(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】フロー電池における充電状態、モル濃度および酸化状態の決定ならびにフロー電池の制御
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20240822BHJP
H01M 8/2455 20160101ALI20240822BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20240822BHJP
H01M 8/04992 20160101ALI20240822BHJP
H01M 8/04791 20160101ALI20240822BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240822BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/2455
H01M8/04537
H01M8/04992
H01M8/04791
H01M8/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513223
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 US2022040449
(87)【国際公開番号】W WO2023034018
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521117481
【氏名又は名称】ラーゴ クリーン エナジー コープ
【住所又は居所原語表記】500 Research Drive,Wilmington,Massachusetts 01887, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】エリック アレキサンドレスク
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エル. ペリー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ティー. ファルチネッリ
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126AA24
5H126BB10
5H127AA10
5H127BA01
5H127BA57
5H127BB03
5H127BB13
5H127BB37
5H127DB04
5H127DB14
5H127DB53
(57)【要約】
バナジウムレドックスフロー電池(VRFB)などのフロー電池における、充電状態(SOC)、活性種のモル濃度および濃度、並びに、酸化状態を測定するためのシステムおよび方法。基準電解質は、(各導管内の)荷電電解質の一方または両方と共に基準セルを通って循環される。基準電解質に対する帯電電解質の電位が測定される。この測定は、SOCに直接変換可能である。フロー電池の陽極液側および陰極液側の両方におけるバナジウムイオンのモル濃度、濃度および酸化状態の計算を可能にする方程式も示されている。フロー電池は、そのような決定に応じて、例えば酸化状態を管理したり、電池を充電または放電するように制御され得る。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロー電池であって、
陽極液電解質および陰極液電解質と流体連通する少なくとも1つの電気化学電池セルと、
前記陽極液電解質および前記陰極液電解質のうちの少なくとも1つと流体連通しつつ、既知の電位を有する基準電解質と流体連通する基準セルであって、i)前記陽極液電解質と前記基準電解質との間であって前記基準セルの両端間の陽極液電位差と、ii)前記陰極液電解質と前記基準電解質との間であって前記基準セルの両端間の陰極液電位差と、のうちの少なくとも1つを測定するための前記基準セルと、
回路を有するコンピューティングデバイスと、を備え、
前記回路は、前記陽極液電位差および前記陰極液電位差のうちの少なくとも1つを処理することで、前記フロー電池の動作を制御するための、前記陽極液電解質および前記陰極液電解質の各充電状態(SOC)を決定し、前記コンピューティングデバイスが、前記陽極液電解質と前記陰極液電解質との間の電位差の測定なしに前記各SOCを決定するように構成される、フロー電池。
【請求項2】
前記コンピューティングデバイスは、以下のネルンストの式に従って前記各SOCを決定するように構成される、請求項1に記載のフロー電池。
【数1】
但し、E=還元電位、E
0=標準電位、R=気体定数、T=温度、z=イオンの電荷、F=ファラデー定数、Q=反応商、RT/zF=C
【請求項3】
前記コンピューティングデバイスは、
i)陽極液電位差を陽極液SOCに関連付ける陽極液ルックアップテーブルを記憶し、そのルックアップテーブルを利用して前記各SOCを決定することと、
ii)陰極液電位差を陰極液SOCに関連付ける陰極液ルックアップテーブルを記憶し、そのルックアップテーブルを利用して前記各SOCを決定することと、のうちの少なくとも1を行うように構成される、請求項2に記載のフロー電池。
【請求項4】
前記陽極液電位差および前記陰極液電位差のうちの少なくとも1つを処理することで前記各充電状態(SOC)を決定することが、第1SOC決定オプションと定義され、前記コンピューティングデバイスが、第2SOC決定オプションで前記各SOCを決定するようにさらに構成され、
好ましくは、前記第2SOC決定オプションにおいて、前記コンピューティングデバイスは、
a.電解質色を測定する光信号に応じて前記各SOCを決定することと、
b.前記陽極液と前記陰極液との間の電位差の処理に応じて前記各SOCを決定することと、のうちの一方を実行するように構成される、請求項1に記載のフロー電池。
【請求項5】
前記コンピューティングデバイスは、前記第1SOC決定オプションに従って前記各SOCを決定し、その各SOCが高い値または低い値の限界値に含まれる場合、前記フロー電池の動作を制御するために用いられる前記各SOCを、前記第2SOC決定オプションに従って決定するように構成される、請求項4に記載のフロー電池。
【請求項6】
前記基準セルは、電解質を別々に受け入れるための各本体を備える、請求項1に記載のフロー電池。
【請求項7】
前記基準セルは、前記陽極液および前記陰極液のうちの一方を受け入れるように構成された第1基準セルを備え、前記フロー電池は、前記第1基準セルとは別個の第2基準セルを備え、前記第2基準セルは、前記陽極液および前記陰極液のうちの他方を受け入れるように構成され、
好ましくは、
前記第1基準セルは、前記陽極液電解質を個別に受け入れるための第1陽極液セル本体と、前記基準電解質を個別に受け入れるための第1基準電解質セル本体と、を備え、第1膜が前記第1陽極液セル本体と前記第1基準電解質セル本体とを分離し、
前記第2基準セルは、前記陰極液電解質を個別に受け入れるための第1陰極液セル本体と、前記基準電解質を個別に受け入れるための第2基準電解質セル本体と、を備え、第2膜が前記第1陰極液セル本体と前記第2基準電解質セル本体とを分離し、
前記コンピューティングデバイスは、前記第1基準セルおよび前記第2基準セルのそれぞれから電位差の測定値を受け取る、請求項1に記載のフロー電池。
【請求項8】
前記少なくとも1つの電池セル及び前記第1基準セルに前記陽極液電解質を循環させるための陽極液電解質ループと、
前記少なくとも1つの電池セル及び前記第2基準セルに前記陰極液電解質を循環させるための陰極液電解質ループと、
前記第1基準セルおよび前記第2基準セルのそれぞれに前記基準電解質を循環させるための基準電解質ループと、を備える、請求項7に記載のフロー電池。
【請求項9】
前記基準セルは、前記陽極液電解質および前記陰極液電解質のそれぞれと流体連通するように構成され、
前記基準セルは、前記陽極液電解質を個別に受け入れる第1セル本体と、前記陰極液電解質を個別に受け入れる第2セル本体と、前記基準電解質を個別に受け入れる少なくとも1つの追加セル本体と、を備え、
第1膜は、前記第1セル本体と前記少なくとも1つの追加セル本体とを分離し、
第2膜は、前記第2セル本体と前記少なくとも1つの追加セル本体とを分離する、請求項6に記載のフロー電池。
【請求項10】
前記少なくとも1つの追加セル本体は、前記基準電解質を受容する第1追加セル本体および第2追加セル本体を備え、前記第1追加セル本体および前記第2追加セル本体は、それらの間に膜を備える、請求項9に記載のフロー電池。
【請求項11】
前記少なくとも1つの電池セル及び前記第1セル本体に前記陽極液電解質を循環させるための陽極液電解質ループと、
前記少なくとも1つの電池セル及び前記第2セル本体に前記陰極液電解質を循環させるための陰極液電解質ループと、
前記少なくとも1つの追加セル本体に前記基準電解質を循環させるための基準電解質ループと、を備える、請求項9に記載のフロー電池。
【請求項12】
前記コンピューティングデバイスは、SOCから電解質原子のモル濃度および濃度を決定するようにさらに構成され、
好ましくは、前記陽極液および前記陰極液のモル濃度が以下によって決定される、請求項1に記載のフロー電池。
【数2】
【数3】
但し、V=体積、M=モル濃度、I=電流、SOC=充電状態、N
A=アボガドロ定数、C=クーロン=6.24×10
18電子数、F=ファラデー定数=N
A/C=96485.33C/mol
【請求項13】
バナジウムレドックスフロー電池(VRFB)からなる、請求項1に記載のフロー電池。
【請求項14】
前記陽極液電解質および前記陰極液電解質は、バナジウム、臭素、鉄、クロム、亜鉛、セリウム、鉛、硫黄、コバルト、スズ及びマンガン、又は、それらの任意の適切な組合せから選択される電解質溶液のペアからなる、請求項1に記載のフロー電池。
【請求項15】
前記フロー電池を充電するための外部電力の印加を制御することと、
前記電池を放電させるために前記電池からの電力の印加を制御することと、
前記陽極液および前記陰極液の各充電状態を互いに一致させることと、
前記フロー電池の前記陽極液および前記陰極液の各充電状態を、ストリングにおいて結合された、又は、同じ場所に共に配置されたもう1つのフロー電池の各充電状態に一致させることと、のうちの少なくとも1つによって前記フロー電池の動作を制御するために前記コンピューティングデバイスが構成される請求項1に記載のフロー電池。
【請求項16】
前記コンピューティングデバイスは、
i)前記陽極液および前記陰極液のモル濃度に従って前記フロー電池の酸化状態を決定することと、
ii)前記陽極液および前記陰極液のモル濃度に従って前記フロー電池の酸化状態を決定しつつ、前記酸化状態を管理するために前記フロー電池を制御することと、のうちの少なくとも1を行うように構成される、請求項1に記載のフロー電池。
【請求項17】
