(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】心臓線維芽細胞由来細胞外マトリクス
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20240822BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240822BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20240822BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240822BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20240822BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20240822BHJP
A61K 35/34 20150101ALI20240822BHJP
【FI】
C12N5/071
A61P9/00
A61P9/04
A61K35/12
A61K35/545
A61K35/28
A61K35/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515089
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-04-16
(86)【国際出願番号】 US2022075975
(87)【国際公開番号】W WO2023039371
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591013274
【氏名又は名称】ウィスコンシン アラムニ リサーチ ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】シュムック エリック
(72)【発明者】
【氏名】ラヴァル アミッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ロイ スシュミタ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ティアンファ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB10
4B065AC20
4B065BA30
4B065BC11
4B065BD50
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB44
4C087BB47
4C087BB63
4C087BB64
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA36
(57)【要約】
本開示は概して、心臓細胞外マトリクスを調製するための方法、細胞、および組成物に関する。具体的には、SUSD2高線維芽細胞およびSUSD2高筋線維芽細胞を使用する心臓細胞外マトリクスを調製するための方法が、本明細書に提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓細胞外マトリクスを調製するための方法であって、
(a)心臓線維芽細胞の集団からSUSD2高線維芽細胞を選択することと、
(b)前記SUSD2高線維芽細胞を、1cm
2当たり100,000~500,000細胞の細胞密度を有する培養物にプレーティングすることであって、前記SUSD2高線維芽細胞が、前記SUSD2高線維芽細胞がその上にプレーティングされる表面へと取り付けられる心臓細胞外マトリクスを分泌する、プレーティングすることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記心臓線維芽細胞の集団からSUSD2高線維芽細胞を前記選択することが、フローサイトメトリーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記SUSD2高線維芽細胞が、平均蛍光強度(MFI)>500を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記分泌された心臓細胞外マトリクスをエチレンジアミン四酢酸(EDTA)と接触させ、それによって前記心臓細胞外マトリクスが、表面から取り外されるようになり、浮遊性のバイオスキャフォールドを形成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記心臓細胞外マトリクスを脱細胞化剤と接触させ、それによって前記心臓細胞外マトリクスが脱細胞化される工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記脱細胞化剤が、過酢酸、水酸化アンモニウムとオクチルフェノールエチレンオキシド(Triton(商標)X-100)とを含む混合物、またはトリ-N-ブチル-ホスフェートとオクチルフェノールエチレンオキシド(Triton(商標)X-100)とを含む混合物を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法に従って産生される心臓細胞外マトリクス。
【請求項8】
前記心臓細胞外マトリクスに、心臓の疾患または傷害に対して治療的である1つ以上の細胞を播種する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
