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特表2024-531623多相炭化水素流の成分を分離するための装置及びプロセス
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  • 特表-多相炭化水素流の成分を分離するための装置及びプロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】多相炭化水素流の成分を分離するための装置及びプロセス
(51)【国際特許分類】
   B04C 5/103 20060101AFI20240822BHJP
   B01D 5/00 20060101ALI20240822BHJP
   B04C 5/04 20060101ALI20240822BHJP
   B04C 5/12 20060101ALI20240822BHJP
   B04C 5/14 20060101ALI20240822BHJP
   C10G 1/10 20060101ALI20240822BHJP
   C08J 11/10 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B04C5/103
B01D5/00 Z
B04C5/04
B04C5/12 Z
B04C5/14
C10G1/10
C08J11/10 ZAB
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024515165
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 EP2022074673
(87)【国際公開番号】W WO2023036751
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】21195298.1
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513277290
【氏名又は名称】オーエムファウ ダウンストリーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホーファー、ウォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】レヒライトナー、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】バロンセリ、マルティナ
【テーマコード(参考)】
4D053
4D076
4F401
4H129
【Fターム(参考)】
4D053AB01
4D053BA01
4D053BB02
4D053BC01
4D053BD04
4D053CA01
4D053CB13
4D053CC00
4D053CD01
4D053DA10
4D076BC12
4D076FA02
4D076FA12
4D076FA20
4D076FA33
4D076HA20
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA11
4F401BA01
4F401CA22
4F401CA67
4F401CA70
4F401EA77
4H129AA01
4H129BA04
4H129BB03
4H129BC12
4H129BC35
4H129NA22
4H129NA23
4H129NA45
(57)【要約】
本発明は、多相炭化水素流(27)の成分を分離するための装置及びプロセスに関し、前記装置は、
- 上出口(3)を備えた上端(2)、下出口(5)を備えた下端(4)、並びに上端(2)と下端(4)との間に配置され、上出口(3)及び下出口(5)と流体連通している外側容器内空間(8)を有する外側容器体(7)を有し、長手方向軸線(6)が上端(2)と下端(4)との間に延びている、外側容器(1)であって、
外側容器体(7)は、
- 多相炭化水素流(27)を外側容器内空間(8)中に接線方向に導入して渦流を作り出すように配置された接線方向入口(10)を備えた第1のセクション(9)、及び
- 第1のセクション(9)よりも下端(4)寄りに配置された第2のセクション(11)であって、外側容器内空間(8)は、第2のセクション(11)において第1のセクション(9)よりも小さい断面周長を有する、第2のセクション(11)、
を備える、外側容器(1)と、
- 外側容器体(7)内に配置された内側容器(15)であって、内側容器(15)は、
- 内側容器内空間(17)を有する内側容器体(16)、及び
- 外側容器(1)の下端(4)へと向いており、内側容器内空間(17)及び外側容器内空間(8)と流体連通している内側下入口(18)、
を備える、内側容器(15)と、
- 内側容器内空間(17)と流体連通し、外側容器体(7)を横切っているトラバース導管(21)と、
を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相炭化水素流(27)の成分を分離するための装置であって、前記装置は、
- 上出口(3)を備えた上端(2)、下出口(5)を備えた下端(4)、並びに前記上端(2)と前記下端(4)との間に配置され、前記上出口(3)及び前記下出口(5)と流体連通している外側容器内空間(8)を有する外側容器体(7)を有し、長手方向軸線(6)が前記上端(2)と前記下端(4)との間に延びている、外側容器(1)であって、
前記外側容器体(7)は、
- 前記多相炭化水素流(27)を前記外側容器内空間(8)中に接線方向に導入して渦流を作り出すように配置された接線方向入口(10)を備えた第1のセクション(9)、及び
- 前記第1のセクション(9)よりも前記下端(4)寄りに配置された第2のセクション(11)であって、前記外側容器内空間(8)は、前記第2のセクション(11)において前記第1のセクション(9)よりも小さい断面周長を有する、第2のセクション(11)、
を備える、外側容器(1)と、
- 前記外側容器体(7)内に配置された内側容器(15)であって、前記内側容器(15)は、
- 内側容器内空間(17)を有する内側容器体(16)、及び
- 前記外側容器(1)の前記下端(4)へと向いており、前記内側容器内空間(17)及び前記外側容器内空間(8)と流体連通している内側下入口(18)、
を備える、内側容器(15)と、
- 前記内側容器内空間(17)と流体連通し、前記外側容器体(7)を横切っているトラバース導管(21)と、
を備える、装置。
【請求項2】
