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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ノンサグ組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20240822BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240822BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K3/013
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514432
(86)(22)【出願日】2022-09-09
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 US2022042979
(87)【国際公開番号】W WO2023039116
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】63/242,276
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】ザンペラ,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ガスコイン,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,クラリサ
(72)【発明者】
【氏名】ラジェンドラ,ヴィノド
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP031
4J002CP032
4J002DE016
4J002DE046
4J002DJ016
4J002EZ017
4J002FD016
4J002FD157
4J002GJ01
4J002GJ02
(57)【要約】
室温加硫型組成物が本願において示され説明される。この組成物は室温で硬化性であると共にノンサグ特性を示し、この組成物を水平方向の継目および垂直方向の継目の両者を含む、種々の用途に用いることを可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2成分系室温加硫型組成物であって:
(a)(i)反応性基を有するポリシロキサンポリマー、(ii)フィラー、および(iii)任意選択的に水を含む第1部分;および
(b)(i)縮合硬化シリコーン系と反応しまたは反応しないポリシロキサンポリマー、(ii)フィラー、および(iii)スズ触媒を含む第2部分を含む、室温加硫型組成物。
【請求項2】
第1部分は25℃および剪断速度10s-1(プレート/プレートのシステム、プレート径40mm、ギャップ幅0.5mm)において約30から約300PaSの粘度を有し、そして第2部分は25℃および剪断速度10s-1(プレート/プレートのシステム、プレート径40mm、ギャップ幅0.5mm)において約50から約300PaSの粘度を有する、請求項1の室温加硫型組成物。
【請求項3】
スズ触媒はシリカとスズ化合物の混合物を含んでいる、請求項1または2の室温加硫型組成物。
【請求項4】
スズ化合物はジアルキルスズジカルボキシレートから選択される、請求項3の室温加硫型組成物。
【請求項5】
スズ化合物は第2部分の合計重量に基づいて約0.1重量%から約6重量%の量で存在する、請求項3または4の室温加硫型組成物。
【請求項6】
第1部分のポリマーシロキサン(i)はシラノール末端ポリシロキサンである、請求項1から5のいずれかの室温加硫型組成物。
【請求項7】
シラノールで終端されたシラノール末端ポリシロキサンは式:

のジオルガノポリシロキサンポリマーであり、式中:
=(HO)3-x-y SiO1/2
=RSiO2/2
=RSiO2/2
ここでRおよびRは独立して選択された約60までの炭素原子の1価の炭化水素ラジカルであり;
およびRは独立して選択された約60までの炭素原子の1価の炭化水素ラジカルであり;
およびRは独立して選択された約60までの炭素原子の1価の炭化水素ラジカルであり;
aは2、bは1に等しいかまたはより大きく、cはゼロまたは正の整数、xは0、1、または2、そしてyは0または1のいずれかであり、x+yが2に等しいかそれ未満であるという条件に従う、請求項6の室温加硫型組成物。
【請求項8】
シラノール末端ポリシロキサンはジメチルジフェニルポリシロキサンである、請求項6または7の室温加硫型組成物。
【請求項9】
第2部分のポリシロキサンポリマー(i)はアルケニル末端ポリシロキサンである、請求項1から8のいずれかの室温加硫型組成物。
【請求項10】
第2部分のポリシロキサンポリマー(i)はビニル末端ポリシロキサンである、請求項1から9のいずれかの室温加硫型組成物。
【請求項11】
第2部分のポリシロキサン(i)は式:

のものであり、式中
=(R11)(R12)(R13)SiO1/2
=R1415SiO2/2
=R1617SiO2/2
ここでR11、R12、およびR13は約60までの炭素原子の炭化水素から独立して選択されると共に反応性基または非反応性基を有することができ;
14およびR15は約60までの炭素原子の炭化水素から独立して選択され;
16およびR17は約60までの炭素原子の炭化水素から独立して選択され;
下付文字dは2、eは1に等しいかまたはより大きく、そしてfはゼロまたは正の整数であり;
11、R12、R13、R14、R15、R16、およびR17 の少なくとも1つは任意選択的に反応性基または非反応性基を含む基である、請求項1から9のいずれかの室温加硫型組成物。
【請求項12】
11、R12、R13、R14、R15、R16、およびR17 の少なくとも1つはアルケニル官能基である、請求項11の室温加硫型組成物。
【請求項13】
フィラーは加硫型組成物の合計重量に基づいて約35重量%から約60重量%の量で存在する、請求項1から12のいずれかの室温加硫型組成物。
【請求項14】
組成物はシラノール官能性ポリオルガノシロキサンの重量に基づいて少なくとも約5重量%のシラノール含有量を有する、シラノール官能性ポリオルガノシロキサンをさらに含んでいる、請求項1から13のいずれかの室温加硫型組成物。
【請求項15】
シラノール官能性ポリオルガノシロキサンは式:

のものであり、式中
=(R18)(R19)(R20)SiO1/2
=R2122SiO2/2
=R2324SiO2/2
ここでR18、R19、R20、R21、R22、R23、およびR24 は約60までの炭素原子の炭化水素およびヒドロキシル基から独立して選択され;
下付文字gは2、hは1に等しいかまたはより大きく、そしてiはゼロまたは正の整数であり;そして
