(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】環状RNAを調製するための構築物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20240822BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/63 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513118
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 CN2022082225
(87)【国際公開番号】W WO2023024500
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/115029
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507232478
【氏名又は名称】北京大学
【氏名又は名称原語表記】PEKING UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.5, Yiheyuan Road, Haidian District, Beijing 100871, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】魏 文▲勝▼
(72)【発明者】
【氏名】伊 宗裔
(57)【要約】
本発明は、環状RNA(circRNA)を調製するための線状RNA前駆体および構築物が提供され、線状RNAは、5’末端から3’末端まで:(a)RNAエレメント(IRESなど)の第1の部分、(b)エフェクターRNA配列、及び(c)RNAエレメントの第2の部分を含み、前記RNAエレメントの第1の部分とRNAエレメントの第2の部分が互いに会合して少なくとも4塩基対(bp)長の二本鎖領域が形成されており、ここで、前記RNAエレメントの第1の部分の5’末端およびRNAエレメントの第2の部分の3’末端は前記二本鎖領域にニックが形成されており、前記ニックはRNAリガーゼによってライゲーションされ得る。また、本発明は、circRNAを調製する方法、およびそれにより調製されたcircRNAも提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5’末端から3’末端まで:
(a)RNAエレメントの第1の部分、
(b)エフェクターRNA配列、及び
(c)RNAエレメントの第2の部分
を含む線状RNAであって、前記RNAエレメントの第1の部分と前記RNAエレメントの第2の部分が互いに会合して、少なくとも4塩基対(bp)長の二本鎖領域が形成されており、
前記RNAエレメントの第1の部分の5’末端および前記RNAエレメントの第2の部分の3’末端は、二本鎖領域にニックが形成されており、
前記ニックはRNAリガーゼによってライゲーションされ得る、線状RNA。
【請求項2】
前記二本鎖領域が約6bp長から約25bp長である、請求項1に記載の線状RNA。
【請求項3】
前記二本鎖領域が、37℃及び1.0M Na
+のイオン強度で約-8kcal/mol以下の最小自由エネルギーを有する、請求項1または2に記載の線状RNA。
【請求項4】
前記RNAエレメントが少なくとも20nt長である、請求項1~3のいずれか一項に記載の線状RNA。
【請求項5】
前記二本鎖領域が前記ニックの3’側に少なくとも2bpを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の線状RNA。
【請求項6】
前記二本鎖領域が前記ニックの5’側に少なくとも2bpを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の線状RNA。
【請求項7】
前記RNAエレメントの第1の部分および前記RNAエレメントの第2の部分が、N個のヌクレオチドの参照RNAエレメントに由来し、Nは8より大きい整数であり、前記RNAエレメントの第1の部分は、前記参照RNAエレメントのXからN番目のヌクレオチドを含み、Xは、1より大きくNより小さい整数であり、前記RNAエレメントの第2の部分は、前記参照RNAエレメントの1からX-1番目のヌクレオチドを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の線状RNA。
【請求項8】
前記RNAエレメントの第1の部分および/または前記RNAエレメントの第2の部分が、前記参照RNAエレメントに対して外因性の配列を含む、請求項6に記載の線状RNA。
【請求項9】
前記RNAエレメントの第2の部分が、3’末端に第1の外来配列を含み、前記RNAエレメントの第1の部分が、前記第1の外来配列に相補的な第2の外来配列を含み、前記第1の外来配列と前記第2の外来配列は、ニックの5’末端に隣接する塩基対が形成されている、請求項8に記載の線状RNA。
【請求項10】
前記RNAエレメントが、天然に存在するRNAエレメントまたはその誘導体である、請求項1~9のいずれか一項に記載の線状RNA。
【請求項11】
前記エフェクターRNA配列が、コードRNA配列である、請求項1~10のいずれか一項に記載の線状RNA。
【請求項12】
前記コードRNA配列が治療用ポリペプチドをコードする、請求項11に記載の線状RNA。
【請求項13】
前記治療用ポリペプチドが、抗原性ポリペプチド、機能性タンパク質、受容体タンパク質、および標的化タンパク質からなる群から選択される、請求項12に記載の線状RNA。
【請求項14】
前記RNAエレメントが、前記コードRNAの翻訳を促進する、請求項12または13に記載の線状RNA。
【請求項15】
前記RNAエレメントが、内部リボソーム進入部位(IRES)またはその一部である、請求項14に記載の線状RNA。
【請求項16】
前記IRESが、コクサッキーウイルスB3(CVB3)IRES、エンテロウイルス71(EV71)IRES、脳心筋炎ウイルス(EMCV)IRES、ピコルナウイルス(PV)IRES、C型肝炎ウイルス(HCV)IRES、アデノウイルス(AdV)IRES、ヒトパピローマウイルス31型(HPV31)IRES、ヒトヘルペスウイルス(HHV)IRES、ラウス肉腫ウイルス(RSV)IRES、古典的豚コレラウイルス(CSFV)IRES、FGF9 IRES、SLC7A1 IRES、及びRUNX1 IRESからなる群から選択されるIRESに由来する、請求項15に記載の線状RNA。
【請求項17】
前記IRESが、CVB3ウイルスまたはその誘導体のIRESである、請求項16に記載の線状RNA。
【請求項18】
CVB3ウイルスのIRESが配列番号1のヌクレオチド配列を含む、請求項17に記載の線状RNA。
【請求項19】
前記RNAエレメントの第1の部分が配列番号1の386~749番目のヌクレオチドを含み、前記RNAエレメントの第2の部分が配列番号1の1~385番目のヌクレオチドを含む、請求項18に記載の線状RNA。
【請求項20】
前記RNAエレメントの第1の部分が配列番号3のヌクレオチド配列を含み、前記RNAエレメントの第2の部分が配列番号2のヌクレオチド配列を含む、請求項19に記載の線状RNA。
【請求項21】
前記RNAエレメントの第1の部分が配列番号1の347~749番目のヌクレオチドを含み、前記RNAエレメントの第2の部分が配列番号1の1~346番目のヌクレオチドを含む、請求項18に記載の直鎖RNA。
【請求項22】
前記コードRNAの3’末端に作動可能に連結されたインフレーム2Aペプチドコード配列をさらに含む、請求項11~21のいずれか一項に記載の線状RNA。
【請求項23】
前記RNAエレメントが、sgRNAまたはH/ACAボックス低分子核小体RNA(snoRNA)である、請求項1~9のいずれか一項に記載の線状RNA。
【請求項24】
前記エフェクターRNA配列が、ガイドRNA(gRNA)、デアミナーゼリクルートRNA(dRNA)、siRNA、miRNA、shRNA、および長鎖遺伝子間非コード(linc)RNAからなる群から選択される非コードRNA配列である、請求項1~10及び23のいずれか一項に記載の線状RNA。
【請求項25】
前記エフェクターRNA配列が約50~約5000ヌクレオチド(nt)長である、請求項1~24のいずれか一項に記載の線状RNA。
【請求項26】
(a)環状化RNA生成物を提供するために線状RNAにおけるニックのライゲーションを可能にする条件下で、請求項1~25のいずれか一項に記載の線状RNAをRNAリガーゼと接触させることと、
(b)環状化RNA生成物を単離することにより、circRNAを提供することと
を含む、circRNAを調製する方法。
【請求項27】
前記RNAリガーゼがT4 RNAリガーゼ1である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記RNAリガーゼがT4 RNAリガーゼ2である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記circRNAが、前記線状RNAに対して外因性のヌクレオチド配列を含まない、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ライゲーションがスプリントオリゴヌクレオチドの存在を必要としない、請求項26~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ライゲーションの効率が少なくとも約50%である、請求項26~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記環状化RNA生成物をRNAse Rで処理することをさらに含む、請求項26~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記環状化RNA生成物を精製することをさらに含む、請求項26~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記線状RNAをコードする核酸配列を含む核酸構築物のインビトロ転写によって前記線状RNAを得ることをさらに含む、請求項26~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
請求項26~34のいずれか一項に記載の方法を使用して調製されたcircRNA。
【請求項36】
請求項1~25のいずれか一項に記載の線状RNAにおけるニックのライゲーションによって形成されたcircRNA。
【請求項37】
請求項1~25のいずれか一項に記載の線状RNAをコードする核酸配列を含む、核酸構築物。
【請求項38】
線状RNAをコードする核酸配列に作動可能に連結されたT7プロモーターを含む、請求項37に記載の核酸構築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年8月27日に提出された国際特許出願PCT/CN2021/115029号の優先権を享有することを主張し、その内容全体が参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
[ASCIIテキストファイルでの配列表の提出]
ASCIIテキストファイルで提出された以下の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる:配列表のコンピューター可読形式(CRF)(ファイル名:165392000741SEQLIST.TXT、記録日:2022年3月15日、サイズ:10,097バイト)。
【0003】
本出願は、エフェクターRNA(例えば、コードRNA)配列を含む環状RNA(circRNA)を調製するための構築物および方法、それによって調製されるcircRNA、ならびにその使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
近年、コード能を有する環状RNA(circRNA)が発見されているが、コード能を有する環状RNAをインビトロで正確かつ効率的に調製することは依然として課題である。環状RNAを生成する現在の方法は、使用する酵素に応じて主に2つのカテゴリーに分類される。1つ目のカテゴリーの方法は、グループIイントロンの自己触媒作用を利用して環状RNAを生成する。2つ目のカテゴリーの方法では、T4 RNAリガーゼを使用して環状RNAを生成する。T4 RNAリガーゼ1を介したライゲーションは、RNAを環状化するために一般的に使用される方法であるが、ライゲーションプロセス中に挿入や欠失が導入されるため、線状RNAの末端を正確にライゲーションできない。さらに、スプリント(splint)オリゴヌクレオチドは、線状RNA前駆体が環状RNAに効率的にライゲーションできるようにするために、線状RNA前駆体の両端を結合することが通常必要とされている。スプリントオリゴヌクレオチドはライゲーション後に除去する必要があり、ポリマー副産物が形成される可能性がある。
【0005】
スプリントオリゴヌクレオチドを使用したり、コードRNAの末端に不必要な配列を導入したりすることなく、高収率で環状RNA(circRNA)を調製する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願は、ライゲーションにより環状RNA(circRNA)を調製するための線状RNA及び構築物、ならびに環状RNA(circRNA)を調製する方法を提供する。
【0007】
本出願の一態様は、線状RNAを提供し、この線状RNAは、5’末端から3’末端まで:(a)RNAエレメントの第1の部分、(b)エフェクターRNA配列、及び(c)RNAエレメントの第2の部分を含み、RNAエレメントの第1の部分とRNAエレメントの第2の部分が互いに会合して、少なくとも4塩基対(bp)長の二本鎖領域を形成し、RNAエレメントの第1の部分の5’末端およびRNAエレメントの第2の部分の3’末端は、二本鎖領域にニックを形成し、前記ニックはRNAリガーゼ(例えば、T4 RNAリガーゼ1またはT4 RNAリガーゼ2)によってライゲーションされ得る。いくつかの実施形態では、二本鎖領域の長さは少なくとも6bp、8bp、10bp、12bpまたはそれ以上である。いくつかの実施形態では、二本鎖領域が約6bp長から約25bp長である。いくつかの実施形態では、二本鎖領域は、例えば、RNAフォールド(RNAfold)またはMフォールド(Mfold)ソフトウェアによって予測されたように、37℃及び1.0M Na+のイオン強度で約-8kcal/mol以下(例えば、-9、-10、-11、-12、-13、-14、-15、-16kcal/mol以下)の最小自由エネルギーを有する。
【0008】
上記の線状RNAのいずれか1つによるいくつかの実施形態では、RNAエレメントの長さは少なくとも20ntであり、例えば、少なくとも約50nt、100nt、200nt、300nt、500nt、600nt、700nt、800nt、900nt、1000nt、またはそれ以上である。
【0009】
上記の線状RNAのいずれか1つによるいくつかの実施形態では、二本鎖領域はニックの3’側に少なくとも2bpを含む。いくつかの実施形態では、二本鎖領域はニックの3’側に約2、3、4、5、6、またはそれ以上の塩基対(bp)のいずれかを含む。
【0010】
上記の線状RNAのいずれか1つによるいくつかの実施形態では、二本鎖領域はニックの5’側に少なくとも2(例えば、少なくとも4)bpを含む。いくつかの実施形態では、二本鎖領域はニックの5’側に約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12またはそれ以上の塩基対のいずれかを含む。
【0011】
上記の線状RNAのいずれか1つによるいくつかの実施形態では、RNAエレメントの第1の部分およびRNAエレメントの第2の部分は、N個のヌクレオチドの参照RNAエレメントに由来し、ここで、Nは8より大きい整数であり、RNAエレメントの第1の部分は、参照RNAエレメントのXからN番目のヌクレオチドを含み、Xは、1より大きくNより小さい整数であり、RNAエレメントの第2の部分は、参照RNAエレメントの1からX-1番目のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、RNAエレメントの第1の部分および/またはRNAエレメントの第2の部分は、参照RNAエレメントに対して外因性の配列を含む。いくつかの実施形態では、RNAエレメントの第2の部分は、3’末端に第1の外来配列を含み、RNAエレメントの第1の部分が、第1の外来配列に相補的な第2の外来配列を含み、第1の外来配列と第2の外来配列は、ニックの5’末端に隣接する塩基対を形成する。いくつかの実施形態では、第1の外来配列および/または第2の外来配列は少なくとも4nt長である。いくつかの実施形態では、第1の外来配列はGUUUである。
【0012】
上記の線状RNAのいずれか1つによるいくつかの実施形態では、RNAエレメントは、天然に存在するRNAエレメントまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、RNAエレメントはsgRNAである。いくつかの実施形態では、RNAエレメントはH/ACAボックスsnoRNAである。
【0013】
上記の線状RNAのいずれか1つによるいくつかの実施形態では、エフェクターRNA配列は、コードRNA配列である。いくつかの実施形態では、コードRNA配列は治療用ポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、治療用ポリペプチドが、抗原性ポリペプチド(例えば、病原体の抗原性ポリペプチド、または腫瘍抗原ペプチド)、機能性タンパク質(例えば、酵素)、受容体タンパク質(例えば、可溶性受容体)、および標的化タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)からなる群から選択される。
【0014】
上記の線状RNAのいずれか1つによるいくつかの実施形態では、エフェクターRNA配列はコードRNA配列であり、RNAエレメントは、コードRNAの翻訳を促進する。いくつかの実施形態では、RNAエレメントは、内部リボソーム進入部位(IRES)またはその一部である。いくつかの実施形態では、IRESは、コクサッキーウイルスB3(CVB3)IRES、エンテロウイルス71(EV71)IRES、脳心筋炎ウイルス(EMCV)IRES、ピコルナウイルス(PV)IRES、C型肝炎ウイルス(HCV)IRES、アデノウイルス(AdV)IRES、ヒトパピローマウイルス31型(HPV31)IRES、ヒトヘルペスウイルス(HHV)IRES、ラウス肉腫ウイルス(RSV)IRES、古典的豚コレラウイルス(CSFV)IRES、FGF9 IRES、SLC7A1 IRES、及びRUNX1 IRESからなる群から選択されるIRESに由来する。いくつかの実施形態では、IRESが、CVB3ウイルスまたはその誘導体のIRESである。いくつかの実施形態では、CVB3ウイルスのIRESが配列番号1のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、RNAエレメントの第1の部分が配列番号1の386~749番目のヌクレオチドを含み、RNAエレメントの第2の部分が配列番号1の1~385番目のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、RNAエレメントの第1の部分が配列番号3のヌクレオチド配列を含み、RNAエレメントの第2の部分が配列番号2のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、RNAエレメントの第1の部分が配列番号1の347~749番目のヌクレオチドを含み、RNAエレメントの第2の部分が配列番号1の1~346番目のヌクレオチドを含む。
【0015】
上記の線状RNAのいずれか1つによるいくつかの実施形態では、前記エフェクターRNA配列はコードRNA配列であり、前記線状RNAは、コードRNAの3’末端に作動可能に連結されたインフレーム2Aペプチド(例えば、T2AまたはP2A)コード配列をさらに含む。
【0016】
上記の線状RNAのいずれか1つによるいくつかの実施形態では、エフェクターRNA配列は非コードRNA配列であり、前記エフェクターRNA配列が、ガイドRNA(gRNA)、デアミナーゼリクルートRNA(dRNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、および長い介在非コード(linc)RNAからなる群から選択される非コードRNA配列である。
【0017】
上記の線状RNAのいずれか1つによるいくつかの実施形態では、エフェクターRNA配列は、少なくとも約50ヌクレオチド(nt)長、例えば少なくとも約60、90、120、150、200、300、400、500、600、800、1000、1200、1500nt、またはそれ以上のいずれかである。いくつかの実施形態では、エフェクターRNA配列が約50nt~約5000nt長である。
【0018】
いくつかの実施形態では、上記の線状RNAのいずれか1つによる線状RNAをコードする核酸配列を含む核酸構築物が提供される。いくつかの実施形態では、核酸構築物は、線状RNAをコードする核酸配列に作動可能に連結されたT7プロモーターを含む。
【0019】
