選ばれるバイオマーカー(Biomarker)を有してもよい:約0.5%以下(たとえば、約0.4%以下、約0.3%以下、約0.2%以下、約0.1%以下、約0.05%以下またはそれ以下でもよい)のCD3、約50%-約100%のCD8(たとえば、約50%-約95%、約50%-約90%、約50%-約85%、約50%-約80%、約55%-約100%、約60%-約100%または約55%-約95%でもよい)、および約0%-約40%のCD4(たとえば、約0%-約40%、約0%-約35%、約0%-約30%、約0%-約25%、約5%-約40%または約10%-約40%でもよい)。本出願において、前記の比率はフローサイトメトリーによって検出される比率の範囲でもよい。本出願において、前記他家T細胞は基本的にCD3を発現しなくてもよい。たとえば、前記他家T細胞において、約0.5%以下(たとえば、約0.4%以下、約0.3%以下、約0.2%以下、約0.1%以下、約0.05%以下またはそれ以下)の比率の細胞がCD3を発現してもよい。
【0160】
本出願において、前記他家T細胞は2種以上(たとえば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10またはそれ以上でもよい)の前記被験者の少なくとも1種(たとえば、少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、少なくとも10種またはそれ以上)のT細胞に外来と認識されるMHC分子を発現してもよい。
【0161】
本出願において、前記MHC分子はMHC Iおよび/またはMHC IIを含んでもよい。
【0162】
本出願において、前記他家T細胞はエフェクターT細胞、ナイーブT細胞、記憶T細胞、ヘルパーT細胞(Th)および/または細胞傷害性T細胞(CTL)を含んでもよい。本出願において、前記他家T細胞はヘルパーT細胞(Th)および/または細胞傷害性T細胞(CTL)を含んでもよい。
【0163】
本出願において、前記被験者の少なくとも1種の前記TCRは前記MHC分子を認識すると同種異系反応(alloreaction)を起こすことができる。たとえば、前記被験者の少なくとも1種の前記TCRは前記他家T細胞における少なくとも1つの分子を本出願に係る「外来」のMHC分子に属すると認識することができる。たとえば、前記外来と認識されると、前記被験者は前記の外来のMHC分子の存在によって前記同種異系反応が生じる。
【0164】
本出願において、前記同種異系反応は前記被験者の免疫反応の活性化を含んでもよい。たとえば、前記同種異系反応はTH-1免疫反応を含んでもよい。本出願において、前記被験者の少なくとも1種の前記TCRは前記MHC分子を認識して前記被験者のTH-1免疫反応を促進させることができる。前記TH-1免疫反応は前記被験者における腫瘍細胞の増殖の抑制、および/または腫瘍の疾患経過の緩和を促進させることができる。
【0165】
本出願において、前記同種異系反応は前記他家T細胞の前記被験者において移植片対宿主病(GVHD)を起こすリスクを含んでもよい。たとえば、前記他家T細胞は外来の細胞として前記被験者において移植片対宿主病(GVHD)を起こすリスクがある。しかしながら、前記他家T細胞は改造によって当該リスクを低下させることができる。
【0166】
たとえば、前記のT細胞製品は前記他家T細胞の前記被験者において移植片対宿主病(GVHD)を起こすリスクを低下させる能力を有することが可能である。
【0167】
本出願において、工学的改造されていない前記他家T細胞と比較すると、前記工学的改造された前記他家T細胞では、前記他家T細胞の前記被験者において移植片対宿主病(GVHD)を起こすリスクが低下してもよい。たとえば、前記工学的改造は前記他家T細胞におけるTCRの構造および/または活性を破壊することで、前記他家T細胞の前記被験者において前記GVHDを起こすリスクを低下させることができる。
【0168】
本出願において、前記工学的改造は、前記他家T細胞におけるCD3に関連する遺伝子、TRAC遺伝子および/またはTRBC遺伝子の発現および/または活性を下方調節する工程を含んでもよい。
【0169】
本出願において、前記CD3に関連する遺伝子は、CD3のγ鎖、CD3のδ鎖、CD3のε鎖、CD3のζ鎖およびCD3のη鎖からなる群から選ばれるタンパク質をコードできる遺伝子を含んでもよい。
【0170】
本出願において、野生型の前記他家T細胞と比較すると、前記工学的改造され前記他家T細胞におけるCD3に関連する遺伝子、TRAC遺伝子および/またはTRBC遺伝子の発現および/または活性が下方調節されてもよい。
【0171】
本出願において、前記CD3に関連する遺伝子の発現および/または活性の工学的改造により、CD3複合体の形成を抑止することおよび/またはCD3複合体の活性を下方調節することができる。
【0172】
本出願において、前記工学的改造は遺伝子突然変異および/または遺伝子サイレンシングを含んでもよい。たとえば、遺伝子突然変異および/または遺伝子サイレンシング(たとえば、遺伝子編集)によって前記他家T細胞におけるCD3に関連する遺伝子、TRAC遺伝子および/またはTRBC遺伝子の発現が下方調節されるようにさせることができる。
【0173】
本出願において、前記工学的改造は、前記他家T細胞に、アンチセンスRNA、siRNA、shRNA、CRISPR/Cas系、RNA編集系、RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、Mega-TALヌクレアーゼ、TALENs 、Sleeping beautyトランスポゾン系およびメガヌクレアーゼ(Meganucleases)からなる群から選ばれる1種または複数種の物質を施用することを含んでもよい。
【0174】
本出願において、前記工学的改造はヌクレアーゼを使用してもよく、当該ヌクレアーゼが本出願に係る工学的改造を実現させればよい。
【0175】
本出願において、前記工学的改造は、前記他家T細胞にCRISPR/Cas系を施用することを含んでもよい。
【0176】
本出願において、前記工学的改造は、前記他家T細胞に前記CD3に関連する遺伝子、TRAC遺伝子および/またはTRBC遺伝子のエクソン部分を標的とするsgRNAを施用することを含んでもよい。
【0177】
本出願において、少なくとも1種の前記他家T細胞は汎用型T細胞(U-T細胞)でもよい。たとえば、前記他家T細胞は汎用型T細胞として異なる前記必要な被験者への施用に適用されてもよい。たとえば、前記他家T細胞は汎用型T細胞として、前記必要な被験者と異なる任意のほかの由来のものでもよい。ある場合、前記他家T細胞は汎用型T細胞として、さらに汎用型CAR-T細胞に製造されてもよい。
【0178】
本出願において、少なくとも1種の前記他家T細胞は修飾された後、抗体およびその抗原結合断片、キメラ抗原受容体(CAR)、サイトカインおよび/またはケモカインを発現することができる。
【0179】
本出願において、少なくとも1種の前記他家T細胞は修飾された後、抗体およびその抗原結合断片、キメラ抗原受容体(CAR)、サイトカインおよび/またはケモカインをコードする核酸を含んでもよい。
【0180】
本出願において、前記修飾は前記他家T細胞に前記核酸を形質移入することを含んでもよい。
【0181】
本出願において、前記形質移入はウイルス形質移入および/または非ウイルス形質移入を含んでもよい。たとえば、ウイルスで本出願に係る他家T細胞の修飾を行うことができる。たとえば、前記非ウイルス形質移入はプラスミドを使用してもよい。
【0182】
本出願において、前記プラスミドは環状プラスミド、スーパーコイルプラスミドまたは線形プラスミドでもよい。たとえば、前記プラスミドは環状プラスミドまたはスーパーコイルプラスミドでもよい。
【0183】
本出願において、前記プラスミドはDNAプラスミドでもよい。たとえば、前記DNAプラスミドは二本鎖で閉環のDNA分子でもよい。たとえば、前記DNAプラスミドは二本鎖で線形のDNA分子でもよい。本出願において、前記プラスミドは人工的に合成されたものでもよい。
【0184】
本出願において、前記プラスミドは細菌から生成するプラスミドを含んでもよい。本出願において、前記プラスミドはナノプラスミド(Nanoplasmid)および/またはミニサークルDNA(minicircle DNA)ベクターを含んでもよい。
【0185】
本出願において、前記プラスミドはssDNAおよび/またはdsDNAを含んでもよい。本出願において、前記ssDNAおよび/またはdsDNAは人工的に合成されたものでもよい。
【0186】
本出願において、前記プラスミドは抗体およびその抗原結合断片、キメラ抗原受容体(CAR)、サイトカインおよび/またはケモカインをコードする核酸を含んでもよい。前記核酸はssDNAおよび/またはdsDNAを含んでもよい。本出願において、前記核酸分子は人工的に合成されたものでもよい。
【0187】
本出願において、前記形質移入は安定形質移入および/または一過性形質移入を含んでもよい。
【0188】
本出願において、前記一過性形質移入はエレクトロポレーションを含んでもよい。たとえば、前記一過性形質移入は前記核酸が前記他家T細胞に入って発現されるようにさせることができる。本出願において、前記一過性形質移入はmRNA形質移入を含んでもよい。たとえば、前記一過性形質移入は前記核酸(mRNA)がエレクトロポレーションによって前記他家T細胞に導入されて発現されるようにさせることができる。
【0189】
本出願において、前記安定形質移入はトランスポゾン系を使用するものおよび/または遺伝子編集ノックインを使用するものを含む。
【0190】
本出願において、前記遺伝子編集の方法は、CRISPR/Cas系、RNA編集系ADAR、RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、Mega-TALヌクレアーゼ、TALENsおよびメガヌクレアーゼ(Meganucleases)からなる群から選ばれる1種または複数種でもよい。
【0191】
本出願において、前記遺伝子編集の方法は当業者に既知のものでもよく、遺伝子編集の目的が達成できれば、ある具体的な方法に限定されない。本出願において、前記遺伝子編集の方法は、CRISPR/Cas系、RNA編集系ADAR、RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、Mega-TALヌクレアーゼ、TALENsおよびメガヌクレアーゼ(Meganucleases)からなる群から選ばれる1種または複数種でもよい。たとえば、前記遺伝子編集の方法はCRISPR/Cas系を使用してもよい。
【0192】
本出願において、前記遺伝子編集は遺伝子編集ノックアウトおよび/または遺伝子編集ノックインを含んでもよい。たとえば、前記遺伝子編集は遺伝子編集ノックインを含んでもよい。たとえば、CRISPR/Cas系によって前記遺伝子編集ノックインを行うことができる。
【0193】
