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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】バイパスシリンジ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/135 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
A61B17/135
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513931
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 US2022042656
(87)【国際公開番号】W WO2023034641
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】63/240,413
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/903,768
(32)【優先日】2022-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521358109
【氏名又は名称】バイオライフ、エル.エル.シー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キーン、タルマッジ、ケリー
(72)【発明者】
【氏名】キーン、クレイトン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD35
4C160MM22
(57)【要約】
バイパスシリンジは、血管介入または外科的処置が行われた後に皮膚挿入創傷部位および血管創傷部位からの出血を減少させるように設計された、患者に周方向に巻き付けられる拡張可能または膨張式のブラダまたはバルーンと組み合わせて使用される。バイパスシリンジは、バルーンを予め膨張させ、バンドが患者にどれだけ緊密に巻き付けられているかに基づいてバルーンを弛緩させ、次いで、体積量の流体で膨張させるように設計されている。バイパスシリンジの予備膨張ステップは、バンドの固定または緊密性の変動によって引き起こされる合併症を軽減する。過剰空気の排出ステップまたは制御された圧力膨張ステップと組み合わされた予備膨張ステップは、バンドの固定の変動によって引き起こされる余分な空間を吸収/占有/消費し、固定の変動によって引き起こされる複雑さを低減するのに役立つ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張装置であって、シリンジバレルと、シリンジプランジャシャフトと、シリンジノズルと、シリンジプランジャシールとを備え、前記シリンジバレルが、前記シリンジバレル上の第1の位置で始まり、前記シリンジバレル上の第2の位置で終わる流体バイパスチャネルを備え、前記シリンジプランジャシャフトが前記シリンジノズルに向かって押されたときに、前記シリンジプランジャシールが前記第1の位置と前記第2の位置との間に位置決めされることにより、流体が前記シリンジプランジャシールの周りで前記シリンジプランジャシールの後方の領域まで流れることができるように、前記第1の位置と前記第2の位置との間の距離が前記シリンジプランジャシールの幅よりも大きい、膨張装置。
【請求項2】
前記シリンジバレルが、2つのチャネル開口部において前記シリンジバレルに接続された連続バイパスチャネルを備える、請求項1に記載の膨張装置。
【請求項3】
一方のチャネル開口部が、前記シリンジバレルの総体積の10~65%に対応する点から始まる前記シリンジバレル上の位置に位置し、他方のチャネル開口部が、前記シリンジバレルの総体積の25~80%に対応する点で前記シリンジバレル上の位置に位置する、請求項2に記載の膨張装置。
【請求項4】
前記連続バイパスチャネルが、前記シリンジと一体的に形成される、請求項2に記載の膨張装置。
【請求項5】
複数のバイパスチャネルを備える、請求項1に記載の膨張装置。
【請求項6】
前記複数のバイパスチャネルの一方が、前記複数のバイパスチャネルの他方と流体接触していない、請求項5に記載の膨張装置。
【請求項7】
前記複数のバイパスチャネルのうちの少なくとも一方が、前記複数のバイパスチャネルの他方と流体接触している、請求項5に記載の膨張装置。
【請求項8】
複数の連続バイパスチャネルを備える、請求項1に記載の膨張装置。
【請求項9】
前記チャネル開口部の上に気密シールを形成してバイパスチャネルを形成するための構造をさらに備える、請求項2に記載の膨張装置。
【請求項10】
前記構造が、前記シリンジバレルの上に配置して前記チャネル開口部を覆うための周方向オーバーラップ材料、前記チャネル開口部の上に取り外し可能に接着されてもよい材料、および前記チャネル開口部の上に恒久的に接着される材料からなる群から選択される、請求項9に記載の膨張装置。
【請求項11】
膨張装置であって、シリンジバレルと、シリンジプランジャシャフトと、シリンジノズルと、シリンジプランジャシールとを備え、前記シリンジバレルが、流体を前記シリンジバレルの外側の大気に排出する流体圧力構造を備え、前記流体圧力開放構造が前記シリンジバレル内に孔を備え、前記シリンジバレルの前記孔が、
a.5ml以下の体積を有するシリンジの場合、1/32インチの最小直径を有し、
b.5mlよりも大きい体積を有するシリンジの場合、シリンジプランジャシールの直径の15%の最大直径を有し、
c.前記シリンジバレルの総体積の10~65%に対応する点から始まる前記シリンジバレル上の位置に位置する、
膨張装置。
【請求項12】
前記シリンジバレルが複数の孔を含む、請求項11に記載の膨張装置。
【請求項13】
膨張装置であって、シリンジバレルと、シリンジプランジャシャフトと、シリンジノズルと、シリンジプランジャシールとを備え、前記シリンジバレルが、前記シリンジバレルの総体積の10~65%に対応する点から始まる前記シリンジバレル上の位置に位置する圧力逃し弁を備える、膨張装置。
【請求項14】
前記圧力逃し弁が固定排出圧力弁である、請求項13に記載の膨張装置。
【請求項15】
前記圧力逃し弁が、所望の圧力開放に設定されてもよい可変排出圧力弁である、請求項13に記載の膨張装置。
【請求項16】
前記可変排出圧力弁が圧力インジケータを備える、請求項15に記載の膨張装置。
【請求項17】
膨張装置であって、シリンジバレルと、シリンジプランジャシャフトと、シリンジノズルと、シリンジプランジャシールと、圧力逃し弁とを備え、前記圧力逃し弁が前記シリンジノズルと流体接触している、膨張装置。
【請求項18】
前記圧力逃し弁が固定排出圧力弁である、請求項17に記載の膨張装置。
【請求項19】
前記圧力逃し弁が、所望の圧力開放に設定されてもよい可変排出圧力弁である、請求項17に記載の膨張装置。
【請求項20】
膨張装置であって、シリンジバレルと、シリンジプランジャシャフトと、シリンジノズルと、貫通孔を備えるシリンジプランジャシールとを備え、前記シリンジプランジャシャフトが中空であり、前記シャフトを介して流体を排出するための圧力逃し弁システムを備える、膨張装置。
【請求項21】
前記圧力逃し弁システムが、圧縮機構と、ばねと、シール面とを備える、請求項20に記載の膨張装置。
【請求項22】
前記圧力逃し弁システムが、固定排出圧力弁を備える、請求項20に記載の膨張装置。
【請求項23】
前記圧力逃し弁システムが、所望の圧力開放に設定されてもよい可変排出圧力弁を備える、請求項20に記載の膨張装置。
【請求項24】
