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特表2024-531606上部ロック・プルアウト式連結装置および沈埋函施工船
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】上部ロック・プルアウト式連結装置および沈埋函施工船
(51)【国際特許分類】
   F16B 7/04 20060101AFI20240822BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20240822BHJP
   E02D 23/02 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
F16B7/04 A
B63B35/00 P
B63B35/00 C
E02D23/02 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515042
(86)(22)【出願日】2023-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 CN2023116440
(87)【国際公開番号】W WO2024032816
(87)【国際公開日】2024-02-15
(31)【優先権主張番号】202211106676.X
(32)【優先日】2022-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519172513
【氏名又は名称】中交第一航▲務▼工程局有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李増▲軍▼
【テーマコード(参考)】
3J039
【Fターム(参考)】
3J039AA03
3J039BB03
3J039EA01
(57)【要約】
本出願は、上部ロック・プルアウト式連結装置および沈埋管施工船を提供する。連結装置は、荷重支承要素に固定的に連結され、荷重支承要素の、被支承要素に面する第1の側に設置される支持部材と、荷重支承要素および被支承要素の連結方向において荷重支承要素に対して摺動可能である摺動部材と、摺動部材を押動するために使用され、被支承要素に固定的に連結されるエジェクタロッドと、エジェクタロッドをロックするために使用され、摺動部材の、被支承要素に近い第1の端部と支持部材との間に移動可能に連結され、エジェクタロッドに接近または離間するように摺動部材によって作動され得る第1のロック部材と、摺動部材をロックするために使用され、摺動部材の、被支承要素から離れている第2の端部と荷重支承要素との間に連結される第2のロック部材と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重支承要素と被支承要素との間に連結される上部ロック・プルアウト式連結装置であって、
前記上部ロック・プルアウト式連結装置は、
前記荷重支承要素に固定的に連結され、前記荷重支承要素の、前記被支承要素に面する第1の側に設置される支持部材と、
前記荷重支承要素および前記被支承要素の連結方向において前記荷重支承要素に対して摺動可能である摺動部材と、
前記摺動部材を押動するために使用され、前記被支承要素に固定的に連結され、前記被支承要素の、前記荷重支承要素に面する第1の側に設置され、前記摺動部材の反対側に配置されるエジェクタロッドと、
前記エジェクタロッドをロックするために使用され、前記摺動部材の、前記被支承要素に近い第1の端部と前記支持部材との間に移動可能に連結され、前記エジェクタロッドに接近または離間するように前記摺動部材によって作動され得る第1のロック部材と、
前記摺動部材をロックするために使用され、前記摺動部材の、前記被支承要素から離れている第2の端部と前記荷重支承要素との間に連結される第2のロック部材と、
を備え、
前記上部ロック・プルアウト式連結装置は、
前記被支承要素および前記荷重支承要素が前記連結方向において互いに向かって移動するときに、前記エジェクタロッドが前記摺動部材を押動して前記被支承要素から離れる方向に摺動させ、前記摺動部材が前記第1のロック部材を作動させて前記エジェクタロッドに接近させるように、
前記被支承要素が前記支持部材に接した状態で前記支持部材に抵抗を加えるように移動した後、前記摺動部材が前記第2のロック部材を介して前記荷重支承要素にロックされて連結され、同時に、前記第1のロック部材が前記エジェクタロッドと適合して前記エジェクタロッドをロックするように、および、
前記第2のロック部材の前記摺動部材に対するロックが解放された後、前記被支承要素および前記荷重支承要素が前記連結方向において互いに離れるにつれて、前記第1のロック部材および前記エジェクタロッドの引張り力によって前記摺動部材が前記被支承要素に近接する方向に摺動し、前記第1のロック部材が前記エジェクタロッドから離れて前記エジェクタロッドが解放されるように、
構成されている、上部ロック・プルアウト式連結装置。
【請求項2】
前記摺動部材の周りに均等に分散配置された複数の支持部材があり、前記支持部材と一対一に対応して配置された複数の第1のロック部材があり、前記エジェクタロッドをロックしている間、前記複数の第1のロック部材は共同で、前記エジェクタロッドをクランプして前記エジェクタロッドをロックする、請求項1に記載の上部ロック・プルアウト式連結装置。
【請求項3】
前記エジェクタロッドの、前記被支承要素から離れている第1の端部にフランジが設けられ、前記第1のロック部材の各々は、前記摺動部材にヒンジ結合された第1の端部と、前記支持部材に摺動可能に連結された第2の端部とを有するロックアームであり、前記ロックアームの、前記エジェクタロッドに隣接する側には、前記フランジをクランプするための凸状縁部が設けられ、
前記上部ロック・プルアウト式連結装置は、
前記摺動部材が前記被支承要素から離れる方向に摺動するとき、前記ロックアームの前記第2の端部が前記エジェクタロッドに近接する方向に摺動して前記凸状縁部を作動させて前記エジェクタロッドの近くに移動させ前記フランジをクランプするように、および、
前記摺動部材が前記被支承要素に近接する方向に摺動するとき、前記ロックアームの前記第2の端部が前記エジェクタロッドから離れる方向に摺動して前記凸状縁部を作動させて前記エジェクタロッドから離れる方向に移動させ前記エジェクタロッドを解放するように、
