(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】アブレーションを施した表面を有するダイヤモンド電極
(51)【国際特許分類】
C25B 11/043 20210101AFI20240822BHJP
C25B 1/13 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C25B11/043
C25B1/13
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513181
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 EP2022068654
(87)【国際公開番号】W WO2023025444
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514233369
【氏名又は名称】エレメント シックス テクノロジーズ リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】520373224
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ オブ ウォーリック
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100228005
【氏名又は名称】澤田 英之
(72)【発明者】
【氏名】タリー ジョシュア ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ウッド ジョージア
(72)【発明者】
【氏名】テレロ ロドリゲス イリナ ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】マクファーソン ジュリー ヴィクトリア
(72)【発明者】
【氏名】ニュートン マーク エドワード
(72)【発明者】
【氏名】モラート ティモシー ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ザリン ホセイン
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA13
4K011AA16
4K011BA02
4K011BA12
4K021AA09
4K021DB10
4K021DB53
(57)【要約】
電極及び電極を形成する方法であって、電極は、ホウ素ドープダイヤモンドから形成され、電極は、アブレーション表面改質工程を経た総溶液アクセス可能電極領域を有し、少なくとも60%のダイヤモンド安定化非ダイヤモンド炭素を含む、方法。電気化学セル電極も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素ドープダイヤモンドから形成された電極であって、少なくとも60%のダイヤモンド安定化非ダイヤモンド炭素を含む総溶液アクセス可能電極領域を有する、電極。
【請求項2】
前記総溶液アクセス可能電極領域は、少なくとも70%、80%、90%、及び95%のダイヤモンド安定化非ダイヤモンド炭素のいずれかを含む、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記ダイヤモンド安定化非ダイヤモンド炭素は、非晶質炭素層を有する前記ダイヤモンド表面に結合した配向性黒鉛を含み、前記黒鉛は、前記ダイヤモンド表面に結合している位置で、前記総溶液アクセス可能電極領域の面に対し、20°を越える角度で配向している、請求項1又は2に記載の電極。
【請求項4】
非晶質炭素の前記層は、10nm未満の厚さを有する、請求項3に記載の電極。
【請求項5】
前記ホウ素ドープダイヤモンドは、CVDダイヤモンド、HPHTダイヤモンド及び圧縮HPHTダイヤモンドのいずれかから選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の電極。
【請求項6】
前記ホウ素ドープダイヤモンドは、伝導性又は非導電性支持体上のコーティング層の形態である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電極。
【請求項7】
前記ダイヤモンド安定化非ダイヤモンド炭素は、アブレーション加工技術及びそれに続く前記溶液アクセス可能電極領域への酸化処理の適用により前記溶液アクセス可能電極領域に形成される、請求項1~6のいずれか1項に記載の電極。
【請求項8】
前記酸化処理は、
硫酸及び硝酸カリウム;
硫酸及び過酸化水素;
硝酸及び塩酸;
フッ化水素酸;
次亜塩素酸;
硝酸、過塩素酸及び硫酸;並びに
過マンガン酸カリウム、過マンガン酸アンモニウム、過マンガン酸カルシウム、過マンガン酸ナトリウム、及び過マンガン酸銀のいずれかから選択される過マンガン酸塩、
のいずれかを含む液体中で少なくとも10分間処理すること、を含む、請求項7に記載の電極。
【請求項9】
前記酸化処理は、電気化学的酸化を含む、請求項7に記載の電極。
【請求項10】
前記溶液アクセス可能電極領域は、スロット、くぼみ及び非平坦表面形状のいずれかを更に含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の電極。
【請求項11】
前記溶液アクセス可能電極領域から離れている前記バルクホウ素ドープダイヤモンドは、前記溶液アクセス可能表面より顕著に少ないsp
2結合炭素を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の電極。
【請求項12】
第1の電極であって、請求項1~9のいずれか1項に記載の電極である第1の電極;
第2の対向する電極;
流体を流すように構成された流路;
前記流体が前記流路を通過する場合に、前記電極間に電流が流れるように、前記電極間に電位を印加するように構成された駆動回路;及び
前記電極が配置される密閉囲い室であって、前記流路内に前記流体を含むように構成された前記囲い室、を含む電気化学セル。
【請求項13】
前記電気化学セルは、使用時に、オゾンを生成するように構成される、請求項12に記載の電気化学セル。
【請求項14】
使用中、及び5~10Vの範囲の電圧及び0.01~最大0.05A/cm
2の範囲の電流密度にわたり、25℃の公称温度及び240ml
-1の流速で脱イオン化水(15MΩ・cm超)を用いて、ピークオゾン電流効率は、25%より大きい、請求項12又は13に記載の電気化学セル。
【請求項15】
前記ピークオゾン電流効率は、少なくとも30%及び少なくとも35%のいずれかから選択される、請求項14に記載の電気化学セル。
【請求項16】
使用中、オゾン出力勾配は、少なくとも5時間の連続運転の時間の間に、10%より大きくは減少しない、請求項12~15のいずれか1項に記載の電気化学セル。
【請求項17】
前記5時間の期間は、少なくとも20時間の初期使用期間後に測定される、請求項16に記載の電気化学セル。
【請求項18】
使用中、オゾン生産性勾配は、240ml/分の流速の15MΩ・cmを越える抵抗率を有する水中で動作する5~15Vの印加電圧下、0.01~0.05A/cm
2の電流密度範囲にわたり、R
2>0.95で表記される決定係数を有する最小2乗線形回帰フィッティングによるものである、請求項12~17のいずれか1項に記載の電気化学セル。
【請求項19】
電極を形成する方法であって、
ホウ素ドープダイヤモンドを用意すること、
表面改質工程を適用し、少なくとも60%のダイヤモンド安定化非ダイヤモンド炭素を含む総溶液アクセス可能電極領域を形成すること、
を含む、方法。
【請求項20】
前記表面改質工程は、アブレーション加工工程を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記アブレーション加工工程は、レーザーアブレーションを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記レーザーアブレーションは、355~1064nmの波長、10~500nsのパルス長さ、50Hz~25MHzの範囲のパルス周波数、及び0.1~100,000mm/sの通過速度で10J/cm
