(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)類似体を含む組成物を製剤化する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/26 20060101AFI20240822BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240822BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240822BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240822BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240822BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20240822BHJP
C07K 14/605 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61K38/26
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/26
A61P1/14
C07K14/605 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515377
(86)(22)【出願日】2022-09-08
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2022074961
(87)【国際公開番号】W WO2023036862
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519445576
【氏名又は名称】ジーランド・ファルマ・アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】ムーレール,エバ・ホルン
(72)【発明者】
【氏名】ルンドクビスト,ヨアキム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076CC16
4C076DD38D
4C076DD51Z
4C076DD60Z
4C076FF14
4C076FF36
4C076FF61
4C076GG46
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA19
4C084BA23
4C084CA59
4C084DB35
4C084MA05
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA20
4C084ZA661
4C084ZA662
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA19
4H045DA30
4H045EA20
4H045FA33
4H045FA34
(57)【要約】
グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体を含む安定な液体医薬製剤を作製する方法、および特にワンポット製剤に基づいてZP1848(グレパグルチド)またはZP1846(エルシグルチド)を含む製剤を作製する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体を含む安定な液体医薬製剤を製造する方法であって、GLP-2類似体が、次式、
R
1-His-Gly-Glu-Gly-X5-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu-X11-Thr-Ile-Leu-Asp-Ala-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-IIe-Ala-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-Z
2-R
2(配列番号11)
(式中、
R
1は、水素、C
1~4アルキル(例えばメチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、またはトリフルオロアセチルであり、
X5は、SerまたはThrであり、
X11は、AlaまたはSerであり、
R
2は、NH
2またはOHであり、
Z
2は、存在しないまたはLysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である)
によって表され、
液体医薬製剤が、約2mg/mL~約30mg/mLの濃度のGLP-2類似体、および(i)約5mM~約50mMの濃度で存在するヒスチジン緩衝剤と、(ii)約90mM~約360mMの濃度で存在する非イオン性張性調節剤としてのマンニトールと、(iii)約6.6~約7.4のpHを有する製剤を得るための適量のアルギニンとを含む賦形剤を含み、
方法が、
(a)賦形剤を第1の液量の注射用水と混合して、最終液体製剤の液量の70~90%で賦形剤溶液を得るステップと、
(b)GLP-2類似体原薬を該賦形剤溶液に加えて、最終液体製剤の液量の70~90%で賦形剤とGLP-2類似体との溶液を得るステップと、
(c)必要に応じて該液体組成物のpHおよび液量を調整して、最終液体医薬製剤の液量の100%で液体製剤を得るステップ
とを含み、
グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体を含む最終水性液体医薬製剤を提供する、
方法。
【請求項2】
GLP-2類似体が、
ZP1848 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH
2(配列番号1)
ZP2949 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKK-OH(配列番号2);
ZP2711 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKK-OH(配列番号3);
ZP2469 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDK-OH(配列番号4);
ZP1846 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH
2(配列番号7);
ZP1855 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITD-NH
2(配列番号8);または
ZP2242 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDK-OH(配列番号9)
またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
GLP-2類似体が、
ZP1848 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH
2(配列番号1)、もしくは
ZP1846 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH
2(配列番号7)、
またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
GLP-2原薬が賦形剤溶液に加えられる際、撹拌を必要としない、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
GLP-2類似体原薬が、凍結乾燥組成物として加えられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(c)における液体組成物の液量の調整が、pHを調整するための注射用水の第1の添加、および液体組成物の液量を最終液量近くに増加させるための注射用水の第2の添加を含み、任意選択で、液体組成物のpHの調整が、アルギニンおよび/または酢酸を加えることによって実行される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
賦形剤溶液が最終液体製剤の液量の約80%であり、第1および第2の各添加が、最終液体製剤の液量の約10%を付加する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
賦形剤溶液が、最終液体製剤の液量の約75%であり、第1および第2の各添加が、最終液体製剤の液量の約15%および約10%を付加する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
原薬が、1~5部に分けて、好ましくは3部に分けて加えられる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
最終液体医薬製剤を滅菌ろ過するステップをさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
最終液体医薬製剤を用量に分割するステップをさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
最終液体医薬製剤を品質管理試験するステップおよび該品質管理試験の結果を参照と比較するステップをさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