前記可変排出圧力弁システムが圧力インジケータを備える、請求項23に記載の膨張装置。
【請求項25】
前記可変排出圧力弁システムが、前記シリンジプランジャシャフトからの前記排出圧力を調整するための構造を備える、請求項24に記載の膨張装置。
【請求項26】
前記圧縮機構が、締め付けられたときに前記ばねをさらに圧縮し、結果として前記シール面を除去するための前記シリンジバレルの内圧がより高くなるねじ締め機構を備える、請求項21に記載の膨張装置。
【請求項27】
膨張装置であって、シリンジバレルと、シリンジプランジャシャフトと、シリンジノズルと、シリンジプランジャシールとを備え、前記シリンジバレルが、前記バレルの底部から10~30%において圧力逃し弁システムを備える、膨張装置。
【請求項28】
前記圧力逃し弁システムが、固定排出圧力弁を備える、請求項27に記載の膨張装置。
【請求項29】
前記圧力逃し弁システムが、所望の圧力開放に設定されてもよい可変排出圧力弁を備える、請求項27に記載の膨張装置。
【請求項30】
圧迫装置であって、圧力を開放する機構と、周方向バンドと、ハウジングとを備え、前記ハウジングが、皮膚創傷および血管創傷に圧力を加えるための膨張可能なブラダを備え、前記ブラダが、患者への使用前に部分的に膨張する、圧迫装置。
【請求項31】
前記膨張可能なブラダが、使用前に、部分的に膨張してユーザに送達されてもよく、またはユーザによって膨張されてもよい、請求項30に記載の圧迫装置。
【請求項32】
前記膨張可能なブラダが、予め膨張した状態をシミュレートするように意図された発泡体または他の材料を含む、請求項30に記載の圧迫装置。
【請求項33】
圧迫装置であって、周方向バンドとハウジングとを備え、前記ハウジングが、皮膚創傷および血管創傷に圧力を加えるための膨張可能なブラダを備え、前記周方向バンドが制限付き伸縮性材料を備える、圧迫装置。
【請求項34】
前記膨張可能なブラダが、前記膨張可能なブラダの内圧が創傷上に直接伝達されることなく十分な止血圧迫を作り出すように膨張するように設計される、請求項33に記載の圧迫装置。
【請求項35】
前記膨張可能なブラダが、非伸縮性バルーンまたは周方向ラップを備える、請求項33に記載の圧迫装置。
【請求項36】
圧迫装置を患者に装着する方法であって、前記圧迫装置が、巻き付けバンドと、前記患者に対して圧迫を行うための膨張式バルーンとを備え、前記方法が、前記バンドを患者に装着して固定するときに、前記バンドの固定の変動を克服するために部分的に予め膨張されたバルーンを利用し、
a.バンドに接続された前記バルーンを、前記バンドを構成している材料を伸張させる点よりも下まで前記バルーンを膨張させる量の流体で部分的に膨張させるステップと、
b.前記バルーンを部分的に膨張させる前または後に、前記患者の身体部分の周りに前記バンドを周方向に巻き付けることによって前記バンドを前記患者に装着するステップと、
c.前記バンドを前記患者の身体部分に固定することによって引き起こされる前記バルーン内の空気圧の増加に起因して、前記バルーン内に生成された空気量に対応する量の空気を前記バルーンから排出するステップと、
d.体積量の空気で前記バルーンを膨張させて、予備膨張ステップなしで達成することができるよりも一貫した力を動脈上に生成するステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、止血、止血を達成する方法、このような方法で使用される装置に関し、具体的には、血管カテーテル法手術を実施した直後の血管の止血に関する。
【背景技術】
【0002】
かつては広範な侵襲的手術を必要とした多くの医療処置は、今日では、動脈または静脈を介して外科用装置または診断用装置を挿入すること(すなわち、血管手術)によって、侵襲性が低い。これらの処置は、従来の処置よりもはるかに安全であり、必要な回復時間が大幅に短い。処置中および処置後に血管内に血餅が形成されるのを防ぐために、患者は抗凝固薬を必要とすることがあり、これはしばしば過剰な出血をもたらす。血管手術後の出血を止めるために、典型的には、創傷に直接圧力が加えられる。この圧力は、皮膚内の創傷の入口点および血管内に生じた創傷の両方にわたって保持されなければならない。
【0003】
このような直接的な圧力は、臨床医によって手動で加えることができるが、多くの場合、圧力は、出血を減少させるかまたは止めるために長時間必要とされ、臨床医の間での圧力印加の一貫性に関する問題がある。臨床医の時間を節約し、一貫性を改善するために、多くの圧迫装置が開発されてきた。このような装置のいくつかは、出血を止めるのに必要な圧迫を生じさせるために、周方向バンドを含む膨張式のブラダまたはバルーンを利用する。まず、バンドが肢部または他の身体部分に巻き付けられ、次いで、ブラダを膨張させて創傷部位に対する圧迫圧力を作り出す。前述のように、圧迫は、皮膚の創傷および皮膚の下の血管の創傷の両方にまで及ばなければならない。
【0004】
最近の試験は、肢部周りのバンドの固定または緊密性の変動が、バルーンが膨張する際に加えられる圧迫に影響を及ぼすことを明らかにした。同じ患者の同じ量の空気を含むより緊密なバンドでは、より緩く適用されるバンドよりも大きな圧迫が生じる。さらに、複数の変動は、バンド取り付けのための訓練を困難で一貫性のない工程にする可能性がある。これらの要因は、標準的な体積膨張止血プロトコルを作成して適用することを困難にする。この問題に対する解決策は、体積膨張の前にバルーンを部分的に膨張させることで見出されている。体積膨張前に緩いバンドが緊密なバンドよりも大きく膨張するように、バンドが体積膨張前に膨張する程度は、バンドがどれだけ緩くまたは緊密に装着されるかに依存する。これにより、臨床医に長時間の高価な訓練手順が必要とされるため、バンドの緊密性が圧迫力に及ぼす影響が軽減される。
【0005】
本発明は、市場に出ている現在の圧迫バンドシステムでは不可能な、患者ごとに両方の創傷に一貫した圧力を生じさせる方法に対処する。これは、バンド上のバルーンを大気圧付近の空気で予め膨張させてバンドの固定の緊密性の変動を補償する機構を作り出すことによって達成される。緊密に適用されたバンドは、緩く適用されたバンドよりもバルーン内の空気が少ない。より大量の空気は、緩く適用されたバンドによって形成される追加の空間を占有する。その後、測定された量の空気を注入して、部位にわたってより均一な圧迫を行うことができる。
【0006】
現在市販されているバンドは、典型的には、膨張するとバルーン内の空気を保持する逆止弁、逆止弁をバルーンに接続するチューブ、患者の肢部周りの適所にバンドを保持するための取り付け方法としてVelcro(登録商標)を使用することが最も多い周方向バンド、および膨張式バルーンを膨張させるためのシリンジで構成される。
【0007】
圧迫は、表面での出血および動脈での出血を止めなければならない。身体から出ない動脈からの出血は、血腫を作り出す。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、一般に、測定された量の空気を送達する前に、バルーンまたは膨張式ブラダ内に空気を送達するためにシリンジを使用して、大気圧付近の空気でバルーンを膨張させることに関する。バルーンまたはブラダは、周方向に巻き付けられて患者に保持される。橈骨止血のための典型的なシリンジは、25mlシリンジである。圧力制御から体積制御への移行は、ブラダもしくはバルーンを膨張させて(血管アクセス手術などの)外科的処置後の止血を改善するための機械的バイパスシステム、または測定された量の空気を送達する前にバルーンを所与の圧力まで加圧するための圧力逃し弁を備えたシリンジを用いて達成することができる。同様のシステムは、逆止弁装置、接続管、または市販のバンド用のバルーンの一部として作成することができる。
