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特表2024-531604作動弁保持を備えたバルーン拡張可能な送達システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】作動弁保持を備えたバルーン拡張可能な送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20240822BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20240822BHJP
【FI】
A61F2/24
A61M25/00 540
A61M25/10 510
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515037
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 US2022042702
(87)【国際公開番号】W WO2023038934
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】63/241,613
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン、ジェームズ エム.
【テーマコード(参考)】
4C097
4C267
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097BB04
4C097EE08
4C097EE09
4C097EE11
4C097SB01
4C267AA05
4C267BB02
4C267BB27
4C267CC19
(57)【要約】
拡張可能な人工心臓弁のための送達システムが提供される。送達システムは、細長い内側部材と、両方とも細長い内側部材上に配置された遠位停止部および近位停止部とを含む。近位停止部および遠位停止部のうちの少なくとも1つは、細長い内側部材に固定されている。送達システムは、細長い内側部材の周りに配置されるとともに、遠位端、中央領域、および近位端を有する可撓性部材と、可撓性部材を覆うように配置された膨張可能バルーンとを含む。可撓性部材は、中央領域上に心臓弁が圧着されると、中央領域が圧縮し、可撓性部材の近位領域および遠位領域が半径方向に拡張し、弁の軸方向移動を妨げるように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張可能な人工心臓弁のための送達システムであって、
細長い内側部材と、
遠位停止部および近位停止部であって、前記遠位停止部は、前記細長い内側部材上に配置され、前記近位停止部は、前記遠位停止部から離隔されるとともに前記細長い内側部材上に配置され、前記近位停止部および前記遠位停止部のうちの少なくとも1つは、前記細長い内側部材に固定されている、遠位停止部および近位停止部と、
前記細長い内側部材の周りに配置された可撓性部材であって、前記遠位停止部に固定された遠位端と、中央領域と、前記近位停止部に固定された近位端とを有する、可撓性部材と、
前記可撓性部材を覆うように配置された膨張可能なバルーンと
を備え、
前記可撓性部材は、前記中央領域上に心臓弁が圧着されると、前記中央領域が圧縮し、前記可撓性部材の近位領域および遠位領域が半径方向に拡張して、前記心臓弁の軸方向移動を妨げるように構成されている、送達システム。
【請求項2】
前記細長い内側部材は、ガイドワイヤルーメンを画定している、請求項1に記載の送達システム。
【請求項3】
前記可撓性部材は、前記中央領域が前記細長い内側部材から離隔されている弛緩構成に付勢されている、請求項1または2に記載の送達システム。
【請求項4】
前記弛緩構成にあるとき、前記中央領域、前記近位領域、および前記遠位領域の外径は、実質的に同じである、請求項3に記載の送達システム。
【請求項5】
前記可撓性部材は、コイルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項6】
前記可撓性部材は、編組である、請求項1~4のいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項7】
前記編組を覆うように配置された織物メッシュをさらに備える、請求項6に記載の送達システム。
【請求項8】
前記可撓性部材は、前記細長い内側部材の周りに円周方向に離隔された複数の支柱を含むフレームであり、各支柱は、直線状領域および屈曲領域を有している、請求項1~4のいずれか1項に記載の送達システム。
【請求項9】
前記近位停止部は、前記細長い内側部材に固定され、前記遠位停止部は、前記細長い内側部材に対して摺動可能であり、前記送達システムは、前記遠位停止部に固定されるとともにそこから近位に延在するプルワイヤをさらに備え、前記プルワイヤを近位に引くと、前記可撓性部材は、前記中央領域が前記細長い内側部材から離隔されている付勢された弛緩構成から、前記中央領域が前記細長い内側部材に隣接するとともに前記フレームの遠位領域および近位領域が半径方向に拡張された圧縮構成へと移行する、請求項8に記載の送達システム。
【請求項10】
前記フレームは、前記複数の支柱のうちの少なくともいくつかの内側表面上に突出部を含み、前記突出部は、前記フレームの前記中央領域が圧縮し、前記近位領域および前記遠位領域が拡張する際に、前記細長い内側部材に沿って摺動するように構成されている、請求項9に記載の送達システム。
【請求項11】
前記中央領域上に圧着された人工心臓弁をさらに備え、前記可撓性部材の前記近位領域および前記遠位領域は、前記圧着された心臓弁の外径を越えて半径方向外向きに延在している、請求項1~10のいずれか1項に記載の送達システム。
【請求項12】
拡張可能な人工心臓弁のための送達システムであって、
内側ルーメンを画定する細長い内側部材と、
遠位停止部および近位停止部であって、前記遠位停止部は、前記細長い内側部材に固定され、前記近位停止部は、前記細長い内側部材に固定され、前記近位停止部は、前記遠位停止部から離隔されている、遠位停止部および近位停止部と、
前記細長い内側部材の周りに配置された可撓性部材であって、前記可撓性部材は、前記遠位停止部に固定された遠位端と、中央領域と、前記近位停止部に固定された近位端とを有し、前記可撓性部材は、前記中央領域が前記細長い内側部材から離隔されている弛緩構成に付勢されている、可撓性部材と、
