(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】調整可能なヘイズ及び色を有する、高透過性PTFE高密度フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/00 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
C08J5/00 CEW
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513408
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 US2021048147
(87)【国際公開番号】W WO2023033780
(87)【国際公開日】2023-03-09
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】マイケル イー.ケネディ
(72)【発明者】
【氏名】シャオフォン ラン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ビー.マイナー
【テーマコード(参考)】
4F071
【Fターム(参考)】
4F071AF08Y
4F071AF15Y
4F071AF29Y
4F071AF30Y
4F071AF34Y
4F071AH12
4F071AH19
4F071BA01
4F071BB03
4F071BB08
4F071BC01
4F071BC12
(57)【要約】
所望の機械的特性(可撓性、強度、及び耐久性など)と組み合わせて、優れた光学特性(高透過性、低ヘイズ、低黄色度)を有する、高密度ポリテトラフルオロエチレンフィルム、並びに本材料を調製する方法が提供される。前記高透過性高密度フィルムは、携帯型電子デバイスにおけるスクリーンのためのカバー層などの様々な光学用途における使用に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品であって、
360nm~780nmで約6%未満の平均ヘイズ係数と、
400nmで2.9mm
-1以下の等価散乱係数と、
を有する、高密度ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムを含む、物品。
【請求項2】
360nm~780nmで測定された平均全透過率は、少なくとも93%である、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記物品は、約3.0以下の黄色度指数を有する、請求項1~2のいずれか一項に記載の物品。
【請求項4】
前記高密度フィルムは、約0.04μm~約1.0mmの厚さを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の物品。
【請求項5】
前記高密度PTFEフィルムは、少なくとも69MPaの縦方向及び横方向のマトリックス引張り強度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記高密度PTFEフィルムは、約20μg
*ミクロン/cm
2/分未満の厚さ正規化したメタン透過率を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
前記高密度PTFEフィルムは、約0.001~約1重量%の少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
前記エチレン性不飽和モノマーは、式F(CF
2)
nCH=CH
2を有するパーフルオロアルキルエチレンであり、nは、4、5、6、7、8、9又は10である、請求項7に記載の物品。
【請求項9】
前記エチレン性不飽和モノマーは、パーフルオロブチルエチレン又はパーフルオロオクチルエチレンである、請求項7又は8に記載の物品。
【請求項10】
前記物品は、シート、チューブ、又は自立型3次元形状の形態である、請求項1~9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項11】
前記物品は、携帯式電子デバイスディスプレイ、可撓性ディスプレイ、ソーラーパネル、パーソナルコンピュータ、テレビ、保管容器、又はセンサーである、請求項1~10のいずれか一項に記載の物品。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の物品を含む、積層体。
【請求項13】
高密度ポリテトラフルオロエチレンフィルムを形成するプロセスであって、
240nm未満の原分散粒子径を有する変性PTFE樹脂を含む乾燥PTFEプリフォームテープを、PTFE結晶溶融温度以上の温度で少なくとも1つの方向に延伸させ、
(a)380nm~780nmで約6%未満の平均ヘイズ係数と、
(b)400nmで2.9mm
-1以下の等価散乱係数と、
を有する、高密度ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムを形成することを含む、方法。
【請求項14】
前記延伸させることは、約325℃~約400℃の温度で行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記延伸させる工程は、縦方向(MD)及び横方向(TD)の両方において5/1以下の延伸比を使用する、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記高密度ポリテトラフルオロエチレンフィルムは、少なくとも69MPaの縦方向及び横方向のマトリックス引張り強度を有する、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記高密度ポリテトラフルオロエチレンフィルムは、約20%未満の空隙体積を有する、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記高密度PTFEフィルムは、約20μg
*ミクロン/cm
2/分未満のメタン透過率を有する、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記乾燥PTFEプリフォームテープは、約0.001重量%~約1重量%の少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含む、PTFE樹脂から形成される、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記エチレン性不飽和モノマーは、式F(CF
2)
nCH=CH
2を有するパーフルオロアルキルエチレンであり、nは、4、5、6、7、8、9又は10である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記エチレン性不飽和モノマーは、パーフルオロブチルエチレン又はパーフルオロオクチルエチレンである、請求項19又は請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記高密度フィルムは、約0.04μm~約1.0mmの厚さを有する、請求項13~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記乾燥PTFEプリフォームテープは、