2を越えるフルエンスのレーザーを用いて実施される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記アブレーション加工工程は、放電加工を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記放電加工は、0.05~3.00mmの電極ギャップ、5~60Vの印加電圧、及び0.1~5.0Aの電流で、10~300μsのパルス時間を用いて実施される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記アブレーション加工工程は、前記溶液アクセス可能電極領域で、スロット、くぼみ及び非平坦表面形状のいずれかを形成するために更に使用される、請求項20~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記総溶液アクセス可能電極領域に対して、酸化工程ステップを適用することを更に含み、前記酸化工程は、酸化環境を前記溶液アクセス可能電極領域に適用することを含む、請求項19~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記酸化工程は、
硫酸及び硝酸カリウム;
硫酸及び過酸化水素;
硝酸及び塩酸;
フッ化水素酸;
次亜塩素酸;
硝酸、過塩素酸及び硫酸;並びに
過マンガン酸カリウム、過マンガン酸アンモニウム、過マンガン酸カルシウム、過マンガン酸ナトリウム、及び過マンガン酸銀のいずれかから選択される過マンガン酸塩、
のいずれかを含む液体中で少なくとも10分間処理すること、を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記酸化工程は、電気化学的酸化を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
電気化学的負極過程、酸素プラズマ処理、及び化学的/電気化学的還元工程のいずれかを前記溶液アクセス可能電極領域に適用することを更に含む、請求項19~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
請求項12~18のいずれか1項に記載の電気化学セルを形成する方法であって、
請求項1~8のいずれか1項に記載の第1の電極を用意すること;
第2の対向する電極を用意すること;
流体を流すように構成された流路を設けること;
前記流体が前記流路を通過する場合に、前記電極間に電流が流れるように、前記電極間に電位を印加するように構成された駆動回路を設けること;及び
前記電極が内部に配置され、前記流路内に前記流体を含むように構成された密閉囲い室を設けること、
を含む方法。
【請求項31】
前記第1及び前記第2の電極間に配置された固体電解質を更に含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
使用前に、前記固体電解質を水和及びプロトン化することにより前記固体電解質を処理することを更に含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記固体電解質は、ナフィオン(商標)を含む、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
電気化学セルを使用する方法であって、
請求項12~18のいずれか1項に記載の電気化学セルを用意すること;
前記流路中に流体を流させること;及び
前記電極間に電流が流れるように、前記電極間に電位を印加すること、
を含む、方法。
【請求項35】
唯一の電気化学的に活性な電極材料が前記ホウ素ドープダイヤモンド電極となるように、ドライ電気接点を介して前記電極間に前記電位を印加することを更に含む、請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤモンド電極、特に、ホウ素ドープダイヤモンドから形成されたダイヤモンド電極の分野、及びこのような電極を備えた電気化学セルに関する。更に、本発明は、このような電極を形成する方法、及びこのような電気化学セルの使用方法の分野にも関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンは、気相又は溶解相中に存在できる高酸化性の分子であり、用途には、滅菌及び消毒、脱臭、並びに脱色が挙げられる。他の酸化剤に優るオゾンの主要な利点の1つは、有害な残留物が無いことである。最も一般的には、オゾンは水処理産業で溶解形態で用いられ、その場合、オゾンは廃棄物及び飲料水の処理において汚染物質を除去するために使用される。しかし、約20分の限られた半減期のために、オゾンはその場で生成される必要がある。
オゾンは電気化学的酸化により水から直接生成できるので、その単純さのために、電気化学的オゾン生成(EOP)は、一般に受け入れられてきた。一般に認められているEOP7の機序は、表面結合ヒドロキシルラジカルの生成を伴い、このラジカルは、崩壊して吸着酸素ラジカルを生成する。酸素ラジカルは、吸着酸素分子を形成するために一緒に反応し得るか、又は吸着OOHラジカルを形成するために水分子と反応し得る;後者は、最終的に酸素発生に至る。吸着酸素が生成されると、吸着酸素は、オゾンを形成するために吸着酸素ラジカルと更に反応し得るか、又は酸素として表面から単に脱着させ得る。水の酸化が取る最終的な経路は、目的の電極表面上のラジカル種及び酸素分子の結合エネルギーに依存する。オゾン生成は、水酸化の好ましい経路であると思われるので、酸素発生反応(OER)のための高い過電圧を有する電極は、より高い電流効率をもたらす可能性がある。
【0003】
歴史的には、Pt及びPbO2は、オゾン溶解度を高めるために周囲温度以下で用いられて、初期にオゾン生成に使用された電極材料であったが、SnO2などの他のものも使用された(Foller et.al.,The electrochemical generation of high concentration ozone for small-scale applications,Ozone Sci.Eng.,1984,6,29-36参照)。PbO2負極を採用した市販のEOPシステムは存在するが、それらは、他の金属ベースのEOPシステムでよくあるように、電極腐食及びPb汚染問題の影響を受ける。この理由のために、高められた耐久性を発揮することでよく知られ、汚染の懸念を生じさせず、及びOERに対する高い過電圧を有するホウ素ドープダイヤモンド(BDD)電極が、市販のEOP装置にとって最も一般的な選択肢の1つになっている(Arihara et.al.,Electrochemical Production of High-Concentration Ozone-Water Using Freestanding Perforated Diamond Electrodes,J.Electrochem.Soc.,2007,154,E71,and Arihara et.al.,Electrochem.Solid-State Lett.,9,D17 2006参照)。
【0004】
商業的用途では、電解質対イオンの電気分解を伴う競合する副反応に起因するオゾン生成工程の電流効率の低下を避け、無試薬オゾン生成への経路を提供するために、電解質不含溶液(純水)からオゾンを生成するのが望ましい13,14。しかし、溶液の低伝導性のために、固体電解質、例えば、2つのBDD電極の間に挟まれるプロトン輸送ナフィオン(商標)膜(ゼロギャップセル)を使用することが必要である。電極は、ほとんどの場合、多孔質形態で使用され、肉厚自立型BDD中へのスルーホールの配置又は孔あき基板上での薄膜BDDの成長を含む(Kraft et.al.,Electrochemical ozone production using diamond anodes and a solid polymer electrolyte,Electrochem.commun.,2006,8,883-886参照)。孔形成は、ナフィオン(商標)への溶液アクセスを可能にする点で重要である。これにより、ナフィオン(商標)-溶液-BDD「三重点」をもたらし、これは、オゾンが生成される場所でもあると考える人もいる。薄膜BDDの製造コストは、自立型材料よりも安いが、幾何学的に難度が高い基板上にピンホール不含BDDを成長させるのは難しい;中程度の電流密度であっても、ピンホールは、BDD膜の層間剥離及び早期電極故障を生じる。ゼロギャップセルを用いると、BDD電極は、電流効率の観点でPbO2負極と競合するのは好ましいが、それらは、より高い動作電圧を必要とする。
【0005】