前記可撓性部材を覆うように配置された膨張可能なバルーンと
を備え、
前記可撓性部材は、前記中央領域上に心臓弁が圧着されると、前記中央領域が、前記弛緩構成から、前記中央領域が前記細長い内側部材に隣接するとともに前記可撓性部材の近位領域および遠位領域が半径方向に拡張して前記心臓弁の軸方向移動を妨げる圧縮構成へと移行するように構成されている、送達システム。
【請求項13】
前記弛緩構成にあるとき、前記中央領域、前記近位領域、および前記遠位領域の外径は、実質的に同じである、請求項12に記載の送達システム。
【請求項14】
前記可撓性部材は、コイルである、請求項12または13に記載の送達システム。
【請求項15】
前記可撓性部材は、編組であり、前記システムは、前記編組を覆うように配置された織物メッシュをさらに備える、請求項12または13に記載の送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療デバイスに関し、より詳細には、人工心臓弁送達システム、およびそのような医療デバイスを使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓弁手術は、罹患した心臓弁を修復または置換するために使用される。多種多様な血管内弁置換処置および送達システムが開発されている。これらのシステムのうちのいくつかは、自己拡張ステント要素を備えた弁を含む。他のシステムは、バルーン拡張可能なステント要素を含む。これらのデバイスおよびシステムは、種々の方法のうちのいずれかに従って使用され得る。既知の医療デバイスおよび方法は、それぞれ一定の利点および欠点を有する。代替的な医療デバイスおよびシステム、ならびに医療デバイスを製造および使用するための代替的な方法を提供することが継続的に必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、医療デバイスおよびシステムのための設計、材料、製造方法、および代替使用法を提供する。拡張可能な人工心臓弁のための例示的な送達システムは、細長い内側部材と、遠位停止部および近位停止部であって、遠位停止部は、細長い内側部材上に配置され、近位停止部は、遠位停止部から離隔されるとともに細長い内側部材上に配置され、近位停止部および遠位停止部のうちの少なくとも1つは、細長い内側部材に固定されている、遠位停止部および近位停止部と、細長い内側部材の周りに配置された可撓性部材であって、遠位停止部に固定された遠位端と、中央領域と、近位停止部に固定された近位端とを有する、可撓性部材と、可撓性部材を覆うように配置された膨張可能なバルーンとを含み、可撓性部材は、中央領域上に心臓弁が圧着されると、中央領域が圧縮し、可撓性部材の近位領域および遠位領域が半径方向に拡張して心臓弁の軸方向移動を妨げるように構成されている。
【0004】
上記実施形態に代替的または追加的に、細長い内側部材は、ガイドワイヤルーメンを画定している。
上記実施形態のいずれかに代替的または追加的に、可撓性部材は、中央領域が細長い内側部材から離隔されている弛緩構成に付勢されている。
【0005】
上記実施形態のいずれかに代替的または追加的に、弛緩構成にあるとき、中央領域、近位領域、および遠位領域の外径は、実質的に同じである。
上記実施形態のいずれかに代替的または追加的に、可撓性部材は、コイルである。
【0006】
上記実施形態のいずれかに代替的または追加的に、可撓性部材は、編組である。
上記実施形態のいずれかに代替的または追加的に、送達システムは、編組を覆うように配置された織物メッシュをさらに備える。
【0007】
上記実施形態のいずれかに代替的または追加的に、可撓性部材は、細長い内側部材の周りに円周方向に離隔された複数の支柱を含むフレームであり、各支柱は、直線状領域および屈曲領域を有している。
【0008】
上記実施形態のいずれかに代替的または追加的に、近位停止部は、細長い内側部材に固定され、遠位停止部は、細長い内側部材に対して摺動可能であり、送達システムは、遠位停止部に固定されるとともにそこから近位に延在するプルワイヤをさらに備え、プルワイヤを近位に引くと、可撓性部材は、中央領域が細長い内側部材から離隔されている付勢された弛緩構成から、中央領域が前記細長い内側部材に隣接するとともにフレームの遠位領域および近位領域が半径方向に拡張された圧縮構成へと移行する。
【0009】
上記実施形態のいずれかに代替的または追加的に、フレームは、複数の支柱のうちの少なくともいくつかの内側表面上に突出部を含み、突出部は、フレームの中央領域が圧縮し、近位領域および遠位領域が拡張する際に、細長い内側部材に沿って摺動するように構成されている。
【0010】
上記実施形態のいずれかに代替的または追加的に、送達システムは、中央領域上に圧着された人工心臓弁をさらに備え、可撓性部材の近位領域および遠位領域は、圧着された心臓弁の外径を越えて半径方向外向きに延在する。
【0011】
拡張可能な人工心臓弁のための別の例示的な送達システムは、内側ルーメンを画定する細長い内側部材と、遠位停止部および近位停止部であって、遠位停止部は、細長い内側部材に固定され、近位停止部は、細長い内側部材に固定され、近位停止部は、遠位停止部から離隔されている、遠位停止部および近位停止部と、細長い内側部材の周りに配置された可撓性部材であって、可撓性部材は、遠位停止部に固定された遠位端と、中央領域と、近位停止部に固定された近位端とを有し、可撓性部材は、中央領域が細長い内側部材から離隔されている弛緩構成に付勢されている、可撓性部材と、可撓性部材を覆うように配置された膨張可能なバルーンとを備え、可撓性部材は、中央領域上に心臓弁が圧着されると、中央領域が、弛緩構成から、中央領域が細長い内側部材に隣接するとともに可撓性部材の近位領域および遠位領域が半径方向に拡張して心臓弁の軸方向移動を妨げる圧縮構成へと移行するように構成されている。
【0012】
上記実施形態のいずれかに代替的または追加的に、弛緩構成にあるとき、中央領域、近位領域、および遠位領域の外径は、実質的に同じである。
上記実施形態のいずれかに代替的または追加的に、可撓性部材は、コイルである。
【0013】
上記実施形態のいずれかに代替的または追加的に、可撓性部材は、編組である。
上記実施形態のいずれかに代替的または追加的に、送達システムは、編組を覆うように配置された織物メッシュをさらに含む。
【0014】
上記実施形態のいずれかに代替的または追加的に、送達システムは、中央領域上に圧着された人工心臓弁をさらに含み、可撓性部材の近位領域および遠位領域は、圧着された心臓弁の外径を越えて半径方向外向きに延在する。