フロー電池を制御する方法であって、
少なくとも1つの電気化学電池セルを通る陽極液電解質および陰極液電解質を循環させることと、
前記陽極液電解質および前記陰極液電解質のうちの少なくとも1つと流体連通する基準セルを通る、既知の電位を有する基準電解質を循環させることと、
i)前記陽極液電解質と前記基準電解質との間であって前記基準セルの両端間の陽極液電位差と、ii)前記陰極液電解質と前記基準電解質との間であって前記基準セルの両端間の陰極液電位差と、のうちの少なくとも1つを測定することと、
前記陽極液電位差および前記陰極液電位差のうちの少なくとも1つを処理することで、前記フロー電池の動作を制御するための、前記陽極液電解質および前記陰極液電解質の各充電状態(SOC)を決定することと、を含み、
前記陽極液電解質と前記陰極液電解質との間の電位差の測定なしに前記各SOCを決定する、方法。
【請求項18】
前記各SOCを決定することは、以下のネルンストの式に従って前記各SOCを決定することを含む、請求項17に記載の方法。
【数4】
但し、E=還元電位、E
0=標準電位、R=気体定数、T=温度、z=イオンの電荷、F=ファラデー定数、Q=反応商、RT/zF=C
【請求項19】
i)陽極液電位差を陽極液SOCに関連付ける陽極液ルックアップテーブルを記憶し、そのルックアップテーブルを利用して前記各SOCを決定することと、
ii)陰極液電位差を陰極液SOCに関連付ける陰極液ルックアップテーブルを記憶し、そのルックアップテーブルを利用して前記各SOCを決定することと、のうちの少なくとも1つを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記陽極液電位差および前記陰極液電位差のうちの少なくとも1つを処理することで前記各充電状態(SOC)を決定することが、第1SOC決定オプションと定義され、前記方法は、第2SOC決定オプションに従って前記各SOCを決定することをさらに含み、
好ましくは、前記第2SOC決定オプションによれば、前記方法は、
a.電解質色を測定する光信号に応じて前記各SOCを決定することと、
b.前記陽極液と前記陰極液との間の電位差の処理に応じて前記各SOCを決定することと、のうちの一方を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記方法は、前記第1SOC決定オプションに従って前記各SOCを決定し、その各SOCが高い値または低い値の限界値に含まれる場合、前記フロー電池の動作を制御するために用いられる前記各SOCを、前記第2SOC決定オプションに従って決定する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、前記各SOCから電解質原子のモル濃度の少なくとも1つを決定することをさらに含み、
好ましくは、前記陽極液および前記陰極液のモル濃度が以下によって決定される、請求項17に記載の方法。
【数5】
【数6】
但し、V=体積、M=モル濃度、I=電流、SOC=充電状態、N
A=アボガドロ定数、C=クーロン=6.24×10
18電子数、F=ファラデー定数=N
A/C=96485.33C/mol
【請求項23】
前記方法は、
i)前記陽極液および前記陰極液のモル濃度に従って前記フロー電池の酸化状態を決定することと、
ii)前記陽極液および前記陰極液のモル濃度に従って前記フロー電池の酸化状態を決定しつつ、前記酸化状態を管理するために前記フロー電池を制御することと、のうちの少なくとも1を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記フロー電池がバナジウムレドックスフロー電池(VRFB)からなる、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記陽極液電解質および前記陰極液電解質は、バナジウム、臭素、鉄、クロム、亜鉛、セリウム、鉛、硫黄、コバルト、スズ及びマンガン、又は、それらの任意の適切な組合せから選択される電解質溶液のペアからなる、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記フロー電池を充電するための外部電力の印加を制御することと、
前記電池を放電させるために前記電池からの電力の印加を制御することと、
前記陽極液および前記陰極液の各充電状態を互いに一致させることと、
前記フロー電池の前記陽極液および前記陰極液の各充電状態を、ストリングにおいて結合された、又は、同じ場所に共に配置されたもう1つのフロー電池の各充電状態に一致させることと、のうちの少なくとも1つによって前記フロー電池の動作を制御することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
コンピュータプログラム製品であって、プロセッサによって実行されたときに請求項17に記載の方法に従う方法を前記プロセッサに実行させるコンピュータ可読命令を記憶する非一時的記憶媒体を備える、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年9月3日に出願されて本明細書と同一の名称を有する米国仮出願第63/240,430号に対する優先権の利益を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
本出願は、バナジウムレドックスフロー電池(VRFB)システム等のフロー電池システムに関し、より詳細には、フロー電池における充電状態、モル濃度および酸化状態を決定し、フロー電池を制御することに関する。
【背景技術】
【0002】
レドックスフロー電池またはレドックスフローセルとしても知られるフロー電池は、大規模なエネルギー貯蔵に有用である。フロー電池は、電気エネルギーを化学エネルギーに変換して貯蔵し、その後、需要があるときに電気エネルギーとして放出する。フロー電池は、可逆的な電気化学反応に関与する反応物質を含む、外部から供給される流体電解質溶液を使用する。充電時に、供給される電気エネルギーは、一方の電解質中で化学還元反応を引き起こし、他方の電解質中で酸化反応を引き起こす。放電時には、液体電解質に含まれる化学エネルギーが逆反応で放出され、電極から電気エネルギーを取り出すことができる。フロー電池は、グリッド接続されたエネルギー貯蔵システム及び/又はオフグリッドエネルギー貯蔵システムにおいて使用することができる。
【0003】
フロー電池の充電状態(SOC)を正確に測定することは、電池のエネルギー容量および寿命を最大化するのに有用である。フロー電池においては、電解質中の活物質の濃度を正確に測定する手段が望まれる。レドックスフロー電池(RFBs)におけるSOCおよび濃度を測定するために使用される少なくともいくつかの現在の方法は、確固としていない。例えば、光学センサは頻繁な保守および較正を必要とするので、光学測定は不正確となる可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本明細書の実施形態によれば、VRFB等のフロー電池の活性種のSOC、モル濃度、および酸化状態を、簡単かつ確固とした方法で決定するためのシステムおよび方法が提供される。本明細書の教示および技術によれば、(例えば電位差を決定するために)、基準電解質に対する荷電電解質の電位が測定される。この測定は、SOCに直接変換可能である。上記システムの陽極液側および陰極液側の両方におけるバナジウムイオンのモル濃度と、そこからの酸化状態の計算とを可能にする方程式が教示されている。フロー電池は、そのような決定に応じて制御され得る。
【0005】
利点は、負に帯電した電解質(陽極液)及び正に帯電した電解質(陰極液)のモル濃度および充電状態を、独立して測定する能力を含むことができる。さらに、頻繁な較正および保守を必要とする比較的高価な光学センサの使用を伴う、SOCを測定する現在の方法よりも、著しいコスト上の利点が達成され得る。
【0006】
陽極液電解質および陰極液電解質と流体連通する少なくとも1つの電気化学電池セルと、前記陽極液電解質および前記陰極液電解質のうちの少なくとも1つと流体連通しつつ、既知の電位を有する基準電解質と流体連通する基準セルであって、i)前記陽極液電解質と前記基準電解質との間であって前記基準セルの両端間の陽極液電位差と、ii)前記陰極液電解質と前記基準電解質との間であって前記基準セルの両端間の陰極液電位差と、のうちの少なくとも1つを測定するための前記基準セルと、回路を有するコンピューティングデバイスと、を備えるフロー電池であって、前記回路は、前記陽極液電位差および前記陰極液電位差のうちの少なくとも1つを処理することで、前記フロー電池の動作を制御するための、前記陽極液電解質および前記陰極液電解質の各充電状態(SOC)を決定し、前記コンピューティングデバイスが、前記陽極液電解質と前記陰極液電解質との間の電位差の測定なしに前記各SOCを決定するように構成される、フロー電池が提供される。
【0007】
一実施形態では、前記コンピューティングデバイスは、以下のネルンストの式に従って前記各SOCを決定するように構成される。
【数1】
但し、E=還元電位(reduction potential)、E
0=標準電位(standard potential)、R=気体定数、T=温度、z=イオンの電荷(ion charge)、F=ファラデー定数、Q=反応商(reaction quotient)、RT/zF=C
【0008】
一実施形態では、前記コンピューティングデバイスは、i)陽極液電位差を陽極液SOCに関連付ける陽極液ルックアップテーブルを記憶し、そのルックアップテーブルを利用して前記各SOCを決定することと、ii)陰極液電位差を陰極液SOCに関連付ける陰極液ルックアップテーブルを記憶し、そのルックアップテーブルを利用して前記各SOCを決定することと、のうちの少なくとも1を行うように構成される。
【0009】
一実施形態では、前記陽極液電位差および前記陰極液電位差のうちの少なくとも1つを処理することで前記各充電状態(SOC)を決定することが、第1SOC決定オプションと定義され、前記コンピューティングデバイスが、第2SOC決定オプションで前記各SOCを決定するようにさらに構成される。一実施形態では、前記第2SOC決定オプションにおいて、前記コンピューティングデバイスは、電解質色を測定する光信号に応じて前記各SOCを決定することと、前記陽極液と前記陰極液との間の電位差の処理に応じて前記各SOCを決定することと、のうちの一方を実行するように構成される。一実施形態では、前記コンピューティングデバイスは、前記第1SOC決定オプションに従って前記各SOCを決定し、その各SOCが高い値または低い値の限界値に含まれる場合、前記フロー電池の動作を制御するために用いられる前記各SOCを、前記第2SOC決定オプションに従って決定するように構成される。
【0010】
