(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】医療用ウォータージェット及び医療用システム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/3203 20060101AFI20240822BHJP
A61M 1/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61B17/3203
A61M1/00 161
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514084
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 CN2022114121
(87)【国際公開番号】W WO2023030082
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】202111008949.2
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524078745
【氏名又は名称】藍帆外科器械有限公司
【氏名又は名称原語表記】BLUESAIL SURGICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】1-2 F, Building 2, Lane 500, Furonghua Road, Pudong New Area, Shanghai 201321 China
(74)【代理人】
【識別番号】100134636
【氏名又は名称】金高 寿裕
(74)【代理人】
【識別番号】100114904
【氏名又は名称】小磯 貴子
(72)【発明者】
【氏名】丁 偉江
(72)【発明者】
【氏名】楊 晟華
【テーマコード(参考)】
4C077
4C160
【Fターム(参考)】
4C077AA26
4C077CC02
4C077DD19
4C160FF10
4C160MM32
(57)【要約】
本開示は、医療用ウォータージェット及び医療用システムを提供する。医療用ウォータージェットは、ノズルとノズルパイプとを含み、ノズルは複数の噴出孔を含み、ノズルパイプは、流入端と、流出端と、医療用液体が流れる空間を提供するように構成される内部空洞とを含み、ノズルパイプの流入端は、医療用液体が流れ込むように構成され、ノズルパイプの流出端は複数の噴出孔と連通して、医療用液体を複数の噴出孔から噴射する。該医療用ウォータージェットは、複数の噴出孔による選択的分離を実現でき、従来の単一噴出孔による分離に比べて、分離対象の柔軟組織が複数の噴出孔のジェットの衝撃領域から逃げにくく、柔軟組織の切断及び管腔系弾性組織との分離を相対的に固定して完成することができ、ウォータージェットの組織を選択的に分離する性能を向上させ、医療用ウォータージェット切断の手術効率を向上させ、手術操作を簡略化し、さらに噴出孔が塞がれるとウォータージェットが動作できないという問題を解決することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入端と、流出端と、医療用液体が流れる空間を提供するように構成される内部空洞とを含み、前記流入端が前記医療用液体が流れ込むように構成されるノズルパイプと、
複数の噴出孔を含み、前記複数の噴出孔が前記ノズルパイプの流出端と連通し、且つ前記複数の噴出孔が、前記流出端を通過する前記医療用液体を噴射するように構成されるノズルとを含む医療用ウォータージェット。
【請求項2】
前記ノズルは、多孔サブノズルを含み、前記多孔サブノズルに前記複数の噴出孔が開けられる、請求項1に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項3】
前記ノズルは、複数の単孔サブノズルを含み、前記複数の噴出孔の少なくとも一部の前記噴出孔は、それぞれ前記複数の単孔サブノズルに開けられる、請求項1~2のいずれか一項に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項4】
前記ノズルパイプの流出端はブラインド端であり、前記ブラインド端の少なくとも一部は前記ノズルとして用いられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項5】
前記ノズルパイプの流出端はブラインド端であり、前記ノズルは前記ノズルパイプの前記ブラインド端に配置される、請求項2又は3に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項6】
前記ノズルパイプは、両端が開口するカニューレであり、前記ノズルは、前記ノズルパイプの流出端に固定され、且つ前記ノズルは前記ノズルパイプの流出端に直接又は間接的に密封接続される、請求項2又は3に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項7】
吸引用外部パイプをさらに含み、前記吸引用外部パイプは前記ノズルパイプの外側に套設され、前記ノズルパイプの外壁と前記吸引用外部パイプの内壁との間の隙間空間は吸引用通路として用いられる、請求項6に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項8】
前記吸引用外部パイプの内径は3mm~7.6mmであり、前記吸引用外部パイプの外径は4mm~8mmであり、
前記ノズルパイプの内径は1.5mm~5mmであり、前記ノズルパイプの外径は2mm~6mmであり、
前記噴出孔の直径は0.05mm~0.15mmである、請求項7に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項9】
前記複数の噴出孔は均一に設置される、請求項1~8のいずれか一項に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項10】
前記複数の噴出孔における隣接する2つの噴出孔の中心間距離は0.4mm~4.0mmである、請求項1~9のいずれか一項に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項11】
前記複数の噴出孔から噴射される前記医療用液体のジェット流速は50メートル/秒~100メートル/秒である、請求項1~10のいずれか一項に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項12】
前記ノズルは、金属、宝石、プラスチックのうちの一種又は複数種の材料を含み、
前記ノズルパイプは、金属、プラスチックのうちの一種又は複数種の材料を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項13】
前記ノズルパイプに固定されて密封接続され、前記ノズルは、前記嵌合ヘッドを介して前記ノズルパイプに接続される嵌合ヘッドをさらに含み、
前記嵌合ヘッドの流出端にザグリ溝が設けられ、前記ノズルは前記嵌合ヘッドの前記ザグリ溝内に設置され、前記ザグリ溝の側壁は前記ノズルを包み、前記複数の噴出孔、前記嵌合ヘッド及び前記ノズルパイプは、前記ノズルパイプに平行する軸方向に順に連通する、請求項6~8のいずれか一項に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項14】
前記ノズルは、前記ノズルパイプの流出端の内側に密封固定される、請求項6に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項15】
両端が開口する保護スリーブをさらに含み、
前記ノズルパイプの流出端に第1ザグリ溝が設けられ、前記保護スリーブは前記ノズルパイプの前記第1ザグリ溝に嵌め込まれ、前記保護スリーブの流出端に第2ザグリ溝が設けられ、前記ノズルは前記保護スリーブの前記第2ザグリ溝に嵌め込まれ、前記複数の噴出孔、前記保護スリーブ及び前記ノズルパイプは、前記ノズルパイプに平行する軸方向に順に連通する、請求項6に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項16】
前記ノズルパイプの流出端はブラインド端であり、前記ノズルは前記ノズルパイプの前記ブラインド端に配置され、
前記ノズルパイプの前記ブラインド端は、1つのブラインド端表面と、前記ブラインド端表面から突出した第1サブ空間と前記ブラインド端表面から凹んだ第2サブ空間とを含む複数の階段孔とを含み、前記ノズルに含まれた複数の単孔サブノズルにおける各単孔サブノズルは、前記複数の階段孔における各階段孔の第1サブ空間に対応して嵌合される、請求項3又は5に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項17】
支持スリーブをさらに含み、
前記ノズルパイプの流出端は階段構造として設置され、前記支持スリーブは前記ノズルパイプの前記階段構造の形状にマッチングし、且つ前記支持スリーブは前記ノズルパイプの前記内部空洞に伸び込み、前記ノズルは前記支持スリーブの流出端に固定して接続され、
前記階段構造、前記支持スリーブ、前記ノズルが接続される一体構造の外側の空間の一部は射出成形領域として用いられる、請求項6に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項18】
ハンドルをさらに含み、前記吸引用外部パイプの前記ノズルから離れる側は、前記ハンドルに固定して接続される、請求項7又は8に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項19】
吸引用接続パイプをさらに含み、前記吸引用接続パイプは、前記吸引用外部パイプの前記ノズルから離れる端部と連通する、請求項7又は8又は18に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項20】
噴射接続パイプをさらに含み、前記噴射接続パイプは、前記ノズルパイプの前記ノズルから離れる端部と連通する、請求項7又は8又は18又は19に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項21】
前記複数の噴出孔は、対象組織を選択的に分離するために前記医療用液体を噴射するように構成される少なくとも2つの前記噴出孔を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載の医療用ウォータージェットと、
前記医療用液体を提供するように構成される液体供給ユニットと、
前記医療用液体に圧力を印加して前記医療用液体を前記ノズルパイプの前記内部空洞に流入するように構成される圧力ポンプと、を含む、医療用システム。
【請求項23】
排水タンクをさらに含み、
前記医療用ウォータージェットは、吸引用外部パイプをさらに含み、前記吸引用外部パイプは前記ノズルパイプの外側に套設され、前記ノズルパイプの外壁と前記吸引用外部パイプの内壁との間の隙間空間は吸引用通路として用いられ、
前記排水タンクは前記吸引用外部パイプと連通する、請求項22に記載の医療用システム。
【請求項24】
負圧吸引機をさらに含み、
前記負圧吸引機は前記排水タンクに接続される、請求項23に記載の医療用システム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
あらゆる目的のために、本願は、2021年8月31日に提出された中国特許出願第202111008949.2号の優先権を主張しており、ここで、上記中国特許出願に開示されている全内容が本願の一部として援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示の実施例は、医療用ウォータージェット及び医療用システムに関する。
【背景技術】
【0003】