【0015】
拡張可能な人工心臓弁のためのさらなる例示的な送達システムは、細長い内側部材と、細長い内側部材に固定された遠位停止部および遠位停止部から離隔されるとともに細長い内側部材に固定された近位停止部と、細長い内側部材の周りに配置された可撓性部材であって、可撓性部材は、遠位停止部に固定された遠位部分と、近位停止部に固定された別個の近位部分とを有し、遠位部分および近位部分は、長手方向に離隔されており、遠位部分の近位セクションおよび近位部分の遠位セクションは、心臓弁を受け入れるように構成された中央領域を画定する、可撓性部材と、可撓性部材を覆うように配置された膨張可能なバルーンとを含み、可撓性部材は、心臓弁が中央領域上に圧着されると、可撓性部材の近位部分が近位に移動して半径方向に拡張した構成になり、可撓性部材の遠位部分が遠位に移動して半径方向に拡張した構成になり、それによって心臓弁の軸方向移動を妨げるように構成されている。
【0016】
上記実施形態に代替的または追加的に、可撓性部材の遠位部分および近位部分は、細長い内側部材の周りに円周方向に離隔された複数の支柱を含むフレームであり、各支柱は、直線状領域および屈曲領域を有している。
【0017】
上記実施形態のいずれかに代替的または追加的に、送達システムは、複数の支柱のうちの少なくともいくつかの内側表面上に配置された複数の突出部をさらに含み、複数の突出部は、可撓性部材の遠位部分および近位部分が半径方向に拡張された構成に移行するときに複数の支柱が軸方向に移動する際に、細長い内側部材に沿って摺動するように構成されている。
【0018】
いくつかの実施形態、態様、および/または例の上記概要は、本開示の各実施形態またはすべての実装形態を説明することを意図するものではない。以下の図面および詳細な説明は、これらの実施形態をより具体的に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本開示は、添付の図面に関連して様々な実施形態の以下の詳細な説明を考慮することにより、より完全に理解することができる。
図1図1は、従来技術の心臓弁保持デバイスを示す図である。
図2図2は、弁が中央領域上に圧着される前の例示的な心臓弁送達システムを示す図である。
図3図3は、弁が中央領域上に圧着された、図2の心臓弁送達システムを示す図である。
図4図4は、弛緩構成にある別の例示的な心臓弁送達システムを示す図である。
図5図5は、弁が中央領域上に圧着された、図4の心臓弁送達システムを示す図である。
図6図6は、弛緩構成にあるさらなる例示的な心臓弁送達システムを示す図である。
図7図7は、心臓弁が中央領域上に圧着された、図6の心臓弁送達システムを示す図である。
図8図8は、図7の線8-8に沿った断面図である。
図9図9は、弛緩構成にある追加の例示的な心臓弁送達システムを示す図である。
図10図10は、心臓弁が中央領域上に圧着された、図9の心臓弁送達システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示の態様は、様々な修正形態および代替形態を受け入れることができるが、その詳細は、図面において例として示されており、詳細に説明される。しかしながら、その意図は、説明される特定の実施形態に本開示の態様を限定することではないことを理解されたい。逆に、本発明は、本開示の技術思想および範囲内に入るすべての修正形態、均等物、および代替形態を包含するものである。
【0021】
以下に定義される用語については、特許請求の範囲または本明細書の他の箇所において異なる定義が与えられない限り、これらの定義が適用されるものとする。
全ての数値は、本明細書において、明示的に示されているか否かにかかわらず、用語「約」によって修飾されると想定される。数値の文脈における「約」という用語は、一般に、記載された値と同等である(例えば、同じ機能または結果を有する)と当業者が考えるであろう数の範囲を指す。多くの場合、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められた数を含み得る。「約」という用語の他の使用(例えば、数値以外の文脈における)は、別段の指定がない限り、本明細書の文脈から理解され、本明細書の文脈と一致するように、それらの通常の慣習的な定義を有すると想定することができる。
【0022】
端点による数値範囲の記載は、その端点を含むその範囲内の全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)。様々な構成要素、特徴および/または仕様に関するいくつかの適切な寸法、範囲、および/または値が開示されているが、本開示によって触発された当業者は、所望の寸法、範囲および/または値が明示的に開示されたものから逸脱し得ることを理解するであろう。
【0023】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、内容が明らかに他のことを示さない限り、複数の指示対象を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、「または」という用語は、内容が明らかに別のことを指示しない限り、「および/または」を含む意味で一般に使用される。理解を容易にするために、本開示のある特徴は、それらの特徴が開示された実施形態(複数可)内で複数または繰り返され得る場合であっても、単数形で説明される場合があることに留意されたい。特徴の各例は、明示的に反対の記載がない限り、単数の開示を含み、および/または単数の開示によって包含され得る。簡潔かつ明確にするために、本開示のすべての要素が必ずしも各図に示されているわけではなく、または以下で詳細に説明されるわけではない。しかしながら、以下の説明は、明示的に反対の記載がない限り、2つ以上存在する構成要素のいずれか、および/または全てに等しく適用され得ることが理解されるであろう。加えて、いくつかの要素または特徴の全てのインスタンスが、明確にするために各図に示されるわけではない。
【0024】