(a)約110nm~約240nmの原分散粒子径を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂粒子の集団を潤滑化し、潤滑化粒子のブレンドを形成することと、
(b)前記潤滑化粒子のブレンドを圧力及び約350℃未満の温度にさらし、潤滑化ペレットを形成することと、
(c)前記潤滑化ペレットを押し出し、潤滑化ポリテトラフルオロエチレンプリフォームテープを形成することと、
(d)前記潤滑化ポリテトラフルオロエチレンプリフォームテープを加熱して前記潤滑剤を除去し、乾燥PTFEプリフォームテープを形成することと、
を含む、プロセス工程によって形成される、請求項13~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記PTFE樹脂粒子の集団は、約0.001重量%~約1重量%の少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記エチレン性不飽和モノマーは、式F(CF
2)
nCH=CH
2を有するパーフルオロアルキルエチレンであり、nは、4、5、6、7、8、9又は10である、請求項23又は24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、所望の機械的特性(可撓性、強度、及び耐久性など)と組み合わせて、優れた光学特性(高透過性、低ヘイズ、低黄色度)を有する、高密度ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート又はフィルム、フィルムを含む物品、並びにポリテトラフルオロエチレンの熱処理及び延伸の組み合わせを含む、前記フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バリアフィルムは、医療デバイス及び商業デバイスを含む、多種多様な技術において使用される。例えば、バリアフィルムは、電子デバイスディスプレイ、短期及び長期埋め込み型医療デバイス、シール、ガスケット、血液接触表面、バッグ、容器、及びファブリックライナーにおける保護層としての用途が見出されている。良好なバリア特性に加えて、それらの用途に応じて、バリアフィルムは、良好な機械的特性を有し、熱的に安定であり、優れた光学的特性を有するべきである。モノリシック、多成分、及び多層バリアフィルムは、バリア材料として構成されてきたが、光学特性、強度、及びバリア特性の組み合わせを提供していない。
【0003】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、バリアフィルムとしての使用について評価されてきた。PTFEの使用は、それが過酷な化学環境においてかつ広範囲の温度にわたって使用され得るという点で有利である。例えば、PTFEは、他のポリマーが急速に分解する過酷な化学環境で使用するための材料としての有用性を示している。PTFEはまた、約260℃という高い温度から約-273℃という低い温度までの有用な温度範囲を有する。歴史的に、PTFEバリアフィルムは、低い引張り強度、不十分な低温流れ抵抗又はクリープ抵抗、不十分なカットスルー抵抗及び摩耗抵抗などの不十分な機械的特性、並びに多くの材料工学用途での検討を妨げる一般的に不十分な機械的完全性によって特徴付けられていた。
【0004】
低孔性PTFE物品は、より厚い予備成形物品から中実PTFEフィルムを分割又は削り取る、スカイビングプロセスを使用することによって作製されてきた。これらのPTFE物品は、フィルムの長さ方向及び幅方向の両方での、低い強度、不十分な低温流れ抵抗、及び不十分な耐荷重能力によって特徴付けられる。PTFE微粉末のラム押出などのプロセスもまた、低孔性PTFE物品を製造するために使用されてきた。しかしながら、そのようなフィルムはまた、比較的不十分な機械的特性を有する。長さ方向に延伸させることによって低孔性PTFEフィルムを強化する試みも、なされてきた。しかしながら、強度の増加は最小限であり、プロセスの性質により、単一の次元のみで達成されるため、フィルムの有用性が大幅に最小化される。
【0005】
延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)フィルムは、Goreに対する米国特許第3,953,566号に教示された方法によって製造することができる。本プロセスによって形成された多孔性ePTFEは、フィブリルによって相互接続されたノードの微細構造を有し、未延伸PTFEよりも高い強度を示し、未延伸PTFEの化学的不活性及び広い有用な温度範囲を保持する。しかしながら、そのような延伸PTFEフィルムは多孔性であり、したがって、50dyn-cm未満の表面張力を有するそのような流体が膜の孔を通過するので、低表面張力流体に対するバリア層として使用することができない。
【0006】
プラテンプレスを使用し、ePTFEの薄いシートを熱を用いて及び熱を用いずに高密度化する圧縮ePTFE物品も、Goreに対する米国特許第3,953,566号に教示されている。しかしながら、低温流れがプレス内で起こり、不均一な部分が生じ、2.1g/ccを超える密度は達成されなかった。したがって、バリアフィルムとしてのePTFEシートの有用性は、制限されていた。
【0007】
したがって、可撓性、強度及び耐久性などの既存の優れた化学的特性並びに機械的特性を妥協することなく、高透過性であること、並びに低ヘイズ及び低黄色度を有することを含む、優れた光学特性を示すテトラフルオロエチレン系高密度フィルムが当技術分野において必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本明細書では、望ましい機械的特性(可撓性、強度、及び耐久性など)と組み合わせて優れた光学特性(高透過性、低ヘイズ、低黄色度)を示す、高密度ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルム、及びこれらのフィルムを含む物品、並びにフィルムを調製する、方法が提供される。
【0009】
本発明は、従来の高密度PTFEシート又はフィルムの既存の機械的、化学的、及び熱的特性を妥協することなく、優れた光学特性を有する高密度PTFEフィルムを提供する。本発明のシート及びフィルムは、非常に薄い形態で作製することができるが、十分な厚さのものであってもよい。
【0010】
第1の態様(「態様1」)によれば、360nm~780nmで約6%未満の平均ヘイズ係数、及び/又は400nmで2.9mm-1以下の等価散乱係数(reduced scattering coefficient)を有する、高密度ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムを含む物品が提供される。
【0011】