BDD電極の表面は、EOP文献中で議論されてきた。一部の研究者は、非ダイヤモンド炭素不含表面、即ち、清浄なBDDの好ましい使用についてコメントしているが、BDD中に存在するsp2結合炭素不純物がオゾン出力を増やすことができることを示唆する限られた試験研究しか存在しない(Watanabe et.al.,Tailored design of boron-doped diamond electrodes for various electrochemical applications with boron-doping level and sp2 bonded carbon impurities,Phys.Status Solidi Appl.Mater.Sci.,2014,211,2709-2717;and Honda et.al.,An electrolyte-free system for ozone generation using heavily boron-doped diamond electrodes,Diam.Relat.Mater.,2013,40,7-11参照)。この研究は、電極の耐久性を保持し、BDD膜の構造的安定性を維持するために、sp2結合炭素不純物の割合を低く保持することの重要性を強調している。特に、「膜中のsp2結合炭素不純物の量は、ダイヤモンドの耐久性を保持するのに十分低く制御されるべきである・・・・・ラマンスペクトルがBDD-B及びDが若干の非ダイヤモンドsp2結合炭素不純物を含むことを示すが、sp2結合炭素の割合は極めて低い」及び「sp2構造の存在は、BDDの安定性を低下させることに留意することは重要である」ことが述べられた。それらの研究では、sp2結合炭素は、炭素供給原料に対するホウ素の比率の0.1%~5%の変動により、化学蒸着(CVD)成長の間に導入された。これらのsp2結合炭素は、グローイン(grown-in)であるので、それらは、表面だけではなく、膜全体に存在する。これらの研究では、ホウ素濃度及びsp2結合炭素含量は、同時に変化し、材料伝導性の変化(ホウ素濃度の変動に由来する)の影響は、得られた結果に対し、考慮に入れられなかったことに留意されたい。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、高レベルのsp2結合表面炭素の生成による殺菌種産生のためのBDD電極の最適化について記述する。現在の文献とは対照的に、本発明は、少なくとも60%のsp2結合炭素で覆われた表面を有するBDD電極を提案し、これは、現在、BDD EOP動作のための最適被覆率であると教示されているものを十分に超えるレベルである。sp2結合炭素表面含量の高いBDD電極は、EOPのために増大した出力をもたらし、我々は、これは、BDD表面上の可能なラジカル/酸素結合部位の増大した密度によるものと考えている。意外にも、このような電極は、このような高いsp2結合炭素含量を含むにもかかわらず、EOPの極めて高い電流密度(電圧)動作条件下で、長時間、例えば、少なくとも20時間にわたり、構造的安定性、従って、オゾン出力の安定性を維持することもできる。我々は、EOPの極端な動作条件に耐えることができるという状況から、ダイヤモンド安定化非ダイヤモンド炭素(DSC)として、我々の方法を用いて生成したsp2結合炭素領域について言及する。
このような高いDSCの表面被覆率を導入する好ましい方法は、DSCを製造するためのアブレーション加工及びアブレーション後化学処理の組み合わせによる。本方法では、例えば、レーザービームの高エネルギー放出によるBDDの熱損傷は、ダイヤモンドの黒鉛への変換を生ずる。それに続く、化学処理によりDSCが得られる。DSCは、下層のBDDに密接した接触点で、非晶質炭素シェルにより少なくとも部分的に密封されて、実質的に垂直に整列した炭素の黒鉛シート層(通常、最大10nm代であり得る)として存在し、これは、10nm未満の厚さであり得る(Cobb et.al.,Assessment of acid and thermal oxidation treatments for removing sp2 bonded carbon from the surface of boron doped diamond,Carbon N.Y.,2020,167,1-10参照)。
【0007】
第1の態様では、ホウ素ドープダイヤモンドから形成された電極が提供され、電極は、少なくとも60%のダイヤモンド安定化非ダイヤモンド炭素を含む総溶液アクセス可能電極領域を有する。
このタイプの溶液アクセス可能電極領域は、自立型CVD BDD、伝導性基板上のCVD BDDの薄膜コーティング(0.5~50.0μmの範囲の好ましい厚さを有する)及びその後、焼結されるか、又は多結晶マトリックス材料に圧縮されるBDD粒子の高温及び圧力(HPHT)合成を経由して製造されたBDD材料を含む種々のタイプのホウ素ドープダイヤモンド材料に適用できる。
1つの選択肢として、総溶液アクセス可能電極領域は、少なくとも70%、80%、90%、及び95%のダイヤモンド安定化非ダイヤモンド炭素のいずれかを含む。
1つの選択肢として、ダイヤモンド安定化非ダイヤモンド炭素は、非晶質炭素層を有するダイヤモンド表面に結合した配向性黒鉛を含み、黒鉛は、ダイヤモンド表面に結合している位置で、総溶液アクセス可能電極領域の面に対し、20°を越える角度で配向している。
1つの選択肢として、ホウ素ドープダイヤモンドは、CVDダイヤモンド、HPHTダイヤモンド及び圧縮HPHTダイヤモンドのいずれかから選択される。
【0008】
ホウ素ドープダイヤモンドは、必要に応じ、伝導性又は非導電性支持体上のコーティング層の形態である。
1つの選択肢として、ダイヤモンド安定化非ダイヤモンド炭素は、アブレーション加工技術及びそれに続く溶液アクセス可能電極領域への酸化処理の適用により溶液アクセス可能電極領域に形成される。さらなる選択肢として、酸化処理は、硫酸及び硝酸カリウム;硫酸及び過酸化水素;硝酸及び塩酸;フッ化水素酸;次亜塩素酸;硝酸、過塩素酸及び硫酸;及び過マンガン酸カリウム、過マンガン酸アンモニウム、過マンガン酸カルシウム、過マンガン酸ナトリウム、及び過マンガン酸銀のいずれかから選択される過マンガン酸塩のいずれかを含む液体中での少なくとも10分間の処理を含む。
酸化処理は、必要に応じ、電気化学的酸化を含む。
【0009】
溶液アクセス可能電極領域は、必要に応じ、スロット、くぼみ及び非平坦表面形状のいずれかを更に含む。
1つの選択肢として、溶液アクセス可能電極領域から離れているバルクホウ素ドープダイヤモンドは、溶液アクセス可能表面より顕著に少ないsp2結合炭素を含む。バルク材料中のsp2結合炭素の量は、溶液アクセス可能表面領域での量より少なくとも5倍少ない可能性がある。
【0010】
第2の態様では、第1の態様で上述の第1の電極、第2の対向する電極、流体を流すように構成された流路、流体が流路を通って流れる場合に、電極間で電流が流れるように電極両端間で電位を加えるように構成された駆動回路、及び電極が配置される密閉囲い室を含む電気化学セルが提供され、囲い室は、流路内に流体を含むように構成される。
1つの選択肢として、電気化学セルは、使用時に、オゾンを生成するように構成される。
1つの選択肢として、使用中、及び5~10Vの範囲の電圧及び0.01~最大0.05A/cm2の範囲の電流密度にわたり、25℃の公称温度及び240ml-1の流速で脱イオン化水(15MΩ・cm超)を用いると、ピークオゾン電流効率は、25%より大きい。さらなる選択肢として、ピークオゾン電流効率は、少なくとも30%及び少なくとも35%のいずれかから選択される。
1つの選択肢として、オゾン出力勾配は、少なくとも5時間の連続運転の間に、わずか10%減少するに過ぎない。さらなる選択肢として、5時間の期間は、少なくとも20時間の初期使用期間後に測定される。
1つの選択肢として、使用の間、オゾン生産性勾配は、240ml/分の流速の15MΩ・cmを越える抵抗率を有する水中で動作する5~15Vの印加電圧下、0.01~0.05A/cm2の電流密度範囲にわたり、R2>0.95で表記される決定係数を有する最小2乗線形回帰フィッティングによるものである。
【0011】
第3の態様では、電極を形成する方法が提供され、該方法は、ホウ素ドープダイヤモンドを用意すること、及び表面改質工程を適用し、少なくとも60%のダイヤモンド安定化非ダイヤモンド炭素を含む総溶液アクセス可能電極領域を形成することを含む。
必要に応じ、表面改質工程は、アブレーション加工工程を含む。
1つの選択肢として、アブレーション加工工程は、レーザーアブレーションを含む。この例では、レーザーアブレーションは、355~1064nmの波長、10~500nsのパルス長さ、50Hz~25MHzの範囲のパルス周波数、及び0.1~100,000mm/sの通過速度で10J/cm2を越えるフルエンスのレーザーを用いて、必要に応じて、実施される。
代替選択肢として、アブレーション加工工程は、放電加工を含む。この例では、放電加工は、0.05~3.00mmの電極ギャップ、5~60Vの印加電圧、及び0.1~5.0Aの電流、10~300μsのパルス時間で、必要に応じ、実施される。
アブレーション加工工程は、必要に応じ、溶液アクセス可能電極領域で、スロット、くぼみ及び非平坦表面形状のいずれかを形成するために更に使用される。
【0012】