本出願の別の態様は、circRNAを調製する方法を提供し、この方法は、(a)環状化RNA生成物を提供するために、線状RNAにおけるニックのライゲーションを可能にする条件下で、上記の線状RNAのいずれか1つによる線状RNAをRNAリガーゼと接触させることと、(b)環状化RNA生成物を単離し、それによってcircRNAを提供することとを含む。いくつかの実施形態では、T4 RNAリガーゼがT4 RNAリガーゼ1である。いくつかの実施形態では、T4 RNAリガーゼがT4 RNAリガーゼ2である。いくつかの実施形態では、circRNAは、ライゲーションによって導入される挿入または欠失など、線状RNAに対して外因性のヌクレオチド配列を含まない。いくつかの実施形態では、ライゲーションがスプリントオリゴヌクレオチドの存在を必要としない。いくつかの実施形態では、ライゲーションの効率が少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、またはそれ以上)である。
【0020】
上記の調製方法のいずれか1つによるいくつかの実施形態では、この方法は、環状化RNA生成物をRNAse Rで処理することをさらに含む。いくつかの実施形態では、この方法は、環状化RNA生成物を精製することをさらに含む。いくつかの実施形態では、この方法は、線状RNAをコードする核酸配列を含む核酸構築物のインビトロ転写によって線状RNAを得ることをさらに含む。
【0021】
上記のいずれか1つの方法を使用して調製されたcircRNAも提供される。
【0022】
いくつかの実施形態では、上記のいずれか1つの線状RNAにおけるニックのライゲーションによって形成される環状RNAが提供される。いくつかの実施形態では、circRNAはcircRNAワクチンである。
【0023】
いくつかの実施形態では、有効量の上記のいずれか1つのcircRNAを被験者に投与することを含む、それを必要とする被験者における疾患または症状を治療または予防する方法が提供される。
【0024】
さらに、上記の方法のいずれかに使用するための組成物、キット、および製品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、線状RNA構築物中のIRESエレメントの2つの部分を連結するT4 RNAリガーゼを使用したコード環状RNAの生成を示す概略図である。EGFPコードRNAは、インビトロ転写およびT4 RNAリガーゼによるライゲーション後のRNA転写物のアーチ部分である。線状RNA構築物のニックは、環状RNA生成物のライゲーション部位に対応する。ライゲーション部位を囲む順方向(F)および逆方向(R)プライマーは、逆転写とそれに続くライゲーション部位を含む配列のPCR増幅によってライゲーションを検出するように設計された。
【
図2A】
図2Aは、RNAフォールドによって予測される野生型CVB3 IRESの二次構造を示す図である。構造内の各円はヌクレオチドを表す。四角で囲まれた領域(本明細書では「操作されたCVB3 IRES領域」とも呼ばれる)は、分子内二本鎖の形成を促進し得る、非常に安定な二本鎖構造を有するCVB3 IRES内の領域を表す。この領域は図の右側に拡大されている。それぞれ部位1および部位2内に分割部位を有する2つの操作されたIRES分割部分を含む線状RNA構築物は、T4 RNAリガーゼによる操作されたIRES分割部分のライゲーションを介して環状RNAを生成するように設計された。
【
図2B】
図2Bは、線状RNA転写物中の部位1(ヌクレオチド番号385)に分割部位を有する操作されたIRES分割部分の第1の例示的な対における操作されたCVB3 IRES領域の予測された二次構造を示す図である。ライゲーション部位は矢印でマークされており、4つのヌクレオチドUUUGおよびその逆相補配列が、ライゲーション部位のすぐ隣の操作されたIRES分割部分に付加された。
【
図2C】
図2Cは、線状RNA転写物中の部位2(ヌクレオチド番号346)に分割部位を有する操作されたIRES分割部分の第1の例示的な対における操作されたCVB3 IRES領域の予測された二次構造を示す図である。ライゲーション部位は矢印でマークされており、4つのヌクレオチドUUUGおよびその逆相補配列が、ライゲーション部位のすぐ隣の操作されたIRES分割部分に付加された。
【
図3】
図3は、T4 RNAリガーゼ1を使用した、
図2BのCVB3 IRES分割に基づく構築物の線状RNA転写物のライゲーションによって生成された環状RNAサンプル(すなわち、部位1ライゲーション環状RNA)の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を示す図である。上のクロマトグラフでは、環状RNAサンプルはRNAse Rで処理されなかった。下のクロマトグラフでは、環状RNAサンプルがRNAse Rで処理された。
【
図4A】
図4Aは、部位1および部位2に連結された環状RNAでトランスフェクトされた細胞におけるEGFPの発現を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、部位1ライゲーション環状RNAによるトランスフェクションの24時間後の細胞におけるEGFP発現を検出するウェスタンブロットの結果を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、前駆体RNA転写物および部位1ライゲーション環状RNAサンプルを使用した、ライゲーション接合部にわたるPCR増幅産物を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、部位1ライゲーション環状RNAにおけるライゲーション接合部のサンガー配列決定を示す図である。
【
図6】
図6は、エフェクターRNA配列に隣接する分割IRES部分を含む線状RNA前駆体を示す図である。前記分割IRES部分は、天然に存在するIRESの一部のみを再構成する。
【
図7】
図7は、例示的なsgRNAの二次構造および潜在的な分割部位を示す図である。
【
図8】
図8は、標的RNAに結合した例示的なH/ACAボックスsnoRNAの二次構造および潜在的な分割部位を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本出願は、エフェクターRNA(例えば、コードRNA)配列を含む環状RNA(circRNA)を調製するための線状RNA前駆体および構築物を提供する。本明細書に記載の線状RNA前駆体は、5’末端から3’末端まで、RNAエレメントの第1の分割(スプリット)部分、エフェクターRNA(例えば、コードRNA)配列、およびRNAエレメントの第2の分割部分を含み、前記RNAエレメントには安定した二本鎖領域がある。線状RNA前駆体の2つの分割部分は、互いに会合して前記RNAエレメントを再構成し、安定な二本鎖領域にニックを形成することができる。RNAリガーゼ(T4 RNAリガーゼ1またはT4 RNAリガーゼ2など)を使用してニックをライゲーションすると、circRNAが生成する。いくつかの実施形態では、RNAエレメントは、CVB3ウイルスのIRESなどの内部リボソーム進入部位(IRES)である。また、本明細書に記載の線状RNA前駆体および構築物を使用してcircRNAを調製する方法も提供される。この方法により、スプリントオリゴヌクレオチドを使用せずに、高効率かつ正確にcircRNAをインビトロで生成することができる。さらに、本明細書に記載の方法において、分子内ライゲーションを促進するために使用されるRNAエレメントの分割部分は、例えばコードRNA配列の翻訳を促進するなどの機能的役割を果たすことができ、それによって免疫原性を有する可能性がある、またはcircRNAのカーゴサイズを減少させる可能性がある追加のライゲーション配列の導入を回避することができる。
【0027】
したがって、いくつかの実施形態では、5’末端から3’末端まで:(a)RNAエレメント(IRESなど)の第1の部分、(b)エフェクターRNA(例えば、コードRNA)配列、および(c)RNAエレメントの第2の部分を含む線状RNAが提供され、ここで、RNAエレメントの第1の部分とRNAエレメントの第2の部分とが互いに会合して、少なくとも4塩基対(bp)長の二本鎖領域を形成し、RNAエレメントの第1の部分の5’末端とRNAエレメントの第2の部分の3’末端が二本鎖領域にニックを形成し、そのニックはRNAリガーゼ(例えば、T4 RNAリガーゼ2)によって連結され得る。
【0028】
I.定義
以下に別段の定義がない限り、本明細書で使用される用語は、当技術分野で一般的に使用されるものと同じように使用される。
【0029】
「線状RNA」という用語は、5’末端および3’末端を有するRNA分子を指す。線状RNAは、ヘリックスやループ領域などの二次構造を持つ場合がある。
【0030】
「RNAエレメント」という用語は、二本鎖領域を含む二次構造に折り畳まれるRNAモチーフを指す。いくつかの実施形態では、RNAエレメントは、同じ分子上の核酸領域を調節するシス調節RNAエレメントである。RNAエレメントは、天然に存在するRNAエレメント(例えば、IRES)または人工のRNAエレメント(例えば、アプタマー)であり得る。
【0031】
RNAエレメントの「第1の部分」および「第2の部分」という用語は、本明細書ではRNAエレメントの「5’」部分および「3’」部分、「第1の分割部分」および「第2の分割部分」、または「第1の分割」及び「第2の分割」と交換可能に使用され、RNAエレメントと実質的に同じ二次構造に自己集合することができる参照RNAエレメントの操作されたフラグメントを指す。いくつかの実施形態では、参照RNAエレメントは、内部位置Xで、参照RNAエレメントの位置Xから末端までのヌクレオチドを含む第1の部分(すなわち、3’部分)と、参照RNAエレメントの位置1から位置X-1までのヌクレオチドを含む第2の部分(すなわち、5’部分)との二部分に分けられるか、または分割される。位置Xは、参照RNAエレメントの「分割部位」と呼ばれる。第1の部分および/または第2の部分は、参照RNAエレメントには存在しない外来配列をさらに含み得る。第1の部分および/または第2の部分は、参照RNAエレメントの配列に対して欠失または置換を有していてもよい。外来配列、欠失および置換は、前記RNAエレメントの第1部分および第2部分を通じて前記再構成されたRNAエレメントの機能及び活性を大きく変化させない(例えば、10%、20%、30%、40%、または50%を超えて減少させない)。
【0032】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」、「ヌクレオチド配列」、および「核酸配列」という用語は互換的に使用される。これらの用語は、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはそれらの類似体のいずれかである、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。
【0033】
「デアミナーゼ動員RNA(deaminase-recruiting RNA)」、「dRNA」、「ADAR動員RNA(ADAR-recruiting RNA)」および「arRNA」という用語は、RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(Adenosine Deaminase Acting on RNA,ADAR)を動員してRNA中の標的アデノシンを脱アミノ化することができる操作されたRNAに言及する場合、本明細書では互換的に使用される。例示的なdRNAは、例えば、WO2021/008447、PCT/CN2021/071292、およびPCT/CN2021/113290に記載されており、それらの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
本明細書で使用される「ガイドRNA」および「gRNA」は、本明細書では互換的に使用され、Casタンパク質および標的核酸(例えば、二本鎖DNA)と複合体を形成することができるRNAを指す。ガイドRNAは、単一のRNA分子、または2つ以上のRNA分子における相補的領域のハイブリダイゼーションを介して互いに会合した2つ以上のRNA分子を含み得る。例えば、Cas9ヌクレアーゼのガイドRNAは、crRNAおよびtracrRNAを含むことができ、Cas12aヌクレアーゼのガイドRNAは、crRNAのみを含むことができる。「crRNA」または「CRISPR RNA」は、標的核酸(例えば、二本鎖DNA)の標的配列に対して十分な相補性を有するガイド配列を含み、これは、標的核酸へのCRISPR複合体の配列特異的結合を導く。「tracrRNA」または「トランス活性化CRISPR RNA」は、crRNAと部分的に相補的であり、crRNAと塩基対を形成し、crRNAの成熟において役割を果たす可能性がある。「シングルガイドRNA」または「sgRNA」は、単一分子内に互いに融合されたcrRNAおよびtracrRNAを有する操作されたガイドRNAである。
【0035】
「治療用ポリペプチド」という用語は、治療効果を有するポリペプチドを指す。治療用ポリペプチドは、天然に存在するタンパク質、または天然に存在するタンパク質のアミノ酸配列に1つまたは複数の変異(例えば、挿入、欠失、置換など)を有する機能的フラグメント及び誘導体を含む、その操作された機能的バリアント(変体)、ならびに天然に存在するタンパク質またはそのフラグメントを含む融合タンパク質であり得る。治療用ポリペプチドは、天然に存在する対応物を持たない操作されたタンパク質であってもよい。治療用ポリペプチドは、単一のポリペプチド鎖または複数のポリペプチド鎖を有し得る。
【0036】
「抗原性ポリペプチド」という用語は、哺乳動物の免疫系を誘発して、このポリペプチドまたはその一部に特異的な抗体を発生させるために使用できるポリペプチドを指す。本明細書に記載される抗原性ポリペプチドには、天然に存在するタンパク質、タンパク質ドメイン、および天然に存在するタンパク質に由来する短いペプチドフラグメントが含まれる。抗原性ポリペプチドは、天然に存在するタンパク質の1つ以上の既知のエピトープを含み得る。抗原性ポリペプチドは、免疫原性を改善するキャリアタンパク質または多量体化タンパク質を含み得る。
【0037】
「機能的タンパク質」という用語は、遺伝性疾患または状態の治療において機能的である、天然に存在するタンパク質、その機能的バリアント、またはその操作された誘導体を指す。前記疾患または状態は、前記機能的タンパク質に対応する野生型の天然タンパク質における突然変異などの変化によって全体的または部分的に引き起こされる可能性がある。
【0038】
「標的化タンパク質」という用語は、標的分子に特異的に結合するポリペプチドを指す。本明細書に記載の標的化タンパク質には、抗体ベースおよび非抗体ベースの結合タンパク質またはその標的結合部分が含まれる。
【0039】
「抗体」という用語は、その最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、完全長抗体およびその抗原結合フラグメントを含むがこれらに限定されない様々な抗体構造(それらが望ましい抗原結合活性を示す限り)を包含する。本明細書で使用される「抗原結合フラグメント」という用語は、例えば、ダイアボディ、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント、ジスルフィド安定化Fvフラグメント(dsFv)、(dsFv)2、二重特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(ds diabody)、一本鎖Fv(scFv)、scFvダイマー(二価ダイアボディ)、1つまたは複数のCDRを含む抗体の一部から形成される多重特異性抗体、ラクダ化単一ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、二価ドメイン抗体、または抗原に結合するが完全な抗体構造を含まないその他の抗体フラグメントを含む抗体フラグメントを指す。
【0040】
本明細書で使用する場合、「特異的に結合する」、「特異的に認識する」、および「…に特異的である」という用語は、標的と標的化部分との間の結合などの、測定可能かつ再現可能な相互作用を指す。例えば、標的(エピトープであり得る)を特異的に認識する標的化部分は、他の分子への結合よりも大きい親和性、結合力で、より容易に、および/またはより長い持続時間でこの標的に結合する標的化部分(例えば、抗体)である。いくつかの実施形態では、標的化部分の無関係な分子への結合の程度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定されるところ、標的への標的化部分の結合の約10%未満である。いくつかの実施形態では、標的に特異的に結合する標的化部分の解離定数(KD)は、10-5M以下、10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下、10-9M以下、10-10M以下、10-11M以下、または10-12M以下である。いくつかの実施形態では、特異的結合には、排他的結合が含まれ得るが、排他的結合が必要ではない。標的化部分の結合特異性は、当技術分野で知られている方法により実験的に決定することができる。このような方法には、ウェスタンブロット、ELISA、RIA、ECL、IRMA、EIA、BIACORETM、およびペプチドスキャンが含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
参照タンパク質の「機能的バリアント」という用語は、参照タンパク質もしくはポリヌクレオチドまたはその一部に由来するバリアントポリペプチドもしくはポリヌクレオチドを指し、このバリアントは、前記参照タンパク質またはポリヌクレオチドと実質的に同じ活性(例えば、標的への結合または酵素活性)を有する。「実質的に同じ活性」とは、参照タンパク質またはポリヌクレオチドの活性と比べて少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上の活性レベルのいずれかを意味する。
【0042】
本明細書で使用される「導入すること」または「導入」という用語は、circRNAなどの1つもしくは複数のポリヌクレオチド、または本明細書に記載のベクターを含む1つまたは複数の構築物、その1つまたは複数の転写物を宿主細胞に送達することを意味する。本願の方法は、宿主細胞への本明細書に記載のcircRNAまたは構築物の導入を達成するために、ウイルス、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクションおよびコンジュゲーションを含むがこれらに限定されない多くの送達システムを使用することができる。従来のウイルスおよび非ウイルスベースの遺伝子導入法を使用して、哺乳動物細胞または標的組織に核酸を導入できる。このような方法は、本願のcircRNAをコードする核酸を培養細胞または宿主生物内に投与するために使用することができる。非ウイルスベクター送達システムには、DNAプラスミド、RNA(例えば、本明細書に記載の構築物の転写物)、裸の核酸、およびリポソームなどの送達ビヒクルと複合体を形成した核酸が含まれる。ウイルスベクター送達システムには、宿主細胞に送達するためのエピソームゲノムまたは組み込まれたゲノムを有するDNAウイルスおよびRNAウイルスが含まれる。
【0043】
本明細書で使用されるように、「作動可能に連結された」とは、第2の核酸配列と作動可能に連結された第1の核酸配列を指す場合、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的関係に置かれている状況を意味する。例えば、プロモーターがコード配列の転写に影響を与える場合、プロモーターは前記コード配列に作動可能に連結される。同様に、シグナルペプチドのコード配列は、シグナルペプチドがそのポリペプチドの細胞外分泌に影響を与える場合、ポリペプチドのコード配列に作動可能に連結される。一般に、作動可能に連結された核酸配列は連続しており、かつ2つのタンパク質コード領域を連結する必要がある場合には、オープンリーディングフレームが整列される。
【0044】
本明細書で使用される場合、「相補性」とは、伝統的なワトソンクリック塩基対形成により、核酸が別の核酸と水素結合を形成する能力を指す。相補性パーセントは、第二の核酸と水素結合(すなわち、ワトソンクリック塩基対形成)を形成できる核酸分子中の残基のパーセンテージを示す(例えば、10個中約5、6、7、8、9、10個、それぞれ約50%、60%、70%、80%、90%、および100%相補的である)。「完全に相補的」とは、核酸配列のすべての連続残基が、第2の核酸配列内の同じ数の連続残基と水素結合を形成することを意味する。本明細書で使用される「実質的に相補的」とは、約40、50、60、70、80、100、150、200、250またはそれ以上のヌクレオチドの領域にわたる少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%のいずれか1つである相補性の程度を指し、またはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする2つの核酸を指す。
【0045】
