(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】STING及びTRIM29の相互作用阻害剤を有効成分として含有する癌免疫療法組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240822BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240822BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240822BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240822BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20240822BHJP
A61K 31/497 20060101ALI20240822BHJP
A61K 31/4965 20060101ALI20240822BHJP
A61K 31/708 20060101ALI20240822BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240822BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240822BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240822BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240822BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240822BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240822BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20240822BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240822BHJP
【FI】
A61K45/00
C12N15/63 Z ZNA
C12N15/12
C12Q1/02
A61K47/64
A61K31/497
A61K31/4965
A61K31/708
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
A61P43/00 111
A61P43/00 121
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513371
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 KR2022012938
(87)【国際公開番号】W WO2023033506
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】10-2021-0115253
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524003415
【氏名又は名称】スパーク・バイオファーマ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SPARK BIOPHARMA, INC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】パク,スンボム
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ワンサン
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045AA40
2G045CB01
2G045DA36
2G045FB13
4B063QA20
4B063QQ08
4B063QQ13
4B063QS03
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4B063QX02
4B065AA90X
4B065AA90Y
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4B065CA60
4C076CC07
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4C084AA17
4C084NA14
4C084ZB09
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4C084ZB27
4C084ZC41
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC48
4C086EA18
4C086GA02
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB08
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)及び三者モチーフ含有タンパク質29(TRIM29)の相互作用阻害剤を有効成分として含有する癌免疫療法組成物に関する。具体的には、本発明によるSTING及びTRIM29の相互作用阻害剤は、TRIM29によるSTINGの分解を阻害し、STINGの細胞内量を増加させることにより、STINGアゴニストであるcGAMPを介した免疫反応をさらに活性化させる。さらに、前記STING及びTRIM29の相互作用阻害剤は、STINGアゴニストであるcGAMP及び免疫チェックポイント阻害剤と併用投与すると、有意な免疫抗癌効能を示すことから、癌免疫療法剤、及び癌免疫療法補助剤として有効に用いることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)及び三者モチーフ含有タンパク質29(TRIM29)の相互作用阻害剤を有効成分として含有する癌免疫療法医薬組成物。
【請求項2】
前記相互作用阻害剤が、STINGに結合していることを特徴とする請求項1に記載の癌免疫療法医薬組成物。
【請求項3】
前記相互作用阻害剤が、TRIM29を介したSTINGのLys48重合マルチユビキチン化(K48結合特異的ポリユビキチン化)を介してSTINGの分解を阻害することを特徴とする請求項1に記載の癌免疫療法医薬組成物。
【請求項4】
前記相互作用阻害剤が、STINGを上方調節(upregulation)させることを特徴とする請求項1に記載の癌免疫療法医薬組成物。
【請求項5】
前記相互作用阻害剤が、STINGアゴニスト(agonist)の活性を増強させることを特徴とする請求項1に記載の癌免疫療法医薬組成物。
【請求項6】
前記相互作用阻害剤が、細胞殺害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)及びサイトカインからなる群から選択される1つ以上の免疫因子を活性化させることを特徴とする請求項1に記載の癌免疫療法医薬組成物。
【請求項7】
前記癌免疫療法剤が、偽粘液腫、肝内胆管癌、肝芽腫、肝癌、甲状腺癌、結腸癌、精巣癌、骨髄異形成症候群、膠芽細胞腫、口腔癌、口唇癌、菌状息肉腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、基底細胞癌、上皮性卵巣癌、卵巣胚細胞腫瘍、男性乳癌、脳腫瘍、下垂体腺腫、多発性骨髄腫、胆嚢癌、胆道癌、大腸癌、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、網膜芽細胞腫、脈絡膜メラノーマ、ファーター膨大部癌、膀胱癌、腹膜癌、副甲状腺癌、副腎癌、副鼻腔癌、非小細胞肺癌、舌癌、星状細胞腫、小細胞肺癌、小児脳腫瘍、小児リンパ腫、小児白血病、小腸癌、髄膜腫、食道癌、神経膠腫、腎盂癌、腎臓癌、心臓癌、十二指腸癌、悪性軟部組織癌、悪性骨肉腫、悪性リンパ腫、悪性中皮腫、悪性黒色腫、眼癌、外陰癌、尿管癌、尿道癌、原発部位不明の癌、胃リンパ腫、胃癌、胃カルチノイド、消化管間質腫瘍、ウィルムス腫瘍、乳癌、トリプルネガティブ乳癌、肉腫、陰茎癌、咽頭癌、妊娠性絨毛性疾患、子宮頸癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、前立腺癌、転移性骨癌、転移性脳腫瘍、縦隔腫瘍、直膓癌、直腸カルチノイド、膣癌、脊髄癌、聴神経鞘腫、膵臓癌、唾液腺癌、カポジ肉腫、パジェット病、へんとう腺癌、扁平上皮細胞癌、肺腺癌、肺癌、肺扁平上皮細胞癌、皮膚癌、肛門癌、横紋筋肉腫、喉頭癌、胸膜癌、血液癌及び胸腺癌からなる群から選択される1つ以上の癌を予防又は治療することを特徴とする請求項1に記載の癌免疫療法医薬組成物。
【請求項8】
下記式(7)
【化1】
(7)
[式中、R
1は、シクロアルキル、アリール又はアリール-アルキル(ここで、アリールは、アルコキシで任意に置換されていてもよい)であり;
R
2は、アルキル又はアリール-アルキル(ここで、アリールは、ハロゲンで任意に置換されていてもよい)であり;及び
R
3は、アミノ、アルキルアミノ、ジ-アルキルアミノ又はヘテロシクロアルキル-アルキレン-アミノである。]で示される化合物、その異性体、その溶媒和物、その水和物、又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する癌免疫療法医薬組成物。
【請求項9】
前記式(7)が、下記式(1)~下記式(6)で示される化合物のいずれか1つであることを特徴とする請求項8に記載の癌免疫療法医薬組成物:
【化2】
(1)
【化3】
(2)
【化4】
(3)
【化5】
(4)
【化6】
(5)及び
【化7】
(6)
【請求項10】
前記化合物が、STING及びTRIM29の相互作用を阻害することを特徴とする請求項8に記載の癌免疫療法医薬組成物。
【請求項11】
前記化合物が、TRIM29を介したSTINGのLys48重合マルチユビキチン化を介してTINGの分解を阻害し、STINGの上方調節又はSTINGタンパク質の量を増加させることを特徴とする請求項8に記載の癌免疫療法医薬組成物。
【請求項12】
前記化合物が、細胞殺害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラー細胞及びサイトカインからなる群から選択される1つ以上の免疫因子を活性化させることを特徴とする請求項8に記載の癌免疫療法医薬組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の相互作用阻害剤、請求項8に記載の式(7)で示される化合物、その異性体、その溶媒和物、その水和物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する癌免疫療法補助剤。
【請求項14】
前記癌免疫療法補助剤が、癌免疫療法剤の効能を増強させることを特徴とする請求項13に記載の癌免疫療法補助剤。
【請求項15】
前記癌免疫療法補助剤が、癌免疫療法剤と同時又は逐次投与されることを特徴とする請求項13に記載の癌免疫療法補助剤。
【請求項16】
前記癌免疫療法剤が、c-di-GMP(環状グアニレート)、cGAMP、3’3’-cGAMP、c-di-GAMP、c-di-AMP、2’3’-cGAMP、抗PD1、抗PDL1、抗CTLA4、抗LAG3、抗VISTA、抗BTLA、抗TIM3、抗HVEM、抗CD27、抗CD137、抗OX40、抗CD28、抗PDL2、抗GITR、抗ICOS、抗SIRPα、抗ILT2、抗ILT3、抗ILT4、抗ILT5、抗EGFR、抗CD19及び抗TIGITからなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする請求項15に記載の癌免疫療法補助剤。
【請求項17】
癌免疫療法剤及び請求項13に記載の癌免疫療法補助剤を含む抗癌用併用製剤。
【請求項18】
癌免疫療法剤をスクリーニングする方法であって、
(1)発光タンパク質に結合したSTINGタンパク質及び発光タンパク質に結合したTRIM29タンパク質をそれぞれコードする遺伝子を含むベクターを製造する工程;
(2)前記工程(1)のベクターを細胞に形質転換する工程;
(3)前記工程(2)の形質転換細胞に被検物質を処理する工程;
(4)工程(3)の被検物質で処理した細胞を未処理対照群と比較し、処理細胞からの発光信号を減少させる物質を選択する工程;
を含む癌免疫療法剤のスクリーニング方法。
【請求項19】
工程(1)の発光タンパク質に結合したSTINGタンパク質が、STINGのC末端にLgBiTが結合させることにより得られることを特徴とする請求項18に記載の癌免疫療法剤のスクリーニング方法。
【請求項20】
工程(1)の発光タンパク質に結合したTRIM29タンパク質が、TRIM29のC末端にSmBiT又はN末端にSmBiTが結合させることにより得られることを特徴とする請求項18に記載の癌免疫療法剤のスクリーニング方法。
【請求項21】
前記癌免疫療法剤が、STINGとTRIM29の相互作用を調節することにより、STINGを上方調節させることを特徴とする請求項18に記載の癌免疫療法剤のスクリーニング方法。
【請求項22】
発光タンパク質に結合したSTINGタンパク質及び発光タンパク質に結合したTRIM29タンパク質を含む癌免疫療法剤のスクリーニング用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)及び三者モチーフ含有タンパク質29(TRIM29)の相互作用阻害剤を有効成分として含有する癌免疫療法剤及び癌免疫療法補助剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
癌は一般に、ヒトの組職を形成する細胞周期の異常により、細胞が正常に分化せず分裂を続ける疾患であり、開始(initiation)、促進(promotion)及び進行(progression)の3段階を経て発生する。癌の原因は、環境や食品に含まれた発癌物質により正常細胞の遺伝子や癌抑制遺伝子に変異が生じ、これらの細胞が発癌物質によって刺激され続けることで異常に増殖し、癌組織を形成することにあることが知られている。
【0003】
癌の治療の多くは、化学療法とともに外科手術、放射線療法、免疫抗癌剤療法などがあり、癌を治療するための抗癌剤を研究する方法としては、癌細胞に対して直接細胞毒性を示す物質を探索する方法、生体の免疫能力を調節する物質を探索する方法、癌細胞の転移を抑制する物質を探索する方法及び血管新生を抑制する物質を探索する方法などがある。しかし、現在臨床で使用されている抗癌剤の多くは化学的に合成された物質であり、正常細胞への毒性を引き起こすなどの問題があり、最近は、これらの問題を解決するために免疫反応を利用した治療が注目されている。
【0004】
一方、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)は、DNAを感知する抗ウイルス免疫において中枢的な役割を果たしている。具体的には、異常な細胞質DNAが感知されると、先天性免疫因子として働くcGAMP(環状GMP-AMP)がcGAMP合成酵素(cGAS)によって産生され、cGAMPは免疫受容体であるSTINGを活性化させる。さらに、活性かされたSTINGは、I型インターフェロンと炎症性サイトカインの産生を誘導し、損傷した宿主細胞を除去するために適応免疫細胞を動員する。従って、STINGは先天免疫と適応免疫の間の中心的なインターフェースとして働く。実際、最近の研究によれば、STINGアゴニスト(agonist)の腫瘍内投与が腫瘍微小環境(TME)における局所免疫を活性化し、癌を除去するエフェクター細胞を動員することが示されている。
【0005】
また、三者モチーフ含有タンパク質29(TRIM29)E3リガーゼは、STINGの直接調節因子であり、TRIM29媒介STINGユビキチン化は、K48結合特異的に宿主免疫細胞と癌細胞の両方でSTINGを分解する。通常の条件下では、TRIM29はSTINGの非免疫原性分解を促進し、対照的に、TRIM29の過発現は免疫反応を妨害し、STINGアゴニストによる治療時にサイトカイン産生を減少させる。しかし、多くの研究は、TRIM29の直接阻害が癌転移を誘発すると報告されている。TRIM29は、転移性黒色腫において高度に下方調節されている遺伝子であり、TRIM29の損失はケラチンの分布を崩壊することにより、扁平上皮癌の転移プロファイルを増加させる。しかし、STINGとTRIM29の間のタンパク質間相互作用(PPI)の特定摂動(perturbation)が潜在的な転移リスクを伴うことなく細胞STINGレベルを増加させることにより、STINGアゴニストの効力の弱体化を克服できることはまだ示されていない。
【0006】
そこで、本発明者らは、STINGとTRIM29の相互作用を阻害し、TRIM29によるSTINGの分解を阻止する癌免疫療法剤を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、STINGとTRIM29の相互作用を阻害する化合物をスクリーニングできる高効率生理活性検索法を構築し、前記構築したシステムによりオキソピペラジン誘導体を見出した。また、本発明者らは、前記オキソピペラジン誘導体が、STINGの細胞内量を増加させることにより、STINGアゴニストであるcGAMPが媒介する免疫反応をさらに活性化し、cGAMP療法及び免疫チェックポイント阻害剤である抗PD-1療法の免疫癌効果を増強させることができることが確認された。従って、本発明によるSTINGとTRIM29の相互作用阻害剤が、癌免疫療法剤及び癌免疫療法補助剤の有効成分として有用に使用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Q. Chen, L. Sun, Z. J. Chen, Regulation and function of the cGAS-STING pathway of cytosolic DNA sensing. Nat. Immunol. 17, 1142-1149 (2016).