たとえば、前記CRISPR-CAS系は一種類のクラスター化され、規則的に間隔があいた短い回文構造の繰り返し配列(CRISPRs)およびいくつかの機能関連タンパク質(CRISPR-associated、Cas)を含んでもよい。ここで、前記Casタンパク質のコード遺伝子はCas9、Cas1、Cas2およびCsn2を含んでもよい。たとえば、Cas9でもよい。前記CRISPR-CAS系(たとえば、CRISPR/Cas9系)はDNA分子に標的への切断の特異性を有することが可能である。
【0194】
たとえば、前記遺伝子編集はCasタンパク質を細胞における特異的なDNA配列にターゲッティングさせることによってDNA配列の挿入を行う過程でもよい。前記遺伝子編集ノックインは、Casタンパク質(たとえば、Cas 9タンパク質)が仲介する前記ドナープラスミドにおける前記ノックインしようとする外因性遺伝子をその標的となる細胞における特異的なDNA配列と相同組換えをさせる過程でもよい。
【0195】
本出願において、前記プラスミドは前記遺伝子編集ノックインにおいてドナープラスミドとされてもよい。たとえば、前記ドナープラスミドは二本鎖DNAまたは一本鎖DNA分子でもよい。前記ドナープラスミドはHDR修復機構のドナーの鋳型としてもよい。
【0196】
本出願において、前記ドナープラスミドはホモロジーアームを含んでもよい。たとえば、前記ホモロジーアームは遺伝子編集ノックインしようとする外因性遺伝子またはその断片の末端と相同でもよい。たとえば、前記ドナープラスミドは5’ホモロジーアームおよび/または3’ホモロジーアームを含んでもよい。たとえば、前記外因性遺伝子の核酸分子またはその断片の5’末端および/または3’末端はそれぞれ形質移入しようとする細胞のゲノムDNAにおけるノックインしようとする位置の5’末端および/または3’末端の核酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の同一性を有する核酸配列でもよい。たとえば、前記ホモロジーアームは100-1000bpの大きさでもよい。たとえば、前記ホモロジーアームは約100bp-1000bpでもよく、約150bp-1000bpでもよく、約200bp-1000bpでもよく、約300bp-1000bpでもよく、約400bp-1000bpでもよく、約800bp-1000bpでもよい。
【0197】
本出願において、前記プラスミドを含む形質移入混合物では、微生物のゲノム由来の核酸分子またはその断片の含有量は前記形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約10%(w/w)以下(たとえば、約10%(w/w)以下、約9%(w/w)以下、約8%(w/w)以下、約7%(w/w)以下、約6%(w/w)以下、約5%(w/w)以下、約4%(w/w)以下、約3%(w/w)以下、約2%(w/w)以下、約1%(w/w)以下、約9‰(w/w)以下、約8‰(w/w)以下、約7‰(w/w)以下、約6‰(w/w)以下、約5‰(w/w)以下、約4‰(w/w)以下、約3‰(w/w)以下、約2‰(w/w)以下、約1‰(w/w)以下、約0.1‰(w/w)以下、約0.01‰(w/w)以下、約0.001‰(w/w)以下またはそれ以下でもよい)を占めてもよい。
【0198】
本出願において、前記微生物のゲノム由来の核酸分子の断片の大きさは少なくとも約48kbの大きさ(たとえば、少なくとも約50kb、少なくとも約100kb、少なくとも約150kb、少なくとも約200kb、少なくとも約250kb、少なくとも約300kb、少なくとも約350kb、少なくとも約400kb、少なくとも約450kb、少なくとも約500kb、少なくとも約600kb、少なくとも約700kb、少なくとも約800kb、少なくとも約900kb、少なくとも約1Mb、少なくとも約2Mb、少なくとも約3Mb、少なくとも約4Mb、少なくとも約5Mb、少なくとも約6Mb、少なくとも約7Mb、少なくとも約8Mb、少なくとも約9Mb、少なくとも約10Mb、少なくとも約20Mb、少なくとも約50Mb、少なくとも約100Mb、少なくとも約200Mbまたはそれ以上)でもよい。
【0199】
本出願において、前記プラスミドを含む形質移入混合物では、前記少なくとも約48kbの大きさ(たとえば、少なくとも約50kb、少なくとも約100kb、少なくとも約150kb、少なくとも約200kb、少なくとも約250kb、少なくとも約300kb、少なくとも約350kb、少なくとも約400kb、少なくとも約450kb、少なくとも約500kb、少なくとも約600kb、少なくとも約700kb、少なくとも約800kb、少なくとも約900kb、少なくとも約1Mb、少なくとも約2Mb、少なくとも約3Mb、少なくとも約4Mb、少なくとも約5Mb、少なくとも約6Mb、少なくとも約7Mb、少なくとも約8Mb、少なくとも約9Mb、少なくとも約10Mb、少なくとも約20Mb、少なくとも約50Mb、少なくとも約100Mb、少なくとも約200Mbまたはそれ以上)の核酸分子またはその断片の含有量は形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約10%(w/w)以下(たとえば、約10%(w/w)以下、約9%(w/w)以下、約8%(w/w)以下、約7%(w/w)以下、約6%(w/w)以下、約5%(w/w)以下、約4%(w/w)以下、約3%(w/w)以下、約2%(w/w)以下、約1%(w/w)以下、約9‰(w/w)以下、約8‰(w/w)以下、約7‰(w/w)以下、約6‰(w/w)以下、約5‰(w/w)以下、約4‰(w/w)以下、約3‰(w/w)以下、約2‰(w/w)以下、約1‰(w/w)以下、約0.1‰(w/w)以下、約0.01‰(w/w)以下、約0.001‰(w/w)以下またはそれ以下でもよい)を占めてもよい。
【0200】
本出願において、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片の含有量は形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約10%以下、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下、約9‰以下、約8‰以下、約‰以下、約6‰以下、約5‰以下、約4‰以下、約3‰以下、約2‰以下、約1‰以下、約0.1‰以下、約0.01‰以下、約0.001‰以下またはそれ以下を占めてもよい。たとえば、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片の含有量は形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約2%以下を占めてもよく、形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約5‰以下を占めてもよく、形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約1‰以下を占めてもよい。
【0201】
本出願において、前記少なくとも約48kbの大きさ(たとえば、少なくとも約50kb、少なくとも約100kb、少なくとも約150kb、少なくとも約200kb、少なくとも約250kb、少なくとも約300kb、少なくとも約350kb、少なくとも約400kb、少なくとも約450kb、少なくとも約500kb、少なくとも約600kb、少なくとも約700kb、少なくとも約800kb、少なくとも約900kb、少なくとも約1Mb、少なくとも約2Mb、少なくとも約3Mb、少なくとも約4Mb、少なくとも約5Mb、少なくとも約6Mb、少なくとも約7Mb、少なくとも約8Mb、少なくとも約9Mb、少なくとも約10Mb、少なくとも約20Mb、少なくとも約50Mb、少なくとも約100Mb、少なくとも約200Mbまたはそれ以上)の核酸分子またはその断片は前記プラスミドと異なる核酸分子に存在する。たとえば、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片は形質移入混合物(前記形質移入混合物はプラスミドを含んでもよい)において遊離している。たとえば、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片は前記プラスミドから遊離している。前記遊離は分離して、前記プラスミドに依存しない様態で存在してもよい。
【0202】
本出願において、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片は微生物由来のものでもよい。たとえば、前記微生物は、細菌、真菌、放線菌、マイコプラズマ、クラミジア、リケッチアおよびスピロヘータからなる群から選ばれる1種または複数種でもよい。
【0203】
本出願において、前記微生物はグラム陰性菌を含んでもよい。たとえば、前記微生物はベクターの骨格ベクターの製造に適する微生物でもよい。たとえば、前記微生物は大腸菌を含んでもよい。
【0204】
本出願において、前記プラスミド(たとえば、線形プラスミド)は、本出願の前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片(たとえば、線形の核酸分子またはその断片でもよい)の含有量および/または本出願の前記微生物のゲノム由来の核酸分子またはその断片(たとえば、線形の核酸分子またはその断片でもよい)の含有量が本出願に記載の条件に満足するように、(たとえば、デオキシリボヌクレアーゼ、たとえば、DNAエクソヌクレアーゼ、たとえばDNAエクソヌクレアーゼExonuclease Vで)処理してもよい。本出願において、前記処理は環状構造を有する核酸分子に影響しなくてもよい。
【0205】
本出願において、前記プラスミドはデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)で処理されていてもよい。たとえば、前記DNase処理を経た後、前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、微生物のゲノム由来の核酸分子またはその断片の含有量が前記形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約10%以下を占めてもよい。また、たとえば、前記DNase処理を経た後、前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、前記大きさが少なくも約48kbの核酸分子またはその断片の含有量が形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約10%以下を占めてもよい。
【0206】
本出願において、前記形質移入混合物における前記核酸分子またはその断片の含有量は降下されてもよい。本出願において、前記降下とは前記形質移入混合物における前記核酸分子またはその断片の含有量を本出願に係る方法の要求に合うように降下させることでもよい。
【0207】
本出願において、前記降下は前記形質移入混合物を精製することを含んでもよい。すなわち、前記精製により、前記形質移入混合物における前記核酸分子またはその断片の含有量を本出願に係る方法の要求に合うように降下させることができる。
【0208】
