(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】MRI環境におけるECG信号を補正するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20240822BHJP
A61B 5/352 20210101ALI20240822BHJP
A61B 5/355 20210101ALI20240822BHJP
【FI】
A61B5/055 390
A61B5/352
A61B5/355
A61B5/055 374
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515079
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 EP2022076326
(87)【国際公開番号】W WO2023046819
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】チャコン ホセ エイチ
(72)【発明者】
【氏名】レッデル ポール フランツ
(72)【発明者】
【氏名】アプレトン ブルース ジョフリー
【テーマコード(参考)】
4C096
4C127
【Fターム(参考)】
4C096AD27
4C096DA04
4C096DA18
4C096FC09
4C096FC20
4C127AA02
4C127BB05
4C127GG01
4C127GG02
(57)【要約】
電磁流体力学(MHD)効果によって影響を受ける心電図(ECG)を補正するためのシステム及び方法が提供される。システム及び方法はカメラによって捕捉された画像から患者情報を導出し、この情報を使用して、MHD効果によるT波の増幅を打ち消すために使用されるT波補正係数を計算する。患者がMRIスキャンを受ける間、ECGモニタは患者のECG信号を捕捉し、カメラは、一連の患者画像を捕捉する。一連の画像は、画像処理ユニット(IPU)に提供される。IPUは画像を処理して患者情報を導出し、T波補正係数を計算する。次いで、IPUは、捕捉されたECG信号のT波の振幅を減衰させて、補正されたECG信号を生成する。次いで、この補正されたECG信号は、より正確なゲート画像のためにMRIスキャナーによって使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴画像(MRI)ゲーティングシステムであって、
患者のECG信号を捕捉するように構成された心電図(ECG)モニタと、
一連の患者画像を取り込むように構成されたカメラと、
前記一連の患者画像に基づいてT波補正係数を決定し、
前記捕捉されたECG信号及び前記T波補正係数に基づいて補正ECG信号を生成する
ように構成される画像処理ユニットと、
前記補正ECG信号に基づいてゲートMRI画像セットを生成するように構成されるMRIスキャナーと
を有する、磁気共鳴画像ゲーティングシステム。
【請求項2】
前記カメラは、高フレームレートカメラ又はバイタルサインカメラである、請求項1に記載の磁気共鳴画像ゲーティングシステム。
【請求項3】
前記カメラは、少なくとも毎秒1000フレームのフレームレートを有する、請求項1に記載の磁気共鳴画像ゲーティングシステム。
【請求項4】
前記T波補正係数は、前記一連の患者画像から導出された患者心拍数にさらに基づく、請求項1に記載の磁気共鳴画像ゲーティングシステム。
【請求項5】
前記T波補正係数は、前記患者に入射する磁場の大きさにさらに基づく、請求項1に記載の磁気共鳴画像ゲーティングシステム。
【請求項6】
前記磁場は、前記MRIスキャナーによって生成される、請求項5に記載の磁気共鳴画像ゲーティングシステム。
【請求項7】
前記一連の患者画像は、前記患者の頸部領域を捕捉する、請求項1に記載の磁気共鳴画像ゲーティングシステム。
【請求項8】
前記T波補正係数は、頸動脈の直径にさらに基づく、請求項7に記載の磁気共鳴画像ゲーティングシステム。
【請求項9】
前記T波補正係数は、前記頸動脈内の血流速度にさらに基づく、請求項8に記載の磁気共鳴画像ゲーティングシステム。
【請求項10】
前記T波補正係数は、前記患者に入射する磁場と前記頸動脈内の血流方向との間の角度にさらに基づく、請求項8に記載の磁気共鳴画像ゲーティングシステム。
【請求項11】
前記MRIスキャナーは、前記補正ECG信号の一つ又はそれより多くのR波にさらに基づいて、前記ゲートMRI画像セットを生成する、請求項1に記載の磁気共鳴画像ゲーティングシステム。
【請求項12】
心電図(ECG)信号のための電磁流体力学的(MHD)効果補正装置であって、
一連の患者画像を捕捉するように構成されたカメラと、
前記一連の患者画像に基づいてT波補正係数を決定し、
前記ECG信号及び前記T波補正係数に基づいて補正ECG信号を生成する
ように構成される画像処理ユニットと、
