(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】保存されたコラーゲン結合組織を作製するための方法、コラーゲン結合組織、その使用及び組織インプラント用キット
(51)【国際特許分類】
A61L 27/24 20060101AFI20240822BHJP
A61F 2/02 20060101ALI20240822BHJP
A61F 2/26 20060101ALI20240822BHJP
A61F 2/14 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61L27/24
A61F2/02
A61F2/26
A61F2/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514372
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 BR2022050348
(87)【国際公開番号】W WO2023028681
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】1020210174650
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524080966
【氏名又は名称】ラブコー ラボラトリオス リミターダ
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ホヴィアノ カサグランデ イヴァン セルジオ
(72)【発明者】
【氏名】パディルハ フンケイラ デ ソウザ グスタヴォ
【テーマコード(参考)】
4C081
4C097
【Fターム(参考)】
4C081AB11
4C081AB18
4C081AB21
4C081AB36
4C081AB37
4C081BA12
4C081BB09
4C081CD121
4C081DA04
4C081EA02
4C081EA12
4C097AA28
4C097AA30
4C097BB01
4C097EE19
4C097MM02
4C097MM04
(57)【要約】
本発明は、コラーゲン線維の構造的完全性を達成し、免疫及び/又は炎症拒絶を引き起こすことなく組織をインプラントでの使用に適するようにする、コラーゲン結合組織の保存に関し、この保存は、コラーゲン結合組織を緩衝溶液中でトリミングするステップと、結合組織を緩衝溶液で洗浄するステップと、組織をエタノール溶液中で安定化するステップと、組織をポリエチレングリコール溶液で処理するステップと、組織をエタノール中で洗浄及び保管するステップと、組織をエタノール及び過酸化水素溶液で滅菌するステップと、輸送のために組織をエタノール及びインドメタシン溶液中で貯蔵するステップと、を含む。本発明の好ましい使用は、人体の様々な異常を矯正するための外科的介入におけるもので、その場合、移植片が特に必要とされる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保存されたコラーゲン結合組織を生成するための方法であって、
a)ドナーから取り出した後、前記コラーゲン結合組織を緩衝溶液中でトリミングするステップと、
b)前記結合組織をステップa)に記載した前記緩衝溶液で洗浄するステップと、
c)50%エタノール溶液で前記組織を安定化するステップと、
d)ポリエチレングリコール溶液で前記組織を処理するステップと、
e)50%エタノール中で前記組織を洗浄及び保管するステップと、
f)50%エタノール溶液及び1.5%過酸化水素(H
2O
2)で前記組織を滅菌するステップと、
g)前記組織をエタノール溶液50%及びインドメタシン中で輸送するために貯蔵するステップと、
を含むことを特徴とする、保存されたコラーゲン結合組織を生成するための方法。
【請求項2】
ステップa)の前記緩衝溶液は、リン酸緩衝溶液及び塩化ナトリウム(NaCl)0.9%の溶液であることを特徴とする、請求項1に記載の保存されたコラーゲン結合組織を生成するための方法。
【請求項3】
前記リン酸緩衝溶液は、リン酸一塩基性ナトリウム(NaH
2PO
4)0.1体積%とリン酸二塩基性ナトリウム(Na
2HPO
4)0.6体積%とからなる混合物であることを特徴とする、請求項2に記載の保存されたコラーゲン結合組織を生成するための方法。
【請求項4】
ステップa)の前記緩衝溶液は、5℃~15℃の範囲の温度であることを特徴とする、請求項1に記載の保存されたコラーゲン結合組織を生成するための方法。
【請求項5】
ステップa)のpHは、7.3~7.5の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の保存されたコラーゲン結合組織を生成するための方法。
【請求項6】
ステップb)の前記緩衝溶液の体積は、心膜片当たり500mlであることを特徴とする、請求項1に記載の保存されたコラーゲン結合組織を生成するための方法。
【請求項7】
ステップc)の組織安定化温度は、2℃~10℃の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の保存されたコラーゲン結合組織を生成するための方法。
