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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】多軸ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/06 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
B25J9/06 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513494
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 US2022075977
(87)【国際公開番号】W WO2023035010
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】2112659.4
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501097318
【氏名又は名称】ビクトレックス マニュファクチャリング リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VICTREX MANUFACTURING LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】エルムクイスト、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ドアティ、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン、アンドリュー
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS12
3C707CX03
3C707HT25
3C707MT02
(57)【要約】
本発明は、複数のギアボックスを備える多軸ロボット(100)に関し、複数のギアボックスの各々は、それぞれ対応するロボット軸(A1~A6)上で動作するように構成され、プラスチック材料で形成された1つ以上の歯車を備える。本発明はまた、ロボット(100)において使用するためのギアボックスに関し、また、ロボット(100)及びロボットサブシステムにおけるギアボックスの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のギアボックスを備え、前記複数のギアボックスの各々は、それぞれ対応するロボット軸上で動作するように構成され、かつプラスチック材料で形成された1つ以上の歯車を備える、多軸ロボット。
【請求項2】
前記複数のギアボックスの各々は、共通の設計である、請求項1に記載の多軸ロボット。
【請求項3】
前記複数のギアボックスの各々は、同一である、請求項2に記載の多軸ロボット。
【請求項4】
前記複数のギアボックスのうちの1つ以上又は各々は、遊星歯車装置、波動歯車装置、及び/又はサイクロイド歯車装置を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の多軸ロボット。
【請求項5】
前記複数のギアボックスの各々は、全体がプラスチック材料で形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の多軸ロボット。
【請求項6】
前記プラスチック材料が、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)ファミリーに属するプラスチックを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の多軸ロボット。
【請求項7】
前記プラスチック材料は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含む、請求項6に記載の多軸ロボット。
【請求項8】
前記プラスチック材料は、複合材料の一部を形成し、前記複合材料は、充填材を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の多軸ロボット。
【請求項9】
複合材料は、少なくとも20重量%の充填材、例えば少なくとも30重量%の充填材、例えば少なくとも40重量%の充填材、例えば少なくとも50重量%の充填材を含む、請求項8に記載の多軸ロボット。
【請求項10】
前記充填材は、炭素繊維、ガラス繊維、及び/又はシリカ繊維を含む補強充填材である、請求項8又は9に記載の多軸ロボット。
【請求項11】