今のところ、癌は現在の医学ではまだ治すことができない重大な疾患の一つである。いくつかの癌に関する統計データによれば、様々な癌の種類において、肝臓癌の発症率は第5位であり、死亡率は第2位である。肝臓癌の高発症率と死亡率は、現在依然として有効的で、標的を絞った治療手段に欠けていることを示している。
【0004】
肝臓癌の治療手段は、外科手術治療、局所アブレーション、経カテーテル動脈化学塞栓術、放射線治療及び全身治療などを含み、ここで、外科手術治療は依然として肝臓癌を治療するための最優先の方法である。
【0005】
外科手術治療の重要な操作ステップは、靭帯を切離して肝臓を解放することと、血管と胆管の流入(第1肝門)を遮断することと、肝臓を切断することと、血管と胆管の流出(第2肝門、第3肝門)を遮断することと、完全に止血した後に閉腹することとを含む。外科手術は感染、出血、胆汁漏出、肝不全などの合併症を引き起こす可能性もあり、術後5年生存率及び肝癌死亡率に深刻な影響を与える。重要なステップの操作難度、時間消耗、合併症への影響から見ると、肝臓切断は最も注目に値する。
【0006】
現在、外科手術治療における肝臓切断手段は、主に3つの種類に分けられ、十数種の具体的な方法があり、たとえば、よく採用される方法は、(1)肝実質を切離し、血管を温存することと、(2)肝実質を分離し、血管と胆管を閉鎖して切断することと、(3)肝実質の切除面を凝固し、メスで切除することとを含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の少なくとも一実施例は、医療用ウォータージェットを提供し、ノズルとノズルパイプとを含み、ノズルパイプは、流入端と、流出端と、医療用液体が流れる空間を提供するように構成される内部空洞とを含み、ノズルパイプの流入端は、医療用液体が流れ込むように構成され、ノズルは、複数の噴出孔を含み、複数の噴出孔がノズルパイプの流出端と連通し、且つ複数の噴出孔が、ノズルパイプの流出端を通過する医療用液体を噴射するように構成される。
【0008】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による医療用ウォータージェットにおいて、ノズルは多孔サブノズルを含み、多孔サブノズルに複数の噴出孔が開けられる。
【0009】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による医療用ウォータージェットにおいて、ノズルは複数の単孔サブノズルを含み、複数の噴出孔の少なくとも一部の噴出孔は、それぞれ複数の単孔サブノズルに開けられる。
【0010】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による医療用ウォータージェットにおいて、ノズルパイプの流出端はブラインド端であり、ブラインド端の少なくとも一部はノズルとして用いられる。
【0011】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による医療用ウォータージェットにおいて、ノズルパイプの流出端はブラインド端であり、ノズルはノズルパイプのブラインド端に配置される。
【0012】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による医療用ウォータージェットにおいて、ノズルパイプは両端が開口するカニューレであり、ノズルは、ノズルパイプの流出端に固定され、且つノズルがノズルパイプの流出端に直接又は間接的に密封接続される。
【0013】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による医療用ウォータージェットは、吸引用外部パイプをさらに含み、吸引用外部パイプはノズルパイプの外側に套設され、ノズルパイプの外壁と吸引用外部パイプの内壁との間の隙間空間は吸引用通路として用いられる。
【0014】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による医療用ウォータージェットにおいて、吸引用外部パイプの内径は3mm~7.6mmであり、吸引用外部パイプの外径は4mm~8mmであり、ノズルパイプの内径は1.5mm~5mmであり、ノズルパイプの外径は2mm~6mmであり、噴出孔の直径は0.05mm~0.15mmである。
【0015】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による医療用ウォータージェットにおいて、複数の噴出孔は均一に設置される。
【0016】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による医療用ウォータージェットにおいて、複数の噴出孔のうちの隣接する2つの噴出孔の中心間距離は0.4mm~4.0mmである。
【0017】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による医療用ウォータージェットにおいて、複数の噴出孔から噴射される医療用液体のジェット流速は50メートル/秒~100メートル/秒である。
【0018】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による医療用ウォータージェットにおいて、ノズルは、金属、宝石又はプラスチックのうちの一種又は複数種の材料を含む。
【0019】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による医療用ウォータージェットにおいて、ノズルパイプは、金属、プラスチックのうちの一種又は複数種の材料を含む。
【0020】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による医療用ウォータージェットは嵌合ヘッドをさらに含み、嵌合ヘッドは、ノズルパイプに固定されて密封接続され、ノズルは嵌合ヘッドを介してノズルパイプに接続され、嵌合ヘッドの流出端にザグリ溝が設けられ、ノズルは嵌合ヘッドのザグリ溝内に設置され、ザグリ溝の側壁がノズルを包み、複数の噴出孔、嵌合ヘッド及びノズルパイプは、ノズルパイプに平行する軸方向に順に連通する。
【0021】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による医療用ウォータージェットにおいて、ノズルパイプの流出端はノズルと締まり嵌めされる。
【0022】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による医療用ウォータージェットにおいて、ノズルは、ノズルパイプの流出端の内側に密封固定される。
【0023】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による医療用ウォータージェットは、両端が開口する保護スリーブをさらに含み、ノズルパイプの流出端に第1ザグリ溝が設けられ、保護スリーブがノズルパイプの第1ザグリ溝に嵌め込まれ、保護スリーブの流出端に第2ザグリ溝が設けられ、ノズルが保護スリーブの第2ザグリ溝に嵌め込まれ、複数の噴出孔、保護スリーブ及びノズルパイプは、ノズルパイプに平行する軸方向に順に連通する。
【0024】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による医療用ウォータージェットにおいて、ノズルパイプのブラインド端は、1つのブラインド端表面と複数の階段孔とを含み、階段孔は、ブラインド端表面から突出した第1サブ空間とブラインド端表面から凹んだ第2サブ空間とを含み、ノズルに含まれた複数の単孔サブノズルのうちの各単孔サブノズルは、複数の階段孔のうちの各階段孔の第1サブ空間に対応して嵌合される。
【0025】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による医療用ウォータージェットは、支持スリーブをさらに含み、ノズルパイプの流出端は階段構造として設置され、支持スリーブはノズルパイプの階段構造の形状にマッチングし、且つ支持スリーブはノズルパイプの内部空洞に伸び込み、ノズルは支持スリーブの流出端に固定して接続され、階段構造、支持スリーブ、ノズルが接続される一体構造の外側の空間の一部は射出成形領域として用いられる。
【0026】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による医療用ウォータージェットは、ハンドルをさらに含み、吸引用外部パイプのノズルから離れる側は、ハンドルに固定して接続される。
【0027】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による医療用ウォータージェットは、吸引用接続パイプをさらに含み、吸引用接続パイプは、吸引用外部パイプのノズルから離れる端部と連通する。
【0028】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による医療用ウォータージェットは、噴射接続パイプをさらに含み、噴射接続パイプは、ノズルパイプのノズルから離れる端部と連通する。
【0029】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による医療用ウォータージェットにおいて、複数の噴出孔は、対象組織を選択的に分離するために、医療用液体を噴射するように構成される少なくとも2つの噴出孔を含む。
【0030】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例はさらに、医療用システムを提供し、以上のいずれか一項に記載の医療用ウォータージェットと、医療用液体を提供するように構成される液体供給ユニットと、医療用液体に圧力を印加して医療用液体をノズルパイプの内部空洞に流入するように構成される圧力ポンプとを含む。
【0031】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による医療用システムは、排水タンクをさらに含み、医療用ウォータージェットは、吸引用外部パイプをさらに含み、吸引用外部パイプはノズルパイプの外側に套設され、ノズルパイプの外壁と吸引用外部パイプの内壁との間の隙間空間は吸引用通路として用いられ、排水タンクは吸引用外部パイプと連通する。
【0032】
たとえば、本開示の少なくとも一実施例による医療用システムは、負圧吸引機をさらに含み、負圧吸引機は排水タンクに接続される。
【発明の効果】
【0033】
従来技術に比べて、本開示の少なくとも一実施例の有益な効果は以下を含む。本開示の医療用ウォータージェットは、複数の噴出孔による切断を実現でき、切断対象の柔軟組織が複数の噴出孔のジェットの衝撃領域から逃げにくく、柔軟組織の切断及び管腔系弾性組織との分離を相対的に固定して完了することができ、ウォータージェットの組織を選択的に分離する性能を向上させ、医療用ウォータージェット切断の手術効率を向上させ、手術操作を簡略化し、さらに噴出孔が塞がれるとウォータージェットが動作できないという問題を解決することができることである。
【0034】
本開示の実施例又は従来技術における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、実施例又は従来技術の説明に使用する必要のある図面を簡単に説明し、明らかなように、以下の説明される図面は本開示のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労力を必要とせずに、さらにこれらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本開示のいくつかの実施例による医療用システムの構成の模式図である。
【
図2】
図2は、本開示のいくつかの実施例による医療用ウォータージェットの構造模式図である。
【
図3a-3b】