【0009】
簡潔には、本発明は、一実施形態において、改善された止血を行うための装置に関し、装置は、連続チャネル、開口部あるいはスリット、または外部部品と接続された間欠的な開口部(孔)を備えたシリンジを含む。孔またはスリットは、プランジャが押し下げられたときに空気がプランジャシールを迂回することを可能にするように位置決めされる。上部孔あるいはスリットの上方および底部孔あるいはスリットの下方では、シリンジは体積量の空気をバルーン内に送達する。シリンジプランジャが上部孔と底部孔との間またはスリットの領域内にあるとき、シリンジは、バルーンからの空気がシリンジ内に押し戻され、プランジャを迂回し、システムから逃げることを可能にする。孔あるいはスリットは、バレルの断面の外半径上の単一の点に沿って位置してもよく、またはバレルの断面の外半径上の複数の点に位置してもよい(連続開口部は、スリットがそれを横方向および周方向の両方に横切るように、シリンジのバレルに沿って斜めに延びるスリットとして現れる。)。さらに、シリンジの基部に伸縮装置を配置してもよく、これを拡張して、シリンジを貫通する孔をシールすることができる。これにより、バルーンをわずかに膨張させ、弛緩させて、過度に緩く装着されたバンドによって引き起こされるバルーンと患者との間の余分な空間を占有することが可能になる。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、シリンジの底部から測定された体積に位置するバレル内に圧力逃し弁を含むシリンジに関する。プランジャが圧力逃し弁の上方にあるとき、シリンジは加圧基準で空気をバルーンに送達し、弁の下方にあるとき、シリンジは体積基準で空気を送達する。これにより、バルーンを圧力に基づいて膨張させて、プランジャが弁の上方にあるときに過度に緩く装着されたバンドによって引き起こされるバルーンと患者との間の余分な空間を占有し、次いで、体積量の空気を弁の下方に送達することが可能になる。圧力逃し弁は、機械的ばね弁、制御されたオリフィスを含む単純な孔、または空気流を制限するためのカバーを含む孔であってもよい。使用される場合、カバーは固体であってもよく、または開口部自体を含んでもよい。
【0011】
特定の実施形態では、バイパスシステムは、逆止弁、接続管またはバルーン自体の一部であってもよい。本明細書で企図される任意のバイパスシステムを使用するために、膨張ステップは、1)圧迫装置を患者の創傷部位に装着し、2)バルーンをわずかに加圧し、3)バルーンを弛緩させて、バンドと患者との間の余分な空間を満たし、次いで、4)部分的に膨張し弛緩したバンドを測定された量の空気で満たす。この手順は、膨張ステップ中にシリンジまたは圧力開放機構の操作を必要とする場合がある。別の実施形態では、所望の圧力が予め設定されたバンドまたはシリンジ上の可変圧力逃し弁を使用することができる。
【0012】
別の実施形態では、膨張式バルーンバンドを使用する方法は、装着前に、またはバンドが患者に装着された後に、しかし、橈骨動脈に開存止血圧迫圧力を加えるように設計された膨張ステップの前に、バルーンを予め膨張させることとすることができる。次いで、計画された膨張ステップの前に、弁をバルーンに通気することによって、バルーンが手首の周りの固定のレベルに基づいて弛緩点まで収縮することを可能にする。その後、測定された量の液体でバルーンを膨張させ、圧迫力を橈骨動脈に加えて、開存止血を行う。予備膨張後の弛緩ステップは、バルーン内の残りの空気がバンドの固定の緊密性の変動を補償することを可能にする。バンドが手首の周りに緊密に固定されている場合、弛緩ステップは、大部分の空気がバルーンから排出されることを可能にするが、緩く装着されたバンドでは、緩く装着されたバンドによって形成された空間のために、バルーンは弛緩ステップ中により多くの空気を保持する。
【0013】
前段落の方法を使用するプロトコルは、患者の手首の周りにバンドを装着することである。バルーンを5mlの空気で膨張させる。シリンジを逆止弁から外し、プランジャをシリンジから取り外し、次いでシリンジバレルを逆止弁に再挿入してバルーンを弛緩させることを可能にする。次いで、シリンジバレルを逆止弁から取り外し、プランジャをシリンジバレル内に再挿入し、プランジャを所望の空気量に設定し、その空気をバルーン内に注入する。このプロトコルは、バイパスチャネルを含むシリンジによって生成される膨張機構をシミュレートすることができる。重要なのは、バルーンが大気圧付近の空気で膨張したままであり、その大気圧付近の空気の量が、バンドの固定の緊密性の一部の変動の主要因となる弛緩ステップである。
【0014】
別の実施形態では、シリンジプランジャは、プランジャに加えられる力を示すために選択されたばね定数を有するばねを使用して改良されてもよい。プランジャシールの直径と関連して、装置は、比例圧力の流体を膨張式バンドに送達する。
【0015】
当業者に向けられた本発明の最良の形態を含む、本発明の完全かつ実施可能な開示が、添付の図面を参照する本明細書に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】典型的な種類の血管アクセスを示す図である。
図2】アクセス部位に対する様々な圧迫の結果を示す図である。
図3】バイパスシリンジの一実施形態の動作を示す図である。
図4】バイパスシリンジの一実施形態の動作を示す図である。
図5】バイパスシリンジの一実施形態の動作を示す図である。
図6】バイパスシリンジの一実施形態の動作を示す図である。
図7】バイパスシリンジの一実施形態の動作を示す図である。
図8】バイパスシリンジの一実施形態の動作を示す図である。
図9】バイパスシリンジの一実施形態の動作を示す図である。
図10】バイパスシリンジの一実施形態の動作を示す図である。
図11】バイパスシリンジの一実施形態の動作を示す図である。
図12】臨床医によって操作可能な予め設定された弁または可変弁とすることができるシリンジのバレル内の圧力逃し弁を含む本発明の一実施形態を示す図である。
図13】臨床医によって操作可能な予め設定された弁または可変弁とすることができるシリンジのバレル内の圧力逃し弁を含む本発明の一実施形態を示す図である。
図14】臨床医によって操作可能な予め設定された弁または可変弁とすることができるシリンジのバレル内の圧力逃し弁を含む本発明の一実施形態を示す図である。
図15】臨床医によって操作可能な予め設定された弁または可変弁とすることができるシリンジのバレル内の圧力逃し弁を含む本発明の一実施形態を示す図である。
図16】シリンジプランジャに組み込まれた圧力逃し弁の一例および使用を示す図である。
図17】シリンジプランジャに組み込まれた圧力逃し弁の一例および使用を示す図である。
図18】圧縮性フィードバックシリンジプランジャ(シリンジバレルなし)の概略図である。
図19】本発明に使用される試験モデルを示す図である。
図20】データ取得システムが接続された図19の試験モデルの他の例を示す図である。
図21】特定の患者を試験するために使用される異なるシリンジおよび設定を示す図である。
図22】典型的な実際の使用の場合、またはTR Band(登録商標)およびStatSeal RAD Disc(登録商標)の場合に、橈骨動脈にわたって加えられる圧迫を示すグラフである。
図23】8mlにおいて1/16インチの孔を備えたシリンジが、未改良のシリンジを超える利点を示すグラフである。
図24】本発明に関連する研究の結果を示す図である。
図25】本発明の代替実施形態を示す図である。
図26】本発明の代替実施形態を示す図である。
図27】バンドの様々な固定におけるシリンジ対バイパスシリンジで生成された圧迫力の差を示すグラフである。
