(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】プラズマ放電用電極組立体
(51)【国際特許分類】
H05H 1/24 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
H05H1/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515443
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2022076177
(87)【国際公開番号】W WO2023046726
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】102021124377.7
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512158435
【氏名又は名称】シノギー・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CINOGY GmbH
【住所又は居所原語表記】Max-Naeder-Str. 15, 37115 Duderstadt, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】バンドケ、ディルク
(72)【発明者】
【氏名】レトケ、ロニー
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084CC03
2G084CC08
2G084CC19
2G084DD15
2G084DD21
2G084DD22
2G084EE15
2G084EE17
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの電極と接地電極として機能する導電体の被処理表面との間で、誘電体バリアプラズマ放電を形成するための電極組立体であって、被処理表面に向かって電極を完全に被覆しかつ被処理表面用の当接面を形成する誘電体と、プラズマの発生に必要な交番高電圧を電極に供給する高電圧ステージを有する制御装置とを備えていて、この制御装置は、個々のパルス信号の形態で電極に交番高電圧を出力する電極組立体において、制御装置は、引き続く逆の極性を有する2つのパルス信号を発生させるために備えられていることを特徴とする電極組立体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電極(1)と接地電極として機能する導電体の被処理表面(4)との間で、誘電体バリアプラズマ放電を形成するための電極組立体であって、
前記被処理表面(4)に向かって前記電極(1)を完全に被覆しかつ前記被処理表面(4)用の当接面を形成する誘電体(2、3)と、
前記誘電体バリアプラズマ放電の発生に必要な交番高電圧を前記電極(1)に供給する高電圧ステージを有する制御装置(8)と、を備えており、
前記制御装置(8)が、個々のパルス信号(10、20)の形態で前記電極(1)に前記交番高電圧を出力する電極組立体において、
前記制御装置(8)は、第1パルス信号の最初の半波が、後続する第2パルス信号の最初の半波とは逆の極性を有するように、減衰振動の形態で引き続く逆の極性を有する2つのパルス信号(10、20)を発生させるように構成されていることを特徴とする、電極組立体。
【請求項2】
複数のパルス信号の場合には、引き続く少なくとも2つのパルス信号(10、20)が逆の極性を有するように、前記制御装置が、前記電極(1)に個々のパルス信号(10、20)の形態で前記交番高電圧を出力することを特徴とする、請求項1に記載の電極組立体。
【請求項3】
第1極性を有する複数のパルス信号が次々に出力され、これに次いで前記第1極性とは逆の第2極性を有するパルス信号が同じ数だけ次々に出力されるように、前記制御装置が、前記電極(1)に前記パルス信号(10、20)を出力することを特徴とする、請求項1又は2に記載の電極組立体。
【請求項4】
同じ極性を有する前記パルス信号の数が10以下であることを特徴とする、ことを特徴とする、請求項3に記載の電極組立体。
【請求項5】
前記制御装置(8)が、共通の高電圧ステージで、逆の極性を有する引き続く2つのパルス信号を発生させることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の電極組立体。