【請求項8】
ステップd)の前記ポリエチレングリコール溶液は、ポリエチレングリコール6体積%、塩化ナトリウム(NaCl)32体積%、リン酸緩衝溶液13体積%、及び過酸化水素(H
2O
2)2体積%の混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の保存されたコラーゲン結合組織を生成するための方法。
【請求項9】
ステップd)の組織処理温度は、2℃~8℃の範囲であることを特徴とする、請求項1又は8に記載の保存されたコラーゲン結合組織を生成するための方法。
【請求項10】
ステップe)の前記エタノール溶液50%の温度は、約25℃であることを特徴とする、請求項1に記載の保存されたコラーゲン結合組織を生成するための方法。
【請求項11】
インドメタシンの濃度は、約0.05体積%であることを特徴とする、請求項1に記載の保存されたコラーゲン結合組織を生成するための方法。
【請求項12】
前記結合組織の洗浄、安定化及び清浄化のステップを3~6回、好ましくはステップb)について5~6回、ステップc)について3回、及びステップe)について3~5回繰り返すことを特徴とする、請求項1に記載の保存されたコラーゲン結合組織を生成するための方法。
【請求項13】
前記結合組織の処理、安定化及び滅菌のステップは、24~96時間の浸漬時間で、好ましくは各反復について、ステップc)で24時間、ステップd)で96時間及びステップf)で24時間実施されることを特徴とする、請求項1に記載の保存されたコラーゲン結合組織を生成するための方法。
【請求項14】
コラーゲン結合組織であって、ドナーから摘出され、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法に従って保存及び安定化されたコラーゲン結合組織を含むことを特徴とする、コラーゲン結合組織。
【請求項15】
前記組織は、不均質移植片であることを特徴とする、請求項14に記載のコラーゲン結合組織。
【請求項16】
請求項14に記載のコラーゲン結合組織と、エタノール50体積%及びインドメタシン約0.05体積%の混合物を含む貯蔵溶液と、を含むことを特徴とする、保存されたコラーゲン結合組織を生成するためのキット。
【請求項17】
人体の任意の領域又は器官への適用を目的とすることを特徴とする、請求項14又は15に記載のコラーゲン結合組織の使用。
【請求項18】
心臓手術、眼科手術、神経手術及び人体の部分を矯正するための手術における移植片としての適用を目的とすることを特徴とする、請求項17に記載のコラーゲン結合組織の使用。
【請求項19】
陰茎湾曲の矯正を目的とすることを特徴とする、請求項18に記載のコラーゲン結合組織の使用。
【請求項20】
顔面再建を目的とすることを特徴とする、請求項18に記載のコラーゲン結合組織の使用。
【請求項21】
顎関節(TMJ)における強直を修復するためであることを特徴とする、請求項20に記載のコラーゲン結合組織の使用。
【請求項22】
歯牙顔面変形を修復するためであることを特徴とする、請求項20に記載のコラーゲン結合組織の使用。
【請求項23】
顔面の骨折から生じる変形を修復するためであることを特徴とする、請求項20に記載のコラーゲン結合組織の使用。
【請求項24】
障壁及び補充剤の形態としての舌組織の縫合及び再建のためであることを特徴とする、請求項20に記載のコラーゲン結合組織の使用。
【請求項25】
前記再建は、誘導骨再生(GBR)によって行われることを特徴とする、請求項24に記載のコラーゲン結合組織の使用。
【請求項26】
顔の骨裏打ちのためであることを特徴とする、請求項20又は23に記載のコラーゲン結合組織の使用。
【請求項27】
顎の頬組織を得るためであることを特徴とする、請求項20に記載のコラーゲン結合組織の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲン結合組織を作製するための方法、このようにして作製された組織、及びその使用に焦点を当てる。特に、本発明は、コラーゲン線維の構造的完全性を提供するためのコラーゲン結合組織の保存に言及し、前記組織を、免疫及び/又は炎症拒絶反応のないように、インプラントで使用に適するようにする。本発明は、好ましくは、人体の様々な異常を矯正するための外科的介入において利用され、その場合、移植片が特に必要とされる。
【背景技術】
【0002】
移植片又はインプラントの領域では、コラーゲン結合組織を使用する最新技術におけるいくつかの例がある。例えば、特許文献1は、コラーゲンを含有する生体材料を処理して、石灰化を低減又は軽減し、埋め込み型デバイスとして使用され得る生体材料の寿命を改善する方法と、その製造方法を開示している。特許文献2は、生体適合性複合インプラント及びその形成方法を開示し、この複合インプラントは、グルタルアルデヒドを使用せずに処理された架橋コラーゲン組織のフレームワークと細長い部材とを備え、これらがフレームワークの長さ全体にわたって互いに接触した状態に保たれる。
【0003】