図3aは、本開示のいくつかの実施例によるノズル及びノズルパイプの構造1の模式図であり、
図3bは
図3aの構造1の左側面図である。
【
図4a】
図4aは、本開示のいくつかの実施例による均一に設置される3つの噴出孔の模式図である。
【
図4b】
図4bは、本開示のいくつかの実施例による均一に設置される4つの噴出孔の模式図である。
【
図4c】
図4cは、本開示のいくつかの実施例による均一に設置される5つの噴出孔の模式図である。
【
図4d】
図4dは、本開示のいくつかの実施例による均一に設置される7つの噴出孔の模式図である。
【
図4e】
図4eは、本開示のいくつかの実施例による均一に設置される9つの噴出孔の模式図である。
【
図4f】
図4fは、本開示のいくつかの実施例による均一に設置される21個の噴出孔の模式図である。
【
図5a】
図5aは、本開示のいくつかの実施例によるノズル及びノズルパイプの構造2の模式図である。
【
図6a】
図6aは、本開示のいくつかの実施例によるノズル及びノズルパイプの構造3の模式図である。
【
図7a】
図7aは、本開示のいくつかの実施例によるノズル及びノズルパイプの構造4の模式図である。
【
図7b-7c】
図7b及び
図7cは、それぞれ
図7aの構造4の断面A-Aと断面B-Bの模式図である。
【
図8a】
図8aは、本開示のいくつかの実施例によるノズル及びノズルパイプの構造5の模式図である。
【
図9a】
図9aは、本開示のいくつかの実施例によるノズル及びノズルパイプの構造6の模式図である。
【
図10a】
図10aは、本開示のいくつかの実施例によるノズル及びノズルパイプの構造7の模式図である。
【
図11a】
図11aは、本開示のいくつかの実施例によるノズル及びノズルパイプの構造8の模式図である。
【
図12】
図12は、本開示のいくつかの実施例による単孔医療用ウォータージェットと多孔医療用ウォータージェットの分離効率及び能力の比較結果の表の模式図である。
【
図13】
図13は、本開示のいくつかの実施例による単孔医療用ウォータージェットの操作経路と多孔医療用ウォータージェットの操作経路の模式図である。
【
図14】
図14は、本開示のいくつかの実施例による多孔医療用ウォータージェットの処理効果図である。
【
図15】
図15は、本開示のいくつかの実施例による単孔医療用ウォータージェットの処理効果図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本開示の実施例における図面を参照しながら、本開示の実施例の技術的解決手段を明確且つ完全に説明し、明らかなように、説明される実施例は本開示の一部の実施例に過ぎず、すべての実施例ではない。本開示における実施例に基づき、当業者が創造的な労力を必要とせずに取得したすべての他の実施例は、いずれも本開示の保護範囲に属する。
【0037】
別に定義されない限り、本開示の実施例で使用されるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、当業者が共同して理解するものと同じ意味を有する。また、たとえば一般的な辞書で定義されているような用語は、本開示の実施例に明確に定義されていない限り、関連技術の文脈における意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、理想化又は極端に形式化された意味で解釈されるべきではないことを理解すべきである。
【0038】
本開示の実施例に使用される「第1」、「第2」及び類似する用語はいかなる順序、数量又は重要性を示すものではなく、単に異なる構成部分を区別するためのものである。「1つ」、「1」又は「該」等の類似する用語も数量を制限するものではなく、少なくとも1つが存在することを意味する。同様に、「含む」又は「備える」等の類似する用語は、「含む」又は「備える」の前に記載される要素又は部材が、「含む」又は「備える」の後に挙げられる要素又は部材及びそれらと同等のものをカバーし、他の要素又は部材を排除しないことを意味する。「接続」又は「連結」等の類似する用語は、物理的又は機械的接続に限定されず、直接的又は間接的接続にかかわらず、電気的接続又は通信可能な接続も含む。本開示の実施例では、フローチャートを用いて本開示の実施例による方法のステップを説明する。なお、前又は後のステップが必ずしも順序に従って正確に行われないことを理解すべきである。逆に、本開示の実施例が明確に限定しない限り、各種のステップを順に又は同時に処理することができる。同時に、他の操作をこれらの過程に追加し、又はこれらの過程からあるステップ又は複数のステップを削除してもよい。
【0039】
本開示の実施例に使用される「流入端」は、たとえば各部材又は素子又は装置又は機器等の液体流れ込み側に接近する端部を表し、「流出端」は、たとえば各部材又は素子又は装置又は機器等の液体流れ込み側から離れる端部を表す。本開示の実施例に使用されるブラインド端は、たとえば部材又は素子又は装置又は機器に含まれた少なくとも一部が密閉じ又は閉鎖された端部を表し、たとえば該端部全体はいずれも密閉又は閉鎖されてもよく、又は該端部の第1部分が密閉又は閉鎖され且つ該端部の第2部分が密閉又は閉鎖されなくてもよい。
【0040】
医療外科分野の低侵襲化、精細化への発展に伴い、肝臓切断の多くの手段には依然として、肝臓切断の手術ニーズを完全に満たすことができ、手術後の合併症を効果的に制御し、術後5年生存率を向上させることができる手段がない。したがって、既存の医療技術を覆して革新することは必須である。
【0041】
理想的な肝臓切断方法は、速度が速く、熱による損傷がなく、管腔を保護でき、精細な分離を実現でき、失血が極めて少なく、内視鏡で操作しやすく、胆汁漏出を引き起こしにくく、液溜まりを引き起こしにくく、肝硬変に適用できるという特徴を有するべきである。現在の方法において、単孔ウォータージェット技術は所定の長所を有するが、その速度が遅く、及び内視鏡で操作しにくい欠点も大多数の医師を受け入れにくく、また、現在のウォータージェット製品の故障についての調査によると、その詰まりやすい問題及び漏れやすい問題も製品の普及を制限している。
【0042】
本開示の少なくとも一実施例は医療用ウォータージェットを提供し、ノズルとノズルパイプとを含み、ノズルパイプは流入端と、流出端と、医療用液体が流れる空間を提供するように構成される内部空洞とを含み、ノズルパイプの流入端は、医療用液体が流れ込むように構成され、ノズルは、複数の噴出孔を含み、複数の噴出孔はノズルパイプの流出端と連通し、且つ複数の噴出孔は、ノズルパイプの流出端を通過する医療用液体を噴射するように構成される。
【0043】
本開示の少なくとも一実施例はさらに、上記医療用ウォータージェットを含む医療用システムを対応して提供する。
【0044】
本開示の上記実施例の医療用ウォータージェットは、複数の噴出孔による切断を実現でき、従来技術の単一噴出孔の切断に比べて、切断対象の柔軟組織(たとえば実質性組織)が複数の噴出孔のジェットの衝撃領域から逃げにくく、柔軟組織の切断及び管腔系弾性組織との分離を相対的に固定して完了することができ、ウォータージェットの組織を選択的に分離する性能を向上させ、医療用ウォータージェットによる切断(たとえばウォータージェットによる肝臓切断)の手術効率を向上させ、手術操作を簡略化し、さらに噴出孔が塞がれるとウォータージェットが動作できないという問題を解決することができる。
【0045】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施例及びその例を詳細に説明する。
【0046】
なお、本明細書の説明を容易にするために、本開示のいくつかの実施例では、ノズルパイプの軸方向を図示の左右方向とし、内部空洞の液体流れ込み端から離れる側を左として記し、液体流れ込み端に接近する側を右として記し、ノズルパイプの流入端は内部空洞の右端に位置し、ノズルパイプの流出端は内部空洞の左端に位置し、本開示のいくつかの実施例に係る左右方向と垂直な方向を図示の上下方向として記してもよい。なお、本開示の実施例に係る方位は、いずれも図示の方位を表し、実際の応用における方位に影響を与えず、本開示はそれを限定しない。
【0047】
図1は、本開示のいくつかの実施例による医療用システムの構成の模式図である。
図2は、本開示のいくつかの実施例による医療用ウォータージェットの構造模式図である。
【0048】
図1に示されるように、医療用システムは、医療用ウォータージェット100と、圧力ポンプ200と、液体供給ユニット300とを含む。液体供給ユニット300は、医療用液体を提供することに用いられる。圧力ポンプ200は、医療用液体に圧力を印加することに用いられる。
【0049】
たとえば、
図1の例において、医療用ウォータージェット100はノズル110とノズルパイプ120とを含む。ノズル110は複数の噴出孔111を含み、すなわち本開示の実施例の医療用ウォータージェット100は多孔医療用ウォータージェットとも呼称される。ノズルパイプ120は、流入端と、流出端と、内部空洞121とを含み、ノズルパイプ120の内部空洞121は、医療用液体が流れる空間を提供するように構成され、圧力ポンプ200の圧力作用により、医療用液体はノズルパイプ120の流入端121aに流れ込み、次に該医療用液体は内部空洞121を流れ、ノズルパイプ120の流出端(すなわち図示の左端)は、複数の噴出孔111と連通し、それにより医療用液体は、ノズルパイプ120の流出端を通過し且つ複数の噴出孔111から噴射される。
【0050】
たとえば、本開示のいくつかの実施例では、液体供給ユニット300は生理食塩水バッグを含み、医療用液体は生理食塩水を含む。もちろん、これは例示的なものに過ぎず、本開示を限定するものではなく、さらに他の適切な液体供給ユニット、たとえば液体タンクであってもよく、実際の状況に応じて決定することができ、ここで繰り返して説明しない。
【0051】
たとえば、
図1の例において、医療用システムは排水タンク400及び負圧吸引機500をさらに含む。
【0052】
図1と
図2に示されるように、本開示のいくつかの実施例では、医療用ウォータージェット100は吸引用外部パイプ130をさらに含み、吸引用外部パイプ130はノズルパイプ120の外側に套設され、ノズルパイプ120の外壁と吸引用外部パイプ130の内壁との間の隙間空間は吸引用通路として用いられる。排水タンク400は吸引用外部パイプ130と連通する。負圧吸引機500は排水タンク400に接続され、吸引機能を実現できる負圧を提供する。
【0053】
たとえば、本開示のいくつかの実施例では、吸引用外部パイプ130はノズルパイプ120の軸方向に平行し、たとえば、吸引用外部パイプ130とノズルパイプ120は同軸に設置されてもよく、たとえば他のいくつかの実施例では、ノズルパイプ120は吸引用外部パイプ130の外側に套設され、ノズルパイプ120と吸引用外部パイプ130は異なる軸に設置されてもよく、たとえば並行に設置されてもよく、実際の状況に応じて決定することができ、本開示はこれを限定しない。
【0054】
たとえば、
図1と
図2の例において、医療用ウォータージェット100はハンドル140をさらに含み、吸引用外部パイプ130の右側はハンドル140に固定して接続される。たとえば、医療用ウォータージェット100は吸引用接続パイプ150をさらに含み、吸引用接続パイプ150は吸引用外部パイプ130の右端と連通し、排水タンク400は、吸引用接続パイプ150を介して吸引用外部パイプ130と連通し、廃液又は組織屑等を収集する。たとえば、医療用ウォータージェット100は吸引アダプター180をさらに含んでもよく、吸引アダプター180によって吸引用接続パイプ150と吸引用外部パイプ130との連通を実現する。
【0055】
図2に示されるように、医療用ウォータージェット100は噴射接続パイプ160をさらに含み、噴射接続パイプ160はノズルパイプ120のノズル110から離れる端部と連通する。たとえば、医療用ウォータージェット100は噴射アダプター170をさらに含んでもよく、噴射アダプター170によってノズルパイプ120と噴射接続パイプ160との連通が実現される。