【請求項6】
個々のパルス信号(10、20)のパルス持続時間と2つのパルス信号間のパルス間隔との間の比率が、1:10より大きく、好ましくは1:20より大きいことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の電極組立体。
【請求項7】
前記制御装置は、前記高電圧ステージに接続されたインバータ回路を有し、前記インバータ回路は、逆の極性を有する引き続く2つのパルス信号を発生させるための電圧で、前記高電圧ステージを連続的に逆の極性になるように制御するように構成されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の電極組立体。
【請求項8】
前記制御装置(8)が、以下のように、すなわち、
-電力は10W未満、好ましくは5W未満であり、
-電圧パルス(10、20)は双極性であり、
-交番電圧は±1kV~±100kVの間であり、及び/又は
-電気交流周波数は100Hz~100MHzの間である
ように、前記電極(1)に前記交番高電圧を出力することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の電極組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの電極と接地電極として機能する導電体の被処理表面との間で、誘電体バリアプラズマ放電を形成するための電極組立体であって、被処理表面に向かって電極を完全に被覆しかつ被処理表面用の当接面を形成する誘電体と、交番高電圧を電極に供給する制御装置とを備えていて、この制御装置は、個々のパルス信号の形態で電極に交番高電圧を出力する。
【背景技術】
【0002】
このような平面の電極組立体は、例えば特許文献1から公知であり、この電極組立体は、大気圧下でプラズマ放電を発生させることにより、生細胞を含有する生物材料を処理するように形成されている。交番高電圧発生器を用いて、交番高電圧が電極に印加され、その結果、大気圧下で、誘電体バリアプラズマ放電が、電極から出発して、接地電極として機能する導電体の被処理表面の方向に発生する。誘電体は特に固体誘電体であり、電極の前で間隔をとることなく配置されている。
【0003】
このような電極組立体は、誘電体の当接側で被処理表面上に載置することができ、この際、被処理表面は、特に、ヒト又は動物の身体の皮膚でありえる。この場合、プラズマ処理は皮膚を殺菌し、被処理表面上に塗布される保湿物質を吸収する皮膚の能力を向上させる。
【0004】
特許文献2からも、誘電体バリアプラズマ放電を形成するためのこの部類の電極組立体が公知である。この場合、誘電体中に埋め込まれる電極は、誘電体中で誘電体によって互いに対して絶縁される少なくとも2つの部分電極からなり、この場合隣接する部分電極には、特に交番高電圧発生器を含む制御装置によって部分交番高電圧が供給され、この部分交番高電圧は、波形及び電圧レベルが鏡像状で、かつ補償を行いうる。これにより、特に柔軟性のある電極組立体を載置することにより、比較的大きな領域も、比較的低いエネルギーコストで、プラズマで効率良く及びできるだけ均一に処理されうる。この際、交番高電圧は、好ましくは接地電位付近で振動し、個々の部分電極の補償を行う部分交番高電圧により、理想的にはほぼ均質な電界が生じる。
【0005】
交番高電圧電位に対する接地電極として皮膚を使用する場合、例えば電極から皮膚までの距離が大きすぎたり、又は電極組立体が皮膚上に載置していないにもかかわらず電極組立体が給電されたりすると、高電圧電位は、整然とかつプロセス安全性を保って流れ去ることができず、同じ極性の後続の電圧パルスによってさらに上昇する可能性がある。この際、電極上の平均化された電位は、最初のトリガーパルスの極性の方向にますますシフトし、これにより、静電荷が生じる。これは最終的に高電圧発生器が静電荷の影響を受けることにつながるため、これにより、これらの機器を保護するためにはかなりのコストが必要となる。
【0006】
特許文献3からは、大気圧下でプラズマ処理を行う装置が公知であり、この場合も、電極が公知の方法で誘電体によって遮蔽され、電極に交番高電圧が印加される。この場合、対電極は省かれ、代わりに電極組立体を取り囲むガスが一種の対電極として使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許公開第103 24 926 B3号公報
