(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】バッテリのバッテリ・エンクロージャ内での1回又は複数回の漏洩を検出するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01M 3/16 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
G01M3/16 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515461
(86)(22)【出願日】2022-09-08
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2022075018
(87)【国際公開番号】W WO2023036881
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524088548
【氏名又は名称】トフヴェルク アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴニン、マルク
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA22
2G067CC04
2G067DD18
(57)【要約】
本発明は、バッテリ・エンクロージャ101内に格納された少なくとも1つの電気化学セル102を含むバッテリ100のバッテリ・エンクロージャ101内での1回又は複数回の漏洩を検出するための、或いは、バッテリ・エンクロージャ101内にあるか又はバッテリ・エンクロージャ101から分離している少なくとも1つの電気化学セル102内での1回又は複数回の漏洩を検出するための、方法に関連する。本方法は、バッテリ101の周囲から或いはバッテリ・エンクロージャ101内にあるか又はバッテリ・エンクロージャ101から分離している少なくとも1つの電気化学セル102の周囲からそれぞれガス、また特には空気を採取するステップと、分析方法を用いてガスを分析することによってガスの分析を実現するステップと、この分析に基づいてガスが少なくとも1つの電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むか否かを決定するステップであって、痕跡がガス中での少なくとも1つの電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素の存在を示す、ステップと、を含む。分析に基づいてガスが少なくとも1つの電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むと決定された場合、バッテリ100のバッテリ・エンクロージャ102内での或いはバッテリ・エンクロージャ101内にあるか又はバッテリ・エンクロージャ101から分離している少なくとも1つの電気化学セル102内でのそれぞれの漏洩が検出される。本分析方法では、ガスがイオン化方法を用いてイオン化源31によってイオン化されてイオンとなり、イオンが1つ又は複数の物理的特性に従って分離することにより分析装置32で分析され、ここでは、イオン化源31は化学イオン化源であり、イオン化方法は化学イオン化方法である。本発明はさらに、本発明による方法を用いてバッテリ100のバッテリ・エンクロージャ101内での1回又は複数回の漏洩を検出するための装置1に関連する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ・エンクロージャ(101)内に格納された少なくとも1つの電気化学セル(102)を含むバッテリ(100)の前記バッテリ・エンクロージャ(101)内での1回又は複数回の漏洩を検出するための、或いは、前記バッテリ・エンクロージャ(101)内にあるか又は前記バッテリ・エンクロージャ(101)から分離している前記少なくとも1つの電気化学セル(102)内での1回又は複数回の漏洩を検出するための方法であって、
a)前記バッテリ(100)の周囲から或いは前記バッテリ・エンクロージャ(101)内にあるか又は前記バッテリ・エンクロージャ(101)から分離している前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の周囲からそれぞれガス、また特には空気を採取するステップと、
b)分析方法を用いて前記ガスを分析することにより前記ガスの分析を実現するステップと、
c)前記分析に基づいて前記ガスが前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むか否かを決定するステップであって、前記痕跡が前記ガス中での前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素の存在を示す、ステップと、
を含み、
前記分析に基づいて前記ガスが前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素の前記痕跡を含むと決定された場合、前記バッテリ(100)の前記バッテリ・エンクロージャ(102)内での或いは前記バッテリ・エンクロージャ(101)内にあるか又は前記バッテリ・エンクロージャ(101)から分離している前記少なくとも1つの電気化学セル(102)内での漏洩がそれぞれ検出され、
前記分析方法では、前記ガスがイオン化方法を用いてイオン化源(31)によってイオン化されてイオンとなり、前記イオンが1つ又は複数の物理的特性に従って分離することにより分析装置(32)で分析され、前記イオン化源(31)が化学イオン化源であり、前記イオン化方法が化学イオン化方法である、方法。
【請求項2】
前記分析に基づいて前記ガスが前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素の前記痕跡を含むか否かを決定するために、イオンの画分が、イオン化方法の実行中に、前記イオン化源(31)内での反応条件下で、前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素から採取されるイオンと同じ値の前記1つ又は複数の物理的特性を有するか否かが評価され、前記画分が閾値を超える事例では、前記ガスが前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素の前記痕跡を含むと決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イオン化源(31)及び前記イオン化方法が付加イオン化に依存し、前記ガスのイオン化中に付加イオンが形成され、前記付加イオンが前記ガスの付加物及び反応イオンであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記イオン化源(31)及び前記イオン化方法において、前記反応イオンが反応ボリューム(35)内で利用可能とされ、前記ガスをイオン化するために、前記ガスが、前記付加イオンを形成することを目的として前記反応イオンと反応するために前記反応ボリューム(35)の中に導入されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記イオン化源(31)及び前記イオン化方法において、前記反応イオン及び別の化合物から形成された化合物イオンが反応ボリューム(35)内で利用可能とされ、前記ガスをイオン化するために、前記ガスが、前記付加イオン及び1つ又は複数の中性副生成物を形成することを目的として前記化合物イオンと反応するために前記反応ボリューム(35)の中に導入されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記反応イオンが反応物質のイオンであり、前記反応物質が、前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素が前記ガス中に存在する事例において前記イオン化源(35)での前記ガスのイオン化中に前