【0056】
以下、本開示のいくつかの実施例に係る上記医療用システムの操作方法について説明する。該操作方法は、液体供給ユニット300は作動媒体(すなわち医療用液体)を圧力ポンプ200に提供し、圧力ポンプ200はホストコンピュータのプログラム(制御ユニット)及びモーターによって駆動され、医療用液体を作動圧力まで加圧し、次に、噴射接続パイプ160を通ってハンドル140内に入り、噴射アダプター170、ノズルパイプ120を通過してノズル110に到着し、且つノズル110の端面上の複数の噴出孔111から高速ジェットが発生して噴射し、ジェットを利用して体内の柔軟組織(たとえば肝実質)と弾性組織(たとえば血管、胆管)との選択的な分離を実現し、たとえば、ジェットを利用して肝実質と管腔系組織との選択的な分離を行うというステップを含む。
【0057】
たとえば、圧力ポンプ200は高圧ポンプであり、作動圧力が1~10MPaであり、もちろん、これは例示的なものに過ぎず、本開示を限定するものではない。本開示のいくつかの実施例では、圧力ポンプ200はホストコンピュータに接続され、ホストコンピュータは、制御ユニット及び動力ユニットを含み、圧力ポンプ200を制御して駆動することに用いられ、たとえば回転数を調整することができ、他のいくつかの実施例では、圧力ポンプ200自体は動力ユニットを有し、又は、圧力ポンプ200に制御ユニット及び動力ユニットが集積される。たとえば、医療用液体は生理食塩水であり、医療用ウォータージェット100は使い捨て手術器具であり、医師が片手で操作でき、医療用ウォータージェット100の複数の噴出孔により形成される水ジェットは、柔軟組織と弾性組織との選択的な分離を効率的に完了することができる。
【0058】
好ましくは、該操作方法は、ジェットを利用して肝実質と管腔系組織との分離を完了した後、生じた廃液及び組織屑などは、ノズル110に接近する側から吸引用外部パイプ130に入り、吸引用通路を流れ、さらに吸引アダプター180を流れ、吸引用接続パイプ150に到着し、排水タンク400に入るまで続け、それにより噴射された水と、器官から分離した組織とを経路を介して体外に排出することをさらに含む。たとえば、負圧吸引機500は、吸引機能を実現するように、-0.02~-0.08MPa大きさの負圧を提供できる。
【0059】
たとえば、本開示のいくつかの実施例では、ノズルパイプの内径は約1.5mm~5mmであり、ノズルパイプの外径は約2mm~6mmである。たとえば、噴出孔の直径は約0.05mm~0.15mmである。たとえば、本開示のいくつかの実施例では、複数の噴出孔111から噴射される医療用液体のジェット流速は50メートル/秒~100メートル/秒である。
【0060】
現在、市場には単孔医療用ウォータージェットのみが現れており、医療用切断分離用の多孔医療用ウォータージェットに対する構想及び事例はまだない。
【0061】
本開示の多孔医療用ウォータージェットは、医療用の技術分野において、従来技術で柔軟組織を効果的に切断し又は除去すると同時に弾性組織を完全に温存して両者を効果的に分離することができないという技術的課題を少なくとも解決し、且つ多くの予想外の技術的効果を実現した。
【0062】
本開示の発明者は、従来技術の単孔医療用ウォータージェットに以下の技術的課題が存在していることを発見した。
【0063】
(1)従来技術の単孔医療用ウォータージェットを採用してジェットで生体組織を噴射する場合、柔軟性又は弾性を有する生体組織が噴射されると移動しやすいため、それらはジェットの作用下でジェット領域以外の領域にずれ、それによりジェット領域の範囲から逃げることがよくある。単孔医療用ウォータージェットによる切断分離作用はジェット領域内のみに集中するため、ジェット領域内の柔軟組織(たとえば肝実質組織)及び弾性組織(たとえば管腔系組織)はジェットの作用でずれると、単孔医療用ウォータージェットによる組織の選択的な分離効果及び手術の精度に大きな影響を与え、たとえば、それに伴って、多くの肝実質組織の残留などの不利な手術効果をもたらす。
【0064】
(2)従来技術の単孔医療用ウォータージェットに対して、柔軟生体組織及び弾性生体組織が逃げやすい問題を解決するために、一般的には、ジェットの噴射圧力を増加し又は単孔医療用ウォータージェットの単孔の直径を大きくして水流の直径を大きくし、柔軟生体組織をできるだけ破砕し、それにより柔軟生体組織及び弾性生体組織の分離効率を向上させる。しかしながら、このようにすると、弾性生体組織により多くの破裂及び/又は損傷(たとえば血管破裂、胆管損傷)を引き起こし、より多くの失血及び肝臓切除縁の浮腫などの不良な手術結果をもたらすことになる。
【0065】
(3)且つ、従来技術の単孔医療用ウォータージェットの操作方法は単線操作である。生体組織の理想的な露出範囲内で切断と分離を完了するために、単孔医療用ウォータージェットを高周波で移動する必要がある。これにより、作業効率が低く、手術操作の難易度が高い。
【0066】
本開示は本発明者が発見した技術的課題に対して、本開示の多孔医療用ウォータージェットを提供し、それは多くの非明瞭な技術的効果を実現できる。具体的には以下のとおりである。
【0067】
(1)先ず、本開示の多孔医療用ウォータージェットを利用して実質類組織の切断を行うことにより、生体組織の選択的な分離を効率的で、正確に実現することができ、たとえば、ジェット領域における肝実質組織を効率的で、正確に切断し又は除去すると同時に、その中に分布する血管、胆管などが損傷されないように温存し、たとえば通過する血管、胆管などの弾性組織を切断することを回避する。この2つのモーションを同時に完了することは、肝切除手術にとって非常に重要な意義を有する。
【0068】
たとえば、いくつかの例において、多孔医療用ウォータージェットは所定の幅と長さを有する切断ストリップで柔軟組織と弾性組織との選択的な分離を完了することができ、たとえば、温存された血管に所定の露出幅(たとえば3~5mm)を有させ、それにより血管の露出(一部の肝実質の除去)を完了した後に、医師は次のステップで血管を正確に凝固する操作を便利に行うことができる。従って、多孔医療用ウォータージェットを採用することにより、所定の幅と長さを有するストリップ状切断方式を採用することができる。本開示の多孔医療用ウォータージェットのノズルは、迅速で横方向に走査して移動すると同時に、ゆっくりと縦方向に移動して、往復するZ字状経路を形成し、切断ストリップを全面的に覆うことを実現し、それにより、切断ストリップ内(たとえば長さは約30mm、幅は約5mm)の血管を十分に露出することを実現し、それによりジェットが通過する位置の肝実質を切断し又は除去し、且つ肝実質と随伴する血管、胆管などの管腔系組織を温存し、選択的な分離を効果的に実現する。このようにして、同じパラメータ(たとえばジェットの圧力、噴出孔の直径及び同じ人体組織)を採用して設置された単孔ウォータージェットに比べて、本開示の多孔医療用ウォータージェットは、組織の選択的な分離の効果(たとえば血管保護、切断深さ、実質組織の除去)及び分離効率などの面で大きな利点を示している。
【0069】
且つ、本開示の多孔医療用ウォータージェットは複数のジェットを有し、且つ複数のジェットに対応するジェット領域の間の距離が非常に小さい(たとえば0.4~4.0mmだけである)ため、複数のジェット領域の間に位置する柔軟又は弾性生体組織は複数のジェット領域からの制限を受け、自由にずれることができない。多孔医療用ウォータージェットのノズルのジェット領域群が移動する過程に、柔軟組織の切断及び管腔系弾性組織との分離を相対的に固定して完了することができる。このように形成される集団効果は、医療用ウォータージェットの実際の作業効率及び作業性能を向上させる。言い換えれば、ある局所の領域中の生体組織は、多孔医療用ウォータージェット中の1つの噴出孔のジェットで噴射されると、該局所の領域の生体組織は隣接する位置へ移動する傾向があるが、この隣接する位置で、多孔医療用ウォータージェット中の他の噴出孔のジェットで噴射され又は他の噴出孔のジェットで逆方向に移動する傾向がある可能性があるため、固定の効果を実現し、すなわち複数の噴出孔は互いに補完する作用を有し、それにより複数のジェットが同時に噴射する過程での生体組織は逃げることができず、切断され又は管腔系弾性組織と分離することしかできない。従って、本開示の多孔ウォータージェットは、単純に噴出孔の数量を増加するだけでなく、当業者が従来技術から期待できない単孔ウォータージェットが実現できない上記技術的効果を実現し、対象生体組織の選択的な分離を効率的且つ正確に実現する。
【0070】
(2)次に、本開示の多孔医療用ウォータージェットの選択的な分離の効果は大幅に改善されるため、手術過程においてジェットの噴射圧力を低減させることができる。従って実質組織の効果的な切断と除去の要件を満たす場合に、管腔系組織(たとえば小さな血管及び小さな胆管)をよりよく保護して温存することができる。管腔系組織(たとえば血管及び胆管)の温存により、手術中の出血と胆汁漏出を減少することができ、手術後の合併症を減少すると同時に、それによる浮腫を軽減でき、術後患者の入院時間とリハビリ時間を短縮することができる。
【0071】
(3)さらに、本開示の多孔医療用ウォータージェットの操作方式は複線操作であり、切断ストリップにおいて選択的な分離を行う場合、多孔医療用ウォータージェットを低周波で移動させるだけでよく、操作効率が高く、手術操作の難易度も大幅に低下する。
【0072】
これ以外に、産業用ジェット装置は本開示の多孔医療用ウォータージェットについてのいかなる技術的示唆を有さず、産業用ジェット装置に基づき、本開示の多孔医療用ウォータージェットの技術的解決手段を容易に想到できない。
【0073】
先ず、高圧水ジェットは産業での適用が幅広いが、機能と効果から見ると、産業用ジェット装置は主に洗浄を目的として用いられ、たとえば高圧洗浄の場合、多孔ジェットを採用することを容易に想到できるが、その目的は、水量を増加し、又は噴射面積を増大し、又は洗浄効率を向上させるだけであり、選択的な分離を実現するためのいかなる技術的示唆がなく、たとえば、産業用ジェットは、高圧であり、噴射面積が大きく、噴射流体が異なり、本開示の柔軟組織を効果的に切断し又は除去すると同時に、弾性組織をできるだけ完全に温存するという技術的目的に達することができない。
【0074】
次に、産業上の高圧水ジェットは、産業の高圧切断に用いられる可能性があるが、採用するのはいずれも単孔ジェットの方式であり、産業上の高圧切断にとって、切断の正確さ及び効率を求めるため、多孔ジェットの方式の切断が現れておらず、多孔ジェットは切断に用いられると、切断効率又は切断の正確さを向上させることができず、逆に、切断の正確さを低減させ、且つ圧力が変わらない場合に、1つのジェットを複数に分散すれば、切断効率を低減させる。さらに、材料、プロセス難度及びコストを考慮すると、産業に使用される単孔ジェット切断用の工具は、本開示の多孔医療用ウォータージェットに直接適用できない。
【0075】
さらに、本開示の多孔医療用ウォータージェットの切断対象は剛体ではなく、非常に柔軟で弾性を有する人体組織であり、たとえば実質組織及び管腔系組織(たとえば血管、胆管)である。しかしながら産業分野の処理対象はいずれも硬度の高い剛体(たとえば金属板)であり、それにより、処理対象が柔軟で且つ移動しやすいため、ジェットの噴射を逃れて不良な結果を引き起こすという技術的課題が存在せず、従って、産業分野において、多孔ウォータージェットの技術ニーズがなく、多孔ウォータージェットを産業上の切断に適用することを想到できないことも当然である。また、産業分野の処理対象はいずれも硬度の高い剛体(たとえば金属板)であり、それにより対応する理想的な露出状態を必要とせず、対応する切断ストリップ上のニーズもなく、たとえば産業分野の処理対象の切断経路は、いずれも線形(直線、曲線)であり、それにより本開示の多孔医療用ウォータージェットに対応する技術的効果を予測して実現することができない。