を有する、電磁流体力学的効果補正装置。
【請求項13】
電磁流体力学的(MHD)効果のための心電図(ECG)信号を補正するための方法であって、
カメラを介して、一連の患者画像を捕捉するステップと、
プロセッサを介して、前記一連の患者画像に基づいてT波補正係数を決定するステップと、
前記プロセッサを介して、捕捉されたECG信号及び前記T波補正係数に基づいて、補正ECG信号を生成するステップと
を有する、方法。
【請求項14】
ECGモニタを介して、前記捕捉されたECG信号を捕捉するステップをさらに有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
磁気共鳴画像(MRI)スキャナーを介して、前記補正ECG信号に基づいてゲートMRI画像セットを生成するステップをさらに有する、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、磁気流体力学的効果によって影響を受ける心電図(ECG)信号を補正するためのシステム及び方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴撮像(MRI)スキャナは一連の患者画像を生成するために、磁場、磁場傾斜、及び電波を利用する。関連する画像に焦点を合わせるために、MRIスキャナーは、ゲート又はトリガ機構を使用することができる。1つのそのような機構は心電図(ECG)であり得る。ECG信号は、いくつかの波、セグメント、複合体、及び間隔を含む。特に、R波は、多くの場合、MRI画像収集、記憶、及び/又は伝送をゲートするために使用される。
【0003】
MRI環境ではMRIスキャナーによって生成される傾斜が血液が循環することにつれて、患者の血管系に電位を誘導することができ、これは磁気流体力学(MHD)効果として知られている。MHD効果は、MRIゲーティング機構がR波のための増幅された又は歪んだT波を混乱させ得る程度まで、ECG信号のT波を増幅又は歪めることができる。したがって、MHDは、MRIゲート画像においてゲート誤差をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、当技術分野では、MRI環境において捕捉されたECG信号に基づいてMRI画像収集をゲーティングするための改善されたシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は一般に、磁気流体力学(MHD)効果によって影響を受ける心電図(ECG)信号を補正するためのシステム及び方法を対象とする。MHD効果は、磁気共鳴画像(MRI)を受けている患者によって生じる。システム及び方法はカメラによって捕捉された画像から患者情報(心拍数など)を導出し、この患者情報を使用してT波補正係数を計算する。このT波補正係数は、MHD効果によるT波の増幅又は歪みを打ち消すために使用される。次いで、MRIスキャナーはより正確なゲート画像のために、補正されたECG信号を使用し得る。
【0006】
システムは、MRIスキャナー、ECGモニタ、MRI互換カメラ、及び画像処理ユニット(IPU)を含む。患者がMRIスキャンを受ける間、ECGモニタは、患者のECG信号を捕捉する。同時に、カメラは、一連の患者画像を捕捉する。カメラによって捕捉された一連の画像は、IPUに提供される。IPUは画像を処理して患者情報を導出し、T波補正係数を計算する。次いで、IPUは補正されたECG信号を生成するために、T波補正係数に基づいて、捕捉されたECG信号のT波の振幅を減衰させる(又はそうでなければ歪みを補償する)。次に、この補正されたECG信号は、調整されたT波もはやR波と混同されないので、より正確なゲート画像のためにMRIスキャナーによって使用される。
【0007】
一般に、一態様では、磁気共鳴画像ゲーティングシステムが提供される。磁気共鳴画像ゲーティングシステムは、ECGモニタを含む。ECGモニタは、患者のECG信号を捕捉するように構成される。
【0008】
磁気共鳴画像ゲーティングシステムは、カメラをさらに含む。カメラは、一連の患者画像を捕捉するように構成される。一例によれば、カメラは、高フレームレートカメラ又はバイタルサインカメラである。さらなる例によれば、カメラは、毎秒少なくとも1,000フレームのフレームレートを有する。
【0009】
一例によれば、一連の患者画像は、患者の頸部領域を捕捉する。
【0010】
磁気共鳴画像ゲーティングシステムは、画像処理ユニットをさらに含む。画像処理ユニット(IPU)は、T波補正係数を決定するように構成される。T波補正係数は、一連の患者画像に基づいて決定される。一例によれば、T波補正係数は、一連の患者画像から導出された患者心拍数にさらに基づく。
【0011】
一例によれば、T波補正係数は、頸動脈の直径にさらに基づく。さらに、T波補正係数は、頸動脈内の血流速度にさらに基づいてもよい。
【0012】
