(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】分化全能性幹細胞由来の造血幹細胞の製造方法、及び製造された造血幹細胞を利用したヒト化マウスモデル作製方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0789 20100101AFI20240822BHJP
A01K 67/027 20240101ALI20240822BHJP
【FI】
C12N5/0789 ZNA
A01K67/027
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515340
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-04-16
(86)【国際出願番号】 KR2022013463
(87)【国際公開番号】W WO2023038436
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0121174
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518018056
【氏名又は名称】スンクワン メディカル ファウンデーション
(71)【出願人】
【識別番号】519137394
【氏名又は名称】チャ ユニバーシティ インダストリー-アカデミック コオペレーション ファンデーション
【住所又は居所原語表記】CHA University, 120, Haeryong-ro, Pocheon-si, Gyeonggi-do 11160, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン,ウン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ヨンミ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065BD03
4B065BD25
4B065CA44
(57)【要約】
本発明は、分化全能性幹細胞由来の造血幹細胞の製造方法、及び製造された造血幹細胞を利用し、ヒト化マウスモデルを作製する方法に係り、一態様によれば、造血幹細胞の製造方法は、遺伝子挿入なしに、低分子化合物とタンパク質成長因子との組み合わせによる最適の分化条件が確認されたが、分化全能性幹細胞から造血幹細胞を高効率に分化させうる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分化全能性幹細胞(PSC)をGSK(glycogen synthase kinase)阻害剤が含まれた培地で一次培養し、中胚葉系細胞を得る段階と、
(B)前記中胚葉系細胞を二次培養し、血管芽細胞に誘導または分化させる段階と、
(C)前記血管芽細胞を三次培養し、EHT(endothelial-to-hematopoietic transition)誘導された血管芽細胞を得る段階と、
(D)前記EHT誘導された血管芽細胞を四次培養し、造血幹細胞に誘導または分化させる段階と、を含む、造血幹細胞の製造方法。
【請求項2】
前記GSK(glycogen synthase kinase)阻害剤は、CHIR99021である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二次培養は、BMP4(bone morphogenetic protein 4)、VEGF(vascular endothelial growth factor)及びbFGF(basic fibroblast growth factor)からなる群のうちから選択された1以上を含む培地で培養する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記三次培養は、TGF-β阻害剤を含む培地で培養する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記TGF-β阻害剤は、SB-431542である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記三次培養は、レチノイン酸(RA)、またはその薬学的に許容可能な塩を追加して含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記三次培養は、VEGF及びbFGFからなる群のうちから選択された1以上を追加して含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記四次培養は、PVA(polyvinyl alcohol)、またはその薬学的に許容可能な塩を含む培地で培養する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記四次培養は、SCF及びbFGFからなる群のうちから選択された1以上を追加して含む培地で培養する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ヒトを除いた個体に、請求項1に記載の方法によって製造された造血幹細胞を移植したり導入したりする段階を含む、ヒト化動物モデル作製方法。
【請求項11】
請求項10に記載のヒト化動物モデル作製方法によって作製された、ヒト化動物モデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分化全能性幹細胞由来の造血幹細胞の製造方法、及び前記製造された造血幹細胞を利用してヒト化マウスモデルを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトを対象にした疾病の研究は限界があるので、ヒトと遺伝的に非常に類似していると知られた動物を利用した疾病モデルが有用に利用されている。具体的には、対象になる疾病をモデル動物に発病させ、多様な治療剤を適用して治療方法を探索する。しかしながら、動物疾病モデルにおいて治療効果を有する治療剤がヒトに適用されるときにも、同一効果を有するか否かということは、知りうることではないので、該動物疾病モデルで確認された治療剤を直接ヒトに適用することはできず、臨床適用までさまざまな段階を経る。
【0003】
さらに効果的に動物疾病モデルを利用するため、最近では、ヒトの免疫体系と類似した免疫体系を有するヒト化された動物モデルを構築するための努力が活発に進められている。ヒト化動物モデル、特に、ヒト化マウスを構築するために、免疫機能が欠乏したマウスに、造血幹細胞を移植する方法が利用された。例えば、SCID(severe combined immune deficiency)マウスに、ヒトのCD34+細胞を移植した結果、マウスの全ての組織において、ヒト由来造血幹細胞が少量発現され、組織的に再形成されたということが確認された。
【0004】