【0076】
本開示の多孔医療用ウォータージェットと産業用ジェット装置が直面する技術的課題は本質的に異なり、2つの完全に異なる技術分野に属する。両者が達する技術的目的も異なり、産業用ジェット装置の目的は正確で、徹底的で、効率的に切断することであるが、本開示の多孔医療用ウォータージェットの目的は、柔軟組織を効果的に切断し又は除去すると同時に、弾性組織をできるだけ完全に温存し、それにより選択的な分離を実現することである。属する技術分野、解決する技術的課題及び達成する技術的目的は本質的に異なるため、本開示の発明者はさらに以下のようなことを発見した。従来技術の産業用ジェット装置と本開示の多孔医療用ウォータージェットとの区別は少なくとも、(a)産業用ジェット装置が切断する対象は、金属、セラミック、ガラス、複合材、岩石などの剛体を含むが、本開示の多孔医療用ウォータージェットの切断対象は柔軟な切断対象であり、たとえば実質系生体組織、粘膜層であること、(b)産業用ジェット装置の作動媒体は一般的には水+研磨材、たとえばエメリー、石英砂を採用するが、本開示の多孔医療用ウォータージェットは生理食塩水などの医療用液体を採用すること、(c)産業用ジェット装置のジェット流速は800メートル/秒~1000メートル/秒であり、本開示の多孔医療用ウォータージェットは50メートル/秒~100メートル/秒を採用し、両者は桁の差があること、(d)産業用ジェット装置の噴出孔の直径は0.2mm~1.0mmであるが、本開示の多孔医療用ウォータージェットの噴出孔の直径は0.08mm~0.12mmであり、両者は桁の差があること、(e)産業用ジェット装置の切断スリットの幅は0.22mm~1.1mmであり且つそれは噴出孔の直径より約10%大きいが、本開示の多孔医療用ウォータージェットの走査により実現される切断スリットの幅は3mm~5mmであり且つそれは噴出孔の直径の約30~50倍であり、両者は桁の差があること、(f)産業用ジェット装置の作動圧力は30MPa~50MPaの低圧、100MPaより大きい高圧及び200MPaより大きい超高圧であるが、本開示の多孔医療用ウォータージェットの作動圧力は1MPa~10MPaであり、両者は桁の差があることのうちの一種又は複数種を含む。
【0077】
なお、本開示は主に、肝臓癌手術中の肝実質及び管腔系組織を操作対象として例示して説明したが、本開示の多孔医療用ウォータージェットは、肝臓癌手術のみに適用されるものではなく、さらに良性腫瘍切除、器官移植手術等の手術に適用でき、且つ多孔医療用ウォータージェットの操作対象は、肝臓に対応する肝実質及び管腔系組織を含むだけでなく、さらに他の類似のニーズ及び類似の特徴を有する生体組織、たとえば他の人体器官(たとえば肺臓、腎臓、脾臓等)に対応する実質組織及び管腔系組織(たとえば胆管、尿管、気管支等)に適用でき、それは実際の状況に応じて決定することができ、本開示の実施例はそれを限定しない。
【0078】
なお、いくつかの実施例では、本開示のノズルの複数の噴出孔(たとえば数量が2以上)は一部の噴出孔(2つ以上)を用いて医療用液体を噴射して生体組織を選択的に分離してもよいし、すべての噴出孔を用いて医療用液体を噴射して生体組織を選択的に分離してもよい。本開示はそれを限定せず、実際の状況に応じて決定することができ、たとえば、後述する、多孔医療用ウォータージェットの噴出孔の一部が塞がれても手術機器を作動させ続けることができるという関連内容を参照してもよく、ここで繰り返して説明しない。
【0079】
たとえば、本開示のいくつかの実施例では、ノズル110の材料は、金属、宝石のうちの一種又は複数種を含む。たとえば、ノズル110は人工宝石(たとえばルビー又はサファイア)、金属シート(たとえばステンレス鋼シート)などにより実現されてもよい。
【0080】
たとえば、本開示のいくつかの実施例では、ノズルパイプ120の材料は、金属、プラスチックのうちの一種又は複数種を含む。たとえば、ノズルパイプ120の材料はステンレス鋼及び/又はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を含む。
【0081】
たとえば、本開示のいくつかの実施例では、複数の噴出孔111は均一に設置される。たとえば、複数の噴出孔111が均一に設置されることは、複数の噴出孔111で囲まれた図形が対称図形であり、且つ任意の1つの噴出孔111とそれに対応する隣接する噴出孔111との中心間距離がそれぞれ等しいことを指してもよい。もちろん、これは例示的なものに過ぎず、本開示を限定するものではない。
【0082】
たとえば、本開示のいくつかの実施例では、複数の噴出孔111のうちの隣接する2つの噴出孔11の中心間距離は0.4~4.0mmである。
【0083】
たとえば、吸引用外部パイプ130の内径は3~7.6mmであり、吸引用外部パイプ130の外径は4~8mmである。たとえば、吸引用外部パイプ130の材料はステンレス鋼及び/又はPSU(ポリスルホンプラスチック)を含む。
【0084】
本開示のいくつかの実施例では、多孔医療用ウォータージェットに基づき、小さな面積(たとえば20mm2ほど)の領域範囲に平行に噴射する複数の水ジェットを集中することができ、集団効果をもたらし、それにより選択的な分離の完了度及び貫通度がいずれも顕著に向上し、単位時間内の切断深さが増加し、且つ選択的な分離の効率が向上する。
【0085】
たとえば、噴射接続パイプ160の外径は約4mmであり、内径は約2mmであり、長さは約3mであり、噴射接続パイプ160の材料はPTFEを含んでもよい。
【0086】
たとえば、吸引用接続パイプ150の外径は約8mmであり、内径は約6mmであり、長さは約3mであり、吸引用接続パイプ150の材料はPVC(ポリ塩化ビニル)を含んでもよい。
【0087】
たとえば、噴射アダプター170の材料は、ステンレス鋼及び/又はPEEK(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)を含んでもよい。
【0088】
たとえば、吸引アダプター180の材料は、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、PC(ポリカーボネート)、シリカゲル、ゴムのうちの一種又は複数種を含んでもよい。
【0089】
図3aは、本開示のいくつかの実施例によるノズル及びノズルパイプの構造1の模式図であり、
図3bは、
図3aの構造1の左側面図である。
【0090】
図3aと
図3bに示されるように、ノズルパイプ120の左端(先端とも呼称される)はブラインド端101であり、ブラインド端101の少なくとも一部はノズル110として用いられる。
【0091】
たとえば、
図3aと
図3bの例において、ノズルパイプ120の材料は、ステンレス鋼及び/又はPTFEを含む。ノズルパイプ120の外径は約3mmであり、内径は約2mmである。ブラインド端101の肉厚は約1mmである。たとえば、複数の噴出孔111は、ブラインド端101の左端面に0.1mm直径の微細孔を直接加工して得られ、たとえば、ブラインド端101の左端面上の複数の噴出孔111の数が3であり且つこの3つの噴出孔111は均一に設置され、すなわち隣接する2つの噴出孔111の中心間距離は同じであり、且つ3つの噴出孔111の中心点は、前記ブラインド端101の端面の中心点を中心として対称に設置される。
【0092】
図4aは、本開示のいくつかの実施例による均一に設置される3つの噴出孔の模式図である。
【0093】
図4aに示されるように、医療用ウォータージェット100の複数の噴出孔111の数は3であり、この3つの噴出孔111は均一に設置される。たとえば、
図4aに示される3つの噴出孔111は、順に結線すると正三角形を形成することができ、隣接する2つの噴出孔111の中心間距離は等しく且つ0.4mm~4.0mm範囲内である。
【0094】
図4bは、本開示のいくつかの実施例による均一に設置される4つの噴出孔の模式図である。
【0095】
図4bに示されるように、医療用ウォータージェット100の複数の噴出孔111の数は4であり、この4つの噴出孔111は均一に設置される。たとえば、
図4bに示される4つの噴出孔111は、順に結線すると正方形を形成することができ、隣接する2つの噴出孔111の中心間距離は等しく且つ0.4mm~4.0mm範囲内である。
【0096】
図4cは、本開示のいくつかの実施例による均一に設置される5つの噴出孔の模式図である。
【0097】
図4cに示されるように、医療用ウォータージェット100の複数の噴出孔111の数は5であり、この5つの噴出孔111は均一に設置される。たとえば、
図4cに示される5つの噴出孔111のうちの1つは中心位置に位置し、且つ他の4つの噴出孔111は該中心噴出孔111の周囲に均一に分布し、周囲の4つの噴出孔111は、順に結線すると正方形を形成することができ、周囲の4つの噴出孔111のうちの任意の隣接する2つの噴出孔111の中心間距離は等しく且つ0.4mm~4.0mm範囲内であり、且つ中心噴出孔111から周囲の任意の1つの噴出孔111までの中心間距離も等しい。
【0098】
図4dは、本開示のいくつかの実施例による均一に設置される7つの噴出孔の模式図である。
【0099】
図4dに示されるように、医療用ウォータージェット100の複数の噴出孔111の数は7であり、この7つの噴出孔111は均一に設置される。たとえば、
図4dに示される7つの噴出孔111のうちの1つは中心位置に位置し、且つ他の6つの噴出孔111は該中心噴出孔111の周囲に均一に分布し、周囲の6つの噴出孔111は、順に結線すると正六角形を形成することができ、周囲の6つの噴出孔111のうちの隣接する2つの噴出孔111の中心間距離は等しく且つ0.4mm~4.0mm範囲内であり、且つ中心噴出孔111から周囲の任意の1つの噴出孔111までの中心間距離も等しい。
【0100】
図4eは本開示のいくつかの実施例による均一に設置される9つの噴出孔の模式図である。
【0101】
図4eに示されるように、医療用ウォータージェット100の複数の噴出孔111の数は9であり、この9つの噴出孔111は均一に設置される。たとえば、
図4eに示される9つの噴出孔111のうちの1つは中心位置に位置し、且つ他の8つの噴出孔111は該中心噴出孔111の周囲に均一に分布し、周囲の8つの噴出孔111は、順に結線すると正方形を形成することができ、周囲の8つの噴出孔111のうちの隣接する2つの噴出孔11の中心間距離は等しく、周囲の8つの噴出孔111が順に結線すると形成される正方形については、該正方形の2つの対角線はいずれも中心噴出孔111を通過し、周囲の8つの噴出孔111のうちの隣接する2つの噴出孔11の中心間距離は0.4mm~4.0mm範囲内であり、且つ中心噴出孔111から周囲の任意の1つの噴出孔111までの中心間距離は0.4mm~4.0mm範囲内である。
【0102】
図4fは本開示のいくつかの実施例による均一に設置される21個の噴出孔の模式図である。
【0103】
図4fに示されるように、医療用ウォータージェット100の複数の噴出孔111の数は21であり、この21個の噴出孔111は均一に設置される。たとえば、
図4fに示される21個の噴出孔111のうちの1つは中心位置に位置し、且つ他の20個の噴出孔111は該中心噴出孔111の周囲に上下左右方向に沿って一層ずつ均一に分布する。たとえば、この21個の噴出孔111は5行5列の噴出孔111を形成し、中央の3行の各行はいずれも5つの噴出孔111を含み、上側と下側の各行はいずれも3つの噴出孔を含み、各行又は各列のうちの隣接する2つの噴出孔11の中心間距離は等しく且つ0.4mm~4.0mm範囲内である。
【0104】