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも構成要素及び前記反応イオンの付加物である付加イオンが形成されることになるように、選定されることを特徴とする、請求項3から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応物質が、前記イオン化方法の実行中に、前記イオン化源(31)内での反応条件下で、前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素及び前記反応イオンの前記付加物である前記付加イオンが、窒素及び反応イオン、酸素及び反応イオン、水蒸気及び反応イオン、並びにアルゴン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成される可能性より、1,000倍以上、好適には10,000倍以上、特に好適には100,000倍以上、最も好適には1,000,000倍以上の可能性で形成されることになるように、選定されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素が前記ガス中に存在し、対して、窒素及び反応イオン、酸素及び反応イオン、水蒸気及び反応イオン、並びにアルゴン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成されない事例では、前記反応物質が、前記イオン化方法の実行中に、前記イオン化源(31)内での反応条件下で、前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素及び前記反応イオンの付加物である付加イオンが選択的に形成されることになるように、選定されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記反応物質が、前記イオン化方法の実行中に、前記イオン化源(31)内での反応条件下で、前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素及び前記反応イオンの前記付加物である前記付加イオンが、二酸化炭素及び反応イオン、ネオン及び反応イオン、ヘリウム及び反応イオン、メタン及び反応イオン、並びにクリプトン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成される可能性より、10倍以上、好適には100倍以上、特に好適には1,000倍以上の可能性で形成されることになるように、選定されることを特徴とする、請求項6から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素が前記ガス中に存在し、対して、二酸化炭素及び反応イオン、ネオン及び反応イオン、ヘリウム及び反応イオン、メタン及び反応イオン、並びにクリプトン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成されない事例では、前記反応物質が、前記イオン化方法の実行中に、前記イオン化源(31)内での反応条件下で、前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素及び前記反応イオンの付加物である付加イオンが選択的に形成されることになるように、選定されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記分析装置(32)がイオン移動度分析装置を含むこと、及び、前記分析方法において、前記イオンがその移動度に従って前記イオン移動度分析装置内で分離すること、を特徴とする、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記分析装置(32)が質量分析装置を含むこと、及び、前記分析方法において、前記イオンがその質量対電荷比に従って前記質量分析装置内で分離すること、を特徴とする、請求項1または11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素が前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の電解液であることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記バッテリ(100)の前記周囲から或いは前記バッテリ・エンクロージャ(101)内にあるか又は前記バッテリ・エンクロージャ(101)から分離している前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記周囲からそれぞれ前記ガス、また特には前記空気が採取されるとき、前記バッテリ(100)の周囲或いは前記バッテリ・エンクロージャ(101)内にあるか又は前記バッテリ・エンクロージャ(101)から分離している前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記周囲は、それぞれ、少なくとも10000Paの、好適には少なくとも50000Paの、最も好適には少なくとも90000Paのガス圧力であることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法を用いて、バッテリ・エンクロージャ(101)内に格納された少なくとも1つの電気化学セル(102)を含むバッテリ(100)の前記バッテリ・エンクロージャ(101)内での1回又は複数回の漏洩を検出するための、或いは、前記バッテリ・エンクロージャ(101)内にあるか又は前記バッテリ・エンクロージャ(101)から分離している少なくとも1つの電気化学セル(102)内での1回又は複数回の漏洩を検出するための装置(1)であって、
a)前記バッテリ(100)の周囲から或いは前記バッテリ・エンクロージャ(101)内にあるか又は前記バッテリ・エンクロージャ(101)から分離している前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の周囲からそれぞれガス、また特には空気を採取するためのガス採取ユニット(2)と、
b)分析方法を用いて前記ガスを分析することによって前記ガスの分析を実現するための分析エンティティ(3)と、
を含み、
前記分析エンティティ(3)が、イオン化方法を用いて前記ガスをイオン化してイオンにするためのイオン化源(31)を含み、前記イオン化源(31)が化学イオン化源であり、前記イオン化方法が化学イオン化方法であり、前記イオン化源(31)が、前記ガスをイオン化して前記イオンにすることを目的として、前記ガス採取ユニット(2)を用いて前記バッテリ(100)の前記周囲から或いは前記バッテリ・エンクロージャ(101)内にあるか又は前記バッテリ・エンクロージャ(101)から分離している前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記周囲から採取された前記ガスを受け取るために前記ガス採取ユニット(2)に流体的に連結され、
前記分析エンティティ(3)が、1つ又は複数の物理的特性に従って前記イオンを分離することにより前記イオンを分析するための分析装置(32)を含み、前記分析装置(32)が、前記1つ又は複数の物理的特性に従って前記イオンを分離することを目的として前記イオン化源(31)から前記イオンを受け取るために前記イオン化源(31)に流体的に連結され、
前記分析方法では、前記ガスが前記イオン化方法を用いて前記イオン化源(31)によってイオン化されて前記イオンとなり、前記イオンが前記1つ又は複数の物理的特性に従って分離することにより前記分析装置(32)で分析され、
前記装置(1)が、
