(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】酢酸セルロース繊維の乾式紡糸
(51)【国際特許分類】
D01F 2/28 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
D01F2/28 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513067
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 US2022040390
(87)【国際公開番号】W WO2023027910
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594055158
【氏名又は名称】イーストマン ケミカル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】マーカス デイビッド シェルビー
(72)【発明者】
【氏名】マーク エドワード スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ コリンズ メイン
(72)【発明者】
【氏名】タナー ストーム ドートン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン マイケル アレン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン リー
【テーマコード(参考)】
4L035
【Fターム(参考)】
4L035BB02
4L035BB11
(57)【要約】
セルロースエステル繊維の製造に乾式紡糸システム及び方法が使用される。この方法は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド又はそれらの混合物のうちの1つ以上を溶解溶媒として利用する。この方法により、繊維の変色が最小限に抑えられるか又は回避される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースエステル繊維を製造する方法であって、紡糸口金を通してセルロースエステルドープを乾式紡糸して1つ以上の前記繊維を製造することを含み、前記セルロースエステルドープは溶解及び/又は分散した固形分(以下「固形分」)及び溶媒を含み、前記固形分の少なくとも35wt%はセルロースエステルを含み、前記溶媒はN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドもしくはジメチルスルホキシド又はそれらの混合物を含み、ただし、前記溶媒がN,N-ジメチルホルムアミドを含む場合に、
(i)前記セルロースエステルドープは、前記セルロースエステルドープの総質量に基づいて50質量%以下のアセトンを含み、又は、
(ii)前記セルロースエステルドープは、前記セルロースエステルドープの総質量に基づいて0質量%のセルロースナノ結晶を含み、又は、
(iii)(i)と(ii)の両方であり、
前記セルロースエステルドープ中に存在する場合に、ポリウレタン、ポリオレフィン、ナイロン、ポリエステル及び/又はポリウレタン尿素の合計質量は、前記セルロースエステルドープ中の総固形分に基づいて60質量%以下である、セルロースエステル繊維の製造方法。
【請求項2】
前記セルロースエステルドープは、前記セルロースエステルドープ中の総固形分に基づいて10質量%以下のポリウレタン又はポリウレタン尿素を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記セルロースエステルドープは、前記セルロースエステルドープ中の総固形分に基づいて50質量%以下のアクリロニトリル-酢酸ビニルコポリマーを含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記セルロースエステル繊維は、前記セルロースエステルドープから得られるセルロースエステルを少なくとも50質量%含む、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記セルロースエステルは、少なくとも1.5及び/又は2.95以下のDS
アセチルを有する、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記セルロースエステルは、少なくとも120℃及び/又は250℃以下のガラス転移温度を有する、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記乾式紡糸は、
前記セルロースエステルドープを紡糸して、前記溶媒を含む紡糸された繊維を製造すること、及び、
前記紡糸された繊維から前記溶媒を蒸発させること、
を含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記セルロースエステルドープは多官能酸を含む、請求項1~7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記セルロースエステルドープは、前記セルロースエステルドープの総質量に基づいて4質量%以下の水分含有量を有する、請求項1~8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記セルロースエステル及び前記溶媒をスラリー化することによって前記セルロースエステルドープを調製し、次いで、前記ドープを少なくとも-100℃及び/又は5℃以下の温度に冷却することすること、及び、上記の温度のいずれかで少なくとも1時間保管することをさらに含む、請求項1~9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項記載のセルロースエステルドープで、b*値は0.75以下である、請求項1~10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に従って形成されるセルロースエステル繊維。
【請求項13】
請求項12に従って形成される前記セルロースエステル繊維を含むヤーン。
【請求項14】
請求項12に従って形成される前記セルロースエステル繊維を含む物品。
【請求項15】
請求項12に従って形成される前記セルロースエステル繊維を含む織布物品。
【請求項16】
請求項12に従って形成される前記セルロースエステル繊維を含む不織布物品。
【請求項17】
請求項12に従って形成される前記セルロースエステル繊維を含むステープル繊維。
【請求項18】
請求項12に従って形成される前記セルロースエステル繊維を含む編物テキスタイル。
【請求項19】
前記紡糸された繊維から前記溶媒を蒸発させる工程は紡糸キャビネット内で行われる、請求項7記載の方法。
【請求項20】
前記紡糸キャビネット内の前記紡糸された繊維は2倍以下の引落比で引き落としされる、請求項16記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本出願は、一般に繊維の紡糸に関する。より具体的には、本出願は一般に、セルロースエステルを乾式紡糸して繊維にすることに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
酢酸セルロース繊維は伝統的に、紡糸溶媒としてアセトンを使用して乾式紡糸される。フィラメント市場の成長に伴い、紡糸能力を増強する必要があったが、溶媒回収、設備投資などの必要性を考慮すると、新しい生産ラインの追加は非常に高価である。費用対効果の高い代替案は、アクリル及びウレタン繊維市場で利用可能な空いている乾式紡糸能力を使用することである。しかしながら、これらの技術では、溶媒としてDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)又はDMAc(N,N-ジメチルアセトアミド)の使用が関与する。DMFは非常に効果的な溶媒であるが、沸点が高いため、アセトンよりもはるかに高い操作温度が必要である。これらのより高い操作温度は、酢酸セルロース及び/又はDMFの劣化を引き起こし、繊維に許容できない黄変を引き起こす可能性がある。したがって、色の形成が少ない、DMFを使用する乾式紡糸プロセスが必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
発明の概要
本開示は、セルロースエステル繊維を製造する方法を提供し、この方法は、セルロースエステルドープを紡糸口金を通して乾式紡糸して1つ以上の繊維を作製することを含む。セルロースエステルドープは、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド又はそれらの混合物から選ばれる溶媒に溶解又は分散されたセルロースエステルを固形分基準で少なくとも35質量%で含む。溶媒がN,N-ジメチルアセトアミドを含む場合に、
(i)セルロースエステルドープは、セルロースエステルドープの総質量に基づいて50質量%以下のアセトンを含み、又は、
(ii)セルロースエステルドープは0質量%のセルロースナノ結晶を含み、又は、
(iii)(i)と(ii)の両方である。
セルロースエステルドープ中に存在しうるポリウレタン、ポリオレフィン、ナイロン、ポリエステル及び/又はポリウレタン尿素の合計質量は、セルロースエステルドープ中の全固形分に基づいて、60質量%以下である。
【0004】
本開示はまた、セルロースエステル繊維を製造する方法を提供し、この方法は、セルロースエステルドープを紡糸口金を通して乾式紡糸して1つ以上の繊維を作製することを含む。セルロースエステルドープは、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド又はそれらの混合物から選ばれる溶媒に溶解又は分散されたセルロースエステルを含む。溶媒がN,N-ジメチルアセトアミドを含む場合に、
(i)セルロースエステルドープは、セルロースエステルドープの総質量に基づいて50質量%以下のアセトンを含み、又は、
(ii)セルロースエステルドープは0質量%のセルロースナノ結晶を含み、又は、
(iii)(i)と(ii)の両方である。
セルロースエステルドープは、両方ともセルロースエステルドープ中の全固形分に基づいて、10質量%以下のポリウレタン及び50質量%以下のアクリロニトリル-酢酸ビニルコポリマーを含む。セルロースエステルドープ中に存在しうるポリウレタン、ポリオレフィン、ナイロン、ポリエステル及び/又はポリウレタン尿素の合計質量は、セルロースエステルドープ中の全固形分に基づいて、60質量%以下である。
【0005】
本開示はまた、上記方法の一方又は両方に従って形成されるセルロースエステル繊維を提供する。
【0006】
本開示はさらに、上記方法の一方又は両方に従って形成されるセルロースエステル繊維を含むヤーン、物品、織布物品、不織布物品、ステープル繊維及び/又は編物テキスタイルを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