前記充填材は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、パーフルオロアルコキシ(PFA)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロプロピレン(FEP)及び/又はクロロトリフルオロエチレン(E-CTFE)を含む低摩耗充填材である、請求項8又は9に記載の多軸ロボット。
【請求項12】
前記複数のギアボックスの各々は、複数の歯車を備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の多軸ロボット。
【請求項13】
前記ロボットは、コボットである、請求項1~12のいずれか一項に記載の多軸ロボット。
【請求項14】
前記ロボットは、シリアルアームロボットである、請求項1~13のいずれか一項に記載の多軸ロボット。
【請求項15】
前記ロボットは、2つ以上の軸、好ましくは6つの軸を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の多軸ロボット。
【請求項16】
ロボットで使用するためのギアボックスであって、複数の歯車を備え、前記歯車の少なくとも1つは、プラスチック材料から形成される、ギアボックス。
【請求項17】
前記複数の歯車は、遊星歯車配置を示す、請求項16に記載のギアボックス。
【請求項18】
前記プラスチック材料は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含む、請求項16又は17に記載のギアボックス。
【請求項19】
全体がプラスチック材料で形成されている、請求項16~18のいずれか一項に記載のギアボックス。
【請求項20】
ロボット、コボット、又はシリアルアームロボットにおける、請求項16~19のいずれか一項に記載のギアボックスの使用。
【請求項21】
請求項16~19のいずれか一項に記載のギアボックスに使用するための、請求項6~11のいずれか一項に記載のプラスチック材料で形成された歯車。
【請求項22】
ギアボックスを備えるロボットであって、前記ギアボックスは、波動歯車装置を有し、フレックススパインは、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)複合積層構造である、ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ロボット、例えば多関節ロボットに関する。より具体的には、だがしかしそれ以外のものを排除はしないが、本発明は、複数のギアボックスを有する多軸ロボット、例えば、多軸多関節ロボットに関し、更に、ロボットで使用するためのギアボックス、ロボットにおけるギアボックスの使用、及びロボットサブシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
協働ロボット(collaborative robot、cobot:コボット)は、共有作業空間内で、人間とロボットとが直接的に協力するために意図されたロボットであるか、又は人間とロボットとが近接し得る場所で動作することが意図されたロボットである。これらは、多くの場合、2つ以上の関節とエンドエフェクタとを有するロボットアームの形態をとる。
【0003】
人間とコボットとの間の相互作用、及び動作中のそれらの近接性の結果として、コボットの安全性が主要な関心事となっている。コボット動作中の人間の安全を確実にするために、例えば、業界標準ISO/TS15066において合意され、概説されているように、コボット上に特定の手段及び安全装置が配置されなければならず、かつ/又は作業空間内に実装されなければならない。これらの手段は以下のものを含む:
・人間がコボットの動作領域内にいる間、コボットが動作を停止する安全停止;
・コボットが、環境に応じて全ての人間からの安全な物理的分離を保証し、変化する環境に反応して衝突を安全に防止することができる、分離及び速度管理;
・コボットは、全ての動作力が、人間に身体的危害を引き起こす可能性がある所定の閾値未満であることを保証する、電力及び力の制限。
【0004】
したがって、安全性を確保するために、コボットは、人間と接触した場合に応答することが可能でなければならない。また、コボットが非接触事象中に応答して、動作が最適化され得る場合もまた有利である。人間とコボットとの間の接触事象中の人間に対する傷害の可能性は、コボットが傷害を引き起こすのに十分な衝撃を発生させるのに十分に遠くに移動する前にコボットを停止させることによって軽減することができ、物体力の限界は、前述のISO/TS15066に記載されている。したがって、コボットの応答性を増加させることは、損傷の可能性を減少させると判断されてきた。
【0005】
コボットの停止距離、停止時間、停止力、及び衝突力は全て、コボットの重量及びペイロードによって生成される運動量、並びに速度プロファイルに比例的に関係するとも判断されてきた。したがって、制御能力と感知能力との所与のセットに対して、コボットの安全動作は、以下によって最も大幅に改善することができる:
