IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソルトパワー ホールディング エイピーエスの特許一覧

<>
  • 特表-圧力遅延浸透モジュール 図1
  • 特表-圧力遅延浸透モジュール 図2
  • 特表-圧力遅延浸透モジュール 図3a
  • 特表-圧力遅延浸透モジュール 図3b
  • 特表-圧力遅延浸透モジュール 図4
  • 特表-圧力遅延浸透モジュール 図5
  • 特表-圧力遅延浸透モジュール 図6
  • 特表-圧力遅延浸透モジュール 図7
  • 特表-圧力遅延浸透モジュール 図8
  • 特表-圧力遅延浸透モジュール 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】圧力遅延浸透モジュール
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/00 20060101AFI20240822BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B01D61/00 500
B01D63/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515399
(86)(22)【出願日】2022-09-09
(85)【翻訳文提出日】2024-05-08
(86)【国際出願番号】 EP2022075134
(87)【国際公開番号】W WO2023036944
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】2112964.8
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522327201
【氏名又は名称】ソルトパワー ホールディング エイピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100157934
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 隼明
(72)【発明者】
【氏名】ペダーセン,ラーズ ストーム
(72)【発明者】
【氏名】ヌネス,ジョニー クインタル
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA14
4D006HA02
4D006JA15A
4D006JA25A
4D006JA27Z
4D006JA51Z
4D006KA14
4D006KA33
4D006KD30
4D006PA10
4D006PB03
4D006PB04
4D006PB05
4D006PB08
4D006PB12
(57)【要約】
圧力遅延浸透のための浸透モジュール(100)。浸透モジュール(100)は、第1のドローポート(130)及び第2のドローポート(132)を有する圧力容器(102)を備える。第1のドローポート(130)は、圧力容器(102)の第1の端面(104)に設けられ、中央構造体(例えばパイプ)(116)と流体連通している。複数の中空糸半透膜(114)が、浸透モジュール(100)の糸領域(115)内に収容され、中央構造体(116)の周囲に設けられる。浸透モジュール(100)の第1の長さ方向領域(160)において、ドローストリームは、中央構造体(116)を介して第1のドローポート(130)と糸領域(115)との間を流れることができる。浸透モジュール(100)の第2の長さ方向領域(162)では、ドローストリームがドローポート(130、132)間を流れる流路は、糸領域(115)に限定され、中央構造体(116)と実質的に平行に延びる。第2の領域(162)は、糸領域(115)の長さの大部分に沿って延びる。本開示は、浸透モジュールの中心構造体を遮断するステップを含む、浸透モジュールを変更する方法も提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力遅延浸透のための浸透モジュールであって、その浸透モジュールは以下を備える:
圧力容器であって、第1の端面、第2の端面、第1の端面と第2の端面との間に延在する周囲壁、及びドローストリームが圧力容器の内部に出入りすることができる一対のドローポートを備えており、その一対のドローポートは、第1のドローポートと第2のドローポートとを備える;及び
圧力容器の内部に収容され、中央構造体の周囲に設けられた複数の中空糸半透膜であって、その複数の中空糸半透膜は、中央構造体と周囲壁との間で放射状に延び、圧力容器の長手方向軸に平行な方向に長さを有する糸領域内に位置する;
ここで、第1のドローポートは第1の端面に設けられ、中央構造体は第1のドローポートと流体連通している;
ここで、浸透モジュールは、糸領域の第1の長さ方向部分に沿って延びる第1の領域と、糸領域の第2の長さ方向部分に沿って延びる第2の領域とを備える;
ここで、第1の領域では、ドローストリームは、中央構造体を介して第1のドローポートと糸領域との間を流れることができる;
ここで、第2の領域では、ドローストリームがドローポート間を流れる流路は、糸領域に限定され、中央構造体と実質的に平行に延びる;そして
ここで、第2の領域は、糸領域の長さの大部分に沿って延びる。
【請求項2】
前記第2のドローポートが、前記第2の端面に設けられている、請求項1に記載の浸透モジュール。
【請求項3】
前記中央構造体が、前記第2のドローポートと流体連通している、請求項2に記載の浸透モジュールであって、
ここで、浸透モジュールは、糸領域の第3の長さ方向部分に沿って延びる第3の領域を備え、第3の領域において、ドローストリームは、中央構造体を介して第2のドローポートと糸領域との間を流れることができる。
【請求項4】
前記第1の領域が、前記環状糸領域の長さの半分未満に沿って延びる、請求項1~3のいずれか一項に記載の浸透モジュール。
【請求項5】
前記圧力容器の周囲壁には、前記圧力容器の内部に流体が出入りするためのポートが存在しない、請求項1~4のいずれか一項に記載の浸透モジュール。
【請求項6】
前記中央構造体が、ダクト構造を備え、前記ダクト構造が、前記第2の領域における前記ダクト内の流体の流れを防止するために、その長さに沿って途中で遮断されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の浸透モジュール。
【請求項7】
前記糸領域内の流路の大部分に沿って、前記ドローストリームの正味の流れが前記中央構造体に平行な方向である、請求項1~6のいずれか一項に記載の浸透モジュール。
【請求項8】
前記圧力容器が、前記第1の端面を提供する第1のエンドキャップと、前記第2の端面を提供する第2のエンドキャップとを備え、第1のエンドキャップと第2のエンドキャップは、実質的に同一の幾何学的形状を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の浸透モジュール。
【請求項9】
前記複数の中空糸半透膜の周囲に外側ラップ又はシェルをさらに備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の浸透モジュール。
【請求項10】
前記糸領域が、前記第2の領域内にバッフルを含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載の浸透モジュール。
【請求項11】
前記圧力容器が、少なくとも50バール、任意に少なくとも100バール、及び任意に少なくとも200バールの動作圧力に耐えることができる、請求項1~10のいずれか一項に記載の浸透モジュール。
【請求項12】
前記圧力容器が、
フィードストリームを圧力容器の内部に出入りさせるための一対のフィードポートをさらに備えており、そのフィードポートは中空糸半透膜の内部と流体連通している、請求項1~11のいずれか一項に記載の浸透モジュール。
【請求項13】
前記一対のフィードポートが、第1のフィードポートと第2のフィードポートとを含み、前記第1のフィードポートは前記第1の端面に設けられ、前記第2のフィードポートは前記第2の端面に設けられる、請求項12に記載の浸透モジュール。
【請求項14】
圧力遅延浸透システムであって、
請求項12又は13に記載の浸透モジュールを含んでおり、
ここで、圧力遅延浸透システムは、ドローポートの1つにドローストリームを供給し、フィードポートの1つにフィードストリームを供給するように構成されている。
【請求項15】
前記ドローストリームと前記フィードストリームの両方が、前記第1の端面から前記第2の端面への方向に流れる、請求項14に記載の圧力遅延浸透システム。
【請求項16】
前記ドローストリームは、前記第1の端面から前記第2の端面への方向に流れ、前記フィードストリームは、前記第2の端面から前記第1の端面への方向に流れる、請求項14に記載の圧力遅延浸透システム。