「近位」、「遠位」、「前進」、「後退」、それらの変形などの相対的な用語は、概して、デバイスのユーザ/オペレータ/操作者に対する種々の要素の配置、方向、および/または動作に関して考慮されてよく、「近位」および「後退」は、ユーザにより近い、またはユーザに向かうことを示しまたは指し、「遠位」および「前進」は、ユーザからより遠い、またはユーザから離れることを示しまたは指す。いくつかの事例では、「近位」および「遠位」という用語は、本開示の理解を容易にするために任意に割り当てられてもよく、そのような例は、当業者に容易に明らかであろう。「上流」、「下流」、「流入」、および「流出」などの他の相対的な用語は、体管腔、血管などの管腔内、またはデバイス内の流体の流れの方向を指す。
【0025】
「範囲(extent)」という用語は、問題の範囲または寸法の前に「最小」があるか、または問題の範囲または寸法が「最小」として識別されない限り、記載または特定された寸法の最大測定値を意味すると理解されてよく、「最小」は、記載または特定された寸法の最小測定値を意味すると理解されてよい。例えば、「外側範囲」は、最大外側寸法を意味すると理解されてよく、「半径方向範囲」は、最大半径方向寸法を意味すると理解されてよく、「長手方向範囲」は、最大長手方向寸法を意味すると理解されてよいなどである。「範囲」の各例は、異なっていてよく(例えば、軸方向、長手方向、横方向、半径方向、円周方向など)、個々の使用の文脈から当業者には明らかであろう。一般に、「範囲」は、意図された使用に従って測定された最大の可能な寸法と考えることができ、一方、「最小範囲」は、意図された使用に従って測定された最小の可能な寸法と考えることができる。いくつかの例では、「範囲」は、概して、平面および/または断面内で直角に測定され得るが、特定の文脈から明らかであるように、角度的に、半径方向に、円周方向に(例えば、弧に沿って)などであるが、それらに限定されない、異なる方法で測定されてよい。
【0026】
「モノリシック」および「一体(unitary)」という用語は、概して、単一の構造またはベースユニット/要素から作製された、またはそれからなる1つまたは複数の要素を指すものとする。モノリシックおよび/または一体の要素は、複数の別個の要素を一緒に組み立てるか、またはそうでなければ接合することによって作製される構造および/または特徴を除外するものとする。
【0027】
本明細書における「実施形態」、「いくつかの実施形態」、「他の実施形態」などへの言及は、説明される実施形態が、特定の特徴、構造、または特性を含み得るが、すべての実施形態が必ずしもその特定の特徴、構造、または特性を含むとは限らないことを示すことに留意されたい。さらに、そのような語句は、必ずしも同じ実施形態に言及しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性が実施形態に関連して記載されている場合、明示的に記載されているか否かにかかわらず、明確に反対のことを述べられていない限り、他の実施形態に関連して特定の特徴、構造、または特性をもたらすことは、当業者の知識の範囲内である。すなわち、以下で説明される様々な個々の要素は、特定の組み合わせで明示的に示されていない場合であっても、当業者によって理解されるように、他の追加の実施形態を形成するために、または説明される実施形態を補完および/もしくは強化するために、互いに組み合わせ可能または配置可能であるものとして企図されている。
【0028】
明確にするために、特定の識別数字命名法(例えば、第1、第2、第3、第4など)が、説明および/または特許請求の範囲全体を通して、様々な説明された特徴および/または特許請求の範囲に記載された特徴を命名および/または区別するために使用される場合がある。数字命名法は、限定を意図するものではなく、単なる例示であることを理解されたい。いくつかの実施形態では、以前に使用された数字命名法の変更およびそれからの逸脱が、簡潔さおよび明確さのために行われる場合がある。すなわち、「第1の」要素として識別された特徴は、後に「第2の」要素、「第3の」要素などと呼ばれることがあり、または完全に省略されることがあり、および/または異なる特徴が「第1の」要素と呼ばれることがある。各例における意味および/または指定は、当業者には明らかであろう。
【0029】
以下の説明は、図面を参照して読まれるべきであり、図面は、必ずしも縮尺通りではなく、異なる図面における同様の要素には同じ番号が付されている。詳細な説明および図面は、本開示を限定するのではなく、例示することを意図している。当業者は、説明および/または図示される様々な要素が、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な組み合わせおよび構成で配置され得ることを認識するであろう。詳細な説明および図面は、本開示の例示的な実施形態を示す。しかしながら、明確性および理解の容易性のために、全ての特徴および/または要素が各図面に示されない場合があるが、特徴および/または要素は、別段の指定がない限り、それにもかかわらず存在すると理解されてよい。
【0030】
一部の哺乳動物の心臓(例えば、ヒトなど)は、三尖弁、肺動脈弁、大動脈弁、および僧帽弁の4つの心臓弁を含んでいる。いくつかの比較的一般的な病状は、心臓内の弁のうちの1つまたは複数の非効率性、非有効性、または完全な機能不全を含むか、またはその結果であり得る。欠陥のある心臓弁の治療には、しばしば欠陥のある弁の修理や完全な交換が必要になるという別の課題がある。そのような治療は、患者にとって非常に侵襲的である可能性がある。心臓弁のうちの1つまたは複数などの要素を診断、治療、および/または修復するために、心血管系の一部分内で使用され得る、システム、デバイス、および/または方法が、本明細書に開示される。本明細書に開示されるシステム、デバイス、および/または方法のうちの少なくともいくつかは、経皮的に使用されてもよく、したがって、患者にとってはるかに低侵襲性であり得る。
【0031】
交換心臓弁を血管内に送達するには、多くの場合、弁保持デバイス上に弁が配置された状態で、複雑な曲線に沿ってカテーテルを操縦する必要がある。弁を弁保持デバイス上に静止状態で維持することが望ましいが、複雑な曲線を通してデバイスを操縦すると、保持デバイス上の弁が移動する可能性がある。その結果、展開中に弁の位置がずれる可能性がある。
【0032】
図1は、送達カテーテル(図示せず)に接続することができる従来の弁保持デバイス10を示す。弁保持構造体は、保持コイル12を備えた内側チューブ11を含んでいてよい。遠位停止部14および近位停止部16は、弁保持領域18を画定することができる。
【0033】