方法は、必要に応じ、総溶液アクセス可能電極領域に対して、酸化工程ステップを適用することを更に含み、酸化工程は、酸化環境を溶液アクセス可能電極領域に適用することを含む。酸化工程は、必要に応じ、硫酸及び硝酸カリウム;硫酸及び過酸化水素;硝酸及び塩酸;フッ化水素酸;次亜塩素酸;硝酸、過塩素酸及び硫酸;及び過マンガン酸カリウム、過マンガン酸アンモニウム、過マンガン酸カルシウム、過マンガン酸ナトリウム、及び過マンガン酸銀のいずれかから選択される過マンガン酸塩のいずれかを含む液体中での少なくとも10分間の処理を含む。あるいは、酸化工程は、必要に応じ、電気化学的酸化を含む。
方法は、必要に応じ、電気化学的負極過程、酸素プラズマ処理、及び化学的/電気化学的還元工程のいずれかを溶液アクセス可能電極領域に適用することを含む。
必要に応じ、方法は、第1の態様で上記した第1の電極を設けること、第2の対向する電極を設けること、流体を流すように構成された流路を設けること、流体が流路を通って流れる場合に、電極間で電流が流れるように、電極間に電位を印加するように構成された駆動回路を設けること、及び電極が配置される密閉囲い室を設けることを含み、囲い室は、流路内に流体を含むように構成される。
方法は、必要に応じ、第1及び第2の電極間に固体電解質を配置することを含む。さらなる選択肢として、方法は、使用前に、固体電解質を水和、及びプロトン化することにより固体電解質を処理することを含む。
【0013】
第4の態様では、電気化学セルを使用する方法を提供し、該方法は、第2の態様で上記された電気化学セルを用意すること、流体を流路中に流れさせること、及び電極間に電流が流れるように電極間に電位を印加すること、を含む。
方法は、必要に応じ、唯一の電気化学的に活性な電極材料がホウ素ドープダイヤモンド電極となるように、ドライ電気接点を介して電極間に電位を印加することを更に含む。
例示することを目的として、以降で、添付の図面を参照しながら非限定的実施形態が記載される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】例示的電気化学的EOPセルを概略的に示す図である。
【
図2】総溶液アクセス可能電極領域を計算する方法の例を示す図である。
【
図3】a)は、BDD電極の(%)溶液アクセス可能領域として示したアクセス可能なDSC割合に対する電気化学的EOPセルのオゾン出力勾配を示す図であり、b)は、BDD電極表面のアクセス可能DSC割合(%)に対する電気化学セルのピーク電流効率を示す図である。
【
図4】EOP電気化学セルに使用後の腐食したガラス状炭素電極の光学的画像を示す。
【
図5】孔あき電極デザインの場合の電極厚さに対するオゾン出力勾配を示す図である。
【
図6】a)は、例示的BDD電極セルの時間に対する258nmでのUV吸光度を示す図であり、b)例示的BDD電極セルの電流に対する溶解オゾン濃度を示す図であり、c)は、例示的BDD電極セルの印加電流に対する電流効率を示す図である。
【
図7】a)は、所望の形状に切断し、半セルに接着させた圧縮HPHT微粒子から形成された電極の写真であり、b)は、電流に対する溶解オゾン濃度を示す図であり、c)は、印加電流に対する電流効率を示す図である。
【
図8】a)及びb)は、それぞれ、CVD BDD電極セルおよびHPHT BDD電極セルの時間に対する258nmでのUV吸光度を示す図であり、c)は、CVD及びHPHT電極セルに対する長期安定性試験後の、電流に対する溶解オゾン濃度を示す図である。
【
図9】BDDダイヤモンド電極を形成するための例示的ステップを示すフローダイヤグラムである。
【
図10】BDDダイヤモンド電気化学セルを形成するための例示的ステップを示すフローダイヤグラムである。
【
図11】BDDダイヤモンド電気化学セルを使用するための例示的ステップを示すフローダイヤグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上述のように、現在まで、EOP用のBDDにおいて、sp2結合炭素不純物の割合を低く保持することが重要視されてきた。発明者らは、DSCを表面に多量に導入することが、EOPのためにBDD電極の性質を改善するのみでなく、意外にも電極はEOPの間の長期(少なくとも20時間)にわたる出力安定性も維持できることを見出した。
DCSは、電極の溶液アクセス可能電極領域で存在しさえすれば十分であり;それが電極の厚さ全体にわたり配置されたsp2結合炭素を有することは必須ではない。DSCは、アブレーション加工とアブレーション後化学処理の組み合わせを用いて導入できることが明らかになった。アブレーション加工は、BDD表面に熱損傷を導入することにより、黒鉛などのsp2結合炭素を形成し、その後の処理で、sp2結合炭素を安定化してDSCを形成できることが提案されている。これらのその後に続く処理は、BDD電極が電気化学セル内に配置される前に、又は電気化学セル内で、その場で、コンディショニング過程の一部として実施できる。上述のように、DSCは、下層のBDDに密接した接触点で、非晶質炭素シェルにより密封されて、垂直に整列した炭素の黒鉛シート層(通常、最大10nm代であり得る)として存在する(これは、10nm未満の厚さであり得る)。
EOPに対するDSCの安定な層を有するBDDダイヤモンド電極の作製例は、以下で提供される。
【0016】
セルデザイン
図1は、電気化学セルデザインを概略的に示す。各セル1は、2つの分離した半セル2、3を含む。半セル2、3をForm3(FormLabs)及び50μm層高さを有するUV硬化透明ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂(FormLabs Standard Clear,FormLabs)を用いて3D印刷した。その後、それらをイソプロピルアルコール(試薬グレード、Fisher Scientific)中で10分間洗浄し、続けて、60℃で20分間UV硬化した。この工程は、過剰レジンを除去することを確実にし、レジン部品の最適材料特性を得るためのものである。次に、支持材料を取り除き、グレードを順次高めたCarbiMetペーパー(Buhler,USA)を用いて平坦になるまで、面を研磨した。
【0017】
孔あき電極セルは、
図1に示すように、孔あきBDD電極4、5をそれぞれ含む2つの同一の半分、BDD電極を収容する凹部、3D印刷ガスケット6、銅タブ接点7のためのスロット、及び電極の裏面にまたがる溶液流のためのチャネルから構成される。
電極4、5は、UVレジン(FormLabs Clear,FormLabs)を用いて、各半セル2、3の凹部に接着される。銀充填エポキシ(伝導性エポキシ、CircuitWorks,Chemtronics)を用いて、電極接点への電気接点を作製した。得られた半セルは、同一であり、A及びBと標識される。各半セル2、3は、負極又は正極として機能できる。セル試験の前に、BDD電極4、5を湿潤マイクロクロスパッド(Buehler)上でアルミナ微粒子(0.05μm、Buehler,Germany)で、及び次に、湿潤アルミナ不含マイクロクロスパッド上で研磨した。密封のために、エラストマー3D印刷したガスケット(FormLabs Elastic50A,FormLabs,USA)を各半セル4、5上の凹部に配置し、ナフィオン(商標)膜8の周りを密閉した。2cmの直径の円形強化ナフィオン(商標)ペルフルオロ化膜(ポリ(テトラフルオロエチレン)繊維0.33mm、Sigma-Aldrichで強化したナフィオン(商標)424)を半セル3、4の間に配置し、これらはその後、一緒にボルト留めされた。
【0018】
DSCを有する孔あきBDD電極の形成
孔あきBDD電極3、4は、355nmのNd:YAG 34nsレーザーマイクロマシニングシステム(E-355H-ATHI-0 system,Oxford Lasers)を用いて、自立型多結晶BDDウェハ(別段の指定がない限り420μm、ホウ素ドーパント密度>10 B原子/cm3、Element Six)から機械加工した。アズグロウン(as-grown)ウェハの成長面は、約15μm RMSの粗さを有するが、核生成面粗さは、約100nm RMSであった。これらは両方とも、白色光干渉法(WLI)を用いて測定した。
トレパンシステムを用いて、レーザースポット直径を50μmまで広げ、カットトレンチを広くした。これは、切り口がBDDに垂直になるのを確実にし、ビームがトレンチ側面と干渉するのを防ぎ、カットのカーフに対する必要性をなくした。2回のパスを用いて、パス当たり760J/cmのフルエンスで電極3、4をレーザーカットした。電気接触を容易にするために、BDDを、3x2mmタブを有する異なる直径(12又は24mm)の円形に切断した。異なる形状の貫通孔を中央部からカットした。適用時に、Ti/Au接触を改善するために、532 Nd:YAG 15nsレーザーマイクロマシニングシステム(A-Series,Oxford Lasers)を用いて、約30J/cmのフルエンスで、接触タブの核生成面をレーザー粗面化した。
【0019】
孔あきHPHTコンパクト電極生成