シラノール官能性ポリオルガノシロキサンは少なくとも5%のシラノール含有量を有している、請求項14の室温加硫型組成物。
【請求項16】
h+iは約5から約2,500である、請求項15の室温加硫型組成物。
【請求項17】
シラノール官能性ポリオルガノシロキサンはシラノール官能性ポリオルガノシロキサンの合計重量に基づいて、約5%から約10%のシラノール含有量を有する、請求項14から16のいずれかの室温加硫型組成物。
【請求項18】
シラノール官能性ポリオルガノシロキサンは第1部分または第2部分に存在し、それが添加されている部分の合計重量に基づいて約0.05重量%から約1重量%の量で存在する、請求項14から17のいずれかの室温加硫型組成物。
【請求項19】
シラノール官能性ポリオルガノシロキサンは第1部分に存在する、請求項14から18のいずれかの室温加硫型組成物。
【請求項20】
第1部分と第2部分の重量比は約10:0.7から約10:1である、請求項1から19のいずれかの室温加硫型組成物。
【請求項21】
第1部分と第2部分の重量比は約10:0.75から約10:0.95である、請求項1から19のいずれかの室温加硫型組成物。
【請求項22】
第1部分と第2部分を混合および硬化させると、組成物は約60ミルから約235ミルでノンサグ性を示す、請求項1から21のいずれかの室温加硫型組成物。
【請求項23】
請求項1から22のいずれかの室温加硫型組成物の混合物から形成される硬化材料。
【請求項24】
請求項1から22のいずれかの2成分系加硫型組成物の第1部分および第2部分の混合物を基材表面に適用することを含む、表面を処理するための方法。
【請求項25】
第1部分と第2部分の重量比は約10:0.7から約10:1である、請求項24の方法。
【請求項26】
第1部分と第2部分の重量比は約10:0.75から約10:0.95である、請求項24の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスリファレンス
本願は2021年9月9日に出願された「ノンサグ組成物」と題する米国特許仮出願第63/242,276号の優先権および利益を主張するものであり、この米国出願の全体は参照によって本願に取り入れる。
【0002】
本発明は室温加硫型組成物に関する。特に本発明は、実質的に大きな厚さの用途においてノンサグ特性を示す室温加硫型組成物に関する。また、この組成物を表面の接着またはシールに使用する方法も提供される。
【背景技術】
【0003】
幾つかの室温加硫型(RTV)組成物は、種々の用途において接着剤またはシーラントとして使用することができる。RTVシーラントの1つの使用例は継目、例えば打継目をシールすることである。このシーラントは、種々の形状および構造の多様な打継目をシール可能であることが要求されてよく、業界において好ましいシーラントは、可能な限り多くの状況において継目をシールすることができるものである。シーラントは一般に、現場で硬化した後に密封性を保持するために、種々の物性を必要とする。例えば打継目、従って打継目を封止しているシーラントは一般に、例えば継目を形成している基材の熱膨張または熱収縮によって生じうる移動を行う。この繰り返す移動に対処するために、シーラントはある程度の弾性を有する必要がある。シーラントの弾性は、破断伸び(最大伸度)、100%伸び時モジュラス、および引張強度といった、幾つかの物性から決定されてよい。フィラーを含まないシリコーンエラストマーは、500%を超える非常に高い破断伸びを示しうるが、それらのモジュラス、引張強度、硬度、および引裂強度は、硬化したシーラントが打継のシール用途において十分に機能するためには低すぎる。こうしたシーラントの全体的な弾性挙動を改善して、それらが打継目をシールするよう機能させるためには、配合に対して補強フィラーを添加する必要がある。
【0004】
高速道路の継目のような水平の用途においては、流動性のシーラントがしばしば用いられる。しかしながら、多くの建設用途のような他の用途は、未硬化のシーラント組成物が頭上の割れ目や壁面の割れ目に対して、および/またはそれらの中に適用されることを可能にするために、シーラントが未硬化状態において十分なサグコントロール性を有することを必要としている。こうした継目は典型的には、縦目地と呼ばれている。こうした縦方向の用途においては、シーラントは適用後または加工後に、硬化してシリコーンエラストマーシールを形成するまで、割れ目から流れ出すことなくその場所にとどまらねばならない。サグコントロール性は一般に、未硬化状態の組成物は押し出し可能で流動可能であるが、重力のみを受けている場合には、適用された未硬化のシーラント組成物がエラストマー体に硬化するまで、流動することなく適用された場所にとどまるという状態を指している。かくしてサグコントロール性は、シールのために建設業界で使用される、特に縦目地に使用されるシリコーンシーラントにとって重要な性質である。特に、縦方向の用途のためのシーラントは、ノンサグ特性を示す必要がある。
【0005】
一般に、シーラントの「サグ(たるみ)」は多量のフィラー(補強用または非補強用)、すなわちノンサグ添加剤を添加することによって低減されうるが、シーラントは依然として、縦目地上に適用を行うために、未硬化状態において押し出し可能である必要がある。さらにまた、シリコーンシーラント配合物にノンサグ特性をもたらすために必要な量のフィラーは、不十分な機械的性質、特に小さな伸びをもたらし得る。
【発明の概要】
【0006】
以下に示すのは本開示の概要であり、幾つかの実施態様の基本的な理解をもたらす。この概要は、重要なまたは必須の要素を特定することは意図しておらず、また実施形態や特許請求の範囲に対する何らかの限定を規定するものでもない。さらにまた、この概要は幾つかの実施態様の単純化された概説を提示するものであってよく、それらは本開示の他の部分において詳細に説明されてよい。
【0007】
提供されるのは、ノンサグ特性を必要とする用途において接着剤またはシーラントとして使用するのに適した、2成分系室温加硫型(RTV)組成物である。本組成物は、大容量での吐出および混合に適した、そして縦方向の用途について所望の厚さで硬化するまでの間に適切なノンサグ特性を示す、低粘度の材料を提供する。
【0008】
本組成物は驚くべきことに、高速混合および吐出を可能にする流動性を有すると共に、相当の厚さにおいてノンサグ特性を示し、組成物を縦方向の用途に使用することを許容することが見出されている。
【0009】
本組成物は2成分を含み、それらは組み合わせられたときに十分に非流動性であり、大容量での吐出を可能にしながらも、硬化前は組成物を縦方向の用途に使用することを可能にするだけのノンサグ特性を示す。
【0010】