最終液体医薬製剤の10~50リットルのバッチサイズ、および任意選択で最終液体医薬製剤の10~20リットルのバッチサイズ、および任意選択で最終液体医薬製剤の20~50リットルのバッチサイズを使用する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
10リットルまたは20リットルタンク中で実行される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
機械的撹拌が、例えば撹拌翼を使用して、GLP-2類似体原薬を溶解するためにステップ(b)において使用される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
窒素下で実行される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
賦形剤が(完全に)溶解したかどうかを判定するために、ステップ(a)の後に視覚的管理を実施するステップを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
GLP-2類似体および賦形剤が実質的に完全に溶解したかどうかを判定するために、ステップ(b)の後に視覚的管理を実施するステップを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
GLP-2類似体および賦形剤の溶液が該方法によって作製されたかどうかを判定するために、ステップ(c)の後に視覚的管理を実施するステップを含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(b)が、凍結乾燥されたGLP-2類似体を含有させた容器または運搬袋/容器を洗浄して残存するGLP-2類似体を除去することを含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(b)におけるGLP-2類似体の添加によって、該方法の終了時に透明溶液の視覚的管理を確実にするよう、GLP-2類似体および賦形剤を含む組成物の発泡、ならびに/またはGLP-2類似体の残留塊の形成を低減させる、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(b)におけるGLP-2類似体の添加によって、最終液体医薬製剤中の共有結合した高分子量種のレベルを低減させる、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
GLP-2類似体が、酢酸塩の形態であり、次式、
H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH
2酢酸塩(配列番号1)
によって表される、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の酢酸塩が、次式、
(H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH
2),x(CH
3COOH)(式中、xは1.0~8.0である)、または
(H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH
2),x(CH
3COOH)(式中、xは1.0~8.0である)
を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
グルカゴン様ペプチド2類似体の酢酸塩の式中、xが、2.0から6.0である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
製剤が、2~8℃で保存される場合、少なくとも18カ月間、安定している、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
製剤が、約20mg/mLの濃度のGLP-2類似体またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体、約15mMの濃度のヒスチジン緩衝液、約230mMの濃度のマンニトール、および約7.0のpHを得るための適量のアルギニンを含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
ヒスチジン緩衝液が、L-ヒスチジンである、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
マンニトールが、D-マンニトールである、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
製剤を、プレフィルドシリンジ、注射ペン、または注射器装置に充填するステップをさらに含む、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体を含む安定な液体医薬製剤中での、GLP-2類似体の共有結合したオリゴマー生成物の形成を低減させる方法であって、GLP-2類似体が、次式、
R
1-His-Gly-Glu-Gly-X5-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu-X11-Thr-Ile-Leu-Asp-Ala-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Ile-Ala-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-Z
2-R
2(配列番号11)
(式中、
R
1は、水素、C
1~4アルキル(例えばメチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、またはトリフルオロアセチルであり、
X5は、SerまたはThrであり、
X11は、AlaまたはSerであり、
R
2は、NH
2またはOHであり、
Z
2は、存在しないまたはLysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である)
によって表され、
液体医薬製剤が、約2mg/mL~約30mg/mLの濃度のGLP-2類似体、および(i)約5mM~約50mMの濃度で存在するヒスチジン緩衝剤と、(ii)約90mM~約360mMの濃度で存在する非イオン性張性調節剤としてのマンニトールと、(iii)約6.6~約7.4のpHを有する製剤を得るための適量のアルギニンとを含む賦形剤を含み、
によって表され、
方法が、
(a)賦形剤を第1の液量の注射用水と混合して、最終液体製剤の液量の70~90%で賦形剤溶液を得るステップと、
(b)GLP-2類似体原薬を該賦形剤溶液に加えて、最終液体製剤の液量の70~90%で賦形剤とGLP-2類似体との溶液を得るステップと、
(c)必要に応じて該液体組成物のpHおよび液量を調整して、最終液体医薬製剤の液量の100%で液体製剤を得るステップ
とを含み、
グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体を含む最終水性液体医薬製剤を提供する、
方法。
【請求項32】
グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体の共有結合したオリゴマー生成物の形成を低減させる製剤の使用であって、GLP-2類似体が、次式、
R
1-His-Gly-Glu-Gly-X5-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu-X11-Thr-Ile-Leu-Asp-Ala-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-IIe-Ala-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-Z
2-R
2(配列番号11)
(式中、
R
1は、水素、C
1~4アルキル(例えばメチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、またはトリフルオロアセチルであり、
X5は、SerまたはThrであり、
X11は、AlaまたはSerであり、
R
2は、NH
2またはOHであり、
Z
2は、存在しないまたはLysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である)
によって表され、
液体医薬製剤が、約2mg/mL~約30mg/mLの濃度のGLP-2類似体、および(i)約5mM~約50mMの濃度で存在するヒスチジン緩衝剤と、(ii)約90mM~約360mMの濃度で存在する非イオン性張性調節剤としてのマンニトールと、(iii)約6.6~約7.4のpHを有する製剤を得るための適量のアルギニンとを含む賦形剤を含み、
使用が、
(a)賦形剤を第1の液量の注射用水と混合して、最終液体製剤の液量の70~90%で賦形剤溶液を用意するステップと、
(b)GLP-2類似体原薬を該賦形剤溶液に加えて、最終液体製剤の液量の70~90%で賦形剤とGLP-2類似体との溶液を用意するステップと、
(c)必要に応じて該液体組成物のpHおよび液量を調整して、最終液体医薬製剤の液量の100%で液体製剤を用意するステップ
とを含み、
