(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】全血アッセイのための凝集剤、装置、及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20240822BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
G01N33/543 521
G01N33/53 K
G01N33/53 U
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514616
(86)(22)【出願日】2022-09-09
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 US2022076220
(87)【国際公開番号】W WO2023039536
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516282776
【氏名又は名称】クイデル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】サン,ジェイソン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】マクルーア,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】リチャードソン,ケビン エス.
(57)【要約】
赤血球を捕捉するための手段を含む装置、方法、及びキットが提供される。このような手段は、赤血球を捕捉するための物理的手段、並びに本明細書に記載の装置の特定の領域に赤血球を保持するための血球凝集剤を含む凝集剤を含む。物理的手段及び凝集剤は、全血試料から赤血球を分離する。目的の分析物の有無についての分離及び/又は凝集した全血試料の分析は、赤血球の干渉なしに行うことができる。物理的手段及び/又は凝集剤を含む試料受容ゾーンを有するラテラルフローアッセイなどの装置も記載される。特定の凝集剤には、レクチン、及び赤血球結合抗体などの抗体が含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全血試料中の目的の分析物を検出するための装置であって、
(i)非溶解性血球凝集剤を含む試料受容ゾーンであって、赤血球が溶解することなく、前記血球凝集剤が、前記試料受容ゾーンに添加される全血試料から前記赤血球を捕捉する、試料受容ゾーン、
(ii)前記目的の分析物を特異的に標識するための手段を含む標識ゾーン、及び
(iii)前記目的の標識分析物に特異的に結合して固定化するための手段を含む捕捉ゾーンを備え、
前記試料受容ゾーン、前記標識ゾーン、及び前記捕捉ゾーンが液体流路に配置されている、装置。
【請求項2】
前記血球凝集剤が抗体である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記抗体が、ヒト赤血球に結合するモノクローナル抗体である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記抗体が、ヒト赤血球に結合するポリクローナル抗体である、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記抗体がヒト赤血球のH抗原に結合する、請求項2~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記血球凝集剤が、前記試料受容ゾーンに自己固定する、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記抗体がビオチン化されている、請求項2~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記試料受容ゾーンがストレプトアビジンをさらに含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記ストレプトアビジンが、前記試料受容ゾーンに固定化された粒子上にある、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記血球凝集剤がレクチンである、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記血球凝集剤が、コムギ胚芽凝集素、ハリエニシダ(Ulex europaeus)凝集素I、エンドウ(Pisum sativum)凝集素、レンズマメ(Lens culinaris)凝集素、又はインゲンマメ(Phaseolus vulgaris)赤血球凝集素である、請求項1又は10に記載の装置。
【請求項12】
前記レクチンが、前記試料受容ゾーンに自己固定する、請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】
前記レクチンがビオチン化されている、請求項10又は11に記載の装置。
【請求項14】
前記試料受容ゾーンがストレプトアビジンをさらに含む、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記ストレプトアビジンが、前記試料受容ゾーンに固定化された粒子上にある、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記目的の分析物を特異的に標識するための前記手段が検出可能な抗体である、請求項1~15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記検出可能な抗体がモノクローナル抗体である、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記検出可能な抗体がポリクローナル抗体である、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記目的の分析物を特異的に標識するための前記手段が検出可能な抗原である、請求項1~15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記抗原がタンパク質である、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記抗原がペプチドである、請求項19に記載の装置。
【請求項22】
前記抗原が高分子である、請求項19に記載の装置。
【請求項23】
前記抗原が低分子である、請求項19に記載の装置。
【請求項24】
前記目的の標識分析物に特異的に結合して固定化するための前記手段が固定化抗体である、請求項1~23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記固定化抗体がモノクローナル抗体である、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記固定化抗体がポリクローナル抗体である、請求項24に記載の装置。
【請求項27】