構成されている、請求項2に記載の上部ロック・プルアウト式連結装置。
【請求項4】
前記支持部材の各々には摺動溝が設けられ、前記摺動溝は、直線部分と、連続的に接続された円弧部分とを備え、前記直線部分は、前記摺動部材の摺動方向に配置され、前記直線部分の、前記荷重支承要素に近い第1の端部から前記直線部分の、前記被支承要素に近い第2の端部まで延在し、前記円弧部分の第1の端部は前記直線部分の前記第2の端部に接続され、前記円弧部分は、前記被支承要素に向かって直接的に、かつ前記エジェクタロッドから離れるように湾曲され、前記ロックアームの各々は、凸状縁部と、互いに垂直に連結された第1の連結アームおよび第2の連結アームとを含み、前記第1の連結アームの第1の端部は前記摺動部材にヒンジ結合され、前記凸状縁部は、前記第1の連結アームの、前記エジェクタロッドに隣接する第2の端部の側に連結され、前記第2の連結アームの第1の端部は、スライダによって前記摺動溝に摺動可能に連結され、前記第2の連結アームの第2の端部は、前記第1の連結アームの前記第2の端部に垂直に連結され、前記凸状縁部から離れた側に設置される、請求項3に記載の上部ロック・プルアウト式連結装置。
【請求項5】
前記エジェクタロッドは、円筒状であり、前記摺動部材に接して前記摺動部材を押動することができるように構成され、少なくとも3つの支持部材がある、請求項3または4に記載の上部ロック・プルアウト式連結装置。
【請求項6】
前記荷重支承要素に固定的に取り付けられた案内管をさらに備え、前記案内管は、前記摺動部材の摺動方向に配置され、前記荷重支承要素を貫通して延び、前記摺動部材は、前記案内管内に摺動可能に嵌合され、前記第2のロック部材が前記摺動部材をロックするとき、前記第2のロック部材は、前記摺動部材の前記第2の端部に連結され、前記荷重支承要素の、前記被支承要素から離れている第2の側の前記案内管の貫通ポートにおいてクランプされる、請求項1に記載の上部ロック・プルアウト式連結装置。
【請求項7】
前記摺動部材の前記第2の端部は、前記第2のロック部材を挿通することを可能とする貫通溝が設けられたハンドル部分であり、前記貫通溝の延在方向は、前記摺動部材の摺動方向に対して垂直であり、前記第2のロック部材のサイズは、前記貫通ポートのサイズよりも大きく、前記第2のロック部材が前記摺動部材をロックするとき、前記ハンドル部分は前記貫通ポートを貫通して延び、前記第2のロック部材は、前記貫通溝に挿通され、前記貫通ポートにおいてクランプされる、請求項6に記載の上部ロック・プルアウト式連結装置。
【請求項8】
前記第2のロック部材は、2つの楔状ブロックであり、前記2つの楔状ブロックの傾斜面は、互いに対向して配置されると共に、互いに対して摺動可能であり、少なくとも1つの楔状ブロックのサイズは、前記貫通ポートのサイズよりも大きい、請求項7に記載の上部ロック・プルアウト式連結装置。
【請求項9】
前記第2のロック部材はナットであり、前記ナットの軸線方向は前記摺動部材の摺動方向と一致し、前記ナットのサイズは前記貫通ポートのサイズよりも大きく、前記摺動部材の前記第2の端部は、前記ナットと適合するように雄ねじ部が設けられたハンドル部分である、請求項6に記載の上部ロック・プルアウト式連結装置。
【請求項10】
前記ナットの内周の2つの対向する側には、前記摺動部材の摺動方向に前記ナットを通って延びる摺動路がそれぞれ形成され、前記ハンドル部分の幅は2つの前記摺動路の幅よりも小さく、前記雄ねじ部は、前記ハンドル部分の長さ方向の2つの端部の外壁に配置され、前記2つの摺動路が前記ハンドル部分の前記長さ方向の前記2つの端部に整列するまで前記ナットを回転させるとき、前記ハンドル部分は前記2つの摺動路の間に摺動可能に嵌合する、請求項9に記載の上部ロック・プルアウト式連結装置。
【請求項11】
沈埋函の輸送または沈埋に用いられる沈埋函施工船であって、実質的に平行に配置された第1の浮体および第2の浮体と、前記第1の浮体と前記第2の浮体との間に連結されたデッキブリッジと、を備え、請求項1~10のいずれか一項に記載の上部ロック・プルオフ式連結装置が複数、前記沈埋函の様々な部分を連結するために前記デッキブリッジに分散配置され、前記デッキブリッジは前記荷重支承要素として機能し、前記沈埋函は前記被支承要素として機能する、沈埋函施工船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年9月13日に出願された「top-lock pull-out type connecting device and an immersed tube construction ship containing the same(上部ロック・プルアウト式連結装置およびこれを備えた沈埋函施工船)」という名称の中国出願第202211106676.X号の優先権の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、建築工学における建設設備の技術分野に属し、特に上部ロック・プルアウト式連結装置(上部固定引き抜き式連結装置)および沈埋函施工船に属する。
【背景技術】
【0003】
建設工学の分野では、建設の安全性を確保し、建設効率を向上させ、労力を軽減するために、多くの建設設備において、建設設備間または建設設備と建築構成要素との間での確実な連結機能および簡便な連結解除機能が必要な機能とされている。特定の操作条件下では、いわゆる「ジャッキ式および張力付与式」の堅固な連結(jacked and tensioned rigid connection)を達成するために、押動機能(pushing function)と引張り機能(pulling function)の両方を有する荷重支承要素と被支承要素との間の連結形態を確立することも必要である。
【0004】
沈埋函トンネルの予め製造された沈埋函部分の浮遊輸送中における沈埋函と輸送船との間の連結は、「ジャッキ式および張力付与式」の堅固な連結の一例である。現在、従来の船・函連結構造は、通常、沈埋函(immersed tube,沈埋管、浸漬管)と輸送船(construction ship,建設船)との間の「ジャッキ式および張力付与式」の連結を実現するために支持桟橋およびケーブルを採用している。しかし、多数のケーブルを手作業で組み合わせたり分解したりする必要があり、既存の従来の船・函連結構造は、簡便なロック解除機能を有しておらず、建設時の労力が多大となり、緊急事態時の迅速な切離しによる危険回避を実現することができない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来技術におけるいくつかの問題を解決するために、本出願は、上部ロック・プルアウト式連結装置と、それを含む沈埋函施工船とを提供し、それは船・函連結を十分に実現することができる。