一実施形態では、前記基準セルは、電解質を別々に受け入れるための各本体を備える。
【0011】
一実施形態では、前記基準セルは、前記陽極液および前記陰極液のうちの一方を受け入れるように構成された第1基準セルを備え、前記フロー電池は、前記第1基準セルとは別個の第2基準セルを備え、前記第2基準セルは、前記陽極液および前記陰極液のうちの他方を受け入れるように構成される。一実施形態では、前記第1基準セルは、前記陽極液電解質を個別に受け入れるための第1陽極液セル本体と、前記基準電解質を個別に受け入れるための第1基準電解質セル本体と、を備え、第1膜が前記第1陽極液セル本体と前記第1基準電解質セル本体とを分離し、前記第2基準セルは、前記陰極液電解質を個別に受け入れるための第1陰極液セル本体と、前記基準電解質を個別に受け入れるための第2基準電解質セル本体と、を備え、第2膜が前記第1陰極液セル本体と前記第2基準電解質セル本体とを分離する。一実施形態では、前記コンピューティングデバイスは、前記第1基準セルおよび前記第2基準セルのそれぞれから電位差の測定値を受け取る。
【0012】
一実施形態では、フロー電池は、前記少なくとも1つの電池セル及び前記第1基準セルに前記陽極液電解質を循環させるための陽極液電解質ループと、前記少なくとも1つの電池セル及び前記第2基準セルに前記陰極液電解質を循環させるための陰極液電解質ループと、前記第1基準セルおよび前記第2基準セルのそれぞれに前記基準電解質を循環させるための基準電解質ループと、を備える。一実施形態では、前記基準セルは、前記陽極液電解質および前記陰極液電解質のそれぞれと流体連通するように構成され、前記基準セルは、前記陽極液電解質を個別に受け入れる第1セル本体と、前記陰極液電解質を個別に受け入れる第2セル本体と、前記基準電解質を個別に受け入れる少なくとも1つの追加セル本体と、を備え、第1膜は、前記第1セル本体と前記少なくとも1つの追加セル本体とを分離し、第2膜は、前記第2セル本体と前記少なくとも1つの追加セル本体とを分離する。一実施形態では、前記少なくとも1つの追加セル本体は、前記基準電解質を受容する第1追加セル本体および第2追加セル本体を備え、前記第1追加セル本体および第2追加は、それらの間に膜を備える。一実施形態では、フロー電池は、前記少なくとも1つの電池セル及び前記第1セル本体に前記陽極液電解質を循環させるための陽極液電解質ループと、前記少なくとも1つの電池セル及び前記第2セル本体に前記陰極液電解質を循環させるための陰極液電解質ループと、前記1つの追加セル本体に前記基準電解質を循環させるための基準電解質ループと、を備える。
【0013】
一実施形態では、前記コンピューティングデバイスは、SOCから電解質原子のモル濃度および濃度を決定するようにさらに構成される。
【0014】
一実施形態では、前記陽極液および前記陰極液の各モル濃度が以下によって決定される。
【数2】
【数3】
但し、V=体積、M=モル濃度、I=電流、SOC=充電状態、N
A=アボガドロ定数、C=クーロン(Coulomb)=6.24×10
18電子数(electrons)、F=ファラデー定数=N
A/C=96485.33C/mol
【0015】
一実施形態では、フロー電池がバナジウムレドックスフロー電池(VRFB)からなる。
【0016】
一実施形態では、前記陽極液電解質および前記陰極液電解質は、バナジウム、臭素、鉄、クロム、亜鉛、セリウム、鉛、硫黄、コバルト、スズ及びマンガン、又は、それらの任意の適切な組合せから選択される電解質溶液のペアからなる。
【0017】
一実施形態では、前記フロー電池を充電するための外部電力の印加の制御することと、前記電池を放電させるために前記電池からの電力の印加を制御することと、前記陽極液および前記陰極液の各充電状態を互いに一致させることと、前記フロー電池の前記陽極液および前記陰極液の各充電状態を、ストリングにおいて結合された、又は、同じ場所に共に配置されたもう1つのフロー電池の各充電状態に一致させることと、のうちの少なくとも1つによって前記フロー電池を制御するために前記コンピューティングデバイスが構成される。
【0018】
フロー電池を制御するための方法が提供される。一実施形態では、前記方法は、少なくとも1つの電気化学電池セルを通る陽極液電解質および陰極液電解質を循環させることと、前記陽極液電解質および前記陰極液電解質のうちの少なくとも1つと流体連通する基準セルだけれども、既知の電位を有する基準電解質を循環させることと、i)前記陽極液電解質と前記基準電解質との間であって前記基準セルの両端間の陽極液電位差と、ii)前記陰極液電解質と前記基準電解質との間であって前記基準セルの両端間の陰極液電位差と、のうちの少なくとも1つを測定することと、前記陽極液電位差および前記陰極液電位差のうちの少なくとも1つを処理することで、前記フロー電池の動作を制御するための、前記陽極液電解質および前記陰極液電解質の各充電状態(SOC)を決定することと、を含み、前記陽極液電解質と前記陰極液電解質との間の電位差の測定なしに前記各SOCを決定する。
【0019】
一実施形態では、前記各SOCを決定することは、以下のネルンストの式に従って前記各SOCを決定することを含む。
【数4】
但し、E=還元電位、E
0=標準電位、R=気体定数、T=温度、z=イオンの電荷、F=ファラデー定数、Q=反応商、RT/zF=C
【0020】
一実施形態では、前記方法は、i)陽極液電位差を陽極液SOCに関連付ける陽極液ルックアップテーブルを記憶し、そのルックアップテーブルを利用して前記各SOCを決定することと、ii)陰極液電位差を陰極液SOCに関連付ける陰極液ルックアップテーブルを記憶し、そのルックアップテーブルを利用して前記各SOCを決定することと、のうちの少なくとも1つを含む。
【0021】
一実施形態では、前記陽極液電位差および前記陰極液電位差のうちの少なくとも1つを処理することで前記各充電状態(SOC)を決定することが、第1SOC決定オプションと定義され、前記方法は、第2SOC決定オプションに従って前記各SOCを決定することをさらに含む。一実施形態では、前記第2SOC決定オプションによれば、前記方法は、電解質色を測定する光信号に応じて前記各SOCを決定することと、前記陽極液と前記陰極液との間の電位差の処理に応じて前記各SOCを決定することと、のうちの一方を含む。一実施形態では、前記方法は、前記第1SOC決定オプションに従って前記各SOCを決定し、その各SOCが高い値または低い値の限界値に含まれる場合、前記フロー電池の動作を制御するために用いられる前記各SOCを、前記第2SOC決定オプションに従って決定するように構成される。
【0022】
一実施形態では、前記方法は、前記各SOCから電解質原子のモル濃度の少なくとも1つを決定することさらに含む。
【0023】
一実施形態では、前記方法は、前記フロー電池を充電するための外部電力の印加を制御することと、前記電池を放電させるために前記電池からの電力の印加を制御することと、前記陽極液および前記陰極液の各充電状態を互いに一致させることと、前記フロー電池の前記陽極液および前記陰極液の各充電状態を、ストリングにおいて結合された、又は、同じ場所に共に配置されたもう1つのフロー電池の各充電状態に一致させることと、のうちの少なくとも1つによって前記フロー電池の動作を制御することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】従来技術における簡略化されたフロー電池のブロック図である。
【
図2】本明細書の一実施形態における簡略化されたフロー電池システム、特にVRFBシステムのブロック図である。
【
図3】本明細書の一実施形態における簡略化されたフロー電池システム、特にVRFBシステムのブロック図である。
【
図4】
図4A~
図4Cはフロー電池システムで使用するためのセル構成のブロック図である。
【
図6】本明細書の一実施形態における動作のフローチャートである。
【
図7】
図7Aは陽極液の充電状態計算のグラフであり、
図7Bは陰極液の充電状態計算のグラフである。
【
図8】本明細書の一実施形態における動作のフローチャートである。
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、従来技術における簡略化されたフロー電池システム100のブロック図である。システム100は、陽極液流量調整器106(例えばポンプ(図示せず)を備える)によって補助および制御されるように、陽極液(図示せず)が貯蔵容器102から配管104を通って循環する、簡略化されたVRFBを示す。配管は、陽極液を容器102に戻す前に、基準セル108と、2つ以上のセルがスタック111に配置された1つ以上のフロー電池セル(例えば110)とに陽極液を循環させる。同様に、陰極液(図示せず)は、陰極液流量調整器116(例えばポンプ(図示せず)を備える)によって補助および制御されるように、貯蔵容器112から配管114を通って循環する。陰極液も、容器112に戻る前に、基準セル108及びスタック111を循環する。
【0036】
図1は、陽極液を光学的に測定するための、配管104に結合された光学センサ118をも示す。陽極液の色はその酸化に伴って変化し、光学センサ118は、色を検出して色から充電状態を推測するための信号を提供する。光学センサ118は、信号をデータ取得システム118に提供するように結合される。データ取得システム118は、制御システム120と通信する。制御システム120は、例えば電池システム100の構成要素もしくは遠隔デバイス(例えばコンピューティングデバイスの取り外し、図示せず)と、又は、それら両方とローカルに通信するような、通信機能をも備えることがある。
【0037】
容器102、配管104及び流量調整器106は、第1または陽極液電解質循環ループ124を含む。容器112、配管114及び流量調整器116は、第2または陰極液電解質循環ループ126を含む。
【0038】
図1は上述した通り簡略化されており、電池システム100の他の構成要素は、理解されるように、データ取得システム118及び/又は制御システム120に結合され得る。例えば、図示されていないものは、他の構成要素の中でも特に、エネルギー入力(例えば電源)、またはエネルギー出力(例えば電気負荷)、または電力、またはスタック111に結合された制御要素である。セル110は、荷電電解質間の電気化学反応に従って、制御システム120の制御下でエネルギーを放電または貯蔵することが理解される。
【0039】
図示されていないが、システム100において、いくつかの電池スタックを(直列または並列に)接続して、スタックのストリング(string)を形成することがある。
【0040】
図1の実施形態では、制御システム120は色データから充電状態を決定する。制御システム120は、制御の例として充電状態に応じて、電池スタックに供給される電圧および電流(例えば電力)を制御するように構成される。色の測定は不正確であり、従って、検出された色からSOCを推測することは不正確である。光学センサは、較正および保守を必要とし、不正確な色の測定を提供することがある。