本明細書で使用される場合、「治療」または「治療すること」は、臨床結果を含む有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチである。本出願の目的上、有益なまたは所望の臨床結果には、疾患に起因する1つ以上の症状の軽減、疾患の程度の軽減、疾患の安定化(例えば、疾患の悪化を予防するまたは遅らせること)、疾患の蔓延を予防するまたは遅らせること、疾患の発生または再発を予防するまたは遅らせること、疾患の進行を遅延するまたは遅らせること、病状の改善、疾患の寛解(部分的または完全にかかわらず)、疾患の治療に必要な1つ以上の他の薬剤の用量の減少、疾患の進行を遅らせること、生活の質を高めること、および/または生存期間の延長のうちの1つまたは複数が含まれるが、これらに限定されない。「治療」には、疾患の病理学的結果の軽減も含まれる。本出願の方法は、治療のこれらの側面のいずれか1つ以上を企図する。
【0046】
「個体」、「被験者」、および「患者」という用語は、本明細書ではヒトを含む哺乳動物を記述するために互換的に使用される。いくつかの実施形態では、個体はヒトである。いくつかの実施形態では、個体はマウスなどのげっ歯類である。いくつかの実施形態では、個体は遺伝性の疾患または状態を患っている。いくつかの実施形態では、個体はコロナウイルス感染症を患っている。いくつかの実施形態では、個体はコロナウイルス感染症に罹患するリスクがある。いくつかの実施形態では、個体は治療を必要としている。
【0047】
当技術分野で理解されているように、「有効量」とは、所望の治療結果(例えば、抗体の産生を刺激し、1つ以上のコロナウイルスに対する免疫力を改善し、疾患もしくは状態の1つ以上の症状の重症度または継続期間を軽減し、重症度を安定させ、または疾患もしくは状態の1つ以上の症状を除去すること)をもたらすのに十分な組成物の量を指す。治療用途の場合、有益なまたは所望の結果には、例えば、合併症および疾患の進行中に示される中間病理学的表現型を含む、疾患(生化学的、組織学的および/または行動的)に起因する1つまたは複数の症状の軽減、疾患に罹患している患者の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬剤の投与量の低減、別の薬剤の効果の増強、疾患の進行の遅延、および/または患者の生存期間の延長が含まれる。いくつかの実施形態では、有効量の治療薬は生存期間(全生存期間および無増悪生存期間を含む)を延長し得、客観的な反応(完全な反応または部分的な反応を含む)を引き起こし、疾患または状態の1つ以上の兆候または症状をある程度軽減し、および/または被験者の生活の質を改善する。いくつかの実施形態では、有効量は、予防的有効量であり、感受性のある個体および/または疾患や状態を発症する可能性がある個体に投与した場合に、疾患または状態の1つ以上の将来の症状の重症度を予防または軽減するのに十分な組成物の量である。予防的使用の場合、有益なまたは所望の結果には、例えば、将来の疾患のリスクの除去または軽減、将来の疾患の重症度の軽減、または疾患の発症の遅延(例えば、疾患の生化学的、組織学的および/または行動的症状の遅延、その合併症、および疾患の将来の進行中に現れる中間の病理学的表現型)などの結果が含まれる。
【0048】
本明細書で使用される「野生型」という用語は、当業者によって理解される技術用語であり、突然変異体またはバリアントとは区別される、天然に存在する生物、菌株、遺伝子または特徴の典型的な形態を意味する。
【0049】
本開示は、バリアントおよび誘導体を含む、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに基づくいくつかのタイプの組成物を提供する。これらには、例えば、置換、挿入、欠失、および共有結合のバリアントおよび誘導体が含まれる。「誘導体」という用語は「バリアント」という用語と同義であり、一般に、参照分子または出発分子に対して何らかの方法で修飾および/または変更された分子を指す。
【0050】
したがって、参照配列、特に本明細書に開示されるポリペプチド配列に対して置換、挿入および/または付加、欠失および共有結合修飾を含むペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、本開示の範囲内に含まれる。例えば、配列タグまたはアミノ酸をペプチド配列に(例えば、N末端またはC末端に)付加することができる。配列タグは、ペプチドの検出、精製、または位置特定に使用できる。あるいは、ペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列のカルボキシおよびアミノ末端領域に位置するアミノ酸残基を任意に削除して、切り詰められた(truncated)配列を提供してもよい。あるいは、特定のアミノ酸(例えば、C末端残基またはN末端残基)は、例えば、可溶性の、または固体支持体に連結されたより大きな配列の一部としての配列の発現など、配列の使用に応じて欠失され得る。
【0051】
「非天然」または「操作された」という用語は互換的に使用され、人が関与していることを示す。核酸分子またはポリペプチドに言及する場合、これらの用語は、核酸分子またはポリペプチドが、自然界で自然に結合する、及び自然界で見られるような少なくとも1つの他の成分を少なくとも実質的に含まないことを意味する。
【0052】
本明細書で使用される場合、「発現」とは、ポリヌクレオチドがDNAテンプレートから(mRNAまたは他のRNA転写物などに)転写されるプロセスおよび/または転写されたmRNAがその後ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に翻訳されるプロセスを指す。転写物およびコードされたポリペプチドは、集合的に「遺伝子産物」と呼ばれることがある。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現には真核細胞におけるmRNAのスプライシングが含まれ得る。
【0053】
「ポリペプチド」または「ペプチド」という用語は、本明細書で使用される場合、あらゆる長さのタンパク質フラグメント、融合タンパク質および修飾タンパク質を含む、あらゆる種類の天然タンパク質および合成タンパク質を包含する。これには、糖タンパク質、ならびに他のすべての種類の修飾タンパク質(例えば、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、パルミトイル化、グリコシル化、酸化、ホルミル化、アミド化、ポリグルタミル化、ADP-リボシル化、ペグ化、ビオチン化などから生じるタンパク質)を含むがこれらに限定されない。
【0054】
「薬学的に許容される担体」とは、薬学的製剤中の有効成分以外の、被験者に対して非毒性の1つまたは複数の成分を指す。薬学的に許容される担体としては、緩衝剤、賦形剤、安定剤、凍結保護剤、等張化剤、保存剤、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される担体または賦形剤は、毒物学的試験および製造試験の必要な基準を満たしている、および/または米国食品医薬品局またはその他の州/連邦政府が作成する『不活性成分ガイド(Inactive Ingredient Guide)』に含まれているか、米国薬局方またはその他の一般的に認められている医薬品にリストされている、哺乳類、特にヒトでの使用を目的とした薬局方に記載されていることが好ましい。
【0055】
「添付文書」という用語は、治療用製品の市販パッケージに慣例的に含まれる説明書を指すために使用され、適応症、用法、用量、投与、併用療法、禁忌および/またはそのような治療用製品の使用に関する警告に関する情報が含まれている。
【0056】
「製品」は、少なくとも1つの試薬、例えば、疾患または症状(例えば、コロナウイルス感染症)の治療のための薬剤、または本明細書に記載のバイオマーカーを特異的に検出するためのプローブを含む、任意の製造物(例えば、パッケージまたは容器)またはキットである。特定の実施形態では、製造物またはキットは、本明細書に記載の方法を実行するためのユニットとして宣伝、配布、または販売される。
【0057】
本明細書に記載される本発明の実施形態には、「からなる」および/または「から本質的になる」実施形態が含まれることが理解される。
【0058】
本明細書における値またはパラメータの「約」への言及は、その値またはパラメータ自体に向けられた変形を含む(および説明する)。例えば、「約X」という記述には、「X」についての記述も含まれる。
【0059】
本明細書で使用される場合、値またはパラメータ「(では)ない」という言及は、一般に、値またはパラメータ「以外」を意味し、説明する。例えば、その方法がX型の疾患の治療に使用されないということは、その方法がX型以外の疾患の治療に使用されることを意味する。
【0060】
本明細書において「約X~Y」とは、「約X~約Y」と同義である。
【0061】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、または「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。
【0062】
本明細書で使用される「Aおよび/またはB」などの語句「および/または」は、AとBとの両方;AまたはB;A(単独);ならびにB(単独)を含むことを意図している。同様に、本明細書で使用される「A、B、および/またはC」などの語句「および/または」は、以下の実施形態:A、B、及びC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AとC;AとB;BとC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)のそれぞれを包含することを意図している。
【0063】
II.線状RNAと構築物
本出願は、線状RNA前駆体(本明細書では線状RNA(直鎖状RNA)とも称する)および治療用ポリペプチドなどのポリペプチドをコードする環状RNA(circRNA)を調製するための構築物を提供する。本明細書に記載の線状RNA前駆体は、エフェクターRNA(例えば、コードRNA)配列に隣接するRNAエレメントの2つの分割部分を含む。circRNAは、RNAリガーゼを使用してRNAエレメントの分割部分の末端を連結することによって得ることができる。前記線状RNAは、セクションA「RNAエレメント」に記載されるRNAエレメントの第1の部分および第2の部分のいずれか1つ、およびセクションB「エフェクターRNA配列」に記載されるRNAエレメントの第1の部分および第2の部分のいずれか1つを含み得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、線状RNAを提供し、この線状RNAは、5’末端から3’末端まで:(a)RNAエレメントの第1の部分、(b)エフェクターRNA配列、及び(c)RNAエレメントの第2の部分を含み、前記RNAエレメントの第1の部分とRNAエレメントの第2の部分が互いに会合して、少なくとも4塩基対(bp)長(例えば、長さ約6~25bp)の二本鎖領域を形成し、RNAエレメントの第1の部分の5’末端およびRNAエレメントの第2の部分の3’末端は、二本鎖領域にニックを形成し、前記ニックはRNAリガーゼによってライゲーションされ得る。いくつかの実施形態では、二本鎖領域は、例えば、RNAフォールド(RNAfold)またはMフォールド(Mfold)ソフトウェアによって予測されたように、37℃及び1.0M Na+のイオン強度で約-8kcal/mol以下の最小自由エネルギーを有する。いくつかの実施形態では、RNAエレメントの長さは少なくとも20nt(例えば、少なくとも約50nt、または約20~1000nt)である。いくつかの実施形態では、二本鎖領域はニックの3’側に少なくとも2bpを含む。いくつかの実施形態では、二本鎖領域はニックの5’側に少なくとも2(例えば、少なくとも4)bpを含む。いくつかの実施形態では、RNAエレメントは、天然に存在するRNAエレメントまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、RNAエレメントはsgRNAである。いくつかの実施形態では、RNAエレメントはH/ACAボックスsnoRNAである。いくつかの実施形態では、エフェクターRNA配列が約50nt~約5000nt長である。いくつかの実施形態では、エフェクターRNA配列は、ガイドRNA(gRNA)、デアミナーゼリクルートRNA(dRNA)、siRNA、miRNA、shRNA、および長鎖遺伝子間非コード(linc)RNAからなる群から選択される非コードRNA配列である。
【0065】
いくつかの実施形態では、線状RNAを提供し、この線状RNAは、5’末端から3’末端まで:(a)RNAエレメントの第1の部分、(b)コードRNA配列、及び(c)RNAエレメントの第2の部分を含み、RNAエレメントの第1の部分とRNAエレメントの第2の部分が互いに会合して、少なくとも4塩基対(bp)長(例えば、長さ約6~25bp)の二本鎖領域を形成し、RNAエレメントの第1の部分の5’末端およびRNAエレメントの第2の部分の3’末端は、二本鎖領域にニックを形成し、前記ニックはRNAリガーゼによってライゲーションされ得る。いくつかの実施形態では、二本鎖領域は、例えば、RNAフォールド(RNAfold)またはMフォールド(Mfold)ソフトウェアによって予測されたように、37℃及び1.0M Na+のイオン強度で約-8kcal/mol以下の最小自由エネルギーを有する。いくつかの実施形態では、RNAエレメントの長さは少なくとも20nt(例えば、少なくとも約50nt、または約20~1000nt)である。いくつかの実施形態では、二本鎖領域はニックの3’側に少なくとも2bpを含む。いくつかの実施形態では、二本鎖領域はニックの5’側に少なくとも2(例えば、少なくとも4)bpを含む。いくつかの実施形態では、RNAエレメントは、天然に存在するRNAエレメントまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、RNAエレメントは、RNA配列の翻訳を促進する。いくつかの実施形態では、コードRNA配列が約50nt~約5000nt長である。いくつかの実施形態では、コードRNA配列は、例えば、抗原性ポリペプチド、機能性タンパク質、受容体タンパク質、または標的化タンパク質などの治療用ポリペプチドをコードする。
【0066】
いくつかの実施形態では、線状RNAを提供し、この線状RNAは、5’末端から3’末端まで:(a)RNAエレメントの第1の部分、(b)エフェクターRNA(例えば、コードRNA)配列、及び(c)RNAエレメントの第2の部分を含み、RNAエレメントの第1の部分およびRNAエレメントの第2の部分は、N個のヌクレオチドの参照RNAエレメントに由来し、ここで、Nは8より大きい整数であり、RNAエレメントの第1の部分は、参照RNAエレメントのXからN番目のヌクレオチドを含み、Xは、1より大きくNより小さい整数であり、RNAエレメントの第2の部分は、参照RNAエレメントの1からX-1番目のヌクレオチドを含み、RNAエレメントの第1の部分とRNAエレメントの第2の部分が互いに会合して、少なくとも4塩基対(bp)長(例えば、長さ約6~25bp)の二本鎖領域を形成し、RNAエレメントの第1の部分の5’末端およびRNAエレメントの第2の部分の3’末端は、二本鎖領域にニックを形成し、前記ニックはRNAリガーゼによってライゲーションされ得る。いくつかの実施形態では、二本鎖領域は、例えば、RNAフォールド(RNAfold)またはMフォールド(Mfold)ソフトウェアによって予測されたように、37℃及び1.0M Na+のイオン強度で約-8kcal/mol以下の最小自由エネルギーを有する。いくつかの実施形態では、RNAエレメントの長さは少なくとも20nt(例えば、少なくとも約50nt、または約20~1000nt)である。いくつかの実施形態では、二本鎖領域はニックの3’側に少なくとも2bpを含む。いくつかの実施形態では、二本鎖領域はニックの5’側に少なくとも2(例えば、少なくとも4)bpを含む。いくつかの実施形態では、RNAエレメントの第1の部分および/またはRNAエレメントの第2の部分は、参照RNAエレメントに対して外因性の配列を含む。いくつかの実施形態では、RNAエレメントの第2の部分は、3’末端に第1の外来配列を含み、RNAエレメントの第1の部分が、第1の外来配列に相補的な第2の外来配列を含み、第1の外来配列と第2の外来配列は、ニックの5’末端に隣接する塩基対を形成する。いくつかの実施形態では、第1の外来配列はGUUUである。いくつかの実施形態では、RNAエレメントは、天然に存在するRNAエレメントまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、エフェクターRNA配列は、コードRNA配列である。いくつかの実施形態では、エフェクターRNA配列が約50nt~約5000nt長である。いくつかの実施形態では、RNAエレメントは、コードRNAの翻訳を促進する。いくつかの実施形態では、コードRNA配列は、例えば、抗原性ポリペプチド、機能性タンパク質、受容体タンパク質、または標的化タンパク質などの治療用ポリペプチドをコードする。
【0067】
いくつかの実施形態では、線状RNAを提供し、この線状RNAは、5’末端から3’末端まで:(a)内部リボソーム進入部位(IRES)の第1の部分、(b)コードRNA配列、及び(c)IRESの第2の部分を含み、IRESの第1の部分およびIRESの第2の部分が互いに会合して、少なくとも4bp長(例えば、長さ約6~25bp)の二本鎖領域を形成し、IRESの第1の部分の5’末端およびIRESの第2の部分の3’末端は、二本鎖領域にニックを形成し、前記ニックはRNAリガーゼによってライゲーションされ得る。いくつかの実施形態では、二本鎖領域は、例えば、RNAフォールド(RNAfold)またはMフォールド(Mfold)ソフトウェアによって予測されたように、37℃及び1.0M Na+のイオン強度で約-8kcal/mol以下の最小自由エネルギーを有する。いくつかの実施形態では、二本鎖領域はニックの3’側に少なくとも2bpを含む。いくつかの実施形態では、二本鎖領域はニックの5’側に少なくとも2(例えば、少なくとも4)bpを含む。いくつかの実施形態では、IRESの第1の部分およびIRESの第2の部分は、N個のヌクレオチドの参照IRESに由来し、ここで、Nは8より大きい整数であり、IRESの第1の部分は、参照IRESのXからN番目のヌクレオチドを含み、Xは、1より大きくNより小さい整数であり、IRESの第2の部分は、参照IRESの1からX-1番目のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、IRESの第1の部分および/またはIRESの第2の部分は、参照IRESに対して外因性の配列を含む。いくつかの実施形態では、IRESの第2の部分は、3’末端に第1の外来配列を含み、IRESの第1の部分が、第1の外来配列に相補的な第2の外来配列を含み、第1の外来配列と第2の外来配列は、ニックの5’末端に隣接する塩基対を形成する。いくつかの実施形態では、第1の外来配列はGUUUである。いくつかの実施形態では、IRESは、CVB3、EV71、EMCV、PV、HCV、AdV、HPV31、HHV、RSV、及びCSFVからなる群から選択されるウイルスのIRESに由来する。いくつかの実施形態では、IRESは、ヒトIRES、例えば、FGF9 IRES、SLC7A1 IRES、またはRUNX1 IRESに由来する。いくつかの実施形態では、コードRNA配列の長さは約50nt~約5000ntである。いくつかの実施形態では、コードRNA配列は、例えば、抗原性ポリペプチド、機能性タンパク質、受容体タンパク質、または標的化タンパク質などの治療用ポリペプチドをコードする。
【0068】
いくつかの実施形態では、線状RNAを提供し、この線状RNAは、5’末端から3’末端まで:(a)CVB3 IRESの386~749番目のヌクレオチド(ヌクレオチド番号は、配列番号1によるものである)を含む第1のRNA部分、(b)コードRNA配列、及び(c)CVB3 IRESの1~385番目のヌクレオチドを含む第2のRNA部分を含み、第1のRNA部分および第2のRNA部分が互いに会合して二本鎖領域を形成し、この二本鎖領域は、第1のRNA部分の5’末端および第2のRNA部分の3’末端から形成されるニックを含み、前記ニックはRNAリガーゼによってライゲーションされ得る。いくつかの実施形態では、第1のRNA部分および/または第2のRNA部分は、CVB3 IRESに対して外因性の配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のRNA部分は、3’末端に第1の外来配列を含み、第1のRNA部分が、第1の外来配列に相補的な第2の外来配列を含み、第1の外来配列と第2の外来配列は、ニックの5’末端に隣接する塩基対を形成する。いくつかの実施形態では、第1の外来配列はGUUUである。いくつかの実施形態では、第1のRNA部分が配列番号3のヌクレオチド配列を含み、第2のRNA部分が配列番号2のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、コードRNA配列が約50nt~約5000nt長である。いくつかの実施形態では、コードRNA配列は、例えば、抗原性ポリペプチド、機能性タンパク質、受容体タンパク質、または標的化タンパク質などの治療用ポリペプチドをコードする。
【0069】