図28図26の完全に膨張したバルーンバンドから除去された空気の圧迫力(lb)および体積(ml)を示す図である。
図29】様々な注入速度でStatSeal RADを含むTR Band(登録商標)によって加えられる力を表すグラフである。
図30】様々な注入速度でStatSeal RADを含むTR Band(登録商標)によって加えられる力を表すグラフである。
図31】StatSeal RADを含むTR Band(登録商標)によって加えられる外力に対する内圧の相関を示すグラフである。
図32】バルーンを1分間膨張させるために使用された8mlの目盛りにおいて1/16インチの孔を備えたシリンジの使用を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで、本発明の実施形態を詳細に参照し、その1つまたは複数の例を以下に示す。各例は、本発明の限定ではなく、本発明の説明として提供される。実際、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本発明において様々な変更および変形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。例えば、一実施形態の一部として図示されるかまたは説明される特徴を別の実施形態で使用して、さらに別の実施形態を得ることができる。以下の実施形態およびその態様は、例示的かつ説明的であり、範囲を限定するものではないことを意図したシステム、ツールおよび方法と共に説明され、かつ示される。様々な実施形態において、他の実施形態は他の改善を対象としているが、上述の問題の1つまたは複数が低減されるかまたは排除されている。
【0018】
したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内に入るこのような変更および変形を包含することが意図される。本発明の他の目的、特徴および態様は、以下の詳細な説明に開示されているか、または以下の詳細な説明から明らかである。本議論は例示的な実施形態の説明にすぎず、本発明のより広範な態様を限定するものではないことを、当業者は理解すべきである。
【0019】
本明細書に記載された例および実施形態は、例示のみを目的としており、それに照らして様々な修正または変更が当業者に示唆され、本出願の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれるべきであることを理解されたい。さらに、本明細書に開示された任意の発明、またはその実施形態の任意の要素あるいは限定は、(個別にまたは任意の組合せで)任意のおよび/または全ての他の要素または限定と組み合わせることができ、または、本明細書に開示された任意の他の発明あるいはその実施形態と組み合わせることができ、全てのそのような組合せは、それに限定されることなく本発明の範囲と企図される。
【0020】
図1は、圧迫が血管内の創傷および皮膚内の創傷における出血を制御しなければならなくなる処置後の止血を制御するために、圧迫を必要とする典型的な血管アクセスを示す図である。図2は、アクセス部位に対する様々な圧迫の結果を示す。圧力が高すぎると動脈/血管を閉塞し、圧力が低すぎると出血または血腫が生じる。理想的な圧迫は、「開存止血」と呼ばれる。開存止血は、皮膚および動脈/血管での出血を止めるのに十分な圧力であり、動脈/血管を圧迫するほどではない。
【0021】
図3図11は、バイパスシリンジ10の一実施形態の動作を示す。図12図15に示すように、本発明による1つのバイパスシリンジ10は、小孔12(または図5図11および図25に示すように複数の孔12および18)がシリンジバレル11内に形成されたシリンジである。孔12は、使用される時にいくらかの空気をバルーン16内に押し込んでバレル11内の孔12から出すために、サイズがノズル13内のオリフィス(ノズル開口部14)と類似する。ノズル開口部14の直径に対するシリンジ孔12のサイズの比は、バルーン16がどれだけ速く膨張するかを決定する。孔11は、シリンジが、シリンジの残りの10~65%の体積の全てをわずかに膨張したバルーンに注入することを可能にするように、シリンジの底部から10~65%に配置されてもよい。一例では、シリンジは、シリンジ上の8mlの目盛りにおいてバレル11内に1/16インチの孔を有することができる。プランジャ19が押し下げられると、プランジャシール15が8mlの目盛りに達する前に、流体が、バレル11内の孔、ノズル13の孔14またはシリンジの先端から出ることができ、(チューブ17を接続することによってバイパスシリンジ10に接続してもよい)バルーン16をわずかに膨張させる。バイパスシリンジ10がバルーン16と連通していない場合、逆止弁35を使用してバルーンの膨張を維持してもよい。ノズル13を通ってバルーン16に流入する空気の量は、バンド(図示せず)が患者にどれだけ緊密に巻き付けられるかに依存する。プランジャシール13が8mlの目盛りを通過すると、空気はもはやバレル11内の孔12から出ることができず、空気はノズル13から出る必要があり、わずかに膨張したバルーン16内に8mlの空気が注入されることになる。8mlは、前のステップで注入された任意の空気に追加される。
【0022】
図5図11および図25に示すように、他の実施形態では、バレル11は、2つの孔12および18などの複数の孔を有してもよい。別の実施形態では、各孔の上で摺動カバー、個々の接着剤または複数のカバーを利用して、臨床医がバルーンに注入される流体の体積を決定することを可能にしてもよい。
【0023】
別の実施形態では、図5図11に示すように、バイパスチャネル20をシリンジ10のバレル11内に位置させて、シリンジが押し下げられたときに空気がプランジャ20を迂回することを可能にしてもよい。平均的なシリンジがバレルの横方向長さの約10%に及ぶプランジャを有すると仮定すると、バイパス開口部の底部はシリンジの底部から10~65%に位置することができ、チャネルの頂部はシリンジの底部から25~80%に位置することができる。例えば、25mlシリンジでは、バイパスチャネル開口部(すなわち、孔12)の一方端は、シリンジのバレル上の2.5~16.25mlに位置することができ、バイパスチャネル開口部(すなわち、孔18)の他方端は、シリンジのバレル上の6.25~20mlに位置することができる。バイパスチャネル20は、プランジャシール15がバイパスチャネル20の下側開口部と上側開口部との間の位置まで押された場合に、空気がプランジャシール15の周りを通過することを可能にする。
【0024】
バイパスチャネル20は、シリンジ上の2つの点を接続するチューブであってもよく、または外側スリーブによって覆われるかまたは接着性ストリップがスリット上に適用されるスリットであってもよい。いずれの方法も、プランジャシールがチャネルまたはスリットの第1の側を通過するまで押し下げられるときに、完全に後退したプランジャが圧力を加えることを可能にする。次いで、シリンジは、プランジャシールがプランジャの第2の側を通過するまで通気する。この時点で、シリンジは残りの体積をバルーン内に送達する。このバイパスチャネルシリンジ10の使用は、前記バルーンの測定された体積膨張の前に、バンドの固定の緊密性の変動を克服するためにバルーンを部分的に膨張させることを可能にする。
【0025】
加圧し、大気圧付近のバルーン内圧まで弛緩させ、最終的に均一な圧迫を行うための体積投与の方法は、シリンジでバルーンを膨張させるステップ、シリンジを取り外すステップ、シリンジからプランジャを取り外すステップ、(プランジャを適所に配置せずに)シリンジバレルを再挿入するステップ、次いで、バルーンを弛緩させるステップによって達成されてもよい。弛緩後、シリンジが取り外され、プランジャが再挿入され、プランジャシールが所望の体積投与量に設定され、次いで、測定された体積がバルーンに注入される。