方法が、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体を含む最終水性液体医薬製剤を提供する、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体を含む安定な液体医薬製剤を製造する方法、ならびに特に、代謝産物を含む、ZP1848(グレパグルチド(glepaglutide))および/またはZP1846(エルシグルチド(elsiglutide))を含む製剤を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトGLP-2は、以下の配列を有する33個のアミノ酸のペプチドである:Hy-His-Ala-Asp-Gly-Ser-Phe-Ser-Asp-Glu-Met-Asn-Thr-Ile-Leu-Asp-Asn-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Asn-Trp-Leu-Ile-Gln-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-OH(配列番号10)。ヒトGLP-2は、腸の腸内分泌細胞L細胞において、また脳幹の特定の領域において、プログルカゴンの特異的な翻訳後プロセシングの結果生じる。GLP-2は、クラスIIグルカゴンセクレチンファミリーに属する1つのGタンパク質共役型受容体に結合する。
【0003】
GLP-2は、陰窩における幹細胞増殖の刺激を介して、また絨毛におけるアポトーシスの阻害によって、小腸粘膜上皮の著しい成長を誘導することが報告されている(Druckerら、1996年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:7911~7916)。GLP-2はまた、結腸への成長効果も有する。さらに、GLP-2は、胃内容排出および胃酸分泌を阻害し(Wojdemannら、1999年、J.Clin.Endocrinol.Metab.84:2513~2517ページ)、腸のバリア機能を増強し(Benjaminら、2000年、Gut 47:112~119ページ)、グルコーストランスポーターの上方調節を介して腸のヘキソース輸送を刺激し(Cheeseman、1997年、Am.J.Physiol.R1965~71ページ)、腸の血流を増加させる(Guanら、2003年、Gastroenterology、125:136~147ページ)。
【0004】
当技術分野において、グルカゴン様ペプチド-2受容体類似体が、腸疾患を治療する治療的潜在力を有することが認識されている。しかしながら、33個のアミノ酸の消化管ペプチドである天然hGLP-2は、ヒトでのその半減期が完全長GLP-2では約7分[1~33]、また切断型GLP-2では27分[3~33]ときわめて短いため、臨床環境では有用ではない。主に、この短い半減期は、酵素ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)による分解が原因である。したがって、当技術分野では、より良好な薬物動態的特性を有するGLP-2受容体アゴニストを開発する試み、特にGLP-2分子の半減期を改良する試みがなされてきた。例として、置換を有するGLP-2類似体、例えば、2位にGly置換を含むGLP-2類似体([hGly2]GLP-2、テデュグルチド)などが提案されており、この置換によって半減期は7分(天然GLP-2)から約2時間まで増加する。脂肪酸鎖でのペプチド薬剤のアシル化も、全身循環を延ばすこと、および生物学的能力を妨害することなく酵素の安定性を高めることに有益であることが証明されている。しかしながら、これらの試みによってGLP-2類似体の薬物動態が改良され、GLP-2類似体が当技術分野において「長時間作用型」と記されることもある一方で、この改良は、分オーダーではなく数時間のオーダーの半減期を有する天然hGLP-2との比較であることを心に留めておかなければならない。これは、ひいては、GLP-2類似体が、依然として患者に1日当たり1回または複数回、投与される必要があることを意味するものである。テデュグルチド(teduglutide)は、Gattex(米国において)およびRevestive(ヨーロッパにおいて)という名称で、短腸症候群治療のために承認されている。
【0005】
WO2006/117565(Zealand Pharma A/S)は、[hGly2]GLP-2と比べて1つまたは複数多い置換を含むGLP-2類似体を記載しており、これは、インビボでの生物学的活性が改良され、かつ/または例えばインビトロでの安定性アッセイで評価される化学的安定性が改良されたものである。WO2006/117565で開示された分子のうち、ZP1848(グレパグルチド)およびZP1846(エルシグルチド)が、胃腸関連障害の治療ならびに化学療法および放射線療法の副作用の改善のための医学的使用と併せて開示されている。ZP1848およびZP1846ならびにそれらの代謝産物を含むGLP-2類似体のための投与計画は、WO2018/229252に記載されている。ZP1848およびZP1846のすぐ使用できる製剤は、WO2020/065064およびWO2020/065063に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この領域では、合成後のGLP-2類似体の製剤化のために使用される製造方法を改良するという課題、特に、これらの分子の普通とは違う特性から生じる問題に対処するという課題が依然として残っている。GLP-2類似体製剤を作製するための改良された方法、特に、プレフィルドシリンジ、注入ポンプ、着用型注射器、または自己注射器などの送達装置中での使用のための改良された方法を提供することも、GLP-2類似体製剤の領域における目標であると考える。
【課題を解決するための手段】
【0007】
概して、本発明は、GLP-2類似体の医薬製剤を製造する方法、ならびに、特にZP1848(グレパグルチド)およびZP1846(エルシグルチド)ならびに/またはそれらの代謝産物を含む安定な液体医薬製剤を製造する方法に関する。したがって、本発明は、従来の製造方法の「方法A」または「ツーポット製剤方法」もしくは「2溶液製剤方法」に起因する技術的問題を改善する新規の方法(「方法B」または「ワンポット製剤方法」)の開発に関係する。
図1を参照されたい。これまでは、ZP1848およびZP1846原薬は、「方法A」を使用して製造されてきた。しかしながら、ZP1848またはZP1846を使用する方法Aでは、製剤のその他の成分にGLP-2類似体を添加する際の溶解時の過剰な発泡、溶解中の原薬の固い塊の形成、視覚的管理からの逸脱、およびより高分子のペプチドオリゴマーの形成と関連した、幾つかの技術的な課題が生じる。有効活性成分(API)の塊は発泡層内に隠される恐れがあり、これは透明溶液および原薬の溶解のために重要な視覚的プロセス管理の失敗の原因となるため、発泡および塊の形成ならびに手動撹拌を使用する必要性は、製造方法のスケールアップでは問題となり得る。
【0008】
方法Aは、ペプチドのための伝統的な製剤方法である。製剤開発の間、水に溶解したペプチド原液を使用することは、これによって安全かつ容易な方法でペプチドを取り扱うことが可能となり、また、異なる賦形剤を様々に組み合わせることがより容易であるため、当技術分野では一般的である。方法Aは、スモールスケールでは十分に機能する。また、一般的に、ペプチドでは、製剤中にpIを超える場合、方法Aでは、製剤プロセスにおける再溶解を難しくするかまたは不可能にし得るペプチドの局所的pIおよび沈殿を回避することが好ましい。
【0009】
いかなる特定の説明にも縛られるものではないが、本発明者らは、方法Aを使用することがZP1848およびZP1846の特定の物理化学的特性に、特に、ペプチド構造の両親媒性の特徴に関与すると、ZP1848およびZP1846の問題となる普通とは違う挙動が、観察された発泡および塊形成をもたらすと考える。ZP1848およびZP1846のこの特性は、例えば溶解中に固体/水界面において、より高い濃度でゲルを形成するという普通とは違う傾向をもたらし、これが、ひいては、製剤プロセスにおける望まない塊形成に寄与する可能性がある。ZP1848および関連したGLP-2類似体のための方法Aでは、これらは50mg/mL溶液として(すなわち、製剤の最終液量の約40%の)原薬の溶解を必要とするため、特に最終製剤中のGLP-2類似体の濃度がより高い場合(20mg/mL以上など)、これらの問題が組み合わさって、原薬の溶解は著しく遅くかつ困難なものとなる。この溶解方法では、過度の発泡が生じ、塊が形成される。APIの塊は、次いで発泡層内に隠されることとなり、これが透明溶液および原薬の溶解についての重要な視覚的プロセス管理の失敗を招く。
【0010】
よって、方法Aは、API溶液中での比較的高いペプチド濃度を必要とする。高いペプチド濃度(例えば、少なくとも20mg/mLまたは好ましくは少なくとも50mg/mL以上)では、ZP1848およびZP1846は、例えばペプチド製剤プロセスにおいて典型的に使用されるような機械的手段による、激しい撹拌に影響を受ける可能性があり、ゆえに、方法Aでは、溶解工程中、ペプチド原薬の手動撹拌が使用されてきた。手動撹拌は、工業規模へのスケールアップには適合性がなく、さらに、プロセスバリデーションでは検証することができない主観的な方法である。
【0011】
方法Aでは、賦形剤および活性成分は、並行したプロセスにおいて別々の溶液およびタンク中で溶解され、続いて、包装および臨床使用がすぐできる最終製剤を得るための製剤(すなわち混合された溶液)の液量および/またはpHを調整する任意選択のステップに先立ち、それぞれ、賦形剤およびペプチド原薬の2つの溶液と混合される。