【0041】
図2及び3は、本明細書の各実施形態における、各レドックスフロー電池システム200及び300、特にVRFBシステムのブロック図である。システム200及び300の一部を構成するシステム100の構成要素と同様の構成要素には、容器102及び112、各配管104及び114、基準セル108並びにスタック110等、同様に番号が付されている。システム200及び300の配管は、システム200の一実施形態に応じた基準セル202と、システム300の一実施形態に応じた基準セル302A及び302Bとを考慮し、異なるように構成されることがある。
【0042】
システム200及び300では、基準電解質流量調整器208(例えばポンプ(図示せず)を備える)によって補助および制御されるように、基準電解質(図示せず)が基準電解質容器204から配管206を通って循環する。システム200内の基準セル202は、制御システム222に結合されるデータ取得システム220に結合される。基準セル302A及び302Bは、制御システム222に結合されるデータ取得システム220に結合される。容器204、配管206及び流量調整器208は、第3または基準電解質循環ループ224を含む。
【0043】
基準セル202は、基準電解質に対してそれぞれの荷電電解質間の電位の測定を可能にするために、3つの電解質に結合される。即ち、基準セル202は、各電位差を測定するための端子/結合(例えば、陽極液電位のための2つおよび陰極液電位のための2つを含む合計4つ)を備える。システム300では、基準セル302A及び302Bの各々は、単一の各電位差のためにそれぞれ(例えばセル当たり2つの)端子/結合(陽極液/基準電解質電位のための302Aにおける2つの端子、及び、陰極液/基準電解質電位のための302Bにおける2つの端子)を備える。
【0044】
一実施形態では、データ取得システム220は、データ取得システム120と同じ構成要素を有するが、本明細書に記載の通り、電位差(すなわち、電圧測定)を測定するために構成および結合される。同様に、一実施形態では、制御システム222は、制御システム122と同じ構成要素を有するが、SOCを決定するために、本明細書に後述する教示および技術に従って、プログラミング等により構成される。一実施形態では、制御システム222は、SOC決定から原子の濃度およびモル濃度をさらに決定することができる。制御システム構成の例は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、マイクロコントローラ(MCUまたはマイクロコントローラユニット)(例えば、シングルチップ上にRAM/ROM、周辺機器、I/Oを有する中央演算処理装置(CPU))、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、及び、特定用途向け集積回路(ASIC)などを定義し得るような、マイクロプロセッサ(例えば、他の集積回路/構造上のRAM/ROM、I/O、周辺機器などへのインターフェースを持つ、チップ上の中央演算処理装置(CPU))を含む。命令(Instructions)は、SOCやモル濃度などを決定すること、及び、決定されたSOCに応じて電池(例えば、それへの電力の供給)を制御することのように、制御システムの特徴および機能を提供するために、プロセッサ等によって記憶され実行され得る。
【0045】
図2および
図3は、スタック111に供給するループ124及び126に結合された、基準セル202並びに基準セル302A及び302Bのそれぞれを示す。代替的な循環装置が考えられる。一実施形態(図示せず)では、それぞれの追加の別個のループは、各容器102及び112に結合されて、各荷電電解質をスタック111に循環させることなく、各荷電電解質を基準セルに循環させる。一実施形態(図示せず)では、荷電電解質のうちの1つのみが、追加のループ内で別々に循環される。各追加のループは、それ自体の流量調整器(図示せず)を有することができる。一実施形態(図示せず)では、バイパスループは、スタック111を通って循環することなく各容器に電解質を戻すが、バイパスループは、ループ124及び126と同じ流量調整器(例えば106及び116)から送り出すので、荷電電極は、各ループ124及び126のうちの1つにそれぞれ結合されたバイパスループを通って基準セルに循環される。
【0046】
一実施形態では、複数のフロー電池システム(例えば、各ストリングを定義する1つ以上のスタックを有する各々)は、少なくとも制御の目的で、定義されたサイズ(例えば1MW、10MWなど)のサイトを提供するために結合することができる。各ストリングは、各ストリングの構成要素を制御するためのローカルインターフェースを備えた各制御システム222を有することができる。一実施形態では、制御システム222は、個々の電池ベース及び/又はサイト全体ベース上で電池容量などを管理するために、サイト制御システム(図示せず)に(例えばネットワーク構成で)結合され得る。一例では、電池性能は、電池のストリングにおいてSOCを一致させることで管理される。また、個々の電池システムにおいて荷電電解質のSOCを一致させることも有用である。従って、各電池スタックのSOCを測定することは、電池を個々に、ストリングで又はサイト全体ベースで管理するのに有用である。
【0047】
図4A~4Cは、本明細書の各実施形態における、フロー電池システムで使用するための、各基準セル構成400A、400B及び400Cの簡略化されたブロック図である。例えば、基準セル202は、構成400A及び400Bのうちの1つに従って構成され得る。基準セル302A又は302Bは、構成400Cとして構成され得る。
【0048】
構成400Aは、膜408によって陽極液導管本体402から分離された基準電解質本体404内で基準セル400Aを通って搬送された基準電解質のそばを通りつつ、基準セル400Aの中を通って陽極液を搬送するための陽極液導管本体402を表す。同様に、構成400Aは、膜410によって陰極液導管本体402から分離された基準電解質本体404内で基準セル400Aを通って搬送された基準電解質のそばを通りつつ、基準セル400Aの中を通って陰極液を搬送するための陰極液導管本体406を表す。構成400Aの実施形態では、基準電解質本体400が膜412によって分割される。なお、各電位差を測定するための配線を接続する端子は図示していない。
【0049】
構成400Aでは、電位差は、3つの膜の各々の両側で(across)測定される。そのような測定は、中間膜(名目上ゼロ)の両側の電位を監視することによって、(例えばクロスオーバーによる)V3.5+溶液の変化の検出を可能にする。
【0050】
構成400Bは400Aと同様であるが、膜412は導管本体404内に存在しない。構成400Bでは、電位差は、2つの膜の各々の両側で測定される。
【0051】
それぞれのセル部材416A及び416Bを備える構成400Cは、膜410によって分離された本体404及び406又はセル部材416Bとは別個のセル部材416A内に膜408を有する導管本体402及び404のそれぞれを示す。構成400Cでは、セル部材416A及び416Bが機能的に同一であり、用いられる荷電電解質による使用中にのみ変化することが理解される。電位差は、それぞれ膜を有する2つのセル部材のそれぞれの両側で測定される。
【0052】
図5Aは、本明細書の一実施形態による基準セル500の図であり、
図5Bは、
図5Aの基準セル500の分解図である。基準セル500は、構成416A又は416Bの実施形態を提供する。基準セルは、各電解質が基準セル500に出入りする入口/出口ペア504A/504B及び506A/506Bをそれぞれ有する導管本体502A及び502Bを備える。
図5A及び5Bでは、基準セル500は、中心軸A-Aの周りを180度回転され、軸A-Aに沿って分解される。一実施形態では、本体502A及び502Bがプラスチック材料製である。
【0053】
本体502A及び502Bは、それを貫通してそれぞれ延びる複数の締結部材(例えば1つの締結部材508)を介して互いに結合される。各締結部材は、一例では、ボルト、ナット及び2つのワッシャ等のような、ねじ部品を備えることができる。端子は、開口部512と、本体502Bでは見えないもう一つのものとを通って軸線A-Aに沿って結合する、各構成要素510A/511A及び510B/511Bによってもたらされる。本体502Aと502Bとの間には、2つの電極によって挟まれたプロトン交換膜を有する膜電極部(図示せず)を含む膜システム514が設けられている。ここでは、酸化/還元反応がセル内で行われる。膜システム514は、ガスケット(例えば516)又は他の封止装置を備えてもよい。円筒体517A及び517Bは、膜の各電極を各端子(510A/511A及び510B/511B)に結合する。
【0054】
一実施形態では、本体502A及び502Bには、取付機器520A及び520Bをそれぞれ受け入れるための側部開口518A及び518Bが形成される。一実施形態では、取付機器は、セル500を固定具に取り付けるためのラグボルト又はねじである。
【0055】
上述した通り、電位は、方程式を用いてSOCを決定するために測定される。また、モル濃度を決定してもよい。以下は、制御システム220を構成するために用いられる原理および方程式の概要を示す。
【0056】
一例によれば、
図6の動作のフローチャート600に示す通り、以下のステップが行われることが理解される。602では、基準電解質、即ちバナジウム(V)、特にV
3.5+が、電位測定を用いてSOCを決定するために提供される。使用される基準電解質は、その組成を決定するために、システム外で(ex-situ to the system)任意に測定されてもよい。
【0057】
604では、滴定されたV3.5+の体積(例えば500ml)の閉ループは、基準セルの1つの導管本体を通って(例えばセル500の本体502Bを通って)循環される。他の導管本体(例えば500A)では、606において、荷電電解質のうちの1つ(陽極液電解質および陰極液電解質のうちの1つ)が基準セルを通って循環される。608では、(例えば基準セルの各端子を介するデータ収集システムにおいて)電位差を決定するためにセルの両端間の電圧が測定される。
【0058】
610では、制御システム(電位差を処理するように構成された回路を備えるコンピューティングデバイス)は、測定値を使用し、さらに説明されるよう、ネルンストの式に従って陽極液SOC又は陰極液SOCのそれぞれを決定する。即ちそれは、陽極液と陰極液との間(例えば膜によって分離された陽極液と陰極液とを有するセルの両端間)の電位差を測定することなく、SOCを決定する。612では、制御システムは、決定されたSOCに応じてフロー電池を動作させる。制御の例としては、i)充電する場合にスタックに供給される電力を制御すること、ii)放電する場合にスタックから送られる電力を制御すること、及び、iii)電池内の電解質のSOCを揃えることが挙げられる。
