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特表2024-531522スプリットサイクル内燃エンジンとスプリットサイクル内燃エンジンを動作させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】スプリットサイクル内燃エンジンとスプリットサイクル内燃エンジンを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   F02B 75/18 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
F02B75/18 P
F02B75/18 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513723
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 GB2022052263
(87)【国際公開番号】W WO2023031629
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】2112643.8
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521377568
【氏名又は名称】ドルフィン エヌツー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】アトキンズ アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】オーウェン ニック
(72)【発明者】
【氏名】ベネット コリン
(72)【発明者】
【氏名】トレッカーリキ ファブリツィオ
(57)【要約】
【解決手段】
スプリットサイクル内燃エンジンであって、圧縮作動流体を供給するように構成される圧縮ピストンを収容する圧縮シリンダと、燃焼ピストンを収容する燃焼シリンダと、コントローラと、を備えて、燃焼シリンダは、圧縮シリンダから圧縮作動流体を受け入れるように圧縮シリンダに連結されて、燃焼シリンダは、(i)燃焼シリンダ内への圧縮作動流体の吸入を制御するように構成される入口弁と、(ii)燃焼シリンダからの流体の排出を制御するように構成される出口弁と、を備えて、コントローラは、アクティブモードとエンジン制動モードとの間でエンジンの動作を切り替えるために、入口弁および/または出口弁が開くエンジンサイクル中の位置を変更するように構成されて、コントローラは、アクティブモードでの動作時よりもエンジン制動モードでの動作時に、下死点(BDC)位置により近い位置で開く入口弁と、アクティブモードでの動作時よりもエンジン制動モードでの動作時に、上死点(TDC)位置により近い位置で開く出口弁と、のうち少なくとも一方を制御するように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリットサイクル内燃エンジンであって、
圧縮作動流体を供給するように構成される圧縮ピストンを収容する圧縮シリンダと、
燃焼ピストンを収容する燃焼シリンダと、
コントローラと、
を有してなり、
前記燃焼シリンダは、前記圧縮シリンダから圧縮作動流体を受け入れるように前記圧縮シリンダに連結されて、
前記燃焼シリンダは、
(i)前記燃焼シリンダ内への圧縮作動流体の吸入を制御するように構成される入口弁と、
(ii)前記燃焼シリンダからの流体の排出を制御するように構成される出口弁と、
を備えて、
前記コントローラは、アクティブモードとエンジン制動モードとの間で前記スプリットサイクル内燃エンジンの動作を切り替えるために、前記入口弁および/または前記出口弁が開くエンジンサイクル中の開位置を変更するように構成されて、
前記コントローラは、
前記アクティブモードでの動作時よりも前記エンジン制動モードでの動作時に、下死点(BDC)位置により近い位置で開くように、前記入口弁を制御することと、
前記アクティブモードでの動作時よりも前記エンジン制動モードでの動作時に、上死点(TDC)位置により近い位置で開くように、前記出口弁を制御することと、
のうち少なくとも一方の制御を実行するように構成される、
ことを特徴とするスプリットサイクル内燃エンジン。
【請求項2】
前記コントローラは、前記燃焼ピストンの前記BDC位置から前記TDC位置への移動の大部分にかけて、前記燃焼シリンダ内で作動流体がさらに圧縮されるように、前記エンジン制動モードにおいて、前記入口弁が開く前記開位置および/または閉じる閉位置を制御するように構成される、
請求項1記載のスプリットサイクル内燃エンジン。
【請求項3】
前記コントローラは、さらに圧縮された作動流体が前記燃焼シリンダから排出されるように、前記エンジン制動モードにおいて、前記出口弁が開く前記開位置および/または閉じる閉位置を制御するように構成される、
請求項1乃至2のいずれか一項に記載のスプリットサイクル内燃エンジン。
【請求項4】
前記コントローラは、前記エンジン制動モードにおいて、前記TDC位置よりも前の位置で開くように、前記出口弁を制御するように構成される、
請求項3記載のスプリットサイクル内燃エンジン。
【請求項5】
前記コントローラは、前記アクティブモードと前記エンジン制動モードとの間で動作を切り替えるとき、前記入口弁および/または前記出口弁が閉じる前記エンジンサイクル中の前記閉位置を変更するように構成されて、
任意選択で、前記コントローラは、前記アクティブモードと前記エンジン制動モードとの間で切り替えるとき、前記開位置と前記閉位置とを同じ量だけ変更するように構成される、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のスプリットサイクル内燃エンジン。
【請求項6】
前記スプリットサイクル内燃エンジンは、
燃料貯蔵部、
を有してなり、
前記スプリットサイクル内燃エンジンは、前記燃焼シリンダに燃焼のための燃料を噴射するように構成されて、
前記コントローラは、前記エンジン制動モードでの動作時に、燃料が噴射されないように、燃料の噴射を制御するように構成される、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のスプリットサイクル内燃エンジン。
【請求項7】
前記コントローラは、前記スプリットサイクル内燃エンジンからの要求に対する要求信号を受信するように構成されて、
前記コントローラは、前記要求信号に基づいて、前記アクティブモードまたは前記エンジン制動モードのいずれかになるように前記スプリットサイクル内燃エンジンの動作を制御するように構成される、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のスプリットサイクル内燃エンジン。
【請求項8】
前記コントローラは、前記要求信号に基づいて、前記入口弁と前記出口弁とのうち少なくとも一方の前記開位置および/または前記閉位置を制御するように構成されて、
任意選択で、前記スプリットサイクル内燃エンジンは、車両用であり、
前記要求信号は、
(i)前記車両の減速が所望されていることと、
(ii)前記車両のさらなる加速が望まれないことと、
うちの少なくとも1つの表示を含む、
請求項7記載のスプリットサイクル内燃エンジン。
【請求項9】
前記圧縮シリンダは、レキュペレータを介して前記燃焼シリンダに連結されて、
前記レキュペレータは、前記燃焼シリンダから排出された流体と、前記圧縮シリンダから前記燃焼シリンダに移動する圧縮作動流体と、の間での熱交換を可能にするように構成される、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のスプリットサイクル内燃エンジン。
【請求項10】
レキュペレータバイパス通路、
を有してなる、
請求項9記載のスプリットサイクル内燃エンジン。
【請求項11】
前記コントローラは、前記レキュペレータの温度を示す信号を受信して、受信した前記信号に基づいて、前記レキュペレータバイパス通路の動作を制御するように構成されて、
任意選択で、前記コントローラは、受信した前記信号に基づいて、前記レキュペレータを流通する作動流体の割合を制御するように構成されて、
任意選択で、前記エンジン制動モードでの動作時に、少なくとも一部の作動流体が前記レキュペレータバイパス通路を通って移動するように、前記スプリットサイクル内燃エンジンの動作を制御するように構成される、
請求項10記載のスプリットサイクル内燃エンジン。
【請求項12】
前記レキュペレータバイパス通路は、
前記圧縮シリンダから前記燃焼シリンダへの圧縮作動流体の前記レキュペレータを回避する流路を形成するように構成される高圧バイパス通路と、
前記燃焼シリンダから排出される流体の前記レキュペレータを回避する流路を形成するように構成される低圧バイパス通路と、
のうち少なくとも一方を備える、
請求項10または11記載のスプリットサイクル内燃エンジン。
【請求項13】
前記コントローラは、前記レキュペレータに関連する温度が閾値を下回る場合、流体が前記高圧バイパス通路を流通するように、前記スプリットサイクル内燃エンジンの動作を制御するように構成されて、
前記コントローラは、作動流体に関連する温度および/または圧力が閾値を上回る場合、流体が前記低圧バイパス通路を流通するように、前記スプリットサイクル内燃エンジンの動作を制御するように構成される、
請求項12記載のスプリットサイクル内燃エンジン。
【請求項14】
前記コントローラは、前記レキュペレータの温度を示す信号を受信して、受信した前記信号に基づいて、前記出口弁が閉じる前記エンジンサイクル中の前記閉位置を選択するように構成されて、
任意選択で、前記コントローラは、前記レキュペレータの前記温度を上昇させるために、前記TDC位置よりも前記BDC位置に近い位置を選択するように構成される、
請求項9乃至13のいずれか一項に記載のスプリットサイクル内燃エンジン。
【請求項15】
前記コントローラは、前記レキュペレータの前記温度が閾値を上回るように、前記スプリットサイクル内燃エンジンの動作を制御するように構成されて、
任意選択で、前記閾値は、前記レキュペレータにおいて触媒作用をもたらすように選択される、
請求項9乃至14のいずれか一項に記載のスプリットサイクル内燃エンジン。
【請求項16】
前記スプリットサイクル内燃エンジンは、
ターボチャージャ、
を有してなり、
前記ターボチャージャは、
(i)前記燃焼シリンダから排出される流体により駆動されるように構成されるタービンと、
(ii)追加の圧縮作動流体を前記圧縮シリンダに押し込むように構成されるコンプレッサと、
を備える、
請求項1乃至15のいずれか一項に記載のスプリットサイクル内燃エンジン。
【請求項17】
前記スプリットサイクル内燃エンジンは、
前記燃焼シリンダから排出される流体の前記タービンを回避する流路を形成するように構成されるタービンバイパス通路、
を有してなり、
前記コントローラは、前記圧縮シリンダに供給される圧縮作動流体の選択された量を供給するように、前記タービンバイパス通路の動作を制御するように構成される、
請求項16記載のスプリットサイクル内燃エンジン。
【請求項18】
前記コントローラは、前記エンジン制動モードでの動作時に、少なくとも一部の流体が前記タービンバイパス通路を通って移動するように、前記スプリットサイクル内燃エンジンの動作を制御するように構成されて、
任意選択で、前記コントローラは、エンジンサイクル当たりの選択されたエンジンの制動量をもたらすために、前記タービンバイパス通路を通って移動する流体の割合を制御するように構成される、
請求項17記載のスプリットサイクル内燃エンジン。
【請求項19】
前記スプリットサイクル内燃エンジンにより圧縮されたガスを受け入れるように構成される圧縮ガス貯蔵部、
を有してなる、
請求項1乃至18のいずれか一項に記載のスプリットサイクル内燃エンジン。
【請求項20】
前記圧縮ガス貯蔵部は、
前記圧縮シリンダ内で圧縮された圧縮ガス、および/または、前記燃焼シリンダ内でさらに圧縮された圧縮ガスを受け入れるように構成される1つ以上の貯蔵部、
を備える、
請求項19記載のスプリットサイクル内燃エンジン。
【請求項21】
前記コントローラは、前記エンジン制動モードでの動作時に、前記圧縮ガス貯蔵部に圧縮ガスを供給するように前記スプリットサイクル内燃エンジンの動作を制御するように構成される、
請求項19または20記載のスプリットサイクル内燃エンジン。
【請求項22】
前記コントローラは、エンジン出力を上げるために、前記圧縮ガス貯蔵部から選択的にガスを放出するように、前記圧縮ガス貯蔵部の動作を制御するように構成されて、