【0012】
上記のような方法Aの技術的問題を回避する選択肢は、マンニトールの濃度によってさらに制限される。賦形剤溶液は、可溶上限に近い濃度でマンニトールを含んでおり、したがって、賦形剤溶液の液量を減らし、これに伴いAPI溶液で利用可能な液量を増やすことによっては、方法Aの問題の解決は不可能である。
【0013】
まとめると、これは、現行の方法Aは技術的問題を有しており、現行の10リットルバッチサイズからのスケールアップは、方法Aを使用しては実行できないことを意味している。
【0014】
本発明において、「ワンポット」製剤方法または「方法B」は、1つのタンクまたは容器のみが用いられることを意味し、この中に水、賦形剤、および原薬が任意の特定の順序で順次加えられ、該方法は、包装および臨床使用がすぐできる最終製剤を得るための、製剤の液量および/またはpHの調整の任意選択のステップを含む。これは、上記のように、2つの溶液中でのAPIおよび賦形剤の並行した溶解が制限となる「ツーポット製剤」方法と対比され得る。方法Bでは、水と賦形剤と原薬との割合に基づき、1つのポット/タンクのみが使用され得、これによって、この方法は、より単純な、扱いがより容易な、より逸脱に頑強な、スケールアップが実行可能なものとなり、改良された安定性を有する最終製剤がもたらされる。
【0015】
下記の実施例に記載される方法Bでは、賦形剤(マンニトール、ヒスチジン)は、例えば最終液量の80%中に溶解され;GLP-2類似体原薬は、乾燥散剤として、例えば約25mg/mlとなるように加えられ;液量は90%に調整され;pHは必要に応じて調整され;最終的なグレパグルチド(20mg/mL)製剤が得られるように、液量は100%に調整される。
【0016】
したがって、第1の態様において、本発明は、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体を含む安定な液体医薬製剤を製造する方法であって、GLP-2類似体が、次式、
R1-His-Gly-Glu-Gly-X5-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu-X11-Thr-Ile-Leu-Asp-Ala-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-IIe-Ala-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-Z2-R2(配列番号11)
(式中、
R1は、水素、C1~4アルキル(例えばメチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、またはトリフルオロアセチルであり、
X5は、SerまたはThrであり、
X11は、AlaまたはSerであり、
R2は、NH2またはOHであり、
Z2は、存在しないまたはLysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である)
によって表され、
液体医薬製剤が、約2mg/mL~約30mg/mLの濃度のGLP-2類似体、および(i)約5mM~約50mMの濃度で存在するヒスチジン緩衝剤と、(ii)約90mM~約360mMの濃度で存在する非イオン性張性調節剤としてのマンニトールと、(iii)約6.6~約7.4のpHを有する製剤を提供するための適量のアルギニンとを含む賦形剤を含み、
方法が、
(a)賦形剤を第1の液量の注射用水と混合して、最終液体製剤の液量の70~90%で賦形剤溶液を得るステップと、
(b)GLP-2類似体原薬を該賦形剤溶液に加えて、最終液体製剤の液量の70~90%で賦形剤とGLP-2類似体との溶液を得るステップと、
(c)必要に応じて該液体組成物のpHおよび液量を調整して、最終液体医薬製剤の液量の100%で液体製剤を得るステップ
とを含み、
グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体を含む最終水性液体医薬製剤を提供する、
方法を提供する。
【0017】
一部の態様において、該方法は、GLP-2溶液組成物が賦形剤溶液に加えられる際、撹拌を必要とせず、これは、過度の発泡の有害作用を最少化するのを助ける。
一般的には、ステップ(b)では、GLP-2類似体原薬は、凍結乾燥組成物として加えられ、典型的には1~5部に分けて、好ましくは3部に分けて加えられる。典型的には、GLP-2類似体原薬は、散剤の形態となる。別法としてまたは追加的に、ステップ(c)における液体組成物の液量の調整は、pHを調整するための注射用水の第1の添加、および液体組成物の液量を最終液量近くまで増加させるための注射用水の第2の添加を含み、任意選択で、液体組成物のpHの調整は、アルギニンおよび/または酢酸を加えることによって実行される。
【0018】
有利には、該製造方法では、賦形剤溶液は、最終液体製剤の液量の約80%であり、第1のおよび第2の添加は、それぞれ、最終液体製剤の液量の約10%を付加する。代替的な場合、賦形剤溶液は、最終液体製剤の液量の約75%であり、第1のおよび第2の添加は、それぞれ、最終液体製剤の液量の約15%および約10%を付加する。
【0019】
場合によって、該製造方法は、最終液体医薬製剤を滅菌ろ過するステップ(例えば、微生物を除去するために)、および/または最終液体医薬製剤を用量に分割するステップ、および/または最終液体医薬製剤を品質管理試験するステップ、ならびに品質管理試験の結果を、参照と、例えば規制当局の承認または文献と同じかまたは一致する参照と、比較するステップをさらに含む。
【0020】
本発明の製造方法はまた、事前に用いられるGLP-2類似体液体製剤のパイロット規模作製のスケールアップも可能にする。これは、作製されるべき最終液体医薬製剤の10リットルを超えるバッチサイズを可能とし、例えば最終液体医薬製剤の10~50リットルの間の液量範囲で、例えば最終液体医薬製剤の15リットル、20リットル、30リットル、40リットル、または50リットルのバッチさえも可能にし、任意選択で最終液体医薬製剤の10~20リットルのバッチサイズ、および任意選択で最終液体医薬製剤の20~50リットルのバッチサイズを可能にする。場合によって、該方法は、10リットルまたは20リットルタンク中で実行される。
【0021】
場合によって、機械的撹拌、特に穏やかな撹拌が、例えば撹拌翼を使用して、GLP-2類似体を溶解するためにステップ(b)において使用され得る。
場合によって、該方法におけるステップのうちの1つまたは複数は、窒素下で実行され得る。グレパグルチド製剤中のオリゴマーおよび/または不純物の形成は、窒素ガスを含んで調製されたバッチでは、酸素を含むかまたはガスを含まないバッチと比較して低減される。例として、これは、該製剤を窒素でパージすることによって、または窒素ガス重層下で該方法を実行することによって実行され得る。
【0022】
本発明の方法を使用して製造された製剤は、患者(特にヒト患者)への投与のためのものであるため、該方法は、賦形剤が(完全に)溶解したかどうかを判定するために、ステップ(a)の後に視覚的管理を実施するステップ、および/またはGLP-2類似体および賦形剤が実質的に完全に溶解したかどうかを判定するために、ステップ(b)の後に視覚的管理を実施するステップ、および/または該方法によってGLP-2類似体および賦形剤の溶液が作製されたかどうかを判定するために、ステップ(c)の後に視覚的管理を実施するステップを含んでもよい。
【0023】
場合によって、ステップ(b)は、凍結乾燥されたGLP-2類似体を含有させた容器または運搬バッグもしくは容器を洗浄して、残存するGLP-2類似体を除去することを含む。別法としてまたは追加的に、ステップ(b)におけるGLP-2類似体の添加によって、例えば該方法の終了時に透明溶液の視覚的管理を確実にするよう、GLP-2類似体と賦形剤とを含む組成物の発泡および/もしくはGLP-2類似体の残留塊の形成を低減させ、かつ/またはステップ(b)におけるGLP-2類似体の添加によって、最終液体医薬製剤中の共有結合した高分子量種のレベルを低減させる。
【0024】
GLP-2類似体の貯蔵安定性のある製剤を提供する目的と共通して、本発明の方法は、2~8℃で保存された場合、少なくとも18カ月間、安定である製剤をもたらす。例示として、該製剤は、約20mg/mLの濃度のGLP-2類似体またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体、約15mMの濃度のヒスチジン緩衝液、約230mMの濃度のマンニトール、および約7.0のpHを得るための適量のアルギニンを含んでいてもよい。一般的に、ヒスチジン緩衝液はL-ヒスチジンであり、マンニトールはD-マンニトールである。
【0025】
本発明の方法はまた、下流のステップ、例えば該製剤をプレフィルドシリンジ、注射ペン、または注射器装置中に充填するステップを伴っていてもよい。
さらなる態様において、本発明は、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体を含む安定な液体医薬製剤中での、GLP-2類似体の共有結合したオリゴマー生成物の形成を低減させる方法であって、GLP-2類似体が、次式、
R1-His-Gly-Glu-Gly-X5-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu-X11-Thr-Ile-Leu-Asp-Ala-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-IIe-Ala-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-Z2-R2(配列番号11)