一例によれば、T波補正係数は、患者に入射する磁場にさらに基づく。この例では、磁場がMRIスキャナーによって生成され得る。
【0013】
一例によれば、T波補正係数は、患者に入射する磁場と頸動脈内の血流の方向との間の角度にさらに基づく。
【0014】
IPUは、補正されたECG信号を生成するようにさらに構成される。補正ECG信号は、取り込まれたECG信号とT波補正係数とに基づいて生成される
【0015】
磁気共鳴画像ゲーティングシステムは、MRIスキャナをさらに含む。MRIスキャナーは、ゲートMRI画像セットを生成するように構成される。ゲートMRI画像セットは、補正されたECG信号に基づいて生成される。一例によれば、MRIスキャナーは、補正されたECG信号の1つ又は複数のR波にさらに基づいて、ゲートMRI画像セットを生成する。
【0016】
一般に、別の態様では、ECG信号のためのMHD効果補正システムが提供される。MHD効果補正システムは、一連の患者画像を捕捉するように構成されたカメラを含む。MHD効果補正システムはさらに、(1)一連の患者画像に基づいてT波補正係数を決定し、(2)ECG信号及びT波補正係数に基づいて補正ECG信号を生成するように構成された画像処理ユニットを含む。
【0017】
概して、別の態様では、MHD効果のためのECG信号を補正するための方法が提供される。この方法は、カメラを介して、一連の患者画像を捕捉することを含む。本方法は、プロセッサを介して、一連の患者画像に基づいてT波補正係数を決定することをさらに含む。本方法は、プロセッサを介して、捕捉されたECG信号及びT波補正係数に基づいて、補正されたECG信号を生成することをさらに含む。一例によれば、本方法は、ECGモニタを介して、捕捉されたECG信号を捕捉することをさらに含む。一例によれば、方法は、磁気共鳴画像(MRI)スキャナを介して、補正されたECG信号に基づいてゲートMRI画像セットを生成することをさらに含む。
【0018】
様々な実装形態では、プロセッサ又はコントローラが1つ又は複数の記憶媒体(本明細書では総称して「メモリ」、たとえば、RAM、PROM、EPROM、EEPROM、フロッピーディスク、コンパクトディスク、光ディスク、磁気テープ、SSDなどの揮発性及び不揮発性コンピュータメモリと呼ばれる)に関連付けられ得る。いくつかの実装形態では、記憶媒体が1つ又は複数のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行されたときに、本明細書で説明する関数の少なくともいくつかを実行する1つ又は複数のプログラムで符号化され得る。様々な記憶媒体は本明細書で論じられるような様々な態様を実装するために、その上に記憶された1つ又は複数のプログラムがプロセッサ又はコントローラにロードされ得るように、プロセッサ又はコントローラ内に固定され得るか、又は移送可能であり得る。「プログラム」又は「コンピュータプログラム」という用語は1つ又は複数のプロセッサ又はコントローラをプログラムするために使用され得る任意のタイプのコンピュータコード(たとえば、ソフトウェア又はマイクロコード)を指すために、本明細書では一般的な意味で使用される。
【0019】
以下でより詳細に論じられる前述の概念及び追加の概念のすべての組合せ(そのような概念が相互に矛盾しないことを条件として)は、本明細書で開示される発明の主題の一部であると企図されることを諒解されたい。特に、本開示の末尾にあるクレームの対象は、本明細書に開示される発明対象の一部であることが意図される。同様に当然のことながら、本明細書に明示的に用いられ、参照として組み込まれている任意の開示にも現れるのであろう専門用語は、本明細書に開示された特定の概念と最も整合する意味を有するものとする。
【0020】
様々な実施形態のこれら及び他の態様は以下に記載される実施形態から明らかであり、それらを参照して説明される。
【0021】
図面において、文献のように、同様の参照符号は概して異なる図面を通じて同一の部分を指す。また、図面は必ずしも一定の縮尺で描かれておらず、その代わりに、様々な実施形態の原理を例示することに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一例による磁気共鳴画像(MRI)ゲーティングシステムのシステム図である。
【
図2】一例による、磁気共鳴画像ゲーティングシステムの態様の図である。
【
図3】一例による画像処理ユニット(IPU)の概略図である。
【
図4】一例による、心電図(ECG)信号を補正するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は一般に、磁気流体力学(MHD)効果によって影響を受ける心電図(ECG)を補正するためのシステム及び方法に関する。MHD効果は、磁気共鳴画像(MRI)を受けている患者によって生じる。システム及び方法はカメラによって捕捉された画像から患者情報(心拍数など)を導出し、この患者情報を使用してT波補正係数を計算する。このT波補正係数は、MHD効果によるT波の増幅を打ち消すために使用される。次いで、MRIスキャナーはより正確なゲート画像のために、補正されたECG信号を使用し得る。