【0026】
バイパスシリンジは、以下のステップに従って動作する。この例では、底部バイパスチャネル孔は8mlにあり、上部バイパスチャネル孔は15mlにある。カバーは、これらの2つの点の間にチャネルを形成する。
1)バンドは患者に配置される。
2)シリンジプランジャは20~25mlまで引き戻される。
3)シリンジノズルは逆止弁に挿入される。
4)シリンジは押し下げられる。
・15mlを超える圧力制御された予備膨張ステップでは、シリンジは、シリンジを「出る」全ての空気をバルーン内に注入する。シリンジは、このステップ中に加圧空気を収容する。
・15ml~8mlの間のバルーン弛緩ステップでは、シリンジおよびバルーン内の空気は、プランジャシールの周りに逃げ、プランジャを出る。この間にバルーンは弛緩し、その程度は、バンドが患者の周りにどれだけ緊密に固定されているかに依存する。より緩いバンドはバルーンをあまり圧迫せず、バルーンは、工程におけるこのステップの間、より多くの空気を保持する。
・8ml未満の体積制御された膨張ステップでは、シリンジは、全ての空気をバルーン内に移動させる。
5)シリンジは逆止弁から接続解除され、バルーンは弛緩空気+8mlで膨張したままになる。
6)次いで、シリンジを8mlの目盛りより下の通常のシリンジとして使用して、臨床現場で必要なことがあるバルーンの増分変更(膨張または収縮)を行うことができる。
【0027】
チャネルの底部および頂部の垂直位置は変化することがある。例えば、より大きなバルーンは、より小さなバルーンと比較して、最終注入においてより多くの流体を必要とすることがある。これは、チャネルの位置または長さに影響を与える可能性がある。
【0028】
チャネルの長さは変化してもよいが、プランジャシールの幅よりも大きい必要がある。プランジャシールの幅は、シリンジ間で異なっていてもよい。
【0029】
他の実施形態では、外部気密部品と接続されたシリンジバレル11のバレル内の複数の間欠的な開口部または孔が利用されてもよい。間欠的な開口部間の距離は、プランジャのシールよりもシリンジのバレルに沿ってより大きな横方向距離に延びてもよい。間欠的な開口部は、バレルの外半径に沿った単一もしくは複数の点に位置してもよい。
【0030】
他の代替的な実施形態では、シリンジのバレル11上に1つまたは複数の連続開口部が利用されてもよい。連続開口部は、プランジャシール15よりもバレルに沿って大きい横方向距離に延びてもよい。連続開口部は、バレルの外半径に沿った単一の点に位置してもよく、またはバレルの横方向長さに沿ってバレルを周方向に横断してもよい。
【0031】
バレル11の孔は、バレルとカバーとの間に体積を形成するように覆われてもよい。
【0032】
図26に示すように、接着剤または単純なプラスチックラップを用いて(スリットなどの)連続開口部22をシリンジのバレル全体の周りで覆うことができる。
【0033】
他の実施形態では、複数の孔を備えたシリンジは、摺動する外側スリーブを使用して孔の一部分を覆い、可変で体積が最終段階のシリンジを作成することができる。
【0034】
他の実施形態では、図12図18に示すように、バレル11内に圧力逃し弁21を有するバイパスシリンジ10を利用してもよい。圧力逃し弁21は、シリンジが最終体積量をバルーン内へ注入することを可能にするように、シリンジの底部から10~65%に位置してもよい。これはまた、シリンジを使用してバルーンに小さな調整を施すこと、または除去のためにバルーンを収縮させることを可能にしてもよい。
【0035】
圧力逃し弁21は、バルーン内に少量の空気を送達するように設定されてもよく、弁は、シリンジが測定された量の空気をバルーン内に注入することが可能なように位置してもよい。
【0036】
圧力逃し弁21は、特定の患者に対して開存止血を行うために100mgHg付近に設定されてもよい。別の実施形態では、臨床医が設定することができる可変弁を使用してもよく、圧力点インジケータを含んでもよい。
【0037】
圧力逃し弁21は、臨床医によって患者の血圧に基づく圧力に設定するための可変弁であってもよい。可変逃し弁は、シリンジ10のバレル11またはシリンジ10のノズル13に沿った任意の点に実装されてもよく、またはシリンジのプランジャ19に組み込まれてもよい。プランジャ19は開口中心シャフトを有してもよく、それによって空気は圧力逃し弁を通って逃げることができ、圧力逃し弁は、シリンジプランジャの端部のねじ締め機構によって制御されてもよい。臨床医は、弁が開く圧力を予め設定することができ、これはバルーンの内圧を決定し、その設定点は患者の血圧に基づいて決定される。
【0038】
図12図15は、臨床医によって操作可能な予め設定された弁または可変弁とすることができるシリンジ10のバレル11内の圧力逃し弁21を含む本発明の一実施形態を示す。予め設定された圧力逃し弁21がシリンジ10の底部から10%~30%においてシリンジ10のバレル11上に位置する場合、プランジャシール15が圧力逃し弁21を閉じるまで、シリンジ10を使用してバルーン16を内部空気圧設定点まで膨張させることができる。この予め設定された圧力は、ほとんどの患者の圧迫必要性に対応してもよいが、一部の高血圧症または他の臨床的異常値では、追加の圧力を必要とすることがある。次いで、圧力開放制御を行わずに、シリンジの底部を使用して、予め設定された逃し弁よりも大きい空気圧でバルーンを膨張させ、創傷部位の圧迫を増大させることができる。
【0039】
図16図18は、ねじ型シリンジプランジャ19に組み込まれた圧力逃し弁システムの一例および使用を示す。図示のように、プランジャ19は、そのプランジャシール15内に開口部30を有し、プランジャ19内の別の点に出口開口部31を有する。図17に見られるように、空気は、プランジャシール15が下方に押されると開口部30に入り、空気は、プランジャシャフトチャネル33を通過した後に出口開口部31を出る。このような圧力開放システムは、シリンジプランジャシール15とバルーン16との間に、および、それらを含むシステム内の任意の場所に追加されてもよい。この弁は、方法の体積充填部のための閉位置を必要とする場合がある。ねじプランジャが締め付けられると、弁を開くのに必要な圧力が増加する。このシステムは、予め設定されてもよいし、臨床医によって制御される可変システムであってもよい。本明細書で説明する可変システムのいずれも、圧力設定の尺度または表示を含むことができる。
【0040】
さらに別の実施形態では、バンドは、伸張を防止するために利用されてもよい。バンドは、典型的には柔軟な材料(例えば、ビニル)で作られ、製造が容易であり、透明にすることができ、溶接もしくは接着剤によって追加の部品を取り付けることが容易であり、安全で一般に患者にとって快適である。追加の部品は、例えばバルーンまたはVelcro(登録商標)であってもよい。シリンジが係合解除されると、バンドは弛緩する傾向があり、限界に近づくにつれて漸近的に力を受ける。これは、バルーンの形状の変化およびバンドの伸張あるいは弛緩によるものである。隙間なく、または適切に装着されたバンドの場合、処置の最後に全ての空気が除去されたときの力は、バンドが最初に装着されたときよりも小さい。この時点で、両方のバルーンは0mlにおいて膨張しているが、最終力(lb)は初期力(lb)よりも低く、終了時の力(lb)は経時的にわずかに増加する。これは、処置中のバンドの伸張によるものである。
【0041】