(式中、
R1は、水素、C1~4アルキル(例えばメチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、またはトリフルオロアセチルであり、
X5は、SerまたはThrであり、
X11は、AlaまたはSerであり、
R2は、NH2またはOHであり、
Z2は、存在しないまたはLysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である)
によって表され、
液体医薬製剤が、約2mg/mL~約30mg/mLの濃度のGLP-2類似体、および(i)約5mM~約50mMの濃度で存在するヒスチジン緩衝剤と、(ii)約90mM~約360mMの濃度で存在する非イオン性張性調節剤としてのマンニトールと、(iii)約6.6~約7.4のpHを有する製剤を得るための適量のアルギニンとを含む賦形剤を含み、
方法が、
(a)賦形剤を第1の液量の注射用水と混合して、最終液体製剤の液量の70~90%で賦形剤溶液を得るステップと、
(b)GLP-2類似体原薬を該賦形剤溶液に加えて、最終液体製剤の液量の70~90%で賦形剤とGLP-2類似体との溶液を得るステップ、
(c)必要に応じて該液体組成物のpHおよび液量を調整して、最終液体医薬製剤の液量の100%で液体製剤を得るステップ
とを含み、
グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体を含む最終水性液体医薬製剤を提供する、
方法を提供する。
【0026】
さらなる態様において、本発明は、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体の共有結合したオリゴマー生成物の形成を低減させる製剤の使用であって、GLP-2類似体が、次式、
R1-His-Gly-Glu-Gly-X5-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu-X11-Thr-Ile-Leu-Asp-Ala-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-IIe-Ala-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-Z2-R2(配列番号11)
(式中、
R1は、水素、C1~4アルキル(例えばメチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、またはトリフルオロアセチルであり、
X5は、SerまたはThrであり、
X11は、AlaまたはSerであり、
R2は、NH2またはOHであり、
Z2は、存在しないまたはLysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である)
によって表され、
液体医薬製剤が、約2mg/mL~約30mg/mLの濃度のGLP-2類似体、および(i)約5mM~約50mMの濃度で存在するヒスチジン緩衝剤と、(ii)約90mM~約360mMの濃度で存在する非イオン性張性調節剤としてのマンニトールと、(iii)約6.6~約7.4のpHを有する製剤を得るための適量のアルギニンとを含む賦形剤を含み、
使用が、
(a)賦形剤を第1の液量の注射用水と混合して、最終液体製剤の液量の70~90%で賦形剤溶液を得るステップと、
(b)GLP-2類似体原薬を該賦形剤溶液に加えて、最終液体製剤の液量の70~90%で賦形剤とGLP-2類似体との溶液を得るステップと、
(c)必要に応じて該液体組成物のpHおよび液量を調整して、最終液体医薬製剤の液量の100%で液体製剤を得るステップ
とを含み、
方法が、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体を含む最終水性液体医薬製剤を提供する、
使用を提供する。
【0027】
一部の実施形態において、製剤は、共有結合したオリゴマー生成物の形態のGLP-2類似体を5%以下含有する。別法としてまたは追加的に、製剤中のGLP-2類似体から生じる総酢酸塩濃度は、GLP-2類似体1mg当たり11%酢酸塩以下である。別法としてまたは追加的に、GLP-2類似体の共有結合したオリゴマーの形成は、製剤中のGLP-2類似体の濃度に反比例して依存する。
【0028】
ここで、本発明の実施形態を、添付の図面に照らして非制限的な例として記載する。ただし、本開示を考慮すると、様々なさらなる態様および本発明の実施形態が当業者には明らかとなるであろう。
【0029】
上記の実施形態とともに本発明を記載してきたが、本開示により、数多くの等価の修正および変形が当業者には明らかとなるであろう。したがって、記載された本発明の実施形態は、例示的であって限定的なものではないとみなされる。記載した実施形態に対する様々な変更は、本発明の精神と範囲から逸脱することなく行うことができる。本明細書に引用されたすべての文書は、あらゆる目的のために全体として参照により明らかに組み込まれる。
【0030】
本明細書において使用する場合、「および/または」は、2つの指定した特徴または要素の各々の、もう一方を含むまたは含まない具体的な開示として用いるものである。例えば、「Aおよび/またはB」は、あたかも本明細書において各々が個々に説明されているかのように、(i)A、(ii)B、ならびに(iii)AおよびB、の各々の具体的な開示として用いられるものである。
【0031】
別段の指示がない限り、上記の特徴の記載および定義は、いかなる本発明の特定の態様または実施形態にも限定されるものではなく、記載されるすべての態様および実施形態に等しく適用する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】伝統的な「ツーポット」方法Aと比較した、新規の製剤「ワンポット」方法Bの作業工程図である。
【
図2】ツーポット方法Aにおける混合中に生じる発泡の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
別段の指定がない限り、以下の定義は、上記の記載で使用された特定の用語について示すものである。
記載および特許請求の範囲を通して、天然アミノ酸については、慣用的な一文字および三文字のコードを使用する。本発明のペプチドのすべてのアミノ酸残基は、好ましくはL-立体配置のアミノ酸残基であるが、D-立体配置アミノ酸が存在していてもよい。
GLP-2類似体
本発明の方法を使用して製剤化され得るグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体は、次式、
R1-Z1-His-Gly-Glu-Gly-X5-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu-X11-Thr-Ile-Leu-Asp-Ala-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-IIe-Ala-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-Z2-R2
(式中、
R1は、水素、C1~4アルキル(例えばメチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、またはトリフルオロアセチルであり、
X5は、SerまたはThrであり、
X11は、AlaまたはSerであり、
R2は、NH2またはOHであり、
Z1およびZ2は、独立して存在しないまたはLysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である)
によって表される。
【0034】
Z1およびZ2は、独立して存在し、かつ/もしくは存在せず、またはLysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列、すなわち、1、2、3、4、5、または6個のLys残基である。Lys残基は、D-立体配置またはL-立体配置のどちらかを有し得るが、好ましくはL-立体配置を有する。特に好ましい配列Zは、4、5、または6個の連続したリジン残基、および特に6個の連続したリジン残基の配列である。例示的な配列Zが、WO01/04156に示されている。
【0035】
一部の態様において、R1は水素である。一部の態様において、X5はThrである。一部の態様において、X11はAlaである。一部の態様において、R2はNH2である。
【0036】
一部の態様において、Z1は存在しない。
一部の態様において、Z2は、Lysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である。一部の態様において、Z2は、Lysの2~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である。一部の態様において、Z2は、Lysの3~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である。一部の態様において、Z2は、Lysの4~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である。一部の態様において、Z2は、Lysの5~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である。一部の態様において、Z2は、Lysの6アミノ酸単位のペプチド配列である。一部の態様において、Z2は、Lysの1~2個のアミノ酸単位のペプチド配列である。