任意選択で、前記コントローラは、前記エンジン制動モードから前記アクティブモードへの切替に応じて、前記圧縮ガス貯蔵部からガスを放出するように、前記圧縮ガス貯蔵部の動作を制御するように構成される、
請求項19乃至21のいずれか一項に記載のスプリットサイクル内燃エンジン。
【請求項23】
前記エンジン制動モードでの動作時に、前記スプリットサイクル内燃エンジンからの過剰エネルギーを蓄えるように構成される1つ以上の相変化材料、
を有してなる、
請求項1乃至22のいずれか一項に記載のスプリットサイクル内燃エンジン。
【請求項24】
スプリットサイクル内燃エンジンを動作させる方法であって、
前記スプリットサイクル内燃エンジンは、
圧縮作動流体を供給するように構成される圧縮ピストンを収容する圧縮シリンダと、
(ii)燃焼ピストンを収容する燃焼シリンダと、
を備えて、
前記燃焼シリンダは、前記圧縮シリンダから圧縮作動流体を受け入れるように前記圧縮シリンダに連結されて、
前記燃焼シリンダは、
(i)前記燃焼シリンダ内への圧縮作動流体の吸入を制御するように構成される入口弁と、
(ii)前記燃焼シリンダからの流体の排出を制御するように構成される出口弁と、
を備えて、
前記方法は、
前記スプリットサイクル内燃エンジンの動作をアクティブモードとエンジン制動モードとの間で切り替えるために、前記入口弁および/または前記出口弁が開くエンジンサイクル中の開位置を変更する工程と、
前記アクティブモードでの動作時よりも前記エンジン制動モードでの動作時に下死点(BDC)位置により近い位置で開くように、前記入口弁を制御することと、
前記アクティブモードでの動作時よりも前記エンジン制動モードでの動作時に上死点(TDC)位置により近い位置で開くように、前記出口弁を制御することと、
のうち少なくとも一方の制御を実行する工程と、
を有してなる、
ことを特徴とするスプリットサイクル内燃エンジンを動作させる方法。
【請求項25】
スプリットサイクル内燃エンジンの動作を制御して請求項24記載の方法を実行するように、プロセッサをプログラミングするように構成されるコンピュータプログラム命令、
を有してなる、
ことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スプリットサイクル内燃エンジンの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
4ストローク内燃エンジンは、エンジンの圧縮行程と燃焼行程との両方を提供するために、1つのシリンダを使用する。スプリットサイクル内燃エンジンは、これとは異なるアプローチを用いる。具体的には、スプリットサイクルエンジンは、圧縮と燃焼とのための別々のシリンダを有する。作動流体は、圧縮シリンダ内で圧縮されて、燃焼シリンダに搬送される。燃焼シリンダ内で燃料が燃焼して、作動流体が膨張して燃焼シリンダ内の燃焼ピストンの動作を駆動するように、燃料は、燃焼シリンダに追加される。本開示は、このようなスプリットサイクル内燃エンジンに改善をもたらす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の態様は、独立請求項に記載されて、任意の機能は、従属請求項に記載される。本開示の態様は、互いに関連して提供されてもよく、ある態様の機能は、他の態様に適用されてもよい。
【0004】
一態様において、スプリットサイクル内燃エンジンであって、圧縮作動流体を供給するように構成される圧縮ピストンを収容する圧縮シリンダと、燃焼ピストンを収容する燃焼シリンダと、コントローラと、を備えて、燃焼シリンダは、圧縮シリンダから圧縮作動流体を受け入れるように圧縮シリンダに連結されて、燃焼シリンダは、(i)燃焼シリンダ内への圧縮作動流体の吸入を制御するように構成される入口弁と、(ii)燃焼シリンダからの流体の排出を制御するように構成される出口弁と、を備えて、コントローラは、アクティブモードとエンジン制動モードとの間でスプリットサイクル内燃エンジンの動作を切り替えるために、入口弁および/または出口弁が開くエンジンサイクル中の位置を変更するように構成される、スプリットサイクル内燃エンジンが提供される。コントローラは、アクティブモードでの動作時よりもエンジン制動モードでの動作時に、下死点(BDC:bottom dead centre)位置により近い位置で開くように入口弁を制御することと、アクティブモードでの動作時よりもエンジン制動モードでの動作時に、上死点(TDC:top dead centre)位置により近い位置で開くように出口弁を制御することと、のうち少なくとも一方の制御を実行するように構成される。
【0005】
実施形態は、スプリットサイクル内燃エンジンを用いた能動的な駆動力の生成に加えて、スプリットサイクル内燃がエンジンの制動をもたらすように動作することを可能にしてもよい。スプリットサイクル内燃エンジンは、車両(例えば、乗用車、トラックなど)の一部として提供されてもよい。このようなスプリットサイクル内燃エンジンが車両に使用される場合、このエンジンの制動は、他の手段を用いて(ブレーキパッドを走行車輪のディスク表面に締め付けることなどにより)、車両の減速を補うために使用され得る。この場合、スプリットサイクルエンジンを提供するためにスプリットサイクル内燃エンジンを使用することは、車両の他の部品(例えば、ブレーキパッドまたはディスクロータ)の摩耗を軽減し得る。このようなエンジンの制動は、スプリットサイクル内燃エンジンがまだ動作しているが、能動的に駆動されていない間に、スプリットサイクル内燃エンジンから有用なエネルギーを利用可能にするためにも使用され得る。例えば、エンジンの制動は、(スプリットサイクル内燃エンジンが再びアクティブモードになると)スプリットサイクル内燃エンジンのタービンの動作を駆動することなどにより、有意義な動作を実現するために使用され得る加圧ガスを生成してもよい。これにより、よりエネルギー効率の良いエンジン(すなわち、スプリットサイクル内燃エンジンがその車両の一部として使用されている場合、車両)が提供され得る。
【0006】
コントローラは、燃焼ピストンのBDC位置からTDC位置への移動の大部分にかけて、作動流体が燃焼シリンダ内でさらに圧縮されるように、エンジン制動モードにおいて入口弁が開くおよび/または閉じる位置を制御するように構成されてもよい。例えば、入口弁が閉じる位置と出口弁が開く位置との間の燃焼シリンダの内容積差は、燃焼ピストンのBDC位置とTDC位置との間の燃焼シリンダの内容積差の半分を超えてもよい。換言すれば、入口弁は、BDCに近い位置で閉じてもよく、出口弁は、TDCに近い位置で開いてもよい。
【0007】
コントローラは、さらに圧縮された流体が燃焼シリンダから排出されるように、エンジン制動モードにおいて出口弁が開くおよび/または閉じる位置を制御するように構成されてもよい。換言すれば、エンジン制動モードにおいて、燃焼は、燃焼シリンダ内で生じ得ず、排出されている流体は、燃焼シリンダ内でも圧縮された圧縮シリンダからの圧縮流体でもよい。燃焼シリンダ内の燃焼は、エネルギーを放出する(例えば、運動エネルギーを供給するための)燃料の酸化および消費を含んでもよい。コントローラは、エンジン制動モードにおいて、出口弁をTDC位置よりも前の位置で開くように制御するように構成されてもよい。例えば、これは、BDCからTDCへの燃焼ピストンの行程の少なくとも一部が、さらに圧縮された流体を出口弁から押し出すように作用することを可能にし得る。次いで、燃焼シリンダから排出された、このさらに圧縮された流体の一部は、タービンを駆動するなどの目的で加圧ガスとして貯蔵されるなどのために、スプリットサイクル内燃エンジン内の下流で使用されてもよい。出口弁をTDCで、またはTDCに近い位置で開くことにより、燃焼シリンダ内にもたらされるさらなる圧縮の量が増加してもよい(利用可能な最大圧縮量により近くなる)。コントローラは、エンジン制動モードにおいて、TDC位置より後の位置で出口弁を閉じるように制御するように構成されてもよい。例えば、燃焼ピストンのTDCからBDCへの行程の少なくとも一部は、排出されたさらに圧縮された流体を出口弁を介して燃焼シリンダ内に戻すように作用してもよい。
【0008】
コントローラは、アクティブモードとエンジン制動モードとの間で動作を切り替えるとき、入口弁および/または出口弁が閉じるときのエンジンサイクル中の位置を変更するように構成されてもよい。コントローラは、アクティブモードとエンジン制動モードとの間で切り替えるとき、開位置と閉位置とを同じ量だけ変更するように構成されてもよい。例えば、(アクティブモードとエンジン制動モードとの両方での動作時)開位置と閉位置とにおいて、固定された一定の位置オフセットが存在してもよい。スプリットサイクル内燃エンジンは、燃料貯蔵部をさらに備えてもよく、燃焼シリンダでの燃焼のために燃料を噴射するように構成されてもよい。コントローラは、エンジン制動モードでの動作時、燃料が噴射されないように、燃料の噴射を制御するように構成されてもよい。
【0009】
コントローラは、スプリットサイクル内燃エンジンからの要求に対する要求信号を受信するように構成されてもよい。コントローラは、要求信号に基づいて、アクティブモードまたはエンジン制動モードのいずれかになるように、スプリットサイクル内燃エンジンの動作を制御するように構成されてもよい。コントローラは、要求信号に基づいて、入口弁と出口弁とのうち少なくとも一方の開位置および/または閉位置を制御するように構成されてもよい。例えば、コントローラは、要求信号に基づいて、もたらされるエンジンの制動の量を選択するように、および/または、スプリットサイクル内燃エンジンの温度を調節するように、動作するように構成されてもよい。スプリットサイクル内燃エンジンは、車両(例えば、乗用車、トラック、電車など)用でもよく、要求信号は、(i)車両の減速が所望されていることと、(ii)車両のさらなる加速が望まれないことと、のうち少なくとも1つの表示を含んでもよい。
【0010】
圧縮シリンダは、レキュペレータを介して燃焼シリンダに連結されてもよい。レキュペレータは、燃焼シリンダから排出された流体と、圧縮シリンダから燃焼シリンダに移動する圧縮作動流体と、の間での熱交換を可能にするように構成されてもよい。スプリットサイクル内燃エンジンは、レキュペレータバイパス通路(例えば、熱交換の発生量を減少させるなどのために、流体がレキュペレータを回避してスプリットサイクル内燃エンジンを流通するための経路を画定する)を備えてもよい。コントローラは、レキュペレータの温度を示す信号を受信して、前記受信信号に基づいて、レキュペレータバイパス通路の動作を制御するように構成されてもよい。コントローラは、受信信号に基づいて、レキュペレータを流通する流体の割合を制御するように構成されてもよい。コントローラは、エンジン制動モードでの動作時、少なくとも一部の流体がレキュペレータバイパス通路を通って移動するように、スプリットサイクル内燃エンジンの動作を制御するように構成されてもよい。
【0011】
例えば、レキュペレータバイパス通路を選択的に使用することにより、スプリットサイクル内燃エンジンの温度(特に、レキュペレータ自体の温度)の選択的な制御が可能となり得る。レキュペレータの温度を選択範囲内に保持すること(高温に保持すること)により、スプリットサイクル内燃エンジンがアクティブモードに戻るとき、レキュペレータは、そうでない場合よりも良好な温度で動作を再開し得る。燃焼シリンダから排出されたさらに圧縮された流体が非常に熱い場合、レキュペレータが熱くなり過ぎることを避けるために、および/または、燃焼シリンダ内でさらに圧縮されようとしている圧縮流体を過熱することを避けるために、この流体の一部は、レキュペレータから離れるように方向付けられてもよい。圧縮作動流体が冷たい場合(およびレキュペレータも冷たすぎる場合)、レキュペレータの冷却過剰を避けるために、圧縮作動流体は、レキュペレータを回避しながら圧縮シリンダから燃焼シリンダに移動し得る。同様に、この圧縮作動流体は、レキュペレータが非常に高温であり、この流体を過熱する場合、レキュペレータを回避するように方向付けられてもよい。
【0012】
