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特表2024-531600Clostridium ghonii菌と腫瘍血管新生阻害剤の併用の応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】Clostridium ghonii菌と腫瘍血管新生阻害剤の併用の応用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/742 20150101AFI20240822BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 31/444 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61K35/742
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/444
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514748
(86)(22)【出願日】2022-10-09
(85)【翻訳文提出日】2024-03-06
(86)【国際出願番号】 CN2022124089
(87)【国際公開番号】W WO2023056972
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】202111177878.9
(32)【優先日】2021-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522179507
【氏名又は名称】施慧達薬業集団(吉林)有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHIHUIDA PHARMACEUTICALS GROUP (JILIN) LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 999, High-Tech Industrial Park, Baishan, Jilin, China
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王勇
(72)【発明者】
【氏名】劉園園
(72)【発明者】
【氏名】張文華
(72)【発明者】
【氏名】▲シン▼艶秋
(72)【発明者】
【氏名】王少鵬
(72)【発明者】
【氏名】王丹
(72)【発明者】
【氏名】朱紅
(72)【発明者】
【氏名】徐興魯
(72)【発明者】
【氏名】姜聖彪
(72)【発明者】
【氏名】李暁楠
(72)【発明者】
【氏名】鄭嘉輝
(72)【発明者】
【氏名】張蓉
(72)【発明者】
【氏名】楊冬霞
(72)【発明者】
【氏名】▲ガオ▼玉霞
(72)【発明者】
【氏名】邵石麗
(72)【発明者】
【氏名】韓停
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA362
4C084ZB261
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC19
4C086GA08
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC68
4C087CA09
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明はClostridium ghonii菌と腫瘍血管新生阻害剤の併用のガン治療における応用に関する。本発明は、初めてClostridiumghonii菌と低用量腫瘍血管新生阻害剤の併用により、腫瘍中のM2型マクロファージ、MDSCなどの浸潤を低下させ、そして腫瘍中のTGFβ数を減少させ、TME中の抗腫瘍免疫応答の抑制作用を低下させることを発見した。同時に低用量腫瘍血管新生阻害剤の併用により、CD8、CD3T、F4/80などの免疫細胞の腫瘍への浸潤を促進し、腫瘍中の免疫微小環境を改善し、抗腫瘍治療効果を増強することができる。本発明は、末期悪性実体腫瘍タイプに応用でき、Clostridiumghonii菌と低用量のAitanの併用により、TME中の抗腫瘍免疫応答抑制作用を低下させることにより、TMEを免疫抑制から免疫活性化状態に変化させ、高効率的な抗腫瘍を実現する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍を治療するための医薬品の製造におけるClostridium ghonii菌と腫瘍血管新生阻害剤の併用の応用。
【請求項2】
前記薬物は、CD45CD3T、CD45CD3CD8T及びF4/80浸潤を促進し、IFN-γ、TNF-αおよびGM-CSF発現の増強を誘導し、TGFβの発現を低下させ、マクロファージTAM、及び骨髄由来免疫抑制細胞MDSCの数を低下させ、免疫抑制を減少させる医薬製品を含むことを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項3】
前記薬物は、腫瘍血管の正常化を誘導し、TMEを免疫抑制から免疫活性化状態に変化させる薬物を含むことを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項4】
前記Clostridium ghonii菌はClostridiumghonii菌MW-DCG-LCv-26菌株(オーストラリア国家計量研究院に保管され、菌株番号はV12/001486であり)、またはClostridiumghonii菌を馴化した菌株であることを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項5】
前記Clostridium ghonii菌を馴化した菌株は、MW-DCG-HNCv-18菌株(オーストラリア国家計量研究院に保存され、菌株保存番号はV12/001485であり)、またはMW-DCG-CCv-17菌株(オーストラリア国家計量研究院に保存され、菌株の保存番号はV12/001487であり)を含むことを特徴とする請求項4に記載の応用。
