(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】飼料摂取量を改善する方法
(51)【国際特許分類】
A23K 20/111 20160101AFI20240822BHJP
A23K 20/153 20160101ALI20240822BHJP
A23K 50/30 20160101ALI20240822BHJP
【FI】
A23K20/111
A23K20/153
A23K50/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513886
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2022074366
(87)【国際公開番号】W WO2023031347
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524074781
【氏名又は名称】オレクサ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100166718
【氏名又は名称】石渡 保敬
(72)【発明者】
【氏名】ペータース,ベルナルドゥス ウィナンド マタイス マリー
(72)【発明者】
【氏名】ゾネフェルト,アンティエ ヨハンナ
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
【Fターム(参考)】
2B005EA11
2B005EA12
2B150AA02
2B150AA03
2B150AA04
2B150AA06
2B150DA60
(57)【要約】
本発明は、飼育動物、例えば畜産動物及びペット、並びにヒト、より特にはブタ及び子ブタ、の飼料摂取量を改善する方法を提供する。該方法は、ベンゾカインと、関心のある動物のニーズに合わせて調整されている飼料成分とを含む組成物を提供することに向けられている。該方法はまた、本発明に従う方法における使用の為に適した組成物を提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の形態で飼料を与えることによって飼育動物における飼料摂取量を改善する方法であって、前記組成物が、ベンゾカインと、関心のある動物の特定のニーズに合わせて調製されている飼料成分とを含む、前記方法。
【請求項2】
前記飼料成分が、子ブタ又はブタの前記特定のニーズに合わせて調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ベンゾカインが、固体の、粒子状の形態で前記組成物中に存在する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記飼料成分が、乳製品、繊維及び高品質のタンパク質源を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記飼料が、飼料添加物、例えば、酵素、酸味料若しくは有機酸、プロバイオティクス、植物原性の飼料添加物、若しくは植物性物質、及び/又は毒素結合剤及びそれらの組み合わせ、を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記飼料が離乳期の飼料であり、及び離乳期の乳児動物、好ましくは子ブタ、に対して提供される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物中に存在するベンゾカインの量が、動物1kg当たり、1日当たり0.2~20mgのベンゾカインの投与量を提供するように計算される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記飼料が、ブタ又は子ブタに提供され、及び前記組成物中に存在するベンゾカインの量が、子ブタ又はブタ1頭当たり、1日当たり10~1000mgのベンゾカインを提供するように計算される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ベンゾカインと、飼育動物又はヒトの為の飼料成分と、飼育動物又はヒトの前記特定のニーズに対して調整されたベンゾカインとを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法において使用する為に適した組成物。
【請求項10】