それにもかかわらず、医学の分野では、いかなる免疫及び/又は炎症拒絶反応も伴わずに、コラーゲン線維を受容体にインプラントすることができるように、動物ドナー源からのコラーゲン結合組織を処理するための改善された方法が依然として必要であり、これが本発明の主目的である
【0004】
本発明は、使用を、ヒトにおける再建外科的処置における使用に限定するものではないが、以下では、外科的処置における従来の移植片の2つの用途を説明する。その第一は、(i)陰茎湾曲の矯正であり、その第二は、(ii)ヒトにおける顔面再建の適用である。
【0005】
(i)陰茎湾曲:
医学の分野において周知であるように、陰茎、男性の性器は、勃起状態にあるとき、ほとんどの男性において、ある程度の曲率を示す。陰茎の軸上の20度未満の方向転換(desvios)は、正常であると考えられ、概して、例えば、挿入に悪影響を及ぼさず、したがって、男性の性生活に問題を引き起こさない。しかしながら、20度を超える方向転換は、病理学的であると考えられ、世界中の男性の少なくとも10%が罹患している。湾曲の程度によっては、貫通が困難になることも、あるいは不可能になることさえある。誇張された陰茎湾曲は、先天性起源であることも、あるいはペロニー病によって引き起こされることもある。この状態は良性であり、患者の健康リスクを伴わないが、患者の性生活及び心理学に深刻な問題を引き起こすことがある。
【0006】
陰茎は、男性が性的に興奮すると、サイズが大きくなって、勃起する能力を有する器官である。これは、その解剖学的構造に起因して可能であり、その解剖学的構造は、中心において尿道海綿体と呼ばれる組織の束によって形成され、その内部において尿道が通過し、側面において陰茎海綿体と呼ばれる組織の2つの束によって形成される。これらの組織は、男性が性的に興奮するときに血液で満たされる内部空間を有し、貫通を可能にし、その結果として性行為を可能にする等して、サイズを大きくして、より硬いものにする。これらの組織は、白膜(tunica albuginea)と呼ばれる順応性のある組織(tecido complacente)によって外部からコーティングされる。
【0007】
ペロニー病は、40歳を超える男性に最もよく見られ、概して、患者の性生活の過程で起こり得る白膜における微小外傷によって引き起こされる。これらの微小外傷の治癒プロセスにおいて、線維組織は、線維症領域における血管の順応性を低下させるプラーク又は結節の形態で、白膜において発達し得る。線維症領域において、この順応性が失われることにより、陰茎が勃起するとき、陰茎海綿体は完全に膨張できず、陰茎は湾曲する。
【0008】
長年にわたって、この問題の治療を専門とする外科医は、この問題を改善する目的で様々な技術を開発しようと試みてきた。しかしながら、そのほとんどは、成功率が低かった。
【0009】
今日利用されている技術の1つは、線維症の影響を受けない側を外科的に減少させることからなる、いわゆる「ひだ術(plicatura)」であるが、この処置は、陰茎のサイズを小さくするので、ほとんどの男性にとって望ましくない影響を及ぼす。
【0010】
別の一般的な技術は、線維組織を外科的に摘出し、何らかのタイプの組織移植片と交換することからなる。それは、自家移植片型又は自己移植片型(tipo autologo ou autoenxerto)で、身体の一部の組織を同じ個体の別の身体の落ち部の組織への移植が行われるものか、(b)同種同系移植片(isoenxerto)、同種異系移植片(aloenxerto)又は同種移植片(enxerto homologo)で、移植が同じ種の別の動物の身体の組織で行われか、個体とは異なる遺伝子型を有するものか、あるいは(c)異種移植片(xenoenxerto)又は異種移植片(enxerto heterologo)で、異なる種の動物の間で身体の組織の移植が行われるものであり得る。
【0011】
成功した場合、これらの技術は陰茎のサイズが小さくならないので、ほとんどの患者にとって好ましい。しかしながら、移植片のために利用される組織は、いくつかの特別な特性を有する必要があり、これは、主に市販されている異種組織において見出すのが困難である。これらの特性のうち、主なものは、移植片に利用される組織は、白膜の順応性と同様の順応性を有さなければならず、そうでなければ、問題は解決されないこと、移植片に利用される組織は、生体適合性でなければならず、アレルギー性、炎症反応又は拒絶反応を引き起こしてはならないこと、移植片に利用される組織は、石灰化を受けないこと、移植片のために利用される組織は、その上のまさに患者の細胞の増殖を可能にし、生物学的統合を促進することができなければならないこと、及び移植片に利用される組織は、手術後の収縮を持続してはならず、そうでなければ、問題は解決されないことである。
【0012】
これらの特性の全ては、市販されている異種移植片には存在せず、このため、少なくとも一部では、このタイプの処置で今日得られる成功率が低いことも正当化されている。
【0013】