【0059】
一実施形態(図示せず)において、バナジウム種のモル濃度は、さらに記載されるように、SOCの時間変化率に従って決定される。SOCの決定は、一例として、制御システム222による各種制御の動作に有用である。
【0060】
ネルンストの式は次の通りである。
【数5】
但し、E=還元電位、E
0=標準電位、R=気体定数、T=温度、z=イオンの電荷、F=ファラデー定数、Q=反応商、及び、RT/zF=C。
【0061】
従って、式1は、次のように書き換えることができる。
【数6】
SOC計算
【0062】
完全に帯電していない電解質(V3.5+)は、S.H.E.(標準水素電極)に対して0.397Vの電位を有するので、V3.5+におけるE0=0.397V。
【0063】
以下、各図中のSOCに対する電位がグラフ化されたグラフ700及び710を提供する
図7A及び7Bを参照し、陽極液の充電状態の計算および陰極液の充電状態の計算を説明する。
陽極液のSOC計算
【0064】
陽極液の場合、(例えば、
図7A及び7Bのグラフが生成された温度であって、室温で)、E
0=-0.27V、C=0.026554。さらに、[V
2+]=SOC
An/100、[V
3+]=1-SOC
An/100、[V
2+]+[V
3+]=1。
【0065】
従って、陽極液のネルンストの式である式3が、式2から次のように導かれる。
【数7】
【0066】
[V
2+]及び[V
3+]の濃度をSOCで書くと、SOCと陽極液電位とを直接関係付ける式4が得られる。
【数8】
【0067】
そして、SOCを陽極液電位で解くことができる。
【数9】
陽極液のSOC計算
【0068】
陰極液の場合、E0=0.337V、C=0.026554。さらに、[V5+]=SOCCa/100、[V4+]=1-SOCCa/100、[H+]=2.1+SOCCa/100、[V4+]+[V5+]=1。
【0069】
従って、陰極液のネルンストの式である式6が、式1,2から次のように導かれる。
【数10】
【0070】
[V
4+]、[V
5+]及び[H
+]の濃度をSOCで書くと、SOCと陰極液電位とを直接関係付ける式7が得られる。
【数11】
【0071】
そして、これは数値的に行われるが、SOCを陰極液電位で解くことができる。
【数12】
【0072】
一実施形態では、ネルンストの式を用いた決定方法によって電位測定値からSOCを計算するのではなく、フロー電池は、事前計算された各SOCに各電位を関連付けるルックアップテーブルを用いて、陽極液SOC及び陰極液SOCの一方または両方を決定するように構成される。ルックアップテーブルを用いるとは、例えば、測定された電位が各テーブルにおける2つの電位の間であるとき、必要に応じて補間することを含んでも良い。例として、コンピューティングデバイスは、i)陽極液電位差を陽極液SOCに関連付ける陽極液ルックアップテーブルを記憶し、そのループアップテーブルを利用して陽極液の各SOCを決定することと、ii)陰極液電位差を陰極液SOCに関連付ける陰極液ルックアップテーブルを記憶し、そのルックアップテーブルを利用して陰極液の各SOCを決定することとのうちの少なくとも1つを実行するように構成される。
【0073】
フロー電池は、2つ以上の方法でSOCを決定するように構成され得る。(ルックアップオペレーションを使用し得る)、ネルンストの式に従って説明されるようなSOCの決定は、高SOC値または低SOC値(例えば100%又は0%の近傍)について、より正確でない結果をもたらし得る。SOCを決定するための代替または追加の方法は、これらの値において有用であり得る。上述の通り、SOCを測定するための1つの追加の方法は、電解質色を示す光信号に対する応答である。即ち、フロー電池は、
図1に示されるような光学センサを備えてもよい。電解質の色測定値は、(当業者によって理解される程度に補間動作を伴い得る)ルックアップテーブル等において、各SOCに関連付けられ得る。別の方法では、相対的な陽極液および陰極液の電位差が、SOCに関連付けられて、(例えば基準セル108を介して決定される)検索用のテーブルに記憶されても良い。従って、一実施形態では、コンピューティングデバイスがSOCを決定するためのオプションを用いて構成され得る。1つの(例えば第1)オプションは、(基準電解質に対する)陽極液電位差と、(基準電解質に対する)陰極液電位差とのうちの少なくとも1つを、ネルンストの式に従って処理することを含む(これは、ルックアップオペレーションを用いて実行され得る)。別の(例えば第2)オプションは、SOCを決定するために色測定値を用いることを含む。別の(例えば第3)オプションは、相対的な陽極液および陰極液の電位差を使用することを含む(これは、ルックアップオペレーションを用いて実行され得る)。一実施形態では、コンピューティングデバイス(例えば222)は、第1オプションと、第2および第3オプションのうちの1つとに従って、SOCを決定するように構成される。本明細書における「第1」、「第2」及び「第3」という表記は、必ずしも動作の順序または優先度に従うわけではなく、異なるオプションと区別するために使用される。
【0074】
一実施形態では、
図8に示すように、コンピューティングデバイス(例えば222)は、方法800を実行するように構成され、802において、そのコンピューティングデバイスは第1オプションに従ってSOCを決定する。804では、SOCが高い値(例えば100%)又は低い値(例えば0%)の限界値に含まれるかどうかの判定が行われる。同等に、判定は、各端部の一定量を除く100%~0%の中間範囲内にSOCがあるかどうかである。高い又は低い限界値にSOCが含まれる結果の場合、806へと「Yes」の分岐に進み、フロー電池は別のオプションを用いてSOCを決定し、808において、例えば、(例えばSOCに応じてフローバター(batter)を動作させる)制御動作を決定するときに、別のオプションを用いて決定されたSOCを用いる。高い又は低い限界値にSOCが含まれない結果の場合、808へと「No」の分岐に進み、フロー電池は、例えば制御動作を決定するときに、第1オプションにより決定されたSOCを用いる。
SOCからのバナジウム原子の濃度の決定
【0075】
一実施形態では、制御システム222がSOCからバナジウム原子のモル濃度および濃度を決定するように構成される。以下の定義が有用である。
V=体積
M=モル濃度
I=電流
SOC=充電状態
NA=アボガドロ定数
C=クーロン=6.24×1018電子数
F=ファラデー定数=NA/C=96485.33C/mol
【0076】
一実施形態では、モル濃度は以下のように決定される。
【数13】
【数14】
注:測定の間、一定の電流を流すことで、濃度を正確に測定できる。一実施形態では、制御システム222(電池セルにおける電力を制御するデバイス)は、所望の電流に達するまで電圧を調整することによって電流を一定に保つように構成される。さらに、この計算は、理想的な場合に使用することができる。より正確な測定のために、シャント電流およびイオンクロスオーバー(ion cross-over)によるクーロン損失(coulombic losses)が考慮され得る。
【0077】
代案として、一実施形態では、システムの陽極液側および陰極液側の両方におけるSOCの変化率を比較して、各モルパーセントを決定する。
【数15】
【数16】
【数17】
【数18】
【数19】
【数20】
注:測定の間、一定の電流を流すことで、濃度を正確に測定できる。一実施形態では、制御システム222(電池セルにおける電力を制御するデバイス)は、所望の電流に達するまで電圧を調整することによって電流を一定に保つように構成される。さらに、この計算は、理想的な場合に使用することができる。より正確な測定のために、シャント電流およびイオンクロスオーバーによるクーロン損失が考慮され得る。
活性種の濃度と酸化状態の計算
【0078】
陽極液および陰極液のSOC及びモル濃度を得たので、一実施形態では、V
2+、V
3+、V
4+及びV
5+の濃度が計算される。
【数21】
【数22】
【数23】
【数24】
【0079】
モル濃度およびSOCが得られれば、電解質の全体的な酸化状態を測定することもできる。一実施形態では、これは以下の方程式によって計算される。
【数25】
【0080】
一実施形態では、酸化状態がそれぞれの種の濃度を用いて決定され、例えば、式8が書き換えられる。
【0081】
電池システムにおける望ましくない副反応は、全体的な酸化状態を徐々に上昇させ得る。そのような反応の例は、負極における水素の触媒作用であり、これは、1反応あたり2個の電子を消費し、それらが有用な仕事をする電位を有するシステムからそれらを除去する。どちらの方向にも+3.5からずれ過ぎた酸化状態は、電池がエネルギーを貯蔵する能力を低下させる。一実施形態では、制御システム222は、フロー電池をその初期状態に戻すための是正措置が実行され得るように、システムの全体的な酸化状態を監視するように構成される。是正措置の一例は、電解質の全量を交換することを含むことができるが、これは著しい追加コストを招くので望ましくない。
【0082】
2017年12月26日に発行されて「Distribution of Electrolytes in a Flow battery」と題されたDarlingらのUS9853310B2(参照により本明細書に組み込まれるもの)は、フロー電池における電解質の分布を決定する方法を開示している。
図1-3に示すような一実施形態では、フロー電池は、バナジウム、鉄、クロム等の一般的な電気化学的活性種を有する一定量の流体電解質を備える。電解質は、陽極液および陰極液に応じて分けられる。一般的な電気化学的活性種の平均酸化状態(AOS)は、陽極液および陰極液で決定される。本明細書の一実施形態によれば、AOSは、本明細書に記載されるように測定および決定されるSOCを用いて記載の通り決定される。決定されたAOSに応じて、陽極液と陰極液との間の共通の電気化学的活性種のモル比は、決定された平均酸化状態(またはモル比)に対するフロー電池のエネルギー放電容量を増加させるように調整することができる。
【0083】
本明細書の一実施形態では、瞬間的なAOSは、本明細書に新たに記載されるようなSOCを用いることなどによって決定される。「瞬間的な」という語句は、特定の決定における現在状態または現在値を意味する。フロー電池は、例えば陽極液と陰極液との間に共通の電気化学的活性種の瞬間的なモル比(例えばモル比の現在値)を調整するために、その動作を制御するように構成される。その比を制御することは、AOSの現在値に対する相対エネルギー放電容量を増加させようとする。相対エネルギー放電容量は、最大容量に対するモル比の現在値に基づくエネルギー放電容量の現在値であることが理解され得る。最大容量は、陽極液と陰極液との間で完全に均衡したモル比に基づく。一実施形態では、調整することは、陽極液と陰極液とを部分的に混合して、フロー電池の陽極液と陰極液とを同一量でなくすことを含む。