【非特許文献2】L. Sun, J. Wu, F. Du, X. Chen, Z. J. Chen, Cyclic GMP-AMP Synthase Is a Cytosolic DNA Sensor That Activates the Type I Interferon Pathway. Science. 339, 786-791 (2013).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)及び三者モチーフ含有タンパク質29(TRIM29)の相互作用阻害剤、並びに癌免疫療法への使用を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、前記インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)及び三者モチーフ含有タンパク質29(TRIM29)の相互作用阻害剤を見出すためのスクリーニング方法及びスクリーニング用キットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)及び三者モチーフ含有タンパク質29(TRIM29)の相互作用阻害剤を有効成分として含有する癌免疫療法医薬組成物を提供する。
【0011】
本発明は、オキソピペラジン誘導体、その異性体、その溶媒和物、その水和物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する癌免疫療法医薬組成物を提供する。
また、本発明は、前記STING及びTRIM29の相互作用阻害剤、その異性体、その溶媒和物、その水和物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する癌免疫療法補助剤を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、癌免疫療法剤及び前記癌免疫療法補助剤を含む抗癌用併用製剤を提供する。
また、本発明は、
(1)発光タンパク質に結合したSTINGタンパク質及び発光タンパク質に結合したTRIM29タンパク質をそれぞれコードする遺伝子を含むベクターを製造する工程;
(2)前記工程(1)のベクターを細胞に形質転換する工程;
(3)前記工程(2)の形質転換細胞に被検物質を処理する工程;
(4)工程(3)の被検物質で処理した細胞を未処理対照群と比較し、処理細胞からの発光信号を減少させる物質を選択する工程;
を含む癌免疫療法剤のスクリーニング方法を提供する。
さらに、本発明は、発光タンパク質に結合したSTINGタンパク質及び発光タンパク質に結合したTRIM29タンパク質を含む癌免疫療法剤のスクリーニング用キットを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)及び三者モチーフ含有タンパク質29(TRIM29)の相互作用阻害剤は、TRIM29によるSTINGの分解を阻害し、STINGの細胞内量を増加させることにより、STINGアゴニストであるcGAMPが媒介する免疫反応をさらに活性化させる。さらに、STINGアゴニストであるcGAMP及び免疫チェックポイント阻害剤と併用して投与すると、有意な免疫癌効能を示す。従って、前記STING及びTRIM29の相互作用阻害剤は、癌免疫療法剤、及び癌免疫療法補助剤として有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)と三者モチーフ含有タンパク質29(TRIM29)の相互作用を阻害する化合物をスクリーニンするための本発明のスクリーニング系の概略図である。
【
図2】STING及びTRIM29のN末端及びC末端のそれぞれにNanoBiT(LgBiTとSmBiT)を導入して得られた合計8種類の組み合わせを用いた最適化スクリーニング系の確認する図である: NL:N末端にLgBiT導入して得られる基; NS:N末端にSmBiT導入して得られる基; CL:C末端にLgBiT導入して得られる基;及び CS:C末端にSmBiT導入して得られる基。
【
図3】STING-TRIM29相互作用を阻害することにより、ルシフェラーゼ相補アッセイによる発光信号を減少させるオキソピペラジン誘導体の効果を示す図である: 1:本発明の式(1)(以下、本発明の図面において、式(1)の化合物を「1」と表記する); 2:本発明の式(2)(以下、本発明の図面において、式(2)の化合物を「2」と表記する); 3:本発明の式(3)(以下、本発明の図面において、式(3)の化合物を「3」と表記する); 4:本発明の式(4)(以下、本発明の図面において、式(4)の化合物を「4」と表記する); 5:本発明の式(5)(以下、本発明の図面において、式(5)の化合物を「5」と表記する);及び 6:本発明の式(6)(以下、本発明の図面において、式(6)の化合物を「6」と表記する)。
【
図4】オキソピペラジン誘導体の細胞内STINGタンパク質量増加誘導効果を示す図である。
【
図5】本発明のオキソピペラジン誘導体とcGAMPとの共処理によるSTINGサブサイトカインであるIFN-βとIL-6の発現増加効果を示す図である。
【
図6】STINGサブサイトカインであるIL-15及びIL-15Rα発現の増加に対する式(1)の化合物の効果の時間依存的及び用量依存的確認を示す図である。
【
図7】ウェスタンブロッティングによるSTINGサブ免疫シグナル伝達経路の活性化の増大に対する式(1)の化合物の効果の確認を示す図である。
【
図8】ユビキチンタンパク質中のリシン残基48以外の全てのリシン残基をアルギニンに置換した形質転換ユビキチンタンパク質を用い、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)法に基づく定量的STINGのLys48重合マルチユビキチン化の検出の結果、式(1)の化合物によるSTINGのLys48重合マルチユビキチン化の用量依存的な減少が確認されたことを示す図である。
【
図9】プロテアソーム阻害剤であるMG132で処理することによりユビキチン化タンパク質の分解を阻止した場合に、式(1)の化合物のSTING増加効果が消失するか否かの確認を示す図である。
【
図10】式(1)の化合物のSTINGの発現増加効果が、タンパク質転写阻害剤(シクロヘキサミド、CHX)と転写阻害剤(アクチンマイシンD、ActD)によって阻害されないことを確認するために、ユビキチン介在性の反応以外の別の細胞機構を介して発現増加作用が示されるか否かの確認を示す図である。
【
図11】ヒト細胞株であるA431におけるCETSAの結果を通じてSTINGのみに選択的に結合することにより、式(1)の化合物が熱不安定化を誘導することの確認を示す図である。
【
図12】ヒト細胞株であるA431におけるITDRF結果によるTRIM29に影響を与えることなく、高濃度の式(1)の化合物によるSTINGの濃度依存的熱安定性の交差検証を示す図である。
【
図13】マウス細胞株であるRaw264.7におけるCETSAの結果を通じてSTINGのみに選択的に結合することにより、式(1)の化合物が熱不安定化を誘導することの確認を示す図である。
【
図14】マウス細胞株であるRaw264.7におけるITDRF結果によるTRIM29に影響を与えることなく、高濃度の式(1)の化合物によるSTINGの濃度依存的熱安定性の交差検証を示す図である。
【
図15】Raw264.7細胞を式(1)の化合物で処理した場合のフローサイトメトリーによる細胞内STINGの蛍光標識強度の確認を示す図である。
【
図16】Raw264.7細胞を式(1)の化合物を処理した場合のウェスタンブロッティング分析によるSTINGの細胞内量の確認を示す図である。
【
図17】Raw264.7細胞を式(1)の化合物を処理した場合のqRT-PCR法によるSTINGの細胞内mRNA発現量の確認を示す図である。
【
図18】式(1)の化合物のSTINGアゴニストであるcGAMPによるBMDCの抗原提示能増大効果の確認を示す図である。また、化合物により細胞殺害性T細胞の増殖が増加することを確認した図である。この化合物のこれらの効果が、cGAMPと併用投与すると、相乗効果が発揮されることが確認された。
【
図19】式(1)の化合物及びcGAMPの同時処理によるBMDCの交差抗原提示能の確認を示す図である。
【
図20】
図19の実験を通して、活性化OT-1 T細胞がOVAを発現する細胞株のみを選択的に死滅させることを確認した図である。
【
図21】式(1)の化合物を単独で、又はcGAMPとの併用処理する条件下で、細胞殺害性T細胞の死が誘導又は促進されないことを確認した図である。
【
図22】インビボ同種マウスモデル(in vivo syngeneic mouse model)における式(1)の化合物によるcGAMPの免疫抗癌効能を確認するための動物実験方法を示す模式図である。
【
図23】インビボ同種マウスモデルにおけるcGAMP及び式(1)の化合物の併用処理の実験群における腫瘍成長抑制効果の確認を示す図である。
【
図24】インビボ同種マウスモデルにおけるcGAMP及び式(1)の化合物の併用処理の実験群における体重変化及び毒性信号の確認を示す図である。
【
図25】腫瘍組織への免疫細胞の浸潤、及び浸潤した免疫細胞の活性化の程度を検証するための実験手順を示す図である。
【
図26】cGAMPと式(1)の化合物を単独で、又は併用処理後の腫瘍組織への免疫細胞の浸潤、及び浸潤した免疫細胞の活性化の程度の確認を示す図である。
【
図27】腫瘍内部の免疫細胞におけるSTINGの発現レベルを確認するための実験手順を示す図である。
【
図28】式(1)の化合物の治療による腫瘍内部の免疫細胞におけるSTINGの発現レベルの確認を示す図である。
【
図29】式(1)の化合物の抗癌免疫体系構築効果を確認するための実験手順を示す図である。
【
図30】式(1)の化合物の抗癌免疫体系構築促進効果を示す図である。
【
図31】式(1)の化合物及び免疫チェックポイント治療剤との併用処理の効果を確認するための実験手順を示す図である。
【
図32】式(1)の化合物及び免疫チェックポイント治療剤との併用処理の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明は、インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)及び三者モチーフ含有タンパク質29(TRIM29)の相互作用阻害剤を有効成分として含有する癌免疫療法医薬組成物を提供する。
【0017】
前記相互作用阻害剤は、好ましくは低分子化合物、ペプチド、又は抗体であるが、これらに限定されるものではなく、下記式(7)
【化1】
(7)
[式中、R
1は、シクロアルキル、具体的には、C
3-C
7シクロアルキル、アリール、具体的にはC
6-C
10アリール、又はアリール-アルキル、具体的には、C
6-C
10アリール-C
1-C
5アルキル(ここで、アリールは、アルコキシで任意に置換されていてもよい)であり;
R
2は、アルキル又はアリール-アルキル、具体的には、C
6-C
10アリール-C
1-C
5アルキル(ここで、アリールは、ハロゲンで任意に置換されていてもよい)であり;及び
R
3は、アミノ、アルキルアミノ、ジ-アルキルアミノ又はヘテロシクロアルキル-アルキレン-アミノである。]で示される化合物、その異性体、その溶媒和物、その水和物又はその薬学的に許容される塩であってもよい。
【0018】
また、前記式(7)が、下記式(1)~式(6)で示される化合物であることが好ましいが、これらに限定されるものではない:
【化2】
(1)
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