HPHT合成BDD微粒子の結合剤不含HPHT圧縮工程(キュービックアンビルプレス中、6.6GPa及び1700℃による)を用いて、自立型HPHT BDD電極を作製した。微粒子は、ホウ素源として4.8質量%のAlB2を加えたFe/Ni/C融解物から成長させた(Wood et.al.,High pressure high temperature synthesis of highly boron doped diamond microparticles and porous electrodes for electrochemical applications,Carbon N.Y.,2021,171,845-856に詳細に記載のように)。この方法は、本明細書では「コンパクト(compact)」と呼ばれる、自立型円筒形圧縮電極を生成し、これは、約16mmの直径、2mmの肉厚、約2~3x1020個のB原子/cm3のホウ素含量、及び約650mΩの抵抗率を有する。2mm厚さのコンパクトを放電加工(EDM)を用いてスライスし、約500μmの厚さの電極を得た。実質的にドライ電気接点の電極の背面を介して、電気接触を容易にするために、矩形タブ(3x2mm)を有する電極を8mm直径の円形に切り出し、更に、上記CVD電極の場合と同じレーザー条件を用いて、貫通孔カットを行った。
【0020】
DSCを形成するための電極処理
レーザー加工後、全ての電極を、強力な酸化溶液であるKNO3で飽和させた濃H2SO4中に約200℃で30分間浸漬し、続けて、超純水で濯ぎ、その後、200℃の濃H2SO4溶液中に更に30分間置いた。この工程は、レーザー加工中に導入されたすべての弱く結合したsp2結合炭素を除去し、極めて強固な形態のsp2結合炭素、DSCを後に残す(上記で参照のCobb et.al.を参照)。強力酸化条件は、濃H2SO4とH2O2、王水[HNO3とHCl]、HFとHNO3、過マンガン酸カリウムなどの他の酸化剤及びプラズマエッチング又は制御された条件下で黒鉛をエッチングするその他の条件などの熱工程を含むいくつかの方法により生成できる。
電気接点は、孔あき電極及び背面の平面電極のラップ面のレーザー粗面化接触タブ上へのTi薄層(10nm)、続いてAuの第2層(400nm)のスパッタリング(Moorfield MiniLab 060 Platform Sputter system)により付加した。オーミック接続を生成するために、接点を400℃で5時間アニールした。
【0021】
オゾン測定
超純水(ミリQ、抵抗率>15MΩ/cm)を、ダイヤフラムポンプを使って、約330mL/分の流速で、リザーバーからオゾンセルを通して流した。Voltcraft VLP-2602 OVP電源(Voltcraft)を用いて、0.1~0.6Aの範囲のガルバノスタット電流を0.1A増分で印加した。オゾン化水の一定分量を30秒後に収集した。1cmの光路及び2900/(M・cm)のモル吸収係数を有する、石英キュベット(Hellma Analytics)を用いて、Lambda850UV/Vis分光計(Perkin Elmer)により258nmで吸光度を記録することにより、オゾン濃度を測定した。
使用前に、ナフィオン(商標)膜を水和及びプロトン化するために、セルの片側を0.6(12mm電極の場合)又は0.3A(8mm電極の場合)で5分間稼働させた。負極としてA側(及びB側は正極)で3回の繰り返し較正を記録する直前に、前処理を負極として接続したA側BDD電極に適用した。次に、負極としてB側で3回の繰り返し較正を記録する直前に、前処理を負極として接続したB側BDD電極に再度適用した。選択条件は、一貫した電流/電圧及び電流/オゾン出力データを生成する反復較正間で、安定な応答を与えた。
【0022】
長期試験
長期安定性試験のために、258nmでのUV吸光度を、約0.3A(12mmセル)及び約0.15A(8mmセル)の一定電流で、20時間の連続操作時間にわたり、時間の関数として記録した。校正は、オゾン生成用の負極として動作する電極A及び、その後電極Bを用いて、長期試験の前後で3回繰り返して実施した。ダイヤフラムポンプを使って、10LのDI水リザーバーを、オゾンセルを通して再循環させた。リザーバーからの水は、オゾンセルを通過して、UV-visシステム中の貫流キュベット(45FL;FireflySci)へ出て行き、システムを通してオゾンを除去し、その後、10Lのリザーバーに戻される。オゾンを除去するシステムは、2つの254nmのUVランプの間の高表面積石英管システムであった(254nmで溶解されたオゾンは、酸素に変換される4)。
【0023】
結果及び考察
測定基準:
総領域及びDSC含量:
図2は、浸漬(電極は電解質中に懸濁され、ナフィオン(商標)面を除く全ての面上の溶液にアクセス可能である)及び密閉(電極はセル中に接着又は密閉され、溶液にアクセス可能な片方の面の一部のみを残す)の両方の電極に対し計算した総領域の例を示す。チェック模様の領域は湿潤背面領域を表し、白色領域は内部スロット領域を表し、縞模様領域はナフィオン(商標)膜により溶液から遮断された面を表す。黒色領域は、溶液にアクセス可能でない他の領域を表す。
孔あき電極の場合、ナフィオン(商標)膜と接触させて加圧されているBDDの面は、溶液が排除されていると見なされる。従って、総溶液アクセス可能電極領域は、湿潤背面領域+BDDに加工された貫通スロットの内部アブレーション領域(内部スロット領域と呼ばれる)である。総溶液アクセス可能電極領域は、式1に示すように計算される:
総溶液アクセス可能電極領域=湿潤背面領域+内部スロット領域 (式1)
溶液アクセス可能電極領域に対する内部スロット領域の比率として表して、DSCの量は、式2に示すように計算される:
【数1】
(式2)
【0024】
電解質オゾン生成勾配:EOP勾配(mg・A・cm
2/L)は、3回の繰り返しに対して、印加電流密度(A/cm
2)、y軸、vs.測定オゾン濃度(mg/L)、x軸の最小二乗直線フィッティングを適用することにより計算される。オゾン濃度は、0.1~0.6Aの一定電流の範囲の0.1A増分の一定電流に対して全てのセルで測定した。調査した異なる電極形状の理由から、比較を容易にするために、印加電流を溶液アクセス可能電極領域で正規化する必要があった(上記参照)。電極は、勾配が急なほど、オゾン生成でより効率的である。
電流効率:電流効率(ε)を、式3を用いて計算した:
【数2】
(式3)
式中、nは移動した電子の化学量論数(n=6)
5、Fはファラデー定数(C/モル)、νは溶液流速(L/s)、Cは溶解オゾンの濃度(モル/L)、iは印加電流(A)、及びMはオゾンの分子量(g/モル)である。電流効率は、較正線上の全ての点に対し計算された。最高の値は、ピーク電流効率として選択され、これは、先行の文献と一致した。
以前の文献では、いくつかのEOPセルは、分解産物方式で稼働され、負極産物(即ち、溶解オゾン)は、正極産物から分離される。産物分離は、支持電極及び負極及び正極に対する流速などのパラメーターを別々に最適化可能にする。対照的に、現在の孔あき電極セルは、正極/負極産物を分離して送達できるが、本明細書で考察した全てのデータは、負極及び正極に対するフローストリームを組合わせることにより、収集した。この設定はまた、より容易であり、商業的に入手できる手持ち型のEOP装置で一般に使用される動作モードを反映する。しかし、組み合わせフローストリームは、孔あき電極セルの最大オゾン出力を2倍に希釈する。従って、これを考慮に入れるために、電流効率式に2の因子が導入された。
【0025】
ダイヤモンド安定化非ダイヤモンド炭素導入の孔あき電極に対する効果:
DSC含量の0%から20%の増大は、
図3aに示すように、オゾン出力に対しほとんど影響を与えない。しかし、60%から80%のDSC比率の増大は、両方のオゾン出力勾配の急激な増大を生じる(2から4.7mg・cm
2/(A・L)まで)。DSC比率の増大によるオゾン出力勾配の増大は、オゾン生成に対するDSCの重要性を示す。
図3bに示すように、ピーク電流効率でも類似の傾向が存在し、平均で、より高いDSC含量のセルは、より高いピーク電流効率を有する。
このデータからは、最適電極は、ガラス状炭素又は黒鉛などのsp
2結合炭素電極材料(即ち、100%sp
2結合炭素)から作製されるものであるように思われるが、これは、これらのsp
2結合炭素電極はDSCではなく、あるいは、安定ではなく、高負極電位下では、酸化的に腐食すると思われるという事実のために、可能ではない。例えば、100%sp
2結合炭素電極に関するEOPの唯一の先行文献は、負極としてガラス状炭素を使用した。35%の比較的高い電流効率が達成されたが、電極は、酸化腐食を防ぐために、400mA/cm
2の最大(低)電流密度で、酸性媒体中で稼働されたことに留意されるべきである。この低い電流密度は、意味のある濃度の溶解オゾンを生成するために、非常に大きな電極(20x2.5cmのロッド)の使用を必要とした。本研究では、70%のDSC BDD電極に同一の形状の電極をガラス状炭素ウェハから切り出し、我々の条件(上記参照)下でEOPに使用する場合、