・ペイロード容量の減少;
・コボット重量及び慣性力の低減;
・コボットの速度に制限を課すこと。
【0006】
ペイロード容量及びコボット速度は、コボットの動作効率にとって不可欠であるので、コボットの重量及び慣性力を低減し、それによって、ペイロード容量及び速度容量を維持するか又は更に改善しながら、応答性を増加させることが有利であろう。
【発明の概要】
【0007】
本出願人らは、ギアボックス内に軽量材料を使用し、その結果、装置の全重量及び各関節の慣性が低減され、それによってコボットの応答性を改善することができるということを見出した。更に、繊維強化プラスチック材料で作られた歯車を有するギアボックスの強度対重量比は、低ペイロード、高リーチコボットの場合に特に有利であるということも判明している。
【0008】
したがって、本発明の第1の、非排他的な目的は、改良されたロボット、特にコボットを提供することである。本発明の更なる非排他的な目的は、より安全で、より生産的なロボットを提供することである。
【0009】
したがって、本発明の第1の態様は、複数のギアボックスを備え、複数のギアボックスの各々は、それぞれ対応するロボット軸上で動作するように構成され、かつプラスチック材料で形成された1つ以上の歯車を備える多軸ロボットを提供する。
【0010】
プラスチック材料で形成された1つ以上の歯車を提供することによって、結果として得られる多軸ロボットは、金属製の歯車又はギアボックスを有する従来技術のロボットと比較して、増加したトルク対慣性力の比を示し、より軽量であり、減少した回転慣性力を示すことが分かっている。
【0011】
2つ以上の軸及び/又はギアボックスは、直列に配置、又は連続的に整列されてもよく、その場合、例えば、少なくとも1つのギアボックスが、少なくとも1つの他のギアボックスのペイロードになる。
【0012】
複数のギアボックスの各々は、共通の設計であってもよい。複数のギアボックスの各々は、対応する設計を有してもよく、又は対応する設計のものであってもよい。複数のギアボックスのうちの2つ以上は、共通の設計であってもよい。複数のギアボックスのうちの2つ以上は、対応する設計を有してもよく、又は対応する設計のものであってもよい。
【0013】
複数のギアボックスの各々は、共通の又は対応するレイアウト、構成、又は配置であってもよい。複数のギアボックスのうちの2つ以上は、共通の又は対応するレイアウト、構成、又は配置のものであってもよい。
【0014】
複数のギアボックスの各々は、同一であってもよい。複数のギアボックスの各々は、同一のレイアウト、構成、配置、又は設計を有していてもよい。複数のギアボックスのうちの2つ以上は、同一であってもよい。複数のギアボックスのうちの2つ以上は、同一のレイアウト、構成、配置、又は設計を有してもよい。
【0015】
複数のギアボックスの各々は、同じサイズであってもよい。複数のギアボックスの各々は、異なるサイズであってもよい。複数のギアボックスのうちの2つ以上は、同じサイズであってもよい。複数のギアボックスのうちの2つ以上は、異なるサイズであってもよい。
【0016】
多軸ロボットは、ベース及びエンドエフェクタを備えてもよい。ベースに配置又はベースに近接して配置されたギアボックスは、エンドエフェクタに配置又はエンドエフェクタに近接して配置されたギアボックスよりも大きくてもよい。
【0017】
ロボットは、2つ以上のギアボックス、例えば、3つ以上のギアボックス、4つ以上のギアボックス、5つ以上のギアボックス、又は6つ以上のギアボックスを有してもよい。ロボットは、2つのギアボックス、3つのギアボックス、4つのギアボックス、5つのギアボックス、又は6つのギアボックスを有してもよい。
【0018】
複数のギアボックスのうちの1つ以上又は各々は、遊星歯車装置を備えてもよい。遊星歯車装置は、太陽歯車、遊星歯車、及び/又はリング歯車を備えることができる。複数のギアボックスのうちの1つ以上又は各々は、エピサイクリック歯車装置を備えてもよい。複数のギアボックスのうちの1つ以上又は各々は、遊星差動装置を備えてもよい。
【0019】
複数のギアボックスのうちの1つ以上は、全体がプラスチック材料から形成されてもよい。複数のギアボックスの各々は、全体がプラスチック材料で形成されてもよい。
【0020】
太陽歯車、遊星歯車及び/又はリング歯車は、プラスチック材料から形成されてもよい。
【0021】
複数のギアボックスのうちの1つ以上又は各々は、波動歯車装置を備えてもよい。波動歯車装置は、フレックススプライン、ウェーブジェネレータ、及び/又はサーキュラスプラインを備えてもよい。
【0022】