本出願において、前記精製により、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片、ならびに/あるいは、微生物のゲノム由来の核酸分子またはその断片を除去してもよい。たとえば、前記精製は、当業者によく知られているDNAを精製する方法を利用し、前記形質移入混合物における前記核酸分子またはその断片の含有量を降下させることを含んでもよい。本出願において、前記精製は前記プラスミドのDNAの完全性および/または活性に影響しなくてもよい。本出願において、前記降下は、DNA酵素、SDS、TX-100、CTABおよび塩化セシウム-臭化エチジウムからなる群から選ばれる試薬で前記形質移入混合物を精製することを含んでもよい。たとえば、前記降下はDNA酵素を使用してもよい。たとえば、DNA酵素により、前記形質移入混合物における前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片の含有量を本出願に係る方法の要求に合うように降下させること、ならびに/あるいは、前記微生物のゲノム由来の核酸分子またはその断片の含有量を本出願に係る方法の要求に合うように降下させることができる。たとえば、前記DNA酵素は前記環状プラスミドのDNAの完全性および/または活性に影響しなくてもよい。
【0209】
本出願において、前記降下は、本出願に係るプラスミドのDNA人工合成およびHPLCによる本出願に係る形質移入混合物の検出からなる群から選ばれる方法を使用することを含んでもよい。たとえば、プラスミドのヌクレオチド配列からDNA人工合成を行うことで、得られるプラスミドが当該プラスミドのヌクレオチド配列のみを含むようにさせることができる。たとえば、HPLCによって本出願に係る形質移入混合物を検出し、HPLCの検出結果から、前記プラスミドの相応する特徴ピークを選択し、当該特徴ピークの相応する画分を収集し、得られるプラスミドが当該プラスミドのヌクレオチド配列のみを含むようにさせることができる。
【0210】
本出願において、前記抗体またはその抗原結合断片は二重特異性抗体を含んでもよい。
【0211】
本出願において、前記抗体またはその抗原結合断片は二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)を含んでもよい。
【0212】
本出願において、前記CARは抗原結合ドメイン、ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、共刺激ドメインおよびシグナル伝達ドメインを含んでもよい。たとえば、前記CARは抗原結合ドメイン、ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、共刺激ドメインおよびシグナル伝達ドメインからなるものでもよい。
【0213】
本出願において、前記CARの抗原結合ドメインは特異的に一つまたは複数の腫瘍関連抗原に結合することができる。
【0214】
本出願において、前記CARの抗原結合ドメインは特異的にGPC3およびCD73に結合することができる。
【0215】
本出願において、前記CARの抗原結合ドメインは特異的にGPC3およびCD147に結合することができる。
【0216】
本出願において、前記抗原結合ドメインは特異的に腫瘍関連抗原(TAA)に結合することができる。
【0217】
本出願において、前記抗原結合ドメインは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、単一ドメイン抗体、ナノ抗体およびその抗原結合断片からなる群から選ばれてもよい。
【0218】
本出願において、前記ヒンジ領域は下記タンパク質から選ばれるポリペプチド由来のものを含んでもよい:CD28、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-G、HLA-DQ、HLA-DP、HLA-DR、CD8、Fc、IgG、IgD、4-1BB、CD4、CD27、CD7およびPD1。
【0219】
本出願において、前記膜貫通ドメインは下記タンパク質から選ばれるポリペプチド由来のものを含んでもよい:CD27、CD7、PD1、TRAC、TRBC、CD28、CD3e、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137およびCD154。
【0220】
本出願において、前記共刺激ドメインは下記タンパク質から選ばれるポリペプチド由来のものを含んでもよい:CD28、CD137、CD27、CD2、CD7、CD8、OX40、CD226、DR3、SLAM、CDS、ICAM-1、NKG2D、NKG2C、B7-H3、2B4、FcεRIγ、BTLA、GITR、HVEM、DAP10、DAP12、CD30、CD40、CD40L、TIM1、PD-1、LFA-1、LIGHT、JAML、CD244、CD100、ICOSおよびCD83のリガンド。
【0221】
本出願において、前記シグナル伝達ドメインは下記タンパク質から選ばれるポリペプチド由来のものを含んでもよい:CD3ζ、FcRγ(FCER1G)、FcγRIIa、FcRβ(FcεR1b)、 CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD79a、CD79b、DAP10、DAP12、Igα受容体、Igβ受容体、BLV gp30(bovine leukemia virus gp30、牛白血病ウイルスgp30)、EBV(Ep-stein-Barr virus、エプスタイン・バール・ウイルス)LMP2A 、サル免疫不全ウイルス(Simian Immunodeficiency Virus)、PBj14 Nefおよび免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)。
【0222】
本出願において、前記サイトカインは、IL-1、IL-7、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17A、IL-17F、IL-18、IL-21、IL-23、TNFα、CXCL1、CD38、CD40、CD69、IgG、IP-10、L-17A、 MCP-lおよびPGE2からなる群から選ばれてもよい。ある場合、前記他家T細胞は標的細胞(たとえば、腫瘍細胞)とともにインキュベートした後、サイトカイン(たとえば、IL-10、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8および/またはIL-10)を生成してもよい。たとえば、前記修飾された他家T細胞は上記自己発現できるサイトカインの種類以外のサイトカインを発現することができる。
【0223】
本出願において、前記ケモカインは、CCL1-CCL28およびCXCL1-CXCL17からなる群から選ばれてもよい。
【0224】
本出願において、少なくとも1種の前記他家T細胞は形質移入された後、1種のキメラ抗原受容体(CAR)を発現および/または含有することができる。本出願において、少なくとも1種の前記他家T細胞は形質移入された後、1種の二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)を発現および/または含有することができる。
【0225】
本出願において、少なくとも1種の前記他家T細胞は形質移入を経た後、少なくとも1種(たとえば、少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種またはそれ以上)の前記核酸を含むプラスミドを含んでもよい。
【0226】
本出願において、少なくとも1種の前記他家T細胞は2種以上のタンパク質を発現してもよい。
【0227】
本出願において、少なくとも1種の前記他家T細胞は形質移入された後、1種のキメラ抗原受容体、ならびに1種または複数種のサイトカインを発現および/または含有することができる。たとえば、少なくとも1種の前記他家T細胞は形質移入された後、1種のキメラ抗原受容体、ならびにIL15およびIL-21を発現および/または含有することができる。
【0228】
たとえば、前記CARをコードする核酸分子は配列番号2で示される核酸配列を含んでもよい。
【0229】
たとえば、前記CARをコードする核酸分子は配列番号11または12で示される核酸配列を含んでもよい。
【0230】
本出願において、前記少なくとも1種の他家T細胞の前記T細胞製品における含有量は約0.5%、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%または約100%でもよい。
【0231】
本出願において、少なくとも2種の異なる前記キメラ抗原受容体(CAR)および/またはサイトカインを発現する前記他家T細胞が所定の比率で混合されてもよい。
【0232】
ある場合、前記必要な被験者の治療目的により、前記T細胞製品は前記他家T細胞の混合物でもよい。たとえば、一つの側面では、前記他家T細胞は少なくとも一つの前記ドナー由来のものでもよい。
【0233】
たとえば、もう一つの側面では、少なくとも1種の前記他家T細胞は修飾された後、前記被験者に必要な少なくとも1種のタンパク質を発現することができる。ある場合、少なくとも1種の前記他家T細胞は修飾された後、1種のタンパク質、たとえば、1種のキメラ抗原受容体を発現することができる。ある場合、少なくとも1種の前記他家T細胞は修飾された後、同種の前記他家T細胞が少なくとも2種(たとえば、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種またはそれ以上)のタンパク質を発現するようにさせることができる。たとえば、1種の前記他家T細胞は1種のキメラ抗原受容体を発現すると同時に、1種のサイトカインを発現することができる。また、たとえば、1種の前記他家T細胞種は1種のキメラ抗原受容体を発現すると同時に、1種のサイトカインおよび1種の二重特異性抗体を発現することができる。ある場合、前記T細胞製品はこれらの異なる種類の、異なる数のタンパク質を発現する前記他家T細胞を含んでもよい。たとえば、前記被験者の目的に応じ、前記T細胞製品において、これらの異なる前記ドナー由来の、異なる種類の、異なる数のタンパク質を発現できる前記他家T細胞を、所定の比率で混合することができる。ある場合、前記被験者の目的に応じ、異なる種類の、異なる由来の前記他家T細胞を「カスタマイズ」し、そしてこれらを必要な比率で混合することができる。
【0234】