【請求項17】
発電システムであって、
請求項14~16のいずれかに記載の圧力遅延浸透システム;及び発電装置、例えばタービンを含んでいる。
【請求項18】
圧力遅延浸透を実行する方法であって、以下のステップを含む方法:
請求項14~16のいずれかに記載の圧力遅延浸透システムを供給するステップ;及び
ドローストリームを前記ドローポートのうちの1つに流し、フィードストリームを前記フィードポートのうちの1つに流すステップ。
【請求項19】
浸透モジュールを変更する方法であって、その浸透モジュールは以下を備える:
圧力容器であって、第1の端面、第2の端面、第1の端面と第2の端面との間に延在する周囲壁、及びドローストリームが圧力容器の内部に出入りすることができる一対のドローポートを備えており、その一対のドローポートは、第1のドローポートと第2のドローポートとを備える;及び
圧力容器の内部に収容され、中央構造体の周囲に設けられている複数の中空糸半透膜であって、複数の中空糸半透膜は、中央構造体と圧力容器の周囲壁との間で放射状に延び、圧力容器の長手方向軸に平行な方向に長さを有する糸領域内に位置する;
ここで、第1のドローポートは第1の端面に設けられ、中央構造体は第1のドローポートと流体連通している;
ここで、この方法は、以下のステップを含む:
中央構造体をその長さに沿って途中で遮断するステップ、そのような浸透モジュールは以下を備える:
糸領域の第1の長手方向部分に沿って延在する第1の領域であって、その第1の領域において、ドローストリームは、中央構造体を介して第1のドローポートと糸領域との間を流れることができる、及び
糸領域の第2の長手方向部分に沿って延びる第2の領域であって、その第2の領域において、ドローストリームがドローポート間を流れる流路は、糸領域に限定され、中央構造体と実質的に平行に延びる、そして
ここで、第2の領域は、糸領域の長さの大部分に沿って延びている。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、前記第2のドローポートが前記第2の端面に設けられ、前記中央構造体が前記第2のドローポートと流体連通しており、かつ、
この方法は、第1の領域が遮断された領域の一方の側に設けられ、浸透モジュールの第3の領域が遮断された領域のもう一方の側に存在するように、中央構造体の領域を遮断するステップを含む;
ここで、第3の領域は糸領域の第3の長手方向部分に沿って延在し、第3の領域においてドローストリームは中央構造体を介して第2のドローポートと糸領域との間を流れることができる。
【請求項21】
前記周囲壁の内面に沿った前記ドローストリームの流れを減少させるように、前記複数の中空糸半透膜の周囲にラップ又はシェルを設けるステップをさらに含む、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
浸透モジュールを備える圧力遅延浸透システムであって、その浸透モジュールは以下を備える:
第1の端面、第2の端面、第1の端面と第2の端面との間に延びる周囲壁を備える圧力容器、及び
圧力容器の内部に収容される複数の中空糸半透膜;
ここで、圧力遅延浸透システムは、使用時にドローストリームとフィードストリームの両方が第1の端面から第2の端面への方向に流れるように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力遅延浸透(pressure retarded osmosis)のための浸透モジュール(an osmosis module)に関する。特に、本発明は中空糸浸透モジュール(a hollow fibre osmosis module)に関する。本発明はまた、圧力遅延浸透システム及び圧力遅延浸透を実行する方法にも関する。本発明は、浸透モジュールを変更する(modifying)方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
圧力遅延浸透(PRO)は、2つの溶液間の浸透圧の差を利用して力(例えば、電力)を生成するプロセスである。半透膜(semipermeable membrane)は、濃度がより低い溶液(フィード(feed)溶液)を濃度がより高い溶液(ドロー(draw)溶液)から分離するために使用される。通常、圧力遅延浸透では、溶質は塩であり、溶媒は水である。上記膜は、浸透によって、溶媒を、濃度がより低い溶液(浸透圧がより低い)から濃度がより高い溶液 (浸透圧がより高い)に通過させる。上記膜を通過する溶媒は、透過液(permeate)と呼ばれることもある。
【0003】
流体圧力は、溶媒が拡散する膜の側で増加せしめられる。従って、ドローフロー(draw flow)は加圧される。浸透圧の差により、透過液は膜を通って低圧側から高圧側に輸送される。この透過液のドロー側への輸送を利用して発電することができる;例えば、ドローフローをタービンに通すことによって発電できる。このプロセスから得られる総エネルギーは、透過液の容積と膜の高濃度側に加えられる圧力との積である。
【数1】
【0004】
従って、エネルギー生成を最大化するためには、プロセスを可能な最も高い圧力で操作することが有益である可能性がある。但し、実際には、最適な適用圧力は使用する機器によって異なる。
【0005】
図1は、第一の従来技術の浸透モジュール1を示す。浸透モジュール1は、第1の端面3、第2の端面4、及び周囲壁5を有する円筒形ハウジング2を備える。ハウジング2は、半透膜で形成された複数の中空糸(a plurality of hollow fibres)6を封入している。
【0006】
第1の端面3にはフィード入口7があり、第2の端面4にはフィード出口8がある。フィード入口7及びフィード出口8は中空糸6の内部と流体連通している。周囲壁5の両端には、ドロー入口9及びドロー出口10がある。ドロー入口9及びドロー出口10は、中空糸6の外側を取り囲む容積と流体連通している。
【0007】
使用時において、低濃度溶液はフィード入口7に通され、中空糸6を通って移動する。同時に、高濃度溶液はドロー入口9に通され、中空糸6の外側の周囲を流れる。膜材料は、溶質の通過を防ぎながら、浸透によって溶媒が低濃度溶液から高濃度溶液に通過することを可能にする。
【0008】
図1に示すタイプの浸透モジュールは、通常、圧力が10バール(bar)未満の場合である、例えば濾過用途等の低圧用途で使用される。対照的に、PROには最大200バールの圧力がかかる。周囲壁にドロー入口ポートとドロー出口ポートの両方が存在すると、本質的にハウジングの構造が弱くなり、低圧用途向けに設計された浸透ユニットが構造的にPROに適さない可能性がある。
【0009】
図2は、第二の従来技術の浸透モジュール11を示す。浸透モジュール11はまた、第1の端面13、第2の端面14、及び周囲壁15を有する円筒形ハウジング12を備える。ハウジング12は、半透膜で形成された複数の中空糸(a plurality of hollow fibres)16を封入している。第1の端面13にはフィード入口17があり、第2の端面14にはフィード出口18がある。フィード入口17及びフィード出口18は、半透膜の中空糸16の内部と流体連通している。
【0010】
浸透モジュール11のドロー入口19は、第1の端面13の中心にある。ドロー入口19は、ハウジング12内にその長手方向軸に沿って延びるパイプ21に接続されている。従って、パイプ21は、半透膜の中空糸16によって取り囲まれている。入口穴22はパイプ21の長さに沿って分布している。使用時において、高濃度溶液はドロー入口19に通され、入口穴22を通ってハウジング12の内部に入り、第2の端面14の近傍の周囲壁5内に設けられたドロー出口20を通って出る。同時に、低濃度溶液はフィード入口17中に送られ、中空糸16を通って移動する。膜材料は、溶質の通過を防ぎながら、浸透によって溶媒が低濃度溶液から高濃度溶液に通過することを可能にする。
【0011】
