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特表2024-531484有機酸と、カルボン酸基を含む単位で官能化されたジエンゴムとを含む安定化ポリマー組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】有機酸と、カルボン酸基を含む単位で官能化されたジエンゴムとを含む安定化ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 15/00 20060101AFI20240822BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240822BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20240822BHJP
   C08K 5/51 20060101ALI20240822BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C08L15/00
C08L9/00
C08K5/42
C08K5/51
C08K5/09
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513095
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 EP2022073655
(87)【国際公開番号】W WO2023025878
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】21193500.2
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516112462
【氏名又は名称】アランセオ・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】キリアン・ニコラウス・リヒャルト・ヴェスト
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ルエンツィ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC021
4J002AC02W
4J002AC082
4J002AC08X
4J002AC111
4J002AC11W
4J002EF016
4J002GN01
4J002HA09
(57)【要約】
ポリマー組成物であって、(i)少なくとも1つの第1のポリマーであって、少なくとも1つのカルボン酸基又はその塩を有する少なくとも1つの官能性単位を含む官能化ジエンポリマーであり、官能性単位が、末端基、側基、及びそれらの組み合わせから選択され、好ましくは末端基である、第1のポリマーと;(ii)一般式(1):Ry-(Acg)(1)による少なくとも1つの有機酸と、(iii)場合により、少なくとも1つの第2のポリマーと、を含み、上記ポリマー組成物は、100%である組成物の全重量を基準として、少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%の第1及び第2のポリマーの総量を有し、少なくとも1つの第1のポリマーの量は、少なくとも10重量%であり、第1又は第2のポリマー又はその両方は、100部のポリマー当たり0~100部のエクステンダーオイルを含み、重量パーセントで示されるポリマーの量は、エクステンダーオイルが存在する場合にその量を含み、ここで式(1)において、Acgは、-COOH、-SOH、-OSOH、-PO、-OPO、及びそれらの塩、並びにそれらの組み合わせから選択される酸基を表し;nは、1~10,000の整数を表し;Ryは、nに対応する価数を有する、芳香族又は脂肪族、好ましくは飽和、直鎖、環状、若しくは分岐の炭化水素又はヘテロ炭化水素残基を表し、ヘテロ炭化水素残基は、N、S、Si、O、F、Cl、Br、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上のヘテロ原子をさらに含む炭化水素残基であり、AcgがCOOHである場合、RyはHを表すこともでき、第1の官能化ジエンポリマーは、共役ジエンのホモポリマー、又は少なくとも1つの共役ジエンのコポリマーであり、少なくとも1つの共役ジエンは、ブタジエン、イソプレン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン、ミルセン、オシメン、及びファルネセン、好ましくはブタジエン及びイソプレン、より好ましくはブタジエンを含む、ポリマー組成物。そのような組成物の製造方法、及びそのような組成物から製造された物品も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、
(i)少なくとも1つの第1のポリマーであって、少なくとも1つのカルボン酸基又はその塩を有する少なくとも1つの官能性単位を含む官能化ジエンポリマーであって、前記官能性単位が、末端基、側基、及びそれらの組み合わせから選択され、好ましくは末端基である、第1のポリマーと;
(ii)一般式(1):
Ry-(Acg) (1)
による少なくとも1つの有機酸と、
(iii)場合により、少なくとも1つの第2のポリマーと、
を含み、
前記ポリマー組成物は、100%である前記組成物の全重量を基準として、少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%の第1及び第2のポリマーの総量を有し、少なくとも1つの前記第1のポリマーの量は、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも95重量%であり、前記第1又は前記第2のポリマー又はその両方は、100部のポリマー当たり0~100部のエクステンダーオイルを含み、重量パーセントで示されるポリマーの量は、エクステンダーオイルが存在する場合にその量を含み、ここで式(1)において、
Acgは、-COOH、-SOH、-OSOH、-PO、-OPO、及びそれらの塩、並びにそれらの組み合わせから選択される酸基を表し;
nは、1~10,000の整数を表し;
Ryは、nに対応する価数を有する、芳香族又は脂肪族、好ましくは飽和、直鎖、環状、若しくは分岐の炭化水素又はヘテロ炭化水素残基を表し、前記ヘテロ炭化水素残基は、N、S、Si、O、F、Cl、Br、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上のヘテロ原子をさらに含む炭化水素残基であり、AcgがCOOHである場合、RyはHを表すこともでき、
第1の官能化ジエンポリマーは、共役ジエンのホモポリマー、又は少なくとも1つの共役ジエンのコポリマーであり、前記共役ジエンはブタジエンから選択される、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記第1のポリマーの前記官能性単位が、式(2):
-Rx-COOX (2)
に対応し、ここで-COOXは、カルボン酸基又はその塩を表し、Rxは、前記COOX基と前記ポリマーとを接続するスペーサー基を表し、前記スペーサー基は、化学結合である、又はシラン、ポリシラン、シロキサン、ポリシロキサン、-C(=O)-NR-から選択される少なくとも1つの基を含み、Rは、1~40個の炭素原子を有し、互いに独立してO、N、S、及びSi、又はそれらの組み合わせからなる群から好ましくは選択される1つ以上のヘテロ原子を含むことができる飽和又は不飽和の有機基を表す、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
スペーサー基Rxは、
式(2A):
【化1】
、式(2B):
【化2】
、又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの基を含み、式(2A)及び(2B)中、
、Rは、同じであるか又は異なり、それぞれ、H又は1~20個の炭素原子を有する残基から選択され;
、Rは、同じであるか又は異なり、それぞれ、H又は1~20個の炭素原子を有する残基から選択され、
、Rは、同じであるか又は異なり、それぞれ、H、1~20個の炭素原子を有する残基から選択され、
Aは、1~26個の炭素原子を好ましくは有し、水素原子に加えて、O、N、S、Siから好ましくは選択されるヘテロ原子を含むことができる二価の有機基であり、
nは1~20の整数であり;
又は官能基は、式(V):
【化3】
に対応し、
ここで、COOXはカルボン酸基又はその塩を表し;
、Rは、同一であるか又は異なり、1~40個の炭素原子を有し、互いに独立してO、N、S、及びSiからなる群から好ましくは選択される1つ以上のヘテロ原子を含み得る飽和又は不飽和の有機基を表し;
、Rは、同一であるか又は異なり、1~40個の炭素原子を有し、C及びHに加えて、互いに独立してO、N、S及びSiからなる群から好ましくは選択される1つ以上のヘテロ原子を含み得る飽和又は不飽和の二価の有機基を表す、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記官能化ジエンポリマーが、少なくとも1つの別の共役ジエン、少なくとも1つのビニル芳香族コモノマー、又はそれらの組み合わせから誘導される単位を含むコポリマーであり、好ましくは、前記ビニル芳香族コモノマーが、スチレン、オルト-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、パラ-tert-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記組成物が、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%の少なくとも1つの前記第1のポリマーを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記第1又は任意選択の第2のポリマー、又はその両方が油展されていない、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
Aがカルボン酸基(-COOH基)又はその塩を表す、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
式(1)中、Ryが飽和脂肪族炭化水素残基を表す、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
式(1)中、Aがカルボン酸基又はその塩を表し、nが、1~1,000の整数、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10、より好ましくは1又は2を表す、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
Ryが1~50個の炭素原子を有する残基を表す、又は前記有機酸がギ酸又はその塩である、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記組成物の全重量を基準として、0.01重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~9重量%、又は1.1重量%~7.5重量%の前記有機酸を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
