(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】水力発電エネルギーシステムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
F03B 13/26 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
F03B13/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514105
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 US2022041895
(87)【国際公開番号】W WO2023034213
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524079007
【氏名又は名称】オーシャナ エナジー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パワー,ダニエル イー.,三世
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA06
3H074AA12
3H074BB15
3H074CC16
(57)【要約】
本開示による水力発電エネルギーシステムは、固定リング基礎部と固定リングバッキングとを含む固定リング構造体を備える。前記システムは、回転リング基礎部と、回転リング基礎部から半径方向外向きに配設されたブレード支持リングとを含む回転リング構造体をさらに備える。回転リング基礎部は、固定リング基礎部から半径方向外向きに配設され、回転軸を中心に固定リング基礎部の周りを回転するように構成される。前記システムは、さらに、固定リング基礎部の周りの回転リング基礎部の回転中に、固定リング構造体に対して回転リング構造体を支持するように構成された少なくとも1つのベアリング機構を備える。回転中に、固定リングバッキングは、流体の流動中において、圧縮され、積層された構成の固定リング基礎部、回転リング基礎部、およびブレード支持リングを支持するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水力発電エネルギーシステムであって、
固定リング基礎部と、前記固定リング基礎部によって形成された開口部内に少なくとも部分的に配設された固定リングバッキングとを含む固定リング構造体であって、前記固定リング基礎部は第1の複数の発電要素を有する、固定リング構造体と、
回転リング基礎部と、前記回転リング基礎部の外部円周面から半径方向外向きに配設されたブレード支持リングとを含む回転リング構造体であって、前記回転リング基礎部は第2の複数の発電要素を有し、前記回転リング基礎部は、前記固定リング基礎部の外部円周面から半径方向外向きに配設され、回転軸を中心に前記固定リング基礎部の周りを回転するように構成される、回転リング構造体と、
前記固定リング基礎部の周りの前記回転リング基礎部の回転中に、前記固定リング構造体に対して前記回転リング構造体を支持するように構成された少なくとも1つのベアリング機構と、
を備え、
前記固定リング基礎部の周りの前記回転リング基礎部の前記回転中に、前記固定リングバッキングは、前記回転軸と略平行な方向に流れる流体の流動中において、圧縮され、前記固定リング基礎部、前記回転リング基礎部、および前記ブレード支持リングをスタック(積み重ねられた)形態で支持するように構成される、
システム。
【請求項2】
前記ブレード支持リングが複数のブレードを含み、前記複数のブレードのそれぞれは、前記ブレード支持リングに対して半径方向内向きに延在する第1のブレード部と、前記ブレード支持リングに対して半径方向外向きに延在する第2のブレード部とを含み、前記複数のブレードは前記流体の流動と相互作用するように構成される、請求項1に記載の水力発電エネルギーシステム。
【請求項3】
前記回転リング基礎部が複数のスロットを含み、前記ブレード支持リングが複数のブレード支持セグメントを含み、各ブレード支持セグメントが前記複数のブレードの1つを含み、前記回転リング基礎部の各スロットがそれぞれのブレード支持セグメントを受け入れるように構成される、請求項2に記載の水力発電エネルギーシステム。
【請求項4】
前記回転リング基礎部および前記ブレード支持リングが単一のモノリシック構造である、請求項2に記載の水力発電エネルギーシステム。
【請求項5】
前記第1の複数の発電要素が複数の積層コイルを含み、前記積層コイルのそれぞれはそれぞれのブロックに内包され、各ブロックは前記固定リング基礎部のそれぞれのスロット内に嵌合される、請求項1に記載の水力発電エネルギーシステム。
【請求項6】
前記第2の複数の発電要素が複数の積層磁石を含み、前記積層磁石のそれぞれはそれぞれのブロックに内包され、各ブロックは前記回転リング基礎部のそれぞれのスロット内に嵌合される、請求項1に記載の水力発電エネルギーシステム。
【請求項7】
前記固定リングバッキングがコンクリート構造を含む、請求項1に記載の水力発電エネルギーシステム。
【請求項8】
前記固定リングバッキングが固定リングモールドを含み、前記固定リングモールドは、前記固定リングバッキングの外部円周面の周りに配設され、前記回転リング基礎部と接続するように構成される、請求項1に記載の水力発電エネルギーシステム。
【請求項9】
固定リング構造体および回転リング構造体を備える水力発電エネルギーシステムを製造する方法であって、
前記固定リング構造体の基礎部をプリントすること、ここで前記固定リング基礎部は前記固定リング基礎部の外部円周面に少なくとも1つのスロットを有し、前記少なくとも1つのスロットは第1の複数の発電要素を受け入れるように構成されており、
前記固定リング基礎部の内部円周面上に固定リングモールドを位置付けて、前記固定リングモールドおよび前記固定リング基礎部の間に内部キャビティを形成すること、
前記固定リング基礎部の前記外部円周面にベアリング材料を取り付けること、
前記ベアリング材料上に、前記水力発電エネルギーシステムの運転中に、前記固定リング構造体および前記回転リング構造体の間にベアリングギャップを形成するために摩耗するように構成された摩耗性材料の薄い層を挿入すること、
前記摩耗性材料上に、第2の複数の発電要素を受け入れるように構成された少なくとも1つのスロットを有する前記回転リング構造体の基礎部をプリントすること、
前記固定リングモールドおよび前記固定リング基礎部の間に形成された前記内部キャビティに、前記固定リング構造体のバッキングを形成するために硬化するように構成されたコア材料を充填すること、及び、
1つ以上のブレードを含むブレード支持リングをプリントすること、ここで、各ブレードは前記ブレード支持リングの半径方向内向きおよび前記ブレード支持リングの半径方向外向きの両方で延在し、前記ブレード支持リングは、前記回転リング構造体を形成するために前記回転リング基礎部と接続するように構成されており、
を含む方法。
【請求項10】
前記第1の複数の発電要素が積層コイルのリングおよび鉄製バッキングを含み、前記鉄製バッキングは、前記固定リング基礎部の前記少なくとも1つのスロット内に前記コイルを取り付けるように構成されたペグを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
さらに、前記第1の複数の発電要素を前記少なくとも1つのスロットに挿入し、前記少なくとも1つのスロット内の定位置で前記第1の複数の発電要素をエポキシ処理することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
複数のスロットと前記第1の複数の発電要素とを含む前記固定リング基礎部の前記少なくとも1つのスロットが、複数の積層コイルを含み、前記積層コイルのそれぞれはそれぞれのブロックに内包され、各ブロックは、前記複数のスロットのそれぞれのスロット内に受け入れられ、かつ嵌合するように構成される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記固定リング基礎部上に前記固定リングモールドを位置付けることが、前記固定リング基礎部を剛性の支持構造内に置き、前記固定リングモールドを前記支持構造上まで下げることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記固定リングモールドが1つ以上の開口部を有し、前記固定リングモールドが前記固定リング基礎部上に位置付けたときに、前記1つ以上の開口部は前記固定リング基礎部の反対に位置する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
さらに、それぞれの脚部を前記1つ以上の開口部のそれぞれに挿入することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
さらに、前記それぞれの脚部のそれぞれの上に足部を取り付けることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
さらに、前記摩耗性材料を挿入することに先立って、前記固定リング基礎部および前記固定リングモールドのアセンブリを前記剛性の支持構造から取り外し、前記脚部および前記足部によって前記アセンブリを支持することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
さらに、前記固定リングモールドおよび前記固定リング基礎部の間に形成された前記内部キャビティへの充填することに先立って、前記回転リング基礎部、前記固定リング基礎部、および前記固定リングモールドのアセンブリを前記剛性の支持構造内に置くことを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