ある場合、前記他家T細胞は本出願に係る工学的改造を経て、前記被験者において移植片対宿主病(GVHD)を起こすリスクが低下した。これに基づき、少なくとも1種の前記他家T細胞はさらに修飾された後、少なくとも1種のタンパク質、たとえば、1種のキメラ抗原受容体を発現することができる。前記他家T細胞が汎用型T細胞であることに基づき、ある場合、少なくとも1種の前記他家T細胞は修飾された後、同種の前記他家T細胞が少なくとも2種(たとえば、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種またはそれ以上)のタンパク質を発現するようにさせることができる。たとえば、1種の汎用型前記他家T細胞は1種のキメラ抗原受容体を発現すると同時に、1種のサイトカインを発現することができる。また、たとえば、1種の汎用型前記他家T細胞種は1種のキメラ抗原受容体を発現すると同時に、1種のサイトカインおよび1種の二重特異性抗体を発現することができる。ある場合、前記T細胞製品はこれらの異なる種類の、異なる数のタンパク質を発現する汎用型前記他家T細胞を含んでもよい。たとえば、前記被験者の目的に応じ、前記T細胞製品において、これらの異なる前記ドナー由来の、異なる種類の、異なる数のタンパク質を発現できる汎用型前記他家T細胞を、所定の比率で混合することができる。ある場合、前記被験者の目的に応じ、異なる種類の、異なる由来の汎用型前記他家T細胞を「カスタマイズ」し、そしてこれらを必要な比率で混合してもよい。
【0235】
ある場合、まず、異なるドナー由来の前記他家T細胞(たとえば、本出願に係る工学的改造された他家T細胞)を混合し、これらの混合した細胞にそれぞれ少なくとも1種のタンパク質をコードする核酸を形質移入(たとえば、エレクトロポレーション、たとえば、mRNAエレクトロポレーション)してもよい。たとえば、これらの混合した細胞にキメラ抗原受容体をコードする核酸分子、および/またはサイトカインをコードする核酸を形質移入でもよい。その後、これらの形質移入した細胞を、前記被験者の目的に応じ、必要な比率で混合してもよい。
【0236】
ある場合、まず、前記他家T細胞(たとえば、本出願に係る工学的改造された他家T細胞)にそれぞれ少なくとも1種のタンパク質をコードする核酸分子を形質移入(たとえば、エレクトロポレーション、たとえば、mRNAエレクトロポレーション)してもよい。たとえば、前記他家T細胞にキメラ抗原受容体をコードする核酸分子、および/またはサイトカインをコードする核酸分子を形質移入でもよい。その後、これらの形質移入した細胞(たとえば、少なくとも2つのドナー由来のものでもよい)を、前記被験者の目的に応じ、必要な比率で混合してもよい。
【0237】
本出願において、前記T細胞製品は前記被験者由来のT細胞(すなわち、「自家」T細胞)を含んでもよい。ある場合、前記被験者由来のT細胞は修飾され、前記被験者に必要な少なくとも1種のタンパク質を発現することができる(たとえば、前記キメラ抗原受容体を発現することができる)。
【0238】
前記被験者由来の自家T細胞と比較すると、本出願に係るT細胞製品は前記被験者においてより激しい免疫反応を起こすことができる。
【0239】
本出願において、前記T細胞製品の前記他家T細胞が修飾された後のタンパク質を発現するレベルは前記他家T細胞の由来によって影響されることがない。
【0240】
本出願において、前記T細胞製品は、さらに、ほかの種類のT細胞を含んでもよい。本出願において、前記T細胞製品は前記被験者の自家由来のT細胞を含んでもよい。本出願において、前記T細胞製品は、さらに、1種または複数種のほかのT細胞を含んでもよい。たとえば、前記ほかのT細胞は修飾されたT細胞でもよい。たとえば、前記ほかの修飾されたT細胞は相応する修飾されていないT細胞と比較すると、生体の同種異系反応を起こす能力が低下した。たとえば、前記ほかの修飾されたT細胞は相応する修飾されていないT細胞と比較すると、MHC分子の発現および/または活性が低下した。たとえば、前記ほかのT細胞は他家のものでもよい。
【0241】
たとえば、前記修飾された他家T細胞はMHCクラスIを突然変異させたT細胞を含んでもよい。たとえば、前記修飾されたT細胞はMHCクラスIがノックアウトされたT細胞を含んでもよい。たとえば、前記修飾されたT細胞はMHCクラスIがノックアウトされたが、同時にHLA-EまたはHLA-Gを発現するT細胞を含んでもよい。たとえば、前記修飾されたT細胞は任意の既存技術で既知のUCARTを含んでもよい。たとえば、前記修飾されたT細胞はCD52遺伝子がノックアウトされたT細胞を含んでもよい。
【0242】
薬物組成物およびその使用
もう一つの側面では、本出願は、本出願に記載のT細胞製品と、薬学的に許容される補助剤とを含む薬物組成物を提供する。
【0243】
本出願において、前記補助剤は担体を含んでもよく、たとえば、前記担体はリン酸塩緩衝塩溶液、水、乳剤(たとえば、油/水乳剤)、様々な保湿剤、無菌溶液、リポソームを含んでもよい。
【0244】
本出願において、前記補助剤は注射に適するものでもよい。
【0245】
本出願において、前記補助剤は腫瘍内注射および/または全身注射に適するものでもよい。たとえば、前記補助剤は無菌の水含有または水非含有溶液、懸濁液、および乳剤を含んでもよい。水非含有溶媒は、たとえば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(たとえば、オリーブオイル)、および注射可能な有機エステル(たとえば、オレイン酸エチル)でもよい。
【0246】
本出願において、前記補助剤は、防腐剤およびほかの添加剤、たとえば、抗微生物、抗酸化、キレート剤および/または不活性ガスなどを含んでもよい。
【0247】
本出願において、前記薬物組成物の投与量は関与する医者および臨床の要素によって決まる。既存の医学技術で公知のように、任意の患者に対する投与量は、患者の体格、身体の表面積、年齢、投与する特定の化合物、性別、投与時間および経路、総合的な健康状況、ならびに投与するほかの薬物を含む多くの要素によって決まる。
【0248】
ある場合、前記薬物組成物はほかの薬物活性成分を含んでもよい。前記薬物活性成分の種類および/または含有量は前記被験者の状況によって決まる。
【0249】
もう一つの側面では、本出願は、本出願に記載のT細胞製品と、注射用器材とを含むキットを提供する。
【0250】
たとえば、前記注射用器材は注射器を含んでもよい。前記腫瘍内注射は、まず、注射器の針を腫瘍外の皮下に入れ、さらに腫瘍内に入れてもよい。前記腫瘍内注射は多点注射を含んでもよい。
【0251】
もう一つの側面では、本出願は、薬物の製造における本出願に記載のT細胞製品、本出願に記載の薬物組成物および/または本出願に記載のキットの使用であって、前記薬物は腫瘍の予防、緩和、治療に用いられる使用を提供する。
【0252】
本出願において、前記腫瘍は固形腫瘍を含む。たとえば、前記腫瘍は肺癌を含んでもよい。
【0253】
本出願において、前記薬物は注射に適するように調製される。
【0254】
本出願において、前記薬物は腫瘍内注射に適するように調製される。
【0255】
もう一つの側面では、本出願は、腫瘍微環境を改善する方法であって、被験者に本出願に記載のT細胞製品、本出願に記載の薬物組成物および/または本出願に記載のキットを施用する工程を含む方法を提供する。
【0256】
もう一つの側面では、本出願は、腫瘍を予防、緩和、治療する方法であって、被験者に本出願に記載のT細胞製品、本出願に記載の薬物組成物および/または本出願に記載のキットを施用する工程を含む方法を提供する。
【0257】
本出願において、前記施用は注射を含む。
【0258】
本出願において、前記施用は腫瘍内注射を含む。
【0259】
本出願において、前記施用は1回以上の腫瘍内注射を含む。前記腫瘍内注射の回数は前記被験者の状況によって決まる。
【0260】
もう一つの側面では、本出願は、腫瘍の予防、緩和、治療に用いられる、本出願に記載のT細胞製品、本出願に記載の薬物組成物および/または本出願に記載のキットを提供する。
【0261】
何らの理論にも制限されず、下記における実施例は本出願の発明の各技術方案を説明するためのものに過ぎず、本出願の発明の範囲を制限するためのものではない。
実施例
【実施例1】
【0262】
他家T細胞を工学的改造および修飾することによって有効にCD3陽性細胞をノックアウトすることができる。
【0263】
1.1 他家T細胞を工学的改造する
(1)Dynal beadsとCD3陽性細胞をX-vivo15+20U/ml培養液において1:1の比率で活性化させた。異なるドナー(ドナー1-ドナー3)由来のT細胞を収集し、それぞれドナー1-T細胞、ドナー2-T細胞およびドナー3-T細胞と名付けた。ここで、T細胞を収集する工程は:
(2)2-3日活性化させた後、Cas9/CRISPR/sgRNA系を使用し、それぞれドナー1-T細胞、ドナー2-T細胞およびドナー3-T細胞におけるCD3をノックアウトした(ヒトCD3関連遺伝子を標的とするsgRNAのヌクレオチド配列は配列番号1で示され、かつ5’末端および3’末端にそれぞれ3つのチオおよびオキシメチル修飾があり、南京genscript社から購入された)。
(3)CD3をノックアウトして2日後、CD3+免疫磁気ビーズ(EasySepTM Human CD3 Positive Selection Kit II (カタログ番号17851、Stemcell Technologiesから購入された))で工程(2)でノックアウトされた細胞に対してさらにCD3陽性細胞を除去するスクリーニングを行った。
【0264】
工程(2)、(3)の処理後、それぞれフローサイトメトリーによってCD3陽性細胞の比率を検出した。結果は表1に示す。細胞を続いて5-7日培養した後、さらなる遺伝子修飾の使用に供した。
【表1】
【0265】
1.2
mRNAの調製は、Hiscribe T7 ARCA mRNA kit (NEB、#E20605)および製品に付いた調製プロトコールで実現させた。プラスミドをpcDNA3.1にクローニングした。プラスミドの線形化はXhoIによって実現させた。
【0266】
CARをコードする核酸分子(mRNA)を、エレクトロポレーションによってそれぞれ実施例1.1で製造されたCD3陽性細胞をノックアウトして除去したドナー1-T細胞、ドナー2-T細胞およびドナー3-T細胞に形質移入した。
【0267】
ここで、CARはGPC3を標的とし、CARをコードする核酸分子のヌクレオチド配列は配列番号2で示されるものである。これらの修飾された細胞をそれぞれD1-T、D2-TおよびD3-Tと呼ぶ。
【0268】
1.3
GPC 3 CAR-2A-IL15-2A-IL21プラスミドの骨格プラスミドはpUC57-mini-AmpまたはpUC57-mini-Kanで、GPC3 CAR-2A-IL15-2A-IL21をコードする核酸分子をクローニングした(ここで、GPC3 CAR-2A-IL15-2A-IL21をコードするヌクレオチド配列は配列番号11で示される)。同時に、これらのプラスミドにヒトTRAC遺伝子の一部の遺伝子と相同性を有する核酸配列を含ませた。ヒトTRAC遺伝子を標的とする化学合成のsgRNAを設計した(5’、そのヌクレオチド配列は配列番号1で示され、かつ5’末端および3’末端にそれぞれ3つのチオおよびオキシメチル修飾があり、南京genscript社から購入された)。Cas9タンパク質はSino biological社から購入された(カタログ番号:40572-A08B)。
【0269】
CRISPR/sgRNA系を使用し、調製されたプラスミドをDynal beadで2-3日活性化されたヒトT細胞にエレクトロポレーションし、3つのドナーD1、D2、D3にGPC-3 CAR-2A-IL15-2A-IL21をノックインしたCART細胞(D5-CART、D6-CART、D7-CART)を得たが、ここで、CD3陽性率は表2におけるノックイン後で示され、そして凍結保存した。再生した後、CD3+免疫磁気ビーズ(EasySep