【0037】
一部の態様において、GLP-2類似体またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体は、次式、
R1-His-Gly-Glu-Gly-X5-Phe-Ser-Ser-Glu-Leu-X11-Thr-Ile-Leu-Asp-Ala-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-IIe-Ala-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-Z2-R2(配列番号11)
(式中、
R1は、水素、C1~4アルキル(例えばメチル)、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、またはトリフルオロアセチルであり、
X5は、SerまたはThrであり、
X11は、AlaまたはSerであり、
R2は、NH2またはOHであり、
Z2は、存在しないまたはLysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である)
によって表される。
【0038】
一部の態様において、Z2は、Lysの1~6個のアミノ酸単位のペプチド配列である。
本発明の一部の実施形態において、上記式中、X5はThrであり、かつ/またはX11はAlaである。これらのグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の例としては、以下が挙げられる。
ZP1848 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH2(配列番号1)
ZP2949 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKK-OH(配列番号2);
ZP2711 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKK-OH(配列番号3);
ZP2469 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDK-OH(配列番号4);
ZP1857 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITD-NH2(配列番号5);または
ZP2530 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITD-OH(配列番号6)
本発明の一部の実施形態において、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体は、
ZP1848 H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH2(配列番号1)
である。
【0039】
すなわち、GLP-2類似体は、次式、
H-His1-Gly2-Glu3-Gly4-Thr5-Phe6-Ser7-Ser8-Glu9-Leu10-Ala11-Thr12-Ile13-Leu14-Asp15-Ala16-Leu17-Ala18-Ala19-Arg20-Asp21-Phe22-Ile23-Ala24-Trp25-Leu26-Ile27-Ala28-Thr29-Lys30-Ile31-Thr32-Asp33-Lys34-Lys35-Lys36-Lys37-Lys38-Lys39-NH2
によって表される。
【0040】
N末端の「H-」は、フリーなN末端アミン(NH2-)基を示していることが理解されるであろう。C末端の「NH2-」は、C末端のアミド基を示している。ZP1848およびグレパグルチドという用語は、互換的に使用され得る。
【0041】
本発明の一部の実施形態において、上記式中、X5はSerであり、かつ/またはX11はSerである。これらのグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の例としては、以下が挙げられる。
ZP1846 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH2(配列番号7)、
ZP1855 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITD-NH2(配列番号8)、または
ZP2242 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDK-OH(配列番号9)
本発明の実施形態において、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体は、ZP1846 H-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH2(配列番号7)である。
【0042】
すなわち、GLP-2類似体は、次式、
H-His1-Gly2-Glu3-Gly4-Ser5-Phe6-Ser7-Ser8-Glu9-Leu10-Ser11-Thr12-Ile13-Leu14-Asp15-Ala16-Leu17-Ala18-Ala19-Arg20-Asp21-Phe22-Ile23-Ala24-Trp25-Leu26-Ile27-Ala28-Thr29-Lys30-Ile31-Thr32-Asp33-Lys34-Lys35-Lys36-Lys37-Lys38-Lys39-NH2
によって表される。
【0043】
N末端の「H-」は、フリーなN末端のアミン(NH2-)基を示していることが理解されるであろう。C末端の「NH2-」は、C末端のアミド基を示している。ZP1846およびエルシグルチドという用語は、は、互換的に使用され得る。
【0044】
本発明は、GLP2類似体を作製する方法および精製する方法を対象とする。これらのペプチドは、原薬としての使用が意図される。本発明は、本発明の方法によって得られるGLP類似体を含む。
【0045】
本発明のペプチド(原薬)は、塩またはその他の誘導体の形態で提供される可能性があることを理解されたい。したがって、精製および任意選択のさらなるステップの後、ペプチドは塩またはその他の誘導体として最終的に得られることがあることが理解されるであろう。塩には、酸付加塩および塩基性塩などの、薬学的に許容される塩が含まれる。酸付加塩の例としては、塩酸塩、クエン酸塩、塩化物塩、および酢酸塩が挙げられる。好ましくは、塩は酢酸塩である。塩基性塩の例としては、カチオンが、ナトリウムおよびカリウムなどのアルカリ金属、カルシウムなどのアルカリ土類金属、およびアンモニウムイオン+N(R3)3(R4)(式中、R3およびR4は、独立して、場合によって置換されているC1~6-アルキル、場合によって置換されているC2~6-アルケニル、場合によって置換されているアリール、または場合によって置換されているヘテロアリールを表す)から選択される塩が挙げられる。薬学的に許容される塩のその他の例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第17版、Alfonso R.Gennaro編、Mark Publishing Company、Easton、PA、U.S.A.、1985年、およびそれ以降の版、ならびにEncyclopaedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0046】
好ましい実施形態において、本発明のGLP-2類似体の酢酸塩は、ZP1848-酢酸塩、ZP2949-酢酸塩、ZP2711-酢酸塩、ZP2469-酢酸塩、ZP1857-酢酸塩、ZP2530-酢酸塩、ZP1846-酢酸塩、ZP1855-酢酸塩、およびZP2242-酢酸塩からなる群から選択される。本文脈において、「ZP1848-酢酸塩」という用語は、酢酸塩の形態であるZP1848分子を指す。GLP-2類似体の酢酸塩は、次式、(GLP-2類似体),x(CH3COOH)(式中、xは1.0~8.0であり、すなわち、式中、xは1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、または8.0である)によって表すことができる。GLP-2類似体の酢酸塩のいかなる組成物でも、異なる数の酢酸塩分子を有する分子が存在する可能性があるため、xは必ずしも整数ではない。場合によって、xは、4.0から8.0であり、xは6.0から8.0であり、またはxは4.0から6.5である。場合によって、xは4.0から6.0であり、xは2.0から6.0であり、xは2.0から7.0であり、xは3.0から6.0であり、xは4.0から6.0であり、またはxは4.0から8.0である。本発明で定義したようなGLP-2類似体の酢酸塩のさらなる考察は、WO2020/265064において見出され得、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
好ましい一実施形態において、GLP-2類似体は、ZP1848酢酸塩またはH-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH2酢酸塩(配列番号1)もしくは(H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH2),x(CH3COOH)(式中、xは1.0~8.0である)