レキュペレータバイパス通路は、圧縮シリンダから燃焼シリンダへの圧縮流体のための、レキュペレータを回避する流路を形成するように配置される高圧バイパス通路と、燃焼シリンダから排出された流体のための、レキュペレータを回避する流路を形成するように配置される低圧バイパス通路と、のうち少なくとも一方を備えてもよい。コントローラは、レキュペレータに関連する温度が閾値を下回る場合、流体が高圧バイパス通路を流通するように、スプリットサイクル内燃エンジンの動作を制御するように構成されてもよい。例えば、コントローラは、レキュペレータを通って圧縮シリンダと燃焼シリンダとの間を流通する冷たい圧縮作動流体によりもたらされる冷却効果の量を減少させることにより、レキュペレータの温度を下げ過ぎる(または低くなり過ぎる)ことを避けるように動作してもよい。コントローラは、作動流体に関連する温度および/または圧力が閾値を上回る場合、流体が低圧バイパス通路を流通するように、スプリットサイクル内燃エンジンの動作を制御するように構成されてもよい。例えば、コントローラは、燃焼シリンダから排出されて、燃焼シリンダとスプリットサイクル内燃エンジンの排出口との間のレキュペレータを流通する、さらに圧縮された熱い流体により生じる加熱効果を低減することにより、レキュペレータの温度が上昇し過ぎる(高くなり過ぎる)ことを避けるように動作してもよい。
【0013】
コントローラは、レキュペレータの温度を示す信号を受信して、前記受信信号に基づいて、出口弁が閉じるときのエンジンサイクル中の位置を選択するように構成されてもよい。コントローラは、レキュペレータの温度を上昇させるために、TDCよりもBDCに近い位置を選択するように構成されてもよい。コントローラは、レキュペレータの温度が閾値を超えるように、スプリットサイクル内燃エンジンの動作を制御するように構成されてもよい。前記閾値は、レキュペレータにおいて触媒作用をもたらすように選択されてもよい。例えば、触媒物質を含む被膜がレキュペレータの内側に設けられてもよい。レキュペレータ、すなわち触媒をある温度を上回るまで加熱すると、触媒作用が起こり得る。このような触媒作用は、触媒の作用効率を上げることにより、エンジン性能を向上させてもよく、またはエンジンの環境への影響(例えば、スプリットサイクル内燃エンジンの動作時に生成される微粒子/環境汚染物質の量)を低減させてもよい。
【0014】
スプリットサイクル内燃エンジンは、(i)燃焼シリンダから排出される流体により駆動されるように構成されるタービンと、(ii)追加の圧縮流体を圧縮シリンダ内に押し込むように構成されるコンプレッサと、を有するターボチャージャをさらに備えてもよい。スプリットサイクル内燃エンジンは、燃焼シリンダから排出される流体のタービンを回避する流路を形成するように配置されるタービンバイパス通路をさらに備えてもよい。コントローラは、圧縮シリンダに供給される圧縮作動流体の選択された量を供給するように、タービンバイパス通路の動作を制御するように構成されてもよい。コントローラは、エンジン制動モードでの動作時に、少なくとも一部の流体がタービンバイパス通路を通って移動するように、スプリットサイクル内燃エンジンの動作を制御するように構成されてもよい。コントローラは、エンジンサイクル当たりの選択されたエンジンの制動量をもたらすように、タービンバイパス通路を通って移動する流体の割合を制御するように構成されてもよい。
【0015】
スプリットサイクル内燃エンジンは、スプリットサイクル内燃エンジンにより圧縮されたガスを受け入れるように構成される圧縮ガス貯蔵部をさらに備えてもよい。圧縮ガス貯蔵部は、圧縮シリンダ内で圧縮された圧縮ガス、および/または、燃焼シリンダ内でさらに圧縮された圧縮ガスを受け入れるように構成される1つ以上の貯蔵部を備えてもよい。コントローラは、エンジン制動モードでの動作時に、圧縮ガスを圧縮ガス貯蔵部に供給するように、スプリットサイクル内燃エンジンの動作を制御するように構成されてもよい。コントローラは、エンジン出力を上げるために、圧縮ガス貯蔵部からガスを選択的に放出するように、圧縮ガス貯蔵部の動作を制御するように構成されてもよい。コントローラは、エンジン制動モードからアクティブモードへの切替に応じて、圧縮ガス貯蔵部からガスを放出するように、圧縮ガス貯蔵部の動作を制御するように構成されてもよい。スプリットサイクル内燃エンジンは、エンジン制動モードでの動作時に、スプリットサイクル内燃エンジンからの過剰エネルギーを蓄えるように構成される1つ以上の相変化材料を含んでもよい。例えば、相変化材料は、レキュペレータ内に設けられてもよい。
【0016】
一態様において、スプリットサイクル内燃エンジンを動作させる方法が提供される。スプリットサイクル内燃エンジンは、圧縮作動流体を供給するように構成される圧縮ピストンを収容する圧縮シリンダと、燃焼ピストンを収容する燃焼シリンダと、を備えて、燃焼シリンダは、圧縮シリンダから圧縮作動流体を受け入れるように圧縮シリンダに連結されて、燃焼シリンダは、(i)燃焼シリンダ内への圧縮作動流体の吸入を制御するように構成される入口弁と、(ii)燃焼シリンダからの流体の排出を制御するように構成される出口弁と、を備える。本方法は、アクティブモードとエンジン制動モードとの間でスプリットサイクル内燃エンジンの動作を切り替えるために、入口弁および/または出口弁が開くエンジンサイクル中の位置を変更する工程と、アクティブモードでの動作時よりもエンジン制動モードでの動作時に、下死点(BDC)位置により近い位置で開くように入口弁を制御することと、アクティブモードでの動作時よりもエンジン制動モードでの動作時に、上死点(TDC)位置により近い位置で開くように出口弁を制御することと、のうち少なくとも一方の制御を実行する工程と、を含む。
【0017】
本開示の態様は、スプリットサイクル内燃エンジンの動作を制御して、本明細書に開示される方法のいずれかを実行するように、プロセッサをプログラミングするように構成されるコンピュータプログラム命令を含むコンピュータプログラム製品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
ここで、本開示のいくつかの実施例が、図面を参照しながら、単なる例示として説明される。
【0019】
図1図1は、スプリットサイクル内燃エンジンの模式図である。
図2図2は、スプリットサイクル内燃エンジンの模式図である。
図3a図3aは、スプリットサイクル内燃エンジンの燃焼シリンダの入口弁と出口弁との開閉の例示的なタイミング図を示す。
図3b図3bは、スプリットサイクル内燃エンジンの燃焼シリンダの入口弁と出口弁との開閉の例示的なタイミング図を示す。
図3c図3cは、スプリットサイクル内燃エンジンの燃焼シリンダの入口弁と出口弁との開閉の例示的なタイミング図を示す。
図3d図3dは、スプリットサイクル内燃エンジンの燃焼シリンダの入口弁と出口弁との開閉の例示的なタイミング図を示す。
【0020】
図面において、同様の符号は、同様の要素を示すために使用される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、2つの異なるモードで動作し得るスプリットサイクル内燃エンジンに関する。第1モードは、アクティブモードであり、第2モードは、エンジン制動モードである。いずれのモードでも、作動流体は、圧縮シリンダ内で圧縮されて、この作動流体は、燃焼シリンダに供給される。アクティブモードでは、燃料は、燃焼シリンダ内で燃焼して、燃焼作動流体は、燃焼ピストンの移動を駆動するために使用される。代わって、エンジン制動モードでは、作動流体をさらに圧縮するために、燃焼シリンダが使用されるように、燃焼シリンダの動作が変更される。燃焼シリンダへの入口弁が開くおよび/または閉じるタイミングは、エンジン制動モードにおいて、燃焼シリンダ内の作動流体がさらに圧縮されて、この圧縮流体が次いで燃焼シリンダから排出されるように、2つのモード間で変更される。本開示のさらなる機能は、エンジン制動モードでの動作時に、スプリットサイクル内燃エンジンの1つ以上の部品の動作温度を調節する制御機構を提供する。
【0022】
図1は、スプリットサイクル内燃エンジン100を示す。エンジン100は、圧縮シリンダ110と、燃焼シリンダ120と、クロスオーバ通路130と、を備える。圧縮シリンダ110は、圧縮ピストン112と、入口弁114と、出口弁116と、を備える。燃焼シリンダ120は、燃焼ピストン122と、入口弁124と、出口弁126と、を備える。エンジン100は、クランクシャフト140をさらに備える。
【0023】
圧縮シリンダ110は、圧縮ピストン112を収容して、燃焼シリンダ120は、燃焼ピストン122を収容する。圧縮ピストン112と燃焼ピストン122との両方は、クランクシャフト140に連結される。圧縮シリンダ110は、クロスオーバ通路130を介して燃焼シリンダ120に連結される。具体的には、クロスオーバ通路130は、圧縮シリンダ110の出口弁116と、燃焼シリンダ120の入口弁124と、に連結される。圧縮シリンダ110の入口弁114は、流入する作動流体の源に連結される。燃焼シリンダ120の出口弁126は、エンジン100の排出口に連結される。クロスオーバ通路130は、作動流体がそこを介して圧縮シリンダ110から燃焼シリンダ120に移動する導管を形成する。
【0024】
圧縮シリンダ110は、作動流体の圧縮をもたらすように構成される。圧縮シリンダ110の入口弁114は、作動流体が圧縮シリンダ110に入るために開いて、圧縮ピストン112が圧縮シリンダ110内の作動流体を圧縮するように移動することを可能にするために閉じるように構成される。圧縮ピストン112は、圧縮シリンダ110内の作動流体を圧縮するために、圧縮シリンダ110の容積を下げるように移動するように配置される。圧縮ピストン112は、クランクシャフト140に連結されて、その結果、圧縮ピストン112のこの移動は、クランクシャフト140の回転運動により生じる。圧縮シリンダ110の出口弁116は、圧縮シリンダ110内の作動流体の圧縮を可能にするために閉じたままであり、圧縮シリンダ110からの圧縮流体を排出するために開くように構成される。
【0025】
クロスオーバ通路130は、圧縮シリンダ110から圧縮流体を受け入れるように構成される。クロスオーバ通路130は、この圧縮流体の加熱をもたらし得る。燃焼シリンダ120の入口弁124は、圧縮作動流体がクロスオーバ通路130から燃焼シリンダ120に入るために開いて、作動流体がクロスオーバ通路130から燃焼シリンダ120に入ることを防止するために閉じるように構成される。燃焼シリンダ120の出口弁126は、燃焼シリンダ120から流体を排出するために開いて、燃焼シリンダ120からの流体の排出を防止するために閉じるように構成される。
【0026】
図1には図示されていないが、エンジン100は、コントローラをさらに備える。エンジン100は、コントローラに検知パラメータの値を提供する1つ以上のセンサ(例えば、コントローラがそのような検知パラメータに基づいて、エンジン100の動作を制御することを可能にするために)をさらに備えてもよい。このことは、図2に図示されるエンジン100に関連して、より詳細に後述される。
【0027】
コントローラは、2つの異なる動作モードで動作するように、エンジン100を制御するように構成される。第1動作モードは、アクティブモードである。第2動作モードは、エンジン制動モードである。
【0028】
アクティブモードにおいて、コントローラは、圧縮作動流体がクロスオーバ通路130から燃焼シリンダ120に入り、燃焼シリンダ120で燃焼が発生するように、エンジン100の動作を制御するように構成される。燃焼シリンダ内の燃焼は、エネルギーを放出するための燃料の酸化および消費(例えば、作動流体の圧力における位置エネルギーと、燃焼ピストン/クランクシャフトの運動エネルギーと、を供給するための燃料の消費)を含む。この燃焼は、発熱反応をもたらし得る。この燃焼は、燃焼ピストン122の移動(すなわち、クランクシャフト140の移動)を駆動するために、作動流体の膨張運動をもたらす。次いで、燃焼(および膨張)された流体は、燃焼シリンダ120から排出される。
【0029】
エンジン制動モードにおいて、コントローラは、圧縮作動流体がクロスオーバ通路130から燃焼シリンダ120に入り、次いで、圧縮作動流体が燃焼ピストン122の移動により、燃焼シリンダ120内でさらに圧縮されるように、エンジン100の動作を制御するように構成される。次いで、さらに圧縮された流体は、燃焼シリンダ120から(燃焼が全く発生しないで)排出される。
【0030】
コントローラは、異なる動作モードを切り替えるために、燃焼シリンダ120の入口弁および/または出口弁の開位置および/または閉位置を変更するように構成される。
【0031】
弁のタイミング/位置の切替の説明のために、先ず、燃焼ピストン122の動作が説明される。燃焼ピストン122は、下死点(「BDC」)位置と上死点(「TDC」)位置との間を移動するように構成される。燃焼ピストン122がBDC位置にあるとき、燃焼シリンダ120の内容積は、エンジン100のサイクル中における最大となる。図1のエンジン100における燃焼ピストン122は、BDC位置にあるとき、燃焼シリンダ120内の最下点にある。すなわち、(図1において黒塗りで図示される)燃焼ピストン122のヘッドは、例えば、クランクシャフト140のシャフトに最も近接した位置などの、燃焼シリンダ120の下端に向かう。燃焼ピストン122がTDC位置にあるとき、燃焼シリンダ120の内容積は、エンジン100のサイクル中における最小となる。図1のエンジン100における燃焼ピストン122は、TDC位置にあるとき、燃焼シリンダ120内の最上点にある。すなわち、燃焼ピストン122のヘッドは、例えば、クランクシャフト140のシャフトからより遠い位置などの、燃焼シリンダ120の上端に向かう。