任意選択の少なくとも1つの第2のポリマーが、共役ジエンのホモポリマー、又は少なくとも1つの共役ジエンのコポリマーであり、少なくとも前記共役ジエンが、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン、ミルセン、オシメン、及びファルネセンからなる群から選択され、前記ホモポリマー又はコポリマーが、水素化ホモポリマー及びコポリマーを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のポリマー組成物の製造方法であって、前記有機酸を前記第1のポリマーに添加することを含み、前記第1のポリマーが、a)溶媒の存在下の溶液中に、又はb)固体形態で存在し、a)の場合、前記方法が、場合により、前記溶媒を除去することをさらに含む、方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載のポリマー組成物を、少なくとも1つのフィラー、少なくとも前記第1のポリマーを硬化させることができる少なくとも1つの硬化剤、又はそれらの組み合わせと組み合わせることを含む、ゴム化合物の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法で得られたゴム化合物を含む組成物の硬化により得られる物品であって、好ましくは、タイヤ又はその構成要素から選択される、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機酸又はその塩と、カルボン酸基又はその塩を含む基で官能化されたジエンゴムとを含む組成物、それらの製造、及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ジエンゴムは、多くの異なる用途に使用されている。これらは、典型的には1つ以上のフィラーと組み合わされてゴム化合物が製造され、これらは次に物品に成形されるか、又は別の成分と組み合わされて物品が製造される。ジエンゴムの主要な用途としては、タイヤ、又はタイヤトレッドなどのタイヤの構成要素が挙げられる。典型的なジエンゴムは、ジエンのホモポリマー、又は少なくとも1つのジエンモノマーのコポリマーである。
【0003】
ゴムと、ゴム化合物の製造に用いられるフィラーとの相互作用は、官能性末端基をポリマーに導入することによって改善することができる。したがって、極性末端基で官能化された種々のジエンゴムが開発されている。カルボン酸基を含む基で官能化されたジエンゴムによって、特にタイヤの場合に、改善された化合物が得られることが分かっており、例えば、米国特許出願の(特許文献1)、及び(特許文献2)(Steinhauser及びGross)、並びに国際特許出願の(特許文献3)(Steinhauser)に記載されている。しかしながら、カルボン酸基を含む基で官能化されたポリマーのムーニー粘度は、保管によって大幅に変化することがあるが、SECによって求められるそれらの分子量分布は変化しないままであることが分かった。ムーニー粘度はポリマーの分子量と関連するので、ムーニー粘度の不安定性は、ポリマーの官能基の存在によるものである場合がある。しかしながら、官能化ポリマーのムーニー粘度が不安定であると、ムーニー粘度はより容易に測定可能なためムーニー粘度がポリマーの分子量の規格として当産業において典型的に用いられているので、品質管理の問題が生じる。しかしながら、不安定なムーニー粘度を示すポリマーは、もはやそれらのムーニー粘度では信頼性高く規定することはできない。したがって、より安定なムーニー粘度を有する、カルボン酸を含む単位で官能化されたポリマーの組成物を提供することが必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0075809A1号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2016/0083495A1号明細書
【特許文献3】国際公開第2021/009154号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
少なくとも1つのカルボン酸基を含む官能性単位を有するジエンゴムに有機酸を添加することで、このようなゴムのムーニー粘度を安定化させることができることが分かった。この添加は、溶液又は固体組成物に対して行うことができる。有機酸をポリマー溶液に添加することで、ポリマー溶液の溶液粘度も低下させることができるので、ポリマーの後処理も容易になりうる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、ポリマー組成物であって、
(i)少なくとも1つの第1のポリマーであって、少なくとも1つのカルボン酸基又はその塩を有する少なくとも1つの官能性単位を含む官能化ジエンポリマーであって、官能性単位が、末端基、側基、及びそれらの組み合わせから選択され、好ましくは末端基である、第1のポリマーと;
(ii)一般式(1):
Ry-(Acg) (1)
による少なくとも1つの有機酸と、
(iii)場合により、少なくとも1つの第2のポリマーと、
を含み、
ポリマー組成物は、100%である組成物の全重量を基準として、少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%の第1及び第2のポリマーの総量を有し、少なくとも1つの第1のポリマーの量は、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも95重量%であり、第1又は第2のポリマー又はその両方は、100部のポリマー当たり0~100部のエクステンダーオイルを含み、重量パーセントで示されるポリマーの量は、エクステンダーオイルが存在する場合にその量を含み、ここで式(1)において、
Acgは、-COOH、-SOH、-OSOH、-PO、-OPO、及びそれらの塩、並びにそれらの組み合わせから選択される酸基を表し;
nは、1~10,000の整数を表し;
Ryは、nに対応する価数を有する、芳香族又は脂肪族、好ましくは飽和、直鎖、環状、若しくは分岐の炭化水素又はヘテロ炭化水素残基を表し、ヘテロ炭化水素残基は、N、S、Si、O、F、Cl、Br、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上のヘテロ原子をさらに含む炭化水素残基であり、AcgがCOOHである場合、RyはHを表すこともでき、
第1の官能化ジエンポリマーは、共役ジエンのホモポリマー、又は少なくとも1つの共役ジエンのコポリマーであり、少なくとも1つの共役ジエンはブタジエンから選択される、ポリマー組成物が提供される。
【0007】
別の一態様では、有機酸を第1のポリマーに添加することを含むポリマー組成物の製造方法であって、第1のポリマーは、a)溶媒の存在下の溶液中、又はb)固体形態のいずれかで存在し、a)の場合、上記方法は、場合により、溶媒を除去することをさらに含む、方法が提供される。
【0008】
さらなる一態様では、上記ポリマー組成物を、少なくとも1つのフィラー、少なくとも第1のポリマーを硬化させることができる少なくとも1つの硬化剤、又はそれらの組み合わせと組み合わせることを含む、ゴム化合物の製造方法が提供される。
【0009】
さらに別の一態様では、上記ゴム化合物を含む組成物を硬化させることで得られる物品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
以下の説明において、「からなる」(consisting of)という用語とは逆に、「含む」(comprising)、「含有する」(containing)、「含む」(including)、「有する」(having)という用語は、あらゆる追加の構成要素、ステップ、又は手順の存在の排除を意図するものではない。
【0011】
以下の説明において、基準が使用される場合がある。特に示されなければ、基準は、2020年3月1日に実施中であったバージョンで使用される。例えば、基準が期限切れであるために、その日付において使用されていたバージョンが存在しない場合、バージョンは、2020年3月1日に最も近い日付で実施中であったものが参照される。
【0012】
以下の説明において、組成物又はポリマーの成分の量は、「重量パーセント「、「wt.%」、又は「重量%」によって同義で示すことができる。特に示されなければ、「重量パーセント」、「wt.%」、又は「重量%」という用語は、それぞれ100%である組成物又はポリマーの全重量を基準としている。
【0013】
「phr」という用語は、100部のゴム当たりの部数を意味し、すなわち100%に設定されるゴムの総量を基準とした重量パーセント値を意味する。
【0014】
本開示において特定される範囲は、範囲の端点の間の全ての値を含み開示するものであり、特に指定されなければ、端点をも含む。
【0015】
「置換された」という用語は、少なくとも1つの水素原子が水素以外の化学的要素で置換されている炭化水素含有有機化合物を表すために使用される。この化学的要素は、本明細書において同義で「置換基」、「残基」、又は「基」と呼ばれる。例えば、「フッ素で置換されたメチル基」という用語は、フッ素化メチル基を意味し、-CF、-CHF、及び-CHFの基を含む。「非置換の」という用語は、その水素原子がいずれも置換されていない炭化水素含有有機化合物を表すことを意味する。例えば、用語「非置換メチル残基」は、メチル、すなわち-CHを意味する。
【0016】
有機酸
本開示による有機酸は、カルボン酸、スルホン酸、硫酸、サルフェート、リン酸、ホスホン酸、及びそれらの塩、並びにそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの酸基を含む。有機酸は、一酸又はポリ酸であってよい。有機酸は、例えば、1~10000個の有機酸基、又は1~10個の酸基、又は1~4個の酸基、又は1~2個の酸基を含むことができ、又はこれらはただ1つの有機酸基を有することができる。
【0017】
有機酸は、少なくとも1つの有機残基を含む。有機残基は、芳香族、脂肪族、直鎖、環状、又は分岐、飽和、又は不飽和であってよい。有機残基は、炭化水素残基又はヘテロ炭化水素残基であってよい。本明細書において用いられる場合、「ヘテロ炭化水素残基」という用語は、水素及び炭素原子に加えて、好ましくはN、S、Si、O、F、Cl、Br、及びそれらの組み合わせから選択される別の原子を含む炭化水素残基を意味する。このようなヘテロ原子は、ヒドロキシ基、カルボニル基、チオール基、(ポリ)シロキサン基、(ポリ)シラン基などの官能基の一部であってよく、又は例えばエーテル原子(-O-)若しくはチオエーテル原子(-S-)のように炭素鎖の一部でありそれを中断するものであってよい。有機酸又は有機ポリ酸は、最大100,000g/モルの分子量(カチオンの重量を含まない)を有することができる。本開示の一実施形態では、有機酸は、10,000g/モル未満の分子量(カチオンの重量を含まない)を有する。
【0018】
本開示による有機酸は、一般式(1):
Ry-(Acg) (1)
で表すことができ、式中、
Acgは、-COOH、-SOH、-OSOH、-PO、-OPO、それらの塩、及びそれらの組み合わせから選択される酸基を表し;
nは、1~10,000、好ましくは1~10、より好ましくは1~4、又は1、2、若しくは又は3、最も好ましくは1又は2の整数を表し;