として最終的に得られる。
【0048】
グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の酢酸塩を含む固体組成物は、例えば凍結乾燥によって得てもよい。該固体組成物は、液体製剤を作製するために使用される賦形剤を用いた製剤化のために有用である。例えば、次式、
(H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH2),x(CH3COOH)(式中、xは1.0~8.0である)
を有するグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の酢酸塩を含む固体組成物を得てもよい。
【0049】
GLP-2類似体当たり8.0酢酸塩分子という上限は、11%未満の酢酸塩という酢酸塩含有量に相当し、これを調合して、25℃で測定された0.8から2.0mPa/秒の間の粘度を有することが可能である。
【0050】
GLP-2類似体の各分子に結合した酢酸塩分子の数の範囲が、製剤のこの成分の分子量範囲を定める。例えば、ZP1848の酢酸塩の場合、GLP-2類似体の各分子に結合した酢酸塩分子の数の範囲が、ZP1848-酢酸塩の分子量範囲を定める。例として、ZP1848の各分子と1酢酸塩当量とでは、分子量=4316+60=4376Daとなる。したがって、ZP1848に酢酸塩当量を増していく場合の分子量は、1酢酸塩当量=4376Da、2酢酸塩当量=4436Da、3酢酸塩当量=4496Da、4酢酸塩当量=4556Da、5酢酸塩当量=4616Da、6酢酸塩当量=4676Da、7酢酸塩当量=4736Da、および8酢酸塩当量=4796Daである。これによって、次いで、分子量範囲は、1~8酢酸塩当量=4376Da~4796Da;4~8酢酸塩当量=4556Da~4796Da、および6~8酢酸塩当量=4676Da~4796Daと定められる。本発明で定義したようなGLP-2類似体の酢酸塩のさらなる考察は、WO2020/265064において見出され得、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
本発明のGLP-2類似体のその他の誘導体には、Mn2+およびZn2+などの金属イオン、インビボで加水分解性のエステルなどのエステル、遊離酸もしくは塩基、水和物、または脂質を有する、配位化合物が含まれる。エステルは、当技術分野で公知の技術を使用して、化合物中に存在するヒドロキシルまたはカルボン酸基と適切なカルボン酸またはアルコール反応パートナーとの間で形成することができる。
GLP-2類似体の製剤
本発明の方法を使用して作製され得るGLP-2類似体の製剤は、方法Aを使用してWO2020/065064で開示された、すぐ使用できる製剤である。本明細書において使用される「すぐ使用できる」という用語は、指定の投与経路による使用の前に、所定の量の希釈剤、例えば、注射用の水、またはその他の好適な希釈剤による構成または希釈を必要としない製剤を指す。
【0052】
GLP-2類似体のこれらの液体製剤は、緩衝液、非イオン性張性調節剤、および最終製剤のpHを得るための適量のアルギニンを含む。通常の製薬慣行に従い、製剤は、滅菌済であり、かつ/または還元剤を含まない。場合によって、液体製剤は、水性の液体製剤である。
【0053】
好ましい安定な液体製剤がWO2002/065064で開示されており、ここで、該液体医薬製剤は、約2mg/mL~約30mg/mLの濃度のGLP-2類似体、および(i)約5mM~約50mMの濃度で存在するヒスチジン緩衝剤と、(ii)約90mM~約360mMの濃度で存在する非イオン性張性調節剤としてのマンニトールと、(iii)約6.6~約7.4のpHを有する製剤を得るための適量のアルギニンとを含む賦形剤を含む。
【0054】
本明細書において使用される「緩衝液」という用語は、医薬製剤のpHを安定化する薬学的に許容される賦形剤を意味する。本発明によって作製された製剤では、緩衝液は、ヒスチジン緩衝液であり、例えばL-ヒスチジンである。一般的に、ヒスチジン緩衝剤は、約5mM~約50mMの濃度で、より好ましくは約5mM~約25mMの濃度で、最も好ましくは約15mMの濃度で存在することとなる。
【0055】
本明細書において使用される「張性調節剤」という用語は、製剤の張性を調節するために使用される薬学的に許容される等張化剤を意味する。本発明によって作製された製剤は、好ましくは等張性であり、すなわち、これらはヒト血清と実質的に同じである浸透圧を有する。本発明によって作製製剤中で使用される張性調節剤は、マンニトールであり、例えばD-マンニトールである。張性調節剤の濃度は、特に製剤が等張であることが意図される場合、その他の製剤の成分の濃度に依存することとなる。典型的には、非イオン性張性調節剤は、約90mM~約360mMの濃度、より好ましくは約150mM~約250mMの濃度、および最も好ましくは約230mMの濃度で使用されることとなる。
【0056】
一般的に、本発明によって作製された液体製剤の成分および量は、約6.6~約7.4のpH、より好ましくは約6.8~約7.2のpH、および最も好ましくは約7.0のpHを有する製剤が得られるように選択される。所望のpH範囲内となるように、アルギニンを適量(q.s.)加えてpHを調整してもよい。pH調整は塩酸または水酸化ナトリウムを使用して行わないことが好ましい。
【0057】
好ましい一実施形態において、本発明の方法によって作製された液体製剤は、約20mg/mLの濃度のZP1848酢酸塩もしくはH-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH2酢酸塩(配列番号1)またはZP1846-酢酸塩もしくはH-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH2酢酸塩(配列番号7)、約15mMの濃度のヒスチジン緩衝液、約230mMの濃度のマンニトール、および約7.0のpHを得るための適量のアルギニンを含む。
【0058】
さらなる実施形態において、本発明の方法によって作製された液体製剤は、約20mg/mLの濃度の、次式、
(H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH2),x(CH3COOH)またはH-HGEGSFSSELSTILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH2,x(CH3COOH)(式中、xは1.0~8.0である)
を有するグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の酢酸塩、約15mMの濃度のヒスチジン緩衝液、および約230mMの濃度のマンニトールを含み、pHが約7.0である。
【0059】
場合によって、本発明によって作製された液体製剤は、防腐剤をさらに含む。場合によって、防腐剤は、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、メチルパラベンおよびソルビン酸カリウムからなる群から選択される防腐剤である。一般的に、防腐剤は、最終製剤量の約0.1%~約1%の濃度で存在する。
【0060】
一般的に、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)類似体の製剤は、非経口的に、好ましくは注射によって、最も典型的には皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射、または腹腔内注射によって患者に投与される。皮下注射による投与が好ましい。注射は、医師、看護師、もしくはその他の医療従事者が行ってもよく、または患者が自己投与してもよい。本明細書に記載したように、一部の態様において、本発明の方法によって作製された製剤は、プレフィルドシリンジ、注射ペン、またはその他の注射器装置への製剤の充填を容易にする粘度を有する。これは、例えば複数回使用するバイアルから計量する必要性なく、患者に投与する製剤の用量が事前に決定しているという利点を有し得る。
製剤の送達
一部の態様において、本発明は、非経口投与を目的とし、例えばバイアル、プレフィルドシリンジ、注入ポンプ、着用型注射器、使い捨て自己注射器、または用量調整可能自己注射器中での使用に好適である、GLP-2類似体のすぐ使用できる製剤に関する。
病状
本発明のGLP-2類似体製剤は、有効量のGLP-2類似体または本明細書に記載したようなその塩を投与することによって食道の上部消化管を含む胃腸障害を患う個人を予防または処置する医薬品として有用である。胃腸関連障害には、あらゆる病因の潰瘍(例えば、消化性潰瘍、薬剤誘発潰瘍、感染またはその他の病原体に関連した潰瘍)、消化障害、吸収不良症候群、短腸症候群、盲管症候群、炎症性腸疾患、セリアック(例えばグルテン過敏性腸症またはセリアック病から生じる)、熱帯性スプルー、低ガンマグロブリン血症性スプルー、腸炎、限局性腸炎(クローン病)、潰瘍性大腸炎、小腸損傷、および化学療法に誘発された下痢/粘膜炎(CID)が挙げられる。
【実施例】
【0061】
下記の実施例は、本発明の好ましい態様を例示するためのものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に記載の投与計画に従って投与されるGLP-2類似体は、内容が全体として参照により明らかに組み込まれるWO2006/117565に記載されている固相ペプチド合成などの方法によって調製してもよい。