態様1に加えて第2の態様(「態様2」)によれば、物品は、少なくとも93%の360nm~780nmで測定した平均全透過率を有し得る。
【0012】
態様1~2のいずれかに加えて第3の態様(「態様3」)によれば、物品は、約3.0以下の黄色度指数を有し得る。
【0013】
態様1~3のいずれかに加えて第4の態様(「態様4」)によれば、高密度フィルムは、約0.04μm~約1.0mmの厚さを有し得る。
【0014】
態様1~4のいずれかに加えて第5の態様(「実施例5」)によれば、高密度PTFEフィルムは、少なくとも69MPaの縦方向及び横方向のマトリックス引張り強度を有し得る。
【0015】
態様1~5のいずれかに加えて第6の態様(「態様6」)によれば、高密度PTFEフィルムは、約20μg*ミクロン/cm2/分未満の厚さ正規化したメタン透過率を有し得る。
【0016】
態様1~6のいずれかに加えて第7の態様(「態様7」)によれば、高密度PTFEフィルムは、約0.001~約1重量%の少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含み得る。
【0017】
態様1~7のいずれかに加えて第8の態様(「態様8」)によれば、エチレン性不飽和モノマーは、式F(CF2)nCH=CH2を有するパーフルオロアルキルエチレンであり得、nは、4、5、6、7、8、9又は10である。
【0018】
態様7又は8に加えて第9の態様(「態様9」)によれば、エチレン性不飽和モノマーは、パーフルオロブチルエチレン又はパーフルオロオクチルエチレンであり得る。
【0019】
態様1~9のいずれかに加えて第10の態様(「態様10」)によれば、物品は、シート、チューブ、又は自立型3次元形状の形態であり得る。
【0020】
態様1~10のいずれかに加えて第11の態様(「態様11」)によれば、物品は、携帯式電子デバイスディスプレイ、可撓性ディスプレイ、ソーラーパネル、パーソナルコンピュータ、テレビ、保管容器、又はセンサーであり得る。
【0021】
第12の態様(「態様12」)によれば、態様1~11のいずれかの態様の物品を含む、積層体が提供される。
【0022】
第13の態様(「態様13」)によれば、
240nm未満の原(raw)分散粒子径を有する変性PTFE樹脂を含む乾燥PTFEプリフォームテープを、PTFE結晶溶融温度以上の温度で少なくとも1つの方向に延伸させて、
(a)380nm~780nmで約6%未満の平均ヘイズ係数と、
(b)400nmで2.9mm-1以下の等価散乱係数と、
を有する、高密度ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムを形成すること、を含む、高密度ポリテトラフルオロエチレンフィルムを形成する方法が提供される。
【0023】
態様13に加えて第14の態様(「態様14」)によれば、延伸させることは、約350℃~約400℃の温度で行われ得る。
【0024】
態様13~14のいずれかに加えて第15の態様(「態様15」)によれば、延伸させる工程は、縦方向(MD)及び横方向(TD)の両方において5/1以下の延伸比を使用し得る。
【0025】
態様13~15のいずれかに加えて第16の態様(「態様16」)によれば、高密度ポリテトラフルオロエチレンフィルムは、少なくとも69MPaの縦方向及び横方向のマトリックス引張り強度を有し得る。
【0026】
態様13~16のいずれかに加えて第17の態様(「態様17」)によれば、高密度ポリテトラフルオロエチレンフィルムは、約20%未満の空隙体積を有し得る。
【0027】
態様13~17のいずれかに加えて第18の態様(「態様18」)によれば、高密度PTFEフィルムは、約20μg*ミクロン/cm2/分未満のメタン透過率を有する。
【0028】
態様13~18のいずれかに加えて第19の態様(「態様19」)によれば、乾燥PTFEプリフォームテープは、約0.001重量%~約1重量%の少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含む、PTFE樹脂から形成され得る。
【0029】
態様19に加えて第20の態様(「態様20」)によれば、エチレン性不飽和モノマーは、式F(CF2)nCH=CH2を有するパーフルオロアルキルエチレンであり得、nは、4、5、6、7、8、9又は10である。
【0030】
態様19又は20に加えて第21の態様(「態様21」)によれば、エチレン性不飽和モノマーは、パーフルオロブチルエチレン又はパーフルオロオクチルエチレンであり得る。
【0031】
態様13~21に加えて第22の態様(「態様22」)によれば、高密度フィルムは、約0.04μm~約1.0mmの厚さを有する。
【0032】
態様13~22に加えて第23の態様(「態様23」)によれば、
【0033】
乾燥PTFEプリフォームテープは、
(a)約110nm~約240nmの原分散粒子径を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂粒子の集団を潤滑化し、潤滑化粒子のブレンドを形成することと、
(b)潤滑化粒子のブレンドを十分な圧力下で約350℃未満の温度にさらし、潤滑化ペレットを形成することと、
(c)潤滑化ペレットを押し出し、潤滑化ポリテトラフルオロエチレンプリフォームテープを形成することと、
(d)潤滑化ポリテトラフルオロエチレンプリフォームテープを加熱して潤滑剤を除去し、乾燥PTFEプリフォームテープを形成することと、を含む、プロセス工程によって形成され得る。
【0034】
態様23に加えて第24の態様(「態様24」)によれば、PTFE樹脂粒子の集団は、約0.001重量%~約1重量%の少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含み得る。
【0035】
態様23又は24に加えて第25の態様(「態様25」)によれば、エチレン性不飽和モノマーは、式F(CF2)nCH=CH2を有するパーフルオロアルキルエチレンであり得、nは、4、5、6、7、8、9又は10である。
【0036】
前述の態様は、ただそれだけのものであり、本開示によって別途提供される本発明の概念のいずれかの範囲を限定する又は狭めるように解釈されるべきではない。複数の態様が開示されているが、更に他の態様は、例示的な例を示し説明する以下の「発明を実施するための形態」から当業者に明らかになるであろう。したがって、図面及び「発明を実施するための形態」は、本質的に制限的ではなく、本質的に例示的であるとみなされるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
定義及び用語
本開示は、限定的に解釈されることを意図するものではない。例えば、本出願において使用される用語は、当業者がそのような用語に帰するであろう意味の文脈において広く解釈されるべきである。
【0038】