パイプ21の位置が中心である結果として、高濃度溶液は、ハウジング12の中心から半径方向に流れ、中空糸16を横方向に通過する傾向がある。従って、このタイプの流れは、ラジアルフロー(radial flow)又はクロスフロー(cross-flow)と呼ばれることがある。高濃度溶液がハウジング12の表面に到達すると、そこからドロー出口20へ移動する。このような構成では、外側の糸(outer fibre)よりも内側の糸(inner fibre)を横切る溶媒の移動が多くなる傾向があり、高濃度ストリームと低濃度ストリームとの間の濃度差が半径方向の距離が増加するにつれて減少する。これにより、浸透プロセスの非効率が生じる可能性がある。例えば、外側の糸を通過する溶媒の移動が少ないにもかかわらず、低濃度ストリームが外側の糸を通過するためにエネルギーが消費される。さらに、内側の糸は外側の糸よりも早くスケールで詰まる可能性があるため、内側の糸は外側の糸よりも早く使用寿命に達するか、より頻繁にクリーニングが必要になる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述の問題を軽減しようとするものである。代替的又は追加的に、本発明は、圧力遅延浸透のための改良された浸透モジュールを提供しようとするものである。代替的又は追加的に、本発明は、改良された圧力遅延浸透システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、第一の態様によれば、圧力遅延浸透のための浸透モジュールを提供する。浸透モジュールは、第1の端面、第2の端面、第1の端面と第2の端面との間に延びる周囲壁、及びドローストリームが圧力容器の内部に流入及び内部から流出することができる一対のドローポート(a pair of draw ports)を有する圧力容器を備える。一対のドローポートは、第1のドローポートと第2のドローポートとを備える。浸透モジュールは、圧力容器の内部に収容された複数の中空糸半透膜(a plurality of hollow fibre semipermeable membranes)をさらに備える。複数の中空糸半透膜は、中央構造体(a central structure)の周囲に設けられる。複数の中空糸半透膜は、中央構造体と周囲壁との間に放射状に延びる糸領域(fibre region)内に位置する。糸領域は、圧力容器の長手軸に平行な方向に長さを有する。第1のドローポートは第1の端面に設けられており、中央構造体は第1のドローポートと流体連通している。浸透モジュールは、糸領域の第1の長さ方向部分に沿って延在する第1の領域と、糸領域の第2の長さ方向部分に沿って延在する第2の領域とを備える。第1の領域では、ドローストリームは、中央構造体を通って第1のドローポートと糸領域との間を流れることができる。第2の領域では、ドローストリームがドローポート間を流れる流路が、糸領域に限定され、中央構造体と実質的に平行に延びる。
【0014】
従って、ドローポート間を流れるドロー流体(draw fluid)は、モジュールの長さのかなりの部分に沿って(半径方向又は中央構造体を通ってではなく)糸領域を通って長さ方向に流れなければならない可能性がある。ドローストリームの流れが糸領域に限定され、流れの方向が(半径方向ではなく)中央構造体に平行である長さ方向の領域(第2の領域)を有する浸透モジュールを提供することにより、ドローストリーム溶液内で半径方向に濃度勾配が確立される範囲が減少する可能性がある。これにより、溶媒の移動が中空糸半透膜全体にわたってより均一に分散されることができ、その結果、よりエネルギー効率の高い浸透プロセスが可能になり得る。追加的又は代替的に、そのような配置は、より多くの中空糸半透膜の入口端(例えば、フィードストリームが糸に入る端)がより高濃度のドローストリームに曝され、それによって、入口端領域の膜を横切るより多くの移動を促進し、フィードストリームが糸を通って移動する際の圧力損失を低減することを意味し得る。本発明は、フィードの全体的な回収率をより高くすることを可能にし、その結果、エネルギー効率及びエネルギー出力が改善され得る。
【0015】
第1の領域及び第2の領域は、浸透モジュールの長さ(即ち、長手方向軸)に沿って分布する別個の領域であることが理解されるであろう。これらの領域が重なり合わないことが理解されるであろう。これらの領域は、間隔を置いていてもよく、即ち隔たり(gap)によって分離されていてもよく、あるいは接触していてもよい。
【0016】
ドローストリームは、高い(即ち、より高い)濃度のストリームであってよい。フィードストリームは、低い(即ち、より低い)濃度のストリームであってよい。
【0017】
第1の領域では、中央構造体の内部と糸領域が流体連通していてよい。第2の領域では、中央構造体の内部と糸領域とが流体連通していなくてよい。
【0018】
中央構造体は、中央構造体の内部と糸領域とが流体連通する1つ又は複数の開口部を備えていてもよい。使用中、ドローストリームは、1つ又は複数の開口部を介して糸領域に流入し又は糸領域から流出することができる。第1の領域において、中央構造体は、(中央構造体と糸領域が流体連通するように)前記開口部を備えることができる。第2の領域では、(中央構造体と糸領域が流体連通しないように)中央構造体には前記開口部がなくてもよい。
【0019】
第1の領域では、中央構造体は、その中を流体が流れることを可能にするように構成され得る。第2の領域では、中央構造体は、その中を流体が流れるのを防ぐように構成され得る。例えば、中央構造体は、中央構造体の全長に沿った流体の流れを防止する第1の内壁を備えることができる。第1の内壁は、第1の領域の一端を画定することができる。第2の領域の第1の端部は、第1の内壁と長さ方向に整列していてもよい。従って、第1の内壁の長さ方向の位置で、第1の領域が終了し、第2の領域が始まることができる。
【0020】
中央構造体は、高濃度ストリーム全体を第1の領域内の糸領域に(又は糸領域から)送達する(又は受け取る)ように構成され得る。
【0021】
第1の領域は、糸領域の長さのわずかな部分に沿って延びることができ、この部分は長さの大部分よりも短い。第1の領域は、糸領域の長さに沿って(圧力容器の第1の端面に最も近い糸領域の端から測定して)50%以下、例えば25%以下、例えば10%以下延在してもよい。第2の領域は、糸領域の長さの40%を超えて延在してもよく、例えば、糸領域の長さの50%を超えて延在してもよい(即ち、第2の領域は、糸領域の長さの大部分に沿って延在してもよい)、例えば、糸領域の長さの75%を超え、例えば、糸領域の長さの90%を超える。
【0022】
中央構造体は、第1のドローポートと流体連通する第1のダクト(a first duct)を備えることができる。第1のダクトは、その中を流体が流れることを可能にすることができる。第1のダクトは、第1の領域の長さに沿って延びることができる。第1のダクトは、糸領域の長さに沿って途中までしか延びていなくてもよい。
【0023】
流路の第1の部分(A first portion of the flow path)は、第1のダクトによって提供され得る。即ち、その第1の部分について、流体は第1のダクトを通って流れることができる。第1のダクトは、糸領域の長さに沿った途中の一部以下(即ち、一部のみ)に流路の第1の部分を提供することができる。換言すれば、流路の第1の部分は、糸領域の長さに沿った最も遠い位置の途中にのみ設けられていてもよい。
【0024】
第1のダクトは、第1のドローポートの近位端から遠位端までの長さを有し得る。流路の第1の部分は、最大で近位端から遠位端まで設けることができる。遠位端は、中央構造体の第1の内壁によって画定され得る。
【0025】
浸透モジュールは、糸領域内の流路の大部分に沿って、ドローストリームの正味の流れが中央構造体に対して実質的に平行な方向となるように構成され得る。ドローストリーム全体が第2の領域の糸領域を通過することもある。ドローストリーム全体は、前述の流路を有することができる(使用中はこれに従う)。流路の第2の部分は糸領域を通ることができる。第2の領域において、流路は環状の断面形状を含んでもよい。
【0026】
本明細書で使用される場合、流路(flow path)という用語は、ストリーム、例えばドローストリームが通過できる容積を指すことが理解されるであろう。同様に、本明細書で使用される「ドローストリームがドローポート間を流れる流路」は、ドローストリームがドローポート間を通過できる容積を指し得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、「第2の領域」という用語は、ドローストリームがドローポート間を流れる流路が、糸領域に限定され、中央構造体と実質的に平行に延びる長さ方向の領域を指すことが理解されるであろう。即ち、第2の領域では、ドローストリームは、第2の領域の長さ全体に沿って、中央構造体の長手軸と実質的に平行な方向に流れる。従って、第2の領域が糸領域の長さの大部分に沿って延びるとき、ドローストリームは糸領域の長さの大部分に沿って中央構造体の長手軸と実質的に平行な方向に流れる。
【0028】
流路と流体連通しているものの、そこを通って流体がドローポートに流れることができない浸透モジュールの領域(例:行き止まり)が存在する可能性がある。そのような領域は、ドローストリームがドローポート間を流れることができる容積の一部を形成せず、従って、ドローストリームがドローポート間を流れる流路上には存在しない。
【0029】
第2のドローポートは周囲壁に設けられていてもよい。第2のドローポートは、第2の端面に近接した(例えば、隣接した)位置で周囲壁に設けることができる。第2のドローポートは、(圧力容器の第2の端面に最も近接した糸領域の端から測定して)糸領域の長さに沿った途中の30%以下、例えば20%以下、例えば10%以下のところに設けられてもよい。第2のドローポートと第1の領域(又は流路の第1の部分、又は第1のダクト)との間に長手方向の重なりがなくてもよい。