さらに、前記ブレード支持リングをプリントすることに先立って、前記アセンブリを前記剛性の支持構造から取り外し、前記脚部および前記足部によって前記アセンブリを支持することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記剛性の支持構造から前記アセンブリを取り外すことが、前記固定リング構造体の前記バッキングから前記固定リングモールドを取り外すことを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記内部キャビティに前記コア材料を充填することが、前記内部キャビティ中にコンクリートを押出することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項22】
前記固定リング基礎部の前記外部円周面に前記ベアリング材料を取り付けることが、前記固定リング基礎部の前記外部円周面上に熱可塑性プラスチックベアリング材料のベニアをプリントすることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項23】
前記固定リング基礎部の前記外部円周面に前記ベアリング材料を取り付けることが、前記固定リング基礎部の前記外部円周面に沿って1つ以上のベアリングプレートを設置することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項24】
前記1つ以上のベアリングプレートがベスコナイト、リグナムバイタ、および/またはステンレス鋼材料から作られる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記固定リング基礎部の前記外部円周面に前記ベアリング材料を取り付けることが、前記固定リング基礎部の前記外部円周面に沿って1つ以上の磁性ベアリングを設置することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項26】
前記ベアリング材料上に前記摩耗性材料の前記薄い層を挿入することが、前記ベアリング材料上に摩耗性材料の前記薄い層をプリントすることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項27】
前記水力発電エネルギーシステムの運転中に、前記ベアリングギャップに流体が充填され、流体動圧ベアリングを形成するように構成される、請求項9に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の複数の発電要素が積層磁石のリングおよび鉄製バッキングを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項29】
さらに、前記回転リング基礎部の前記少なくとも1つのスロットに前記第2の複数の発電要素を挿入し、前記少なくとも1つのスロット内の定位置で前記第2の複数の発電要素をエポキシ処理することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記回転リング基礎部の前記少なくとも1つのスロットが複数のスロットを含み、前記第2の複数の発電要素が複数の積層磁石を含み、前記積層磁石のそれぞれはそれぞれのブロックに内包され、各ブロックは、前記複数のスロットのそれぞれのスロット内に受け入れられ、かつ嵌合するように構成される、請求項9に記載の方法。
【請求項31】
前記ブレード支持リングをプリントすることが、前記回転リング基礎部上に直接単一のモノリシック構造として前記ブレード支持リングをプリントすることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項32】
前記ブレード支持リングをプリントすることが、複数のブレード支持セグメントをプリントすることを含み、各ブレード支持セグメントはそれぞれのブレードを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項33】
前記回転リング基礎部が複数のブレードスロットを含み、各ブレードスロットは、前記ブレード支持セグメントの前記ブレードが前記回転リング基礎部の半径方向内向きおよび半径方向外向きの両方で延在するようにして、それぞれのブレード支持セグメントを受け入れるように構成される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
さらに、前記複数のブレードスロットのそれぞれにそれぞれのブレード支持セグメントを取り付けることを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ブレード支持リングをプリントすることが、前記ブレード支持リングの外皮をプリントすることを含み、前記外皮は中空の内部キャビティを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項36】
さらに、前記外皮をプリントした後に、前記中空の内部キャビティにコア材料を充填することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
水力発電エネルギーシステムの固定リング構造体を製造する方法であって、
前記固定リング構造体の基礎部をプリントすること、ここで前記基礎部はU字状の断面を有する環状の形状を有し、前記U字状の断面は、底部と、前記底部に対して略垂直に延在する第1および第2の側壁とを含み、前記基礎部は、複数の発電要素を受け入れるように構成された少なくとも1つのスロットを有しており、
前記基礎部の前記少なくとも1つのスロット内に前記複数の発電要素を取り付けること、
前記基礎部をモールドによって覆い、前記モールドが前記第1および第2の側壁に隣接して、前記基礎部およびモールドがともに封止された内部キャビティを形成するようにすること、及び、
前記内部キャビティに、前記固定リング構造体のバッキングを形成するために硬化するように構成されたコア材料を充填すること、
を含む、方法。
【請求項38】
さらに、前記基礎の外部円周面にベアリング材料を取り付けることを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記モールドが1つ以上の開口部を有し、前記モールドが前記基礎部を覆うときに、前記1つ以上の開口部は前記基礎部の反対に位置する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
さらに、前記1つ以上の開口部のそれぞれにそれぞれの脚部を挿入することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
さらに、前記脚部のそれぞれの上に足部を取り付けることを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記内部キャビティに前記コア材料を充填することが、前記内部キャビティ中にコンクリートを押出することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
前記複数の発電要素が複数の積層コイルを含み、前記積層コイルのそれぞれはそれぞれのブロックに内包され、前記少なくとも1つのスロット内に前記複数の発電要素を取り付けることは、前記少なくとも1つのスロットのそれぞれのスロット内に前記ブロックのそれぞれを嵌合することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
水力発電エネルギーシステムの回転リング構造体を製造する方法であって、
前記回転リング構造体の基礎部であり、U字状の断面を有する環状の形状を有し、複数の発電要素を受け入れるように構成された少なくとも1つのスロットを有する基礎部をプリントすること、
前記基礎部の前記少なくとも1つのスロットに前記複数の発電要素を取り付けること、及び、
1つ以上のブレードを含むブレード支持リングをプリントすること、
を含む方法であり、
各ブレードは、前記ブレード支持リングの半径方向内向きおよび前記ブレード支持リングの半径方向外向きの両方で延在し、前記ブレード支持リングは、前記回転リング構造体を形成するために前記基礎部と接続するように構成される、方法。
【請求項45】
前記ブレード支持リングをプリントすることが、前記ブレード支持リングを単一のモノリシック構造として直接前記回転リング基礎部の外部円周面上にプリントすることを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ブレード支持リングをプリントすることが、複数のブレード支持セグメントをプリントすることを含み、各ブレード支持セグメントはそれぞれのブレードを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記基礎部が複数のブレードスロットを含み、各ブレードスロットは、前記ブレード支持セグメントの前記ブレードが前記基礎の半径方向内向きおよび半径方向外向きの両方で延在するようにして、それぞれのブレード支持セグメントを受け入れるように構成される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
さらに、前記基礎部の前記複数のブレードスロットのそれぞれにブレード支持セグメントを取り付けることを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記ブレード支持リングをプリントすることが、前記ブレード支持リングの外皮をプリントすることを含み、前記外皮は中空の内部キャビティを有する、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
さらに、前記外皮をプリントした後に、前記中空の内部キャビティにコア材料を充填することを含む、請求項49に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、「水素の発生、回収、および分配のための装置、システム、および方法(Devices, Systems, and Methods for Hydrogen Generation, Collection, and Distribution)」という名称の2021年8月30日出願の米国仮特許出願第63/238,538号の優先権を主張し、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般的に、水力発電エネルギーシステム、および積層造形(アディティブマニュファクチュアリング:3Dプリンティング技術)を用いてそのようなシステムを製造する方法、より具体的には積層造形工程を用いて水力発電タービンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