バンドは、バンドが適用されるときまたは使用中に伸張を制限する材料で構成されてもよい。さらに、バルーンまたはブラダは、バルーン膨張に関連する背圧を防止するように構成されてもよい。例としては、これらに限定されないが、特大のバルーンまたは制限付き伸縮性材料から作られたバルーンが挙げられる。伸張を防止するのを助けるために補強材料をバンドに追加することができ、または伸張を防止する材料でバンドを作ることができる。
【0042】
本発明のバイパス型プランジャシステムで均一な圧迫力を生成するための別の適用方法は、患者にバンドを装着する前にバルーンをわずかに膨張させることである。バルーンは、製造業者によって供給されるシリンジを用いて膨張されてもよく、または、バルーンは、患者に装着される前に開いたままにするように軟質発泡体の周りに形成されてもよい。バンドは、予め膨張したバルーンを圧縮するように患者に適用される。シリンジは、所望の膨張体積で終わる開口部を有する。シリンジプランジャは、体積膨張点を超えて引き戻され、次いで、逆止弁に挿入されると、バルーンは弛緩することが可能になる。プランジャが開口部の下に押し下げられると、弛緩したバルーンに所望の量の空気が送達される。これにより、患者ごとの圧迫力の一貫性が高まる。
【0043】
さらに別の実施形態では、プランジャを改良して、シリンジによって膨張式バンドに送達される空気圧を測定してもよい。シリンジプランジャは、プランジャが移動することを可能にするばねを利用してもよく、フィードバック機構は、シリンジによって供給される空気圧をユーザに示す。ユーザがプランジャを押す力と関連するプランジャシールの直径は、送達される流体の圧力を決定する。1ポンドの力が1平方インチのプランジャシールに加えられると、1psiが送達される。プランジャを押す力の変化は圧力に比例した変化を有するが、プランジャシールの表面積の変化は、送達される圧力に逆の影響を有する。
【0044】
図18は、圧縮性フィードバックシリンジプランジャ(シリンジバレルなし)の概略図である。図18は、プランジャキャップによって示されるプランジャの頂部に加えられる力を示し、ばねは、キャップに加えられる力の量と一致してキャップが下方に摺動することを可能にする。次いで、シリンジバレル内のプランジャシールは、その力を送達可能な流体圧力に変換する。
【0045】
プランジャの端部は、プランジャの底部に対して、またはプランジャの底部内に摺動してもよい。インジケータの目盛りは、プランジャの上部または底部にあってもよい。プランジャ上の目盛りは、キャップを押す力または送達可能な流体圧力を示すためのものであってもよい。目盛りは、商品の使用に基づく配色であってもよい。上記の概略図は、完成した装置ではなく、アイデアを示すためのものにすぎない。
【0046】
[実施例]
実施例/実験1:試験装置
圧迫を測定するための試験モデル(図19に示す)を作成するために、ロードセルを、橈骨動脈の位置にわたってシリコーン製アームモデルの手首に挿入した。ロードセルを、励起電力およびデータ取得システムに接続した。ロードセルを、力計を用いて較正した。このモデルの目的は、橈骨動脈にわたる圧迫を測定することであった。例えばこの圧迫は、手動、クランプシステムまたは周方向膨張式バンドとすることができる。圧迫試験では、1秒ごとにデータを引き出すようにデータ取得を設定し、グラフのために、分に変換した。データはポンド(lb)で測定され、ポンド(lb)をデータが適用される表面積で除算することによってポンド(lb)/平方インチ(psi)に変換することができた。圧力は、psiを51.7(mmHg/psi)で乗算することによって、(血圧測定に関連付けるための)psiから水銀柱ミリメートル(mmHg)に変換することができる。
【0047】
図19に示す特定の試験モデルでは、30mm×18mm(厚さ3mm)のプラスチック製の正方形をロードセル上に取り付けて、Biolife社から入手可能なStatSeal RAD Disc(登録商標)をシミュレートする。
【0048】
図20は、データ取得システムが接続されたより多くの試験モデルシステムを示す。ロードセル位置にわたる手首モデルの周りのTR Band(登録商標)に留意されたい。
【0049】
図21は、特定の患者を試験するために使用される異なるシリンジおよび設定を示す。
【0050】
実施例/実験2:シミュレートされた実際の処置
図22におけるグラフは、典型的な実際の使用の場合、またはTR Band(登録商標)およびStatSeal RAD Disc(登録商標)の場合に、橈骨動脈にわたって加えられる圧迫を示す。処置後は、ディスクを挿入部位の上に配置する。これは、皮膚および動脈の創傷を覆うのに十分な大きさである。脱落を防止するために、バルーンの中心点インジケータがディスクの中心に来るように、バンドを患者に巻き付けることによってバンドを適所に固定した。バルーンを8mlの空気で膨張させた(膨張は5秒未満で行われるべきである)。バルーンを膨張させている間に、シースを動脈から引き抜いた。
【0051】
バルーンを8mlの空気で約20分間適所に置いたままにした。その時点で、3mlの空気をバルーンから引き出し、バルーンに5mlの空気を残した。これは、注入された空気量と除去された空気量との圧力差に起因して、また、バルーンの材料がその内圧と体積との間に有する非線形関係に起因して、近似的にすぎない。5mlの膨張したバルーンを患者の上にさらに約20分間置いた後、残りの空気を除去した。完全に収縮したバンドは、患者の上にさらに20分間残った。処置中のいずれかの時点で出血または血腫が発生した場合、出血または血腫を制御するために圧迫を増加させるために追加の空気をバルーンに注入して戻した。
【0052】
図22のグラフに見られるように、バンドの装着時に固定の緊密性を変化させることは、バルーンが同じ量の空気で膨張するときに加えられる圧迫に影響を及ぼす。バンドはまた、過度に緊密に装着することができるが、これは、バンドを過度に緩く装着するよりもはるかに一般的ではない。過度に緊密に装着されたバンドのグラフは、適切に装着されたバンドのグラフを上回り、膨張の全てのレベルで加えられた力が、適切に装着されたバンドよりも過度に緊密に装着されたバンドの方が高いことを示している。
【0053】
図22のグラフは、TR Band(登録商標)およびStatSeal RAD Disc(登録商標)を使用する止血のための通常の圧迫シナリオを表す。
【0054】
実施例/実験3:バンド固定の緊密性レベルの決定
隙間のない/適切な、緩い、および非常に緩いバンド固定の定義および区別は、困難であることを証明してもよい。隙間のない/適切な、緩い、または非常に緩いという用語は、適切な測定値ではなく、その時点で行われている試験のセットに対するものである。これらの用語に関連付けられた固定の変動は、膨張ステップ中のポンド(lb)に影響を及ぼす。これらの試験は全て同じモデル上で行われ、関与する患者および臨床医が分析における変数として含まれる場合、固定の問題は悪化する。
【0055】
バンド用のブレスレットは長さが異なり、患者の手首はサイズが異なるため、バンドを適切な緊密性に設定するために臨床医が使用する測定システムを作成する簡単な方法はない。
【0056】
これらの実験では、手首モデルは21cmの円周を有していた。TR Band(登録商標)の長さは24cmであった。Velcro(登録商標)の固定の重なりを測定して、固定のレベルを決定した。重なりが2.3cmを超える場合、締め付けすぎていると決定された。この特定の例では、2.0~2.3cmの重なりが正確な固定量であると決定された。1.5~2.0cmの重なりは緩く、1.5cm未満の重なりは非常に緩かった。
【0057】
バンド固定のための測定システムは、実際の使用にはつながらない。臨床医が各患者の手首を測定し、必要な重なりの量を計算し、次いで、その重なりの量を測定することを考えると、時間的制約のために、また、血液汚れは測定装置での読取りを不明瞭にするため、現実世界では実用的ではない。