本出願は、一般に、低発色を示すセルロースジアセテート(「CDA」)繊維及び/又はセルローストリアセテート(「CTA」)繊維を調製するための乾式紡糸方法に関する。このような繊維は、下流の繊維加工及び最終使用のアパレル用途における応用機会を拡大して利用できる。さらに、このようなセルロースエステル繊維は、乾式紡糸法を用いて製造することができる。この方法では、セルロースエステルを溶媒(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びそれらの混合物)に少なくとも部分的に溶解し、得られたドープを小さな紡糸口金オリフィスを通して、溶媒がフラッシュオフする紡糸キャビネットに押出する。
【0008】
少なくとも1つのセルロースエステル及び少なくとも1つの溶解溶媒をドープミキサーに導入して、セルロースエステルドープを形成することができる。ドープミキサーは、セルロースエステルと溶解溶媒を混合することができる任意の従来のデバイスを含むことができる。例示的なドープミキサーとしては、連続撹拌タンク反応器(「CSTR」)を挙げることができる。ドープミキサー中、セルロースエステル及び溶媒は、セルロースエステルの溶解溶媒への溶解を促進する温度及び混合条件にさらされ、それによってセルロースエステルドープを形成することができる。
【0009】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルドープは、ドープの総質量に基づいて、少なくとも15質量%、少なくとも16質量%、少なくとも17質量%、少なくとも18質量%、少なくとも19質量%、少なくとも20質量%、少なくとも21質量%、少なくとも22質量%、又は少なくとも23質量%、及び/又は、35質量%以下、34質量%以下、33質量%以下、32質量%以下、31質量%以下、30質量%以下、29%質量以下、又は28質量%以下の固形分を含むことができる。例えば、セルロースエステルドープは、ドープの総質量に基づいて、15質量%~35質量%、16質量%~34質量%、17質量%~33質量%、17質量%~22質量%、18質量%~32質量%、19質量%~31質量%、20質量%~31質量%、21質量%~30質量%、22質量%~29質量%、又は23質量%~28質量%の範囲の固形分を含むことができる。
【0010】
セルロースエステルとしては、当該技術分野で知られている任意のセルロースエステル、特にアセチル基を含むセルロースエステルを挙げることができる。本発明に使用できるセルロースエステルは、一般に、次の構造の繰り返し単位を含む。
【化1】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、水素又は2~10個の炭素原子を有する直鎖アルカノイルからなる群より独立して選択される)。例示的なアルカノイルとしては、アセチル、プロピオニル及び/又はブチリルが挙げられる。
【0011】
セルロースエステルの場合に、置換レベルは通常、アンヒドログルコース単位 (「AGU」)あたりの非OH置換基の平均数である置換度(「DS」)で表される。一般に、従来のセルロースは、各AGU単位に置換可能な3つのヒドロキシル基を含む。したがって、DSは0~3までの値を取ることができる。しかしながら、低分子量セルロースエステルは、末端基の影響により、総置換度が3をわずかに超えることができる。DSは統計的な平均値であるため、1の値はすべてのAGUが単一の置換基を持つことを保証するものではない。幾つかの場合には、非置換のAGUが存在することもあり、置換基が2つあるものもあれば、置換基が3つあるものもある。「総DS」は、AGUあたりのすべての置換基の平均数として定義され、典型的に、値は非整数になる。AGUごとの置換度は、例えばヒドロキシル、アセチル、ブチリル又はプロピオニルなどの特定の置換基を指すこともできる。
【0012】
1つの実施形態において、又は任意の他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルは、少なくとも1.5、少なくとも1.55、少なくとも1.6、少なくとも1.65、少なくとも1.7、少なくとも1.75、少なくとも1.8、少なくとも1.85、少なくとも1.9、少なくとも1.95、少なくとも2.0、少なくとも2.05、少なくとも2.1、少なくとも2.15、少なくとも2.2、少なくとも2.25、少なくとも2.3、少なくとも2.35、又は少なくとも2.38、及び/又は、2.95以下、2.9以下、2.8以下、2.7以下、2.6以下、2.55以下、2.5以下、又は2.45以下のDSアセチルを含む。特定の実施形態において、セルロースエステルは、2.6~2.95、2.7~2.95、1.5~2.6、1.6~2.6、1.7~2.6、1.8~2.6、1.9~2.6、2.0~2.6、2.05~2.6、2.1~2.6、2.15~2.6、2.2~2.6、2.25~2.55、2.3~2.5、又は 2.38~2.45の範囲のDSアセチルを含むことができる。
【0013】
追加的に又は代替的に、1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルは、少なくとも0.05、少なくとも0.1、少なくとも0.2、少なくとも0.3、少なくとも0.4、又は少なくとも0.5、及び/又は1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、又は1.0以下のDSOHを含む。特定の実施形態でにおいて、セルロースエステルは、0.05~1.5、0.1~1.5、0.2~1.4、0.3~1.2、0.4~1.1、又は0.5~1.0の範囲のDSOHを含む。
【0014】
追加的に又は代替的に、1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルは、少なくとも0.1、少なくとも0.2、又は少なくとも0.3、及び/又は、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1.0以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、又は0.4以下のDSブチリルを含む。特定の実施形態において、セルロースエステルは、0.1~1.5、0.1~1.2、0.1~0.8、0.1~0.4、0.2~1.5、0.2~1.2、0.2~0.8、0.2~0.4、0.3~1.5、0.3~1.2、0.3~0.8、又は0.3~0.6の範囲のDSブチリルを含む。
【0015】
追加的に又は代替的に、1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルは、少なくとも0.1、少なくとも0.2、又は少なくとも0.3、及び/又は、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1.0以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、又は0.4以下のDSプロピオニルを含む。特定の実施形態において、セルロースエステルは、0.1~1.5、0.1~1.2、0.1~0.8、0.1~0.4、0.2~1.5、0.2~1.2、0.2~0.8、0.2~0.4、0.3~1.5、0.3~1.2、0.3~0.8、又は0.3~0.6のDSプロピオニルを含む。
【0016】
追加的に又は代替的に、1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルは、少なくとも1.5、少なくとも1.55、少なくとも1.6、少なくとも1.65、少なくとも1.7、少なくとも1.75、少なくとも1.8、少なくとも1.85、少なくとも1.9、少なくとも1.95、少なくとも2.0、少なくとも2.05、少なくとも2.1、少なくとも2.15、少なくとも2.2、少なくとも2.25、少なくとも2.3、少なくとも2.35、又は少なくとも2.38、及び/又は、2.95以下、2.9以下、2.85以下、2.8以下、2.75以下、2.7以下、2.65以下、2.6以下、2.55以下、2.5以下、又は2.45以下の総DSを含む。特定の実施形態において、セルロースエステルは、1.5~2.95、1.6~2.85、1.7~2.8、1.8~2.75、1.9~2.7、2.0~2.65、2.05~2.6、2.1~2.6、2.15~2.6、2.2~2.6、2.25~2.55、2.3~2.5、又は2.38~2.45の範囲の総DSを含むことができる。
【0017】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルはセルロースジアセテート及び/又はセルローストリアセテートであることができる。あるいは、特定の実施形態において、セルロースエステルは、セルロースアセテートブチレート又はセルロースアセテートプロピオネートなどの混合セルロースエステルを含むことができる。
【0018】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルは、合計酢酸質量パーセント基準で、少なくとも30質量%、少なくとも35質量%、又は少なくとも40質量%、及び/又は、62.5質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、又は45質量%以下のアセチル含有分を有することができる。特定の実施形態において、セルロースエステルは、質量基準で、30~62.5%、35%~55%、35%~50%、35%~45%、40%~62.5%、40%~60%、40%~55%、40%~50%、又は40%~45%の範囲のアセチル化度を有することができる。
【0019】
追加的に又は代替的に、1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルは、少なくとも0.3質量%、少なくとも0.5質量%、少なくとも1質量%、少なくとも2質量%、少なくとも3質量%、又は少なくとも4質量%、及び/又は、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下のヒドロキシル含有分を有することができる。特定の実施形態において、セルロースエステルは、0.3質量%~20質量%、0.5質量%~20質量%、2質量%~15質量%、3質量%~10質量%、又は4質量%~5質量%の範囲のヒドロキシル含有分を有することができる。