【特許文献2】欧州特許公開第3 448 130 A1号公報
【特許文献3】独国特許公開第10 2016 011 312 A1号公報
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の課題は、従来技術から知られている静電荷の問題を最小化し、又は場合によっては完全に除去することができる改良された電極組立体を提供することである。
【0009】
この課題は、本発明により、請求項1に記載の電極組立体によって解決される。本発明の有利な実施形態は、対応する従属請求項に見出すことができる。
【0010】
請求項1によれば、この部類の電極組立体であって、少なくとも1つの電極と接地電極として機能する導電体の被処理表面との間で、誘電体バリアプラズマ放電を形成するための電極組立体が特許請求されていて、この際、この電極組立体は、誘電体を有し、この誘電体は、被処理表面に向かって電極を完全に被覆しかつ被処理面用の当接面を形成する。さらに、この電極組立体は、少なくとも1つの電極に交番高電圧を供給又は印加するように形成された制御装置を有する。誘電体中に埋め込まれた電極に交番高電圧を印加することにより、接地電極としての導電体と共働して、誘電体バリアプラズマ放電が発生する。この際、交番高電圧は、個々のパルス信号の形態で発生させられ、電極に出力される。さらに、交番高電圧は、定義された極性を有するパルス信号の形態で、パルス休止期間と共に発生させられ、電極に出力されることもできる。
【0011】
この際、電極組立体の制御装置は、交番高電圧を発生させるために形成された少なくとも1つの高電圧ステージ(交番高電圧発生器)と、交番高電圧の特性を設定し、それに応じて高電圧ステージを駆動可能にするための制御部とを具備する。
【0012】
本発明によれば、減衰振動の形態で、逆の極性を有する引き続く2つのパルス信号を発生させるために、制御装置は、第1パルス信号の最初の半波が、後続の第2パルス信号の最初の半波とは逆の極性を有するように設けられている。
【0013】
したがって、特に、複数のパルス信号において、引き続く少なくとも2つのパルス信号が逆の極性を有するように、制御装置が、電極に個々のパルス信号の形態で交番高電圧を出力するように設けられている。この際、特に、異なる極性を持つパルス信号は、合計すると0になり(公差内で)、その結果、静電荷が回避又は低減されるように設けられている。
【0014】
したがって、制御装置を用いて、電極組立体の電極に交番高電圧を供給し、これにより、引き続く少なくとも2つのパルス信号が逆の極性を持つように、すなわち波形及び/又は電圧レベルが交番になるように提案される。この際、逆の極性を有する双方のパルス信号は、鏡面対称であるべきである。この際、第1パルス信号の最初の半波が、後続の第2パルス信号の最初の半波とは逆の極性を有する、又は鏡像状であるように設けられている。
【0015】
したがって、制御装置は、第1の数の第1パルス信号の後に第2の数の第2パルス信号が続くように、個々のパルス信号の形態で電極に交番高電圧を出力し、この際、第2パルス信号は、第1パルス信号とは逆の極性を持つ。この過程が繰り返され、その結果、第2パルス信号の後に再び第1パルス信号が続き、新しい周期が始まるように、制御装置を設けることができる。第1パルス信号の第1の数は、第2パルス信号の第2の数と同一にすることができる。パルス信号の数は1以上である。この際、パルス信号の数が1であれば、引き続く2つのパルス信号は常に逆の極性を持つ。そうでない場合、複数のパルス信号をそれぞれ有する引き続く2つのグループは、逆の極性を有する。この際、第1パルス信号は定義された第1極性を持つ一方で、第2パルス信号は定義された第2極性を持つ。すべての場合において、異なる極性の信号は合計すると0になるべきであり、その結果、静電荷が回避又は低減される。
【0016】
ここで、逆の極性を有するとは、特に、第1パルス信号から得られる直流電圧電位の合計が、それに続く逆の極性の第2パルス信号から得られる直流電圧電位の合計と極性が逆であることを意味する。したがって、双方の引き続く逆極性パルス信号間で、極性は反転している。
【0017】