【0006】
本出願の第1の態様は、荷重支承要素(load-bearing element)と被支承要素(borne element)との間に連結される上部ロック・プルアウト式連結装置を提供するものであり、この上部ロック・プルアウト式連結装置は、荷重支承要素に固定的に連結され、荷重支承要素の、被支承要素に面する第1の側に設置される支持部材と、荷重支承要素および被支承要素の連結方向において荷重支承要素に対して摺動可能である摺動部材と、摺動部材を押動するために使用され、被支承要素に固定的に連結され、被支承要素の、荷重支承要素に面する第1の側に設置され、摺動部材の反対側に配置されるエジェクタロッド(ejector rod)と、エジェクタロッドをロックするために使用され、摺動部材の、被支承要素に近い第1の端部と支持部材との間に移動可能に連結され、エジェクタロッドに接近または離間するように摺動部材によって作動され得る第1のロック部材と、摺動部材をロックするために使用され、摺動部材の、被支承要素から離れている第2の端部と荷重支承要素との間に連結される第2のロック部材と、を備え、上部ロック・プルアウト式連結装置は、被支承要素および荷重支承要素が連結方向において互いに向かって移動するとき、エジェクタロッドが摺動部材を押動して被支承要素から離れる方向に摺動させ、摺動部材が第1のロック部材を作動させてエジェクタロッドに接近させるように構成され、上部ロック・プルアウト式連結装置は、被支承要素が支持部材に接した状態で支持部材に抵抗を加えるように移動した後、摺動部材が第2のロック部材を介して荷重支承要素にロックされて連結され、この時に、第1のロック部材がエジェクタロッドと適合してエジェクタロッドをロックするように構成され、上部ロック・プルアウト式連結装置は、第2のロック部材の摺動部材に対するロックが解放された後、被支承要素および荷重支承要素が連結方向において互いに離れるにつれて、第1のロック部材およびエジェクタロッドの引張り力によって摺動部材が被支承要素に近接する方向に摺動し、第1のロック部材がエジェクタロッドから離れてエジェクタロッドを解放するように構成される。
【0007】
いくつかの例では、複数(2つ以上)の支持部材があり、これらの複数の支持部材は、摺動部材の周りに均等に分散配置され、また、複数の第1のロック部材があり、これらの第1のロック部材は、支持部材と一対一に対応して配置され、エジェクタロッドをロックしている間、複数の第1のロック部材は共同で、エジェクタロッドをクランプしてエジェクタロッドをロックする。
【0008】
いくつかの例では、エジェクタロッドの、被支承要素から離れている第1の端部にフランジが設けられ、第1のロック部材の各々はロックアームであり、ロックアームの第1の端部は、摺動部材にヒンジ結合され、ロックアームの第2の端部は支持部材に摺動可能に連結され、ロックアームの、エジェクタロッドに隣接する側には、フランジをクランプするための凸状縁部が設けられ、上部ロック・プルアウト式連結装置は、摺動部材が被支承要素から離れる方向に摺動するとき、支持部材とロックアームの連結端部(すなわち、ロックアームの第2の端部)がエジェクタロッドに近接する方向に摺動して凸状縁部を作動させてエジェクタロッドの近くに移動させフランジをクランプするように構成され、上部ロック・プルアウト式連結装置は、摺動部材が被支承要素に近接する方向に摺動するとき、支持部材とロックアームの連結端部(すなわち、ロックアームの第2の端部)がエジェクタロッドから離れる方向に摺動して凸状縁部を作動させてエジェクタロッドから離れる方向に移動させエジェクタロッドを解放するように構成される。
【0009】
いくつかの例では、支持部材の各々には摺動溝が設けられており、摺動溝は、直線部分と、連続的に接続された円弧部分とを備え、直線部分は、摺動部材の摺動方向に配置され、直線部分の、荷重支承要素に近い第1の端部から直線部分の、被支承要素に近い第2の端部まで延在し、円弧部分の第1の端部は直線部分の第2の端部に接続され、円弧部分は、被支承要素に向かって直接的に、かつエジェクタロッドから離れるように湾曲され、ロックアームの各々は、凸状縁部と、互いに垂直に連結された第1の連結アームおよび第2の連結アームとを含み、第1の連結アームの第1の端部は摺動部材にヒンジ結合され、凸状縁部は、第1の連結アームの、エジェクタロッドに隣接する第2の端部の側に連結され、第2の連結アームの第1の端部は、スライダによって摺動溝に摺動可能に連結され、第2の連結アームの第2の端部は、第1の連結アームの、摺動部材から離れている端部(すなわち、第1の連結アームの第2の端部)に垂直に連結され、凸状縁部から離れた側に設置される。
【0010】
いくつかの例では、エジェクタロッドは円筒状であり、摺動部材に接して摺動部材を押動することができるように構成され、少なくとも3つの支持部材がある。
【0011】
いくつかの例では、上部ロック・プルアウト式連結装置は、荷重支承要素に固定的に取り付けられた案内管をさらに備え、案内管は、摺動部材の摺動方向に配置され、荷重支承要素を貫通して延び、摺動部材は、案内管内に摺動可能に嵌合され、第2のロック部材が摺動部材をロックするとき、第2のロック部材は、摺動部材の第2の端部に連結され、荷重支承要素の、被支承要素から離れている第2の側の案内管の貫通ポートにおいてクランプされる。
【0012】
いくつかの例では、摺動部材の第2の端部は、第2のロック部材を挿通させるための貫通溝が設けられたハンドル部分であり、貫通溝の延在方向は、摺動部材の摺動方向に対して垂直であり、第2のロック部材のサイズは、貫通ポートのサイズよりも大きく、第2のロック部材が摺動部材をロックするとき、ハンドル部分は貫通ポートを貫通して延び、第2のロック部材は、貫通溝に挿入され、貫通ポートにおいてクランプされる。
【0013】
いくつかの例では、第2のロック部材は2つの楔状ブロックであり、2つの楔状ブロックの傾斜面は互いに対向して配置され、互いに対して摺動可能であり、少なくとも1つの楔状ブロックのサイズは貫通ポートのサイズよりも大きい。
【0014】