造血幹細胞は、臍帯血に由来し、主に骨髄に存在しながら、増殖及び分化を介し、赤血球、白血球、血小板のような血液細胞を作り出すことができ、幹細胞の特徴である自家複製能、多細胞分裂能、多分化潜在能などを有している。該造血幹細胞は、安定した状態において、一日に約4X1011個の血液細胞を生成することができる。そのような造血幹細胞は、ヒト化動物モデルを作製するのに使用するだけではなく、急性白血病、慢性白血病、再生不良性貧血、骨髄異形成症侯群、多発性骨髄腫のような血液癌関連疾患;乳癌、腎臓癌、卵巣癌などの固形癌;不応性全身性紅斑性狼瘡、不応性リウマチ関節炎のような自己免疫疾患などの治療に、該造血幹細胞の移植治療が臨床的に活性化されている。
【0005】
しかしながら、そのような造血幹細胞は、非常に低い比率で存在するために、離に困難な点が多く、分化及び増殖の条件も複雑であって入り組んでいるために、効果的な造血幹細胞の分化及び自家増殖促進の技術開発がいまだになされていない。
【0006】
それにより、本発明者らは、遺伝子挿入なしに、低分子化合物とタンパク質成長因子との最適の組み合わせだけにより、分化全能性幹細胞から造血幹細胞を高効率に分化させ、容易に得ることができる方法を開発し、前述のような問題点を解決した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一態様は、(A)分化全能性幹細胞(PSC:pluripotent stem cell)をGSK(glycogen synthase kinase)阻害剤が含まれた培地において一次培養し、中胚葉系細胞を得る段階と、(B)前記中胚葉系細胞を二次培養し、血管芽細胞に誘導または分化させる段階と、(C)前記血管芽細胞を三次培養し、EHT(endothelial-to-hematopoietic transition)誘導された血管芽細胞を得る段階と、(D)前記EHT誘導された血管芽細胞を四次培養し、造血幹細胞に誘導または分化させる段階と、を含む、造血幹細胞の製造方法を提供する。
【0008】
他の態様は、ヒトを除いた個体に、前記造血幹細胞の製造方法によって製造された造血幹細胞を移植したり導入したりする段階を含むヒト化動物モデル作製方法を提供する。
【0009】
さらに他の態様は、前記ヒト化動物モデル作製方法によって作製されたヒト化動物モデルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様は、(A)分化全能性幹細胞(PSC:pluripotent stem cell)をGSK(glycogen synthase kinase)阻害剤が含まれた培地で一次培養し、中胚葉系細胞を得る段階と、(B)前記中胚葉系細胞を二次培養し、血管芽細胞において、誘導または分化させる段階と(C)前記血管芽細胞を三次培養し、EHT(endothelial-to-hematopoietic transition)誘導された血管芽細胞を得る段階と、(D)前記EHT誘導された血管芽細胞を四次培養し、造血幹細胞に誘導または分化させる段階と、を含む、造血幹細胞の製造方法を提供するものである。
【0011】
本明細書における用語「造血幹細胞(HSC:hematopoietic stem cell)」は、赤血球・白血球・血小板を作る未分化の骨髄造血細胞の先祖細胞を意味し、造血幹細胞とも呼ばれる。健常人の骨髄血液には、全ての血液細胞を作り出すことができる能力を有する細胞(CD34陽性細胞)が約1%ほど存在するが、それを造血幹細胞と言う。血を作る母細胞という意味において、全身で発見されるが、特に、骨髄で大量に生産される。該細胞から、血を構成する細胞に該当する赤血球・白血球・血小板が分化されて作られる。併せて、全く同じ自体を作り出すことができる自己複製機能も有しており、骨髄の総造血幹細胞において、0.05~0.25%ほどを占める。末梢血液造血幹細胞は、骨髄に由来し、血流を循環する造血幹細胞として、自己複製及び成熟された細胞に分化する性質を有している。
【0012】
本明細書における用語「分化全能性幹細胞(PSC:pluripotent stem cell)」は、内胚葉、中胚葉、外胚葉を構成するほとんど全ての種類の細胞に分化しうる幹細胞を意味する。前記分化全能性幹細胞は、試験管内(in vitro)培養でもって、未分化状態を維持させた状態に、ほぼ永久または長期間細胞増殖が可能であり、正常な染色体型を示し、適正条件においては、三胚葉(外胚葉、中胚葉及び内胚葉)の全ての細胞に分化自在な能力を有している。伝統的には、受精卵由来の胚芽組織と、胚盤胞を介して得られる胚芽幹細胞(embryonic stem cell)とが代表的な分化全能性幹細胞に含まれる。しかしながら、該胚芽幹細胞は、供与者と宿主との組織的合成抗原差による免疫拒否反応可能性があり、そのような問題を克服した遺伝子オンデマンド分化全能性幹細胞が開発された。その一つは、体細胞と卵子との核を置換させた後、胚芽で得られる複製胚芽幹細胞であり、もう一つは、体細胞を、遺伝子操作によって反対に逆分化させ、胚芽幹細胞とほぼ同一状態の分化全能性幹細胞に逆に作った誘導逆分化幹細胞(iPS:induced pluripotent stem cell)がある。特に、誘導逆分化幹細胞(iPS)は、過去、胚芽幹細胞や複製胚芽幹細胞におけるような生命倫理的葛藤なしにも、患者自分の体細胞から、オンデマンド分化全能性幹細胞を得ることができることになった。
【0013】
前記分化全能性幹細胞は、初期胚芽から分離された胚芽幹細胞または逆分化幹細胞、あるいはその類似細胞、及び胎児期の原始生殖細胞から分離された胚芽生殖細胞を含む群のうちから選択されるものでもあり、ヒト分化全能性幹細胞でもある。
【0014】
前記造血幹細胞の製造方法は、分化全能性幹細胞由来の造血幹細胞を製造する方法でもあり、具体的には、分化全能性幹細胞を造血幹細胞に誘導/分化させる方法、または分化全能性幹細胞から造血幹細胞への分化を増進させるための方法でもある。また、前記方法によって製造された造血幹細胞は、CD34陽性(CD34+)細胞でもあり、具体的には、CD34陽性及びCD45陽性(CD34+CD45+)細胞でもある。
【0015】
本明細書における用語「分化」は、特化されていない細胞が特定細胞に発達する過程を意味するものであり、特に、幹細胞から特定細胞に発達する過程を含む。本発明においては、分化能を有する細胞として分化全能性幹細胞を使用し、前記分化全能性幹細胞は、中胚葉(中胚葉系細胞)、血管芽細胞を経て、造血幹細胞に分化されうる。
【0016】
前記方法において、前記(A)段階は、分化全能性幹細胞を一次培養する段階であり、具体的には、分化全能性幹細胞を中胚葉(中胚葉系細胞)に誘導または分化させる段階でもある。
【0017】
前記一次培養する段階は、分化全能性幹細胞を、GSK(glycogen synthase kinase)阻害剤を含む培地で培養するものでもあり、前記培地は、中胚葉分化/誘導培地でもある。