この際、パルス信号は極性が定義されており、第1極性に対して反転した第2極性を有する逆極性のパルス信号が生成されることにより、異なる極性の信号が合計されてゼロになる。
【0018】
これらの逆の極性を有する又は交番するパルス信号は、後続の逆極性のパルス信号が先行する静電荷を補償するので、電極組立体の静電荷を防止することができる。特に減衰振動の形態のパルス信号の場合、直流電圧電位は最初の振動の方向又は極性によってシフトする。この生成された直流電圧電位は、後続の逆の極性のパルス信号によって適宜補償されることにより、時間的に次々と発生させられた補償パルス信号によって、静電荷が長期間にわたって防止される。
【0019】
隣接する2つの部分電極を用いた動作では、2つの鏡像状の補償部分交番高電圧がほぼ同時に出力されるが、これとは対照的に、本発明では、1つの電極のみで交番高電圧が電極に供給され、その結果、個々のパルス信号が電極に時間的に次々と供給される。この際、パルス信号は、好ましくは、制御装置の同じ交番高電圧発生器によって発生し、この際、引き続く2つのパルス信号は、交流駆動により逆の極性を有する。これにより、単相動作の電極組立体を実現することが可能になり、この場合、1つの電極と、この電極に交番高電圧を供給するための1つの交番高電圧発生器とのみが設けられていて、静電荷の危険性がない。交番高電圧を発生させるための交番高電圧発生器中に含まれる部品は公差を有する。しかし、交番パルス信号は、交番高電圧発生器の同じ信号決定部品によって発生させられるため、静電荷を回避しながら、電圧パルスの完全な補償を達成することができる。
【0020】
したがって、制御装置が、同じ部品を備えた同じ交番高電圧発生器を使用して、連続した交番電圧パルスを発生させるように形成されている場合に、特に有利である。
【0021】
減衰振動を伴うパルス列では、最初の半波が、しばしば最も大きな振幅を持ち、その結果、このパルス信号の極性は最初の半波の極性によって決まる。
【0022】
この際、パルス信号は、中性線又はゼロの線を中心に振動し、その結果、この中性線から出発して、正の半波が続き、その後に負の半波が続き、その後に例えば再び正の半波が続くようにすることができる。この際、引き続くパルス信号のそれぞれの半波は鏡像状であるため、引き続く2つの逆の極を有するパルス信号となる。
【0023】
ある実施形態によれば、第1極性を有する複数のパルス信号が連続して出力され、かつこれに次いで第1極性とは逆の第2極性を有するパルス信号が同じ数だけ連続して出力されるように、制御装置が、電極にパルス信号を出力するように設けられている。
【0024】
ある実施形態によれば、同じ極性を有するパルス信号の数が10以下であるように設けられている。
【0025】
これは、第1極性を有するパルス信号列が、次々と電極に出力され、このパルス信号列の後に、第1極性とは逆の第2極性を有するパルス信号が発生させられて電極に出力されることを意味する。したがって、第1極性を有するn個のパルス信号が発生して電極に出力され、逆の第2極性を有するn個のパルス信号が発生して電極に出力される。
【0026】
ある実施形態によれば、個々のパルス信号のパルス持続時間と2つのパルス信号間のパルス間隔との間の比率が、1:10より大きく、好ましくは1:20より大きい。したがって、パルス持続時間は、2つのパルス信号間のパルス間隔よりもかなり小さくなる。この際、パルス持続時間と周期期間との比率としてのデューティサイクル(デューティサイクル又はデューティ比とも呼ばれる)は10%未満、好ましくは5%未満である。
【0027】
ある実施形態によれば、制御装置は、高電圧ステージに接続されたインバータ回路を有し、該インバータ回路は、逆の極性を有する引き続く2つのパルス信号を発生させるための電圧で高電圧ステージを次々と逆の極性になるように駆動するように設けられている。インバータ回路は、高電圧ステージを、反転した極性で次々に駆動し、その結果、ある極性の1つパルス信号に続いて、後続の反転したパルス信号が高電圧ステージにより発生させられうる。
【0028】
ある実施形態によれば、制御装置が、以下のように、すなわち、電力は10W未満、好ましくは5W未満であり、電圧パルスは双極性であり、及び/又は交番電圧は±1kV~±100kVの間、好ましくは±2kV~±25kVの間であるように、交番高電圧を電極に出力する。減衰振動の電気交流周波数は、好ましくは100Hz~100MHzの間、特に好ましくは1kHz~100MHzの間、特に好ましくは10kHz~100MHzの間である。(減衰振動部によって形成される)パルス信号の繰り返し周波数は、100Hz~10kHzの間、好ましくは250Hz~1kHzの間である。