前記相互作用阻害剤は、STINGに結合し、TRIM29を介したSTINGのLys48重合マルチユビキチン化(K48結合特異的ポリユビキチン化)を介してSTINGの分解を阻害することが好ましいが、これに限定されない。
【0025】
また、前記相互作用阻害剤は、STINGを上方調節(upregulation)し、STINGアゴニストの活性を増強させることが好ましく、前記STINGアゴニストは、c-di-GMP(環状グアニレート)、cGAMP、3’3’-cGAMP、c-di-GAMP、c-di-AMP又は2’3’-cGAMPであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0026】
また、前記相互作用阻害剤は、細胞殺害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)及びサイトカインからなる群から選択される1つ以上の免疫因子を活性化し、偽粘液腫、肝内胆管癌、肝芽腫、肝癌、甲状腺癌、結腸癌、精巣癌、骨髄異形成症候群、膠芽細胞腫、口腔癌、口唇癌、菌状息肉腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、基底細胞癌、上皮性卵巣癌、卵巣胚細胞腫瘍、男性乳癌、脳腫瘍、下垂体腺腫、多発性骨髄腫、胆嚢癌、胆道癌、大腸癌、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、網膜芽細胞腫、脈絡膜メラノーマ、ファーター膨大部癌、膀胱癌、腹膜癌、副甲状腺癌、副腎癌、副鼻腔癌、非小細胞肺癌、舌癌、星状細胞腫、小細胞肺癌、小児脳腫瘍、小児リンパ腫、小児白血病、小腸癌、髄膜腫、食道癌、神経膠腫、腎盂癌、腎臓癌、心臓癌、十二指腸癌、悪性軟部組織癌、悪性骨肉腫、悪性リンパ腫、悪性中皮腫、悪性黒色腫、眼癌、外陰癌、尿管癌、尿道癌、原発部位不明の癌、胃リンパ腫、胃癌、胃カルチノイド、消化管間質腫瘍、ウィルムス腫瘍、乳癌、トリプルネガティブ乳癌、肉腫、陰茎癌、咽頭癌、妊娠性絨毛性疾患、子宮頸癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、前立腺癌、転移性骨癌、転移性脳腫瘍、縦隔腫瘍、直膓癌、直腸カルチノイド、膣癌、脊髄癌、聴神経鞘腫、膵臓癌、唾液腺癌、カポジ肉腫、パジェット病、へんとう腺癌、扁平上皮細胞癌、肺腺癌、肺癌、肺扁平上皮細胞癌、皮膚癌、肛門癌、横紋筋肉腫、喉頭癌、胸膜癌、血液癌及び胸腺癌からなる群から選択される1つ以上の癌に対して予防又は治療効果を有することが好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
従って、式(1)~式(6)で示されるオキソピペラジン誘導体は、STING及びTRIM29の相互作用を阻害し、STINGタンパク質の量を増加させ、TRIM29を介したSTINGのLys48重合マルチユビキチン化によるSTINGの分解を阻害することが好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
本発明の具体的な実施形態において、STINGとTRIM29の相互作用を阻害する化合物をスクリーニングするために、本発明者らは、STINGのC末端にLgBiT、TRIM29のN末端又はC末端にSmBiT発光タンパク質を結合させる、タンパク質間相互作用戦略(UPPRIS)による標的タンパク質の新規な上方調節を確立した(
図1及び
図2参照)。
【0029】
また、本発明者らは、前記確立したスクリーニング系を用いて、STING-TRIM29相互作用を阻害する式(1)~式(6)で示されるオキソピペラジン誘導体を確認した(
図3参照)。
【0030】
さらに、本発明者らは、前記オキソピペラジン誘導体が細胞内STINGタンパク質量の増加を誘導する効果を検討した結果、全てのオキソピペラジン誘導体が細胞内STING量を有意に増加させることを確認した(
図4参照)。
【0031】
また、本発明者らは、STINGアゴニスト(cGAMP)の免疫活性化効能の増加に対するオキソピペラジン誘導体の効果を調べた結果、全てのオキソピペラジン誘導体が、cGAMPとの共処理下で、STINGサブサイトカインの発現を増加させ、下流のシグナル伝達タンパク質のリン酸化を増加させることを確認した(
図6及び
図7参照)。
【0032】
また、本発明者らは、オキソピペラジン誘導体によるSTINGの分解阻害のメカニズムを検討した結果、オキソピペラジン誘導体が、TRIM29を介したSTINGのLys48重合マルチユビキチン化(K48結合特異的ポリユビキチン化)を介してSTINGの分解を阻害し、細胞内量を増加させることを確認した(
図8~
図10参照)。
【0033】
そこで、本発明者らは、オキソピペラジン誘導体がSTINGに結合するか否かを検討した結果、オキソピペラジン誘導体がSTINGとTRIM29のうちSTINGに結合し、STINGとTRIM29相互作用を阻害することを確認した(
図11~
図13参照)。
【0034】
また、本発明者らは、オキソピペラジン誘導体がSTINGアゴニストやその他の癌免疫療法の効能を高める効果を有することを確認するために、まず、オキソピペラジン誘導体がSTINGの量を増加させる否かを検討した結果、オキソピペラジン誘導体で処理した群では細胞内STING量が有意に増加することを確認した(
図15参照)。
【0035】
さらに、本発明者らは、STINGアゴニストによる骨髄由来樹状細胞(BMDC)の抗原提示能の増大に対するオキソピペラジン誘導体の効果を検討し、これにより、オキソピペラジン誘導体がSTINGアゴニストのBMDCの細胞殺害性T細胞(CD8
+T細胞)に対する抗原提示能を増大させることを確認した(
図18参照)。
【0036】
また、本発明者らは、オキソピペラジン誘導体及びcGAMPの同時処理によるBMDCの交差抗原提示能を確認した結果、OVA抗原を持続的に発現するMC38細胞株(MC38-OVA)と対照群のMC38細胞株を死滅処理する際に、式(1)の化合物が、濃度依存的にcGAMPによるBMDCの活性化及びBMDCからOT-1T細胞への抗原提示能を増強させることにより細胞増殖を促進すること(
図19参照)、及びOT-1T細胞がOVAを発現する細胞株のみを選択的に死滅させることを確認した(
図20参照)。
【0037】
また、本発明者らは、CD8
+T細胞をcGAMP及び/又はオキソピペラジン誘導体で処理する場合のT細胞死分析を行った結果、オキソピペラジン誘導体単独又はcGAMPとの併用で処理した場合、cGAMPで処理した場合と比較して、細胞殺害性T細胞の死滅を誘導も促進もされないことを確認した(
図21参照)。
【0038】
さらに、本発明者らは、インビボ同種マウスモデルにおけるオキソピペラジン誘導体によるcGAMPの免疫抗癌効能を高める効果を確認するために、まず、腫瘍成長抑制効果を検討した結果、cGAMPとオキソピペラジン誘導体との併用処理実験群では、実験群では腫瘍成長が抑制され、毒性信号が観察されないことを確認した(
図23及び
図24参照)。
【0039】
また、本発明者らは、オキソピペラジン誘導体の免疫活性化作用及び免疫抗癌効能増大作用を検討した結果、cGAMPとオキソピペラジン誘導体の併用処理した条件下で、腫瘍内へのT細胞及び細胞殺害性T細胞の浸潤が増加し、免疫反応を抑制する細胞である骨髄由来抑制細胞(MDSC)の総比率が低下することを確認することにより、免疫反応環境全体が活性化されることを確認した(
図25及び
図26参照)。
【0040】
さらに、本発明者らは、オキソピペラジン誘導体による腫瘍内部免疫細胞におけるSTING増加が、免疫活性化及び免疫抗癌効能の増大の基準であることを検証した結果、腫瘍関連マクロファージ(TAM)及び樹状細胞(DC)に代表される抗原提示細胞においてSTINGの量が増加していることを確認した(
図27及び
図28参照)。
【0041】
また、本発明者らは、抗癌免疫体系構築効果を検討した結果、cGAMPの単独投与と比較して、オキソピペラジン誘導体との併用処理では、原発性腫瘍において濃度依存的に腫瘍成長が抑制され、最終的な腫瘍質量が減少することが確認された。さらに、本発明者らは、薬剤を直接注射しない二次癌においても腫瘍死滅が効果的に起こることを最終的に確認した(
図29及び
図30参照)。
【0042】
さらに、本発明者らは、免疫チェックポイント治療剤との併用効果を検討した結果、PD-1抗体とオキソピペラジン誘導体を併用処理した場合、PD-1抗体単独処理した場合と比較して、腫瘍成長及び最終腫瘍重量が濃度依存的に減少することを確認した(
図31及び
図32参照)。
【0043】
従って、本発明によるSTINGとTRIM29の相互作用阻害剤は、STING-TRIM29相互作用を阻害することにより、TRIM29によるSTINGの分解を阻害し、STINGの細胞内量を増加させることにより、STINGアゴニストであるcGAMP媒介の免疫反応をさらに活性化し、また、STINGアゴニストであるcGAMP及び免疫チェックポイント阻害剤と併用処理することにより、有意な免疫抗癌効能を示すことから、前記STING及びTRIM29の相互作用阻害剤は、癌免疫療法剤、及び癌免疫療法補助剤として有用に使用することができる。
【0044】
本発明の前記式(7)で示される化合物は、薬学的に許容される塩の形態で使用することができ、薬学的に許容可能な遊離酸によって形成される酸付加塩は、塩として有用である。酸付加塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜窒酸、亜燐酸などの無機酸、脂肪族モノ及びジカルボン酸塩、フェニル置換アルカン酸塩、ヒドロキシアルカン酸塩、アルカンジオ酸塩、芳香族酸塩、脂肪族及び芳香族スルホン酸塩などの無毒性有機酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、安息香酸、クエン酸、乳酸、マレイン酸、グルコン酸、メタンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、酒石酸、フマル酸などの有機酸から得られる。これらの薬学的に無毒な塩には、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩化物、臭化物 ヨウ化物、フッ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオリン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキサン-1,6-ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、安息香酸メチル、安息香酸ジニトロ、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニルアセテート、フェニルプロピオネート、フェニルブチレート、クエン酸塩、乳酸塩、β-ヒドロキシブチレート、グリコール酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、マンデル酸塩などを含む。
【0045】
本発明による酸付加塩は、当該分野の通方法によって製造することができ、例えば、式(7)のオキソピペラジン誘導体をメタノール、エタノール、アセトン、塩化メチレン、アセトニトリルなどの有機溶媒に溶解し、そこに有機酸又は無機酸を加えて得られた沈殿物をろ過し、乾燥することによって製造できるか、溶媒と過剰の酸を減圧下で蒸留し、乾燥して得られたものを有機溶媒中で結晶化して製造することができる。
【0046】