前記目的の標識分析物に特異的に結合して固定化するための前記手段が固定化抗原である、請求項1~23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項28】
前記抗原がタンパク質である、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記抗原がペプチドである、請求項27に記載の装置。
【請求項30】
前記抗原が高分子である、請求項27に記載の装置。
【請求項31】
前記抗原が低分子である、請求項27に記載の装置。
【請求項32】
全血試料中の目的の分析物を検出するための装置であって、
(i)赤血球保持のための物理的手段を含む試料受容ゾーンであって、前記物理的手段が、前記赤血球が溶解することなく、前記試料受容ゾーンに添加される全血試料から赤血球を捕捉する、試料受容ゾーン、
(ii)前記目的の分析物を特異的に標識するための手段を含む標識ゾーン、及び
(iii)前記目的の標識分析物に特異的に結合して固定化するための手段を含む捕捉ゾーンを備え、
前記試料受容ゾーン、前記標識ゾーン、及び前記捕捉ゾーンが液体流路に配置されている、装置。
【請求項33】
前記赤血球保持のための物理的手段が、前記試料受容ゾーンに赤血球を物理的に保持及び/又は捕捉するための適切な網目サイズを有するネット、メッシュ、スクリーン、又は格子を含む、請求項36に記載の装置。
【請求項34】
前記試料受容ゾーンが血球凝集剤をさらに含む、請求項32又は33に記載の装置。
【請求項35】
前記血球凝集剤が抗体である、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記抗体が、ヒト赤血球に結合するモノクローナル抗体である、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記抗体が、ヒト赤血球に結合するポリクローナル抗体である、請求項35に記載の装置。
【請求項38】
前記抗体が、ヒト赤血球のH抗原に結合する、請求項35~37のいずれか一項に記載の装置。
【請求項39】
前記血球凝集剤が、前記試料受容ゾーンに自己固定する、請求項32~38のいずれか一項に記載の装置。
【請求項40】
前記抗体がビオチン化されている、請求項35~38のいずれか一項に記載の装置。
【請求項41】
前記試料受容ゾーンがストレプトアビジンをさらに含む、請求項40に記載の装置。
【請求項42】
前記ストレプトアビジンが、前記試料受容ゾーンに固定化された粒子上にある、請求項41に記載の装置。
【請求項43】
前記血球凝集剤がレクチンである、請求項34に記載の装置。
【請求項44】
前記血球凝集剤が、コムギ胚芽凝集素、ハリエニシダ(Ulex europaeus)凝集素I、エンドウ(Pisum sativum)凝集素、レンズマメ(Lens culinaris)凝集素、又はインゲンマメ(Phaseolus vulgaris)赤血球凝集素である、請求項34又は43に記載の装置。
【請求項45】
前記レクチンが、前記試料受容ゾーンに自己固定する、請求項43又は44に記載の装置。
【請求項46】
前記レクチンがビオチン化されている、請求項43又は44に記載の装置。
【請求項47】
前記試料受容ゾーンがストレプトアビジンをさらに含む、請求項46に記載の装置。
【請求項48】
前記ストレプトアビジンが、前記試料受容ゾーンに固定化された粒子上にある、請求項47に記載の装置。
【請求項49】
前記目的の分析物を特異的に標識するための前記手段が検出可能な抗体である、請求項32~48のいずれか一項に記載の装置。
【請求項50】
前記検出可能な抗体がモノクローナル抗体である、請求項49に記載の装置。
【請求項51】
前記検出可能な抗体がポリクローナル抗体である、請求項49に記載の装置。
【請求項52】
前記目的の分析物を特異的に標識するための前記手段が検出可能な抗原である、請求項32~48のいずれか一項に記載の装置。
【請求項53】
前記抗原がタンパク質である、請求項52に記載の装置。
【請求項54】
前記抗原がペプチドである、請求項52に記載の装置。
【請求項55】
前記抗原が高分子である、請求項52に記載の装置。
【請求項56】
前記抗原が低分子である、請求項52に記載の装置。
【請求項57】
前記目的の標識分析物に特異的に結合して固定化するための前記手段が固定化抗体である、請求項32~56のいずれか一項に記載の装置。
【請求項58】
前記固定化抗体がモノクローナル抗体である、請求項57に記載の装置。
【請求項59】
前記固定化抗体がポリクローナル抗体である、請求項57に記載の装置。
【請求項60】
前記目的の標識分析物に特異的に結合して固定化するための前記手段が固定化抗原である、請求項32~56のいずれか一項に記載の装置。
【請求項61】
前記抗原がタンパク質である、請求項60に記載の装置。
【請求項62】
前記抗原がペプチドである、請求項60に記載の装置。
【請求項63】
前記抗原が高分子である、請求項60に記載の装置。
【請求項64】
前記抗原が低分子である、請求項60に記載の装置。
【請求項65】
全血試料中の目的の分析物の有無を検出する方法であって、
請求項1~64のいずれか一項に記載の装置を提供すること、
全血試料を、赤血球が前記試料受容ゾーンに保持される前記装置に配置すること、及び
前記捕捉ゾーンに固定化された標識分析物の有無を判断することを含む、方法。
【請求項66】
前記全血試料を採取するための器具を提供すること、及び全血試料を前記器具に採取することをさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
請求項1~64のいずれか一項に記載の装置、
全血試料を採取するための器具、及び
使用説明書を含む、キット。
【請求項68】
前記器具が毛細管である、請求項67に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2021年9月10日に出願された米国仮特許出願第63/242,754号の利益を主張する。
【0002】
[0002] 本開示は、一般に、全血の分析のためのラテラルフローアッセイなどの免疫測定法のための血球凝集剤を含む凝集剤及び物理的手段などの赤血球を捕捉するための手段を含む装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 様々な装置、アッセイ、方法、及び技術を使用して、目的の特定の分析物の有無について全血などの体液を分析することができる。例えば、尿中のグルコース、尿酸、若しくはタンパク質を検出する検査、又は血液中の病原体、抗体、グルコース、トリグリセリド、カリウムイオン、若しくはコレステロールを検出する検査が利用可能である。例えば、検査に先立って赤血球を除去することによって全血を処理する装置及び方法を使用して、液体試料を赤血球画分及び血漿画分などの別個の部分又は画分に分離する。例えば、目的の特定の分析物を検査するためのアッセイに使用するために血漿又は血清から全血の細胞成分を分離することができる。得られた血漿又は血清を、全血試料中に存在する赤血球の干渉なしに目的の分析物の正確な検出のために検査することができる。