【0029】
添付の図を参照して、本発明の一例をより詳細に説明する。図には以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】減衰振動を伴う2つのパルス列のオシログラムである
【
図3a-3b】逆の極性を有する2つのパルス信号の図である。
【
図4】インバータ回路用のある実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、電極1を備えたこの部類の電極組立体の基本的な部材を模式的に非常に簡略化した図であり、この電極は、初期状態では金属製の平坦で柔軟性を有する電極グリッドとして形成することができる。当然、これ以外の電極形状及び材料も考えられうる。電極は、誘電体材料からなる前方誘電体層2と誘電体材料からなる後方層3との間に配置されている。2つの誘電体層2、3は、初期状態では平坦な平面として形成されていて、4つの側縁すべてで電極1を超えて突出していて、その結果、電極1は、全方面で双方の誘電体層2、3によって形成された誘電体中に埋め込まれている。このために、誘電体層2、3は、互いに結合されていて、好ましくは面で結合されている。結合は、例えば、接着又は溶接によって行うことができる。電極1が誘電体層2、3の間に埋め込まれていて、この際に誘電体層2、3が一体的に単体として形成されていることも考えられる。誘電体中に埋め込まれた電極1は、誘電体から突出した接続部(不図示)に接触させることができる。
【0032】
誘電体の前方誘電体層2は、電極1とは逆側に構造化された表面4を備えている。図示された実施形態例では、この構造化された表面は、突出した突起5によって形成され、これらの突起5は、互いに対して間隔6をあけていて、その結果、この構造化された表面4は、互いに結合された多数の通気領域7を有し、この領域中には、電極組立体がその前方誘電体層2の突起5でもって、被処理表面、例えば生物の皮膚と当接するときに、空気が流れ込むことができる。あるいは、グリッド壁が構造化された表面4として設けられ、場合によっては空気交換ができないように設けることも考えられる。
【0033】
図1に示す電極組立体は、さらに、制御装置8を有し、この制御装置8は、電線を介して電極1に電気的に接続されている。この際、制御装置8は、不図示の高電圧ステージ(交番高電圧発生器)を有し、これは、例えばインバータ回路(
図4)に接続することができる。この際、交番高電圧発生器を用いて交番高電圧を発生させ、これを電極1に出力することができる。構造化された表面4を備えた電極組立体が、接地電極として機能する導電体上に当接している場合、誘電体バリア電流により、所望の様式のプラズマ放電が発生する。
【0034】
ここで、場合によっては、制御装置8の交番高電圧発生器に影響を及ぼす可能性のある静電荷の帯電を防止するため、電極1には、インバータ回路によって交番極性で高電圧ステージを駆動することにより、パルス信号の形態で鏡像状の補償交番高電圧が交互に供給される。
【0035】
図2は、2つのパルス信号10、20のオシログラムを示しており、第1パルス信号10に続いて、休止間隔(パルス間隔)後に第2パルス信号20が発生させられ、電極に出力される。双方のパルス信号10、20が、各パルス信号内の振幅が小さくなる減衰振動を伴うパルス列であることがわかる。
【0036】
各パルス信号のパルス持続時間tパルスは、休止間隔、又はむしろ双方のパルス信号10、20間のパルス間隔t間隔よりも明らかに小さい。デューティサイクル、すなわちパルス持続時間と周期期間との比率は、好ましくは5%未満である。このデューティ比で良好な結果が得られることができ、この際、プラズマによって形成されたイオンの完全な再結合がこの周期期間ではまだ終了していないと想定される。
【0037】
図3a及び
図3bには、互いに対して逆の極性を有する2つのパルス信号10、20が示されている。ここで、
図3aは第1パルス信号10を示す一方で、
図3bはこれに続く第2パルス信号20を示している。パルス信号10、20は、中性線30を中心に振動し、パルスのピークは正の領域にも負の領域にも振れる。