c)前記分析に基づいて前記ガスが前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むか否かを決定するように適合された漏洩決定ユニット(4)、をさらに含み、前記痕跡が前記ガス中での前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素の存在を示し、前記分析に基づいて前記漏洩決定ユニット(4)により、前記ガスが前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素の前記痕跡を含むと決定された場合、前記バッテリ(100)の前記バッテリ・エンクロージャ(101)内での或いは前記バッテリ・エンクロージャ(101)内にあるか又は前記バッテリ・エンクロージャ(101)から分離している前記少なくとも1つの電気化学セル(102)内での漏洩が検出される、装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ・エンクロージャ内に格納された少なくとも1つの電気化学セルを含むバッテリのバッテリ・エンクロージャ内での1回又は複数回の漏洩を検出するための、或いは、バッテリ・エンクロージャ内にあるか又はバッテリ・エンクロージャから分離している少なくとも1つの電気化学セル内での1回又は複数回の漏洩を検出するための方法に関する。さらに、本発明は、バッテリのバッテリ・エンクロージャ内での1回又は複数回の漏洩を検出するための装置であって、バッテリはバッテリ・エンクロージャ内に格納された少なくとも1つの電気化学セルを含む、装置、或いは、本発明による方法を用いて、バッテリ・エンクロージャ内にあるか又はバッテリ・エンクロージャから分離している少なくとも1つの電気化学セル内での1回又は複数回の漏洩を検出するための装置であって、バッテリはバッテリ・エンクロージャ内に格納された少なくとも1つの電気化学セルを含む、装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭で言及した技術分野に関連する方法及び装置は知られている。例えば、Bayerische Motoren Werke AktiengesellschaftのDE102014222786A1が、バッテリの形態である少なくとも1つの電気化学的貯蔵デバイスのタイトネス(tightness)を試験するための方法及び装置に関連する。この装置はハウジングを備え、少なくとも1つのバッテリがハウジング内に配設され得、ガス流がハウジングを通って流れることができる。さらに、この装置は第1のガス・センサ及び第2のガス・センサを備え、ここでは、両方のセンサを用いてバッテリの電気化学セルの構成要素(constituent part)が検出され得る。第1のガス・センサはガス流内でバッテリの上流に配置され、第1のセンサ信号を生成することができる。第2のガス・センサはガス流内でバッテリの下流に配置され、第2のセンサ信号を生成することができる。装置は、第1のガス・センサ及び第2のガス・センサに連結されて第1のセンサ信号及び第2のセンサ信号を評価するように並びに評価の関数としてエラー信号を生成するようにセット・アップされた評価デバイスをさらに備える。したがって、第1のガス・センサがバッテリの上流に配置されて第2のガス・センサがバッテリの下流に配置されることにより、バッテリの漏れが検出され得、対して、バッテリ・エンクロージャの漏れを原因とするものではないセンサ信号内の信号成分が排除され得る。
【0003】
このような方法及び装置は、バッテリ・エンクロージャ内での漏洩のためのバッテリの試験が長い時間を要するという不利益を有し、その理由は、バッテリが試験のために装置の中に配置される必要があり、その後、試験を開始することが可能となる前に装置のハウジングがガスでパージされる必要があり、対して、試験後にはバッテリが装置から取り外される必要がある、からである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、最初に言及した技術分野に関連する方法及び装置を作り出すことであり、この方法及び装置は、バッテリ・エンクロージャ内に格納された少なくとも1つの電気化学セルを含むバッテリのバッテリ・エンクロージャ内での1回又は複数回の漏洩の迅速であるが高い信頼性の検出を可能にするか、或いは、バッテリ・エンクロージャにあるか又はバッテリ・エンクロージャから分離している少なくとも1つの電気化学セル内での1回又は複数回の漏洩の検出を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決策は請求項1の特徴によって明記される。本発明によると、本方法は、バッテリの周囲から或いはバッテリ・エンクロージャ内にあるか又はバッテリ・エンクロージャから分離している少なくとも1つの電気化学セルの周囲からそれぞれガス、また特には空気を採取するステップと、分析方法を用いてガスを分析することによってガスの分析を実現するステップと、この分析に基づいてガスが少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むか否かを決定するステップであって、痕跡がガス中での少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の存在を示す、ステップと、を含む。それにより、分析に基づいてガスが少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むと決定された場合、バッテリのバッテリ・エンクロージャ内での或いはバッテリ・エンクロージャ内にあるか又はバッテリ・エンクロージャから分離している少なくとも1つの電気化学セル内でのそれぞれの漏洩が検出され、本分析方法では、ガスがイオン化方法を用いてイオン化源によってイオン化されてイオンとなり、イオンが1つ又は複数の物理的特性に従って分離することにより分析装置で分析され、ここでは、イオン化源は化学イオン化源であり、イオン化方法は化学イオン化方法である。
【0007】
本発明による装置は、バッテリの周囲から或いはバッテリ・エンクロージャ内にあるか又はバッテリ・エンクロージャから分離している少なくとも1つの電気化学セルの周囲からそれぞれガス、また特には空気を採取するためのガス採取ユニットと、分析方法を用いてガスを分析することによってガスの分析を実現するための分析エンティティと、を含む。分析エンティティは、イオン化方法を用いてガスをイオン化してイオンにするためのイオン化源を含み、ここでは、イオン化源は化学イオン化源であり、イオン化方法は化学イオン化方法であり、ここでは、イオン化源は、ガスをイオン化してイオンにすることを目的として、ガス採取ユニットを用いてバッテリの周囲から或いはバッテリ・エンクロージャ内にあるか又はバッテリ・エンクロージャから分離している少なくとも1つの電気化学セルの周囲から採取されたガスを受け取るためにガス採取ユニットに流体的に連結される。さらに、分析エンティティは、1つ又は複数の物理的特性に従ってイオンを分離することによりイオンを分析するための分析装置を含み、ここでは、分析装置は、1つ又は複数の物理的特性に従ってイオンを分離することを目的としてイオン化源からイオンを受け取るためにイオン化源に流体的に連結される。それにより、本分析方法では、ガスがイオン化方法を用いてイオン化源によってイオン化されてイオンとなり、イオンが1つ又は複数の物理的特性に従って分離することにより分析装置で分析される。さらに、本装置は、分析に基づいてガスが少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むか否かを決定するように適合された漏洩決定ユニットを含み、痕跡がガス中での少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の存在を示し、ここでは、分析に基づいて漏洩決定ユニットにより、ガスが少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むと決定された場合、バッテリのバッテリ・エンクロージャ内での或いはバッテリ・エンクロージャ内にあるか又はバッテリ・エンクロージャから分離している少なくとも1つの電気化学セル内での漏洩が検出される。
【0008】