いくつかの例では、第2のロック部材はナットであり、ナットの軸線方向は摺動部材の摺動方向と一致し、ナットのサイズは、貫通ポートのサイズよりも大きく、摺動部材の第2の端部は、ナットと適合するように雄ねじ部が設けられたハンドル部分である。
【0015】
いくつかの例では、ナットの内周の2つの対向する側には、摺動部材の摺動方向にナットを通って延びる摺動路がそれぞれ形成され、ハンドル部分の幅は2つの摺動路の幅よりも小さく、雄ねじ部は、ハンドル部分の長さ方向の2つの端部の外壁に配置され、2つの摺動路がハンドル部分の長さ方向の2つの端部に整列するまでナットを回転させるとき、ハンドル部分は2つの摺動路の間に摺動可能に嵌合する。
【0016】
本出願の第2の態様は、沈埋函の輸送または沈埋に用いられる沈埋函施工船を提供するものであり、この沈埋函施工船は、実質的に平行に配置された第1の浮体および第2の浮体と、第1の浮体と第2の浮体との間に連結されたデッキブリッジと、を含み、上記例のいずれか1つに記載の上部ロック・プルオフ式連結装置が複数、沈埋函の様々な部分を連結するためにデッキブリッジ上に分散配置され、デッキブリッジは荷重支承要素として機能し、沈埋函は被支承要素として機能する。
【0017】
従来技術と比較して、本出願は以下の利点および肯定的な効果を有する。
【0018】
1.本出願の少なくとも1つの実施形態で提供される上部ロック・プルオフ式連結装置では、荷重支承要素および被支承要素が互いに向かって移動するときの押動動作によって、荷重支承要素に配置されたエジェクタロッドは摺動部材を押動することが可能とされ、第1のロック部材は、荷重支承要素に対する摺動部材の摺動によってエジェクタロッドをロックするように作動され、これにより、荷重支承要素と被支承要素との間の「張力付与」が、第2のロック部材の摺動部材に対するロックとの組合せで実現される。一方、荷重支承要素および被支承要素の互いに向かう移動は、荷重支承要素が被支承要素と衝突するのを防止するために、荷重支承要素に固定された支持部材によって制限され、それらの間の「ジャッキング」を実現するようになっている。被支承要素を解放する必要がある場合、第2のロック部材の摺動部材へのロックを解放することによって、荷重支承要素と被支承要素とが互いに離れるように移動するときの引張り動作が適用され、摺動部材が荷重支承要素に対して摺動し、その結果、第1のロック部材がエジェクタロッドから離れるように移動して、被支承要素を解放する。
【0019】
2.本出願の少なくとも1つの実施形態で提供される上部ロック・プルオフ式連結装置はまた、「ジャッキ式および張力付与式」の堅固な連結機能および簡便なロック解除機能を有し、沈埋函トンネル建設プロセスにおける船・函連結のための建築要件を満たすことができ、または他の操作条件下での「ジャッキ式および張力付与式」の堅固な連結構造の簡便なロック解除要件を満たすことができる。
【0020】
3.本出願の少なくとも1つの実施形態で提供される上部ロック・プルオフ式連結装置では、ロック解除制御機構を追加的に設けることなく、ロックおよびロック解除が第2のロック部材によって完全に制御される。したがって、連結装置の操作機構が大幅に簡素化され、ロック解除制御機構の故障によって引き起こされる偶発的な切断の可能性が根本的に回避され、隠れた危険性をも完全に回避され、安全性が本質的に実現される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態による上部ロック・プルアウト式連結装置の斜視図である。
図2】上部ロック・プルアウト式連結装置の正面図である。
図3】上部ロック・プルアウト式連結装置の上面図である。
図4図3の線A-Aに沿った断面図である。
図5】一実施形態における上部ロック・プルアウト式連結装置のロックアームの概略構造図である。
図6(a)】本出願の上部ロック・プルアウト式連結装置の、荷重支承要素と被支承要素との間の連結および解放プロセスの概略図である。
図6(b)】本出願の上部ロック・プルアウト式連結装置の、荷重支承要素と被支承要素との間の連結および解放プロセスの概略図である。
図6(c)】本出願の上部ロック・プルアウト式連結装置の、荷重支承要素と被支承要素との間の連結および解放プロセスの概略図である。
図6(d)】本出願の上部ロック・プルアウト式連結装置の、荷重支承要素と被支承要素との間の連結および解放プロセスの概略図である。
図6(e)】本出願の上部ロック・プルアウト式連結装置の、荷重支承要素と被支承要素との間の連結および解放プロセスの概略図である。
図6(f)】本出願の上部ロック・プルアウト式連結装置の、荷重支承要素と被支承要素との間の連結および解放プロセスの概略図である。
図6(g)】本出願の上部ロック・プルアウト式連結装置の、荷重支承要素と被支承要素との間の連結および解放プロセスの概略図である。なお、図6(a)~図6(e)は連結プロセスであり、図6(e)~図6(g)は解放プロセスである。
図7】一実施形態における上部ロック・プルアウト式連結装置の概略構造図である。
図8】支持部材、摺動部材、第1のロック部材およびエジェクタロッドの概略組立図である。
図9】一実施形態による上部ロック・プルアウト式連結装置の摺動部材がロック状態にあるときの荷重支承要素、第2のロック部材および摺動部材の組立斜視図である。
図10図9の上面図である。
図11図10の線B-Bに沿った断面図である。
図12】本出願の上部ロック・プルアウト式連結装置の摺動部材がロック解除状態にあるときの荷重支承要素、第2のロック部材および摺動部材の組立斜視図である。
図13図12の上面図である。
図14図13の線C-Cに沿った断面図である。
図15】本出願の上部ロック・プルアウト式連結装置の第2のロック部材の概略構造図である。
図16】本出願の上部ロック・プルアウト式連結装置の摺動部材の概略構造図である。
図17】一実施形態における沈埋函施工船の概略構造図である。
図18】本出願の沈埋函施工船のデッキブリッジ、上部ロック・プルアウト式連結装置および沈埋函の概略組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここで、1 荷重支承要素、2 被支承要素、3 上部ロック・プルアウト式連結装置、4 第1の浮体、5 第2の浮体、6 デッキブリッジ、7 沈埋函、31 支持部材、311 摺動溝、3111 直線部分、3112 円弧部分、32 摺動部材、321 ハンドル部分、3211 貫通溝、33 ロックアーム、331 第1の連結アーム、332 凸状縁部、333 スライダ、334 第2の連結アーム、34 エジェクタロッド、341 フランジ、35 案内管、351 貫通ポート、36 楔状ブロック、37 ナット、371 摺動路。