1つの実施形態において、この組成物は硬化の際に、約60ミルから約235ミル(約0.06インチから約0.235インチ)でノンサグ性を示す。
【0011】
1つの実施態様において提供されるのは、2成分系室温加硫型組成物であって:(a)(i)反応性基を有するポリシロキサンポリマー、(ii)フィラー、および(iii)任意選択的に水を含む第1部分;および(b)(i)縮合硬化シリコーン系と反応しまたは反応しないポリシロキサンポリマー、(ii)フィラー、および(iii)スズ触媒を含む第2部分を含んでいる。
【0012】
1つの実施形態において、第1部分は25℃および剪断速度10s-1(プレート/プレートのシステム、プレート径40mm、ギャップ幅0.5mm)において約30から約300PaSの粘度を有し、そして第2部分は25℃および剪断速度10s-1(プレート/プレートのシステム、プレート径40mm、ギャップ幅0.5mm)において約50から約300PaSの粘度を有する。
【0013】
上記した実施形態のいずれかによる1つの実施態様において、スズ触媒はシリカとスズ化合物の混合物を含んでいる。1つの実施形態において、スズ化合物はジアルキルスズジカルボキシレートから選択される。
【0014】
上記した実施形態のいずれかによる1つの実施態様において、スズ化合物は第2部分の合計重量に基づいて約0.1重量%から約6重量%の量で存在する。
【0015】
上記した実施形態のいずれかによる1つの実施態様において、第1部分のポリマーシロキサン(i)はシラノール末端ポリシロキサンである。
【0016】
上記した実施形態のいずれかによる1つの実施態様において、シラノールで終端されたシラノール末端ポリシロキサンは式:

のジオルガノポリシロキサンポリマーであり、式中:
=(HO)3-x-y SiO1/2
=RSiO2/2
=RSiO2/2
ここでRおよびRは独立して選択された約60までの炭素原子の1価の炭化水素ラジカルであり;RおよびRは独立して選択された約60までの炭素原子の1価の炭化水素ラジカルであり;RおよびRは独立して選択された約60までの炭素原子の1価の炭化水素ラジカルであり;aは2、bは1に等しいかまたはより大きく、cはゼロまたは正の整数、xは0、1、または2、そしてyは0または1のいずれかであり、x+yが2に等しいかそれ未満であるという条件に従う。
【0017】
1つの実施形態において、シラノール末端ポリシロキサンはジメチルジフェニルポリシロキサンである。
【0018】
上記した実施形態のいずれかによる1つの実施態様において、第2部分のポリシロキサンポリマー(i)はアルケニル末端ポリシロキサンである。
【0019】
上記した実施形態のいずれかによる1つの実施態様において、第2部分のポリシロキサンポリマー(i)はビニル末端ポリシロキサンである。
【0020】
上記した実施形態のいずれかによる1つの実施態様において、第2部分のポリシロキサン(i)は式:

のものであり、式中
=(R11)(R12)(R13)SiO1/2
=R1415SiO2/2
=R1617SiO2/2
ここでR11、R12、およびR13は約60までの炭素原子の炭化水素から独立して選択されると共に反応性基または非反応性基を有することができ;R14およびR15は約60までの炭素原子の炭化水素から独立して選択され;R16およびR17は約60までの炭素原子の炭化水素から独立して選択され;下付文字dは2、eは1に等しいかまたはより大きく、そしてfはゼロまたは正の整数であり;R11、R12、R13、R14、R15、R16、およびR17 の少なくとも1つは任意選択的に反応性基または非反応性基を含む基である。
【0021】
1つの実施形態において、R11、R12、R13、R14、R15、R16、およびR17の少なくとも1つはアルケニル官能基である。
【0022】
上記した実施形態のいずれかによる1つの実施態様において、フィラーは加硫型組成物の合計重量に基づいて約35重量%から約60重量%の量で存在する。
【0023】
上記した実施形態のいずれかによる1つの実施態様において、組成物はシラノール官能性ポリオルガノシロキサンの重量に基づいて少なくとも約5重量%のシラノール含有量を有する、シラノール官能性ポリオルガノシロキサンを含んでいる。
【0024】
1つの実施形態において、シラノール官能性ポリオルガノシロキサンは式:

のものであり、式中
=(R18)(R19)(R20)SiO1/2
=R2122SiO2/2
=R2324SiO2/2
ここでR18、R19、R20、R21、R22、R23、およびR24 は約60までの炭素原子の炭化水素およびヒドロキシル基から独立して選択され;下付文字gは2、hは1に等しいかまたはより大きく、そしてiはゼロまたは正の整数であり;そしてシラノール官能性ポリオルガノシロキサンは少なくとも5%のシラノール含有量を有している。
【0025】
上記した実施形態のいずれかによる1つの実施態様において、h+iは約5から約2,500である。
【0026】
上記した実施形態のいずれかによる1つの実施態様において、シラノール官能性ポリオルガノシロキサンはシラノール官能性ポリオルガノシロキサンの合計重量に基づいて、約5%から約10%のシラノール含有量を有する。1つの実施形態において、シラノール官能性ポリオルガノシロキサンはシラノール官能性ポリオルガノシロキサンの合計重量に基づいて、約5%から約10重量%、約5.5%から約9.5重量%、約6%から約8重量%、または約6.5%から約7重量%のシラノール含有量を有する。
【0027】
上記した実施形態のいずれかによる1つの実施態様において、シラノール官能性ポリオルガノシロキサンは第1部分または第2部分に存在し、それが添加されている部分の合計重量に基づいて約0.05重量%から約1重量%の量で存在する。
【0028】
上記した実施形態のいずれかによる1つの実施態様において、シラノール官能性ポリオルガノシロキサンは第1部分に存在する。
【0029】
上記した実施形態のいずれかによる1つの実施態様において、第1部分と第2部分の重量比は約10:0.7から約10:1である。
【0030】
上記した実施形態のいずれかによる1つの実施態様において、第1部分と第2部分の重量比は約10:0.75から約10:0.95である。
【0031】
上記した実施形態のいずれかによる1つの実施態様において、第1部分と第2部分を混合および硬化させると、組成物は約60ミルから約235ミルでノンサグ性を示す。
【0032】
別の実施態様において提供されるのは、上記した態様または実施形態のいずれかの室温加硫型組成物の混合物から形成される硬化材料である。
【0033】
さらなる実施態様において提供されるのは、上記した態様または実施形態のいずれかの2成分系加硫型組成物の第1部分および第2部分の混合物を適用することを含む、表面を処理するための方法である。
【0034】