有利には、本装置は、本発明による方法を実行するために装置を制御するように適合された制御ユニットを含む。この制御ユニットは、例えば、電子制御装置又はデスクトップ・コンピュータとなり得る。後者の事例では、装置が、装置に接続され得て装置を制御するためのソフトウェアがその上で起動され得るところであるデスクトップ・コンピュータなしで販売され得ることを理由として、装置は、本発明による方法を実行するために、装置を制御するように適合された制御ユニットなしでも済ませられ得る。
【0009】
冒頭で言及したように、本方法及び本装置は、バッテリ内での1回又は複数回の漏洩を検出するためものである。この事例では、バッテリはバッテリ・エンクロージャ内に格納された少なくとも1つの電気化学セルを含む。したがって、その狙いは、バッテリ・エンクロージャ内に少なくとも1つの電気化学セルが格納されるときにバッテリのバッテリ・エンクロージャ内での漏洩を検出することである。しかし、本方法及び本装置は、バッテリ・エンクロージャ内にあるか又はバッテリ・エンクロージャから分離している少なくとも1つの電気化学セル内での1回又は複数回の漏洩を検出するためのものでもある。この事例では、その狙いは電気化学セル内での漏洩を検出することである。その狙いがバッテリ・エンクロージャ内に少なくとも1つの電気化学セルが格納されるときにバッテリのバッテリ・エンクロージャ内での漏洩を検出することであるか否か又はその狙いが電気化学セル内での漏洩を検出することであるか否かに関係なく、電気化学セルは、有利には、化学反応から電気エネルギーを生成することができるデバイスである。しかし、電気化学セルを使用するところのバッテリが再充電可能である事例では、電気化学セルは、化学反応を引き起こすために電気エネルギーを使用することもできる。
【0010】
本発明によると、本方法及び本装置がバッテリ内での1回又は複数回の漏洩を検出するためのものである事例では、本方法は、バッテリの周囲からガス、また特には空気を採取するステップを含み、対して、本装置は、バッテリの周囲からガス、また特には空気を採取するためのガス採取ユニットを含む。しかし、本方法及び本装置がバッテリ・エンクロージャ内にあるか又はバッテリ・エンクロージャから分離している少なくとも1つの電気化学セル内での1回又は複数回の漏洩を検出するためのものである事例では、本方法は、バッテリ・エンクロージャ内にあるか又はバッテリ・エンクロージャから分離している少なくとも1つの電気化学セルの周囲からガス、また特には空気を採取するステップを含み、対して、本装置は、バッテリ・エンクロージャ内にあるか又はバッテリ・エンクロージャから分離している少なくとも1つの電気化学セルの周囲からガス、また特には空気を採取するためのガス採取ユニットを含む。
【0011】
ガスは有利には空気である。しかし、ガスは空気ではない可能性もある。例えば、ガスは、他の物質のトレース(trace)を含む窒素ガス又はヘリウム・ガスとなり得る。しかし、有利には、ガスは、それぞれ、クリーン・ガス又は清浄空気である。ガスが空気であるか否かに関係なく、本方法では、ガスは、ガス採取ユニットを用いて、有利には、バッテリの周囲から又は少なくとも1つの電気化学セルの周囲から採取される。ガス採取ユニットがバッテリの周囲からガスを採取するのに使用される事例では、ガスは、好適には、バッテリ・エンクロージャの周囲から採取される。したがって、バッテリ・エンクロージャが1つ又は複数の漏洩を有する事例では、ガス又は空気は、それぞれ、1回又は複数回の漏洩を通してバッテリ・エンクロージャから逃げる少なくとも1つの電気化学セルの構成要素を含む。したがって、それぞれガス中の又は空気中の少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の痕跡を検出することにより、バッテリ・エンクロージャ内での漏洩の検出が可能となる。ガス採取ユニットが少なくとも1つの電気化学セルの周囲からガスを採取するのに使用される事例では、ガスは、好適には、少なくとも1つの電気化学セルがバッテリ・エンクロージャ内に存在する場合は、バッテリ・エンクロージャ内で少なくとも1つの電気化学セルの周囲から採取され、又は、少なくとも1つの電気化学セルがバッテリ・エンクロージャから分離している場合は、単に、少なくとも1つの電気化学セルの周囲から採取される。したがって、いずれの場合も、それぞれガス中の又は空気中の少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の痕跡を検出することにより、少なくとも1つの電気化学セル内での漏洩の検出が可能となる。
【0012】
バッテリの周囲から又は少なくとも1つの電気化学セルの周囲からガスが如何にして採取されるかは重要ではない。例えば、ガス採取ユニットはチューブの開端部となり得、チューブはバッテリ又は少なくとも1つの電気化学セルの表面に沿って移動させられ、バッテリ又は少なくとも1つの電気化学セルの表面から空気を吸引する。別の実例では、バッテリの周囲又は少なくとも1つの電気化学セルの周囲がパージ・ガスでパージされ、このパージ・ガスがバッテリ又は少なくとも1つの電気化学セルの表面からガス採取ユニットの中へ吸引される。別の実例では、それぞれ、バッテリがハウジングの中に置かれるか、又は少なくとも1つの電気化学セルがハウジングの中に置かれ、その後、ハウジングからのガスがガス採取ユニットの中へ吸引される。
【0013】
本発明によると、分析方法を用いてガスを分析することによってガスの分析が実現され、分析に基づいてガスが少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むか否かが決定され、痕跡がガス中での少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の存在を示す。したがって、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の痕跡は、ガス中での少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の存在のための指標である。その理由は、イオン化方法の実行中にイオン化源内での反応条件下でイオン化された少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素が、1つ又は複数の物理的特性に従って分離することにより分析装置内に分析されるときに特定の値の少なくとも1つの又は複数の物理的特性を提供する、からである。したがって、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の少なくともトレースがそれぞれにおいてガス中に又は空気中に存在する事例では、分析方法を用いてガスが分析されるとき、ガスから採取されるイオンの画分(fraction)が特定の値の1つ又は複数の物理的特性を有する。その結果として、ガスから採取されたイオンの画分が特定の値の少なくとも1つの物理的特性を有する事例では、ガスは少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の痕跡を含む。したがって、ガス中での少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の痕跡が、バッテリ・エンクロージャ内での漏洩を示す。これが、本発明による方法及び装置において、バッテリのエンクロージャ内での1回又は複数回の漏洩を検出するのに使用される。
【0014】