前記第2のセクション(11)における前記外側容器内空間(8)の前記断面周長の前記第1のセクション(9)における前記外側容器内空間(8)の前記断面周長に対する比が、0.05~0.95、好ましくは0.1~0.9、より好ましくは0.25~0.8、さらにより好ましくは0.4~0.7、最も好ましくは0.5~0.6である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記上出口(3)に流体接続された冷却システムをさらに備え、前記冷却システムは、前記上出口(3)を通して前記外側容器内空間(8)から排出される蒸気生成物(30)の一部を凝縮させ、前記蒸気生成物(30)の前記凝縮分を前記外側容器内空間(8)に運んで戻すように構成されており、好ましくは前記冷却システムは、少なくとも1つのスプレーノズル(33)を備える、請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のセクション(9)及び/又は前記第2のセクション(11)における前記外側容器内空間(8)が、実質的に円筒形又は実質的に円錐台形、好ましくは実質的に円筒形である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1のセクション(9)が、前記多相炭化水素流(27)を前記外側容器内空間(8)中に接線方向に導入して渦流を作り出すように配置された第2の接線方向入口(13)を備える、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記第2のセクション(11)が、前記外側容器内空間(8)中に接線方向に流れを導入するように配置された下側接線方向入口(14)を備える、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記内側容器(15)が、前記外側容器(1)の前記上端(2)へと向いており、前記外側容器内空間(8)及び前記内側容器内空間(17)と流体連通している内側上出口(19)を備え、好ましくは、前記トラバース導管(21)が、前記内側容器(15)の前記内側上出口(19)よりも前記長手方向軸線(6)に沿ってさらに下方の位置で前記外側容器体(7)を横切る、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記内側容器(15)が、前記内側上出口(19)と前記外側容器(1)の前記上端(2)との間に配置されたバリア(20)を備え、前記バリア(20)は、固体が前記内側上出口(19)を通して前記内側容器内空間(17)に進入することを少なくとも部分的にブロックするが、流体は、前記内側上出口(19)を通して前記内側容器内空間(17)から排出可能となるように配置されている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の装置において多相炭化水素流(27)の成分を分離するためのプロセスであって、前記プロセスは、
- 前記多相炭化水素流(27)を前記接線方向入口(10)を通して前記外側容器内空間(8)中に導入して渦流を作り出すステップであって、それによって、蒸気生成物(30)が前記炭化水素流から分離されて、前記上出口(3)に運ばれる、ステップ、
- 前記蒸気生成物(30)を前記上出口(3)から回収するステップ、
- 前記炭化水素流を前記第1のセクション(9)から前記第2のセクション(11)に運び、それによって、前記渦流の接線方向速度を増加させるステップであって、前記炭化水素流は、固体が富化された生成物流(28)と固体が低減された生成物流(25)とに分離され、前記固体が富化された生成物流(28)は、前記下出口(5)に運ばれる、ステップ、
- 前記下出口(5)から前記固体が富化された生成物流(28)を回収するステップ、
- 前記固体が低減された生成物流(25)を、前記内側容器下入口(18)を通して内側容器内空間(17)に運ぶステップ、及び
- 前記トラバース導管(21)を通して、前記内側容器内空間(17)から前記固体が低減された生成物流(25)を回収するステップ、
を含む、プロセス。
【請求項10】
前記上出口(3)を通して前記外側容器内空間(8)から排出される前記蒸気生成物(30)の一部を凝縮させ、前記蒸気生成物(30)の前記凝縮分を前記外側容器内空間(8)に運んで戻すステップをさらに含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記凝縮が、前記蒸気生成物(30)上に流体を噴霧することによってなされ、前記流体の温度は、前記蒸気生成物(30)の温度よりも低く、好ましくは、前記流体の温度は、120℃~350℃、好ましくは150℃~300℃、特には180℃~250℃である、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記流体が、前記回収された蒸気生成物(30)の一部を凝縮させ、再循環させることによって得られる、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記接線方向入口(10)における前記多相炭化水素流(27)の温度が、300℃~480℃、好ましくは330℃~450℃、より好ましくは350℃~420℃、最も好ましくは360℃~400℃である、請求項9~請求項12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記多相炭化水素流(27)が、プラスチック材料の、好ましくはプラスチック廃棄物の解重合から得られる、請求項9~請求項13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記プラスチック材料が、ポリエチレン及びポリプロピレンから好ましくは選択されるポリオレフィン、並びに/又はポリスチレンを含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記多相炭化水素流(27)が、アルミニウム粉末及び/又は有機リン化合物、特にはトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトから選択される不純物を含む、請求項9~請求項15のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多相炭化水素流の成分を分離するための装置及びプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素分解プロセスは、一般に、例えば400~600℃の中程度の若しくは高い温度下で(熱分解)及び/又は触媒の存在下で(接触分解)、長鎖炭化水素を短鎖炭化水素に分解することを含む。分解プロセスの特に興味深い用途は、プラスチック材料の解重合であり、これはプラスチック廃棄物の再利用に用いられる。
【0003】
分解プロセスでは、通常、少なくとも部分的に分離する必要のある炭化水素の複雑な混合物が生じる。分解反応器から得られるそのような混合物は、通常、蒸気、液体、及び場合によっては固体成分も含む多相系である。例えば、前記蒸気相は所望される分解された炭化水素を含有し得、前記液相は依然として十分に分解されていない炭化水素を含有し得、前記固相はコークス粒子を含有し得る。加えて、特に前記プラスチック廃棄物の再利用の状況において、不純物が存在する場合もある。固体不純物としては、コークス粒子以外に、例えばアルミニウム粉末、充填剤、又は灰分が挙げられる。蒸気不純物は、例えば、プラスチック材料に一般的に用いられるある特定の有機リン成分を含み得る。
【0004】
国際公開第2020/168062(A1)号は、水蒸気分解炉の排出液からコークス及びタールを除去するプロセスを開示しており、急冷された炉排出液が遠心分離機に導入され、そこで蒸気生成物と、前記コークス及び/又はタールの少なくとも一部分を含む遠心分離機沈降物とが分離される。