序論
本明細書において使用される項の見出しは、単に構成上の目的のものであり、記載された主題を何ら限定するものではない。
【0004】
現在、再生可能エネルギー源を利用し、炭素ベースのエネルギー生成への依存を低下させることについて、世界中で関心が高まっている。例えば、風または水の流動などの流体流から変換される発電など、化石燃料への依存を低減するための種々のエネルギー生成技術が開発されている。このようなエネルギー変換システムは多くの場合にタービンに依存しており、ブレードが(例えば風または水からの)流体の流動と相互作用し、ロータを回転させ、発電機を回転させて発電する。
【0005】
水力発電エネルギーシステムにおいては、動く水体(例えば、河川または海の流動)または他の流体源の流動から発電するために水力発電タービンが用いられる。潮汐電力は、例えば、潮汐流動による水の動き、または潮汐による水位の上昇および低下を利用する。水が上昇した後に下降すると、流れまたは流体の流動が発生する。例えば河川からの一方向流も、発電に利用可能な流動を発生する。
【0006】
水力発電エネルギーは、液体(例えば水)の流動の自然の動きに依存するため、再生可能エネルギー源に分類される。しかし、風力や太陽光などの他の再生可能エネルギー源とは異なり、水力発電エネルギーは確実に予測可能である。水流は、クリーンで信頼性があり、何年も前に予測可能な再生可能な電力源であり、既存のエネルギー系統への統合が容易である。また、水(海水等を含む)の基本的な物理的特性、すなわち密度(空気832倍であり得る)と非圧縮性により、再生可能エネルギーを発生する他の再生可能エネルギー源と比較して、固有の「超高エネルギー密度」ポテンシャルを保持する。このポテンシャルは、多くの沿岸/河川地点および/または世界中の使用可能な地点に存在する体積および流量を加味すると増強される。
【0007】
電力系統への配電のための電気の生成以外に、流体流エネルギー変換システム等の再生可能エネルギー源は、これらのシステムで生成された電気で電解機器(電解装置)を動作させることにより、水素を生成するために使用できる。水力発電エネルギーシステムは、大きい水体に依存して共存するため、電解を使用する水素の生成に特に好適である。電解工程によって発生する水素は、例えば、非炭素ベースの燃料として貯蔵して使用することができる。
【0008】
したがって、水力発電エネルギーは、無公害の電気、水素生成等の効率的かつ長期的なエネルギー源を提供でき、石油、天然ガス、および石炭への世界の現行の依存を低減する。化石燃料資源の消費を低減することにより、世界の大気中への温室ガスの放出を低減することができる。
【0009】
一般に、水力発電タービン(これらは流体の流動からの運動エネルギーを機械的な回転エネルギーに変換する)を用いる発電が知られている。しかし、水力発電エネルギーシステムは一般的に比較的複雑であり、カスタムのコンポーネントや部品が必要とされ、このようなシステムのために大量生産するには高価である。また、一般的に複数の部品を固定する必要があるような大型かつ複雑なシステムを設置場所で組み立てることによっても課題が生じる。
【0010】
堅牢な構成を有し、生産および組み立てが効率的な水力発電エネルギーシステムを提供することが望ましい。また、例えば設置場所において組み立てが必要な部品点数を最小限に抑えることができる設計の水力発電エネルギーシステムを提供することが望ましい。また、設計の自由度が高く、用途に応じた拡張性のある水力発電エネルギーシステムを提供することがさらに望ましい。
【発明の概要】
【0011】
本開示の例示的な実施形態は、上述の望ましい特徴の1つ以上を示す。他の特徴および/または利点は以下の記載から明らかになるであろう。
【0012】
付加的な目的および利点は以下の説明において部分的に記載され、その一部は説明から明らかになるか、または本教示を実施することにより分かり得る。本開示の目的および利点の少なくとも一部は、特に添付の特許請求の範囲において指摘される要素および組み合わせによって実現および達成できる。
【0013】
本開示の1つの態様によれば、水力発電エネルギーシステムが提供される。前記水力発電エネルギーシステムは、固定リング基礎部(foundation)と、固定リング基礎部によって形成された開口部内に少なくとも部分的に配設された固定リングバッキングとを含む固定リング構造体を備える。固定リング基礎部は第1の複数の発電要素を有する。前記水力発電エネルギーシステムは、回転リング基礎部と、回転リング基礎部の外部円周面の半径方向外向きに配設されたブレード支持リングとを含む回転リング構造体をさらに備える。回転リング基礎部は第2の複数の発電要素を有する。回転リング基礎部は、固定リング基礎部の外部円周面の半径方向外向きに配設され、回転軸を中心に固定リング基礎部の周りを回転するように構成される。前記水力発電エネルギーシステムは、さらに、固定リング基礎部の周りの回転リング基礎部の回転中に、固定リング構造体に対して回転リング構造体を支持するように構成された少なくとも1つのベアリング機構を備える。固定リング基礎部の周りを回転リング基礎部が回転する間に、固定リングバッキングは、回転軸と略平行な方向で流れる流体の流動中において、圧縮され、積層された構成(スタック構成)の固定リング基礎部、回転リング基礎部、およびブレード支持リングを支持するように構成される。
【0014】
本開示の別の態様によれば、固定リング構造体および回転リング構造体を備える水力発電エネルギーシステムを製造する方法が提供される。前記方法は、固定リング構造体の基礎をプリントすることを含む。固定リング基礎部は、固定リング基礎部の外部円周面に少なくとも1つのスロットを有する。少なくとも1つのスロットは第1の複数の発電要素を受け入れるように構成される。前記方法は、加えて、固定リング基礎部の内部円周面上に固定リングモールドを位置付けて、固定リングモールドおよび固定リング基礎部の間に内部キャビティを形成することを含む。前記方法は、固定リング基礎部の外部円周面にベアリング材料を取り付けることも含む。前記方法は、さらに、ベアリング材料上に摩耗性材料の薄い層を挿入することを含む。水力発電エネルギーシステムの運転中に、摩耗性材料は、固定リング構造体および回転リング構造体の間にベアリングギャップを形成するために摩耗するように構成される。前記方法は、摩耗性材料上に回転リング構造体の基礎部をプリントすることも含む。回転リング基礎部は、第2の複数の発電要素を受け入れるように構成された少なくとも1つのスロットを有する。加えて、前記方法は、固定リングモールドおよび固定リング基礎部の間に形成された内部キャビティにコア材料を充填することを含む。コア材料は、固定リング構造体のバッキングを形成するために硬化するように構成される。前記方法は、さらに、1つ以上のブレードを含むブレード支持リングをプリントすることを含む。各ブレードは、ブレード支持リングの半径方向内向きおよびブレード支持リングの半径方向外向きの両方で延在する。ブレード支持リングは、回転リング構造体を形成するために回転リング基礎部と接続するように構成される。
【0015】
本開示の追加の態様によれば、水力発電エネルギーシステムのための固定リング構造体を製造する方法が提供される。前記方法は、固定リング構造体の基礎部をプリントすることを含む。基礎部は、U字状の断面を有する環状の形状を有する。U字状の断面は、底部と、底部に対して略垂直に延在する第1および第2の側壁とを含む。基礎部は、複数の発電要素を受け入れるように構成された少なくとも1つのスロットを有する。前記方法は、基礎部の少なくとも1つのスロット内に複数の発電要素を取り付けることも含む。前記方法は、加えて、基礎部をモールドによって覆うことを含み、その結果、モールドが第1および第2の側壁に隣接し、基礎部およびモールドはともに封止された内部キャビティを形成する。前記方法は、さらに、内部キャビティにコア材料を充填することを含む。コア材料は、固定リング構造体のバッキングを形成するために硬化するように構成される。
【0016】
本開示のさらなる態様によれば、水力発電エネルギーシステムのための回転リング構造体を製造する方法が提供される。前記方法は、回転リング構造体の基礎部をプリントすることを含む。基礎部はU字状の断面を有する環状の形状を有し、複数の発電要素を受け入れるように構成された少なくとも1つのスロットを有する。前記方法は、基礎部の少なくとも1つのスロット内に複数の発電要素を取り付けることも含む。前記方法は、さらに、1つ以上のブレードを含むブレード支持リングをプリントすることを含む。各ブレードは、ブレード支持リングの半径方向内向きおよびブレード支持リングの半径方向外向きの両方で延在する。ブレード支持リングは、回転リング構造体を形成するために基礎部と接続するように構成される。
【0017】
上述の一般的な記載および以下の詳細な記載はいずれも例示的かつ説明的であって、均等物を含む本開示および特許請求の範囲を制限しないということは理解されるべきである。本開示および特許請求の範囲は、例示的な態様および実施形態の1つ以上を有することなしに最も広い意味で実施され得るということは理解されるべきである。例えば、当業者であれば、水力発電エネルギーシステムおよび方法に関係する以下の詳細な記載が例示であり、開示されるシステムおよび方法が種々の構成要素を有し、これらが種々の水力発電タービン、機械エネルギー伝達構成要素、ギアアセンブリ、および発電機を利用して機械エネルギーを回収、伝送して電気エネルギーに変換するということを理解するであろう。
【0018】
本明細書に組み込まれかつその一部を構成する添付の図面は、本開示の種々の非限定的実施形態を示し、その説明とともに、ある原理を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の実施形態による水力発電エネルギーシステムの前面斜視図である。
【
図2】
図1の水力発電エネルギーシステムの前面図である。
【
図3】
図2の断面3-3で切り取った、
図1の水力発電エネルギーシステムの断面図である。
【
図4】
図1の水力発電エネルギーシステムの分解図である。
【
図5】