いくつかの実施形態では、線状RNAは、5’末端から3’末端まで:IRESの第1の部分、任意選択のシグナルペプチド、コードRNA配列、2Aペプチドをコードする配列、及びIRESの第2の部分を含む。いくつかの実施形態では、線状RNA配列は、配列番号10または11のヌクレオチド配列を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の線状RNAのいずれか1つをコードする核酸配列を含む核酸構築物が提供される。いくつかの実施形態では、T7プロモーターが、線状RNAをコードする核酸配列に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、T7プロモーターは、配列番号6に示されるような配列を含む。いくつかの実施形態では、T7プロモーターはインビトロ転写を駆動することができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、核酸構築物はプラスミドである。いくつかの実施形態では、プラスミドは、線状RNAをコードする配列をプラスミドベクターにクローニングすることによって得られる。プラスミドは、ギブソン(Gibson)クローニングまたは制限酵素を使用するクローニングなどの当技術分野で知られている技術によって生成することができる。いくつかの実施形態では、プラスミドベクターは、プラスミドを発現する細菌の抗生物質による選択を可能にする抗生物質発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、提供されるプラスミドは細菌から精製され、線状RNA構築物の生成に使用され得る。線状RNAのインビトロ転写に適した任意のプラスミドベクターを使用することができる。いくつかの実施形態では、プラスミドは、線状RNAのインビトロ転写前に線状化される。いくつかの実施形態では、組換えプラスミドは、制限酵素消化によって線状化される。いくつかの実施形態では、組換えプラスミドはPCR増幅によって線状化される。
【0072】
A.RNAエレメント
本明細書に記載の線状RNAは、二本鎖らせん領域を含む広範な二次構造を有するRNAエレメントの分割部分を含む。分割部分(すなわち、第1の部分および第2の部分)は、参照RNAエレメントに基づいて操作されることができ、すなわち、参照RNAエレメントは、参照RNAエレメントの安定な二本鎖領域内の「分割部位」(すなわちヌクレオチドへの5’側のホスホジエステル結合)によって5’部分(すなわち、本明細書に記載の線状RNAにおける第2の部分)と3’部分(すなわち、本明細書に記載の線状RNAの第1の部分)に分けられる。例えば、N個のヌクレオチドを有するRNAエレメントにおいて分割部位がX番目のヌクレオチドの5’側にあり、XおよびNは整数であり、Xは1より大きくNより小さい場合、RNAエレメントの第1の部分は、当該RNAエレメントの1番目のヌクレオチドからX-1番目のヌクレオチドを含み、且つRNAエレメントの第2の部分は、当該RNAエレメントのX~N番目のヌクレオチドを含む。分割部分は、1つまたは複数の外来配列をRNAエレメントの第1の部分および/または第2の部分に導入すること、RNAエレメントの第1の部分および/または第2の部分の1つまたは複数のヌクレオチドを削除すること、および/またはRNAエレメントの第1の部分および/または第2の部分の1つ以上のヌクレオチドを置換することによってさらに操作することができる。線状RNAのRNAエレメントの分割部分は互いに会合して二本鎖領域を再構成することができるが、第1の部分の5’末端と第2の部分の3’末端には分割部位にニックが生じ、このニックは、RNAリガーゼ(例えば、T4 RNAリガーゼ1またはT4 RNAリガーゼ2)によって連結できる。
【0073】
RNAエレメントの分割部位は、RNAエレメントが2つの部分に分割されるときに、線状RNA配列におけるエフェクターRNA(例えば、コードRNAなど)の2つの末端に配置されるように、最初に安定な二本鎖領域を同定することによって選択でき、これら2つの部分が会合してニックのある二本鎖領域を形成できる。二本鎖領域の自由エネルギーが低いため、RNAリガーゼによる分子内ライゲーションが促進される。RNAエレメント中の安定な二本鎖領域は、当技術分野で既知の方法を使用して計算的に同定することができる。例えば、RNAフォールド(RNAfold)(Hofacker,I.L.Vienna RNA Secondary Structure Server.Nucleic Acids Res.31,3429-3431(2003))およびMフォールド(Mfold)(M.Zuker,Nucleic Acids Res.,31(13),3406-15,(2003)))ソフトウェアは、コンピューターによってRNA分子を折り畳み、RNA分子の二本鎖領域を含む二次構造を予測するために使用できるWebサーバーである。例えば、
図2Aは、RNAフォールドソフトウェア(RNAfold)によって予測されるCVB3 IRESの二次構造を示す。自由エネルギーの低い領域と二本鎖らせん領域(
図2Aの四角で囲った領域など)を選択して、例えば、
図2Aに示す部位1や部位2などの二本鎖領域内の分割部位を操作できる。分割部位は、RNAエレメントの機能に影響を与えることが知られているヌクレオチド位置に隣接してはならない。いくつかの実施形態では、RNAエレメント内の容易にアクセスできるホスホジエステル結合が分割部位として選択される。いくつかの実施形態では、二本鎖領域は、高いGC含量、例えば、少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、またはそれ以上のGC塩基対のいずれか1つを有する。
【0074】
いくつかの実施形態では、分割部位は、参照RNAエレメントの中間点近くに選択される。いくつかの実施形態では、RNAエレメントの第1の部分は、RNAエレメントの第2の部分と実質的に同じ長さを有する。例えば、RNAエレメントの第1の部分の長さは、RNAエレメントの第2の部分の長さとの異なりは、約100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、40以下、30以下、20以下、10以下、5以下、またはそれ以下のヌクレオチドのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、RNAエレメントの第1の部分の長さは、RNAエレメントの第2の部分の長さとの異なりは、約20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、またはそれ以下のいずれか1つである。
【0075】
いくつかの実施形態では、分割部位は、少なくとも約4bp、例えば少なくとも約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25またはそれ以上のbpの長さのいずれか1つなどの長さの二本鎖領域内で選択される。いくつかの実施形態では、二本鎖領域は、約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25bpの長さのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、二本鎖領域は、約25以下、24以下、23以下、22以下、21以下、20以下、19以下、18以下、17以下、16以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、または6以下のbpの長さのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、二本鎖領域の長さは、約4~25、4~15、4~10、6~25、6~15、6~10、10~15、10~20、または10~25bpのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、二本鎖領域は約6bp~約25bpの長さである。いくつかの実施形態では、二本鎖領域はステムループの一部である。いくつかの実施形態では、二本鎖領域はヘリックスである。いくつかの実施形態では、二本鎖領域はバルジをさらに含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、二本鎖領域の最小自由エネルギーは、例えば、RNAフォールド(RNAfold)またはMフォールド(Mfold)ソフトウェアによって予測されたように、約-5kcal/mol以下、例えば、約-5.5、-6、-6.5、-7、-7.5、-8、-8.5、-9、-9.5、-10、-10.5、-11、-11.5、-12、-12.5、-13、-14、-15kcal/mol以下のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、二本鎖領域の最小自由エネルギーは、約-15~-5.5、-10~-5.5、-8~-5.5、-15~-8、-12~-8、または-10~-8kcal/molのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、RNAエレメントの最小自由エネルギーは、約-50、-100、-150、-200、-250、-300kcal/mol以下のいずれか1つである。
【0077】
いくつかの実施形態では、RNAエレメントは少なくとも20ntの長さであり、例えば、少なくとも約50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、900ntまたはそれ以上の長さのヌクレオチドのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、RNAエレメントは、約1000、900、800、750、700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200、150、100、75、50、または20nt以下の長さのヌクレオチドのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、RNAエレメントは、約20~50、50~100、20~200、20~300、20~500、20~1000、50~200、50~1000、100~1000、100~500、200~500、200~1000、300~1000、300~800、400~900、または500~1000ntの長さのヌクレオチドのいずれか1つである。
【0078】
図1に示すように、例示的な線状RNAでは、RNAエレメントの第1の部分はエフェクターRNA(例えば、コードRNA)の5’末端に隣接し、RNAエレメントの第2の部分はコードRNA(例えば、コードRNA)の3’末端に隣接する。RNAエレメントの第1部分は、RNAエレメントの第2部分と自己集合して、分割部位にニックを有する二本鎖領域を形成し、RNAリガーゼの基質として機能する。いくつかの実施形態では、ニックの5’側および/または3’側にすぐ隣接する塩基対は、RNAリガーゼによってニックのライゲーションを促進する。いくつかの実施形態では、二本鎖領域は、ニックの3’側に少なくとも2bp、例えば2、3、4、5、6、またはそれ以上のbpの塩基対を含む。いくつかの実施形態では、二本鎖領域は、ニックの5’側に少なくとも2bp、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上のbpの塩基対を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、RNAエレメントの第1の部分およびRNAエレメントの第2の部分は、N個のヌクレオチドを有する参照RNAエレメントに由来し、ここで、Nは8より大きい整数であり、RNAエレメントの第1の部分は、参照RNAエレメントのX~N番目のヌクレオチドを含み、Xは1より大きくNより小さい整数であり、RNAエレメントの第2の部分は、参照RNAエレメントの1からX-1番目のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、RNAエレメントの第1の部分は、参照RNAエレメントのX~N番目のヌクレオチドからなるか、または実質的に参照RNAエレメントのX~N番目のヌクレオチドからなり、且つRNAエレメントの第2の部分は、参照RNAエレメントの1からX-1番目のヌクレオチドからなるか、または実質的に参照RNAエレメントの1からX-1番目のヌクレオチドからなる。
【0080】
いくつかの実施形態では、参照RNAエレメントと比較して、RNAエレメントは外因性配列を有さない。いくつかの実施形態では、RNAエレメントの第1の部分の5’末端とRNAエレメントの第2の部分の3’末端とを連結することによって再構成されたRNAエレメントは、参照RNAエレメントと同一である。
【0081】
いくつかの実施形態では、ニックのライゲーション後のRNAエレメントは、参照RNAエレメントの一部である。この部分には安定な二本鎖領域が含まれている。この部分は参照RNAエレメントの機能を持っていても持っていなくてもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、ニックのライゲーション後のRNAエレメントは、参照RNAエレメントのすべてのヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ニックのライゲーション後のRNAエレメントが参照RNAエレメントである。
【0083】
いくつかの実施形態では、参照RNAエレメントと比較して、RNAエレメントは1つまたは複数の外因性配列を含む。いくつかの実施形態では、RNAエレメントの第1の部分は、参照RNAエレメントに対して外因性の配列を含む。いくつかの実施形態では、RNAエレメントの第2の部分は、参照RNAエレメントに対して外因性の配列を含む。いくつかの実施形態では、RNAエレメントの第1の部分は、参照RNAエレメントに対して外因性である第1の配列を含み、RNAエレメントの第2の部分は、参照RNAエレメントに対して外因性である第2の配列を含む。
【0084】
例えば、ニックを含む二本鎖領域をさらに安定化し、それによってRNAリガーゼによるニックのライゲーションを促進するために、外来配列をRNAエレメントの第1の部分またはRNAエレメントの第2の部分に導入することができる。いくつかの実施形態では、RNAエレメントの第1の部分は、3’末端に第1の外来配列を含み、RNAエレメントの第2の部分は、第1の外来配列に相補的な第2の外来性配列を含み、ここで、前記第1の外来配列および第2の外来配列は、ニックの5’末端に隣接する塩基対を形成する。いくつかの実施形態では、第1の外来配列および第2の外来配列は、それぞれ少なくとも4nt長、例えば約4、5、6、7、8またはそれ以上のヌクレオチド長のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、第1の外来配列はGUUUであり、第2の外来配列はAAACである。
【0085】
RNAエレメントは、調節RNAエレメントなどの天然RNAエレメント、その誘導体、または人工RNAエレメントであり得る。いくつかの実施形態では、RNAエレメントはシス調節RNAエレメントである。
【0086】
いくつかの実施形態では、RNAエレメントは、コードRNA配列の翻訳を促進する調節RNAエレメントである。いくつかの実施形態では、RNAエレメントは内部リボソーム進入部位(IRES)である。いくつかの実施形態では、RNAエレメントは全長IRESである。いくつかの実施形態では、RNAエレメントは、安定な二本鎖領域を含むIRESの一部である。IRESの部分はタンパク質の翻訳を促進する機能を持たない可能性がある。
【0087】
例えば、
図6に示されるように、例示的な線状RNAにおいて、第1の部分および第2の部分は、安定性の高い二本鎖領域を含むCVB3 IRESのステムループ部分に由来する。第1の部分および第2の部分は、コードRNAまたは非コードRNA(たとえばgRNA、dRNA、miRNA、siRNA、shRNA、またはlincRNAなど)であり得るエフェクターRNA配列に隣接する。
【0088】
いくつかの実施形態では、IRESはウイルスIRES配列である。非限定的な例において、IRES配列は、CVB3、EV71、EMCV、PV、HCV、AdV、HPV31、HHV、RSV、およびCSFVからなる群から選択されるウイルスからのIRESであり得る。例えば、“Searching for IRES,”RNA.2006 Oct;12(10):1755-1785を参照されたい。同文献の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、IRES配列は細胞IRES配列である。いくつかの実施形態では、IRESは、FGF9 IRES、SLC7A1 IRES、またはRUNX1 IRESなどのヒトIRESに由来する。例示的なIRES配列は、reprod.njmu.edu.cn/cgi-bin/iresbase/view_eukaryote.php、及びcobishss0.im.nuk.edu.tw/Human_IRES_Atlas/などのデータベースで見つけることができ、それらの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0089】
いくつかの実施形態では、RNAエレメントは、CVB3ウイルスのIRESまたはその誘導体である。CVB3 IRESの例示的な配列は配列番号1である。RNAfoldによって予測されるCVB3 IRESの二次構造を
図2に示す。CVB3 IRESは、安定な二本鎖領域内の2つの異なる分割部位で分割できる。分割部位1は386番目のヌクレオチドの5’末端にあり、番号付けは配列番号1に基づく。いくつかの実施形態では、RNAエレメントの第1の部分は配列番号1の386~749番目のヌクレオチドを含み、RNAエレメントの第2の部分は配列番号1の1~385番目のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、RNAエレメントの第1の部分は配列番号3のヌクレオチド配列を含み、RNAエレメントの第2の部分は、配列番号2のヌクレオチド配列を含む。分割部位2は347番目のヌクレオチドの5’末端にあり、番号付けは配列番号1に基づく。いくつかの実施形態では、RNAエレメントの第1の部分は配列番号1の347~749番目のヌクレオチドを含み、RNAエレメントの第2の部分は配列番号1の1~346番目のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、RNAエレメントの第1の部分は配列番号5のヌクレオチド配列を含み、RNAエレメントの第2の部分は、配列番号4のヌクレオチド配列を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、RNAエレメントは、Casヌクレアーゼで作動可能なシングルガイドRNA(sgRNA)などのガイドRNAである。いくつかの実施形態では、gRNAまたはsgRNAは遺伝子編集用である。例示的なCasヌクレアーゼには、Cas9、Cas12a、Cas12b、Cas12c、Cas12d、Cas12f、Cas12g、Cas12h、Cms1、Cas12i、Cas12j、Cas12kおよびCasXが含まれるが、これらに限定されない。
図7は、sgRNA内の潜在的な分割部位を示す。いくつかの実施形態では、RNAエレメントがgRNA(例えば、sgRNA)であり、エフェクターRNAは、Casヌクレアーゼ(例えば、Cas9)をコードする。
【0091】
いくつかの実施形態では、RNAエレメントは、低分子核小体RNA(snoRNA)またはその一部である。いくつかの実施形態では、RNAエレメントは、snoRNAのH/ACAボックスである。H/ACAボックスsnoRNAは、2つのヘアピンと2つの一本鎖領域を含むよく見られる二次構造を持っている。
図8は、H/ACA snoRNAにおける潜在的な分割部位を示す。例示的なH/ACA snoRNA配列は、snostrip.bioinf.uni-leipzig.deにあるsnoStripのWebサーバーで見つけることができる。H/ACA snoRNAは、ウリジンを標的RNA内のプソイドウリジンに変換するために使用できる。H/ACA snoRNA配列はmRNA編集に使用できる。例えば、US8603457B2を参照されたい。
【0092】
RNAエレメントの第1部分とRNAエレメントの第2部分は、線状RNAのライゲーション配列として機能する。RNAエレメントの第1の部分および第2の部分以外に、本明細書に記載される線状RNAは、追加のライゲーション配列を有さない。いくつかの実施形態では、線状RNAは、5’末端に5’ライゲーション配列、および3’末端に3’ライゲーション配列を含まず、ここで、5’ライゲーション配列および3’ライゲーション配列は、5’ライゲーション配列および3’ライゲーション配列とハイブリダイズするスプリントオリゴヌクレオチドの存在下で、リガーゼ(例えば、T4 RNAリガーゼ)を介して互いにライゲーションされ得る。
【0093】
B.エフェクターRNA配列
本明細書に記載の線状RNA前駆体およびcircRNAは、コードRNA配列または非コードRNA配列であり得るエフェクターRNA配列を含む。例示的な非コードRNAとしては、ガイドRNA(シングルガイドRNAまたはsgRNAを含むgRNA)、デアミナーゼリクルートRNA(dRNA)、低分子RNA(例えば、マイクロRNA、ショートヘアピンRNA、低分子干渉RNA)、または長鎖遺伝子間非コードRNA(lincRNA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