この方法の1つの実施形態において、第1部分と第2部分の重量比は約10:0.7から約10:1である。この方法の1つの実施形態において、第1部分と第2部分の重量比は約10:0.75から約10:0.95である。
【0035】
以下の記載および図面は種々の例示的な側面を開示する。幾つかの改善点および新規な側面は明示的に特定されていてよいが、その他は記載および図面から明らかなものであってよい。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に例示的な実施形態を参照すると、その例は関連する詳細な説明に例示されている。理解されるように、他の実施形態も利用してよく、構造的および機能的な変更も行ってよい。さらにまた、種々の実施形態の特徴を組み合わせまたは変更してよい。よって、以下の記載は単に例示として提示されており、例示した実施形態に対して行ってよい種々の代替や修正をいかなる仕方でも限定するものではない。本開示においては、幾つもの具体的な詳細事項が、開示された主題の完全な理解をもたらす。本開示の実施態様は、本願その他に記載されたすべての側面を必ずしも含まない他の実施形態で実施されてよいこと等が理解されねばならない。
【0037】
本願で使用するところでは、「例」および「例示」という用語は、実例または説明を意味している。「例」および「例示」という用語は、必須のまたは好ましい実施態様または実施形態を示すものではない。「または」という用語は、文脈が異なる示唆をしていない限り、排他的ではなく包括的であることを意図したものである。例えば、「AはBまたはCを用いる」という言い方は、任意の包括的な置き換え(例えば、AはBを用いる;AはCを用いる;またはAはBおよびCの両者を用いる)を含んでいる。別の事項として、「ひとつの」および「ある」という冠詞は一般に、文脈が異なる示唆をしていない限り、「1つのまたはより多く」を意味することが意図されている。
【0038】
本組成物は2成分系室温加硫型組成物である。この組成物は、水分に曝露されると硬化可能なシリコーンポリマーを含んでいる。1つの実施形態において、この組成物は2つの部分を混合し、水分に曝露すると、約5℃から約50℃の温度において硬化する。この組成物は一方の部分にスズペースト触媒を含んでいる。スズペースト触媒を使用し、それぞれの部分を所望の割合で混合すると、相当のコーティング厚さまたは塗布厚さにおいてノンサグ特性を示す室温硬化性組成物がもたらされる。
【0039】
1つの実施形態において、この組成物は第1部分(成分A)および第2部分(成分B)を含み、ここで第1部分はシリコーンポリマー、1つまたはより多くのフィラー、架橋剤、および任意選択的に水を含み、そして第2部分はシリコーンポリマー、スズ触媒、およびフィラーを含む。触媒は第2部分においてフィラーと配合され、かくして第2部分がペーストとして提供されるようにする。この組成物は任意選択的に、フィラー、顔料、接着促進剤、およびこのようなシーラント組成物および接着剤組成物において知られているまたは一般に使用されている他の添加剤といった、他の材料を含んでいる。1つの実施形態において、第2部分は顔料および接着促進剤を含んでいる。
【0040】
第1部分(成分A)
【0041】
第1部分は、水のようなプロトン性溶媒に対して反応性の基を備えるシリコーンポリマーを含んでいる。このシリコーンポリマーは、OH、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキルオキシモ、アルキルカルボキシ、アリールカルボキシ、またはこれらの2つまたはより多くの組み合わせから選択される反応性基を有するポリマーであってよい。1つの実施形態において、シリコーンポリマーは反応性基を含むポリシロキサンポリマーである。1つの実施形態において、第1部分はシラノール末端ジオルガノポリシロキサンを含んでいる。
【0042】
1つの実施形態において、シラノール末端ジオルガノポリシロキサンポリマーは一般式:

のものであり、
=(HO)3-x-y SiO1/2
=RSiO2/2
=RSiO2/2
ここでRおよびRは独立して選択された約60までの炭素原子の1価の炭化水素ラジカルであり;
およびRは独立して選択された約60までの炭素原子の1価の炭化水素ラジカルであり;
およびRは独立して選択された約60までの炭素原子の1価の炭化水素ラジカルであり;
aは2、bは1に等しいかまたはより大きく、cはゼロまたは正の整数、xは0、1、または2、そしてyは0または1のいずれかであり、x+yが2に等しいかそれ未満であるという条件に従う。
【0043】
1つの実施形態において、R、R、R、R、R、およびRはそれぞれ独立して、C1~C10アルキルおよびC6~C30アリールから選択される。1つの実施形態において、R、R、R、R、R、およびRはそれぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、3級ブチル、フェニル、およびトリルから選択される。例示的な実施形態において、シリコーンポリマーはシラノール末端ジメチルジフェニルシロキサンである。
【0044】
本発明の1つの実施形態において、シリコーンポリマーは組成物の合計の約5重量%から約95重量%、約35重量%から約85重量%、または約50重量%から約70重量%の量で提供される。
【0045】
本発明の1つの実施形態によれば、第1部分にあるポリシロキサンポリマーの粘度は、25℃において約2.5から約20PaS、約4から約16PaS、約5から約12PaS、または約7.5から約10PaSである。粘度は、オストワルド粘度計チューブ(ASTM D445に基づく)によって評価された。
【0046】
第1部分はさらに、1つまたはより多くのフィラーを含んでいてよい。適切なフィラーの例には、限定するものではないが、砕石英、珪藻土、硫酸バリウム、酸化鉄、二酸化チタン、カーボンブラック、タルク、クリストバライト、マイカ、長石、珪灰石、ヒュームドシリカ、処理ヒュームドシリカ、アルミナイト、硫酸カルシウム(硬石膏)、石膏、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム(ブルーサイト)、黒鉛、酸化アルミニウム、またはオリビン族、ガーネット族、アルミノケイ酸塩、環状ケイ酸塩、鎖状ケイ酸塩および層状ケイ酸塩からなる群から選択されるケイ酸塩、或いはプラスチックまたはガラスの微小球、好ましくは中空微小球が含まれる。フィラーは例えば、組成物の合計重量に基づいて、35重量%から約60重量%、約40重量%から約55重量%、または約45から約50重量%の量で存在することができる。フィラーは、そのフィラーの導入が未硬化シーラント組成物の物性(例えばサグ)、またはその後に硬化される製品の物性(例えば破断伸び)に負の影響を及ぼすことがないという条件で用いられる。