少なくとも1つの電気化学セルの調べられる少なくとも1つの構成要素に応じて、それぞれガス又は空気から採取される他のイオンも同じ値の1つ又は複数の物理的特性を有する可能性もある。この事例では、イオン化源内でのイオン化条件下でイオン化方法を用いて少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素から採取されたイオンと同じ値の1つ又は複数の物理的特性を有するイオンの画分は、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素がバッテリ・エンクロージャからバッテリの周囲へ逃げることが可能となるような漏洩をバッテリ・エンクロージャが有する場合は常に期待値より高い。したがって、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素が、それぞれガス中に又は空気中に、気相、液相、固相として、或いは、気体パート(part)、液体パート、及び/又は固体パートからの混合相として、存在するか否かは重要ではない。特には、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素は、ガス中に気相として、或いは、ガス中に分散する液体エアロゾル粒子及び/又は固体エアロゾル粒子の形態で、存在する可能性がある。したがって、ガスは分散系(dispersion)である可能性があり、ここでは、イオン化方法を用いてイオン化されるとき、液体エアロゾル粒子及び/又は固体エアロゾル粒子を含む分散系がイオン化される。
【0015】
本発明によると、イオン化源は化学イオン化源であり、イオン化方法は化学イオン化方法である。化学イオン化では、ガスのイオン化は、一次イオンの電荷を提供する生成物となるようにガスの成分と化学反応する既知の一次イオンによって達成される。この機構を使用することは、一次イオンが、生成物となるようにガスの主成分とはあまり反応せずに、生成物となるように電気化学セルの少なくとも1つの構成要素と主として反応するように選定され得るという利点を有する。結果として、バッテリ・エンクロージャ又は少なくとも1つの電気化学セルが漏洩を有する事例ではガスが電気化学セルの少なくとも1つの構成要素のトレースのみを含む可能性があるにしても、ガスから採取されるイオンは、ガス中に、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の画分より多くの少なくとも1つの電気化学セルのイオン化された構成要素の画分を含むことになる。したがって、1つ又は複数の物理的特性に従ってイオンを分離することにより分析装置内でガスから採取されるイオンを分析するとき、ガス中での少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の痕跡を決定するのに、大幅に低減された最低源の検出能力しか必要とならない。したがって、バッテリ・エンクロージャ内に格納された少なくとも1つの電気化学セルを含むバッテリのバッテリ・エンクロージャ内での1回又は複数回の漏洩の、或いは、バッテリ・エンクロージャ内にあるか又はバッテリ・エンクロージャから分離している少なくとも1つの電気化学セル内での1回又は複数回の漏洩の、迅速であるが高い信頼性の検出が、本発明による解決策によって可能となる。
【0016】
本発明による方法及び装置は、バッテリの製造又は電気化学セルの製造で使用され得る。さらに、本発明による方法及び装置は、バッテリ及び電気化学セルの開発において、バッテリ及び電気化学セルのライフ・サイクル試験(live cycle testing)のために、使用され得る。したがって、個別の電気化学セルが漏洩のために検査され得るか、又は電気化学セルのモジュールが漏洩のために検査され得る。さらに、個別のバッテリ又はバッテリの構成が漏洩のために検査され得る。
【0017】
化学イオン化では、一次イオンの電荷を提供する生成物となるようにガスの成分と化学反応する一次イオンは、一般に、イオン化源の反応ボリューム(reaction volume)内に存在する。しかし、この化学反応は他の場所でも起こる可能性がある。
【0018】
有利な変形形態では、本発明による方法及び本発明による装置は、電気化学セルの製造で使用される。特に有利には、電気化学セルがバッテリ・エンクロージャから依然として分離しているとき、電気化学セルの製造中に予備的な漏洩検出手順が達成される。したがって、電気化学セルの製造中の予備的な漏洩検出手順では、各電気化学セルにおいて、それぞれの電気化学セルの電極がそれぞれの電気化学セルのエンクロージャの中に挿入され、漏洩検出ガスがそれぞれの電気化学セルのエンクロージャの中に充填され、その後、それぞれの電気化学セルのエンクロージャが閉じられ、特には気密的に閉じられる。次いで、ガス、また特には空気がそれぞれの電気化学セルのエンクロージャの周囲から採取され、分析方法を用いてガスを分析することによりガスの分析が実現され、この分析に基づいてガスが漏洩検出ガスの痕跡を含むか否かが決定され、ここでは痕跡がガス中での漏洩検出ガスの存在を示し、ここでは、分析に基づいてガスが漏洩検出ガスの痕跡を含むと決定される事例では、それぞれの電気化学セルのエンクロージャ内での漏洩が検出され、ここでは、本分析方法では、ガスがイオン化方法を用いてイオン化源によってイオン化されてイオンとなり、イオンが1つ又は複数の物理的特性に従って分離することにより分析装置で分析され、ここでは、イオン化源は化学イオン化源であり、イオン化方法は化学イオン化方法である。
【0019】
この予備的な漏洩検出手順は本発明による装置を用いて達成され得る。さらに、この予備的な漏洩検出手順では、本発明による方法のために以下で説明されるすべての特徴が採用され得る。特に有利には、この予備的な漏洩検出手順では、特にはそれぞれの電気化学セルで後で使用されることになる電解液であり、より具体的には、炭酸ジメチル(DMC:dimethyl carbonate)、炭酸ジエチル(DEC:diethyl carbonate)、炭酸エチルメチル(EMC:ethyl methyl carbonate)、炭酸エチレン(EC:ethylene carbonate)、及び/又は六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)である、電解液の揮発生成分が、漏洩検出ガスとして使用される。しかし、電解液の、又はさらには任意の他の揮発性物質(したがって、必ずしも電解液ではない)の、任意の他の揮発性成分が漏洩検出ガスとして使用されてもよい。しかし、DMC、DEC、EMC、EC、及びLiPF6は、これらが通常は空気の一部ではなく、したがって漏洩検出ガスを充填された電気化学セルのエンクロージャが大気環境又は任意の他のガス環境に置かれる事例においては、これらが電気化学セルのエンクロージャ内での漏洩を検出するのに効率的に使用され得る、という利点を有する。さらに、NH4
+、H3O+、又はI-が反応イオンとして使用される事例では、DMC、DEC、EMC、EC、及びLiPF6は効率的にイオン化され、対して、空気の一般的な構成要素は効率的にイオン化されない。したがって、バックグラウンド信号が低減され、非常に効率的な漏洩検出が達成される。特に有利には、漏洩検出ガスはDMCである。これは、DMCが環境に優しい溶媒でありしたがって環境に害を与えないという別の利点を有する。それでも、上で明記したガス以外の任意の他のガスも漏洩検出ガスとして使用され得る。しかし、有利な変形形態では、例えばアセチレンのような任意の他の揮発性有機化合物も漏洩検出ガスとして使用される。このような揮発性有機化合物は、NH4
+、H3O+、又はI-のような反応イオンを使用することにより非常に効率的にイオン化され得る。
【0020】