Ryは、nに対応する価数を有する芳香族又は脂肪族で、直鎖、環状若しくは分岐の炭化水素又はヘテロ炭化水素残基を表し、ヘテロ炭化水素残基は、N、S、Si、O、F、Cl、Br、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上のヘテロ原子をさらに含む炭化水素残基である。
【0019】
好ましくは、Ryは、5~5000個、好ましくは5~50個、より好ましくは5~35個の炭素原子を有する。例えば、有機酸は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25個の炭素原子を有することができる。Ryは、nに対応する価数を有する。本開示の一実施形態では、Ryは、1~50個の炭素原子を有する残基、好ましくは脂肪族残基、より好ましくは炭化水素残基を表し、又は有機酸はギ酸若しくはその塩である。
【0020】
好ましくは、有機酸は、カルボン酸であり、Acgは、カルボン酸基又はその塩を表す。本開示の好ましい一実施形態では、有機酸はカルボン酸又はその塩であり、nは、1~1,000の整数、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10を表し、より好ましくはnは1又は2を表し、より好ましくはnは1を表す。
【0021】
好ましくは、Ryは、脂肪族であり、飽和又は不飽和、環状、直鎖、又は分岐であってよい。より好ましくは、Ryは1つ以上のカテナリー酸素原子を場合により含むことができる飽和脂肪族炭化水素残基であり、すなわち、場合により、Ryは、炭化水素エーテル又は炭化水素ポリエーテルであってよい。
【0022】
一実施形態では、有機酸は、限定するものではないがポリアクリレート、ポリアクリレート含有コポリマー、又は1つ以上のポリアクリレート単位を有する化合物などのポリマー酸又はその塩である。ポリマー酸又はポリ酸は、1,000g/モル~100,000g/mol(カチオンが存在する場合、その重量は除外される)、又は1,000~5000g/molの分子量を有することができる。
【0023】
一実施形態では、有機酸はポリマーではない。一実施形態では、有機酸は、1,000g/mol未満、好ましくは500g/mol未満の分子量(あらゆるカチオンの重量は除外される)を有する。
【0024】
好ましくは、有機酸は、重合反応に使用される又は使用された溶媒に対して可溶性である。好ましくは、有機酸はハロゲン化されていない。適切な有機酸の例としては、限定するものではないが、マロン酸、アジピン酸(adipinic acid)、ギ酸、ペンタン酸、キセキサン酸(xexanoic acid)、酢酸、ベルサト酸(versatic acid)、並びに脂肪酸、例えば、限定するものではないが、カプリル酸(C9-COOH)、カプリン酸、ラウリン酸(C11-COOH)、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸(C19-COOH)、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、それらの塩、及びそれらの組み合わせが挙げられる。脂肪酸としては、不飽和脂肪酸、例えばミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸、アラキドン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、及びそれらの組み合わせも挙げられるが、不飽和脂肪酸はあまり好ましくない。
【0025】
有機酸は、ポリマー溶液の溶液粘度の低下、及び/又はポリマーのムーニー粘度の低下に有効な量で使用することができる。第1のポリマーのカルボン酸基又はその塩に対してモル過剰で有機酸を添加することによって、悪影響は生じない場合があるが、必要ではない場合があり、回避することができる。最適な量は、ポリマーのカルボン酸基含有単位の種類及び量、並びに有機酸の種類に依存しうるが、日常的な最適化実験によって特定することができる。本開示によるポリマー組成物中の有機酸の典型的な量としては、組成物の全重量を基準として0.01重量%から最大10重量%まで、又は0.1重量%~9重量%、又は1.1重量%から最大7.5重量%までが挙げられる。
【0026】
第1のポリマー
本開示による第1のポリマーは官能化ポリマーであり、これらは少なくとも1つの官能性単位を含む。この官能性単位は、少なくとも1つのカルボン酸基又はその塩を含む。官能性単位は、末端基(アルファ末端基又はオメガ末端基又はその両方)、側基、及びそれらの組み合わせから選択することができる。一実施形態では、第1のポリマーは、少なくとも1つのこのような官能性単位をポリマーの鎖末端、すなわち、アルファ位(頭部)又はオメガ位(尾部)又はその両方の位置に含み、官能性単位は、同一の場合も、異なる場合もある。好ましくは、ポリマーは、官能性単位をその鎖末端、すなわちポリマーのオメガ位に含み、官能性単位は、末端単位を含む。第1のポリマーは、カルボン酸基又はその塩を有する官能性単位以外の1つ以上の別の官能性単位をさらに含む場合も、含まない場合もある。
【0027】
第1のポリマーは、ゴム、好ましくはジエンポリマーである。モノマーとしての少なくとも1つのジエン、好ましくはモノマーとしての少なくとも1つの共役ジエンを含む重合反応によって得られたジエンゴム。好ましくは、第1のポリマーは、少なくとも1つの共役ジエンのホモポリマー又はコポリマーである。好ましい共役ジエンとしては、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン、ミルセン、オシメン、及び/又はファルネセンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。1,3-ブタジエン及び/又はイソプレンが特に好ましい。共役ジエンとしては、置換共役ジエンであって、ジエンの1つ以上の水素原子が、Si、N、O、H、Cl、F、Br、S、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上のヘテロ原子を含む基、又は1つ以上のヘテロ原子を含む官能基、例えばSi、N、O、H、Cl、F、Br、S、及び組み合わせから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する官能基で置換されている置換共役ジエンも挙げられる。官能基の例としては、ヒドロキシ、チオール、チオエーテル、エーテル、ハロゲン、及び1つ以上のカルボン酸基若しくはその塩を有する単位、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような官能化共役ジエンは、好ましくは前述の1つ以上の共役ジエンと共重合される。一実施形態では、共役ジエンとしては、カルボン酸基、又はカルボン酸基に変換可能な単位を含む基を有する単位を含む共役ジエンが挙げられる。
【0028】
本開示の一実施形態では、第1のポリマーは、ポリブタジエンホモポリマー、より好ましくは1,3-ブタジエンホモポリマーである。本開示の別の一実施形態では、第1のポリマーは1,3-ブタジエン-コポリマーである。
【0029】
本開示の別の一実施形態では、第1のポリマーは、共役ジエンのコポリマーであり、好ましくは、前述の1つ以上の共役ジエン及び/又は1つ以上のビニル芳香族モノマーから誘導される単位、並びに場合により、1つ以上の別のコモノマーから誘導される1つ以上の単位を含むコポリマーである。ビニル芳香族モノマーの例としては、スチレン、オルト-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、パラ-tert-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。スチレンが特に好ましい。ビニル芳香族モノマーとしては、ビニル芳香族モノマーの1つ以上の水素原子が、Si、N、O、H、Cl、F、Br、S、及びそれらの組み合わせから好ましくは選択されるヘテロ原子、又は1つ以上のヘテロ原子を有する基によって置換されている置換ビニル芳香族モノマーも挙げられる。置換モノマーとしては、1つ以上のヘテロ原子を有する1つ以上の官能基を有するビニル芳香族モノマー、又は1つ以上のヘテロ原子を有する少なくとも1つの官能基を含む単位を有するビニル芳香族モノマーも挙げられる。好ましくは、ヘテロ原子は、Si、N、O、H、Cl、F、Br、S及びそれらの組み合わせから選択される。官能基の例としては、ヒドロキシ、チオール、チオエーテル、エーテル、ハロゲン、カルボン酸基若しくはその塩、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような官能化共役モノマーは、好ましくは前述の1つ以上のビニル芳香族モノマーと共重合される。
【0030】
好ましい一実施形態では、本開示による第1のポリマーは、1,3-ブタジエン及びスチレンから誘導される繰り返し単位を含む。
【0031】
本開示による第1のポリマーは、好ましくは10,000~2,000,000g/mol、好ましくは100,000~1,000,000g/molの平均分子量(数平均、Mn)を有する。
【0032】
好ましくは、本開示による第1のポリマーは、約-110℃~約+20℃、好ましくは約-110℃~約0℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0033】
好ましくは、本開示による第1のポリマーは、約10~約200、好ましくは約30~約150ムーニー単位、又41~140ムーニー単位のムーニー粘度[ML1+4(100℃)]を有する。
【0034】
ポリマーは、典型的には、約1.03~約3.5の分散性を有する。
【0035】
第1のポリマーは、当技術分野において公知の方法によって調製することができる。好ましくは、このポリマーは、アニオン溶液重合又は1つ以上の配位触媒を用いた重合を含むプロセスによって得ることができる。重合は、溶液中又は気相中で行うことができる。配位触媒としては、チーグラー-ナッタ触媒、又は単一金属触媒系が挙げられる。好ましい配位触媒は、Ni、Co、Ti、Zr、Nd、V、Cr、Mo、W、又はFeをベースとするものである。
【0036】
好ましくは、重合反応はアニオン溶液重合を含む。アニオン溶液重合の開始剤としては、好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属をベースとする有機金属が挙げられる。例としては、メチルリチウム、エチルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、ペンチルリチウム、n-ヘキシルリチウム、シクロヘキシルリチウム、オクチルリチウム、デシル-リチウム、2-(6-リチオ-n-ヘキソキシ)テトラヒドロピラン、3-(tert-ブチルジメチルシロキシ)-1-プロピルリチウム、フェニルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、1-ナフチルリチウム、p-トルイルリチウム、及び第3級N-アリルアミンから誘導されるアリルリチウム化合物、例えば[1-(ジメチルアミノ)-2-プロペニル]リチウム、[1-[ビス(フェニルメチル)アミノ]-2-プロペニル]リチウム、[1-(ジフェニルアミノ)-2-プロペニル]リチウム、[1-(1-ピロリジニル)-2-プロペニル]リチウム、第2級アミンのリチウムアミド、例えばリチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウム1-メチルイミダゾリジド、リチウム1-メチルピペラジド、リチウムモルホリド、リチウムジシクロヘキシルアミド、リチウムジベンジルアミド、リチウムジフェニルアミドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アリルリチウム化合物及びリチウムアミドは、有機リチウム化合物を、それぞれの第3級N-アリルアミン、又はそれぞれの第2級アミンと反応させることによってその場で調製することもできる。二官能性及び多官能性有機リチウム化合物、例えば1,4-ジリチオブタン、ジリチウムピペラジドを使用することもできる。好ましくはn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、又はそれらの組み合わせが使用される。