【0032】
このプロセスは、周期的であり、例えば、繰り返し続けられる。図1のエンジン100において、周期的プロセスは、燃焼シリンダ120内での燃焼ピストン122の往復運動を含む。この周期的プロセスはまた、燃焼ピストン122の往復運動を伴うクランクシャフト140の回転運動を含む。燃焼ピストン122の運動は、TDC位置とBDC位置とを繰り返し通過するようなものである。換言すれば、燃焼ピストン122は、BDC位置とTDC位置との間で燃焼シリンダ120内を往復運動する(例えば、燃焼シリンダ120内で後退して前進する)。BDC位置とTDC位置とは、角度(例えば、燃焼ピストン122の振動運動の位置)で表されてもよい。この場合、TDC位置は、0°または360°(これらは同一である)とみなされて、BDC位置は、180°となる。ピストンは、0°から180°を超えて、最大360°(0°と同じ)まで移動した後、この動作を繰り返す。
【0033】
コントローラは、燃焼シリンダ120の入口弁および/または出口弁が開くおよび/または閉じるときのこのエンジンサイクル中の位置を制御するように構成される。ここでも、これらの弁が開閉する位置は、燃焼ピストン122のサイクルがどの程度進んでいるかを示すために、角度で表されてもよい。弁は、油圧システムおよび/または空気圧システムを用いて開くおよび/または閉じるように構成されてもよく、または、回転が弁の開閉を制御するカムシャフトに連結されてもよい。コントローラは、関連する部品の動作を調節して、弁が開くおよび/または閉じるときの位置を変更するように構成されてもよい。
【0034】
アクティブモードにおいて、コントローラは、燃焼シリンダ120の入口弁124をTDC位置付近で開くように(例えば、入口弁124は、340°と20°との間でしばらくの間開いてもよい)制御するように構成される。燃焼シリンダ120の入口弁124は、燃焼が発生した後、燃焼シリンダ120に取り込まれた作動流体がTDC位置とBDC位置との間の距離の大部分にかけて、燃焼ピストン122の移動を駆動し得るように、開閉するように構成される。例えば、燃焼シリンダ120の入口弁124は、TDCで、またはTDCのわずかに前の位置で開いて、もしくは、TDCで、またはTDCのわずかに後ろで、閉じるように構成されてもよい。
【0035】
アクティブモードにおいて、コントローラは、BDC位置に向かうと、燃焼シリンダ120の出口弁126を開くように制御するように構成される。燃焼シリンダ120の出口弁126は、燃焼して膨張した流体が燃焼シリンダ120から排出されるように、開くように構成される(例えば、燃焼の大部分および/またはTDCからBDCに向かう移動が、出口弁126が開く前に発生するように)。コントローラは、TDC位置に向かうと、燃焼シリンダ120の出口弁126を閉じるように制御するように構成される。燃焼シリンダ120の出口弁126が閉じる前に、燃焼して膨張した流体の大部分が燃焼シリンダ120から排出されるように、燃焼シリンダ120の出口弁126は、閉じるように構成される。
【0036】
コントローラは、燃焼シリンダ120の出口弁と入口弁とが共に開いている時間の量を最小にするように(例えば、全面的に避けるように)、エンジン100の動作を制御するように構成されてもよい。例えば、燃焼シリンダ120の入口弁124は、燃焼シリンダ120の出口弁126が閉じると同時に、またはわずかに後の位置で開いてもよい。燃焼シリンダ120の入口弁124が閉じる時と、出口弁126が開く時と、の間の遅延は、(例えば、燃焼と膨張とにより、TDCからBDCまでの道の大部分にかけて燃焼ピストン122が駆動されることを可能にするために)より大きくなる。
【0037】
アクティブモードにおいて、エンジン100は、燃焼シリンダ120に燃料を噴射するように構成される。燃料は、燃焼シリンダ120内の作動流体と混合して、作動流体の膨張をもたらして、燃焼ピストン122のBDC位置への移動を駆動するために、燃料は、燃焼(例えば、酸化)される。アクティブモードにおいて、コントローラは、TDCにおいて、またはTDCのわずかに後ろで、燃料が燃焼シリンダ120内で燃焼して、燃焼シリンダ120内の圧縮作動流体が膨張して、燃焼ピストン122のTDC位置への移動を駆動するように、燃焼シリンダ120の入口弁と出口弁との開閉を制御するように構成される。同様に、アクティブモードにおいて、コントローラは、膨張する新たな圧縮作動流体が燃焼シリンダ120に取り込まれる前に、膨張して燃焼した作動流体が燃焼シリンダ120から排出されるように(例えば、膨張して燃焼した作動流体の大部分が燃焼シリンダ120から排出されるように)、シリンダ120の入口弁と出口弁との開閉を制御するように構成される。
【0038】
このようにアクティブモードでエンジン100を制御することにより、エンジン100の動作は、動力出力を提供し得る(例えば、クランクシャフト140の回転運動を通じて)。この出力(例えば、駆動トルク)は、車両(例えば、トラック)の運動を駆動するためなどの多くの方法で使用されてもよい。コントローラは、エンジン100に対する要求の量(例えば、必要とされるトルク出力の量)を示す要求信号を受信するように構成されてもよい。コントローラは、この要求信号に基づいて、燃料噴射の量やタイミングなどの、エンジン100の動作を制御してもよい。
【0039】
エンジン100の動作中、エンジン100からの即時出力の要求は、変動し得る。例えば、エンジン100が車両に用いられる場合、エンジン100からのトルク出力の要求は、車両の減速が所望されているとき(例えば、低速するために、またはさらなる加速が望まれない場合)、低減されてもよい。このような期間中、クランクシャフト140は、依然として回転して、燃焼ピストン122の移動を引き起こしてもよい。エンジン100の低速化を容易にするため(例えば、車両の減速)、および/または、この期間に使用可能な仕事をエンジン100の動作から抽出するために、コントローラは、エンジン100の動作をアクティブモードからエンジン制動モードに切り替えるように構成される。例えば、コントローラは、エンジン100からの出力が低減されることを示す信号を受信してもよい。コントローラは、この信号の受信に応じて、アクティブモードからエンジン制動モードに切り替えるようにエンジン100の動作を制御してもよい。
【0040】
コントローラは、アクティブモードとエンジン制動モードとの間で切り替えるために、燃焼シリンダ120の入口弁および/または出口弁の開位置および/または閉位置を変更するように構成される。
【0041】
エンジン制動モードにおいて、コントローラは、燃焼シリンダ120の入口弁124をBDC位置付近で開くように制御するように構成される。燃焼シリンダ120の入口弁124は、BDCで、またはBDCのわずかに後ろで開いてもよい。例えば、入口弁124は、190°付近で開いてもよい。コントローラは、圧縮流体がクロスオーバ通路130を通過して燃焼シリンダ120に流入して、次いで、燃焼ピストン122がBDC位置に向かって移動するにつれて、圧縮流体が燃焼シリンダ120内でさらに圧縮されるように、燃焼シリンダ120の入口弁124を開閉するように制御するように構成される。例えば、燃焼ピストン122のBDC位置からTDC位置への移動の大部分にかけて、作動流体は、燃焼シリンダ120で圧縮されてもよい。燃焼シリンダ120の入口弁124の開位置と閉位置とは、互いに一定のオフセット(例えば、アクティブモードとエンジン制動モードとの両方において一定のままである)を有し得るが、エンジンサイクル中のこの開位置と閉位置とは、変化し得る。
【0042】
換言すれば、コントローラは、エンジン制動モード(例えば、BDC付近の位置、またはBDCのわずかに後ろにある位置)において、アクティブモード(例えば、入口弁124がTDC付近の位置で開くとき)と比較して、燃焼ピストン122のBDC位置により近い位置で、燃焼シリンダ120の入口弁124を開くように制御するように構成される。そうすることにより、燃焼ピストン122のBDC位置からそのTDC位置への移動の一部は、エンジンの制動をもたらすために、燃焼シリンダ120内の圧縮作動流体のさらなる圧縮をもたらすように作用する。
【0043】
エンジン制動モードにおいて、コントローラは、燃焼シリンダ120の出口弁126をTDC位置またはその前の位置で開くように制御するように構成される。燃焼シリンダ120の出口弁126は、BDCよりもTDCに近い位置で開いてもよい。例えば、燃焼シリンダ120の出口弁126は、約290°と300°との間で開いてもよい。燃焼シリンダ120の出口弁126は、燃焼ピストン122がTDC位置に向かって移動することにより、さらに圧縮された流体(例えば、圧縮シリンダ110内で圧縮されて、燃焼シリンダ120内でさらに圧縮された作動流体)が出口弁126を通って排出されるように、TDC前に開くように制御されてもよい。燃焼シリンダ120の出口弁126は、入口弁124が開く前に閉じるように制御される。燃焼シリンダ120の出口弁126は、燃焼ピストン122がBDC位置に達する前(例えば、約140°)に開いてもよい。燃焼ピストン122がTDCに向かって移動するにつれて、燃焼シリンダ120に残留するガスが膨張するように、燃焼シリンダ120の入口弁124が開いて、作動流体がさらに燃焼シリンダ120に入れるようになる前に、出口弁126は、任意の位置で開くように制御されてもよい。
【0044】
コントローラは、燃焼シリンダ120の入口弁124の閉位置と出口弁126の開位置との間、および/または、出口弁126の閉位置と入口弁124の開位置との間のいかなるオーバーラップも避けるように、エンジン100の動作を制御するように構成されてもよい。入口弁124の閉操作と出口弁126の開操作との間のタイムラグは、燃焼シリンダ120内の選択された圧縮量の作動流体を供給するように選択されてもよい。
【0045】
換言すれば、コントローラは、エンジン制動モードでの動作時、アクティブモードでの動作時(例えば、出口弁126がBDC付近の位置で開いているか、またはBDCのわずかに前の位置)よりも、上死点TDC位置により近い位置(例えば、TDC付近の位置、またはTDCのわずかに前の位置)で開くように、燃焼シリンダ120の出口弁126を制御するように構成される。そうすることにより、燃焼ピストン122のBDC位置からTDC位置への移動の一部は、エンジンの制動をもたらすために、燃焼シリンダ120内の圧縮作動流体のさらなる圧縮をもたらすように作用する。
【0046】
エンジン制動モードにおいて、燃料は、燃焼シリンダ120に噴射されない。例えば、コントローラは、入口弁/出口弁の位置決めと燃料の噴射との両方の動作を制御するように構成されてもよい。コントローラがエンジン制動モードで動作するようにエンジン100を制御している場合、コントローラは、燃料が燃焼シリンダ120に噴射されないように燃料噴射を制御してもよい。この場合、エンジン100は、作動流体の二重圧縮(例えば、作動流体が圧縮シリンダ110内で第1圧縮されて、燃焼により作動流体の膨張が引き起こされることなく燃焼シリンダ120内で第2圧縮されるため)をもたらすように動作してもよい。この二重に圧縮作動流体は、次いで、燃焼シリンダ120の出口弁126を介して排出される。
【0047】
エンジン制動モードにおいて、コントローラは、燃焼ピストン122のBDC位置とTDC位置との間にある期間において、燃焼ピストン122がTDCに向かって移動するにつれて、圧縮シリンダ110内の作動流体が圧縮されるように、燃焼シリンダ120の入口弁と出口弁とを開閉するように制御するように構成される。同様に、エンジン制動モードにおいて、コントローラは、燃焼シリンダ120内のさらに圧縮された流体が出口弁126を介して排出されるように(例えば、燃焼シリンダ120において燃焼による作動流体の膨張が生じることなく)、燃焼シリンダ120の入口弁と出口弁とを開閉するように制御するように構成される。
【0048】
したがって、エンジン100の動作は、アクティブモードとエンジン制動モードとの間で切り替えるように制御されてもよい。コントローラは、切替が所望されていることを示す信号の受信に応じて(例えば、車両を減速するような、または車両のさらなる加速を避けるような車両の運転者の行為に応じて)、そのような切替を開始するように構成されてもよい。