【0030】
第2のドローポートは、圧力容器の第2の端面に設けられてもよい。従って、両方のドローポートを圧力容器のそれぞれの端面に設けることができる。これにより、周囲壁のポートの数が減るため、周囲壁の強度が向上する可能性がある。これにより、例えば壁を厚くしたり、より強力な材料で作製したり、ドローポートの周囲に追加の構造を設けたりすることによって、壁を補強する必要なしで、圧力容器がより高い作動圧力に耐えられる可能性がある。
【0031】
浸透モジュールは、糸領域の第3の長さ方向部分に沿って延びる第3の領域を備え得る。第3の領域では、ドローストリームは、中央構造体を介して第2のドローポートと糸領域との間を流れることができる。
【0032】
第1の領域、第2の領域、及び第3の領域は、浸透モジュールの長さ(即ち、長手方向軸)に沿って分布する別個の領域であることが理解されよう。領域が重なり合わないことが理解されるであろう。第1の領域、第2の領域、及び第3の領域は、浸透モジュールの長さに沿ってこの順序で分布することができる。隣接する領域は、間隔をあけて配置されていてもよく、即ち隔たりによって分離されていてもよく、あるいは接触していてもよい。
【0033】
第3の領域では、中央構造体と糸領域が流体連通している可能性がある。第3の領域では、中央構造体は前記開口部を備えてもよく、それを介して中央構造体と糸領域が流体連通する(中央構造体と糸領域が流体連通するように)。
【0034】
第3の領域では、中央構造体は、その中を流体が流れることを可能にするように構成され得る。中央構造体は、中央構造体の全長に沿った流体の流れを防止する第2の内壁を備え得る。第2領域の第2の端は、第2内壁と長さ方向に整列していてもよい。第2の内壁は、第3の領域の一端を画定することができる。従って、第2の内壁の長手方向位置で、第2の領域が終了して、第3の領域が開始し得る。
【0035】
中央構造体は、高濃度ストリーム全体を第3の領域内の糸領域に(又は糸領域から)送達する(又は受け取る)ように構成され得る。
【0036】
第3の領域は、(圧力容器の第2の端面に最も近い糸領域の端から測定して)糸領域の長さに沿って50%以下、例えば25%以下、例えば10%以下のところに延在してもよい。
【0037】
中央構造体は、第2のドローポートと流体連通する第2のダクトを備えることができる。第2のダクトは、その中を流体が流れることを可能にすることができる。第2のダクトは、第3の領域の長さに沿って延びることができる。第2のダクトは、糸領域の長さに沿って途中までしか延びていなくてもよい。
【0038】
流路の第3の部分は、第2のダクトによって(即ち、第2のダクトを通して)提供され得る。第2のダクトは、糸領域の長さに沿った途中まで(即ち、一部のみ)に流路の第3の部分を提供することができる。換言すれば、流路の第3の部分は、糸領域の長さに沿った最も遠い位置の途中にのみ設けられていてもよい。
【0039】
第2のダクトは、第2のドローポートの近位端から遠位端までの長さを有し得る。流路の第3の部分は、最大で近位端から遠位端まで設けることができる。遠位端は、中央構造体の第2の内壁によって画定され得る。
【0040】
中央構造体は、遮断部材、例えばプラグ又は栓を受け入れ得る。遮断部材は、中央構造体の第1及び/又は第2の内壁を提供し得る。中央構造体はダクト構造を含んでもよい。ダクト構造は、圧力容器の長さの大部分に沿って延びることができる。ダクト構造は、第1の端面から第2の端面まで延びていてもよい。
【0041】
ダクト構造は、第1のダクト、遮断領域、及び任意で第2のダクトを形成するように、その長さに沿って途中で(遮断部材で)遮断されてもよい。ダクト構造は、遮断領域の一方の側に第1のダクト(従って、流路の第1の部分)を提供し、遮断領域の反対側に第2のダクト(従って、流路の第3の部分)を提供することができる。中央構造体は、流体が圧力容器のいずれかの端から糸領域に沿って50%、40%、30%、20%、又は10%のところを超えて移動できないように遮断されてもよい。
【0042】
ダクト構造は、中空の細長い部材の形態であってもよい。ダクト構造はパイプの形態であってもよい。第1のダクト及び/又は第2のダクトは、複数の流れの通路(a plurality of flow channels)を備え得る。第1のダクト及び/又は第2のダクトは、複数の個別の流れの通路に細分することができる。第1のダクト及び/又は第2のダクトは分岐していてもよく、複数の流れの通路はそれぞれ(依然として中央構造体を形成しながら)別個の外壁を有していてもよい。
【0043】
圧力容器は、第1の端面を提供する第1のエンドキャップを備えることができる。圧力容器は、第2の端面を提供する第2のエンドキャップを備えることができる。第1のエンドキャップ及び第2のエンドキャップは、実質的に同一の幾何学的形状(例えば、同一の幾何学的形状)を有してもよい。これにより、浸透圧モジュールを製造する際に作成する必要があるさまざまな部品の数を減らすことができる。エンドキャップの少なくとも一方、場合によっては両方が取り外し可能であってもよい。これにより、半透膜を圧力容器から取り外して交換することが可能になる。
【0044】
圧力容器は、フィードストリームを圧力容器の内部に出入りさせるための一対のフィードポートをさらに備えることができる。一対のフィードポートは、第1のフィードポートと第2のフィードポートを備えることができる。フィードポートは、中空糸半透膜の内部と流体連通していてもよい。第1フィードポートは、第1端面に設けられていてもよい。第2フィードポートは、第2端面に設けられていてもよい。浸透モジュールは、フィードストリームがフィードポート間を流れる流路を提供するように配置されてもよい。流路は、中空糸半透膜の内部(interior)を通るものであってもよい。
【0045】
圧力容器の周囲壁には、圧力容器の内部に流体が出入りするためのポートがなくてもよい。例えば、圧力容器の周囲壁にはドローポートもフィードポートも存在しない場合がある。
【0046】
浸透モジュールは、複数の中空糸半透膜、例えば実質的に全ての中空糸半透膜の周囲に外部ラップ又はシェルを備えてもよい。ラップは、複数の中空糸半透膜の周囲に巻き付けられた材料、例えばフェルトを含んでもよい。シェルは、複数の部分、例えば複数の中空糸半透膜を一緒に取り囲む2つの半円筒形部分を含んでもよい。ラップ又はシェルは、ドローストリームが、例えば糸領域の内部を通ってではなく周囲壁の内面に沿って流れることによって、複数の中空糸半透膜を迂回できる程度を減少させる可能性がある。ラップ又はシェルは、ドローストリームを、強制的に糸領域の内部に流し通すことができる。ラップ又はシェルは透過性材料で形成されてもよい。材料の透過性にかかわらず、ラップ又はシェルは、ドローストリームの大部分を、強制的に糸領域の内部に流し通すのに十分な高い流動抵抗を有することができる。
【0047】
周囲壁の領域は、周囲壁の端部領域よりも小さな内径を有していてもよい。例えば、前記領域の内径は、端部領域の内径より1%超、例えば5%超、例えば10%超小さくてもよい。周囲壁の前記領域は、複数の中空糸半透膜と接触していてもよい。周囲壁の前記領域は、そうでなければ中空糸半透膜外側と周囲壁の内面との間に存在するであろう隙間を制限することができる。それによって、周囲壁の前記領域は、高濃度溶液が、例えば糸領域の内部を通ってではなく周囲壁の内面に沿って流れることによって、複数の中空糸半透膜を迂回できる程度を減少させることができる。周囲壁の前記領域は、ドローストリームを、強制的に糸領域の内部に流し通すことができる。
【0048】
周囲壁の端領域は、例えば外端でより大きな直径を有し、内端でより小さな直径を有する漏斗形状を形成してもよい。これにより、中空糸半透膜を圧力容器内に挿入しやすくすることができる。
【0049】
圧力容器は、少なくとも50バール、例えば少なくとも100バール、例えば少なくとも150バール、例えば少なくとも200バールの作動圧力に耐えることができる。
【0050】
中空糸半透膜の第1の表面が存在してもよく、第1の表面は中空糸半透膜の外側にある。中空糸半透膜の第2の表面があってもよく、第2の表面は中空糸半透膜の内側にある。ドローポートは、中空糸半透膜の第1の表面と流体連通していてよい。フィードポートは、中空糸半透膜の第2の表面と流体連通していてよい。
【0051】
第1のドローポートはドロー入口であってもよく、第2のドローポートはドロー出口であってもよい。代替的に、第1のドローポートはドロー出口であり、第2のドローポートはドロー入口であってもよい。ドロー入口は、ドローストリームの圧力容器内への通過及び中空糸半透膜の第1の表面への通過を可能にするように構成され得る。ドロー出口は、圧力容器内部からの濃度低減ストリームの通過を可能にするように構成することができ、その濃度低減アウトプットストリームは(膜の第1の側を流れて通過した後の)ドローストリームに由来する。