市場で最も一般的に入手可能な異種移植片のタイプの1つは、グルタルアルデヒド保存ウシ心膜移植片である。このタイプの移植片は、様々なタイプの手術、主に血管手術において比較的成功を収めて利用されている。しかしながら、陰茎湾曲を矯正するために外科手術においてこれを使用する試みは、成功していない。このタイプの移植片が成功しない主な理由は、グルタルアルデヒド保存ウシ心膜移植片が以下のようであることに関連する:
・陰茎で生じるサイズの変化に適応するのに必要な順応性及び柔軟性を有していないこと、
・通常、外科手術後に後退し、修復された領域において部材が短縮するので、処置の失敗につながること、
・患者の細胞がその表面上で成長することができず、生体に対して異物のように振る舞うこと、
・生体適合性はあるが、炎症反応を引き起こし、石灰化を起こす傾向があり、このため、組織が硬化し、その結果、処置が失敗すること、に関連する。
【0014】
上記で引用した問題を解決する1つの例示的な試みは、特許文献3であり、その全体は、参照として本明細書に組み込まれる。特許文献3は、ドナー動物源のコラーゲン線維の構造を有するコラーゲン結合組織を、受容体への前記組織の移植後、前記組織が抗炎症剤を含有し、免疫拒絶反応なしに受容体に許容されるように、処理するための方法を開示している。
【0015】
特許文献3によって開示される方法は、生理食塩水、安定化溶液、ポリグリコールからなる溶液、塩、リン酸緩衝溶液及び酸化剤を含むグルタルアルデヒドフリーの保存溶液の使用に基づく。
【発明の概要】
【0016】
しかしながら、この解決策は、人体に受け入れられる程度に適切に保存された組織を達成するにはまだ十分ではない。その理由は、この解決策は、例えば、陰茎の湾曲を矯正する際に白膜形成術用の組織として人体に受け入れられる程度に適切に保存された組織を達成するのに効果的で十分ではないことが判明したからである。
【0017】
したがって、上述のように、いかなる免疫及び/又は炎症拒絶反応も伴わずにコラーゲン線維を受容体に移植することができるように、動物ドナー供給源からのコラーゲン結合組織を処理するための改善された方法が依然として必要であり、これが本発明の主目的である。
【0018】
(ii)顔面再建:
現在実践されている口腔及び顎顔面再建技法の様々な技法には、粘膜骨髄パッチ、移植片による骨置換、吸収性膜及び非吸収性膜等の骨置換及び障壁を使用した誘導骨再生及び誘導組織再生が含まれる。
【0019】
移植片の理想的な材料に関するコンセンサスはないが、いくつかの重要な基準で選択が行われる。材料は、取得が容易でなければならず、十分な量を入手可能であり、適合可能であり、感染及び再吸収に抵抗できなければならない。さらに、それは、不活性で、耐性があり、滅菌しやすく、他の構造の機能を妨げないものでなければならない。
【0020】
科学文献によると、自己軟骨は代謝が低く、副作用がないので、概して成功していることが実証されている。しかしながら、ほとんどの自己移植片は、ドナー部位の罹患率に加えて、脱落、取り扱いの困難さ、移植片の輪郭の描写の難しさ、再吸収と収縮の速度等の制限がある。
【0021】
生体材料の使用が成功するように、生体材料は、生物学的に許容されなければならず、すなわち、局所的又は全身的損傷を引き起こさず、毒性、発癌性又は放射性であってはならない。さらに、理想的な生体材料は、その適用又は移植中に製造可能、滅菌可能及び安定でなければならない。研究は、生体吸収性材料の使用が、非吸収性材料に対して利点を有することを報告しているが、その理由は、生体吸収性材料が、移動、押し出し、及び遅発性感染の問題を回避するからである。
【0022】
BMF手術において最も一般的に使用される生体材料は、吸収性コラーゲン膜である。それらの良好な性能にもかかわらず、厚さ、張力に対する抵抗性、体積及びサイズ等が予想より小さい等、特定の場合に、ある程度の制限を示すことがある。このような場合、自家心筋膜パッチの使用がしばしば採用される。
【0023】
したがって、より厚い生体材料で、サイズ及び張力に対する抵抗がより大きいものを提供し、それを顔面再建において有利に利用することができるようにして、上述の問題を回避し、従来技術からの他の材料を使用することによってまだ達成されていない結果を提供することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許第9,205,172号明細書
【特許文献2】ブラジル国特許第PI0814523-7号明細書
【特許文献3】米国特許第7,008,763号明細書
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明による動物ドナー源から保存されたコラーゲン結合組織を生成するための方法は、
a)ドナーから摘出した後、コラーゲン結合組織を緩衝溶液中でトリミングするステップと、
b)結合組織を同じ緩衝溶液で洗浄するステップと、
c)50%エタノール溶液で組織を安定化するステップと、
d)ポリエチレングリコールの溶液で組織を処理するステップと、
e)50%エタノール中で組織を洗浄及び保管するステップと、
f)50%エタノール溶液及び1.5%過酸化水素(H2O2)で組織を滅菌するステップと、
g)組織をエタノール溶液50%及びインドメタシン中に貯蔵するステップと、