なお、本開示は、医療用ウォータージェット100に含まれる複数の噴出孔111の数を限定せず、且つ複数の噴出孔の具体的なレイアウト方式を限定せず、ここで繰り返して説明しない。
【0105】
なお、本開示のいくつかの実施例では、医療用ウォータージェット100に複数の噴出孔を有するノズルを設計することは容易ではなく、以下の技術的難点がある。(a)医療用ウォータージェット100の外部パイプ(たとえば吸引用外部パイプ130)の直径は5mmを超えない制限があり、医療用ウォータージェット100の左側(流出端に接近する)の外部パイプ部分は手術時に、トロッカーで穿孔した後に体内に伸び込む必要があり、且つ穿孔を実現するトロッカーが一般的には対応する仕様を有するためであり、たとえば5mm~10mm直径の仕様を含むがそれに限定されず、実際の状況に応じて決定することができ、それにより医療用ウォータージェット100の外部パイプ部分の直径は、対応する仕様の合理的な範囲、たとえば5mm直径の仕様に対応する範囲5mm~5.4mmを超えず、(b)医療用ウォータージェット100の外部パイプ内にさらに、対応する断面積(たとえば5mm直径の仕様に対応する、5mm2以上である)の吸引用通路を設置する必要があり、(3)噴出孔の直径は小さく、たとえば約0.08mm~0.12mmであり、加工して実現することは困難であり、(4)ジェットするために、噴出孔の端面、ノズルパイプ円柱面は表面粗さができるだけ小さいことが要求され、たとえば一般的にはRa 0.4μm以下であることが要求され、(5)高圧ノズルパイプ及び噴出孔部材に対して位置決め、固定及び密封の設計を行う必要があり、(6)使い捨て医療用ウォータージェットのハンドルのコストをできるだけ低減する必要がある。それにより、上記技術的難点に基づき、当業者は上記実施例の多孔医療用ウォータージェットに対応する構想及び技術的解決手段を容易に想到できない。
【0106】
たとえば、本開示のいくつかの実施例では、ノズル110は多孔サブノズルを含み、該多孔サブノズルに複数の噴出孔111が開けられる。たとえば、本開示の他のいくつかの実施例では、ノズル110は複数の単孔サブノズルを含み、複数の噴出孔111のうちの各噴出孔111は複数の単孔サブノズルのうちの対応する1つの単孔サブノズルに開けられる。なお、ノズル110が採用するのは多孔サブノズルであるか又は複数の単孔サブノズルであるかについて、本開示は限定せず、たとえば、ノズルの異なる構造に応じて決定されてもよく、以下、例を挙げて説明する。
【0107】
なお、本明細書における孔は規則的な孔であってもよく、不規則な孔であってもよく、本開示はこれを限定せず、且つ本明細書における孔の直径の大きさについての説明は、本開示の実施例の噴出孔の具体的な形状を限定せず、ただし、通常、孔を円形孔と見なし且つその直径又は半径で孔の大きさを表し、これは本開示の説明の焦点ではなく、ここで繰り返して説明しない。
【0108】
たとえば、本開示のいくつかの実施例では、ノズルパイプ120の左端はブラインド端であり、ノズル110はノズルパイプ120のブラインド端に配置され、たとえば嵌合の方式を採用してもよく、たとえば
図5aと
図5b、及び
図6aと
図6bに示されるとおりである。
【0109】
たとえば、本開示の他のいくつかの実施例では、ノズルパイプ120は左右の両端が開口するカニューレであり、ノズル110は該カニューレの左端に固定され、且つノズル110は該カニューレの左端と直接又は間接的に密封接続され、たとえば
図7aと
図7b、
図8aと
図8b、
図9aと
図9b、
図10aと
図10b、及び
図11aと
図11bに示されるとおりである。
【0110】
図5aは、本開示のいくつかの実施例によるノズル及びノズルパイプの構造2の模式図であり、
図5bは、
図5aの構造2の左側面図である。
【0111】
図5aと
図5bに示されるように、ノズルパイプ120のブラインド端101に階段孔が加工され、ノズル110を嵌合することに用いられ、たとえば、ノズルパイプ120のブラインド端101は1つのブラインド端表面101aと複数の階段孔101bとを含む。階段孔101bは、ブラインド端表面から突出した第1サブ空間とブラインド端表面から凹んだ第2サブ空間とを含み、ノズル110に含まれた複数の単孔サブノズル110aのうちの各単孔サブノズル110aは、複数の階段孔101bのうちの各階段孔101bの第1サブ空間に対応して嵌合される。たとえば、
図5bに示されるノズル110に含まれた複数の単孔サブノズル110aの数は3であると、階段孔101bの数も3であり、もちろん、これは例示的なものに過ぎず、本開示を限定するものではない。
【0112】
たとえば、
図5aと
図5bの例において、ノズルパイプ120の材料は、ステンレス鋼を含み、ノズルパイプ120の外径は約3mmであり、内径は約2.4mmである。たとえば、
図5aに示される単孔サブノズル110aは単孔宝石であり、外径は約1mmであり、厚さは約0.3mmである。
【0113】
たとえば、
図5aと
図5bの例について、単孔サブノズル110aをノズルパイプ120の左端の階段孔101bに入れ、且つノズルパイプ120の階段孔の突出する部分を打ち抜くことによってその縁部を内包させ、それにより単孔サブノズル110aを固定及び密封する。
【0114】
図6aは、本開示のいくつかの実施例によるノズル及びノズルパイプの構造3の模式図であり、
図6bは、
図6aの構造3の左側面図である。
【0115】
図6aと
図6bに示されるように、ノズルパイプ120の左端はブラインド端101である。たとえば、ノズル110に含まれた複数の単孔サブノズル110bはノズルパイプ120の左端のブラインド端101に嵌合され、又はたとえば、ノズル110に含まれた多孔サブノズル110bはノズルパイプ120の左端のブラインド端101に嵌合される。
【0116】
たとえば、
図6aと
図6bの例において、ノズルパイプ120の材料はPPSプラスチックを含み、ノズルパイプ120の外径は約3mmであり、内径は約2mmである。たとえば、
図6aと
図6bの例における単孔サブノズル110bの外径は約1mmであり、厚さは約0.3mmである。
【0117】
たとえば、
図6aと
図6bの例について、複数の単孔サブノズル110bを入れ子として射出成形用金型に入れることによって、ノズルパイプ120の射出成形過程において複数の単孔サブノズル110bを固定及び密封する。
【0118】
図7aは、本開示のいくつかの実施例によるノズル及びノズルパイプの構造4の模式図であり、
図7bと
図7cは、それぞれ
図7aの構造4の断面A-Aと断面B-Bの模式図である。
【0119】
図7a~
図7cに示されるように、医療用ウォータージェット100の左側端部は嵌合ヘッド102をさらに含み、嵌合ヘッド102はノズルパイプ120に固定されて密封接続され、ノズル110は嵌合ヘッド102を介してノズルパイプ120に接続され、嵌合ヘッド102の左端にザグリ溝が設けられ、ノズル110は嵌合ヘッド102のザグリ溝内に設置され且つザグリ溝の側壁はノズル110を包む。噴出孔111、嵌合ヘッド102及びノズルパイプ120は、ノズルパイプ120に平行する軸方向に順に連通し、それによりノズルパイプ120の右端から流れ込まれた医療用液体は、複数の噴出孔111から順調に噴出できる。
【0120】
たとえば、
図7a~
図7cの例において、吸引用外部パイプ130はノズルパイプ120の外側に套設され、ノズルパイプ120の外壁と吸引用外部パイプ130の内壁との間の隙間空間131は吸引用通路として用いられる。
【0121】
たとえば、
図7a~
図7cの例において、ノズル110は複数の単孔サブノズル110cを含み、複数の噴出孔111のうちの各噴出孔111は、複数の単孔サブノズル110cのうちの対応する1つの単孔サブノズル110cに開けられる。
【0122】
たとえば、
図7a~
図7cの例において、吸引用外部パイプ130はステンレス鋼を含み、吸引用外部パイプ130の外径は約5mmであり、内径は約4.6mmであり、長さは約400mmである。ノズルパイプ120はステンレス鋼を含み、ノズルパイプ120の外径は約2.2mmであり、内径は約2mmである。たとえば、
図7aの例における嵌合ヘッド102は金属製嵌合ヘッドであり、嵌合ヘッド102の材料はステンレス鋼を含み、異形空洞を有し、ノズル110とノズルパイプ120とを接続することに用いられる。たとえば、
図7aの例における単孔サブノズル110cは単孔宝石であり、外径は約1mmであり、厚さは約0.3mmである。
【0123】
たとえば、
図7a~
図7cの例について、ノズル110とノズルパイプ120とが接続され、さらに接続箇所で円周方向に溶接して固定及び密封を形成し、且つ単孔サブノズル110cを嵌合ヘッド102の左側端部のザグリ溝に入れ、嵌合ヘッド102のザグリ溝の側壁の深部を打ち抜いて縁取って、単孔サブノズル110cを包む。
【0124】
図8aは、本開示のいくつかの実施例によるノズル及びノズルパイプの構造5の模式図であり、
図8bは、
図8aの構造5の左側面図である。
【0125】
図8aと
図8bに示されるように、ノズルパイプ120の左端はノズル110と締まり嵌めされる。たとえば、
図8aと
図8bの例において、吸引用外部パイプ130はノズルパイプ120の外側に套設され、ノズルパイプ120の外壁と吸引用外部パイプ130の内壁との間の隙間空間131は吸引用通路として用いられる。
【0126】
たとえば、
図8aと
図8bの例において、ノズル110は多孔サブノズル110であり、ノズルパイプ120を加熱することにより、その内孔を直径がノズル110の外径より大きくなるまで膨張させ、ノズル110をノズルパイプ12の内孔に入れ、且つノズルパイプ12を冷却収縮させてノズル110をロックして固定及び密封を行う。
【0127】
たとえば、
図8aと
図8bの例において、吸引用外部パイプ130の材料は、ステンレス鋼及び/又はPSUを含んでもよく、吸引用外部パイプ130の外径は約5mmであり、内径は約4.6mmである。たとえば、
図8aと
図8bの例におけるノズルパイプ120はステンレス鋼を含み、ノズルパイプ120の外径は約3mmであり、内径は約2.6mmである。たとえば、
図8aと
図8bの例における多孔サブノズル110は単枚の多孔宝石であり、外径は約2.6mmであり、厚さは約0.3mmである。
【0128】
図9aは、本開示のいくつかの実施例によるノズル及びノズルパイプの構造6の模式図であり、
図9bは、
図9aの構造6の左側面図である。
【0129】
図9aと
図9bに示されるように、ノズル110はノズルパイプ120の左端の内側に密封固定される。たとえば、
図9aと
図9bの例において、ノズルパイプ120はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)カニューレであり、ノズル110は多孔サブノズル110であり、たとえば、多孔サブノズル110をノズルパイプ120内部の左側の先端に取り付け、次にノズルパイプ120の外側に加熱加圧してノズルパイプ120の左側の先端を熱収縮して変形させることにより、多孔サブノズル110の固定及び密封を実現する。
【0130】
たとえば、
図9aと
図9bの例において、ノズルパイプ120の外径は約3mmであり、内径は約2mmである。たとえば、
図9aと
図9bにおける多孔サブノズル110は単枚の多孔宝石であり、外径は約2mmであり、厚さは約0.3mmである。
【0131】
図10aは、本開示のいくつかの実施例によるノズル及びノズルパイプの構造7の模式図であり、
図10bは、
図10aの構造7の左側面図である。
【0132】
図10aと
図10bに示されるように、医療用ウォータージェット100の左側端部は、左右両端が開口する保護スリーブ103をさらに含み、ノズルパイプ120の左端に第1ザグリ溝120aが設けられ、保護スリーブ103はノズルパイプ120の第1ザグリ溝120aに嵌め込まれ、保護スリーブ103の左端に第2ザグリ溝103aが設けられ、ノズル110は保護スリーブ103の第2ザグリ溝103aに嵌め込まれる。噴出孔111、保護スリーブ103及びノズルパイプ120はノズルパイプ120に平行する軸方向で順に連通し、それによりノズルパイプ120の右端から流れ込まれた医療用液体は、複数の噴出孔111から順調に噴出できる。