【0004】
[0004] 全血の細胞成分、特に赤血球は、全血中に存在する目的の分析物についてのラテラルフロー免疫測定法又はストリップ試験を含む装置などのアッセイにおける主要な干渉物質である。多くの血液検査は発色性であり、全血中に存在する分析物が特定の試薬と相互作用して、分析物の有無の定量的又は定性的指標として固有の色の複合体若しくは誘導体を形成するか、又は成分の存在の定量的指標として様々な色強度の着色複合体又は誘導体を形成する。全血試料の深紅色は、これらの発色試験を実質的に妨げるため、高度に着色した赤血球は、通常、血液試料が目的の特定の分析物についてアッセイされる前に、血漿又は血清から分離される。赤血球の存在はまた、様々な非発色性血液アッセイを妨げ得るため、アッセイの結果は、一貫性がないか、又は一貫性があっても不正確になる。
【発明の概要】
【0005】
[0005] 主題の技術を、例えば、以下に説明する様々な態様に従って例示する。
【0006】
[0006] いくつかの実施形態によると、全血試料中の目的の分析物を検出するための装置が提供される。いくつかの態様では、本明細書で提供される装置は、ラテラルフローアッセイ又はストリップ試験などの免疫測定法を含む。いくつかの態様では、装置は、赤血球を捕捉するための手段を含む試料受容ゾーンを備える。いくつかの実施形態では、この手段は、ラテラルフローアッセイ又はストリップ試験の試料パッドに存在するネット又はメッシュなどの物理的手段であり、ネット/メッシュは、赤血球と物理的に相互作用して、赤血球の溶解なしに試料パッドにそれらを保持する。いくつかの実施形態では、試料パッドは、非溶解性血球凝集剤も含んでもよく、血球凝集剤は、赤血球の溶解なしに、試料受容ゾーンに添加された全血試料から赤血球を捕捉する。
【0007】
[0007] 他の態様では、装置は、目的の分析物を特異的に標識するための手段を含む標識ゾーンを備える。他の態様では、装置は、目的の標識された分析物に特異的に結合して固定化するための手段を有する捕捉ゾーンも備える。いくつかの態様では、装置は、液体流路に配置された試料受容ゾーン、標識ゾーン、及び捕捉ゾーンを備える。
【0008】
[0008] いくつかの実施形態では、試料パッドを含む試料受容ゾーンは、赤血球と物理的に相互作用するための手段を含み、この手段は、本明細書に記載のラテラルフローストリップ試験装置の試料パッドに赤血球を物理的に保持及び/又は捕捉するための適切な網目サイズを有するネット、メッシュ、スクリーン、又は格子などの構造を備え、赤血球は、物理的構造との相互作用によって試料パッドに捕捉及び/又は保持される。
【0009】
[0009] いくつかの実施形態では、血球凝集剤は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体などの抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト赤血球などの赤血球に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト赤血球のH抗原に結合し、従って、ABO型に関係なく、本質的にすべてのヒト赤血球に結合する。いくつかの実施形態では、抗体はビオチン化される。
【0010】
[0010] いくつかの実施形態では、抗体などの血球凝集剤は、ラテラルフローアッセイ又はストリップ試験などの免疫測定法を含む装置の試料受容ゾーンなどの装置内に自己固定し得る。
【0011】
[0011] いくつかの実施形態では、装置は、試料受容ゾーン(則ち、試料パッド)を有するラテラルフローアッセイなどの免疫測定法を含むことができ、試料受容ゾーンは、ストレプトアビジンを含む。いくつかの実施形態では、ストレプトアビジンは、ラテラルフロー免疫測定法の試料受容ゾーンに固定化された粒子と会合するか、又はその粒子上に来る。
【0012】
[0012] いくつかの実施形態では、血球凝集剤はレクチンである。いくつかの態様では、レクチンは、限定されるものではないが、コムギ胚芽凝集素、ハリエニシダ(Ulex europaeus)凝集素I、エンドウ(Pisum sativum)凝集素、レンズマメ(Lens culinaris)凝集素、又はインゲンマメ(Phaseolus vulgaris)赤血球凝集素を含む任意のレクチンである。いくつかの実施形態では、レクチンは、ラテラルフローアッセイ又はストリップ試験などの免疫測定法を含む装置の試料受容ゾーンなどの装置内に自己固定し得る。いくつかの実施形態では、レクチンはビオチン化される。
【0013】
[0013] いくつかの実施形態では、目的の分析物を特異的に標識するための手段は、検出可能なモノクローナル抗体又は検出可能なポリクローナル抗体などの検出可能な抗体である。
【0014】
[0014] いくつかの実施形態では、目的の分析物を特異的に標識するための手段は、タンパク質、ペプチド、高分子、又は低分子などの検出可能な抗原である。
【0015】
[0015] いくつかの実施形態では、目的の標識分析物に特異的に結合して固定化するための手段は、固定化抗体などの抗体である。いくつかの実施形態では、固定化抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である。
【0016】
[0016] いくつかの実施形態では、目的の分析物に特異的に結合して固定化するための手段は、固定化抗原などの抗原である。いくつかの実施形態では、固定化抗原は、固定化タンパク質、固定化ペプチド、固定化高分子、又は固定化低分子である。
【0017】
[0017] 別の実施形態では、全血試料中の目的の分析物の有無を検出する方法が提供される。いくつかの実施形態では、この方法は、本明細書に記載のような装置を提供すること、全血試料を、赤血球が試料受容ゾーンに保持される装置に配置すること、及び捕捉ゾーンに固定化された標識分析物の有無を判断することを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、全血試料を採取するための器具を提供すること、ラテラルフロー免疫測定法を含む装置の試料受容ゾーンなどの装置への添加のために全血試料を器具に採取することも含む。
【0018】
[0018] 別の実施形態では、本明細書に記載のような装置、全血試料を採取するための器具、及び使用説明書を含むキットが提供される。いくつかの態様では、全血試料を採取するための器具は毛細管を含む。
【0019】
[0019] 上述した例示的な態様及び実施形態に加えて、さらなる態様及び実施形態が、図面の参照及び以下の説明の理解によって明らかになるであろう。
【0020】