【0024】
システムは、MRIスキャナー、ECGモニタ、MRI互換カメラ、及び画像処理ユニット(IPU)を含む。患者がMRIスキャンを受ける間、ECGモニタは、患者のECG信号を捕捉する。同時に、カメラは、一連の患者画像を捕捉する。カメラは、患者の頸部領域に向けられた高フレームレートカメラ又はバイタルサインカメラとすることができる。より具体的には、カメラが患者の頸動脈のうちの1つに向けることができる。
【0025】
カメラによって取り込まれた一連の画像は、画像処理ユニットに提供される。IPUは画像を処理して患者情報を導出し、T波補正係数を計算する。IPUは、他のソースから患者情報の態様を受信することもできる。患者情報を導出する前に、画像処理ユニットは、患者画像のうちの1つ又は複数を安定化及び/又はノイズ除去することができる。
【0026】
まず、IPUは、患者画像に基づいて患者の心拍数を決定する。心拍数は、患者の頸動脈に近接する皮膚を分析することによって決定される。IPUは、患者の心拍数を使用して、頸動脈を通って流れる血液の速度を決定することができる。IPUはまた、頸動脈の直径に関する情報を受信及び/又は導出する。
【0027】
IPUはまた、MRIスキャナーによって生成された磁場に関する情報を受信する。具体的には、この情報が磁場の大きさ、ならびに磁場と血流の方向との間の角度を含むことができる。磁場情報はセンサによって提供することができ、又はMRIスキャナーから直接IPUに提供することができる。
【0028】
IPUは、上述の情報を使用してT波補正係数を計算する。次いで、IPUは、T波補正係数に基づいて、捕捉されたECG信号のT波の振幅を減衰させて、補正されたECG信号を生成する。次に、この補正されたECG信号は、調整されたT波もはやR波と混同されないので、より正確なゲート画像のためにMRIスキャナーによって使用される。
【0029】
図1は、磁気共鳴画像ゲーティングシステム100のシステム図を示す。磁気共鳴画像ゲーティングシステム100は、補正されたECG信号118に基づいて、ゲートMRI画像セット126を生成する。補正ECG信号118は、患者画像116に基づいてIPU 106によって生成され、カメラ104によって捕捉され、ECGモニタ102によって捕捉されたECG信号110を生成する。
【0030】
患者200は、MRIスキャナー108のボアに挿入される。いくつかの例では患者200全体がボアに進入し、他の例では患者の関連部分(頭部、四肢など)のみがボアに進入する。MRIスキャナー108は、磁場、磁場傾斜、及び電波を使用して、患者200の一連のMRI画像を生成する。
【0031】
患者200がMRIスキャナー108に挿入され、MRIスキャンを受ける間、ECGモニタ102は、患者200に捕捉するECG信号110を捕捉する。ECG信号110は、患者200上に配置された1つ又は複数の電極に接続された1つ又は複数のリード線に基づき得る。ECGモニタ102は、用途に応じて、MRIスキャナー108の内部又は外部に配置することができる。
図1に示すように、ECGモニタ102からIPU 106に伝達されるECG信号110は、MHD効果により増幅されたT波を有する。
【0032】
また、患者200がMRIスキャンを受けている間、MRIスキャナー108の内部に配置されたカメラ104が、一連の患者画像116を捕捉する。カメラ104は、毎秒少なくとも1,000フレームのフレームレートを有するカメラなどの高フレームレートカメラであってもよい。あるいは、カメラ104がバイタルサインカメラであってもよい。
図2に示されるように、カメラ104は、患者の頸動脈204のうちの1つを含む、患者の頸部領域202の画像116を捕捉するように構成され得る。
【0033】
磁気共鳴画像ゲーティングシステム100は、IPU 106をさらに含む。IPU 106は、MRIスキャナー108、ECGモニタ102、及びカメラ104と有線又は無線で通信する。IPUは、カメラ104から患者画像116、ECGモニタ102からECG信号110、及びMRIスキャナー108から磁場122に関する情報を受信する。あるいは、磁場122に関する情報がMRIスキャナー108内に配置されたセンサを介して、捕捉され、IPU 106に伝達されてもよい。IPU 106とカメラ104との組み合わせは、MHD効果補正システム50と考えることができる。
【0034】
IPU 106の主な目的は、ECG信号110に対するT波補正係数114を計算することである。T波補正係数114は、MHD効果による増幅されたT波を補償するためにECG信号110に適用される。例示的なT波補正アルゴリズム180は、式1