【請求項6】
前記Clostridium ghonii菌は芽胞形態であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の応用。
【請求項7】
前記腫瘍血管新生阻害剤は、Aitan、スニチニブ、パゾパニブ、ベバシズマブ(evacizumab)、ラムシルマブ(Ramucirumab)、コンベルセプト(Conbercept)、アフリベルセプト(aflibercept)、ソラフェニブトシル酸塩(Sorafenibtosylate)、レゴラフェニブ(regorafenib)のうちの1種または2種以上の組み合わせを含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の応用。
【請求項8】
前記腫瘍は、結腸がん、Lewis肺がん、上咽頭がん、非小細胞肺がん、線維肉腫またはメラノーマであることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の応用。
【請求項9】
腫瘍を治療するための薬物であって、前記薬物中の有効成分はClostridium ghonii菌と腫瘍血管新生阻害剤を含むことを特徴とする薬物。
【請求項10】
前記Clostridium ghonii菌はClostridiumghonii菌MW-DCG-LCv-26菌株(オーストラリア国家計量研究院に保管され、菌株番号はV12/001486であり)、またはClostridiumghonii菌を馴化した菌株であることを特徴とする請求項9に記載の薬物。
【請求項11】
前記Clostridium ghonii菌を馴化した菌株は、MW-DCG-HNCv-18菌株(オーストラリア国家計量研究院に保存され、菌株保存番号はV12/001485であり)、またはMW-DCG-CCv-17菌株(オーストラリア国家計量研究院に保存され、菌株の保存番号V12/001487であり)を含むことを特徴とする請求項10に記載の薬物。
【請求項12】
前記Clostridium ghonii菌は芽胞形態であることを特徴とする請求項10に記載の薬物。
【請求項13】
前記腫瘍血管新生阻害剤は、Aitan、スニチニブ、パゾパニブ、ベバシズマブ(evacizumab)、ラムシルマブ(Ramucirumab)、コンベルセプト(Conbercept)、アフリベルセプト(aflibercept)、ソラフェニブトシル酸塩(Sorafenibtosylate)、レゴラフェニブ(regorafenib)のうちの1種または2種以上の組み合わせを含むことを特徴とする請求項10に記載の薬物。
【請求項14】
前記薬効成分であるClostridium ghonii菌と腫瘍血管新生阻害剤の投与順序は、程度投与または同時投与であることを特徴とする請求項10~13のいずれか1項に記載の薬物。
【請求項15】
芽胞形態のClostridium ghonii菌1×10CFUのあたり、併用するAitanの用量は60mg/kg/dであることを特徴とする請求項12に記載の薬物。
【請求項16】
前記腫瘍は結腸がん、Lewis肺がん、上咽頭がん、非小細胞肺がん、線維肉腫またはメラノーマであることを特徴とする請求項10~13のいずれか1項に記載の薬物。
【請求項17】
前記Clostridium ghonii菌はClostridiumghonii菌芽胞凍結乾燥粉末であることを特徴とする請求項10に記載の薬物。
【請求項18】
前記Clostridium ghonii菌芽胞凍結乾燥粉末はClostridiumghonii菌芽胞を活性成分とし、1%ショ糖を添加剤とし、-40℃ 4h、-35℃ 10min同時に真空引き、-30℃ 10min、-25℃ 10min、-20℃ 26h、-15℃ 2h、-10℃ 10min、-5℃10min、0℃ 10min、10℃ 2h、15℃ 10min、20℃ 3h、27℃3hの凍結乾燥プロセスで調製されることを特徴とする請求項17に記載の薬物。
【請求項19】
1本の前記Clostridium ghonii菌芽胞凍結乾燥粉末当たりのClostridiumghonii菌芽胞の個数が1×10CFUであることを特徴とする請求項18に記載の薬物。
【請求項20】
腫瘍治療方法であって、Clostridium ghonii菌とAitanを併用して投与し、
前記Clostridium ghonii菌は芽胞形態であり、Clostridiumghonii菌の芽胞量は1×10cfu/腫瘍/回、腫瘍内投与、まずAitanを毎日1回で3日投与し、その後Clostridiumghonii菌芽胞を1日おきに1回で、合計2回投与し、
前記Aitanは60mg/kg/d、120mg/kg/d、または180mg/kg/dの投与量で胃内投与されることを特徴とする腫瘍治療方法。
【請求項21】
前記腫瘍は結腸がん、Lewis肺がん、上咽頭がん、非小細胞肺がん、線維肉腫またはメラノーマであことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2021年10月09日に中国特許庁へ提出された、出願番号CN202111177878.9であり、発明の名称「Clostridiumghonii菌と腫瘍血管新生阻害剤の併用の応用」である中国特許出願に基づく優先権を主張し、その全内容は、援用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は腫瘍学技術分野に属し、Clostridium ghonii(クロストリジウム ゴニイ)菌と腫瘍血管新生阻害剤の併用に関し、特にClostridiumghonii菌と腫瘍血管新生阻害剤の併用により、腫瘍免疫抑制性微小環境を解除し、腫瘍微小環境を改善して、腫瘍治療効果を増強する応用に関する。
【背景技術】
【0003】