【0047】
第1部分はまた、架橋剤を含んでいてよい。1つの実施形態において、架橋剤または鎖延長剤は、アルコキシシラン、アルコキシシロキサン、オキシモシラン、オキシモシロキサン、エノキシシラン、エノキシシロキサン、アミノシラン、アミノシロキサン、カルボキシシラン、カルボキシシロキサン、アルキルアミドシラン、アルキルアミドシロキサン、アリールアミドシラン、アリールアミドシロキサン、アルコキシアミノシラン、アルキルアリールアミノシロキサン、アルコキシカルバメートシラン、アルコキシカルバメートシロキサン、イミダトシラン、ウレイドシラン、イソシアネートシラン、チオイソシアネートシラン、これらの縮合物、およびこれらの2つまたはより多くの組み合わせから選択されてよい。
【0048】
1つの実施形態において、架橋剤はアルコキシシランから選択される。1つの実施形態において、アルキルシリケートは式:
(RO)(RO)(RO)(R10O)Si
のものであり、式中R、R、R、およびR10は独立して選択された約60までの炭素原子の1価の炭化水素ラジカルである。1つの実施形態において、R、R、R、およびR10はそれぞれ独立してC1~C10アルキルおよびC6~C30アリールから選択される。
【0049】
適切な架橋剤の例には、限定するものではないが、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS);メチルトリメトキシシラン(MTMS);メチルトリエトキシシラン;ビニルトリメトキシシラン;ビニルトリエトキシシラン;メチルフェニルジメトキシシラン;3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン;メチルトリアセトキシシラン;ビニルトリアセトキシシラン;エチルトリアセトキシシラン;ジ-ブトキシジアセトキシシラン;フェニルトリプロピオンオキシシラン;メチルトリス(メチルエチルケトオキシモ)シラン;ビニルトリス(メチルエチルケトオキシモ)シラン;3,3,3-トリフルオロプロピルトリス(メチルエチルケトオキシモ)シラン;メチルトリス(イソプロペンオキシ)シラン;ビニルトリス(イソプロペンオキシ)シラン;ポリケイ酸エチル;ジメチルテトラアセトキシジシロキサン;オルトケイ酸テトラ-n-プロピル;メチルジメトキシ(エチルメチルケトオキシモ)シラン;メチルメトキシビス(エチルメチルケトオキシモ)シラン;メチルジメトキシ(アセトアルドオキシモ)シラン;メチルジメトキシ(N-メチルカルバメート)シラン;エチルジメトキシ(N-メチルカルバメート)シラン;メチルジメトキシイソプロペンオキシシラン;トリメトキシイソプロペンオキシシラン;メチルトリイソプロペンオキシシラン;メチルジメトキシ(ブタ-2-エン-2-オキシ)シラン;メチルジメトキシ(1-フェニルエテンオキシ)シラン;メチルジメトキシ-2(1-カルボエトキシプロペンオキシ)シラン;メチルメトキシジ(N-メチルアミノ)シラン;ビニルジメトキシ(メチルアミノ)シラン;テトラ-N,N-ジエチルアミノシラン;メチルジメトキシ(メチルアミノ)シラン;メチルトリ(シクロヘキシルアミノ)シラン;メチルジメトキシ(エチルアミノ)シラン;ジメチルジ(N,N-ジメチルアミノ)シラン;メチルジメトキシ(イソプロピルアミノ)シラン;ジメチルジ(N,N-ジエチルアミノ)シラン;エチルジメトキシ(N-エチルプロピオンアミド)シラン;メチルジメトキシ(N-メチルアセトアミド)シラン;メチルトリス(N-メチルアセトアミド)シラン;エチルジメトキシ(N-メチルアセトアミド)シラン;メチルトリス(N-メチルベンズアミド)シラン;メチルメトキシビス(N-メチルアセトアミド)シラン;メチルジメトキシ(カプロラクタモ)シラン;トリメトキシ(N-メチルアセトアミド)シラン;メチルジメトキシ(エチルアセトイミダト)シラン;メチルジメトキシ(プロピルアセトイミダト)シラン;メチルジメトキシ(N,N',N'-トリメチルウレイド)シラン;メチルジメトキシ(N-アリル-N',N'-ジメチルウレイド)シラン;メチルジメトキシ(N-フェニル-N',N'-ジメチルウレイド)シラン;メチルジメトキシイソシアナトシラン;ジメトキシジイソシアナトシラン;メチルジメトキシチオイソシアナトシラン;メチルメトキシジチオイソシアナトシラン、これらの縮合物、またはこれらの2つまたはより多くの組み合わせが含まれる。
【0050】
本発明の1つの実施形態によれば、架橋剤は組成物の合計重量に基づいて、約0.01重量%から約20重量%、約0.1重量%から約15重量%、約0.2重量%から約10重量%、および約0.3重量%から約5重量%の量で存在する。さらに別の実施形態においては、接着促進剤は組成物の合計の約0.5重量%から約1.5重量%の範囲にある。
【0051】
この組成物は任意選択的に、シラノール阻害剤を含んでいてよい。シラノール阻害剤は、短鎖シラノール官能性ポリオルガノシロキサンの重量に基づいて少なくとも5重量%のシラノール含有量を有する、短鎖シラノール官能性ポリオルガノシロキサンから選択されてよい。この短鎖シラノール官能性ポリオルガノシロキサンはまた、本願においてはシラノール官能性ポリオルガノシロキサンとして参照されてよい。1つの実施形態において、シラノール阻害剤は短鎖ポリオルガノシロキサン(すなわちシラノール官能性ポリオルガノシロキサン)の重量に基づいて、約5%から約10重量%のシラノール含有量を有する。
【0052】
1つの実施形態において、このシラノール阻害剤は式:

のシラノール官能性ポリオルガノシロキサンであり、
=(R18)(R19)(R20)SiO1/2
=R2122SiO2/2
=R2324SiO2/2
式中R18、R19、R20、R21、R22、R23、およびR24 は約60までの炭素原子の炭化水素およびヒドロキシル基から独立して選択され;
下付文字gは2、hは1に等しいかまたはより大きく、そしてiはゼロまたは正の整数であり;そしてシラノール官能性ポリオルガノシロキサンはシラノール官能性ポリオルガノシロキサンの重量に基づいて少なくとも5重量%のシラノール含有量を有する。1つの実施形態において、h+iは約5から約2,500、約10から約2,250、約25から約2,000、約50から約1,750、約75から約1,500、約100から約1,000、または約200から約750である。
【0053】
1つの実施形態において、R18、R19、R20、R21、R22、R23、およびR24はそれぞれ独立してC1~C10アルキルおよびC6~C30アリールから選択される。1つの実施形態において、R18、R19、R20、R21、R22、R23、およびR24はそれぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、3級ブチル、フェニル、およびトシルから選択される。1つの実施形態において、R18、R19、R20、R21、R22、R23、およびR24は独立して、メチルおよび/またはフェニルから選択される。