[0020] 本装置、アッセイ、方法、及び組成物などの追加の実施形態は、以下の説明、図面、実施例、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。前述及び以下の説明から理解できるように、本明細書に記載のすべての特徴及びそのような特徴のうちの2つ以上のすべての組み合わせは、そのような組み合わせに含まれる特徴が相互に矛盾しないのであれば、本開示の範囲内に含まれる。加えて、任意の特徴又は特徴の組み合わせを、本明細書に記載の任意の実施形態から具体的に除外することができる。本開示の付加的な態様及び利点は、特に添付の実施例及び図面と併せて考慮されて、以下の説明及び特許請求の範囲に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】[0021]
図1は、凝集剤として様々なレクチンを用いたヒト赤血球凝集試験を例示する。
【
図2】[0022]
図2は、凝集剤として抗ヒト赤血球抗体を用いたヒト赤血球凝集試験を例示する。
【
図3A】[0023]
図3Aは、試料受容ゾーンが対照条件1を含むラテラルフロー免疫測定法におけるヒト赤血球の捕捉を例示する。この構成では、試料パッド処理は、抗体を一切含まないブランク対照を含み、試料パッドの赤血球の保持は、赤血球が試料パッドの網状メッシュに捕捉されるなどの物理的手段によって達成された。
【
図3B】[0024]
図3Bは、試料受容ゾーンが条件2の血球凝集剤を含むラテラルフロー免疫測定法におけるヒト赤血球の捕捉を例示する。この構成では、mAb H101を含む試料パッド処理及び試料パッドの赤血球の保持を、凝集した赤血球が試料パッドの網状メッシュに捕捉されるなどの物理的手段に加えて、抗体による赤血球の凝集によって達成した。
【
図3C】[0025]
図3Cは、試料受容ゾーンが条件3の血球凝集剤を含むラテラルフロー免疫測定法におけるヒト赤血球の捕捉を例示する。この構成では、ストレプトアビジンによるmAb H101を含む試料パッド処理及び試料パッドの赤血球の保持が、凝集した赤血球が試料パッドの網状メッシュに捕捉されるなどの物理的手段に加えて、抗体及び/又はストレプトアビジンによる赤血球の凝集によって達成された。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[0026] ここで、様々な態様を以下により詳細に説明する。しかしながら、そのような態様は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が全体を通して完結し、その範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。
【0023】
[0027] 本明細書で提供される様々な装置、アッセイ、方法、及び技術を使用して、赤血球の干渉なしに、目的の特定の分析物の有無について、全血などの体液を分析することができる。凝集剤並びにそれを含む装置及び方法などの本明細書で提供される技術は、赤血球の干渉なしに、且つ追加のステップ、費用が嵩むステップ、面倒なステップ、複雑なステップ、又は時間のかかるステップを必要とせずに、全血試料の分析を提供する。
【0024】
[0028] 従来、血漿又は血清は、遠心分離又は凝固によって全血の細胞物質から分離することができる。細胞物質は、遠心分離機又は試料チューブの底部に集まり、上清の血漿又は血清はデカントされる。従って、全血の干渉細胞成分は、赤血球の干渉などの実質的なバックグラウンド干渉が回避されるように除去される。しかしながら、遠心分離法には、大量の血液試料、長い遠心分離時間、及び適切な機器が必要である。さらに、遠心分離法では、いくつかの操作ステップが必要である。血清を得る凝固法では、凝固が起こるのに長い時間(30~60分)も必要であり、凝固が起こった後に遠心分離が必要であり得る。
【0025】
[0029] 他の技術は、分析用の試料のラテラルフロー用の試験ストリップを含み得る。しかしながら、一部の設計では、赤血球が化学物質ストリップ内で凝集体又は妨害物を形成し、これにより、ラテラルフローが妨害され、及び/又は試験ストリップが変色して、結果の解釈が困難になる。このような妨害物は、多くの場合、不正確及び/又は無効な結果を生み出す。
【0026】
[0030] 本明細書に記載のラテラルフロー免疫測定装置は、試料パッドを含む試料受容ゾーンを備え、この試料パッドは、赤血球がパッド材料内に保持又は捕捉されるよう、赤血球と物理的に相互作用するように構成されている。試料パッドは、この試料パッドからラテラルフローストリップ試験装置の下流部分への赤血球の流れを維持する、保持する、捕捉する、及び/又は別の方法で減速させるように、赤血球との物理的相互作用のための手段を備える。例えば、試料パッドは、本明細書に記載のラテラルフローストリップ試験装置の試料パッドに赤血球を物理的に維持及び/又は捕捉するための適切な網目サイズを有するネット、メッシュ、スクリーン、又は格子などの構造を有する、赤血球との物理的相互作用のための手段を備えることができる。
【0027】
[0031] 加えて、本明細書に記載のいくつかのラテラルフロー免疫測定装置及び方法は、凝集剤を含み、この凝集剤は、エンドユーザによって行われる追加の処理ステップを必要とせずに、全血試料を効率的に分離し、正確にアッセイする。提供される薬剤、装置、及び方法は、家庭用テスター又は実験助手などのユーザを血液試料との不必要な接触から保護し、時間の遅れを回避し、そして正確で再現性のある結果を得ることができる。
【0028】
[0032] 本開示に基づく技術は、目的の分析物などの特定の可溶性成分についての全血試料の安全、正確、且つ経済的なアッセイを可能にし、血漿又は血清からの全血の赤血球の完全分離を本質的に達成することができる。本明細書に記載のシステム、装置、方法、及びキットは、様々な流体試料との使用が企図されており、本明細書の記載は、モデル試料として血液を使用するが、システム、装置、及び方法は、他の流体試料と共に使用できることも理解されよう。
【0029】
凝集剤
[0033] 本明細書に記載の実施形態は、赤血球を凝集させ、及び/又は赤血球を一塊にする血球凝集剤などの凝集剤を含む。本明細書で使用される場合、「凝集」は、細胞が一塊になることを指し、「血球凝集」は、赤血球の凝集を指す。場合によっては、「凝集」及び「血球凝集」は、互換的に使用できる関連用語である。例えば、凝集又は血球凝集した赤血球は、本明細書に記載の薬剤によって一塊にし、次いで、目的の分析物の有無についての残りの試料の分析を妨げないように、捕捉又は除去することができる。
【0030】
[0034] いくつかの実施形態では、凝集剤は、「非溶解性」、即ち、細胞壁又は膜の破裂による細胞の溶解又は崩壊を引き起こさない。その代わりに、いくつかの実施形態では、凝集剤は、凝集した細胞の破裂又は溶解なしに、無傷の赤血球の血球凝集を提供する。この特徴により、無傷の赤血球の凝集によってすべての赤血球成分が捕捉又は保持されるため、ヘム基を含む内部細胞成分が放出されず、従って、この内部細胞成分が凝集及び捕捉された無傷の赤血球に保持されるため、後続及び/又は下流の試料分析に干渉することができない。
【0031】
レクチン