【0052】
第1のフィードポートはフィード入口であってもよく、第2のフィードポートはフィード出口であってもよい。代替的に、第1のフィードポートがフィード出口であり、第2のフィードポートがフィード入口であってもよい。フィード入口は、フィードストリームの圧力容器の内部及び中空糸半透膜の第2の表面への通過を可能にするように構成され得る。フィード出口は、圧力容器内部からの濃度増加ストリームが通過できるように構成され、その濃度増加ストリームは(膜の第2の側を流れて通過した後の)フィードストリームに由来する。
【0053】
圧力容器は、一般的な円筒形状(例えば、円筒形状)を有していてもよい。圧力容器は、円形の断面を有してもよく、前記断面は、圧力容器の長手方向軸に垂直な平面で取られたものである。前記第1のドローポートは、前記第1の端面の中央に設けられていてもよい。前記第2のドローポートは、前記第2の端面の中央に設けられていてもよい。
【0054】
中央構造体は円筒形であってもよい。中央構造体は、圧力容器の長手方向軸と平行に、あるいは任意に圧力容器の長手方向軸に沿って延びることができる。中央構造体は、糸領域の実質的に全長に沿って延びることができる。糸領域と中央構造体は同軸であってもよい。第2の領域では、流路(flow path)が中央構造体の長手方向軸と実質的に平行に延びることができる。
【0055】
第2の領域内の流路は、実質的に円筒形であってもよい。第2の領域の流路は、糸領域が圧力容器の周囲壁の内側又はラップもしくはシェルと接する(例えば、円周方向の)外面を有していてもよい。第2の領域における流路の外面は、第2の領域の端部間で実質的に一定の断面を有してもよい。例えば、糸領域内に向かう内側への突出部が存在し、流路を実質的に歪める場合、長さ方向の位置が存在しない可能性がある。第2の領域における流路の外面は、一定の半径を有してもよい。
【0056】
第2の領域内の流路は、糸領域が中央構造体の外側と接する(例えば、円周方向の)内面を有してもよい。第2の領域における流路の内面は、第2の領域の端部間で実質的に一定の断面を有してもよい。例えば、糸領域内に向かう外側への突出部が存在し、流路を実質的に歪める場合、長さ方向の位置が存在しない可能性がある。第2の領域における流路の内面は、一定の半径を有していてもよい。
【0057】
中空糸半透膜はそれぞれ直線的な経路を辿ることができる。中空糸半透膜はそれぞれ螺旋状の経路を辿ることができる。複数の中空糸半透膜は、中心構造体の周囲に巻き付けられていてもよい。複数の中空糸半透膜は一緒に(即ち集合的に)中空糸の束を形成することができる。浸透モジュールは、フィードストリームを中空糸半透膜の開放端に分配するように配置されたマニホールドを備え得る。中空糸半透膜の(他の)開放端から濃度増加ストリームを受け取るように配置されたマニホールドがあってもよい。複数の中空糸半透膜は、一端又は両端で一緒に固定することができる。複数の中空糸半透膜は、一端又は両端でシール剤中に設置されていてもよい。中央構造体はシール剤を通って突出する場合がある。
【0058】
糸領域は環状糸領域であってもよい。環状糸領域は、中央構造体を周方向に取り囲むことができる。複数の中空糸半透膜が集合して糸領域を画定してもよい。糸領域は、複数の中空糸半透膜(例えば、実質的にすべての中空糸半透膜)が圧力容器の内部内で一緒に(即ち集合的に)占める概念的な容積であり、使用中にドローストリームが流れる個々の糸間の空間を含む。前記概念的容積は、圧力容器の長手方向軸に沿って離間した第1の端部と第2の端部を有することができ;そして、糸領域の長さは、第1端と第2端の間の距離である。糸領域は、圧力容器の長さの大部分に沿って延びることができる。
【0059】
糸領域には、第2の領域内にバッフルなどの構造がなくてもよい。糸領域(全体として)にはバッフルがなくてもよい。バッフルは、糸領域に形成された流れの方向転換構造である。例えば、バッフルは、糸領域の外縁又は内縁から中央構造体に対して半径方向に延びる細長い構造を備え得る。それらは、例えば、樹脂材料から形成され得る。バッフルは、中空糸領域を通る流体の流れを制限することができる。バッフルは、横流れを促進する方法で中空糸領域を通るドローストリームの方向を変えることもできる。浸透モジュールを通るドローストリームの流れ抵抗を最小限に抑えるため、及び/又は中空糸膜と平行な方向にドローストリームを流すために、バッフルのない糸領域を提供することが有利であり得る。
【0060】
本発明は、第2の態様によれば、圧力遅延浸透システムを提供する。圧力遅延浸透システムは、本発明の第1の態様による浸透モジュールを備える。圧力遅延浸透システムは、ドローポートの1つ(ドロー入口)にドローストリームを供給し、フィードポートの1つ(フィード入口)にフィードストリームを供給するように構成される。
【0061】
圧力遅延浸透システムは、ドローストリーム及び/又はフィードストリームをポンピングするための1つ又は複数のポンプを備え得る。圧力遅延浸透システムは、ドローストリームを、例えば50バールを超える、100バールを超える、150バールを超える、又は200バールを超えるまで加圧するように構成され得る。
【0062】
圧力遅延浸透システムは、別のドローポート(ドロー出口)から濃度低減ストリームを受け取り、別のフィードポート(フィード出口)から濃度増加ストリームを受け取るようにさらに配置され得る。圧力遅延浸透システムは、圧力を濃度低減ストリームからドローストリームに伝達するように構成された圧力交換器を備え得る。
【0063】
ドローストリームは第1の端面から第2の端面への方向に流れ、フィードストリームは第2の端面から第1の端面への方向に流れる場合がある。このような配置は、向流配置(a counter-current arrangement)と呼ばれることがある。この場合、ドロー出口及びフィード入口は、圧力容器の第1の端部(例えば、第1の端面)にあってもよく、ドロー入口及びフィード出口は、圧力容器の第2の端部(例えば、第2の端面)にあってもよい。
【0064】
ドローストリームとフィードストリームの両方が、第1の端面から第2の端面への方向に流れる場合がある。このような配置は、並流配置(a co-current arrangement)と呼ばれることがある。この場合、ドロー入口及びフィード入口は、圧力容器の第1の端部(例えば、第1の端面)にあってもよく、ドロー出口及びフィード出口は、圧力容器の第2の端部(例えば、第2の端面)にあってもよい。
【0065】
並流又は向流のどちらの配置が好ましいかは、フィードストリームの性質に依存する可能性がある。並流配置は、フィードストリームが塩分を含まないか、又は無視できるほどの塩分を含む場合に利点を有する可能性がある。並流配置では、「新鮮な」ドロー溶液と「新鮮な」フィード溶液が膜の一方の側に存在するため、入口側近くの半透膜を横切る浸透圧差がより大きくなる可能性がある。これは、膜を通過する透過水の流束(flux)が入口側近くで高く、出口側近くで低いことを意味している可能性がある。より多くの溶媒をフィードストリームからドローストリームに早期に移送することにより、溶媒が圧力容器の膜を通過する前に圧力容器に沿ってそれほど遠くまで通過する必要がなくなるため、平均して、フィードストリームを供給するために必要なエネルギーが少なくなる可能性がある。これにより、例えば他の点は同一の条件下の向流配置と比較して、より効率的な圧力遅延浸透プロセスがもたらされる可能性があることが判明した。一方、向流配置は、フィードストリームが塩水ストリームである場合に利点を有する可能性がある。例えば、圧力容器の長さに沿ってより高い最小圧力差を維持できるようにすることができる。
【0066】
浸透モジュールは、ドローストリームとして使用するための高濃度溶液を保持するリザーバと流体連通していてもよい(そして、圧力遅延浸透システムは、そのリザーバを備えていてもよい)。浸透モジュールは、フィードストリームとして使用するための低濃度溶液を保持するリザーバと流体連通していてもよい(そして、圧力遅延浸透システムは、そのリザーバを備えていてもよい)。
【0067】
本発明は、第3の態様によれば、発電システムを提供する。発電システムは、本発明の第2の態様による圧力遅延浸透システムを備える。発電システムはさらに、発電装置、例えばタービンを備える。発電装置は、濃度低減ストリームと流体連通していてもよい。発電装置は、(例えば、ドロー入口に入るドローストリームと比較して)減少した濃度のストリームの増加した圧力を利用して電力を発生するように構成され得る。
【0068】