【0133】
たとえば、
図10aと
図10bの例において、ノズルパイプ120の材料はステンレス鋼を含み、ノズルパイプ120の外径は約3mmであり、内径は約2.4mmであり、ノズルパイプ120の左端に階段があり、縁取ることに用いられる。たとえば、
図10aと
図10bの例における保護スリーブ103の材料は銅及び/又はPTFEを含んでもよく、保護スリーブ103の外径は約2.6mmであり、内径は約2mmであり、保護スリーブ103の左端に階段があり、ノズル110を固定することに用いられる。たとえば、
図10aと
図10bの例におけるノズル110は多孔サブノズル110であり、ノズル110は単枚の多孔宝石であり、ノズル110の外径は約2.2mmであり、厚さは約0.3mmであり、隣接する噴出孔の間の間隔は約1mmである。
【0134】
たとえば、
図10aと
図10bの例について、多孔サブノズル110を保護スリーブ103の第2ザグリ溝103aに取り付け、保護スリーブ103をノズルパイプ120の第1ザグリ溝120aに取り付け、ノズルパイプ120の左端の外壁を内部へ打ち抜いて縁取り、保護スリーブ103及び多孔サブノズル110を固定することに用いられ、保護スリーブ103の左端の外壁は、圧力を受けて変形し、多孔サブノズル110の左側面に包まれる。多孔サブノズル110の材質が脆く、厚さが薄く、破砕しやすいため、所定の弾性を有する保護スリーブ103を緩衝及び密封のためのものとして使用する。
【0135】
図11aは、本開示のいくつかの実施例によるノズル及びノズルパイプの構造8の模式図であり、
図11bは、
図11aの構造8の左側面図である。
【0136】
図11aと
図11bに示されるように、医療用ウォータージェット100の左側端部は支持スリーブ104をさらに含み、ノズルパイプ120の左端の外壁は階段構造として設置され、支持スリーブ104はノズルパイプ120の階段構造の形状にマッチングし、且つ支持スリーブ104はノズルパイプ120の内部空洞に伸び込み、ノズル110は支持スリーブ104の左端に固定して接続され、ノズルパイプ120の階段構造、支持スリーブ104及びノズル110が接続された一体構造の外側の空間の一部は射出成形領域105として用いられる。
【0137】
たとえば、
図11aと
図11bの例において、押し出されたノズルパイプ120、打ち抜かれた支持スリーブ104及び射出成形されたノズル110を一体に接続して軸方向に押し締めることにより、射出成形領域105(すなわち二次射出成形領域)で二次射出成形を行い、すなわち左側の先端の円周の外側面に二次射出成形を行い、射出成形材料はその所在する空間に流れ込んだ後、同じ種類の材料のノズルパイプ120及びノズル110と融合し、固定及び密封を形成する。
【0138】
たとえば、
図11aと
図11bの例において、ノズルパイプ120の材料はPTFEを含み、外径は約3mmであり、内径は約2mmである。たとえば、支持スリーブ104の材料はステンレス鋼を含み、そのサイズはそれぞれノズルパイプ120及びノズル110にマッチングし、位置決めの作用を果たし、且つ二次射出成形際のノズルパイプ120内への浸透を防止する。たとえば、
図11aと
図11bの例におけるノズル110は多孔サブノズル110であり、ノズル110の材料はPTFEを含み、外径は約2.6mmであり、厚さは約1mmであり、ノズル110は均一に分布した3つの噴出孔を含み、噴出孔の間隔は約1mmである。たとえば、二次射出成形領域の材料はPTFEを含む。
【0139】
図12は、本開示のいくつかの実施例による単孔医療用ウォータージェットと多孔医療用ウォータージェットの分離効率及び能力の比較結果の表の模式図である。
【0140】
図12に示されるように、医療用ウォータージェットの選択的な分離について、性能について主に、分離操作の平均消費時間、単位時間当たりの分離領域の深さ及び管腔系組織(たとえば小さな血管/胆管)の温存の3つの面での表現を含む。たとえば、四孔医療用ウォータージェットと従来の単孔医療用ウォータージェットとを比較すると、実験データの詳細は
図12の表に示されている。表におけるデータから分かるように、単孔医療用ウォータージェットに比べて、本開示の実施例の多孔医療用ウォータージェットは、小さな血管を犠牲せずに特性を保持する前提で、作業効率(平均消費時間)、作業性能(分離領域の平均深さ)を著しく向上させることができる。多孔ノズルの孔の数量、孔の間隔、孔のレイアウトモードは、いずれも多孔ウォータージェットの性能の最適化及び応用範囲の拡張により多くの空間を提供する。
【0141】
本開示の少なくとも1つの実施例は多孔医療用ウォータージェットを採用し、従来技術の単孔医療用ウォータージェットに比べて、生体組織を選択的に分離する過程に存在している効率が低く、効果が悪く、操作しにくいという従来技術における技術的課題(上記を参照)を解決することができる。したがって、本開示の多孔医療用ウォータージェットは多くの肝臓切断器具において際立っており、外科医師に性能が高く、効率が高く、使いやすい手術器具を提供する。
【0142】
図13は、本開示のいくつかの実施例による単孔医療用ウォータージェットの操作経路及び多孔医療用ウォータージェットの操作経路の模式図である。
【0143】
図13に示されるように、経路S11は、単孔医療用ウォータージェットの噴出孔の操作経路を表し、経路S12は、単孔医療用ウォータージェットのハンドルの操作経路を表し、経路S21は、多孔医療用ウォータージェット(たとえば三孔医療用ウォータージェット)の噴出孔の操作経路を表し、経路S22は、多孔医療用ウォータージェット(たとえば三孔医療用ウォータージェット)のハンドルの操作経路を表し、ここで、
図13の上下方向は切断ストリップの長さ方向を表し、
図13の左右方向は切断ストリップの幅方向を表す。
【0144】
たとえば、上記したように、多孔医療用ウォータージェットは、所定の幅と長さを有する切断ストリップにおいて、たとえば肝実質を切断し又は除去すると同時に、管腔系組織を温存し及び露出することを完了する必要があり、たとえば、切断ストリップの幅は噴出孔の直径の30~50倍に達することができる。たとえば、医療用ウォータージェットのジェットは、直径が小さくて(たとえば0.1mm)繊細な水柱であるが、医療用ウォータージェットはそのジェットが通過する経路のみにおいて切断及び破砕の効果を達成でき、従って、医師はある部分の管腔系組織(たとえばある部分の肝臓の血管と胆管)を露出させるために、ジェットの経路がこの領域を完全にカバーする必要があり、すなわち医師は
図13に示される走査方法で実現することができ、それにより往復するZ字状経路を形成する。
【0145】
たとえば、横方向の幅が5mmであり且つ縦方向の長さが30mmである領域内の血管を露出する必要があり、完全にカバーされる選択的な分離を実現するために、ジェットの落ち点を左右に揺れ動き、同時にゆっくりと下へ移動し、それにより領域全体をカバーするように走査するのを実現する。単孔医療用ウォータージェットについて、そのジェットの落ち点の経路は、噴出孔の経路、ハンドルの経路と完全に同じである。しかしながら、多孔医療用ウォータージェットの場合、その複数のジェットが同時に噴射し、ハンドルの毎回の横方向の移動は、複数のジェットが同時に横方向に走査することに相当する。従って、対応する領域をカバーするように走査するのを完了するには、多孔医療用ウォータージェットのハンドルを僅かに横方向に移動するだけで済む。
【0146】
図13の例を参照すると、単孔医療用ウォータージェットは単線操作であり、多孔医療用ウォータージェットは複線操作であり、たとえば単孔医療用ウォータージェットの肝臓切断に必要な時間は約60分であり、三孔医療用ウォータージェットの肝臓切断に必要な時間は約20分である。理論的に、多孔医療用ウォータージェット(たとえばn孔医療用ウォータージェットと記す)のハンドルの横方向の移動回数は基本的に、単孔医療用ウォータージェットのハンドルの横方向の移動回数の1/nのみであり、対応する操作時間も元の約1/nに短縮され、これは、多孔ジェットは、単位時間当たりのジェット切断作用のカバー面積を向上させ、医療用ウォータージェットの作業効率を向上させ、それにより手術効率を向上させることができることを意味している。しかしながら、上記多孔ジェットで形成される集団効果により、さらに作業効率及び作業性能を向上させることができる。
【0147】
ハンドルの操作については、従来の単孔医療用ウォータージェットは高周波で横方向に揺動するが、本開示の実施例の多孔医療用ウォータージェットは低周波で横方向に揺動するだけでよく、手術操作の難易度を大幅に低減させることができ、特に内視鏡の手術環境において、複雑な操作は医師が単孔ウォータージェットを使用する過程の問題点の1つであり、従って、単孔ウォータージェットと多孔ウォータージェットの臨床応用上の差異はより明らかである。
【0148】
なお、本開示の少なくとも一実施例の多孔医療用ウォータージェットはさらに、単孔医療用ウォータージェットが発生しやすい、噴出孔が塞がれることで機器全体が故障するという問題を解決することができる。
【0149】
たとえば、従来の単孔医療用ウォータージェットの噴出孔が塞がれる故障率は約20%であり、単孔医療用ウォータージェットの噴出孔が塞がれることは、該手術機器が完全に動作できず、且つ修復できないことを直接引き起こし、手術プロセスに深刻な影響を与える。多孔医療用ウォータージェットを採用すると、たとえば四孔医療用ウォータージェットを例とし、四孔医療用ウォータージェットが完全に塞がれて動作できない故障率が0.16%未満に低下することができ、たとえば七孔医療用ウォータージェットを例とし、七孔医療用ウォータージェットが完全に塞がれて動作できない故障率は0.00128%未満に低下することができ、単孔医療用ウォータージェットの故障率より遥かに低く、したがって、多孔医療用ウォータージェットは医師が信頼できる機器となる。
【0150】
図14は、本開示のいくつかの実施例による多孔医療用ウォータージェットの処理効果図であり、
図15は、本開示のいくつかの実施例による単孔医療用ウォータージェットの処理効果図である。
【0151】
たとえば、いくつかの例において、
図14の実質組織の残留は
図15の実質組織の残留より遥かに少なく、
図14から分かるように、実質組織が基本的には完全に切断されて、除去され、
図14の分離領域の深さは
図15の分離領域の深さより大きく、且つ、
図14の管腔系組織の温存効果は
図15の管腔系組織の温存効果より優れる。したがって、多孔医療用ウォータージェットの選択的な分離効果は、単孔医療用ウォータージェットの選択的な分離効果より遥かに優れる。
【0152】
以上のように、本開示の実施例は臨床ニーズから、多孔医療用ウォータージェットを設計することができ、既存の単孔医療用ウォータージェットの技術的利点を維持する前提で、さらにウォータージェットの選択的な分離の手術効率及び効果を向上させ、手術操作を簡略化することができ、さらに噴出孔が塞がれるとウォータージェットが動作できないという問題を解決することができ、それにより対応する手術治療により理想的な技術的解決手段を提供する。
【0153】
なお、本開示の上記実施例において、医療用ウォータージェットの技術的解決手段を説明する場合に、それは対応する機能を実行するための素子又は物品に分割され、しかしながら、当業者が分かるように、各素子又は物品によって実行される機能は、上記分割に基づいて実行されてもよく、さらに他の分割方法に基づいて実行されてもよく、これは本開示の保護範囲を限定せず、且つ本開示の上記実施例の素子又は物品の意味と作用などは、その名称に限定されず、理想化又は極端に形式化された意味で解釈することができない。