[0035] いくつかの実施形態では、凝集剤はレクチンである。レクチンは、赤血球の表面抗原などの複合糖質への特異的結合に対して優れた親和性及び多価性を有し、多くの用途の医療診断試薬及びツールとして長い歴史を有している。レクチンは、典型的には、赤血球の効率的な凝集/捕捉のために4つのサブユニット、即ち、4価で構成されている。従って、特定のレクチンを使用して、様々な赤血球からの血漿液の分離を大幅に促進することができる。従って、すべてのタイプのヒト赤血球などのすべての赤血球に特異的なレクチンを含む装置及び方法を、任意の血液型の全血試料からのヒト赤血球の分離、捕捉、及び保持に使用することができる。適切なレクチンとしては、限定されるものではないが、表1に記載されるものが挙げられ、これらは、すべての血液型(ABO)のヒト赤血球の凝集及び捕捉に適している。さらに、いくつかの実施形態では、ビオチン化レクチンを、ストレプトアビジン(SA)と組み合わせて使用して、本明細書に提供されるようなラテラルフロー装置の試料受容ゾーンのレクチン含浸試料パッドに赤血球を捕捉するなどの、ヒト赤血球のより効率的且つ効果的な結合、捕捉、及び保持のための改善された血球凝集活性を提供することができる。
【0032】
【0033】
[0036] いくつかの実施形態では、レクチンは、大規模の産生のために組換え発現させることができる。天然型又はタンデムリピートを有するレクチンの組換え発現は、体系的に研究されている。いくつかの実施形態では、レクチンは、ストレプトアビジンを含み、ビオチン-ストレプトアビジンを有利に利用する装置及び方法と組み合わせて使用するためにビオチン化することができる。いくつかの実施形態では、レクチンは、細菌発現系における大規模のレクチン産生の効率を高め得るタンデムリピートを含み得る(Hwang et al., Biomolecules 2018, 8, 146)。さらに、融合技術がタンパク質に広く使用されており、このような融合技術を、より捕捉効率の高いレクチンの産生に適用することができる。
【0034】
[0037] いくつかの実施形態では、レクチンは、ビーズナノ粒子にコンジュゲートさせることができる。このような状況では、レクチンコンジュゲートビーズ又はナノ粒子は、多価表面に多数の血球を凝集させて捕捉/保持することができるため、効率的な凝集剤を提供する。いくつかの実施形態では、組換え融合技術は、凝集剤としての製造及び使用のために、融合タグを有するレクチンを、より高い効率及び低コストでナノ粒子に直接結合させることを可能にする。
【0035】
凝集抗体
[0038] 他の実施形態では、凝集剤は、赤血球に対する結合特異性を有する抗体などの抗体である。ヒトABO血液型の識別は、非還元αGal及びαGalNAc末端の存在に基づいているが、αFucは、H(O)血液型の決定因子である。従って、これらの糖鎖抗原は、レクチン及び/又は抗体などの凝集剤の結合のための望ましい標的を提供する。抗体は、本質的に二価であるため、赤血球特異性を有する抗体は、赤血球を保持/捕捉するための効果的な凝集剤を提供する。
【0036】
[0039] 赤血球結合親和性を有するポリクローナル抗体及び/又はモノクローナル抗体を凝集剤として使用することができる。例えば、ヒト赤血球のH抗原に対する結合特異性を有するポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を、特定の実施形態に従った凝集剤として使用することができる。いくつかの実施形態では、H(O)血液型に対するモノクローナル抗体が、凝集剤として提供される。このようなモノクローナル抗体は、混合血液型のプールしたヒト赤血球(hRBC)での望ましい血球凝集活性を実証する。加えて、いくつかの実施形態では、ビオチン化抗体は、ストレプトアビジン(SA)と組み合わせて使用して、本明細書に提供されるようなラテラルフロー装置の試料受容ゾーンの抗体含浸試料パッドに赤血球を捕捉するなどの、ヒト赤血球のより効率的且つ効果的な結合、捕捉、及び保持のための改善された血球凝集活性を提供することができる。
【0037】
[0040] いくつかの実施形態では、抗体は、大規模産生のために組換え発現させることができる。また、天然型又はタンデムリピートを有する抗体の組換え発現も研究されている。いくつかの実施形態では、赤血球特異的抗体は、ストレプトアビジンを含み、ビオチン-ストレプトアビジンを有利に利用する装置及び方法と組み合わせて使用するためにビオチン化することができる。いくつかの実施形態では、提供される抗体は、細菌発現系における大規模での抗体産生の効率を高め得るタンデムリピートも含み得る(Hwang et al., Biomolecules, 2018, 8, 146)。さらに、融合技術がタンパク質及び抗体に広く利用されており、このような融合技術を、赤血球の凝集及び捕捉効率が改善された抗体の産生に適用することができる。
【0038】
[0041] いくつかの実施形態では、抗体はビーズナノ粒子にコンジュゲートさせることができる。このような状況では、抗体コンジュゲートビーズ又はナノ粒子は、多価表面に多数の血球を凝集させて捕捉/保持できるため、効率的な凝集剤を提供する。いくつかの実施形態では、組換え融合技術は、凝集剤としての製造及び使用のために、融合タグを有する抗体を、高効率且つ低コストでナノ粒子に直接結合させることを可能にする。
【0039】
凝集剤を用いるラテラルフロー装置、方法、及びキット
装置
[0042] いくつかの実施形態では、凝集剤が、ラテラルフロー免疫測定法又はストリップ試験などの装置内又は装置上に存在する。本明細書で使用される場合、「試料受容ゾーン」は、試料添加用に構成されたラテラルフロー装置又はストリップ試験などのアッセイ又は装置の一部を指す。いくつかの実施形態では、試料受容ゾーンは、凝集剤を含んでもよいし、或いは1つ若しくは複数の前記凝集剤を含むか、又はそれが含浸された試料パッドを備えてもよい。
【0040】
[0043] 本明細書で使用される場合、「標識ゾーン」は、目的の分析物に結合する抗体又は抗原などの目的の分析物を標識するための可動性試薬を含むように構成されたラテラルフロー装置又はストリップ試験などのアッセイ又は装置の一部を指す。いくつかの実施形態では、可動性結合剤は、目的の分析物に特異的であり、検出可能、例えば、光学的又は視覚的に検出可能である。
【0041】
[0044] 本明細書で使用される場合、「捕捉ゾーン」は、目的の分析物にコンジュゲートした検出可能な可動性薬剤の捕捉などの、目的の標識分析物を捕捉するための特異的結合を有する固定化試薬を含むように構成されたラテラルフロー装置又はストリップ試験などのアッセイ又は装置の一部を指す。いくつかの実施形態では、捕捉ゾーンは、目的の分析物及び目的の分析物と検出可能な可動性薬剤とのコンジュゲートに結合する固定化抗体又は固定化抗原を含み得る。いくつかの実施形態では、捕捉ゾーンの薬剤により、目的の標識分析物が、分析される試料中に存在する場合、視覚的又は光学的に検査及び/又は検出できる試験ラインに蓄積する。
【0042】
[0045] 本明細書で使用される場合、「液体流路」は、適用された試料が上流から下流方向に流れるラテラルフロー免疫測定法などのアッセイの経路を指す。従って、いくつかの実施形態では、ラテラルフロー装置は、上流の試料受容ゾーン、試料受容ゾーンの下流の標識ゾーン、及び標識ゾーンの下流の捕捉ゾーンを備え、これらのゾーンはすべて、追加された試料が試料受容ゾーンから標識ゾーンを通って捕捉ゾーンに流れるように同じ液体流路に存在する。