本発明は、第4の態様によれば、圧力遅延浸透を実行する方法を提供する。この方法は、本発明の第2の態様による圧力遅延浸透システムを供給することを含む。この方法は、ドローストリームをドローポートの1つ(ドロー入口)に通し、フィードストリームをフィードポートの1つ(フィード入口)に通すことを含む。この方法は、別のドローポート(ドロー出口)から濃度低減ストリームを受け取ることと、別のフィードポート(フィード出口)から濃度増加ストリームを受け取ることとをさらに含んでもよい。この方法はさらに、発電装置、例えばタービンを使用して発電することを含んでもよい。
【0069】
適切なドローストリーム及びフィードストリームは当業者には既知である。ドローストリームの一例は、塩水ストリームである。ドローストリームの塩含有量は、飽和までであれば何でもよい。塩含量は、少なくとも3重量%、任意に少なくとも5重量%、任意に少なくとも10重量%、任意に少なくとも15重量%、及び任意に少なくとも20重量%であり得る。ドローストリームは、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び/又は塩化カルシウムを含む、又はそれらを主成分とする、多種多様な溶解塩を含有し得ることが理解されるであろう。「塩分含有量」とは、総塩分含有量を指す。このようなストリームに存在する塩の正確な性質は重要ではない。ドローストリームは、任意の適切な供給源から;例えば、工業プロセス、塩と溶質の直接混合、海(ドローストリームが海水)、又は地熱地層から得ることができる。
【0070】
フィードストリームの塩分がドローストリームの塩分よりも低いことが理解されるであろう。フィードストリームの例は、塩含有量が無視できる水ストリームである。フィードストリームの塩含有量が0重量%であってもよい。代替的に、フィードストリームの塩分がドローストリームの塩分よりも低いという条件で、フィードストリームが塩を含有していてもよい。フィードストリームは、任意の適切な供給源から得ることができる。フィードストリームは海水であってもよい。フィードストリームは、例えば、川又は湖から得られる淡水又は汽水、地下水、又は工業用もしくは地方自治体の供給源から得られる廃水であり得る。フィードストリームは、工業的プロセス中に生成される凝縮物であってもよい。
【0071】
代替的又は追加的に、ドローストリーム及びフィードストリームは、半透膜を横切る浸透圧の差を確立するように、異なる濃度の有機分子(例えば、有機化合物)を含んでもよい。有機分子は、例えば、グルコースなどの糖を含むことができる。フィードストリーム中の有機分子の濃度は、ドローストリーム中の有機分子の濃度よりも低いことが理解されるであろう。
【0072】
半透膜は、溶媒がドローストリームからフィードストリームに通過できるように構成されている。半透膜は、水の通過は許容するが、塩の通過は許容しない。
【0073】
本発明は、第5の態様によれば、浸透モジュールを変更する方法を提供する。浸透モジュールは、第1の端面、第2の端面、第1の端面と第2の端面との間に延びる周囲壁、及びドローストリームが圧力容器の内部に流入及び流出する一対のドローポートを有する圧力容器を備える。一対のドローポートは、第1のドローポートと第2のドローポートとを備える。浸透モジュールは、圧力容器の内部内に収容され、中央構造体の周囲に設けられた複数の中空糸半透膜をさらに備える。複数の中空糸半透膜は、中央構造体と圧力容器の周囲壁との間で放射状に延びる糸領域内に位置している。糸領域は、圧力容器の長手軸に平行な方向に長さを有する。第1のドローポートは第1の端面に設けられており、中央構造体は第1のドローポートと流体連通している。この方法は、浸透モジュールが糸領域の第1の長さ方向部分に沿って延在する第1の領域を備えるように、中央構造体をその長さに沿って途中で遮断するステップを含み、ここで、第1の領域では、ドローストリームが、中央構造体を介して第1のドローポートと糸領域との間を流れることができ、第2の領域が糸領域の第2の長手方向部分に沿って延在する。ここで、第2の領域では、ドローストリームがドローポート間を流れる流路が、糸領域に限定され、中央領域と実質的に平行に延びる。
【0074】
ドローストリームの流れが糸領域に限定され、流れの方向が(半径方向ではなく)中央構造体に平行になる長さ方向の領域(第二の領域)を有するように浸透モジュールを変更することによって、圧力容器の内側領域と外側領域との間でドローストリーム溶液内に確立される濃度勾配の程度が減少する可能性がある。これにより、溶媒移動が中空糸半透膜全体にわたってより均一に分散される可能性があり、その結果、浸透モジュールを使用する浸透プロセスのエネルギー効率が向上する可能性がある。付加的又は代替的に、この方法で浸透モジュールを変更すると、低圧用途用の市販の浸透モジュールを圧力遅延浸透などの高圧用途で再利用できる場合がある。
【0075】
中央構造体は、プラグ又は栓などの遮断部材を中央構造体内に挿入することによって遮断され得る。
【0076】
第2のドローポートは、第2の端面に設けられてもよい。中央構造体は、第2のドローポートと流体連通していてもよい。この方法は、第1の領域が遮断された領域の一方の側に設けられ、浸透モジュールの第3の領域が遮断された領域の他方の側に存在するように、中央構造体の領域を遮断することを含むことができ、第3の領域は糸領域の第3の長手方向部分に沿って延在し、第3の領域では、ドローストリームは、中央構造体を介して第2のドローポートと糸領域との間を流れることができる。
【0077】
この方法は、複数の中空糸半透膜の周囲にラップ又はシェルを設けるステップをさらに含んでもよい。これにより、周囲壁の内面に沿ったドローストリームの流れが減少する可能性がある。
【0078】
この方法は、本発明の第1の態様による浸透モジュールを提供するように浸透モジュールを変更するステップを含むことができる。変更された浸透モジュールは、本発明の第1の態様に関連して説明された特徴のいずれをも有し得る。
【0079】
本発明は、第6の態様によれば、浸透モジュールを備える圧力遅延浸透システムを提供する。浸透モジュールは、第1の端面、第2の端面、第1の端面と第2の端面との間に延びる周囲壁を有する圧力容器を備える。浸透モジュールは、圧力容器の内部に収容された複数の中空糸半透膜をさらに備える。圧力遅延浸透システムは、使用時にドローストリームとフィードストリームの両方が第1の端面から第2の端面への方向に流れるように構成される。従って、第6の態様による圧力遅延浸透システムは並流配置を有する。
【0080】
浸透モジュールは、圧力容器の内部に出入りする高濃度ストリームを通過させるための一対のドローポートと、圧力容器の内部に出入りする低濃度ストリームを通過させるための一対のフィードポートを備えることができる。一対のドローポートは、圧力容器の第1の端部にある第1のドローポートと、圧力容器の第2の端部にある第2のドローポートとを備えることができる。一対のフィードポートは、圧力容器の第1の端部にある第1のフィードポートと、圧力容器の第2の端部にある第2のフィードポートとを備えることができる。
【0081】
圧力遅延浸透システムは、第1のドローポートにドローストリームを供給し、第1のフィードポートにフィードストリームを供給するように構成され得る。圧力遅延浸透システムは、第2のドローポートから濃度減少ストリームを受け取り、第2のフィードポートから濃度増加ストリームを受け取るように構成され得る。
【0082】
勿論、本発明の一態様に関連して説明した特徴は、本発明の他の態様に組み込むことができることを理解されたい。例えば、本発明の方法は、本発明の装置を参照して説明した特徴のいずれも組み込むことができ、その逆も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
本発明の実施態様を、添付の概略図を参照して、単なる例として説明する。
図1】第一の従来技術の浸透モジュールの側面図を示す。
図2】第二の従来技術の浸透モジュールの側面図を示す。
図3図3a及び図3bは、並流配置における本発明の第一の実施態様による浸透モジュールの側面図を示す。
図4】本発明の第1の実施態様による浸透モジュールの第1の端部の拡大側面図を示す。
図5】向流配置における本発明の第一の実施態様による浸透モジュールの側面図を示す。
図6】本発明の一実施態様による発電システムの概略図を示す。
図7】並流配置における本発明の第二の実施態様による浸透モジュールの側面図を示す。
図8】向流配置における本発明の第二の実施態様による浸透モジュールの側面図を示す。
図9】本発明の第三の実施態様による浸透モジュールを変更する方法を示す。
【0084】
詳細な説明
図3は、本発明の第一の実施態様による浸透モジュール100を示す。浸透モジュール100は、圧力遅延浸透システムで使用するように構成されており、少なくとも100バールの動作圧力に耐えることができる。浸透モジュール100は、第1の端面104、第2の端面106、及び第1の端面104と第2の端面106との間に延びる周囲壁108を有する円筒形の圧力容器102を備える。圧力容器102は、その長さに沿って延びる長手軸(破線で示す)を有する。第1の端面104は、周囲壁108の第1の端部を閉じる第1のエンドキャップ110によって提供され、第2の端面106は、周囲壁108の第2の端部を閉じる第2のエンドキャップ112によって提供される。