ベンゾカインが、固体の、粒子状の形態で存在する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
飼料が、乳製品、繊維及び高品質のタンパク質源を含む、請求項9又は10に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飼料又は食物の摂量を増加させる方法、及びそれに特に適した組成物に関し、より特には、飼育動物(例えば、畜産動物)、ペット及びヒトの飼料摂取量を増加させる方法、及びそれに適した組成物に関する。該方法は、該飼料にベンゾカインを混合することを含む。
【0002】
本発明は、飼育動物、例えば、畜産動物、ペット及びヒト、より特にはブタ、及び他の乳幼児の畜産動物、の飼料又は食物摂取量を改善することを目的とする。畜産において、動物、特にはブタ、が容易に成長することは経済的な関心事である。本開示において、ブタ、ブタの離乳、ブタの飼料及び子ブタの離乳飼料(weaning feed)が例として説明されるが、本明細書において述べられる特定の事項はまた、他の畜産動物(例えば、ウシ、ヤギ、ヒツジ及びウマ)、ペット及びヒトに対して好適に適用されうる。ブタは、繊維質が少なく且つ十分なタンパク質を含むところの高エネルギー飼料を必要とする。ブタはすぐに大量の飼料を消費する。健康な家畜を飼育及び維持し、成長及び繁殖を最大化し、並びに生産量を増やす為には、離乳から出荷まで、適切な餌とバランスのとれた飼料を与える必要がある。ブタは1日に体重の約4%を食べる為に、1日に必要な必須栄養素、すなわち、水分、炭水化物、脂肪、タンパク質(アミノ酸)、ミネラル及びビタミン、を必要とする。
【背景技術】
【0003】
適切な食事により、体重約50kgまでは1日当たり約0.68kg~0.77kgの体重増加が期待されることができる。その後、1日当たり0.82kg~1.0kgの増量が達成されることができる。豚の飼料の為の原料は、なかんずく以下のものがある:小麦、小麦中力粉、大麦、大麦フラワー、ライ麦、ライ麦中力粉、トウモロコシ、トウモロコシ粉、ジャガイモタンパク質、ビートパルプ、糖蜜、アルファルファの飼料ミール(forage meal)、飼料用ビート、ヒマワリの種子の鱗片、菜種の鱗片、亜麻仁の鱗片、ヤシの実の鱗片、綿実、タピオカ、柑橘類、トウモロコシグルテン、トウモロコシフラワー、トウモロコシ飼料粉、オーツ麦、エンドウ豆、そら豆、大豆鱗粉、菜種鱗粉、アマニ、トウモロコシ穂軸ミックス(CCM:corn cob mix)、ライ小麦、大豆、大豆鱗粉。
【0004】
畜産業の為のブタの食物には、加工されていない限り、糖分の高い食物、ドッグフード、割れたトウモロコシ、ミルク、魚、肉、果物又はジャガイモを含むべきではない。糖分の多い食物は成長速度を低下させ、ミルク、肉及び魚はウイルスを保有する可能性がある。リンゴ、ナシ、アプリコット及びモモの果皮及び種には青酸配糖体が含まれており、噛むとそれが放出されて病気を引き起こす。ジャガイモには天然毒素が含まれており、激しい胃痛を引き起こす場合がある。
【0005】
適切な食物の供給は、ブタの成長段階、及び他の条件、例えば妊娠等、に依存することを理解しておくことが最も重要である。
【0006】
子ブタ、すなわち体重が18kg未満の若いブタ、は、まだ哺乳している間に離乳飼料(クリープ給餌(creep feeding)とも呼ばれる)を通じて固形飼料を摂取させるべきである。食事の必要性は、ブタの体重に応じて日々増えていく。
【0007】
体重18kg~60kgまでの育成ブタ、及び体重60kg~市場体重(およそ100kg以上)までの仕上期ブタは、栄養価が高くタンパク質が多い育成ブタ用飼料から、栄養価が低い仕上期ブタ用飼料に移行すべきである。
【0008】
出生後の数週間において、子ブタは急速に成長するが、3週間以内に、子ブタの栄養要求量は、それを提供する母ブタの能力を上回る。事実、母ブタの乳量は1ヶ月未満でピークに達し、そして次に、徐々に減少していく。この段階で最も重要な観点は、離乳の為の消化器官を準備すること、及び植物起源の成分を主に含む飼料の摂取量である。
【0009】