【0005】
米国特許第2,776,931号は、コークス化操作からの高温の排出蒸気を急冷し、分離するためのプロセス及び装置を開示しており、それにおいては、高温の排出蒸気が急冷され、それによってある特定の高沸点汚染物質が液化され、次いでサイクロン分離ゾーンにおいて、残りの急冷された蒸気から液体と固体とが分離される。
【0006】
米国特許第2,927,890号は、残留石油フィードの熱変換からの気体生成物の分離及び急冷を含むプロセスを開示しており、急冷流は、サイクロン分離ゾーンに通されて、同伴された固体及び液体流から未凝縮蒸気が分離され、その後、液体流が固体から分離される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、先行技術の欠点の1又は複数を少なくとも軽減することである。詳細には、本発明の目的は、多相炭化水素流の蒸気成分、液体成分、及び固体成分の少なくとも部分的な分離を単一の設備で可能とする装置及びプロセスを提供することである。加えて、本発明のさらなる目的は、多相炭化水素流から、特にプラスチック材料の解重合から得られる多相炭化水素流から不純物をより効率的に除去可能とする装置及びプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、本発明は、多相炭化水素流の成分を分離するための装置を提供し、前記装置は、
- 上出口を備えた上端、下出口を備えた下端、並びに前記上端と前記下端との間に配置され、前記上出口及び前記下出口と流体連通している外側容器内空間(outer vessel internal volume)を有する外側容器体を有し、長手方向軸線が前記上端と前記下端との間に延びている、外側容器であって、
前記外側容器体は、
- 前記多相炭化水素流を前記外側容器内空間中に接線方向に導入して渦流を作り出すように配置された接線方向入口を備えた第1のセクション、及び
- 前記第1のセクションよりも前記下端寄りに配置された第2のセクションであって、前記外側容器内空間は、前記第2のセクションにおいて前記第1のセクションよりも小さい断面周長を有する、第2のセクション、
を備える、外側容器と、
- 前記外側容器体内に配置された内側容器であって、前記内側容器は、
- 内側容器内空間(inner vessel internal volume)を有する内側容器体、及び
- 前記外側容器の前記下端へと向いており、前記内側容器内空間及び前記外側容器内空間と流体連通している内側下入口、
を備える、内側容器と、
- 前記内側容器内空間と流体連通し、前記外側容器体を横切るトラバース(traversing)導管と、
を備える。
【0009】
別の態様では、本発明は、本発明に記載の装置において多相炭化水素流の成分を分離するためのプロセスを提供し、前記プロセスは、
- 前記多相炭化水素流を前記接線方向入口を通して前記外側容器内空間中に導入して渦流を作り出すステップであって、それによって、蒸気生成物が前記炭化水素流から分離されて、前記上出口に運ばれる、ステップ、
- 前記蒸気生成物を前記上出口から回収するステップ、
- 前記炭化水素流を前記第1のセクションから前記第2のセクションに運び、それによって、前記渦流の接線方向速度を増加させるステップであって、前記炭化水素流は、固体が富化された生成物流と固体が低減された生成物流とに分離され、前記固体が富化された生成物流は、前記下出口に運ばれる、ステップ、
- 前記下出口から前記固体が富化された生成物流を回収するステップ、
- 前記固体が低減された生成物流を、前記内側容器下入口を通して前記内側容器内空間に運ぶステップ、及び
- 前記トラバース導管を通して、前記内側容器内空間から前記固体が低減された生成物流を回収するステップ、
を含む。
【0010】
本発明の装置及びプロセスによって、多相炭化水素流の蒸気成分、液体成分、及び固体成分を、単一の設備で少なくとも部分的に分離することが可能となる。本発明の文脈において、「多相」の用語は、2つ以上の物質相が存在することを意味する。好ましくは、多相炭化水素流は、少なくとも3つの相を含み、特に、それは、蒸気成分、液体成分、及び固体成分を含む。本発明の装置の前記第1のセクションは、有利には、液体及び固体から蒸気を分離することを可能とし、前記第2のセクションは、有利には、液体/固体混合物を、固体が富化された生成物流と固体が低減された生成物流とに分離することを可能とする。これら2つの分離プロセスを単一の設備で行うことにより、コスト及び複雑さが減少し、同時に効率が高まる。加えて、そうでなければ別個の分離装置を接続するために必要とされ得る配管及び制御弁を回避することができ、強固さの向上、及び例えば閉塞に起因する故障率の低下に繋がる。
【0011】
本発明の装置において、前記外側容器内空間は、前記外側容器体の前記第2のセクションにおいて前記第1のセクションよりも小さい断面周長を有する。特に断りのない限り、本明細書で用いられる場合、「断面」の用語は、前記長手方向軸線に対して実質的に垂直である平面と交わる部分を意味する。したがって、前記外側容器内空間の断面周長とは、前記外側容器の長手方向軸線に対して実質的に垂直である断面平面における前記外側容器内空間の領域の周長を意味する。前記外側容器体の前記第1のセクションにより、サイクロン分離の原理に従って液体及び固体から蒸気を分離することが可能となる。固体成分及び液体成分は、遠心力によって前記外側容器体の内面に向かって半径方向外側に押され、前記第2のセクションに向かって軸線方向に移動し続けるが、一方蒸気成分は、半径方向内側に押され、前記上出口に向かって軸線方向上向きに移動する。前記第1のセクションにより大きな断面周長を設けることで、前記上出口に向かって移動する前記蒸気生成物の軸線方向速度が低下し、このことは、有利には、蒸気と共に液滴が引っ張られることを減少させ、したがって、分離の効果改善に繋がる。同時に、前記第2のセクションにより小さい断面周長を設けることで、前記第2のセクションにおける前記渦流の接線方向速度を高めることができ、このことは、有利には、滞留時間を短縮させ、それによって、コークス化傾向が低減される。同時に、前記第2のセクションにおけるより高い接線方向速度は、より高い遠心力に繋がり、それによって、このセクションにおける分離効率の改善にも繋がる。
【0012】
好ましくは、前記第2のセクションにおける前記外側容器内空間の断面周長の前記第1のセクションにおける前記外側容器内空間の断面周長に対する比は、0.95未満、好ましくは0.9未満、より好ましくは0.8未満、さらにより好ましくは0.7未満、最も好ましくは0.6未満である。前記比が0.05~0.95、好ましくは0.1~0.9、より好ましくは0.25~0.8、さらにより好ましくは0.4~0.7、最も好ましくは0.5~0.6である場合、特に好ましい。
【0013】
好ましくは、前記第1のセクションの前記外側容器内空間では、前記長手方向軸線に沿ったその拡がり対その断面領域直径の比は、0.2~5、好ましくは0.33~3、より好ましくは0.5~2、なおさらにより好ましくは0.75~1.8、最も好ましくは1~1.4である。この文脈において、前記第1のセクションの前記外側容器内空間が実質的に円筒形である場合、特に好ましい。