さらに、薬学的に許容される金属塩は、塩基を用いて製造することができる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩は、例えば、化合物を過剰のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物溶液に溶解し、不溶性の化合物塩をろ過し、ろ液を蒸発、乾燥することにより得られる。このとき、金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩又はカルシウム塩を製造することが薬学的に適切である。さらに、対応する塩は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を適切な陰性塩(例えば、硝酸銀)と反応させることにより得られる。
【0047】
さらに、本発明は、前記式(7)で示される化合物及びその薬学的に許容される塩だけでなく、それから製造され得る溶媒和物、光学異性体、水和物なども含まれる。
【0048】
本発明における用語「水和物」は、非共有分子間力(non-covalent intermolecular force)によって結合した化学量論的又は非化学量論的量の水を含む本発明の化合物又はその塩を意味する。本発明の前記式(7)で示される化合物の水和物は、非共有分子間力によって結合した化学量論的又は非化学量論的量の水を含んでもよい。前記水和物は、1当量以上、好ましくは、1当量~5当量の水を含んでもよい。このような水和物は、本発明の前記式(7)で示される化合物、その異性体又はその薬学的に許容される塩を水又は水を含有する溶媒から結晶化させることによって製造することができる。
【0049】
また、本発明における用語「溶媒和物」は、非共有分子間力によって結合した化学量論的又は非化学量論的量の溶媒を含む本発明の化合物又はその塩を意味する。そのための好ましい溶媒には、揮発性、非毒性、及び/又はヒトへの投与に適した溶媒が含まれる。
また、本発明における用語「異性体」は、化学式又は分子式が同じであるが、構造的又は立体的に異なる本発明の化合物又はそれの塩を意味する。これらの異性体には、互変異性体などの構造異性体と、不斉炭素中心を有するR又はS異性体、幾何異性体(トランス、シース)などの立体異性体、光学異性体(エナンチオマー)の全てが含まれる。これら全ての異性体及びそれらの混合物も本発明の範囲内に含まれる。
【0050】
本発明による前記癌免疫療法医薬組成物において、前記式(7)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩は、臨床投与時に様々な経口及び非経口の剤形で投与され得る。製剤化される場合、一般に使用される充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を使用して調製される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、粉末、顆粒、カプセル剤などが含まれ、これらの固形製剤は、1つ以上の化合物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、スクロース又はラクトース、ゼラチンなどと混合することにより調製される。また、単純な賦形剤に加えて、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの潤滑剤も使用される。経口投与のための液剤には、懸濁剤、内服剤、乳剤、シロップ剤などがある。一般に使用される単純な希釈剤である水、流動パラフィンに加えて、様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてもよい。非経口投与のための製剤には、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁化剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能なエステルなどが使用することができる。
【0051】
前記式(7)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する癌免疫療法医薬組成物は、非経口投与することができ、非経口投与は、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射又は胸腔内注射などの注射法により行うことができる。
【0052】
このとき、非経口投与用製剤を製剤化するために、前記式(7)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を安定剤又は緩衝剤とともに水と混合して溶液又は懸濁液を製造し、この溶液又は懸濁液をアンプル又はバイアル単位剤形にして投与することができる。前記組成物は滅菌することができ、及び/又は防腐剤、安定化剤、水和剤又は乳化促進剤、浸潤圧調節のための塩及び/又は緩衝剤などの補助剤、及び他の治療上有用な物質を含むことができ、通常の方法である混合、造粒又はコーティング方法によって製剤化することができる。
【0053】
経口投与用製剤のさらなる例としては、錠剤、丸剤、硬質/軟質カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳化剤、シロップ剤、顆粒、エリキシル剤、トローチ剤などがあるが、これら製剤は、有効成分に加えて、希釈剤(例:ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース及び/又はグリシン)、滑沢剤(例:シリカ、タルク、ステアリン酸及びそのマグネシウム又はカルシウム塩及び/又はポリエチレングリコール)を含有している。錠剤は、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプンペースト、ゼラチン、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及び/又はポリビニルピロリジンなどの結合剤を含むことができ、場合によっては、デンプン、寒天、アルギン酸又はそのナトリウム塩などの崩壊剤又は沸騰混合物及び/又は吸収剤、着色剤、香味剤、及び甘味剤を含むことができる。
【0054】
また、本発明は、STINGとTRIM29の相互作用阻害剤、式(7)で示される化合物、その異性体、その溶媒和物、その水和物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する癌免疫療法補助剤を提供する。
【0055】
また、本発明は、前記癌免疫療法補助剤及び癌免疫療法剤を含む抗癌用併用製剤を提供する。
【0056】
前記癌免疫療法補助剤は、癌免疫療法剤の効能を高め、細胞殺害性T細胞、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)及びサイトカインからなる群から選択される1つ以上の免疫因子を活性化することが好ましい。
【0057】
また、前記癌免疫療法補助剤は、癌免疫療法剤と同時又は逐次投与されることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0058】
前記癌免疫療法剤は、STINGシグナル伝達(signaling)を活性化し得るc-di-GMP(環状グアニレート)、cGAMP、3’3’-cGAMP、c-di-GAMP、c-di-AMP、2’3’-cGAMP、抗PD1、抗PDL1、抗CTLA4、抗LAG3、抗VISTA、抗BTLA、抗TIM3、抗HVEM、抗CD27、抗CD137、抗OX40、抗CD28、抗PDL2、抗GITR、抗ICOS、抗SIRPα、抗ILT2、抗ILT3、抗ILT4、抗ILT5、抗EGFR、抗CD19及び抗TIGITからなる群から選択される1つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0059】
前記癌免疫療法補助剤又は併用製剤は、偽粘液腫、肝内胆管癌、肝芽腫、肝癌、甲状腺癌、結腸癌、精巣癌、骨髄異形成症候群、膠芽細胞腫、口腔癌、口唇癌、菌状息肉腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、基底細胞癌、上皮性卵巣癌、卵巣胚細胞腫瘍、男性乳癌、脳腫瘍、下垂体腺腫、多発性骨髄腫、胆嚢癌、胆道癌、大腸癌、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、網膜芽細胞腫、脈絡膜メラノーマ、ファーター膨大部癌、膀胱癌、腹膜癌、副甲状腺癌、副腎癌、副鼻腔癌、非小細胞肺癌、舌癌、星状細胞腫、小細胞肺癌、小児脳腫瘍、小児リンパ腫、小児白血病、小腸癌、髄膜腫、食道癌、神経膠腫、腎盂癌、腎臓癌、心臓癌、十二指腸癌、悪性軟部組織癌、悪性骨肉腫、悪性リンパ腫、悪性中皮腫、悪性黒色腫、眼癌、外陰癌、尿管癌、尿道癌、原発部位不明の癌、胃リンパ腫、胃癌、胃カルチノイド、消化管間質腫瘍、ウィルムス腫瘍、乳癌、トリプルネガティブ乳癌、肉腫、陰茎癌、咽頭癌、妊娠性絨毛性疾患、子宮頸癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、前立腺癌、転移性骨癌、転移性脳腫瘍、縦隔腫瘍、直膓癌、直腸カルチノイド、膣癌、脊髄癌、聴神経鞘腫、膵臓癌、唾液腺癌、カポジ肉腫、パジェット病、へんとう腺癌、扁平上皮細胞癌、肺腺癌、肺癌、肺扁平上皮細胞癌、皮膚癌、肛門癌、横紋筋肉腫、喉頭癌、胸膜癌、血液癌及び胸腺癌からなる群から選択される1つ以上に対して抗癌活性を有することが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0060】
また、本発明による癌免疫療法補助剤及び併用製剤の具体的な説明は、本発明による「癌免疫療法用医薬組成物」の説明と同様である。
【0061】
さらに、本発明は、
(1)発光タンパク質に結合したSTINGタンパク質及び発光タンパク質に結合したTRIM29タンパク質をそれぞれコードする遺伝子を含むベクターを製造する工程;
(2)前記工程(1)のベクターを細胞に形質転換する工程;
(3)前記工程(2)の形質転換細胞に被検物質を処理する工程;
(4)工程(3)の被検物質で処理した細胞を未処理対照群と比較し、処理細胞からの発光信号を減少させる物質を選択する工程;
を含む癌免疫療法剤のスクリーニング方法を提供する。
【0062】
また、本発明は、発光タンパク質に結合したSTINGタンパク質及び発光タンパク質に結合したTRIM29タンパク質を含む癌免疫療法剤のスクリーニング用キットを提供する。
【0063】
前記工程(1)の発光タンパク質に結合したSTINGタンパク質は、STINGのC末端にLgBiTが結合させることによって得られ、発光タンパク質に結合したTRIM29タンパク質は、TRIM29のC末端又はN末端にSmBiTが結合させることによって得られる。LgBiTとSmBiTは直接相互作用することはなく、結合したタンパク質間の相互作用を介してのみ結合し、発光酵素の機能を行う。
【0064】
前記工程(1)のベクターは、宿主細胞において目的遺伝子を発現させるための手段を意味する。前記ベクターは、目的遺伝子発現のためのエレメントを含み、複製起点、プロモーター、オペレータ遺伝子(operator)、転写終結配列(terminator)などを含み、さらに、宿主細胞のゲノムへの導入及び/又は宿主細胞への導入の成功に適切な酵素部位(例えば、制限酵素部位)を確認するための選択マーカー、及び/又はタンパク質への翻訳のためのリボソーム結合部位(RBS)、IRES(内部リボソーム侵入部位)などを含むことができる。前記ベクターはさらに、前記プロモーター以外の転写調節配列(例えば、エンハンサー)を含むことができる。