である。
【0023】
次に、本出願の技術的解決手段を、特定の実施形態と組み合わせて詳細に説明する。しかしながら、一実施形態における要素、部材、構造および特徴はまた、さらなる説明なしに他の実施形態に有利に組み込まれ得ることを理解されたい。
【0024】
本出願の説明では、「第1」および「第2」などの用語は説明上の目的のみで使用され、相対的な重要性を示すもしくは暗示すると理解してはならず、または、示された技術的特徴の数を暗黙的に示すと理解してはならないことに留意されたい。したがって、「第1」および「第2」で定められた特徴は、これらの特徴の1つまたは複数を明示的または暗黙的に含み得る。
本出願の説明では、「上」、「下」、「底」、「内側」などの用語は、単に本出願の説明および簡略化された説明の便宜のためだけにあり、図1に示された向きまたは位置関係に基づく向きまたは位置関係を示すものであるが、言及される装置または要素が特定の向きでなければならないこと、特定の向きで構成され操作されなければならないことを示すまたは暗示するものではなく、したがって本出願を限定するものとして解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0025】
本出願の説明において、「連結する」、「連結している」、および「連結される」という用語は、特に明確に規定および限定されない限り、広い意味で理解されるべきであることに留意されたい。例えば、それらは固定的な連結、取外し可能な連結、または一体化された連結であってもよい。直接的な連結であっても、中間媒体を介した間接的な連結であってもよく、2つの要素の内部連結であってもよい。当業者にとって、本出願における上述の用語の明確な意味は、明確な状況下で理解され得るものである。
【0026】
図1図6に示すように、本出願の第1の実施形態は、上部ロック・プルアウト式連結装置3(以下、略して「連結装置」と称する)を提供し、この連結装置3は、荷重支承要素1と被支承要素3との間に連結されており、支持部材31と、摺動部材32と、エジェクタロッド34と、第1のロック部材と、第2のロック部材とを含む。支持部材31は、荷重支承要素1に固定的に連結され、かつ荷重支承要素1の、被支承要素2に面する第1の側に設置される。例えば、支持部材31は、荷重支承要素1に直接的に鋳造されてもよいし、ボルト等の連結部材を介して荷重支承要素1に固定的に連結されてもよい。摺動部材32は、荷重支承要素1および被支承要素2の連結方向に沿って荷重支承要素1に対して摺動可能である。エジェクタロッド34は、摺動部材32を押動するために使用され、被支承要素2に固定的に連結され、被支承要素2の、荷重支承要素1に面する第1の側に設置され、摺動部材32とは反対側に配置される。具体的には、エジェクタロッド34は、摺動部材32に接して摺動部材32を押動することができるように構成されている。例えば、エジェクタロッド34は、被支承要素2に直接的に鋳造されてもよいし、ボルト等の連結部材を介して被支承要素2に固定的に連結されてもよい。第1のロック部材は、エジェクタロッド34をロックするために使用され、摺動部材32の、被支承要素2に隣接する第1の端部と支持部材3との間に移動可能に連結され、摺動部材32によってエジェクタロッド34に対して接近または離間するように作動され得る。第2のロック部材は、摺動部材32をロックするために使用され、摺動部材32の、被支承要素2から離れている第2の端部と荷重支承要素1との間に連結される。被支承要素2および荷重支承要素1がそれらの連結方向において互いに向かって移動するとき、エジェクタロッド34は摺動部材32を押動して被支承要素2から離れる方向に摺動させ、摺動部材32は第1のロック部材を作動させてエジェクタロッド34に接近させ、被支承要素2が支持部材31に接した状態で支持部材31に抵抗を加えるように移動した後、摺動部材32は、第2のロック部材によって荷重支承要素1にロックされて連結され、このとき、第1のロック部材は、エジェクタロッド34と協働してエジェクタロッド34をロックする。そして、第2のロック部材32の摺動部材へのロックが解除された後、被支承要素2と荷重支承要素1とがその連結方向において互いに離れるに従って、摺動部材32が第1のロック部材とエジェクタロッド34との引張り力によって被支承要素2に接近する方向に摺動し、第1のロック部材がエジェクタロッド34から離れるように移動してエジェクタロッド34を解放する。
【0027】
連結装置3において、荷重支承要素1および被支承要素2が互いに向かって移動するときの押動動作によって、被支承要素2に配置されたエジェクタロッド34は、摺動部材32を押動することを可能とし、第1のロック部材は、荷重支承要素1に対する摺動部材32の摺動によってエジェクタロッド34をロックするように作動され、よって、荷重支承要素1と被支承要素2との間の「張力付与」が、第2のロック部材の摺動部材32へのロックとの組合せで実現される。一方、荷重支承要素1および被支承要素2の互いに向かう移動は、荷重支承要素1と被支承要素2との間の「ジャッキング」を実現するために、荷重支承要素1に固定された支持部材31によって制限され、荷重支承要素1が被支承要素2と衝突することを防止する。被支承要素2を解放する必要がある場合、摺動部材32を第2のロック部材からロック解除し、荷重支承要素1と被支承要素2とが互いに離れるときに引張り作用によって、摺動部材32が荷重支承要素1に対して摺動し、それによって、第1のロック部材がエジェクタロッド34から離れるように移動して、被支承要素2を解放する。連結装置3は、「ジャッキ式および張力付与式」の堅固な連結機能と簡便なロック解除機能とを同時に有し、これは、沈埋函トンネル建設プロセスにおける船・函連結の建設要件を満たすことができ、または他の操作条件下で「ジャッキ式および張力付与式」の堅固な連結構造の簡便なロック解除要件を満たすことができる。加えて、連結装置3において、ロック解除制御機構を別途設けることなく、第2のロック部材によってロックおよびロック解除が完全に制御され、したがって、連結装置の操作機構が大幅に簡素化され、ロック解除制御機構の故障に起因する偶発的な切断の可能性が根本的に回避され、隠れた危険性が完全に回避され、安全性が本質的に実現される。