【0014】
好ましくは、前記第2のセクションの前記外側容器内空間では、前記長手方向軸線に沿ったその拡がり対その断面領域直径の比は、0.4~10、好ましくは0.66~6、より好ましくは1~4、なおさらにより好ましくは1.33~3、最も好ましくは1.6~2.5である。この文脈において、前記第2のセクションの前記外側容器内空間が実質的に円筒形である場合、特に好ましい。
【0015】
好ましい態様では、前記装置は、前記第1のセクション及び前記第2のセクションを接続する第3のセクションをさらに備える。好ましくは、前記第3のセクションの前記外側容器内空間は、実質的に円錐台形である。
【0016】
本発明のプロセスの好ましい態様では、前記第1のセクションにおける前記渦流の接線方向速度は、0.01~20m/s、好ましくは0.05~10m/s、より好ましくは0.1~5m/s、最も好ましくは0.2~2.5m/sである。
【0017】
前記第2のセクションにおける前記渦流の接線方向速度が、0.05~10m/s、好ましくは0.1~5m/s、より好ましくは0.25~2.5m/s、最も好ましくは0.5~2m/sである場合、さらに好ましい。
【0018】
好ましい態様では、前記第1のセクションにおける前記渦流の接線方向速度対前記第2のセクションにおける前記渦流の接線方向速度の比は、0.05~0.99、好ましくは0.1~0.95、より好ましくは0.2~0.9、さらにより好ましくは0.3~0.8、最も好ましくは0.4~0.7である。
【0019】
さらに好ましい態様では、前記第2のセクションにおける前記渦流の平均滞留時間は、0.1~30分間、好ましくは0.2~10分間、より好ましくは0.5~8分間、最も好ましくは0.8~6分間である。好ましくは、前記平均滞留時間は、CFDシミュレーションによって特定される。
【0020】
前記外側容器体の前記第1のセクションに備えられる前記接線方向入口は、前記多相炭化水素流が前記接線方向入口を通して導入された場合に、前記外側容器内空間の内部に渦流を作り出すことができるように配置される。このような配置は、サイクロン分離機において一般的に用いられていることから、当業者にはよく知られている。好ましくは、前記接線方向入口は、前記長手方向軸線に対して実質的に垂直である平面内にある前記外側容器内空間の断面領域に対して、接線方向に配置される。
【0021】
好ましい態様では、本発明の装置は、前記接線方向入口と流体連通している接線方向導管をさらに備え、好ましくは、前記接線方向導管は、フラッシュバルブを備える。好ましくは、前記接線方向導管は、炭化水素分解反応器に流体接続している。フラッシュバルブを設けることにより、前記炭化水素流のフラッシュ蒸発が可能となり、この場合、前記炭化水素流は減圧を受け、前記炭化水素流の成分の少なくともいくつかが、液相から蒸気相に移る。
【0022】
本発明の装置の文脈において、前記第2のセクションにおける前記内側容器内空間の断面周長の前記外側内空間の断面周長に対する比が、少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.25、より好ましくは少なくとも0.4、さらにより好ましくは少なくとも0.5、なおさらにより好ましくは少なくとも0.6である場合、好ましい。前記比が、0.1~0.99、好ましくは0.25~0.95、より好ましくは0.4~0.9、さらにより好ましくは0.5~0.85、なおさらにより好ましくは0.6~0.8である場合、特に好ましい。比が高いことは、前記外側容器内空間のより大きい割合が、前記内側容器体によって専有され、このことが、前記渦流の接線方向速度の増加に繋がるという利点を有する。このことは、有利には、滞留時間を短縮し、したがってコークス化傾向を低減し、同時に、より高い遠心力をもたらすことで、分離を向上させることができる。
【0023】
好ましくは、前記固体が富化された生成物流は、前記固体が低減された生成物流よりも高い固形分を有し、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、さらにより好ましくは少なくとも20%、なおさらにより好ましくは少なくとも50%高い。好ましくは、本明細書で用いられる場合、前記固形分は、灰分含量に相当する。前記灰分含量は、好ましくは、ISO 6245:2001に従って定められる。
【0024】
好ましい態様では、本発明の装置は、前記上出口に流体接続された冷却システムをさらに備え、前記冷却システムは、前記上出口を通して前記外側容器内空間から排出される蒸気生成物の一部を凝縮させ、前記蒸気生成物の凝縮分を前記外側容器内空間に運んで戻すように構成されている。好ましくは、前記冷却システムは、少なくとも1つのスプレーノズルを備える。同様に、本発明のプロセスの好ましい態様では、前記プロセスは、前記上出口を通して前記外側容器内空間から排出される前記蒸気生成物の一部を凝縮させ、前記蒸気生成物の凝縮分を前記外側容器内空間に運んで戻すステップをさらに含む。好ましくは、前記凝縮は、前記蒸気生成物上に流体を噴霧することによってなされ、前記流体の温度は、前記蒸気生成物の温度よりも低い。好ましくは、前記流体の温度は、120℃~350℃、好ましくは150℃~300℃、特には180℃~250℃である。前記流体が、回収された蒸気生成物の一部を凝縮させ、再循環させることによって得られる場合、さらに好ましい。
【0025】
上記で述べたように前記蒸気生成物の一部を凝縮させることによって、前記蒸気生成物から不純物を特に効果的に除去することが可能となる。特に、高沸点成分、例えば410℃を超える沸点を有する成分を、この方法によって効果的に除去することができる。これは、プラスチック材料、特にプラスチック廃棄物の解重合から得られる炭化水素混合物の場合に特に有利であり、なぜなら、そのような材料は、多くの場合、所望されない有機リン化合物、例えばトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトといった化合物を含むからである。このような化合物は、前記上出口を通して前記外側容器内空間から排出される前記蒸気生成物の一部を凝縮させ、前記蒸気生成物の凝縮分を前記外側容器内空間に運んで戻すことによって、前記蒸気生成物から少なくとも部分的に除去することができる。
【0026】
本発明のプロセスから回収された前記蒸気生成物は、さらに下流の分離ステップ及び/又は洗浄ステップに供給され得る。好ましくは、それは、前記蒸気生成物を蒸留によって異なる生成物流に分離するための下流分離カラムに供給され得る。
【0027】
本発明の装置の文脈において、前記第1のセクションにおける前記外側容器内空間が、実質的に楕円形の断面、好ましくは実質的に円形の断面を有することが好ましい。前記第1のセクションにおける前記外側容器内空間が、実質的に円筒形又は実質的に円錐台形、好ましくは実質的に円筒形であることが特に好ましい。同様に、前記第2のセクションにおける前記外側容器内空間が、実質的に楕円形の断面、好ましくは実質的に円形の断面を有することが好ましい。前記第2のセクションにおける前記外側容器内空間が、実質的に円筒形又は実質的に円錐台形、好ましくは実質的に円筒形であることが特に好ましい。本発明のすべての態様に関連して、前記第1のセクションにおける前記外側容器内空間及び前記第2のセクションにおける前記外側容器内空間の両方が、実質的に円筒形又は実質的に円錐台形、特に実質的に円筒形であることが好ましい。