U=|B|*|v|*d*sin(q) (1)
として示される。
【0035】
式1において、UはMHD効果によって誘導される電圧であり、|B|はMRIスキャン中に患者200に入射する磁場122の大きさ124であり、|v|は患者200の頸動脈204を通る血流速度208であり、dは頸動脈204の直径206であり、qは頸動脈204内の磁場122の線と血流方向210との間の角度128である。この例では、UはT波補正係数114である。さらに、この例ではdはB及びvに直交する。他の例では、UはT波補正係数114を決定するためにさらに処理され得る。次いで、T波補正係数114の値はECG信号110のT波から減算され、補正ECG信号118が生成されることができる。
【0036】
一連の患者画像116を受信すると、IPU 108は、ノイズ除去及び/又はフレーム安定化アルゴリズム182を使用して画像116を前処理することができる。画像116が前処理されると、IPU 106は、画像116をさらに処理して、患者200の心拍数120を決定する。患者心拍数120は、高いフレームレートカメラ104によって捕捉された画像116を介して、頸動脈204のうちの1つの周りの患者の皮膚の動きを分析することによって決定することができる。
【0037】
IPU 108はまた、患者の心拍数120を使用して血流速度208を決定することができる。血流速度208は、患者の血圧を考慮するなど、いくつかの方法で決定することができる。
【0038】
頸動脈204の直径206は、患者記録によって、又は磁気共鳴画像ゲーティングシステム100を操作する医療専門家によって、IPU 106に提供され得る。さらなる例では、頸動脈204の直径206が患者画像116から導出することができる。
【0039】
患者200に入射する磁場122の大きさ124、ならびに頸動脈における磁場122と血流方向208との間の角度128は、MRIスキャナー108によって直接、又はMRIスキャナー108内のセンサを介してIPU 106に提供され得る。
【0040】
IPU 106が式1の変数のすべてを受信するか、又は決定すると、IPU 106は、T波補正係数114を決定する。例示的なT波補正係数114は、1 mV以下であり得る。一例では、IPU 106が次いで、捕捉されたECG信号110からT波補正係数114を減算することによって、補正されたECG信号118を決定する。他の例では、T波補正係数114及び捕捉されたECG信号110を用いて追加の計算を実行して、補正されたECG信号118を生成する。
図1に示すように、補正ECG信号118は、典型的な振幅のT波を有する。
【0041】
補正されたECG信号118は、ゲート画像のためにMRIスキャナー108に提供される。ゲート撮像ではMRIスキャナー108がMRI画像を連続的に生成するが、ゲート事象又はトリガに対応するMRI画像のみを記憶及び/又は送信する。一例では、MRIスキャナー108が補正されたECG信号118のR波130に基づいて、1つ又は複数のゲート画像126を生成する。したがって、ゲートされた画像126の各々は、ECG信号110の1サイクルのR波130に対応する。T波補正係数114をECG信号110に適用することは、MRIスキャナー108が増幅されたT波をR波130と混同することを防止し、したがって、ゲート及び/又はトリガ誤差を防止する。
【0042】
一例では、MRIスキャナー108がゲートされた画像126を表示のためにユーザインターフェース130に提供する。ユーザインターフェース130は、MRIスキャナー108自体の一態様であってもよく、又はパーソナルコンピュータなどのスタンドアロン装置の構成要素であってもよい。MRIスキャナー108は、ユーザインターフェース130と有線又は無線通信することができる。さらなる例ではゲートされた画像がMRIスキャナーのメモリ、及び/又はパーソナルコンピュータ又はネットワークサーバなどのスタンドアロン装置のメモリに記憶され得る。
【0043】
図2は、MRIスキャナー108、カメラ104、及びECGモニタ102を含む、磁気共鳴画像ゲーティングシステムのいくつかの態様の図を示す。患者200は、カメラ104と共にMRIスキャナー108のボアに挿入される。患者がMRIスキャンを受ける間、カメラ104は、患者200の頸部領域202(患者の頸動脈204のうちの1つを含み得る)の一連の患者画像112を捕捉する。また、MRIスキャン中、ECGモニタ102は、ECG信号110を捕捉する。
図2に示すように、このECG信号110は、MHD効果によりMRIスキャン中に増幅されたT波を有する。
【0044】