【0028】
図2に示すように、いくつかの実施形態では、摺動部材32に対して対称に分散配置された2つの支持部材31が設けられる。第1のロック部材も2つあり、支持部材31と一対一に対応して配置される。エジェクタロッド34をロックしている間、2つの第1のロック部材は共同でエジェクタロッド34をクランプしてエジェクタロッド34をロックする。このような構成では、構造安定性が良好であり、連結装置の支承能力を向上させる点で有効である。
【0029】
図4図6に示すように、一実施形態では、エジェクタロッド34の、被支承要素2から離れている第1の端部に、フランジ341が設けられる。第1のロック部材の各々はロックアーム33であり、その第1の端部は摺動部材32にヒンジ止めされ、その第2の端部は支持部材31に摺動可能に連結され、その結果、第1のロック部材は摺動部材32の第1の端部と支持部材31との間に移動可能に連結される。エジェクタロッドのフランジ341をクランプするために使用される凸状縁部332は、ロックアーム33の、エジェクタロッド34に隣接する側に設けられる。摺動部材32が被支承要素2から離れる方向に摺動するとき、支持部材31およびロックアーム33の連結端部(すなわち、ロックアームの第2の端部)がエジェクタロッド34に近接する方向に摺動して、凸状縁部332を作動させてエジェクタロッド34に接近するよう移動させフランジ341をクランプし、摺動部材32が被支承要素2に近接する方向に摺動するとき、支持部材31およびロックアーム33の連結端部(すなわち、ロックアームの第2の端部)とがエジェクタロッド34から離間する方向に摺動し、凸状縁部332を作動させてエジェクタロッド34から離れるよう移動させエジェクタロッド34を解放させる。本実施形態では、エジェクタロッド34は、ロックアーム33を第1のロック部材として用い、各ロックアーム33に配置された凸状縁部332とエジェクタロッド34に設けられたフランジ341とを協働させることにより、ロックされる。一方、ロックアーム33の第1の端部は摺動部材32にヒンジ結合され、その第2の端部は支持部材31と摺動可能に連結され、それにより、ロックアーム33は、凸状縁部332がエジェクタロッド34に接近または離間することを可能にするように、摺動部材32の摺動中に開閉され得る。
【0030】
摺動部材32の摺動によって各ロックアーム33の凸状縁部332を作動させてエジェクタロッド34に接近または離間させるために、より具体的には、図4図8に示すように、各支持部材31には摺動溝311が設けられ、摺動溝332は、連続的に接続された直線部分3111および円弧部分3112を含む。直線部分3111は、摺動部材32の摺動方向に沿って配置され、直線部分の、荷重支承要素1に近い第1の端部から直線部分の、被支承要素2に近い第2の端部まで延び、円弧部分3112の第1の端部は、直線部分3111の第2の端部と接続され、円弧部分3112は、被支承要素2に向かって直接的に、エジェクタロッド34から離れるように湾曲されている。図5に示すように、各ロックアーム33は、第1のロック部材として、凸状縁部332と、互いに垂直に連結された第1の連結アーム331および第2の連結アーム334とを有する。第1の連結アーム331の第1の端部は摺動部材32にヒンジ止めされ、凸状縁部332は、エジェクタロッド34に隣接する側にて第1の連結アーム331の第2の端部に連結され、第2の連結アーム334の第1の端部は、スライダ333を介して摺動溝311に摺動可能に連結され、第2の連結アーム334の第2の端部は、第1の連結アーム331の、摺動部材32から離れている端部(すなわち、第1の連結アーム331の第2の端部)に垂直に連結され、凸状縁部332から離れている側に設置される。このような構成では、図6(a)~図6(g)に示すように、摺動部材32がロックされていないとき、ロックアーム33のスライダ333は、摺動溝311の円弧部分3112の後端に配置され、摺動部材32がエジェクタロッド34に押動されて被支承要素2から離れる方向に摺動するとき、スライダ333は円弧部分3112に沿って側方に移動し、荷重支承要素1およびエジェクタロッド34に近接する方向に移動し、さらに、スライダ333は第1の連結アーム331を作動させて第2の連結アーム3334を介してエジェクタロッド34に近接する方向に揺動させ、その結果、凸状縁部332はエジェクタロッド34に接近するように移動し、エジェクタロッド34のフランジ341にクランプされ、スライダ333が円弧部分3112と直線部分3111との接合部までスライドするとき、凸状縁部332はエジェクタロッド34にほぼ取着され、摺動部材32が、被支承要素2から離れる方向に連続的に摺動するとき、スライダ333は、直線部分3111に沿って摺動し、第1の連結アーム331を作動させて直線部分に沿って被支承要素2から離れる方向に摺動させ、凸状縁部332は、エジェクタロッド34の端部においてフランジ341にクランプされ、それによってエジェクタロッド34をロックする。被支承要素2が解放されるべきとき、摺動部材32は、被支承要素2に近接する方向に摺動し、それにより、スライダ333を作動させて、摺動溝311の直線部分3111に沿って第1の連結アーム331および第2の連結アーム334を介して被支承要素2に近接する方向に摺動させ、スライダ333が円弧部分3112へと摺動するとき、スライダ33が第1の連結アーム331を作動させて第2の連結アーム334を介してエジェクタロッド34から離れる方向に揺動させ、凸状縁部332は、エジェクタロッド34から離れるように移動しエジェクタロッド34を解放する。なお、本実施形態において、凸状縁部332、第1の連結アーム331、第2の連結アーム334およびスライダ333は、一体に形成されてもよい。
【0031】
図1図3に示すように、連結装置3は、荷重支承要素1に固定的に取り付けられた案内管35をさらに含んでもよい。案内管35は、摺動部材32の摺動方向に配置され、荷重支承要素1を貫通して延び、摺動部材32は、案内管35に摺動可能に嵌合される。第2のロック部材が摺動部材32をロックするとき、第2のロック部材は、摺動部材32の第2の端部に連結され、荷重支承要素1の、被支承要素2から離れた第2の側において案内管35の貫通ポート351にてクランプされる。摺動部材32の摺動方向は、設けられた案内管35によって案内され、案内管35は、荷重支承要素1の第2の側まで貫通し、その結果、第2のロック部材は、荷重支承要素1の第2の側で操作されて、摺動部材32をロックすることができ、また、摺動部材32をロックするとき、第2のロック部材が荷重支承要素1の第2の側において案内管35の貫通ポート351にてクランプされ、その結果、ロックの堅固さが確保され、偶発的に連結が解除される危険性がない。