【0037】
ポリマーの構造を制御するために、当技術分野において公知のランダマイザー及び制御剤を重合中に使用することができる。このような物質としては、例えば、ジエチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールジ-tert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-tert-ブチルエーテル、2-(2-エトキシエトキシ)-2-メチル-プロパン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチルテトラヒドロフルフリルエーテル、ヘキシルテトラヒドロフルフリルエーテル、2,2-ビス(2-テトラヒドロフリル)プロパン、ジオキサン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-エチレンジアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、1,2-ジピペリジノエタン、1,2-ジピロリジノエタン、1,2-ジモルホリノエタン、カリウム塩及びナトリウム塩であって、アルコール、フェノール、カルボン酸、スルホン酸のカリウム塩及びナトリウム塩、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0038】
溶液重合に好ましい溶媒としては、不活性非プロトン性溶媒、例えば脂肪族炭化水素が挙げられる。具体例としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、及びシクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,4-ジメチルシクロヘキサン、及びそれらの組み合わせ、及び例えばそれらの異性体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらなる例としては、アルケン、例えば1-ブテン、又は芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼン、若しくはプロピルベンゼン、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。これらの溶媒は、個別に又は混合物として使用することができる。好ましい溶媒は、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、及びn-ヘキサンである。適切であれば、上記溶媒を極性溶媒と混合することもできる。
【0039】
重合は、最初にモノマー及び溶媒を導入し、次に開始剤又は触媒を加えることで重合を開始することによって行うことができる。重合は、モノマー及び溶媒を加えることによって重合反応器が満たされる供給プロセスにおいて行うこともできる。開始剤又は触媒は、モノマー及び溶媒とともに導入される、又は加えられる。反応器中に溶媒を導入し、開始剤又は触媒を加え、続いてモノマーを加えるなどの変形を利用することもできる。重合は、連続方式又はバッチ式で行うことができる。重合中又は重合終了時に、さらなるモノマー及び溶媒を加えることができる。
【0040】
重合時間は、数分から数時間までで変動しうる。重合は、通常、10分~8時間、好ましくは20分~4時間の時間の範囲内で行われる。重合は、標準圧力又は高圧(例えば、1~10bar)又は減圧で行うことができる。典型的な反応温度としては、35℃~130℃の間の温度が挙げられる。
【0041】
本開示による末端基官能化ポリマーの調製は、少なくとも1つの官能化剤の添加をさらに伴い、続いて少なくとも1つのさらなる官能化剤の添加を行うことができる。第1又は第2の官能化剤の添加は、連続プロセスの一部であってよい。しかしながら、プロセスは、必要であれば、例えば第1の官能化プロセスの添加後にプロセスを停止し、第2の官能化剤を加える前にプロセスを再開することによるバッチ式によって行うこともできる。
【0042】
第1のポリマーは、少なくとも1つのカルボン酸基又はその塩を含む少なくとも1つの官能性単位を有するために、適切な官能化剤によって官能化される。官能性単位式(2):
-Rx-COOX (2)
で表すことができる。
【0043】
式(2)中、-COOXは、カルボン酸基又はその塩を表す。カルボン酸基の場合、XはHを表す。その塩の場合、Xは、有機又は無機であってよいカチオンを表す。典型的なカチオンとしては、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Fe、Co、Ni、Al、Nd、Ti、Sn、Si、Zr、V、Mo、又はWのカチオンが挙げられる。
【0044】
Rxは、側鎖として又は末端基として又はその両方としてのいずれかでカルボン酸基とポリマーとを接続する二価のスペーサー基を表す。その最も単純な形態では、Rxは化学結合を表す。本開示の一実施形態では、スペーサー基Rxは、少なくともシラン、ポリシラン、シロキサン、ポリシロキサンを含む。一実施形態では、Rxは、-S-、-N(Si(アルキル))-、又は-NR-から選択される少なくとも1つの単位をさらに含み、ここで、「アルキル」は、独立してC1~C6アルキルを表し、Rは、独立してH又はC1~C6アルキルを表す。
【0045】
本開示の一実施形態では、スペーサー基は、-C(=O)-NR-から選択される1つ以上の単位を含み、ここで、Rは、1~40個の炭素原子を有し、互いに独立してO、N、S、及びSiからなる群から好ましくは選択される1つ以上のヘテロ原子を含むことができる飽和又は不飽和の有機基を表し;好ましくはR3はアルキルであり、より好ましくはR3は-CHである。
【0046】
少なくともカルボン酸基又はその塩を有する官能性単位は、当技術分野において公知の方法によってポリマーに導入することができる。溶液中で製造されたジエンゴムのポリマー鎖に沿ってカルボキシ基を導入する方法は公知であり、例えば、独国特許出願公開第2653144A1号明細書、欧州特許出願公開第1000971A1号明細書、欧州特許出願公開第1050545A1号明細書、国際公開第2009/034001A1号パンフレットに記載されている。ジエンゴムの鎖末端におけるカルボキシ基の導入も、例えば、アニオン性ポリマー鎖末端をCOと反応させることによって、米国特許第3,242,129号明細書に記載されている。シラン含有カルボン酸末端基を有するポリマーは、例えば、米国特許出願の米国特許出願公開第2016/0075809A1号明細書及び米国特許出願公開第2016/0083495号明細書(Steinhauser及びGross)(それぞれの全体が参照により援用される)に記載の方法により調製することができる。カルボン酸末端基と、少なくとも1つの単位-C(=O)-NR-(ここで、Rは、1~40個の炭素原子を有し、互いに独立してO、N、S、及びSiからなる群から好ましくは選択される1つ以上のヘテロ原子を含むことができる飽和又は不飽和の有機基を表す)を含むスペーサーとを有するポリマーは、例えば、国際特許出願の国際公開第2021/009154号パンフレット(Steinhauser)(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されるように、反応性ポリマー鎖、好ましくはアニオン性鎖末端を、最初にイミダゾリジノンを反応させ、続いて環状カルボン酸無水物と反応させることによって調製することができる。
【0047】
本開示の好ましい一実施形態では、カルボン酸基又はその塩を含む単位は、少なくとも1つのシラン、シロキサン、ポリシラン、ポリシロキサン、又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、スペーサー基Rxは、-S-、-N(Si(アルキル))-、-NR-から選択される少なくとも1つの単位をさらに含み、ここで「アルキル」は、独立してC1~C6アルキルを表し、Rは、独立してH又はC1~C6アルキルを表す。
【0048】
好ましくは、第1のポリマーは、式(2A):
【化1】
、式(2B):
【化2】
、又はそれらの組み合わせによって表される単位を含む又はからなるスペーサーを有する官能性単位を含む。好ましくは、スペーサーは、式(2A)及び(2B)による1つ以上の単位の組み合わせを含み、好ましくは式(2B)の単位は、ポリマーと式(2A)との間に配置され、より好ましくはそのような官能基は末端基である。
【0049】
式(2A)及び(2B)中、
、Rは、同じであるか又は異なり、それぞれ、H又は1~20個の炭素原子を有する残基、好ましくはアルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルカリール、アルカリールオキシ、アラルキル、又はアラルコキシ基から選択され;
、Rは、同じであるか又は異なり、それぞれ、H又は1~20個の炭素原子を有する残基、好ましくはアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、又はアラルキル基から選択され、
、Rは、同じであるか又は異なり、それぞれ、H、1~20個の炭素原子を有する残基から選択され、好ましくはアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、又はアラルキル基から選択され、ここで、上記基は、1つ以上のヘテロ原子、好ましくはO、N、S、又はSiを含むことができ、
Aは、1~26個の炭素原子を好ましくは有し、水素原子に加えて、O、N、S、Siから好ましくは選択されるヘテロ原子を含むことができる二価の有機基であり、
nは、1~20の整数、好ましくは3、4、5、又は6である。
【0050】
好ましくは、R、Rは、同じであるか又は異なり、それぞれ、H、(C-C24)-アルキル、(C-C24)-アルコキシ、(C-C24)-シクロアルキル、(C-C24)-シクロアルコキシ、(C-C24)-アリール、(C-C24)-アリールオキシ、(C-C24)-アルカリール、(C-C24)-アルカリールオキシ、(C-C24)-アラルキル、又は(C-C24)-アラルコキシ基であり、これらは、場合により、1つ以上のヘテロ原子、好ましくはO、N、S、又はSiを含むことができ、
、Rは、同じであるか又は異なり、それぞれ、H、(C-C24)-アルキル、(C-C24)-シクロアルキル、(C6-24)-アリール、(C-C24)-アルカリール、又は(C-C24)-アラルキル基であり、場合により1つ以上のヘテロ原子、好ましくはO、N、S又はSiを含む。
【0051】
本開示の一実施形態では、Aは:
-Xn-(CY1H)m-(CY2Y3)o-(CY1H)p-
で表され、ここで、
nは、1又は0であり、mは、1、2、3、又は4であり、oは、0、1、又は2であり、pは、0、1、又は2であり、
Xは、O、S、NRであり、ここで、Rは、H又はC1-C3アルキルである、又はXは、N(Si(アルキル))であり、ここで、それぞれの「アルキル」は、互いに独立して、C1~C6アルキル、-オキシアルキル、又はアルコキシを表し;
Y1は、H又はC1-C3アルキルであり、Y2は、H又はC1-C3アルキルであり、Y3は、H又はC1-C3アルキルであり、好ましくはY2及びY3の少なくとも1つはHである。
【0052】
Aの特定の非限定的な例としては:
-CH-;-CHCH-;-CHCHCH-;-C(CH)-CH-;-CH-C(CH)-CH-;-CH(CH)-C(CH)H-;
-CH(CH)-CH-C(CH)H-;-CH-C(CH)H-C(CH)H-;-CH(CH)-C(CH)H-CH-;-O-CH-;
-O-CHCH-;-O-CHCH-CH-;-O-C(CH)H-;-O-CHCH-;-O-C(CH)H-CH-;
-O-CH-C(CH)H-;-O-CH-C(CH)H-CH-;-O-CHCH-C(CH)H-;-O-C(CH)H-CH-CH-;
-S-CH-;-S-CHCH-;-S-CHCH-CH-;-S-C(CH)H-;-S-CHCH-;-S-C(CH)H-CH-;
-S-CH-C(CH)H-;-S-CH-C(CH)H-CH-;-S-CHCH-C(CH)H-;-S-C(CH)H-CH-CH-;
-NH-CH-;-NH-CHCH-;-NH-CHCH-CH-;-NH-C(CH)H-CH-;-NH-CH-C(CH)H-;
-NH-CH-C(CH)H-CH-;-NH-CHCH-C(CH)H-;-NH-C(CH)H-CH-CH-;
-N(CH)-CH-;-N(CH)-CH-;-N(CH)-CHCH-;-N(CH)-CHCH-CH-;
-N(CH)-C(CH)H-CH-;-N(CH)-CH-C(CH)H-;-N(CH)-CH-C(CH)H-CH-;
-N(CH)-CHCH-C(CH)H-;-N(CH)-C(CH)H-CH-CH-;
N(Si(アルキル))-CH-;-N(Si(アルキル))-CHCH-;N(Si(アルキル))-CHCHCH-;
-N(Si(アルキル))-C(CH)H-;-N(Si(アルキル))-CHCH-;-N(Si(アルキル))-C(CH)H-CH-;
-N(Si(アルキル))-CH-C(CH)H-;-N(Si(アルキル))-CH-C(CH)H-CH-;
-N(Si(アルキル))-CHCH-C(CH)H-;-N(Si(アルキル))-C(CH)H-CH-CH-が挙げられる。
【0053】
このようなポリマーは、アニオン性ポリマー鎖と式(III)
【化3】
による1つ以上のシロラクトン(silolactone)との反応によって得ることができ、ここで、A、R1、R2、R3、R4、及びnは、前述と同じ意味を有する。
【0054】
上記反応の前に、反応性アニオン性ポリマーと、シラノール又はシラノレート末端基を有するポリマーが得られる試薬との反応を行うことができる。第2のステップにおいて、シラノール又はシラノレート末端基を有するポリマーを、式(III)の化合物と反応させることができる。好ましくは試薬は第1のステップで使用され、これによって直接又は間接的に(例えば引き続くSi-Cl基の加水分解により)シラノール又はシラノレート末端基を得ることができ、シラノレート末端基が好ましい。一実施形態では、第1のステップに使用される試薬は、シクロシロキサン、より好ましくは式(IV):
【化4】
によるシクロシロキサンを含み、ここで、R及びR及びは前述のものと同じである。具体例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びドデカメチルシクロヘキサシロキサン、並びに異なる環の大きさのシクロシロキサンの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
シララクトンのシクロシロキサンに対する好ましい比率は20:1~1:1であり、特に好ましくは10:1~1:1の比率であり、非常に特に好ましくは3:1~1:1の比率である。
【0056】
本開示の一実施形態では、スペーサー基は、-C(=O)-NR-から選択される1つ以上の単位を含み、ここで、Rは、互いに独立してO、N、S、及びSiからなる群から好ましくは選択される1つ以上のヘテロ原子を含むことができる飽和又は不飽和の有機基を表し;好ましくはR3はアルキルであり、より好ましくはR3は-CHである。このようなポリマーは、例えば、国際公開第2021/009154A1号パンフレット(Steinhauser)に記載されるような方法によって調製することができる。典型的には、上記ポリマーは、式(V):
【化5】
の一般構造による少なくとも1つの官能基を有し、ここで、
COOXはカルボン酸基又はその塩を表す。カルボン酸基の場合、XはHを表す。その塩の場合、Xは、限定するものではないが、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Fe、Co、Ni、Al、Nd、Ti、Sn、Si、Zr、V、Mo、又はWであるのカチオンなどの有機又は無機のカチオンを表す。
【0057】
、Rは、同一であるか又は異なり、1~40個の炭素原子を有し、互いに独立してO、N、S、及びSiからなる群から好ましくは選択される1つ以上のヘテロ原子を含むことができる飽和又は不飽和の有機基を表し;好ましくはR2又はR3又はその両方が-CHであり;
、Rは、同一であるか又は異なり、1~40個の炭素原子を有し、C及びHに加えて、互いに独立してO、N、S及びSiからなる群から好ましくは選択される1つ以上のヘテロ原子を含むことができる飽和又は不飽和の二価の有機基を表す。
【0058】
好ましくは、Rは、飽和又は不飽和であってよく、1つ以上の置換基で場合により置換されていてよいC-C-アルキレン若しくはヘテロアルキレン、又は6~14員アリーレンであって、互いに独立して-F、-Cl、-Br、-I、-CN、=O、-CF、-C-C18-アルキル、又は-ヘテロアルキル、好ましくはC-C18-フルオロ-又はクロロアルキル、より好ましくは-CF、-CFH、-CFH、-CFCl、-CFClを含む1つ以上の置換基で場合により置換されていてよい6~14員アリーレンである。
【0059】
好ましくはR及びRは、互いに独立して、不飽和であってよいが好ましくは飽和している-C-C24-アルキル若しくは-ヘテロアルキル;6~24員アリール、5~24員ヘテロアリール、不飽和であってよいが好ましくは飽和している3~24員シクロアルキル、不飽和であってよいが好ましくは飽和している3~24員ヘテロシクロアルキルであり、それぞれの場合で、R2は、互いに独立して-F、-Cl、-Br、-I、-CN、=O、-CF、-C-C18-アルキル、又は-ヘテロアルキル、好ましくはC-C18-フルオロ-又はクロロアルキル、より好ましくは-CF、-CFH、-CFH、-CFCl、-CFClを含む1つ又は2つ以上の置換基で置換されていてよい。
【0060】
好ましくは、Rは、飽和又は不飽和であってよいC-C-アルキレン-若しくは-ヘテロアルキレン;6~14員アリーレンであり、それぞれの場合で、Rは、互いに独立して-F、-Cl、-Br、-I、-CN、=O、-CF、-C-C18-アルキル、又は-ヘテロアルキル、好ましくはC-C18-フルオロ-又はクロロアルキル、より好ましくは-CF、-CFH、-CFH、-CFCl、-CFClを含む1つ以上の置換基で置換されていてよい
【0061】
式(V)の特定の一実施形態では、Rは、C-C-アルキレン-、好ましくは-CHCH-であり;Rは、C-C-アルキル、好ましくは-CHであり;Rは、C-C-アルキル、好ましくは-CHであり;Rは、-CH-CHC2k+1-(ここでkは8~16の整数である);-CHCH((CH1-5Si(OC-C-アルキル));-CH=C(C-C-アルキル)、及び-(CH2-4-から選択され;より好ましくはRは、-CH-CHC1223、-CHCH(CHCHCHSi(OCH)、-CH=CCH-、及び-CHCH-CH-から選択される。
【0062】
好ましくは、スペーサー基Rxは、5,000g/mol未満、2,000g/mol未満、より好ましくは1,000g/mol未満の分子量を有する。
【0063】
ポリマー組成物及びリマー組成物の製造方法
少なくとも1つのカルボン酸基又はその塩を含む官能性単位に1つ以上の有機酸を添加することで、そのようなゴムのムーニー粘度を安定化できることが分かった。この添加は、ポリマー溶液又は固体ポリマーに対して行うことができる。有機酸をポリマー溶液に添加することで、溶液粘度も低下させることができ、ポリマーbecauseの後処理が容易になりうる。
【0064】
有機酸は、ゴム配合の当業者に公知の手段によって固体ポリマー又はポリマー配合物と組み合わせることができる。一実施形態では、粉砕によって、酸がポリマー又はポリマー組成物に添加される。したがって、本開示の一実施形態に基づくと、本開示によるポリマー組成物は固体組成物である。本開示の一実施形態では、有機酸はポリマー溶液に添加される。本開示の一実施形態では、本開示によるポリマー組成物は液体組成物である。
【0065】
したがって、本開示の一態様では、本開示による有機酸を本開示による第1のポリマーに添加することを含む方法が提供され、第1のポリマーは、a)少なくとも1つの溶媒の存在下での溶液中、又はb)固体形態のいずれかで存在し、a)の場合、上記方法は、溶媒を除去することをさらに含むことができる。好ましくは、これらは、ポリマーが官能化された後で、ゴムの後処理の前、例えば、ゴムの洗浄前又は乾燥前、好ましくは溶媒除去の前に、官能化ゴムを含む反応混合物に添加される。溶媒は、蒸留、蒸気を用いたストリッピング、又は必要であれば高温における、真空若しくは減圧の使用などの従来方法によって、反応混合物から除去することができる。結果として得られるポリマークラムに対して、ミル上でのさらなる乾燥、又はミル上での処理を行い、例えばシートを形成したり、又は圧縮して、例えばベールにしたりすることができる。
【0066】
本開示の一実施形態では、(i)好ましくは溶液重合、より好ましくはアニオン溶液重合によって、さらに1つのモノマーを重合させてジエンポリマーを得ることと;(ii)上記ジエンポリマーを官能化させて、少なくとも1つのカルボン酸基又はその塩を含む官能性単位を有する本開示による第1の官能化ジエンポリマーを得ることと、(iii)反応混合物に本開示による少なくとも1つの有機酸を添加することと、場合により、(iv)1つ以上のエクステンダーオイルを添加して、油展された第1のポリマーを得ることと、場合により、(v)少なくとも1つの第2のポリマーを加えることと、(vi)溶媒を除去することとを含む方法が提供される。結果として得られるポリマー組成物に対して、洗浄、乾燥、及び成形、例えばシートへの粉砕又はベールへの圧縮による成形を行うことができる。官能化は、第1及び第2の官能化剤の添加を含むことができる。好ましくは、重合反応は、少なくとも1つの官能化剤の添加によって、例えば末端基官能化ポリマーを得ることによって終了する。
【0067】