腫瘍微小環境(Tumor microenvironment、TME)は、腫瘍成長において、腫瘍細胞、基質細胞と、細胞外基質及びそこに浸潤した生体分子などとともに構成する局所定常環境である。TMEは腫瘍の発生、発展、侵襲などに必要な物質基礎を提供し、腫瘍転移、再発などの多種の生物学的行為を制御する。同時にTMEは腫瘍の薬剤耐性と耐放射性を増加させ、治療効果を低下させることができる。TME内の免疫調節は、腫瘍発生・成長において、重要な機能を持ち、多種のメカニズムにより、腫瘍局所免疫抑制を形成することができる。TME免疫治療戦略をどのように制御するか、積極的な免疫微小環境を再構築することは抗腫瘍治療の重点と難点である。
【0004】
悪性腫瘍は、様々なメカニズムにより、リンパ球浸潤損傷、酸素欠乏による免疫チェックポイントのタンパク質発現の向上、Tregの募集、レジデント免疫効果細胞及び交通免疫効果細胞の機能を損なう機能を有する免疫抑制性腫瘍微小環境の構築などを含む宿主免疫監視を逃避する。腫瘍微小環境に浸潤した髄様細胞は、腫瘍微小環境において、腫瘍細胞の免疫脱出、腫瘍転移などの腫瘍発展を制御する重要な一環である。
【0005】
実体腫瘍は、通常、腫瘍関連のマクロファージ(TAM)、骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)、調節性T細胞(Treg)などの大量の免疫阻害剤を浸潤する。TGFβは、TMEの免疫反応において、重要な役割を果たし、抗腫瘍免疫抑制を促進する役割を有し、かつTGFβにより抗血管新生治療に対する耐薬が生じると考えられている。
【0006】
無酸素または低酸素含有量は、実体腫瘍の典型的な特徴であり、実体腫瘍の酸素欠乏は、HIF-1αの活性化により、MDSC、樹状細胞、腫瘍細胞の免疫チェックポイントの蛋白質PD-L1の発現を直接的に向上させ、免疫抑制と逃避を支援することができる。同時に、腫瘍の酸素欠乏は、移動促進タンパク質(例えば、SDF1A及びHGF)の誘導及び侵襲性細胞外基質分子の産生を促進することにより、腫瘍細胞の侵襲潜在能力を増加させることができる。酸素欠乏も腫瘍の放射線化学療法に対する抵抗力を増強する。
【0007】
Clostridium ghonii菌は絶対嫌気性菌であり、腫瘍の酸素欠乏または壊死区のみにおいて特異的に発芽し、大量に増殖することができ、腫瘍組織を区別せずに有効であり、且つTMEを破壊する。Clostridiumghonii菌の腫瘍溶解後、TME免疫原性を変化させ、免疫抑制性TMEを調節し、腫瘍免疫反応を誘導する。現在、Clostridiumghonii菌と腫瘍血管新生阻害剤の併用で腫瘍免疫抑制性微小環境を明らかに変化させ、抗腫瘍効果を増強できるという関連報道はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、先行技術の不足に対して、より安全で、強い標的性を有する実体腫瘍を治療する嫌気性菌であるClostridiumghonii菌と腫瘍血管新生阻害剤の併用の応用を提供する。
【0009】
Clostridium ghonii菌と腫瘍血管新生阻害剤の併用の腫瘍治療用医薬製品の製造における応用。
有効成分が、Clostridium ghonii菌と腫瘍血管新生阻害剤を含む腫瘍治療用薬物である。
本発明の好ましい形態によれば、前記Clostridium ghonii菌はClostridiumghonii菌MW-DCG-LCv-26菌株(オーストラリア国家計量研究院に保管され、菌株保存番号はV12/001486であり)、またはClostridiumghonii菌を馴化した菌株である。他の好ましい菌株は、MW-DCG-HNCv-18菌株(オーストラリア国家計量研究院に保存され、菌株保存番号はV12/001485であり)、またはMW-DCG-CCv-17菌株(オーストラリア国家計量研究院に保存され、菌株保存番号はV12/001487であり)を含む。
本発明の好ましい形態によれば、Clostridium ghonii菌は芽胞形態である。
本発明の好ましい形態によれば、前記腫瘍血管新生阻害剤は、Aitan、スニチニブ、パゾパニブ、ベバシズマブ(evacizumab)、ラムシルマブ(Ramucirumab)、コンベルセプト(Conbercept)、アフリベルセプト(aflibercept)、ソラフェニブトシル酸塩(Sorafenibtosylate)、レゴラフェニブ(regorafenib)から選択されるものである。
本発明の好ましい形態によれば、前記薬効成分であるClostridium ghonii菌と腫瘍血管新生阻害剤の投与順序は、前後投与または同時投与である。
本発明の好ましい形態によれば、薬物の組み合わせは1×10CFUのClostridium ghonii菌芽胞凍結乾燥粉末とAitanの最適量60mg/kg/dの併用である。
本発明の好ましい形態によれば、、前記腫瘍は、結腸がん、Lewis肺がん、上咽頭がん、非小細胞肺がん、線維肉腫またはメラノーマなどを含むが、これらに限定されない。
本発明は、腫瘍血管新生阻害剤をランダムに併用することができる。Clostridium ghonii菌芽胞は純粋な微生物である必要があり、すなわち芽胞以外、他の細菌は一切含まないものであり、腫瘍血管新生阻害剤は、同様に無菌の要求に満たす必要がある。Clostridiumghonii菌芽胞は当分野の既存の方法に従って、調製・精製を行い、関連品質基準に符合する薬物を獲得する。
【発明の効果】
【0010】
1、本発明は初めてより安全で、強い標的性のClostridium ghonii菌と腫瘍血管新生阻害剤の併用により、高効率的な抗腫瘍を得ることを発見した。
2、本発明は、初めてClostridium ghonii菌と低用量腫瘍血管新生阻害剤の併用により、腫瘍中のM2型マクロファージ、MDSCなどの浸潤を低下させ、そして腫瘍中のTGFβ数を減少させ、TME中の抗腫瘍免疫応答の抑制作用を低下させることを発見した。同時に低用量腫瘍血管新生阻害剤の併用により、CD8、CD3T、F4/80などの免疫細胞の腫瘍への浸潤を促進し、腫瘍中の免疫微小環境を改善し、抗腫瘍治療効果を増強することができる。
3、本発明において、Clostridium ghonii菌に腫瘍血管新生阻害剤を併用する最適量を明らかにした。