この予備的な漏洩検出手順では、漏洩検出ガスを充填されたそれぞれの電気化学セルの閉じられたエンクロージャが有利にはハウジングの中に置かれ、その後、ハウジングが有利にはパージ・ガスでパージされ、その後、このパージ・ガスがハウジングから及びひいてはそれぞれの電気化学セルのエンクロージャの周囲から採取される。次いで、この採取されたパージ・ガスが、有利には、それぞれの電気化学セルのエンクロージャ内で漏洩が存在するか否かを決定することを目的としてガスが漏洩検出ガスの痕跡を含むか否かを決定するために分析されるガスとして、分析される。したがって、パージ・ガスは例えば空気又は純窒素となり得る。しかし、好適には、パージ・ガスは清浄空気であるか、又は、パージ・ガスを用いてハウジングをパージするためにハウジングの中に挿入されるときに漏洩検出ガスを一切含まない空気である。さらに、1つの電気化学セルのエンクロージャ又は2つ以上の電気化学セルのエンクロージャが、それぞれにおいて、ハウジングの中に置かれ得、エンクロージャ内での漏洩のために分析され得る。実例では、6個の電気化学セルのエンクロージャ、12個の電気化学セルのエンクロージャ、18個の電気化学セルのエンクロージャ、又はさらには18個以上の電気化学セルのエンクロージャがハウジングの中に置かれ、漏洩のために同時に分析される。ハウジング内の電気化学セルのエンクロージャの数とは無関係に、有利には、少なくとも1つの電気化学セルのエンクロージャがハウジングの中に置かれる後で且つハウジングがパージ・ガスでパージされる前に、ハウジング内のガス圧力が、10kPa(100mbar)未満まで、特に有利には1kPa(10mbar)まで、最も好適には0.1kPa(1mbar)未満まで、低減され得る。これは、それぞれの電気化学セルのエンクロージャ内での任意の漏洩を通してそれぞれの電気化学セルのエンクロージャから漏洩検出ガスがより迅速に逃げるようになりそれによりそれぞれの電気化学セルのエンクロージャ内での漏洩のより効率的な検出が可能となる、という利点を有する。さらに、これは、ハウジングがパージ・ガスでパージされる前に漏洩検出ガスのトレースを含む可能性があるハウジング内のガス又は空気が除去される、という利点を有する。したがって、エンクロージャ内での漏洩を検出するために検出をより良好に制限することが達成される。しかし、この予備的な漏洩検出手順はハウジング内の圧力を低下させずにも済まされ得、さらには、それぞれの電気化学セルをハウジングの中に置かなくても済まされ得る。
【0021】
電気化学セルの製造では、予備的な漏洩検出手順中にそれぞれの電気化学セルのエンクロージャ内での漏洩が検出されない事例では、それぞれの電気化学セルのエンクロージャの気密的な閉鎖状態が開放され、電解液がそれぞれの電気化学セルのエンクロージャの中に充填され、その後、それぞれの電気化学セルが密閉される。その後、バッテリ・エンクロージャから分離しているそれぞれの電気化学セル内での1回又は複数回の漏洩を検出するのに、本発明による方法及び本発明による装置が使用される。
【0022】
したがって、電気化学セルの製造では、この予備的な漏洩検出手順が本発明による方法とは別個に採用され得るか、又は本発明による方法の予備的なステップにおいて本発明による方法の一部として採用され得る。
【0023】
本発明による方法がバッテリ・エンクロージャ内にあるか又はバッテリ・エンクロージャから分離している少なくとも1つの電気化学セル内での1回又は複数回の漏洩を検出するために使用される事例では、少なくとも1つの電気化学セルの周囲からガス、また特には空気が採取される前に、少なくとも1つの電気化学セルの表面が有利には洗浄され、特にはプラズマ洗浄される。これに関して、プラズマ洗浄は、有利には、エネルギーによるプラズマ(energetic plasma)又はガス種から作り出される誘電体バリア放電(DBD:dielectric barrier discharge)プラズマを使用することにより、少なくとも1つの電気化学セルの表面からの不純物及び汚染物質の除去である。少なくとも1つの電気化学セルの表面を洗浄することは、少なくとも1つの化学セルの表面から汚れが除去され、少なくとも1つの電気化学セル内での漏洩の虚偽の検出の原因となり得ない、という利点を有する。これは、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素が少なくとも1つの電気化学セルの電解液に含まれる事例において、特に有利である。したがって、電解液を電気化学セルのエンクロージャの中に充填するときに電解液の一部が少なくとも1つの電気化学セルの表面の上にこぼれる事例では、少なくとも1つの電気化学セルの周囲からガスを採取する前に、少なくとも1つの電気化学セルの表面の上のこれらの残留物が除去される。
【0024】
有利には、少なくとも1つの電気化学セルがハウジングの中に置かれ、その後、ハウジングが有利にはパージ・ガスでパージされ、その後、このパージ・ガスがハウジングから及びひいては少なくとも1つの電気化学セルの周囲から採取される。次いで、この採取されたパージ・ガスが、有利には、それぞれの電気化学セル内で漏洩が存在するか否かを決定することを目的としてガスが少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むか否かを決定するために分析されるガスとして分析される。これに関して、パージ・ガスは例えば空気又は純窒素となり得る。有利な変形形態では、ハウジングはバッテリ・エンクロージャである。しかし、別の変形形態では、ハウジングはバッテリ・エンクロージャとは異なる。ハウジングがバッテリ・エンクロージャであるか否かに関係なく、少なくとも1つの電気化学セルのうちの1つ又は複数の電気化学セルがハウジングの中に置かれ得、漏洩のために分析され得る。実例では、6個の電気化学セル、12個の電気化学セル、18個の電気化学セル、又はさらには18個以上の電気化学セルがハウジングの中に置かれ、漏洩のために同時に分析され得る。ハウジング内の電気化学セルの数とは無関係に、有利には、少なくとも1つの電気化学セルがハウジングの中に置かれた後で且つハウジングがパージ・ガスでパージされる前に、ハウジング内のガス圧が、10kPa(100mbar)未満まで、特に有利には1kPa(10mbar)まで、最も好適には0.1kPa(1mbar)未満まで、低減され得る。これは、少なくとも1つの電気化学セル内での任意の漏洩を通して少なくとも1つの電気化学セルから漏洩検出ガスが迅速に逃げるようになりそれにより少なくとも1つの電気化学セル内での漏洩のより効率的な検出が可能となる、という利点を有する。しかし、本発明による方法はハウジング内の圧力を低下させずにも済まされ得、さらには、少なくとも1つの電気化学セルをハウジングの中に置かなくても済まされ得る。
【0025】
好適には、分析に基づいてガスが少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むか否かを決定するために、イオンの画分が、イオン化方法の実行中に、イオン化源内でのまた特にはイオン化源の反応ボリューム内での反応条件下で、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素から採取されるイオンと同じ値の1つ又は複数の物理的特性を有するか否かが評価され、ここでは、この画分が閾値を超える事例では、ガスが少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むと決定される。ここでは、1つ又は複数の物理的特性に従って分離することにより分析装置で分析されるときに、イオン化方法の実行中に、イオン化源内でのまた特にはイオン化源の反応ボリューム内での反応条件下で、イオン化された少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素が特定の値の少なくとも1つの又は複数の物理的特性を提供する、という事実が利用される。したがって、分析方法を用いてガスが分析されるときに少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の少なくともトレースがガス中に存在する事例では、ガスから採取されたイオンの画分が特定の値の1つ又は複数の物理的特性を有する。ガスから採取されたイオンの画分が特定の値の少なくとも1つの物理的特性を有し且つこの画分が閾値を超える事例では、ガスが少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の痕跡を含み、ガスが少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むと決定される。
【0026】
バッテリ・エンクロージャ内で漏洩が存在しない場合でもガス中に少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の最低限度のトレースが存在する可能性があることを理由として、及び、ガスから採取される他のイオンも同じ値の1つ又は複数の物理的特性を有する可能性があることを理由として、閾値を適用することは、対応する閾値を選定することによりバッテリのバッテリ・エンクロージャ内での1回又は複数回の漏洩の検出の信頼性が向上し得るという利点は有する。