図2は、バルーン拡張可能な人工心臓弁(balloon expandable prosthetic heart valve)190を送達するための例示的な心臓弁送達システム100を示す。送達システム100は、細長い内側部材(elongate inner member)110と、細長い内側部材110の周りに配置された可撓性部材120とを含んでいてよい。細長い内側部材110は、ガイドワイヤルーメンなどの内側ルーメン113を画定することができる。可撓性部材120は、圧縮され、次いで弛緩した拡張構成に戻るように構成されていてよい。図2に示されるように、可撓性部材120は、可撓性部材120の中央領域122が細長い内側部材から離隔されている弛緩構成に付勢(biased)されていてよい。いくつかの実施形態では、弛緩構成にあるとき、可撓性部材120の中央領域122、近位領域126、および遠位領域124の外径は、実質的に同じであってよい。図2に示す例では、可撓性部材120は、コイルである。
【0034】
可撓性部材120の遠位端は、細長い内側部材110上に配置された遠位停止部140に固定されていてよい。可撓性部材120の近位端は、遠位停止部140から離隔されるとともに細長い内側部材110上に配置された近位停止部160に固定されていてよい。遠位停止部140および近位停止部160のうちの少なくとも1つは、細長い内側部材110に固定されていてよい。いくつかの実施形態では、遠位停止部140および近位停止部160の両方が、細長い内側部材110に固定されていてよい。他の実施形態では、遠位停止部140は、細長い内側部材110上に摺動可能に配置されていてよい。膨張可能なバルーン170は、可撓性部材120、遠位停止部140、および近位停止部160を覆うように配置されていてよい。バルーン170は、内側部材110または遠位停止部140の遠位および近位停止部160の近位にある送達カテーテル(図示せず)の他の部分に固定されていてよい。膨張流体がバルーン170に送達され、内側部材110上を流れ、かつ可撓性部材120を通って流れることができる。
【0035】
人工心臓弁190は、可撓性部材120の中央領域122を覆う弁保持領域180のバルーン170上に圧着(crimp)されてよい。可撓性部材120は、心臓弁190が可撓性部材120の中央領域122上に圧着または圧縮されると、中央領域122が圧縮し、可撓性部材120の遠位端および近位端が固定されるため、可撓性部材120の遠位領域124および近位領域126が半径方向に拡張するように構成されていてよい。図3参照。可撓性部材120は、矢印128によって示されるように、中央領域122を通る流体経路を維持することができる。半径方向に拡大された遠位領域124および近位領域126は、バルーン170に対する心臓弁190の軸方向移動を妨げることができる。
【0036】
図4は、可撓性部材220が内側部材210を覆うように配置された編組(braid)である、別の例示的な心臓弁送達システム200を示す。編組220は、遠位停止部240および近位停止部260に固定され得る複数のフィラメントから形成されていてよい。いくつかの例では、可撓性部材220は、編組を覆うように配置された織物メッシュ(textile woven mesh)を含んでいてもよい。例えば、織物メッシュは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であってよい。バルーン270は、編組された可撓性部材220を覆って、かつ遠位停止部240および近位停止部260を覆って延在することができる。弁290は、編組された可撓性部材220の中央領域222において、バルーン270上に圧着されていてよい。図5に示されるように、弁290を圧着または圧縮することにより、遠位領域224および近位領域226の編組された可撓性部材220の半径方向拡張を生じさせながら、中央領域222の編組された可撓性部材220を圧縮させることができる。
【0037】
図6図8には、追加の例示的な心臓弁送達システム300が示されており、可撓性部材320は、内側部材310の周りに円周方向に離隔された複数の支柱(strut)323を含むフレームである。いくつかの例では、フレームは、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれを上回る数の支柱323を含んでいてよい。図6に示される実施形態では、送達システム300は、4つの支柱323を含む。図は、断面図であり、したがって、上部および底部の支柱が見られ、後部の支柱は、内側部材310の背後に隠されている。各支柱323は、屈曲領域327において互いに結合された複数の直線状領域325を含んでいてよい。図示のように、各支柱323は、5つの直線状領域325と6つの屈曲領域327とを含む。バルーン370は、可撓性部材320を覆って、かつ遠位停止部340および近位停止部360を覆って延在することができる。図6は、可撓性部材320の中央領域322が細長い内側部材310から離隔されている付勢された弛緩構成(biased relaxed configuration)の送達システム300を示す。
【0038】
近位停止部360は、細長い内側部材310に固定されていてよく、遠位停止部340は、細長い内側部材310に対して摺動可能であってよい。プルワイヤ315は、遠位停止部340に固定され、細長い内側部材310を通って、または細長い内側部材310に隣接して近位に延在していてよい。弁390が可撓性部材320の中央領域322においてバルーン370上に圧縮または圧着される際にプルワイヤ315を近位に引っ張ると、可撓性部材320は、図6に示されるような付勢された弛緩構成から、図7に示されるように、中央領域322が細長い内側部材310に隣接するとともにフレームの遠位領域および近位領域が半径方向に拡張された圧縮構成に移行する。可撓性部材320は、矢印328によって示されるように、中央領域322を通る流体経路を維持することができる。他の実施形態では、プルワイヤは存在せず、弁390を圧着または圧縮するために使用される半径方向圧縮力が、遠位領域324および近位領域326の半径方向の拡張を生じさせながら、中央領域322の支柱の直線状領域325を圧縮させてもよい。
【0039】
図8は、図7の線8-8に沿った断面図である。断面図は、弁390が細長い内側部材310を覆って圧縮された状態で、拡張位置にある離隔された複数の支柱323を示している。図7および図8に示されるように、近位領域326および遠位領域324は、圧着された心臓弁390の外径を越えて半径方向外向きに延在し、それによって、弁390を定位置にしっかりと保持し、送達の間、バルーン370に対する弁の軸方向移動を妨げる。