フレックススプライン、ウェーブジェネレータ、及び/又はサーキュラスプラインは、プラスチック材料から形成されてもよい。
【0023】
複数のギアボックスのうちの1つ以上又は各々は、サイクロイド歯車装置を備えてもよい。サイクロイド歯車装置は、プラスチック材料で形成された軌道周回サイクロイド歯車を備えてもよい。
【0024】
プラスチック材料は、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)群に属するプラスチックを含んでもよい。ポリアリールエーテルケトン(PAEK)は、その温度安定性ゆえに、特に、ギアボックスが使用中に曝され得る温度範囲である80~120℃の範囲におけるそれらの温度安定性ゆえに、他の熱可塑性樹脂を含む他のプラスチックよりも特に有利である。
【0025】
プラスチック材料は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含んでもよい。
【0026】
複数のギアボックスのうちの1つ以上又は各々は、1つ以上又は複数の歯車を備えてもよい。複数の歯車の1つ以上又は各々は、プラスチック材料から形成されてもよい。
【0027】
複数の歯車の1つ以上又は各々は、射出成形されてもよい。
【0028】
ロボットは、コボットであってもよい。ロボット又はコボットは、シリアルアームロボットであってもよい。ロボット又はコボットは、多関節ロボット又は多関節コボットであってもよい。
【0029】
ロボットは、2つ以上の軸、例えば、3つ以上の軸、4つ以上の軸、5つ以上の軸、又は6つ以上の軸を有してもよい。ロボットは、2軸、3軸、4軸、5軸、又は6軸を有してもよい。
【0030】
プラスチック材料は、組成物又は複合材料を含むか、又はその一部を形成してもよい。組成物は、プラスチック材料及び充填材を含んでもよい。その充填材は、繊維充填材及び/又は非繊維充填材を含んでもよい。繊維充填材は、連続的又は不連続的であり得る。
【0031】
繊維充填材は、無機繊維材料、非溶融有機繊維材料及び/又は高融点有機繊維材料から選択されてもよく、又はそれらを含んでもよい。
【0032】
繊維充填材は、アラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、ホウ素繊維、フルオロカーボン樹脂繊維、及び/又はチタン酸カリウム繊維から選択されてもよく、又は含んでもよい。
【0033】
繊維充填材は、ナノファイバーを含んでもよい。
【0034】
非繊維充填材は、雲母、シリカ、タルク、アルミナ、カオリン、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、フェライト、粘土、ガラス粉末、酸化亜鉛、炭酸ニッケル、酸化鉄、石英粉末、炭酸マグネシウム、フルオロカーボン樹脂、グラファイト、カーボンパウダー、ナノチューブ、及び/又は硫酸バリウムから選択されてもよく、又は含んでもよい。
【0035】
非繊維充填材は、粉末、扁平粒子、細長い粒子、及び/又は扁平及び細長い、若しくはフレーク状粒子の形態で組成物中に導入されてもよい。
【0036】
充填材は、摩耗低減充填材、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロプロピレン(FEP)、及び/又はクロロトリフルオロエチレン(E-CTFE)を含んでもよい。
【0037】
充填材は、強化充填材、例えば炭素繊維、ガラス繊維、及び/又はシリカ繊維を含んでもよい。
【0038】
組成物は、少なくとも20重量%の充填材、例えば少なくとも30重量%の充填材を含んでもよい。組成物は、少なくとも40重量%の充填材、例えば少なくとも50重量%の充填材を含んでもよい。組成物は、70重量%以下の充填材、例えば60重量%以下の充填材を含んでもよい。組成物は、40重量%の充填材~70重量%の充填材、例えば、50重量%の充填材~60重量%の充填材を含んでもよい。この範囲の充填材は、組成物の引張弾性率及び寸法安定性を増加させ、その結果、より堅くより精密な関節をもたらす(これはすなわち、ロボットがより速く停止することができ、制御入力に対してより応答性であることを意味する)ゆえに、有利である。
【0039】
組成物は、例えば、フェノール系酸化防止剤(例えば、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート)、有機ホスファイト酸化防止剤(例えば、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト)、及び/又は第二級芳香族アミン酸化防止剤などの、1つ以上の酸化防止剤を更に含んでもよい。
【0040】