【0018】
本明細書における用語「GSK(glycogen synthase kinase)阻害剤」は、GSK(glycogen synthase kinase)信号伝達過程に関与するGSK1/2のアップストリーム(upstream)分子であるGSK1/2を標的にする物質を意味する。前記GSK阻害剤は、CHIR99021、1-azakenpaullone、AZD2858、BIO、ARA014418、Indirubin-3’-monoxime、5-Iodo-indirubin-3’-monoxime、kenpaullone、SB-415286、SB-216763、Maybridge SEW00923SC、(Z)-5-(2,3-Methylenedioxyphenyl)-imidazolidine-2,4-dione、TWS 119、CHIR98014、SB415286、Tideglusib、LY2090314、及びそれらの薬学的に許容可能な塩によって構成された群のうちから選択された1以上を含むものでもあり、具体的には、CHIR99021、またはその薬学的に許容可能な塩でもある。
【0019】
本明細書における用語「CHIR99021(6-[2-[[4-(2,4-Dichlorophenyl)-5-(5-methyl-1H-imidazol-2-yl)pyrimidin-2-yl]amino]ethylamino]]-3-pyridinecarbonitrile)(6-[2-[[4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)ピリミジン-2-イル]アミノ]エチルアミノ]ピリジン-3-カルボニトリル)」は、GSK(glycogen synthase kinase)阻害剤であり、GSK信号伝達過程に関与するGSK1/2のアップストリーム分子であるGSK1/2を標的にする物質であり、アミノピリミディン(aminopyrimidine)と表示されうる。前記CHIR99021は、C22H18Cl2N8の化学式で表示され、下記の化学式1の構造式によって表現されうる。
【0020】
【0021】
前記CHIR99021は、2ないし8μMの濃度で培地に含まれるものでもあり、具体的には、2ないし8μM、2ないし7.5μM、2ないし7μM、2ないし6.5μM、2ないし6μM、2ないし5.5μM、2.5ないし8μM、2.5ないし7.5μM、2.5ないし7μM、2.5ないし6.5μM、2.5ないし6μM、2.5ないし5.5μM、3ないし8μM、3ないし7.5μM、3ないし7μM、3ないし6.5μM、3ないし6μM、3ないし5.5μM、3.5ないし8μM、3.5ないし7.5μM、3.5ないし7μM、3.5ないし6.5μM、3.5ないし6μM、3.5ないし5.5μM、4ないし8μM、4ないし7.5μM、4ないし7μM、4ないし6.5μM、4ないし6μM、4ないし5.5μM、4.5ないし8μM、4.5ないし7.5μM、4.5ないし7μM、4.5ないし6.5μM、4.5ないし6μM、または4.5ないし5.5μMの濃度で培地に含まれるものでもある。
【0022】
また、前記一次培養する段階の培地は、BMP4及びbFGFを含まないものでもあり、具体的には、基本培養培地に、GSK阻害剤だけ単独に添加されるものでもある。
【0023】
前記一次培養する段階は、分化全能性幹細胞を、24時間ないし72時間培養するものでもあり、具体的には、24時間ないし72時間、24時間ないし66時間、24時間ないし60時間、24時間ないし54時間、30時間ないし72時間、30時間ないし66時間、30時間ないし60時間、30時間ないし54時間、36時間ないし72時間、36時間ないし66時間、36時間ないし60時間、36時間ないし54時間、42時間ないし72時間、42時間ないし66時間、42時間ないし60時間、または42時間ないし54時間培養するものでもある。
【0024】
前記方法において、前記(B)段階は、前記一次培養された細胞を二次培養する段階であり、具体的には、分化全能性幹細胞から分化された中胚葉(中胚葉系細胞)を、血管芽細胞に誘導または分化させる段階でもある。
【0025】
本明細書における用語「血管芽細胞(hemangioblast)」は、造血幹細胞または内皮細胞に分化しうる多能性前駆体細胞である。マウス胚芽において、胚芽7日目に、卵黄嚢に血液島が出現すれば造血が始まるのに、前記血液島から造血細胞と血管構造が形成される。血管芽細胞は、血島を形成する前駆細胞である。
【0026】
前記二次培養する段階は、一次培養された細胞または分化全能性幹細胞から分化された中胚葉(中胚葉系細胞)を、BMP4(bone morphogenetic protein 4)、VEGF(vascular endothelial growth factor)及びbFGF(basic fibroblast growth factor)によって構成された群のうちから選択された1以上を含む培地で培養するものもあり、具体的には、BMP4、VEGF及びbFGFを含む培地で培養するものでもある。前記培地は、血管芽細胞分化/誘導培地でもある。
【0027】
前記BMP4は、20ないし80ng/mlの濃度で培地に含まれるものでもあり、具体的には、20ないし80ng/ml、20ないし75ng/ml、20ないし70ng/ml、20ないし65ng/ml、20ないし60ng/ml、20ないし55ng/ml、25ないし80ng/ml、25ないし75ng/ml、25ないし70ng/ml、25ないし65ng/ml、25ないし60ng/ml、25ないし55ng/ml、30ないし80ng/ml、30ないし75ng/ml、30ないし70ng/ml、30ないし65ng/ml、30ないし60ng/ml、30ないし55ng/ml、35ないし80ng/ml、35ないし75ng/ml、35ないし70ng/ml、35ないし65ng/ml、35ないし60ng/ml、35ないし55ng/ml、40ないし80ng/ml、40ないし75ng/ml、40ないし70ng/ml、40ないし65ng/ml、40ないし60ng/ml、40ないし55ng/ml、45ないし80ng/ml、45ないし75ng/ml、45ないし70ng/ml、45ないし65ng/ml、45ないし60ng/ml、または45ないし55ng/mlの濃度で培地に含まれるものでもある。
【0028】
前記bFGFは、80ないし120ng/mlの濃度で培地に含まれるものでもあり、具体的には、80ないし120ng/ml、80ないし115ng/ml、80ないし110ng/ml、80ないし105ng/ml、85ないし120ng/ml、85ないし115ng/ml、85ないし110ng/ml、85ないし105ng/ml、90ないし120ng/ml、90ないし115ng/ml、90ないし110ng/ml、90ないし105ng/ml、95ないし120ng/ml、95ないし115ng/ml、95ないし110ng/ml、または95ないし105ng/mlの濃度で培地に含まれるものでもある。