【0020】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルは、少なくとも100、少なくとも110、少なくとも120、少なくとも130、少なくとも140、少なくとも150、少なくとも160、少なくとも170、少なくとも180、少なくとも190、少なくとも200、少なくとも210、少なくとも220、少なくとも230、少なくとも240、少なくとも250、少なくとも260、又は少なくとも265の数平均重合度を有することができる。追加的に又は代替的に、1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルは、1,000以下、900以下、800以下、700以下、600以下、500以下、400以下、350以下、325以下、300以下、290以下、280以下、270以下、260以下、250以下、240以下、230以下、220以下、210以下、200以下、190以下、180以下、170以下、160以下、150以下、149以下、148以下、147以下、146以下、145以下、144以下、143以下、142以下、141以下、140以下、139以下、138以下、137以下、136以下、135以下、134以下、133以下、132以下、131以下、130以下、129以下、128以下、127以下、126以下、125以下、124以下、123以下、122以下、121以下、120以下、119以下、118以下、117以下、116以下、又は115以下の数平均重合度を有することができる。特定の実施形態において、セルロースエステルは、100~1,000、100~500、100~400、100~300、100~250、100~200、100~150、100~135、100~200、100~150、100~135、100~180、100~150、100~145、100~140、100~135、又は100~130の範囲の数平均重合度を有することができる。
【0021】
1つの実施形態において、又は任意の他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルは、ASTM D6474に従ってゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC」)によって測定して、少なくとも5,000ダルトン、少なくとも10,000ダルトン、少なくとも15,000ダルトン、少なくとも20,000ダルトン、又は少なくとも25,000ダルトン、及び/又は、75,000ダルトン以下、70,000ダルトン以下、65,000ダルトン以下、60,000ダルトン以下、55,000ダルトン以下、50,000ダルトン以下、45,000ダルトン以下、40,000ダルトン以下、35,000ダルトン以下、又は30,000ダルトン以下のダルトンで表した数平均絶対分子量を備えることができる。特定の実施形態において、セルロースエステルは、ASTM D6474に従ってGPCによって測定して、5,000ダルトン~75,000ダルトン、10,000ダルトン~65,000ダルトン、又は15,000ダルトン~35,000ダルトンの範囲の数平均絶対分子量を備えることができる。
【0022】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルは、ASTM D6474に従ってGPCによって測定して、少なくとも50,000ダルトン、少なくとも55,000ダルトン、少なくとも60,000ダルトン、少なくとも65,000ダルトン、少なくとも70,000ダルトン、少なくとも75,000ダルトン、少なくとも80,000ダルトン、又は少なくとも85,000ダルトン、及び/又は、150,000ダルトン以下、140,000ダルトン以下、130,000ダルトン以下、120,000ダルトン以下、110,000ダルトン以下、100,000ダルトン以下、又は95,000ダルトン以下の重量平均絶対分子量を備えることができる。特定の実施形態において、セルロースエステルは、ASTM D6474に従ってGPCによって測定して、50,000ダルトン~150,000ダルトン、70,000ダルトン~120,000ダルトン、又は80,000ダルトン~95,000ダルトンの範囲の重量平均絶対分子量を備えることができる。
【0023】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルは、ASTM F2625に従って測定して、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、又は少なくとも20%の結晶化度を備えることができる。追加的に又は代替的に、1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルは、ASTM F2625に従って測定して、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、又は1%以下の結晶化度を備えることができる。特定の実施形態において、セルロースエステルは、ASTM F2625に従って測定して、1%~99%、1%~50%、1%~30%、1%~20%、又は1%~15%の結晶化度を備えることができる。
【0024】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルは、少なくとも120℃、少なくとも125℃、少なくとも130℃、少なくとも135℃、少なくとも140℃、少なくとも145℃、少なくとも150℃、少なくとも155℃、少なくとも160℃、少なくとも165℃、少なくとも170℃、又は少なくとも175℃、及び/又は、250℃、245℃以下、240℃以下、235℃以下、230℃以下、225℃以下、220℃以下、215℃以下、210℃以下、205℃以下、200℃以下、195℃以下、190℃以下、又は185℃以下のガラス転移温度を示すことができる。
【0025】
セルロースエステルは、当該技術分野で知られている任意の方法によって製造することができる。セルロースエステルの製造方法の例は、Kirk-Othmer、Encyclopedia of Chemical Technology、第5版、Vol.5、Wiley-Interscience、ニューヨーク(2004)、394~444ページに教示される。
【0026】
セルロースエステルを製造する1つの方法は、セルロースを適切な有機酸、酸無水物及び触媒と混合することによるセルロースのエステル化が関与する。次に、セルロースはセルローストリエステルに転化される。次に、セルローストリエステルに水と酸の混合物を加えてエステル加水分解を行い、その後、ろ過してゲル粒子又は繊維を除去することができる。次いで、混合物に水を加えてセルロースエステルを沈殿させる。次いで、セルロースエステルを水で洗浄して反応副生成物を除去し、続いて脱水及び乾燥することができる。
【0027】
セルロースエステルを製造するための出発原料であるセルロースは、とりわけ、コットンリンター、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、トウモロコシ繊維、その他の農業資源及びバクテリアセルロースなどの様々なグレード及び供給源で入手することができる。セルロースエステルの製造に使用される出発原料は、得られるセルロースエステル中のヘミセルロース含有分に影響を与える可能性がある。
【0028】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルは、少なくとも0.25質量%、少なくとも0.5質量%、少なくとも1質量%、少なくとも2質量%、少なくとも3質量%、少なくとも4質量%、少なくとも5質量%、少なくとも6質量%、又は少なくとも7質量%のヘミセルロース含有分を備えることができる。追加的に又は代替的に、1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルは、10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%を超え、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、又は1質量%以下のヘミセルロース含有分を備えることができる。
【0029】
ドープミキサーに添加される溶解溶媒は、セルロースエステル、特にセルロースジアセテート及び/又はセルローストリアセテートを溶解できる1つ以上の溶媒を含むことができる。1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、溶解溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドもしくはジメチルスルホキシド、又はそれらの混合物から選択される溶媒を含む。
【0030】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、溶解溶媒としてのアセトンは最小限に抑えられるか又は回避される。特定の実施形態において(例えば、N,N-ジメチルアセトアミドがドープ中に存在するときなど)、ドープは、セルロースエステルドープの総質量に基づいて、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、又は0質量%のアセトンを含む。
【0031】
セルロースエステルは、ドープが、ドープの総質量に基づいて、少なくとも5質量%、少なくとも8質量%、少なくとも10質量%、少なくとも12質量%、少なくとも15質量%、少なくとも18質量%、少なくとも20質量%、又は少なくとも22質量%のセルロースエステル、及び/又は、35質量%以下、33質量%以下、30質量%以下、29質量%以下、25質量%以下、22質量%以下、又は20質量%以下のセルロースエステルを含むように、ドープに添加されうる。特定の実施形態において、セルロースエステルドープは、ドープの総質量に基づいて、5質量%~35質量%、10質量%~33質量%、12質量%~30質量%、15質量%~29質量%、又は25質量%~29質量%のセルロースエステルを含む。
【0032】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルは、ドープ中の総固形分に基づいて、少なくとも35質量%、少なくとも40質量%、少なくとも55質量%、少なくとも65質量%、少なくとも75質量%、少なくとも85質量%、少なくとも95質量%、少なくとも98質量%、又は100質量%のレベルでドープ中に存在する。特定の実施形態において、セルロースエステルは、ドープ中の総固形分に基づいて、35%~100%、45%~100%、55%~100%、55%~98%、65%~98%、又は75%~98%でドープ中に存在する。
【0033】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルがCDAを含むときに、ドープは、ドープの総質量に基づいて、少なくとも10質量%、少なくとも13質量%、少なくとも15質量%、少なくとも18質量%、少なくとも20質量%、少なくとも22質量%、又は少なくとも24質量%のCDA、及び/又は、35質量%以下、33質量%以下、30質量%以下、又は29質量%以下のCDAを含む。特定の実施形態において、セルロースエステルドープは、ドープの総質量に基づいて、10質量%~35質量%、15質量%~33質量%、18質量%~33質量%、20質量%~30質量%、又は24質量%~29質量%のCDAを含む。
【0034】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルがCTAを含むときに、ドープは、ドープの総質量に基づいて、少なくとも10質量%、少なくとも10質量%、少なくとも12質量%、少なくとも15質量%、少なくとも17質量%、少なくとも19質量%、又は少なくとも21質量%のCTA、及び/又は27質量%以下、25質量%以下、24質量%以下、又は22質量%以下のCTAを含む。特定の実施形態において、セルロースエステルドープは、ドープの総質量に基づいて、10質量%~27質量%、12質量%~24質量%、又は15質量%~22質量%のCTAを含む。