【0085】
複数の中空糸半透膜114が圧力容器102の内側に配置されている。半透膜材料は溶媒(この場合は水)を通過させるが、塩は通過させない。複数の中空糸半透膜114は、圧力容器102と同軸に配置された円筒形の中央構造体116の周囲に環状配置で設けられる。複数の中空糸半透膜114は、中央構造体116と周囲壁108との間に環状糸領域115を画定する。環状糸領域115は、中央構造体116から周囲壁108まで半径方向に延びる。環状糸領域115は、圧力容器102の長手方向軸に平行な方向に長さLを有する。環状糸領域115及び中央構造物体116は両方とも圧力容器102と同軸である。
【0086】
複数の中空糸半透膜114は、一枚のフェルトからなるラップ118でまとめて包まれている。ラップ118は、複数の中空糸半透膜114の周りに円周方向に延在し、最も外側の中空糸半透膜と周囲壁108との間に位置する。代替実施形態では、複数の中空糸半透膜114は、2つの開放端半円筒部分を含むシェルによって周方向に囲まれている。
【0087】
中央構造体116は、パイプの形態のダクト構造で形成されている。プラグ120の形態の遮断部材は、中央領域の両側に第1のダクト122及び第2のダクト124を画定するように、中央構造体116の中央領域を遮断する。第1のダクト122及び第2のダクト124は、環状糸領域115の長さLに沿って途中の一部のみ延在する。図示の実施態様では、第1のダクト122及び第2のダクト124は、環状糸領域115の長さLに沿った10%未満に延在している。
【0088】
第1のダクト122は、第1のダクト122が環状糸領域115と流体連通する開口部126を備える。同様に、第2のダクト124は、第2のダクト124が環状糸領域115と流体連通する開口部128を備える。具体的には、第1のダクト122及び第2のダクト124は、中空糸半透膜114の外側の容積と流体連通している。開口部126、128は、環状糸領域115の半径方向内側の位置に設けられている。
【0089】
圧力容器102はさらに、第1の端面104の中心に設けられた第1のドローポート130と、第2の端面106の中心に設けられた第2のドローポート132とを備える。第1のドローポート130は第1のダクト122と流体連通しており、第2のドローポート132は第2のダクト124と流体連通している。従って、ドローポート130、132は、環状糸領域115と流体連通している。
【0090】
浸透モジュール100は、第1のドローポート130と第2のドローポート132との間にドローストリームのための流路(flow path)を提供する。流路に沿った流れの一例を破線で示す。流路は、(i)第1のダクト122によって(即ち、それを通して)供給される第1の部分、(ii)環状糸領域115内、具体的には中空糸半透膜114の外側の周囲にある第2の部分、及び(iii)第2のダクト124によって提供される第3の部分を含む。
【0091】
第1のダクト122及び第2のダクト124は、環状糸領域115の長さに沿って途中までしか延びていないため、第1のダクト122及び第2のダクト124は、それぞれ、環状糸領域115の長さに沿って途中までの流路の第1の部分及び第3の部分を提供する。流路の第2の部分の大部分に沿って、ドローストリーム全体が、圧力容器102の長手方向軸に実質的に平行な方向に強制的に流れる。その結果、例えば図2の浸透モジュールと比較して、ドローストリームの濃度の半径方向における変化が少なくなるので、中空糸半透膜を横切る流体の移動がより均一になり、半径方向の位置への依存性も低くなり得る。
【0092】
図3bに示すように、浸透モジュール100の第1の長さ方向領域160、第2の長さ方向領域162、及び第3の長さ方向領域164を画定することができる。第1の領域160は、環状糸領域115の第1の長手方向部分に沿って延在する。第1の領域160において、ドローストリームは、中央構造体116を介して、第1のドローポート130と環状糸領域115との間を流れることができる。従って、第1の領域160は、第1のダクト122の長さによって画定され、第1のダクト122の長さに沿って延びる。
【0093】
第2の領域162は、環状糸領域115の第2の長手方向部分に沿って延在する。ドローストリームの流れは、第2の領域162を通って移動する間、環状糸領域115に限定され、流れの正味の方向は、圧力容器102の長手方向軸に実質的に平行である。従って、流路は環状糸領域115に限定され、中央構造体116と実質的に平行に延びる。ドローストリームは、第2の領域の長さに沿って中央構造体116の長手方向軸と実質的に平行な方向に流れる。第2の領域162は、実質的にプラグ120の長さに沿って延在する。第2の領域162の端部は、長手方向において、プラグ120の端部と実質的に整列する。
【0094】
第3の領域164は、環状糸領域115の第3の長手方向部分に沿って延在する。第3の領域164において、ドローストリームは、中央構造体116を介して第2のドローポート132と環状糸領域115との間を流れることができる。従って、第3の領域164は、第2のダクト124の長さによって画定され、第2のダクト124の長さに沿って延びる。
【0095】
さらに、ラップ118は、周囲壁108の内面に沿って流れることによって中空糸半透膜114を迂回できる流体の量を減少させる。これにより、ドローストリームと中空糸半透膜114との間の平均接触が増加し得る。代替実施態様では、ラップ118は設けられず、中空糸半透膜114が圧力容器102の周囲壁108の内面に接触する。代替実施形態では、周囲壁108は、ラップ118によって占められる図3に示される容積を占めるように、減少した内径を含む中間セクションを有する。
【0096】
圧力容器102はさらに、第1の端面104に設けられた第1のフィードポート134と、第2の端面106に設けられた第2のフィードポート136とを備える。フィードポート134、136は、それぞれ、中空糸半透膜114の内部と流体連通している。図4に示すように、圧力容器102の端面と中空糸半透膜114の開放端との間の隔たりは、フィードストリームがフィードポート及び中空糸半透膜114に/から流れることができるマニホールド137を形成する。シール剤138は、フィードストリームが中空糸半透膜114の外側を取り囲む容積に入るのを防ぐ。
【0097】
圧力遅延浸透システムで使用する場合、中空糸半透膜114の外側の周りを流れるドローストリームと中空糸半透膜114の内側を流れるフィードストリームとの間に、並流又は向流のいずれかを確立することができる。
【0098】
図3a及び3bは、並流を示す矢印を示しており、第1のドローポート130はドロー入口として使用され、第1のフィードポート134はフィード入口として使用され、第2のドローポート132はドロー出口として使用され、第2のフィードポート136はフィード出口として使用される。図5は、本発明の第1の実施態様による浸透モジュール100を示すが、矢印は向流を示している。この場合、第1ドローポート130はドロー出口として使用され、第1フィードポート134はフィード入口として使用され、第2ドローポート132はドロー入口として使用され、第2フィードポート136はフィード出口として使用される。
【0099】
図6は、圧力遅延浸透システム142及び発電装置144を備える発電システム140を示す。圧力遅延浸透システム142は、本発明の第1の実施態様による浸透モジュール100を並流配置で備える。浸透モジュール100は、単一の中空糸半透膜114を備えて概略的に示されている。
【0100】
第1のリザーバ146は塩水を保持しており、そこからドローストリーム148が抽出される。ドローストリーム148はポンプ149に送られてストリームの圧力を高め、次いで浸透モジュール100の第1のドローポート130(ドロー入口)に送られる。第2のリザーバ150は、塩水よりも低い塩濃度を有する水溶液を保持し、そこからフィードストリーム152が抽出される。フィードストリーム152は、浸透モジュール100の第1のフィードポート134(フィード入口)に通される。
【0101】
フィードストリーム152は、中空糸半透膜114の中に分配され、その内部を通って第2のフィードポート136(フィード出口)まで流れる。同時に、ドローストリーム152は、圧力容器を通って第2のドローポート132(ドロー出口)まで流路をたどる。流路は、第1のダクト122内の第1の部分、環状糸領域115内の第2の部分、及び第2のダクト124内の第3の部分を含む。環状糸領域115内では、高濃度ストリーム148が中空糸半透膜114の外側の周りを流れる。高濃度ストリームが中央構造体116内のプラグ120の周囲に強制的に流れる場合、流れの方向は中央構造体116の長手方向軸と実質的に平行である。