心臓の疾患または傷害に対して治療的である前記1つ以上の細胞が、骨格筋芽細胞、胚性幹細胞(ES)、人工多能性幹細胞(iPS)、多能性成体生殖系列幹細胞(maGCS)、骨髄間葉系幹細胞(BMSC)、極小胚様幹細胞(VSEL細胞)、内皮前駆細胞(EPC)、心臓形成細胞(CPC)、カーディオスフェア由来細胞(CDC)、多能性Is/1+心臓血管前駆細胞(MICP)、心外膜由来前駆細胞(EPDC)、脂肪由来幹細胞、ヒトmesochymal幹細胞、ヒト間葉系幹細胞(iPS細胞またはES細胞に由来する)、骨格筋芽細胞、エクソソーム、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記心臓細胞外マトリクスに、心臓の疾患または傷害に対して治療的である1つ以上の生物活性タンパク質を播種する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上の生物活性タンパク質がサイトカインまたは成長因子である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
心臓細胞外マトリクスを調製するための方法であって、
(a)心臓筋線維芽細胞の集団からSUSD2高筋線維芽細胞を選択することと、
(b)前記SUSD2高筋線維芽細胞を、1cm
2当たり100,000~500,000細胞の細胞密度を有する培養物にプレーティングすることであって、前記SUSD2高筋線維芽細胞が、前記SUSD2高筋線維芽細胞がその上にプレーティングされる表面へと取り付けられる心臓細胞外マトリクスを分泌する、プレーティングすることと、を含む、方法。
【請求項13】
前記心臓筋線維芽細胞の集団からSUSD2高筋線維芽細胞を前記選択することが、フローサイトメトリーを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記SUSD2高筋線維芽細胞が、平均蛍光強度(MFI)>500を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記分泌された心臓細胞外マトリクスをエチレンジアミン四酢酸(EDTA)と接触させ、それによって前記心臓細胞外マトリクスが、表面から取り外されるようになり、浮遊性のバイオスキャフォールドを形成する工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記心臓細胞外マトリクスを脱細胞化剤と接触させ、それによって前記心臓細胞外マトリクスが脱細胞化される工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記脱細胞化剤が、過酢酸、水酸化アンモニウムとオクチルフェノールエチレンオキシド(Triton(商標)X-100)とを含む混合物、またはトリ-N-ブチル-ホスフェートとオクチルフェノールエチレンオキシド(Triton(商標)X-100)とを含む混合物を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項12に記載の方法に従って産生される心臓細胞外マトリクス。
【請求項19】
前記心臓細胞外マトリクスに、心臓の疾患または傷害に対して治療的である1つ以上の細胞を播種する工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
心臓の疾患または傷害に対して治療的である前記それ以上の細胞が、骨格筋芽細胞、胚性幹細胞(ES)、人工多能性幹細胞(iPS)、多能性成体生殖系列幹細胞(maGCS)、骨髄間葉系幹細胞(BMSC)、極小胚様幹細胞(VSEL細胞)、内皮前駆細胞(EPC)、心臓形成細胞(CPC)、カーディオスフェア由来細胞(CDC)、多能性Is/1+心臓血管前駆細胞(MICP)、心外膜由来前駆細胞(EPDC)、脂肪由来幹細胞、ヒトmesochymal幹細胞、ヒト間葉系幹細胞(iPS細胞またはES細胞に由来する)、骨格筋芽細胞、エクソソーム、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記心臓細胞外マトリクスに、心臓の疾患または傷害に対して治療的である1つ以上の生物活性タンパク質を播種する工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記1つ以上の生物活性タンパク質がサイトカインまたは成長因子である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
SUSD2高線維芽細胞の集団を生成する方法であって、
SUSD2高線維芽細胞の集団を得るために心臓線維芽細胞の集団からSUSD2高線維芽細胞を選択することを含む、方法。
【請求項24】
前記心臓線維芽細胞の集団からSUSD2高線維芽細胞を前記選択することが、フローサイトメトリーを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記SUSD2高線維芽細胞が、平均蛍光強度(MFI)>500を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
SUSD2高筋線維芽細胞の集団を生成する方法であって、
SUSD2高筋線維芽細胞の集団を得るために心臓筋線維芽細胞の集団からSUSD2高筋線維芽細胞を選択することを含む、方法。
【請求項27】