【0029】
前記VEGFは、20ないし80ng/mlの濃度で培地に含まれるものでもあり、具体的には、20ないし80ng/ml、20ないし75ng/ml、20ないし70ng/ml、20ないし65ng/ml、20ないし60ng/ml、20ないし55ng/ml、25ないし80ng/ml、25ないし75ng/ml、25ないし70ng/ml、25ないし65ng/ml、25ないし60ng/ml、25ないし55ng/ml、30ないし80ng/ml、30ないし75ng/ml、30ないし70ng/ml、30ないし65ng/ml、30ないし60ng/ml、30ないし55ng/ml、35ないし80ng/ml、35ないし75ng/ml、35ないし70ng/ml、35ないし65ng/ml、35ないし60ng/ml、35ないし55ng/ml、40ないし80ng/ml、40ないし75ng/ml、40ないし70ng/ml、40ないし65ng/ml、40ないし60ng/ml、40ないし55ng/ml、45ないし80ng/ml、45ないし75ng/ml、45ないし70ng/ml、45ないし65ng/ml、45ないし60ng/ml、または45ないし55ng/mlの濃度で培地に含まれるものでもある。
【0030】
前記二次培養する段階は、24時間ないし72時間培養するものでもあり、具体的には、24時間ないし72時間、24時間ないし66時間、24時間ないし60時間、24時間ないし54時間、30時間ないし72時間、30時間ないし66時間、30時間ないし60時間、30時間ないし54時間、36時間ないし72時間、36時間ないし66時間、36時間ないし60時間、36時間ないし54時間、42時間ないし72時間、42時間ないし66時間、42時間ないし60時間、または42時間ないし54時間培養するものでもある。
【0031】
前記方法において、前記(C)段階は、前記二次培養された細胞を三次培養する段階であり、具体的には、中胚葉(中胚葉系細胞)から分化された血管芽細胞に、EHT(endothelial-to-hematopoietic transition)を誘導させ、EHT誘導された血管芽細胞を得る段階でもある。
【0032】
本明細書における用語「EHT(endothelial-to-hematopoietic transition)」は、内皮特性から造血特性に転移される過程であり、具体的には、内皮形質を示す細胞からの造血熟度の上昇を誘導することを意味する。
【0033】
前記三次培養する段階は、二次培養された細胞または中胚葉から分化された血管芽細胞を、TGF-β阻害剤を含む培地で培養するものでもあり、前記培地は、EHT誘導培地でもある。
【0034】
本明細書における用語「TGF-β阻害剤」は、TGF-βとTGF-β受容体(TGF-βR)との相互作用を抑制するものであり、TGF-β経路を抑制する分子を意味する。前記TGF-β阻害剤は、SB-431542(SB4)、ガルニセルチプ(galunisertib)、LY2109761、SB525334、SP505124、GW788388、LY364947、RepSox、SD-208、バクトセルティブ(vactosertib)、LY3200882、PF-06952229、及びそれらの薬学的に許容可能な塩によって構成された群のうちから選択された1以上を含むものでもあり、具体的には、SB-431542(SB4)、またはその薬学的に許容可能な塩でもある。
【0035】
本明細書における用語「SB-431542(SB4)」は、TGF-β阻害剤として知られており、C22H16N4O3の化学式によって表示され、下記化学式2の構造式によって表現されうる。
【0036】
【0037】
前記SB-431542は、7ないし13μMの濃度で培地に含まれるものでもあり、具体的には、7ないし13μM、7ないし12.5μM、7ないし12μM、7ないし11.5μM、7ないし11μM、7ないし10.5μM、7.5ないし13μM、7.5ないし12.5μM、7.5ないし12μM、7.5ないし11.5μM、7.5ないし11μM、7.5ないし10.5μM、8ないし13μM、8ないし12.5μM、8ないし12μM、8ないし11.5μM、8ないし11μM、8ないし10.5μM、8.5ないし13μM、8.5ないし12.5μM、8.5ないし12μM、8.5ないし11.5μM、8.5ないし11μM、8.5ないし10.5μM、9ないし13μM、9ないし12.5μM、9ないし12μM、9ないし11.5μM、9ないし11μM、9ないし10.5μM、9.5ないし13μM、9.5ないし12.5μM、9.5ないし12μM、9.5ないし11.5μM、9.5ないし11μM、または9.5ないし10.5μMの濃度で培地に含まれるものでもある。
【0038】
前記三次培養する段階の培地は、レチノイン酸(RA:retinoic acid)、またはその薬学的に許容可能な塩を追加して含むものでもある。
【0039】
前記レチノイン酸は、0.5ないし1.5μMの濃度で培地に含まれるものでもあり、具体的には、0.5ないし1.5μM、0.5ないし1.3μM、0.5ないし1.1μM、0.7ないし1.5μM、0.7ないし1.3μM、0.7ないし1.1μM、0.9ないし1.5μM、0.9ないし1.3μM、または0.9ないし1.1μMの濃度で培地に含まれるものでもある。
【0040】
前記三次培養する段階の培地は、VEGF及びbFGFによって構成された群のうちから選択された1以上を追加して含むものでもあり、具体的には、VEGF及びbFGFを追加して含むものでもある。
【0041】
前記VEGF及び前記bFGFは、それぞれ20ないし80ng/mlの濃度で培地に含まれるものでもあり、具体的には、20ないし80ng/ml、20ないし75ng/ml、20ないし70ng/ml、20ないし65ng/ml、20ないし60ng/ml、20ないし55ng/ml、25ないし80ng/ml、25ないし75ng/ml、25ないし70ng/ml、25ないし65ng/ml、25ないし60ng/ml、25ないし55ng/ml、30ないし80ng/ml、30ないし75ng/ml、30ないし70ng/ml、30ないし65ng/ml、30ないし60ng/ml、30ないし55ng/ml、35ないし80ng/ml、35ないし75ng/ml、35ないし70ng/ml、35ないし65ng/ml、35ないし60ng/ml、35ないし55ng/ml、40ないし80ng/ml、40ないし75ng/ml、40ないし70ng/ml、40ないし65ng/ml、40ないし60ng/ml、40ないし55ng/ml、45ないし80ng/ml、45ないし75ng/ml、45ないし70ng/ml、45ないし65ng/ml、45ないし60ng/ml、または45ないし55ng/mlの濃度で培地に含まれるものでもある。
【0042】