4、本発明は、末期悪性実体腫瘍タイプに応用でき、Clostridium ghonii菌と低用量のAitanの併用により、TME中の抗腫瘍免疫応答抑制作用を低下させることにより、TMEを免疫抑制から免疫活性化状態に変化させ、高効率的な抗腫瘍を実現し、その独特な治療効果は、高用量のAitanを用いて腫瘍の酸素欠乏を加重させることによりClostridiumghonii菌が繁殖する酸素欠乏環境を作ることによる高効率的な抗腫瘍ではなく、抗腫瘍免疫微小環境の変化に起因すべきである。
5、本発明における組成物は、腫瘍を治療する際に、より安全で、標的性がより高く、標的とする腫瘍の酸素欠乏環境のみで発芽し、非腫瘍の酸素欠乏環境では細菌に発芽することできない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は実施例2におけるネットウエイトのヒストグラムである。
図2図2は実施例2における脳梗塞組織のTTC染色図である。
図3図3は実施例2における組織スライスのグラム染色図である。
図4図4は実施例2における心筋梗塞組織のTTC染色図である。
図5図5は実施例2における組織スライスのグラム染色図である。
図6図6は実施例3における実験マウスのネットウエイトのヒストグラムである。
図7図7は実施例3における実験マウスの腫瘍体積曲線図である。
図8図8は実施例3における実験マウスの腫瘍重量図である。
図9図9は実施例3における実験マウスの腫瘍解剖図である。
図10図10は実施例4における腫瘍組織中のT細胞浸潤の割合である。
図11図11は腫瘍組織におけるT細胞のサイトカイン発現状況である。
図12図12は実施例4におけるマウス腫瘍内サイトカイン発現状況である。
図13図13、14は実施例4におけるマウス腫瘍内骨髄由来の抑制細胞(MDSC)、腫瘍関連マクロファージ(TAM)の割合である。
図14
図15図15、16は実施例4におけるマウス腫瘍組織免疫組織化学染色図及びCD163細胞割合図である。
図16
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明は具体的な実施例を参照してさらに詳細に説明され、記載された実施例は、公衆に理解しやすくなるために、列挙された実施例の一部であり、本発明の保護範囲を限定するのではなく、本発明を説明するのみに使用され、本発明の保護範囲は請求項によって規定される。
実施例1
【0013】
材料と方法
【0014】
Clostridium ghonii菌芽胞凍結乾燥粉末注射用Clostridium ghonii菌芽胞凍結乾燥粉末、菌株はMW-DCG-LCv-26菌株、この菌株はオーストラリア国家計量研究院に保存され、菌株保存番号V12/001486、ロット番号:202003001-1、山東新創生物科学技術有限公司が開発した。注射用Clostridiumghonii菌芽胞凍結乾燥粉末は、Clostridium ghonii菌芽胞を活性成分とし、1%ショ糖を添加剤とし、-40℃4時間;-35℃ 10 min同時に真空引き、-30℃ 10min、-25℃ 10 min、-20℃ 26 h、-15℃ 2h、-10℃10 min、-5℃ 10 min、0℃ 10min、10℃ 2h、15℃ 10 min、20℃ 3h、27℃3hの凍結乾燥プロセスにより調製され、仕様は1×10CFU/本;対照品凍結乾燥粉末、ロット番号:201910002F、山東新創生物科学技術有限公司が開発し、1%ショ糖溶液1mLで上記凍結乾燥プロセスにより製造し;0.9%塩化ナトリウム注射液、ロット番号:2005062146、辰欣薬業股▲ふん▼有限公司が販売しており;滅菌注射用水、ロット番号:190221262、辰欣薬業股▲ふん▼有限公司が販売している。
【0015】
細胞系及び細胞培養
【0016】
CT26.WT結腸がん細胞、番号:3131C0001000800037、中国科学院上海生命科学研究院細胞資源センター。RPMIMedium 1640 basic基礎培地に体積百分率濃度10%特級ウシ胎児血清(低温溶解後の血清中に浮遊物がある可能性があり、2000rpmで3min遠心分離して浮遊物を除去し)と体積百分率濃度1.1%ペニシリン-ストレプトマイシンの混合液を添加し、十分に混合し、細胞を再懸濁した細胞懸濁液を75cm細胞培養瓶に接種し、1瓶に細胞培地25mLを添加し、5%CO細胞培養箱に入れて37℃で静置培養した。
【0017】
試薬
【0018】
RPMI Medium1640 basic基礎培地はGibcoから購入し、特級ウシ胎児血清とペニシリン-ストレプトマイシンはBIから購入し、Aitan(アパチニブ)は江蘇恒瑞医薬菌股▲ふん▼有限公司から購入し、Clostridiumghonii菌芽胞は、従来の方法に従って、調製・精製し、関連品質基準に合う薬物を獲得した。
【0019】
モデル構築
【0020】
BALB/cマウスを用いてCT26腫瘍細胞を皮下接種し、結腸がん皮下移植腫瘍モデルを構築した。1mLの使い捨て無菌注射器で抽出濃度7.5×10個/mL(許容範囲:6.75×10個/mL~8.25×10個/mL)の細胞懸濁液0.2mLをマウス右前肢腋窩皮下にゆっくり皮下注射で接種した(75%アルコール事前消毒処理)。注射が終わったら、乾いた綿球で針目の部位を軽く押した。
【0021】
観察と検査
【0022】
臨床観察:投与期間は毎日の午前と午後、肉眼で、動物行動、死亡または瀕死の状況などを1回観察した。
腫瘍測定:腫瘍の最大長径(L)と最大横径(W)(マウスの皮膚の厚さを含み)をノギスで測定し、
【0023】
【数1】
【0024】
により腫瘍の体積を計算した。
体重:投与期間、治療日から腫瘍測定日に体重を秤量した。
腫瘍重量:腫瘍組織を解剖で分離し、腫瘍重量を秤量し記録した。
腫瘍抑制率(IRTW%)=(対照群平均腫瘍重量-実験群平均腫瘍重量)/対照群平均腫瘍重量×100%。
【0025】
フローサイトメトリー解析
【0026】