前記心臓筋線維芽細胞の集団からSUSD2高筋線維芽細胞を前記選択することが、フローサイトメトリーを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記SUSD2高筋線維芽細胞が、平均蛍光強度(MFI)>500を有する、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年9月7日に出願された米国仮特許出願第63/241,240号に対する優先権を主張するものであり、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(連邦政府が支援する研究に関する声明)
この発明は、国立衛生研究所によって与えられたCA014520に基づく政府支援によって行われた。政府は本発明にある特定の権利を有する。
【0003】
本開示は概して、心臓細胞外マトリクスを調製するための方法、細胞、および組成物に関する。具体的には、SUSD2高線維芽細胞およびSUSD2高筋線維芽細胞を使用する心臓細胞外マトリクスを調製するための方法が、本明細書に提供される。
【背景技術】
【0004】
心臓線維芽細胞(CF)および心臓筋線維芽細胞(CMF)は、プラスチックに接着し、マトリクス細胞タンパク質を分泌し、かつ器官の発生、創傷治癒、線維症、免疫調節、および細胞外マトリクス(ECM)アセンブリに関与する間葉由来の細胞である。マトリクス産生の目的のためのCFおよびCMFの単離および培養拡張は、組織工学および再生医療において潜在的な有用性を有する。例えば、培養したCFから組み立てられたフィブロネクチンが豊富なマトリクススキャフォールドを使用して、間葉系間質細胞を損傷した心筋へと送達することができる。加えて、培養したヒトCF/CMFに由来するマトリクスは、単球を、興味深い抗炎症特性および血管新生促進特性を発現するマクロファージへと変換する。これらのバイオエンジニアリングされたマトリクスを含む拡張された調査は、製造をスケールアップする前に、品質管理の目的のために培養したCFおよびCMFの慎重な特徴付けを必要とする。数多くの研究は、単純な形態計測学的幾何学的形状、プラスチック接着、およびECMを組み立てる能力によって、ヒトCFおよびCMFを定義する。しかしながら、これらの特徴は非特異的である。間葉系間質細胞(MSC)および周皮細胞などの他の細胞タイプは、形態計測学的に類似しており、またプラスチックに容易に接着する。その上、ある特定の実質細胞および免疫細胞は、ある特定の条件下でECMを産生する。いくつかのマーカーが、ヒトCFおよびCMF上で特定されている。Sushi含有ドメイン2(SUSD2)は、CFのための新しい細胞マーカーとして最近特定されている。
【発明の概要】
【0005】
本明細書では、(a)心臓線維芽細胞の集団からSUSD2高線維芽細胞を選択することと、(b)SUSD2高線維芽細胞を、1cm2当たり100,000~500,000細胞の細胞密度を有する培養物にプレーティングすることと、を含み、SUSD2高線維芽細胞が、SUSD2高線維芽細胞がプレーティングされる表面へと取り付けられる心臓細胞外マトリクスを分泌する、心臓細胞外マトリクスを調製するための方法が提供される。
【0006】
また、本明細書では、(a)培養物中の心臓線維芽細胞を拡張して、心臓線維芽細胞の集団を得ることと、(b)心臓線維芽細胞の集団からSUSD2高線維芽細胞を選択することと、(c)SUSD2高線維芽細胞を、1cm2当たり100,000~500,000細胞の細胞密度を有する培養物にプレーティングすることと、を含み、SUSD2高線維芽細胞が、SUSD2高線維芽細胞がプレーティングされる表面へと取り付けられる心臓細胞外マトリクスを分泌する、心臓細胞外マトリクスを調製するための方法も提供される。
【0007】
また、本明細書では、(a)心臓筋線維芽細胞の集団からSUSD2高筋線維芽細胞を選択することと、(b)SUSD2高筋線維芽細胞を、1cm2当たり100,000~500,000細胞の細胞密度を有する培養物にプレーティングすることと、を含み、SUSD2高筋線維芽細胞が、SUSD2高筋線維芽細胞がプレーティングされる表面へと取り付けられる心臓細胞外マトリクスを分泌する、心臓細胞外マトリクスを調製するための方法も提供する。
【0008】
また、本明細書では、(a)培養物中の心臓筋線維芽細胞を拡張して、心臓筋線維芽細胞の集団を得ることと、(b)心臓筋線維芽細胞の集団からSUSD2高筋線維芽細胞を選択することと、(c)SUSD2高筋線維芽細胞を、1cm2当たり100,000~500,000細胞の細胞密度を有する培養物にプレーティングすることと、を含み、SUSD2高筋線維芽細胞が、SUSD2高筋線維芽細胞がプレーティングされる表面へと取り付けられる心臓細胞外マトリクスを分泌する、心臓細胞外マトリクスを調製するための方法も提供する。
【0009】
また、SUSD2高線維芽細胞の集団を生成する方法も本明細書に提供され、方法は、心臓線維芽細胞の集団からSUSD2高線維芽細胞を選択して、SUSD2高線維芽細胞の集団を得ることを含む。
【0010】
また、SUSD2高線維芽細胞の集団を生成する方法も本明細書に提供され、方法は、(a)培養物中の心臓線維芽細胞を拡張して、心臓線維芽細胞の集団を得ることと、(b)心臓線維芽細胞の集団からSUSD2高線維芽細胞を選択して、SUSD2高線維芽細胞の集団を得ることと、を含む。
【0011】
また、SUSD2高筋線維芽細胞の集団を生成する方法も本明細書に提供され、方法は、心臓筋線維芽細胞の集団からSUSD2高筋線維芽細胞を選択して、SUSD2高筋線維芽細胞の集団を得ることを含む。
【0012】