不正確さの用語に関して、「約」及び「およそ」という用語は、述べられた測定値を含み、述べられた測定値に合理的に近い任意の測定値も含む測定値を指すために、互換的に使用され得る。述べられた測定値に合理的に近い測定値は、当業者によって理解されかつ容易に確認されるように、合理的に少量だけ述べられた測定値から逸脱する。そのような逸脱は、例えば、測定誤差、測定及び/又は製造機器較正の差、測定の読み取り及び/又は設定におけるヒューマンエラー、他の構成要素に関連する測定の差を考慮して性能及び/又は構造パラメータを最適化するために行われる微調整、特定の実装シナリオ、人若しくは機械による物体の不正確な調整及び/又は操作などに起因し得る。当業者がそのような合理的に小さい差の値を容易に把握できないと判断される場合、「約」及び「およそ」という用語は、述べられた値のプラス又はマイナス10%を意味すると理解され得る。
【0039】
範囲は、本明細書では、「約」1つの特定の値から及び/又は「約」別の特定の値までとして表現され得る。そのような範囲が表現される場合、別の態様は、1つの特定の値から及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、値が先行詞「約」の使用によって近似値として表される場合、特定の値が別の態様を形成することが理解されるであろう。更に、範囲のそれぞれの端点は、他の端点に関して及び他の端点とは独立して両方とも重要であることが理解されるであろう。範囲が本明細書及び特許請求の範囲に列挙されている場合、具体的に開示されているか否かにかかわらず、その範囲内の小数を含むすべての数が含まれることが理解される。例えば、範囲が1~10である場合、範囲は、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9及び10などの範囲内のすべての数を含む。更に、特に断りのない限り、「0」は以下の範囲に含まれず、同様に特に断りのない限り、「100」は以上の範囲に含まれないことが理解される。
【0040】
本明細書で使用する場合、「コモノマー」という用語は、テトラフルオロエチレンモノマー以外のポリテトラフルオロエチレン内に存在する任意のモノマーを示すことを意味する。
【0041】
本明細書で使用する場合、「実質的にTFEモノマーのみ」又は「ホモポリマーPTFE」という語句は、PTFE樹脂が、(1)TFEモノマー、又は(2)TFEモノマー及び定量不可能な量(微量)のコモノマーを含有することを示すことを意味する。
【0042】
本明細書で使用する場合、「変性PTFE」という用語は、TFEモノマーと少なくとも1種のコモノマーとの反応生成物を記載することを意味し、コモノマーは、変性PTFEの総重量に基づいて、少なくとも約0.001重量%~約1重量%の重合単位の量で変性PTFE中に存在する。
【0043】
本明細書で使用する場合、「高密度」という用語は、約20%未満の空隙体積を有する物品を記述することを意味する。
【0044】
本明細書で使用する場合、「幅」及び「長さ」という用語は、それぞれx方向及びy方向に類似している。
【0045】
本明細書で使用する場合、「潤滑剤」という用語は、加工条件でポリマーの溶媒ではない非圧縮性流体を含み、いくつかの態様では、非圧縮性流体からなる、加工助剤を記述することを意味する。流体-ポリマー表面相互作用は、均質な混合物を作製することが可能であるようなものである。
【0046】
様々な態様の説明
当業者であれば、本開示の様々な形態が、意図された機能を実行するように構成された任意の数の方法及び装置によって実現され得ることを容易に理解するであろう。また、本明細書で参照される添付の図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、本開示の様々な形態を示すために誇張されている場合があり、その点に関して、図面は限定するものとして解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0047】
本発明は、変性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂に基づく高密度PTFEフィルムを含む、高密度物品に関する。本開示はまた、高密度ポリテトラフルオロエチレンフィルムの作製するためのプロセスにも関する。高密度物品は、所望の機械的特性(可撓性、強度、及び耐久性など)と組み合わせて、優れた光学特性(高透過性、低ヘイズ、低黄色度)を含む、改善された物理的及び機械的特性を示す。
【0048】
変性PTFE樹脂は、テトラフルオロエチレンモノマーがTFE以外の少なくとも1つのコモノマーと共重合されるプロセスによって形成される。コモノマーは、TFEモノマーとの重合を可能にするようにTFEとの反応性を有する、エチレン性不飽和モノマーであり得る。例えば、コモノマーは、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、パーフルオロヘキシルエチレン(PFHE)、及びパーフルオロオクチルエチレン(PFOE)などのパーフルオロアルキルエチレンモノマーであってもよいか、又はパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、及びパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)などのパーフルオロアルキルビニルエーテルモノマーであってもよい。例えば、パーフルオロアルキルエチレンモノマーは、式F(CF2)nCH=CH2を有するパーフルオロアルキルエチレンであり得、nは、4、5、6、7、8、9又は10である。好ましくは、コモノマーは、パーフルオロブチルエチレン(n=4)又はパーフルオロオクチルエチレン(n=8)であってもよい。
【0049】
変性PTFE樹脂をベースとするシート又はフィルムは、Fordらに対する米国特許第9,644,054号の教示に従って作製することができる。変性PTFE樹脂は、TFEモノマー及び少なくとも1つのコモノマーを加圧反応器中に入れることと、フリーラジカル開始剤で重合反応を開始することと、重合反応中にTFEモノマー及びコモノマーを反応容器中に供給することと、重合反応の完了前に重合反応中のある時点でコモノマーの添加を停止することと、反応が完了するまでTFEモノマーのみを反応容器中に供給することによって重合反応を継続することと、を含む、重合プロセスによって製造することができる。1超のコモノマーを加圧反応器に供給し、例えば、ターポリマーなどの多成分コポリマーを製造できることを理解されたい。
【0050】
TFEモノマー及びコモノマーの最初の添加は、プレチャージとして反応容器に導入されてもよい。重合反応が開始された後、コモノマー及びTFEモノマーは、例えば、コモノマーがTFEモノマーの前に添加されるように、順次添加されてもよい。あるいは、TFEモノマー及びコモノマーは、反応容器に同時に添加されてもよい。TFEモノマー及びコモノマーは、重合反応中に反応容器に増加的に又は断続的に導入されてもよい。製造される変性PTFE中のコモノマーのより高い濃度は、コモノマーをより高い濃度レベルで反応容器に添加することによって達成される。
【0051】