【0035】
溶解溶媒は、セルロースエステルを効果的に溶解し、それによってセルロースエステルドープを形成するのに十分な量で添加されるべきである。1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルドープは、ドープの総質量に基づいて、少なくとも65質量%、少なくとも70質量%、少なくとも75質量%、少なくとも80質量%、少なくとも85質量%、少なくとも90質量%、又は少なくとも95質量%、又は99質量%、及び/又は、99質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、又は85質量%以下の1つ以上の溶解溶媒を含むことができる。特定の実施形態において、セルロースエステルドープは、ドープの総質量に基づいて、65質量%~99質量%、70質量%~95質量%、75質量%~95質量%、80質量%~95質量%、又は90質量%~99質量%の1つ以上の溶解溶媒を含む。
【0036】
ドープの水又は水分含有量は、比較的に低く保たれていることができる。1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルドープは、セルロースエステルドープの総質量に基づいて、4質量%以下、3.5質量%以下、3質量%以下、2.5質量%以下、2質量%以下、1.5質量%以下、1.4質量%以下、1.3質量%以下、1.2質量%以下、1.1質量%以下、1質量%以下、0.9質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下、又は0.6質量%以下の水分含有量を有する。
【0037】
使用されるセルロースエステル及び溶解溶媒の種類により、セルロースドープは望ましい操作粘度を示すことができる。1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルドープは、繊維の製造に使用される紡糸温度で測定して、少なくとも10ポアズ、少なくとも20ポアズ、少なくとも30ポアズ、少なくとも40ポアズ、少なくとも50ポアズ、少なくとも60ポアズ、少なくとも70ポアズ、少なくとも80ポアズ、少なくとも90ポアズ、又は少なくとも100ポアズ、及び/又は、3,000ポアズ以下、2,000ポアズ以下、1,500ポアズ以下、1,000ポアズ以下、950ポアズ以下、900ポアズ以下、850ポアズ以下、800ポアズ以下、750ポアズ以下、700ポアズ以下、650ポアズ以下、600ポアズ以下、550ポアズ以下、又は500ポアズ以下の粘度を示すことができる。この紡糸温度は、名目上、ドープが紡糸口金を通過してそこに入るときのドープの温度である。本明細書で規定される粘度は、粘度をせん断速度に対してプロットしたときに非常に低いせん断速度に外挿することによって得られる、又は低スピンドルRPMでブルックフィールド粘度計を使用することによって得られる「ゼロ」せん断粘度である。したがって、「測定時」の閾値は、実際のセルロースエステルドープの使用又は実施をいかなる形でも反映するものではない。
【0038】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルドープは、25℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃又は110℃で測定して、少なくとも10ポアズ、少なくとも20ポアズ、少なくとも30ポアズ、少なくとも40ポアズ、少なくとも50ポアズ、少なくとも60ポアズ、少なくとも70ポアズ、少なくとも80ポアズ、少なくとも90ポアズ、又は少なくとも100ポアズ、及び/又は5,000ポアズ以下、4,000ポアズ以下、3,000ポアズ以下、2,000ポアズ以下、1,500ポアズ以下、1,000ポアズ以下、950ポアズ以下、900ポアズ以下、850ポアズ以下、800ポアズ以下、750ポアズ以下、700ポアズ以下、650ポアズ以下、600ポアズ以下、550ポアズ以下、又は500ポアズ以下の粘度を示すことができる。この「測定したときに(測定して)」の基準では、セルロースエステルドープをこの指定温度でのみ使用することを要求するわけではなく、むしろ、この温度標準は、セルロースエステルドープの粘度を測定するための温度閾値を単に提供するものであることに留意されたい。したがって、「測定したときに(測定して)」の閾値は、実際のセルロースエステルドープの使用又は実施をいかなる形でも反映するものではない。粘度は、ブルックフィールド粘度計を使用して低スピンドルRPMで測定することができる。
【0039】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルドープは、セルロースエステルに加えて、幾つかの添加剤を含んでもよく、又は全く添加剤を含まなくてもよい。このような添加剤としては、限定するわけではないが、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、酸化促進剤、無機物、顔料、着色剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、潤滑剤、充填剤又はそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0040】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、特にドープが高温に加熱されたときに、最終繊維における発色を防止するために、有機酸(単官能性及び/又は多官能性)が含まれてもよい。このような酸の例としては、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、乳酸、酢酸、酒石酸もしくはプロパン-1,2,3-トリカルボン酸又はそれらの混合物から選択されるものが挙げられる。
【0041】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルドープは、ドープの質量に基づいて、少なくとも0.01質量%、少なくとも0.05質量%、少なくとも0.06質量%、少なくとも0.07質量%、少なくとも0.08質量%、少なくとも0.09質量%、少なくとも0.1質量%、少なくとも0.2質量%、又は少なくとも0.3質量%、及び/又は、2質量%以下、1.5質量%以下、1.4質量%以下、1.3質量%以下、1.2質量%以下、1.1質量%以下、1質量%以下、0.9質量%以下、又は0.8質量%以下の多官能酸を含む。特定の実施形態において、セルロースエステルドープは、ドープの総質量に基づいて、0.01質量%~2質量%、0.01質量%~1.5質量%、0.05質量%~1.5質量%、0.08質量%~1.3質量%、又は0.1質量%~1質量%の多官能酸を含む。
【0042】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて(例えば、N,N-ジメチルアセトアミドがドープ中に存在するときなど)、ドープは0質量%のセルロースナノ結晶を含む。セルロースナノ結晶としては、植物及び樹木などのセルロースベースの材料の制御された酸加水分解によって生成されるロッド様ナノ粒子(例えば、直径20nm未満、長さ500nm未満)が挙げられる。
【0043】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、ドープは、ドープ中の総固形分に基づいて、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、又は0質量%以下の、セルロースエステルではないポリマーを含む。
【0044】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルドープ中に存在することができる任意のポリウレタン、ポリオレフィン、ナイロン、ポリエステル、及び/又はポリウレタン尿素の合計質量は、セルロースエステルドープ中の総固形分に基づいて、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、又は0質量%である。
【0045】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルドープ中に存在することができるポリウレタンは、セルロースエステルドープ中の総固形分に基づいて、10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、又は0質量%のレベルで存在する。
【0046】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルドープ中に存在することができるポリウレタン尿素は、セルロースエステルドープ中の総固形分に基づいて、10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、又は0質量%のレベルで存在する。
【0047】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルドープ中に存在することができるアクリロニトリル-酢酸ビニルコポリマーは、セルロースエステルドープ中の総固形分に基づいて、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、又は0質量%のレベルで存在する。
【0048】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、ドープは、セルロースエステル、溶媒、及び任意の他の成分を低温で混合することによって調製される。 特定の実施形態において、この混合は、少なくとも45℃、少なくとも46℃、少なくとも47℃、少なくとも48℃、少なくとも49℃、少なくとも50℃、少なくとも51℃、少なくとも52℃、少なくとも53℃、少なくとも54℃、少なくとも55℃、少なくとも56℃、少なくとも57℃、少なくとも58℃、少なくとも59℃、又は少なくとも60℃、及び/又は140℃以下、130℃以下、120℃以下、110℃以下、105℃以下、104℃以下、103℃以下、102℃以下、101℃以下、100℃以下、99℃以下、98℃以下、97℃以下、96℃以下、又は95℃以下の温度で混合することによって行われる。特定の実施形態において、この温度は、45℃~140℃、45℃~105℃、47℃~103℃、又は50℃~100℃である。
【0049】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、この混合は、少なくとも5分間、少なくとも6分間、少なくとも8分間、少なくとも10分間、少なくとも12分間、少なくとも14分間、又は少なくとも15分間、及び/又は、48時間以下、36時間以下、24時間以下、20時間以下、16時間以下、12時間以下、又は8時間以下で行われる。特定の実施形態において、この時間は5分~48時間、5分~36時間、5分~24時間、又は5分~8時間である。