を含む。
【0026】
より具体的には、本発明の緩衝溶液は、リン酸一塩基性ナトリウム(NaH2PO4)0.1%及びリン酸二塩基性ナトリウム(Na2HPO4)0.6%からなるリン酸緩衝溶液と塩化ナトリウム(NaCl)0.9%の溶液との混合物であり、そのpHは、生理学的に、好ましくは7.3~7.5の範囲であり、温度は5℃~15℃の範囲でなければならない。さらに好ましくは、約500mlの緩衝溶液がコラーゲン結合組織の各断片を洗浄するために使用され、約56グラム/リットルの緩衝溶液が使用される。
【0027】
コラーゲン結合組織の安定化は、エタノール50%を用いて2℃~10℃の範囲の温度で実施しなければならない。
【0028】
次いで、安定化された組織を、ポリエチレングリコール6体積%、塩化ナトリウム(NaCl)32体積%、リン酸緩衝溶液13体積%、及び過酸化水素(H2O2)2体積%の混合物を含むポリエチレングリコールの溶液で処理し、温度を2℃~8℃の範囲内に制御する。
【0029】
次いで、このように安定化された組織を約25℃の温度でエタノール50%の溶液中で洗浄し、保管し、続いて、エタノール50%及び過酸化水素(H2O2)1.5%の溶液で滅菌する。
【0030】
最後に、コラーゲン結合組織を、エタノール50体積%及びインドメタシン約0.05体積%の溶液中で、最長2年間にわたって、すぐに使用できるように貯蔵する。
【0031】
緩衝溶液による洗浄ステップ、エタノール溶液50%による安定化及びエタノール溶液50%によるコラーゲン結合組織の洗浄及び保管は、有利なことに、3~6回繰り返され、好ましくは、組織の洗浄ステップは5~6回繰り返され、安定化は3回繰り返され、洗浄及び保管ステップは3~5回繰り返される。
【0032】
さらに、コラーゲン結合組織の安定化、処置及び滅菌のステップにおいて、浸漬時間は24~96時間で変動し、安定化ステップは、好ましくは反復ごとに24時間実施され、処置ステップは96時間実施され、滅菌ステップは24時間実施される。
【実施例】
【0033】
(本発明の応用例)
陰茎湾曲:
以下の実施例では、陰茎湾曲の矯正手順において、本発明のアルデヒドフリーウシ心膜を含む移植片インプラントの評価試験プログラムを説明し、矯正された患者の満足度の主観的評価を報告する。
【0034】
合計15人が手術を受け、そのうち13人がペロニー病を患い、2人が先天性陰茎湾曲を患っていた。手術は、2019年4月から2020年4月の間に、リオデジャネイロ州立大学・Pedro Ernessto大学病院医科学部・泌尿器科で実施された。患者の年齢は、18~72歳の範囲であった。ペロニー病の患者のうち、3人は、関連する半硬質陰茎プロテーゼインプラントを以前に受けていた。
【0035】
調査したのうち、11人は、調査プロトコルに従って、12ヶ月の術後モニタリング期間を既に完了していた。そのうちの7人について、手術の満足度、湾曲の矯正、手術合併症の存在、勃起の質及び陰茎の長さに関して再評価した。
【0036】
湾曲の矯正に対する個人の満足度の主観的評価には、1~5の尺度を使用した。4人の患者(57%)が満足した(4/5の尺度)と述べ、3人の患者(43%)が非常に満足した(5/5の尺度)と述べた。陰茎湾曲の満足のいく矯正は、症例の89%において得られ、2つの軸において複雑な陰茎湾曲を示した1人の患者のみが、依然として軸のうちの1つにおいて有意な陰茎湾曲を有していた(約60度)。それにもかかわらず、この患者は、挿入性交における困難を報告していない。これまでに再評価された7人の患者において、Clavien Dindoスケールに従う有意な合併症は、同定されなかった。調査したうちの1人(11%)は、国際勃起機能スコア(IIEF)による評価で、処置後に劣った勃起の質を示した。評価した7人の患者のうち6人(86%)は、陰茎の長さが長くなり、この長さの伸びは、0.7cm~3.0cmのばらつきがあった。患者の1人は、陰茎の長さが0.5cm短くなった。
【0037】
推定総サンプルの46%を伴う予備的安全性分析において、患者は、陰茎湾曲の矯正において許容可能な成功率で、かつペロニー病又は先天性湾曲に起因する陰茎湾曲を患う患者におけるアルデヒドフリー心膜移植片インプラントの研究の再開を時々妨げる合併症なしに、主観的に満足したと結論付けることができる。
【0038】
本発明による動物ドナー供給源から保存されたコラーゲン結合組織を生成するための方法で得られた優れた結果以外にも、抗炎症反応の低減に加えて、予想外の特徴に注目することが可能になった。例えば、
・移植片は、移植片が移植された組織に類似した機能的及び生物学的特徴、例えば、血管新生、神経支配及びコラーゲン細胞及びエラスチンの取り込みを、しばらくしてから移植された組織を天然組織からもはや区別することができない程度まで示し始めるような方法で、患者自身の構造細胞の成長を可能にし、生物学的統合を促進すること、
・組織は、弾性、柔軟性及び順応性を示し、患者が持続する解剖学的変化を調整するために必要な場合に移植片の成長さえ可能にすること、
・グルタルアルデヒドで処理された最新技術の移植片とは異なり、本発明の方法によって製造された移植片は、手術後に後退しないこと