いくつかの実施形態では、エフェクターRNA配列は、少なくとも約50nt長、例えば、少なくとも約100、150、200、300、600、900、1200、1500、2000、3000、4000、5000nt、またはそれ以上のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、エフェクターRNA配列は、約5000、4000、3000、2000、1500、1200、900、600、300、200、150、または100nt長以下のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、エフェクターRNA配列は、約50~100、100~500、500~1000、1000~2000、2000~5000、50~5000、100~5000、100~3000、500~5000、500~2500、2500~5000、または1000~5000nt長のいずれか1つである。
【0095】
いくつかの実施形態では、エフェクターRNA配列は、任意の目的のポリペプチドをコードするコードRNA配列である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、少なくとも約15アミノ酸長、例えば、少なくとも約20、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000以上のアミノ酸の長さのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドの長さは約1000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、50、または20アミノ酸以下のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、約20~50、50~100、20~200、20~500、20~1000、50~500、50~1000、100~500、100~1000、200~1000、または500~1000アミノ酸の長さのいずれか1つである。
【0096】
いくつかの実施形態では、コードRNA配列は治療用ポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、治療用ポリペプチドは、抗原性ポリペプチド、機能性タンパク質、受容体タンパク質、または標的化タンパク質(例えば、抗体)である。
【0097】
いくつかの実施形態では、コードRNA配列は、抗原性ポリペプチドをコードする。circRNAワクチンは、抗原性ポリペプチドをコードするコードRNA配列を含む線状RNAを使用して調製することができる。抗原性ポリペプチドは、T細胞受容体(TCR)によって認識可能な少なくとも1つのエピトープを含む。いくつかの実施形態では、抗原性ポリペプチドは、全長タンパク質もしくはそのフラグメント、または被験者において免疫応答を誘発することができる抗原性融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、抗原性ポリペプチドは、アミノ酸長が100以下の短いペプチドである。抗原性ポリペプチドは、1つ以上のエピトープを含むタンパク質抗原からの天然由来のペプチドフラグメント、または1つ以上の天然エピトープ配列を有する人工的に設計されたペプチドであり得、ペプチドリンカーは場合により隣接するエピトープ配列の間に配置され得る。いくつかの実施形態では、抗原性ポリペプチドは、抗原性タンパク質の単一のエピトープを含む。いくつかの実施形態では、抗原性ポリペプチドは、単一の抗原性タンパク質に由来する約1、2、3、4、5、10またはそれ以上のエピトープのいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、抗原性ポリペプチドは、複数(例えば、2、3、4、5、10またはそれ以上)の異なる抗原性タンパク質に由来するエピトープを含む。いくつかの実施形態では、抗原性ポリペプチドは、主要組織適合性複合体(MHC)クラスI制限エピトープを含む。いくつかの実施形態では、抗原性ポリペプチドは、MHCクラスII制限エピトープを含む。いくつかの実施形態では、抗原性ポリペプチドは、MHCクラスI制限エピトープとMHCクラスII制限エピトープの両方を含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、抗原性ポリペプチドは、細菌またはウイルスなどの病原体に由来する抗原性タンパク質もしくはそのフラグメントまたはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、抗原性ポリペプチドは、そのバリアントを含む、SARS-CoV2などのコロナウイルスの抗原性タンパク質またはフラグメントである。いくつかの実施形態では、抗原性ポリペプチドは、SARS-CoV、MERS-COV、もしくはSARS-CoV-2などのコロナウイルスのスパイク(S)タンパク質もしくはそのフラグメントまたはそのバリアントを含む。CircRNAワクチンは、例えばPCT/CN2021/074998に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の線状RNAおよび構築物は、当技術分野で既知のcircRNAワクチンのいずれかを調製するために使用され得る。
【0099】
いくつかの実施形態では、抗原性ポリペプチドは、疾患または症状に関与する抗原などの自己抗原の抗原性タンパク質もしくはそのフラグメントまたはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、抗原性ポリペプチドは腫瘍抗原ペプチドである。腫瘍抗原ペプチド配列は当技術分野で公知であり、がん抗原ペプチドデータベース(van der Bruggen P et al.(2013)“Peptide database:T cell-defined tumor antigens.”Cancer Immunity.URL:caped.icp.ucl.ac.be)などの公共データベースで見つけることができる。本明細書に記載の線状RNAまたはcircRNAにおけるコードRNA配列は、既知の腫瘍抗原ペプチドまたはそれらの組み合わせのいずれかをコードし得る。いくつかの実施形態では、抗原性ポリペプチドは腫瘍関連抗原(TAA)のエピトープを含む。いくつかの実施形態では、抗原性ポリペプチドは腫瘍特異的抗原のエピトープを含む。いくつかの実施形態では、抗原性ポリペプチドは、ネオ抗原、すなわち、個体の腫瘍細胞に存在する新たに獲得され発現された抗原のエピトープを含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のエピトープペプチドのアミノ酸配列は、T細胞エピトープ予測のためのバイオインフォマティクスツールを使用して、抗原タンパク質(ネオアンチゲンを含む)の配列に基づいて予測される。T細胞エピトープ予測のための例示的なバイオインフォマティクスツールは当技術分野で知られており、例えば、Yang X.and Yu X.(2009)“An introduction to epitope prediction methods and software”Rev.Med.Virol.19(2):77-96を参照されたい。いくつかの実施形態では、抗原タンパク質の配列は当技術分野で既知であるか、または公共のデータベースで入手可能である。いくつかの実施形態では、抗原タンパク質(ネオアンチゲンを含む)の配列は、治療される個体のサンプル(腫瘍サンプルなど)を配列決定することによって決定される。
【0101】
いくつかの実施形態では、抗原性ポリペプチドは、二量体化ドメイン、三量体化ドメイン、またはより高次の多量体の形成を媒介するドメインなどの多量体化ドメインを含む。いくつかの実施形態では、多量体化ドメインは三量体化ドメインである。非限定的な例において、多量体化ドメインは、T4フィブリチンタンパク質のC末端フォルドン(Fd)ドメインを含み、C末端フォルドンドメインは、T4フィブリチンタンパク質の三量体化を媒介するドメインである。別の例では、多量体化ドメインは、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)由来のGCN4転写活性化因子の三量体化ドメインに基づくGCN4ベースのイソロイシンジッパー(IZ)ドメインを含む。いくつかの実施形態では、GCN4 IZドメインまたはT4フィブリチンFdドメインは、当技術分野で知られている技術に従って、それらの免疫原性を低下させるために修飾され得る。例えば、GCN4 IZドメインは、その免疫原性を低下させるためにN結合型グリコシル化部位で修飾することができる(Sliepen et al.Immunosilencing a Highly Immunogenic Protein Trimerization Domain.The Journal of Biol.Chem.Vol.290,No.12,pp.7436-7442)。
【0102】
いくつかの実施形態では、抗原性ポリペプチドは免疫原性キャリアタンパク質をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗原性ポリペプチドは、免疫原性キャリアタンパク質にコンジュゲートしたエピトープペプチドを含む。例示的な免疫原性キャリアタンパク質としては、破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、修飾のジフテリア毒素交差反応物質(CRM197)、髄膜炎菌外膜タンパク質複合体(OMPC)、およびインフルエンザ菌タンパク質D(HiD)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
いくつかの実施形態では、コードRNA配列は標的化タンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、標的化タンパク質は抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0104】
いくつかの実施形態では、コードRNA配列は抗体をコードする。いくつかの実施形態では、治療用ポリペプチドは中和抗体、すなわち、タンパク質とその結合パートナーとの間の相互作用をブロックする抗体である。いくつかの実施形態では、前記抗体は、例えば、結合パートナーへのタンパク質の結合をブロックすることによって、タンパク質の活性を阻害する。いくつかの実施形態では、標的化タンパク質は治療用抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はチェックポイント阻害剤、例えばCTLA-4、PD-1、またはPD-L1の抗体阻害剤である。いくつかの実施形態では、抗体は、腫瘍抗原などの細胞表面抗原に特異的に結合する。例示的な腫瘍抗原には、神経膠腫関連抗原、がん胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、アルファフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CAIX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸管カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-la、p53、プロステイン、PSMA、HER2/neu、サバイビンおよびテロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン成長因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、及びメソテリンが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗体は、細菌またはウイルスなどの病原体上の標的抗原に特異的に結合する。
【0105】
抗体は、抗体の抗原結合フラグメント、例えば、抗原に結合することができる、またはインタクトな抗体(すなわち、抗原結合フラグメントが由来する無傷の抗体)と競合して抗原に結合することができる、無傷のまたは完全な抗体よりも少ないアミノ酸残基を有する、無傷のまたは完全な抗体の一部またはフラグメントであり得る。抗原結合フラグメントは、組換えDNA技術によって、または無傷の抗体の酵素的または化学的切断によって調製できる。抗原結合フラグメントには、Fab’、F(ab’)2Fv、単鎖Fv(scFv)、単鎖Fab、ダイアボディ(diabody)、単一ドメイン抗体(sdAb、ナノボディ)、ラクダIg、Ig NAR、F(ab)’3フラグメント、ビス-scFv、(scFv)2ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラダイアボディ、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、中和抗体は、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)、ヘテロコンジュゲート抗体(例えば、二重特異性抗体)、またはそれらの抗原結合フラグメントなどの遺伝子操作された抗体であり得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、抗体はウイルスタンパク質に結合する中和抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ウイルスタンパク質の受容体に結合する中和抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、細胞へのウイルスの進入に必要な受容体(例えば、ACE2受容体)に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、コロナウイルスのSタンパク質に結合し、その細胞感染能力を阻止または低下させる中和抗体(nAb)である。いくつかの実施形態では、コロナウイルスはSARS-CoV-2である。いくつかの実施形態では、nAbは、1つまたは複数の変異を含むSタンパク質に結合する。いくつかの実施形態では、nAbは、S2領域に少なくとも1つの点変異、例えば、K986P、V987P、F817P、A892P、A899PもしくはA942P変異、またはそれらの組み合わせを含むSタンパク質またはそのフラグメントに結合する。いくつかの実施形態では、nAbは、A222V、E406W、K417N、K417T、N439K、L455N、E484K、Q493F、N501Y、A570D、D614G、P681H、A701V、T716I、S982Aから選択される少なくとも1つの点変異、またはそれらの組み合わせを含むSタンパク質またはそのフラグメントに結合する。いくつかの実施形態では、nAbは、モノクローナル抗体(mAb)、機能的抗原結合フラグメント(Fab)、単鎖可変領域フラグメント(scFv)、または単一ドメイン抗体(VHHまたはナノボディ)である。
【0107】
SARS-CoV-2のSタンパク質の結合および中和のための例示的なnAbは、例えば、Barnes,C.O.et al.SARS-CoV-2 neutralizing antibody structures inform therapeutic strategies.Nature 588,682-687(2020)、および中国特許出願CN111690058Aに記載されており、それらの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0108】
いくつかの実施形態では、コードRNA配列は、抗体ではない標的化タンパク質をコードする。非抗体ベースの標的化タンパク質の例としては、リポカリン、アンチカリン(ヒトリポカリンに由来する人工抗体模倣タンパク質)、「Tボディ」、ペプチド(例えば、BICYCLE(商標)ペプチド)、アフィボディ(アルファヘリックスから構成される抗体模倣体、例えば、3ヘリックスバンドル)、ペプチボディ(ペプチド-Fc融合体)、DARPin(設計されたアンキリンリピートタンパク質、リピートモチーフからなる操作された抗体模倣タンパク質)、アフィマー、アビマー、ノッティン(3つのジスルフィド橋を含むタンパク質構造モチーフ)、モノボディ、アフィニティークランプ、外部ドメイン、受容体外部ドメイン、受容体、サイトカイン、リガンド、免疫サイトカイン、およびセントリインが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Vazquez-Lombardi,Rodrigo,et al.Drug discovery today 20.10(2015):1271-1283を参照されたい。
【0109】
いくつかの実施形態では、コードRNA配列は可溶性受容体をコードする。可溶性受容体(可溶性受容体デコイまたは「トラップ」と呼ばれることもある)は、受容体タンパク質の細胞外ドメインの全部または一部を含むことができる。いくつかの実施形態では、受容体タンパク質の細胞外ドメインの全部または一部をコードするヌクレオチド配列は、細胞からの分泌のためにシグナルペプチドに作動可能に連結される。
【0110】
いくつかの実施形態では、可溶性受容体は、天然に存在する受容体の細胞外ドメインを含む。いくつかの実施形態では、可溶性受容体バリアントは、細胞外ドメインに1つ以上の変異を含むバリアントなど、天然に存在する受容体の細胞外ドメインの操作されたバリアントを含む。いくつかの実施形態では、可溶性受容体は、そのリガンドに対する天然受容体の親和性と比較して、そのリガンドに対する可溶性受容体の親和性を増加させる1つ以上の変異を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、可溶性受容体は、受容体またはそのバリアントの細胞外ドメインに作動可能に連結された1つまたは複数の追加のタンパク質ドメインを含む融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、可溶性受容体は、免疫グロブリン(Ig)、例えばヒト免疫グロブリンのFcドメインを含む。いくつかの実施形態では、可溶性受容体はヒトIgG1のFcドメインを含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、可溶性受容体はシグナル伝達受容体の細胞外ドメインを含み、可溶性受容体は内因性受容体とそのリガンドとの間の結合を遮断することによってシグナル伝達経路の活性を低下または阻害することができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、可溶性受容体は、ウイルスタンパク質に結合する受容体、および/またはウイルスの進入を媒介する受容体である。いくつかの実施形態では、可溶性受容体は可溶性ACE2受容体である。いくつかの実施形態では、治療用ポリペプチドは、コロナウイルスのSタンパク質に結合できる可溶性ACE2受容体バリアントである。いくつかの実施形態では、可溶性ACE2受容体バリアントは、Sタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)に結合する。いくつかの実施形態では、ACE2受容体バリアントは酵素的に活性である。他の実施形態では、ACE2受容体バリアントは酵素的に不活性である。いくつかの実施形態では、可溶性ACE2受容体バリアントは、野生型(WT)ヒト組換えACE2(APN01)の可溶性細胞外ドメインを含む。いくつかの実施形態では、可溶性ACE2受容体バリアントは、ヒトACE2の細胞外ドメインに1つ以上の変異を含む。いくつかの実施形態では、可溶性ACE2受容体バリアントは、Sタンパク質のRBDに対する結合親和性が増加するように、親和性成熟を介して操作される。可溶性ACE2受容体バリアントは、例えば、Haschke M et al.,Clin Pharmacokinet.2013 Sep;52(9):783-92;Glasgow A et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences Nov 2020,117(45)28046-28055;及びHiguchi Y.et al.,bioRxiv 2020.09.16.299891に記載されており、それらの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、可溶性ACE2受容体バリアントは、融合タンパク質、例えば、細胞外ACE2受容体ドメインとヒトIgG1のFc領域との融合体である。
【0114】
いくつかの実施形態では、コードRNA配列は機能性タンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、コードRNA配列は、例えば、国際出願PCT/US2010/058457およびWO2020237227(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているように、機能的な酵素またはタンパク質の産生(および特定の場合には分泌)のために標的細胞(例えば、ヒトまたはマウス細胞)によって発現することができる。いくつかの実施形態では、治療用ポリペプチドは、シグナルペプチドを治療用ポリペプチドのアミノ末端に作動可能に連結することによって分泌されるように操作することができる。例えば、いくつかの実施形態では、標的細胞による1つまたは複数の治療用ポリヌクレオチドの発現により、被験者が欠損している機能的な酵素またはタンパク質(例えば、尿素サイクル酵素またはリソソーム蓄積障害に関連する酵素)が産生されることが観察される場合がある。