【0050】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、ドープは、最初にセルロースエステル、溶媒及び任意の他の成分をスラリー化し、次に、非常に低い温度まで冷却することによって調製される。特定の実施形態において、この温度は少なくとも-100℃、少なくとも-75℃、少なくとも-70℃、少なくとも-65℃、少なくとも-60℃、少なくとも-55℃、又は少なくとも-50℃、及び/又は、5℃以下、4℃以下、3℃以下、2℃以下、1℃以下、0℃以下、-5℃以下、又は-10℃以下であり、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、又は少なくとも10時間、及び/又は、48時間以下、36時間以下、30時間以下、24時間以下、又は15時間以下の上記の温度のいずれかで保管する。特定の実施形態において、この温度は、-100℃~5℃、-75℃~5℃、-75℃~0℃、-65℃~0℃、又は50℃~-5℃であり、及び/又は、保存時間は1時間~48時間、3時間~36時間、5時間~24時間、又は7時間~10時間である。特定の実施形態において、ドープはスピン乾燥前に再び温められ、室温で混合される。
【0051】
セルロースエステルドープを形成した後に、一時保管及び/又は脱気のために任意選択的なドープ保持タンクに送ることができる。ドープ保持タンクは、セルロースエステルドープを貯蔵することができる、当該技術分野で知られている任意の従来の貯蔵タンクを含むことができる。セルロースエステルドープは、保持タンクに保管されている間に、ドープの物理的特性を維持し、及び/又は混合工程中に導入された気泡を除去することが促進される条件を受けることができる。保持タンク及び/又は脱気タンクの温度及び圧力は、セルロースエステルドープの品質を高め、維持するために必要に応じて最適化することができる。
【0052】
次に、セルロースエステルドープをドープ保持タンクからフィルタにポンプで送り出し、紡糸前にセルロースエステルドープから大きくて望ましくない粒子及びゲルを除去することができる。フィルタは、当該技術分野で知られている任意の従来のフィルタ装置及びフィルタタイプを含むことができる。ろ過後に、ろ過されたセルロースエステルドープは、蒸発チャンバ又はキャビネットの近く又はその中に配置された紡糸口金にポンプで送られることができる。
【0053】
セルロースエステルドープは紡糸口金を通して計量供給され、それによって1つ以上の繊維を形成することができる。紡糸口金の1つ以上の穴の形状及びサイズは、繊維の断面を決定するのに役立つ。紡糸口金面の穴の数によって、ドープが紡糸口金に計量供給されるときに同時に形成される繊維の数が決まる。ドープが紡糸口金面の穴を通過すると、個々の繊維が形成される。
【0054】
より具体的には、1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルドープは、当該技術分野で知られている設計を有する(例えば、20~200ミクロンの円直径に相当する穴面積を有する)紡糸口金孔を通して10~1000m/分の速度で紡糸することができる。1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、紡糸口金は、少なくとも75℃、少なくとも80℃、少なくとも85℃、少なくとも90℃、少なくとも95℃、又は少なくとも100℃、及び/又は、175℃以下、170℃以下、165℃以下、160℃以下、155℃以下、又は150℃以下の温度に維持されうる。特定の実施形態において、紡糸口金のヘッドは、75℃~175℃、85℃~165℃、95℃~160℃、又は100℃~150℃の範囲の温度に維持されうる。
【0055】
紡糸口金において、セルロースエステルドープを複数の穴を通して押出し、連続セルロースエステル繊維を形成することができる。紡糸口金において、繊維は引き出され、複数の個々の繊維、又は数百の個々の繊維、又はさらには1,000の個々の繊維の束が形成されうる。これらの束のそれぞれは、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、又は少なくとも400、及び/又は1000以下、900以下、800以下、700以下、又は600以下の繊維を含むことができる。紡糸口金は、個々のフィラメント繊維を製造するのに適した任意の速度で操作することができ、その後、これらのフィラメント繊維は、所望のサイズ及び形状を有する束に組み立てられる。本明細書で使用されるときに、「個々のフィラメント繊維」という用語は、紡糸口金の面の各穴によって最初に生成される連続フィラメントを指す。
【0056】
繊維は紡糸口金を通して垂直紡糸キャビネット内に押出され、このキャビネットの壁は公称150℃~240℃であり、公称200~500℃のガスをキャビネット内に含むことができ、そこで溶媒はフラッシュオフされ又は蒸発される。特定の実施形態において、蒸発させることは、紡糸された繊維を少なくとも100℃、少なくとも110℃、少なくとも120℃、少なくとも130℃、少なくとも140℃、少なくとも145℃、少なくとも150℃以上、少なくとも153℃以上、少なくとも155℃、少なくとも160℃、少なくとも165℃、少なくとも170℃、少なくとも175℃、少なくとも180℃、少なくとも185℃、又は少なくとも189℃、及び/又は、500℃以下、400℃以下、375℃以下、350℃以下、325℃以下、300℃以下、275℃以下、250℃以下、240℃以下、230℃以下、又は220℃以下の温度に暴露することを含む。特定の実施形態では、この温度は、100℃~500℃、110℃~400℃、120℃~375℃、130℃~350℃、140℃~300℃、又は150℃~250℃である。
【0057】
形成されるセルロースエステル繊維は、1つの材料(例えば、セルロースエステル)のみから形成される単一成分繊維、又は均一にブレンドされた組成物の形態である可能性があり、したがって、繊維の外表面内に異なる組成を描写する内部相又は境界を特徴とする「バイコンポーネント」又は「マルチコンポーネント」とは考えられないことに留意すべきである。1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、結果として得られるセルロースエステル繊維は、繊維の総質量に基づいて、少なくとも50質量%、少なくとも55質量%、少なくとも60質量%、少なくとも65質量%、少なくとも70質量%、少なくとも75質量%、少なくとも80質量%、少なくとも85質量%、少なくとも90質量%、少なくとも95質量%、少なくとも99質量%、又は少なくとも99.9質量%のセルロースエステルを含むことができる。特定の実施形態において、セルロースエステル繊維は完全にセルロースエステルから形成されうる。
【0058】
紡糸口金から排出される個々のセルロースエステル繊維は、任意の適切な横断面形状を有することができる。例示的な断面形状としては、限定するわけではないが、円形又は円形以外(非円形)が挙げられる。1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、紡糸口金から排出される個々の繊維は、実質的に円形の断面形状を有することができる。本明細書で使用されるときに、「断面」という用語は、一般に、繊維の長尺方向に対して垂直な方向で測定した繊維の横断面を指す。繊維の断面は、定量的画像分析(「QIA」)を使用して決定及び測定されうる。
【0059】
個々の繊維の断面形状は、円形断面形状からの偏差に従って特性化することもできる。幾つかの場合において、この偏差は繊維の形状係数によって特性化することができる。形状係数は次の式で決定される:形状係数=外周/(4πx 断面積)1/2。幾つかの実施形態において、個々のセルロースエステル繊維の形状係数は、1~2、1~1.8、1~1.7、1~1.5、1~1.4、1~1.25、1~1.15、又は1~1.1であることができる。真円の断面形状を有する繊維の形状係数は1である。形状係数は、QIAを使用して測定できる繊維の断面積から計算できる。
【0060】
さらに、特定の実施形態において、セルロースエステル繊維は、中空繊維の形態ではなく、中実繊維(内部にアパチャが存在しない中実の断面形状を有する繊維)の形態であることができる。
【0061】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態との組み合わせにおいて、スパンデックス繊維の典型的な紡糸キャビネットは30を超える端部(又はヤーン)を有することができるが、セルロースエステルの場合に、キャビネット当たり30以下の端部、キャビネットあたり25以下、キャビネットあたり20以下、キャビネットあたり15以下、キャビネットあたり10以下、キャビネットあたり8以下、キャビネットあたり6以下、キャビネットあたり4以下の端部を有することが望ましい。垂直紡糸キャビネット内の端部の数を減らすと、低温で十分な溶媒蒸発が可能になり、繊維の変色を防ぐのに有益である。
【0062】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態との組み合わせにおいて、セルロースエステル繊維は、2倍以下、1.8倍以下、1.6倍以下、1.4倍以下、1.2倍以下で引き落とされることが望ましい。ここで、引落比は、紡糸口金穴の出口における繊維の速度に対する垂直紡糸キャビネットの出口における繊維の速度の比として規定される。
【0063】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステル繊維及び/又はそれから製造されるヤーンは、ASTM D22556に従って測定して、少なくとも0.2g/デニール、少なくとも0.3g/デニール、少なくとも0.4g/デニール、少なくとも0.5g/デニール、少なくとも0.6g/デニール、少なくとも0.7g/デニール、少なくとも0.8g/デニール、少なくとも0.9g/デニール、少なくとも1g/デニール、少なくとも1.1g/デニール、少なくとも1.2g/デニール、少なくとも1.3g/デニール、少なくとも1.4g/デニール以上、少なくとも1.5g/デニール、少なくとも1.6g/デニール、少なくとも1.7g/デニール、少なくとも1.8g/デニール、1.9g/デニール、又は少なくとも2g/デニール、及び/又は、3.0g/デニール以下、又は2.5g/デニール以下、2.3g/デニール以下、2.1g/デニール以下、2g/デニール以下、又は1.9g/デニール以下のテナシティを示すことができる。
【0064】
破断伸びとも呼ばれる伸びはパーセンテージで表され、ヤーン又はフィラメントが破断する前にどれだけ伸びるかの指標である。1つの実施形態において、又は任意の他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステル繊維及び/又はそれから製造されるヤーンは、ASTM D22556に従って測定して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、又は少なくとも30%の破断点伸びを示すことができる。