図1の水力発電エネルギーシステムの固定リング基礎部の斜視図である。
【
図7A】本開示の種々の実施形態による固定リング基礎部の概略的な部分断面図である。
【
図7B】本開示の種々の実施形態による固定リング基礎部の概略的な部分断面図である。
【
図7C】本開示の種々の実施形態による固定リング基礎部の概略的な部分断面図である。
【
図7D】本開示の種々の実施形態による固定リング基礎部の概略的な部分断面図である。
【
図7E】本開示の種々の実施形態による固定リング基礎部の概略的な部分断面図である。
【
図8】本開示の別の実施形態による固定リング基礎部の概略的な部分断面図である。
【
図9】本開示の実施形態による
図8の固定リング基礎部内への受け入れのための嵌合ブロックの1セットの斜視図である。
【
図10】本開示の実施形態による複数の積層コイル嵌合ブロックを組み込む
図8の固定リング基礎部の断面図である。
【
図11】本開示の実施形態による積層コイル嵌合ブロックを連結するためのワイヤハーネスを示す部分的概略図である。
【
図12】
図1の水力発電エネルギーシステムの固定リングモールドの斜視図である。
【
図14】
図1の水力発電エネルギーシステムの固定リングバッキングの斜視図である。
【
図16】
図1の水力発電エネルギーシステムの回転リング基礎部の斜視図である。
【
図18A】本開示の種々の実施形態による回転リング基礎部の概略的な部分断面図である。
【
図18B】本開示の種々の実施形態による回転リング基礎部の概略的な部分断面図である。
【
図18C】本開示の種々の実施形態による回転リング基礎部の概略的な部分断面図である。
【
図18D】本開示の種々の実施形態による回転リング基礎部の概略的な部分断面図である。
【
図18E】本開示の種々の実施形態による回転リング基礎部の概略的な部分断面図である。
【
図19A】本開示の実施形態によるブレード支持リングの1つのセクションの断面図である。
【
図19B】本開示の実施形態によるブレード支持リングの1つのセクションの断面図である。
【
図20】本開示の別の実施形態による回転リング基礎部の斜視図である。
【
図22】本開示の別の実施形態による水力発電エネルギーシステムの前面図である。
【
図23】
図22の断面23-23で切り取った、
図22の水力発電エネルギーシステムの断面図である。
【
図24】
図22の水力発電エネルギーシステムの固定リングバッキングの斜視図である。
【
図26】本開示の別の実施形態による水力発電エネルギーシステムの概略的な拡大部分断面図である。
【
図27】
図26の水力発電エネルギーシステムの概略的な拡大部分断面図であり、本開示の実施形態による第1のOリング構成を示す。
【
図28】
図26の水力発電エネルギーシステムの概略的な拡大部分断面図であり、本開示の別の実施形態による第2のOリング構成を示す。
【
図29】
図26の水力発電エネルギーシステムの概略的な拡大部分断面図であり、本開示のさらに別の実施形態による第3のOリング構成を示す。
【
図30】本開示の実施形態による剛性の支持構造の斜視図である。
【
図32】本開示の実施形態による水力発電エネルギーシステムを製造する方法を示す概略的な部分断面図である。
【
図33】本開示の実施形態による水力発電エネルギーシステムを製造する方法を示す概略的な部分断面図である。
【
図34】本開示の実施形態による水力発電エネルギーシステムを製造する方法を示す概略的な部分断面図である。
【
図35】本開示の実施形態による水力発電エネルギーシステムを製造する方法を示す概略的な部分断面図である。
【
図36】本開示の実施形態による水力発電エネルギーシステムを製造する方法を示す概略的な部分断面図である。
【
図37】本開示の実施形態による水力発電エネルギーシステムを製造する方法を示す概略的な部分断面図である。
【
図38】本開示の実施形態による水力発電エネルギーシステムを製造する方法を示す概略的な部分断面図である。
【
図39】本開示の実施形態による水力発電エネルギーシステムを製造する方法を示す概略的な部分断面図である。
【
図40】本開示の実施形態による濾過機構を組み込む水力発電エネルギーシステムの概略的な部分断面図である。
【
図41】本開示の別の実施形態による水力発電エネルギーシステムを製造する方法を示す概略的な部分断面図である。
【
図42】本開示の別の実施形態による水力発電エネルギーシステムを製造する方法を示す概略的な部分断面図である。
【
図43】本開示の別の実施形態による水力発電エネルギーシステムを製造する方法を示す概略的な部分断面図である。
【
図44】本開示の別の実施形態による内部キャビティを有するブレード支持リングを組み込む水力発電エネルギーシステムの概略的な部分断面図である。
【
図45】本開示の尚も別の実施形態によるディンプルを組み込む水力発電エネルギーシステムの概略的な部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、上述の問題の1つ以上を解決し、および/または上述の望ましい特徴の1つ以上を達成する。他の特徴および/または利点は以下の記載から明らかになるであろう。
【0021】
本開示は、固定リング構造体と、回転軸を中心に固定リング構造体に対して回転するように構成される回転リング構造体とを含む水力発電タービンを備える水力発電エネルギーシステムを想定するものである。本開示によるタービンは、例えば、回転リング構造体に対して半径方向内向きにおよび半径方向外向きに両方で延在するブレード部を有する複数のブレードを有してもよい。このように、回転リング構造体の回転軸と概して平行な方向の流れ成分を持つ流体流はブレード部に対して作用し、それによって、回転リング構造体を、回転軸を中心に回転させる(
図1の流体流Fおよび軸A参照)。
【0022】
本開示の水力発電エネルギーシステムは、過去のボディ・オン・リング設計/アーキテクチャとは異なる簡単な設計/アーキテクチャを有する水力発電タービンを想定している。例えば、そのようなボディ・オン・リングアーキテクチャは、一般的に台座リング(例えばステータ)およびブレード支持リング(例えばロータ)を構造部材として利用し、タービン上に加えられた応力はリングを通して伝えられ、タービンは2つの方向からエネルギーを回収するように構成される(例えば、タービンは、流れがタービンの両(反対)側から来る場合がある二方向流中において機能するように構成される)。そのようなアーキテクチャにおいては、種々の構成要素が2つのリングのそれぞれの上に締結および搭載されて、完全に組み立てられたタービンを形成する。本開示は、積層造形(AM)方法を利用してリング(固定リング構造体および回転リング構造体)のそれぞれをプリントすることを想定し、それによって、プリント工程中に通常であればリングに締結される部品をリング自体に組み込むことによって、タービンを単純化する。従って、本開示で想定されるシステムおよび方法は、タービンの部品を統合して、タービンの組み立て時間、コスト、および複雑さを大幅に削減しながら、タービンの強度および寿命を向上できる。水力発電タービンのリングを製作するための積層造形方法により、タービン構造体の設計の自由度や製造時の拡張性の利点も得られる。
【0023】
1つの実施形態において、例えば、プリントされた水力発電タービン構造体は単純なスタック(積み重ね)構成を有し、これにおいては、固定リング構造体が最初にプリントされ、ブレードを含む回転リング構造体が固定リング構造体上にプリントされる。
図1に示されるように、例えば、タービンが、回転軸Aと概して平行である指向性の成分を有する一方向流体流F(例えば、流れがタービンの上流側からのみ来る一方向流F)中に位置するときに、リングの積層性は有利である。その結果、固定リング構造体の周りの回転リング構造体の回転中に、固定リング構造体は流体流F中において圧縮され、回転リング構造体を支持することができる。
【0024】
ここで
図1~
図21を参照して、本開示による水力発電エネルギーシステム100を例示する。水力発電エネルギーシステム100(例えば水力発電タービン100)は、第1の複数の発電要素を有する固定リング構造体102と、回転軸Aを中心に固定リング構造体102に対して回転するように構成された、第2の複数の発電要素を有する回転リング構造体104とを備える。上述のように、システム100はスタック構成を有し、この構成において、回転リング構造体104の構成要素が、固定リング構造体102の構成要素を覆い、それに対して回転するように構成される。例えば、おそらく
図3Aの拡大断面図において最も良く示されるように、固定リング構造体102は、固定リングバッキング113およびバッキング113を覆う(すなわち、それから半径方向外向きに配設された)固定リング基礎部112の形態のコア構造を含む。一方で、回転リング構造体104は、固定リング基礎部112を覆う(すなわち、それから半径方向外向きに配設された)回転リング基礎部105と、回転リング基礎部105を覆う(すなわち、それから半径方向外向きに配設された)ブレード支持リング101とを含む。このように、回転リング構造体104の構成要素(すなわち、回転リング基礎部105およびブレード支持リング101)は、固定リング構造体102の構成要素(すなわち、固定リング基礎部112および固定リングバッキング113)に対して略同心カップ状で配設され、その結果、回転リング構造体104は回転軸Aを中心に固定リング構造体102の外側表面の周りを回転し得る。タービン100は、さらに以下で説明するように固定リング構造体102の周りを回転リング構造体104が回転中に、固定リング構造体102に対して回転リング構造体104を支持するように構成された少なくとも1つのベアリング機構をさらに備えてもよい。
【0025】
図3Aに示されるように、固定リングバッキング113はタービン100のコア構造を形成し、固定リング基礎部112によって形成された開口部117(
図5および
図6参照)内に少なくとも部分的に配設される。