【0065】
さらに、前記ベクターは、プラスミドDNA、組換えベクター又はその他の当該技術分野で公知の担体であってもよく、具体的には、直鎖状DNAプラスミドDNA、組換え非ウイルス性ベクター、組換えウイルス性ベクター又は遺伝子発現誘導ベクター系であってもよく、前記組換えウイルス性ベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルパー-依存性アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、レンチウイルス又はワクシニアウイルスベクターであってもよいが、本発明はこれらに限定されない。
さらに、前記形質転換細胞は、幹細胞、前駆細胞又は動物細胞であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0066】
また、前記キットの構成要素としては、発光タンパク質に結合したSTINGタンパク質及び発光タンパク質に結合したTRIM29タンパク質をそれぞれコードする遺伝子を含むベクターが導入された宿主細胞、前記宿主細胞培養用培地、前記宿主細胞培養容器、蛍光レベルを分析するためのソフトウェア、前記ソフトウェアが備えられたハードウェアシステムなどを挙げることができる。
【0067】
一方、本発明の癌免疫療法剤のスクリーニング方法及びキドの具体的な説明は、本発明による「癌免疫療法用医薬組成物」の説明と同様である。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例及び実験例を参照して詳細に説明する。
【0069】
ただし、以下の実施例及び実験例は本発明を具体的に説明するものであり、本発明の内容が実施例及び実験例によって限定されるものではない。
【0070】
<実施例1>キット及び試薬の準備
DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)(11995-065)、MEM(最小必須培地)(11095-080)、RPMI1640(11875-093)、Opti-MEM(31985-070)、FBS(ウシ胎児血清)(16000044)、抗生物質抗真菌溶液(15240062)、及びTrypLETM Express溶液(12605-010)は、Gibco、Invitrogen社[カリフォルニア州カールズバッド]から購入した。PBS(リン酸緩衝生理食塩水)バッファーはWELGENE社[韓国]から購入した。化合物としては、生物学的評価のためにDMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解した化合物を準備した。DMSO、シクロヘキシミド、アクチノマイシンD、MG132、デオキシコール酸ナトリウム、IGEPAL CA-630、Tween-20、Na3VO4、NaF、トリトン-X-100、過硫酸アンモニウム、及びN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンはSigma-Aldrich社[St.ミズーリ州ルイス]から購入した。
【0071】
また、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンは、Acros Organics社[マサチューセッツ州ウォルサム]から購入し、NaClはSamchun Chemical社[韓国]から購入し、完全な錠剤EDTA-フリー プロテアーゼ阻害剤カクテル(04693132001)は、Roche社[バーゼル、スイス]から購入した。2’,3’-環状GMP-AMP(cGAMP)は、Invivogen社[Pak Shek Kok, Hong Kong]又はAPExBIO社[Houston, TX]から購入し、NanoBiTTM PPI MCスターター キット(N2014)及びNano-Glo生細胞アッセイ試薬(N2012)はPromega社[ウィスコンシン州マディソン]から購入し、Ez-Cytox WSTアッセイ試薬はDaeil Bio社[韓国]から購入した。
【0072】
細胞溶解物中のタンパク質濃度を測定するために、Micro BCATMタンパク質アッセイキットはPIERCE社[マサチューセッツ州ウォルサム]から購入し、ELISA用の3,3’,5,5’ ’-テトラメチルベンジジン(TMB)、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)はInvitrogen社[カリフォルニア州カールズバッド]から購入し、30%アクリルアミド-Bis溶液(37.5:1、AC4004-050-00)及びラメリ サンプリング バッファー(5×SDS-PAGEローディングバッファー、SF2002-110-00)はBiosesang社[韓国]で購入した。ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)膜を含むタンパク質ゲルキャスター及びウェスタンブロッティング装置はBioRad社[カリフォルニア州ハーキュリーズ]から購入し、Amersham ECL primeウェスタンブロッティング検出システム(RPN2232)及びパーコールはGE Healthcare Life Science[イリノイ州シカゴ]から購入し、RNA抽出のためのRNeasyミニキットはQIAGEN社[ドイツ、ヒルデン]から購入した。
【0073】
リポフェクタミンLTX、Plus試薬及びリポフェクタミンRNAiMAXはThermo Fisher Scientific社[マサチューセッツ州ウォルサム]から購入し、逆転写のためのすべてのqPCRプライマー、siRNAs、及びAccupower Cyclescript RTプレミックス(dT20)はBioneer社[韓国]から購入し、qPCRのためのKapa SYBR Green2×ABI Prism試薬はKAPAbiosystemsから購入した。また、RBC溶解バッファーはBiolegend社[カリフォルニア州サンディエゴ]から購入し、Foxp3/転写因子染色バッファーはeBioscience社[カリフォルニア州サンディエゴ]から購入し、100mm/150mm細胞培養ディッシュ、透明96ウェルプレート、透明12ウェルフレート、透明6ウェルフレート、96-ウェル白色平低TC処理マイクロテストプレート(353296)、及び通気性シーリングフィルム(Axygen BF-400-S)はCORNING社[アリゾナ州グレンデール]から購入した。
【0074】
さらに、NanoBiTスクリーニング用の6ピン マルチブロット レプリケーター(VP408)はV&PScientific社[カリフォルニア州サンディエゴ]から購入し、Nunc Maxisorp96ウェルELISAプレート(439454)はCostar社から購入し、TRIM29過発現後、ウェスタンブロッティングのためにpCMV6-TRIM29-Myc-FLAGプラスミドはOrigene社[メリーランド州ロックビル]から購入し、ELISAのためのFLAG-又はMycタグ付きプラスミドはpcDNA3.1ベクターで製造((pcDNA3.1-FLAG-STING及びpcDNA3.1-TRIM29-Myc)され、pRK5-HA-ユビキチン(WT及びK48)プラスミドはAddgene社から入手した。
【0075】
<実施例2>抗体の作製
抗β-アクチン(#4970)、抗STING(#13647、ウェスタンブロッティング用)、抗ホスホ-STING(S365)(#72971)、抗TBK1/NAK1(#3504)、抗ホスホ-TBK1/NAK1(S172)(#5483)、抗IRF3(#4302)、抗ホスホ-IRF3(S396)(#29047)、HRP-結合抗マウスIgG[#7074]、及びHRP-結合抗マウスIgG[#7076]抗体は、Cell Signaling Technology社[マサチューセッツ州ダンバーズ]から購入し、抗FLAG M2(F1804)抗体はSigma-Aldrich社[St.ミズーリ州ルイス]から購入し、抗TRIM29/ATDC(B-2)(sc-166707、ヒトTRIM29検出用)、抗TRIM29/ATDC(C-2)(sc-376125、マウスTRIM29検出用)、及びタンパク質A-アガロース ビーズ(sc-2001)はSanta Cruz Biotechnology社[テキサス州ダラス]から購入した。また、抗ユビキチン(ab134953)抗体はAbcam社[ケンブリッジ、英国]から購入し、抗HA-tag(51642-2-AP、ELISA用)及び抗STING(19851-1-AP、FACS用)抗体はProteintech社[イリノイ州ローズモント]から購入した。
【0076】
さらに、フローサイトメトリーのための抗体であるCD274(B7-H1、PD-L1)-APC、CD3(17A.2)-PE、CD4(RM45)-FITC、CD8α(53-6.7)-APC-Cy7、CD19(6D5)-BV650、CD11b(M1/70)-BV786、Ly6C(HK1.4)-PE-Cy7、Ly6G(1A8)-APC、CD45.2(104)-PerCP-Cy5.5、IFNγ(XMG1.2)-APC、CD279(29F.1A12)-APC、グランザイムB(QA16A02)-FITC、及びパーフォリン(S16009A)-PEはBiolegend社[カリフォルニア州サンディエゴ]から購入し、Gr1(RB6-8C5)-BV510、CD49b(HMa2)-BV605、F4/80(T45-2342)-BV711、Foxp3(R16-715)-PE、TNF-α(MP6-XT22)-PE、及びI-A/I-E(M5/11)-BV605はBD Bioscience社[カリフォルニア州サンノゼ]から購入した。
【0077】
<実施例3>細胞株及び動物モデルの作製
A431ヒト皮膚扁平上皮癌細胞及びCT26マウス結腸癌細胞は、韓国細胞株バンクから入手した。Raw264.7マウスマクロファージ及びHEK293Tヒト胎児腎臓細胞はATCC(American Type Culture Collections)から入手した。マウス骨髄由来細胞は、8週齢の雌、C57BL/6マウスから取得し、OVA特異的CD8+T細胞(OT-IT細胞)は8週齢OVA特異的CD8+TCR形質転換マウス(OT-Iマウス)から取得した。さらに、BALB/cマウスはJackson Laboratory[メイン州バーハーバー]から入手した。なお、実験には生後8~12週の雌マウスを使用し、野生型BALB/cを含むすべてのマウスをソウル大学医科大学の動物施設で飼育・管理された。すべての動物実験は、ソウル大学校動物資源研究所の動物管理委員会の承認を得て実施された(承認番号:SNU-190621-3-13)。
【0078】
<実施例4>細胞培養
Raw264.7細胞及びHEK293T細胞を10%(v/v)FBS及び1%(v/v)抗生物質抗真菌溶液が含まれたDMEMで培養し、A431細胞は10%(v/v)FBS及び1%(v/v)抗生物質抗真菌薬溶液が含まれたMEMで培養した。また、CT26細胞は10%(v/v)FBS及び1%(v/v)抗生物質抗真菌溶液が含まれたRPMI1640培地で培養した。一方、細胞は、37℃、加湿条件に設定された5%CO2インキュベーター内の100mm細胞培養ディッシュ内で維持させた。
【0079】
<実施例5>実験装置及びプログラム
ELISA分析のための96ウェルプレートでの吸光度測定及びBCA分析は、Bio Tek Synergy HTマイクロプレートリーダー[バーモント州ウィヌースキ]を使用して行った。Nano BiTスクリーニングのための白色底96ウェルプレートの発光測定はBioTeK Synergy HTXマイクロプレートリーダー[バーモント州ウィヌースキ]で行った。BioRad社製のChemiDocTM MPイメージングシステムはウェスタンプルロッティン分析のための化学発光信号分析に使用した。