それ故に、分娩室での離乳前から保育室での離乳後まで、クリープ給餌は子ブタの栄養摂取量を増やし、及び離乳前に固形飼料に慣れさせる為に行われる。クリープ給餌は、子ブタに固形飼料を成功裡に与え、離乳に向けてそれらの消化器系を準備する為に考案されたブタ生産における移行戦略である。母ブタの隣で生後1週間にクリープ給餌を行うことにより、子ブタが固形飼料を食べることを学習することができる。ミルクが食事の大部分を占める為、飼料摂取量は生後2週間において非常に少ない。生理学的に、子ブタはまだ固形飼料を消化する準備ができていない。ここで、摂取される少量の飼料が下記の違いを生む:子豚はミルク以外にも利用できるものがあることを学習し、消化管が刺激されて必要な酵素の生成を引き起こすことによって、未知の物質を消化する。
【0010】
クリープ給餌は離乳体重の増加を保証するものではないが、主な利点は離乳後の飼料摂取量の増加と胃腸管の発育の改善によるものである。離乳期は子ブタにとってストレスの多い時期である故に、クリープ給餌は胃腸管を整え、そして、育児室に入る際の全体的な健康と幸福を向上させることができる。最近の研究では、より高品質のクリープ飼料(creep feed)とその後の離乳期の栄養により、ブタのパフォーマンスが良くなり、そして気分が良くなる。クリープ給餌は、固形食の摂取の為に子ブタの胃腸管を整える。
【0011】
自然界において、母ブタは12週間かけて徐々に子ブタを離乳させる。現在の生産システムにおいて、子ブタは生後21日目から28日目に離乳される。この年齢では、免疫系も消化器系も完全に発達していない為、子ブタはかなり弱い。
【0012】
離乳後1週間の間に飼料摂取量が多いほど、全体的な生育-仕上がりパフォーマンスが良いことが知られている。離乳後最初の週に1日当たり50~100グラムの差があることにより、市場年齢に達するまでの丸1週間を稼ぐことさえできる。しかしながら、子ブタが離乳後1週間の間に1日300グラムの飼料を消費しても、それらの遺伝的な可能性はここで尽きることはない。今日、良質な飼料を適切に使用することにより、1日の飼料摂取量は200~250グラムまで対応することができる。目標は300グラムに達し、更にそれを超えることも可能である。
【0013】
3週目以降、スターター飼料の摂取量は着実に増加する。この段階では成長の可能性が非常に高く、且つ母豚の乳量が減少する故に、補助給餌により、子豚の成長を促進する為に必要な栄養素を提供することができる。
【0014】
離乳は子ブタにとってストレスの多いプロセスである。なぜならば、子豚は母親から引き離され、場合によっては同腹子からも引き離されるからである。子豚は新しい給餌技術と気候を備えた新しい厩舎に移され、他の同腹仔からの子豚と一緒にされる。更なるストレスは、主な飼料源である雌豚の乳が日ごとに入手できなくなることで生じ、雌豚の乳とは組成が大きく異なる固形飼料を摂取せざるを得なくなる。子豚は年を重ねるほど安定し、これらの課題にうまく対処できるようになる。
【0015】
離乳後、飼料摂取量を維持することは、一般的に知られている「離乳ディップ」(weaning dip)を避ける為に最も重要な要素である。
【0016】
離乳後の安定した飼料摂取量は、飢餓状態の子ブタが数日後に過食し始め、子ブタが効率的に消化できない飼料で腸に過負荷をかけることを避ける。腸内の病原菌は未消化の栄養素で繁殖し、それは、しばしば排膿及び浮腫疾病を結果として生じる。
【0017】
その上、幾つかの研究は、離乳直後の子ブタの良好な成長パフォーマンスを有すること、屠畜までのより良いパフォーマンスをまた示すことが実証されている。
【0018】
子ブタが離乳後に食べ続ける為の最善の方法は、前もって準備しておくことである。その場合、子ブタは食べ方を知っており、及び腸は固形飼料をより効果的に消化することができる。それにもかかわらず、腸はまだ発達途中であり、ストレスの多い離乳期を乗り越える為にはサポートを必要とする。離乳期の子ブタの為の飼料は、離乳飼料と同じ高品質の基準を満たさなければならない。
【0019】
米国特許第US7,754234号明細書において、制酸剤と局所麻酔薬とを含む組成物が開示されている。該組成物は、咽頭痛に関連付けられた痛み又は不快感を緩和する為に使用され、それ故に、本発明はまた、咽頭痛に関連付けられた痛み又は不快感を緩和する方法であって、該組成物を経口投与するようにヒトに指示することを含む上記の方法にまた向けられる。本開示は、リドカイン、ベンゾカイン、テトラカイン、又はジクロニンを、デンプンペースト及び任意的に、甘味剤と組み合わせて使用することを記載する。
【0020】
該組成物は、不快感の痛みを和らげることだけに関係しており、同時に栄養価の高い食物を提供することでも、飼料摂取量を増やすことでもない。
【0021】