【0032】
図3および図4に示すように、一実施形態では、摺動部材32の、被支承要素2から離れている端部(すなわち、摺動部材32の第2の端部)はハンドル部分321であり、ハンドル部分321には、第2のロック部材を挿入することを可能にするための貫通溝3211が形成され、貫通溝3211の延在方向は、摺動部材32の摺動方向に対して垂直である。第2のロック部材のサイズは、貫通ポート351のサイズよりも大きい。第2のロック部材が摺動部材32をロックするとき、ハンドル部分321は貫通ポート351を貫通して延び、第2のロック部材が貫通溝3211に挿入されて貫通ポート351にてクランプされる。摺動部材32をロックしている間、ハンドル部分321を持ち上げることによって、荷重支承要素1と被支承要素2との間に締付け前の力を加えることができ、支持部材31と組み合わせることで、「ジャッキ式および張力付与式」の連結効果を確保することができる。また、第2のロック部材が貫通溝3211に挿入されることにより、第2のロック部材が摺動部材32をロックし、その結果、操作に便利となる。
【0033】
いくつかの特定の実施形態では、図1および図7に示すように、第2のロック部材は2つの楔状ブロック36であり、2つの楔状ブロック36の傾斜面は対向して配置され、互いに対して摺動することができ、少なくとも1つの楔状ブロック36のサイズは貫通ポート351のサイズよりも大きい。楔状ブロック36の特性によれば、小さな楔作用の力を加えることによって、荷重支承要素1と被支承要素2との間に大きな引張り力を加えることができることが分かる。引張り力が大きいほど、支持部材31の支持効果下での荷重支承要素1と被支承要素2との間の連結の堅固さがより大きくなる。さらに、楔状ブロック36は、構造が単純であり、組立てまたは分解に便利であり、堅固で信頼性があり、機械的に作動させるのに便利である。なお、楔状ブロック36が貫通溝3211に挿入されるとき、2つの楔状ブロック36を荷重支承要素1と被支承要素2との接続方向に積み重ねて、2つの楔状ブロック36の相対的な摺動を利用して荷重支承要素1と被支承要素2との間の引張り力を調整する必要があることに留意されたい。なお、楔状ブロック36が貫通溝3211に挿入されるとき、貫通ポート351よりも大きいサイズの楔状ブロック36は貫通ポート351に近接する。
【0034】
以下、図6(a)~図6(g)を参照して、連結装置3の操作プロセスについて説明する。
【0035】
(1)連結プロセス:図6(a)~図6(e)に示すように、鉛直方向に連結される荷重支承要素1および被支承要素2を例に、連結装置3を用いた連結方法を以下に説明する。
【0036】
S101において、荷重支承要素1および被支承要素2を移動させて、摺動部材32をエジェクタロッド34に整列させる。
【0037】
S102において、荷重支承要素1および被支承要素2を連結方向(図においては鉛直方向)において互いに向かって移動させると、エジェクタロッド34が摺動部材32を押動し、それによって、摺動部材32が案内管35内を上方へ摺動するとともに、各ロックアーム33を作動させて上方へ摺動させ、スライダ333と摺動溝311の円弧部分3112との協働により、各ロックアーム33の第1の連結アーム331は同時に内側に揺動し、各スライダ333が円弧部分3112と直線部分3111との接合部まで摺動すると、ロックアーム33の内側の各凸状縁部332がエジェクタロッド34に接近し、エジェクタロッド34の端部の各凸状縁部332およびフランジ341は予め設定されたロックレベルに達することができる。
【0038】
S103において、2つの楔状ブロック36を摺動部材32の貫通溝3211に挿入し、2つの楔状ブロック36の相対的な摺動により、各ロックアーム33の凸状縁部332の上縁がエジェクタロッド34のフランジの下縁に接して状態でその下縁に抵抗を加えるまで、摺動部材32のハンドル部分321を持ち上げる。摺動部材32のハンドル部分321は、2つの楔状ブロック36の相対的な摺動によってさらに持ち上げられ、その結果、被支承要素2は各支持部材31に接した状態で各支持部材に抵抗を加えて、所定の「ジャッキ式および張力付与式」の連結状態となる。
【0039】
なお、上記の連結プロセスでは、摺動溝311の円弧部分3112およびエジェクタロッド34の長さに応じて、S103でのハンドル部分321を持ち上げるプロセスにおいて、各凸状縁部332の上縁がフランジ341の下縁に接してその下縁に抵抗を加える状態と、被支承要素2が支持部材31に接して支持部材に抵抗を加える状態とが順次または同時に実現され得る。なお、S102におけるエジェクタロッド34が摺動部材32を押動するプロセスでは、各ロックアーム33の内側の凸状縁部332がエジェクタロッド34に完全には取着されていない状態で、被支承要素2が各支持部材31に接した状態で各支持部材に抵抗を加えるようにしてもよい。このとき、S103に進んでもよく、ハンドル部分321を持ち上げるプロセスにおいて、各ロックアーム33の内側の凸状縁部332がエジェクタロッド34に完全に取着され、各凸状縁部332の上縁がフランジ341の下縁に接した状態でその下縁に抵抗を加え、これにより「ジャッキ式および張力付与式」の連結状態が実現される。また、S102におけるエジェクタロッド34により摺動部材32を押動するプロセスでは、同時に、被支承要素2を各支持部材31に接した状態で各支持部材に抵抗を加え、各ロックアーム33の内側の凸状縁部332の上縁をフランジ341の下縁に接した状態でその下縁に抵抗を加えてもよく、したがって、S103におけるハンドル部分321の持上げプロセスにおいて、凸状縁部332の上縁をフランジ341の下縁に接した状態でその下縁に抵抗を加えてもよい。ここではいくつかの可能な状況のみを列挙しており、他の状況についても、荷重支承要素1と被支承要素2とが上部ロック・プルアウト式連結装置3によって連結される場合に可能であり、連結方法のステップは、上部ロック・プルアウト式連結装置3の構造に従って当業者によって調整することができるが、ここでは繰り返しての説明はしない。
【0040】