前記三次培養する段階は、12時間ないし44時間培養するものでもあり、具体的には、12時間ないし44時間、12時間ないし40時間、12時間ないし36時間、12時間ないし32時間、12時間ないし28時間、16時間ないし44時間、16時間ないし40時間、16時間ないし36時間、16時間ないし32時間、16時間ないし28時間、20時間ないし44時間、20時間ないし40時間、20時間ないし36時間、20時間ないし32時間、または20時間ないし28時間培養するものでもある。
【0043】
前記方法において、前記(D)段階は、前記三次培養された細胞を四次培養する段階であり、血管芽細胞、具体的には、EHT誘導された血管芽細胞を造血幹細胞に分化/誘導させる段階でもある。前記分化された造血幹細胞は、CD34+造血幹細胞でもある。
【0044】
前記四次培養する段階は、三次培養された細胞、またはEHT誘導された血管芽細胞をPVA(polyvinyl alcohol)、またはその薬学的に許容可能な塩を含む培地で培養するものでもある。前記培地は、造血幹細胞分化/誘導培地でもある。
【0045】
前記PVAは、0.01%ないし0.5%(w/v)の濃度で培地に含まれるものでもあり、具体的には、0.01ないし0.5%(w/v)、0.01ないし0.4%(w/v)、0.01ないし0.3%(w/v)、0.01ないし0.2%(w/v)、0.01ないし0.15%(w/v)、0.03ないし0.5%(w/v)、0.03ないし0.4%(w/v)、0.03ないし0.3%(w/v)、0.03ないし0.2%(w/v)、0.03ないし0.15%(w/v)、0.05ないし0.5%(w/v)、0.05ないし0.4%(w/v)、0.05ないし0.3%(w/v)、0.05ないし0.2%(w/v)、0.05ないし0.15%(w/v)、0.07ないし0.5%(w/v)、0.07ないし0.4%(w/v)、0.07ないし0.3%(w/v)、0.07ないし0.2%(w/v)、0.07ないし0.15%(w/v)、0.09ないし0.5%(w/v)、0.09ないし0.4%(w/v)、0.09ないし0.3%(w/v)、0.09ないし0.2%(w/v)、または0.09ないし0.15%(w/v)の濃度で培地に含まれるものでもある。
【0046】
前記四次培養する段階の培地は、SCF(stem cell factor)及びbFGFによって構成された群のうちから選択された1以上を追加して含むものでもあり、具体的には、SCF及びbFGFを追加して含むものでもある。
【0047】
前記SCFは、20ないし80ng/mlの濃度で培地に含まれるものでもあり、具体的には、20ないし80ng/ml、20ないし75ng/ml、20ないし70ng/ml、20ないし65ng/ml、20ないし60ng/ml、20ないし55ng/ml、25ないし80ng/ml、25ないし75ng/ml、25ないし70ng/ml、25ないし65ng/ml、25ないし60ng/ml、25ないし55ng/ml、30ないし80ng/ml、30ないし75ng/ml、30ないし70ng/ml、30ないし65ng/ml、30ないし60ng/ml、30ないし55ng/ml、35ないし80ng/ml、35ないし75ng/ml、35ないし70ng/ml、35ないし65ng/ml、35ないし60ng/ml、35ないし55ng/ml、40ないし80ng/ml、40ないし75ng/ml、40ないし70ng/ml、40ないし65ng/ml、40ないし60ng/ml、40ないし55ng/ml、45ないし80ng/ml、45ないし75ng/ml、45ないし70ng/ml、45ないし65ng/ml、45ないし60ng/ml、または45ないし55ng/mlの濃度で培地に含まれるものでもある。
【0048】
前記bFGFは、7ないし13ng/mlの濃度で培地に含まれるものでもあり、具体的には、7ないし13ng/ml、7ないし12.5ng/ml、7ないし12ng/ml、7ないし11.5ng/ml、7ないし11ng/ml、7ないし10.5ng/ml、7.5ないし13ng/ml、7.5ないし12.5ng/ml、7.5ないし12ng/ml、7.5ないし11.5ng/ml、7.5ないし11ng/ml、7.5ないし10.5ng/ml、8ないし13ng/ml、8ないし12.5ng/ml、8ないし12ng/ml、8ないし11.5ng/ml、8ないし11ng/ml、8ないし10.5ng/ml、8.5ないし13ng/ml、8.5ないし12.5ng/ml、8.5ないし12ng/ml、8.5ないし11.5ng/ml、8.5ないし11ng/ml、8.5ないし10.5ng/ml、9ないし13ng/ml、9ないし12.5ng/ml、9ないし12ng/ml、9ないし11.5ng/ml、9ないし11ng/ml、9ないし10.5ng/ml、9.5ないし13ng/ml、9.5ないし12.5ng/ml、9.5ないし12ng/ml、9.5ないし11.5ng/ml、9.5ないし11ng/ml、または9.5ないし10.5ng/mlの濃度で培地に含まれるものでもある。
【0049】
前記四次培養する段階の培地は、VEGF、IL-3及びIL-6によって構成された群のうちから選択された1以上を含まないものでもあり、具体的には、VEGF、IL-3及びIL-6を含まないものでもある。
【0050】
前記四次培養する段階は、168時間ないし360時間培養するものでもあり、具体的には、168時間ないし360時間、168時間ないし348時間、168時間ないし336時間、168時間ないし324時間、168時間ないし312時間、168時間ないし300時間、168時間ないし288時間、192時間ないし360時間、192時間ないし348時間、192時間ないし336時間、192時間ないし324時間、192時間ないし312時間、192時間ないし300時間、192時間ないし288時間、216時間ないし360時間、216時間ないし348時間、216時間ないし336時間、216時間ないし324時間、216時間ないし312時間、216時間ないし300時間、216時間ないし288時間、240時間ないし360時間、240時間ないし348時間、240時間ないし336時間、240時間ないし324時間、240時間ないし312時間、240時間ないし300時間、または240時間ないし288時間培養するものでもある。
【0051】
前記造血幹細胞の製造方法は、分化全能性幹細胞から分化された造血幹細胞を維持するために培養する段階を追加して含むものでもある。
【0052】
前記造血幹細胞を維持するために培養する段階は、分化された造血幹細胞の生物学的/生理学的特徴を維持させるものであり、具体的には、分化された造血幹細胞の老化及び分化を抑制し、CD34+ポテンシャルを維持するためのものでもある。
【0053】
前記維持するための培養は、前記四次培養する段階の培地を利用するものでもあり、1日間ないし20日間培養しうる。
【0054】