また、SUSD2高筋線維芽細胞の集団を生成する方法も本明細書に提供され、方法は、(a)培養物中の心臓筋線維芽細胞を拡張して、心臓筋線維芽細胞の集団を得ることと、(b)心臓筋線維芽細胞の集団からSUSD2高筋線維芽細胞を選択して、SUSD2高筋線維芽細胞の集団を得ることと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、SUSD2を心臓線維芽細胞由来細胞外マトリクス産生のマーカーとして使用することができることを示す。ヒト心臓線維芽細胞株をSUSD2について染色した。98.8%の細胞はSUSD2を発現し、細胞をSUSD2高(平均蛍光強度(MFI)>500)およびSUSD2低(MFI<500)へとソートし、そして高密度でプレーティングし、そして10日間培養した。SUSD2高心臓線維芽細胞は、損傷がない心臓線維芽細胞由来細胞外マトリクスを産生し、一方でSUSD2低細胞は、損傷がないマトリクスを産生しなかった。
【
図2】
図2は、SUSD2およびビメンチンを共発現する心臓線維芽細胞の免疫組織化学画像を示す。代表的な高SUSD2発現細胞および低SUSD2発現細胞を矢印で表示する。
【
図3】
図3は、SUSD2高心臓線維芽細胞およびSUSD2低心臓線維芽細胞の安定性を示す。心臓線維芽細胞を、それらのSUSD2の発現に基づいてフローサイトメトリーを用いてソートした。SUSD低集団およびSUSD2高集団をプレーティングし、そして標準的な条件下で7日間培養した。次いで、細胞を、フローサイトメトリーによってSUSD2発現について分析した。SUSD2低集団およびSUSD2高集団の両方は、高いレベルの純度を維持した。7日後、SUSD2低にソートされた細胞の83.4%は、MFIに基づいて低いSUSD2発現表現型を維持し、一方でSUSD2高にソートされた細胞の93.8%は、MFIに基づいて高いSUSD2発現表現型を維持した。
【
図4】
図4A~
図4Hは、SUSD2高/低細胞集団についてのサイトカインセクレトーム分析間の差異を示す。試験したサイトカインは、(
図4A)IL-6;(
図4B)Ang-1;(
図4C)Ang-2;(
図4D)PGIF;(
図4E)bFGF;(
図4F)IL-8;(
図4G)PECAM、および(
図4H)VEGFであった。心臓線維芽細胞/筋線維芽細胞を、SUSD2 MFI発現(低<500MFI、高>500MFI)に基づいてソートし、等しい数のSUSD2高/低細胞をプレーティングし、そして標準的な培養条件下で3日間培養した。培地をサンプリングし、そして複数の検体(サイトカイン)について分析した。いくつかのサイトカインで有意な差異が検出された。
【
図5】
図5は、SUSD2低(SUSD2低)細胞株と比較した、高SUSD2発現細胞株(SUSD2高)から産生されたCMF-ECMの組成物を図示する。SUSD2低細胞株は、損傷がないスキャフォールドを形成せず、これは、SUSD2高(92%)細胞株と比較して、SUSD2低(56%)におけるフィブロネクチン発現の低減と相関する。
【
図6】
図6は、注入可能なCF/CMF-ECMは、製粉プロトコルを調整することによって定義された仕様へと製粉することができることを図示する。3つの異なる粉砕サイズが作製された(粗い:138+/-4.0mm、中程度:90+/-1.5mm、および細かい、53+/-1.7mm)。
【
図7】
図7は、骨髄由来成長因子(MYDGF)が本明細書に開示されるECMへと直接的に結合することを示す顕微鏡写真を図示する。矢印は、ECMのフィブロネクチン内に位置するMYDGFを特定する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は概して、心臓細胞外マトリクスを調製するための方法、細胞、および組成物に関する。具体的には、SUSD2高線維芽細胞およびSUSD2高筋線維芽細胞を使用する心臓細胞外マトリクスを調製するための方法が、本明細書に提供される。
【0015】
特許および特許出願を含むがしかしこれに限定されない、本明細書に引用されるすべての出版物は、本出願にその全体が記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0016】
特定の実施形態では、(a)心臓線維芽細胞の集団からSUSD2高線維芽細胞を選択することと、(b)SUSD2高線維芽細胞を、1cm2当たり100,000~500,000細胞の細胞密度を有する培養物にプレーティングすることと、を含み、SUSD2高線維芽細胞が、心臓細胞外を分泌する、心臓細胞外マトリクスを調製するための方法が本明細書に提供される。
【0017】
特定の実施形態では、(a)培養物中の心臓線維芽細胞を拡張して、心臓線維芽細胞の集団を得ることと、(b)心臓線維芽細胞の集団からSUSD2高線維芽細胞を選択することと、(c)SUSD2高線維芽細胞を、1cm2当たり100,000~500,000細胞の細胞密度を有する培養物にプレーティングすることと、を含み、SUSD2高線維芽細胞が、SUSD2高線維芽細胞がプレーティングされる表面へと取り付けられる心臓細胞外マトリクスを分泌する、心臓細胞外マトリクスを調製するための方法が本明細書に提供される。
【0018】
特定の実施形態では、(a)心臓筋線維芽細胞の集団からSUSD2高筋線維芽細胞を選択することと、(b)SUSD2高筋線維芽細胞を、1cm2当たり100,000~500,000細胞の細胞密度を有する培養物にプレーティングすることと、を含み、SUSD2高筋線維芽細胞が、SUSD2高筋線維芽細胞がプレーティングされる表面へと取り付けられる心臓細胞外マトリクスを分泌する、心臓細胞外マトリクスを調製するための方法が本明細書に提供される。