【0115】
いくつかの実施形態では、コードRNA配列は、IDUA、OTC、FAH、ミニDMD、DMD、p53、PTEN、COL3A1、BMPR2、AHI1、FANCC、MYBPC3、ILRG2、またはARG1などのタンパク質をコードし、ここで、機能性タンパク質の欠乏は疾患または障害に関連している。いくつかの実施形態では、コードRNA配列はタンパク質(例えば、リソソーム酵素)であり、このタンパク質の欠乏はリソソーム蓄積障害に関連する。
【0116】
いくつかの実施形態では、コードRNA配列はタンパク質(例えば、酵素)をコードし、このタンパク質の欠乏は代謝障害に関連する。いくつかの実施形態では、治療用ポリペプチドは、尿素サイクル酵素(例えば、ARG1)を含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、コードRNA配列はタンパク質(例えば、p53またはPTEN)をコードし、このタンパク質の欠乏はがんに関連する。いくつかの実施形態では、治療用ポリペプチドは腫瘍抑制因子を含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、コードRNA配列は、蛍光タンパク質などのレポータータンパク質をコードする。蛍光タンパク質は当業者に周知であり、緑色蛍光タンパク質(GFP)、増強緑色蛍光タンパク質(EGFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、および青色蛍光タンパク質(BFP)を含むが、これらに限定されない。
【0119】
いくつかの実施形態では、コードRNA配列は、2つ以上のポリペプチド、例えば2つ以上の治療用ポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、コードRNA配列は、治療用ポリペプチドおよびレポータータンパク質をコードする。
【0120】
いくつかの実施形態では、コードRNA配列によってコードされるポリペプチド内の様々なドメインまたはフラグメントは、ペプチドリンカーを介して互いに融合され得る。グリシンリンカー、グリシン-セリンリンカー、および他のアミノ酸を含むリンカーなどの柔軟なペプチドリンカーは、当技術分野で知られている(例えば、適切なペプチドリンカーは、Chen et al.in Fusion Protein Linkers:Property,Design and Functionality.Adv.Drug Deli Rev.2013 October 15;65(10):1357-1369に記載されている)。ペプチドリンカーは計算法によって設計することもできる。ペプチドリンカーは、1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、または50を超えるアミノ酸の任意の長さであり得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、コードRNA配列はコドン最適化されている。コドン最適化配列は、ポリペプチドの発現、安定性および/または活性を増加させるために、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド内のコドンが置換されたものであってもよい。コドンの最適化に影響を与える要因は、(i)2つ以上の生物もしくは遺伝子、または合成的に構築されたバイアステーブル間のコドンバイアスの変動、(ii)生物、遺伝子、または遺伝子のセット内のコドンバイアスの程度の変動、(iii)コンテキストを含むコドンの体系的な変動、(iv)デコードtRNAに応じたコドンの変動、(v)全体またはトリプレットの1つの位置におけるGC%に応じたコドンの変動、(vi)参照配列、例えば天然に存在する配列との類似度の変動、(vii)コドン頻度カットオフの変動、(viii)DNA配列から転写されたmRNAの構造的特性、(ix)コドン置換セットの設計の基礎となるDNA配列の機能に関する事前知識、および/または(x)各アミノ酸のコドンセットの体系的な変動のうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、コドン最適化ポリヌクレオチドは、リボザイム衝突を最小限に抑え、および/または発現配列とIRESとの間の構造干渉を制限することができる。
【0122】
いくつかの実施形態では、コードRNA配列は、コードRNA配列の機能的ポリペプチドへの翻訳を促進する1つまたは複数の追加エレメントをコードするか、またはそれに作動可能に連結され得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の追加エレメントは、コードRNA配列の翻訳をモニタリングするのに有用である。
【0123】
いくつかの実施形態では、コードRNA配列は、シグナルペプチド(SP)を含むポリペプチドをコードする。非限定的な例では、シグナルペプチドは、ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)からのシグナル配列およびプロペプチド、ヒトIgE免疫グロブリンからのシグナル配列、またはMHC Iのシグナルペプチド配列である。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、コードRNA配列によってコードされるポリペプチドの分泌を促進することができる。
【0124】
いくつかの実施形態では、コードRNA配列の3’末端は、インフレーム2Aペプチドコード配列に作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、コードRNA配列は、3’末端に終止コドンを含まない。いくつかの実施形態では、インフレーム2Aペプチドコード配列が終止コドンを置き換える。いくつかの実施形態では、コードRNA配列は終止コドンを含まず、コードRNAを構成するヌクレオチドの数は3の倍数である。いくつかの実施形態では、終止コドンを有さず、RNAを構成するヌクレオチドの数が3の倍数であるコードRNA配列は、線状RNA前駆体を使用して調製されるcircRNAのローリングサークル翻訳を可能にする。いくつかの実施形態では、2Aペプチドコード配列は、線状RNA前駆体を使用して調製されるcircRNAのローリングサークル翻訳を可能にする。いくつかの実施形態では、2Aペプチドは、ローリングサークル翻訳によって生成されたポリペプチドの単量体ポリペプチド配列への切断を可能にする。非限定的な例では、2Aペプチドコード配列は、配列番号9または12に示される配列などのP2AまたはT2Aペプチドをコードする。
【0125】
いくつかの実施形態では、コードRNA配列は、アフィニティータグまたは識別タグをコードするヌクレオチド配列を含む。例示的なタグとしては、Hisタグ、FLAGタグ、SUMOタグ、GSTタグ、およびMBPタグが挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
いくつかの実施形態では、コードRNA配列の5’末端は、コザック配列に作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、コザック配列はタンパク質翻訳開始部位として機能する。いくつかの実施形態では、線状RNAは、5’末端から3’末端まで、RNAエレメント(例えば、IRES)の第1の部分、コザック配列、コードRNA配列、およびRNAエレメントの第2の部分(例えば、IRES)を含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、線状RNAは、コードRNA配列の3’末端およびRNAエレメントの第2の部分(例えば、IRES)の5’末端に配置されたポリAまたはポリAC配列をさらに含む。内部ポリA配列またはポリACスペーサーは、長さが1~500ヌクレオチドの範囲(例えば、少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、120、140、160、180、200、250、300、350、400、450、または500ヌクレオチド)であってもよい。いくつかの実施形態では、ポリA配列またはポリAC配列は、長さが10~70、20~60、または30~60ヌクレオチドの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、線状RNAは、ポリA配列もポリAC配列も含まない。理論や仮説に束縛されるものではないが、circRNAのIRES配列の前に追加された内部ポリA配列またはポリACスペーサーは、IRESによって開始される効率的なタンパク質翻訳のために、IRESエレメントの機能的な第2構造を維持するのに役立つ。いくつかの実施形態では、ポリA配列またはポリACスペーサーは、コードRNAの発現を増加させる。
【0128】
III.circRNAの調製方法
本出願はさらに、上記セクションIIに記載された線状RNAまたは構築物のいずれか1つを使用してcircRNAを調製する方法を提供する。RNAリガーゼによる本明細書に記載の線状RNAの分子内ライゲーションにより、RNAエレメントおよびエフェクターRNA(例えば、コードRNA)配列を含むcircRNAが提供される。いくつかの実施形態では、circRNAは、インビトロで線状RNAを環状化することによって調製される。
【0129】
いくつかの実施形態では、circRNAは、RNAリガーゼなどのリガーゼを使用して線状RNAを環状化することによって得ることができる。いくつかの実施形態では、線状RNAはインビトロで環状化される。いくつかの実施形態では、線状RNAは、T4 RNAリガーゼによって環状化され得る。非限定的な例では、線状RNAは、T4 RNAリガーゼ1(T4 Rnl1)およびT4 RNAリガーゼ2(T4 Rnl2)などのリガーゼによって環状化され得る。本明細書に記載される線状RNAは、一本鎖核酸アダプター、例えばスプリントオリゴヌクレオチドの存在なしに環状化される。
【0130】
いくつかの実施形態では、(a)環状化RNA生成物を提供するために線状RNAにおけるニックのライゲーションを可能にする条件下で、本明細書に記載のいずれか1つの線状RNAをRNAリガーゼと接触させることと、(b)環状化RNA生成物を単離し、それによってcircRNAを提供することとを含む、circRNAを調製する方法が提供される。いくつかの実施形態では、前記ライゲーションはスプリントオリゴヌクレオチドの存在を必要としない。
【0131】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、インビトロで線状RNAを環状化するステップを含み、(a)環状化RNA生成物を提供するために線状RNAにおけるニックのライゲーションを可能にする条件下で、本明細書に記載のいずれか1つの線状RNAをRNAリガーゼと接触させることと、(b)環状化RNA生成物を単離し、それによってcircRNAを提供することとを含む。いくつかの実施形態では、ライゲーションはスプリントオリゴヌクレオチドの存在を必要としない。
【0132】
いくつかの実施形態では、(a)環状化RNA生成物を提供するために線状RNAにおけるニックのライゲーションを可能にする条件下で、本明細書に記載のいずれか1つの線状RNAをT4 RNAリガーゼ2と接触させることと、(b)環状化RNA生成物を単離し、それによってcircRNAを提供することとを含む、circRNAを調製する方法が提供される。いくつかの実施形態では、前記ライゲーションはスプリントオリゴヌクレオチドの存在を必要としない。
【0133】
RNAリガーゼを使用して、本明細書に記載の線状RNAの5’-リン酸化末端を線状RNAの3’-ヒドロキシル基に酵素的に結合させて、新たなホスホジエステル結合を形成してもよい。反応例では、製造業者のプロトコールに従って、線状環状RNAを1~10ユニットのT4 RNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswich,Mass.)と共に25℃で8時間インキュベートする。ライゲーション反応は、酵素的ライゲーション反応を補助する並列の5’領域と3’領域の両方と塩基対合できる線状核酸を必要とせずに起こり、つまり、前記ライゲーションはスプリントライゲーションではない。
【0134】
T4 RNAリガーゼ1によるライゲーションにより、ライゲーション部位でのヌクレオチドの挿入または欠失が生じる可能性がある。いくつかの実施形態では、追加の配列がcircRNAに導入されないように、T4 RNAリガーゼ2を使用して本明細書に記載の線状RNAをライゲーションする。
【0135】
本明細書に記載の方法は、高い分子内ライゲーション効率を有する。ライゲーション効率は、HPLCまたはアガロースゲル電気泳動などの当技術分野で知られている方法を使用して評価することができる。いくつかの実施形態では、ライゲーション効率は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、またはそれ以上のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、この方法は、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、またはそれより少ない量のポリマーcircRNA産物、すなわち、ひとつのcircRNAへの線状RNAの複数のコピーのライゲーションをもたらす。
【0136】
いくつかの実施形態では、この方法は、線状RNAをコードする核酸構築物のインビトロ転写を行って、線状RNAを得ることをさらに含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、この方法は、環状化RNA産物をRNase Rで処理して線状RNA転写物を消化することをさらに含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、この方法は、circRNA産物からcircRNAを精製することをさらに含む。非限定的な例では、circRNAはゲル精製または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製される。いくつかの実施形態では、アガロースゲル電気泳動により、線状RNA前駆体分子およびニックが入った環から環状RNA産物を簡単かつ効果的に分離することができる。いくつかの実施形態では、この方法は、HPLCなどのクロマトグラフィーによって環状RNAを精製することを含む。いくつかの実施形態では、精製された環状RNAは、-80℃で保存することができる。いくつかの実施形態では、circRNAを単離するステップは、circRNAをゲル精製することを含む。いくつかの実施形態では、精製されたcircRNAは-80℃で保存することができる。
【0139】
III.環状RNA及びその使用方法
本出願はさらに、本明細書に記載の調製方法のいずれか1つ、または線状RNAもしくは構築物のいずれか1つを使用して調製されたcircRNAおよび組成物を提供する。
【0140】
いくつかの実施形態では、circRNAは、RNAエレメントおよびエフェクターRNA配列を含む。いくつかの実施形態では、エフェクターRNA配列は、gRNA、dRNA、siRNA、miRNA、shRNA、lincRNAおよびコードRNAからなる群から選択されるRNA分子の配列である。
【0141】
いくつかの実施形態では、circRNAは、RNAエレメント(例えば、IRES)と、抗原性ポリペプチド、機能性タンパク質、受容体タンパク質、または標的化タンパク質などの治療用ポリペプチドをコードするコードRNA配列とを含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、circRNAは、RNAエレメント(例えば、IRES)と、抗原性ポリペプチドをコードするコードRNA配列とを含むcircRNAワクチンである。いくつかの実施形態では、circRNAワクチンはコロナウイルスワクチンまたはがんワクチンである。
【0143】
いくつかの実施形態では、複数のcircRNAを含むカクテル組成物が提供され、各circRNAは、抗原性ポリペプチド、感染因子の受容体タンパク質、または標的化タンパク質(例えば、中和抗体などの抗体)をコードするコードRNA配列を含む。いくつかの実施形態では、複数のcircRNAは、抗原性ポリペプチド(例えば、Sタンパク質またはそのフラグメント)の異なる変異体など、互いに異なる抗原性ポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、複数のcircRNAは、受容体タンパク質(例えば、ACE2)の異なる変異体など、互いに異なる受容体タンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、複数のcircRNAは、異なる抗体(例えば、中和抗体)など、互いに異なる標的化タンパク質をコードする。
【0144】
本明細書に記載されるcircRNAは、遺伝性疾患(例えば、遺伝性遺伝疾患、代謝性疾患およびがん)、および感染症(例えば、コロナウイルスなどのウイルス感染症)を含むがこれらに限定されない、個体における疾患または状態を治療または予防するために使用することができる。いくつかの実施形態では、circRNAは、個体内のリボソームによるローリングサークル翻訳を受ける。
【0145】
いくつかの実施形態では、機能的タンパク質をコードするコードRNA配列を含む有効量のcircRNAを個体に投与することを含む、個体における疾患または状態を治療または予防する方法が提供される。いくつかの実施形態では、機能性タンパク質は、酵素、受容体、リガンド、シグナル伝達分子、または転写因子である。いくつかの実施形態では、疾患または症状は代謝性疾患である。いくつかの実施形態では、疾患または状態はリソソーム蓄積障害である。いくつかの実施形態では、疾患または状態はがんである。
【0146】
本明細書に記載のcircRNAは、circRNAによってコードされる治療用ポリペプチドに対応する天然に存在するタンパク質の変異または欠損に関連する遺伝性疾患または状態を治療するために使用することができる。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、治療用ポリペプチドに対応する天然に存在するタンパク質の不十分なレベルおよび/または活性に関連する疾患または状態である。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、治療用ポリペプチドに対応する天然に存在するタンパク質における1つまたは複数の変異に関連する遺伝性遺伝病である。いくつかの実施形態では、治療用ポリペプチドは、野生型タンパク質、またはその機能的バリアント(例えば、機能的フラグメント、融合タンパク質、または変異体)である。
【0147】
いくつかの実施形態では、治療用ポリペプチドは、例えば、国際出願番号PCT/US2010/058457に開示されるような機能的な酵素またはタンパク質の産生(および特定の場合には、分泌)のために標的細胞(例えば、ヒトまたはマウス細胞)によって発現され得る任意のポリペプチドであり得る。いくつかの実施形態では、治療用ポリペプチドは、シグナルペプチドを治療用ポリペプチドのアミノ末端に作動可能に連結することによって分泌されるように操作することができる。例えば、いくつかの実施形態では、標的細胞による1つまたは複数の治療用ポリヌクレオチドの発現により、被験者が欠損している機能的な酵素またはタンパク質(例えば、尿素サイクル酵素またはリソソーム蓄積障害に関連する酵素)が産生されることを観察し得る。
【0148】
本願の方法によって治療され得る疾患関連変異の例としては、がんに関連するTP53W53X(例えば、158G>A)、ムコ多糖症I型(MPSI)に関連するIDUAW402X(例えば、エクソン9におけるTGG>TAG変異)、エーラス・ダンロス症候群に関連するCOL3A1W1278X(例えば、3833G>A変異)、原発性肺高血圧症に関連するBMPR2W298X(例、893G>A)、ジュベール症候群に関連するAHI1W725X(例えば、2174G>A)、ファンコニ貧血に関連するFANCCW506X(例えば、1517G>A)、原発性家族性肥大型心筋症に関連するMYBPC3W1098X(例えば、3293G>A)、およびX連鎖重度複合免疫不全症に関連するIL2RGW237X(例えば、710G>A)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、疾患または状態はがんである。いくつかの実施形態では、疾患または状態は単一遺伝子疾患である。いくつかの実施形態では、疾患または状態は多遺伝子性疾患である。
【0149】