TM Human CD3 Positive Selection Kit II (カタログ番号17851、Stemcell Technologiesから購入された))でCARをノックインした細胞に対してさらにCD3陽性細胞を除去するスクリーニングを行い、ノックイン/CD3除去後に残ったCD3陽性細胞を得たが、表2に示す。
【表2】
【実施例2】
【0270】
他家T細胞が同種異系反応を起こす。
Calcein-AMで標識され、未照射の、4つの異なるドナー由来のPBMCで他家T細胞の同種異系反応を研究した。
【0271】
2.1
実施例1.2で調製されたD1-T、D2-TおよびD3-Tを照射し(照射条件:60 Gy X線、RS2000 Pro、Rad Source、米国)、そしてそれぞれ各由来に相応する自家PBMC(すなわち、D1-PBMC、D2-PBMC、D3-PBMC)または他家D4-PBMCとともにインキュベートした。
【0272】
また、D1-T、D2-TおよびD3-Tを混合し、そして混合した細胞をD4-PBMCとともにインキュベートすることで、最大限に同種異系反応が生じるように保証した。
【0273】
一晩共にインキュベートした後、フローサイトメトリーによってPBMCにおけるT細胞CD69のMFI値を検出した。結果は
図1Aに示す(図においてPはPBMC細胞を表す)。ここで、D1-Pはドナー1からのPBMC細胞を表す。D1-Tは実施例1で製造されたGPC3 CARを発現するドナー1由来のCART細胞である。D1-P+D1-Tは同様の数のD1-TとD1-Pを混合して得られた結果を表し、そしてD1-P+D1-Tの合計数は左側のD1-Pの数と同様である。同様に、D1+D2+D3(1/3)-Tは同様の数のD1-T、D2-TおよびD3-Tを混合して得られた結果を表し、中では、三者はそれぞれ1/3を占め、そしてD1+D2+D3(1/3)-TとD4-Pの合計数はその左側のD4-Pの数と同様である。同様に、D1+D2+D3-TはD1-T、D2-TおよびD3-Tを混合して得られた結果を表し、そしてD1+D2+D3-TとD4-Pの合計数はその左側のD4-Pの数と同様である。
図1Aにおいて、ほかの横座標の意味は類似する。
【0274】
図1Aの結果から、異系間の細胞(たとえば、D1-T+D4-PBMC)の相互作用によるCD69のMFIは同系間の細胞(たとえば、D1-T+D1-PBMC)の相互作用によるCD69のMFIよりも顕著に向上したことが示された。この3つの異なるドナー由来のCART細胞の混合物と4つ目のドナー(すなわち、この3つのドナーにとっての他家)のPBMCの混合培養によるT/NK細胞の活性化の程度から、複数の異系ドナー由来のCARTはより多く本出願に係る同種異系反応が生じることを保証できることがわかる。
【0275】
2.2
実施例1.2で調製されたD1-T、D2-TおよびD3-Tを照射し(照射条件:60 Gy X線、RS2000 Pro、Rad Source、米国)、そしてそれぞれ各由来に相応するPBMC(すなわち、D1-PBMC、D2-PBMC、D3-PBMC)または他家D4-PBMCとともにインキュベートした。
【0276】
また、D1-T、D2-TおよびD3-Tを混合し、そして混合した細胞をD4-PBMCとともにインキュベートした。
【0277】
一晩共にインキュベートした後、CBAによって細胞培養上清液におけるIFN-γの含有量を検出した。検出工程は製品に付いたプロトコールに従った。結果は
図1Bに示す(図においてPはPBMC細胞を表す)。
図1Bにおいて、横座標の意味は
図1Aと同様でする。
【0278】
図1Bの結果から、異系間の細胞(たとえば、D1-T+D4-PBMC)の相互作用によるIFN-γの含有量は同系間の細胞(たとえば、D1-T+D1-PBMC)の相互作用によるIFN-γの含有量よりも顕著に向上したことが示された。この3つの異なるドナー由来のCART細胞の混合物と4つ目のドナー(すなわち、この3つのドナーにとっての他家)のPBMCの混合培養によるIFN-γの発現の顕著な向上から、複数の異系ドナー由来のCARTはより多く本出願に係る同種異系反応が生じることを保証できることがわかる。
【0279】
2.3
実施例1.3で調製されたD5-CART、D6-CARTおよびD7-CARTを照射し(照射条件:60 Gy X線、RS2000 Pro、Rad Source、米国)、そしてそれぞれ単独でまたは混合した後、他家D8-PBMCとともに一晩インキュベートしたことで異系反応を生じさせた。フローサイトメトリーによってD8-PBMCにおけるT細胞のCD69のMFIを測定した。結果は
図2に示すように、D8-PBMCのみの場合、D8-PBMCにおけるT細胞のCD69の平均蛍光値が最も低かったことが示された。D8-PBMCを照射されたD5-CART、D6-CART、D7-CART、またはD5-CART+D6-CART+D7-CARTと一晩インキュベートし、D8-PBMCのCD69の平均蛍光強度がいずれも顕著に増強し、異系反応がT細胞を活性化させたことを意味する。
【実施例3】
【0280】
異なるドナー由来のT細胞の混合物がエレクトロポレーションによる分子を発現する能力に影響しない。
【0281】
3.1
フローサイトメトリーによってそれぞれ実施例1.2で製造されたD1-T、D2-TおよびD3-T、ならびにD1-T、D2-TおよびD3-Tの混合細胞におけるCARの発現状況を検出した。
【0282】
結果を
図3に示す。ここで、NoEPは対照群として、エレクトロポレーションを経ておらず、GPC3 CARを含まないT細胞を表す。
【0283】
図3の結果から、D1-T、D2-T、D3-TならびにD1-T、D2-TおよびD3-Tの混合細胞におけるCARの発現量に明らかな差がなかったことがわかる。
【0284】
3.2 非ウイルス部位特異的ノックイン方法によってCAR分子の長期間発現を実現させる。
【0285】
GPC-3 CARプラスミドの骨格プラスミドはpUC57-mini-AmpまたはpUC57-mini-Kanである。GPC-3CARを標的とするようにコードされる核酸分子をクローニングした。同時に、これらのプラスミドにヒトTRAC遺伝子の一部の遺伝子と相同性を有する核酸配列を含ませた。ヒトTRAC遺伝子を標的とする化学合成のsgRNAを設計した(5’、そのヌクレオチド配列は配列番号1で示され、かつ5’末端および3’末端にそれぞれ3つのチオおよびオキシメチル修飾があり、南京genscript社から購入された)。Cas9タンパク質はSino biological社から購入された(カタログ番号:40572-A08B)。当該プラスミドをプラスミド抗GPC-3CARプラスミドと呼び、配列番号2で示される核酸配列を含む。
【0286】
製造されたGPC-3CARプラスミドをDynal beadで2-3日活性化させたヒトT細胞にエレクトロポレーションによって導入し、抗GPC-3 CARがノックインされたGPC-3 CART細胞を得た。
【0287】
当該GPC-3 CART細胞はHuh-7標的細胞で活性化して体外で60日超と長期間生存することができる。60日体外で増幅したCARTのCARの発現量は
図4に示す。
【0288】
図4の結果から、GPC-3 CART細胞は体外で60日培養した後も高い発現量を有することがわかる。
【0289】
3.3 T細胞は同時にCARおよびほかの分子を発現することができる
CARをコードする核酸分子(mRNA)およびサイトカインまたはケモカインをコードする核酸分子(mRNA)を含むものは、いずれもエレクトロポレーションによってそれぞれDynal Bead:細胞=1:1で5-9日活性化させたT細胞に形質移入した。
【0290】
ここで、CARはGPC3を標的とし、CARをコードする核酸分子のヌクレオチド配列は配列番号2で示されるものである。
【0291】
サイトカインIL12aをコードする核酸分子は、ヌクレオチド配列が配列番号8で示される。
【0292】
サイトカインIL12bをコードする核酸分子は、ヌクレオチド配列が配列番号9で示される。
【0293】
サイトカインIL1bをコードする核酸分子は、ヌクレオチド配列が配列番号5で示される。
【0294】
ケモカインCCL5をコードする核酸分子は、ヌクレオチド配列が配列番号6で示される。
【0295】
ケモカインCXCL10をコードする核酸分子は、ヌクレオチド配列が配列番号7で示される。
【0296】
中では、同時にGPC3 CARならびにIL12a、IL12b、IL1b、CCL5およびCXCL10を発現するものは、GPC3+サイトカイン細胞と呼ぶ。
【0297】
フローサイトメトリーによって各細胞におけるCARの発現量を検出した。CBAによって各細胞の培養上清液におけるサイトカインまたはケモカインの発現量を検出した。結果はそれぞれ
図5Aおよび
図5Bに示す。
【0298】
図5Aの1-3はそれぞれエレクトロポレーションを経ておらず、GPC3 CARを含まないT細胞、実施例1で製造されたエレクトロポレーションによってGPC3 CARのみが形質移入されたT細胞、実施例3で製造されたGPC3+サイトカイン細胞におけるCARの発現量を示す。
【0299】
図5Bの1-3はそれぞれエレクトロポレーションを経ておらず、GPC3 CARを含まないT細胞、実施例1で製造されたエレクトロポレーションによってGPC3 CARのみが形質移入されたT細胞、実施例3で製造されたGPC3+サイトカイン細胞の細胞培養上清液におけるサイトカイの発現量を示す。
【0300】
3.4
エレクトロポレーションを経ておらず、GPC3 CARを含まないT細胞、実施例1.2で製造されたエレクトロポレーションによってGPC3 CARのみが形質移入されたT細胞、実施例3で製造されたGPC3+サイトカイン細胞はそれぞれHepG2標的細胞とエフェクター標的比が2:1の比率で混合してインキュベートした。一晩後、CBAによって各細胞の培養上清液におけるサイトカインまたはケモカインの発現量を検出した。結果は
図5に示す。
図6の1-3はそれぞれ1:エレクトロポレーションを経ておらず、GPC3 CARを含まないT細胞、2:実施例1で製造されたエレクトロポレーションによってGPC3 CARのみが形質移入されたT細胞、3:実施例3で製造されたGPC3+サイトカイン細胞を示す。
【実施例4】
【0301】
腫瘍細胞に対する特異的殺傷機能を検出する
【0302】
4.1
CARをコードする核酸分子(mRNA)を含み、ここで、CARはGPC3を標的とし、CARをコードする核酸分子のヌクレオチド配列は配列番号2で示されるものである。エレクトロポレーションによってそれぞれDynal Bead:細胞=1:1の比率で5-9日活性化させたT細胞に形質移入した。エレクトロポレーションされた細胞を所定のエフェクター標的比でそれぞれ標的細胞SK-HEP-1、Huh7またはHepG2と混合した。それぞれこれらの殺傷効率を検出し、そしてフローサイトメトリーによって標的細胞の表面のGPC3の発現状況を検出した。
【0303】
結果はそれぞれ
図7A-7Fに示すように、ここで、