組成物は、複合材料の一部を形成してもよい。複合材料は、組成物と、光安定剤(複数可)、熱安定剤(複数可)、加工助剤(複数可)、顔料(複数可)、UV吸収剤(複数可)、潤滑剤(複数可)、可塑剤(複数可)、流れ調整剤(複数可)、難燃剤(複数可)、染料(複数可)、着色剤(複数可)、帯電防止剤(複数可)、増量剤(複数可)、金属不活性化剤(複数可)、及び/又は導電性添加剤(複数可)(例えばカーボンブラック及び/又はカーボンナノフィブリル(複数可))のうちの1つ以上とを含んでもよい。
【0041】
本発明の別の一態様によれば、多軸ロボット、例えば多関節ロボットで使用するためのギアボックスが提供され、そのギアボックスは、複数の歯車を備え、歯車の少なくとも1つはプラスチック材料から形成される。
【0042】
ギアボックスは、コボット、例えば多関節コボットで使用するためのものであってもよい。
【0043】
複数の歯車は、遊星歯車装置を表してもよい。複数の歯車は、太陽歯車、遊星歯車、及び/又はリング歯車を含んでもよい。太陽歯車、遊星歯車、及びリング歯車のうちの1つ以上は、プラスチック材料から形成されてもよい。
【0044】
プラスチック材料は、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)群に属するプラスチックを含んでもよい。
【0045】
プラスチック材料は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含んでもよい。
【0046】
ギアボックスは、全体がプラスチック材料で形成されてもよい。
【0047】
ギアボックス又は少なくとも1つの歯車は、射出成形されてもよい。
【0048】
本発明の別の一態様によれば、ロボット、コボット、又はシリアルアームロボットにおける上述のギアボックスの使用が提供される。
【0049】
本発明の別の一態様によれば、上述のギアボックスで使用するための歯車であって、上述のプラスチック材料で形成された歯車が提供される。
【0050】
本発明の別の一態様によれば、ギアボックスを備えるロボットであって、歪み波歯車装置を有し、フレックススパインが、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)の複合積層構造を有するギアボックスが提供される。
【0051】
誤解を避けるために、本明細書に記載される特徴のいずれも、本発明の任意の態様に等しく適用される。例えば、多軸ロボットは、多軸ロボットに関連するギアボックス及び/又は歯車の任意の1つ以上の特徴を備えてもよく、逆もまた同様である。
【0052】
本発明の別の一態様は、シミュレーション手段又は3次元の加法的若しくは減法的製造手段若しくはデバイス、例えば3次元プリンタ又はCNC機械と共に使用するための3次元設計を含むか、かつ/又は記述及び/若しくは定義する、コンピュータプログラム要素を提供し、3次元設計は、上述の多軸ロボット又はギアボックスの一実施形態を含むものである。
【0053】
本出願の範囲内で、前述の段落、特許請求の範囲、並びに/又は以下の説明及び図面に記載されている様々な態様、実施形態、例、及び代替形態、特にそれらの個々の特徴は、独立して、又は任意の組合せで取り入れられ得ることが明確に意図されている。すなわち、全ての実施形態及び/又は任意の実施形態の特徴どうしは、そのような特徴が不適合でない限り、任意の方法及び/又は組合せで組み合わせることができる。誤解を避けるために、本明細書で使用される用語「~してもよい、~し得る(may)」、「及び/又は等(and/or)」、「例えば(e.g.)」、「例えば(for example)」、及び任意の同様の用語は、そのように記載された任意の特徴が存在する必要が必ずしもないように、非限定的であると解釈されるべきである。実際、任意選択の特徴を組合せたものはいずれも、これらが明示的に特許請求されているか否かにかかわらず、本発明の範囲から逸脱することなく明示的に想定される。出願人は、任意の最初に出願された請求項を変更するか、又は任意の新しい請求項をそれに応じて出願する権利を留保し、それには、任意の最初に出願された請求項を、任意の他の請求項の任意の特徴に依存するように、かつ/又は最初にそのようには特許請求されてはいないものであっても任意の他の請求項の任意の特徴を組み込むように補正する権利が含まれる。
本発明の実施形態は、あくまでも例として、添付の図面を参照して記載される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】例示的な6軸シリアルアームロボットを示す図である。
図2図1のロボットの第1関節のトルク応答を示す図である。
図3図1のロボットの第2関節のトルク応答を示す図である。
図4図1のロボットの第3関節のトルク応答を示す図である。
図5図1のロボットの第4関節のトルク応答を示す図である。
図6図1のロボットの第5関節のトルク応答を示す図である。