コモノマーは、少なくとも約0.001重量%、少なくとも約0.005重量%、少なくとも約0.01重量%、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.5重量%、又は少なくとも約1.0重量%の量で反応容器に添加することができる。反応容器へのTFEモノマー及び/又はコモノマーの添加に関して本明細書に記載される重量%は、反応容器内に供給されるTFEモノマー及びコモノマーの総重量に基づくことに留意すべきである。
【0052】
重合反応において、実質的に非テロゲン性分散剤を使用することができる。パーフルオロオクタン酸アンモニウム(APFO又は「C-8」)は、重合反応に適した分散剤の1つの非限定的な例である。プログラムされた添加(プレチャージ及びポンピング)を利用し、分散剤を反応容器に添加してもよい。成分純度は、本明細書に記載される高密度物品において所望の特性を達成するために必要であることを理解されたい。連鎖移動又は停止を引き起こし得る可溶性有機不純物に加えて、イオン強度を増加させ得るイオン性不純物は、最小限に抑えられるか、又は排除される。少なくとも1つの態様では、超純水が使用される。
【0053】
変性PTFE樹脂は、少なくとも約0.001重量%、少なくとも約0.005重量%、少なくとも約0.01重量%、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.5重量%、又は少なくとも約1.0重量%の量でコモノマーを含有してもよい。したがって、変性PTFE樹脂中に存在し得るテトラフルオロエチレン(例えば、TFEモノマー)の量は、約99.999重量%未満、約99.995重量%未満、約99.99重量%未満、約99.95重量%未満、約99.9重量%未満であり得る。いくつかの態様では、変性PTFE樹脂は、少なくとも約0.001重量%~約1.0重量%、又はこの範囲内に包含される任意の量のコモノマーを含有してもよい。
【0054】
変性PTFE樹脂は、延伸可能でもよく、フィブリルによって相互接続されたノードの微細構造を有する、強力で有用な延伸変性PTFE物品を製造するために延伸されてもよい。
【0055】
変性PTFE樹脂粒子は、240nm未満、又は200nm未満、又は150nm未満、又は110nm未満、又は90nm未満、又は70nm未満、又は50nm未満、又は30nm未満、又は20nm未満の原分散粒子径を有してもよい。変性PTFE樹脂粒子は、20nm超~240nm未満、又は70nm超~240nm未満、又は110nm超~240nm未満、又は150nm超~240nm未満、又は200nm超~200nm未満の範囲の原分散粒子径を有してもよい。変性PTFE樹脂粒子はまた、例えば、約240nm及び約20nmの原分散粒子径などの2つ以上の原分散粒子径のうちの2つのブレンド、又はそれらの端点間の任意の他の原分散粒子径のブレンドであってもよい。
【0056】
変性PTFE樹脂は、水性媒体中に分散された微粒子の形態で製造することができ、高密度ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムに加工することができる。高密度PTFEフィルムは、延伸プロセスにおいて従来行われるように、乾燥プリフォームの多孔性を増加させることなしに、約400℃以下、又は約325℃以上の変形温度で乾燥押出物から直接製造される。
【0057】
高密度PTFEフィルムを形成するために、変性PTFE樹脂は、変性PTFE樹脂が好適な潤滑剤(例えば、Isopar(登録商標)K)と組み合わされ、ブレンドされ、ペレットに圧縮され、ダイを通して押し出されて、テープを形成するラム押出プロセスにさらされてもよい。押出方向は、y方向又は長手方向と呼ばれる。次いで、テープを乾燥させて、潤滑剤を除去又は実質的に除去し、乾燥押出物又は乾燥プリフォームを形成する。本明細書で使用する場合、「潤滑剤」という用語は、加工条件でポリマーの溶媒ではない非圧縮性流体を含み、いくつかの態様では、非圧縮性流体からなる、加工助剤を記述することを意味する。更に、流体-ポリマー表面相互作用は、均質な混合物を作製することが可能であるようなものである。「実質的にすべての潤滑剤」という語句は、潤滑剤が、変性PTFE樹脂テープからほぼ又は完全に除去され、乾燥プリフォームを形成することを示すことを意味する。
【0058】
次いで、乾燥プリフォームテープを、約400℃以下若しくは約350℃~約400℃の温度で少なくとも1つの方向に変形又は延伸させ、高密度PTFEフィルムを形成することができる。本明細書で使用する場合、「高密度」という用語は、約20%未満の空隙体積を有するPTFEフィルム又は物品を記述することを意味する。高密度PTFEフィルムは、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約8%未満、約5%未満、約3%未満、又は約1%未満の空隙体積を有し得る。
【0059】
次いで、乾燥プリフォームテープは、縦方向(MD)及び横方向(TD)の両方において5/1以下の延伸比で変形又は延伸されてもよく、延伸比は、初期長さに対する最終長さに等しいと定義される。
【0060】
別の態様では、乾燥PTFEプリフォームテープは、以下の工程:(a)約20nm~約240nmの原分散粒子径を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂粒子の集団を潤滑化し、潤滑化粒子のブレンドを形成することと、(b)潤滑化粒子のブレンドを圧力及び約350℃未満の温度にさらし、潤滑化ペレットを形成することと、(c)潤滑化ペレットを押し出し、潤滑化ポリテトラフルオロエチレンプリフォームテープを形成することと、(d)潤滑化ポリテトラフルオロエチレンプリフォームテープを加熱して潤滑剤を除去し、乾燥PTFEプリフォームテープを形成することと、を含む、プロセスによって形成されてもよい。
【0061】
いくつかの態様では、高密度PTFEフィルムは薄く、約1000μm(1.0mm)未満、約500μm未満、約100μm未満、約50μm未満、約10μm未満、約1μm未満、約0.5μm未満、又は約0.1μm未満、又は約0.05μm未満の厚さを有し得る。例えば、高密度PTFEフィルムは、約0.04μm~約1.0mmの厚さを有してもよく、又はこの範囲に包含される任意の値の厚さを有してもよい。
【0062】
加えて、高密度PTFEフィルムは、360nm~780nmで約6%未満、又は360m~780nmで約5%未満、360nm~780nmで約4%未満、360nm~780nmで約3%未満、360nm~780nmで約2%未満、360nm~780nmで約1%未満の平均ヘイズ係数を有し得る。高密度PTFEフィルムは、360nm~780nmで約1%~360nm~780nmで約6%の範囲内の平均ヘイズ係数を有してもよい。
【0063】
いくつかの態様では、高密度PTFEフィルムは、400nmで2.9mm-1以下、400nmで2.5mm-1以下、400nmで2.3mm-1以下、400nmで2.0mm-1以下、400nmで1.7mm-1以下、400nmで1.5mm-1以下、400nmで1.3mm-1以下、又は400nmで1.0mm-1以下の等価散乱係数を有し得る。高密度PTFEフィルムは、400nmで約1.0mm-1~400nmで約2.9mm-1の範囲内の等価散乱係数を有してもよい。