米国特許第US10,828,272号明細書は、胃腸チューブを通して患者の食道内腔に流動性の局所麻酔薬を挿入することによって、哺乳動物における食物摂取量と食物保持とを促進する方法を開示している。該局所麻酔薬は、アメトカイン、アルチカイン、ベンゾカイン、ブピバカイン、クロロプロカイン、シンコカイン、シクロメチカイン、ジブカイン、ジエトカイン、エチドカイン、ラロカイン、レボブピバカイン、リドカイン、リグノカイン、メピバカイン、ノボカイン、ピペロカイン、プリロカイン、プロカイン、プロパラカイン、プロポキシカイン、QX-222、QX-314、ロピバカイン、テトラカイン、トリメカイン、メントール、オイゲノール、又はテトロドトキシン、サキシトキシン若しくはネオサキシトキシンの安全な医薬製剤であることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本開示は、食物摂取又は食物保持に問題を有する患者の為に有用である。本開示は、農家、繁殖家及びペットの飼い主によって使用されることができる方法ではなく、専門医によって行われる医学的処置に関する。
【0023】
米国特許出願公開第US2020/0376026号明細書は、有効量の治療用粘土を動物に経口投与することによって、動物における効率、成長及びパフォーマンスを改善する方法を開示している。
【0024】
本明細書において使用される用語は、それらの通常の意味に従って使用される。疑義がある場合には、用語の使用は更に下記のように理解されることができる。
【0025】
本明細書において、語「飼料」は、「飼料及び食物」の総称の為に、又は飼料のみの為に使用される。ヒトによる消費のみが意味される場合には、語「食品」が使用される。いずれの語も、該動物又はヒトの日常的な食物摂取において一般的に使用され、及び栄養価を有するところの成分に向けられている。
【0026】
本明細書において、語「クリープ飼料」及び「離乳飼料」は互換的に使用される。それは、乳児動物が母乳でなく固形食物に慣れることを助ける為に特に適合した飼料を云う。この種の飼料は商業的に入手可能であるが、手作業によって作られることもできる。
【0027】
食物又は飼料摂取及び食物又は飼料の保持の促進は、摂食量における増加だけでなく、摂食の1以上の間隔を短くすること、又は摂食に費やす時間を短くし、摂食の頻度を増やすことによって、1日以内の摂食の総量を増やすことをも意味する。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、組成物の形態で飼料を与えることによって飼育動物における飼料摂取量を改善する為の方法であって、該組成物が、ベンゾカインと、関心のある動物の特定のニーズに合わせて調製されている飼料成分とを含む上記の方法を提供することによって、畜産動物の繁殖における結果の改善に寄与する。
【0029】
特には子ブタとブタがスムーズで且つ問題がない離乳期から恩恵を受けうる故に、本方法は特には、子ブタの離乳の為に適している。
【0030】
しかしながら、該飼料成分が関心のある動物又はヒトの消費の為に調整されていれば、本方法はまた、他の飼育動物、例えばペット、の為に、及びヒトの為に好適に使用されうる。
【0031】
本明細書はまた、本明細書に従って、ベンゾカイン及び飼料成分を含む組成物の形態で飼料を与えることによって、畜産動物、例えば、子ブタ又はブタ、子ウシ又は雌ウシ又は雄ウシ、ヒツジ又は子ヒツジ、ウマ又は仔ウマ、の飼料摂取量を改善する方法に向けられている。
【0032】
好ましくは、該飼料成分は、幼児動物、例えば子ブタ、又はブタの特定のニーズに合わせて調整されている。従って、幼児動物、例えば子ブタ、の為に、飼料は好ましくは離乳期の飼料であり、及び離乳期の間、子ブタに与えられる。
【0033】
好ましくは、該ベンゾカインが、固体の形態で、より好ましくは、固体の、粒子状の形態で、該組成物中に存在する。該固体の、粒子上の形態は、ベンゾカインの投与及び貯蔵を容易にする。
【0034】
通常、該飼料は、乳製品、繊維質、良質の蛋白源を含む。
【0035】
それらに加えて、該飼料は、飼料添加物、例えば、酵素、酸味料若しくは有機酸、プロバイオティクス、植物原性の飼料添加物(phytogenic feed additives)、若しくは植物性物質(botanicals)、及び/又は毒素結合剤(toxin binders)及びそれらの組み合わせを、含んでいてもよい。
【0036】