前記方法は、前記四次培養された細胞、具体的には、分化全能性幹細胞から分化された造血幹細胞を回収する段階を追加して含むものでもある。
【0055】
前記造血幹細胞の製造方法で使用される基本培地としては、当業界において、幹細胞の培養及び分化に適すると知られた一般的な培地を使用しうるが、例えば、DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)、MEM(Minimal Essential Medium)、BME(Basal Medium Eagle)、RPMI1640、F-10、F-12、α-MEM(α-Minimal Essential Medium)、GMEM(Glasgow’s Minimal Essential Medium)、IMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)、Stempro 34-SFM及びStempro 34などがあるが、それらに制限されるものではない。
【0056】
前記基本培地には、添加剤が補充されうる。一般的に、等張液内の中性緩衝剤(例:リン酸塩及び/または高濃度重炭酸塩)、及びタンパク質栄養分(例:血清(例:FBS)、血清代替物、アルブミン、または必須アミノ酸及び非必須アミノ酸(例:グルタミン))を含むものでもある。さらには、脂質(脂肪酸、コレステロール、血清のHDL抽出物またはLDL抽出物)、及び該種類のほとんどの保存液培地において発見されるその他成分(例:インスリンまたはトランスフェリン、ヌクレオシドまたはヌクレオチド、ピルビン酸塩、任意のイオン化形態または塩である糖源(例:グルコース)、セレン、グルココルチコイド(例:ヒドロコルチゾン)、及び/または還元剤(例:β-メルカプトエタノール)を含むものでもある。また、前記培地は、ペニシリン(penicillin)、ストレプトマイシン(streptomycin)、ゲンタマイシン(gentamicin)、またはそれらの2以上の混合物のような抗生物質を含むものでもある。
【0057】
前記造血幹細胞の製造方法は、分化全能性幹細胞を造血幹細胞に分化させるものであり、1)分化全能性幹細胞を、4ないし6μM CHIR99021を含む培地において、約2日間培養し、中胚葉(中胚葉系細胞/中胚葉系幹細胞)に分化/誘導させる段階と、2)分化された中胚葉を、40ないし60ng/ml BMP4、90ないし100ng/ml bFGF、及び40ないし60ng/ml VEGFを含む培地において、約2日間培養し、血管芽細胞に分化/誘導させる段階と、3)血管芽細胞を、40ないし60ng/ml bFGF、40ないし60ng/ml VEGF、9ないし11μMSB-431542、及び0.8ないし1.2μMレチノイン酸を含む培地において、約1日間培養し、EHTを誘導する段階と、4)EHT誘導された血管芽細胞を、0.05%ないし0.15% PVA、40ないし60ng/ml SCF、及び9ないし11ng/ml bFGFを含む培地において、約11日間培養し、造血幹細胞に分化/誘導させる段階と、を含むものでもある。また、基本培養培地として、200μg/mlヒトトランスフェリン(human transferrin)、2mM L-グルタミン(L-glutamine)、0.5mM L-アスコルビン酸(L-ascobic acid)、0.45mM MTG(1-thioglycerol)、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(penicillin/streptomycin)が含まれたStempro 34-SFM(+stempro supplement)培地を使用することでもある。
【0058】
他の態様は、ヒトを除いた個体に、前記造血幹細胞の製造方法によって製造された造血幹細胞を移植したり導入したりする段階を含むヒト化動物モデル作製方法を提供する。前述の内容と重複される内容は、前記方法にも共に適用される。
【0059】
前記ヒト化動物モデルは、霊長類;マウス、ハムスター、モルモット、ラット、犬、猫、馬及び牛のような哺乳類でもあり、具体的には、マウスでもある。
【0060】
前記造血幹細胞を移植したり導入したりする段階は、前記方法によって製造された分化全能性幹細胞由来の造血幹細胞を、マウスの尾静脈に導入するものでもあり、具体的には、1~2x105個細胞を導入するものでもある。
【0061】
前記ヒトを除いた個体は、T細胞、B細胞、NK細胞などの機能が完全に欠け、免疫欠乏が誘導された個体でもあり、具体的には、放射能処理されたNSG(NOD scid gamma)マウスでもある。
【0062】
さらに他の態様は、前記ヒト化動物モデル作製方法によって作製されたヒト化動物モデルを提供する。前述の内容と重複される内容は、前記動物モデルにも共に適用される。
【0063】
前記ヒト化動物モデルは、霊長類;マウス、ハムスター、モルモット、ラット、犬、猫、馬及び牛などの哺乳類でもあり、具体的には、マウスでもある。
【発明の効果】
【0064】
一態様によれば、前記方法は、遺伝子挿入なしに、低分子化合物とタンパク質成長因子との組み合わせによる最適の分化条件が確認されたが、分化全能性幹細胞から造血幹細胞を高効率に分化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】本発明の新規の分化全能性幹細胞由来の造血幹細胞分化プロトコルを概略的に示した図である。
【
図2】本発明の分化全能性幹細胞由来の造血幹細胞分化プロトコルを具体的に記載した図である。
【
図3】造血幹細胞誘導段階の一次条件を確立するための比較実験結果を示した図である。
【
図4】中胚葉誘導段階の条件を確立するための比較実験結果を示した図である。
【
図5】EHT誘導段階の条件を確立するための比較実験結果を示した図である。
【
図6】造血幹細胞誘導段階の二次条件を確立するための比較実験結果を示した図である。
【
図7】本発明の方法によって製造された造血幹細胞を利用し、ヒト化マウスモデルを作製する過程を示した図である。
【
図8】本発明の造血幹細胞の製造方法、及びそれを利用したヒト化マウスモデル作製方法を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下、実施例を介し、さらに詳細に説明する。しかしながら、それら実施例は、例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例によって限定されるものではない。
【0067】
実施例1:新規のヒト分化全能性幹細胞由来の造血幹細胞分化プロトコル
本発明は、ヒト分化全能性幹細胞を分化させ、ヒト造血幹細胞を製造する方法、及び前記方法によって製造された造血幹細胞を利用し、ヒト化マウスを作製する方法に係わるものである。前記方法は、1)中胚葉(mesoderm)誘導/分化段階、2)血管芽細胞(hemangioblast)誘導/分化段階、3)EHT(endothelial-to-hematopoietic transition)誘導段階、及び4)造血幹細胞(HSC:hematopoietic stem cell)誘導/分化段階によって構成され、それぞれの段階ごとに、必須な低分子化合物及び/または成長因子が処理されうる(