【0084】
2016年2月25日に公開されて「Method of maintaining a flow battery」と題されたDarlingらのUS20160056487A1(参照により本明細書に組み込まれるもの)は、フロー電池の健全性を維持する方法を開示している。そのような方法は、フロー電池の電気化学セルの負側および正側において、第1および第2流体電解質(例えば陽極液および陰極液)における共通の電気化学的に活性な元素種の平均酸化状態をそれぞれ決定することと、所定の平均酸化状態の値から逸脱する平均酸化状態に応じて平均酸化状態を調整することとを含む。
【0085】
本明細書の一実施形態では、瞬間的なAOSは、本明細書で新たに説明されるようなSOCを用いることにより決定され、フロー電池は、所定の平均酸化状態の値(平均酸化状態の範囲であってもよい)から逸脱する平均酸化状態に応じて平均酸化状態を調整することによって健全性を維持するために、その動作を制御するように構成される。一実施形態では、種はバナジウム、鉄およびクロムから選択される。本明細書の一実施形態では、平均の調整は、陰極液における共通の電気化学的に活性な元素種の原子価を低減するために、陰極液に還元剤を添加することを含む。還元剤は、シュウ酸またはギ酸などの酸を含んでもよく、それらに代えて又は加えてアルコールを含んでもよい。本明細書の一実施形態では、平均の調整は、陽極液における共通の電気化学的に活性な元素種の原子価を増加させるために、陽極液に酸化剤を添加することを含む。酸化剤は、空気などの酸素ガス及び/又は過酸化水素を含んでもよい。一実施形態では、平均酸化状態が所定の平均酸化状態の値に向かって徐々に近づくとの予想に従って、平均酸化状態は、所定の平均酸化状態の値よりも高く又は低くなるように調整される。一実施形態では、所定の平均酸化状態または範囲は、一般的な電気化学的活性種のタイプに基づくことができる。値の範囲の例として、その値の範囲は、一般的な電気化学的活性種が完全に均衡したときのAOSの+/-10%であり得る。
【0086】
従って、一実施形態では、フロー電池(例えばその制御システム)は、陽極液および陰極液のモル濃度に応じてフロー電池の酸化状態を決定することと、酸化状態を管理するためにフロー電池を制御することとのうちの少なくとも1つを行うように構成される。酸化状態を管理することは、上述のように陽極液と陰極液とを混合することを含み得る。酸化状態を管理することは、上述のように還元剤を添加することを含み得る。酸化状態を管理することは、上述のように酸化剤を添加することを含み得る。
【0087】
VRFBを参照して説明したが、他の電解質を用いてもよい。好適な電解質溶液のペアの非限定的な例としては、バナジウム及びバナジウム溶液、臭素およびポリスルフィド(polysulfide)溶液、バナジウム及び臭化物溶液、並びに、任意の他の溶液を挙げることができる。電解質溶液は、バナジウム、臭素、鉄、クロム、亜鉛、セリウム、鉛、硫黄、コバルト、スズ及びマンガン、又は、それらの任意の適切な組合せに基づくことができる。本明細書に記載されるよう、方程式およびその値に適切な修正を加えてもよい。
【0088】
フロー電池は、陽極液電解質および陰極液電解質と流体連通する少なくとも1つの電気化学電池セルと、前記陽極液電解質および前記陰極液電解質のうちの少なくとも1つと流体連通しつつ、既知の電位を有する基準電解質と流体連通する基準セルであって、i)前記陽極液電解質と前記基準電解質との間であって前記基準セルの両端間の陽極液電位差と、ii)前記陰極液電解質と前記基準電解質との間であって前記基準セルの両端間の陰極液電位差と、のうちの少なくとも1つを測定するための前記基準セルと、回路を有するコンピューティングデバイスと、を備えることができ、前記回路は、前記陽極液電位差および前記陰極液電位差のうちの少なくとも1つを処理することで、前記フロー電池の動作を制御するための、前記陽極液電解質および前記陰極液電解質の各充電状態(SOC)を決定し、前記コンピューティングデバイスが、前記陽極液電解質と前記陰極液電解質との間の電位差の測定なしに前記各SOCを決定するように構成される。前記コンピューティングデバイスは、以下のネルンストの式に従って前記各SOCを決定するように構成される。
【数26】
但し、E=還元電位、E
0=標準電位、R=気体定数、T=温度、z=イオンの電荷、F=ファラデー定数、Q=反応商、RT/zF=C
前記コンピューティングデバイスは、i)陽極液電位差を陽極液SOCに関連付ける陽極液ルックアップテーブルを記憶し、そのルックアップテーブルを利用して前記各SOCを決定することと、ii)陰極液電位差を陰極液SOCに関連付ける陰極液ルックアップテーブルを記憶し、そのルックアップテーブルを利用して前記各SOCを決定することと、のうちの少なくとも1を行うように構成されることができる。前記陽極液電位差および前記陰極液電位差のうちの少なくとも1つを処理することで前記各充電状態(SOC)を決定することが、第1SOC決定オプションと定義でき、前記コンピューティングデバイスが、第2SOC決定オプションで前記各SOCを決定するようにさらに構成されることができ、前記第2SOC決定オプションにおいて、前記コンピューティングデバイスは、a)電解質色を測定する光信号に応じて前記各SOCを決定することと、b)前記陽極液と前記陰極液との間の電位差の処理に応じて前記各SOCを決定することと、のうちの一方を実行するように構成されることができる。前記コンピューティングデバイスは、前記第1SOC決定オプションに従って前記各SOCを決定し、その各SOCが高い値または低い値の限界値に含まれる場合、前記フロー電池の動作を制御するために用いられる前記各SOCを、前記第2SOC決定オプションに従って決定するように構成されることができる。前記基準セルは、電解質を別々に受け入れるための各本体を備えることができる。前記基準セルは、前記陽極液および前記陰極液のうちの一方を受け入れるように構成された第1基準セルを備えることができ、前記フロー電池は、前記第1基準セルとは別個の第2基準セルを備え、前記第2基準セルは、前記陽極液および前記陰極液のうちの他方を受け入れるように構成され、前記第1基準セルは、前記陽極液電解質を個別に受け入れるための第1陽極液セル本体と、前記基準電解質を個別に受け入れるための第1基準電解質セル本体と、を備えることができ、第1膜が前記第1陽極液セル本体と前記第1基準電解質セル本体とを分離でき、前記第2基準セルは、前記陰極液電解質を個別に受け入れるための第1陰極液セル本体と、前記基準電解質を個別に受け入れるための第2基準電解質セル本体と、を備えることができ、第2膜が前記第1陰極液セル本体と前記第2基準電解質セル本体とを分離でき、前記コンピューティングデバイスは、前記第1基準セルおよび前記第2基準セルのそれぞれから電位差の測定値を受け取ることができる。前記フロー電池は、前記少なくとも1つの電池セル及び前記第1基準セルに前記陽極液電解質を循環させるための陽極液電解質ループと、前記少なくとも1つの電池セル及び前記第2基準セルに前記陰極液電解質を循環させるための陰極液電解質ループと、前記第1基準セルおよび前記第2基準セルのそれぞれに前記基準電解質を循環させるための基準電解質ループと、を備えることができる。前記フロー電池の前記基準セルは、前記陽極液電解質および前記陰極液電解質のそれぞれと流体連通するように構成されることができ、前記基準セルは、前記陽極液電解質を個別に受け入れる第1セル本体と、前記陰極液電解質を個別に受け入れる第2セル本体と、前記基準電解質を個別に受け入れる少なくとも1つの追加セル本体と、を備えることができ、第1膜は、前記第1セル本体と前記少なくとも1つの追加セル本体とを分離でき、第2膜は、前記第2セル本体と前記少なくとも1つの追加セル本体とを分離できる。前記少なくとも1つの追加セル本体は、前記基準電解質を受容する第1追加セル本体および第2追加セル本体を備えることができ、前記第1追加セル本体および前記第2追加セル本体は、それらの間に膜を備えることができる。前記フロー電池は、前記少なくとも1つの電池セル及び前記第1セル本体に前記陽極液電解質を循環させるための陽極液電解質ループと、前記少なくとも1つの電池セル及び前記第2セル本体に前記陰極液電解質を循環させるための陰極液電解質ループと、前記少なくとも1つの追加セル本体に前記基準電解質を循環させるための基準電解質ループと、を備えることができる。前記コンピューティングデバイスは、SOCから電解質原子のモル濃度および濃度を決定するようにさらに構成されることができ、前記陽極液および前記陰極液のモル濃度が以下によって決定されることができる。
【数27】
【数28】
但し、V=体積、M=モル濃度、I=電流、SOC=充電状態、N
A=アボガドロ定数、C=クーロン=6.24×10
18電子数、F=ファラデー定数=N
A/C=96485.33C/mol
前記フロー電池は、バナジウムレドックスフロー電池(VRFB)からなり得る。前記陽極液電解質および前記陰極液電解質は、バナジウム、臭素、鉄、クロム、亜鉛、セリウム、鉛、硫黄、コバルト、スズ及びマンガン、又は、それらの任意の適切な組合せから選択される電解質溶液のペアからなり得る。前記フロー電池を充電するための外部電力の印加を制御することと、前記電池を放電させるために前記電池からの電力の印加を制御することと、前記陽極液および前記陰極液の各充電状態を互いに一致させることと、前記フロー電池の前記陽極液および前記陰極液の各充電状態を、ストリングにおいて結合された、又は、同じ場所に共に配置されたもう1つのフロー電池の各充電状態に一致させることと、のうちの少なくとも1つによって前記フロー電池の動作を制御するために前記コンピューティングデバイスが構成されることができる。前記コンピューティングデバイスは、i)前記陽極液および前記陰極液のモル濃度に従って前記フロー電池の酸化状態を決定することと、ii)前記陽極液および前記陰極液のモル濃度に従って前記フロー電池の酸化状態を決定しつつ、前記酸化状態を管理するために前記フロー電池を制御することと、のうちの少なくとも1を行うように構成されることができる。
【0089】