図3は、IPU 106の概略図を示す。IPU 106は、(式1のよう)T波補正アルゴリズム180、ならびにノイズ除去及び/又はフレーム安定化アルゴリズムを実行するためのプロセッサ175を含む。IPU 106は、磁気共鳴画像ゲーティングシステム100の他の構成要素によって受信され、及び/又はプロセッサ175によって生成されたデータを記憶するためのメモリ150をさらに含む。IPU 106はさらに、カメラ104、ECGモニタ102、及びMRIスキャナー108と通信する(指向性又は双方向性に)ためのトランシーバ190を備える。
【0045】
概して、別の態様では、
図4を参照して、MHD効果のためのECG信号を補正するための方法500が提供される。方法500は、カメラを介して、一連の患者画像を捕捉すること510を含む。方法500は、プロセッサを介して、一連の患者画像に基づいてT波補正係数を決定すること520をさらに含む。方法500は、プロセッサを介して、捕捉されたECG信号及びT波補正係数に基づいて、補正されたECG信号を生成すること530をさらに含む。一例によれば、方法500は、ECGモニタを介して、捕捉されたECG信号を捕捉すること540をさらに含む。一例によれば、方法500は、磁気共鳴画像(MRI)スキャナを介して、補正されたECG信号に基づいてゲートMRI画像セットを生成すること550をさらに含む。
【0046】
全ての定義は本明細書中で定義されかつ用いられるように、辞書的定義、引用により援用された書類中の定義、及び/又は定義された用語の通常の意味を支配すると理解されるべきである。
【0047】
不定冠詞「a」及び「an」は明細書及び特許請求の範囲において、ここに用いられるように、明瞭に反対のことが示されるのでなければ、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0048】
フレーズ「及び/又は」、明細書及び特許請求の範囲において、ここに用いるように、そのように連結されたエレメント、すなわち、いくつかの場合には同時に存在し、及び他の場合には同時でなく存在するエレメントの「いずれか又は双方」を意味すると理解されるべきである。「及び/又は」でリストされた多数のエレメントは同じように、すなわち、そのように連結されたエレメントの「1以上」と解釈されるべきである。他のエレメントは所望により、具体的に特定されたそれらのエレメントに関連するか関連しないかを問わず「及び/又は」節によって具体的に同定されたエレメント以外で存在してもよい。
【0049】
明細書及び特許請求の範囲において、ここに用いるように「又は」は先に定義された「及び/又は」と同一の意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト中で項目を分離する場合、「又は」又は「及び/又は」は包括的ですなわち、エレメントの数又はリスト及び、所望により、さらなるリストされていない項目の、少なくとも1、また1を超えたものを含めると解釈されるべきである。「のうちの1つのみ」又は「のうちの正確に1つ」など、又は特許請求の範囲で使用される場合、「からなる」など、反対に明確に示される用語のみが、要素の数又はリストの正確に1つの要素を含むことを指す。一般に、用語「又は」は本明細書中で用いるように、「いずれか」、「の1つ」、「の1つのみ」又は「の正確に1つ」のような排他性の用語が先行する場合、排他的代替物(すなわち、「1つ、またもう一方、しかし双方ではない」)を示すように単に解釈されるべきである。
【0050】
明細書及び特許請求の範囲においてここに用いられるように、フレーズ「少なくとも1つ」は1以上のエレメントのリストへの参照において、エレメントのリスト中のいずれかの1以上のエレメントから選択される少なくとも1つを意味すると理解されるべきであるが、エレメントのリスト内に具体的にリストされた各及びあらゆるエレメントの少なくとも1つを必ずしも含まず、かつエレメントのリスト中のエレメントのいずれかの組合せを排除しない。この定義は、具体的に確認されたエレメントに関連するか又は関連しないかを問わず、フレーズ「少なくとも1つ」が言及するエレメントのリスト内で具体的に確認されるエレメント以外で、エレメントが所望により存在してもよいことを許容する。
【0051】
また、明瞭に反対のことが示されているのでなければ、1を超える工程又は行為を含む本明細書中において特許請求されたいずれの方法においても、該方法の工程又は行為の順番は、該方法の工程又は行為が引用される順番に必ずしも限定されないのも理解されるべきである。
【0052】
特許請求の範囲、ならびに前記明細書中において「含む」、「含めた」、「運ぶ」、「有する」、「含有する」、「関係する」、「維持する」、「から構成された」等のような全ての移行フレーズはオープンエンデッドですなわち、限定されるものではないが含めることを意味すると理解されるべきである。「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」という移行句のみが、それぞれ、閉じた又は半閉じた移行句である。
【0053】