ゴム化合物の加工を容易にするために、可塑剤としての有機酸、特に脂肪酸をゴム化合物に添加することが知られている。ゴム化合物は、少なくとも1つのゴムと、1つ以上のフィラーと、典型的には、1つ以上の硬化剤との混合物である。ゴムの配合及び加工における可塑剤としての周知の使用に反して、本開示によると、有機酸を第1のポリマーに添加すると、これらのポリマーのムーニー粘度の低下及び安定化が起こり、本開示による第1の官能化ポリマーを含むポリマー溶液の粘度が低下し、及び/又は安定化したムーニー粘度を有するポリマー組成物が得られる。これらのポリマー組成物は、ゴム化合物を製造するための原材料として使用することができるが、ポリマー組成物自体はゴム化合物ではない。本開示の一実施形態では、第1のポリマー及び有機酸のみから本質的になる。ポリマー溶液の場合、本開示によるポリマー組成物は、第1のポリマー、有機酸、及び少なくとも1つの媒のみから本質的になる。ブレンドの場合、組成物は、少なくとも1つの第2のポリマーも含むことができる。第1又は第2のポリマーが油展される場合、ポリマー組成物は、ポリマーの一部としてエクステンダーオイルを含むこともできる。本明細書において使用される場合、から本質的になることは、組成物が、列挙される成分のみを有するが、不純物を含む場合があることを意味するものとする。不純物は、原材料中に存在した別の材料、又は製造又は後処理で生じる残留物である別の材料であり、安定剤が含まれる。典型的には、このような残留物及び安定剤の総量は、組成物の全重量を基準として5重量%未満、好ましくは1重量%未満である。
【0068】
本開示の一実施形態では、本開示によるポリマー組成物は、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%のポリマーを含み、これは場合により、本開示による少なくとも1つの第1のポリマーに加えて、少なくとも1つの第2のポリマーを含むことができる。好ましくは、少なくとも1つの第1のポリマーの量は、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20%、又は少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、又は少なくとも90重量%、又はさらには少なくとも95重量%である。好ましくは、このような組成物は固体組成物である。このような組成物は、例えば、有機酸を固体ポリマー組成物に加えることによって、又は有機酸をポリマー溶液、好ましくは反応混合物に加え、溶媒を除去することによって得ることができる。重量%の単位で表される量は、第1のポリマー又は第2のポリマー又はその両方が油展される場合、エクステンダーオイルの量を含む。
【0069】
上記ポリマー組成物は、例えば組成物がポリマーブレンドである場合、1つ以上の第2のポリマーを含むこともできるが、第2のポリマーの存在は任意選択である。第2のポリマーは、モノマー組成、分子量、及び分子量分布が考慮される限りは第1のポリマーと同じであってよく、又はこれは異なっていてよいが、第2のポリマーは、官能化された基を全く官能化された基を含まない、又はこれは官能化された基を含むが、第1のポリマーのような官能化された基ではない。好ましくは、第2のポリマーは、水素化される場合もされない場合もあるジエンポリマーである。典型的なジエンポリマーとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン-イソプレンコポリマー、ブタジエン-スチレンコポリマー、イソプレン-スチレンコポリマー、及びブタジエン-イソプレン-スチレンターポリマーの少なくとも1つを含むポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記ポリマーは、100,000~1,000,000g/molの平均モル質量(数平均、M)、及び-110℃~0℃のガラス転移温度を有することができる。一実施形態では、上記組成物は、最大50重量%の第2のポリマーを含み、好ましくは、ポリマー組成物は、第2のポリマーを含まない、又は1重量%未満の第2のポリマーを含む。
【0070】
一実施形態では、本開示のポリマー組成物は、ポリマー溶液であり、例えば、溶液粘度を低下させるために、第1のポリマーを含むポリマー溶液に本開示による有機酸が添加されるときに得られる溶液である。このようなポリマー溶液は、反応混合物、例えば、重合反応からの反応混合物を含む。好ましくは、本開示によるこのようなポリマー組成物は、100%である組成物の全重量を基準として少なくとも10重量%又は少なくとも15重量%の第1及び任意選択の第2のポリマーの総量を有し、溶媒の量は、ポリマー組成物を基準として少なくとも50重量%又は少なくとも75重量%である。好ましくは、溶媒は、前述の重合溶媒、又はそれらの組み合わせを含む。
【0071】
第2のポリマーの存在は任意選択であり、本開示によるポリマー組成物は、第2のポリマーを全く含まなくてよい。
【0072】
第1のポリマー又は第2のポリマー又はその両方は、油展されてよく、どのポリマーが油展されるかに依存して、100部の第1又は第2のポリマー当たり最大100部のエクステンダーオイルを含むことができる。ポリマーが油展される場合、すなわち、ポリマーの後処理の前又は最中、典型的には溶媒除去の前に、ポリマーは、1つ以上のエクステンダーオイルと混合されている場合、上記組成物も油展ポリマーの一部としてエクステンダーオイルを含む。ポリマーは、高分子量である場合に油展することができる。高分子量のポリマーは、高いムーニー粘度を有する。ムーニー粘度が高すぎると、化合物を製造するためのポリマーの加工が、困難となったり、非経済的になったりする場合がある。ポリマーのMoney粘度は、油展ポリマーを得るためにポリマーの後処理前又は最中にエクステンダーオイルを添加することによって低下させることができる。エクステンダーオイルの典型的な量は、100部のポリマー当たり10~100部である。本開示の一実施形態では、第1及び第2のポリマーは油展されない。ポリマー組成物は、好ましくはエクステンダーオイルを本質的に含まず、意図的に添加されたエクステンダーオイルを含まない。このような組成物は、1phr未満、好ましくは0.1phr未満のエクステンダーオイルを含み、より好ましくはエクステンダーオイルを含まない。エクステンダーオイルとしては、ジエンゴムの油展に関して周知であり使用されている油が挙げられ、TDAE(Treated Distillate Aromatic Extract(処理留出物芳香族抽出物))-、MES(Mild Extraction Solvates(軽度抽出溶媒和物))-、RAE(Residual Aromatic Extract(残留芳香族抽出物))-、TRAE(Treated Residual Aromatic Extract(処理残留芳香族抽出物))-、ナフテン系油、パラフィン系油、及びそれらの水素化された種類のもの、例えば植物性材料から得られる油、例えばテルペンなどの油が挙げられる。これらは好ましくは、溶媒除去の前又は最中の反応混合物に添加される。
【0073】
したがって、本開示のポリマー組成物中、第1又は第2のポリマー又はその両方は、100部のポリマー当たり0~100部のエクステンダーオイルを含むことができ、ポリマー組成物中、重量パーセントで示されるポリマーの量は、エクステンダーオイルが存在する場合、エクステンダーオイルの量を含んでいる。
【0074】
本開示によるポリマー組成物は、添加されたフィラーを全く含まず、したがってフィラーを本質的に含まず、すなわち、このような組成物は、炭素又はシリカをベースとするフィラーも、炭素とシリカとのいずれもベースとしないフィラーも含まない。本明細書において使用される場合、「本質的に含まない」は、組成物の全重量を基準として5重量%未満、好ましくは1重量%未満、又はさらには0.1重量%未満であることを意味し、0%が含まれる。この量は、後処理手順中に使用される又は生成される材料中に存在する不純物の結果である場合がある。本開示によるポリマー組成物は、添加された硬化剤を全く含まず、硬化剤を本質的に含まず、硬化剤を含まない、又は原材料又は後処理中に使用される材料中の不純物として存在しうるわずかな残留量を含む。
【0075】
本開示によるポリマー組成物は、例えば、前述の方法によって得ることができる。
【0076】
ゴム化合物
本開示による第1のポリマー及び有機酸を含むポリマー組成物は、ポリマー組成物を1つ以上のフィラーと組み合わせることを含む方法によるゴム化合物の製造に使用することができる。加硫性ゴム化合物は、本開示のポリマー組成物と、1つ以上のフィラーと、少なくとも第1のポリマーを架橋させるための1つ以上の架橋剤とを組み合わせることによって製造することができる。
【0077】
上記ゴム化合物は、タイヤ、又はサイドウォール若しくはタイヤトレッドなどのタイヤの構成要素の製造に適している。本開示による加硫性ゴム化合物は、本開示による末端基官能化ポリマーを架橋させるための1つ以上の硬化剤又は硬化系、並びに場合により、別の架橋性のフィラー若しくは成分を含む。結果として得られるタイヤ又はタイヤ構成要素は、典型的には、加硫した形態のゴム化合物を含む。
【0078】
したがって、本開示の一態様では、本開示によるポリマー組成物を、少なくとも1つのフィラー、少なくとも第1のポリマーを硬化させることができる少なくとも1つの硬化剤、又はそれらの組み合わせと組み合わせることを含むゴム化合物の製造方法が提供される。
【0079】
1つ以上のフィラー及びとしては、活性及び不活性の両方のフィラーが挙げられる。従来のフィラーとしては、シリカ、シリケート、及び好ましくは、1つ又は2つ以上の炭素ベースのフィラー、例えばカーボンブラックが挙げられる。
【0080】
適切なシリカの例としては、シリケートの溶液の沈殿又はハロゲン化ケイ素の火炎加水分解によって製造され、比表面積が5~1000、好ましくは20~400m/g(BET表面)であり、一次粒度が10~400nmであるものなどの高分散シリカが挙げられるが、これに限定されるものではない。シリカは、Al、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、Tiの酸化物などの別の金属酸化物との混合酸化物;好ましくは20~400m/gのBET表面及び10~400nmの一次粒径を有する合成シリケート、例えばケイ酸アルミニウム、アルカリ土類ケイ酸塩、例えばケイ酸マグネシウム、又はケイ酸カルシウム、又はそれらの組み合わせ;天然シリケート、例えばカオリン及びモンモリロナイトとして存在することもできる。
【0081】
シリカでも炭素ベースでもない適切なフィラーの例としては、ガラス繊維及びガラス繊維製品(マット、ストランド)又は微小球;金属酸化物、例えば酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム;金属炭酸塩、例えば炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛;金属水酸化物、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム;金属硫酸塩、例えば硫酸カルシウム、硫酸バリウム;ゴムゲル、例えば、好ましくは5~1000nmの粒度を有し、BR、E-SBR及び/又はポリクロロプレンをベースとするものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