【0058】
実施例/実験4:シリンジ内の孔
シリンジのバレルに8mlの目盛りにおいて1/16インチの孔を開けた。空気が注入され、かつプランジャシールが8mlの目盛りを超えるとき、空気は、シリンジの出口から、またはバレルの孔を通って逃げることが可能になる。空気がシリンジを出る場所は、出口孔と側孔との断面比、プランジャが押されている速度、ならびに出口孔および側孔に加えられている外圧を含むいくつかの変数に依存する。シリンジの出口孔はバルーンに接続される。したがって、外圧(すなわち、バンドがどれだけ緊密に装着されるか、手首の形状など)は、シリンジの出口の外圧に影響を与える。
【0059】
図23のグラフは、8mlにおいて1/16インチの孔を備えたシリンジが、未改良のシリンジを超える利点を示す。左端のピークは、未改良のシリンジからStatSeal RAD(登録商標)(TR-SS)を含むTR Band(登録商標)への8mlの空気の注入に対応する。第1の急峻な低下は、バンドからの3mlの空気の除去に対応し、第2の急峻な低下は、バンドからの残りの空気の除去に対応する。第2の急激な低下は、緩いTR-SS(TR-SS Loose)、または非常に緩いTR-SS(TR-SS Very Loose)のデータ系列では見ることができないが、それにもかかわらず、関連する収縮が存在する。右端のピークは、プランジャを20mlの目盛りまで引いて、シリンジの内容物をバンドに押し込むことによって行われる、8mlにおいて1/16インチの孔を備えたシリンジからの空気の注入に対応する。未改良のシリンジに関する手順と同様に、第1の急激な低下は、バンドからの3mlの空気の除去に対応し、第2の急激な低下は、残りの空気の除去に対応する。非常に緩いTR-SS(TR-SS Very Loose)のデータ系列では第2の段階の低下は見られないが、それにもかかわらず、関連する収縮が存在する。
【0060】
隙間なく、または適切に装着されたバンドに使用される型のシリンジからの力(lb)に大きな影響はないが、緩いバンドまたは非常に緩いバンドを使用するときの力が大幅に増加することに留意されたい。隙間のないバンドでは、8mlの初期膨張は力が約33%増加したが、緩いバンドでは、8mlの初期膨張は力が約100%増加した。この試験は、シリンジ内の孔が、初期の収縮したバンドをある量の空気で部分的に満たすことによって、バンド固定の問題の克服に役立つことを実証している。8mlの孔はまた、シリンジが大気圧まで膨張した後に8ml体積の空気をバルーンに注入することを可能にする。この孔の位置およびサイズは変化する可能性があり、カテーテル挿入以外の様々な使用を可能にする様々な結果をもたらす。
【0061】
図23は、シリンジで生成された圧迫力と、バンドの様々な固定において8mlでバレル内に1/16インチの孔を有するシリンジで生成された圧迫力との差を示している。
【0062】
実施例/実験5:テーブル上のバルーン
TR Band(登録商標)をテーブル上に直接配置し、2つの方法を用いて膨張させた。使用した第1の方法は、シリンジ上の8mlの目盛りにおいて1/8インチの孔を備えたシリンジを使用してバンドを膨張させたが、第2の方法は、1/8インチの孔を備えたシリンジでバンドを弛緩させる前に未改良のシリンジを使用してバンドを膨張させた。この研究は、体積注入の前にバンドを加圧する際の2つの方法の有効性を比較するために行われた。
【0063】
第1の方法は、バンドをテーブルに直接置き、1/8インチの孔を備えたシリンジでバンドを膨張させることによって行った。1/8インチの孔を備えたシリンジのプランジャを20mlまで引き、シリンジのノズルをバンドに挿入し、プランジャのシールが孔の上方約2mlになるまでシリンジをゆっくりと押し込んだ(すなわち、プランジャは約10mlにあった。)。次いで、シリンジをバンドから取り外した。バンドを弛緩させ、次いで、未改良のシリンジを用いて空気の全てを除去することによってバンド内の空気の体積を測定した。
【0064】
第2の方法は、バンドをテーブル上に直接置き、未改良のシリンジで膨張させ、1/8インチの孔を備えたシリンジを使用して通気することによって行った。未改良のシリンジのプランジャを6mlまで引き、シリンジのノズルをバンドに挿入し、シリンジを完全に押し込んだ。未改良のシリンジを取り外した。1/8インチの孔を備えたシリンジのプランジャを孔の上方に引き(すなわち、8mlより上方に引く)、孔を備えたシリンジのノズルをバンドに挿入した。バンドが大気圧と平衡になるまで排気し、シリンジを取り外し、バンドを弛緩させた。バンド内の空気の体積は、未改良のシリンジを使用して測定した。
【0065】
研究の結果を図24の表に示す。第2の方法は、第1の方法を使用した受動的な膨張と比較して、空気が第2の方法によってバルーン内に押し込まれた場合、弛緩したバンド内にかなり多くの空気が残ることを示した。これは、弛緩ステップの前に未改良のシリンジまたは未改良の模擬シリンジを用いた加圧予備膨張ステップの利点を明らかにする。この試験は、バンドの固定の変動をさらに克服するために止血用のバンドをプライミングする予備膨張ステップの使用を示す。予備膨張の結果、4.8mlもの空気が弛緩したバンド内に残り、これに対して、孔を備えたシリンジを使用して予備膨張させる場合は2.8mlになった。加圧された予備膨張バルーンは、弛緩したバルーンからの71.4%増加した同伴空気を含んでいた。
【0066】
図24の表は、1/8インチの孔を有するシリンジで膨張させた後と、未改良のシリンジで膨張させ、かつ1/8インチの孔を有するシリンジで弛緩させた後との、テーブル上に置かれた弛緩バルーンバンドからの同伴空気の差を示す。
【0067】
実施例/実験6:バイパス
5mlを超える空気をバルーンに押し込み、次いで、バルーンを弛緩させるシリンジの代替実施形態を、バンドがモデルまたは患者にどれだけ緊密に固定されたかに基づいて作成した。シリンジは、バルーンを加圧し、空気がプランジャを迂回して大気に排出することを可能にし、最後に一定量の空気をバルーンに送達するように変更された。
【0068】
図25に示すこの変更されたシリンジを作成するために、8mlおよび15mlにおいてTR Band(登録商標)シリンジのバレルに2つの1/8インチの孔を開けた。小さなプラスチックチャネルをシリンジのバレルの外側にエポキシ化して、空気または別の流体が通過することができる2つの孔の上に気密チャネルを形成した。プランジャシールが両方の孔の上方にあるとき、気密機構が形成され、プランジャが押し下げられると、シリンジは流体を移動させる。プランジャシールが孔の間にあるとき、空気を、孔およびチャネルを通ってシールの周りで大気中に排出することができる。プランジャが底孔の下に来ると、シリンジは、底孔の位置に応じてある量の空気/流体を移動させる。
【0069】
図26に示すように、シリンジの側面にスリットを作成し、接着テープ(ダクトテープなど)でスリットを覆うことによって、別の代替のバイパスシリンジを作成した。これにより、シリンジバレルの周りに接着剤または収縮ラップを使用して容易に製造することができるシリンジのバレル内にバイパスチャネルを形成した。
【0070】
本発明のバイパスチャネルシリンジは、バンドが非常に緩く固定されている場合に、1/16インチの孔のみを備えたシリンジに勝る利点を有する。バイパスシリンジと未改良のシリンジを比較する研究では、非常に緩いバンドを使用した「実施例/実験4:シリンジ内の孔」に記載された手順に従って、約2ポンド(lb)のピーク力が得られ、緩いバンドの使用に対応するピーク力とほぼ同一であり、1/16インチの孔を備えたシリンジを分析する研究の非常に緩いバンドの試験におけるピーク力の2倍であった。この比較は、バイパスシリンジの反復を使用することによって、バンドの装着が緩すぎることに起因する血腫または出血の危険性をほぼ完全に排除することができることを示している。