【0080】
また、化学発光信号の定量化は、BioRad社[カリフォルニア州ハーキュリーズ]で提供するImageLab6.0プログラムで行った。RNA定量化は、GE Healthcare社[イリノイ州シカゴ]のNanoViewで行った。定量的リアルタイムPCRは、Applied Biosystems[カリフォルニア州フォスターシティ]のStepOne PlusリアルタイムPCRシステムで行った。グラフは、GraphPad Prism8[カリフォルニア州ラホーヤ]を使用して分析した。
さらに、フローサイトメトリー実験では、BD Biosciences社[カリフォルニア州サンノゼ]のFACSCalibur又はFACSAriaII(NCIRF)とTree Star[オレゴン州アシュランド]のFlowJoソフトウェアを使用して細胞を分析した。
【0081】
<実験例1>STINGとTRIM29の相互作用を阻害する化合物のスクリーニング
<1-1>高効率生理活性検索手法の構築
タンパク質間相互作用を観察するために、二分子発光相補性アッセイに基づく高効率生理活性検索手法を構築した。
図1に示すよう、発光タンパク質ルシフェラーゼを構成する2つのタンパク質LgBiT及びSmBiTを、それぞれSTINGとTRIM29の末端部分に導入した。LgBiTとSmBiTは互いに直接相互作用せず、結合されたタンパク質間の相互作用を通じてのみ結合し、発光酵素の機能を果たす。
【0082】
STINGとTRIM29にLgBiTとSmBiTを導入してSTINGとTRIM29の相互作用発光信号を得るために、
図2に示すように、STINGとTRIM29のN末端及びC末端にそれぞれLgBiTとSmBiTを導入した合計8種類の組み合わせを試みた。そのため、STINGのC末端にLgBiT、TRIM29のN末端にSmBiTを導入した場合と、STINGのC末端にLgBiT、TRIM29のC末端にSmBiTを導入した場合の組み合わせでは、Halo Tagと名付けたSTINGと相互作用しないタンパク質を一緒に導入した場合と比較して、高い発光信号が確認された。
【0083】
<1-2>STINGとTRIM29の相互作用阻害剤の発見
前記実験例<1-1>で確立したシステムを使用して、以下のようにしてスクリーニングを行った。
【0084】
具体的には、HEK293T細胞株を100mm培養ディッシュに接種し、1日間培養した。その後、STING-LgBiTとSmBiT-TRIM29をそれぞれ含有するプラスミドの組み合わせ、又はネガティブコントロールとしてSTING-LgBiTとHalo Tag-SmBiTを含有するプラスミドの組み合わせを細胞に導入し、さらに1日間培養した。プラスミドの導入は、Thermo Fisher社製のLipofectamine LTXをメーカーのプロトコルに従って行った。培養後、プラスミドが導入された細胞を白色底96ウェルフレートに移し接種し、さらに1日間培養した。各ウェルをPromega社製のNano-Glolive cell reagentでメーカーのプロトコルに従って処理した後、5分ごとに振とうしながら発光信号を得た。信号が安定化した時点で各ウェルを化合物で処理し、発光信号を得た。STING-TRIM29相互作用阻害が阻害されているかどうかは、この得られた発光信号を安定化時の各ウェルの発光信号に標準化して得られた値で観察した。
【0085】
<1-3>STING-TRIM29相互作用阻害の確認
前記実験例<1-2>のスクリーニングにより、
図3に示すように、STING-TRIM29相互作用を阻害することにより、発濃度依存的に光信号を減少させるオキソピペラジン誘導体が確認された(
図3)。
【0086】
さらに、前記オキソピペラジン誘導体は、下記式(1)~式(6)で示した。
式(1)
4-((R)-4-(4-ヒドロキシベンジル)-2-イソプロピル-5-(4-メトキシベンジル)-3-オキソ-3,4-ジヒドロピラジン-1(2H)-イル)-3-ニトロ-N-(((R)-テトラヒドロフラン-2-イル)メチル)ベンズアミド
【化8】
(1)
【0087】
式(2)
4-((R)-5-シクロペンチル-4-(4-ヒドロキシベンジル)-2-イソプロピル-3-オキソ-3,4-ジヒドロピラジン-1(2H)-イル)-3-ニトロ-N-(((R)-テトラヒドロフラン-2-イル)メチル)ベンズアミド
【化9】
(2)
【0088】
式(3)
(R)-4-(5-シクロペンチル-4-(4-ヒドロキシベンジル)-2-イソプロピル-3-オキソ-3,4-ジヒドロピラジン-1(2H)-イル)-N,N-ジエチル-3-ニトロベンズアミド
【化10】
(3)
【0089】
式(4)
(R)-4-(5-シクロペンチル-4-(4-ヒドロキシベンジル)-2-イソプロピル-3-オキソ-3,4-ジヒドロピラジン-1(2H)-イル)-N-イソブチル-3-ニトロベンズアミド
【化11】
(4)
【0090】
式(5)
4-((S)-5-シクロペンチル-2-(4-フルオロベンジル)-4-(4-ヒドロキシベンジル)-3-オキソ-3,4-ジヒドロピラジン-1(2H)-イル)-3-ニトロ-N-(((R)-テトラヒドロフラン-2-イル)メチル)ベンズアミド
【化12】
(5)
【0091】
式(6)
4-((R)-5-ベンジル-4-(4-ヒドロキシベンジル)-2-イソプロピル-3-オキソ-3,4-ジヒドロピラジン-1(2H)-イル)-3-ニトロ-N-(((R)-テトラヒドロフラン-2-イル)メチル)ベンズアミド
【化13】
(6)
【0092】
<実験例2>オキソピペラジン誘導体によるSTINGタンパク質の細胞内量増加誘導の確認
前記<実験例1>で発見された式(1)~(6)のオキソピペラジン誘導体がSTING-TRIM29相互作用を阻害することにより、STINGの細胞内量を増加させるかどうかを確認するために、ウェスタンブロッティング実験を繰り返して化合物処理後のSTINGの細胞内量を確認した。
【0093】
まず、A431細胞株を透明な12ウェルフレートに接種し、1日間培養した。その後、細胞をそれぞれ式(1)~(6)の化学で処理した、さらに24時間培養した。最後に、細胞の上層培養液を除去した後、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で残余上清を希釈除去し、ウェスタンブロッティング試料を準備した。ウェスタンブロッティング試料の準備はすべて4℃で行った。細胞をRIPA溶解バッファー(50mM Tris-HCl pH7.5、150mM NaCl、1%(w/v)デオキシコール酸ナトリウム、2mM Na3VO4、5mM NaF、プロテアーゼインヒビターカクテル、1%(v/v)IGEPAL CA-630)で15分間処理した後、溶液を回収し、13000gで15分間遠心分離して上清を得た。上清のタンパク質濃度は、Micro BCATMタンパク質アッセイキット(ThermoFisher社製)を用いて、メーカーのプロトコルに従って測定した。各試料の濃度はRIPA溶解バッファーを用いて同じになるように調整した後、5X SDS-PAGEローディングバッファー(Biosesang社製)をメーカーの比率に従って添加し、5℃で5分間処理した。処理試料をSDS-PAGEで分析した後、PVDF膜に移し、4%BSAを含有するTBST溶液で30分間培養した。一次抗体は4℃で1日間、又は室温で1時間の間培養した後、室温のTBST溶液で4回洗浄した。二次抗体は室温で1時間培養した。各抗体のメーカーのプロトコルに従い、抗体溶液を1%BSAが含まれたTBST溶液で希釈した。最後に、4回のTBST洗浄過程後、Amersham社製のECL(強化化学発光)プライム溶液で展開し、化学発光信号をBio-Rad社製のChemiDocMPを使用して測定し、得られた結果をImageLab6.0プログラムで定量化し、Prism8.0プログラムを使用して結果を図示した。
【0094】
その結果、前記分析の結果得られたバンド強度を定量化した値を
図4に示すが、式(1)~(6)のオキソピペラジン誘導体はいずれもSTINGの細胞内量を増加させることが確認された。
【0095】
<実験例3>オキソピペラジン誘導体のSTINGアゴニストの免疫活性化効能の増加の確認
<3-1>qRT-PCRを用いたcGAMPの免疫活性化効能の増加の確認
式(1)~(6)のオキソピペラジン誘導体がSTING量を増加させることによってSTINGアゴニストであるcGAMPの免疫活性化効能を増強させるかどうかを確認するために、定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)実験によって、STINGサブサイトカインインターフェロン-β(IFN-β)とインターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-15(IL-15)、そしてインターロイキン-15受容体α(IL-15Rα)の遺伝子発現レベルを確認した。
【0096】
具体的には、Raw264.7細胞を透明な12ウェルフレートに接種し、1日間培養した。その後、細胞をcGAMPと式(1)~(6)のオキソピペラジン誘導体でそれぞれ処理した後、6時間培養した。最後に、細胞の上層培養液を除去した後、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で残余上清を希釈して除去し、qRT-PCR試料を準備した。QIAGEN社製のRNeasyミニキットを用いてメーカーのプロトコルに従って細胞からmRNAを抽出した。GE Healthcare社製のNanoview装置でRNAの濃度を測定した後、1μgのRNAを定量し、Accupowercyclescript RTプレミックスdT20(Bioneer社製)を用いてメーカーのプロトコルに従って相補DNA(cDNA)を合成した。得られたcDNAはGAPDH(対照群)、IFN-βとIL-6遺伝子を検出可能なプライマーDNAとともに、Kapa Biosystem社製のKapa SYBR Green 2X ABI Prism溶液中でメーカーのプロトコルに従って混合した。混合試料をStepOne PlusリアルタイムPCRシステム(Applied Biosciences社製)を使用して分析し、その結果を、Prism8.0プログラムを使用して図示した。
【0097】
一方、該当分析に使用されたプライマーのDNA塩基配列は下記表1に示した。
【表1】
【0098】
その結果、
図5に示すように、式(1)~(6)の全てのオキソピペラジン誘導体は、cGAMPとの共処理下でSTINGサブサイトカインIFN-βとIL-6の発現を増加させることが確認された。
【0099】
また、
図6に示すように、式(1)の化合物は、IFN-βとIL-6に加えて、STINGの下流で発現することが知られている他のサイトカインIL-15及びIL-15Rαの発現も、時間依存的及び濃度依存的に増加させることが確認された。
【0100】
<3-2>ウェスタンブロッティングによるcGAMPの免疫活性化効能の増加の確認
式(1)のオキソピペラジン誘導体が、cGAMPのSTINGサブ免疫シグナル伝達経路活性化効果を増大させることを、前記<実施例2>と同様にウェスタンブロッティングにより検証した。
【0101】
その結果、
図7に示すように、cGAMPによりSTINGが活性化されると、下流シグナル伝達タンパク質TBK1、IRF3のリン酸化が増加し、免疫サイトカインの発現が増加することが確認され、また、式(1)のオキソピペラジン誘導体と併用処理することで、さらにリン酸化の程度が増加することが確認された。
【0102】