図1)。
【0068】
前記ヒト造血幹細胞を製造する方法の具体的な実験は、下記のような方法で遂行された。まず、分離されたヒト分化全能性幹細胞(hPSC:human pluripotent stem cell)をstemMACS-iPS brew培地で2日間維持した。分化基本培養液は、以下のような組成で構成された:Stempro 34-SFM(+stempro sup)+200μg/mlヒトトランスフェリン(human transferrin)+2mM L-グルタミン(L-glutamine)+0.5mM L-アスコルビン酸(L-ascobic acid)+0.45mM MTG(1-thioglycerol)+1%ペニシリン/ストレプトマイシン(penicillin/streptomycin)。前記分離されたhPSCから中胚葉を誘導するために、GSK阻害剤の代表例として、CHIR99021(5μM)を単独で約2日間処理した。次に、血管芽細胞を誘導するために、50ng/ml BMP4、50ng/ml VEGF、及び100ng/ml bFGFを2日間処理した。次に、50ng/ml VEGF、50ng/ml bFGF、TGF-β阻害剤の代表例としてのSB-431542(10μM)、及び1μMレチノイン酸(RA:retinoic acid)を添加し、約1日間培養し、約11日間、0.1%(w/v)PVA、50ng/ml SCF(stem cell factor)、及び10ng/ml bFGFを添加して培養した(
図2)。
【0069】
既存に公開されたほとんどの造血幹細胞分化関連技術においては、hPSCにおいて、EB(embryonic body)でもって群集を形成させて分化させた後、単一細胞(single cell)に群集を解体させ、CD34+HSCを抽出する方式でもって分化を進行し、分化効率を高めるために、遺伝子挿入を試みた。しかしながら、本発明のHSC分化方法は、前述のところで言及された複雑な過程及び遺伝子挿入なしに、低分化化合物とタンパク質成長因子との最適の組み合わせだけにより、HSCを高効率に分化させ、容易に得られるというすぐれた効果がある。
【0070】
下記においては、本発明の新規の造血幹細胞分化方法を開発するために、既存に公開された分化プロトコルと比較しながら、最適の条件を確立するための実験を行った。
【0071】
実施例2:造血幹細胞誘導段階の一次条件確立
造血幹細胞誘導段階の一次条件を確立するために、下記のような実験を行った。
【0072】
具体的には、VEGF(vascular endothelial growth factor)は、既存に、中胚葉を誘導し、血管芽細胞(HSCの前駆体)を誘導及び維持する役割として使用されうることが広く知られており、造血幹細胞誘導期間に、主に使用されてきた。従って、該造血幹細胞誘導段階において、VEGFを除く場合、最終造血幹細胞生成効率にいかなる影響を及ぼすかということを確認するために、同一条件(50ng/ml SCF、10ng/ml bFGF、20ng/mlIL-3、及び10ng/mlIL-6)において、VEGF(10ng/ml)有無による造血幹細胞分化結果を確認した(
図3A)。
【0073】
分化結果を確認するために、CD34+CD45+細胞の比率を確認するために、FACSを遂行した。具体的には、CD34とCD45とがいずれも発現される細胞を確認するために、蛍光物質であるPEとPerCP/Cy5.5とがそれぞれ連結されている抗CD34抗体及び抗CD45抗体、染色バッファ(1% FBSを含むPBS)に、1:25比率で希釈した。その後、抗体を含むカクテルでもって、細胞を4℃において35分間染色した。その後、該染色バッファでもって、残余抗体を洗浄した後、さらに染色バッファ200μlを添加し、流細胞分析器を介して分析した。
【0074】
その結果、造血幹細胞誘導段階において、VEGFを除いた場合のCD34+CD45+細胞の比率が、VEGFを含む場合と比較し、顕著にすぐれているということを確認した(
図3B)。前記結果を基に、既存に知られているところと異なるように、造血幹細胞誘導段階において、VEGFを除くことが、顕著にすぐれた造血幹細胞分化効果があるということが分かる。
【0075】
実施例3:中胚葉誘導段階の条件確立
中胚葉(中胚葉系細胞/中胚葉系幹細胞)誘導段階の条件を確立するために、下記のような実験を行った。
【0076】
具体的には、既存方法においては、中胚葉を誘導するために、BMP4(bone morphogenetic protein 4)、VEGF及びCHIR99021を処理した。しかしながら、前記条件は、幹細胞を造血幹細胞に分化させる過程の順序と組み合わさらないと判断された。従って、中胚葉誘導段階において、既存に処理されたBMP4(5ng/ml)及びVEGF(50ng/ml)を除き、GSK阻害剤の代表例として、CHIR99021のみを処理する場合の造血幹細胞分化効率を確認した(
図4A)。
【0077】
その結果、中胚葉誘導段階において、CHIR99021のみを単独で処理した場合のCD34+CD45+細胞の比率が、BMP4、VEGF及びCHIR99021を処理する場合と比較し、顕著にすぐれているということを確認した(
図4B)。前記結果を基に、中胚葉誘導段階においては、BMP4及びVEGFを処理しないことが、顕著にすぐれた造血幹細胞分化効果があるということが分かる。
【0078】
実施例4:EHT誘導段階の条件確立
EHT(endothelial-to-hematopoietic transition)誘導段階の条件を確立するために、下記のような実験を行った。
【0079】
具体的には、CD34+HSCを誘導するためには、中胚葉誘導後、必ず血管芽細胞(hemangioblast)を誘導しなければならない。該血管芽細胞において、EHT(endothelial-to-hematopoietic transition)誘導を誘導することにより、CD34+HSCに分化されうるが、EHTの効率を極大化させるための適切な培養条件を確立することが重要である。
【0080】
そのために、VEGF及びbFGF(basic fibroblast growth factor)以外に、TGF-β阻害剤の代表例としてのSB-431542(SB4)を、多様な期間において処理する場合の造血幹細胞分化効率を確認した(
図5A)。その結果、SB4を24時間以下で処理した場合、CD34+CD45+細胞の比率が顕著にすぐれているということを確認し、SB4を長期間処理した場合には、むしろ造血幹細胞分化効率が顕著に低下されることを確認した(
図5B)。また、SB4とレチノイン酸(RA)とを同時に処理した場合には、SB4を単独で処理した場合より、造血幹細胞分化効率が顕著に上昇されることを確認した(