【0065】
シルクファクター(「SF」)は、所与の繊維の破損エンベロープを予測するために使用される、経験的に決定されたテナシティと伸びの間の関係である。シルクファクターは、所与のプロセスでの使用に対するヤーン又は繊維の適合性を特性化するために使用でき、次の式に基づいて計算される。
シルクファクター=テナシティ×√伸び
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステル繊維及び/又はそれから製造されるヤーンは、少なくとも5.0、少なくとも6.0、少なくとも7.0、又は少なくとも7.6のシルクファクターを示すことができ、こここで、伸びはパーセンテージとして表され、テナシティはグラム/デニールで表される。
【0066】
上で述べたように、セルロースエステル繊維は連続フィラメント繊維として形成される。 したがって、1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステル繊維は、少なくとも10:1、少なくとも20:1、少なくとも30:1、少なくとも40:1、少なくとも50:1、少なくとも100:1、少なくとも500:1、少なくとも1,000:1、又は少なくとも10,000:1のアスペクト比(L/D)を有することができる。
【0067】
連続フィラメント繊維は、蒸発又は溶媒フラッシュオフ後にワインダでコア又はチューブ上に蓄積され、任意選択的な下流プロセスに送られることができる。注目すべきことに、この開示は乾式紡糸プロセスに関するものであるため、蒸発又は溶媒のフラッシュオフ後に繊維は凝固浴を通過すること又は凝固浴に引き込まれることがない。繊維を巻き取りロールの周りに巻き付けることができ、巻き取りロールは張力を与えて繊維をプロセスの下流工程に引き込む。この工程は、例えば、1つ以上のアニーリングセクション、ワインダ、クリンパ、カッター又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0068】
1つの実施形態、又は他の言及された実施形態との組み合わせにおいて、スパンデックスヤーンボビンは、有意な量のワインダドローで巻き取られ、ワインダ速度は、典型的に、前のロールの速度より5%速く、セルロースエステル連続フィラメント繊維の場合には、ワインダ引落比が3%未満、ワインダ引落比が2%未満、ワインダ引落比が1%未満、ワインダ引落比が0.8%未満、ワインダ引落比が0.5%未満であることが望ましい。
【0069】
連続フィラメントのセルロースエステル繊維は、束、バンド又はヤーンに集められてもよい。束、バンド又はヤーンは、複数のセルロースエステル繊維を含むことができる。これらの束、バンド又はヤーンのそれぞれは、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、又は少なくとも400、及び/又は、1,000以下、900以下、800以下、700以下、又は600以下の個々の繊維を含むことができる。
【0070】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステル繊維及び/又はセルロースエステルの束、バンド又はヤーンは、パターン化された波状形状が個々の繊維の少なくとも一部分又は実質的にすべてに与えられるクリンプゾーンを通過することができる。使用されるときに、クリンプゾーンは、繊維を機械的に捲縮するための少なくとも1つのクリンプデバイスを含む。一般に、セルロースエステル繊維は、熱的又は化学的手段(例えば、ホットウォータバス、蒸気、エアジェット又は化学コーティング)によって捲縮されるのではなく、代わりに、適切な捲縮機を使用して機械的に捲縮されることが望ましい。適切なタイプの機械的捲縮機の一例は、複数のローラーを利用して摩擦を発生させ、繊維を座屈させてクリンプを形成させる「スタッフィングボックス」又は「スタッファボックス」クリンパである。他のタイプの捲縮機も適することができる。クリンプ繊維を付与するのに適した装置の例は、例えば、米国特許第9,179,709号明細書、同第2,346,258号明細書、同第3,353,239号明細書、同第3,571,870号明細書、同第3,813,740号明細書、同第4,004,330号明細書、同第4,095,318号明細書、同第5,025,538号明細書、同第7,152,288号明細書及び同第7,585,442号明細書に記載されており、これらのそれぞれは、本開示と矛盾しない範囲で参照により本明細書に組み込まれる。
【0071】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステル繊維が、ASTM D3937-12に従って測定して、少なくとも5、少なくとも7、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも15、少なくとも17、及び/又は、30以下、27以下、25以下、23以下、20以下、又は19以下のクリンプ数/インチ(「CPI」)の捲縮頻度を有するように捲縮を実施することができる。特定の実施形態において、セルロースエステルの束、バンドもしくはヤーン及び/又は様々な下流製品を製造するために使用される繊維の平均CPIは、7~30CPI、10~30CPI、10~27CPI、10~25CPI、10~23CPI、10~20CPI、12~30CPI、12~27CPI、12~25CPI、12~23CPI、12~CPI、15~30CPI、15~27CPI、15~23CPI、15~20CPI、又は15 ~ 19CPIの範囲であることができる。
【0072】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、捲縮されるときに、繊維の捲縮振幅は変化することができ、例えば、少なくとも0.85、0.90、0.93、0.96、0.98、1.00又は1.04mmであることができる。追加的又は代替的に、1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、繊維の捲縮振幅は、最大1.75、最大1.70、最大1.65、最大1.55、最大1.35、最大1.28、最大1.24、最大1.15、最大1.10、最大1.03、又は最大0.98mmであることができる。
【0073】
さらに、1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステル繊維、セルロースエステルの束、バンドもしくはヤーン、及び/又はそれらから製造されるステープル繊維は、少なくとも1:1の捲縮比を有することができる。本明細書で使用されるときに、「捲縮比」とは、捲縮されていないトウの長さ/捲縮されたトウの長さの比を指す。特定の実施形態において、セルロースエステル繊維、セルロースエステルヤーン、及び/又はそれらから製造されるステープル繊維は、少なくとも1:1、少なくとも1.1:1、少なくとも1.125:1、少なくとも1.15:1又は少なくとも1.2:1の捲縮比を有することができる。
【0074】
捲縮振幅及び捲縮比は、米国特許出願第2020/0299822号明細書に概説されている手順に従って測定され、この特許は、本開示と矛盾しない範囲で参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
追加的に又は代替的に、1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステル繊維及び/又はそれから形成される束、バンドもしくはヤーンに、1つ以上のタイプの表面仕上げ剤を施してもよい。適用方法は限定されず、スプレー、芯塗布、浸漬の使用、又はスクイーズ、リックもしくはキスローラーの使用を含むことができる。繊維に仕上げ剤を適用する位置は、仕上げ剤の機能に応じて異なることができる。例えば、潤滑仕上げ剤は、紡糸後かつ捲縮前、又は繊維を束に集める前に適用することができる。切断潤滑剤及び/又は帯電防止性潤滑剤は、捲縮の前もしくは後及び乾燥前に適用されうる。セルロースエステル繊維上のすべての仕上げ剤(潤滑剤、切削潤滑剤、帯電防止仕上げ剤、又はその他のいずれも)の適切な量は、乾燥セルロースエステル繊維の質量に対して、少なくとも0.01、少なくとも0.02、少なくとも0.05、少なくとも0.10、少なくとも0.15、少なくとも0.20、少なくとも0.25、少なくとも0.30、少なくとも0.35、少なくとも0.40、少なくとも0.45、少なくとも0.50、少なくとも0.55、又は少なくとも0.60パーセントのフィニッシュ・オン・ヤーン(「FOY」)であることができる。追加的又は代替的に、1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、仕上げ剤の累積量は、乾燥繊維の総質量に基づいて、2.5以下、2.0以下、1.5以下、1.2以下、1.0以下、0.9以下、0.8以下、又は0.7以下のパーセントFOYの量で存在しうる。質量パーセントで表されるとおりの繊維上の仕上げ剤の量は、溶媒抽出によって決定されうる。本明細書で使用されるときに、「FOY」又は「フィニッシュ・オン・ヤーン」は、添加された水を差し引いた繊維又はヤーン上の仕上げ剤の量を指す。
【0076】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステル繊維は、少なくとも1つの可塑剤を含むことができ、あるいは、可塑剤を含まないこともできる。セルロースエステル繊維は、セルロースエステル繊維の総質量に基づいて、30質量%未満、12質量%未満、10質量%未満、9質量%未満、8質量%未満、7質量%未満、6質量%未満、5質量%未満、4質量%未満、3質量%未満、2質量%未満、1質量%未満、0.5質量%未満の少なくとも1つの可塑剤を含むことができる。可塑剤が存在するときに、ドープを製造するために使用されるフレークに含まれる可塑剤を含むドープを紡糸することによって、可塑剤を繊維自体に組み込むことができ、及び/又は、仕上げ剤を適用するために使用される方法のいずれかによって可塑剤を繊維又はフィラメントの表面に適用することができる。所望ならば、可塑剤を仕上げ剤配合物に含めることができる。