である。
【0039】
顔面再建:
移植片を用いる顔面再建の研究を実施し、本発明によって記載される方法に従って製造され、保存され、安定化された吸収性コラーゲン生体材料及びアルデヒドフリー化合物を使用して、18歳以上の9人の患者が、2021年3月~11月に、Pocos de Caldas(MG)のSanta Casa de Misericordia病院歯学部で顔面再建手術を受けた。この研究は、前記機関の倫理委員会に提出され、承認された。全ての患者は、インフォームドコンセントを承認し、署名した。
【0040】
調査した移植片は、Labcor Laboratorios Ltda社(コンタジェン、MG)によって製造され、本発明により記載される方法により生成されたアルデヒドフリーのウシ心膜であった。生成物を非アルデヒド技術で製造した。
【0041】
・症例1:
保存された非アルデヒドコラーゲン結合組織を含む第一の研究は、歯牙顔面変形に関連する左(L)顎関節(ATM)に強直の病歴がある36歳の女性の患者に対して実施された。患者は、3つの外科手術を受けており、このうち、1つの処置は下顎骨の骨伸延を矯正するためのもので、他の処置はシリコーンプロテーゼの移植及びL下顎骨の頭部の骨切除によるL ATMの解放のためである。患者は、以前の手術による瘢痕、口の開放の重度の制限、多発性う蝕を伴う口腔衛生の不可能な状態、進行した歯周病、下顎への歯の挟まり、ならびに下顎及び上顎に嚢胞様損傷を有していた。患者は、また、L側に膿瘍を伴う感染症があり、そこでは、プロテーゼが露出していた。
【0042】
患者は、全身麻酔下で、下顎及び上顎の全ての歯の除去、ならびにオールオン4システムにおける上顎及び下顎のインプラントの設置のための手術を受けた。上顎及び下顎の損傷を除去し、インプラントを設置した後、空の空間を生体材料で満たした。外部からAl Kayatアクセスを行った。プロテーゼを抽出し、慢性炎症プロセスに由来する組織を除去し、関節骨表面を露出させた。アルデヒドフリーウシ心膜移植片を、側頭パッチであるかのように設置し、下顎の残りの頭部と関節窩との間に置き、吸収性糸を用いて張力下で固定した。
【0043】
この領域に存在する瘻孔に部分的に続いて、前耳介切開を行った。平面拡張は、L顎関節から耳領域までの組織間に介在したシリコーン装具の存在に加えて、古い感染/炎症プロセスの持続による局所解剖学的構造の変化及び局所組織の変化のため、最大限の注意を必要とした。シリコーン装具への反応によって残された「経路」を通して関節にアクセスすると、本発明者らは、以前のL ATMの空洞内に部分的に線維性で部分的に肉芽腫性の組織を見出した。この材料は、L下顎の頭部の残りの部分と関節窩(下顎窩)との間の障壁として作用した。
【0044】
装具の除去により、その部位の機械的洗浄が必要となり、関節骨表面又はその残りの部分が露出した。局所炎症及び/又は回復過程を回避し、その結果としてその側で動きが失われることを避けるために、本発明者らは、左側頭筋筋膜パッチを使用することを検討した。しかしながら、局所線維症及び慢性感染プロセスによって改変した特性によって、満足のいくパッチの作成は不可能だった。このため、アルデヒドフリーウシ心膜移植片が、この性質のパッチに類似する特性のため、その領域に適合する抵抗及び能力に加え、局所縫合によって締結することができるので、使用された。
【0045】
骨表面間の介在及び瘻孔の閉鎖のために、アルデヒドフリーウシ心膜移植片を使用した。前記移植片は、一定の張力下で隣接組織に縫合され、したがって、不動のままであった。術後断層撮影は移植片の満足な位置を示し、外科的処置の1週間後、患者は、これまで制限されていた口の開閉の改善を示した。患者は、6ヶ月のモニタリング後でさえ、移植片に対するいかなる炎症反応又は拒絶も示さず、したがって、顔面再建のために保存された非アルデヒドコラーゲン結合組織の移植片を使用することに対して、完全な実行可能性が実証された。
【0046】
・症例2:
保存された非アルデヒドコラーゲン結合組織を伴う第二の研究は、少なくとも20年以上にわたって複数の顔面骨折の病歴を有し、眼窩の床から外れたシリコーンプロテーゼが存在し、及びL下眼瞼の内側部分に瘻孔を有するL眼窩における感染プロセスを伴う69歳の女性患者に対して実施された。プロテーゼによって、眼球に圧力が生じ、複視になり、「視覚がぼやけた」。矯正は、L眼窩下アクセスによって全身麻酔下で実施された。プロテーゼを引き抜いた後、約1.5mmのチタンミニプラークを用いてL眼窩の下縁の骨ギャップを調整し、直径約1.5mmの2つのねじを用いて固定した。保存された非アルデヒドコラーゲン結合組織移植片を眼窩の床に収容して、プロテーゼの不在から生じる空間を占有し(これは領域を占有し、眼を維持する)、眼窩の変形を矯正した。移植片をプラーク及び隣接組織に固定し、瘻孔を閉塞した。
【0047】