【0040】
図9および図10は、心臓弁送達システム400の別の実施形態を示し、可撓性部材420は、内側部材410の周りに円周方向に離隔された複数の支柱423を含むフレーム420である。いくつかの実施例では、フレームは、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれを上回る数の支柱423を含んでいてよい。図9に示される実施形態では、送達システム400は、4つの支柱423を含む。図は、断面図であり、したがって、上部および底部の支柱が見られ、後部の支柱は、内側部材410の背後に隠されている。各支柱423は、屈曲領域427において互いに結合された複数の直線状領域425を含んでいてよい。送達システム400は、フレーム420が間隙437によって長手方向に分離された2つの部分を有するという点で、図6および図7に示す送達システム300とは異なっている。フレーム420の遠位部分430は、細長い内側部材410に固定された遠位停止部440と、内側部材410の周りに円周方向に離隔され、遠位停止部440に固定されるとともにそこから近位に延在する複数の支柱423とを含んでいてよい。図示されるように、遠位部分430の各支柱423は、3つの直線状領域425と、3つの屈曲領域327とを含む。フレーム420の近位部分435は、細長い内側部材410に固定された近位停止部460と、内側部材410の周りに円周方向に離隔され、近位停止部460に固定されるとともにそこから遠位に延在する複数の支柱423とを含んでいてよい。図示されるように、近位部分435の各支柱423は、3つの直線状領域425と、3つの屈曲領域327とを含む。遠位部分430の近位セクションおよび近位部分435の遠位セクションは、心臓弁10を受け入れるように構成された中央領域422を画定する。
【0041】
バルーン470は、可撓性部材420を覆って、かつ遠位停止部440および近位停止部460を覆って延在することができる。図9は、遠位部分430および近位部分435の支柱423間の間隙437が比較的小さく、フレーム420の中央領域422が、フレーム420上に圧着される弁より短くてもよい、付勢された弛緩構成における送達システム400を示す。いくつかの実施形態では、フレーム420は、複数の支柱423のうちの少なくともいくつかの内側表面上に突出部421を含んでいてよい。突出部421は、支柱423が軸方向に動き、間隙437を広げる際に、細長い内側部材410に沿って摺動するように構成されていてよい。
【0042】
図10は、中央領域422に圧着された弁490を備えた送達システム400を示す。弁が圧着される際に、別個の遠位部分430および近位部分435は、軸方向に離れ、間隙437を広げ、フレーム420の遠位領域および近位領域が半径方向に拡張する。可撓性部材420は、矢印428によって示されるように、中央領域422を通る流体経路を維持することができる。
【0043】
上記の実施形態のいずれにおいても、遠位停止部および近位停止部の一方または両方は、放射線不透過性材料を含み、マーカーバンドとして機能することができる。
上記の例に関連して説明された寸法および角度は、例示的なものにすぎず、移行ゾーンの他の寸法および角度が企図されることが理解されよう。操縦可能なカテーテルの様々な構成要素(および/または本明細書に開示される他のシステムもしくは構成要素)、ならびに本明細書に開示されるその様々な要素に使用することができる材料は、医療デバイスに一般的に関連するものを含むことができる。簡単にするために、以下の議論は、心臓弁送達システム100(および本明細書に開示される変形例、システム、または構成要素)を参照する。しかしながら、これは、本明細書に説明されるデバイスおよび方法を限定することを意図するものではなく、議論は、本明細書に開示される他の心臓弁送達システム200、300、400、および要素、部材、構成要素、またはデバイスに適用され得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、心臓弁送達システム100(および本明細書に開示されるその変形例、システム、または構成要素)は、金属、金属合金、ポリマー(そのいくつかの例が以下に開示される)、金属-ポリマー複合材、それらの組み合わせ、および同等の物、または他の好適な材料から作製され得る。適切な金属および金属合金のいくつかの例は、444V、444L、および314LVステンレス鋼どのステンレス鋼、軟鋼、線形弾性および/または超弾性ニチノールなどのニッケル-チタン合金、コバルトクロム合金、チタンおよびその合金、アルミナ、ダイヤモンド状コーティング(DLC)または窒化チタンコーティングを備えた材料、ニッケル-クロム-モリブデン合金などの他のニッケル合金(例えば、INCONEL(登録商標)625などのUNS:N06625、HASTELLOY(登録商標)C-22(登録商標)などのUNS:N06022、HASTELLOY(登録商標)C276(登録商標)などのUNS:N10276、他のHASTELLOY(登録商標)合金など)、ニッケル-銅合金(例えば、MONEL(登録商標)400、NICKELVAC(登録商標)400、NICORROS(登録商標)400などのUNS:N04400)、ニッケル-コバルト-クロム-モリブデン合金(例えば、MP35-N(登録商標)などのUNS:R44035)、ニッケル-モリブデン合金(例えば、HASTELLOY(登録商標)ALLOY B2(登録商標)などのUNS:N10665)、他のニッケル-クロム合金、他のニッケル-モリブデン合金、他のニッケル-コバルト合金、他のニッケル-鉄合金、他のニッケル-銅合金、他のニッケル-タングステンまたはタングステン合金など、コバルト-クロム合金、コバルト-クロム-モリブデン合金(例えば、ELGILOY(登録商標)、PHYNOX(登録商標)などのUNS:R44003)、白金強化ステンレス鋼、チタン、白金、パラジウム、金、それらの組み合わせなど、または任意の他の適切な材料を含む。
【0045】