【0028】
本発明の装置の好ましい態様では、前記第1のセクションは、前記多相炭化水素流を前記外側容器内空間中に接線方向に導入して渦流を作り出すように配置された第2の接線方向入口を備える。第2の接線方向入口を設けることによって、前記炭化水素流の導入を2つの別々の入口に分配することが可能となる。このことにより、前記外側容器内空間に流入する物質の総量を増加させると同時に、前記接線方向入口での流速を、前記多相炭化水素流に含有される固体によって引き起こされる浸食を低減するのに十分な程度に低く保持することが可能となる。加えて、前記第2の接線方向入口は、前記第1の接線方向入口が閉塞した場合に備えてのバックアップとしての役割も有し得る。
【0029】
本発明の装置の別の好ましい態様では、前記第2のセクションは、前記外側容器内空間中に接線方向に流れを導入するように配置された下側接線方向入口を備える。前記下側接線方向入口は、前記第2のセクションにおける前記渦流の接線方向速度をさらに増加させるために用いられ得る。これにより、滞留時間の短縮、したがってコークス化傾向の低減が可能となり、同時に、より高い遠心力をもたらすことで、このセクションにおける分離を向上させることもできる。本発明のプロセスの好ましい態様では、前記回収された固体が富化された生成物流の少なくとも一部は、好ましくは前記渦流の接線方向速度をさらに増加させるために、再循環されて、前記下側接線方向入口を通して前記外側容器内空間の前記第2のセクションに導入される。
【0030】
好ましい態様では、前記内側容器体は、実質的に円筒形又は実質的に円錐台形であり、好ましくは実質的に円筒形である。好ましくは、前記内側容器体の長手方向軸線は、前記外側容器体の長手方向軸線と実質的に同軸に配置される。好ましくは、前記内側容器体の少なくとも一部は、前記外側容器体の前記第2のセクション内に配置される。
【0031】
好ましくは、前記内側容器内空間では、前記長手方向軸線に沿ったその拡がり対その断面領域直径の比は、0.5~10、より好ましくは1~6、なおさらにより好ましくは1.6~4、最も好ましくは2.2~3.0である。この文脈において、前記内側容器内空間が実質的に円筒形であることが特に好ましい。
【0032】
好ましい態様では、前記内側容器は、前記外側容器の前記上端へと向いており、前記外側容器内空間及び前記内側容器内空間と流体連通している内側上出口を備える。このような上出口によって、蒸気が前記内側容器内空間から排出されて、前記上出口に運ばれることが可能となる。好ましくは、前記トラバース導管は、前記内側容器がオーバーフローする前に、液体流が前記トラバース導管を通して前記内側容器から排出されるように、前記内側容器の前記内側上出口よりも前記長手方向軸線に沿ってさらに下方の位置で前記外側容器体を横切っている。
【0033】
この文脈において、前記内側容器が、前記内側上出口と前記外側容器の前記上端との間に配置されたバリアを備えている場合が好ましく、前記バリアは、固体が前記内側上出口を通して前記内側容器内空間に進入することを少なくとも部分的にブロックするが、蒸気を例とする流体は、前記内側上出口を通して前記内側容器内空間から排出可能となるように配置される。好ましくは、前記バリアは、円錐形であり、頂点が前記外側容器の前記上端へと向いている。
【0034】
本発明のプロセスの好ましい態様では、前記装置は、320℃~450℃、好ましくは360℃~400℃の温度で運転される。好ましくは、前記接線方向入口における前記多相炭化水素流の温度は、300℃~480℃、好ましくは330℃~450℃、より好ましくは350℃~420℃、最も好ましくは360℃~400℃である。
【0035】
好ましくは、前記多相炭化水素流は、炭化水素分解反応器から得られ、これは、好ましくは、接線方向導管を通して前記接線方向入口に流体接続されている。好ましい態様では、前記トラバース導管を通して回収された前記固体が低減された生成物流は、前記炭化水素分解反応器に再循環される。
【0036】
本発明の文脈において、前記多相炭化水素流が、プラスチック材料、好ましくはプラスチック廃棄物、特にプレコンシューマー、ポストコンシューマー、及び/又はポストインダストリアルプラスチックの解重合から得られることが好ましい。好ましくは、前記プラスチック材料は、ポリエチレン及びポリプロピレンから好ましくは選択されるポリオレフィン、並びに/又はポリスチレンを含む。プラスチックの解重合は、好ましくは、熱分解、特に無触媒熱分解、又は触媒分解によるものであり得る。
【0037】
好ましい態様では、前記多相炭化水素流は、アルミニウム粉末及び/又は有機リン化合物、特にトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、から選択される不純物を含む。このような不純物は、プラスチック材料、特にプラスチック廃棄物中に一般的に存在する。本明細書に記載のように、本発明の装置は、このような不純物の少なくとも一部を効果的に除去するのに特によく適している。
【0038】
本発明は、以下の図によってさらに例示されるが、これらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、本発明に従う装置の好ましい態様の縦断面を示す。
図2図2は、本発明に従う装置の好ましい態様を含む、プラスチック廃棄物処理施設のためのプロセスフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1に示す装置は、上出口3を備えた上端2、下出口5を備えた下端4を有し、長手方向軸6が上端2と下端4との間に延びている外側容器1を備える。外側容器1は、上端2と下端4との間に配置され、上出口3及び下出口5と流体連通している外側容器内空間8を有する外側容器体7をさらに備える。外側容器体7は、接線方向入口10を備えた第1のセクション9、及び第1のセクション9よりも下端4寄りに配置された第2のセクション11を備える。図示される態様では、第1のセクション9及び第2のセクション11は共に実質的に円筒形である。これらは、外側容器体7の実質的に円錐台形の第3のセクション12によって接続されている。接線方向入口10は、多相炭化水素流27を外側容器内空間8中に接線方向に導入して渦流を作り出すように配置されている。これは、サイクロン分離機で一般的に行われる方法と同様に、外側容器体7の内面に対して、前記内面上に渦流を作り出すために、接線方向に前記流れを注入することによってなすことができる。加えて、図示される態様では、第1のセクション9は、第2の接線方向入口13を備え、これは、接線方向入口10と本質的に同様であり得る。外側容器内空間8は、第2のセクション11において第1のセクション9よりも小さい断面周長を有し、これによって、運転中、第2のセクション11において第1のセクション9よりも高い前記渦流の接線方向速度が可能となる。図示される態様では、第2のセクション11は、下側接線方向入口14を備え、これは、第2のセクション11における前記渦流の接線方向速度をさらに増加させるために液体流を導入するために用いられ得る。