図5C及び
図5D)。
【0081】
前記結果を基に、血管芽細胞誘導後、EHT誘導段階は、SB4を約24時間ほど処理する場合、顕著にすぐれた造血幹細胞分化効果があるということが分かり、SB4とレチイノン酸との組み合わせは、さらにすぐれた造血幹細胞分化効果を示すことが分かる。
【0082】
実施例5:造血幹細胞誘導段階の二次条件確立
造血幹細胞誘導段階の二次条件を確立するために、下記のような実験を行った。
【0083】
具体的には、既存には、ヒト分化全能性幹細胞から分化された造血幹細胞のCD34+ポテンシャルを維持するための培養過程において、IL-3及びIL-6が主に使用されるが、それは、分化された造血幹細胞の老化及び分化を進芽、CD34+ポテンシャル維持効率が若干低下されうる。従って、造血幹細胞の誘導段階及び維持段階において、既存に処理されたIL-3及びIL-6の代わりに、PVA(polyvinyl alcohol)を処理する場合の造血幹細胞分化維持効率を確認した(
図6A)。
【0084】
その結果、造血幹細胞誘導段階において、IL-3及びIL-6を除き、PVAを処理した場合、造血幹細胞分化効率が上昇するだけではなく、分化後、CD34+造血幹細胞の維持効率も、顕著にすぐれていることを確認した(
図6B及び
図6C)。前記結果を基に、既存に知られているところと異なるように、造血幹細胞誘導段階において、IL-3及びIL-6を除き、PVAを処理することが顕著にすぐれた造血幹細胞の分化効果及び維持効果があるということが分かる。
【0085】
実施例6:ヒト化マウスの作製
前記実施例2ないし5の実験結果を基に、実施例1の新規の造血幹細胞分化プロトコルを確立し、前記方法でもって作製した造血幹細胞を利用し、ヒト化マウスを作製した。
【0086】
具体的には、前記実施例1の方法を介して製造されたヒト分化全能性幹細胞由来の造血幹細胞1~2x10
5個細胞を、放射能処理された免疫不全NSGマウスの尾静脈に注入した。注入12週後、マウスの末梢血液において、ヒトミトコンドリア遺伝子存在いかんを確認し、注入22週後、マウスの末梢血液において、ヒトCD45陽性細胞有無を確認した(
図7A)。
【0087】
前記マウスの末梢血液において、ヒトミトコンドリアDNAを検出するために、PCR反応を行い、具体的には、重合酵素(polymerase)として、2x PCRBIO HS Taq Mix redを使用し、アニーリング(annealing)温度を58℃にし、35サイクルで行った。その後、EtBrが入っている1%アガロースゲルに、PCR反応生成物を100vで20分間ローディングし、PCRバンドを確認した。ヒトミトコンドリア検出のために使用したプライマーの配列は、以下の通りである。
Forward: 5'- CAACACTAAAGGACGAACCTGA-3'(配列番号1)
Reverse: 5'- TCGTAAGGGGTGGATTTTTC-3'(配列番号2)
【0088】
その結果、注入12週後、マウスの末梢血液において、ヒトミトコンドリア遺伝子が検出され(
図7B)、注入22週後には、マウスの末梢血液において、ヒトCD45陽性細胞が25%以上存在することを確認した(
図7C)。
【0089】
前記結果を基に、実施例1の造血幹細胞分化プロトコル方法によって製造された造血幹細胞が、ヒト化動物モデルを作製することにも有用に使用されうることが分かる。
【0090】
前述の本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者であるならば、本発明の技術的思想や、必須な特徴を変更せずとも、他の具体的な形態に、容易に変形が可能であるということを理解しうるであろう。従って、以上で記述された実施例は、全ての面において、例示的なものであり、限定的ではないと理解されなければならない。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-04-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分化全能性幹細胞(PSC)をGSK(glycogen synthase kinase)阻害剤が含まれた培地で一次培養し、中胚葉系細胞を得る段階と、
(B)前記中胚葉系細胞を二次培養し、血管芽細胞に誘導または分化させる段階と、
(C)前記血管芽細胞を三次培養し、EHT(endothelial-to-hematopoietic transition)誘導された血管芽細胞を得る段階と、
(D)前記EHT誘導された血管芽細胞を四次培養し、造血幹細胞に誘導または分化させる段階と、を含む、造血幹細胞の製造方法。
【請求項2】
前記GSK(glycogen synthase kinase)阻害剤は、CHIR99021である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二次培養は、BMP4(bone morphogenetic protein 4)、VEGF(vascular endothelial growth factor)及びbFGF(basic fibroblast growth factor)からなる群のうちから選択された1以上を含む培地で培養する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記三次培養は、TGF-β阻害剤を含む培地で培養する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記TGF-β阻害剤は、SB-431542である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記
培地は、レチノイン酸(RA)、またはその薬学的に許容可能な塩を追加して含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記
培地は、VEGF及びbFGFからなる群のうちから選択された1以上を追加して含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記四次培養は、PVA(polyvinyl alcohol)、またはその薬学的に許容可能な塩を含む培地で培養する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記
培地は、SCF及びbFGFからなる群のうちから選択された1以上を追加して含
む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ヒトを除いた個体に、請求項1に記載の方法によって製造された造血幹細胞を移植したり導入したりする段階を含む、ヒト化動物モデル作製方法。
【請求項11】
請求項10に記載のヒト化動物モデル作製方法によって作製された、ヒト化動物モデル。
【国際調査報告】