患者は、すでにL顔面にシリコーン装具を有し、これが下眼瞼の内部領域に瘻孔を引き起こし、装具の一部が出て眼球を圧迫した。患者によって報告された疼痛及び複視に加えて、慢性感染/炎症プロセスによって、L眼において進行中の分泌が生じた。次いで、眼瞼の下の圧迫線を用いてL眼窩下切開を行う選択肢がとられ、その結果、アクセスがより広くなり、眼瞼を保存し、装具の抜去を可能にした。装具を抜去した後、L眼球の脱落が認められ、L眼球は、L眼窩の下縁の骨空間に加えて、上顎洞の領域に侵入し、これにより前記脱落が可能になった。慎重に組織を剥ぎ取り、L眼窩の底から骨の残骸を露出させ、元々L上顎洞に属していた空間も制限した。顔の外傷以来数十年が経ち、骨全体の構造が変化しているため、下縁をやり直すために約1.5mmのチタンプラークが使用された。
【0048】
下部眼窩縁の回復を伴っても、右(R)眼窩縁より下であった。次いで、眼を持ち上げ、瘻孔の閉鎖及び眼瞼の再建を可能にするために、眼窩の床に材料を介在させる必要があった。局所パッチを使用することが不可能である場合、及び以前の慢性プロセスによるアロプラスト性材料を回避する必要があるため、非アルデヒドコラーゲン結合組織を移植片として使用した。この移植片を隣接組織に縫合し、吸収性糸でプラークに固定した。移植片は、ボリュームを出し、L眼を高くするために折り畳まれた。移植片の一部をL眼瞼の内部組織に縫合し、瘻孔を閉じ、それを部分的に再構築した。6ヶ月間モニタリングした後、患者は、複視が改善し、瘻孔が矯正され、眼球が再配置された。
【0049】
・症例3:
保存された非アルデヒドコラーゲン結合組織を含む第三の研究は、歯43、44及び45の領域に歯周損傷を有する76歳の女性患者に対して実施された。以前に、患者は、画像検査によって示されるように、治癒及び生体材料移植片を受けた。検査は、また、頬側の歯45の領域の瘻孔、及び歯43、44、及び45の領域の舌側における拡大を明らかにした。触診すると、領域は硬化した外観を示した。
【0050】
外科的アプローチは、頬側であり、オトガイ孔及びその構造を保存した。上記で言及した損傷及び歯を除去した後、硬化した外観を有し、領域の唾液管に密接に関連する底部への損傷に気づいた。第二の損傷は、管を傷つけることなく注意深く除去され、移植片のための領域を準備した。
【0051】
保存されたコラーゲン結合組織を、管を隔離する舌組織に縫合した。骨移植片を生体材料で作製し、保存されたコラーゲン結合組織を移植片の上に折り畳んで障壁として機能させた。保存されたコラーゲン結合組織を移植片に張力をかけて縫合した。
【0052】
損傷は、エナメル上皮腫と診断され、損傷の可視化及び除去を可能にするための誘導骨再生(GBR)による再建が可能になるとみなされた。保存されたコラーゲン結合組織が、行われる修復の程度が大きく、市販されていない広範な障壁が必要なため、使用された。保存されたコラーゲン結合組織の選択は、また、膜を取り扱い、膜を局所組織に固定する可能性にも基づいた。保存されたコラーゲン結合組織のわずかな露出が認められたが、術後期間において、これは、決して結果を損なうことはなかった。
【0053】
・症例4:
保存された非アルデヒドコラーゲン結合組織を伴う第四の研究は、2つの下顎中切歯を失った36歳の男性患者に対して実施された。顎移植のための手術において、保存されたコラーゲン結合組織は、インプラントによる将来のリハビリテーションの可能性を確実にするために、骨移植のための障壁として、及び下顎切歯における歯肉の陥凹を改善するための結合組織の代替として利用された。
【0054】
医学文献によれば、患者歯肉プロファイルが薄いため、誘導骨再生(GBR)及び結合移植片の使用が示されている。したがって、この症例は、骨移植片、移植片のための障壁及び結合組織移植片を必要とした。このような要求に加え、欠損の範囲が広かったため、結合組織の障壁及び置換として作用し、歯肉プロファイルを改善し得る保存されたコラーゲン結合組織を選択した。
【0055】
移植片のために骨床を露出させて準備し、骨移植片を移植した後、保存されたコラーゲン結合組織を頬骨膜に縫合し、骨移植片上に折り畳み、舌側の領域の組織に縫合した。手順の2ヶ月後の結果は、完全に満足のいくものであった。6ヶ月のモニタリング期間において、歯槽縁及び歯肉プロファイルが完全に回復した。
【0056】
・症例5:
保存された非アルデヒドコラーゲン結合組織を伴う第五の研究は、歯44を失い、頬側裂開が生じたため、インプラントによるリハビリテーションが必要な32歳の女性患者に対して実施された。
【0057】
患者は第二の手術部位から結合組織を除去することに反対したため、頬側の保存されたコラーゲン結合組織を、歯肉プロファイルの獲得に使用した。保存されたコラーゲン結合組織を組織移植片として使用し、縫合によって固定した。処置の1ヶ月後、完全な矯正が見られた。
【0058】
・症例6:
保存された非アルデヒドコラーゲン結合組織を伴う第六の研究は、歯34を根折し、頬骨を損失した62歳の女性患者に対して実施された。残留根を除去した後、インプラントをその部位に配置した。骨損失は、生体材料移植片によって相殺され、保存されたコラーゲン結合組織は、歯肉退縮を防止するための障壁として機能した。
【0059】