該組成物中に存在するベンゾカインの量が好ましくは、動物1kg当たり、1日当たり0.2~20mgのベンゾカインの投与量を提供するように計算される。
【0037】
該飼料が、ブタ又は子ブタに提供され、及び該組成物中に存在するベンゾカインの量が、子ブタ又はブタ1頭当たり、1日当たり10~1000mgのベンゾカインを提供するように計算される。
【0038】
本開示はまた、本発明に従う方法における使用の為に特に適した組成物に向けられている。上記組成物は、ベンゾカインと、飼育動物又はヒトの為の飼料成分と、該関心のある動物の特定のニーズに対して調整されたベンゾカインとを含む。
【0039】
該組成物中のベンゾカインは好ましくは、投与及び貯蔵を容易にするように、固体の、粒子状の形態で存在する。
【0040】
本開示に従う組成物は好ましくは、乳製品、繊維及び高品質のタンパク質源を含むところの飼料を含む。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、プラセボ摂取量に対する飼料摂取量のパーセンテージを示す。
【
図2】
図2は、8日目のブタについての体重における増加を示す。
【
図3】
図3は、プラセボグループの動物とベンゾカイン含有飼料を与えられたグループの動物とについて、最も軽い動物50%と最も重い動物50%の7日目の成長パーセントのグループ分析の結果を示す。
【
図4】
図4は、豚の飼料変換率を、飼料摂取量当たりの体重増加のパーセンテージとして示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
上記されているように、本明細書は、組成物の形態で飼料を与えることによって飼育動物における飼料摂取量を改善する方法であって、該組成物がベンゾカインと、関心のある動物の特定のニーズに合わせて調製されている飼料成分とを含む上記の方法に向けられている。
【0043】
該飼料成分が関心のある動物又はヒトの消費の為に調整されていれば、本方法はまた、他の飼育動物、例えばペット、の為に、及び更にはヒトの為にでさえ、好適に使用されうる。
【0044】
飼育動物とは、畜産動物とペットの両方が意図される。畜産動物とは、ウシ(雌ウシ及び雄ウシ)、ヒツジ(子ヒツジ)、ブタ(子ブタ)、ヤギ及びウマが意図される。本方法は、畜産動物の成長のどの段階においても飼料摂取量を改善する為に使用されることができ、又は動物の一生の間の決められた且つ限定された期間の間に飼料組成物を添加することによって飼料摂取量を増加させる為に使用されうる。後者の状況は、動物が病気の為に、手術若しくは医療処置の後において、又は他のストレスの多い状況において、食欲が低下している場合に生じうる。その場合、本明細書に従う方法は、ペットの為に、及びヒトにでさえも好適に使用されうる。
【0045】
従って、語「動物の特定のニーズに合わせて調整されている飼料成分は、その時点における、関心のある動物の特定の状況(成長段階及び/又は状態)において、該動物の栄養要求と健康要求との両方に利益をもたらす飼料成分の組み合わせを意味する。
【0046】
離乳後の早い時期、特に離乳後1週間目に、該方法が適用されるときに、結果が特に有益である。
【0047】
本発明者等は、本明細書に記載された方法を使用するときに、子ブタ及びブタがスムーズで且つ問題のない離乳期間から恩恵を受けることを発見し、このことは、改善された飼料変換、及び一般に健康な子豚によって示された。
【0048】
しかしながら、上述されているように、該飼料成分が関心のある動物又はヒトの消費の為に調整されていれば、本方法はまた、他の飼育動物、例えばペットの為に、及びヒトの為に好適に使用されうる。
【0049】
本明細書はまた、本明細書に従う、ベンゾカインと飼料成分とを含む組成物を与えることによって、畜産動物、例えば、子ブタ又はブタ、子ウシ又は雌ウシ又は雄ウシ、ヒツジ又は子ヒツジ、ウマ又は仔ウマ、の飼料摂取量を改善する方法に向けられる。
【0050】
ベンゾカインは局所麻酔薬として知られている。ベンゾカインは水にはほとんど溶けないが、希酸には溶けやすく、エタノール、クロロホルム、及びエチルエーテルには非常に溶ける。ベンゾカインの融点は88~90℃である。
【0051】