【0049】
エンジン100は、動作時に、2つの異なるモードのいずれかで動作するように制御されてもよい。
【0050】
例えば、エンジン100の動作は、アクティブモードで開始してもよい。このとき、作動流体を圧縮シリンダ110内に入れるために、圧縮シリンダ110の出口弁116が閉じられた状態で、圧縮シリンダ110の入口弁114は、開く。次いで、圧縮シリンダ110の入口弁114は、閉じる。圧縮ピストン112は、圧縮シリンダ110内の作動流体を圧縮するように移動する。次いで、圧縮ピストン112の出口弁116が開いて、圧縮作動流体は、圧縮シリンダ110を通過して、クロスオーバ通路130に流入する。燃焼シリンダ120の入口弁124が開くと(燃焼ピストン122のTDC位置付近で)、圧縮作動流体は、クロスオーバ通路130から燃焼シリンダ120に入り、燃料と混合される。燃料は、燃焼(例えば、酸化)して、これにより作動流体が膨張して、燃焼ピストン122がBDC位置に向かって駆動される。次いで、燃焼シリンダ120の出口弁126は、(BDC位置よりも前に)開いて、燃焼シリンダ120の入口弁124が開くわずかに前(TDC位置よりも前)までは開いたままである。出口弁126が開いている間に、燃焼して膨張した作動流体は、燃焼シリンダ120から排出される。燃焼ピストン122の駆動運動は、クランクシャフト140に伝達して、これは、エンジン100から仕事を抽出するために利用され得る。
【0051】
次いで、コントローラは、エンジン制動モードでの動作が所望されているという信号を受信してもよい。このとき、コントローラは、燃焼シリンダ120の入口弁および/または出口弁の開閉のタイミングを変更する。圧縮シリンダ110の動作は、両方のモードで類似してもよい(すなわち、圧縮作動流体を燃焼シリンダ120に供給する)。アクティブモードにおいて、燃焼シリンダ120の入口弁124は、(アクティブモードと比較して)BDC位置により近い位置で開く。次いで、圧縮作動流体は、出口弁126が閉じて、燃焼ピストン122がBDC位置により近い間に、クロスオーバ通路130から燃焼シリンダ120に入る。次いで、燃焼シリンダ120の入口弁124は、閉じて、燃焼ピストン122がTDC位置に向かって移動するにつれて、燃焼シリンダ120内の作動流体は、圧縮される。次いで、出口弁126は、燃焼ピストン122のTDC位置またはその前の位置で開く。次いで、燃焼シリンダ120内でさらに圧縮された作動流体は、出口弁126を介して排出される。燃焼シリンダ120内の作動流体をさらに圧縮することにより行われる仕事は、エンジンの制動をもたらす。
【0052】
図2を参照して、本開示のいくつかの任意選択の追加の機能が以下に説明される。
【0053】
図2は、スプリットサイクル内燃エンジン100を図示している。図2のエンジン100は、図1のエンジンと同様である。また、エンジン100の類似する部品についての再度の説明は、省略される。
【0054】
図1に図示される機能に加えて、エンジン100は、ターボチャージャ150を備えてもよい。ターボチャージャ150は、コンプレッサ151と、タービン152と、シャフト153と、を備える。エンジン100は、タービンバイパス通路154をさらに備えてもよい。
【0055】
エンジン100は、レキュペレータ160を備えてもよい。レキュペレータ160は、高圧熱交換通路161と低圧熱交換通路162との2つの熱交換通路を有する熱交換器である。レキュペレータ160は、1つ以上のバイパス通路を備えてもよい。図2は、高圧レキュペレータバイパス通路163と低圧レキュペレータバイパス通路164との両方を図示している。
【0056】
エンジン100は、エネルギー貯蔵装置をさらに備えてもよい。図示されていないが、エンジン100は、1つ以上の圧縮ガス貯蔵部を備えてもよい。図2には、第1ガス回収箇所171と第2ガス回収箇所172との2つの例示的なガス回収箇所が図示される。
【0057】
図2に図示される矢印は、エンジン100を流通する作動流体の流れの可能性のある方向を示す。また、エンジン100を通って移動する作動流体を収容する導管が図示される。これらの機能は、特に限定することを意図するものではなく、単にエンジン100の機能と動作との説明の助けとなるように図示されていることが理解されよう。
【0058】
コンプレッサ151は、シャフト153を介してタービン152に連結される。コンプレッサ151は、圧縮シリンダ110の入口弁114に供給される作動流体と流体連通するように配置される。タービン152は、燃焼シリンダ120の出口弁126から排出される作動流体と流体連通するように配置される。タービン152は、燃焼シリンダ120の出口弁126と、エンジン100の排出口と、の間に位置する。タービンバイパス通路154は、燃焼シリンダ120の出口弁126と、タービン152と、の間に位置する。タービンバイパス通路154は、タービン152の上流の領域(例えば、燃焼シリンダ120の出口弁126とタービン152との間)をタービン152の下流の領域(例えば、タービン152とエンジン100の排出口との間)に連結する。弁などの1つ以上のアクチュエータは、タービンバイパス通路154を選択的に開閉するために設けられる。図2において、これらは、小さな黒い点とこれらの点から延在する点線とにより図示される。
【0059】
レキュペレータ160の高圧熱交換通路と低圧熱交換通路とは、互いに隣接して位置する。簡略化するために、これらは、図2において、互いに接触して、互いに平行に延びる2つの通路として図示される。しかしながら、他の構成が設けられてもよい(例えば、2つの通路間の熱交換を増大するために)ことが理解されよう。
【0060】
圧縮シリンダ110の出口弁116は、レキュペレータ160の高圧熱交換通路161と、高圧レキュペレータバイパス通路163と、を介して燃焼シリンダ120の入口弁124に連結される。換言すれば、圧縮シリンダ110の出口弁116と燃焼シリンダ120の入口弁124との間には、2つの通路が設けられる。これらの通路のうち一方(高圧熱交換通路161)は、作動流体を排出流体に近接させて、流体間に熱交換をもたらすように、レキュペレータ160を貫通する。これらの通路のうち他方(高圧レキュペレータバイパス通路163)は、レキュペレータ160を回避する(さらに、流体間の熱交換を低減させるために、排出流体から離れて位置する)流路を形成する。
【0061】
燃焼シリンダ120の出口弁126は、レキュペレータ160の低圧熱交換通路162と、低圧レキュペレータバイパス通路164と、を介してエンジン100の排気口に連結される。また、図2の実施例において、タービン152とタービンバイパス通路154とが設けられて、燃焼シリンダ120の出口弁126と、2つの低圧通路と、の間に配置される(例えば、排出流体がタービン152/タービンバイパス通路154に達する前に低圧通路を流通するように、配置を逆にすることも可能であるが、必須でないことが理解されよう)。低圧熱交換通路162は、燃焼シリンダ120からの排出流体を圧縮シリンダ110からの圧縮作動流体に近接させて、流体間に熱交換をもたらすように、レキュペレータ160を貫通する。低圧レキュペレータバイパス通路164は、レキュペレータ160を回避する(流体間の熱交換を低減させるために、圧縮シリンダ110からの圧縮作動流体から離れて位置する)流路を形成する。
【0062】
第1ガス回収箇所と第2ガス回収箇所とは、加圧ガスを加圧ガス貯蔵部に流入させる弁および/またはポンプを備えてもよい。これらは、図2のエンジン100の高圧領域に図示される。第1ガス回収箇所171は、圧縮シリンダ110内で圧縮されたばかりのガスを受け入れるように配置される。図2において、第1ガス回収箇所171は、圧縮シリンダ110の直下流に図示される(すなわち、第1ガス回収箇所171は、圧縮シリンダ110の出口弁116および/または出口弁116から延在する導管に連結される)。第2ガス回収箇所172は、燃焼シリンダ120内で圧縮されたばかりのガスを受け入れるように配置される。図2において、第2ガス回収箇所172は、出口弁126に隣接して図示される(例えば、ガス圧が高いように、出口弁126の高圧部または出口弁126内に配置される)。各ガス回収箇所は、別の導管を介して加圧ガス貯蔵タンクに連結されてもよい。エンジン100は、1つ以上の加圧ガス貯蔵タンクを備えてもよい(例えば、両方の回収箇所が同じタンクに連結されてもよく、または、各回収箇所がそれぞれ別々のタンクに連結されてもよい)。
【0063】
ターボチャージャ150は、燃焼シリンダ120から排出される作動流体により、さらなる仕事が抽出されることを可能にするように構成される。エンジン100は、この排出流体が燃焼シリンダ120から流れてタービン152を通ってタービン152の回転を駆動可能なように構成される。ターボチャージャ150は、タービン152の回転がシャフト153の回転を駆動するように構成される。シャフト153の回転は、次いで、コンプレッサ151の回転を駆動する。コンプレッサ151は、作動流体を圧縮シリンダ110の入口弁114に向けて選択的に駆動するように構成される。コンプレッサ151の回転の増大は、より大量の作動流体を圧縮シリンダ110に向けて駆動する(例えば、圧縮シリンダ110に供給される作動流体の圧力を増大させ得る)。換言すれば、ターボチャージャ150は、圧縮シリンダ110に供給される作動流体の圧縮を増大させるために、燃焼シリンダ120から排出された作動流体のタービン152を通過した流れからのエネルギーを使用するように構成される。
【0064】
タービンバイパス通路154は、排出流体とタービン152との相互作用を回避するか、または少なくとも低減する、燃焼シリンダ120からの排出流体の代替流路を形成するように配置される。換言すれば、タービンバイパス通路154は、タービン152を迂回しながら、燃焼シリンダ120からの排出流体がエンジン100の排気口に向かう通路を形成するように配置される。ターボチャージャ150は、排出流体がタービンバイパス通路154を流通するか否かを選択的に制御するように構成されてもよい。ターボチャージャ150は、タービンバイパス通路154を流通する排出流体の量または割合を選択する(例えば、変更する)ように構成されてもよい。例えば、排出流体の全部または一部は、タービンバイパス通路154を通るように方向付けられてもよい。または、排出流体は、タービンバイパス通路154を通るように方向付けられなくてもよい。コントローラは、タービンバイパス通路154の動作を制御するように構成されてもよい。例えば、コントローラは、コンプレッサ151による選択された量の圧縮をもたらすために(例えば、エンジン100を流通する作動流体の量を調節するために)、タービンバイパス通路154を流通する作動流体の量または割合を調節するように構成されてもよい。
【0065】
これに加えて、またはこれに代えて、エンジン100は、圧力(およびエンジン100の温度)を調節するために、圧縮ガスを排出するように選択的に動作可能な1つ以上の排気口を備えてもよい。例えば、吸入ガス用に排気口が設けられてもよい(例えば、圧縮シリンダ110の入口弁114の上流に)。この排気口は、エンジンを流通するガスの圧力を低減させるために使用され得る。例えば、排気ガスの量を増加させることにより、エンジンを流通するガスの圧力は、低下し得る。エンジンを流通するガスから除去されるいかなるガスも、エンジン内で、例えば、吸気を冷却するために使用され得る。
【0066】
レキュペレータ160は、燃焼シリンダ120からの排出流体と、圧縮シリンダ110と燃焼シリンダ120との間の圧縮流体と、の間での熱交換を可能にするように構成される。例えば、低圧熱交換通路162を流通する排出流体は、通常、高圧熱交換通路161を流通する圧縮流体よりも高温である。レキュペレータ160は、低圧熱交換通路162内の高温の排出流体と、高圧熱交換通路161内の低温の圧縮流体と、の間での熱伝達を可能にするように構成される。
【0067】
レキュペレータバイパス通路は、(例えば、排出流体と圧縮流体との間で供給される熱交換の量を低減するために)レキュペレータ160を回避する流体流路を形成するように構成される。換言すれば、各レキュペレータバイパス通路は、レキュペレータ160を回避する流体の代替流路を形成してもよい。エンジン100は、各レキュペレータバイパス通路を流通する流体の量または割合を選択するように制御されてもよい。レキュペレータバイパス通路のみが形成されてもよいことが、本開示の観点から理解されよう。
【0068】