【0064】
高密度PTFEフィルム及び高密度PTFEフィルムを含む物品は、バリア材料として利用することができる。高密度PTFEフィルムは、約20μg*ミクロン/cm2/分未満、約15μg*ミクロン/cm2/分未満、約10μg*ミクロン/cm2/分未満、約5μg*ミクロン/cm2/分未満、約1.0μg*ミクロン/cm2/分未満、又は約0.5μg*ミクロン/cm2/分未満のメタン透過率を示し得る。更に、高密度PTFEフィルムは、少なくとも1つの方向において、約69MPa以上、約125MPa以上、約150MPa以上、約175MPa以上、若しくは約200MPa以上、又はそれ以上のマトリックス引張り強度を有する。
【0065】
高密度PTFEフィルム及び高密度PTFEフィルムを含む高密度物品は、基材に積層、接着、又は他の方法で(例えば、熱的に、機械的に、又は化学的に)結合されてもよい。好適な基材の非限定的な例としては、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデンのポリマー(THV);ポリウレタン、ポリアミド、エチレンビニルアルコール(EVOH)、並びにポリ塩化ビニル(PVC)が挙げられるが、これらに限定されない。基材はまた、金属シート、無機シート、又は感圧接着剤であってもよい。そのような積層構造は、織物などの追加の層への更なる結合を容易にするか、又は強化することができる。
【0066】
高密度PTFEフィルムを含む物品は、優れた光学特性を示すことができる。そのような高密度物品は、360nm~780nmで測定して少なくとも約93%、又は少なくとも約94%、又は少なくとも約95%の平均全透過率を有し得る。例えば、高密度物品は、360nm~780nmで測定して約93%~約95%の平均全透過率を有し得る。
【0067】
加えて、高密度PTFEフィルムを含む物品は、約3.0以下、約2.5以下、約2.0以下、約1.5以下、又は約1.0以下の黄色度指数を有し得る。例えば、高密度物品は、約1.0~約3.0の黄色度指数、又はその範囲内に包含される任意の値の黄色度指数を有し得る。
【0068】
高密度PTFEフィルムを含む物品は、シート、チューブ、又は自立型3次元形状の形態であってもよい。あるいは、物品は、積層体又は複合体に含まれてもよい。
【0069】
高密度PTFEフィルムを含む物品は、携帯式電子デバイスディスプレイ、可撓性ディスプレイ、ソーラーパネル、パーソナルコンピュータ、テレビ、保管容器、又はセンサーであってもよい。
【0070】
まとめると、本明細書で提供されるプロセスによって調製された新規な高密度PTFEフィルムを含む物品は、耐化学薬品性がある、屈曲可能である/可撓性がある、強い及び耐久性があるなどの既存の化学的及び機械的特性を妥協することなく、優れた光学特性(高透過性、低ヘイズ、低黄色度)、UV耐久性を示す。
【0071】
試験方法
特定の方法及び装置が以下に記載されるが、当業者によって適切であると決定される他の方法又は装置が、代替的に利用され得ることが理解されるべきである。
【実施例】
【0072】
本明細書で別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって共通して理解されるものと同じ意味を有する。本発明は、以下の実施例において更に定義される。これらの実施例は、本発明の好ましい態様を示すが、例示のためにのみ付与されていることは理解されるべきである。上記の考察及びこれらの実施例から、当業者であれば、本発明の本質的な特徴を確認することができ、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明の種々の変更及び改変を行って、本発明を種々の使用及び条件に適合させることができる。
【0073】
原分散一次粒子径(RDPS)
RDPSは、NanoBrook90 Plus Particle Size Analyzer(Brookhaven Instruments,Holtsville,NY)を使用してレーザー光散乱によって得た。
【0074】
引張り特性
フィルムの引張り特性を、ASTM規格D412Fに基づいてInstron引張り試験機で測定した。引張り試験片は、全長12.70cm(5.0インチ)、幅0.64cm(0.25インチ)のドッグボーン形状であった。ゲージ長さは5.89cm(2.32インチ)であり、クロスヘッド速度は47.12cm/分(18.55インチ/分)であった。MD及びTDの両方について3回の測定を行った。マトリックス引張り強度(MTS)は、以下の式を用いて計算した。
MTS=F/A
ここで、Fは試験における最大荷重であり、AはPTFEのx断面積である。PTFEのx断面積は、試料中の潜在的な孔/欠陥に起因して、試料のx断面積と同じではない。PTFEのx断面積は、以下のように計算することができる。
【数1】
ここで、mは試験片の質量であり、Lは試験片の長さであり、ρはPTFEの平均固有密度であり、それは2.18g/ccである。
【0075】
光学特性
当業者であれば、試験片が非吸収性でありかつ0バルク散乱を示さない限り、色、透過率、及びヘイズなどのフラットシート試験片の光学特性が厚さに依存することを理解する。試験片の固有バルク散乱を決定することができ、様々な厚さのフラットシート物品の固有バルク散乱を比較することができるように、PTFEから構成されるフラットシート物品におけるバルク散乱の大きさを厚さ正規化した基準で定量化することが望ましい。
【0076】
放射伝達(又は、輸送)理論、より具体的には、逆加算倍加(IAD)法を使用し、波長、具体的には、吸収係数μa[mm-1]、散乱係数μs[mm-1]、及び異方性係数g(又は、非対称性パラメータ)の関数として、フラットシート試験片の厚さ正規化した光学特性を決定することができる。光学特性:全透過率Tt、全反射率Rt及び非散乱透過率Tcを得るためには、波長に応じて3回の測定が必要である。Tt及びRtのみが測定される場合、μa及び等価散乱係数μ’s=(1-g)μsのみを得ることができる。非吸収性試験片については、μa=0が仮定され得、したがって、Tt+Rt=1から、μ’sを得るためにTt又はRtのみが必要とされる。μ’sを得るためには、試験片の屈折率n及び厚さt[mm]も既知でなければならない。
【0077】
等価散乱係数μ’sは、試験片の固有バルク散乱を表すものである。所与の厚さについて、最適な透明度(最大透過率、並びに最小ヘイズ及び色)のPTFEフラットシート物品は、μ’sが可視波長範囲にわたって最小化される場合に得られる。
【0078】
IAD法はScott A.Prahlによって開発され、1990年代から生物医学分野で広く使用されてきた。この方法は、以下の文献:S.A.Prahl,M.J.C.van Gemert,and A.J.Welch,「Determining the optical properties of turbid media by using the adding doubling method.,」Appl.Opt.,vol.32,pp.559-568,1993に記載されている。