本明細書で言及されるように、市販のニッケル-チタンまたはニチノール合金のファミリーの中には、「線形弾性」または「非超弾性」と呼ばれるカテゴリーがあり、これは、化学的には従来の形状記憶および超弾性の種類と類似であるが、別個の有用な機械的特性を示し得る。線形弾性および/または非超弾性ニチノールは、線形弾性および/または非超弾性ニチノールが、その応力/歪み曲線に、超弾性ニチノールが示すような実質的な「超弾性プラトー」または「フラグ領域」を示さないという点で、超弾性ニチノールと区別することができる。その代わりに、線形弾性および/または非超弾性ニチノールでは、回復可能な歪みが増加するにつれて、応力は、塑性変形が始まるまで実質的に線形に、または必ずしも完全に線形ではないがいくらか線形の関係で、または少なくとも超弾性ニチノールで見られる超弾性プラトーおよび/またはフラグ領域よりも線形である関係で増加し続ける。したがって、本開示の目的のために、線形弾性および/または非超弾性ニチノールは、「実質的に」線形弾性および/または非超弾性ニチノールと呼ぶこともできる。
【0046】
いくつかの場合、線形弾性および/または非超弾性ニチノールは、超弾性ニチノールが塑性変形する前に最大約8%の歪みを許容し得るのに対して、線形弾性および/または非超弾性ニチノールは、実質的に弾性を維持しながら(例えば、塑性変形する前に)最大約2~5%の歪みを許容し得るという点で、超弾性ニチノールと区別することもできる。これらの材料は両方とも、塑性変形前に約0.2~0.44パーセントの歪みしか許容することができないステンレス鋼などの他の線形弾性材料と区別することができる(その組成に基づいて区別することもできる)。
【0047】
いくつかの実施形態では、線形弾性および/または非超弾性ニッケル-チタン合金は、広い温度範囲にわたって示差走査熱量測定(differential scanning calorimetry,DSC)および動的金属熱分析(dynamic metal thermal analysis,DMTA)分析によって検出可能なマルテンサイト/オーステナイト相変化を示さない合金である。例えば、いくつかの実施形態では、線形弾性および/または非超弾性ニッケル-チタン合金において、摂氏約-60度(℃)~約120℃の範囲で、DSCおよびDMTA分析によって検出可能なマルテンサイト/オーステナイト相変化が存在しない場合がある。したがって、そのような材料の機械的曲げ特性は、概して、この非常に広い温度範囲にわたって温度の影響に対して不活性であり得る。いくつかの実施形態では、周囲温度または室温における線形弾性および/または非超弾性ニッケル-チタン合金の機械的曲げ特性は、例えば、それらが超弾性プラトーおよび/またはフラグ領域を示さないという点で、体温における機械的特性と実質的に同じである。例えば、広い温度範囲にわたって、線形弾性および/または非超弾性ニッケル-チタン合金は、その線形弾性および/または非超弾性特性および/または特性を維持する。
【0048】
いくつかの実施形態では、線形弾性および/または非超弾性ニッケル-チタン合金は、約50~約60重量パーセントの範囲のニッケルであり、残りは本質的にチタンであってよい。いくつかの実施形態では、組成物は、約54~約57重量パーセントの範囲のニッケルである。適切なニッケル-チタン合金の一例は、日本の神奈川県の古河テクノマテリアル社から市販されているFHP-NT合金である。他の好適な材料は、ULTANIUM(商標)(Neo-Metrics社から入手可能)およびGUM METAL(商標)(トヨタ社から入手可能)を含み得る。いくつかの他の実施形態では、超弾性合金、例えば、超弾性ニチノールが、所望の特性を達成するために使用されてよい。
【0049】
少なくともいくつかの実施形態では、心臓弁送達システム100(および本明細書に開示されるその変形例、システム、または構成要素)の一部または全部は、放射線不透過性材料でドープされるか、放射線不透過性材料から作製されるか、または放射線不透過性材料を含んでいてもよい。放射線不透過性材料は、医療処置中に蛍光透視スクリーンまたは別の画像化技術で比較的明るい画像を生成することができる材料であると理解される。この比較的明るい画像は、ユーザが心臓弁送達システム100(および本明細書に開示されるその変形例、システム、または構成要素)の位置を決定することを補助する。放射線不透過性材料のいくつかの例は、金、白金、パラジウム、タンタル、タングステン合金、放射線不透過性フィラーが装填されたポリマー材料などを含むが、それらに限定されない。加えて、他の放射線不透過性マーカーバンドおよび/またはコイルも、同じ結果を達成するように、心臓弁送達システム100(および本明細書に開示されるその変形例、システム、または構成要素)の設計に組み込まれてよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、心臓弁送達システム100(および本明細書に開示されるその変形例、システム、または構成要素)および/またはその一部は、ポリマーまたは他の好適な材料から作製されるか、またはそれを含んでいてよい。好適なポリマーのいくつかの例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリオキシメチレン(POM、例えば、DuPont社から入手可能なDELRIN(登録商標))、ポリエーテルブロックエステル、ポリウレタン(例えば、ポリウレタン85A)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテル-エステル(例えば、DSM Engineering Plastics社から入手可能なARNITEL(登録商標))、エーテルまたはエステル系コポリマー(例えば、ブチレン/ポリ(アルキレンエーテル)フタレートおよび/またはDuPont社から入手可能なHYTREL(登録商標)などの他のポリエステルエラストマー)、ポリアミド(例えば、Bayer社から入手可能なDURETHAN(登録商標)またはElf Atochem社から入手可能なCRISTAMID(登録商標))、エラストマーポリアミド、ブロックポリアミド/エーテル、ポリエーテルブロックアミド(PEBA、例えば、PEBAX(登録商標)の商品名で入手可能)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、シリコーン、ポリエチレン(PE)、Marlex(登録商標)高密度ポリエチレン、Marlex(登録商標)低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(例えば、REXELL(登録商標))、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(例えば、KEVLAR(登録商標))、ポリスルホン、ナイロン、ナイロン-12(例えば、EMS American