フロー電池を制御する方法は、少なくとも1つの電気化学電池セルを通る陽極液電解質および陰極液電解質を循環させることと、前記陽極液電解質および前記陰極液電解質のうちの少なくとも1つと流体連通する基準セルを通る、既知の電位を有する基準電解質を循環させることと、i)前記陽極液電解質と前記基準電解質との間であって前記基準セルの両端間の陽極液電位差と、ii)前記陰極液電解質と前記基準電解質との間であって前記基準セルの両端間の陰極液電位差と、のうちの少なくとも1つを測定することと、前記陽極液電位差および前記陰極液電位差のうちの少なくとも1つを処理することで、前記フロー電池の動作を制御するための、前記陽極液電解質および前記陰極液電解質の各充電状態(SOC)を決定することと、を含むことができ、前記陽極液電解質と前記陰極液電解質との間の電位差の測定なしに前記各SOCを決定する。前記各SOCを決定することは、以下のネルンストの式に従って前記各SOCを決定することを含むことができる。
【数29】
但し、E=還元電位、E
0=標準電位、R=気体定数、T=温度、z=イオンの電荷、F=ファラデー定数、Q=反応商、RT/zF=C
前記方法は、i)陽極液電位差を陽極液SOCに関連付ける陽極液ルックアップテーブルを記憶し、そのルックアップテーブルを利用して前記各SOCを決定することと、ii)陰極液電位差を陰極液SOCに関連付ける陰極液ルックアップテーブルを記憶し、そのルックアップテーブルを利用して前記各SOCを決定することと、のうちの少なくとも1つを含むことができる。前記陽極液電位差および前記陰極液電位差のうちの少なくとも1つを処理することで前記各充電状態(SOC)を決定することが、第1SOC決定オプションと定義されることができ、前記方法は、第2SOC決定オプションに従って前記各SOCを決定することをさらに含むことができ、前記第2SOC決定オプションによれば、前記方法は、a)電解質色を測定する光信号に応じて前記各SOCを決定することと、b)前記陽極液と前記陰極液との間の電位差の処理に応じて前記各SOCを決定することと、のうちの一方を含むことができる。前記方法は、前記第1SOC決定オプションに従って前記各SOCを決定することができ、その各SOCが高い値または低い値の限界値に含まれる場合、前記フロー電池の動作を制御するために用いられる前記各SOCを、前記第2SOC決定オプションに従って決定することができる。前記方法は、前記各SOCから電解質原子のモル濃度の少なくとも1つを決定することをさらに含むことができ、前記陽極液および前記陰極液のモル濃度が以下によって決定されることができる。
【数30】
【数31】
但し、V=体積、M=モル濃度、I=電流、SOC=充電状態、N
A=アボガドロ定数、C=クーロン=6.24×10
18電子数、F=ファラデー定数=N
A/C=96485.33C/mol
前記方法は、i)前記陽極液および前記陰極液のモル濃度に従って前記フロー電池の酸化状態を決定することと、ii)前記陽極液および前記陰極液のモル濃度に従って前記フロー電池の酸化状態を決定しつつ、前記酸化状態を管理するために前記フロー電池を制御することと、のうちの少なくとも1を含むことができる。前記フロー電池がバナジウムレドックスフロー電池(VRFB)からなり得る。前記陽極液電解質および前記陰極液電解質は、バナジウム、臭素、鉄、クロム、亜鉛、セリウム、鉛、硫黄、コバルト、スズ及びマンガン、又は、それらの任意の適切な組合せから選択される電解質溶液のペアからなり得る。前記フロー電池を充電するための外部電力の印加を制御することと、前記電池を放電させるために前記電池からの電力の印加を制御することと、前記陽極液および前記陰極液の各充電状態を互いに一致させることと、前記フロー電池の前記陽極液および前記陰極液の各充電状態を、ストリングにおいて結合された、又は、同じ場所に共に配置されたもう1つのフロー電池の各充電状態に一致させることと、のうちの少なくとも1つによって前記フロー電池の動作を制御することを含むことができる。
【0090】
コンピュータプログラム製品は、プロセッサによって実行されたときに前述のいずれかに従う方法を前記プロセッサに実行させるコンピュータ可読命令を記憶する非一時的記憶媒体を備えることができる。
【0091】
本開示は、以下の実施形態をさらに包含する。
【0092】
実施形態1:フロー電池は、陽極液電解質および陰極液電解質と流体連通する少なくとも1つの電気化学電池セルと、前記陽極液電解質および前記陰極液電解質のうちの少なくとも1つと流体連通しつつ、既知の電位を有する基準電解質と流体連通する基準セルであって、i)前記陽極液電解質と前記基準電解質との間であって前記基準セルの両端間の陽極液電位差と、ii)前記陰極液電解質と前記基準電解質との間であって前記基準セルの両端間の陰極液電位差と、のうちの少なくとも1つを測定するための前記基準セルと、回路を有するコンピューティングデバイスと、を備え、前記回路は、前記陽極液電位差および前記陰極液電位差のうちの少なくとも1つを処理することで、前記フロー電池の動作を制御するための、前記陽極液電解質および前記陰極液電解質の各充電状態(SOC)を決定し、前記コンピューティングデバイスが、前記陽極液電解質と前記陰極液電解質との間の電位差の測定なしに前記各SOCを決定するように構成される。
【0093】
実施形態2:実施形態1の前記フロー電池において、前記コンピューティングデバイスは、以下のネルンストの式に従って前記各SOCを決定するように構成される。
【数32】
但し、E=還元電位、E
0=標準電位、R=気体定数、T=温度、z=イオンの電荷、F=ファラデー定数、Q=反応商、RT/zF=C
【0094】
実施形態3:実施形態2の前記フロー電池において、前記コンピューティングデバイスは、i)陽極液電位差を陽極液SOCに関連付ける陽極液ルックアップテーブルを記憶し、そのルックアップテーブルを利用して前記各SOCを決定することと、ii)陰極液電位差を陰極液SOCに関連付ける陰極液ルックアップテーブルを記憶し、そのルックアップテーブルを利用して前記各SOCを決定することと、のうちの少なくとも1を行うように構成される。
【0095】
実施形態4:実施形態1から3のいずれかの前記フロー電池において、前記陽極液電位差および前記陰極液電位差のうちの少なくとも1つを処理することで前記各充電状態(SOC)を決定することが、第1SOC決定オプションと定義され、前記コンピューティングデバイスが、第2SOC決定オプションで前記各SOCを決定するようにさらに構成される。
【0096】
実施形態5:実施形態4の前記フロー電池において、前記第2SOC決定オプションにおいて、前記コンピューティングデバイスは、a)電解質色を測定する光信号に応じて前記各SOCを決定することと、b)前記陽極液と前記陰極液との間の電位差の処理に応じて前記各SOCを決定することと、のうちの一方を実行するように構成される。
【0097】
実施形態6:実施形態4又は5の前記フロー電池において、前記コンピューティングデバイスは、前記第1SOC決定オプションに従って前記各SOCを決定し、その各SOCが高い値または低い値の限界値に含まれる場合、前記フロー電池の動作を制御するために用いられる前記各SOCを、前記第2SOC決定オプションに従って決定するように構成される。
【0098】
実施形態7:実施形態1から6のいずれかの前記フロー電池において、前記基準セルは、電解質を別々に受け入れるための各本体を備える。
【0099】
実施形態8:実施形態1から7のいずれかの前記フロー電池において、前記基準セルは、前記陽極液および前記陰極液のうちの一方を受け入れるように構成された第1基準セルを備え、前記フロー電池は、前記第1基準セルとは別個の第2基準セルを備え、前記第2基準セルは、前記陽極液および前記陰極液のうちの他方を受け入れるように構成される。
【0100】
実施形態9:実施形態8の前記フロー電池において、前記第1基準セルは、前記陽極液電解質を個別に受け入れるための第1陽極液セル本体と、前記基準電解質を個別に受け入れるための第1基準電解質セル本体と、を備え、第1膜が前記第1陽極液セル本体と前記第1基準電解質セル本体とを分離し、前記第2基準セルは、前記陰極液電解質を個別に受け入れるための第1陰極液セル本体と、前記基準電解質を個別に受け入れるための第2基準電解質セル本体と、を備え、第2膜が前記第1陰極液セル本体と前記第2基準電解質セル本体とを分離する。
【0101】
実施形態10:実施形態8又は9の前記フロー電池において、前記コンピューティングデバイスは、前記第1基準セルおよび前記第2基準セルのそれぞれから電位差の測定値を受け取る。
【0102】
実施形態11:実施形態8から10のいずれかの前記フロー電池において、フロー電池は、前記少なくとも1つの電池セル及び前記第1基準セルに前記陽極液電解質を循環させるための陽極液電解質ループと、前記少なくとも1つの電池セル及び前記第2基準セルに前記陰極液電解質を循環させるための陰極液電解質ループと、前記第1基準セルおよび前記第2基準セルのそれぞれに前記基準電解質を循環させるための基準電解質ループと、を備える。
【0103】
実施形態12:実施形態7の前記フロー電池において、前記基準セルは、前記陽極液電解質および前記陰極液電解質のそれぞれと流体連通するように構成され、前記基準セルは、前記陽極液電解質を個別に受け入れる第1セル本体と、前記陰極液電解質を個別に受け入れる第2セル本体と、前記基準電解質を個別に受け入れる少なくとも1つの追加セル本体と、を備え、第1膜は、前記第1セル本体と前記少なくとも1つの追加セル本体とを分離し、第2膜は、前記第2セル本体と前記少なくとも1つの追加セル本体とを分離する。
【0104】
実施形態13:実施形態12の前記フロー電池において、前記少なくとも1つの追加セル本体は、前記基準電解質を受容する第1追加セル本体および第2追加セル本体を備え、前記第1追加セル本体および第2追加は、それらの間に膜を備える。
【0105】
実施形態14:実施形態12又は13の前記フロー電池において、フロー電池は、前記少なくとも1つの電池セル及び前記第1セル本体に前記陽極液電解質を循環させるための陽極液電解質ループと、前記少なくとも1つの電池セル及び前記第2セル本体に前記陰極液電解質を循環させるための陰極液電解質ループと、前記1つの追加セル本体に前記基準電解質を循環させるための基準電解質ループと、を備える。
【0106】
実施形態15:実施形態1から14のいずれかの前記フロー電池において、前記コンピューティングデバイスは、SOCから電解質原子のモル濃度および濃度を決定するようにさらに構成される。
【0107】
実施形態16:実施形態15の前記フロー電池において、前記陽極液および前記陰極液の各モル濃度が以下によって決定される。
【数33】
【数34】
但し、V=体積、M=モル濃度、I=電流、SOC=充電状態、N
A=アボガドロ定数、C=クーロン=6.24×10
18電子数、F=ファラデー定数=N
A/C=96485.33C/mol
【0108】
実施形態17:実施形態1から16のいずれかの前記フロー電池において、フロー電池がバナジウムレドックスフロー電池(VRFB)からなる。
【0109】
実施形態18:実施形態1から16のいずれかの前記フロー電池において、前記陽極液電解質および前記陰極液電解質は、バナジウム、臭素、鉄、クロム、亜鉛、セリウム、鉛、硫黄、コバルト、スズ及びマンガン、又は、それらの任意の適切な組合せから選択される電解質溶液のペアからなる。