【0038】
この際、
図3aの第1パルス信号10は、正の電荷符号を有する最初の半波11で始まる。その後、この半波は中性線30を中心に振動し、この際、振幅は半波が進むにつれて弱くなる。
図3bは、これとは鏡面状、鏡面対称で逆の極性を有するパルス信号20を示している。第2パルス信号20の最初の半波21は負の電荷符号を有し、それ以外は第1パルス信号10の最初の半波11と完全に鏡面対称である。
【0039】
したがって、静電荷は、パルス信号10、20によって除去されるが、これらのパルス信号10、20は、時間的に連続して続き、鏡像状でありかつ逆の極性を有し、これらのパルス信号は合計信号としてゼロ又は実質的にゼロになる。
【0040】
この際、双方のパルス信号10、20は、同じ交番高電圧発生器を備えた同じ制御装置によって発生させられ、その結果、交番高電圧の発生における公差は、第1パルス信号10と第2パルス信号20との両方で反映される。同じ交番高電圧源を使用した双方の逆の極性を有するパルス信号10、20の電荷符号が反転しているので、パルス信号の公差に依拠する特性は両方中に存在し、したがって互いに相殺される。
【0041】
図4は、逆の極性を有する高電圧パルスを発生させるための制御装置のインバータ回路を示す。スイッチT1、T2を閉じ、スイッチT3、T4を開くと、高電圧トランスには、端子1から端子5に向かって、及び端子9から端子7に向かって正電圧が印加される。これにより、第1パルス信号が発生させられる。
【0042】
逆に、スイッチT1及びT2が開いていて、かつスイッチT3及びT4が閉じている場合は、高電圧トランスには、端子1から端子5まで、及び端子9から端子7までには負電圧が印加される。その結果、第1パルス信号とは逆の極性を有する第2パルス信号が発生する。
【0043】
この際、スイッチT1~T4は、高電圧トランスによって所望のパルス信号が形成されるように、制御装置によって相応に駆動される。
【符号の説明】
【0044】
1 電極
2、3 誘電体
4 構造化された表面
5 突起
6 突起間距離
7 通気領域
8 制御装置
10 第1パルス信号
11 第1パルス信号の最初の半波
20 第2パルス信号
21 第2パルス信号の最初の半波
30 中性線
tパルス パルス持続時間
t間隔 パルス間隔
【手続補正書】
【提出日】2024-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電極(1)と接地電極として機能する導電体の被処理表面(4)との間で、誘電体バリアプラズマ放電を形成するための電極組立体であって、
前記被処理表面(4)に向かって前記電極(1)を完全に被覆しかつ前記被処理表面(4)用の当接面を形成する誘電体(2、3)と、
前記誘電体バリアプラズマ放電の発生に必要な交番高電圧を前記電極(1)に供給する高電圧ステージを有する制御装置(8)と、を備えており、
前記制御装置(8)が、個々のパルス信号(10、20)の形態で前記電極(1)に前記交番高電圧を出力する電極組立体において、
前記制御装置(8)は、第1パルス信号の最初の半波が、後続する第2パルス信号の最初の半波とは逆の極性を有するように、減衰振動の形態で引き続く逆の極性を有する2つのパルス信号(10、20)を発生させるように構成されていることを特徴とする、電極組立体。
【請求項2】
複数のパルス信号の場合には、引き続く少なくとも2つのパルス信号(10、20)が逆の極性を有するように、前記制御装置が、前記電極(1)に個々のパルス信号(10、20)の形態で前記交番高電圧を出力することを特徴とする、請求項1に記載の電極組立体。
【請求項3】
第1極性を有する複数のパルス信号が次々に出力され、これに次いで前記第1極性とは逆の第2極性を有するパルス信号が同じ数だけ次々に出力されるように、前記制御装置が、前記電極(1)に前記パルス信号(10、20)を出力することを特徴とする、請求項1又は2に記載の電極組立体。
【請求項4】
同じ極性を有する前記パルス信号の数が10以下であることを特徴とする、ことを特徴とする、請求項3に記載の電極組立体。
【請求項5】
前記制御装置(8)が、共通の高電圧ステージで、逆の極性を有する引き続く2つのパルス信号を発生させることを特徴とする、請求項
1又は2に記載の電極組立体。
【請求項6】