ベンゾカインがこの作用に特に効果的なのは驚くべきことであり、なぜならば、別の局所麻酔薬が胃に投与されると食物摂取量を減少させることが報告されているからである(Pharmacology,Biochemistry and Behaviour,Vol 3,p69~74,1975)。他の麻酔薬は、該麻酔薬が口腔内で作用しないようにマスキングする為に、又は嚥下を妨げる為に、又は何らかの他の嫌悪味を引き起こしたりする為に、コーティングを用いて飼料摂取量の行動を改善しうるように思える。そのようなコーティングがないことが、局所麻酔薬を食物と混ぜて投与されたときに該局所麻酔薬の食物摂取量阻害作用について述べた先の結果を説明しうる(前掲書)。驚くべきことに、ベンゾカインにはそのような忌避作用を有しないようである。
【0052】
また、我々の比較実験により、他の局所麻酔薬はベンゾカインの使用により提供される肯定的な結果を提供しないことが示された。
【0053】
本明細書に従う方法において使用される組成物は有利には、固体の形態で、より有利には固体の、粒子の形態で、存在するベンゾカインを含む。ベンゾカインは、該動物の特定の必要性に合わせて調整されていれば、飼育動物の通常の飼料に好適に添加されうることが見出された。ベンゾカインは室温で固体であり、通常、結晶性粒子状の形態の形態で存在する故に、該ベンゾカインはは、固体の形態で通常の動物の飼料に容易に添加されうる。このことにより、農家又はペットの飼い主は投与量を設定することを容易にし、且つ保管することを容易にする。
【0054】
ベンゾカインは、粒子をコーティングすること無しに、飼料成分に添加されうる。
【0055】
状況が望む場合に、ベンゾカインがまた溶液で又は乳化剤の形で飼料成分に添加されてもよいことは言うまでもない。
【0056】
該組成物中の飼料成分は、乳製品、繊維及び高品質タンパク質源を含んでいてもよい。好適な乳製品は、ウェイ、ウェイパウダー、乳糖等である。高品質のタンパク質源は、濃縮大豆タンパク質、ジャガイモタンパク質から得られ、消化性の低いタンパク質源の少量が同時に導入される。これらの成分はまた、ウシ、ヒツジ、ウマの為の組成物に適しているが、関心のある動物の特定のニーズ及び該動物の特定の状況、例えば、離乳期、手術後、医療処置後若しくは医療処置中、病気後若しくは病気中、又は他のストレスの多い状況、に調整されうる。
【0057】
本組成物を他の飼育動物又はヒトに使用するときに、該成分は関心のある動物の種類に応じて調整されるのが適当である。例えば、肉食性のペットの場合には、ベンゾカインに加えて、通常、動物性脂肪とタンパク質とが存在する。ヒトに適用される場合には、通常の何らかの食品成分が使用されることができるが、飲み込みやすく且つ高い栄養価を有する食品成分が好ましい。例えば、ヨーグルトの高エネルギータンパク質シェイク(high-energy protein shakes)にベンゾカインを使用することはヒトの場合には好ましい。なぜならば、ベンゾカインがまた、食物の味又は食感に悪影響を与えないと考えられるからである。固体微粒子のベンゾカインを液体の食物成分、乳化した食物成分又は懸濁した食物成分に使用することは、投与量の設定が容易であるという有利点を有する。
【0058】
離乳期において、繊維が食事の重要な一部となる。消化の悪い繊維質(例えば、リグノセルロース)は、腸を安定させること、腸の発達を助けること、及び腸の通過を早めることに寄与すること、及び病原菌が繁殖する時間をあまり与えないようにすることに役立つことができる。
【0059】
飼料原料は、飼料添加物、例えば、酵素、酸味料又は有機酸、プロバイオティクス、植物原性の飼料添加物若しくは植物性物質、及び/又は毒素結合剤、並びにそれらの組み合わせ、を更に含んでいてもよい。
【0060】
前述されているように、離乳期の飼料は商業的に入手可能であり、及び母乳から固形飼料への移行を改善すると考えられるところの成分を含む。
【0061】
腸を更に安定化させる為に、離乳期の飼料は通常、下記の1以上の飼料添加物が使用されている。
【0062】
酵素。非デンプン性多糖類(NSP:Non-starch-polysaccharides)分解性酵素は粘度を下げ、且つ消化物中の栄養素の利用性を高める。フィターゼはフィチン酸複合体を分解し、並びに、リン及びまたその他の栄養素の利用可能性を高める。
【0063】
酸味料又は有機酸。これらは、胃におけるpH値を上げる為に役立つ。このことにより、タンパク質の分解を増加させ、及びまた、消化物中の細菌量を減少させる。
【0064】
プロバイオティクス。善玉菌(Beneficial bacteria)は腸内細菌叢を安定化させ、「善玉」(good)菌の割合を増やすことによって病原菌を排除する。
【0065】