【0071】
図27のグラフは、バンドの様々な固定におけるシリンジ対バイパスシリンジで生成された圧迫力の差を示している。
【0072】
図28の表は、図26の完全に膨張したバルーンバンドから除去された空気の圧迫力(lb)および体積(ml)を示す。
【0073】
上記の実験では、「非常に緩い(Very Loose)」バンドはモデル上で非常に緩く、通常のシリンジから膨張した8mlの空気はモデル内のロードセルに圧迫力を加えなかったが、8mlバイパスシリンジから注入された11mlの空気は、ロードセルに対して1.6ポンド(lb)の圧迫力を生成するのに十分な空気であった。バンドが隙間なく装着されたとき、バルーンに対する初期圧迫力は、モデルに対して緊密になることから、8.8mlの空気のみが除去されたので、バルーンに過剰な量の空気が注入されるのを防止した。
【0074】
実施例/実験7:圧力逃し弁
バンドの内圧が強すぎる場合に大気に排出されるように、圧力逃し弁をシリンジに挿入した。圧力逃し弁は、シリンジ、ノズル、チューブ、逆止弁またはバルーンのどこにでも接続することができる。
【0075】
異なる固定レベルのバンドに対する逃し弁の機能の態様、および弁の注入速度に対する弾性の度合いを試験するために、圧力逃し弁を備えたシリンジをシリンジのノズルに取り付け、TR Band(登録商標)ノズルを圧力逃し弁の反対側に取り付けた。実験の最初の部分は、シリンジのプランジャを20mlまで引き、空気を隙間のないバンドおよび緩いバンドに3つの注入速度で直接注入することによって行った。実証されているように、隙間のないバンドおよび緩いバンドの両方が、ロードセルにわたって同様の圧迫力(lb)を生成し、全ての試験において、圧力逃し弁を大気へ通気させた。膨張の間に、バンドを完全に収縮させ、静置させた。注入は、それぞれグラフの左、中央および右のピークに対応する低速、通常および高速の注入速度で行った。この研究は、シリンジのノズル内に圧力逃し弁を実装することによって、バンドの固定および注入速度の両方が膨張の工程変数として克服されることを実証した。ロードセルにかかる力(lb)は他の試験よりも高いが、これは、正しく較正されたかまたは設計された圧力逃し弁を使用することによって補正することができる。さらに、可変圧力逃し弁を使用することができた。
【0076】
より多くの空気が隙間のないバンドよりも緩いバンドに挿入されたため、隙間のないバンドおよび緩いバンドは同様の圧力を生成することができた。隙間のないバンドの平均膨張量は13.4mlである一方で、緩いバンドの平均膨張量は、各バンド固定の3回の膨張にわたって16.4mlであった。緩いバンドを、隙間のないバンドよりも20.6%多い空気で膨張させて、ロードセルに対して同様の力を生じさせた。緩いバンドは、隙間のないバンドよりも圧力膨張とともにわずかに小さい力(lb)を生じたことに留意されたい。
【0077】
研究の2回目の反復は、緩いバンドのみを使用し、極端な注入速度を含んでいた。極端な注入試験では、バンドが適切に膨張しなかったため、データは以前の試験と一致しなくなった。これは、極端な注入がシリンジノズル内のオリフィスを圧倒し、逃し弁による流体の早期放出を引き起こすシリンジのバレル内の圧力を生じたために起こった。これにより、バルーンに注入される空気が少なすぎ、グラフに示されているように、ロードセルにかかる力が少なすぎた。これは、実際かつ知覚される膨張速度が、バンドを膨張させる技術者に依存する可能性があることを実証している。しかし、注入速度は患者への実際の使用で予想される速度を超えていたので、これが圧力逃し弁シリンジの問題になることは予想されない。第2に、このような極端な速度膨張が行われたとしても、圧力逃し弁の不具合はバルーンの過膨張を防止し、患者に過圧迫による損傷の危険性をもたらさない。
【0078】
図29および図30のグラフは、様々な注入速度でStatSeal RADを含むTR Band(登録商標)によって加えられる力を表す。非常に速い注入速度におけるデータのブレイクポイントに留意されたい。
【0079】
実施例/実験8:バルーン内部の圧力
シリンジを、圧力計マノメータおよびStatSeal RADを含むTR Band(登録商標)に取り付けた。バルーンをマノメータの圧力読み取り値まで膨張させ、シリンジを逆止弁から迅速に接続解除した。この試験の目的は、ロードセルに対する内圧対圧迫力(lb)の影響を実証することであった。
【0080】
マノメータが所望の圧力を読み取るまでバンドを膨張させ、その時点でバンドへの接続を切断した。バンドを約1分間弛緩させ、次いで、バンドを1分間完全に収縮させた。この手順は、バルーンを1psi、2psi、3psi、4psiおよび5psiの初期内圧まで膨張させるように実施した。これらの反復は、グラフ上のピークとして表され、1psiの内圧が左端のピークに対応し、5psiの内圧が右端のピークに対応する。2psi~3psiの内圧が、開存止血のために使用されてもよいが、他の圧力も許容可能であることが見出された。この研究はまた、バンドが所与の体積よりもむしろ所与の圧力まで膨張する場合に、バンドに力を加えるための固定に対するより多くの依存が取り除かれることを実証する。ここでも、緩いバンドがロードセルに及ぼす圧迫力(lb)が、より低かったことに留意されたい。
【0081】
グラフでは、各試験についてロードセルにわたる圧縮の継続的な減少に留意されたい。これは、バルーン/弁からの空気漏れではなく、バルーンおよびバンドの伸張および弛緩によるものである。これはまた、バルーンの内部空気圧にも影響を及ぼし、バルーンを初期圧力まで膨張させて臨床使用をシミュレートするためにのみ試験を実行した理由である。
【0082】
図31のグラフは、StatSeal RADを含むTR Band(登録商標)によって加えられる外力に対する内圧の相関を示す。左端のピークは1psiと相関し、後続の各ピークは内圧の1psiの増加を有する。バンドの隙間のない固定と緩い固定との間にはほとんど違いがないことに留意されたい。
【0083】
実施例/実験9:比較評価
下方にStatSeal RADを含むTR Band(登録商標)をアームモデルに隙間なく/適切に取り付け、通常のTR Band(登録商標)シリンジからの8mlの空気で1分間膨張させ、したがって空気の全てをバルーンから除去した。図32に示すように、8mlの目盛りにおいて1/16インチの孔を備えたシリンジを使用して、バルーンを1分間膨張させた。その後、バルーンを1分間収縮させた。次に、バイパスシリンジを使用し、次いで最後にバルーンを2.5psiまで膨張させた。
【0084】
改良されたシリンジは、一般に、通常のシリンジよりも性能が優れており、最も安定した実施物は内圧シリンジである。膨張方法がバンド固定の緊密性による影響を受けたとしても、適切に固定されたバンドは、緩く装着されるバンドよりも約33%多い力(lb)を橈骨動脈にわたって生成する。圧力制御バルーンバンドでさえ、追加の操作を必要とする場合があり、したがって、シリンジのバレルの底部には圧力制御されない部分が必要である。
【0085】
ここでも、バイパスシリンジは、臨床現場において1回の部分収縮ステップとそれに続く完全収縮で機能するバンドの全ての固定レベルの力プロファイルを作成した。しかし、圧力制御シリンジと同様に、バルーンを操作するためにシリンジの底部が必要になる。
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【国際調査報告】