結腸がんモデル中の腫瘍と脾臓を相応の時間に採取し、IV型コラーゲン(1mg/mL、Sigma)、ヒアルロニダーゼ(1mg/mL、Sigma)とDNaseI(20U/mL、Sigma)を含むDMEM培地中で、37℃で酵素消化を1時間行い、単一腫瘍細胞と脾臓細胞を収集した。分離された単一細胞をそれぞれ2%FCSを含むPBSで洗浄し、その後、関連抗体を用いて表面染色を行った。細胞を大量に洗浄した後、BDFACS Calibur(BectonDickinson)上で得た。フローサイトメトリーデータは、Novo Express TM(ACEA Biosciences,Inc.)によって分析された。
【0027】
Multi-ELISAによるサイトカインの検出
【0028】
実験マウスの末梢血と腫瘍組織を収集し、IL-10、TNF-a、GM-CSFとTGFβ等のサイトカインを評価した。Multi-ELISAキットはQiagen(Australia)から購入し、キット内に提供された説明書に従って実験を行った。ELISA結果は、ELISAプロセスボードによって450nmで読み出された(PolarstarOmega 96-wellmicroplatereaderBMG Labtech GmBH,Germany)。
【0029】
TCC染色
【0030】
腫瘍組織を取り出し、液体窒素により、急速凍結した後、スライスナイフで同じ厚さで5枚に切り出した。腫瘍組織スライスをガラス上に置き、2%のTTC溶液を滴下して組織スライスを覆い、30min遮光反応させ、デジタルカメラで撮影した。
【0031】
免疫組織化学
【0032】
腫瘍組織を採取した後、10%中性ホルマリン溶液中に迅速に放置して固定し、パラフィン包埋し、スライスした。パラフィンスライスは通常、水に脱蝋された。3%H脱イオン水を室温で光を避けて10分間インキュベートし、内因性過酸化水素酵素活性を除去し、5min×3回でPBS洗浄した。スライスをEDTA修復液(1×)に浸漬し、電子レンジを沸騰まで加熱して、電源を切り、5~10min間隔で、さらに1~2回修復し、冷却した。5%BSAブロッキング液を滴下して37℃で30minインキュベートし、ゆれ乾燥させた。適切に希釈された抗CD163及びHIF-1αマウスモノクローナル抗体の一次抗体を滴下し、37℃で1~2時間または4℃で一晩インキュベートした。5min×3回でPBS洗浄した。ビオチン標識ヤギ抗ウサギIgG(二次抗体)を滴下し、37℃で30minインキュベートした。5min×3回で、PBS洗浄した。SABCを滴下し、37℃で30minインキュベートした。5min×3回で、PBS洗浄した。蒸留水1mLに発色剤A、B、Cを各1滴加え、混合し、標本に加え、1~10min発色し、蒸留水で十分に洗浄して反応を停止した。ヘマトキシリン染色を繰り返した。脱水し透明になった。中性ゴムで封止し、顕微鏡を観察した。
【0033】
腫瘍組織スライスGram stain
【0034】
腫瘍組織を採取した後、10%中性ホルマリン溶液中に迅速に放置して固定し、パラフィン包埋し、スライスした。スライスを30minドライし、キシレンI5min、キシレンII 5min、100%エタノのールI 2min、95%エタノールI 2min、80%エタノールI2minで、流水で洗浄し、少し乾燥させた。グラム試薬一1minで、流水で洗浄し、グラム試薬二1minで、流水で洗浄し、グラム試薬三20s程度で、流水で洗浄し、エオシン20s程度で、流水で洗浄し、95%エタノールII30s、95%エタノールIII 1min、100%エタノールII2min、キシレンIII 3min、キシレンIV3min、中性ゴムで封止し、観察した。
【0035】
Clostridium ghonii菌の定量分析
【0036】
Trizol法を用いて組織RNAを抽出し、PrimeScriptTM RT reagent Kitwith gDNA Eraser(Perfect real time)キットを用いてRNAをcDNAに逆転写した。cDNAを鋳型として、Clostridium ghonii菌のチオレドキシン特異性プライマーを用いてClostridium ghonii菌の細菌を検出し、プライマー配列は以下の通りである。
Trx Forward primer(SEQID NO:1):5’--AATACAGGGAATTTTAGAGGTGCAG-3’
Trx Reverse primer(SEQID NO:2):5’--GCTAACATCTTACAAGGCCCACA-3’
【0037】
統計分析
【0038】
ダブルテールT検定またはPrism 6.0 Mann-Whitney検定(Graphpad Software、SanDiego)を用いて統計分析を行った。p<0.05で統計学的有意差がある。
実施例2
【0039】
Clostridium ghonii菌の実体腫瘍モデルへの応用の高安全性と強力標的性
【0040】
モデル構築
【0041】
結腸がん皮下移植腫瘍モデルを構築した。SDラットにおける中大脳動脈閉塞(MCAO)モデルを構築した。C57BL/6マウス急性心筋梗塞(MI)モデルを構築した。
【0042】
動物の群分け
【0043】
腫瘍体積0.35~0.60cmの実験動物を、腫瘍負荷動物のスクリーニングの当日に選択して試験に用いた。無作為原則でスクリーニングされた要求に合致する動物は、抽選法で、静脈投与対照群、腫瘍内投与対照群、Clostridiumghonii菌芽胞静脈投与群、Clostridium ghonii菌芽胞腫瘍内投与群という4つの群に分けられ、各群はいずれも8匹のマウスであった。
【0044】
SDラット中大脳動脈閉塞(MCAO)モデルは、ランダムに健康ラット対照群、脳梗塞モデル対照群、脳梗塞モデル静脈投与群、脳梗塞モデル頭蓋内投与群という4つの群に分けられて、各群はいずれも5匹であった。
【0045】
C57BL/6マウス急性心筋梗塞(MI)モデルは、無作為に心筋梗塞モデルTTC染色群、心筋梗塞モデル対照群、心筋梗塞モデル尾静脈投与群という3つの群に分けられ、各群はいずれも5匹であった。
【0046】
投与
【0047】