以下の設定をIADプログラムで使用した。屈折率、厚さ、全透過率(M_T)、及び1-M_Tによって計算される全反射率(M_R)を各試料について更新した。
IAD1
1.3656 #試料の屈折率(試料毎に異なる)
1.0 #上部スライド及び下部スライドの屈折率
0.05319 #[mm]試料の厚さ(試料毎に異なる)
0.0 #[mm]スライドの厚さ
0.0 #[mm]照明ビームの直径
1.0 #反射率較正標準の反射率
0 #測定に用いた球の数
#反射測定に使用される球の特性
203.2 #[mm]球直径(8インチ*25.4mm/インチ)
31.75 #[mm]試料ポート直径
6.35 #[mm]入口ポート直径
3.18 #[mm]検出器ポート直径
0.975 #球壁の反射率
#透過測定に使用される球の特性
203.2 #[mm]球直径(8インチ*25.4mm/インチ)
31.75 #[mm]試料ポート直径
0.00 #[mm]入口ポート直径
3.18 #[mm]検出器ポート直径
0.975 #球壁の反射率
2 #2つの測定値、すなわち、M_R、M_T、M_U
#ラムダ M_R M_T
2500 0.023452 0.976548
2499 0.035603 0.964397
2498 0.036976 0.963024
250に続く。
【0079】
光学測定値及び計算
光学測定値は、ASTM D1003-13(Standard Test Method for Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics;ASTM International,West Conshohocken,PA)に従って決定した。入射光(T1)、試験片によって透過された全光(T2)、機器によって散乱された光(T3)、並びに機器及び試験片によって散乱された光(T4)を、Jasco iln-725積分球を備えたJasco v-670 UV-Vis-NIR分光光度計を使用して、1nm刻みで250~2500nmの波長範囲にわたって測定した。散乱光透過率(Td)、全光透過率(Tt)、及びヘイズ%は、ASTM D1003-13に従って計算した。ASTM E308-18(Standard Practice for Computing the Colors of Objects by Using the CIE System)及びASTM E313-15(Standard Practice for Calculating Yellowness and Whiteness Indices from Instrumentally Measured Color Coordinates)それぞれ(ASTM International、前出)に従って、D65光源、10度の観測者及び10nm間隔についての全光透過率(Tt)スペクトルから、CIELAB(L*a*b*)色及び黄色度指数(YI)を計算した。
【0080】
メタン透過率
標準手順:
【0081】
メタン透過を測定するために使用される装置は、上半分、下半分、メタンガス用の入口、及び0空気用の入口を有するステンレス鋼試験室から構成された。「0空気」という用語は、メタンがFID検出器が測定する唯一の炭化水素であるように、空気中のあらゆる炭化水素を除去するために触媒床を通過する圧縮空気を指す。試験室の下半分を、最初に0空気でパージした。試験フィルムを、2つの半分の間に挟み、密封する。2つのOリングによって気密シールが形成される。
【0082】
次に、メタンガス及び0空気を、入口から試験試料内に導入した。メタンガス及び0空気の流れは、それぞれニードルバルブ及びマスフローコントローラー(モデル番号Brooks 5850E)を用いて制御した。メタンガスは、下入口から入り、下排気出口を通って出て、試験試料に背圧がないことを確実にした。
試験試料を透過したメタンガスは0空気中に運ばれ、FID検出器(Model 8800B,Baseline-Mocon,Inc.)内に供給された。FID検出器は、試験試料を透過したメタンガスの濃度を連続的に測定した。検出器をデータ取得システムに接続して電圧信号を取得し、次いで、これを既知の3点較正曲線を使用してメタン濃度(Cメタン)値に変換した。
【0083】
試験期間は、少なくともメタン濃度が定常状態に達するまで継続した。試験時間は、通常は約15分~約40分の範囲にわたった。試験期間の最後の2分間に収集されたデータ(Cメタン)の平均を報告した。
【0084】
メタンフラックス(g/cm2/分の単位で)は、以下の式によって計算した。
メタンフラックス=0.000654*Cメタン
*R/A
ここで、Cメタンは平均メタン濃度(ppm)であり、Rは0空気の流量(cm3/分)であり、Aは試験試料の面積(cm2)である。メタン透過率を2回測定し、2つの試料に基づくメタンフラックスの平均値を報告した。
【実施例1】
【0085】
プロセスAを用いた、パーフルオロブチルエチレン変性ポリテトラフルオロエチレン樹脂
約169nmの原分散粒子径(RDPS)を有するパーフルオロブチルエチレン(PFBE)変性PTFE樹脂(約0.28モル%(約0.69重量%)PFBE)を、0.218g/gの濃度でイソパラフィン系炭化水素潤滑剤(ISOPAR(商標)K,Exxon,Houston,TX)と混合し、続いてブレンドし、円筒形ペレットに圧縮し、49℃の温度で24時間熱的に調整した。次に、円筒形ペレットを、75の縮小率で長方形ダイを通して厚さ0.521mmのテープに押し出した。次いで、得られたテープを180°Cで乾燥させ、潤滑剤を除去した。
【0086】
Fordらに対する米国特許第9,644,054号の教示に基づいて、次に、テープをパンタグラフ機に入れ、370℃で300秒間加熱し、次に、同じ温度を維持しながら、長手方向及び横方向にそれぞれ3.0並びに3.4の延伸比で同時に延伸させた。平均工学歪み速度は、約6%/秒であると計算された。得られたフィルム厚さは、57.9μmであった。
【0087】
機械的特性及び光学的特性を、上記の試験方法に従って決定した。結果を表1に提供する。
【実施例2】
【0088】
プロセスAを用いたPFOE変性PTFE樹脂
約199nmの原分散粒子径(RDPS)を有するパーフルオロオクチルエチレン(PFOE)変性PTFE樹脂(0.028モル%(約0.125重量%)のPFOE)を、0.218g/gの濃度でイソパラフィン系炭化水素潤滑剤(ISOPAR(商標)K)と混合し、続いてブレンドし、円筒形ペレットに圧縮し、49℃の温度で24時間熱的に調整した。次に、円筒形ペレットを、75の縮小率で長方形ダイを通して厚さ0.508mmのテープに押し出した。次いで、得られたテープを180°Cで乾燥させ、潤滑剤を除去した。
【0089】
Fordらに対する米国特許第9,644,054B2号の教示に基づいて、次に、テープをパンタグラフ機に入れ、370℃で300秒間加熱し、次に、同じ温度を維持しながら、長手方向及び横方向にそれぞれ2.9並びに3.3の比で同時に延伸させた。平均工学歪み速度は、約6%/秒であると計算された。得られたフィルム厚さは、62.3μmであった。
【0090】