分析方法
共有結合したオリゴマーの分析には、Dionex Ultimate3000 HPLCシステムの実行を直線勾配および0.5ml/分の流速で使用した。移動相は、45%アセトニトリルおよび55%milli-Q水中0.1%TFAとした。検出には215nmの波長を使用した。注射量は4μgペプチドとした。使用するカラムは、4μm粒径および300×4.6mmの寸法のTSKgel SuperSW2000(TSK Bioscience)とした。全実行時間は25分とした。
【0062】
ペプチド単量体(不純物)の化学的安定性評価には、酸性移動相およびアセトニトリル勾配のC18カラムを使用した。
ZP1848原薬の製剤は、従来は、本明細書において「方法A」と呼ぶ、伝統的な2溶液製剤方法を使用して製造されてきた。方法Aでは、グレパグルチドの場合、過度の発泡、溶解中の原薬の固い塊の形成、視覚的管理の逸脱、およびより高分子のペプチドオリゴマーの形成に関連した技術的問題がもたらされた。発泡および塊形成、ならびに手動撹拌を使用する必要性は、スケールアップにおいて特に問題となり得る。本実施例において、発明者らは、伝統的な従来の方法の前述の技術的問題の解決に関し、従来の方法(方法A)を新規の方法(方法B)と比較する。
【0063】
実施例1:方法AおよびB(10Lバッチ容量)
材料および方法
方法A:
タンクにて、5.1kgの注射用水(WFI)に、23.27gのL-ヒスチジン、419gのマンニトール、および8.71gのL-アルギニンを連続的に加えて、賦形剤溶液(溶液1、
図1)を得た。透明かつ均質の溶液が得られるまで撹拌した。次いで、3.0kgのWFIを含有する別のビーカーに、200gのグレパグルチド(純度および含有量を補正した量)を加えて、API溶液(ZP1848、
図1)を得た。WFIをさらに1.0L使用してペプチド運搬バッグをすすぎ、このすすぎ水はAPI溶液に加えた。塊が消え、透明かつ均質のAPI溶液が得られるまで、スプーンを用いて穏やかに手動撹拌した。得られたAPI溶液を賦形剤溶液に加えて、賦形剤/API溶液(溶液1+ZP1848、
図1)を得、1M酢酸または250mM L-アルギニンを用いてpHを7.0に調整した。WFIを、10Lに達するまで加えた。賦形剤/API溶液が透明かつ均質になるまで、穏やかに撹拌した。
方法B:
タンクにて、7.2kgのWFIに、23.27gのL-ヒスチジン、419gのマンニトール、および8.71gのL-アルギニンを連続的に加えて、賦形剤溶液(溶液1、
図1)を得た。透明かつ均質の溶液が得られるまで撹拌した。200gのグレパグルチド(純度および含有量を補正した量)を、この賦形剤溶液に直接加えて、賦形剤/API溶液(溶液1+ZP1848、
図1)を得た。さらに100mlのWFIを使用して、ペプチド運搬袋をすすいだ。さらに1LのWFIを使用してタンク側面をすすいだ。すすぎ水は賦形剤/API溶液に加えた。透明かつ均質の溶液が得られるまで撹拌した。1M酢酸または250mM L-アルギニンを用いてpHを7.0に調整した。WFIを、10Lに達するまで加えた。透明かつ均質の溶液が得られるまで撹拌した。
結果および考察
2つの方法の実施態様の視覚的評価の結果を、表1に示す。
【0064】
【0065】
新規の方法は、従来の製造方法Aにおけるグレパグルチド製剤と関連した発泡、視覚的管理の失敗、および塊形成などの技術的問題を解決または改善した。方法Aでの穏やかな手動撹拌プロセスもまた、10Lからより大きなバッチ容量へのバッチ容量のスケールアップを制限するものである。
【0066】
方法Aによって製造された2つのバッチおよび方法Bを使用して製造された2つのバッチについて、安定性結果を表2および3に示す。
【0067】
【0068】
安定性試験中におけるグレパグルチド製剤中のオリゴマーの形成は、新規の製剤方法Bでは、従来の方法Aと比較して低減している(表2)。
【0069】
【0070】
ペプチド不純物に関するグレパグルチド製剤の安定性は、新規の製剤方法Bでは、従来の方法Aと比較して全く同じである(表3)。
ツーポット方法(方法A)とワンポット方法(方法B)との間の違いは、方法Aは、透明かつ均質な賦形剤/API溶液を得るために、API溶液および賦形剤/API溶液をスプーンで穏やかに手動撹拌する必要があるのに対し、方法Bはその必要がないということである。方法Bでは賦形剤とWFIと原薬との間の割合に基づき、1つのポット/タンクのみを使用することができ、これによって、この方法がより単純な、扱いがより容易な、より逸脱に頑強な、スケールアップが実行可能なものとなり、改良された安定性を有する最終製剤がもたらされる。
【0071】
実施例2:方法B(20Lバッチ容量)
材料および方法
方法A:
方法Aは、実施例1にて上述している。
方法B:
タンクにて、14.4kgのWFIに、46.54gのL-ヒスチジン、0.838kgのマンニトール、および17.43gのL-アルギニンを連続的に加えて、賦形剤溶液(溶液1、
図1)を得た。賦形剤のビーカーを、それぞれ最大100mlのWFIで洗浄した。透明かつ均質の溶液が得られるまで撹拌した。400gのグレパグルチド(純度および含有量を補正した量)を、少なくとも3部に分けて、好ましくは6部に分けて賦形剤溶液に直接加えて、賦形剤/API溶液(溶液1+ZP1848、
図1)を得た。さらに300mlのWFIを使用して、ペプチド運搬袋をすすいだ。さらに2LのWFIを使用してタンク側面をすすいだ。すすぎ水は賦形剤/API溶液に加えた。透明かつ均質の溶液が得られるまで撹拌した。1M酢酸および/または250mM L-アルギニンを用いてpHを7.0に調整した。WFIを、20.4kgに達するまで加えた。透明かつ均質の溶液が得られるまで撹拌した。
【0072】
【0073】
20Lバッチにおいても、新規の方法Bは、これまでの製造方法Aにおけるグレパグルチド製剤と関連した発泡、視覚的管理の失敗、および塊形成などの技術的問題を解決または改善した。方法Aでの穏やかな手動撹拌プロセスもまた、20Lからより大きなバッチ容量へのバッチ容量のスケールアップを制限するものである。
【0074】
方法Aおよび方法Bによって製造された2つのバッチについて、安定性結果を表5および6に示す。表5には、方法Aおよび方法Bの10Lバッチ容量のデータを、方法Bの20Lバッチ容量のスケールアップデータとの比較として含める。
【0075】
【0076】
方法B(10L)と方法B(20L)との間でのオリゴマー含有量の直接的な比較は可能ではなかった。なぜならば、方法B(20L)の場合、周囲温度における(混合時間と充填時間を合わせた)方法全体の時間が方法B(10L)の場合よりはるかに長くなり、これによって、20Lバッチでは相対的にわずかに高いオリゴマー含有量がもたらされるからである(表5)。より長い方法時間を考慮すると、オリゴマーの量は許容範囲である。
【0077】
【0078】
ペプチド不純物に関するグレパグルチド製剤の安定性は、新規の製剤方法Bでは、従来の方法Aと比較して全く同じである(表6)。
実施例3:プロセスガスとしての窒素
材料および方法
15mlのバッチ容量に好適な6個の別々の容器それぞれにおいて、10.5mlのMQ水に、34.95mgのL-ヒスチジン、628.5mgのマンニトール、および13.07mgのL-アルギニンを連続的に加えて、賦形剤溶液を得た。透明かつ均質の溶液が得られるまで撹拌した。この溶液を、一部のバッチでは、窒素ガスまたは酸素ガスのどちらかで5分間パージした(表7を参照されたい)。方法Bに従って、300mgのグレパグルチド(純度および含有量を補正した量)を各容器に加えた。塊が消え、透明かつ均質な溶液が得られるまで、穏やかに撹拌した。この溶液を、一部のバッチでは、窒素ガスまたは酸素ガスを重層した(表7)。1M酢酸または250mM L-アルギニンを用いてpHを7.0に調整した。MnCl2およびFeCl3を、最終バッチ容量で50+50ppmの濃度となるよう、バッチ4~6に加えた(表7を参照されたい)。MQ水を、すべての製剤に15mlに達するまで加えた。透明かつ均質の溶液が得られるまで、一部のバッチでは窒素ガスまたは酸素ガスの重層下で、撹拌した(表7)。バッチをバイアルに充填し、表7の通り、一部のバッチでは、窒素ガスまたは酸素ガスを重層した。
【0079】
【0080】
結果および考察
表7に記載した組成物を含むバッチについて、安定性結果を表8および9に示す。
【0081】
【0082】
グレパグルチド製剤中のオリゴマーの形成は、窒素ガスを含むバッチでは、酸素を含むかまたはガスを含まないバッチと比較して低減している。グレパグルチド製剤中のオリゴマーの形成は、酸素ガスまたは/および金属塩添加剤を含むバッチでは増加している。
【0083】
【0084】
ペプチド不純物に関するグレパグルチド製剤の安定性は、窒素ガスまたは酸素ガスを含むバッチでも含まないバッチでも全く同じである(バッチ1~3、表9)。この安定性は、金属塩添加剤を含むバッチ(バッチ4~6、表9)では低下しており、これは酸素ガスとの組合せで助長されるが、窒素ガスとの組合せでは限定的である。
【0085】
グレパグルチド製剤は、オリゴマー形成に関して酸化の影響を受けやすい。例えば浸出物または賦形剤不純物からの鉄またはマンガンなどの酸化作用物質の影響は、プロセスガスとして窒素を使用することによって酸素の存在を排除することによって有意に低減され得る。これによって、グレパグルチド製剤安定性がより頑強となることとなる。
【配列表】
【国際調査報告】