結腸がんモデル:芽胞使用量1×10cfu/腫瘍/回、腫瘍内投与、対照群に同じ体積の質量体積パーセント濃度0.9%塩化ナトリウム注射液を投与し;芽胞使用量1×10cfu/腫瘍/回、尾静脈投与、対照群に同じ体積の質量体積パーセント濃度0.9%塩化ナトリウム注射液を投与し;
SDラット中大脳動脈閉塞(MCAO)モデル:尾静脈投与量5×10CFU、頭蓋内投与量1×10CFU。
C57BL/6マウス急性心筋梗塞(MI)モデル:尾静脈投与量2×10CFU。
【0048】
観察と検出
【0049】
結腸がんモデルは、実験期間中にマウスの死亡または瀕死の情況、行為、マウスの体重情況を観察した。
MCAOモデルとMIモデルは、それぞれ脳組織と心臓組織を採取し、TTC染色、Clostridium ghonii菌細菌qPCRと芽胞細菌培養法による検出、および組織をスライスにして、Clostridium ghonii菌のGram stainによる検出を行った。
【0050】
結果
【0051】
結腸がんモデルは、実験期間中、腫瘍内投与または静脈投与にかかわらず、動物の死亡が認められなかった。また、マウスのネットウエイトは対照群と比較して、いずれも有意差がなかった(図1)。
MCAOモデル試験において、健康ラット対照群、脳梗塞モデル対照群、脳梗塞モデル静脈投与群、脳梗塞モデル頭蓋内投与群の脳組織に対してTTC染色を行い、正常ラットの脳組織スライスTTC染色は赤色であり、MCAOモデルラットの脳組織スライスのTTC染色により、脳梗塞が発生したラットの脳組織の一部の領域は蒼白色であった(図2)。
【0052】
MCAOモデル試験における脳組織に対して、Clostridium ghonii菌の細菌と芽胞の検出を行い、注射用Clostridiumghonii菌芽胞の尾静脈単回投与と注射用Clostridium ghonii菌芽胞の頭蓋内単回投与の後、脳梗塞が発生した脳組織においてClostridium ghonii菌芽胞を検出したが、いずれもClostridium ghonii菌の細菌は検出されなかった。
【0053】
脳組織に対して、スライス作製とGram stainを行い、そしてデジタル病理スキャンシステムを用いて、各組のラットの脳組織スライスをスキャンしてClostridiumghonii菌の細菌分布情況を検出し、陽性対照組の腫瘍組織スライスをグラム染色したスライスには、短桿状、青紫色のClostridiumghonii菌が見られた(図3a)。陰性対照群の腫瘍組織スライをスグラム染色したスライスには、細菌が見られなかった(図3b)。ラット中大脳動脈閉塞になった後、注射用Clostridiumghonii芽胞の尾静脈単回投与と注射用Clostridium ghonii芽胞の頭蓋内単回投与を行い、脳梗塞が発生した脳組織スライスにはいずれもClostridium ghonii菌の細菌は検出されなかった(図3c、3d)。
【0054】
MIモデルTTC染色群のマウスの心臓組織のTTC染色により、マウスの心筋組織が白色を呈し、MIモデルのマウスの心臓組織が明らかな梗塞を呈した(図4)ことが示される。MIモデルマウスに注射用Clostridiumghonii菌芽胞の尾静脈単回投与し、心筋梗塞が発生した心筋組織からClostridiumghonii菌芽胞が検出されたが、Clostridium ghonii菌の細菌は検出されなかった。
【0055】
心臓組織はスライス作製とGram stainを行い、デジタル病理スキャンシステムを用いて、各群のマウス心臓組織スライスをスキャンして、Clostridiumghonii菌の細菌分布を検出した。陽性対照群の腫瘍組織スライスグラムを染色したスライスには、短桿状、青紫色のClostridiumghonii菌が見られた(図3a)、陰性対照群の腫瘍組織スライスグラムを染色したスライスには、細菌は見られなかった(図3b)。MIモデルマウスに注射用Clostridiumghonii菌芽胞を尾静脈単回投与した後、心臓梗塞が発生した心筋組織スライスにClostridiumghonii菌の細菌は検出されなかった(図5)。
実施例3
【0056】
CT26マウスモデルにおけるClostridium ghonii菌芽胞と異なる用量のAitanの併用による抗腫瘍作用
【0057】
要求に合致するマウス(腫瘍体積0.31~0.41cm)は、ランダム原則を用いて、抽選法で、対照群、Clostridiumghonii菌芽胞群、Aitan高用量群、Aitan中用量群、Aitan低用量群、芽胞と低用量Aitanの併用群、芽胞と中用量Aitanの併用群、芽胞とAitan高用量の併用群という8つの群に分けられた。
【0058】
対照群:腫瘍内に同じ体積の0.9%塩化ナトリウム注射液を投与し;
Clostridium ghonii菌芽胞群:使用量1×10cfu/腫瘍/回、腫瘍内投与、2回投与、
Aitan高用量群:使用量180mg/kg/d、胃内投与、1日に1回で、合計7回投与し、
Aitan中用量群:使用料120mg/kg/d、胃内投与し、1日に1回で、計7回投与した、
Aitan低用量群:用量は60 mg/kg/d、胃に灌漑投与し、毎日1回、合計7回投与し;
Clostridium ghonii菌とAitanの併用群:Clostridium ghonii菌芽胞量1×10cfu/腫瘍/回、腫瘍内投与し、まずAitanを1日に1回で3日間投与し、その後芽胞投与を行い、1日おきに1回で、合計2回投与した。高、中、低用量Aitanとの併用群及び単独のAitanの高、中、低用量群。
【0059】
結果
治療期間中、各組はいずれも死亡または瀕死の状況はなかった。治療前、各群のマウス体重に有意差はなかった(p>0.05)。対照群と比較して、各群のマウスのネットウエイトに有意差はなかった(p>0.05)。腫瘍マウスのネットウエイトは表1と図6に示される。
【0060】
【表1】
【0061】