図7A-7Cはそれぞれ標的細胞SK-HEP-1、Huh7またはHepG2に対する殺傷効率を示し、
図7D-7Fはそれぞれ標的細胞SK-HEP-1、Huh7またはHepG2の表面のGPC3の発現状況を示す。ここで、1-2はそれぞれ1:エレクトロポレーションを経ておらず、GPC3 CARを含まないT細胞、2:エレクトロポレーションによってCAR-mRNAが形質移入されたT細胞を示す。
【0304】
図7の結果から、エレクトロポレーションによって得られたCART細胞はCARを発現することで特異的に腫瘍細胞を殺傷することができることがわかる。
【0305】
4.2 異なるドナー由来のCART細胞またはその混合物が類似する標的細胞殺傷機能を有する
それぞれ実施例1.2で製造されたD1-T、D2-TおよびD3-T、ならびにD1-T、D2-TおよびD3-Tの混合細胞を所定のエフェクター標的比でそれぞれ標的細胞HepG2と混合した。ここで、標的細胞HepG2はCalcein-AMで標識した。
【0306】
フローサイトメトリーによってこれらの殺傷効率を検出した。
【0307】
結果を
図8に示す。
図8において、1-5はそれぞれ1:エレクトロポレーションを経ておらず、GPC3 CARを含まないT細胞、2:D1-T、3:D2-T、4:D3-T、5:D1-T、D2-TおよびD3-T的混合細胞を示す。
【0308】
図8の結果から、エレクトロポレーションによる単一のドナー由来の他家T細胞およびエレクトロポレーションによる複数のドナーの混合由来の他家T細胞は同様の標的細胞を殺傷する機能が得られることがわかる。
【実施例5】
【0309】
腫瘍細胞を殺傷した後に免疫反応を活性化させる能力を検出する
【0310】
5.1 免疫細胞を動員する
それぞれ実施例1.2で製造されたD1-T、D2-TおよびD3-T、ならびにD1-T、D2-TおよびD3-Tの混合細胞、対照細胞である、エレクトロポレーションを経ておらず、GPC3 CARを含まないT細胞、および陽性対照細胞である、エレクトロポレーションによって過剰量のGPC3 CARを形質移入したT細胞を、それぞれエフェクター標的比6:1で標的細胞HepG2とともにインキュベートした。
【0311】
次の日に上清液を収集し、各群の500μL上清液をTranwellの下のチャンバーに入れた。新鮮なPBMCをCalcein-AMで標識し、同時に濃度を1e7/mLに調整した。100μL取ってTranwellの上のチャンバーに入れ、インキュベーターに1.5時間置いて下のチャンバーにおける走化作用によって下に流れた細胞の数を検出し、そして各種類の百分率を検出した。
【0312】
結果はそれぞれ
図9A-9Bに示すように、ここで、1-6はそれぞれ、対照細胞、D1-T、D2-T、D3-T、 D1-T、D2-TおよびD3-Tの混合細胞ならびに陽性対照細胞の結果を示す。
【0313】
図9の結果から、単一ドナー由来のエレクトロポレーションによって得られたCART細胞および複数のドナーの混合由来のエレクトロポレーションによって得られたCART細胞を標的細胞とともにインキュベートした後、腫瘍細胞を殺傷した後に得られた上清液(当該上清液に複数のサイトカインが含まれてもよい)はいずれも免疫細胞を動員し、そしてこれらの免疫細胞を動員する能力が近いことがわかる。
【0314】
5.2 免疫細胞を活性化させる能力
実施例5.1と同様の工程である。
【0315】
次の日に上清を収集した。2e5のCalcein- AMで標識されたPBMC細胞にそれぞれ100μLの各群の上清液を入れ、一晩培養した後、フローサイトメトリーによってPBMCにおけるT細胞およびNK細胞のCD69の平均蛍光強度(MFI)を検出した。
【0316】
結果を
図10Aに示す。ここで、1-5はそれぞれ、対照細胞、D1-T、D2-T、D3-T、 D1-T、D2-TおよびD3-Tの混合細胞を示す。ここで、対照細胞は、エレクトロポレーションを経ておらず、GPC3 CARを含まないT細胞である。
【0317】
図10Aの結果から、単一ドナー由来のエレクトロポレーションによって得られたCART細胞および複数のドナーの混合由来のエレクトロポレーションによって得られたCART細胞を標的細胞とともにインキュベートした後、腫瘍細胞を殺傷した後に得られた上清液(当該上清液に複数のサイトカインが含まれてもよい)はいずれも同等レベルの免疫細胞を活性化させる能力を有することがわかる。
【0318】
5.3 腫瘍細胞を殺傷する
それぞれ実施例1.2で製造されたD1-T、D2-TおよびD3-T、ならびにD1-T、D2-TおよびD3-Tの混合細胞、対照細胞を、それぞれエフェクター標的比6:1で標的細胞HepG2とともにインキュベートした。一晩後、上清を収集した。ここで、対照群細胞は、エレクトロポレーションを経ておらず、GPC3 CARを含まないT細胞である。
【0319】
1.2e6のPBMC細胞を取ってそれぞれ600μLの各群で収集された上清液を入れた。一晩培養した後、PBMCを収集し、そしてPBMCでK562殺傷試験を行ってPBMCが収集された上清液において活性化されたか検証した。
【0320】
結果は
図10Bに示すように、ここで、1-5はそれぞれ、対照細胞、D1-T、D2-T、D3-T、 D1-T、D2-TおよびD3-Tの混合細胞を示す。
【0321】
図10Bの結果から、単一ドナー由来のエレクトロポレーションによって得られたCART細胞および複数のドナーの混合由来のエレクトロポレーションによって得られたCART細胞を標的細胞とともにインキュベートした後、腫瘍細胞を殺傷した後に得られた上清液(当該上清液に複数のサイトカインが含まれてもよい)で培養されたPBMCは類似するK562を殺傷する能力を有することが示され、これらの上清液がPBMCを活性化させる能力を有することが証明された。
【実施例6】
【0322】
「武装化」(Armed)他家T細胞の製造および特徴付け
6.1 製造
CARをコードする核酸分子(mRNA)およびサイトカインをコードするものを、いずれもエレクトロポレーションによって実施例1.1で製造されたCD3をノックアウトされたドナー1-T細胞、ドナー2-T細胞およびドナー3-T細胞の混合物に形質移入した。
【0323】
ここで、CARはGPC3を標的とし、CARをコードする核酸分子のヌクレオチド配列は配列番号2で示されるものである。
【0324】
サイトカインIL12aをコードする核酸分子は、ヌクレオチド配列が配列番号8示される。
【0325】
サイトカインIL12bをコードする核酸分子は、ヌクレオチド配列が配列番号9で示される。
【0326】
サイトカインIL1bをコードする核酸分子は、ヌクレオチド配列が配列番号5で示される。
【0327】
BiTEをコードする核酸分子は、ヌクレオチド配列が配列番号3で示される。
【0328】
形質移入した後、同時にGPC3 CARおよびIL12、IL1b、BiTEを発現し、CD3をノックアウトされた細胞を得たが、GPC3+IL12+IL1b+BiTE-1-T細胞、または「武装化」(Armed)-T細胞と呼ぶ。
【0329】
フローサイトメトリーによって実施例1.2で製造されたD1-T、D2-TおよびD3-T細胞の混合細胞、ならびに実施例6.1で製造された「武装化」(Armed)-T細胞におけるCARの発現量を検出した。結果はそれぞれ
図11Aと
図11Bに示す。ここで、
図11Aにおいて、1-4は順に対照細胞、D1-T、D2-TおよびD3-T細胞の混合細胞のエレクトロポレーション2時間、D1-T、D2-TおよびD3-T細胞の混合細胞のエレクトロポレーション1日、D1-T、D2-TおよびD3-T細胞の混合細胞のエレクトロポレーション3日後のCARの発現量を示す。
図11Bにおいて、1-4は順に対照細胞、実施例6.1で製造された「武装化」(Armed)-T細胞のエレクトロポレーション2時間、実施例6.1で製造された「武装化」(Armed)-T細胞のエレクトロポレーション1日および実施例6.1で製造された「武装化」(Armed)-T細胞のエレクトロポレーション3日後のCARの発現量を示す。ここで、対照群細胞は、エレクトロポレーションを経ておらず、GPC3 CARを含まないT細胞である。
【0330】
図11の結果から、前記「武装化」(Armed)-T細胞はGPC3 CARのみを発現する細胞に近いCARを発現する能力を有することが示された。
【0331】
6.2 腫瘍殺傷能力
実施例1.2で製造されたD1-T、D2-TおよびD3-T細胞の混合細胞、ならびに実施例6.1で製造された「武装化」(Armed)-T細胞をそれぞれ異なるエフェクター標的比でCalcein-AMで標識された標的細胞と混合してインキュベートし、標的細胞の殺傷状況をチェックした。
【0332】
一晩インキュベートした後、フローサイトメトリーによって標的細胞の殺傷の程度を検出した。結果を
図12に示す。ここで、1-6はそれぞれ対照細胞が標的細胞と1日インキュベートした場合、対照細胞が標的細胞と2日インキュベートした場合、D1-T、D2-TおよびD3-T細胞の混合細胞が標的細胞と1日インキュベートした場合、D1-T、D2-TおよびD3-T細胞の混合細胞が標的細胞と2日インキュベートした場合、「武装化」(Armed)-T細胞が標的細胞と1日インキュベートした場合、「武装化」(Armed)-T細胞が標的細胞と2日インキュベートした場合の標的細胞に対する殺傷の状況を示す。ここで、対照細胞は、エレクトロポレーションを経ておらず、GPC3 CARを含まないT細胞である。
【0333】
図12の結果から、「武装化」(Armed)-T細胞は非武装化のCARTと類似する体外で特異的に腫瘍細胞を殺傷する能力を有することが示された。
【0334】
6.3 上清において分泌される分子の腫瘍に対する殺傷能力
実施例1.2で製造されたD1-T、D2-TおよびD3-T細胞の混合細胞、ならびに実施例6.1で製造された「武装化」(Armed)-T細胞を一晩培養した後の上清液をPBMCおよびCalcein-AMで標識された異なるエフェクター標的比のHepG2標的細胞インキュベート系に入れ、標的細胞の殺傷状況をチェックした。
【0335】
フローサイトメトリーによって標的細胞に対する殺傷効率を検出した。結果を
図13に示す。1-4はそれぞれ対照細胞が標的細胞と1日インキュベートした場合、対照細胞が標的細胞と2日インキュベートした場合、「武装化」(Armed)-T細胞が標的細胞と1日インキュベートした場合、「武装化」(Armed)-T細胞が標的細胞と2日インキュベートした場合の標的細胞に対する殺傷の状況を示す。
【0336】
図13の結果から、「武装化」(Armed)-T細胞の細胞上清液はPBMCの標的細胞に対する殺傷を手伝うことができることが示された。中では、2日インキュベートした場合の殺傷能力は1日インキュベートした場合の殺傷能力よりも強かった。
【0337】
6.4 免疫細胞を活性化させるの能力
実施例1.1で製造されたドナー1-T細胞、ドナー2-T細胞およびドナー3-T細胞の混合細胞、実施例1.2で製造されたD1-T、D2-TおよびD3-T細胞の混合細胞、ならびに実施例6.1で製造された「武装化」(Armed)-T細胞をそれぞれエフェクター標的比6:1で標的細胞HepG2と一晩インキュベートした。インキュベートした後に収集された細胞上清液100μLを2e5のPBMC細胞と混合して培養した。一晩培養した後、PBMCにおけるT細胞およびNK細胞のCD69の陽性率およびMFIを検出した。