【0043】
[0046] いくつかの実施形態では、本明細書に記載のラテラルフロー装置は、赤血球がパッド材料内で化学的及び/又は物理的に保持又は捕捉されるように試料パッド及び凝集剤が赤血球と相互作用するよう、レクチン又は赤血球特異的抗体などの凝集剤を含浸させた試料パッドを含む試料受容ゾーンを備える。システム、方法、及びキットは、本明細書に記載のような装置、試料採取のための体積監視機構を有する毛管などの血液毛細血管を包含し得る。実施形態は、全血試料がラテラルフロー免疫測定法の試料受容ゾーンに添加されて、試料がラテラルフロー装置を通って移動する間、静脈穿刺又は指先穿刺による全血試料の赤血球の除去を容易にすることができる。従って、血漿及び緩衝液は、分析のための試験ストリップを通過し、赤血球が凝集して、試料受容ゾーンの試料パッドに捕捉/保持される。凝集剤並びにそれを含む装置及び方法は、エンドユーザの作業の流れを簡素化することができ、目的の分析物を検出するための全血試料を利用するアッセイ、特に目的の分析物について全血を分析するためのラテラルフロー免疫測定ストリップ試験に広く適用することができる。
【0044】
[0047] いくつかの実施形態では、ラテラルフロー装置は、赤血球がパッド材料内に保持又は捕捉されるよう、試料パッドが赤血球と物理的に相互作用するように構成された試料パッドを含む試料受容ゾーンを備える。このような実施形態では、試料パッドは、この試料パッドからラテラルフローストリップ試験装置の下流部分への赤血球の流れを維持する、保持する、捕捉する、及び/又は別の方法で減速させるように、赤血球との物理的相互作用のための手段を備える。例えば、試料パッドは、ラテラルフローストリップ試験装置の試料パッド内に赤血球を物理的に保持及び/又は捕捉するための適切な網目サイズを有するネット、メッシュ、スクリーン、又は格子などの構造を有する、赤血球との物理的相互作用のための手段を備えることができる。
【0045】
[0048] 他の実施形態では、ラテラルフロー装置の試料受容ゾーンの試料パッドでの赤血球の凝集及び捕捉は、血漿分離の効率を向上させる。具体的には、凝集剤を含浸させた試料パッドでの赤血球の捕捉では、緩衝液中の全血試料を試料受容ゾーンに添加するだけでよく、赤血球が試料パッドで凝集し、捕捉され、保持されることになる。これにより、赤血球がラテラルフロー免疫測定法の試料標識ゾーン又は試験ゾーンに進入するのを防止し、従って、赤血球がストリップ試験結果の生成又は解釈を妨害するのを防止する。凝集剤含浸試料パッドでの赤血球の凝集により、赤血球が、溶解したり、又は試料パッドからラテラルフロー免疫測定装置の下流の構成要素及び領域に漏れたりすることなく、赤血球が試料パッドに捕捉されて保持される。これにより、赤血球が、検査される全血試料にも存在し得る目的の分析物の標識化及び固定化のための下流の薬剤に干渉するのが防止される。
【0046】
キット
[0049] 実施形態によると、凝集剤を含む装置を用いたキットも提供される。本明細書に記載の凝集剤、装置、及び方法に加えて、試料採取手段などの説明書及び追加の構成要素も提供される。いくつかの実施形態では、全血試料を採取するための手段又は装置は毛細管を含み得る。
【0047】
[0050] 実施形態によると、部品のキットは、本明細書に記載のような装置、並びに試料採取、試料希釈(緩衝液)、及び/又は装置の使用のための追加の構成要素を含み得る。使用説明書(「DFU」)をキットに含めることができる。1つ又は複数の採取装置を備えることができ、このような採取装置は、1回限りの使用を意図した使い捨てとすることができる。
【0048】
[0051] 方法
[0052] 他の実施形態によると、本明細書に記載のような装置又はキットの構成要素を採用する方法が提供される。この方法は、いくつかの実施形態では、赤血球などの全血試料の特定の成分による干渉なしに、目的の分析物の有無についての全血試料の分析などの流体試料の分析を達成する。従って、全血試料中の目的の分析物の有無を検出する方法は、実施形態では、本明細書に記載のような装置を提供すること、凝集剤含浸試料パッドを含む試料受容ゾーン上又はその中などの装置に全血試料を配置することを含み、赤血球が試料受容ゾーンに保持され、捕捉ゾーンに固定化された標識分析物の有無が可視化される。
【0049】
[0053] 方法は、本明細書に記載のようなシステム又はキットの構成要素を採用して、全血試料中に存在する赤血球の凝集を達成することができる。いくつかの実施形態によると、全血などの試料を採取し、装置に適用し、ラテラルフロー免疫測定装置の試料受容ゾーンの試料パッドに存在する凝集剤による凝集などで凝集させ、この凝集した赤血球が試料パッドに捕捉/保持されると同時に、試料の残りの部分は、標識ゾーン及び試験ゾーンに存在する構成要素と試料との相互作用による、目的の分析物の存在についての分析のために下流に流される。
【実施例】
【0050】
[0054] 以下の実施例は、本質的に例示であり、決して限定を意図するものではない。
【0051】
実施例1:様々なレクチンを用いたヒト赤血球凝集試験
[0055] 様々なレクチンのヒト赤血球を凝集させる能力を評価する研究を行った。試験したレクチンは、マンノース、ガラクトース、フコース、N-アセチルガラクトサミン、及びN-アセチルグルコサミンに対する糖特異性を有する、Vector Labsから市販されているビオチン化型であった。具体的には、試験したレクチンには、コンカナバリンA(Con A)、ダイズ(glycine max)(大豆)凝集素(SBA)、コムギ胚芽(triticum vulgaris)凝集素(WGA)、ハリエニシダ(Ulex europaeus)凝集素I(UEA I)、ラッカセイ(arachis hypogaea)凝集素(PNA)、エンドウ(pisum sativum)凝集素(PSA)、レンズマメ(lens culinaris)凝集素(LCA)、インゲンマメ(phaseolus vulgaris)赤血球凝集素(PHA-E)のビオチンカ型が含まれる。
【0052】
[0056] 凝集アッセイを、混合と温度制御のためにオービタルシェーカー/インキュベーターを使用して丸底96ウェルプレートで行った。レクチンを、10%PBS溶液(Rockland #R407-0050)に懸濁した、プールしたヒト赤血球を凝集させる能力について分析した。各レクチンの凝集アッセイを、ストレプトアビジン(SA)を添加して及び添加せずに行った。
【0053】
[0057] 段階希釈レクチン溶液を、ストレプトアビジンを用いて及び用いずに調製し、95μLの段階希釈レクチン溶液を96ウェルプレートのウェルにピペッティングした。次に、5μLのプールしたヒト赤血球懸濁液をレクチン溶液に添加した。溶液を、ピペッティング及びオービタルシェーカーで完全に混合した。レクチン/ヒト赤血球混合物を室温で1時間インキュベートした。1時間のインキュベーション後、凝集結果を可視化した。
【0054】
[0058] いくつかのレクチンの凝集アッセイの結果を、次の通り