図4に示すように、肉眼でも明らかな実質的な腐食損傷を起こさずに、単一の較正を完結できなかった。
BDDのレーザーアブレーションとそれに続く、酸による酸化化学的後処理(post acid oxidative chemical treatment)により、薄層の極端に強固なDSCが溶液アクセス可能電極領域に導入され、これは、これらの高電位用途で生存できる。BDDは、DSCが、それから、及びその上に形成される、実質的に伝導性ビークルである。DSCの存在は、所定の電流密度に対するオゾン出力の観点から、低い比率のsp
2結合炭素含量BDDに比較して、EOPのためにBDDの効率を改善し、同じオゾン出力のために、よりコンパクトな電極を可能にする。
sp
2及びsp
3結合炭素電極の両方は、酸素発生反応(OER)に対し高い加電圧を有するので、高められたオゾン出力の起源、及び効率は、OERからの減少した競合に起因する可能性は少ない。それよりむしろ、観察された改善は、オゾン生成などの表面駆動過程における決定的因子である、ラジカルが電極表面に吸収される強度に関連すると考えられる。BDD電極は、ヒドロキシルラジカルが電極表面上に非常に弱く吸収されることが知られ、比較的容易に電極から脱離でき、溶液中の種と反応できるという点で、ユニークである。この性質の結果として、BDD電極は、高度酸化に関し広く研究されている。吸着されたヒドロキシルラジカルは、オゾン形成に実質的につながる吸着酸素ラジカルの形成の重要なステップである。ヒドロキシルラジカルは、高い割合のDSCを有する電極の領域により強く吸収され、より高濃度の吸収ラジカルを生じ、最終的に、より多くのオゾンを生成する。
【0026】
材料厚さ及び三重点長さ:
電極形状を変更することなく、高いDSC比率を有するBDD電極を生成する方法として、材料厚さも調査した。
図3の70%のDSC電極と同じデザインを有する孔あき電極を、53~80%変動するDSC比率が得られる、200、300、420、及び700μmの厚さのBDD試料から切り出した。
図5は、単一孔あき電極デザインの場合の電極厚さに対するオゾン勾配を示す図である。200~700μmの漸増する厚さがオゾン出力勾配の増大を生ずる。これはまた、デザインでのDSC割合(%)の変化が、どのようにセルEOP性能の改善に至るか示す別の例を提供する。
【0027】
本研究の別の興味深い態様は、(Kraft et.al.Electrochemical ozone production using diamond anodes and a solid polymer electrolyte,Electrochem.commun.,2006,8,883-886)により提案された「三重点」理論と一致しないように見えることである。この研究では、著者らは、ナフィオン(商標)膜及び溶液の両方に近接したBDD電極の領域のみが、オゾンの生成に活性である、と述べている。
図5の4つ全ての電極は、同一のスロット長さを有する(従って、このデザインでは170mmである三重点長さも同一である)ので、三重点理論が真実である場合、それらは全て、同じオゾン出力勾配を有するはずであるが、これは事実と異なる。
【0028】
長期試験:
次に、B側を負極として、0.3Aで20時間稼働することにより、70%DSCセルを長期安定性試験に供し、258nmで測定するUV吸光度を連続的にモニタリングした。
図6aに示すように、UV吸光度、及び従って、溶解オゾン濃度は、20時間にわたり相対的に一定であるように見え、BDD電極の長期稼動安定性を示している。吸光度データ中の多量の不可避の急上昇は、EOP中に生成されたフローシステムの気泡由来である。
長期安定性試験後に、較正プロットを再度記録し(
図6b、赤色線)、約300±50mL/分の流速を用いて、長期試験前に記録した較正プロット(
図6b、黒色線)と比較した;有意差は観察されなかった。記録した両方の較正プロットは、良好な直線性を有し、20時間前後のR
2(調節済み)は、それぞれ、0.9823及び0.9936であった。生成された最大溶解オゾンは、1.5mg/L(長期試験後)と比較して、1.7mg/L(長期試験前)であり、0.6Aの印加電流も同様に、比較的一定のままで残り、これは、これらのセルで観察された典型的エラーの範囲内であった。両方の較正プロットでは、生成オゾンの量は、印加電流の増大と共に、直線的に増大することを認めることができ、長期試験の前後で、それぞれ、3.4±0.2mg/(L・A)及び2.7±0.1mg/(L・A)の勾配であった(
図6b)。同様に、電流効率vs.電流のプロット(
図6c)は、長期試験の結果として、大幅には変化せず、長期試験の前後で、それぞれ、39%及び34%の最大効率であった(
図5c)。このデータは、BDD電極をオゾン生成に利用した場合に、長期製品寿命の可能性を示す。
【0029】
HPHT電極:
8mmHPHT電極を同一形状の8mmCVD電極と比較することにより、オゾン生成のためのHPHT BDDコンパクトの有効性も調査した。HPHT電極(
図7aに示す)を500μm厚さで、対応するCVD電極は420μm厚さであり、それぞれ、82及び79%のDSC比率であった。
両セルの場合、流速は、CVD及びHPHTセルに対し、それぞれ、335±4及び302±6mL/分であった。生成オゾンの量は、印加電流の増大と共に、直線的に増大することを認めることができ、勾配は、
図7bに示すように、CVD及びHPHTセルで、それぞれ、3.13±0.06mg/(L・A)及び2.23±0.07mg/(L・A)であった(
図7b)。CVDセルの場合、1.17±0.07mg/Lのわずかに小さい最大溶解オゾンが0.6Aの最大印加電流で生成されたHPHTセルと比較して、0.6Aの最大印加電流で1.64±0.03mg/Lの最大溶解オゾンが生成された。小さい差異は、より高い抵抗率のHPHT電極(650mΩ・cm)に比べて、CVD電極のより低い抵抗率(60mΩ・cm)に起因する可能性が最も高い。CVD材料中では、粒子が合成中に相互に交わって生長し、粒子間で良好な電気的結合性を生じる。対照的に、粒子の圧縮中は、強制的に一緒にされる。追加の補償されない抵抗はまた、圧縮HPHT材料のサブミクロンサイズの気孔中への溶液の侵入の結果として導入される。
図7cは、HPHTとCVDセルの間の電流効率を比較している。両セルの場合、電流効率は、0.1から0.3Aまで、印加電流と共に直線的に増大し、0.3Aの時点で、勾配が減少し、電流効率がプラトーになり始める。0.4~0.6Aの間では、さらなる印加電流と共に、電流効率の増大速度は大きく減少し、CVD及びHPHTセルで、それぞれ、37%及び23%の最大効率に到達する。
その後、両セルを、CVD及びHPHTセルに対し、それぞれ194±1及び193±1mL/分の流速を用いて、0.15Aで20時間稼働することにより長期安定性試験に供し、258nmのUV吸光度を連続的にモニタリングした(
図8a及び8b)。長期安定性試験後、較正プロットを再度記録し(
図8c)、
図6bと比較した。CVDセルの場合、0.6Aの印加電流で、生成最大溶解オゾン1.64±0.03mg/Lと比較して、生成最大溶解オゾン1.84±0.07mg/Lでわずかな増大が観察された。HPHTセルの場合、0.6Aでの1.19±0.09mg/Lの最大オゾン出力は、エラー範囲内で同じままで残った。両方のセルの場合、フィッティングした較正データの勾配は、20時間の実行時間により大きくは影響を受けず、即ち、HPHTの場合、2.23±0.07mg/(L・A)(20時間試験前)vs.2.30±0.08mg/(L・A)(20時間試験後)及びCVDの場合、3.13±0.06mg/(L・A)(20時間試験前)vs.3.09±0.08mg/(L・A)(20時間試験後)である。長期安定性試験後の記録したCVD及びHPHT両方の較正プロットは、優れた直線性を有し、R
2(調節済み)は、それぞれ、0.9882及び0.9817であった。これは、CVD又はHPHT BDD電極をオゾン生成に利用した場合に、性能の低下のない長期製品寿命の可能性を示す。
【0030】
次に
図9を参照すると、EOP用のBDDダイヤモンド電極を形成するための例示的ステップを示すフローダイヤグラムが示される。次のナンバリングは、
図9のものに対応する:
S1.ホウ素ドープダイヤモンドが用意される。上述のように、これは、CVDダイヤモンド、HPHTダイヤモンド、又はHPHTダイヤモンドのコンパクトの形態であってよい。
S2.表面改質工程がBDDに適用され、総溶液アクセス可能電極領域が形成されることにより、総溶液アクセス可能電極領域は、少なくとも60%のダイヤモンド安定化非ダイヤモンド炭素を含む。上述のように、表面改質工程は通常、sp