エンジン100は、高圧レキュペレータバイパス通路163を流通する圧縮シリンダ110からの圧縮流体の量または割合を選択する(例えば、変更する)ように構成されてもよい。例えば、この圧縮流体の全部または一部は、高圧レキュペレータバイパス通路163を通るように方向付けられてもよい。または、この圧縮流体は、高圧レキュペレータバイパス通路163を通るように方向付けられなくてもよい。コントローラは、高圧レキュペレータバイパス通路163の動作を制御するように構成されてもよい。例えば、コントローラは、圧縮作動流体の選択された加熱量、および/または、レキュペレータ160に供給される選択された冷却量(および/または排出流体)を提供するために、高圧バイパス通路を流通する作動流体の量または割合を調節するように構成されてもよい。
【0069】
エンジン100は、低圧レキュペレータバイパス通路164を流通する燃焼シリンダ120からの排出流体の量または割合を選択する(例えば、変更する)ように構成されてもよい。例えば、この排出流体の全部または一部は、低圧レキュペレータバイパス通路164を通るように方向付けられてもよい。または、この排出流体は、低圧レキュペレータバイパス通路164を通るように方向付けられなくてもよい。コントローラは、低圧レキュペレータバイパス通路164の動作を制御するように構成されてもよい。例えば、コントローラは、圧縮作動流体の選択された加熱量、および/または、レキュペレータ160に供給される選択された冷却量(および/または排出流体)を提供するために、低圧バイパス通路を流通する作動流体の量または割合を調節するように構成されてもよい。
【0070】
ガス回収箇所は、圧縮ガスがエンジン100の加圧ガス貯蔵部に供給されることを可能にするように配置されてもよい。ガス回収箇所は、ガス圧力が高いエンジンの領域から加圧ガスが回収されるように位置してもよい。加圧ガス貯蔵部は、加圧ガスを貯蔵して、加圧ガスがエンジン100に戻ることを可能にするように構成されてもよい。例えば、エンジン100は、ガスを貯蔵部に供給するためのガス吸入箇所と、貯蔵部からエンジン100に戻すためのガスリターン箇所と、をそれぞれ圧縮してもよい。ガス回収箇所は、そのような吸入箇所とリターン箇所との両方を備えてもよい。あるいは、燃焼シリンダ120の出口弁の下流など、ガス圧力が低いエンジンの領域に、1つ以上のガスリターン箇所が設けられてもよい。例えば、エンジン100は、加圧ガスがエンジン100を流通する間(例えば、ガスが圧縮シリンダ110および/または燃焼シリンダ120内で圧縮されることにより、圧力を受けるように)、加圧ガスを任意の位置から取り出して、貯蔵部に貯蔵することを可能にするように構成されてもよい。エンジン100は、エンジン100の動作中のさらなる使用のために、加圧ガスをエンジン100に戻すように構成されてもよい。例えば、エンジン100は、タービン152を駆動するために、加圧ガスが戻ることを可能にするように構成されてもよい。換言すれば、エンジン100は、エンジン要求が低い場合(例えば、エンジン100を流通する圧縮ガスがエンジン100からの有意義な出力を得るために必要でない場合)、ガスをガス貯蔵部に貯蔵するように構成されてもよい。エンジン100は、要求がより高い場合(例えば、エンジン100を流通するより多くの圧縮ガスを供給するために)、有意義な出力への変換に使用するために、エンジン100にガスを戻すように構成されてもよい。
【0071】
図1のエンジン100と同様に、エンジン100は、図示されていないコントローラを備える。エンジン100は、1つ以上のセンサをさらに備えてもよい。例えば、エンジン100の1つ以上の部品についての温度および/または圧力の表示を取得するために、センサが設けられてもよい。例えば、コントローラは、レキュペレータ160の温度および/またはエンジン100を流通する作動流体の圧力の表示を受信するように構成されてもよい。コントローラは、このような受信された表示に基づいて、エンジン100の動作を制御するように構成されてもよい。
【0072】
コントローラは、エンジン100の選択された動作特性を実現するように、エンジン100の1つ以上の部品を制御するように構成されてもよい。図1のエンジン100と同様に、コントローラは、アクティブモードとエンジン制動モードとの間でのエンジン100の切替を制御するように構成される。さらに、コントローラは、これらの動作モードの一方または両方においてエンジン100の選択された動作特性を実現するように、エンジン100の1つ以上の異なる部品の動作を制御するように構成されてもよい。具体的には、コントローラは、レキュペレータ160の温度を調節するために、エンジン制動モードでのエンジン100の動作を制御するように構成されてもよい。例えば、レキュペレータ160がアクティブモードで動作を再開するために所望の温度になるように(例えば、エンジン100がアクティブモードに戻ってから最適に機能する前に、レキュペレータ160が暖まるための時間が必要ないように)、レキュペレータ160を選択された温度範囲に保持すること(例えば、レキュペレータ160を熱く保持すること、および/または、レキュペレータ160を過熱させないこと)が有益であり得る。
【0073】
エンジン100の動作を制御するフィードバックループの実施例が、以下に説明される。特に、これらの実施例の一部は、エンジン制動モード時のエンジン100の動作を制御する機構に関する。制御ループの説明がなされる前に、先ず、エンジン100の様々な部品や、それらの動作がエンジン100の動作条件にどのように影響し得るかについて説明される。
【0074】
エンジンの様々な部品に供給される加熱の量は、エンジン内を流れる圧縮作動流体の量に基づいて変化する。サイクル当たりの圧縮される流体の量が増加すると(例えば、エンジン内のガス圧力が増大すると)、これにより、エンジンの部品への加熱効果も増大し得る。例えば、より大量の作動流体が圧縮シリンダ110内で圧縮される場合、これにより、レキュペレータ160を流通する、この作動流体の温度が上昇する(したがって、レキュペレータ160自体の温度が上昇する)。同様に、レキュペレータを流通する熱い流体が増加すればするほど、レキュペレータの温度が上昇する(逆の場合も同様である)。エンジンの部品は、所望に応じて、エンジン100の温度を制御するために、これらの特性を調節するように操作されてもよい。
【0075】
ターボチャージャ150は、エンジンの1サイクル中にエンジン100を流通する作動流体の量に影響を与えるように構成される。ターボチャージャ150は、圧縮シリンダ110に押し込まれる作動流体の量を調節するように構成される。タービン152を流通する空気の量が増加することにより、コンプレッサ151は、より多くの空気を圧縮シリンダ110に押し込む(逆の場合も同様である)。圧縮シリンダ110内で圧縮される空気の量を増加させることは、この作動流体の温度および/またはレキュペレータ160を加熱する能力を高めてもよい。したがって、タービンバイパス通路154を流通する空気の量を制御することにより、作動流体の量と加熱能力とが制御されてもよい。換言すれば、タービンバイパス通路154の動作は、エンジン内を流通する作動流体の加熱効果を制御するように(例えば、レキュペレータ160の温度を制御するように)、制御されてもよい。例えば、レキュペレータ160の温度を上昇させるために、エンジン100は、タービン152を流通する作動流体の量を増加させるように(すなわち、タービンバイパス通路154を流通する流体の量を減少させるように)構成されてもよい。
【0076】
レキュペレータ160の高圧部は、高圧レキュペレータ熱交換通路161を流通する圧縮シリンダ110からの圧縮作動流体の量に影響を与えるように制御されてもよい。レキュペレータ160の高圧部161を流通する作動流体がレキュペレータ160よりも冷たい場合、これは、レキュペレータ160に対して冷却効果を有し得る。レキュペレータ160の低圧部162を流通する排出流体がレキュペレータ160より高温である場合、これは、レキュペレータ160に対して加熱効果を有し得る。エンジン100は、レキュペレータの所望の温度を実現するために、これら2つの特性を変更するように(例えば、レキュペレータ160に対する加熱と冷却とのバランスをとるように)構成されてもよい。
【0077】
圧縮作動流体がレキュペレータに対して冷却効果を有し得るレキュペレータの高圧部161において、より多くのこの圧縮作動流体を高圧レキュペレータバイパス通路163を通るように方向付けることは、レキュペレータ160を高温にするように(例えば、レキュペレータの温度の降下をできるだけ避けるように)、作用し得る。排出された作動流体がレキュペレータ160に対して加熱効果を有し得るレキュペレータ160の低圧部162において、この高温の作動流体を低圧レキュペレータバイパス通路164を通るように方向付けることは、レキュペレータ160に対して冷却効果を有し得る。
【0078】
レキュペレータ160の低圧部は、低圧レキュペレータ熱交換通路162を流通する燃焼シリンダ120からの熱い排出流体の量に影響を与えるように制御されてもよい。より大量の高温の排出流体がレキュペレータ160を通って、より低温の圧縮作動流体と熱交換するにつれて、レキュペレータ160の温度は、上昇(または低下を低減)し得る。より大量の圧縮作動流体を低圧レキュペレータバイパス通路164を通るように方向付けることは、レキュペレータ160を低温にするように(例えば、レキュペレータの温度上昇をできるだけ避けるように)、作用し得る。
【0079】
燃焼シリンダ120の入口弁および/または出口弁の開閉時間の制御は、レキュペレータ160の温度に影響を与え得る。燃焼シリンダ120内の圧縮の量を変更することにより、温度上昇の量が変化すること(例えば、圧縮の量が増加すると、温度がより上昇し得ること)が、本開示の観点から理解されよう。入口弁と出口弁との開閉は、圧縮により生じる選択された量の温度上昇をもたらすように制御されてもよい。これに加えて、またはこれに代えて、出口弁126が開閉する位置の制御は、さらなる圧縮(およびさらなる加熱)のために、燃焼シリンダ120から排出されて、燃焼シリンダ120に引き戻される高熱の流体の量に影響を与えてもよい。出口弁126が開いた状態で燃焼ピストン122がBDC位置に向かって移動すると、排出流体の一部は、燃焼シリンダ120に戻される。排出流体がさらなる圧縮のために繰り返し流入すると、排出流体の温度は、上昇する。この再圧縮(および再加熱)の量を制御することにより、レキュペレータ160の温度は、変化する(排出流体、すなわちレキュペレータ160の低圧部の温度は、燃焼シリンダ120内で生じる排出流体のさらなる再圧縮により、上昇し得る)。
【0080】
圧縮ガス貯蔵部内に移動する圧縮ガスの量を増加させることは、エンジン100を流通する圧縮作動流体の量を減少させ得る。レキュペレータ160の温度は、これに応じて変化し得る(例えば、圧縮シリンダ110からのより冷たい圧縮流体が代わりにガス貯蔵に方向転換されると、より少量の流体がシステムを流通する)。圧縮ガスがガス貯蔵部からエンジン100に放出されると、これにより、エンジン出力が増大(および、エンジンの温度が上昇)し得る。
【0081】
エンジン100は、温度を調節するその他の機能を含んでもよい。例えば、エンジン100は、(例えば、圧縮シリンダ110に冷却剤を噴射するように構成される)冷却システムを備えてもよい。冷却剤の噴射量を増加させることは、エンジン100の温度を低下させ得る。エンジン100は、相を変化させることにより、蓄熱するように構成される1つ以上の相変化材料を含んでもよい。相変化材料は、アクティブモードでの動作中に蓄熱された熱を、エンジン制動モードでの動作中に放出することを可能にするために使用されてもよい(または、いずれのモードがより高い温度をもたらすかに応じて、この逆が行われてもよい)。
【0082】
ここで、エンジン100の潜在的な機能を示すために、いくつかの例示的なフィードバックループと制御方法とが説明される。
【0083】
コントローラは、レキュペレータ160の温度を示す信号を受信して、受信信号に基づいて、エンジン100の動作を制御するように構成される。コントローラは、エンジン制動モードになるようにエンジン100の動作を制御してもよい。エンジン制動モードにおいて、コントローラは、レキュペレータ160の温度を選択範囲内に保持するために、エンジン100の動作を制御してもよい。例えば、コントローラは、レキュペレータの温度を最小閾値温度より高い温度に保持するように、および/または、レキュペレータの温度を最大閾値温度より低い温度に保持するように、構成されてもよい。コントローラ(およびセンサ)は、エンジン100の動作の動的フィードバックループを提供するように構成されてもよい。換言すれば、コントローラは、レキュペレータの温度を示す信号を受信し続けて、エンジン100の動作を制御し続けて、結果としてレキュペレータの温度を選択範囲内に保持するように構成されてもよい。