図5および6に示されるように、1つの実施形態において、固定リング基礎部112は、開口部117を形成するU字状の断面130を有する環状の形状を有する。U字状の断面130は、底部134と、底部134に対して略垂直に延在する第1および第2の側壁131および135とを含む。固定リングバッキング113は、固定リング基礎部112と接続するように対応したサイズおよび形状であり、バッキング113の少なくともある部分が基礎部112の開口部117に嵌合して埋め、それによって、タービン100のコア構造を形成する。種々の実施形態において、例えば、バッキング113は、製造工程中に固定リング基礎部112の開口部117に吐出される例えばコンクリート材料などの注加性および/または押出可能な材料からなる。そのような材料により開口部117を完全に埋め、硬化してバッキング113を形成する。
【0026】
1つの実施形態においては、
図3Aに示されるように、固定リングバッキング113は固定リングモールド103を含むことができ、これが固定リングバッキング113の外部円周面119の周りに配設されて(
図14および
図15参照)、バッキング113の外側シェルを形成する。そのような実施形態においては、モールド103および固定リング基礎部112とで、固定リングバッキング113を形成する材料が充填される内部キャビティが(すなわち、固定リングモールド103および固定リング基礎部112の間に)形成できる。モールド103は、例えば、回転リング構造体104(例えば、固定リング基礎部112を覆う回転リング基礎部105)に隣接してタービン100の比較的滑らかな連続的な外側表面を形成するように構成できる。
【0027】
従って、固定リングバッキング113は、タービン100の他の外側の構成要素ための(例えば、ブレード支持リング101、回転リング基礎部105、および固定リング基礎部112)のための内側の支持構造として機能するように設計され、タービン100の運転中に流体流中において他のコンポーネントを支持するように構成される。固定リングバッキング113は、例えば、回転軸Aと概して平行である一方向流体流Fとのブレード支持リング101の相互作用からタービン100を通して受け渡される圧縮力を支持するように設計されている(すなわち、固定リングバッキング113は圧縮されるように設計されている)。
【0028】
当業者であれば、本開示によるタービンはタービンの圧縮荷重を支持するためのバッキングの様々な種類、形状、および/または構成を採用でき、これらは種々の技術を使用して種々の材料から作られ、固定リングバッキング113およびモールド103は例示であることを理解するであろう。別の実施形態においては、
図22~25に示されるように、例えば、水力発電エネルギーシステム(例えばタービン)200は固定リングバッキング213のみを代わりに採用し、これが直接回転リング構造体204(例えば、固定リング構造体202の固定リング基礎部212を覆う回転リング基礎部205)に隣接して、さらに後述するようにタービン200の比較的滑らかな連続的な外側表面を形成する。
【0029】
当業者であれば、固定リングバッキング113および/またはモールド103が、タービン100を構造的に支持するために種々の追加の構成要素および/または特徴を採用し得るということも理解するであろう。
図12~
図15に示されるように、固定リングバッキング113および固定リングモールド103のそれぞれは、1つ以上のそれぞれの開口部141および140を含むことができ、これらは、タービン100の1つ以上の脚部110を受け入れ、支持するように構成される(
図1、
図3、および
図4参照)。脚部110は、例えば、タービン100が作動していないときに(例えば、タービン100が流体の流動F中で支持されるのではないときに)タービン100を支持するように構成できる。1つの実施形態においては、
図1、
図3、図および4に示されるように、タービン100は、固定リングモールド103の周縁の周りの互いに等距離で離間された4つの脚部110を採用し得る。
【0030】
固定リング基礎部112は、第1の複数の発電要素122、例えば1つ以上の積層コイル122および第1のベアリング材料126、例えば1つ以上のベアリングプレート126も含む。
図5~
図7に示されるように、固定リング基礎部112は、例えば、底部134ならびに/または側壁131および135に配置された1つ以上のスロット132を含むことができ、これらは積層コイル122およびベアリングプレート126を受け入れるように構成される。
図7A~
図7Eに示されるように、固定リング基礎部112は、さらに以下で説明するように、積層コイル122およびベアリングプレート126の種々の配置を受け入れるように構成された種々の配置のスロット132を有することができる(
図18A~
図18E参照)。積層コイル122およびベアリングプレート126は、回転リング基礎部105上に種々の配置で位置する対応する磁石152およびベアリングプレート156と相互作用するように位置付けられている。の当業者は、
図3~7について記載および例示される固定リング基礎部112は例示であり、本開示が、種々の形状および構成を有し、かつ第1の発電要素122(例えば積層コイル122)および第1のベアリング材料126(例えばベアリングプレート126)の様々な種類、構成、および/または配置の受け入れのためのスロットの種々の配置を有する固定リング基礎部を想定することを理解するであろう。
【0031】
さらに、積層コイル122およびベアリングプレート126は、例えば、種々の方法および/または技術を使用して、さらに後述のプリント工程中にスロット132内に配置することができる。1つの実施形態において、例えば、積層コイル122は、コイル122をスロット132内に取り付けるように構成される鉄製バッキングによってリング状に配置される。各鉄製バッキングは、例えば、スロット132と係合する1つ以上のペグ(図示せず)を含むことができ、積層コイル122はスロット132内の定位置でエポキシ処理されていてもよい。別の実施形態においては、
図8~
図10に示されるように、積層コイル122およびベアリングプレート126のそれぞれは、それぞれのブロック(例えば、LEGO(登録商標)型ブロック)121に内包されていてもよい。これは、基礎112のそれぞれのスロット132内に受け入れられ、かつ嵌合するように構成され、その結果、コイル122およびプレート126はそれぞれが固定リング基礎部112の周縁の周りにリング状に配置される。各ブロック121は、例えば、各スロット132内の対応する凹状の嵌合部133と嵌合するように構成される凸状の嵌合部123を含むことができる。
図11に示されるように、それから、積層コイル122は、当業者であれば理解できるように、適用される用途へのタービン100からの電気の受け渡しを容易にするためにワイヤハーネス127によってともに連結され得る。1つの実施形態においては、例えば、ワイヤハーネス127からのワイヤはタービン100の脚部110から引き出され得る。
【0032】
図3Aにさらに示されるように、回転リング構造体104は、固定リング基礎部112の外部円周面118から半径方向外向きに配設されている回転リング基礎部105を含む(
図5および
図6参照)。
図16および
図17に示されるように、1つの実施形態において、回転リング基礎部105は、底部153と、底部153に対して略垂直に延在する第1および第2の側壁151および157とを含むU字状の断面150を有する環状の形状を有する。回転リング基礎部105は、固定リング基礎部112を覆いかつそれと接続するように対応したサイズおよび形状である。
【0033】
固定リング基礎部112と同様に、回転リング基礎部105は、第2の複数の発電要素152、例えば1つ以上の積層磁石152および第2のベアリング材料156、例えば1つ以上のベアリングプレート156を含む。
図16~
図18に示されるように、回転リング基礎部105は、例えば、底部153ならびに/または側壁151および157に配置された1つ以上のスロット154を含むことができ、これらは、積層磁石152およびベアリングプレート156を受け入れるように構成される。
図18A~
図18Eに示されるように、回転リング基礎部105は、回転リング基礎部105が固定リング基礎部112に対して相対的に回転したときに、固定リング基礎部112上の対応する積層コイル122およびベアリングプレート126と相互作用するように位置しかつ構成される積層磁石152およびベアリングプレート156の種々の配置を受け入れるように構成されたスロット154の種々の配置を有することができる(
図7A~
図7E参照)。当業者は、
図3および
図16~
図18について記載および例示される回転リング基礎部105は例示であり、本開示は、種々の形状および構成を有し、かつ第2の発電要素152(例えば、積層磁石152)および第2のベアリング材料156(例えば、ベアリングプレート156)の様々な種類、構成、および/または配置の受け入れのためのスロットの種々の配置を有する回転リング基礎部を想定することを理解するであろう。磁石152およびベアリングプレート156も、例えばそれぞれのLEGO(登録商標)型ブロックを含む種々の方法および/または技術を使用して、(例えばプリント工程中にも)スロット154内に置くことができる。これらは、コイル122およびベアリングプレート126について上述したように、基礎105上のそれぞれのスロット154内に受け入れられ、かつ嵌合するように構成される。
【0034】
回転リング構造体104は、回転リング基礎部105の外部円周面115から半径方向外向きに配設されているブレード支持リング101も含む(
図16および
図17参照)。その結果、それは、固定リング基礎部112に対して回転リング基礎部105を回転させるために流体の流動Fと相互作用するように構成される。ブレード支持リング101は複数のブレード108を含み、
図1の実施形態では8つのブレード108が示され、これらは流体の流動Fと相互作用するように構成される。各ブレード108は、例えば、ブレード支持リング101に対して半径方向内向きに延在する第1のブレード部109と、ブレード支持リング101に対して半径方向外向きに延在する第2のブレード部107とを有する。
【0035】
図4、
図19A、および
図19Bに示されるように、1つの実施形態においては、ブレード支持リング101は複数のブレード支持セグメント106を含み、各ブレード支持セグメント106は複数のブレード108の1つを含み、ブレード支持セグメント106は全てが回転リング基礎部105の周縁の周りにリング状に配置される。そのような実施形態においては、おそらく