個々のパルス信号(10、20)のパルス持続時間と2つのパルス信号間のパルス間隔との間の比率が、1:10より大きく、好ましくは1:20より大きいことを特徴とする、請求項
1又は2に記載の電極組立体。
【請求項7】
前記制御装置は、前記高電圧ステージに接続されたインバータ回路を有し、前記インバータ回路は、逆の極性を有する引き続く2つのパルス信号を発生させるための電圧で、前記高電圧ステージを連続的に逆の極性になるように制御するように構成されていることを特徴とする、請求項
1又は2に記載の電極組立体。
【請求項8】
前記制御装置(8)が、以下のように、すなわち、
-電力は10W未満、好ましくは5W未満であり、
-電圧パルス(10、20)は双極性であり、
-交番電圧は±1kV~±100kVの間であり、及び/又は
-電気交流周波数は100Hz~100MHzの間である
ように、前記電極(1)に前記交番高電圧を出力することを特徴とする、請求項
1又は2に記載の電極組立体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
1 電極
2、3 誘電体
4 構造化された表面
5 突起
6 突起間距離
7 通気領域
8 制御装置
10 第1パルス信号
11 第1パルス信号の最初の半波
20 第2パルス信号
21 第2パルス信号の最初の半波
30 中性線
tパルス パルス持続時間
t間隔 パルス間隔
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[C1]
少なくとも1つの電極(1)と接地電極として機能する導電体の被処理表面(4)との間で、誘電体バリアプラズマ放電を形成するための電極組立体であって、
前記被処理表面(4)に向かって前記電極(1)を完全に被覆しかつ前記被処理表面(4)用の当接面を形成する誘電体(2、3)と、
前記誘電体バリアプラズマ放電の発生に必要な交番高電圧を前記電極(1)に供給する高電圧ステージを有する制御装置(8)と、を備えており、
前記制御装置(8)が、個々のパルス信号(10、20)の形態で前記電極(1)に前記交番高電圧を出力する電極組立体において、
前記制御装置(8)は、第1パルス信号の最初の半波が、後続する第2パルス信号の最初の半波とは逆の極性を有するように、減衰振動の形態で引き続く逆の極性を有する2つのパルス信号(10、20)を発生させるように構成されていることを特徴とする、電極組立体。
[C2]
複数のパルス信号の場合には、引き続く少なくとも2つのパルス信号(10、20)が逆の極性を有するように、前記制御装置が、前記電極(1)に個々のパルス信号(10、20)の形態で前記交番高電圧を出力することを特徴とする、C1に記載の電極組立体。
[C3]
第1極性を有する複数のパルス信号が次々に出力され、これに次いで前記第1極性とは逆の第2極性を有するパルス信号が同じ数だけ次々に出力されるように、前記制御装置が、前記電極(1)に前記パルス信号(10、20)を出力することを特徴とする、C1又は2に記載の電極組立体。
[C4]
同じ極性を有する前記パルス信号の数が10以下であることを特徴とする、ことを特徴とする、C3に記載の電極組立体。
[C5]
前記制御装置(8)が、共通の高電圧ステージで、逆の極性を有する引き続く2つのパルス信号を発生させることを特徴とする、C1~4のいずれか1項に記載の電極組立体。
[C6]
個々のパルス信号(10、20)のパルス持続時間と2つのパルス信号間のパルス間隔との間の比率が、1:10より大きく、好ましくは1:20より大きいことを特徴とする、C1~5のいずれか1項に記載の電極組立体。
[C7]
前記制御装置は、前記高電圧ステージに接続されたインバータ回路を有し、前記インバータ回路は、逆の極性を有する引き続く2つのパルス信号を発生させるための電圧で、前記高電圧ステージを連続的に逆の極性になるように制御するように構成されていることを特徴とする、C1~6のいずれか1項に記載の電極組立体。
[C8]
前記制御装置(8)が、以下のように、すなわち、
-電力は10W未満、好ましくは5W未満であり、
-電圧パルス(10、20)は双極性であり、
-交番電圧は±1kV~±100kVの間であり、及び/又は
-電気交流周波数は100Hz~100MHzの間である
ように、前記電極(1)に前記交番高電圧を出力することを特徴とする、C1~7のいずれか1項に記載の電極組立体。
【国際調査報告】