【0102】
たとえドローストリーム148側の圧力がフィードストリーム152側よりも高いとしても、ドローストリーム148とフィードストリーム152との間の浸透圧差により、水は半透膜114を横切って移送される。図6において、矢印は、半透膜114を横切る浸透による水の輸送の方向を示す。従って、流体の余分な容積は、ストリーム中の流量の増加をもたらす。ドローストリーム148に由来する濃度減少ストリーム154は、第2ドローポート132を介して浸透モジュール100を出る。濃度減少ストリーム154は、発電装置144のタービン156に送られ、タービン156は流体の過剰な圧力を運動エネルギーに変換する。タービン156は発電機157を駆動し、それにより電気を生成する。フィードストリーム152に由来する濃度増加ストリーム158は、第2のフィードポート136を介して浸透モジュール100を出て、廃棄される。実施態様では、ポンプ149の代わりに、又はポンプ149に加えて、圧力交換器が使用されて、高濃度ストリーム148を加圧する。
【0103】
図7は、本発明の第2の実施態様による浸透モジュール200を示す。第2の実施態様による浸透モジュール200は、第1の実施態様による浸透モジュール100と同様であるが、第2の実施態様による浸透モジュール200は、第2のドローポート232の位置及び中央構造体216の構成が異なる。
【0104】
第2の実施態様による浸透モジュール200では、第2のドローポート232は、圧力容器202の周囲壁208の第2の端面206に近い位置に設けられる。第2のドローポート232は、第2の端面206に十分近いので、使用中、ドローストリームは、第2のドローポート232に到達する前に環状糸領域215のほぼ全体に沿って流れる。図示の実施態様では、第2のドローポート232は、環状糸領域215の長さL(圧力容器の第2端からの方向で測定)に沿った途中の10%未満のところに設けられている。さらに、プラグ220は、第1ダクト222を形成する部分を除いて中央構造体216を完全に遮断する。
【0105】
従って、第1のドローポート230と第2のドローポート232との間のドローストリームの流路は、第1のダクト222によって提供される第1の部分と、環状糸領域215を通る第2の部分のみを含む。流路に沿った流れの例を破線で示す。
【0106】
浸透モジュール200の第1の長さ方向領域260及び第2の長さ方向領域262を画定することができる。第1の領域260は、環状糸領域215の第1の長手方向部分に沿って延在する。第1の領域260において、ドローストリームは、中央構造体216を介して、第1のドローポート230と環状糸領域215との間を流れることができる。従って、第1の領域260は、第1のダクト222の長さによって画定され、その長さに沿って延びる。第2の領域262は、環状糸領域215の第2の長手方向部分に沿って延びる。第2の領域260では、ドローストリームの流路は環状糸領域215に限定され、圧力容器202の長手方向軸と実質的に平行な方向に延びる。
【0107】
浸透モジュール200では、環状糸領域115の第3の長さ方向部分に沿って延在する第3の領域266を画定することができる。第3の領域266において、ドローストリームは、周囲壁208内の第2のドローポート232に向かって、又はそこから離れるように流れることができる。従って、第3の領域266では、流れは大きな(significant)半径方向成分を有し、もはや中央構造体216に対して実質的に平行ではない。
【0108】
浸透モジュール200は、並流構成又は向流構成のいずれかで使用することができる。図7は、並流を示す矢印を示し、図8は、向流を示す矢印を有する浸透モジュール200を示す。
【0109】
図9は、本発明の第3の実施態様による浸透モジュールを変更する方法300を示す。方法300は、ステップ302で、浸透モジュールを供給することを含む。
【0110】
この実施態様では、浸透モジュールは図2に示すものと同様である。浸透モジュールは、圧力容器の形態のハウジングを備える。圧力容器は、第1の端面、第2の端面、第1の端面と第2の端面との間に延びる周囲壁、及び高濃度ストリームを圧力容器の内部に出入りさせるための一対のドローポートを備える。一対のドローポートは第1のドローポートと第2のドローポートとを備える。第1のドローポートは第1の端面に設けられ、第2のドローポートは第2の端面に近い周囲壁に設けられる。
【0111】
複数の中空糸半透膜が圧力容器の内部に収容される。複数の中空糸半透膜は、中心構造体の周囲に設けられる。中央構造体はダクト構造の形態である。ダクト構造は、パイプの長さに沿って分散された複数の開口部を有するパイプを備える。パイプは第1のドローポートと流体連通している。
【0112】
複数の中空糸半透膜は、中央構造体と圧力容器の周囲壁との間で放射状に延びる環状糸領域内に配置されている。環状糸領域は、圧力容器の長手軸に平行な方向に長さを有する。
【0113】
方法300は、ステップ304で、複数の中空糸半透膜及び中央構造体を圧力容器から取り外すことを含む、浸透モジュールを分解するステップを含む。
【0114】
方法300は、ステップ306で、プラグの形態の遮断部材をパイプ内に挿入することによって、ダクト構造をその長さに沿って途中で遮断することを含む。 プラグは、パイプの大部分を遮断し、一方の端の遮断されていない区画(section)を残すような寸法になっている。遮断されていない区画は、圧力容器内にあるときに第1のドローポートと流体連通している区画である。遮断されていない区画は、第1のダクトが環状糸領域の長さに沿って途中までしか延在しないことを意味する長さを有する第1のダクトを形成する。パイプの遮断された区画では流体は流れない。
【0115】
方法300は、ステップ308で、複数の中空糸半透膜をフェルトラップで包むことを含む。ラップは複数の中空糸半透膜の周囲に巻き付けられ、端部は覆われないままになる。
【0116】
方法300は、ステップ310で、複数の中空糸半透膜及び中央構造体を圧力容器から再挿入し、端面をエンドキャップで閉じることによって浸透モジュールを再組み立てすることを含む。
【0117】
再組み立てされた(変更された)浸透モジュールは、図7に示されるものと同様である。浸透モジュールは、ドローストリームがドローポート間を流れることができる流路を提供する。流路の第1の部分はダクト構造が遮断されていない区画、即ち第1のダクトを通り、流路の第2の部分は環状糸領域を通る。ダクト構造の遮断により、ダクト構造は、環状糸領域の長さに沿った途中の一部に過ぎない流路の第1の部分を提供する。さらに、浸透モジュールの第1の領域及び第2の領域を画定することができる。第1の領域は、中央構造体が遮断されていない環状糸領域の長さ方向部分によって画定される。第2の領域は、環状糸領域の長さ方向部分によって画定され、その上でドローストリーム流路が糸領域に限定され、中央構造体と実質的に平行に延びる。この変更により、浸透モジュールを使用した浸透プロセス、例えば圧力遅延浸透プロセスのエネルギー効率が向上し得る。付加的又は代替的に、この方法により、低圧浸透プロセス用の既存の市販ユニットを高圧PROプロセスに適合させることができる場合がある。
【0118】
本発明を特定の実施態様を参照して説明及び図示したが、本発明がここでは特に図示されていない多くの異なる変形に適していることが当業者には理解されるであろう。
【0119】
例えば、上記の例は、中央構造体の第1及び/又は第3の領域に単一の開口部を示しているが、これらの領域には複数の開口部が設けられてもよい。同様に、図3aではプラグ120が中央構造体に沿って中央に位置しているが、他の実施態様では中央構造体の閉塞(blockage)が中心から外れていてもよい。中央構造体が浸透圧ユニット内の中央に位置することは必須ではない。
【0120】
いくつかの実施態様(図示せず)では、モジュールの周囲壁108の領域の内径を小さくすることができる。
【0121】
前述の説明において、既知の、自明の、又は予見可能な等価物を有する全体又は要素が言及されている場合、そのような等価物は、あたかも個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本発明の真の範囲を決定するには特許請求の範囲を参照すべきであり、そのような均等物をすべて包含するように解釈されるべきである。また、好ましい、有利、便利などとして説明される本発明の全体又は特徴は任意であり、独立請求項の範囲を限定しないことも読者には理解されるであろう。さらに、そのような任意の全体又は特徴は、本発明のいくつかの実施態様では利益をもたらす可能性があるが、他の実施態様では望ましくない場合があり、従って、存在しない場合があることを理解されたい。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】