治療前、各群の腫瘍体積に有意差はなかった(p>0.05)。投与末期には、対照群と比較して、単独芽胞群、Clostridiumghonii菌と低用量Aitan群併用群及びClostridium ghonii菌と中用量Aitanの併用群の腫瘍体積はいずれも対照群(p=0.045、p=0.000、p=0.026)より有意に小さかった。腫瘍負荷マウスの腫瘍体積を表2と図7に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
単独芽胞群、Clostridium ghonii菌と低用量Aitanの併用群、Clostridiumghonii菌と中用量Aitanの併用群及びClostridium ghonii菌と高用量Aitanの併用群の腫瘍重量は、対照群と比較して、対照群(p=0.000、p=0.000、p=0.000、p=0.000、p=0.000)より顕著に小さかった。各群の腫瘍重量を表3、図8に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
腫瘍重量に基づいて腫瘍抑制率を計算し、腫瘍抑制率は表4に示すように、以下を現れた:Clostridium ghonii菌と低用量Aitanの併用群>芽胞と中用量Aitanの併用群>Clostridium ghonii菌と高用量Aitanの併用群>単独芽胞群>高用量Aitan群>低用量Aitan群>中用量Aitan群。腫瘍抑制率腫瘍解剖形態を図9に示す。
【0066】
【表4】
【0067】
Clostridium ghonii菌と低用量Aitanの併用群では、28.6%のマウス腫瘍が完全に除去され、実験終点まで腫瘍の成長が見られず、治癒率がClostridiumghonii菌と高用量Aitanの併用群(14.3%)とClostridiumghonii菌と中用量Aitanの併用群(14.3%)より明らかに高かった。しかし、高、中和低用量の単独Aitan群と単独芽胞群では、腫瘍の消失は見られず、治癒率が0%であった。表5に示されるように、Clostridiumghonii菌と低用量Aitanの併用は、顕著な抗腫瘍効果を示し、他の組より明らかに優れていることが分かった。
【0068】
【表5】
【0069】
上記の結果から分かるように、各用量治療群は、いずれも腫瘍成長に対する抑制作用を示し、芽胞と低用量Aitan群の併用による抗腫瘍作用が最も顕著であった。Clostridiumghonii菌芽胞とAitanなどの抗血管新生阻害剤の併用による治療はプラス超の作用を示し、その中でClostridiumghonii菌芽胞と低用量Aitanの併用による治療の抗腫瘍効果は最も優れている。
実施例4
【0070】
Clostridium ghonii菌と高用量Aitan及び低用量Aitanの併用による抗腫瘍作用メカニズムの研究
【0071】
Clostridium ghonii菌と低用量Aitanの併用による抗腫瘍作用は、Clostridiumghonii菌と高用量Aitanの併用により明らかに優れており、Clostridiumghonii菌と低用量Aitanの併用による抗腫瘍作用メカニズムについて、研究を行った。
【0072】
対照群、単独芽胞群、Clostridium ghonii菌と低用量Aitanの併用群とClostridiumghonii菌と高用量Aitanの併用群で処理したマウス腫瘍組織をそれぞれ採取し、フローサイトメトリーを用いて上述の腫瘍組織サンプルに対し、フローサイトメトリー分析を行った。対照群と比較して、単独芽胞群、Clostridiumghonii菌と低用量Aitanの併用群とClostridium ghonii菌と高用量Aitanの併用群の腫瘍組織中のCD45CD3T、CD45CD3CD8TとF4/80細胞浸潤腫瘍の割合はいずれも顕著に上昇し、単独芽胞群と比較して、Clostridiumghonii菌と低用量Aitanの併用群のマウス腫瘍組織中のCD45CD3T、CD45CD3CD8TとF4/80細胞浸潤腫瘍の割合はいずれも顕著に上昇した。しかし、Clostridiumghonii菌と高用量Aitanの併用群には、顕著な差は見られなかった(図10)。
【0073】
細胞内染色法を用いて、腫瘍内T細胞のサイトカイン発現を研究し、単独芽胞群と比較して、Clostridium ghonii菌及び低用量Aitanの併用群の腫瘍内、CD3IL-10T、CD3IFN-γT細胞は有意に上昇した(p<0.05)。しかし、Clostridiumghonii菌と高用量Aitanの併用群には、CD3IL-10T、CD3IFN-γT細胞は明らかな変化が見られなかった(図11)。
【0074】
Multi-ELISAによる腫瘍内IL-10、TNF-a、GM-CSF、TGFβ等のサイトカインの検出について、対照群と比較して、単独芽胞群、Clostridiumghonii菌と高用量Aitanの併用群及びClostridium ghonii菌と低用量Aitanの併用群はいずれもIL-10、TNF-a、GM-CSFが増加した。他の群と比較して、Clostridiumghonii菌と低用量Aitanの併用群は、腫瘍内のTGFβ発現が著しく低下した(図12)。Clostridiumghonii菌の腫瘍溶解は、TME中のサイトカイン、ケモカイン発現を誘導することができる。同時にClostridiumghonii菌と低用量Aitanの併用でTGFβの発現を著しく低下させ、免疫抑制性腫瘍の微小環境を改善した一方、高用量Aitanとの併用はTGFβ発現に顕著な抑制作用がなかった。
【0075】
腫瘍内の骨髄由来の免疫抑制細胞(MDSC)、腫瘍関連マクロファージ(TAM)などの細胞数をフローサイトメトリーにより分析した。対照群と比較して、Clostridiumghonii菌と低用量Aitanの併用による治療後、腫瘍内のCD11bLy6G-Ly6ChighMonocytic-MDSCsとCD11bLy6GLy6ClowPMN-MDSCsの数に明らかな差は見られなかった。Clostridiumghonii菌と高用量Aitanの併用に比べて、Clostridiumghonii菌と低用量Aitanの併用による治療後のMo-MDSCsとPMN-MDSCSの割合はいずれも低下した(図13)。さらに、他の治療群と比較して、Clostridiumghonii菌と低用量Aitanの併用群のCD11bF4/80-TAMsの全生存細胞中の割合は顕著に低下した(図14)。IHC染色により腫瘍中のCD163(M2型マクロファージマーカー)を検出し、研究結果により、Clostridiumghonii菌と低用量Aitanの併用群の腫瘍中のCD163細胞数が低下し、Clostridiumghonii菌と低用量Aitanの併用による治療が、腫瘍中のTAM数を効果的に減少できることを表明した(図15)。