いくつかの実施形態では、circRNAは、少なくともまたは少なくとも約20時間、24時間、30時間、または36時間の機能的半減期を有する。いくつかの実施形態では、circRNAは、ヒト細胞において少なくともまたは少なくとも約20時間、24時間、30時間、または36時間の治療効果の持続期間を有する。いくつかの実施形態では、circRNAは、ヒト細胞において、同じ発現配列を含む同等の線状RNAの治療効果以上の治療効果の持続期間を有する。いくつかの実施形態では、circRNAは、ヒト細胞において、同じ発現配列を含む同等の線状RNAの機能的半減期以上の機能的半減期を有する。
【0150】
いくつかの実施形態では、抗原性ポリペプチドをコードするコードRNA配列を含むcircRNAワクチン、または複数のcircRNAを含むカクテル組成物の有効量を個体に投与することを含む、個体における疾患または状態を治療または予防する方法が提供される。いくつかの実施形態では、抗原性ポリペプチドは、ウイルス、例えばコロナウイルスなどの感染因子のタンパク質またはそのフラグメントである。いくつかの実施形態では、感染因子はSARS-CoV-2である。
【0151】
いくつかの実施形態では、受容体タンパク質をコードするコードRNA配列を含む有効量のcircRNAを個体に投与することを含む、個体における疾患または症状を治療または予防する方法が提供される。いくつかの実施形態では、受容体タンパク質は、ウイルス、例えばコロナウイルスなどの感染因子の受容体である。いくつかの実施形態では、受容体タンパク質は、可溶性ACE2受容体などの可溶性受容体である。
【0152】
いくつかの実施形態では、抗体などの標的化タンパク質をコードするコードRNA配列を含む有効量のcircRNAを個体に投与することを含む、個体における疾患または状態を治療または予防する方法が提供される。いくつかの実施形態では、標的化タンパク質は中和抗体である。いくつかの実施形態では、標的化タンパク質は治療用抗体である。いくつかの実施形態では、標的化タンパク質は、ウイルス、例えばコロナウイルスなどの感染因子に特異的に結合する。
【0153】
いくつかの実施形態では、本出願は、個体における疾患または状態の治療または予防のためのcircRNAを提供する。
【0154】
いくつかの実施形態において、本出願は、個体における疾患または状態を治療または予防するための薬剤の製造における、治療用ポリペプチドをコードする核酸配列を含むcircRNAの使用を提供する。
【0155】
いくつかの実施形態では、circRNAは、裸のcircRNAとして、またはトランスフェクション剤を含む医薬組成物として投与される。非限定的な例では、トランスフェクション剤はポリエチレンイミン(PEI)または脂質ナノ粒子(LNP)である。投与用のcircRNA組成物(例えば、circRNAワクチンまたは医薬組成物)を投与するために使用できるリピドソームの他の例としては、プロタミン、カチオン性ナノエマルション、修飾デンドリマーナノ粒子、プロタミンリポソーム、カチオン性ポリマー、カチオン性ポリマーリポソーム、多糖類粒子、カチオン性脂質ナノ粒子、カチオン性脂質-コレステロールナノ粒子、カチオン性脂質-コレステロールPEGナノ粒子、LIPOFECTAMINEの商標で販売されているカチオン性脂質トランスフェクション試薬、FUGENEの商標で販売されている非リポソームトランスフェクション試薬、またはそれらの任意の組み合わせをトランスフェクション剤として使用することができる。
【0156】
いくつかの実施形態では、リポソーム製剤は、カチオン性脂質成分の選択、カチオン性脂質の飽和度、ペグ化の性質、全成分の比率、およびサイズなどの生物物理学的パラメーターによって影響を受け得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、リポソーム製剤は、カチオン性脂質、コレステロールおよびペグ化脂質を含む。例えば、リポソーム製剤は、カチオン性脂質、ジパルミトイルホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG-c-DMAを含み得る。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Semple et al.Nature Biotech.2010 28:172-176を参照されたい。いくつかの実施形態では、リポソーム製剤は、約35%~約45%のカチオン性脂質、約40%~約50%のカチオン性脂質、約50%~約60%のカチオン性脂質、および/または約55%~約65%のカチオン性脂質を含み得る。いくつかの実施形態では、リポソーム中の脂質対RNAの比は、約5:1から約20:1、約10:1から約25:1、約15:1から約30:1、および/または少なくとも30:1であってもよい。適切なリポソーム製剤は、例えばWO2020237227に記載されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0157】
いくつかの実施形態では、circRNAはトランスフェクション試薬とともに配合されない。いくつかの実施形態では、circRNAは裸のRNAとして送達される。いくつかの実施形態では、circRNAは、遺伝子銃またはエレクトロポレーションによって送達される。
【0158】
投与のためのcircRNA組成物(例えば、circRNAワクチンまたは医薬組成物)は、血管系への全身注射、リンパ節への全身注射、皮下注射もしくはデポ、または局所注射によって被験者に投与することができる。
【0159】
いくつかの実施形態では、circRNAは、国際公開WO2012170930号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているもののような脂質ナノ粒子中に製剤化され得る。
【0160】
いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、本明細書に記載されるcircRNAの制御放出および/または持続放出のために製剤化され得る。非限定的な例として、徐放用の合成ナノキャリアは、本明細書に記載される、および/または国際公開WO2010138192および米国公開US20100303850に記載されるように、当技術分野で知られている方法によって製剤化することができ、これらの文献のそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0161】
いくつかの実施形態では、circRNAは制御放出および/または持続放出用に製剤化され得、前記製剤は結晶性側鎖(CYSC)ポリマーである少なくとも1つのポリマーを含む。CYSCポリマーは、米国特許第8,399,007号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0162】
いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、ワクチンとして使用するために製剤化され得る。いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、少なくとも1つの抗原をコードする少なくとも1つのcircRNAをカプセル化することができる。非限定的な例として、合成ナノキャリアは、少なくとも1つの抗原およびワクチン剤形用の賦形剤を含み得る(国際公開WO2011150264および米国公開US20110293723を参照、その全体がそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる)。別の非限定的な例として、ワクチン剤形は、同じまたは異なる抗原を有する少なくとも2つの合成ナノキャリアと賦形剤とを含み得る(国際公開WO2011150249および米国特許公開US20110293701を参照、これらの全体がそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる)。ワクチン剤形は、本明細書に記載の方法、当技術分野で公知の方法、および/または国際公開第WO2011150258号および米国公開第US20120027806号に記載の方法によって選択することができ、それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0163】
いくつかの実施形態では、合成ナノキャリアは、少なくとも1つのアジュバントをコードする少なくとも1つのcircRNAを含み得る。非限定的な例として、アジュバントは、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、塩化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、リン酸ジメチルジオクタデシルアンモニウムまたは酢酸ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDA)、およびマイコバクテリア(mycobacterium)の全脂質抽出物の無極性画分または前記無極性画分の一部を含んでもよい(例えば、米国特許第8,241,610号を参照、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。別の実施形態では、合成ナノキャリアは、少なくとも1つのcircRNAおよびアジュバントを含み得る。非限定的な例として、アジュバントを含む合成ナノキャリアは、国際公開番号WO2011150240および米国公開番号US20110293700に記載されている方法によって製剤化することができ、それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0164】
いくつかの実施形態では、circRNAはアジュバントとして使用される。一例として、細胞質におけるRNAセンシングは自然免疫を引き起こす可能性があり、自然免疫シグナル伝達はさまざまな経路で適応免疫に寄与することが知られている。したがって、抗原性ポリペプチドをコードするcircRNAまたは第2のcircRNA(例えば、ポリペプチドをコードしないcircRNA)は、抗原性ポリペプチドに対する適応免疫応答を増強するためのアジュバントとして使用することができる。
【0165】
いくつかの実施形態では、本出願のcircRNA組成物は、他の予防的または治療的化合物とともに投与され得る。非限定的な例として、予防的または治療的化合物はアジュバントまたはブースターであってもよい。本明細書で使用される場合、ワクチンなどの予防組成物に言及する場合、「ブースター」という用語は、予防組成物の追加投与を指す。ブースター(またはブースターワクチン)は、予防組成物の早期投与後に投与することができる。予防組成物の初回投与とブースターの投与の間の時間は、1分間、2分間、3分間、4分間、5分間、6分間、7分間、8分間、9分間、10分間、15分間、20分間、35分間、40分間、45分間、50分間、55分間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、1日間、36時間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、10日間、2週間、3週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、1年間、18ヶ月間、2年間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、8年間、9年間、10年間、11年間、12年間、13年間、14年間、15年間、16年間、17年間、18年間、19年間、20年間、25年間、30年間、35年間、40年間、45年間、50年間、55年間、60年間、65年間、70年間、75年間、80年間、85年間、90年間、95年間または99年間以上であってもよいが、これらに限定されない。
【0166】
いくつかの実施形態では、投与のためのcircRNA組成物(例えば、circRNAワクチンまたは医薬組成物)は、鼻腔内に投与され得る。例えば、circRNAワクチンは、生ワクチンの投与と同様に鼻腔内に投与され得る。いくつかの実施形態では、circRNAは、当技術分野で知られている不活化ワクチンの投与と同様に、筋肉内または皮内に投与され得る。
【0167】
いくつかの実施形態では、circRNAワクチンは、ワクチンがより高い免疫応答を誘発することを可能にし得るアジュバントを含む。非限定的な例として、アジュバントは、ヒト小児集団においてより高い免疫応答を誘発することができるサブミクロンの水中油型エマルジョンであってもよい(例えば、米国特許公開US20120027813号および米国特許US8506966号に記載されているアジュバント含有ワクチンを参照、それぞれの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0168】
V.組成物、キットおよび製品
さらに、本出願は、本明細書に記載の線状RNA、構築物、またはcircRNAのいずれか1つを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいずれか1つまたは複数のcircRNAと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物が提供される。医薬組成物は、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、所望の純度を有する本明細書に記載の治療薬を、任意の薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤と混合することによって調製することができる(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、使用される用量および濃度ではレシピエントに対して無毒であり、緩衝剤;アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE、メタ重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤;防腐剤、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム)、安定剤、金属錯体(例えば、亜鉛-タンパク質錯体);EDTAおよび/または非イオン性界面活性剤などのキレート剤を含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、単回使用の密封バイアルなどの単回使用のバイアルに収容される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は多用途バイアルに収容される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は全体として容器内に収容される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は凍結保存される。
【0170】
本出願はさらに、本明細書に記載のcircRNAを調製するための方法のいずれか1つに使用するためのキットおよび製品を提供する。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の線状RNAまたは線状RNAをコードする構築物、およびcircRNAを調製するための説明書を含む。いくつかの実施形態では、キットは、T4 RNAリガーゼ1またはT4 RNAリガーゼ2などのRNAリガーゼをさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは逆転写酵素をさらに含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcircRNAのいずれか1つと、疾患または状態(例えば、コロナウイルス感染症またはがん)を治療または予防するための説明書とを含むキットが提供される。いくつかの実施形態では、キットは、circRNAを投与するための説明書を含む。
【0172】
本発明のキットは、適切な包装に入っている。適切な包装には、バイアル、ボトル、ジャー、柔軟な包装(例えば、密封されたマイラーまたはビニール袋)などが含まれるが、これらに限定されない。キットは、任意選択で、緩衝液や解釈情報などの追加コンポーネントを提供する場合がある。したがって、本出願は、バイアル(例えば、密封バイアルなど)、ボトル、ジャー、柔軟な包装などを含む製品も提供する。
【0173】
組成物の使用に関する説明書には、一般に、目的の治療のための用量、投与スケジュール、および投与経路に関する情報が含まれる。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数回用量パッケージ)、またはサブユニット用量であり得る。例えば、個体または多くの個体の効果的な治療を提供するために、十分な用量の本明細書に開示されるようなcircRNAを含むキットが提供され得る。さらに、個体への複数回投与(例えば、circRNAワクチンの場合、最初のワクチン投与およびその後のブースター投与)を可能にするのに十分な用量のcircRNAを含むキットが提供され得る。キットはまた、複数の単位用量の医薬組成物および使用説明書を含み、薬局(例えば、病院薬局および調剤薬局)での保管および使用に十分な量で包装されてもよい。
【0174】
いくつかの実施形態では、キットは送達システムを含む。送達システムは、単位用量送達システムであってもよい。用量当たり送達される溶液または懸濁液の体積は、約5~約2000μl、約10~約1000μl、または約50~約500μlのいずれかであり得る。これらのさまざまな剤形の送達システムは、単位用量または複数回用量パッケージのシリンジ、スポイトボトル、プラスチック製スクイーズユニット、アトマイザー、ネブライザー、または医薬品エアロゾルであり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のcircRNAのいずれか1つの送達システムが提供され、それには前記circRNAおよび前記circRNAを送達するためのデバイスが含まれる。
【0175】
本明細書で開示されるすべての特徴は、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書で開示される各特徴は、同じ、同等、または同様の目的を果たす代替の特徴によって置き換えることができる。したがって、特に明記しない限り、開示される各特徴は、同等または類似の特徴の一般的な一連の例にすぎない。
【実施例】
【0176】
本発明は、以下の実施例を参照することによってより完全に理解されるであろう。しかしながら、それらは本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載される実施例および実施形態は、例示のみを目的としており、それに照らして様々な修正または変更が当業者に示唆され、本出願の精神および範囲内ならびに本発明の添付の特許請求の範囲内に含まれるものであることが理解される。
【0177】
実施例1.ライゲーションによるインビトロcircRNA生成
circRNAにはキャップやポリ(A)テールがないため、circRNAの翻訳プロセスを開始するには内部リボソーム進入部位(IRES)が必要である。ここで、合理的に設計された分割IRESエレメント(本明細書では「IRES分割」または「分割IRES部分」とも呼ばれる)を使用して、T4 RNAリガーゼを使用してコーディング環状RNAを効率的かつ正確に生成する。
図1は、IRES分割を含む構築物を使用してcircRNAを生成する方法の概要を示す。まず、RNA転写物(「前駆体」または「線状RNA前駆体」とも呼ばれる)は、互いに会合してRNA転写物の両端にニックを有する安定な分子内二次構造を形成する2つのIRES分割を含む構築物のインビトロ転写によって得られる。続いて前記ニックをT4 RNAリガーゼで連結して環状RNAを生成する。
【0178】
RNAフォールド(RNAfold)ソフトウェアを使用して、野生型CVB3 IRES(配列番号1)の二次構造を分析した。野生型CVB3 IRESには非常に安定な二本鎖RNA構造が含まれており、これが分子内二本鎖の形成を促進する可能性があることを発見した。
図2Aの四角で囲まれた領域を参照されたい。したがって、二本鎖RNA領域内の2つの部位を選択して、CVB3 IRES部分の分割ペアを操作した。CVB3 IRES分割の第1の対(本明細書では「部位1 CVB3 IRES分割」とも呼ばれる)において、CVB3 IRES分割の5’部分は、野生型CVB3 IRES(配列番号2)の1~385番目のヌクレオチドを含み、CVB3 IRES分割の3’部分は、野生型CVB3 IRES(配列番号3)の386から749番目のヌクレオチドを含む。
図2Bを参照されたい。CVB3 IRES分割の第2の対(本明細書では「部位2 CVB3 IRES分割」とも呼ばれる)では、CVB3 IRES分割の5’部分は、野生型CVB3 IRES(配列番号4)の1~346番目のヌクレオチドを含み、CVB3 IRES分割の3’部分は、野生型CVB3 IRES(配列番号5)の347から749番目のヌクレオチドを含む。
図2Cを参照されたい。二本鎖構造の安定性を維持するために、本発明者らは、4つのヌクレオチドUUUGおよびその逆相補配列(CTTT)を分割部位のすぐ隣に挿入した(
図2B~2Cの四角で囲まれた配列)。
【0179】