【0027】
しかし、別法として、分析に基づいてガスが少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むか否かを決定することが、このような閾値の適用なしでも済まされ得る。
【0028】
有利には、イオン化源及びイオン化方法は付加イオン化(adduct ionisation)に依存し、ここでは、ガスのイオン化中に付加イオンが形成され、これらの付加イオンはガスの付加物及び反応イオンである。これは、ガス及び特には少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素が効率的にイオン化され得るという利点を有する。したがって、有利には、付加イオンがイオン化源の反応ボリューム内で形成される。したがって、有利には、イオン化源がこのような反応ボリュームを含む。しかし、変形形態では、イオン化源は反応ボリュームなしでも済まされ得、付加イオンはイオン化源の反応ボリューム内で形成されない。
【0029】
有利には、反応イオンは、I-、Br-、Cl-、CF3O-、NO3
-、アセテート-、NO+、NH4
+、アミン+、アセトン+、エタノール+、H3O+、及びベンゼン+、のうちの1つである。しかし、変形形態では、反応イオンは、I-、Br-、Cl-、CF3O-、NO3
-、アセテート-、NO+、NH4
+、アミン+、アセトン+、エタノール+、H3O+、及びベンゼン+ではない他のイオンである。
【0030】
NH4+、H3O+、又はI-である反応イオンは、イオン化方法の実行中に、イオン化源内でのまた特には反応ボリューム内での反応条件下で、窒素及び反応イオン、酸素及び反応イオン、水蒸気及び反応イオン、並びにアルゴン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成されないという利点を有する。さらに、二酸化炭素及び反応イオン、ネオン及び反応イオン、ヘリウム及び反応イオン、メタン及び反応イオン、並びにクリプトン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成されない。したがって、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素がガス中に存在する事例では、イオン化方法の実行中に、イオン化源内でのまた特には反応ボリューム内での反応条件下で、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素及び反応イオンの付加物である付加イオンが選択的に形成され得る。
【0031】
反応イオンがH3O+又はNH4
+である事例では、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素は、有利には、少なくとも1つの電気化学セルで使用される電解液の成分であり、特には揮発性成分である。特に有利には、この事例では、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素は、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸エチレン(EC)、及び/又は六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)であり、特に有利には、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)、及び/又は炭酸エチレン(EC)である。しかし、電解液の任意の他の成分、特には揮発性成分も、電気化学セルの少なくとも1つの構成要素として使用され得る。電気化学セルの少なくとも1つの構成要素として電解液のこのような成分、また特には揮発性成分を使用することは、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素及び反応イオンの付加物である付加イオンが選択的に形成される、という利点を有する。反応イオンがI-である事例では、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素は、有利には、少なくとも1つの電気化学セルで使用される電解液の成分であり、特には揮発性成分である。特に有利には、この事例では、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素は、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸エチレン(EC)、及び/又は六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)であり、特に有利には、炭酸エチレン(EC)及び/又は六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)であり、最も有利には、炭酸エチレン(EC)である。これは、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素及び反応イオンの付加物である付加イオンが選択的に形成されるという利点を有する。
【0032】
第1の好適な変形形態では、本イオン化源及び本イオン化方法において、反応イオンは反応ボリュームで利用可能とされ、ここでは、ガスをイオン化するために、ガスが、付加イオンを形成することを目的として反応イオンと反応するために反応ボリュームの中に導入される。これは、ガスが非常に効率的にイオン化され得るという利点を有する。
【0033】
第2の好適な変形形態では、本イオン化源及び本イオン化方法において、反応イオン及び別の化合物から形成された化合物イオンは反応ボリューム内で利用可能とされ、ここでは、ガスをイオン化するために、ガスが、付加イオン及び1つ又は複数の中性副生成物を形成することを目的として化合物イオンと反応するために反応ボリュームの中に導入される。反応イオンが少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素ではないガスの成分と反応する可能性が高い事例では、化合物イオンの使用が有利であり、その理由は、化合物イオンは、付加イオン及び1つ又は複数の中性副生成物を形成することを目的として、反応イオンが少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素ではないガスの成分と反応するときの可能性より高い可能性で、化合物イオンと反応するように調製され得るからである。これを達成するために、反応イオン及び別の化合物は、好適には、一体に結合するときに少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの成分ではないガスの反応イオン及びガス成分によって提供される結合エネルギーより高い結合エネルギーを、化合物と一体に結合するときに提供するように選定される。このような別の化合物のための例は、水、エタノール、メタノール、ベンゼン、アセトン、アセトニトリル(ACN)、ギ酸、乳酸、及び硝酸であるか、或いは、酸部分、過酸化物部分、アルコール部分、又はケトン部位を含む任意の他の分子である。
【0034】