適切な炭素ベースのフィラーの例としては、火炎すす、チャネル、加熱炉、ガスすす、熱的、アセチレンすす、又はアーク法によって製造されるカーボンブラックが挙げられるが、これらに限定されるものではない。炭素ベースのフィラーは、9~200m/gのBET表面を有することができる。特定のカーボンブラックの例としては、SAF-、ISAF-LS-、ISAF-HM-、ISAF-LM-、ISAF-HS-、CF-、SCF-、HAF-LS-、HAF-、HAF-HS-、FF-HS-、SPF-、XCF-、FEF-LS-、FEF-、FEF-HS-、GPF-HS-、GPF-、APF-、SRF-LS-、SRF-LM-、SRF-HS-、SRF-HM-、及びMT-のすす、又はASTM N110-、N219-、N220-、N231-、N234-、N242-、N294-、N326-、N327-、N330-、N332-、N339-、N347-、N351-、N356、N358、N375、N472、N539、N550、N568、N650、N660、N754、N762、N765、N774、N787、及びN990に準拠したカーボンブラックが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
好ましくは、本開示のゴム化合物は、フィラーとして1つ以上のカーボンブラックを含む。
【0084】
フィラーは、単独又は混合物中で使用することができる。特に好ましい形態では、ゴム組成物は、高分散シリカなどのシリカフィラーと、カーボンブラックとの混合物を含む。シリカフィラーのカーボンブラックに対する重量比は、0.01:1~50:1、好ましくは0.05:1~20:1であってよい。
【0085】
フィラーは、100重量部のゴムを基準として10~500、好ましくは20~200重量部の量で使用することができる。
【0086】
上記のゴム化合物及び加硫性ゴム化合物は、本開示による官能化ゴム以外の1つ以上の追加のゴムと、1つ又は2つ以上のゴム添加剤とをさらに含むことができる。
【0087】
追加のゴムとしては、例えば、天然ゴム及び合成ゴムが挙げられる。存在する場合、これらは、組成物中のゴムの総量を基準として0.5~95重量%の範囲内、好ましくは10~80重量%の範囲内の量で使用することができる。適切な合成ゴムの例としては、BR(ポリブタジエン)、アクリル酸アルキルエステルコポリマー、IR(ポリイソプレン)、E-SBR(乳化重合によって製造されたスチレン-ブタジエンコポリマー)、S-SBR(溶液重合によって製造されたスチレン-ブタジエンコポリマー)、IIR(イソブチレン-イソプレンコポリマー)、NBR(ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー)、HNBR(部分又は完全水素化NBRゴム)、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー)、及びそれらの混合物が挙げられる。-60℃を超えるガラス温度を有する天然ゴム、E-SBR、及びS-SBRと、Ni、Co、T、i、又はNdをベースとする触媒を用いて製造された高シス含有量(>90%)のポリブタジエンゴムと、最大80%のビニル含有量を有するポリブタジエンゴムと、それらの混合物とが、自動車用タイヤの場合に特に製造の対象となる。
【0088】
ゴム添加剤は、ゴム組成物の加工特性を改善することができる、ゴム組成物を架橋させる役割を果たすことができる、ゴムから製造された加硫物の物理的性質を改善することができる、ゴムとフィラーとの間の相互作用を改善することができる、又はゴムをフィラーに結合させる役割を果たすことができる成分である。ゴム助剤としては、硫黄又は硫黄供給化合物などの架橋剤、反応促進剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、オゾン安定剤、加工助剤、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、染料、顔料、ろう、エクステンダー、有機酸、シラン類、遅延剤、金属酸化物、DAE(Distillate Aromatic Extract(留出物芳香族抽出物))-、TDAE(Treated Distillate Aromatic Extract(処理留出物芳香族抽出物))-、MES(Mild Extraction Solvates(軽度抽出溶媒和物))-、RAE(Residual Aromatic Extract(残留芳香族抽出物))-、TRAE(Treated Residual Aromatic Extract(処理残留芳香族抽出物))-、ナフテン系油、及び重質ナフテン系油などのエクステンダーオイル、並びに活性剤が挙げられる。
【0089】
ゴム添加剤の総量は、組成物中の全ゴム100重量部を基準として1~300重量部、好ましくは5~150重量部の範囲であってよい。
【0090】
ゴム組成物は、(加硫性)ゴム化合物の製造及び加工のための従来の加工装置を用いて調製することができ、ローラー、ニーダー、密閉式ミキサー、又は混合押出機を挙げることができる。ゴム組成物は、1段階又は多段階プロセスで製造することができ、2~3の混合段階が好ましい。架橋剤、例えば硫黄、及び促進剤は、別の混合段階で、例えばローラー上に加えることができ、30℃~90℃の範囲内の温度が好ましい。架橋剤、例えば硫黄、及び促進剤は、好ましくは最終混合段階で加えられる。
【0091】
典型的な配合物の例としては、米国特許出願公開第2016/0075809 A1号明細書及び米国特許出願公開第2016/0083495 A1号明細書(Steinhauser及びGross)、並びに国際特許出願の国際公開第2021/009154号パンフレット(Steinhauser)に示されるものが挙げられる。
【0092】
用途
本開示によるポリマー組成物を含むゴム化合物は、ゴム加硫物の製造、好ましくはタイヤ、特にタイヤトレッドの製造に使用することができる。したがって、一態様では、ゴム化合物を製造するための本開示による方法で得られたゴム化合物を含む組成物を硬化させて得られる物品が提供される。
【0093】
本明細書において提供されるポリマー組成物を含むゴム化合物は、成形物品の製造、例えばケーブルシース、ホース、駆動ベルト、コンベアベルト、ロールライニング、靴底、シーリングリング、及びダンピング要素の製造にも適している。
【0094】
本開示の別の一態様は、本開示により提供される加硫性ゴム組成物を加硫させることによって得られる加硫ゴム組成物を含む成形物品、特にタイヤに関する。
【実施例
【0095】
実施例
本開示をさらに説明するために以下の実施例が提供されるが、これらの実施例に記載の実施形態に本開示が限定されることを意図するものではない。
【0096】
ポリマーのデータ:
数平均分子量Mn、重量分子量(Mw)、「PDI」とも呼ばれる多分散性D=Mw/Mnは、35℃においてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(ポリスチレン較正)を用いて求めた。
【0097】
ポリマーのムーニー粘度は、DINISO289-1(2018)に準拠して100℃におけるML(1+4)の測定条件で測定した。
【0098】
溶液粘度は、ブルックフィールド粘度計を用いて求めた。
【0099】
ビニル及びスチレンの含有量は、ゴムフィルムに対するFTIR分光法によって求めることができる。
【0100】
ポリマー組成物中の有機酸の含有量は、GC-MS(質量分析が連結したガスクロマトグラフィー)によって求めることができる。GC-MSには、成分の定量のための炎イオン化検出器(FID)と、成分の同定のための質量分析検出器(MSD)とを取り付けることができる。分析のために、ポリマー組成物の試料(典型的には1g)を適切な溶媒中、典型的にはテトラヒドロフラン(THF)中、例えば30mlのTHF中に溶解させることができる。次に、メタノール(典型的には60ml)を用いてこの溶液を沈殿させることができ、その上澄みを収集する。沈殿物をメタノールで洗浄し、洗浄溶液を上澄みと一緒にする。蒸発によって溶媒(THF及びメタノール)を除去する。残留物を過剰のシリル化剤、例えば(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、約10ml))で処理し、次にGC-MSを行う。例えば溶液が得られないという理由で、必要であれば、残留物をTHF(又は別の適切な溶媒)中に溶解(再溶解)させることができる。
【0101】
実施例1a~1d(比較用)及び実施例1e~1j
8500gのヘキサン、1500gの1,3-ブタジエン、及び10.5mmolのn-ブチルリチウム(ヘキサン中23重量%溶液として)を満たした不活性の20Lの反応器中、70℃で45分間撹拌した。比較例1a~1cを作製するため、1500gのポリマー溶液を反応器から取り出し、1.58mmolのn-オクタノールでクエンチした。このポリマー溶液を3つの試料に分割し、表1により2つの試料にステアリン酸を加えた(比較例1a~1c)。ブルックフィールド粘度計を用いて溶液粘度を求め、試料をエタノール中で沈殿させ、真空オーブン中65℃で乾燥させた。最終試料の100℃におけるムーニー粘度ML1+4を求めた。
【0102】
カルボン酸基と、式(IIA)及び(IIB)による単位を含むスペーサーとを有する官能性単位を有する官能化ポリマーを製造するため、米国特許出願公開第2016/0075809A1号明細書(特にその実験の項が、参照により本明細書に援用される)の教示に従った。官能化された5.25mmolの2,2-ビス(2-テトラヒドロフリル)-プロパンをランダマイザーとして、残留するリビングポリマー溶液に添加し、その溶液を70℃で5分間撹拌した。次に、式(IV)による10.5mmolのシクロシロキサンを第1の官能化試薬として70℃において15分にわたって添加した。その溶液を70℃で15分間撹拌し、次に等モル量の式(III)によるシロラクトンを第2の官能化試薬として添加した。第2の官能化試薬の添加終了後、カルボン酸基を有する末端基で官能化されたポリマーを含むポリマー溶液の撹拌を70℃でさらに30分続けた。このポリマー溶液を排出し、4.5gのIrganox(登録商標)1520(2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール)を添加することによって安定化させた。このポリマー溶液を7つの試料(1d~1j)に分割した。異なる有機酸を試料1e~1jに添加したが、1dには添加せずこれを比較用に使用した。ブルックフィールド粘度計を用いて、有機酸の添加の前後の溶液粘度を求めた。続いて、試料をエタノール中で沈殿させ、真空オーブン中65℃で乾燥させた。全ての試料について、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及び100℃におけるムーニー粘度ML1+4によって特性決定を行った。結果を表1中に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
実施例1a~1cの結果:有機酸の添加によって溶液粘度がわずかに低下し(10%未満の低下)、これは酸の可塑化効果に起因している可能性がある。ポリマーのムーニー粘度は、ほぼ同じままであった。実施例1a~1cのポリマーは官能化されなかった。
【0105】