【0338】
結果を
図14に示す。ここで、1-3はそれぞれドナー1-T細胞、ドナー2-T細胞およびドナー3-T細胞の混合細胞、D1-T、D2-TおよびD3-T細胞の混合細胞、「武装化」(Armed)-T細胞の発現するCART細胞の結果を示す。
図14の結果から、「武装化」(Armed)-T細胞はよりT細胞およびNK細胞を活性化させる能力を有することが説明された。
【0339】
6.5 腫瘍殺傷能力および免疫細胞を活性化させる能力
CARおよびBiTEをコードする核酸分子(mRNA)(それに相応するDNAヌクレオチド配列は配列番号4で示される)を含むものを、エレクトロポレーションによってそれぞれDynal Bead:細胞=1:1の比率で5-9日活性化させたT細胞に形質移入してCARTおよびBiTE Tにした。エレクトロポレーションを行っていないT細胞を対照細胞とした。対照細胞ならびにCARTおよびBiTE T細胞をそれぞれエフェクター標的比6:1で標的細胞HepG2とインキュベートした。インキュベートした後、細胞上清液Aを収集した。
【0340】
CARTおよびBiTE T細胞をそれぞれ単独で一晩培養し、それぞれ相応する上清液Bを収集した。計150μLのPBMCと標的細胞のエフェクター標的比が15:1の混合細胞に、50μLの上清液Bを入れた。一晩インキュベートした後、上清液Dを収集した。
【0341】
150μLの収集された上清液Aおよび上清液DをそれぞれCalcein-AMで標識された2E5のPBMCと96ウェルプレートにおいて混合してインキュベートした。一晩後、フローサイトメトリーによってCalcein-AMで標識されたPBMCにおけるTおよびNK細胞の代表分子CD69を活性化させる陽性率および平均蛍光強度MFIを検出した。
【0342】
結果は
図15A-15Cに示す。
図14A-14CはそれぞれCD69陽性率、CD69 MFIおよびCD69の総合的な変化(すなわち、陽性率とMFI値の積)を示す。ここで、1-3はそれぞれ対照細胞、CART細胞およびBiTE-T細胞に相応する上清の結果を示す。
【0343】
図15の結果から、BiTE Tは腫瘍細胞殺傷能力を有すると同時に、より良いBy-StandでPBMCにおけるT/NK細胞を活性化させる能力を有することが説明された。
【実施例7】
【0344】
凍結保存および再生の能力を検出する
7.1
製造されたGPC 3 CARプラスミド(中では、GPC3 CARをコードするヌクレオチド配列は配列番号2で示される)を、CRISPR/sgRNA系を使用し、エレクトロポレーションによってDynal beadで2-3日活性化させたヒトT細胞に形質移入し、抗GPC-3CARをノックインされたCART細胞D1-T、D2-T、D3-Tを得た。
【0345】
標的細胞HepG2で当該CART細胞を活性化させた。4-7日ごとに一回刺激させ、刺激後、4-7日凍結保存した。
【0346】
凍結保存した細胞を再生させた後、細胞の生存率および増殖の状況を検出した。
【0347】
結果を
図16に示す。
図16において、1-4はそれぞれ1:標的細胞で活性化させていないCART細胞、2:標的細胞で1回活性化させたCART細胞、3:標的細胞で2回活性化させたCART細胞、4:標的細胞で3回活性化させたCART細胞を示す。
【0348】
図16の結果から、本出願に係る他家T細胞は複数回活性化増幅、再生および/または凍結保存することができることが説明された。
【0349】
7.2
標的細胞HepG2で実施例7.1で製造されたCART細胞を刺激し(E:T=2:1)、4-7日一回刺激させ、刺激後、4-7日凍結保存した。細胞の殺傷力を測定する時、エフェクター細胞を図に示されたエフェクター標的比で標的細胞と混合し、一晩インキュベートした後、殺傷効率を検出した。特別に説明しない限り、細胞はいずれも凍結保存して再生させた後の細胞である。
【0350】
結果を
図17に示す。
図17は腫瘍細胞に対する殺傷効率を示す。
図17において、1-8はそれぞれ1:対照細胞、2:実施例4.1で製造されたCART細胞、3:標的細胞で活性化させていないCART細胞、4:標的細胞で1回活性化させたCART細胞、5:標的細胞で2回活性化させたCART細胞、6:標的細胞で3回活性化させたCART細胞、7:標的細胞で3回活性化させた(凍結保存しなかった)CART細胞、8:標的細胞で4回活性化させた(凍結保存しなかった)CART細胞を示す。ここで、前記対照細胞は、エレクトロポレーションを経ておらず、CARを発現しないT細胞である。
【0351】
上記群1-8におけるエフェクター標的比2:1で標的細胞と混合して一晩インキュベートした後に収集した上清液を取った。2e5のPBMC細胞を取ってそれぞれ150μL各群の上清液を入れ、一晩培養した後、フローサイトメトリーによってT細胞およびNK細胞の平均蛍光強度(MFI)を検出した。
【0352】
図18および
図19はそれぞれT細胞およびNK細胞に対する活性化効果を示す。ここで、細胞の活性化は標的細胞HepG2でCART細胞を刺激する(E:T=2:1)ことで実現した。4-7日ごとに一回刺激させ、刺激後、4-7日凍結保存した。図において、1-9はそれぞれ以下の細胞がHepG2標的細胞とインキュベートした後の上清液に相応する結果を示す:1:対照細胞、2:実施例4.1で製造されたCART細胞、3:陽性対照(内部コントロールの陽性対照サンプルで、すなわち、分けて凍結保存したが標的細胞とともにインキュベートした後の上清液で、そしてPBMCにおけるT/NK細胞を活性化できることが検証された)、4:標的細胞で活性化させていない実施例7.1で製造されたCART細胞、5:標的細胞で1回活性化させた実施例7.1で製造されたCART細胞、6:標的細胞で2回活性化させた実施例7.1で製造されたCART細胞、7:標的細胞で3回活性化させた実施例7.1で製造されたCART細胞、8:標的細胞で3回活性化させた(凍結保存しなかった)実施例7.1で製造されたCART細胞、9:標的細胞で4回活性化させた(凍結保存しなかった)実施例7.1で製造されたCART細胞。ここで、前記対照細胞は、エレクトロポレーションを経ておらず、CARを発現しないT細胞である。
【0353】
図17-19の結果から、本出願に係るCARをノックインされた他家CART細胞は、1)強い腫瘍殺傷能力およびBy-StandでPBMCにおけるT/NK細胞を活性化させる能力、2)T/NK細胞を活性化させる能力が標的細胞3回から低下することが説明された。
【実施例8】
【0354】
体内腫瘍に対する殺傷能力を検出する
8.1 CAR-Bite T細胞を製造する
製造されたGPC 3 CAR-BITEプラスミド(中では、GPC3 CAR-BITEをコードするヌクレオチド配列は配列番号4で示される)を、CRISPR/sgRNA系を使用し、エレクトロポレーションによってDynal beadで2-3日活性化させたヒトT細胞に形質移入し、抗GPC-3CAR-BITEをノックインされたCAR-BITE細胞を得た。
【0355】
8.2 動物モデルを構築して体内腫瘍に対する殺傷能力を検出する
NCGマウスの皮下にHepG2細胞を担持させた。腫瘍が100mm3に生長すると、各群に4匹のマウス、ランダムに群分けした。3e6の再生した8.1で製造された細胞を腫瘍内注射した。
【0356】
体内腫瘍に対する殺傷能力を検出し、結果は
図20に示す。
図20において、1-5はそれぞれMock-CART(抗CD19のCAR T細胞)で処理された4匹のマウスの腫瘍増殖の平均値、CAR-BiTE Tで処理された一匹目のマウス、CAR-BiTE Tで処理された二匹目のマウス、CAR-BiTE Tで処理された三匹目のマウス、およびCAR-BiTE Tで処理された四匹目のマウスの腫瘍体積(mm
3)の増加値を示す。
【0357】
図20の結果から、本出願に係る他家T細胞が腫瘍内注射によって有効に体内腫瘍を殺傷して腫瘍体積を減少させることができることが説明された。
【実施例9】
【0358】
腫瘍を殺傷した後に免疫反応を活性化させる能力を検出する
9.1 標的細胞を殺傷した後の上清液におけるXCL-1の発現量の検出
実施例1.3で製造された3つのドナーのCAR-T細胞をそれぞれ標的細胞Huh-7とともに一晩インキュベートした後、それぞれの上清液を収集してXCL-1を測定した。
図21に示すように、CARTが標的細胞を殺傷した後の上清液において、XCL-1の発現が明らかに培養液におけるXCL-1の量よりも高かった。
【0359】
9.2 標的細胞を殺傷した後の上清液のcDC1細胞を動員する効果の検出
実施例1.3で製造された3つのドナーのCAR-T細胞をそれぞれ標的細胞Huh-7とともに一晩インキュベートした後、それぞれの上清液を収集した。各群の500μL上清液をTranwellの下のチャンバーに入れた。CD3およびCD14を除去した新鮮なPBMCをCalcein-AMで標識し、同時に濃度を1e7/mLに調整した。100μL取ってTranwellの上のチャンバーに入れ、インキュベーターに1.5時間置いて下のチャンバーにおける走化作用によって下に流れたcDC1(XCR 1とCD141二重陽性)細胞の数を検出した。
図22に示すように、標的細胞を殺傷した後の上清液は明らかにcDC1細胞をより多く動員した。
【0360】
9.3 標的細胞を殺傷した後の上清液のT/NK細胞を動員する効果の検出
実施例1.3で製造された3つのドナーのCARTをそれぞれ標的細胞Huh-7とともに一晩インキュベートした後、それぞれの上清液を収集した。各群の500μL上清液をTranwellの下のチャンバーに入れた。新鮮なPBMCをCalcein-AMで標識し、同時に濃度を1e7/mLに調整した。100μL取ってTranwellの上のチャンバーに入れ、インキュベーターに1.5時間置いて下のチャンバーにおける走化作用によって下に流れたT/NK 細胞の数を検出した。
図23に示すように、各ドナーのCAR-T細胞の標的細胞を殺傷した後の上清液は明らかにT/NK細胞をより多く動員した。
【0361】
9.4 標的細胞を殺傷した後の上清液のT/NK細胞に対する活性化機能の検出
実施例1.3で製造された3つのドナーのCAR-T細胞をそれぞれ標的細胞Huh-7および無関連標的細胞SK-Hep1とともに一晩インキュベートした後、それぞれの上清液を収集した。2e5のCalcein- AMで標識されたPBMC細胞にそれぞれ100μLの各群の上清液を入れ、一晩培養した後、フローサイトメトリーによってPBMCにおけるT細胞およびNK細胞のCD69の平均蛍光強度(MFI)を検出した。
【0362】
結果は
図24Aと24Bに示すように、標的細胞Huh-7とインキュベートした上清液はCD3 T細胞およびCD56 NK細胞のCD69MFIを向上させた。
【0363】
9.5 標的細胞を殺傷した後の上清液のPBMCにおける免疫細胞に対する活性化効果の検出