即時荷重によるインプラントをL下顎前臼歯の領域に設置した。頬側骨を損失したため、誘導骨再生(GBR)のオプションを選択した。しかしながら、歯根の骨折とその領域の慢性炎症プロセスが歯肉退縮を引き起こしていたため、軟組織は、骨移植片を覆うのには不十分であった。保存されたコラーゲン結合組織のオプションを選択したが、その理由は、これが、骨再生の障壁として機能し、歯肉組織の獲得を可能にするからである。プロテーゼを移植上に設置した2ヶ月後の結果は、良好であった。
【0060】
・症例7:
保存された非アルデヒドコラーゲン結合組織を伴う第七の研究は、喫煙者で、口腔衛生状態が悪く、残りの歯の様々な歯冠が破壊され、歯周病を患う37歳の女性患者に対して実施された。以前に、両歯列弓においてプロトコル型プロテーゼによるリハビリテーションを意図して、モルスコーン(cone morse)型の歯科インプラントを設置するために、下顎及び上顎の両方において、複数の歯の抜歯を受けていた。
【0061】
歯周病に関連する損傷を除去するために上顎における組織生殖を喪失していたので、パッチの閉鎖が妨げられた。上顎における体積の損失も認められた。インプラント近傍の組織を獲得し、起こり得る陥凹を回避し、口腔容積を提供するために、(骨移植片の代わりに)保存されたコラーゲン結合組織を使用する選択肢を採用した。保存されたコラーゲン結合組織を右断片と別の左断片とに分け、これらをプロテーゼ構成要素(ミニピラー)に適合させた。したがって、保存されたコラーゲン結合組織は、ミニピラーに対応する点において穿孔され、その基部で、ミニピラーとインプラントとの間の接合部において調整された。保存されたコラーゲン結合組織を、あたかも骨膜であるかのように、上顎の頬骨組織の上に置いた。縫合糸を非吸収性フィラメントで作製し、15日目に取り出した。
【0062】
保存されたコラーゲン結合組織を選択する別の理由は、歯周病及び喫煙に起因して、患者の歯の周囲領域を除去する必要性があったことで、このため、インプラントの近傍を覆うためのパッチが不十分になった。保存されたコラーゲン結合組織によって、また、上顎の頬組織の獲得が可能になり、プロテーゼの緊急プロファイル及び上唇の姿勢が改善された。
【0063】
・症例8:
保存された非アルデヒドコラーゲン結合組織を伴う第八の研究は、完全に除去可能なプロテーゼを使用するために抜歯後に形成される下顎嚢胞を示唆する下顎の損傷を伴う、59歳の男性患者に対して実施された。
【0064】
Rの骨部位では、R前方の損傷を有する下肺胞神経叢が露出していることが明らかになった。損傷を外科的に除去した後、生体材料を含む骨移植片インプラントを作製した。保存されたコラーゲン結合組織は、GBRにおける障壁として使用され、骨移植片上で引っ張られるように舌及び頬で縫合された。診断:ceratocistos。外科的処置後の画像検査は、患者の良好な吸収及び回復を示した。6ヶ月後の結果では、損傷は、完全に回復していた。
【0065】
・症例9:
保存された非アルデヒドコラーゲン結合組織を含む第九の研究は、整形外科手術による合併症を患う44歳の男性患者に対して実施された。患者は、歯列矯正医によって、第一の手術の術後骨折により損なわれた要素47の抜歯をするように言われていた。しかしながら、第一の外科的処置の感染プロセス及び合併症の結果として、固定プラークがその領域に露出し、これを第二の矯正手術で除去した。
【0066】
歯の抜歯には、その領域の組織が弾性を有さず、以前の感染プロセスによる激しい線維症があったため、その課題があった。保存されたコラーゲン結合組織を歯の除去に使用して、プラークの露出が悪化せず、したがって、抜歯後に骨の露出をもたらす組織の大きな反応がないことを保証した。保存されたコラーゲン結合組織を使用して、抜歯後に残りの骨を回収した。移植片を舌下に縫合し、露出した骨を覆って二重にし、再び頬側で縫合し、覆われた領域にわたって張力を保った。
【0067】
この場合、組織がその弾性を失ったため、縫合糸の裂開が予測された。これは実際に起こり、保存されたコラーゲン結合組織の部分を露出し、これは、0.12%クロルヘキシジンでリンスすることによって維持された。
【0068】
上記で見られるように、保存されたコラーゲン結合組織及び安定化されたコラーゲン結合組織は、保存された非アルデヒド生体材料であり、広範な汎用性を示し、短期及び長期の期待を超えて結果をもたらし、またいくつかの状況において自己由来パッチの抽出を回避するため、様々な回復顔面用途において利用することができる。
【0069】
これらの予想外の特性は、本発明による動物ドナー供給源からの保存されたコラーゲン結合組織が、これらの予想外の特性が示され得る他の用途の中でも、とりわけ、心臓手術、眼科手術、神経手術、及び上で報告された陰茎湾曲を矯正するための手術等の様々なタイプの手術における移植片としての使用のための優れた選択肢であることを実証したが、それは、本発明に従って作製された前記結合組織は、これらの目的に理想的であると考えられる全ての特徴を有するからである。
【0070】
さらに、本発明は、また、上記の方法によって保存されたコラーゲン結合組織、ヒト身体の任意の領域又は器官におけるコラーゲン結合組織を用いた修復手術におけるその使用、及び保存されたコラーゲン結合組織を含み、安定化された手術キットに関する。
【国際調査報告】