図7図1のロボットの第6関節のトルク応答を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
ここで図1を参照すると、ベース101を有する6軸シリアルアームロボット100が示されている。ロボット100は、協働ロボットとして使用されるように構成されている。第1関節102は、ベース101に取り付けられ、第1の軸A1を中心に回転可能である。第2関節103は、第1関節102から延出し、第1の軸A1に実質的に直交する第2の軸A2を中心に回転可能である。第1のアーム104は、第2関節103から第3関節105まで延在する。第3関節105は、第2の軸A2に実質的に平行な第3の軸A3を中心に回転可能である。第2のアーム106は、第3関節105から第4関節107まで延在する。第4関節107は、第3の軸A3に実質的に平行な第4の軸A4を中心に回転可能である。第5関節108は、第4関節107から延出し、第5の軸A5を中心に回転可能である。手の形態又はエフェクタの形態の第6関節109は、第5関節108から延出し、第4の軸A4に実質的に直交する第6の軸A6を中心に回転可能である。
【0056】
関節102、103、105、107、108、及び109の各々は、ギアボックス(図示せず)を含み、そのギアボックスは、遊星歯車装置を有し、かつプラスチック材料で形成された1つ以上の歯車を有するものである。制御装置(図示せず)は、関節102、103、105、107、108、109と動作可能に接続され、それらを制御するように構成されており、それによりロボット100を移動させるようになっている。
【0057】
遊星歯車装置は、入力トルクを受ける中央太陽歯車を有する。太陽歯車に加えられたトルクは、太陽歯車に係合しているいくつかの遊星歯車に伝達される。遊星歯車は、外側リングを駆動する。
【0058】
本実施例では、第1及び第2関節102及び103は、ベース101に近い方に位置し、第3及び第4関節105及び107よりも大きい。更に、第5及び第6関節108及び109は、最も小さく、ベース101から最も離れて位置する。第1及び第2関節102及び103は、ロボット100の重量を支持するために最も大きくなっている。本実施例では、ベース101からの距離、及びそれぞれの関節のサイズは、トルク応答に影響を及ぼす。
【0059】
代替的な実施形態では、関節102、103、105、107、108、及び109のうちのいくつか又は各々は、共通の設計であってもよく、関連するギアボックス(図示せず)は互いに同一である。したがって、例えば、第6関節(及び第2~第5関節のいずれか)のギアボックスは、第1関節のギアボックスと同一に構成されてもよい(逆もまた同様である)。これは、ギアボックスが形成されるプラスチック材料の軽量性により可能である。また、第1関節で機能するのに十分に大きく頑丈なギアボックスはまた、シリアルアームロボットの残りの部分の重量及び慣性力の全てに対処しなければならないが、その用途のための専用ギアボックスと比較して、ロボットアームの重量及び慣性力に悪影響を、有意に及ぼすことなく、第6関節で使用されるために十分に軽量かつ頑丈である。したがって、多軸ロボット(特に、シリアルアームロボット)の全ての関節は、共通タイプのギアボックスを使用することができ、これは、製造及び在庫する必要がある部品の量が低減されることを意味し、これは、製造及び保守費用を節約することとなる。
【0060】
次に図2図7を参照すると、それぞれ、各関節102、103、105、107、108、及び109のトルク応答が示されている。図2図7の各々は、3つのグラフを含み、「(a)」とラベル付けされた第1のグラフは、「入力信号」、すなわちギアボックスを介してそれぞれの関節に印加されるトルク入力を示す。第1のグラフにおいて、y軸は、トルク入力をNm(ニュートンメートル)単位で表し、x軸は、時間を秒(s)で表す。「(b)」とラベル付けされた第2のグラフは、トルク入力に対するそれぞれの関節の速度応答を示す。第2のグラフにおいて、y軸は、それぞれの関節の速度応答を、ラジアン/秒(rad/秒)単位で表し、x軸は、時間を、秒(s)単位で表す。3つのグラフのうちの「(c)」とラベル付けされた第3のグラフは、トルク入力に対するそれぞれ対応する関節の加速度応答を示す。第3のグラフにおいて、y軸は、それぞれの関節の加速度応答を、ラジアン/秒の2乗(rad/秒)単位で表し、x軸は、時間を、秒(s)単位で表す。
【0061】
更に、第2及び第3のグラフ(速度応答及び加速度応答)の各々は、実線及び破線を有する。実線は、金属歯車を有する図1による6軸シリアルアームロボット100の関節の応答を示す。破線は、プラスチック材料で形成された歯車を有する図1による6軸シリアルアームロボット100の関節の応答を示す。
【0062】