【0110】
実施形態19:実施形態1から18のいずれかの前記フロー電池において、前記フロー電池を充電するための外部電力の印加の制御することと、前記電池を放電させるために前記電池からの電力の印加を制御することと、前記陽極液および前記陰極液の各充電状態を互いに一致させることと、前記フロー電池の前記陽極液および前記陰極液の各充電状態を、ストリングにおいて結合された、又は、同じ場所に共に配置されたもう1つのフロー電池の各充電状態に一致させることと、のうちの少なくとも1つによって前記フロー電池の動作を制御するために前記コンピューティングデバイスが構成される。
【0111】
実施形態20:実施形態1から19のいずれかの前記フロー電池において、前記コンピューティングデバイスは、i)前記陽極液および前記陰極液のモル濃度に従って前記フロー電池の酸化状態を決定することと、ii)前記陽極液および前記陰極液のモル濃度に従って前記フロー電池の酸化状態を決定しつつ、前記酸化状態を管理するために前記フロー電池を制御することと、のうちの少なくとも1を行うように構成される。
【0112】
実施形態21:フロー電池を制御するための方法であって、前記方法は、少なくとも1つの電気化学電池セルを通る陽極液電解質および陰極液電解質を循環させることと、前記陽極液電解質および前記陰極液電解質のうちの少なくとも1つと流体連通する基準セルを通る、既知の電位を有する基準電解質を循環させることと、i)前記陽極液電解質と前記基準電解質との間であって前記基準セルの両端間の陽極液電位差と、ii)前記陰極液電解質と前記基準電解質との間であって前記基準セルの両端間の陰極液電位差と、のうちの少なくとも1つを測定することと、前記陽極液電位差および前記陰極液電位差のうちの少なくとも1つを処理することで、前記フロー電池の動作を制御するための、前記陽極液電解質および前記陰極液電解質の各充電状態(SOC)を決定することと、を含み、前記方法は、前記陽極液電解質と前記陰極液電解質との間の電位差の測定なしに前記各SOCを決定する。
【0113】
実施形態22:実施形態21の前記方法であって、前記各SOCを決定することは、以下のネルンストの式に従って前記各SOCを決定することを含む。
【数35】
但し、E=還元電位、E
0=標準電位、R=気体定数、T=温度、z=イオンの電荷、F=ファラデー定数、Q=反応商、RT/zF=C
【0114】
実施形態23:実施形態22の前記方法であって、前記方法は、i)陽極液電位差を陽極液SOCに関連付ける陽極液ルックアップテーブルを記憶し、そのルックアップテーブルを利用して前記各SOCを決定することと、ii)陰極液電位差を陰極液SOCに関連付ける陰極液ルックアップテーブルを記憶し、そのルックアップテーブルを利用して前記各SOCを決定することと、のうちの少なくとも1つを含む。
【0115】
実施形態24:実施形態21から23のいずれかの前記方法であって、前記陽極液電位差および前記陰極液電位差のうちの少なくとも1つを処理することで前記各充電状態(SOC)を決定することが、第1SOC決定オプションと定義され、前記方法は、第2SOC決定オプションに従って前記各SOCを決定することをさらに含む。
【0116】
実施形態25:実施形態24の前記方法であって、前記第2SOC決定オプションによれば、前記方法は、a)電解質色を測定する光信号に応じて前記各SOCを決定することと、b)前記陽極液と前記陰極液との間の電位差の処理に応じて前記各SOCを決定することと、のうちの一方を含む。
【0117】
実施形態26:実施形態24又は25の前記方法であって、前記方法は、前記第1SOC決定オプションに従って前記各SOCを決定し、その各SOCが高い値または低い値の限界値に含まれる場合、前記フロー電池の動作を制御するために用いられる前記各SOCを、前記第2SOC決定オプションに従って決定するように構成される。
【0118】
実施形態27:実施形態21から26のいずれかの前記方法であって、前記方法は、前記各SOCから電解質原子のモル濃度の少なくとも1つを決定することさらに含む。
【0119】
実施形態28:実施形態27の前記方法であって、前記陽極液および前記陰極液のモル濃度が以下によって決定される。
【数36】
【数37】
但し、V=体積、M=モル濃度、I=電流、SOC=充電状態、N
A=アボガドロ定数、C=クーロン=6.24×10
18電子数、F=ファラデー定数=N
A/C=96485.33C/mol
【0120】
実施形態29:実施形態21から28のいずれかの前記方法であって、前記方法は、i)前記陽極液および前記陰極液のモル濃度に従って前記フロー電池の酸化状態を決定することと、ii)前記陽極液および前記陰極液のモル濃度に従って前記フロー電池の酸化状態を決定しつつ、前記酸化状態を管理するために前記フロー電池を制御することと、のうちの少なくとも1を含む。
【0121】
実施形態30:実施形態21から29のいずれかの前記方法であって、前記フロー電池がバナジウムレドックスフロー電池(VRFB)からなる。
【0122】
実施形態31:実施形態21から29のいずれかの前記方法であって、前記陽極液電解質および前記陰極液電解質は、バナジウム、臭素、鉄、クロム、亜鉛、セリウム、鉛、硫黄、コバルト、スズ及びマンガン、又は、それらの任意の適切な組合せから選択される電解質溶液のペアからなる。
【0123】
実施形態32:実施形態21から31のいずれかの前記方法であって、前記フロー電池を充電するための外部電力の印加を制御することと、前記電池を放電させるために前記電池からの電力の印加を制御することと、前記陽極液および前記陰極液の各充電状態を互いに一致させることと、前記フロー電池の前記陽極液および前記陰極液の各充電状態を、ストリングにおいて結合された、又は、同じ場所に共に配置されたもう1つのフロー電池の各充電状態に一致させることと、のうちの少なくとも1つによって前記フロー電池の動作を制御することを含む。
【0124】
実施形態33:コンピュータプログラム製品であって、プロセッサによって実行されたときに実施形態21から32のいずれかの前記方法に従う方法を前記プロセッサに実行させるコンピュータ可読命令を記憶する非一時的記憶媒体を備える。
【0125】
実際の実装形態は、本明細書に記載される特徴のいずれか又は全てを含むことができる。これらおよび他の態様、特徴および様々な組合せは、本明細書に記載された特徴の組合て、方法、装置、システム、機能を果たすための手段、プログラム製品、及び他の方法として表現できる。いくつかの実施形態について上述した。それにかかわらず、本明細書に記載されるプロセス及び技術の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な修正がなされ得ることが理解されよう。加えて、記載されたプロセスに他のステップを設けたり、そこからステップを排除してもよいし、記載されたシステムに他の構成要素を追加したり、そこから除去してもよい。従って、他の実施形態は、特許請求の範囲の範囲内にある。
【0126】
本明細書の記載および特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」及び「含む(contain)」との単語、並びに、それらの変形は、「含むが、限定されない(including but not limited to)」を意味し、他の構成要素、整数(integers)またはステップを排除することを意図しない(排除しない)。本明細書全体を通して、単数形は、文脈上別段の定めがない限り、複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、本明細書は、文脈上別段の定めがない限り、単数だけでなく複数も想定していると理解すべきである。
【0127】
本発明の特定の態様、実施形態または実施例に関連して説明される特徴、整数、特性または群は、それらと両立しない場合を除き、任意の他の態様、実施形態または実施例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)に開示される特徴の全て、及び/又は、それに開示される任意の方法またはプロセスのステップの全ては、そのような特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互排他的である組合せを除いて、任意に組合せることができる。本発明は、前述の任意の実施例または実施形態の詳細に限定されない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約および図面のいずれをも含む)に開示される特徴の任意の新規な1若しくは任意の新規な組合せ、又は、それに開示される任意の方法もしくはプロセスにおけるステップの任意の新規な1若しくは任意の新規な組合せに及ぶ。
参照文献(許容される場合、参照により本明細書に組み込まれる)。
1.US20180375132A1 of Li et al., published Dec. 27, 2018, entitled “Reference Open-Circuit-Voltage Cell for Redox Flow Battery.”
2.US20190280316A1 of Min et al., published Sept. 12, 2019, entitled “Method and device for recycling electrolyte of flow battery.”
3.US20110311896 of Harper et al., published entitled “Integrated system for electrochemical energy storage system.”
4.Direct Measurement of Vanadium Crossover in an Operating Vanadium Redox Flow Battery; D.C Sing and J.P. Meyers, 2013 ECS Trans. 50 61.
5.Transference Numbers of Vanadium Cations in Nafion; R.M. Darling et al 2020, J. Electrochem Soc. 167 020429.
6.US20160056487A1 of Darling et al., published Feb. 25, 2016, entitled “Method of maintaining health of a flow battery.”
7.US 9853310 B2 of Darling et al., issued Dec. 26, 2017, entitled “Distribution of Electrolytes in a Flow Battery.”
【国際調査報告】