上述の主題の例は、多数の方法のいずれかで実施することができる。たとえば、いくつかの態様は、ハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの組合せを使用して実装され得る。任意の態様が少なくとも部分的にソフトウェアで実装されるとき、ソフトウェアコードは、単一装置もしくはコンピュータに提供されるか、又は複数のデバイス/コンピュータに分散されるかにかかわらず、任意の適切なプロセッサ又はプロセッサの集合上で実行され得る。
【0054】
本開示は、統合の任意の可能な技術的詳細レベルにおいて、システム、方法、及び/又はコンピュータプログラム製品として実装され得る。コンピュータプログラム製品は、プロセッサに本開示の態様を実行させるためのコンピュータ可読プログラム命令をその上に有するコンピュータ可読記憶媒体(又は複数の媒体)を含み得る。
【0055】
コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行デバイスによって使用するための命令を保持及び記憶することができる有形デバイスであり得る。コンピュータ可読記憶媒体はたとえば、電子記憶デバイス、磁気記憶デバイス、光記憶装置、電磁記憶デバイス、半導体記憶デバイス、又は前述の任意の適切な組合せであり得るが、これらに限定されない。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例の非網羅的なリストは、ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読取り専用メモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ポータブルコンパクトディスク読取り専用メモリ(CDROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、メモリスティック、フロッピーディスク、パンチカードなどの機械的に符号化された装置、又は命令が記録された溝内の隆起構造、及び前述の任意の適切な組合せを含む。コンピュータ可読記憶媒体は本明細書で使用される場合、電波又は他の自由に伝播する電磁波、導波管又は他の伝送媒体(たとえば、光ファイバケーブルを通過する光パルス)を通って伝播する電磁波、又は有線を通して送信される電気信号など、それ自体が一時的な信号であると解釈されるべきではない。
【0056】
本明細書で説明するコンピュータ可読プログラム命令はそれぞれのコンピューティング/処理デバイスに、コンピュータ可読記憶媒体から、又はネットワーク、たとえば、インターネット、ローカルエリアネットワーク、広域ネットワーク及び/又はワイヤレスネットワークを介して外部コンピュータ又は外部記憶装置にダウンロードすることができる。ネットワークは、銅伝送ケーブル、光伝送ファイバ、無線伝送、ルータ、ファイアウォール、スイッチ、ゲートウェイコンピュータ及び/又はエッジサーバを含むことができる。各コンピューティング/処理装置内のネットワークアダプタカード又はネットワークインターフェースはネットワークからコンピュータ可読プログラム命令を受信し、それぞれのコンピューティング/処理装置内のコンピュータ可読記憶媒体に記憶するために、コンピュータ可読プログラム命令を転送する。
【0057】
本開示の動作を実行するためのコンピュータ可読プログラム命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、機械依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、集積回路のための構成データ、又はSmalltalk、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語、及び「C」プログラミング言語又は同様のプログラミング言語などの手続き型プログラミング言語を含む、1つ又は複数のプログラミング言語の任意の組合せで書かれたソースコード又はオブジェクトコードのいずれかであり得る。コンピュータ可読プログラム命令は、完全にユーザのコンピュータ上で、部分的にユーザのコンピュータ上で、スタンドアロンソフトウェアパッケージとして、部分的にユーザのコンピュータ上で、部分的にリモートコンピュータ上で、又は完全にリモートコンピュータもしくはサーバ上で実行することができる。後者のシナリオでは、リモートコンピュータがローカルエリアネットワーク(LAN)又はワイドエリアネットワーク(WAN)を含む任意のタイプのネットワークを介してユーザのコンピュータに接続されてもよく、又は接続は外部コンピュータに(たとえば、インターネットサービスプロバイダを使用してインターネットを介して)行われてもよい。いくつかの例では、たとえば、プログラマブル論理回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又はプログラマブル論理アレイ(PLA)を含む電子回路は本開示の態様を実行するために、電子回路をパーソナライズするためにコンピュータ可読プログラム命令の状態情報を利用することによって、コンピュータ可読プログラム命令を実行し得る。