【0154】
説明する必要があることは以下のとおりである。
【0155】
(1)本開示の実施例の図面は、本開示の実施例に関連する構造のみに関し、他の構造は通常の設計を参照してもよい。
【0156】
(2)矛盾しない限り、本開示の実施例及び実施例における特徴を互いに組み合わせて新しい実施例を得ることができる。
【0157】
以上の内容は、本開示の具体的な実施形態に過ぎず、本開示の保護範囲はそれに限定されず、本開示の保護範囲は特許請求の範囲の保護範囲と基準とするべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入端と、流出端と、医療用液体が流れる空間を提供するように構成される内部空洞とを含み、前記流入端が前記医療用液体が流れ込むように構成されるノズルパイプと、
複数の噴出孔を含み、前記複数の噴出孔が前記ノズルパイプの流出端と連通し、且つ前記複数の噴出孔が、前記流出端を通過する前記医療用液体を噴射するように構成されるノズルとを含む医療用ウォータージェット。
【請求項2】
前記ノズルは、多孔サブノズルを含み、前記多孔サブノズルに前記複数の噴出孔が開けられる、請求項1に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項3】
前記ノズルは、複数の単孔サブノズルを含み、前記複数の噴出孔の少なくとも一部の前記噴出孔は、それぞれ前記複数の単孔サブノズルに開けられる、請求項
1に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項4】
前記ノズルパイプの流出端はブラインド端であり、前記ブラインド端の少なくとも一部は前記ノズルとして用いられる、請求項
1に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項5】
前記ノズルパイプの流出端はブラインド端であり、前記ノズルは前記ノズルパイプの前記ブラインド端に配置される、請求項
2に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項6】
前記ノズルパイプの流出端はブラインド端であり、前記ノズルは前記ノズルパイプの前記ブラインド端に配置される、請求項3に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項7】
前記ノズルパイプは、両端が開口するカニューレであり、前記ノズルは、前記ノズルパイプの流出端に固定され、且つ前記ノズルは前記ノズルパイプの流出端に直接又は間接的に密封接続される、請求項
2に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項8】
前記ノズルパイプは、両端が開口するカニューレであり、前記ノズルは、前記ノズルパイプの流出端に固定され、且つ前記ノズルは前記ノズルパイプの流出端に直接又は間接的に密封接続される、請求項3に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項9】
吸引用外部パイプをさらに含み、前記吸引用外部パイプは前記ノズルパイプの外側に套設され、前記ノズルパイプの外壁と前記吸引用外部パイプの内壁との間の隙間空間は吸引用通路として用いられる、請求項
7に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項10】
吸引用外部パイプをさらに含み、前記吸引用外部パイプは前記ノズルパイプの外側に套設され、前記ノズルパイプの外壁と前記吸引用外部パイプの内壁との間の隙間空間は吸引用通路として用いられる、請求項8に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項11】
前記吸引用外部パイプの内径は3mm~7.6mmであり、前記吸引用外部パイプの外径は4mm~8mmであり、
前記ノズルパイプの内径は1.5mm~5mmであり、前記ノズルパイプの外径は2mm~6mmであり、
前記噴出孔の直径は0.05mm~0.15mmである、請求項
9に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項12】
前記吸引用外部パイプの内径は3mm~7.6mmであり、前記吸引用外部パイプの外径は4mm~8mmであり、
前記ノズルパイプの内径は1.5mm~5mmであり、前記ノズルパイプの外径は2mm~6mmであり、
前記噴出孔の直径は0.05mm~0.15mmである、請求項10に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項13】
前記複数の噴出孔は均一に設置さ
れ、
前記複数の噴出孔における隣接する2つの噴出孔の中心間距離は0.4mm~4.0mmであり、
前記複数の噴出孔から噴射される前記医療用液体のジェット流速は50メートル/秒~100メートル/秒である、請求項
1に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項14】
前記ノズルは、金属、宝石、プラスチックのうちの一種又は複数種の材料を含み、
前記ノズルパイプは、金属、プラスチックのうちの一種又は複数種の材料を含む、請求項
1に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項15】
前記ノズルパイプに固定されて密封接続され、前記ノズルは、前記嵌合ヘッドを介して前記ノズルパイプに接続される嵌合ヘッドをさらに含み、
前記嵌合ヘッドの流出端にザグリ溝が設けられ、前記ノズルは前記嵌合ヘッドの前記ザグリ溝内に設置され、前記ザグリ溝の側壁は前記ノズルを包み、前記複数の噴出孔、前記嵌合ヘッド及び前記ノズルパイプは、前記ノズルパイプに平行する軸方向に順に連通する、請求
項7に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項16】
前記ノズルパイプに固定されて密封接続され、前記ノズルは、前記嵌合ヘッドを介して前記ノズルパイプに接続される嵌合ヘッドをさらに含み、
前記嵌合ヘッドの流出端にザグリ溝が設けられ、前記ノズルは前記嵌合ヘッドの前記ザグリ溝内に設置され、前記ザグリ溝の側壁は前記ノズルを包み、前記複数の噴出孔、前記嵌合ヘッド及び前記ノズルパイプは、前記ノズルパイプに平行する軸方向に順に連通する、請求項8に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項17】
前記ノズルは、前記ノズルパイプの流出端の内側に密封固定される、請求項
7に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項18】
前記ノズルは、前記ノズルパイプの流出端の内側に密封固定される、請求項8に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項19】
両端が開口する保護スリーブをさらに含み、
前記ノズルパイプの流出端に第1ザグリ溝が設けられ、前記保護スリーブは前記ノズルパイプの前記第1ザグリ溝に嵌め込まれ、前記保護スリーブの流出端に第2ザグリ溝が設けられ、前記ノズルは前記保護スリーブの前記第2ザグリ溝に嵌め込まれ、前記複数の噴出孔、前記保護スリーブ及び前記ノズルパイプは、前記ノズルパイプに平行する軸方向に順に連通する、請求項
7に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項20】
両端が開口する保護スリーブをさらに含み、
前記ノズルパイプの流出端に第1ザグリ溝が設けられ、前記保護スリーブは前記ノズルパイプの前記第1ザグリ溝に嵌め込まれ、前記保護スリーブの流出端に第2ザグリ溝が設けられ、前記ノズルは前記保護スリーブの前記第2ザグリ溝に嵌め込まれ、前記複数の噴出孔、前記保護スリーブ及び前記ノズルパイプは、前記ノズルパイプに平行する軸方向に順に連通する、請求項8に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項21】
前記ノズルパイプの流出端はブラインド端であり、前記ノズルは前記ノズルパイプの前記ブラインド端に配置され、
前記ノズルパイプの前記ブラインド端は、1つのブラインド端表面と、前記ブラインド端表面から突出した第1サブ空間と前記ブラインド端表面から凹んだ第2サブ空間とを含む複数の階段孔とを含み、前記ノズルに含まれた複数の単孔サブノズルにおける各単孔サブノズルは、前記複数の階段孔における各階段孔の第1サブ空間に対応して嵌合される、請求項
3に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項22】
支持スリーブをさらに含み、
前記ノズルパイプの流出端は階段構造として設置され、前記支持スリーブは前記ノズルパイプの前記階段構造の形状にマッチングし、且つ前記支持スリーブは前記ノズルパイプの前記内部空洞に伸び込み、前記ノズルは前記支持スリーブの流出端に固定して接続され、
前記階段構造、前記支持スリーブ、前記ノズルが接続される一体構造の外側の空間の一部は射出成形領域として用いられる、請求項
7に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項23】
支持スリーブをさらに含み、
前記ノズルパイプの流出端は階段構造として設置され、前記支持スリーブは前記ノズルパイプの前記階段構造の形状にマッチングし、且つ前記支持スリーブは前記ノズルパイプの前記内部空洞に伸び込み、前記ノズルは前記支持スリーブの流出端に固定して接続され、
前記階段構造、前記支持スリーブ、前記ノズルが接続される一体構造の外側の空間の一部は射出成形領域として用いられる、請求項8に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項24】
前記吸引用外部パイプの前記ノズルから離れる側は、前記ハンドルに固定して接続される
ハンドル、
又は/及び、
前記吸引用外部パイプの前記ノズルから離れる端部と連通する吸引用接続パイプ、又は/及び、
前記ノズルパイプの前記ノズルから離れる端部と連通する噴射接続パイプをさらに含む、請求項
9に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項25】
前記吸引用外部パイプの前記ノズルから離れる側は、前記ハンドルに固定して接続されるハンドル、又は/及び、
前記吸引用外部パイプの前記ノズルから離れる端部と連通する吸引用接続パイプ、又は/及び、前記ノズルパイプの前記ノズルから離れる端部と連通する噴射接続パイプをさらに含む、請求項10に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項26】
前記複数の噴出孔は、対象組織を選択的に分離するために前記医療用液体を噴射するように構成される少なくとも2つの前記噴出孔を含む、請求項
1に記載の医療用ウォータージェット。
【請求項27】
請求項
1に記載の医療用ウォータージェットと、
前記医療用液体を提供するように構成される液体供給ユニットと、
前記医療用液体に圧力を印加して前記医療用液体を前記ノズルパイプの前記内部空洞に流入するように構成される圧力ポンプと、を含む、医療用システム。
【請求項28】
廃水タンクをさらに含み、
前記医療用ウォータージェットは、吸引用外部パイプをさらに含み、前記吸引用外部パイプは前記ノズルパイプの外側に套設され、前記ノズルパイプの外壁と前記吸引用外部パイプの内壁との間の隙間空間は吸引用通路として用いられ、
前記廃水タンクは前記吸引用外部パイプと連通する、請求項
27に記載の医療用システム。
【請求項29】
負圧吸引機をさらに含み、
前記負圧吸引機は前記廃水タンクに接続される、請求項
28に記載の医療用システム。
【国際調査報告】