図16および
図17において最も良く示されるように、回転リング基礎部105は、その外部円周面115に配置された複数のスロット116を含むことができ、各スロット116は、それぞれのブレード支持セグメント106を受け入れ、固定するように構成される。ブレード支持セグメント106は例えばボルト111によってスロット116内に固定され得る(
図4参照)。しかしながら、当業者であれば、本開示および請求項の範囲から逸脱することなしに、ブレード支持セグメント106が公知の方法および/または技術によってスロット116に/内に固定され得るということを理解するであろう。
【0036】
当業者であれば、さらに、
図4、
図19A、および
図19Bに例示されるブレード支持リング101は例示であり、本開示によるブレード支持リングがブレード108の種々の形状、設計、および/または構成を含むことができることを理解するであろう。別の実施形態においては、例えば
図20および
図21に示されるように、回転リング基礎部は、回転リング基礎部およびブレード支持リングが単一のモノリシックな回転構造155であり、ブレード108は構造155の外側周縁の周りに配置されるようにして、ブレード支持リングを組み込み得る。
【0037】
上述のように、タービン100は少なくとも1つのベアリング機構(例えば、第1のベアリング材料126および第2のベアリング材料156)も含み、これは、固定リング基礎部112の周りの回転リング基礎部105の回転中に固定リング構造体102(例えば、半径方向におよび/または軸方向に)に対して回転リング構造体104を支持するように構成される。種々の実施形態によれば、第1および第2のベアリング材料126および156は、
図7A~
図7Eおよび
図18A~
図18Eに示されるように、固定リング基礎部112および回転リング基礎部105上のそれぞれのスロット132および154内に位置した水潤滑ベアリングプレートを含むことができる。例えば、固定リング基礎部112上のベアリングプレート126は、例えばバージニア州ポウハタンの北米リグナムバイタ(Lignum-Vitae)などから市販の木材もしくは複合木材および/または例えばベスコナイトなどの複合材料から作られた帯を含むことができる一方、回転リング基礎部105上のベアリングプレート156は炭素繊維および/またはステンレス鋼材料を含むことができる。
図3Aに示されるように、ベアリングプレート126および156は、タービン100の運転中に、ギャップ170(すなわち、固定リング基礎部112および回転リング基礎部105の間の)に流体(例えば、タービンが運転している環境からの水)が浸入して、プレート126および156を潤滑し、流体動圧ベアリング効果が生じるように位置決めされてもよい。
【0038】
換言すると、ベアリングプレート126は、固定リング基礎部112の外部円周面118に沿って位置し、ベアリングプレート156の反対に配置され、これらは回転リング基礎部105の内部円周面114および/または外部円周面115に沿って位置する。このように、システム中に流体がないときにはベアリング材料は互いを摩擦し(すなわち、表面間にギャップがない)、流体(例えば海水)が導入されるときにはギャップ170が形成され、その結果、ギャップ170を流れる流体が、タービン100の半径方向および軸方向の荷重を抑えるための流体動圧ベアリング効果(すなわちプレート126および156の表面の間の)を提供し得る。そのような流体動圧ベアリングを採用するときには、
図40に示されるように、タービン100は濾過機構180も含むことができる。これは、さらに以下で説明するようにかつ内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる、本願と同時出願の「水力発電タービンのための濾過システムおよび方法(Filtration Systems and Methods for Hydroelectric Turbines)」という名称の国際特許出願に開示されるように、流体がギャップ170に入る前に流体流Fからデブリおよび/または微粒子物質を濾過するように構成される。
【0039】
当業者には理解されるように、
図3A、
図7A~
図7E、および
図18A~
図18Eについて示され記載されたベアリングプレート126および156を有する上述の流体動圧ベアリング機構を含むベアリング機構は、例示であり、種々の材料から形成されたプレートの種々の配置および構成を有し、ならびに/あるいは公知のベアリング機構および/またはシステムと共に使用できる。種々の追加の実施形態は、さらに以下で説明するように、固定リング基礎部112および/または回転リング基礎部105の表面上に直接ベアリング材料をプリントすることも想定する。
【0040】
さらに、固定リング構造体102に対して(軸方向におよび/または半径方向に)回転リング構造体104を支持し得るベアリングの他の種類、構成、および配置も可能であり、例えば、
図26~
図29に例示される磁性ベアリングを含む。
図26に示されるように、水力発電タービン300は、回転リング構造体304(すなわち、第2の発電要素352を有する回転リング基礎部305とブレード支持リング301とを含む)を含むことができる。これは、磁性ベアリング機構330によって、固定リング構造体302(すなわち、第1の発電要素322を有する固定リング基礎部312と、固定リングバッキング313とを含む)に対して支持される。磁性ベアリング機構は、例えば、回転リング基礎部305上の第2の部分的なハルバッハ磁石アレイ334の反対に位置する固定リング基礎部312上の第1の部分的なハルバッハ磁石アレイ332を含むことができる。種々の実施形態によれば、上述の流体動圧ベアリングと同様に、磁石アレイ332および334は、タービン300の運転中に、ギャップ370(すなわち、固定リング基礎部312および回転リング基礎部305の間の)に流体(例えば、タービンが運転している環境からの水)が浸入して、磁石アレイ332および334を分離し、反発効果を促進するようにして位置決めされてもよい。
【0041】
種々の追加の実施形態においては、
図27~
図29に示されるように、Oリング335がギャップ370内の種々の地点に置かれて、水が磁性ベアリング機構330に干渉すること(例えば、磁性ベアリング機構330を収容するギャップ370の部分に入ること)を防止し得る。Oリング335を利用するそのような配置は、タービン300が鉄に富む環境に設けられる用途において、流体流中の鉄屑粉が磁性ベアリング機構に干渉することを防止するために有益であり得る。そのような用途において、タービンは、上述のようにかつ本願と同時出願の「水力発電タービンのための濾過システムおよび方法(Filtration Systems and Methods for Hydroelectric Turbines)」という名称の国際特許出願に開示されるように、濾過機構も採用し得る。
【0042】
当業者であれば、タービン100、200、および300が例示であり、ベアリングギャップの種々の形状によって分離される種々の回転リングおよび固定リング基礎部設計を利用する種々のタービンの設計、形状、および構成が、本開示の範囲から逸脱することなしに採用できることを理解するであろう。
【0043】
ここで
図30~
図39を参照して、本開示によるタービンを製造する例示的な方法を、タービン100を参照して説明する。上述のように、本開示は、積層造形(AM)方法を利用して固定リング構造体102および回転リング構造体104のそれぞれをプリントすることを想定し、それによって、通常であればリング102および104に締結される部品を、プリント工程中にリング自体に組み込むことによって、タービン100を単純化する。このように、以前は複数の部品を1つのリングに別々に取り付ける必要があり、同様に別々の部品を取り付けるための締結具使用が必要であり、それらがタービンの故障箇所であったが、それが本開示のAM技術を用いて製造されたタービンでは解消されうる。このように、複数の部品を1つの部品に(回転リング構造体および固定リング構造体に)まとめることで、部品を薄くすることができるなど、部品全体の材料が少ななり、故障箇所が少なくなる。
【0044】
本開示の実施形態は、固定リング構造体102および回転リング構造体104のそれぞれをプリントするために例えば炭素繊維強化熱可塑性プラスチックなどの構造的に強い材料を使用することも想定する。水力発電タービンは過去には高強度の低重量構成要素を製造するための複合材料を使用して製造されているが、積層造形(AM)は、ブレード支持リングの掃過面積Arおよびタービンの等価質量Meqの間の比をさらに最大化するための機会を与える。各タービンは、例えば、発電および投資のリターンを最大化しながら、特定の必要に応えるために調整された全体論的解決を提供するように設計できる。設計はデザインファイルに保存され、後でタービンの組み立て中に現場でプリントできる。さらに、固定リング構造体102および回転リング構造体104のそれぞれは、タービンの種々の用途およびサイズに応えるために(記憶されたデザインファイルによって)難なくスケーリングされる。このように、AMは、従来の製造アプローチを使用して過去には可能ではなかったタービン形状を可能にする。したがって、プログラムされたAMプリントによって、ボタンを押すだけで、それらが地表のどこに存在しても、広範囲の自然の流動から流動エネルギーを回収するための広範囲の固有のタービンがプリントできる。
【0045】
例えば、上述のように、プリントされた水力発電タービン100は単純なスタック構成を有し、これにおいては、固定リング構造体102が最初にプリントされ、回転リング構造体104が固定リング構造体102上にプリントされる。1つの実施形態によれば、最初のステップにおいては、固定リング構造体の基礎部(すなわち固定リング基礎部112)がプリントされる。このプリント工程中に、固定リング基礎部112のU字状のボディ(例えばU字状の断面130を有する)が、例えば、リップ139(
図5、
図6、および