【0041】
図1に示される装置は、外側容器体7の中に配置された内側容器15をさらに備える。内側容器15は、内側容器内空間17を有する内側容器体16、及び外側容器1の下端4へと向いており、内側容器内空間17を外側容器内空間8と流体接続する内側下入口18を備える。加えて、図示される構成では、内側容器15は、外側容器1の上端2へと向いており、内側容器内空間17を外側容器内空間8と流体接続する内側上出口19を備える。バリア20は、内側上出口19と上端2との間に配置されて、固体が内側容器内空間17に進入することを少なくとも部分的にブロックし、一方蒸気なのどの流体は、例えば上出口3に運ばれるように、内側上出口19を通して排出可能とする。この装置は、内側容器内空間17と流体連通するトラバース導管21をさらに備え、このトラバース導管21は、外側容器体7を横切り、それによって、生成物流を、内側容器内空間17から前記外側容器の外部に運ぶことができる。
【0042】
本発明のプロセスにおける図1に示される装置の運転については、図2に示されるような分解反応器26でのプラスチック材料の解重合から例えば得られる多相炭化水素流27が、接線方向入口10及び/又は第2の接線方向入口13を通して外側容器内空間8に導入されて、渦流が作り出され得る。遠心力の結果、固体及び液体は、外側容器体7の前記内面まで押し出され、一方蒸気成分は、半径方向内向きに移動し、上出口3に運ばれることによって分離される。好ましくは、第1のセクション9における前記断面周長は、上出口3に向かって移動する蒸気生成物30の軸線方向速度が、液滴が引っ張られることを減少させるのに十分なほど低いことが確実であるように、十分に小さい。外側容器内空間8から排出される蒸気生成物30は、例えば1又は複数のスプレーノズル33を用いて蒸気生成物30上に流体を噴霧することによって、冷却システム内で部分的に凝縮され得る。前記流体は、回収された蒸気生成物30の一部を凝縮させ、再循環させることによって得られ得る。前記凝縮ステップによって、蒸気生成物30の所望される成分よりも高い沸点を有する不純物、例えばプラスチック材料中に一般的に見られる所望されない有機リン化合物を、優先的に凝縮させることが可能となる。蒸気生成物30の凝縮分は、外側容器内空間8に戻され、固体が低減された生成物流25及び/又は固体が富化された生成物流28を通して少なくとも部分的に除去され得る。
【0043】
蒸気生成物30の分離後、残りの炭化水素流は、第1のセクション9から第3のセクション12を通して第2のセクション11に運ばれ、これによって、前記断面周長が減少することに起因して、前記渦流の接線方向速度が増加される。前記接線方向速度が高くなることで、滞留時間が短くなり、それによって、コークス化傾向が低減される。同時に、前記接線方向速度が高くなることで、遠心力が大きくなり、したがって、より効果的な分離がもたらされる。この遠心力によって、前記炭化水素流は、固体が富化された生成物流28と固体が低減された生成物流25とに分離される。固体が富化された生成物流28は、前記下出口に運ばれる。固体が低減された生成物流25は、外側容器内空間8の中に液体ホールドアップを作り出し、それによって、内側下入口18を通して内側容器内空間17に入り、最終的にトラバース導管21に到達し、そこから回収することができる。有利には、前記固体が低減された生成物流は、入口開口部21aからトラバース導管21に入り、出口開口部21bからトラバース導管21を出るが、出口開口部21bは、外側容器体7の外部で入口開口部21aよりも下方に配置される。好ましくは、トラバース導管21は、内側容器15の内側上出口19よりも長手方向軸線6に沿ってさらに下方の位置で外側容器体7を横切る。
【0044】
有利には、回収された固体が低減された生成物流25は、さらなる分解のために、分解反応器26に戻されて再循環され得る。固体が富化された生成物流28は、前記下出口から回収され、さらに下流にある分離ステップ、例えばコークスキャッチャー(coke catcher)29に供給され得る。固体が富化された生成物流28の一部は、第2のセクション11における前記渦流の接線方向速度をさらに増加させるために、再循環されて、下側接線方向入口14に導入され得る。
【0045】
図2に、プラスチック処理施設における本発明の装置の好ましい態様の応用を示す。プラスチック材料は、押出機23に供給され、そこで圧縮、溶融、及び/又は脱気される。好ましくは250℃~280℃の温度である前記溶融プラスチック材料は、前記プラスチック溶融物の粘度を低下させるために、スタティックミキサー22中で、重油が好ましい外部溶媒24、及び/又は本発明の装置から得られる固体が低減された生成物流25の少なくとも一部と混合される。得られた混合物は、次いで分解反応器26に運ばれ、そこで前記プラスチックは、好ましくは400℃~440℃の温度で解重合される。分解反応器26から、多相炭化水素流27が得られ、これは次いで、本明細書で上述するように、接線方向入口10を通して本発明の装置の外側容器1に導入される。本発明の装置から得られる固体が低減された生成物流25の少なくとも一部は、再循環され、好ましくは溶媒24と一緒に、新たなプラスチック溶融物に供給され得る。固体が富化された生成物流28は、コークス粒子を除去するためにコークスキャッチャー29に運ばれ、得られた流れの少なくとも一部は、上述のように、再循環されて本発明の装置の下側接線方向入口14に注入され得る。本発明の装置から得られる蒸気生成物30は、好ましくは35℃~225℃の沸点範囲を有する軽質生成物31と、好ましくは225℃~410℃の沸点範囲を有する重質生成物32とにさらに分離される。重質生成物32の一部は、本明細書で上述するように、蒸気生成物30の一部を冷却し凝縮させるように配置されたスプレーノズル33に再循環され得る。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相炭化水素流(27)の成分を分離するための装置であって、前記装置は、
- 上出口(3)を備えた上端(2)、下出口(5)を備えた下端(4)、並びに前記上端(2)と前記下端(4)との間に配置され、前記上出口(3)及び前記下出口(5)と流体連通している外側容器内空間(8)を有する外側容器体(7)を有し、長手方向軸線(6)が前記上端(2)と前記下端(4)との間に延びている、外側容器(1)であって、
前記外側容器体(7)は、
- 前記多相炭化水素流(27)を前記外側容器内空間(8)中に接線方向に導入して渦流を作り出すように配置された接線方向入口(10)を備えた第1のセクション(9)、及び
- 前記第1のセクション(9)よりも前記下端(4)寄りに配置された第2のセクション(11)であって、前記外側容器内空間(8)は、前記第2のセクション(11)において前記第1のセクション(9)よりも小さい断面周長を有する、第2のセクション(11)、
を備える、外側容器(1)と、
- 前記外側容器体(7)内に配置された内側容器(15)であって、前記内側容器(15)は、
- 内側容器内空間(17)を有する内側容器体(16)