【0019】
特定の実施形態では、(a)培養物中の心臓筋線維芽細胞を拡張して、心臓筋線維芽細胞の集団を得ることと、(b)心臓筋線維芽細胞の集団からSUSD2高筋線維芽細胞を選択することと、(c)SUSD2高筋線維芽細胞を、1cm2当たり100,000~500,000細胞の細胞密度を有する培養物にプレーティングすることと、を含み、SUSD2高筋線維芽細胞が、SUSD2高筋線維芽細胞がプレーティングされる表面へと取り付けられる心臓細胞外マトリクスを分泌する、心臓細胞外マトリクスを調製するための方法が本明細書に提供される。
【0020】
特定の実施形態では、SUSD2高線維芽細胞の集団を生成する方法が本明細書に提供され、方法は、心臓線維芽細胞の集団からSUSD2高線維芽細胞を選択して、SUSD2高線維芽細胞の集団を得ることを含む。
【0021】
特定の実施形態では、SUSD2高線維芽細胞の集団を生成する方法が本明細書に提供され、方法は、(a)培養物中の心臓線維芽細胞を拡張して、心臓線維芽細胞の集団を得ることと、(b)心臓線維芽細胞の集団からSUSD2高線維芽細胞を選択して、SUSD2高線維芽細胞の集団を得ることと、を含む。
【0022】
特定の実施形態では、SUSD2高筋線維芽細胞の集団を生成する方法が本明細書に提供され、方法は、心臓筋線維芽細胞の集団からSUSD2高筋線維芽細胞を選択して、SUSD2高筋線維芽細胞の集団を得ることを含む。
【0023】
特定の実施形態では、SUSD2高筋線維芽細胞の集団を生成する方法が本明細書に提供され、方法は、(a)培養物中の心臓筋線維芽細胞を拡張して、心臓筋線維芽細胞の集団を得ることと、(b)心臓筋線維芽細胞の集団からSUSD2高筋線維芽細胞を選択して、SUSD2高筋線維芽細胞の集団を得ることと、を含む。
【0024】
Sushi含有ドメイン2(SUSD2)は、膜貫通ドメインおよび接着分子に固有の機能性ドメインを有する822アミノ酸I型膜タンパク質である。このマーカーは、子宮内膜間葉系幹細胞、乳がん細胞および肺がん細胞、ならびにヒト胚性幹細胞上で可変的に発現される。
【0025】
本明細書で使用される場合、「高」は、細胞がSUSD2の高いレベルの発現によって特徴付けられることを意味する。特定の実施形態では、SUSD2陽性線維芽細胞または筋線維芽細胞は、細胞が500より大きい平均蛍光強度(MFI)を有する場合、「高」として特徴付けられる。特定の実施形態では、SUSD2陽性線維芽細胞または筋線維芽細胞は、細胞が500より小さい平均蛍光強度(MFI)を有する場合、「低」として特徴付けられる。
【0026】
特定の実施形態では、心臓線維芽細胞または心臓筋線維芽細胞は、拡張のために適切な条件下で細胞を培養して、心臓線維芽細胞または心臓筋線維芽細胞の集団を産生することによって拡張される。一実施形態では、細胞は、高グルコースMCDB131+10%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシン中で、37℃にて、5%CO2、湿度100%雰囲気中で、10~14日間培養される。特定の実施形態では、心臓線維芽細胞または心臓筋線維芽細胞の集団からSUSD2高線維芽細胞または筋線維芽細胞を選択して、SUSD2高筋線維芽細胞の集団を得ることは、フローサイトメトリーを含む。特定の実施形態では、心臓線維芽細胞または心臓筋線維芽細胞の集団からSUSD2高線維芽細胞または筋線維芽細胞を選択して、SUSD2高筋線維芽細胞の集団を得ることは、SUSD2遺伝子の過剰発現に基づく。
【0027】
特定の実施形態では、心臓線維芽細胞または心臓筋線維芽細胞は、心臓組織から単離される。心臓線維芽細胞および筋線維芽細胞は、当技術分野で知られている方法を使用して単離されてもよい。特定の実施形態では、心臓線維芽細胞または心臓筋線維芽細胞は、人工多能性幹細胞から分化される。「人工多能性幹細胞」または「iPS細胞」は、その中にある特定の力価決定因子の発現を誘導することによって、分化した体細胞などの非多能性細胞からインビトロで産生される多能性細胞または多能性細胞の集団を意味し、これは、力価決定因子の特定の組に関して変化する場合があるそれらの分化した本来の体細胞に関して変化する場合があり、また、それらを単離するために使用される培養条件に関して変化する場合があるが、しかしそれにもかかわらず、それらのそれぞれの分化した本来の体細胞と実質的に遺伝的に同一であり、またESCなどの、より高い力価の細胞と類似した特性を表示する。
【0028】
特定の実施形態では、心臓細胞外マトリクスは、拡張心臓線維芽細胞がその上にプレーティングされる表面に取り付けられる20~500μmの厚さを有する。他の実施形態では、心臓ECMは、30~200μmまたは50~150μmの厚さを有してもよい。
【0029】
一部の実施形態では、心臓ECMは、構造タンパク質フィブロネクチン、コラーゲンI型、コラーゲンIII型、およびエラスチンを含み、また他の構造タンパク質もまた含んでもよい。一部の実施形態では、心臓ECMは、構造タンパク質コラーゲンV型を含む。
【0030】