図32参照)、及び第1の複数の発電要素122および第1のベアリング材料126を後で受け入れるためのスロット132とともに、形成される。固定リング基礎部112は、当業者が精通しているプリント工程中に追加される種々の材料を使用してプリントすることができる。種々の実施形態は、例えば、固定リング基礎部をプリントするために、例えば炭素繊維強化熱可塑性プラスチックなどの腐食およびバイオファウリングに対しても耐性でありながら構造的に強い材料を使用することを想定する。
【0046】
プリント工程の一時停止中に、第1の発電要素(例えば、積層コイル122)をスロット132内に挿入および固定する。コイル122は、上述のように、例えばマウントペグによっておよび嵌合ブロック(例えば、LEGO(登録商標)型ブロック)121内への内包を含む種々の技術および方法を使用して、スロット132内に取り付けることができる。種々の実施形態においては、この段階において、第1のベアリング材料126(例えばベアリングプレート126)も同じ様式でスロット32内に取り付けることができる。
【0047】
次いで、
図32に示すように、プリントされた固定リング基礎部112を剛性の支持構造160内に置く。剛性の支持構造160は、固定リング基礎部112を受け入れるような形状および構成の内部キャビティ162を含む(
図30および
図31参照)。それから、例えば、固定リングモールド103などのモールドを、固定リング基礎部112の内部円周面138上に(例えば、固定リング基礎部112の開口部117上に)位置付けて、内部キャビティ177(
図33~
図36参照)を固定リングモールド103および固定リング基礎部112の間に形成する。モールド103は、例えば、プリント工程の別のステップにおいて予めプリントされ、
図32に示されるように、固定リング基礎部112を保持する支持構造160上まで下げられ得る。種々の実施形態において、固定リングモールド103は1つ以上の開口部140を含むことができる。これらは、固定リングモールド103を固定リング基礎部112上に位置付けるときに、固定リング基礎部112の反対に位置付けられる。そのような実施形態においては、それぞれの脚部110は、それから、1つ以上の開口部140のそれぞれから内部キャビティ177に挿入され、足部144がそれぞれの脚部110のそれぞれの上に取り付けられる。
【0048】
次いで、部分的なタービンアセンブリ(すなわち、固定リング基礎部112および固定リングモールド103を含む)を、剛性の支持構造160から取り外し、脚部110の上にひっくり返すことができる。その結果、ここで、アセンブリは脚部110および足部144によって支持される。この有利な位置においては、
図33に示されるように、種々の実施形態において、第1のベアリング材料126は固定リング基礎部112の外部円周面118に取り付けられ得る。1つの実施形態において、第1のベアリング材料126は、ベアリングプレート126の形態であり、例えば、上述のように、嵌合ブロック(例えば、LEGO(登録商標)型ブロック)121内へ内包することによって、固定リング基礎部112上の残りのスロット132内に取り付けられる。別の実施形態においては、スロット132内にベアリングプレート126を設置する代わりに、アセンブリをプリンタに戻し、
図35に示されるように、第1のベアリング材料126を固定リング基礎部112の外部円周面118上に直接プリントする。そのような実施形態においては、例えばベスコナイトなどのサーモポリマーまたは熱可塑性プラスチックベアリング材料の特性を有する材料が、外部円周面118の1つ以上の部分に、例えばスロット132内に、またはベニアとして平坦な表面上に(例えば、スロットをプリントしないとき)、例えば
図7A~
図7Eに例示される種々の構成で直接プリントされる。
図35に示されるように、ベアリング材料126を、固定リング基礎部112の外部円周面118全体の上にベニアとしてもプリントしてもよい。
【0049】
第1のベアリング材料126を設置したならば、種々の実施形態においては、
図34および
図35に示されるように、摩耗性材料128の薄い層をベアリング材料126上に挿入する。摩耗性材料128は、例えば、プリント工程中の回転リング構造体104から固定リング構造体102を分離し(例えば、それぞれ固定リング構造体102および回転リング構造体104上に位置するベアリング材料126および156を分離し)、その後、回転リング構造体104が固定リング構造体102に対して回転し始めるときに(例えば、タービン100が流体の流動F中に設置されるときに)摩耗して、流体が充填されたギャップ170を構造102および104の間に形成するように構成される。このように、摩耗性材料は、回転中の構造102および104の間に生じる摩擦によって分解する材料であればよい。1つの実施形態において、例えば、摩耗性材料128は、ベアリング材料126上に挿入される薄い紙シートを含むことができる。別の実施形態において、摩耗性材料は、固定リング構造体112の外部円周面118および第1のベアリング材料126上に直接プリントされる分解性の材料を含むことができる。
【0050】
次に、
図36に示されるように、回転リング構造体104の基礎(すなわち回転リング基礎部105)をプリントする。プリント工程のこの部分において、回転リング基礎部105のU字状のボディ(例えばU字状の断面150を有する)は、固定リング基礎部112の外側円周面118上に(例えば摩耗性材料128上に)プリントされる。例えば、回転リング基礎部105は、固定リング基礎部112のリップ139と係合するように構成された対応するリップ159(
図16、
図17、および
図36参照)、及び、第2の複数の発電要素152および第2のベアリング材料156の後の受け入れのためのスロット154と共に、また場合により、ブレード支持セグメント106の後の受け入れのためのスロット116と共に、プリントされる。1つの実施形態においては、
図36に示されるように、回転リング基礎部105は、固定リングモールド103に隣接して、固定リング構造体102および回転リング構造体104の間の比較的滑らかな移行部を形成するように(すなわち、タービン100の比較的滑らかな連続的な外側表面を形成するように)も構成される。固定リング基礎部112と同様に、回転リング基礎部105も、当業者が精通しているプリント工程中に追加される種々の異なる材料を使用してプリントすることができる。種々の実施形態は、回転リング基礎部105をプリントするために、例えば炭素繊維強化熱可塑性プラスチックなどの腐食およびバイオファウリングに対しても耐性でありながら構造的に強い材料を使用することも考えられる。
【0051】
プリント工程における別の一時停止中に、第2の発電要素(例えば磁石152)および第2のベアリング材料(例えばステンレス鋼プレート156)を、スロット154内に挿入および固定する。磁石152およびステンレス鋼プレート156は、上述のように、例えばスロット内でエポキシ処理されることおよびスロット154内への挿入のための嵌合ブロック(例えば、LEGO(登録商標)型ブロック)121内への内包を含む種々の技術および方法を使用して、スロット154内に取り付けることができる。別の実施形態においては、スロット154内にベアリングプレート156を設置する代わりに、アセンブリをプリンタに戻し、第2のベアリング材料156を、回転リング基礎部105の1つ以上の部分に、例えばスロット154内に、またはベニアとして平坦な表面上に(例えば、スロットがプリントされないとき)、例えば
図18A~
図18Eに例示される種々の構成で直接プリントしてもよい。
【0052】
固定リングバッキング113を形成するために、
図37に示されるように、部分的なタービンアセンブリ(すなわち、回転リング基礎部105、固定リング基礎部112、および固定リングモールド103)を、その後、剛性の支持構造160に戻してもよい(例えば、再度、剛性の支持構造160のキャビティ162内に置く)。内部キャビティ162(
図30および
図31参照)もまた、例えば、回転リング基礎部105(ここで、これは部分的なタービン構造体の外側層を含む)を受け入れるような形状および構成である。この有利な位置においては、
図37に示されるように、固定リングモールド103は支持構造160に対して上方に延在し、それによって支持され、内部キャビティ177(例えば、固定リングモールド103および固定リング基礎部112の間の)にコア材料を充填することができる。その後、コア材料は内部キャビティ内に圧送および/または押出され、硬化して固定リング構造体102のバッキング113を形成する。1つの実施形態においては、例えば、コンクリートがキャビティ177内に押出されて、固定リングバッキング113を形成する。
【0053】
しかしながら、当業者であれば、固定リングバッキング113は、固定リングモールド103および固定リング基礎部112の間に形成されたキャビティ177内にコンクリートを押出する方法を含む非限定的な種々の方法および種々の材料を使用して形成され得るということを理解するであろう。当業者であれば、さらに、固定リングバッキング113はプリント工程中の種々の時点において形成され得るということを理解するであろう。例えば、本開示の追加の実施形態は、キャビティ177内に脚部110を設置することに先立って工程において先に、固定リングバッキング113を形成すること(例えば、キャビティ177にコア材料を充填すること)を想定する。
【0054】
図38および
図39に示すように、その後、部分的なタービンアセンブリを剛性の支持構造160から再び取り外し、脚部110上に再度ひっくり返し(すなわち、再び脚部110および足部144によって支持される)、回転リング基礎部105を露出させる。それから、ブレード支持リング101をプリントし、回転リング基礎部105に取り付ける。上述のように、1つの実施形態において、ブレード支持リング101は複数の個別のブレード支持セグメント106としてプリントされる。ここで、各ブレード支持セグメント106はタービン100のためのそれぞれのブレード108を含む。それから、ブレード支持セグメント106は、各ブレードスロットがそれぞれのブレード支持セグメント106を受け入れるようにして回転リング基礎部105のブレードスロット116内に取り付けられる。ブレード支持セグメント106は、例えば、スロット116内にエポキシ処理され、および/またはボルト111によってボルト留めされる(