2結合炭素を形成及びそれに続くDSCを形成するためのアブレーション処理を含む。
レーザーアブレーションが表面改質工程の一部として使用される場合、BDDのための典型的なレーザーパラメーターは次の範囲にある:0.1~100,000mm/sの通過速度で10J/cm
2を越えるフルエンスのレーザーを用いて、波長355~1064nm、50Hz~25MHzの範囲のパルス周波数でパルス長さ10~500ns。
EDMアブレーションが使用される場合、BDD被加工物は、誘電性溶液、通常、脱イオン水中に置かれる。電位はBDDと正極電極の間に印加され、正極電極は、通常、ワイヤー正極、通常真鍮の0.1~1mmの直径で、1~15m/分の送り速度であり、0.05~0.3mmの典型的電極ギャップ及び5~60Vの印加電圧及び0.1~5Aの電流、並びに、10~300μsのパルス時間が用いられる。典型的材料切断速度は、BDD材料の抵抗率及び厚さに依存して変化するが、典型的には、0.1~10mm/分の範囲である。
アブレーション加工は、自立型BDDはポストパターン化及び化学処理でき、60%を越えるDSC表面被覆率を費用対効果が大きい方式で容易に達成できるという利点を有する。Einagaらにより教示されるように、このような高い被覆率をCVD経由で導入しようとする試みは、EOPのために得られる材料の構造健全性及び堅牢さを大きく損なう。CVD成長を介して導入されたsp
2結合炭素はDSCである可能性は全くありそうになく;長期EOP試験は、Einagaらの研究で報告されていない。これは、成長条件に起因して、多くの場合、粒界に存在する、より高いsp
2結合炭素含量を含む、超ナノ結晶ダイヤモンドがEOP用途に適すると証明されたことがない理由でもある。
アブレーション領域は、0.05~5μm深さの、電極の面中に切り取られた、浅いくぼみ、パターン、又は他の非平坦表面形状であり得る。例えば、アブレーション領域は、電極を貫通したスロットの形態の垂直壁又は電極中のトレンチであってよい。
表面改質工程は、アブレーション領域への化学処理工程の適用、例えば、酸化環境の適用を含み得る。このような酸化環境の例は、電極を煮沸硫酸及び硝酸カリウムの溶液中で少なくとも10分間浸漬することである。
追加の適切な表面改質工程は、電気化学的負極過程、酸素プラズマ処理、及び化学的/電気化学的還元工程を溶液アクセス可能電極領域に適用することを含む。適切な場合には、電極が使用される予定の電気化学セル中で、その場で実施してよい。
次に、
図10を参照すると、BDDダイヤモンド電気化学セルを形成するための例示的ステップを示すフローダイヤグラムが示される。次のナンバリングは、
図10のものに対応する:
S3.少なくとも60%の、上記ダイヤモンド安定化非ダイヤモンド炭素を含む総溶液アクセス可能電極領域を有するBDDからなる第1の電極が用意される。ナフィオン(商標)などの固体電解質は、第1及び第2の電極間に配置され得る。固体電解質は、それを電極間に配置する前に、又は電気化学セル中で、その場で、水和及びプロトン化され得る。
S4.第2の電極が用意される。これは通常、少なくとも60%のダイヤモンド安定化非ダイヤモンド炭素を含む総溶液アクセス可能電極領域を有するBDDを同様に含むが、これは必須ではない。
S5.流体を流すように構成された流路が設けられる。
S6.流体が流路を通過する場合に、電極間に電流が流れるように、電極間に電位を印加するように構成される駆動回路が設けられる。第1及び第2の電極は、使用時に、唯一の電気化学的に活性な電極材料がホウ素ドープダイヤモンド電極となるように、ドライ電気接点を介して駆動回路に接続されることに留意されたい。
S7.密閉囲い室が設けられ、その中に電極が配置される。密閉囲い室は、使用時に、流路に流体を含むように構成される。
次に、
図11を参照すると、BDDダイヤモンド電気化学セルを使用するための例示的ステップを示すフローダイヤグラムが示される。
S8.電気化学セルは上述のように設けられる。
S9.流体に流路を通過させる。
S10.電極間に電流が流れるように、電極間に電位が印加される。通常は、これにより、流体からオゾンを生成させる。
【0031】
本発明を好ましい実施形態を参照して詳細に示し説明してきたが、当業者であれば、添付された特許請求の範囲に定められる本発明の範囲を逸脱することなく、形式及び細部の種々の変更を行い得ることを理解するであろう。例えば、上記実施例は、ナフィオン(商標)膜の両側に高%のDSC-BDD電極を使用したが、片方の電極のみを高%のDSC-BDD電極にすべきであることは理解されよう。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素ドープダイヤモンドから形成された電極であって、少なくとも60%のダイヤモンド安定化非ダイヤモンド
sp
2
炭素を含む総溶液アクセス可能電極領域を有する、電極。
【請求項2】
前記総溶液アクセス可能電極領域は、少なくとも70%、80%、90%、及び95%のダイヤモンド安定化非ダイヤモンド
sp
2
炭素のいずれかを含む、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記ダイヤモンド安定化非ダイヤモンド
sp
2
炭素は、非晶質炭素層を有する前記ダイヤモンド表面に結合した配向性黒鉛を含み、前記黒鉛は、前記ダイヤモンド表面に結合している位置で、前記総溶液アクセス可能電極領域の面に対し、20°を越える角度で配向している、請求項1又は2に記載の電極。
【請求項4】
前記ホウ素ドープダイヤモンドは、伝導性又は非導電性支持体上のコーティング層の形態である、請求項1
又は2に記載の電極。
【請求項5】
前記溶液アクセス可能電極領域は、スロット、くぼみ及び非平坦表面形状のいずれかを更に含む、請求項1
又は2に記載の電極。
【請求項6】
第1の電極であって、請求項1
に記載の電極である第1の電極;
第2の対向する電極;
流体を流すように構成された流路;
前記流体が前記流路を通過する場合に、前記電極間に電流が流れるように、前記電極間に電位を印加するように構成された駆動回路;及び
前記電極が配置される密閉囲い室であって、前記流路内に前記流体を含むように構成された前記囲い室、を含む電気化学セル。
【請求項7】
前記電気化学セルは、使用時に、オゾンを生成するように構成される、請求項
6に記載の電気化学セル。
【請求項8】
使用中、及び5~10Vの範囲の電圧及び0.01~最大0.05A/cm
2の範囲の電流密度にわたり、25℃の公称温度及び240ml
-1の流速で脱イオン化水(15MΩ・cm超)を用いて、ピークオゾン電流効率は、25%より大きい、
少なくとも30%、及び少なくとも35%のいずれかより選択される、請求項
6又は
7に記載の電気化学セル。
【請求項9】
電極を形成する方法であって、
ホウ素ドープダイヤモンドを用意すること、
表面改質工程を適用し、少なくとも60%のダイヤモンド安定化非ダイヤモンド
sp
2
炭素を含む総溶液アクセス可能電極領域を形成すること、
を含む、方法。
【請求項10】
前記表面改質工程は、アブレーション加工工程を含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記アブレーション加工工程は、前記溶液アクセス可能電極領域で、スロット、くぼみ及び非平坦表面形状のいずれかを形成するために更に使用される、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記総溶液アクセス可能電極領域に対して、酸化工程ステップを適用することを更に含み、前記酸化工程は、酸化環境を前記溶液アクセス可能電極領域に適用することを含む、請求項
10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記酸化工程は、
硫酸及び硝酸カリウム;
硫酸及び過酸化水素;
硝酸及び塩酸;
フッ化水素酸;
次亜塩素酸;
硝酸、過塩素酸及び硫酸;並びに
過マンガン酸カリウム、過マンガン酸アンモニウム、過マンガン酸カルシウム、過マンガン酸ナトリウム、及び過マンガン酸銀のいずれかから選択される過マンガン酸塩、
のいずれかを含む液体中で少なくとも10分間処理すること、を含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記酸化工程は、電気化学的酸化を含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項15】
電気化学セルを使用する方法であって、
請求項
6に記載の電気化学セルを用意すること;
前記流路中に流体を流させること;及び
前記電極間に電流が流れるように、前記電極間に電位を印加すること、
を含む、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