図1に示す:列1:SA非添加WGA、列2:SA非添加UEA、列3:SA非添加PNA、列4:SA非添加PSA、列5:SA非添加LCA、列6:SA非添加PHA-E、列7:SA添加WGA、列8:SA添加UEA、列9:SA添加PNA、列10:SA添加PSA、列11:SA添加LCA、列12:SA添加PHA-E。段階希釈後の試験ウェル内のレクチン濃度は、行A:100μg/mL、行B:30μg/mL、行C:10μg/mL、行D:3μg/mL、行E:1μg/mL、行F:0μg/mLである。
【0055】
[0059] 凝集アッセイの結果に基づいて、表2に示すように、試験したレクチンの50%効果濃度(EC50)を計算した。
【0056】
【0057】
[0060] このデータは、様々な糖特異性を持つレクチンが、プールしたヒト赤血球(hRBC)の血球凝集活性をもたらすことを実証している。加えて、WGA、UEA-I、PSA、LCA、及びPHA-Eなどの一部のビオチン化レクチンは、ストレプトアビジンと組み合わせて試験すると、低いEC50値によって実証されるように、プールしたヒト赤血球の血球凝集を改善する。
【0058】
実施例2:レクチン及び抗ヒト赤血球抗体を用いたヒト赤血球凝集試験
[0061] 様々なレクチン及び抗ヒト赤血球抗体のヒト赤血球を凝集させる能力を評価する研究を行った。試験したレクチンは、マンノース及びガラクトースに対する糖特異性を有するVector Labsから市販されているビオチン化型であった。具体的には、試験したレクチンには、コンカナバリンA(Con A)及びダイズ(Glycine max)(大豆)凝集素(SBA)のビオチン化型が含まれる。試験した抗ヒト赤血球抗体は、Avitagでエンジニアリングされ、インビトロでビオチン化されたビオチン化モノクローナル抗hRBC H101である。抗hRBC mAb H101は、hRBCのH抗原に対して特異性を示すように組換え的に作製した。
【0059】
[0062] 凝集アッセイは、混合と温度制御のためにオービタルシェーカー/インキュベーターを使用して丸底96ウェルプレートで行った。抗hRBC mAb H101及びレクチンを、10%PBS溶液(Rockland #R407-0050)に懸濁した、プールしたヒト赤血球を凝集させる能力について分析した。各凝集剤(Ab及びレクチン)の凝集アッセイを、ストレプトアビジン(SA)を添加して及び添加せずに行った。
【0060】
[0063] 段階希釈した抗体及びレクチンの溶液を、ストレプトアビジンを用いて及び用いずに調製し、95μLの段階希釈した抗体/レクチン溶液を96ウェルプレートのウェルにピペッティングした。次に、5μLのプールしたヒト赤血球懸濁液をレクチン溶液に添加した。溶液を、ピペッティング及びオービタルシェーカーで完全に混合した。凝集剤/ヒト赤血球混合物を室温で1時間インキュベートした。1時間のインキュベーション後、凝集結果を可視化した。
【0061】
[0064] いくつかのレクチンについての凝集アッセイの結果を、次の通り
図2に示す:列1:SA非添加mAb H101、列2:SA非添加Con A、列3:SA非添加SBA、列4:SA添加mAb H101、列5:SA添加Con A、列6:SA添加SBA。段階希釈後の試験ウェル内の抗体及びレクチンの濃度は、行A:100μg/mL、行B:30μg/mL、行C:10μg/mL、行D:3μg/mL、行E:1μg/mL、行F:0μg/mLである。
【0062】
[0065] 凝集アッセイの結果に基づいて、表3に示すように、試験した抗体及びレクチンの50%効果濃度(EC50)を計算した。
【0063】
【0064】
[0066] このデータは、mAb H101が、低いEC50値によって実証されるように、ストレプトアビジンの有無にかかわらず、プールしたヒト赤血球(hRBC)の血球凝集活性をもたらすことを実証している。
【0065】
実施例3:血球凝集剤を含むラテラルフロー免疫測定法の評価
[0067] ラテラルフローストリップ試験に存在する場合の血球凝集剤としてのmAb H101の活性を評価するための研究を行った。実施例2の凝集アッセイにおける上記と同じmAb H101抗体を、ラテラルフローストリップ試験の試料受容ゾーンに添加して、全血試料がラテラルフロー免疫測定法(ストリップ試験)の試料受容ゾーンに添加された場合に赤血球が試料パッドに捕捉/保持され得るかどうかを分析した。
【0066】
[0068] ラテラルフローストリップ試験は、ラテラルフロー試験の試料受容ゾーンの試料パッドに適用される3つの異なる処理から構成した。試料パッド処理には、条件(1)抗体を一切含まないブランク対照(
図3A)、条件(2)PBS中0.74mg/mLのmAb H101抗体(
図3B)、及び条件(3)PBS中0.74mg/mLのmAb H101抗体と1mg/mLストレプトアビジン(
図3C)が含まれていた。1mLの調製した処理液を試料パッドの各底部に添加し、室温で1時間乾燥させた。
【0067】
[0069] パッド処理が条件(1)抗体を含まないブランク対照、を含んでいた構成では、試料パッドでの赤血球の保持は、赤血球が試料パッドの網状メッシュに捕捉されるなどの物理的手段によって達成される(
図3A)。パッド処理が条件(1)及び(2)mAb H101がストレプトアビジンを含む又は含まない、を含んでいた構成では、試料パッドでの赤血球の保持は、凝集した赤血球が試料パッドの網状メッシュに捕捉されるなどの物理的手段に加えて、抗体及び/又はストレプトアビジンによる赤血球の凝集によって達成される(
図3B及び
図3C)。
【0068】
[0070] 次に、10%PBS溶液に懸濁した様々な量のプールしたヒト赤血球(Rockland#R407-0050)を試料パッドにピペッティングし、続いて、さらに追加用量(chase volumme)の10%PBSを100μLの最終容量になるまで添加した。4つの異なる赤血球/PBS容量を、次の通り試験した:(1)50μLのRBC+50μLのPBS;(2)25μLのRBC+75μLのPBS;(3)12.5μLのRBC+87.5μLのPBS;(4)6.2μLのRBC+93.8μLのPBS。
【0069】
[0071] 赤血球及び追加PBSを添加した後、ラテラルフローストリップ試験を室温で10分間行った。10分後、試料受容ゾーンでの赤血球の捕捉/保持を、
図3に示すように、条件1、2、及び3、並びにRBC/PBS容量1、2、3、及び4で可視化した。
【0070】
[0072] このデータは、対照ストリップが物理的な捕捉により赤血球を試料パッドに保持することを実証している(条件1、
図3Aを参照)。加えて、ビオチン化mAb H101を含むと、約12.5μLのRBC容量を含む試料受容ゾーンでhRBCを効率的に捕捉した(条件2、
図3Bを参照)。さらに、ストレプトアビジンの存在下では、ビオチン化mAb H101は、少なくとも約50uLのRBC容量を含む試料受容ゾーンでのhRBCの捕捉/保持にさらに効果的であった(条件3、
図3Cを参照)。
【0071】