前記外側容器(1)の前記下端(4)へと向いており、前記内側容器内空間(17)及び前記外側容器内空間(8)と流体連通している内側下入口(18)、及び
- 前記外側容器(1)の前記上端(2)へと向いており、前記外側容器内空間(8)及び前記内側容器内空間(17)と流体連通している内側上出口(19)、
を備える、内側容器(15)と、
- 前記内側容器内空間(17)と流体連通し、前記外側容器体(7)を横切っているトラバース導管(21)であって、それによって、生成物流を前記内側容器内空間(17)から前記外側容器(1)の外部へと運ぶことができ、前記トラバース導管(21)が、前記内側容器(15)の前記内側上出口(19)よりも前記長手方向軸線(6)に沿ってさらに下方の位置で前記外側容器体(7)を横切る、トラバース導管(21)と、
を備える、装置。
【請求項2】
前記第2のセクション(11)における前記外側容器内空間(8)の前記断面周長の前記第1のセクション(9)における前記外側容器内空間(8)の前記断面周長に対する比が、0.05~0.95、好ましくは0.1~0.9、より好ましくは0.25~0.8、さらにより好ましくは0.4~0.7、最も好ましくは0.5~0.6である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記上出口(3)に流体接続された冷却システムをさらに備え、前記冷却システムは、前記上出口(3)を通して前記外側容器内空間(8)から排出される蒸気生成物(30)の一部を凝縮させ、前記蒸気生成物(30)の前記凝縮分を前記外側容器内空間(8)に運んで戻すように構成されており、好ましくは前記冷却システムは、少なくとも1つのスプレーノズル(33)を備える、請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のセクション(9)及び/又は前記第2のセクション(11)における前記外側容器内空間(8)が、実質的に円筒形又は実質的に円錐台形、好ましくは実質的に円筒形である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1のセクション(9)が、前記多相炭化水素流(27)を前記外側容器内空間(8)中に接線方向に導入して渦流を作り出すように配置された第2の接線方向入口(13)を備える、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記第2のセクション(11)が、前記外側容器内空間(8)中に接線方向に流れを導入するように配置された下側接線方向入口(14)を備える、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記内側容器(15)が、前記内側上出口(19)と前記外側容器(1)の前記上端(2)との間に配置されたバリア(20)を備え、前記バリア(20)は、固体が前記内側上出口(19)を通して前記内側容器内空間(17)に進入することを少なくとも部分的にブロックするが、流体は、前記内側上出口(19)を通して前記内側容器内空間(17)から排出可能となるように配置されている、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
請求項1~請求項のいずれか一項に記載の装置において多相炭化水素流(27)の成分を分離するためのプロセスであって、前記プロセスは、
- 前記多相炭化水素流(27)を前記接線方向入口(10)を通して前記外側容器内空間(8)中に導入して渦流を作り出すステップであって、それによって、蒸気生成物(30)が前記炭化水素流から分離されて、前記上出口(3)に運ばれる、ステップ、
- 前記蒸気生成物(30)を前記上出口(3)から回収するステップ、
- 前記炭化水素流を前記第1のセクション(9)から前記第2のセクション(11)に運び、それによって、前記渦流の接線方向速度を増加させるステップであって、前記炭化水素流は、固体が富化された生成物流(28)と固体が低減された生成物流(25)とに分離され、前記固体が富化された生成物流(28)は、前記下出口(5)に運ばれる、ステップ、
- 前記下出口(5)から前記固体が富化された生成物流(28)を回収するステップ、
- 前記固体が低減された生成物流(25)を、前記内側容器下入口(18)を通して内側容器内空間(17)に運ぶステップ、及び
- 前記トラバース導管(21)を通して、前記内側容器内空間(17)から前記固体が低減された生成物流(25)を回収するステップ、
を含む、プロセス。
【請求項9】
前記上出口(3)を通して前記外側容器内空間(8)から排出される前記蒸気生成物(30)の一部を凝縮させ、前記蒸気生成物(30)の前記凝縮分を前記外側容器内空間(8)に運んで戻すステップをさらに含む、請求項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記凝縮が、前記蒸気生成物(30)上に流体を噴霧することによってなされ、前記流体の温度は、前記蒸気生成物(30)の温度よりも低く、好ましくは、前記流体の温度は、120℃~350℃、好ましくは150℃~300℃、特には180℃~250℃である、請求項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記流体が、前記回収された蒸気生成物(30)の一部を凝縮させ、再循環させることによって得られる、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記接線方向入口(10)における前記多相炭化水素流(27)の温度が、300℃~480℃、好ましくは330℃~450℃、より好ましくは350℃~420℃、最も好ましくは360℃~400℃である、請求項~請求項11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記多相炭化水素流(27)が、プラスチック材料の、好ましくはプラスチック廃棄物の解重合から得られる、請求項~請求項12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記プラスチック材料が、ポリエチレン及びポリプロピレンから好ましくは選択されるポリオレフィン、並びに/又はポリスチレンを含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記多相炭化水素流(27)が、アルミニウム粉末及び/又は有機リン化合物、特にはトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトから選択される不純物を含む、請求項~請求項14のいずれか一項に記載のプロセス。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相炭化水素流(27)の成分を分離するための装置であって、前記装置は、
- 上出口(3)を備えた上端(2)、下出口(5)を備えた下端(4)、並びに前記上端(2)と前記下端(4)との間に配置され、前記上出口(3)及び前記下出口(5)と流体連通している外側容器内空間(8)を有する外側容器体(7)を有し、長手方向軸線(6)が前記上端(2)と前記下端(4)との間に延びている、外側容器(1)であって、