【0077】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステル繊維及び/又はそれから形成されるヤーンは生分解性であることができる。本明細書で使用されるときに、「生分解性」という用語は、一般に、特定の環境条件下で材料が化学的に分解する傾向を指す。分解の程度は、特定の環境条件に所与の期間さらされたサンプルの重量損失によって特性化することができる。幾つかの例において、セルロースエステル繊維及び/又はそれから形成されたヤーンは、土壌中に60日間埋めた後に、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、又は少なくとも20%の重量損失を示すことができ、及び/又は、堆肥化装置内に15日間暴露した後に、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、又は少なくとも35%の重量損失を示すことができる。しかしながら、分解速度は繊維の特定の最終用途によって異なることがある。例示的な試験条件は、米国特許第5,870,988号明細書及び同第6,571,802号明細書に提供されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0078】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステル繊維及び/又はそれから形成されたヤーンは堆肥化可能であることができる。「堆肥化可能」と考えられるためには、材料は次の4つの基準を満たさなければならない(1)材料は生分解性でなければならない。(2)材料は崩壊性でなければならない。(3)材料は最大量を超える重金属を含んではならない。(4)材料は生態毒性があってはならない。「崩壊性」という用語は、特定の条件にさらされたときに材料が物理的に小さな破片に分解する傾向を指す。崩壊は、材料そのものだけでなく、試験対象の物品の物理的なサイズ及び構成にも依存する。生態毒性は、植物の生命に対する材料の影響を測定し、材料の重金属含有量は、標準試験方法に定められた手順に従って決定される。
【0079】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステル繊維及び/又はそれから形成されたヤーンは、産業的に堆肥化可能、家庭で堆肥化可能、又はその両方であることができる。このような実施形態において、セルロースエステル繊維は、4つの基準を満たすことができる:(1)少なくとも90%の炭素含有量が180日以内に転化されるという点で生分解性である。(2)少なくとも90%の材料が12週間以内に崩壊するという点で崩壊性である。(3)EN12423規格に基づいて確立された閾値を超える重金属を含まない。(4)崩壊された内容物は腐植として将来の植物の成長を支持する。ここで、これら4つの条件はそれぞれASTM D6400、ISO 17088、又は EN 13432の方法に従って試験される。
【0080】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステル繊維及び/又はそれから形成されたヤーンは、ISO 14855-1 (2012)に従って、周囲温度(28℃±2℃)での好気性堆肥化条件下で試験したときに、50日以内の期間で少なくとも70パーセントの生分解を示すことができる。幾つかの場合に、セルロースエステル繊維及び/又はそれから形成されたヤーンは、「家庭での堆肥化条件」とも呼ばれる、これらの条件下で試験したときに、49日以下、48日以下、47日以下、46日以下、45日以下、44日以下、43日以下、42日以下、41日以下、40日以下、39日以下、38日以下、又は37日以下の期間で少なくとも70パーセントの生分解を示すことができる。これらの条件は、水性又は嫌気性でない可能性がある。
【0081】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステル繊維及び/又はそれから形成されたヤーンは、ISO 14855-1 (2012)に従って温度58℃(±2℃)で好気性堆肥化条件下で試験したときに、45日以内に少なくとも60パーセントの生分解を示すことができる。幾つかの場合に、「産業上の堆肥化条件」とも呼ばれる、これらの条件下で試験すると、44日以内に少なくとも60パーセントの生分解を示すことができる。これらは水性又は嫌気性条件でない可能性がある。
【0082】
得られたセルロースエステル繊維は、トウバンド、ステープル繊維、フィラメントヤーン、スパンヤーン、織物品、不織布品及び/又は編物テキスタイルなどの広範な最終製品を製造するために使用されうる。
【0083】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、上述のセルロースエステル繊維及び/又はセルロースエステルヤーンをステープル繊維に切断することができる。繊維に過度の損傷を与えることなく、繊維を所望の長さに切断することができる任意の適切な種類の切断デバイスを使用することができる。切断デバイスの例としては、限定するわけではないが、ロータリーカッター、ギロチン、ストレッチブレーキングデバイス、往復ブレード、又はそれらの組み合わせが挙げられる。切断されると、セルロースエステルステープル繊維は、その後の輸送、保管及び/又は使用のためにベールに包まれるか、そうでなければ袋詰め又は包装されることができる。1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、ステープル繊維のd50長さは、少なくとも5mm、少なくとも10mm、少なくとも20mm、少なくとも30mm、少なくとも40mm、又は少なくとも50mm、及び/又は、150mm以下、140mm以下、130mm以下、125mm以下、120mm以下、115mm以下、110mm以下、105mm以下、100mm以下、又は95mm以下であることができる。
【0084】
追加的又は代替的に、1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステル繊維(セルロースエステルステープル繊維又はセルロースエステル連続繊維のいずれであっても)のフィラメント当たりのデニール(9000mの繊維長のg重量)又は「DPF」は0.5~20未満の範囲であることができる。特定の測定方法は限定されず、ステープル繊維が切断されるフィラメントが得られる場合には、FAVIMAT振動鏡手順を使用するASTM 1577-07方法、既知の長さのサンプルの微量天秤重量測定、又は便利な光学顕微鏡又は分析装置を使用した幅分析が挙げられる。DPFは繊維の最大幅とも相関関係がありえる。
【0085】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、ステープル繊維はセルロースエステルスパンヤーンに加工されうる。スパンヤーンは、ステープルヤーン紡糸方法によって機械的に絡み合った短いステープル繊維を含む連続ストランドである。 ステープルヤーンの紡糸方法は、限定するわけではないが、リング紡績、オープンエンド紡績、エアジェット紡績、コンパクト紡績、サイロ紡績、ボルテックス紡績、梳毛紡績、セミ梳毛紡績、ウール紡績及び亜麻を使用した湿式紡績であることができる。
【0086】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステル繊維は、不織布テキスタイルなどの不織布物品に加工されうる。例示的な不織布物品は、湿式不織布物品、エアレイド不織布物品、カード物品、及び/又は乾式不織布物品を挙げることができる。
【0087】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルヤーンは、織布テキスタイルなどの織物品に加工されうる。織布テキスタイルは、少なくとも2本のヤーンのたて糸及びよこ糸を織り交ぜることによって織機上で形成することができ、たて糸ストランドは平行に配向され、よこ糸はたて糸の配向に対してある角度でたて糸の上と下に交互のパターンで織り交ぜられる。
【0088】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、セルロースエステルヤーンは、編物テキスタイルなどの編物品に加工されうる。このような編物テキスタイルは、ヤーンのループをインターロックすることによって形成されうる。
【0089】
1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、ステープル繊維、ヤーン、不織布物品、編物品及び織物品を含む、本明細書に記載される最終製品は、セルロースエステル繊維を含むか、本質的にセルロースエステル繊維からなるか、又はセルロースエステル繊維からなることができる。ステープル繊維、ヤーン、不織布物品、編物品及び織物品を含む本明細書に記載の最終物品は、物品の総質量に基づいて、少なくとも0.25、少なくとも0.5、少なくとも0.75、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも18、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも99、又は少なくとも99.9質量パーセントの1つ以上のセルロースエステル繊維を含むことができる。追加的に又は代替的に、1つの実施形態において、又は他の言及された実施形態と組み合わせて、ステープル繊維、ヤーン、不織布物品、編物品及び織物品を含む本明細書に記載の最終物品は、物品の総質量に基づいて、99質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、又は5質量%以下の1つ以上のセルロースエステル繊維を含む。特定の実施形態において、最終物品は完全にセルロースエステル繊維から形成されてもよいし、又は、物品の総質量に基づいて、0.25~50質量%、1~99質量%、1~50質量%、50~99質量%、1~20質量%、又は0.25~5質量%の範囲の1つ以上のセルロースエステル繊維を含むことができる。
【0090】
様々な実施形態のさらなる利点は、本明細書の開示及び以下の実施例を検討すれば、当業者に明らかとなるであろう。 本明細書に記載される様々な実施形態は、本明細書に別段の指示がない限り、必ずしも相互に排他的ではないことが理解されるであろう。例えば、1つの実施形態で説明又は図示された特徴は、他の実施形態にも含まれる場合があるが、必ずしも含まれる必要はない。したがって、本開示は、本明細書に記載される特定の実施形態の様々な組み合わせ及び/又は統合を包含する。
【0091】
定義
以下は定義された用語の排他的なリストを意図したものではないことを理解されたい。例えば、文脈内での定義された用語の使用を伴う場合など、他の定義が前述の説明で提供される場合がある。
【0092】
本明細書で使用されるときに、用語「a」、「an」及び「the」は、1つ又は複数を意味する。
【0093】
本明細書で使用されるときに、用語「及び/又は」は、2つ以上の項目のリストで使用されるときに、列挙された項目のいずれか1つを単独で使用できること、又は列挙された項目の2つ以上の任意の組み合わせが使用できることを意味する。例えば、組成物が成分 A、B及び/又はC を含むと記載されている場合に、組成物はA単独、B単独、C単独、AとBの組み合わせ、AとCの組み合わせ、BとCの組み合わせ、又はA、B、Cの組み合わせを含むことができる。
【0094】
本明細書で使用されるときに、「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、「含む(comprise)」、「含む(contain)」、「含む(containing)」及び「含む(contains)」という用語は、その用語の前に挙げられた主題からその用語の後に列挙される1つ以上の要素に移行するために使用される無制限の移行用語である。移行用語の後に列挙される1つ以上の要素は、必ずしも主題を構成する唯一の要素ではない。