Grilon社から入手可能なGRILAMID(登録商標))、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PFA)、エチレンビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリスチレン、エポキシ、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)(例えば、SIBSおよび/またはSIBS 50A)、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリウレタンシリコーンコポリマー(例えば、AorTech Biomaterials社のElast-Eon(登録商標)またはAdvanSource Biomaterials社のChronoSil(登録商標))、生体適合性ポリマー、他の好適な材料、またはそれらの混合物、組み合わせ、コポリマー、ポリマー/金属複合材などを含み得る。いくつかの実施形態では、シースは、液晶ポリマー(LCP)とブレンドすることができる。例えば、混合物は、最大約6%までのLCPを含有することができる。
【0051】
本開示は、多くの点で例示的なものにすぎないことを理解されたい。本開示の範囲を超えることなく、細部、特に形状、サイズ、およびステップの配置に関して変更を行うことができる。これは、適切な範囲で、他の実施形態で使用されている1つの例示的な実施形態の特徴のうちの任意のものの使用を含むことができる。本開示の範囲は、当然ながら、添付の特許請求の範囲が表現される言語で定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-03-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張可能な人工心臓弁のための送達システムであって、
細長い内側部材と、
遠位停止部および近位停止部であって、前記遠位停止部は、前記細長い内側部材上に配置され、前記近位停止部は、前記遠位停止部から離隔されるとともに前記細長い内側部材上に配置され、前記近位停止部および前記遠位停止部のうちの少なくとも1つは、前記細長い内側部材に固定されている、遠位停止部および近位停止部と、
前記細長い内側部材の周りに配置された可撓性部材であって、前記遠位停止部に固定された遠位端と、中央領域と、前記近位停止部に固定された近位端とを有する、可撓性部材と、
前記可撓性部材を覆うように配置された膨張可能なバルーンと
を備え、
前記可撓性部材は、前記中央領域上に心臓弁が圧着されると、前記中央領域が圧縮し、前記可撓性部材の近位領域および遠位領域が半径方向に拡張して、前記心臓弁の軸方向移動を妨げるように構成されている、送達システム。
【請求項2】
前記細長い内側部材は、ガイドワイヤルーメンを画定している、請求項1に記載の送達システム。
【請求項3】
前記可撓性部材は、前記中央領域が前記細長い内側部材から離隔されている弛緩構成に付勢されている、請求項1または2に記載の送達システム。
【請求項4】
前記弛緩構成にあるとき、前記中央領域、前記近位領域、および前記遠位領域の外径は、実質的に同じである、請求項3に記載の送達システム。
【請求項5】
前記可撓性部材は、コイルである、請求項1または2に記載の送達システム。
【請求項6】
前記可撓性部材は、編組である、請求項1または2に記載の送達システム。
【請求項7】
前記編組を覆うように配置された織物メッシュをさらに備える、請求項6に記載の送達システム。
【請求項8】
前記可撓性部材は、前記細長い内側部材の周りに円周方向に離隔された複数の支柱を含むフレームであり、各支柱は、直線状領域および屈曲領域を有している、請求項1または2に記載の送達システム。
【請求項9】
前記近位停止部は、前記細長い内側部材に固定され、前記遠位停止部は、前記細長い内側部材に対して摺動可能であり、前記送達システムは、前記遠位停止部に固定されるとともにそこから近位に延在するプルワイヤをさらに備え、前記プルワイヤを近位に引くと、前記可撓性部材は、前記中央領域が前記細長い内側部材から離隔されている付勢された弛緩構成から、前記中央領域が前記細長い内側部材に隣接するとともに前記フレームの遠位領域および近位領域が半径方向に拡張された圧縮構成へと移行する、請求項8に記載の送達システム。
【請求項10】
前記フレームは、前記複数の支柱のうちの少なくともいくつかの内側表面上に突出部を含み、前記突出部は、前記フレームの前記中央領域が圧縮し、前記近位領域および前記遠位領域が拡張する際に、前記細長い内側部材に沿って摺動するように構成されている、請求項9に記載の送達システム。
【請求項11】
前記中央領域上に圧着された人工心臓弁をさらに備え、前記可撓性部材の前記近位領域および前記遠位領域は、前記圧着された心臓弁の外径を越えて半径方向外向きに延在している、請求項1または2に記載の送達システム。
【請求項12】
拡張可能な人工心臓弁のための送達システムであって、
内側ルーメンを画定する細長い内側部材と、
遠位停止部および近位停止部であって、前記遠位停止部は、前記細長い内側部材に固定され、前記近位停止部は、前記細長い内側部材に固定され、前記近位停止部は、前記遠位停止部から離隔されている、遠位停止部および近位停止部と、
前記細長い内側部材の周りに配置された可撓性部材であって、前記可撓性部材は、前記遠位停止部に固定された遠位端と、中央領域と、前記近位停止部に固定された近位端とを有し、前記可撓性部材は、前記中央領域が前記細長い内側部材から離隔されている弛緩構成に付勢されている、可撓性部材と、
前記可撓性部材を覆うように配置された膨張可能なバルーンと
を備え、
前記可撓性部材は、前記中央領域上に心臓弁が圧着されると、前記中央領域が、前記弛緩構成から、前記中央領域が前記細長い内側部材に隣接するとともに前記可撓性部材の近位領域および遠位領域が半径方向に拡張して前記心臓弁の軸方向移動を妨げる圧縮構成へと移行するように構成されている、送達システム。
【請求項13】
前記弛緩構成にあるとき、前記中央領域、前記近位領域、および前記遠位領域の外径は、実質的に同じである、請求項12に記載の送達システム。
【請求項14】
前記可撓性部材は、コイルである、請求項12または13に記載の送達システム。
【請求項15】
前記可撓性部材は、編組であり、前記システムは、前記編組を覆うように配置された織物メッシュをさらに備える、請求項12または13に記載の送達システム。
【国際調査報告】