実施例1d及び1e~1jの結果:有機酸の添加、om実施例1e~1jでは、官能化ポリマーの溶液粘度が大幅に低下した(>10%の低下)。重合後に得られた官能化ポリマー、hade、それらの非官能化対応物よりも高いムーニー粘度(例えば1aを1dと比較することによって分かる)。これは、官能基の会合によって生じると考えられる。しかしながら、この増加したムーニー粘度は、時間が経過すると安定しないが、保管するとその非官能化対応物と同様の値まで低下した。官能化ポリマーへの有機酸の添加(実施例1e~1j)によって、非官能化対応物のムーニー粘度近くまでムーニー粘度が低下し、これはポリマーに関する「正確な」値であると考えられ、保存によりこの値は安定なままである。
【0106】
実施例2a(比較用)、2b、及び2c
実施例1における試料1d)に関して記載されるようにポリマーを調製した。このポリマー溶液を3つの試料(2a~2c)に分割し、表2中に示されるように、これらの試料の2つに有機酸を添加し、別の試料には酸を加えなかった。続いて、試料をエタノール中で沈殿させ、真空オーブン中65℃で乾燥させた。100℃におけるムーニー粘度ML1+4を、試料乾燥後、29日後、及び132日後に求めた。結果を表2中に示す。
【0107】
【表2】
【0108】
実施例2aは、カルボン酸を有する官能基を有するジエンポリマーの保管後のムーニー粘度の不安定性を示している。ポリマー組成物を安定化させるための有機酸を添加しないと、ムーニー粘度は、調製後の値の最大50%だけ経時により低下する。有機酸の添加によって、試料のムーニー粘度は安定化した。保管後により得られた値は、ポリマー調製直後に得られる値と同様のままであった(実施例2b及び2c)。
【0109】
実施例3:固体ポリマーへの有機酸の添加
一方はカルボキシレート基を有する官能性単位を含まず、他方はカルボキシレート基を含む、同様の微細構造及び分子量分布のブタジエン-スチレンコポリマー試料を実施例3a~3dに使用した。3a及び3bは、式(IV)によるシクロシロキサンとのアニオン反応によって得られた官能化末端基を含んだ。この末端基官能化ポリマーは、官能性極性末端基を有したが、請求されるポリマーによるものではなく(カルボン酸基又はその塩を有さず)、比較例となる。ポリマー3c及び3dは、米国特許出願公開第2016/0075809A1号明細書の教示によりシクロシロキサン及びシララクトンとのポリマーの逐次反応によって調製され、カルボン酸基を有する官能性単位を含んだ。全てのポリマー3a~3d及び、5phrのエクステンダーオイルを含んだ。
【0110】
2本ロールミル上でステアリン酸をポリマー3b(比較用)及び3d中に導入し、得られたポリマー組成物の100℃におけるムーニー粘度ML1+4を求めた。試料3a及び試料3c(両方の実施例は比較用である)には有機酸を添加せず、両方の試料は、100℃において大きく異なるML1+4値を有し、カルボン酸基含有ポリマー3cは大きく増加した。ステアリン酸のポリマー3b及び3dへの添加によって、ムーニー粘度が低下し、両方のポリマーは100℃においてほぼ同じML1+4値を有した。
【0111】
【表3】
【0112】
実施例4:
式(V)による末端基を有するポリブタジエン(LiBR)を用いて、実施例1a~1jと同様の実験を繰り返した。特にその実験の項が参照により本明細書に援用される国際特許出願の国際公開第2021/009154A1号パンフレット(Steinhauser)に記載のようにポリマーを調製した。官能性単位を反応混合物に導入することで、溶液粘度が430mPasから620mPasまで増加したが、SECによって求めた分子量分布は、官能化によって変化することはなかった。ステアリン酸のポリマー溶液への添加によって、溶液粘度は466mPasまで低下した。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、
(i)少なくとも1つの第1のポリマーであって、少なくとも1つのカルボン酸基又はその塩を有する少なくとも1つの官能性単位を含む官能化ジエンポリマーであって、前記官能性単位が、末端基、側基、及びそれらの組み合わせから選択され、好ましくは末端基である、第1のポリマーと;
(ii)一般式(1):
Ry-(Acg) (1)
による少なくとも1つの有機酸と、
(iii)場合により、少なくとも1つの第2のポリマーと、
を含み、
前記ポリマー組成物は、100%である前記組成物の全重量を基準として、少なくとも90重量%の前記第1のポリマー及び任意選択の第2のポリマーの総量を有し、少なくとも1つの前記第1のポリマーの量は、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも75重量%であり、前記第1又は前記第2のポリマー又はその両方は、100部のポリマー当たり0~100部のエクステンダーオイルを含み、重量パーセントで示されるポリマーの量は、エクステンダーオイルが存在する場合にその量を含み、ここで式(1)において、
Acgは、-COOH、-SOH、-OSOH、-PO、-OPO、及びそれらの塩、並びにそれらの組み合わせから選択される酸基を表し;
nは、1~10,000の整数を表し;
Ryは、nに対応する価数を有する、芳香族又は脂肪族飽和、直鎖、環状、若しくは分岐の炭化水素又はヘテロ炭化水素残基を表し、前記ヘテロ炭化水素残基は、N、S、Si、O、F、Cl、Br、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上のヘテロ原子をさらに含む炭化水素残基であり、AcgがCOOHである場合、RyはHを表すこともでき、
第1の官能化ジエンポリマーは、共役ジエンのホモポリマー、又は少なくとも1つの共役ジエンのコポリマーであり、前記共役ジエンはブタジエンから選択される、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記第1のポリマーの前記官能性単位が、式(2):
-Rx-COOX (2)
に対応し、ここで-COOXは、カルボン酸基又はその塩を表し、Rxは、前記COOX基と前記ポリマーとを接続するスペーサー基を表し、前記スペーサー基は、化学結合である、又はシラン、ポリシラン、シロキサン、ポリシロキサン、-C(=O)-NR-から選択される少なくとも1つの基を含み、Rは、1~40個の炭素原子を有し、互いに独立してO、N、S、及びSi、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を含むことができる飽和又は不飽和の有機基を表す、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
スペーサー基Rxは、
式(2A):
【化1】
、式(2B):
【化2】
、又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの基を含み、式(2A)及び(2B)中、
、Rは、同じであるか又は異なり、それぞれ、H又は1~20個の炭素原子を有する残基から選択され;
、Rは、同じであるか又は異なり、それぞれ、H又は1~20個の炭素原子を有する残基から選択され、
、Rは、同じであるか又は異なり、それぞれ、H又は1~20個の炭素原子を有する残基から選択され、
Aは、1~26個の炭素原子を有し、水素原子に加えて、O、N、S、Siから選択されるヘテロ原子を含むことができる二価の有機基であり、
nは1~20の整数であり;
又は官能基は、式(V):
【化3】
に対応し、
ここで、COOXはカルボン酸基又はその塩を表し;
、Rは、同一であるか又は異なり、1~40個の炭素原子を有し、場合により、互いに独立してO、N、S、及びSiからなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を含み得る飽和又は不飽和の有機基を表し;
、Rは、同一であるか又は異なり、1~40個の炭素原子を有し、C及びHに加えて、互いに独立してO、N、S及びSiからなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を場合により含み得る飽和又は不飽和の二価の有機基を表す、請求項に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記官能化ジエンポリマーが、少なくとも1つの別の共役ジエン、少なくとも1つのビニル芳香族コモノマー、又はそれらの組み合わせから誘導される単位を含むコポリマーであり、前記ビニル芳香族コモノマーが、スチレン、オルト-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、パラ-tert-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記組成物が少なくとも95重量%の少なくとも1つの前記第1のポリマーを含む、請求項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記第1又は任意選択の第2のポリマー、又はその両方が油展されていない、請求項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
Aがカルボン酸基(-COOH基)又はその塩を表す、請求項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
式(1)中、Ryが飽和脂肪族炭化水素残基を表す、請求項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
式(1)中、Aがカルボン酸基又はその塩を表し、nが、1~1,000の整数を表すか、又はnが1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10を表すか、又はnが1又は2を表す、請求項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
Ryが1~50個の炭素原子を有する残基を表す、又は前記有機酸がギ酸又はその塩である、請求項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記組成物の全重量を基準として、0.01重量%~最高10重量%0.1重量%~9重量%、又は1.1重量%~7.5重量%の前記有機酸を含む、請求項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記任意選択の第2のポリマーが、共役ジエンのホモポリマー、又は少なくとも1つの共役ジエンのコポリマーであり、少なくとも前記共役ジエンが、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン、ミルセン、オシメン、及びファルネセンからなる群から選択され、前記ホモポリマー又はコポリマーが、水素化ホモポリマー及びコポリマーを含む、請求項に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
請求項に記載のポリマー組成物の製造方法であって、前記有機酸を前記第1のポリマーに添加することを含み、前記第1のポリマーが、a)溶媒の存在下の溶液中に、又はb)固体形態で存在し、a)の場合、前記方法が、場合により、前記溶媒を除去することをさらに含む、方法。
【請求項14】
請求項に記載のポリマー組成物を、少なくとも1つのフィラー、少なくとも前記第1のポリマーを硬化させることができる少なくとも1つの硬化剤、又はそれらの組み合わせと組み合わせることを含む、ゴム化合物の製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載のポリマー組成物を含む組成物の硬化により得られる物品であって、タイヤ又はその構成要素から選択される、物品。
【国際調査報告】