EGFPをコードする環状RNAを生成するための2つの構築物は、CVB3 IRES分割の第1対と第2対を使用して設計される。各構築物は、5’から3’に、T7プロモーター(配列番号6)、CVB3 IRES分割対の3’部分、EGFPコード配列(配列番号7)、FLAG-タグコード配列(配列番号8)、P2A配列(配列番号9)、およびCVB3 IRES分割対の5’部分を含む。部位1 CVB3 IRES分割に基づく構築物(本明細書では「部位1構築物」とも呼ばれる)は、配列番号10のDNA配列を有する。部位2 CVB3 IRES分割に基づく構築物(本明細書では「部位2構築物」とも呼ばれる)は、配列番号11のDNA配列を有する。
【0180】
上記2つの構築物はそれぞれインビトロ転写を介して線状RNA前駆体を提供し、これをT4 RNAリガー1またはT4 RNAリガーゼ2により25℃で8時間ライゲーションした。部位1構築物からの環状RNA産物は、本明細書では部位1ライゲーション環状RNAと呼ばれる。部位2構築物からの環状RNA産物は、本明細書では部位2ライゲーション環状RNAと呼ばれる。ライゲーション産物をRNase Rで処理して、線状RNA前駆体を除去した。
図3は、RNAse R処理前後の、T4 RNAリガーゼ1で連結された部位1ライゲーション環状RNAのHPLCクロマトグラムを示す。環化効率は約70%であり、RNase R処理により多くの線状RNA産物が分解された。
【0181】
次に、ウェルあたり4μg circRNAで各環状RNA産物を12ウェルプレートにあるHEK293T細胞にトランスフェクトした。
図4Aに示すように、部位1ライゲーション環状RNAでトランスフェクトされた細胞ではEGFP発現が検出されたが、部位2ライゲーション環状RNAでトランスフェクトされた細胞ではEGFP発現が検出されなかった。本発明者らは、EGFP発現の欠如は、部位2ライゲーション環状RNAにおけるライゲーションされたIRESの機能的構造の破壊によるものである可能性があると推論した。ウェスタンブロット分析は、部位1ライゲーション環状RNAでトランスフェクトされた細胞におけるEGFP発現レベルが、同じ細胞におけるβ-チューブリンの発現レベルよりもはるかに高いことを示した(
図4B)。
【0182】
最後に、ライゲーション部位が正確であるかどうか、つまりライゲーション部位に挿入や欠失がないかをテストした。本発明者らは、部位1ライゲーション環状RNAを逆転写し、
図1に示すように、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを使用してライゲーション部位の接合部をPCR増幅した。
図5Aに示すように、PCRの結果、T4 RNAリガーゼを用いたRNA前駆体のライゲーション後に環状RNAが形成されたことが確認されたが、T4 RNAリガーゼ処理を受けなかったRNA前駆体には環状RNAは発見されなかった。サンガー配列決定を使用して、本発明者らは、T4 RNAリガーゼ1またはT4 RNAリガーゼ2によってライゲートされたサンプル中のライゲーション接合部位周囲の環状RNAの配列を決定した。
図5Bに示すように、T4 RNAリガーゼ2は線状RNA前駆体のニックを正確に連結したが、T4 RNAリガーゼ1処理では少数の挿入および欠失が生じた。理論に束縛されるものではないが、これは、二本鎖RNAである基質を必要とする、T4 RNAリガーゼ2の基質要件によるものである可能性がある。
【0183】
配列表
配列番号1 野生型CVB3-IRES RNA配列
UUAAAACAGCCUGUGGGUUGAUCCCACCCACAGGCCCAUUGGGCGCUAGCACUCUGGUAUCACGGUACCUUUGUGCGCCUGUUUUAUACCCCCUCCCCCAACUGUAACUUAGAAGUAACACACACCGAUCAACAGUCAGCGUGGCACACCAGCCACGUUUUGAUCAAGCACUUCUGUUACCCCGGACUGAGUAUCAAUAGACUGCUCACGCGGUUGAAGGAGAAAGCGUUCGUUAUCCGGCCAACUACUUCGAAAAACCUAGUAACACCGUGGAAGUUGCAGAGUGUUUCGCUCAGCACUACCCCAGUGUAGAUCAGGUCGAUGAGUCACCGCAUUCCCCACGGGCGACCGUGGCGGUGGCUGCGUUGGCGGCCUGCCCAUGGGGAAACCCAUGGGACGCUCUAAUACAGACAUGGUGCGAAGAGUCUAUUGAGCUAGUUGGUAGUCCUCCGGCCCCUGAAUGCGGCUAAUCCUAACUGCGGAGCACACACCCUCAAGCCAGAGGGCAGUGUGUCGUAACGGGCAACUCUGCAGCGGAACCGACUACUUUGGGUGUCCGUGUUUCAUUUUAUUCCUAUACUGGCUGCUUAUGGUGACAAUUGAGAGAUCGUUACCAUAUAGCUAUUGGAUUGGCCAUCCGGUGACUAAUAGAGCUAUUAUAUAUCCCUUUGUUGGGUUUAUACCACUUAGCUUGAAAGAGGUUAAAACAUUACAAUUCAUUGUUAAGUUGAAUACAGCAAA
【0184】
配列番号2 部位1 CVB3-IRES分割の5’部分(野生型CVB3-IRESの1~385番目のヌクレオチド、挿入されたヌクレオチド配列には下線が引かれている)
【0185】
【0186】
配列番号3 部位1 CVB3-IRES分割の3’部分(野生型CVB3-IRESの386~749番目のヌクレオチド、挿入されたヌクレオチド配列には下線が引かれている)
【0187】
【0188】
配列番号4 部位2 CVB3-IRES分割の5’部分(野生型CVB3-IRESの1~346番目のヌクレオチド、挿入されたヌクレオチド配列には下線が引かれている)
【0189】
【0190】
配列番号5 部位2 CVB3-IRES分割の3’部分(野生型CVB3-IRESの347~749番目のヌクレオチド、挿入されたヌクレオチド配列には下線が引かれている)
【0191】
【0192】
配列番号6 T7プロモーター配列
TAATACGACTCACTATAGG
【0193】
配列番号7 EGFPをコードするDNA配列
ATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGCTGTTCACCGGGGTGGTGCCCATCCTGGTCGAGCTGGACGGCGACGTAAACGGCCACAAGTTCAGCGTGTCCGGCGAGGGCGAGGGCGATGCCACCTACGGCAAGCTGACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCGGCAAGCTGCCCGTGCCCTGGCCCACCCTCGTGACCACCCTGACCTACGGCGTGCAGTGCTTCAGCCGCTACCCCGACCACATGAAGCAGCACGACTTCTTCAAGTCCGCCATGCCCGAAGGCTACGTCCAGGAGCGCACCATCTTCTTCAAGGACGACGGCAACTACAAGACCCGCGCCGAGGTGAAGTTCGAGGGCGACACCCTGGTGAACCGCATCGAGCTGAAGGGCATCGACTTCAAGGAGGACGGCAACATCCTGGGGCACAAGCTGGAGTACAACTACAACAGCCACAACGTCTATATCATGGCCGACAAGCAGAAGAACGGCATCAAGGTGAACTTCAAGATCCGCCACAACATCGAGGACGGCAGCGTGCAGCTCGCCGACCACTACCAGCAGAACACCCCCATCGGCGACGGCCCCGTGCTGCTGCCCGACAACCACTACCTGAGCACCCAGTCCGCCCTGAGCAAAGACCCCAACGAGAAGCGCGATCACATGGTCCTGCTGGAGTTCGTGACCGCCGCCGGGATCACTCTCGGCATGGACGAGCTGTACAAG
【0194】
配列番号8 FLAGタグをコードするDNA配列
GATTACAAGGATGACGACGATAAG
【0195】
配列番号9 P2A配列
GCTACTAACTTCAGCCTGCTGAAGCAGGCTGGAGACGTGGAGGAGAACCCTGGACCT
【0196】
配列番号10 部位1構築物(EGFPをコードするRNAに隣接する部位1 CVB3-IRES分割)
TAATACGACTCACTATAGGGGAAACCCAAACATGGGACGCTCTAATACAGACATGGTGCGAAGAGTCTATTGAGCTAGTTGGTAGTCCTCCGGCCCCTGAATGCGGCTAATCCTAACTGCGGAGCACACACCCTCAAGCCAGAGGGCAGTGTGTCGTAACGGGCAACTCTGCAGCGGAACCGACTACTTTGGGTGTCCGTGTTTCATTTTATTCCTATACTGGCTGCTTATGGTGACAATTGAGAGATCGTTACCATATAGCTATTGGATTGGCCATCCGGTGACTAATAGAGCTATTATATATCCCTTTGTTGGGTTTATACCACTTAGCTTGAAAGAGGTTAAAACATTACAATTCATTGTTAAGTTGAATACAGCAAAACTAGTGCCACCATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGCTGTTCACCGGGGTGGTGCCCATCCTGGTCGAGCTGGACGGCGACGTAAACGGCCACAAGTTCAGCGTGTCCGGCGAGGGCGAGGGCGATGCCACCTACGGCAAGCTGACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCGGCAAGCTGCCCGTGCCCTGGCCCACCCTCGTGACCACCCTGACCTACGGCGTGCAGTGCTTCAGCCGCTACCCCGACCACATGAAGCAGCACGACTTCTTCAAGTCCGCCATGCCCGAAGGCTACGTCCAGGAGCGCACCATCTTCTTCAAGGACGACGGCAACTACAAGACCCGCGCCGAGGTGAAGTTCGAGGGCGACACCCTGGTGAACCGCATCGAGCTGAAGGGCATCGACTTCAAGGAGGACGGCAACATCCTGGGGCACAAGCTGGAGTACAACTACAACAGCCACAACGTCTATATCATGGCCGACAAGCAGAAGAACGGCATCAAGGTGAACTTCAAGATCCGCCACAACATCGAGGACGGCAGCGTGCAGCTCGCCGACCACTACCAGCAGAACACCCCCATCGGCGACGGCCCCGTGCTGCTGCCCGACAACCACTACCTGAGCACCCAGTCCGCCCTGAGCAAAGACCCCAACGAGAAGCGCGATCACATGGTCCTGCTGGAGTTCGTGACCGCCGCCGGGATCACTCTCGGCATGGACGAGCTGTACAAGGATTACAAGGATGACGACGATAAGGCTACTAACTTCAGCCTGCTGAAGCAGGCTGGAGACGTGGAGGAGAACCCTGGACCTGGGTTTTTAAAACAGCCTGTGGGTTGATCCCACCCACAGGCCCATTGGGCGCTAGCACTCTGGTATCACGGTACCTTTGTGCGCCTGTTTTATACCCCCTCCCCCAACTGTAACTTAGAAGTAACACACACCGATCAACAGTCAGCGTGGCACACCAGCCACGTTTTGATCAAGCACTTCTGTTACCCCGGACTGAGTATCAATAGACTGCTCACGCGGTTGAAGGAGAAAGCGTTCGTTATCCGGCCAACTACTTCGAAAAACCTAGTAACACCGTGGAAGTTGCAGAGTGTTTCGCTCAGCACTACCCCAGTGTAGATCAGGTCGATGAGTCACCGCATTCCCCACGGGCGACCGTGGCGGTGGCTGCGTTGGCGGCCTGCCCATGTTT
【0197】
配列番号11 部位1構築物(EGFPをコードするRNAに隣接する部位2 CVB3-IRES分割)
TAATACGACTCACTATAGGGCGACCAAACGTGGCGGTGGCTGCGTTGGCGGCCTGCCCATGGGGAAACCCATGGGACGCTCTAATACAGACATGGTGCGAAGAGTCTATTGAGCTAGTTGGTAGTCCTCCGGCCCCTGAATGCGGCTAATCCTAACTGCGGAGCACACACCCTCAAGCCAGAGGGCAGTGTGTCGTAACGGGCAACTCTGCAGCGGAACCGACTACTTTGGGTGTCCGTGTTTCATTTTATTCCTATACTGGCTGCTTATGGTGACAATTGAGAGATCGTTACCATATAGCTATTGGATTGGCCATCCGGTGACTAATAGAGCTATTATATATCCCTTTGTTGGGTTTATACCACTTAGCTTGAAAGAGGTTAAAACATTACAATTCATTGTTAAGTTGAATACAGCAAAACTAGTGCCACCATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGCTGTTCACCGGGGTGGTGCCCATCCTGGTCGAGCTGGACGGCGACGTAAACGGCCACAAGTTCAGCGTGTCCGGCGAGGGCGAGGGCGATGCCACCTACGGCAAGCTGACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCGGCAAGCTGCCCGTGCCCTGGCCCACCCTCGTGACCACCCTGACCTACGGCGTGCAGTGCTTCAGCCGCTACCCCGACCACATGAAGCAGCACGACTTCTTCAAGTCCGCCATGCCCGAAGGCTACGTCCAGGAGCGCACCATCTTCTTCAAGGACGACGGCAACTACAAGACCCGCGCCGAGGTGAAGTTCGAGGGCGACACCCTGGTGAACCGCATCGAGCTGAAGGGCATCGACTTCAAGGAGGACGGCAACATCCTGGGGCACAAGCTGGAGTACAACTACAACAGCCACAACGTCTATATCATGGCCGACAAGCAGAAGAACGGCATCAAGGTGAACTTCAAGATCCGCCACAACATCGAGGACGGCAGCGTGCAGCTCGCCGACCACTACCAGCAGAACACCCCCATCGGCGACGGCCCCGTGCTGCTGCCCGACAACCACTACCTGAGCACCCAGTCCGCCCTGAGCAAAGACCCCAACGAGAAGCGCGATCACATGGTCCTGCTGGAGTTCGTGACCGCCGCCGGGATCACTCTCGGCATGGACGAGCTGTACAAGGATTACAAGGATGACGACGATAAGGCTACTAACTTCAGCCTGCTGAAGCAGGCTGGAGACGTGGAGGAGAACCCTGGACCTGGGTTTTTAAAACAGCCTGTGGGTTGATCCCACCCACAGGCCCATTGGGCGCTAGCACTCTGGTATCACGGTACCTTTGTGCGCCTGTTTTATACCCCCTCCCCCAACTGTAACTTAGAAGTAACACACACCGATCAACAGTCAGCGTGGCACACCAGCCACGTTTTGATCAAGCACTTCTGTTACCCCGGACTGAGTATCAATAGACTGCTCACGCGGTTGAAGGAGAAAGCGTTCGTTATCCGGCCAACTACTTCGAAAAACCTAGTAACACCGTGGAAGTTGCAGAGTGTTTCGCTCAGCACTACCCCAGTGTAGATCAGGTCGATGAGTCACCGCATTCCCCACGTTT
【0198】
配列番号12 T2Aペプチドコード配列
GAGGGCAGAGGAAGUCUUCUAACAUGCGGUGACGUGGAGGAGAAUCCCGGCCCU
【0199】
配列番号13
CACCGACGCAACCGCCGGACGGGTACAAACCCCTTTGGGTTTGTACCCTGCGAGATTATGTCTGTAC
【0200】
配列番号14
GTGGCTGCGTTGGCGGCCTGCCCATGTTTG
【0201】
配列番号15
GTGGCTGCGTTGGCGGCCTGCCCATGTTTGGGGGGGAAACCCAAACATGGGACGCTCTAATACAGACATG
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-05-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5’末端から3’末端まで:
(a)RNAエレメントの第1の部分、
(b)エフェクターRNA配列、及び
(c)RNAエレメントの第2の部分
を含む線状RNAであって、前記RNAエレメントの第1の部分と前記RNAエレメントの第2の部分が互いに会合して、少なくとも4塩基対(bp)長の二本鎖領域が形成されており、
前記RNAエレメントの第1の部分の5’末端および前記RNAエレメントの第2の部分の3’末端は、二本鎖領域にニックが形成されており、
前記ニックはRNAリガーゼによってライゲーションされ得る、線状RNA。
【請求項2】
前記二本鎖領域が約6bp長から約25bp長である、請求項1に記載の線状RNA。
【請求項3】
前記RNAエレメントが少なくとも20nt長である、請求項1
又は2に記載の線状RNA。
【請求項4】
前記二本鎖領域が前記ニックの3’側に少なくとも2bpを含
み、
及び/又は前記二本鎖領域が前記ニックの5’側に少なくとも2bpを含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の線状RNA。
【請求項5】
前記RNAエレメントの第1の部分および/または前記RNAエレメントの第2の部分が
、参照RNAエレメントに対して外因性の配列を含
み、
好ましくは、前記RNAエレメントの第2の部分が、3’末端に第1の外来配列を含み、前記RNAエレメントの第1の部分が、前記第1の外来配列に相補的な第2の外来配列を含み、前記第1の外来配列と前記第2の外来配列は、ニックの5’末端に隣接する塩基対が形成されている、請求項
1に記載の線状RNA。
【請求項6】
前記エフェクターRNA配列が、コードRNA配列であ
り、
好ましくは、前記コードRNA配列が治療用ポリペプチドをコードする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の線状RNA。
【請求項7】
前記RNAエレメントが、前記コードRNAの翻訳を促進
し、
好ましくは、前記RNAエレメントが、内部リボソーム進入部位(IRES)またはその一部であり、
更に好ましくは、前記IRESが、コクサッキーウイルスB3(CVB3)IRES、エンテロウイルス71(EV71)IRES、脳心筋炎ウイルス(EMCV)IRES、ピコルナウイルス(PV)IRES、C型肝炎ウイルス(HCV)IRES、アデノウイルス(AdV)IRES、ヒトパピローマウイルス31型(HPV31)IRES、ヒトヘルペスウイルス(HHV)IRES、ラウス肉腫ウイルス(RSV)IRES、古典的豚コレラウイルス(CSFV)IRES、FGF9 IRES、SLC7A1 IRES、及びRUNX1 IRESからなる群から選択されるIRESに由来する、請求項
6に記載の線状RNA。
【請求項8】
前記IRESが、CVB3ウイルスまたはその誘導体のIRESであ
り、
好ましくは、CVB3ウイルスのIRESが配列番号1のヌクレオチド配列を含む、請求項
7に記載の線状RNA。
【請求項9】
前記RNAエレメントの第1の部分が配列番号1の386~749番目のヌクレオチドを含み、前記RNAエレメントの第2の部分が配列番号1の1~385番目のヌクレオチドを含む
か、
又は、
前記RNAエレメントの第1の部分が配列番号1の347~749番目のヌクレオチドを含み、前記RNAエレメントの第2の部分が配列番号1の1~346番目のヌクレオチドを含む、請求項
8に記載の線状RNA。
【請求項10】
前記コードRNAの3’末端に作動可能に連結されたインフレーム2Aペプチドコード配列をさらに含む、請求項
6~
9のいずれか一項に記載の線状RNA。
【請求項11】
前記RNAエレメントが、sgRNAまたはH/ACAボックス低分子核小体RNA(snoRNA)である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の線状RNA。
【請求項12】
前記エフェクターRNA配列が、ガイドRNA(gRNA)、デアミナーゼリクルートRNA(dRNA)、siRNA、miRNA、shRNA、および長鎖遺伝子間非コード(linc)RNAからなる群から選択される非コードRNA配列である、請求項1~
5及び
11のいずれか一項に記載の線状RNA。
【請求項13】
(a)環状化RNA生成物を提供するために線状RNAにおけるニックのライゲーションを可能にする条件下で、請求項1~
12のいずれか一項に記載の線状RNAをRNAリガーゼと接触させることと、
(b)環状化RNA生成物を単離することにより、circRNAを提供することと
を含む、circRNAを調製する方法。
【請求項14】
請求項1~
12のいずれか一項に記載の線状RNAにおけるニックのライゲーションによって形成されたcircRNA。
【請求項15】
請求項1~
12のいずれか一項に記載の線状RNAをコードする核酸配列を含む、核酸構築物。
【国際調査報告】