機械的特性及び光学的特性を、上記の試験方法に従って決定した。結果を表1に提供する。
【実施例3】
【0091】
プロセスAを用いたPFBE変性PTFE樹脂
約220nmのパーフルオロブチルエチレン(PFBE)変性PTFE樹脂(約0.03モル%(約0.074重量%)PFBE)原分散粒子径(RDPS)を、0.218g/gの濃度でイソパラフィン系炭化水素潤滑剤(ISOPAR(商標)K)と混合し、続いてブレンドし、円筒形ペレットに圧縮し、49℃の温度で24時間熱的に調整した。次に、円筒形ペレットを、75の縮小率で長方形ダイを通して厚さ0.508mmのテープに押し出した。次いで、得られたテープを180°Cで乾燥させ、潤滑剤を除去した。
【0092】
Fordらに対する米国特許第9,644,054B2号の教示に基づいて、次に、テープをパンタグラフ機に入れ、370°Cで300秒間加熱し、次に、同じ温度を維持しながら、長手方向及び横方向にそれぞれ3.5と3.5の延伸比で同時に延伸させた。平均工学歪み速度は、約8%/秒であると計算された。得られたフィルム厚さは、53.8μmであった。
【0093】
機械的特性及び光学的特性を、上記の試験方法に従って決定した。結果を表1に提供する。
【実施例4】
【0094】
(比較例)
プロセスAを用いたホモポリマーPTFE樹脂
約280nmの原分散粒子径(RDPS)を有するホモポリマーPTFE樹脂を、0.218g/gの濃度でイソパラフィン系炭化水素潤滑剤(ISOPAR(商標)K)と混合し、続いてブレンドし、円筒形ペレットに圧縮し、49℃の温度で24時間熱的に調整した。次に、円筒形ペレットを、75の縮小率で長方形ダイを通して厚さ0.533mmのテープに押し出した。次いで、得られたテープを180°Cで乾燥させ、潤滑剤を除去した。
【0095】
実施例1の一般的なプロセスに従って、次に、テープをパンタグラフ機に入れ、370℃で300秒間加熱し、次に、同じ温度を維持しながら、長手方向及び横方向にそれぞれ3.3と3.3の延伸比で同時に延伸した。平均工学歪み速度は、約10%/秒であると計算された。得られたフィルム厚さは、64.0μmであった。
機械的特性及び光学的特性を、上記の試験方法に従って決定した。結果を表1に提供する。
【実施例5】
【0096】
(比較例)
プロセスBを用いたPFBE変性PTFE樹脂
約220nmの原分散粒子径(RDPS)を有するPFBE変性PTFE樹脂(約0.03モル%(約0.074重量%)PFBE)を、0.201g/gの濃度でイソパラフィン系炭化水素潤滑剤(ISOPAR(商標)K)と混合し、続いてブレンドし、円筒形ペレットに圧縮し、49℃の温度で24時間熱的に調整した。次に、円筒形ペレットを、150の縮小率で長方形ダイを通して厚さ0.711mmのテープに押し出した。次いで、得られたテープを180°Cで乾燥させ、潤滑剤を除去した。
【0097】
Kennedyらに対する米国特許第7,521,010B2号の一般的な方法に基づいて、次いで、乾燥PTFEテープを、10%/秒超の直線速度、及び延伸比=3で、加熱されたドラム(ドラム温度280℃)の間でy方向に延伸させた。次いで、テープを、10%/秒超の直線速度、約325℃の温度、及び延伸比=4で直交方向(x方向)に延伸させた。
【0098】
次に、得られた膜を、Knoxらに対する米国特許第5,374,473号及びKennedyらに対する米国特許第7,521,010B2号に従って高密度化した。次に、高密度化物品を、材料が約370℃の空気温度に125秒間曝露されることによってPTFEの結晶溶融温度を超えて加熱される、パントグラフ機に入れた。次に、試料を更に370℃で加熱しながら、延伸比=3、及び8%/秒の平均工学歪み速度でx方向に延伸させた。得られたフィルム厚さは、53.2μmであった。
【0099】
機械的特性及び光学的特性を、上記の試験方法に従って決定した。結果を表1に提供する。
【実施例6】
【0100】
プロセスAを用いたPFBE変性PTFE樹脂
約220nmの原分散粒子径(RDPS)を有するPFBE変性PTFE樹脂(約0.03モル%(約0.074重量%)PFBE)を、0.218g/gの濃度でイソパラフィン系炭化水素潤滑剤(ISOPAR(商標)K)と混合し、続いてブレンドし、円筒形ペレットに圧縮し、49℃の温度で24時間熱的に調整した。次に、円筒形ペレットを、75の縮小率で長方形ダイを通して厚さ0.508mmのテープに押し出した。得られたテープの2つの層を、49℃でカレンダー機上で一緒に圧縮した。次いで、得られたテープを180°Cで乾燥させ、潤滑剤を除去した。
【0101】
Fordらに対する米国特許第9,644,054B2号の教示に基づいて、次に、テープをパンタグラフ機に入れ、370℃で300秒間加熱し、次に、同じ温度を維持しながら、長手方向及び横方向にそれぞれ3.5と3.5の延伸比で同時に延伸させた。平均工学歪み速度は、約8%/秒であると計算された。得られたフィルム厚さは、99.7μmであった。
【0102】
機械的特性及び光学的特性を、上記の試験方法に従って決定した。結果を表1に提供する。
【実施例7】
【0103】
プロセスAを用いたPFBE変性PTFE樹脂
約128nmの原分散粒子径(RDPS)を有するPFBE変性PTFE樹脂(約0.21モル%(約0.52重量%)PFBE)を、0.234g/gの濃度でイソパラフィン系炭化水素潤滑剤(ISOPAR(商標)K)と混合し、続いてブレンドし、円筒形ペレットに圧縮し、49℃の温度で24時間熱的に調整した。次に、円筒形ペレットを、75の縮小率で長方形ダイを通して厚さ0.584mmのテープに押し出した。次いで、得られたテープを180°Cで乾燥させ、潤滑剤を除去した。
【0104】
Fordらに対する米国特許第9,644,054B2号の教示に基づいて、次に、テープをパンタグラフ機に入れ、370℃で300秒間加熱し、次に、同じ温度を維持しながら、長手方向及び横方向にそれぞれ3.4と3.6の延伸比で同時に延伸させた。平均工学歪み速度は、約6%/秒であると計算された。得られたフィルム厚さは、49.6μmであった。
【0105】
機械的特性及び光学的特性を、上記の試験方法に従って決定した。結果を表1に提供する。
【実施例8】
【0106】
(比較例)
スカイビングされたPTFE(2ミル)
56.7μmのスカイビングされたPTFEフィルムを、Rogers Corporation(DeWAL DW200;Rogers Corporation,Chandler,AZ)から入手した。機械的特性及び光学的特性を、上記の試験方法に従って決定した。結果を表1に提供する。
【実施例9】
【0107】
(比較例)
プロセスAを用いたTFE-VDFコポリマー樹脂(27.9モル%VDF)
Fordらに対する米国特許第9,644,054B2号の実施例1に従って、約321nmの原分散粒子径(RDPS)を有するTFE-VDFコポリマー樹脂(27.9モル%(約19.9重量%)の二フッ化ビニリデン(VDF))からの高密度フィルムを調製した。
【0108】
機械的特性及び光学的特性を、上記の試験方法に従って決定した。結果を表1に提供する。
【0109】
【国際調査報告】