(2)解放プロセス:図6(e)~図6(g)に示すように、上部ロック・プルアウト式連結装置3によって連結された荷重支承要素1および被支承要素2について、次の方法によって被支承要素2が解放される。
【0041】
S201において、2つの楔状ブロック36が貫通溝3211からゆっくりと引き抜かれ、荷重支承要素1と被支承要素2とが互いから離れるように移動し、各ロックアーム33を作動させて下方に移動させるときに、引きずり作用によって、摺動部材32は、案内管35に沿って下方に摺動する。
【0042】
S202において、各ロックアーム33のスライダ333が摺動溝311に沿って摺動溝311の円弧部分3112へと摺動するとき、スライダ333と円弧部分3112との協働の下に、各ロックアーム33の第1の連結アームが同時に外側に揺動し、各凸状縁部332がフランジ341から分離されて被支承要素2が解放される。
【0043】
図7および図8に示すように、一実施形態では、エジェクタロッド34は円筒形である。摺動部材32の周りに均等に分散された3つの支持部材31があり、また、第1のロック部材(すなわち、ロックアーム33)も3つあり、支持部材31と一対一に対応して配置されている。エジェクタロッド34をロックしている間、3つの第1のロック部材は共同でエジェクタロッド34をクランプしてエジェクタロッド34をロックする。3つを超える支持部材31および3つを超える第1のロック部材が存在してもよいことを理解されたい。円筒状のエジェクタロッド34を採用することにより、エジェクタロッド34の軸線を中心として被支承要素2と荷重支承要素1との間で生じる回転角をより良好に調整することができ、連結装置の適用範囲を拡大するのに好適である。
【0044】
図9図16に示すように、他の実施形態において、第2のロック部材はナット37であり、ナット37の軸線方向は、摺動部材32の摺動方向と一致しており、ナット37のサイズは、貫通ポート351のサイズよりも大きく、ナット37は、荷重支承要素1の第2の側に設置される。摺動部材32の第2の端部はハンドル部分321であり、そこには、ナット37と係合するように雄ねじ部が設けられている。本実施形態では、第2のロック部材としてナット37を用いることで、ナット37と摺動部材32との螺合によって摺動部材32がロックされる。ねじの特性によれば、小さなねじ締め力を加えることによって、荷重支承要素1と被支承要素2との間に大きな引張り力を加えることができることが分かる。引張り力が大きいほど、支持部材31の支持効果下での荷重支承要素1と被支承要素2との間の連結の堅固さがより大きくなる。さらに、ナット37は、構造が単純であり、組立てまたは分解に便利であり、安定性および信頼性があり、機械的に作動させるのに便利である。なお、ナット37が第2のロック部材として使用されるとき、摺動部材32のハンドル部分321は、追加の持上げ紐によって、または手動の持上げ方法で持ち上げられることができ、持上げおよび張力付与は、ナット37とハンドル部分321との間のねじ締め動作によっても実現することができることに留意されたい。
【0045】
摺動部材32を迅速にロック解除するために、図9図16に示すように、摺動部材32の摺動方向にナット37を通って延びる摺動路371が、ナット37の内周の両側にそれぞれ形成されており、ハンドル部分321の幅は摺動路371の幅よりも小さい。図16に示すように、ハンドル部分321の雄ねじ部は、ハンドル部分321の長さ方向の両端の外壁に配置される。2つの摺動路317がハンドル部分321の長さ方向の2つの端部に整列した状態へとナット37が螺合されると、ハンドル部分321は2つの摺動路371の間に摺動可能に嵌合し、摺動部材32がナット37に対して摺動することができ、それによって迅速なロック解除が実現される。
【0046】
図17および図18に示すように、上記の上部ロック・プルアウト式連結装置3に基づいて、本出願の第2の実施形態は、沈埋函を輸送または沈埋するために使用される沈埋函施工船を提供する。沈埋函施工船は、平行に配置された第1の浮体4および第2の浮体5と、第1の浮体4と第2の浮体5との間に連結されたデッキブリッジ6とを備える。上述の実施形態のいずれか1つに記載された複数の連結装置3は、沈埋函7の様々な部分をそれぞれ接続するためにデッキブリッジ6に分散配置され、その場合、デッキブリッジ6は荷重支承要素として機能し、沈埋函7は被支承要素として機能する。沈埋函施工船は、連結装置3を介して船舶と沈埋函との連結を実現し、船舶と沈埋函との間の「ジャッキ式および張力付与式」の堅固な連結を実現して建設の安全性を確保することができ、沈埋函7の迅速な解放を実現することができ、その結果、非常時の迅速な船舶と沈埋函との切離しを実現し、建設効率を向上させ、労力を削減するのに有利である。
【0047】
本実施形態では、荷重支承要素1と被支承要素2との連結方向、エジェクタロッド34の押動方向、摺動部材32の摺動方向、直線部分3111の延在方向、ハンドル部分321の長さ方向およびナット37の軸線方向は、実質的に平行であり、いずれも、図中、鉛直方向として具体化されている。
【0048】
最後に、上記説明における各実施形態は、累進的な態様で説明され得ること、各実施形態は、他の実施形態との相違点に焦点を絞っていること、および、様々な実施形態間の同じおよび類似の特徴を互いに参照することができること、に留意されたい。また、実施形態は、本出願の好ましい実施形態としてのみ説明されており、本出願の範囲を限定することを意図するものではない。本出願の設計上の精神から逸脱することなく、当業者によって本出願の技術的解決手段に対して行われる様々な修正および改善は、本出願の特許請求の範囲によって認められる保護範囲内に包含されるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6(a)】
図6(b)】
図6(c)】
図6(d)】
図6(e)】
図6(f)】
図6(g)】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2024-03-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項5】
前記エジェクタロッドは、円筒状であり、前記摺動部材に接して前記摺動部材を押動することができるように構成され、少なくとも3つの支持部材がある、請求項に記載の上部ロック・プルアウト式連結装置。
【国際調査報告】