図4参照)。別の実施形態において、ブレード支持リング101は単一のモノリシック構造として直接回転リング基礎部105上にプリントされる。
【0055】
ブレード支持リング101は、当業者が精通しているプリント工程中に追加される種々の異なる材料を使用して、回転リング基礎部105と同じ材料からプリントされる。種々の実施形態は、ブレード支持リング101をプリントするために、例えば炭素繊維強化熱可塑性プラスチックなどの腐食およびバイオファウリングに対しても耐性でありながら構造的に強い材料を使用することをここでも想定することができる。
図44に示されるように、種々の追加の実施形態は、さらに、ブレード支持リング101(例えば、それぞれの個別のセグメント106)が中空の内部キャビティ187を有するようにして、ブレード支持リング101の外側シェル(例えば外皮)183のみ、例えばそれぞれの個別のブレード支持セグメント106の外皮183のみをプリントすることを想定できる。それから、中空の内部キャビティ187に、上述の固定リングバッキング113の形成と同様に、例えば注加性の/押出可能なコンクリート材料などの硬化し得るコア材料を充填する。
【0056】
当業者は、タービン100を参照して上述の製造方法およびプリント工程は例示であり、想定される方法は、プリントされた構成要素(すなわち、ブレード支持リング101、回転リング基礎部105、固定リング基礎部112、および固定リングモールド103)が種々の追加の特徴を有するようにして種々の追加のステップを含むことができ、ステップは異なる順序で実行され得ることを理解するであろう。
【0057】
別の実施形態においては、例えば
図40に示されるように、回転リング構造体104は、ギャップ170の上流に置かれる濾過機構180を受け入れるようにも構成でき、その結果、内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる、本願と同時出願の「水力発電タービンのための濾過システムおよび方法(Filtration Systems and Methods for Hydroelectric Turbines)」という名称の国際特許出願に開示されるように、流体流Fはギャップ170に入る前にまず濾過機構180を通して導かれる。そのような実施形態においては、ブレード支持リング101および回転リング基礎部105は1つ以上の開口部171を有してプリントされ、これらはそれぞれが、それぞれのチャンネル172によってギャップ170に接続する。各開口部171はそれぞれの濾過機構(例えばフィルタ)180を受け入れるように構成され、例えば、各開口部171はそれぞれの濾過機構180を取り外し可能に受け入れ、その結果、濾過機構180はメンテナンスおよび交換目的で容易に設置および取り外しの両方が可能である。種々の実施形態において、例えばプリント工程中に、開口部171は、各ブレード支持セグメント106(および対応するブレードスロット116)に形成されるか、またはさもなければブレード108を含むブレード支持リング101の部分に形成される。その結果、開口部171はブレード部107および109の間に位置する。
【0058】
さらに別の実施形態においては、
図45に示されるように、回転リング構造体104および固定リング構造体102の種々の部分は表面テクスチャリングを有してプリントすることができ、その結果、タービン100の外表面190の1つ以上の部分がテクスチャリングされる。
図45に示されるように、1つの実施形態において、ブレード支持リング101、回転リング基礎部105、および固定リングモールド103の部分は、ディンプルを有してプリントすることができ、その結果、タービン100の外表面190全体が、ブレード108および脚部110を例外としてディンプル付きとなる。当業者であれば、当分野において公知のテクスチャリングの様々な種類および構成が、プリント工程中にタービンの種々の表面に適用されるということを理解するであろう。
【0059】
タービン200(
図22~
図25参照)を製造する改変された方法を
図41~
図43に例示する。上述のように、タービン200は固定リングバッキング213のみを採用し、バッキング213に対する外側シェルとしての固定リングモールド203を含まない。それゆえに、固定リングバッキング213は、直接回転リング構造体204に隣接してタービン200の比較的滑らかな連続的な外側表面を形成するように製造され、固定リングモールド203はプリント工程中に取り外される。
図41に示されるように、上述の方法と同様に、予めプリントされた固定リング基礎部212を支持構造260内に置き、固定リングモールド203を、固定リング基礎部212上に(例えば、固定リング基礎部212およびモールド203の間にキャビティ277を形成するように)位置付け、1つ以上の脚部210を、固定リングモールド203上のそれぞれの穴240に挿入する。図示されていないが、上述のように、その後、アセンブリを脚部210上にひっくり返し、ベアリング材料を取り付け、摩耗性材料を挿入し、回転リング基礎部205をプリントする。次いで、
図42に示されるように、アセンブリを支持構造260に戻し、上述のように固定リングバッキング213を形成するためにキャビティ277にコア材料を充填する。固定リングバッキング213が形成されたならば(すなわち、コア材料が硬化してモールド203の形状を取る)、
図43に示されるように、モールド203をバッキング213から取り外し、ブレード支持リング(図示せず)のプリントのためにアセンブリを支持構造260から再び取り外す。上記の改変された方法を使用することは例えばより大きいタービン用途にとって有利であり得る。この方法では、新たな固定リングモールドを各タービンについてプリントする代わりに、複数のタービンを製造するために固定リングモールド203を再利用することが有益であり得る。
【0060】
本明細書および例示的な実施形態を示す添付図面は、本開示を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書および特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の機械的、組成的、構造的、電気的、および動作上の変更を加えたり、均等物で置換したりすることができる。本開示を曖昧にすることを避けるため、周知の構造および技術については、図示や詳細な説明を省略している場合がある。さらに、ある実施形態で詳細に説明された構成要素およびそれに関連する特徴は、現実的な場合であれば、特にそれらが図示または説明されていない他の実施形態にも含まれ得る。例えば、ある構成要素がある実施形態で詳細に説明され、第2の実施形態では説明されていない場合でも、その構成要素は第2の実施形態に含まれ得る。
【0061】
なお、本明細書において、単数形「a」、「an」、および「the」ならびに任意の単語の単数形での使用は、明確かつ明示的に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含む。本明細書において使用される用語「含む」およびその文法上の変形は、非限定的であることを意図しており、列記された項目の記載は、列記された項目に置換または追加可能な他の同様の項目を排除するものではない。
【0062】
さらに、本明細書の用語は本開示を限定するものではない。例えば、空間的に相対的な用語、例えば「上流」、「下流」、「下(beneath)」、「下(below)」、「下(lower)」、「上(above)」、「上(upper)」、「前(forward)」、「前(front)」、「後(behind)」などは、図の向きに例示されるように、1つの要素または特徴に対する別の要素または特徴の関係性を記載するために用いられてもよい。これらの空間的に相対的な用語は、図で示された位置および向きに加えて、使用または運転中の装置の異なる位置および向きを含むことを意図している。例えば、図中の装置が反転される場合には、他の要素または特徴の「下(below)」または「下(beneath)」と記載された要素は他の要素または特徴の「上(above)」または「上(over)」であろう。したがって、例示的な用語「下(below)」は上および下の位置および向き両方を含むことができる。装置はその他の向き(90度回転させた向きなど)であってもよく、本明細書において使用される空間的に相対的な記述(用語等)は然るべく解釈される。
【0063】
さらなる変更および代替的な実施形態は、本明細書の開示から当業者には明らかであろう。例えば、システムは、動作を明確にするために図時および説明を省略した構成要素が追加されてもよい。したがって、本明細書は、例示と解釈されるべきであり、本開示のシステムおよび方法を実行する一般的な態様を当業者に教示する目的である。本明細書において示された種々の実施形態は例示的なものである。本明細書の記載から当業者には明らかなように、構成要素および材料ならびにそれらの構成要素および材料の配置は、本明細書において示されるものと置換されてもよく、部品および工程は逆であってもよく、本教示の特定の特徴は独立して利用されてもよい。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、ここに記載された構成要素を変更することができる。
【0064】
本明細書において記載される特定の例および実施形態は非限定的なものであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構造、寸法、材料、および方法を変更することができる。本開示による他の実施形態は、本明細書に開示された発明の説明および実施形態から当業者には明らかであろう。説明および実施例は例示的なものであり、均等物を含む全範囲の権利を有することを意図する。
【符号の説明】
【0065】
100 水力発電エネルギーシステムのタービン
101 ブレード支持リング
102 固定リング構造体
103 固定リングモールド
104 回転リング構造体
105 回転リング基礎部
106 ブレード支持セグメント
107 ブレード部
108 ブレード
109 ブレード部
110 脚部
111 ボルト
112 固定リング基礎部
113 固定リングバッキング
A 回転軸
F 流体流(流動)
【国際調査報告】