構造タンパク質に加えて、心臓ECMは、成長因子およびサイトカインなどのマトリクス細胞タンパク質だけでなく、他の物質も含んでもよい。心臓ECM内に見出される場合がある他のタンパク質の非限定的な例としては、潜在型形質転換成長因子ベータ1(LTGFB-1)、潜在型形質転換成長因子ベータ2(LTGFB-2)、結合組織成長因子(CTGF)、酸性でシステインに富む分泌タンパク質(SPARC)、バーシカンコアタンパク質(VCAN)、ガレクチン1、ガレクチン3、マトリックスGlaタンパク質(MGP)、硫酸化糖タンパク質1、タンパク質-リジン6-オキシダーゼ、およびビグリカンが挙げられる。一部の実施形態では、ECMは、任意選択で、形質転換成長因子ベータ1(TGFB-1)、形質転換成長因子ベータ3(TGFB-3)、上皮成長因子様タンパク質8、成長/分化因子6、グラニュリン、ガレクチン3結合タンパク質、ナイドジェン1、ナイドジェン2、デコリン、プロラルギン、血管内皮成長因子D(VEGF-D)、フォン・ヴィレブランド因子A1、フォン・ヴィレブランド因子A5 A、マトリクスメタルプロテアーゼ14、マトリクスメタルプロテアーゼ23、血小板因子4、プロトロンビン、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー11、およびグリア由来ネキシンのうちの1つ以上を含んでもよい。
【0031】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法は、分泌された心臓細胞外マトリクスをエチレンジアミン四酢酸(EDTA)と接触させることをさらに含み、それによって心臓細胞外マトリクスは、表面から取り外され、浮遊性のバイオスキャフォールドを形成する。
【0032】
一部の実施形態では、ECMから作製されたバイオスキャフォールドは、20~500μmの厚さを有する。一部の実施形態では、バイオスキャフォールドは、30~200μmまたは50~150μmの厚さ範囲を有する。
【0033】
一部の実施形態では、ECMは、注入可能な製剤として製剤化される。例えば、ECMは、凍結乾燥され、そして薬学的なビーズミルを使用して、懸濁液として注射のために好適な特定の粒子サイズへと製粉される(
図6)。他の実施例では、ECMは、フラッシュ凍結および製粉によって注射用に製剤化することができる。
【0034】
一部の実施形態では、心臓ECMは、ECMからあらゆる残りの心臓線維芽細胞を除去するために脱細胞化される。任意の脱細胞化剤を使用して、心臓ECMを脱細胞化してもよい。当技術分野で知られている脱細胞化剤の非限定的な例としては、トリプシン、エンドヌクレアーゼ、またはエクソヌクレアーゼなどの酵素剤;アルカリ溶液または酸溶液、高張性または高張性溶液、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、水酸化アンモニウム、および過酢酸などの化学物質:オクチルフェノールエチレンオキシド(Triton(商標)-X 100)などの非イオン性界面活性剤:ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)およびポリエーテルスルホン酸ナトリウム(Triton(商標)-X 200)などのイオン性界面活性剤:および3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(CHAPS)、スルホベタイン-10および-16、ならびにトリ(n-ブチル)リン酸塩などの両性イオン性界面活性剤、が挙げられる。
【0035】
一実施形態では、脱細胞化は、心臓ECMを過酢酸(PAA)と接触させ、そしてその後、心臓細胞外マトリクスを水でゆすぐことによって実施される。一実施形態では、脱細胞化は、分泌した心臓細胞外マトリクスをトリ-N-ブチル-ホスフェート(TNBP)およびオクチルフェノールエチレンオキシド(Triton(商標)X-100)と接触させ、そしてその後、心臓細胞外マトリクスを水でゆすぐことによって実施される。別の方法として、脱細胞化は、分泌した心臓細胞外マトリクスを水酸化アンモニウム(AH)およびオクチルフェノールエチレンオキシド(Triton(商標)X-100)と接触させ、そしてその後、心臓細胞外マトリクスを水でゆすぐことによって実施される。
【0036】
一部の実施形態では、ECMまたはバイオスキャフォールドは、心臓疾患または傷害に対して治療的である1つ以上の細胞を用いる当技術分野で知られている方法を使用して播種されてもよい。播種のために使用することが可能である治療的な細胞タイプの例としては、骨格筋芽細胞、胚性幹細胞(ES)、人工多能性幹細胞(iPS)、多能性成体生殖系列幹細胞(maGCS)、骨髄間葉系幹細胞(BMSC)、極小胚様幹細胞(VSEL細胞)、内皮前駆細胞(EPC)、心臓形成細胞(CPC)、カーディオスフェア由来細胞(CDC)、多能性Is/1+心臓血管前駆細胞(MICP)、心外膜由来前駆細胞(EPDC)、脂肪由来幹細胞、ヒト間葉系幹細胞(iPS細胞またはES細胞に由来する)、ヒト間葉系間質細胞(iPS細胞またはES細胞に由来する)骨格筋芽細胞、エクソソーム、またはその組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。
【0037】
一部の実施形態では、ECMまたはバイオスキャフォールドは、サイトカインおよび成長因子を含む生物活性タンパク質を結合する。一部の実施形態では、ECMまたはバイオスキャフォールドは、サイトカインまたは成長因子などの生物活性タンパク質を用いて播種されてもよい。一部の実施形態では、ECMまたはバイオスキャフォールドは、骨髄由来成長因子(MYDGF)を用いて播種されてもよい。播種されたECMまたはバイオスキャフォールドは、生物活性タンパク質を心臓またはその他の組織へと送達し、かつ局所的な組織濃度を増加するために使用されてもよい。