【0054】
シラノール阻害剤は、シラノール官能性ポリオルガノシロキサンの重量に基づいて少なくとも5重量%のシラノール含有量を有する。1つの実施形態において、シラノール阻害剤はシラノール官能性ポリオルガノシロキサンの重量に基づいて約5%から約10重量%、約5.5%から約9.5重量%、約6%から約8重量%、または約6.5%から約7重量%のシラノール含有量を有する。
【0055】
シラノール阻害剤は、成分A、成分B、または成分Aおよび成分Bの両方に添加することができる。1つの実施形態において、シラノール阻害剤は成分Aまたは成分Bのいずれかに添加され、またその成分に対して、シラノール阻害剤が添加される成分の重量に基づいて0から約1重量%、約0.05重量%から約0.95重量%、約0.1重量%から約0.8重量%、約0.2重量%から約0.6重量%、または約0.3重量%から約0.5重量%の量で添加される。1つの実施形態において、シラノール阻害剤は成分Aに添加される。
【0056】
第1部分は無水であってよく、または任意選択的に少量の水を含んでいて、第2部分との混合に際しての最初の反応を促進する。1つの実施形態において、第1部分は第1部分の合計重量に基づいて、水を約0.05重量%から約0.5重量%、約0.1重量%から約0.4重量%、または約0.2から約0.3重量%の量で含んでいてよい。
【0057】
1つの実施形態において、2成分系組成物の第1部分は25℃および剪断速度10s-1(プレート/プレートのシステム、プレート径40mm、ギャップ幅0.5mm)において、約30から約300PaS、約35から約200、約40から約100、または約50から約80PaSの粘度を有していてよい。
【0058】
第2部分(成分B)
【0059】
2成分系組成物の第2部分は、シリコーンポリマー、触媒、およびフィラーを含む。第2部分は触媒がフィラーと配合されるようにもたらされ、かくして第2部分がペーストとして提供されるようにする。
【0060】
第2部分のシリコーンポリマーは、縮合硬化シリコーン系と反応しないポリシロキサンポリマーを含んでいる。1つの実施形態において、第2部分のシリコーンは、OH、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキルオキシモ、アルキルカルボキシ、アリールカルボキシ、またはこれらの2つまたはより多くの組み合わせから選択される反応性基を含むことができる。1つの実施形態において、第2部分のシリコーンポリマーはポリシロキサンポリマーである。
【0061】
1つの実施形態において、第2部分は式:

のポリシロキサンポリマーを含み、
=(R11)(R12)(R13)SiO1/2
=R1415SiO2/2
=R1617SiO2/2
式中R11、R12、およびR13は約60までの炭素原子の炭化水素から独立して選択され、反応性基または非反応性基を有していてよく;
14 およびR15は約60までの炭素原子の炭化水素から独立して選択され;
16 およびR17は約60までの炭素原子の炭化水素から独立して選択され;
下付文字dは2、eは1に等しいかまたはより大きく、そしてfはゼロまたは正の整数であり;
11、R12、R13、R14、R15、R16、およびR17は任意選択的に反応性基または非反応性基を含む。
【0062】
1つの実施形態において、R11、R12、R13、R14、R15、R16、およびR17はそれぞれ独立して、C1~C10アルキルおよびC6~C30アリールから選択される。1つの実施形態において、R11、R12、R13、R14、R15、R16、およびR17はそれぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、3級ブチル、フェニル、およびトシルから選択される。
【0063】
1つの実施形態において、第2部分のシリコーンポリマーはアルケニル官能性シロキサンから選択される。1つの実施形態において、第2部分のシロキサンはビニル末端シロキサンから選択される。第2部分に適切なシロキサンの例には、限定するものではないが、ビニル末端ジメチルシロキサン、ビニル末端ジメチルジフェニルシロキサン、およびその他が含まれる。
【0064】
本発明の1つの実施形態において、第2部分のシリコーンポリマーは組成物の合計の約5重量%から約95重量%の量で存在し、また別の実施形態においては約35重量%から約85重量%の量で存在し、そしてさらに別の実施形態においては約50重量%から約70重量%の量で存在する。
【0065】
本発明の1つの実施形態によれば、第2部分のシリコーンポリマーの粘度は、25℃において約1から約20PaS、約2.5から約18PaS、約5から約15PaS、または約7.5から約10PaSである。粘度はオストワルド粘度計チューブによって評価される。
【0066】
2成分系硬化組成物の第2部分は縮合触媒を含んでいる。本件技術によれば、この触媒は第2部分がペーストとしてもたらされるように、フィラーと共に配合される。
【0067】
シリコーンゴム形成性組成物における架橋を促進するのに有用なスズ化合物には、ゴム形成性組成物において架橋を促進するのに有用な、任意のスズ材料が含まれる。1つの実施形態において、このスズ化合物はジアルキルスズジカルボキシレートから選択される。このジアルキルスズ化合物におけるアルキル基は所望に応じて選択することができ、そして実施形態においては、限定するものではないが、メチル、エチル、プロピル、ブチルその他のようなC1~C10アルキルから選択される。カルボキシレートは所望に応じて選択することができ、また任意の適切なカルボン酸から誘導することができる。適切なカルボキシレート基の非限定的な例には、アセテート、2-エチルヘキサノエート、およびネオデカノエートが含まれる。適切な化合物の例には、限定するものではないが、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジメトキシド、スズオクトエート、イソブチルスズトリセロエート、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズビス-イソオクチルフタレート、ビス-トリプロポキシシリルジオクチルスズ、ジブチルスズビス-アセチルアセトン、シリル化ジブチルスズジオキシド、カルボメトキシフェニルスズトリス-ウベレート、イソブチルスズトリセロエート、ジメチルスズジブチレート、ジメチルスズジ-ネオデカノエート、ジブチルスズジ-ネオデカノエート、トリエチルスズタータレート、ジブチルスズジベンゾエート、スズオレエート、スズナフテネートナフテネート、ブチルスズトリ-2-エチルヘキシルヘキソエート、およびスズブチレートが含まれる。1つの実施形態において、スズ触媒はジメチルスズジネオデカノエートのペーストである。