【0084】
エンジン制動モードでの動作時に、レキュペレータの温度が選択範囲外であることを示す信号をコントローラが受信した場合、コントローラは、レキュペレータ160を流通する作動流体の流れを調節するように、エンジン100の動作を制御するように構成される。このために、コントローラは、レキュペレータバイパス通路の動作を制御するように構成されてもよい。コントローラは、レキュペレータの温度の表示に基づいて、レキュペレータバイパス通路を流通する高温の流体および/または低温の流体の割合を調節する動作を制御してもよい。例えば、コントローラは、高温の流体によるレキュペレータ160に対する加熱効果と、低温の流体によるレキュペレータ160に対する冷却効果と、のバランスをとるように、エンジンの動作を制御してもよい。
【0085】
レキュペレータの温度が低すぎる場合、コントローラは、レキュペレータ160を流通する高温の流体の量を増加させるように、および/または、レキュペレータ160を流通する低温の流体の量を減少させるように構成される。例えば、コントローラは、エンジンの動作がレキュペレータ160に対してより大きな加熱効果および/またはより小さな冷却効果を与えるように動作するように構成されてもよい。場合により、コントローラは、レキュペレータの温度を上昇させるために、低圧レキュペレータ熱交換通路162を流通する高温の排出流体の量を増加させるように、または高圧レキュペレータ熱交換通路161を流通する低温の圧縮流体の量を減少させるように、エンジン100の動作を制御してもよい。このために、コントローラは、選択的に、低圧レキュペレータバイパス通路164の使用量を減少させて、および/または、高圧レキュペレータバイパス通路163の使用量を増加させるように構成される。
【0086】
コントローラは、レキュペレータの温度の表示と閾値温度との差に基づいて、レキュペレータバイパス通路を流通する流体の割合を変更するように(例えば、温度を増減させる必要がある場合、レキュペレータバイパス通路の使用量を増減するように)構成されてもよい。例えば、コントローラは、エンジン制動モードでの動作時に、少なくとも一部の流体がレキュペレータバイパス通路を流通するように、エンジン100の動作を制御してもよい。レキュペレータの温度が低すぎる場合、低圧バイパス通路が使用されてもよく、および/または、レキュペレータの温度が高すぎる場合、高圧レキュペレータバイパス通路163が使用されてもよい。
【0087】
エンジン制動モードでの動作時に、コントローラがレキュペレータの温度が選択範囲外であることを示す信号を受信した場合、コントローラは、さらなる圧縮(および加熱)のために燃焼シリンダ120に戻される燃焼シリンダ120からの高温の排出流体の量を調節するように、エンジン100の動作を制御するように構成される。このために、コントローラは、燃焼シリンダ120の出口弁126の開位置および/または閉位置を制御するように構成されてもよい。制御は、燃焼シリンダ120内でのさらなる圧縮のために燃焼シリンダ120に引き戻される高温の排出流体の量を調節するために、燃焼シリンダ120の出口弁126の開位置および/または閉位置を選択してもよい。例えば、コントローラは、表示された温度に基づいて、開位置および/または閉位置を制御してもよい。レキュペレータの温度が低すぎる場合、燃焼ピストン122が(TDC位置から)BDC位置に向かって移動するとき、燃焼シリンダ120の出口弁126は、より長時間開いてもよい。例えば、コントローラは、レキュペレータ160の温度を上昇させるために、TDCよりもBDCに近い位置を選択するように(逆の場合も同様である)構成されてもよい。コントローラは、レキュペレータの温度に応じて(例えば、レキュペレータの温度と閾値温度との間の温度差に基づいて選択された量だけ位置が変化するように)、開位置および/または閉位置を動的に調節してもよい。
【0088】
コントローラがエンジン制動モードでの動作時に、レキュペレータの温度が選択範囲外であることを示す信号を受信した場合、コントローラは、タービン152を駆動するために、作動流体の流れを調節するようにエンジン100の動作を制御するように構成される。このために、コントローラは、タービンバイパス通路154の動作を制御するように構成されてもよい。コントローラは、レキュペレータの温度の表示に基づいて、タービンバイパス通路154を流通する流体の割合を調節するための動作を制御してもよい。レキュペレータの温度が低すぎる場合、コントローラは、加熱効果を増大させるために、タービンバイパス通路154の動作を制御するように構成される。コントローラは、(例えば、タービン152を流通する流体の量を増加させるために)タービンバイパス通路154を流通する排出流体の量を減少させるように構成される。したがって、タービン152は、コンプレッサ151の仕事をより多く駆動して、これにより、圧縮シリンダ110内で圧縮される作動流体の量が増加して、より大きな加熱効果が与えられる。
【0089】
コントローラは、レキュペレータの温度の表示と閾値温度との間の差に基づいて、タービンバイパス通路154を流通する排出流体の割合を変更するように(例えば、温度を増減させる必要がある場合に、タービンバイパス通路154の使用量を増減させるように)構成されてもよい。例えば、コントローラは、エンジン制動モードでの動作時に、少なくとも一部の流体がタービンバイパス通路154を流通するように、エンジン100の動作を制御してもよい。
【0090】
コントローラがエンジン制動モードでの動作時に、レキュペレータの温度が選択範囲外であることを示す信号を受信した場合、コントローラは、エンジン100に供給される冷却剤の量を調節するように、および/または、エンジン100を流通する作動流体の量を調節するように、エンジン100の動作を制御するように構成されてもよい。このために、コントローラは、冷却システムの動作を制御するように(例えば、温度を上昇させるまたは低下させるために、それぞれ供給される冷却剤の量を増減させるように)構成されてもよい。コントローラは、エンジン100を流通する作動流体の量を制御するために(例えば、温度を上昇させるために、より圧縮流体を貯蔵する)、圧縮ガス貯蔵部に貯蔵される作動流体の量を制御するように構成されてもよい。
【0091】
前述の例示的なフィードバックループにおいて、コントローラは、エンジン100の温度の表示を受信するように構成される。例えば、これは、レキュペレータ160の温度でもよい。コントローラは、(例えば、前述の実施例に従って)この温度を制御するために、エンジン100の動作を調節するように構成される。例えば、コントローラは、レキュペレータの温度が閾値範囲内に収まるように、エンジン100の動作を制御してもよい。レキュペレータ160のこの制御は、アクティブモードにおけるレキュペレータ160の温度に対する所望の動作条件に基づいて選択された温度でレキュペレータ160を保持することでもよい。例えば、コントローラは、レキュペレータ160を十分に温かく保持して、エンジン100がアクティブモードでの動作に戻ったとき、エンジン100に効率的な動作条件を提供するために、レキュペレータの温度を閾値を上回るように調節してもよい。
【0092】
これに加えて、またはこれに代えて、コントローラは、異なる理由により、エンジン100の温度を調節するようにエンジン100の動作を制御するように構成されてもよい。例えば、エンジン100の動作は、エンジン制動モードでの動作時に、エンジン100のメンテナンスを実現するように制御されてもよい。触媒は、レキュペレータ160の一部として(例えば、レキュペレータ160の内部に)設けられてもよい。エンジン制動モードにおいて、コントローラは、レキュペレータ160の中に触媒反応をもたらすように(例えば、エンジン動作中の触媒の性能を助ける反応)、動作を制御してもよい。例えば、温度は、この反応をもたらす閾値範囲内に調節されてもよい(例えば、レキュペレータ160の温度は、触媒反応をもたらす閾値温度を超えるように制御されてもよい)。例えば、このような動作は、レキュペレータ160の触媒被膜からいかなる好ましくない物質も焼失させるように作用してもよい。エンジンの動作中、触媒被膜上に微粒子が蓄積し得る。例えば、レキュペレータの温度を加熱すること(例えば、エンジン制動モード中)は、これにより、エンジン100の煤除去が行われるように作用してもよい(例えば、触媒被膜から好ましくない微粒子物質を除去することにより、アクティブモードに戻ったときの将来のエンジン性能を向上させる)。コントローラは、レキュペレータ160のそのようなメンテナンスを実現するために(例えば、煤除去/触媒作用を実現するために)、アクティブモードにおけるエンジン100の動作を制御可能でもよい。このために、コントローラは、例えば、エンジンサイクル内のより後ろの位置でいくつかの燃焼が発生して、それにより燃焼シリンダ120から高温の流体が排出されるために、燃料の噴射が遅延するように、制御するように構成されてもよい。
【0093】
エンジン制動モードにおけるエンジン100の動作を制御して、レキュペレータ160に選択された温度をもたらすことに加えて、またはこれに代えて、コントローラは、所望の量のエンジンの制動をもたらすようにエンジン100の動作を制御するように構成されてもよい。例えば、コントローラは、作動流体の圧力および/またはもたらされるエンジンの制動の量を示す信号を受信するように構成されてもよい。コントローラは、この受信信号に基づいてエンジン100の動作を制御して、それに応じてエンジンの制動量を増減するように構成されてもよい。前述の機能を用いてこの動作が制御され得るが、可変のエンジンの制動がもたらされることが、本開示の観点から理解されよう。例えば、コントローラは、(例えば、より多くのエンジンの制動をもたらすために圧縮仕事を増加させるために)燃焼シリンダ120内で行われる圧縮仕事の量を制御するために、燃焼シリンダ120の入口弁および/または出口弁が開くおよび/または閉じる位置を調節してもよい。
【0094】
これに加えて、またはこれに代えて、エンジン100は、エンジン制動モードでの動作時に、圧縮ガスを抽出して、圧縮ガス貯蔵部に貯蔵するように制御されてもよい。圧縮ガスの抽出量および/または貯蔵量は、エンジン100の動作条件、および/または、貯蔵部がどの程度満たされているかに応じて選択されてもよい。例えば、コントローラがエンジン制動モードでの動作に切り替えた場合、コントローラは、圧縮作動流体の一部の、エンジン100のガス貯蔵部への方向付けを開始するように、1つ以上のガス回収箇所の動作を制御してもよい。コントローラは、アクティブモードが有効になるまで、またはガス貯蔵部が一杯になるまで、および/または、エンジン制動モード時のエンジン100に対する異なる量のエンジンの制動および/または加熱が必要な場合に、ガスを抽出し続けてもよい。
【0095】
コントローラは、アクティブモードでのエンジン100の動作中にガス貯蔵部から圧縮ガスを選択的に放出するように構成されてもよい。エンジン100を流通する作動流体の流れを支持するために(例えば、エンジン100を補うために)、圧縮ガスが放出されてもよい。例えば、コントローラは、エンジン100のエネルギー出力を増大させるために、圧縮ガスを供給するように、ガス貯蔵部を制御するように構成されてもよい(例えば、アクティブモードへ戻す切替および/またはエンジン100の加速度に応じるなど、追加の出力が所望されていることを示すエンジンの要求信号に応じて)。エンジン100は、ターボチャージャ150のタービン152を駆動するために、圧縮ガスがガス貯蔵部から放出され得るように構成されてもよい。これに加えて、またはこれに代えて、圧縮流体は、ガス貯蔵部から燃焼シリンダ120に向けて放出されてもよい。
【0096】
図2に関連して記載された機能が任意であり、図示された全ての機能が組み合わされて提供される必要はないことが、前述の開示の観点から理解されよう。例えば、本開示のエンジンは、図2に図示される機能の全てではなく、いくつかを備えてもよい。例えば、1つのレキュペレータバイパス通路のみが使用されてもよい。別の例として、ターボチャージャが設けられなくてもよく、またはタービンバイパス通路154が設けられなくてもよい。エンジンが前述の複数の部品を備える場合、異なる部品のいずれかまたは全ての動作がまとめて制御されてもよいこと(例えば、レキュペレータ160の温度を上昇させるために、燃焼シリンダ120の出口弁126の閉口の遅延と組み合わせて、高圧レキュペレータバイパス通路163がより多く使用されてもよいなど、1つ以上の部品の動作が1つ以上の他の部品の動作に基づいて制御され得るように)が理解されよう。コントローラは、エンジンパラメータを示す1つ以上の信号に基づいて、エンジンの動作を制御するように構成されてもよい。エンジンパラメータの任意の好適な表示が使用されてもよいことが理解されよう。例えば、表示がレキュペレータの温度である場合、この表示は、レキュペレータ160に接続された温度センサを用いて取得され得るが、レキュペレータ160を流通する作動流体やレキュペレータ160を通過した後の作動流体などの温度変化の表示に基づいて、他の手段を用いて取得されてもよい。