【0038】
一部の実施形態では、ECMまたはバイオスキャフォールドは、遺伝子送達のために使用されてもよい。例えば、ECMまたはバイオスキャフォールドは、治療法として組織に送達するためにRNAプラスミドまたはDNAプラスミドを用いて播種されてもよい。
【0039】
一部の実施形態では、ECMまたはバイオスキャフォールドは、それ自体が治療薬として使用される。例えば、ECMまたはバイオスキャフォールドは、心臓機能を改善し、かつ/または有害な再形成を低減するために心臓組織へと送達される。
【0040】
本開示に従って利用される場合、別段の指示がない限り、すべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有すると理解されるべきである。文脈により別段の要求がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0041】
本開示を限定することなく、本開示のいくつかの実施形態を、例示の目的で以下に記述する。
【実施例】
【0042】
以下の実施例は、本開示の具体的な実施形態、およびその様々な使用の例示である。これらは説明的な目的でのみ記載され、またいかなるやり方でも本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0043】
実施例1:SUSD2高およびSUSD2低心臓線維芽細胞由来細胞外マトリクス
材料および方法
ヒト心臓線維芽細胞の単離および培養。健康であると考えられたが、移植のためには合致しなかったドナーヒト心臓(n=6、3人の男性、3人の助成)を得た。採取時に、心臓を無菌的に切除し、灌流し、そして冷たい心停止液に保存し、そして氷上で輸送した。心臓は、移植の4~6時間後に処理された。心外膜脂肪を除去し、そしておよそ20~30gの左心室の自由壁を刻み、そして4つのgentleMACS Cチューブ(Miltenyi Biotec、ドイツ、ベルギッシュ・グラードバッハ)の中へと移した。DMEM(Corning、ニューヨーク州、コーニング)および1.25mgのLiberase(商標)(Roche、スイス、バーゼル)を含有する10mlの消化培地を各チューブに添加した。試料をgentleMACS解離器(Miltenyi Biotec、ドイツ、ベルギッシュ・グラードバッハ)で均質化し、37℃にて30分間、一定の撹拌でインキュベートし、そしてプロセスを合計1時間の組織解離で繰り返した。心臓試料を200μmフィルタを通して篩分けし、次いで1000×gで20分間遠心分離した。細胞ペレットを、20mlの完全培地(10%のFBS、1ng/mlの塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、5μg/mlインスリン、10μg/mlシプロフロキサシン、および2.5mg/mlアンホテリシンBを含むMCDB 131)中に懸濁し、そして2つのT75フラスコの中にプレーティングした。細胞を2時間付着させた。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄することによって、非接着細胞を除去した。最終的に、完全培地を添加し、そして細胞を37℃、5%のCO2、および100%の湿度で培養し、そしてそれらが約90%コンフルエントになったら継代した。すべての手順を無菌条件下で行った。比較として、Lonzaカタログ番号CC-2511から3つの皮膚線維芽細胞系統(2つの雄、1つの雌)を購入し、製造業者のプロトコルに従って培養した。
【0044】
ヒト心臓線維芽細胞由来マトリクス産生。継代3~6におけるヒトCMFを、10%のウシ胎児血清(FBS)(ピーク血清、コロラド州ウェリントン)および10μg/mlのシプロフロキサシン、2.5mg/mlのアンホテリシンBを有する高グルコースDMEM中に懸濁し、そして1.1×105~2.2×105細胞/cm2でプレーティングし、そして培地を2~3日ごとに交換して標準的な培養条件下で7~10日間維持した。CFを、37℃にて2mMのEDTAと接触させ、そして穏やかに撹拌することによって、連続的なシートとしてプレートから持ち上げて外した。結果として得られたシートを、低/高張性PBS(それぞれ15分)の4回の交互洗浄によって細胞をむき出しにし、続いて、低張性PBS中の0.1%トリ-N-ブチル-ホスフェート、1% Triton-X 100中で、4℃にて72時間、一定の穏やかな撹拌を用いてインキュベーションした。スキャフォールドをPBS、次いで100%エタノール(×2)でゆすいだ。残留DNAを、100U/mlのBenzonase溶液を用いて37℃にて20時間インキュベーションし、続いて100%エタノールリンス(×2)、PBS(3×15分)、および分子グレードの水(2時間)で除去した。スキャフォールドを、PBS中で4℃にて保存した。
【0045】
フローサイトメトリーの特徴解析。CFおよびCMF継代0~4を80%コンフルエンシーまで培養し、そして1×TrypLE select(Gibco-life technologies、カタログ番号12563~029)を用いて持ち上げることによって収集した。フローサイトメトリー分析のためにPE-anti-SUSD2(クローンW3D5、Biolegend)または精製された抗SUSD2(Biolegend、クローン#W5C5)について単一細胞懸濁液を染色した。心臓線維芽細胞を、SUSD2(SUSD2高(MFI>500)およびSUSD2低(MFI<500))の発現に基づいてフローサイトメトリーを用いてソートした。すべてのゲーティングを、それらの未染色対照に基づいて行った。試料をBD FACS Aria II上で実行した。