植物原性の飼料添加物又は植物性物質。植物ベースの物質、例えばエッセンシャルオイル、で構成され、より良い嗜好性による飼料摂取量の増加から、タンパク質消化率の向上及び病原菌との闘いまでの幅広い様々な機能を有する。
【0066】
毒素結合剤。マイコトキシン及びエンドトキシンは、子ブタの健康及び発育に対して有害な影響を与える可能性がある。これらのストレス要因を回避することは、この脆弱な段階で子ブタの健康を維持する為に多くを追加する。
【0067】
本明細書に従う方法は特に、離乳の為に適している。なぜならば、上記で説明されているように、離乳ディップを減少させることが判明したからである。離乳期の飼料はまた、他の乳児動物の為に使用されることができる。本明細書に従う飼料組成物は、離乳後の飼料の為に適していることが更に判明した。
【0068】
ブタ又は子ブタの年齢及び体重に応じて、効果的な飼料摂取量の増加を得る為に適切な投与量が選択される。
【0069】
飼料中に存在するベンゾカインの量は、動物1kg当たり、1日当たり0.2~20mgのベンゾカインの投与量を提供するように計算されうる。ブタ又は子ブタの場合に、これは子ブタ又はブタ1頭当たり、1日当たり約10~約1000mgのベンゾカインに相当する。
【0070】
本発明はまた、本明細書に従って、ベンゾカインと飼料成分とを含む組成物を与えることによって、畜産動物、例えば、子ブタ又はブタ、子ウシ又は雌ウシ又は雄ウシ、ヒツジ又は子ヒツジ、ウマ又は牝ウマ又は子ウマ、ヤギ又は子ヤギ、における飼料摂取量を改善する方法に関する。
【0071】
本発明は、本明細書に従って、ベンゾカインと飼料成分とを含む組成物を提供することによって、ペット、例えば犬又は猫、における飼料摂取量を改善する方法に更に向けられている。
【0072】
上記に示されているように、この方法には、ベンゾカインが該飼料に添加するだけでよいという利点を有する。これにより、畜産動物又はペットにストレスを更に与えること無しに、要を得た投与が提供される。
【0073】
ベンゾカインと本明細書に従う食物成分とを含む組成物の形態で食品を提供することにより、ヒトの食物摂取を改善する場合にも、同様の利点が提供される。ヒトの為に適した食品は、シェイク又はヨーグルトであってもよい。なぜならば、ベンゾカインは、食品の味及び/又は食感に悪影響を与えること無しに添加されることができるからである。
【0074】
本方法は更に、離乳期の子ブタにベンゾカインと飼料成分とを含む組成物を与えることに関する。上記で説明されているように、この方法はブタについての離乳ディップを減少させることが見出された。
【0075】
本発明者は、本発明におけるベンゾカインの作用機序について、完全で且つ確実な説明を有していない。胃及び/又は十二指腸の表面から発生する満腹シグナルがベンゾカインによって鈍化されること、及びこのことにより、動物に食事の終了を先延ばしにさせることがありうる。別の可能性は、ベンゾカインが食物中のある成分から生じる嫌悪又は反発シグナルを減少させ、そして、その成分又はシグナルが通常であればそれ以上の摂取を抑制するか、又は同じ若しくは類似の食物の将来の知覚に影響を及ぼす嫌悪又は反発の感覚を引き起こすということである。しかしながら、作用機序は飼料摂取前、飼料摂取中、又は飼料摂取後の痛みの軽減に基づくものでないと考えられる。なぜならば、試験動物が痛がらなかったからである。
【0076】
食物摂取の文脈において局所麻酔薬の胃への影響に関する幾つかの観察が先行技術に記載されているが、それらの観察から本明細書に開示されている効果を導き出す可能性はない。Uneyama et al.(Am. J.Physiol.Gastrointestin.& Liver Physiol.,Vol 291,pp 1163~1170,2006)は、迷走神経の胃枝(gastric branch)によって中枢神経系にシグナル伝達される、胃壁におけるグルタミン酸の化学感知を記載している。Uneyamaは、この化学感受性のシグナルはリドカインによって遮断されることができることを報告している。しかしながら、食物中のグルタミン酸が過食を誘発することは知られており、従って、Uneyamaの結果は、食物摂取に関して何かあるとすれば、グルタミン酸の化学感覚から生じるシグナルを鈍らせることによる食物摂取量の減少を示唆している可能性がある。Chee et al(Chemical Senses,Vol 30,pp 393~400,2005)は、咽頭に対する局所麻酔薬が摂食及び嚥下に及ぼす影響に対する観察を報告した。嚥下速度が低下すること、嚥下間隔が延長されること、及び嚥下能力が変化しないことが観察され、化学感覚入力が嚥下機能に影響を与えるという本開示の著者等の結論をもたらした。