【0097】
それぞれの複数のシリンダが設けられてもよいことも理解されよう。例えば、スプリットサイクルエンジンは、複数の圧縮シリンダおよび/または燃焼シリンダを備えてもよい。コントローラは、異なる全てのシリンダの動作をまとめて制御するように構成されてもよい。例えば、アクティブモードにおいて、燃焼シリンダの動作は、各燃焼ピストンが他の燃焼ピストンからずらされた時間にそれぞれのBDC位置に向かって移動するようにずらされてもよい。同様に、燃焼シリンダの出口弁126のタイミングを制御してエンジン制動モードに切り替える場合、これらのタイミングは、互いにずらされてもよい(例えば、それぞれの燃焼シリンダが、他の燃焼シリンダと異なる時点でエンジンの制動をもたらすように)。圧縮シリンダと燃焼シリンダとの数も、同じである必要はない。例えば、クロスオーバ通路130は、(それぞれの圧縮シリンダからの)複数の入口と、(それぞれの燃焼シリンダへの)複数の出口と、を有してもよい。各入口または出口は、その中を流通する流体の流れを制御するために、それぞれの弁を有してもよい。入口と出口との数は、例えば、5つの圧縮シリンダと3つの燃焼シリンダとが存在し得るように、異なってもよい。
【0098】
図3a-図3dは、エンジン100の各モードにおける動作例を示す例示的なタイミング図を示す。これらのタイミング図は、0°(上死点位置)から180°(下死点位置)まで、そして再び360°/0°までの燃焼ピストン122のサイクルを示す。円形から径方向外側に延在する線は、入口弁124と出口弁126との開閉時間を示す。参照番号1241と1261とは、概して、入口弁と出口弁とのそれぞれの開口を示すために使用されて、参照番号1242と1262とは、概して、入口弁と出口弁とのそれぞれの閉口を示すために使用される。矢印は、各弁の開閉時間を結び付けて、弁がいつ開くか(すなわち、いつ流体がその弁を流通し得るか)を示す。
【0099】
図3aは、アクティブモードでの動作における弁のタイミングを図示している。入口弁124は、TDCのわずかに前にある1241(例えば、0°とTDCの20°手前との間のいずれかの位置)で開く。次いで、入口弁124は、TDCより少し後の1242(例えば、0°とTDCの20°後ろとの間のどこかの位置)で閉じる。次いで、出口弁126は、BDCとTDCとの間であり、通常、TDCよりもBDCに近い位置である、1261で開く。図3aにおいて、これは、約140°から150°で図示される。次いで、出口弁126は、入口弁124よりも長時間開いたままである。次いで、出口弁126は、入口弁124が開くわずかに前に閉じる。図3aにおいて、出口弁は、1241で入口弁124が開く直前である、1262(例えば、TDCの10°から40°手前)で閉じる。したがって、圧縮流体は、1241から1242の間で燃焼シリンダ120に流入する。次いで、燃焼が発生して、これにより、作動流体が膨張して、燃焼ピストン122がTDC位置に向かって移動する。次いで、排出弁126は、1261と1262との間で開く。燃焼ピストン122のTDCからBDCへの移動は、燃焼シリンダ120に残留する燃焼流体を押し出すように(例えば、サイクルが繰り返されて新しい作動流体が燃焼シリンダ120に引き込まれる前に、燃焼流体の大部分が燃焼シリンダ120から排出されるように)作用する。
【0100】
図3bは、エンジン制動モードでの動作における例示的な弁のタイミングの第1セットを図示している。図3bにおいて、開位置/閉位置は、変動するが、それらの固定オフセットは、同じままである。例えば、各弁の開閉は、カムシャフトの回転により、(例えば、開閉が選択された回転相で生じるように)作動されてもよい。したがって、燃焼ピストン122は、弁の開閉間で同じクランク回転角度で移動する。しかしながら、開閉が起こる位置は、変動する。
【0101】
図3bにおいて、入口弁124は、BDCより少し後の(例えば、0°とBDCの40°後ろとの間のいずれかの位置)1241aで開く。次いで、入口弁124は、TDCとBDCとの間であり、通常、TDCよりもBDCに近い位置である1242aで閉じる。図3aは、これがTDCの後ろの20°と40°との間のいずれかの位置であることを図示している。次いで、出口弁126は、TDCとBDCとの間であり、通常、BDCよりもTDCに近い位置である1261aで開く。図3bにおいて、これは、TDCの約50°から70°手前であると図示される。次いで、出口弁126は、入口弁124よりも長時間開いたままである(開口継続時間は、アクティブモードの場合と同じであるが、その位置は、異なる)。次いで、出口弁126は、TDCとBDCとの間の1262a(例えば、TDCの20°から60°手前)で閉じる。したがって、圧縮流体は、1241aと1242aとの間で燃焼シリンダ120に流入する。燃焼ピストン122がTDCに向かって移動することにより、この作動流体は、さらに圧縮される。次いで、排出弁126は、1261aと1262aとの間で開く。燃焼ピストン122のTDCへの移動は、さらに圧縮された流体の一部を燃焼シリンダ120から出口弁126を介して押し出すように作用する。次いで、出口弁126がまだ開いている状態における、TDCの通過後にBDCへと戻る燃焼ピストン122の移動は、燃焼シリンダ120から排出されたさらに圧縮された流体の一部を燃焼シリンダ120に引き戻すように作用する。この引き戻されるさらに圧縮された流体の一部は、次いで、燃焼シリンダ120内で再びさらに圧縮されてもよい。
【0102】
図3cと図3dとは、図3bの開位置/閉位置とわずかに異なる開位置/閉位置を図示している。例えば、弁は、独立して開閉してもよく、この開閉のタイミングは、自由に変更されてもよい(例えば、固定オフセットを必要としない)。例えば、油圧/空気圧作動弁が使用されてもよい。図3cと図3dとの両方において、図3bの弁の開位置と閉位置と(1241a,1242a,1261a,1262a)からの差が示される。
【0103】
図3cにおいて、唯一の差は、出口弁が(1262aではなく)1262bで閉じることである。位置1262bは、開位置1261aにより近い位置にある。したがって、この閉位置は、図3bの閉位置よりもTDCに近い。例えば、コントローラは、燃焼シリンダから排出されて燃焼シリンダに引き戻されるさらに圧縮された流体の量を減少させるために、図3bの位置から図3cの位置に切り替えるように、エンジンの動作を制御してもよい。これは、レキュペレータの温度を調節するために行われてもよい(例えば、より多くのそのような流体が引き戻されると、排出流体の温度が上昇して、そのさらなる圧縮がより高温となるため)。例えば、コントローラは、レキュペレータの温度を調節するために、閉位置を選択するように構成されてもよい。
【0104】
図3dにおいて、4つの位置全てが変化している。入口弁は、1241cで開いて、1242cで閉じて、これらの両方は、図3bにおけるそれぞれの位置(1241aと1242a)よりもBDCに近い。出口弁は、1261cで開いて、1262cで閉じて、これらの両方の位置は、図3bにおける対応位置(1261aと1262a)よりも後ろにある。例えば、コントローラは、燃焼シリンダ120にもたらされる圧縮の量を増加させるために(例えば、入口弁の閉口1242cと出口弁の開口1261cとの間の位置の差を最大化するために)、そのような位置を選択してもよい。例えば、コントローラは、(例えば、出口弁が開くTDCの位置と出口弁が閉じる1262cとの位置の差を最大化するために)より多くの高温の排出流体を燃焼シリンダ120内に引き戻すことにより、エンジン(例えば、レキュペレータ)の温度を上昇させるために、そのような位置を選択してもよい。
【0105】
図3aと図3dとに図示される関連する位置は、基礎となる概念を示すための例であるが、特に限定されるものではないことが理解されよう。正確な開位置と閉位置とは、変動し得て、エンジンの所望の動作条件に基づいて、それらの正確な位置が選択されてもよい。
【0106】
本明細書におけるエンジンの説明は、シリンダ内でピストンのTDC位置とBDC位置との間での往復運動があるエンジンを参照したものであることが理解されよう。これらの例において、燃焼ピストンは、効率的に一次元に移動する(前進と後退)。しかしながら、これは、限定されるべきではないことが理解されよう。例えば、BDC位置とTDC位置との間をピストンが回転様式で移動するワンケル(Wankel)エンジンが設けられてもよい。
【0107】
前述の説明から、図示される例は、単に例示的なものであり、本明細書と特許請求の範囲とに記載されるように一般化、省略、または置換され得る機能を含むことが理解されよう。図面全体を参照して、本明細書に記載のシステムと装置との機能性を示すために、概略的な機能ブロック図が使用されていることが明白であろう。本開示の観点から当業者に理解されるように、本明細書に記載される各例は、様々な異なる方法で実行されてもよい。本開示のいずれの態様の機能も、本開示の任意の他の態様と組み合わされてもよい。例えば、方法の態様は、装置の態様と組み合わされてもよく、装置の特定の部品の動作を参照して説明される機能は、それらの特定の種類の装置を用いない方法で提供されてもよい。さらに、各例の各機能は、他の何らかの機能がその動作に不可欠であると明示されていない限り、組み合わせて説明される機能から分離可能であることを意図するものである。これらの分離可能な機能のそれぞれは、当然、記載される例の他の機能のいずれとも、または本明細書に記載される他の例の任意の他の機能または機能の組み合わせのいずれとも、組み合わされてもよい。さらに、前述されていない同等物や変更も、本発明を逸脱しない範囲で採用されてもよい。
【0108】
本明細書に記載される方法の特定の機能は、ハードウェアで実現されてもよく、装置の1つ以上の機能は、方法工程で実現されてもよい。また、本明細書に記載される方法は、記載される順序で実行される必要はないことが、本開示の観点から理解されよう。したがって、製品または装置を参照して説明される本開示の態様は、方法として実行されることも意図されており、その逆もまた同様である。本明細書に記載される制御方法の態様は、コンピュータプログラムにおいて、またはハードウェアにおいて、あるいはこれらの任意の組み合わせにおいて、実行され得る。コンピュータプログラムとしては、ソフトウェアと、ミドルウェアと、ファームウェアと、これらの任意の組み合わせと、が挙げられる。このようなプログラムは、信号またはネットワークメッセージとして提供されてもよく、コンピュータプログラムを非一時的な形式で格納する有形のコンピュータ可読媒体などのコンピュータ可読媒体に記録されてもよい。ハードウェアとしては、コンピュータと、携帯機器と、プログラマブルプロセッサと、汎用プロセッサと、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)と、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array)と、論理ゲートのアレイと、が挙げられる。例えば、本明細書に記載されるコントローラは、本明細書に記載される方法のいずれか1つに従って動作するようにプロセッサをプログラミングするように構成されるコンピュータプログラム製品を有する汎用プロセッサなどの任意の制御装置により提供されてもよい。さらに、コントローラの機能は、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、論理ゲートの構成、またはその他の任意の制御装置により、提供されてもよい。
【0109】
いくつかの例において、1つ以上のメモリ要素は、本明細書に記載の動作を実行するために使用されるデータおよび/またはプログラム命令を格納できる。本開示の実施形態は、プロセッサをプログラミングして、本明細書および/または特許請求の範囲に記載の1つ以上の方法を実行させるように、ならびに/もしくは、本明細書および/または特許請求の範囲に記載のデータ処理装置を提供するように動作可能なプログラム命令を含む、有形の非一時的記憶媒体を提供する。
【0110】
本開示の他の例と変形とは、本開示の文脈において当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
【国際調査報告】