[0073] 本明細書に記載の赤血球の保持及び凝集剤、装置、並びに方法はいくつかの利点を有する。例えば、物理的な赤血球捕捉手段及び/又は凝集剤を試料受容ゾーンに含むラテラルフロー免疫測定装置を使用して、赤血球からの光学的干渉なしに全血試料を分析することができる。また、記載した物理的捕捉及び/又は血球凝集ラテラルフローアッセイの利点は、追加のステップ、装置、又は操作なしで全血試料からの赤血球の分離を可能にするが、代わりに、この分離は、ラテラルフロー免疫測定装置の試料受容ゾーンで直接行われる。これにより、実験助手、又は店頭の家庭用ストリップ試験のユーザなどの他の装置のユーザが、複雑で時間のかかる余分なステップを必要とすることなく、指穿刺による血液などの全血の分析にラテラルフローストリップ試験を迅速、簡単、且つ正確に使用することができる。さらなる例により、記載した全血捕捉/凝集ラテラルフロー免疫測定法は、追加の機器を必要とすることなく、且つ血液画分を分離するための遠心分離機などの実験器具を必要とせずに単回使用の分離及び分析装置を提供する。
【0072】
[0074] 前述の説明は、当業者が本明細書に記載の様々な構成を実施できるようにするために示したものである。主題の技術を、様々な図面及び構成を参照して具体的に説明したが、これらは例示のみを目的としており、主題の技術の範囲を限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0073】
[0075] 「実施形態」又は「態様」などの語句は、そのような態様が主題の技術に不可欠であること、又はそのような態様が主題の技術のすべての構成に適用されることを暗示するものではない。態様に関連する開示は、すべての構成又は1つ若しくは複数の構成に適用することができる。態様は、開示の1つ又は複数の例を提供することができる。「態様」などの語句は、1つ又は複数の態様を指す場合があり、その逆も同様である。「実施形態」などの語句は、そのような実施形態が主題の技術に不可欠であること、又はそのような実施形態が主題の技術のすべての構成に適用されることを暗示するものではない。実施形態に関連する開示は、すべての実施形態又は1つ若しく複数の実施形態に適用することができる。実施形態は、本開示の1つ又は複数の例を提供することができる。このような「実施形態」という語句は、1つ又は複数の実施形態を指してもよく、その逆もまた同様である。「構成」などの語句は、そのような構成が主題の技術に不可欠であること、又はそのような構成が主題の技術のすべての構成に適用されることを暗示するものではない。構成に関連する開示は、すべての構成、又は1つ若しくは複数の構成に適用することができる。構成は、開示の1つ又は複数の例を提供することができる。「構成」などの語句は、1つ又は複数の構成を指す場合があり、その逆も同様である。
【0074】
[0076] 主題の技術を実施するための他の方法が多数存在し得る。本明細書に記載の様々な機能及び要素は、主題の技術の範囲を逸脱しない範囲で、示したものとは異なる方法で区分してもよい。これらの構成に対する様々な変更は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義する一般的な原理を、他の構成に適用することができる。従って、主題の技術の範囲から逸脱することなく、当業者が、主題の技術に多くの変化及び変更を加えることができる。
【0075】
[0077] 開示したプロセスにおけるステップの特定の順序又は序列は、例示的なアプローチの例示であることを理解されよう。設計の好みに基づいて、プロセスにおけるステップの特定の順序又は序列は、再構成できることを理解されたい。いくつかのステップを同時に実施することもできる。付随する方法クレームは、様々なステップの要素をサンプル順に提示するものであり、提示される特定の順序又は序列に限定されることを意図していない。
【0076】
[0078] 本明細書で使用される場合、項目のいずれかを区切るための「及び」又は「又は」という用語を伴う、一連の項目に先行する「少なくとも1つの」という語句は、リストの各メンバー(則ち、各項目)ではなく、全体としてリストを変更する。「少なくとも1つの」という語句は、リストされた各項目の少なくとも1つを選択する必要はなく、むしろ、この語句は、項目のうちのいずれかの1つの少なくとも1つ、及び/又は項目の任意の組み合わせの少なくとも1つ、及び/又は項目のそれぞれの少なくとも1つを含むという意味を許容する。例として、「A、B、及びCの少なくとも1つ」又は「A、B、又はCの少なくとも1つ」という語句はそれぞれ、Aのみ、Bのみ、又はCのみ、A、B、及びCの任意の組み合わせ、及び/又はA、B、及びCのそれぞれのうちの少なくとも1つを指す。
【0077】
[0079] 本開示で使用される「上」、「底」、「前」、「後」などの用語は、通常の重力系ではなく、任意の基準系を指すものとして理解されるべきである。従って、上面、底面、前面、及び後面は、重力系において上方、下方、斜め、又は水平に延在してもよい。
【0078】
[0080] さらに、「含む」又は「有する」などの用語が本明細書又は特許請求の範囲で使用される限りにおいて、そのような用語は、特許請求の範囲で転換語として使用される場合に「含む」と解釈される「含む」という用語と同様の形で包含されることが意図される。
【0079】
[0081] 「例示的」という用語は、本明細書では、「例、実例、又は例示としての役割を果たす」という意味で使用される。本明細書で「例示的」として記載される任意の実施形態は、必ずしも他の実施形態よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。
【0080】
[0082] 単数形の要素への言及は、特に明記されていない限り、「唯一」を意味することを意図するものではなく、むしろ「1つ以上」を意味する。男性形の代名詞(例えば、彼の(his))には、女性形及び中性形の性別(例えば、彼女の(her)及びその(its))が含まれ、その逆も同様である。「いくつかの」という用語は、1つ又は複数を指す。下線及び/又はイタリック体の見出し及び小見出しは、便宜上のみで使用され、主題の技術を限定するものではなく、主題の技術の説明の解釈に関連して言及されるものではない。当業者に公知であるか又は後に公知となる、本開示全体を通して記載する様々な構成の要素に対するすべての構造的及び機能的等価物は、参照により本明細書に明示的に組み込まれ、主題の技術によって包含されることが意図される。さらに、本明細書に開示されるものは、そのような開示が上記の説明で明示的に述べられているかどうかにかかわらず、公衆に提供されることを一切意図するものではない。
【0081】
[0083] 主題の技術の特定の態様及び実施形態を説明してきたが、これらはほんの一例として提示したものであり、主題の技術の範囲を限定することを意図するものではない。実際、本明細書に記載の方法及びシステムは、その精神から逸脱することなく、他の様々な形態で実施することができる。添付の特許請求の範囲及びその等価物は、主題の技術の範囲及び精神に該当するような形式又は変更を包含することを意図している。
【国際調査報告】