【0076】
腫瘍組織HIF-1α免疫組織化学染色により、対照群と比較して、Clostridium ghonii菌連合低用量Aitan腫瘍組織の酸素欠乏は明らかに軽減され、Clostridium ghonii菌と高用量Aitanの併用群の腫瘍組織の酸素欠乏度は上昇した(図16)。高用量のAitanは、腫瘍組織の酸素欠乏を加重し、Clostridiumghonii菌の繁殖に有利な酸素欠乏環境を創造したが、その抗腫瘍効果はClostridiumghonii菌と低用量Aitanの併用群より低かった。一方、Clostridiumghonii菌と低用量Aitanの併用群の腫瘍の酸素欠乏は明らかに低下しているが、理論的には腫瘍の成長を加速させる可能性があるが、腫瘍の体積から、腫瘍の成長が明らかに抑制されていることを示した。
【0077】
以上より、Clostridium ghonii菌と低用量Aitanの併用はCD45CD3T、CD45CD3CD8T、F4/80などの免疫細胞の浸潤を促進し、IFN-γ、TNF-α、GM-CSFなどのサイトカインとケモカインの発現の増強を誘導し、同時に腫瘍組織中のTGFβの発現を効果的に低下させ、免疫阻害剤腫瘍関連マクロファージ(TAM)、骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)などの数を低下させ、免疫抑制を減少させる。以上から分かるように、Clostridiumghonii菌と低用量Aitanの併用による高効率的な抗腫瘍は、腫瘍血管の正常化を誘導することにより、TMEを免疫抑制から免疫活性化状態に変化させ、高効率的な抗腫瘍を実現し、その独特な治療効果は、高用量のAitanを用いて腫瘍の酸素欠乏を加重させることによりClostridiumghonii菌が繁殖する酸素欠乏環境を作ることによる高効率的な抗腫瘍ではなく、抗腫瘍免疫微小環境の変化に起因すべきである。
【0078】
上記の実施例は、本発明を詳細に説明したが、本発明の一部の実施例にすぎず、すべての実施例ではなく、本実施形態に従って他の実施形態を創造的ではなく得ることができ、これらの実施例はすべて本発明の保護範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
2024531600000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-03-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Clostridium ghonii菌と腫瘍血管新生阻害剤を含むことを特徴とする腫瘍治療用医薬製品
【請求項2】
前記医薬製品は、CD45+CD3+T、CD45+CD3+CD8+T及びF4/80+浸潤を促進し、IFN-γ、TNF-αおよびGM-CSF発現の増強を誘導し、TGFβの発現を低下させ、マクロファージTAM、及び骨髄由来免疫抑制細胞MDSCの数を低下させ、免疫抑制を減少させる医薬製品を含むことを特徴とする請求項1に記載の医薬製品
【請求項3】
前記医薬製品は、腫瘍血管の正常化を誘導し、TMEを免疫抑制から免疫活性化状態に変化させる薬物を含むことを特徴とする請求項1に記載の医薬製品
【請求項4】
前記Clostridium ghonii菌はClostridium ghonii菌MW-DCG-LCv-26菌株(オーストラリア国家計量研究院に保管され、菌株番号はV12/001486であり)、またはClostridiumghonii菌を馴化した菌株であることを特徴とする請求項1に記載の医薬製品
【請求項5】
前記Clostridium ghonii菌を馴化した菌株は、MW-DCG-HNCv-18菌株(オーストラリア国家計量研究院に保存され、菌株保存番号はV12/001485であり)、またはMW-DCG-CCv-17菌株(オーストラリア国家計量研究院に保存され、菌株保存番号はV12/001487であり)を含むことを特徴とする請求項4に記載の医薬製品
【請求項6】
前記Clostridium ghonii菌は芽胞形態であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬製品
【請求項7】
前記腫瘍血管新生阻害剤は、Aitan、スニチニブ、パゾパニブ、ベバシズマブ(evacizumab)、ラムシルマブ(Ramucirumab)、コンベルセプト(Conbercept)、アフリベルセプト(aflibercept)、ソラフェニブトシル酸塩(Sorafenibtosylate)、レゴラフェニブ(regorafenib)のうちの1種または2種以上の組み合わせを含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬製品
【請求項8】
前記腫瘍は、結腸がん、Lewis肺がん、上咽頭がん、非小細胞肺がん、線維肉腫またはメラノーマであることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬製品
【請求項9】
腫瘍を治療するための薬物であって、前記薬物中の有効成分はClostridiumghonii菌と腫瘍血管新生阻害剤を含むことを特徴とする薬物。
【請求項10】
前記Clostridium ghonii菌はClostridium ghonii菌MW-DCG-LCv-26菌株(オーストラリア国家計量研究院に保管され、菌株番号はV12/001486であり)、またはClostridiumghonii菌を馴化した菌株であることを特徴とする請求項9に記載の薬物。
【国際調査報告】