本発明を好ましい実施形態を参照して詳細に示し説明してきたが、当業者であれば、添付された特許請求の範囲に定められる本発明の範囲を逸脱することなく、形式及び細部の種々の変更を行い得ることを理解するであろう。例えば、上記実施例は、ナフィオン(商標)膜の両側に高%のDSC-BDD電極を使用したが、片方の電極のみを高%のDSC-BDD電極にすべきであることは理解されよう。
本発明のまた別の態様は、以下の通りであってもよい。
〔1〕ホウ素ドープダイヤモンドから形成された電極であって、少なくとも60%のダイヤモンド安定化非ダイヤモンド炭素を含む総溶液アクセス可能電極領域を有する、電極。
〔2〕前記総溶液アクセス可能電極領域は、少なくとも70%、80%、90%、及び95%のダイヤモンド安定化非ダイヤモンド炭素のいずれかを含む、前記〔1〕に記載の電極。
〔3〕前記ダイヤモンド安定化非ダイヤモンド炭素は、非晶質炭素層を有する前記ダイヤモンド表面に結合した配向性黒鉛を含み、前記黒鉛は、前記ダイヤモンド表面に結合している位置で、前記総溶液アクセス可能電極領域の面に対し、20°を越える角度で配向している、前記〔1〕又は〔2〕に記載の電極。
〔4〕非晶質炭素の前記層は、10nm未満の厚さを有する、前記〔3〕に記載の電極。
〔5〕前記ホウ素ドープダイヤモンドは、CVDダイヤモンド、HPHTダイヤモンド及び圧縮HPHTダイヤモンドのいずれかから選択される、前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の電極。
〔6〕前記ホウ素ドープダイヤモンドは、伝導性又は非導電性支持体上のコーティング層の形態である、前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の電極。
〔7〕前記ダイヤモンド安定化非ダイヤモンド炭素は、アブレーション加工技術及びそれに続く前記溶液アクセス可能電極領域への酸化処理の適用により前記溶液アクセス可能電極領域に形成される、前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の電極。
〔8〕前記酸化処理は、
硫酸及び硝酸カリウム;
硫酸及び過酸化水素;
硝酸及び塩酸;
フッ化水素酸;
次亜塩素酸;
硝酸、過塩素酸及び硫酸;並びに
過マンガン酸カリウム、過マンガン酸アンモニウム、過マンガン酸カルシウム、過マンガン酸ナトリウム、及び過マンガン酸銀のいずれかから選択される過マンガン酸塩、
のいずれかを含む液体中で少なくとも10分間処理すること、を含む、前記〔7〕に記載の電極。
〔9〕前記酸化処理は、電気化学的酸化を含む、前記〔7〕に記載の電極。
〔10〕前記溶液アクセス可能電極領域は、スロット、くぼみ及び非平坦表面形状のいずれかを更に含む、前記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の電極。
〔11〕前記溶液アクセス可能電極領域から離れている前記バルクホウ素ドープダイヤモンドは、前記溶液アクセス可能表面より顕著に少ないsp
2
結合炭素を含む、前記〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の電極。
〔12〕第1の電極であって、前記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の電極である第1の電極;
第2の対向する電極;
流体を流すように構成された流路;
前記流体が前記流路を通過する場合に、前記電極間に電流が流れるように、前記電極間に電位を印加するように構成された駆動回路;及び
前記電極が配置される密閉囲い室であって、前記流路内に前記流体を含むように構成された前記囲い室、を含む電気化学セル。
〔13〕前記電気化学セルは、使用時に、オゾンを生成するように構成される、前記〔12〕に記載の電気化学セル。
〔14〕使用中、及び5~10Vの範囲の電圧及び0.01~最大0.05A/cm
2
の範囲の電流密度にわたり、25℃の公称温度及び240ml
-1
の流速で脱イオン化水(15MΩ・cm超)を用いて、ピークオゾン電流効率は、25%より大きい、前記〔12〕又は〔13〕に記載の電気化学セル。
〔15〕前記ピークオゾン電流効率は、少なくとも30%及び少なくとも35%のいずれかから選択される、前記〔14〕に記載の電気化学セル。
〔16〕使用中、オゾン出力勾配は、少なくとも5時間の連続運転の時間の間に、10%より大きくは減少しない、前記〔12〕~〔15〕のいずれかに記載の電気化学セル。
〔17〕前記5時間の期間は、少なくとも20時間の初期使用期間後に測定される、前記〔16〕に記載の電気化学セル。
〔18〕使用中、オゾン生産性勾配は、240ml/分の流速の15MΩ・cmを越える抵抗率を有する水中で動作する5~15Vの印加電圧下、0.01~0.05A/cm
2
の電流密度範囲にわたり、R
2
>0.95で表記される決定係数を有する最小2乗線形回帰フィッティングによるものである、前記〔12〕~〔17〕のいずれかに記載の電気化学セル。
〔19〕電極を形成する方法であって、
ホウ素ドープダイヤモンドを用意すること、
表面改質工程を適用し、少なくとも60%のダイヤモンド安定化非ダイヤモンド炭素を含む総溶液アクセス可能電極領域を形成すること、
を含む、方法。
〔20〕前記表面改質工程は、アブレーション加工工程を含む、前記〔19〕に記載の方法。
〔21〕前記アブレーション加工工程は、レーザーアブレーションを含む、前記〔20〕に記載の方法。
〔22〕前記レーザーアブレーションは、355~1064nmの波長、10~500nsのパルス長さ、50Hz~25MHzの範囲のパルス周波数、及び0.1~100,000mm/sの通過速度で10J/cm
2
を越えるフルエンスのレーザーを用いて実施される、前記〔21〕に記載の方法。
〔23〕前記アブレーション加工工程は、放電加工を含む、前記〔20〕に記載の方法。
〔24〕前記放電加工は、0.05~3.00mmの電極ギャップ、5~60Vの印加電圧、及び0.1~5.0Aの電流で、10~300μsのパルス時間を用いて実施される、前記〔23〕に記載の方法。
〔25〕前記アブレーション加工工程は、前記溶液アクセス可能電極領域で、スロット、くぼみ及び非平坦表面形状のいずれかを形成するために更に使用される、前記〔20〕~〔24〕のいずれかに記載の方法。
〔26〕前記総溶液アクセス可能電極領域に対して、酸化工程ステップを適用することを更に含み、前記酸化工程は、酸化環境を前記溶液アクセス可能電極領域に適用することを含む、前記〔19〕~〔24〕のいずれかに記載の方法。
〔27〕前記酸化工程は、
硫酸及び硝酸カリウム;
硫酸及び過酸化水素;
硝酸及び塩酸;
フッ化水素酸;
次亜塩素酸;
硝酸、過塩素酸及び硫酸;並びに
過マンガン酸カリウム、過マンガン酸アンモニウム、過マンガン酸カルシウム、過マンガン酸ナトリウム、及び過マンガン酸銀のいずれかから選択される過マンガン酸塩、
のいずれかを含む液体中で少なくとも10分間処理すること、を含む、前記〔26〕に記載の方法。
〔28〕前記酸化工程は、電気化学的酸化を含む、前記〔26〕に記載の方法。
〔29〕電気化学的負極過程、酸素プラズマ処理、及び化学的/電気化学的還元工程のいずれかを前記溶液アクセス可能電極領域に適用することを更に含む、前記〔19〕~〔27〕のいずれかに記載の方法。
〔30〕前記〔12〕~〔18〕のいずれかに記載の電気化学セルを形成する方法であって、
前記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の第1の電極を用意すること;
第2の対向する電極を用意すること;
流体を流すように構成された流路を設けること;
前記流体が前記流路を通過する場合に、前記電極間に電流が流れるように、前記電極間に電位を印加するように構成された駆動回路を設けること;及び
前記電極が内部に配置され、前記流路内に前記流体を含むように構成された密閉囲い室を設けること、
を含む方法。
〔31〕前記第1及び前記第2の電極間に配置された固体電解質を更に含む、前記〔30〕に記載の方法。
〔32〕使用前に、前記固体電解質を水和及びプロトン化することにより前記固体電解質を処理することを更に含む、前記〔30〕に記載の方法。
〔33〕前記固体電解質は、ナフィオン(商標)を含む、前記〔31〕又は〔32〕に記載の方法。
〔34〕電気化学セルを使用する方法であって、
前記〔12〕~〔18〕のいずれかに記載の電気化学セルを用意すること;
前記流路中に流体を流させること;及び
前記電極間に電流が流れるように、前記電極間に電位を印加すること、
を含む、方法。
〔35〕唯一の電気化学的に活性な電極材料が前記ホウ素ドープダイヤモンド電極となるように、ドライ電気接点を介して前記電極間に前記電位を印加することを更に含む、前記〔34〕に記載の方法。
【国際調査報告】