【0068】
このスズ化合物は第2部分の合計重量に基づいて、約0.1重量%から約6重量%、約0.3重量%から約3重量%、または約0.5重量%から約1.5重量%の量で存在することができる。
【0069】
第2部分は、触媒と混合された場合にペーストをもたらすフィラーを含んでいる。適切なフィラーの例には、限定するものではないが、砕石英、珪藻土、硫酸バリウム、酸化鉄、二酸化チタン、カーボンブラック、タルク、クリストバライト、マイカ、長石、珪灰石、ヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナ、アルミナイト、硫酸カルシウム(硬石膏)、石膏、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム(ブルーサイト)、黒鉛、酸化アルミニウム、またはオリビン族、ガーネット族、アルミノケイ酸塩、環状ケイ酸塩、鎖状ケイ酸塩および層状ケイ酸塩からなる群から選択されるケイ酸塩、或いはプラスチックまたはガラスの微小球、好ましくは中空微小球が含まれる。ペーストを作成するために用いられるフィラーは、第2部分の合計重量に基づいて、15重量%から約63重量%、約20重量%から約35重量%、または約25から約30重量%の量で提供される。
【0070】
2成分系組成物の第2部分は、20℃および剪断速度10s-1(プレート/プレートのシステム、プレート径40mm、ギャップ幅0.5mm)において、約50PaSから約300PaS、約60PaSから約250PaS、約70PaSから約200PaS、または約80PaSから約150PaSの粘度を有していてよい。
【0071】
組成物はさらに、接着促進剤を含んでいてよい。1つの実施形態において、接着促進剤は第2部分に備えられる。接着促進剤は特に限定されず、開示の全体を参照によって本願に取り入れる米国特許公開第2014/0378612号に記載のものが含まれる。適切な接着促進剤の幾つかの例には、限定するものではないが、N-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-アミノプロピルトリエトキシシラン、ガンマ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(ガンマ-トリメトキシシリルプロピル)アミン、N-フェニル-ガンマ-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリアミノ官能性トリメトキシシラン、ガンマ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、ガンマ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、ガンマ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチル-ジメトキシシラン、エポキシリモニルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、ベータ-シアノ-エチル-トリメトキシシラン、ガンマ-アクリロキシプロピル-トリメトキシ-シラン、ガンマ-メタクリロキシプロピル-メチルジメトキシシラン、アルファ,オメガ-ビス-(アミノアルキル-ジエトキシシリル)ポリジメチルシロキサン(Pn=1~7)、アルファ,オメガ-ビス-(アミノアルキル-ジエトキシシリル)-オクタ-メチルテトラシロキサン、4-アミノ-3,3,-ジメチル-ブチル-トリ-メトキシシラン、およびN-エチル-3-トリ-メトキシ-シリル-2-メチルプロパンアミン、3-(ジエチル-アミノプロピル)-トリメトキシシラン、これらの2つまたはより多くの組み合わせ、およびその他が含まれる。特に適切な接着促進剤には、限定するものではないが、ビス(3-プロピルトリメトキシシリル)アミンおよびトリス(3-プロピルトリメトキシシリル)アミンなどの、ビス(アルキルトリアルコキシシリル)アミンおよびトリス(アルキルトリアルコキシシリル)アミンが含まれる。
【0072】
接着促進剤は、第1部分または第2部分のいずれかに備えられてよい。1つの実施形態において、接着促進剤は第2部分(触媒を含んでいる)に備えられる。一般に、接着促進剤は第1部分および第2部分の合計重量に基づいて約0.05重量%から約10重量%の量、第1部分および第2部分の合計重量に基づいて約0.1重量%から約5重量%、約0.5重量%から約2.5重量%、または約1重量%から約2重量%の量で備えられることができる。
【0073】
1つの実施形態において、組成物は硬化速度を遅延させるための硬化阻害剤を含むことができる。硬化阻害剤は、第1部分または第2部分のいずれかに備えることができる。1つの特定的な実施形態において、硬化阻害剤(E)は脂肪族不飽和を含むことができる。別の特定的な実施形態において、硬化阻害剤(E)は脂肪族不飽和を含まないことができる。さらなる実施形態において、硬化阻害剤(E)の非限定的な例は、ジアリルマレエート、D-4ビニル、2-メチル-3-ブテン-2-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、3,5,-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。1つの特定的な実施形態において、硬化阻害剤(E)は組成物の合計重量に基づいて、特定的には約0.02から約1重量%、より特定的には約0.05から約0.5重量%、そして最も特定的には約0.1から約0.2重量%の量で使用される。1つの特定的な実施形態において、硬化阻害剤(E)は、ある範囲の硬化温度および硬化時間、特定的には約177℃において約10秒から室温において約24時間のいずれかの硬化時間をもたらす、任意の量で存在することができる。
【0074】
加硫型組成物は1つの実施形態において、低濃度の揮発性成分と共に提供されることができる。1つの実施形態において、組成物はASTM E595により約0.1%またはそれ未満の揮発物含有量を有する。
【0075】
本組成物において、第1部分と第2部分の重量比は約10:0.7から約10:1、約10:0.75から約10:0.95、または約10:0.8から約10:0.9の比率でもたらされる。本発明の1つの特定的な実施形態において、第1部分と第2部分の重量比は10:1である。出願人が見出したところでは、これらの比率において混合を行うことにより、0.235インチ(235ミル)またはそれ未満の、非流動性を示す製品が生成される。驚くべきことに、これらの比率の外側では、第1部分と第2部分の混合物は非流動性の製品をもたらさないことが見出されている。何らかの特定の理論に拘束されるものではないが、本組成物の第1部分は、系の流動/粘度特性の大部分を支配することが予想される。第2部分はより高い粘度を有するが、何らかの有効なチキソトロープ剤の添加がなく/少ないことから、系の粘度/流動性を支配することは予想されない。