【0077】
以下の実施例は例示であるが、本開示の方法及び組成物を限定するものでない。
【0078】
実施例
【0079】
実施例1 様々な局所麻酔薬を含む飼料を用いたマウスの離乳
【0080】
実験準備
【0081】
マウスの同腹子が、生後18日目に離乳される。兄弟は2つのグループ(プラセボグループと活性グループ)に分けられ、グループの大きさは7~10匹である。
【0082】
該子には毎日、局所麻酔薬が混ぜられた餌を自由摂取させる。体重が毎日測定される。
【0083】
結果
【0084】
下記の表I~IVにおいて、マウスに、リドカイン(比較例)、プリロカイン(比較例)、ブピバカイン(比較例)及びベンゾカイン(本発明に従う)を投与した結果として、ベースラインに対する比較において14日目に体重が増加した割合として描かれている。該ベースラインは実験の開始時のマウスの体重である。プラセボ及び実験のスコアは、スチューデントのt検定によって統計的に比較される(*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001)。用量はX軸上に示されており、及び兄弟グループの1日当たりのmg数である。
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
結論
【0090】
リドカイン、プリロカイン及びブピバカインは、不活性であるか(低用量)、又はマウスの成長を阻害する(プラセボと比較して)。ベンゾカインは、低用量(25、50及び100mg)で増殖を高めるが、一方、200mgで増殖を阻害する。
【0091】
実施例2 様々な量のベンゾカインを含む飼料を用いた子ブタの離乳
【0092】
実験準備
【0093】
21頭の子ブタからなる6つのグループが処置された。
【0094】
それらには、制御された量の飼料が給餌された(下記の表Vを参照)。
【0095】
【0096】
投与前に、餌ペレットが水中に30分間浸され、そして、ベンゾカイン(0g(3x),5g,12.75g又は17g、豚1匹当たり、1日当たり夫々0,30,75及び100mgの用量に相当)が加えられ、そして混合された。0%のベンゾカインを含む飼料を与えられた子ブタのグループがプラセボグループとして言及される。
【0097】
消費された飼料の量が記録された。
【0098】
子ブタが、1日目(ベースライン)、4日目及び8日目に秤量された。
【0099】
プラセボ摂取量に対する飼料摂取量のパーセンテージが
図1において示されている。
【0100】
図1は、最初の3日間において、おそらくは飼料の新しい味又は腸の鎮静が原因により、ブタの飼料摂取量が最初は減少することを示し、4日目以降、1日当たり30mg及び75mgのベンゾカインを投与されたブタは、おそらく満腹感の低下が原因により、飼料摂取量の増加を示す。
【0101】
図2は、8日目のブタについての体重における増加を示す。各列の上部のパーセンテージは、プラセボグループの豚の体重増加のパーセンテージとして体重における増加を与える。列内の数字は豚の頭数を示す。実験中に6匹の子豚が死亡した。
【0102】
図3において、プラセボグループの動物とベンゾカイン含有飼料を与えられたグループの動物とについて、最も軽い動物50%と最も重い動物50%の7日目の成長パーセントのグループ分析の結果が与えられている。
【0103】
これらの結果は、ベンゾカインを給餌されたグループにおける成長の増加が、体重の軽い動物で主に起こることを示す。このことは、ブタのより均質なグループが得られることを意味する。
【0104】
図4において、豚の飼料変換率は、飼料摂取量当たりの体重増加のパーセンテージとして与えられている。プラセボグループ、すなわちベンゾカインを含まない飼料を与えられたグループ、において、1kgの体重増加(肉増加)の為には約12.8kgの飼料が必要であった。この変換率は、飼料中のベンゾカインの投与量を肉1kg当たり、飼料2.6kgに増やすと改善する。
【0105】
至適投与量は1日当たり75mgであることが判明した。ベンゾカインを処置されたブタの一般的状態が、プラセボグループの一般的状態よりも良好であったことが更に判明した。汚れも少なく、及び下痢も少なかった。
【国際調査報告】