前記外側容器体(7)は、
- 前記多相炭化水素流(27)を前記外側容器内空間(8)中に接線方向に導入して渦流を作り出すように配置された接線方向入口(10)を備えた第1のセクション(9)、及び
- 前記第1のセクション(9)よりも前記下端(4)寄りに配置された第2のセクション(11)であって、前記外側容器内空間(8)は、前記第2のセクション(11)において前記第1のセクション(9)よりも小さい断面周長を有する、第2のセクション(11)、
を備える、外側容器(1)と、
- 前記外側容器体(7)内に配置された内側容器(15)であって、前記内側容器(15)は、
- 内側容器内空間(17)を有する内側容器体(16)、
- 前記外側容器(1)の前記下端(4)へと向いており、前記内側容器内空間(17)及び前記外側容器内空間(8)と流体連通している内側下入口(18)、及び
- 前記外側容器(1)の前記上端(2)へと向いており、前記外側容器内空間(8)及び前記内側容器内空間(17)と流体連通している内側上出口(19)、
を備える、内側容器(15)と、
- 前記内側容器内空間(17)と流体連通し、前記外側容器体(7)を横切っているトラバース導管(21)であって、それによって、生成物流を前記内側容器内空間(17)から前記外側容器(1)の外部へと運ぶことができ、前記トラバース導管(21)が、前記内側容器(15)の前記内側上出口(19)よりも前記長手方向軸線(6)に沿ってさらに下方の位置で前記外側容器体(7)を横切る、トラバース導管(21)と、
を備える、装置。
【請求項2】
前記第2のセクション(11)における前記外側容器内空間(8)の前記断面周長の前記第1のセクション(9)における前記外側容器内空間(8)の前記断面周長に対する比が、0.05~0.95、好ましくは0.1~0.9、より好ましくは0.25~0.8、さらにより好ましくは0.4~0.7、最も好ましくは0.5~0.6である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記上出口(3)に流体接続された冷却システムをさらに備え、前記冷却システムは、前記上出口(3)を通して前記外側容器内空間(8)から排出される蒸気生成物(30)の一部を凝縮させ、前記蒸気生成物(30)の前記凝縮分を前記外側容器内空間(8)に運んで戻すように構成されており、好ましくは前記冷却システムは、少なくとも1つのスプレーノズル(33)を備える、請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のセクション(9)及び/又は前記第2のセクション(11)における前記外側容器内空間(8)が、実質的に円筒形又は実質的に円錐台形、好ましくは実質的に円筒形である、請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記第1のセクション(9)が、前記多相炭化水素流(27)を前記外側容器内空間(8)中に接線方向に導入して渦流を作り出すように配置された第2の接線方向入口(13)を備える、請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記第2のセクション(11)が、前記外側容器内空間(8)中に接線方向に流れを導入するように配置された下側接線方向入口(14)を備える、請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記内側容器(15)が、前記内側上出口(19)と前記外側容器(1)の前記上端(2)との間に配置されたバリア(20)を備え、前記バリア(20)は、固体が前記内側上出口(19)を通して前記内側容器内空間(17)に進入することを少なくとも部分的にブロックするが、流体は、前記内側上出口(19)を通して前記内側容器内空間(17)から排出可能となるように配置されている、請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の装置において多相炭化水素流(27)の成分を分離するためのプロセスであって、前記プロセスは、
- 前記多相炭化水素流(27)を前記接線方向入口(10)を通して前記外側容器内空間(8)中に導入して渦流を作り出すステップであって、それによって、蒸気生成物(30)が前記炭化水素流から分離されて、前記上出口(3)に運ばれる、ステップ、
- 前記蒸気生成物(30)を前記上出口(3)から回収するステップ、
- 前記炭化水素流を前記第1のセクション(9)から前記第2のセクション(11)に運び、それによって、前記渦流の接線方向速度を増加させるステップであって、前記炭化水素流は、固体が富化された生成物流(28)と固体が低減された生成物流(25)とに分離され、前記固体が富化された生成物流(28)は、前記下出口(5)に運ばれる、ステップ、
- 前記下出口(5)から前記固体が富化された生成物流(28)を回収するステップ、
- 前記固体が低減された生成物流(25)を、前記内側容器下入口(18)を通して内側容器内空間(17)に運ぶステップ、及び
- 前記トラバース導管(21)を通して、前記内側容器内空間(17)から前記固体が低減された生成物流(25)を回収するステップ、
を含む、プロセス。
【請求項9】
前記上出口(3)を通して前記外側容器内空間(8)から排出される前記蒸気生成物(30)の一部を凝縮させ、前記蒸気生成物(30)の前記凝縮分を前記外側容器内空間(8)に運んで戻すステップをさらに含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記凝縮が、前記蒸気生成物(30)上に流体を噴霧することによってなされ、前記流体の温度は、前記蒸気生成物(30)の温度よりも低く、好ましくは、前記流体の温度は、120℃~350℃、好ましくは150℃~300℃、特には180℃~250℃である、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記流体が、前記回収された蒸気生成物(30)の一部を凝縮させ、再循環させることによって得られる、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記接線方向入口(10)における前記多相炭化水素流(27)の温度が、300℃~480℃、好ましくは330℃~450℃、より好ましくは350℃~420℃、最も好ましくは360℃~400℃である、請求項8に記載のプロセス。
【請求項13】
前記多相炭化水素流(27)が、プラスチック材料の、好ましくはプラスチック廃棄物の解重合から得られる、請求項8に記載のプロセス。
【請求項14】
前記プラスチック材料が、ポリエチレン及びポリプロピレンから好ましくは選択されるポリオレフィン、並びに/又はポリスチレンを含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記多相炭化水素流(27)が、アルミニウム粉末及び/又は有機リン化合物、特にはトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトから選択される不純物を含む、請求項8に記載のプロセス。
【国際調査報告】