【0076】
1つの実施形態において、AおよびBの混合物の硬化から製造される生成物は、0.235インチまたはそれ未満の非流動性を示す製品をもたらす。1つの実施形態において、第1部分と第2部分の混合物は、約0.6インチから約0.235インチ(約60ミルから約235ミル)において非流動性の生成物を生ずる。1つの実施形態において、この混合物は、少なくとも約60ミルから約120ミルで非流動性の生成物を生ずる。
【0077】
第1部分および第2部分は典型的には25℃(室温)で混合される;しかしながら、第1部分および第2部分が混合される温度は、約25℃から200℃まで大きく変動することができる。本発明の1つの実施形態によれば、第1部分および第2部分が混合される温度は25℃である。
【0078】
第1部分および第2部分は、任意の適切な方法によって混合することができる。非流動性の生成物は、手練りによって達成されてよい。より望ましくは、混合は機械式ミキサーによって達成される。生成物は、例えば、機械式ミキサー、プラネタリーミキサー、ハウシルトミキサー、レーディゲミキサー、ミキシングチューブ、または押出機中で、一般的な混合技術により生成されてよい。混合はバッチ式または連続式で実行されてよい。
【0079】
組成物は、水平方向および垂直方向の継目の両者を含む、種々のシールまたは接着用途において使用することができる。
【0080】
実施例
【0081】
実施例1
【0082】
2成分系組成物を以下の部分を用いて提供した:
【0083】
【0084】
【0085】
成分Aおよび成分Bは一緒にスピードミキサーを用いて3500rpmで10秒間、2回混合した。この速度と時間の尺度は、試料の大きさに依存する。
【0086】
サグは、組成物から形成され得られた生成物からの流れを評価することによって評価した。複数の切欠きを有する治具/アプリケーターをレネータ社の紙片の一端に配置する。このアプリケーターの切欠きは、14から250ミルの厚さのストライプをもたらすように設けられている。約20グラムのシリコーンコーティングをアプリケーターの前側にセットする。アプリケーターは紙片を横切って、直線経路を保ちながら反対側の端まで引き動かされる。紙片は250ミルのストライプ(最も厚いストライプ)が一番上になるようにして、垂直な位置に置かれる。いずれかのストライプがその下側のストライプと合体した場合にサグが観察される。
【0087】
実施例1について、コーティングは非流動性であることが観察され、すなわち60ミルから120ミルでノンサグであった。
【0088】
比較例1
【0089】
比較例1は実施例1の成分Aのみから生成された生成物である。用いられた触媒はジブチルスズジラウレートであった。
【0090】
比較例2
【0091】
この組成物からのコーティングは、実施例1の成分Aと、ジメチルスズデカノエート触媒から調製された。このスズ触媒はペーストではなかった。
【0092】
比較例3
【0093】
比較例3のコーティングは、実施例1の成分AおよびジブチルスズジラウレートのペーストであるRTV9950(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社から入手可能)を用いていた。
【0094】
比較例4
【0095】
比較例4のコーティングは、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社から入手可能なRTV560をジブチルスズジラウレートと共に用いていた。
【0096】
比較例5
【0097】
成分Bと同じ組成を使用して実施例1のようにして組成物を調製したが、成分Aが以下のように提供されたことが異なる:
【0098】
【0099】
実施例2
【0100】
以下の成分A組成および成分B組成を用いて、実施例1のようにして組成物を調製した:
【0101】
【0102】
【0103】
シラノール阻害剤は、約6.6%のシラノール含有量を有するポリジメチルシロキサンポリマーである。
【0104】
サグ試験
【0105】
サグは、組成物から形成され得られた生成物からの流れを評価することによって評価した。複数の切欠きを有する治具/アプリケーターをレネータ社の紙片の一端に配置する。このアプリケーターの切欠きは、14から250ミルの厚さのストライプをもたらすように設けられている。約20グラムのシリコーンコーティングをアプリケーターの前側にセットする。アプリケーターは紙片を横切って、直線経路を保ちながら反対側の端まで引き動かされる。紙片は250ミルのストライプ(最も厚いストライプ)が一番上になるようにして、垂直な位置に置かれる。いずれかのストライプがその下側のストライプと合体した場合にサグが観察される。
【0106】
表1は流動試験の結果を示している。
【0107】
【表1】
【0108】
本組成物は、非流動性、すなわち60から235ミルの間のノンサグ特性を達成することができた。これらの組成物は高速混合/吐出方法を用いて吐出することが可能であり、しかも縦方向の用途に適したノンサグ特性を有している。本組成物は驚くべきことに、ノンサグ特性を示すことが見出されている。一般に、ここで用いられた混合比率においては、通常は第1部分が流動特性または粘度特性の大部分を支配することが予想される。特に、第1部分の成分は大きなノンサグ特性をもたらさないことから、第2部分は一般に、粘度/流動性を支配することは予想されない。
【0109】
上記に説明したところは、本明細書の例を含んでいる。もちろん、本明細書の記載を行う目的について、成分または方法論のすべての認識可能な組み合わせを記載することは不可能であるが、当業者は、本明細書の多くのさらなる組み合わせおよび置き換えが可能であることを認識してよい。したがって本明細書は、添付の特許請求の範囲の思想および範囲内に包含される、すべてのそうした変更、修正および変種を包囲することを意図している。さらにまた、詳細な説明または特許請求の範囲において「包含する」という用語が使用される限りにおいて、そうした用語は「含む」と同様の仕方で包括的であることを意図しているが、これは「含む」が特許請求の範囲において転換語として用いられた場合に解釈されるのと同様である。
【0110】
以上の説明は、室温加硫型組成物の、種々の非限定的な実施形態を明らかにしている。当業者および本発明を作成および使用する者には、変更が想起されてよい。開示された実施形態は単に例示的な目的のためのものであり、特許請求の範囲に記載された発明または主題の範囲を限定することを意図したものではない。

【国際調査報告】