<実験例4>オキソピペラジン誘導体のTRIM29を介したSTINGのLys48重合マルチユビキチン化による分解阻害の確認
式(1)~(6)のオキソピペラジン誘導体が、TRIM29を介したSTINGのLys48重合マルチユビキチン化(K48結合特異的ポリユビキチン化)を介してSTINGの分解を阻止することにより、細胞内量を増加させるかどうかを確認した。このため、式(1)の化合物を代表化合物として選択し、
図8に示すように、ユビキチンタンパク質のリシン残基48以外のすべてのリシン残基をアルギニンに置換した形質転換ユビキチンタンパク質を用いて、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)法に基づいて、STINGのLys48重合マルチユビキチン化の定量的検出を行った。
【0103】
具体的には、HEK293T細胞を透明な6ウェルフレートに接種し、1日間培養した。その後、pcDNA3.1-FLAG-STING(FLAG標識で連結したSTINGを発現するプラスミド)、pcDNA3.1-TRIM29-Myc(Myc標識で連結したTRIM29を発現するプラスミド)、pRK5-HA-ユビキチン-K48(リジン残基48以外のリジン残基をアルギニンに置換したユビキチンにHA標識で連結したタンパク質を発現するプラスミ)を導入し、1日間培養した。このとき、各実験条件で導入されるDNAの総量はpUC19空ベクターを用いて標準化した。プラスミドの導入は、ThermoFisher社製のLipofectamine LTXをメーカーのプロトコルに従って行った。1日間培養後、上層培養液を除去し、MG132と式(1)の化合物が含まれた培養液を処理してさらに3時間培養した。このとき、ユビキチン化タンパク質の除去を防ぐプロテアソーム阻害剤MG132を処理しなかった試料の分析値を対照群にとし、MG132で処理した試料の分析値から差し引く方法で、化合物の効果のみを定量的に検出した。最後に、細胞の上層培養液を除去した後、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で残余上清を希釈除去して、ELISA処理試料を準備した。細胞にELISA溶解バッファー(25mM Tris-HCl pH7.5、150mM NaCl、10mM EDTA、10mM N-エチルマレイミド、1mM Na3VO4、1mM NaF、プロテアーゼインヒビターカクテル、1%(v/v)トリトン-X-100)を15分間処理した後、溶液を回収し、13000gで15分間遠心分離して上清を得た。上清のタンパク質濃度はブラッドフォードアッセイアッセイを使用して測定した。各試料の濃度は、ELISA溶解バッファーを用いて400μg/mLに均等に設定した。定量濃度を確認のために、試料の一部分を5X SDS-PAGEローディングバッファー(Biosesang社製)をメーカーの比率で添加し、得られたものを95℃で5分間処理した後、前記のウェスタンブロッティング方法で分析した。
【0104】
ELISA分析では、FLAG抗体(Sigma社製)をPBSに1:3000(体積比)に希釈し、Nunc A-S社製のMaxiSorp ELISAプレート上にウェル当たり100μLずつ、4℃で1日間処理した。その後、上清を除去し、ELISA清浄液(0.05%Tween-20を含有するPBS溶液)でウェル当たり200μLずつ3回洗浄した。その後、5%BSAを含有するPBS溶液をウェル当たり300μLずつ室温で2時間処理した。得られたものをELISA清浄液で5回洗浄した後、先に準備した試料をウェル当たり100μLずつ室温で3時間処理した。得られたものをELISA清浄液で10回洗浄した後、1%BSAを含有するPBSで1:2000(体積比)に希釈したHA抗体(Proteintech社製)で1ウェル当たり100μLずつを室温で1時間処理した。得られたものをELISA清浄液で5回洗浄した後、1%BSAを含有するPBSで1:2000(体積比)に希釈したHRP-重合ウサギIgG抗体(CST)で1ウェル当たり100μLずつを室温で1時間処理した。ELISA清浄液で5回洗浄した後、HRP酵素の基質である3,3',5,5''-テトラメチルベンジジン(TMB)溶液を1ウェル当たり100μLずつ、室温で10分処理して発色させた。発色反応は2N H2SO4を1ウェル当たり50μLずつ分注することにより完了し、BioTek社製のSynergy HTマイクロプレートリーダーデバイスを使用して450nmで吸光度を測定し、その結果をPrism8.0プログラムを使用して図示した。
【0105】
その結果、
図8に示すように、FLAG標識STINGを捕捉し、リジン48重合マルチユビキチン化のみを選択的に標識するHA標識を抗体で検出することにより、STINGのLys48重合マルチユビキチン化の程度を検出することができた。式(1)の代表的な化合物で処理した結果、TRIM29を介したSTINGのリジン48重合マルチユビキチン化が阻害されることが確認された。また、ウェスタンブロッティングにより、各対照群及び式(1)の化合物の試料の濃度定量が良好に定量されていることが確認された。
【0106】
また、ELISA実験結果を交差検証するために、MG132を処理してユビキチン化タンパク質の分解が防止されると、式(1)の化合物のSTING増加効果が消失されるかどうかを確認した。
【0107】
その結果、
図9に示すように、ウェスタンブロッティング法を用いて、MG132を式(1)の化合物で処理した場合、STINGが増加しないことが確認された。
【0108】
さらに、式(1)の化合物によるSTINGの発現の増加がユビキチン介在性の反応以外の細胞機構を通じて起こり得る可能性を排除するために、転写阻害剤であるアクチンマイシンD(ActD)とリボソーム翻訳阻害剤であるシクロヘキシミド(CHX)を式(1)の化合物と共処理し、STING増加効果が相変らず維持されているかどうかをウェスタンブロッティング法を使用して確認した。
【0109】
その結果、
図10に示すように、細胞の転写・翻訳機構が阻害された条件下においても、式(1)の化合物は依然としてSTINGの細胞内量を増加させることが確認された。
【0110】
<実験例5>オキソピペラジン誘導体のSTINGへの結合の確認
本発明のオキソピペラジン誘導体がSTINGとTRIM29のうちSTINGに結合してその相互作用を阻害するかどうかを、式(1)の化合物に基づいて、低分子化合物と標的タンパク質との相互作用を検証する主要技術である細胞シフトアッセイ(CETSA)及び等温用量反応フィンガープリント(ITDRF)により検証した(D. M. Molina et al., Science2013, 341, 84-87.)。
【0111】
CETSA技法を使用して式(1)の化合物の標的を検証するために、ヒトA431細胞株とマウスRaw264.7細胞株を100mm又は150mmの培養ディッシュに接種し、1日間培養した。その後、50mLのチューブに細胞を集め、1.5625μM、3.125μM、6.25μM、12.5μM、25μM、50μM、100μMの式(1)の化合物を含む培養液を2時間に処理した。次に、細胞を同量ずつ分注し、それぞれ
図11(A431)又は
図13(Raw264.7)に示す温度で3分間処理し、25℃で3分間安定化させた。前記温度で処理した細胞を1000gで3分間遠心分離し、上清を除去した後、細胞をPBSで洗浄し、さらに遠心分離して上清を全て除去した。洗浄した細胞にPBS-N溶液(0.4%IGEPAL CA-630を含むPBS)で処理して均一にした後、液体窒素を用いて急速凍結融解を計3回繰り返して細胞を溶解した。その後、4℃、20000g、20分間遠心分離し、上清を新しい容器に移し、Micro BCATMプロテインアッセイキット(ThermoFisher社製)を使用してメーカーのプロトコルに従って各濃度を測定した。各試料の濃度をRIPA溶解バッファーを用いて均等に調整し、5X SDS-PAGEローディングバッファー(Biosesang社製)をメーカーの比率で添加し、95℃で5分間処理し、前記のウェスタンブロッティング法で分析した。
【0112】
その結果、
図11に示すように、ヒト細胞株であるA431におけるCETSA結果を通じて、式(1)の化合物がSTINGのみに選択的に結合して熱不安定化を誘導することが確認された。また、
図12に示すように、式(1)の化合物が、TRIM29に影響を与えることなく、高濃度で濃度依存的にSTINGの熱安定性を低下させることが、ITDRFの結果を通じて交差検証された。
【0113】
また、
図13に示すように、マウス細胞株であるRaw264.7におけるCETSAの結果を通じて、式(1)の化合物がSTINGのみに選択的に結合して熱不安定化を誘導することが確認された。また、
図14に示すように、式(1)の化合物が、TRIM29に影響を与えることなく、高濃度で濃度依存的にSTINGの熱安定性を低下させることが、ITDRFの結果を通じて交差検証された。
【0114】
<実験例6>オキソピペラジン誘導体の細胞内STING量増加に対する効果の確認
オキソピペラジン誘導体がSTINGアゴニストや免疫チェックポイント阻害剤を含む他の癌免疫療法の効能を高めるかどうかを検証した。まず、オキソピペラジン誘導体がSTINGの量を増加させるかどうかをフローサイトメトリー及びウェスタンブロッティングによって検証した。
【0115】
フローサイトメトリーを通じて細胞内のSTING 量を測定するために、Raw264.7細胞を透明な6ウェルフレートに接種し、1日間培養した。その後、細胞を、FBSを含まない培養液で式(1)の化合物を希釈した溶液で処理し、24時間培養した。最後に、細胞の上層培養液を除去し、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で残余上清を希釈除去し、2mM EDTAを含むPBS溶液で5分間処理して細胞を分離し、さらに培養液で処理して回収した。回収した細胞は遠心分離後、上清を除去し、FACS溶液(2%ウマ血清、0.05%NaN3を含むハンクス平衡塩類溶液(HBSS))に再分配し、細胞数を測定した。各試料につき当たり1×106個の細胞を収集し、遠心分離し、上清を除去し、PBSで1回洗浄した。4%パラホルムアルデヒド(PFA)溶液を室温で10分間処理して細胞を固定し、トリトン溶液(0.1%BSA、0.5%トリトン-X-100を含むPBS溶液)を処理し、遠心分離し、上清を除去した。STING一次抗体(Proteintech社製)を室温で2時間処理した。その後、追加的にトリトン溶液を加え、遠心分離し、上清を除去し、FITC重合二次抗体(Proteintech社製、FITC標識affinipureヤギ抗ウサギIgG)又はアイソタイプの対照群(Zymed)で1時間、室温で処理した。最後にトリトン溶液を加え、遠心分離し、上清を除去し、細胞を200μLのトリトン溶液に再分配し、BD Bioscience社のFACSCalibur装置を使用して分析し、その結果をTreeStar社製のFlowJoプログラムで定量分析した。
【0116】
その結果、
図15に示すように、式(1)の化合物で処理すると、アイソタイプ対照群では変化がなく、細胞内STINGの蛍光標識強度が濃度依存的に増加した。また、
図16に示すように、Raw264.7細胞におけるSTINGの細胞内量は、式1の化合物により濃度依存的に増加することがウェスタンブロッティング法を用いて交差検証された。また、
図17に示すように、Raw264.7細胞におけるSTINGの増加は、RNA転写とは無関係であることもqRT-PCR法により確認された。
【0117】
<実験例7>オキソピペラジン誘導体のSTINGアゴニストによるBMDCの抗原提示能増大効果の確認