【0058】
本開示の態様は、本開示の例による方法、装置(システム)、及びコンピュータプログラム製品のフローチャート図及び/又はブロック図を参照して本明細書で説明される。フローチャート図及び/又はブロック図の各ブロック、ならびにフローチャート図及び/又はブロック図のブロックの組合せは、コンピュータ可読プログラム命令によって実装され得ることを理解されたい。
【0059】
コンピュータ可読プログラム命令はコンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサを介して実行される命令がフローチャート及び/又はブロックダイアグラムブロック又はブロックで指定された機能/動作を実施するための手段を作成するように、マシンを生成するために、専用コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサに提供され得る。これらのコンピュータ可読プログラム命令はまた、コンピュータ、プログラマブルデータ処理装置、及び/又は他のデバイスに特定の方法で機能するように指示することができるコンピュータ可読記憶媒体に記憶され得、その結果、その中に記憶された命令を有するコンピュータ可読記憶媒体は、フローチャート及び/又はブロック図又はブロックにおいて指定された機能/動作の態様を実施する命令を含む製造品を含む。
【0060】
コンピュータ可読プログラム命令はまた、コンピュータ、他のプログラマブルデータ処理装置、又は他のデバイス上で実行される命令がフローチャート及び/又はブロック図ブロック又はブロックにおいて指定される機能/動作を実施するように、コンピュータ、他のプログラマブルデータ処理装置、又は他のデバイス上で実行される一連の動作ステップをコンピュータ、他のプログラマブル装置、又は他のデバイス上で実行されるコンピュータ実施プロセスを生成させるために、コンピュータ、他のプログラマブルデータ処理装置、又は他のデバイス上にロードされ得る。
【0061】
図中のフローチャート及びブロック図は、本開示の様々な例による、システム、方法、及びコンピュータプログラム製品の可能な実施形態のアーキテクチャ、機能、及び動作を示す。この点に関して、フローチャート又はブロック図中の各ブロックは、指定された論理機能を実装するための1つ又は複数の実行可能命令を備える、モジュール、セグメント、又は命令の一部を表し得る。いくつかの代替的な実装形態では、ブロック中に示された関数が図中に示された順序から外れて発生し得る。例えば、連続して示される2つのブロックは実際には実質的に同時に実行されてもよく、又はブロックが関与する機能に応じて、逆の順序で実行されてもよい。ブロック図及び/又はフローチャート図の各ブロック、ならびにブロック図及び/又はフローチャート図のブロックの組合せは、指定された機能もしくは動作を実行するか、又は専用ハードウェアとコンピュータ命令との組合せを実行する専用ハードウェアベースのシステムによって実装され得ることにも留意されたい。
【0062】
他の実装形態は、以下の特許請求の範囲及び出願人が権利を与えられ得る他の特許請求の範囲の範囲内である。
【0063】
様々な例が本明細書に記載され、例示されてきたが、当業者は機能を実行するための、及び/又は本明細書に記載された利点のうちの1つ又は複数を得るための様々な他の手段及び/又は構造を容易に想定し、そのような変形及び/又は修正の各々は本明細書に記載された例の範囲内であるとみなされる。より一般的には、当業者が本明細書に記載される全てのパラメータ、寸法、材料、及び構成が例示的であることを意味し、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成が教示が使用される特定のアプリケーション又はアプリケーションに依存することを容易に理解するのであろう。当業者は、日常的な実験のみを用いて、本明細書に記載される特定の実施例に対する多くの等価物を認識するか、又は確認することができる。したがって、前述の実施例は、例としてのみ提示され、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内で、具体的に説明及び特許請求される以外の方法で実施され得ることを理解されたい。本開示の実施例は、本明細書に記載の各個々の特徴、システム、項、材料、キット、及び/又は方法を対象とする。さらに、2つ以上のそのような特徴、システム、項、材料、キット、及び/又は方法の任意の組合せは、そのような特徴、システム、項、材料、キット、及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、本開示の範囲内に含まれる。
【国際調査報告】