ここで図2を参照すると、第1関節102のトルク応答が示されている。0.1秒で0Nmから約300Nmまで増加するトルク入力が印加される。この入力は、0.8秒間維持された後、1秒で0に減少する。図2の第2のグラフからは、金属歯車を有するロボットと比較して、第1関節102の速度応答は、プラスチック材料で形成された歯車を有するロボットにおいてより大きいことが明らかである。これは、0.4秒以降から特に明らかである。速度の増加は、0.4秒から先の、実線の上にある破線によって示される。
【0063】
第3のグラフは、同様のプロファイルに従う、トルク入力に対する第1関節102の加速度応答を示す。プラスチック材料で形成された歯車を有するロボットの場合(破線)に、第1関節102のより大きな加速度が得られることが明らかである。したがって、ギアボックスにプラスチック材料で形成された歯車を設けることにより、トルク入力に対する第1関節102の応答性が向上する。
【0064】
ここで図3を参照すると、第2関節103のトルク応答が示されている。図2に関して上に論じた第1関節102に印加されるトルク入力と同じトルク入力が、印加される。図3の第2のグラフからは、金属歯車を有するロボットと比較して、第2関節103の速度応答は、プラスチック材料で形成された歯車を有するロボットにおいてより大きいことが明らかである。これは、0.4秒以降から特に明らかである。速度の増加は、0.4秒から先の、実線の上にある破線によって示される。
【0065】
図3の第3のグラフから、プラスチック材料で形成された歯車を有するロボットの場合(破線)に、第2関節103のより大きな加速度が得られることが明らかである。
【0066】
ここで図4及び図5を参照すると、第3及び第4関節105及び107の速度応答及び加速度応答の増加が、それぞれ、第2及び第3のグラフから示される。第3及び第4関節105及び107は、第1及び第2関節102及び103より小さく、支持する重量もより少ないので、プラスチック歯車の場合の速度応答及び加速度応答の改善は、第1及び第2関節102及び103に見られるほど大きくない。
【0067】
ここで図6及び図7を参照すると、第5及び第6関節108及び109の速度応答及び加速度応答の増加が、それぞれ、第2及び第3のグラフから示される。第5及び第6関節108及び109は、図1によるロボット100の関節のうち、最小のものであり、ベース101からは最も離れており、支持する重量も最小であるので、プラスチック歯車の場合の速度応答及び加速度応答の改善は、第1~第4関節102、103、105、107ほどは大きくない。
【0068】
しかしながら、図2図7は、関節の速度応答及び加速度応答が、その関節のギアボックスが、プラスチック材料から形成された1つ以上の歯車を有するときに増加することを示す。図1によるロボット100の場合、改善は、ベース101に最も近く、最も大きな重量を支持する関節において最も顕著である。
【0069】
当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、前述の実施形態に対するいくつかの変形形態が想定されることを理解するであろう。例えば、ロボット100は、6つの関節を有する必要はなく、代わりに、2つ、3つ、4つ、5つ、又は任意の好適な数の関節を有してもよい。
【0070】
更に、ギアボックスの各々が、遊星歯車装置を有するということが記載されている。しかし、必ずしもそうである必要はない。ギアボックス(図示せず)を含む、関節102、103、105、107、108、及び109のうちの1つ以上は、波動歯車装置又はサイクロイド歯車装置を有してもよい。
【0071】
波動歯車装置は、外歯を有する可撓性スプラインを利用する。可撓性スプラインは、内部で回転する、ウェーブジェネレータによって変形され、可撓性スプラインの外歯を剛性を有する外側のスプラインの内歯に係合させる。可撓性スプラインは、剛性を有する外側のスプラインよりも少ない歯を有し、可撓性スプラインがウェーブジェネレータによって変形されるときに可撓性スプラインが強制的に回転することになる。
【0072】
サイクロイド歯車装置は、偏心して取り付けられた入力シャフトを利用し、この入力シャフトが、サイクロイドディスクを回転させるものである。サイクロイドディスクは、出力ローラピンを受け入れる複数の穴を有する。出力ローラピンは、出力シャフトに接続され、サイクロイドディスクの穴よりも小さい。サイクロイドディスクは、入力シャフトから出力シャフトに回転を伝達するように構成される。
【0073】
また、前述の特徴及び/又は添付の図面に示される特徴の任意の数の組み合わせが、従来技術を上回る明確な利点を提供し、したがって、本明細書に説明される本発明の範囲内であるということも、当業者によって理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】