【0095】
本明細書で使用されるときに、「有する(having)」、「有する(has)」、及び「有する(have)」という用語は、上記の「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprise)」と同じ無制限の意味を有する。
【0096】
本明細書で使用されるときに、「含む(including)」、「含む(include)」、及び「含まれる(included)」という用語は、上記の「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprise)」と同じ無制限の意味を有する。
【0097】
数値範囲
本説明では、本発明に関連する特定のパラメータを定量化するために数値範囲を使用する。数値範囲が提供されるときに、そのような範囲は、範囲の下限値のみを列挙する請求項の限定及び範囲の上限値のみを列挙する請求項の限定について文字通りのサポートを提供するものとして解釈されるべきであることを理解されたい。例えば、開示された10~100の数値範囲は、「10より大きい」(上限なし)を記載する請求項及び「100未満」(下限なし)を記載する請求項の文字通りのサポートを提供する。
【0098】
さらに、「少なくとも」及び「以下」などの記述子の後の数値のリストは、その記述子の後のすべての数値に基づく範囲の文字通りのサポートを提供することを理解されたい。例えば、「少なくとも2、5又は10、及び/又は、100、50又は25以下」を指定する記述は、「少なくとも25」、「50以下」、「少なくとも10でかつ25」の範囲文字通りのサポートを提供する。
【実施例】
【0099】
例
以下の実施例は、本開示による方法を説明する。しかしながら、これらの例は例示のために提供されており、全体の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0100】
材料と方法
汚染物又は残留水を最小限に抑えるために、試薬グレードのDMFの新しいボトルを使用してドープを調製した。各ドープは、25グラムのEastman CA 394-60セルロースアセテート(CDA)及び75グラムのDMF溶媒を含んだ。「高温混合」の場合に、CDA粉末を添加する前に、まずDMFをジャー内で所望の混合温度(典型的に90℃)まで15分間加熱した。ジャーには蓋が付いており、外気の侵入を最小限に抑えた。メカニカルスターラを使用して1時間の混合を開始し、その後サンプルを取り出し、室温まで冷却し、色及び曇りについて試験した。
【0101】
「低温混合」サンプルの場合に、CDAを室温でDMFでスラリー化し、次にジャーを密閉し、ドライアイスで満たされた冷却器内に挿入し、そこで4時間保管し、その後室温まで温め、次いで、それを室温で一晩回転させて、混合の均質化を完了した。ドライアイスではなく標準的な実験室用冷凍庫にサンプルを挿入して、幾つかの追加サンプルを試験したが、それ以外の手順は同じであった。
【0102】
出発CDAの水分含有量は、Sartorius Mark 3分析装置(Goettingen、Germany)を使用して測定された。受け取ったままのサンプルの水分含量は1.3wt%であった。3.5質量%の水分レベルを有する湿ったCDAサンプルを、数ヶ月間研究室に置かれていた開いた袋から得た。湿潤サンプルを真空オーブン内で60℃で乾燥させることにより、0.1質量%の水分レベルを有する乾燥サンプルを得た。
【0103】
Hunter Labs Ultrascan Pro (バージニア州レストン)システムを使用して、ドープを20mmキュベットに注ぐことにより、ドープサンプルの色及びヘイズを測定した。次に、このキュベットを光学試験のためにチャンバに挿入した。値は、典型的に、最初のドープ混合後に測定され、次に、120℃で2時間保管した後に再度測定された(乾式紡糸の温度をシミュレートするため)。色は、L* (グレースケールインジケータ)、a* (赤から緑のスケール)及びb*(青から黄色)について報告される。b* の値が高いことは、サンプルがより黄色であることを示す。幾つかのサンプルは非常に低いL* を示し、これは非常に暗いことを意味する。
【0104】
色の測定値をより容易に取得するために、サンプルのフィルムキャスティングを実行して繊維の紡糸をシミュレートした。ドープを120℃で保存した後に、90℃まで冷却し、次いで、ドクターブレードを使用してガラス板(同様に90℃に加熱)上にキャストした。最終フィルムの公称厚さは40μm~70μmの範囲であった。フィルムを180℃で 20分間アニールして溶媒を除去した(キャビネットの状態をより適切にシミュレートするために、一部のサンプルはアニール時間を短縮した)。色とヘイズも、同機器を透過モードで使用してフィルムサンプルで測定した(厚さの違いについては補正を行わなかった)。
【0105】
絶対分子量は、サンプルをNMP溶媒に分散させることにより、GPCを使用してキャストフィルムに対して測定した。GPCカラムは絶対Mw標準を使用して校正した。
【0106】
例1~7
ドープ形成に対する水分及び温度の影響
「高温混合」及び「低温混合」方法を使用して製造された湿潤サンプル及び乾燥サンプルの比較が行われた。混合後及び120℃で2時間後のドープについて、色及びヘイズを測定した(表Iを参照されたい)。サンプル#1は黄変が最も少なく(b* が最も低く)、より湿ったセルロース系サンプルを使用し、低温混合プロセスで製造された。次に良いのは #4で、これは乾燥サンプルでの高温混合によって生成された。興味深いのは、「低温かつ湿潤」又は「高温かつ乾燥」が黄色度を最も低くしたことである。他のすべての組み合わせはさらに悪く、相互に比較するとほぼ同じであった。
【表1】
【0107】
フィルムのヘイズ値も示されており、すべてがドープと比較して低い色を有した。フィルムサンプル間の値のわずかな違いは、主にフィルムの厚さの違いに起因する。
【0108】
サンプル#5は、高温混合の実際的な下限温度を決定するために、90℃ではなく、50℃で混合された。このサンプルは、90℃に比べて溶解するまでに約2倍の時間がかかった。別のサンプル(#6)を室温で混合したが、3時間経っても溶液にならなかった。しかし、-10℃で冷凍庫に保管されたドープサンプル(#7)は、高品質のドープを生成した。
【0109】
例10~16
低温混合による添加剤効果
この例では、追加量の安定化添加剤(0.5質量%又は1質量%)も含まれたことを除いて、上記例1と同様の低温混合プロセスを使用してドープを調製した。開始時の水分は、すべてのCDAサンプルで1.3wt%であった。添加剤は、酸、緩衝剤、酸化防止剤などの可能な安定剤の範囲を表している。表IIに観察され示されているように、クエン酸の添加はb* に最も顕著な効果をもたらし、発色を劇的に減少させた。クエン酸とクエン酸カリウムの混合物(#12及び#13)が次に良好で、中間レベルの発色を示した。サンプル#13、#14及び #15は、添加剤が完全に溶解していなかったために、未溶解の固体がまだ残っていた。緩衝剤として添加された酢酸塩は、発色が最も高かったため、最悪の結果であった(添加剤を全く加えない場合よりも悪かった)。#15は低いb* を有したが、非常に低い L* で示されるように、このサンプルは加熱中に黒くなったことに留意されたい。
【表2】
【0110】
例20~37
90℃での高温混合による添加剤効果
これらの例は、サンプルが90℃で混合されたことを除いて、上記の#10と同様である。さらに、未溶解粒子を最小限に抑えるために、すべての添加剤の添加剤レベルを0.15wt%に減らした(0.5wt% を使用した#30~#32 を除く)。0.1%の水分を有する#31を除いて、すべてのサンプルは1.3質量%の開始水分を有した。低温混合の場合と同様に、様々な塩及び緩衝剤は色を悪化させる傾向があった。単官能性酢酸も同じ効果を示した。色が低いサンプルのみが多官能クエン酸を含んだ。コハク酸(#32)は、クエン酸と同様に多官能性であるにもかかわらず、フィルム内で良好な色を生成しなかった。
【0111】
0.15wt%レベルは、色の低減に効果的なレベルの下限にあることに留意されたい。データに基づくより理想的な目標は、約0.3~0.7wt%である。前述の例のように1%という、より高いレベルでは、0.5%添加を超えた色の有意な改善はない。
【0112】
サンプル#31には、水分が違いを生むかどうかを確認するために、0.5%クエン酸で高度に乾燥させたサンプルとの比較も含まれた。これを#10、#11及び#20と比較すると、クエン酸に関しては水分はそれほど重要ではなく、量のほうがより重要な変数であることが示唆される。
【0113】
サンプル#32~37は、色の安定化にも役立つ可能性があると考えて、他の多官能酸を比較した。クエン酸は、コハク酸、リンゴ酸又は酒石酸よりも色の制御に優れていることが観察された。
【表3】
【0114】
例40~48
フィルムキャストの色に対する酸の影響
この例では、フィルムのサンプルをキャストしそして様々な時間アニールした。サンプル#40及び#41において、フィルムは同じドープ(#10)からキャストされた。#40において、フィルムをキャストし、熱風オーブン内で180℃で20分間アニールして、フィルムを乾燥させた(表IVを参照されたい)。クエン酸フィルムは20分後には非常に黄色くなっていることに留意されたい。これは、融点を超えており、酸素への曝露により劣化が起こっている可能性があるためである。典型的な乾式紡糸キャビネットでは、温度にさらされるのはほんの数秒だけである(おそらく窒素ブランケットを使用した場合)。そこで、紡糸条件をよりよく反映するために、第二のフィルム (#41)をキャストし、180℃で4分間乾燥させた。これは、フィルムの乾燥に必要な最小限の時間であった。観察されたように、色は有意に低下し、他のサンプルよりもはるかに良い色になった。サンプルも完全に乾燥しており、DMF臭はなかった。最後に、サンプル#47を同じドープからキャストしたが、150℃で20分間アニールした。このサンプルも、180℃で4分間の場合と同様の優れた色を示した。残りの例では、他の酸のサンプルもフィルムにキャストし、180℃で4分間のプロトコルを使用してアニールした。クエン酸を含むドープは、クエン酸添加のすべてのレベルで対照よりも黄色度が低かった。対照的に、0.5%リンゴ酸及び酒石酸は、対照よりもわずかに黄色が強かった。
【表4】
【0115】
開示された実施形態に限定されない特許請求の範囲
上述した本発明の好ましい形態は、例示としてのみ使用されるべきであり、本発明の範囲を解釈するために限定的な意味で使用されるべきではない。上述した例示的な実施形態に対する変更は、本発明の主旨から逸脱することなく、当業者によって容易に行うことができるであろう。
【0116】
本発明者らは、特許請求の範囲に記載されている本発明の文字通りの範囲から実質的に逸脱するものではないが、その範囲外にあるあらゆる装置に関する本発明の合理的に公正な範囲を決定及び評価するために均等論に依存する意図をここに表明する。
【国際調査報告】