式(1)の化合物は、STINGアゴニストによる骨髄由来樹状細胞(BMDC)の細胞殺害性T細胞(細胞殺害性T細胞;CD8+T細胞)に対する抗原提示能を増大させることが確認された。
【0118】
具体的には、生後8週齢の雌性C57BL/6マウスの大腿骨及び脛骨からマウス骨髄由来細胞を得た。2×106個の細胞を、10ng/mL mGMCSF及び5ng/mL IL-4を添加した2mLのMLR培地(10%FBS、1%1M HEPES、1%グルタミン及び1%抗生物質抗真菌薬が添加したRPMI 1640培地)で培養し、樹状細胞(BMDC)に分化させた。細胞培養開始から3日目に、2mLのMLR培地を添加した。さらに、6日目に、2×106個の樹状細胞を、50μg/mLのOVAタンパク質及び/又は100ng/mLのリポ多糖(LPS)、並びにcGAMP及び/又は式(1)で示される化合物で、様々な濃度で処理した。その後、前記細胞を37℃、5%CO2インキュベーター内で24時間培養し、樹状細胞活性化マーカー(CD80、CD86、MHC II)のフローサイトメトリーを行った。次に、5×104個の樹状細胞を2×105個のCFSE標識OT-1T細胞(OVA特異的CD8+T細胞)と培養し、OT-1T細胞の増殖を観察した。
【0119】
その結果、
図18に示すように、OVA抗原を直接処理した場合、cGAMPによるBMDCの活性化及びBMDCからOT-1T細胞への抗原提示能を増強させることにより、式(1)の化合物が濃度依存的に細胞増殖を促進することが確認された。
【0120】
<実験例8>オキソピペラジン誘導体及びcGAMPの同時処理によるBMDCの交差抗原提示能の確認
前記<実験例7>と同様にして、マウス骨髄由来細胞を取得し、分化させた。6日目に、2×106個の樹状細胞(BMDC)を3回凍結解凍したMC38又はMC38-OVA腫瘍細胞の2×106個と共培養し、様々な濃度のcGAMP及び/又は式(1)の化合物で処理した。細胞を37℃、5%CO2インキュベーター内で24時間培養した後、樹状細胞活性化マーカー(CD80、CD86、MHC II)のフローサイトメトリーを行った。その後、5×104個の細胞を2×105個のCFSE標識OT-1 T細胞(OVA特異的CD8+T細胞)と培養し、OT-1 T細胞の増殖を観察した。
【0121】
その結果、
図19に示すように、OVA抗原を持続的に発現するMC38細胞株(MC38-OVA)と対照群のMC38細胞株を死滅させた後に処理した場合において、式(1)の化合物が濃度依存的にcGAMPによるBMDCの活性化及びBMDCでOT-1 T細胞への抗原提示能を増強させることにより細胞増殖を促進し、このような効果がMC38対照群の処理条件ではそのような効果が全く生じないことが示され、選択性が確認された。
【0122】
<実験例9>OT-I T細胞の抗原特異的細胞殺害性の確認
前記<実験例7>と同様にして、マウス骨髄由来細胞を取得し、分化させた。6日目に、2×106個の樹状細胞を、50μg/mLのOVAタンパク質の存在下で、様残な濃度のcGAMP及び/又は式(1)の化合物で処理した。37℃、5%CO2インキュベーター内で24時間培養した後、5×104個の細胞を2×105個のCFSE標識OT-1 T細胞と1日間培養し、OT-I T細胞を活性化した。エフェクター細胞、すなわち活性化OT-1 T細胞は2×105個の標的細胞、すなわち100Gyを照射したMC38及びMC38-OVA腫瘍細胞(1×105のMC38腫瘍細胞及びRFP発現する1×105個のMC38-OVA腫瘍細胞)と、様々な「エフェクター::標的」比(1:1又は3:1)で共培養した。次に、37℃、5%CO2インキュベーター内で24時間培養した後、FACSCalibur及びFlowJoソフトウェアを使用して、OT-1 T細胞のOVA特異的細胞毒性を確認した。
【0123】
その結果、
図20に示すように、
図19の実験により活性化されたOT-1 T細胞がOVAを発現する細胞株のみを選択的に死滅させることが確認された。
【0124】
<実験例10>CD8+T細胞をcGAMP及び/又はオキソピペラジン誘導体で処理した場合のT細胞死の分析
CD8+T細胞をC57BL/6マウスのリンパ節から取得し、MACSを使用して分離した。CD8+T細胞を5ng/mLのIL-2の存在下、1μg/mLの抗CD3及び0.5μg/mLの抗CD28でプレコートしたプレート上で活性化させた。37℃の5%CO2インキュベーター内で24時間培養した後、活性化D8+T細胞を、様々ン濃度のcGAMP及び/又は式(1)の化合物で処理し、さらに24時間培養した。細胞を採取し、アネキシンV/7-AADで染色して細胞死を観察した。示されたデータは最小3つの独立した実験を示した。
【0125】
その結果、
図21に示すように、式(1)の化合物を単独で処理した場合、又はcGAMPとの併用処理した場合のいずれの条件においても、GAMPで処理した場合と比較して、式(1)の化合物が細胞殺害性T細胞の細胞死を誘導又は促進しないことが確認された。
【0126】
<実施例11>インビボ同種マウスモデルにおける式(1)の化合物によるcGAMPの免疫抗癌効能の増大効果の確認
<11-1>腫瘍成長抑制効果の確認
2×10
5個のCT26細胞株を50μLの培養液で調製し、皮下注射した。その後、
図22に示すように、注射した腫瘍の大きさが100mm
3に達した時点で、cGAMPと式(1)の化合物を腫瘍に直接注入した。cGAMP溶液は、最終的にPEG400:蒸溜水=40:60の組成で製造し、毎回20μLを注入した。式(1)の化合物の溶液は、DMSO:PEG400:蒸溜水=2:40:58の組成で製造し、毎回20μLを注入した。cGAMP溶液は2日に1回、合計4回注射し、式(1)の化合物溶液は4日に1回、合計2回注射した。腫瘍の大きさは毎2日ごとにノギスで測定し、その容積を(縦×横×高さ/2)として算出した。マウスの体重も2日ごとに測定した。
【0127】
その結果、
図23に示すように、cGAMP(cG)及び式(1)の化合物を併用処理した実験群では、対照群と比較して、腫瘍成長が抑制され、最終日に摘出した腫瘍の重量が減少することが確認され、また、cGAMPを単独処理した実験群と比較して、式(1)の化合物を併用処理した場合に、濃度依存的に腫瘍成長が抑制されることが確認された。
【0128】
また、
図24に示すように、cGAMPと式(1)の化合物を単独又は併用処理した場合にかかわらず、体重の有意な変化や毒性の信号が観察されないことが確認された。
【0129】
<11-2>免疫活性化及び免疫抗癌効能の増大効果の確認
腫瘍組織内部への免疫細胞の浸潤、及び浸潤した免疫細胞の活性化の程度を検証するために、
図25に示すように、cGAMP(cG)と式(1)の化合物を単独又は併用処理し、最終処理から2日後に腫瘍を摘出し、フローサイトメトリーを行った。マウスを二酸化炭素で安楽死させた後、腫瘍を摘出した。腫瘍組織をカミソリの刃で小片に分割し、2%ウマ血清、0.5mg/mLのコラゲナーゼD、40μg/mLのDNase Iを含むDMEM溶液で37℃、1時間処理した後、40μmフィルターで透過させ、個々の細胞に分離した。分離された細胞からpercoll濃度こう配遠心分離により、腫瘍浸潤白血球細胞(TILs)を分離し、赤血球溶解溶液による処理により赤血球除去した。得られた細胞は前記FACS溶液に再分配し、各免疫細胞のFcγRII/3III受容体を、抗マウスCD16/CD32 Abs(clone2.4G2)抗体で4℃、10分間処理して中性化した。個々の細胞分化のための一次抗体による処理は、4℃で30分間行った。処理した細胞を遠心分離後にPBS溶液に再分配し、さらに遠心分離して上清を除去した。細胞を4%パラホルムアルデヒド(PFA)溶液で室温、10分間処理して固定し、トリトン溶液(0.1%BSA、0.5%トリトン-X-100を含むPBS溶液)で処理し、遠心分離し、上清を除去した。サイトカイン(IFNγ(XMG1.2)-APC、パーフォリン(S16009A)-PE、グランザイムB(QA16A02)-FITC、Biolegend社製)一次抗体を室温で2時間処理した。最後に、トリトン溶液を加えて遠心分離し、上清を除去し、200μLのトリトン溶液に再分配し、BD Bioscience社製のFACSCalibur機器を使用して分析し、その結果をTreeStar社製のFlowJoプログラムで定量分析した。
【0130】
その結果、
図26に示すように、造血幹細胞由来細胞、すなわち総TILを示すCD45陽性(CD45
+)細胞の比率において、cGAMPと式(1)の化合物の併用処理条件では、総T細胞及び細胞殺害性T細胞の腫瘍への浸潤が増加し、免疫反応を抑制する細胞である骨髄由来抑制細胞(MDSC)の総比率が低下していることが確認され、免疫反応全体の環境が活性化されていることが確認された。また、サイトカイン(TNF-α)及び活性化因子(グランザイムB、パーフォリン)の比率の増加から、浸潤した細胞殺害性T細胞(CD8
+T細胞)の活性が増大していることが確認された。
【0131】
<11-3>腫瘍内部の免疫細胞におけるSTINGの発現レベル確認
式(1)の化合物による腫瘍内部免疫細胞におけるSTING増加が、免疫活性化及び免疫抗癌効能の増大の基礎であることを調べるために、
図27に示すように、式(1)の化合物を単独で腫瘍を処理し、最終処理から1日後に腫瘍を摘出し、その内部のSTINGの量をフローサイトメトリーで確認した。前記のように、二酸化炭素による安楽死後、<実施例6>と同様に腫瘍を摘出し、TILを分離し、細胞内STING染色は行った。
【0132】
その結果、
図28に示すように、腫瘍関連マクロファージ(TAM)及び樹状細胞(DC)に代表される抗原提示細胞においてSTINGの量が増加していることが確認された。また、STING増加の効果は、全腫瘍由来マクロファージのうちM2マクロファージに比べ、免疫反応を直接活性化するM1マクロファージで顕著に現れることが確認された。
【0133】
<11-4>抗癌免疫系の構築効果の確認
cGAMPと式(1)の化合物併用処理した場合、
図18~21で確認された抗原提示効果の増強の結果に加えて、動物モデルにおいても生体全体に抗癌免疫系が構築され、活性化された細胞殺害性T細胞が、薬物を注射しない他の場所の癌細胞を除去できるかを検証した。このため、
図29に示すように、まず、一次腫瘍を移植し、4日後に二次腫瘍を移植し、それぞれの腫瘍の大きさが100mm
3と20mm
3に達した時点で一次腫瘍のみに薬物投与を行った。
【0134】
その結果、
図30に示すように、
図23の結果と同様に、cGAMP(cG)単独投与と比較して、式(1)の化合物との併用処理により、一次腫瘍において腫瘍成長が抑制され、最終腫瘍質量が減少することが確認された。さらに、薬物を直接注入しなかった二次癌においても腫瘍死が効果的に起こることが最終的に確認した。従って、この結果から、式(1)の化合物は、生体全体の抗癌免疫系の構築を効果的に促進させることが確認された。
【0135】
<11-5>式(1)の化合物及び免疫チェックポイント治療剤との併用による処理効果の確認
式(1)の化合物の全身性抗癌免疫系の構築効能から、既存の免疫チェックポイント治療剤と併用して処理した場合にその効能が増大するかどうかを確認した。このため、
図31に示すように、免疫チェックポイント治療剤であるPD-1抗体を3日に1回静脈内投与し、式(1)の化合物は4日に1回癌に直接注入した後、腫瘍の成長及び重量を測定した。
【0136】
その結果、
図32に示すように、PD-1抗体と式(1)の化合物を併用処理した場合、PD-1抗体を単独で処理した場合と比較して、濃度依存的に腫瘍成長及び最終腫瘍重量が減少することが確認された。
【配列表】
【国際調査報告】