【0046】
SUSD2-PEソーティングは、BD FACS Aria II上で標準化された。未染色および染色対照に基づいて、SUSD2-PEの感度を最適化した。次いで、レインボービーズを収集した(Spherotech、カタログ番号RFP-30-5A)およびレインボービーズのMFIを、今後の感受性の標的として使用した。連続実験では、レインボービーズを実行し、そして標的MFIに合うように電圧を調整した。これは、ゲート定置を標準化し、そしてMFIを使用してSUSD2-PEの発現レベルを試料ごとに、および実行ごとに比較し、実行することを可能にする。
【0047】
マトリクス産生のSUSD2免疫蛍光撮像。CF、CMF、およびDF(ウェル当たり細胞100,000個)をフィコエリスリン(PE)コンジュゲート化SUSD2一次抗体(クローンW3C5、Biolegend)を用いて染色した。細胞を洗浄し、そしてさらに1% PFA(PBS中の4%のパラホルムアルデヒド溶液、ChemCruz、カタログ番号sc-281,692)を用いて室温にて30分間さらに固定した。細胞を、PBS中の0.1%のTriton X-100を用いて室温にて10分間透過処理し、次いで3%BSA溶液を用いて20分間ブロックした。細胞を、Alexa Fluor 488コンジュゲートビメンチン(カタログ番号IC2105G R&D Systems)を用いて一晩、4℃にてさらに再染色した。細胞を1× PBSでゆすいだ。洗浄した細胞を、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)(10μg/ml)を用いて短時間処理し、そして1×のPBSで洗浄した。染色した細胞をEVOS顕微鏡を用いて撮像し、また20×対物レンズおよび40×対物レンズを使用して画像を取得した。
【0048】
サイトカインセクレトーム解析。SUSD2高/低細胞集団間の差異を試験するために、LegendPlexアッセイを使用してサイトカインセクレトーム分析を行った。アッセイは、蛍光色素でタグ付けされた抗体ビーズを使用して、分泌したサイトカインを検出した。心臓線維芽細胞/筋線維芽細胞を、次いでSUSD2 MFI発現(低<500MFI、高>500MFI)に基づいてソートし、等しい数のSUSD2高/低細胞をプレーティングし、そして標準的な培養条件下で3日間培養した。培地をサンプリングし、そして複数のサイトカインについて分析した。
【0049】
結果
図1で実証されるように、SUSD2は、心臓線維芽細胞由来細胞外マトリクス産生のマーカーとして使用することができる。ヒト心臓線維芽細胞株をSUSD2について染色した。98.8%の細胞はSUSD2を発現し、細胞をSUSD2高(MFI>500)およびSUSD2低(MFI<500)へとソートし、そして高密度(すなわち100,000~500,000細胞/cm
2)でプレーティングし、そして10日間培養した。SUSD2高心臓線維芽細胞は、損傷がない心臓線維芽細胞由来細胞外マトリクスを産生し、一方でSUSD2低細胞は、損傷がないマトリクスを産生しなかった。結果は、SUSD2が心臓線維芽細胞マトリクス能力のマーカーであることを表示した。
【0050】
図3で実証されるように、SUSD2低集団およびSUSD2高集団の両方は、培養後に高いレベルの純度を維持した。心臓線維芽細胞を、それらのSUSD2の発現に基づいてフローサイトメトリーを用いてソートした。SUSD低集団およびSUSD2高集団をプレーティングし、そして標準的な条件下(37℃、5%のCO
2、および100%の湿度)で7日間培養した。次いで、細胞を、フローサイトメトリーによってSUSD2発現について分析した。7日後、SUSD2低にソートされた細胞の83.4%は、MFIに基づいて低いSUSD2発現表現型を維持し、一方でSUSD2高にソートされた細胞の93.8%は、MFIに基づいて高いSUSD2発現表現型を維持した。
【0051】
図4は、LegendPlexアッセイを使用して行ったサイトカインセクレトーム分析に対する、SUSD2高/低細胞集団間の差異を実証する。このアッセイは、蛍光色素でタグ付けされた抗体ビーズを使用して、分泌したサイトカインを検出した。心臓線維芽細胞/筋線維芽細胞を、SUSD2 MFI発現(低<500MFI、高>500MFI)に基づいてソートし、等しい数のSUSD2高/低細胞をプレーティングし、そして標準的な培養条件下で3日間培養した。培地をサンプリングし、そして複数の検体(サイトカイン)について分析した。いくつかのサイトカインで有意な差異が検出された。上記のグラフは、SUSD2高/低細胞集団が、非常に異なるセクレトームプロファイルを有することを実証し、これらの細胞集団が明らかに異なることをさらに表示する。
【0052】
当業者は、日常的な実験のみを使用して、本明細書に記述される特定の実施形態に対する数多くの均等物を認識する、または確認することができるであろう。本明細書に記述される本実施形態の範囲は、上記の記述に限定されることを意図するものではなく、むしろ添付の特許請求の範囲に記載されるとおりである。当業者であれば、以下の特許請求の範囲に定義されるように、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、本明細書に対する様々な変更および修正を行うことができることを理解するであろう。
【国際調査報告】