実施例1.3で製造された3つのドナーのCAR-T細胞をそれぞれ標的細胞Huh-7および無関連標的細胞SK-Hep1とともに一晩インキュベートした後、それぞれの上清液を収集した。上清液をPBMCと一晩インキュベートした後、収集されたPBMCをK562とインキュベートすることで、PBMCが収集された上清液において活性化されたか検証した。
図25に示すように、CARTがHuh-7とインキュベートした上清のK562に対する殺傷は、明らかにCAR-T細胞が無関連標的細胞SK-Hep1とインキュベートした後の上清よりも高かった。標的細胞を殺傷した後の上清液はPBMCにおける免疫細胞を活性化できることが説明された。
【実施例10】
【0364】
体内腫瘍に対する殺傷能力を検出する
10.1
実施例1.2で製造されたGPC 3 mRNA-CARおよび同時にIL-12とIL-1bを発現するGPC 3 mRNA-ArmedCAR (ここで、GPC3 CARをコードするヌクレオチド配列は配列番号2で示される)を、エレクトロポレーションによってDynal beadで活性化させたヒトT細胞に形質移入し、抗GPC-3 mRNA-CARTおよびGPC 3 mRNA-Armed-CART細胞を得た。
【0365】
NCGマウスの皮下にHepG2細胞を担持させ、腫瘍が100 mm3に生長すると、各群に4匹のマウス、ランダムに群分けした。週に2回腫瘍内注射し、計4回3e6の再生した後のGPC-3 mRNA-CARTおよびGPC 3 mRNA-Armed-CART細胞を注射した。
【0366】
サイトカインIL12aをコードする核酸分子は、ヌクレオチド配列が配列番号8示される。
【0367】
サイトカインIL12bをコードする核酸分子は、ヌクレオチド配列が配列番号9で示される。
【0368】
サイトカインIL1bをコードする核酸分子は、ヌクレオチド配列が配列番号5で示される。
【0369】
結果は
図26に示すように、図に示されたのは4匹のマウスの腫瘍体積の平均値である。結果から、無関連CART対照(抗CD19のCAR T細胞)、GPC-3-mRNA-CARTおよびGPC 3 mRNA-Armed-CARTを注射した後、GPC 3 mRNA-Armed-CART群では、明らかに腫瘍生長を抑制する薬効があったことが示された。
【0370】
10.2
実施例1.3で製造されたGPC 3 CAR-2A-IL15-2A-IL21プラスミドを、CRISPR/sgRNA系を使用し、エレクトロポレーションによってDynal beadで2-3日活性化させたヒトT細胞に導入し、抗GPC-3をノックインされたCART細胞を得た。抗GPC-3 CART細胞は標的細胞Huh-7でエフェクター標的比E:T=2:1で活性化増幅して維持した新鮮な細胞である。ここで、CARはGPC3を標的とし、GPC 3 CAR-2A-IL15-2A-IL21をコードする核酸分子のヌクレオチド配列は配列番号11で示されるものである。
【0371】
ヌードマウスの皮下にHepG2細胞を担持させ、腫瘍が100mm3に生長すると、ランダムに群分けし、CART群、溶媒対照群、延長注射CART群に分けた。CART群では、7日で一回腫瘍内注射し、CART細胞を計5回注射した。延長注射CART群では、腫瘍が700mm3の体積に生長してから注射を開始し、週に一回、計2回注射した。
【0372】
結果は
図27に示すように、結果の統計は4匹の実験マウスの腫瘍生長の平均値である。結果から、本出願に係る残留した免疫機能のあるヌードマウスに対する他家CART細胞は、マウスにおける生存時間がNCGマウスよりも大幅に低下したが、まだ複数回の腫瘍内注射によって有効に体内腫瘍を殺傷して腫瘍体積を減少させることができたことが示され、同時に腫瘍を殺傷した後に放出される新生の抗原を提供することが期待される。
【0373】
前記詳細な説明は解釈および例示の形として提供されたもので、添付された請求の範囲を制限するものではない。現在本出願で挙げられた実施形態の様々な変化は当業者にとって容易に想到できるもので、かつ添付された請求項およびその同等の手段の範囲内に留まる。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-04-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者に施用するためのT細胞製品であって、少なくとも1種の他家T細胞を含み、前記他家T細胞は少なくとも1種の被験者の少なくとも1種のT細胞に外来のものと認識されるMHC分子を発現し、前記被験者の少なくとも1種のTCRが前記MHC分子を認識すると同種異系反応(alloreaction)を起こすT細胞製品。
【請求項2】
前記他家T細胞は免疫拒絶反応を低減または消失させる操作をされていない、請求項1に記載のT細胞製品。
【請求項3】
前記他家T細胞における被験者の同種異系反応を起こしうる分子は修飾されていない、請求項
1に記載のT細胞製品。
【請求項4】
前記被験者の同種異系反応を起こしうる分子は前記他家T細胞のMHC分子を含む、請求項
3に記載のT細胞製品。
【請求項5】
前記被験者は腫瘍患者を含
み、前記腫瘍は固形腫瘍を含む、請求項
1に記載のT細胞製品。
【請求項6】
前記他家T細胞は前記被験者と異なる2つ以上のドナー由来のものである、請求項
1に記載のT細胞製品。
【請求項7】
前記他家T細胞は1種
以上の前記被験者の少なくとも1種のT細胞に外来のものと認識されるMHC分子を発現する、請求項1~
6のいずれかに記載のT細胞製品。
【請求項8】
前記被験者の少なくとも1種の前記TCRは前記MHC分子を認識して前記被験者のTH-1免疫反応を促進させる、請求項
1に記載のT細胞製品。
【請求項9】
工学的改造されていない前記他家T細胞と比較すると、前記工学的改造された前記他家T細胞では、前記他家T細胞の前記被験者において移植片対宿主病(GVHD)を起こすリスクが低下し
、前記工学的改造は、前記他家T細胞におけるCD3に関連する遺伝子、TRAC遺伝子および/またはTRBC遺伝子の発現および/または活性を下方調節する工程を含む、請求項
1に記載のT細胞製品。
【請求項10】
前記工学的改造は、前記他家T細胞に、アンチセンスRNA、siRNA、shRNA、CRISPR/Cas系、RNA編集系、RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、Mega-TALヌクレアーゼ、TALENs 、Sleeping beautyトランスポゾン系およびメガヌクレアーゼ(Meganucleases)からなる群から選ばれる1種または複数種の物質を施用することを含む、請求項
9に記載のT細胞製品。
【請求項11】
少なくとも1種の前記他家T細胞は修飾された後、抗体およびその抗原結合断片、キメラ抗原受容体(CAR)、サイトカインおよび/またはケモカインを発現する、請求項
1に記載のT細胞製品。
【請求項12】
前記修飾は、前記他家T細胞に前記核酸を形質移入することを含
み、前記形質移入はウイルス形質移入および/または非ウイルス形質移入を含む、請求項
11に記載のT細胞製品。
【請求項13】
前記非ウイルス形質移入はプラスミドを使用
し、前記プラスミドは環状プラスミド、スーパーコイルプラスミド、ナノプラスミド(Nanoplasmid)またはミニサークルDNA(minicircle DNA)であり、前記プラスミドは抗体およびその抗原結合断片、キメラ抗原受容体(CAR)、サイトカインおよび/またはケモカインをコードする核酸を含む、請求項
12に記載のT細胞製品。
【請求項14】
前記形質移入
は一過性形質移入を含
み、前記一過性形質移入はエレクトロポレーションを含む、請求項
12に記載のT細胞製品。
【請求項15】
前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、微生物のゲノム由来の核酸分子またはその断片の含有量が前記形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約10%(w/w)
、2%(w/w)または1%(w/w)以下を占め、前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、前記大きさが少なくも約48kbの核酸分子またはその断片の含有量が形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約10%(w/w、2%(w/w)または1%(w/w))以下を占め
、前記大きさが少なくも約48kbの核酸分子またはその断片は大腸菌を含む微生物由来のものである、請求項
13に記載のT細胞製品。
【請求項16】
前記プラスミドはデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)で処理され
、前記DNaseは非特異的に線形DNAを切断することができ、前記DNase処理を経た後、前記プラスミドを含む形質移入混合物のうち、微生物のゲノム由来の核酸分子またはその断片の含有量が前記形質移入混合物の核酸分子の合計含有量の約10%(w/w)以下を占める、請求項
13に記載のT細胞製品。
【請求項17】
前記CARは抗原結合ドメイン、ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、共刺激ドメインおよびシグナル伝達ドメインを含
み、前記抗原結合ドメインは特異的に一つまたは複数の腫瘍関連抗原に結合する、請求項
13に記載のT細胞製品。
【請求項18】
前記抗原結合ドメインは特異的にGPC
3に結合
し、または、前記抗原結合ドメインは特異的にGPC3およびCD147に結合し、前記抗原結合ドメインは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、単一ドメイン抗体、ナノ抗体およびその抗原結合断片からなる群から選ばれる、請求項
17に記載のT細胞製品。
【請求項19】
前記サイトカインは、IL-1、IL-7、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17A、IL-17F、IL-18、IL-21、IL-23、TNFα、CXCL1、CD38、CD40、CD69、IgG、IP-10、L-17A、 MCP-lおよびPGE2からなる群から選ばれ
、および/または、前記ケモカインは、CCL1-CCL28およびCXCL1-CXCL17からなる群から選ばれる、請求項
13に記載のT細胞製品。
【請求項20】
さらに、前記被験者の自家由来のT細胞を含む、請求項
1に記載のT細胞製品。
【請求項21】
前記T細胞製品は、さらに、1種または複数種のほかの修飾されたT細胞を含み、前記ほかの修飾されたT細胞は相応する修飾されていないT細胞と比較すると、生体の同種異系反応を起こす能力が低下した、請求項
1に記載のT細胞製品。
【請求項22】
請求項
1に記載のT細胞製品と、薬学的に許容される補助剤とを含
み、前記補助剤は腫瘍内注射に適する、薬物組成物。
【請求項23】
薬物の製造における請求項
1に記載のT細胞製品、
および、請求項
22に記載の薬物組成
物の使用であって、前記薬物は腫瘍の予防、緩和、治療に用いられる使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】