本イオン化源及び本イオン化方法において反応イオン化方法において、反応イオンが反応ボリューム内で利用可能とされるか否かに関係なく(ここでは、ガスをイオン化するために、ガスが、付加イオンを形成することを目的として反応イオンと反応するために反応ボリュームの中に導入される)、反応イオン及び別の化合物から形成された化合物イオンが反応ボリュームで利用可能とされるか否かに関係なく(ここでは、ガスをイオン化するために、ガスが、付加イオン及び1つ又は複数の中性副生成物を形成することを目的として化合物イオンと反応するために反応ボリュームの中に導入される)、或いは、付加イオンが別の手法で生成されるか否かに関係なく、反応イオンは有利には反応物質のイオンであり、ここでは、反応物質は有利には、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素がガス中に存在する事例においてイオン化源でのガスのイオン化中に少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素及び反応イオンの付加物である付加イオンが形成されることになるように、選定される。これは、ガスが少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むか否かを効率的に決定することが可能であるという利点を有する。
【0035】
好適には、反応物質は、イオン化方法の実行中に、イオン化源内でのまた特には反応ボリューム内での反応条件下で、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素及び反応イオンの付加物である付加イオンが、窒素及び反応イオン、酸素及び反応イオン、水蒸気及び反応イオン、並びにアルゴン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成される可能性より、1,000倍以上、好適には10,000倍以上、特に好適には100,000倍以上、最も好適には1,000,000倍以上の可能性で形成されることになるように、選定される。これは、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素と比較して空気主成分がイオン化される可能性が大幅に低いことを理由として、分析に基づいてガスが少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むか否かを決定するために、多様な値の少なくとも1つの物理的特性を有するイオンの量を検出するのに小さいダイナミック・レンジで十分となる、という利点を有する。
【0036】
本発明の好適な変形形態では、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素がガス中に存在し、対して、窒素及び反応イオン、酸素及び反応イオン、水蒸気及び反応イオン、並びにアルゴン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成されない事例では、反応物質は、イオン化方法の実行中に、イオン化源内でのまた特には反応ボリューム内での反応条件下で、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素及び反応イオンの付加物である付加イオンが選択的に形成されることになるように、選定される。これは、空気主成分がイオン化されないことを理由として、分析に基づいてガスが少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むか否かを決定するために、多様な値の少なくとも1つの物理的特性を有するイオンの量を検出するのにさらに小さいダイナミック・レンジで十分となる、という利点を有する。
【0037】
有利には、反応物質は、イオン化方法の実行中に、イオン化源内でのまた特には反応ボリューム内での反応条件下で、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素及び反応イオンの付加物である付加イオンが、二酸化炭素及び反応イオン、ネオン及び反応イオン、ヘリウム及び反応イオン、メタン及び反応イオン、並びにクリプトン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成される可能性より、10倍以上、好適には100倍以上、特に好適には1,000倍以上の可能性で形成されることになるように、選定される。これは、分析に基づいてガスが少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むか否かを決定することが単純化されることになるように、二酸化炭素、ネオン、ヘリウム、メタン、及びクリプトンである空気の微量成分が、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素より低い可能性でイオン化される、という利点を有する。
【0038】
イオン化方法の実行中に、イオン化源内でのまた特には反応ボリューム内での反応条件下で、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素及び反応イオンの付加物である付加イオンが、窒素及び反応イオン、酸素及び反応イオン、水蒸気及び反応イオン、並びにアルゴン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成される可能性より10,000倍以上の可能性で形成されることになるように、反応物質が選定される事例では、反応物質は、有利には、イオン化方法の実行中に、イオン化源内でのまた特には反応ボリューム内での反応条件下で、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素及び反応イオンの付加物である付加イオンが、二酸化炭素及び反応イオン、ネオン及び反応イオン、ヘリウム及び反応イオン、メタン及び反応イオン、並びにクリプトン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成される可能性より10倍以上の可能性で形成されることになるように、選定される。イオン化方法の実行中に、イオン化源内でのまた特には反応ボリューム内での反応条件下で、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素及び反応イオンの付加物である付加イオンが、窒素及び反応イオン、酸素及び反応イオン、水蒸気及び反応イオン、並びにアルゴン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成される可能性より100,000倍以上の可能性で形成されることになるように、反応物質が選定される事例では、反応物質は、有利には、イオン化方法の実行中に、イオン化源内でのまた特には反応ボリューム内での反応条件下で、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素及び反応イオンの付加物である付加イオンが、二酸化炭素及び反応イオン、ネオン及び反応イオン、ヘリウム及び反応イオン、メタン及び反応イオン、並びにクリプトン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成される可能性より100倍以上の可能性で形成されることになるように、選定される。イオン化方法の実行中に、イオン化源内でのまた特には反応ボリューム内での反応条件下で、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素及び反応イオンの付加物である付加イオンが、窒素及び反応イオン、酸素及び反応イオン、水蒸気及び反応イオン、並びにアルゴン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成される可能性より1,000,000倍以上の可能性で形成されることになるように、反応物質が選定される事例では、反応物質は、有利には、イオン化方法の実行中に、イオン化源内でのまた特には反応ボリューム内での反応条件下で、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素及び反応イオンの付加物である付加イオンが、二酸化炭素及び反応イオン、ネオン及び反応イオン、ヘリウム及び反応イオン、メタン及び反応イオン、並びにクリプトン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成される可能性より1000倍以上の可能性で形成されることになるように、選定される。
【0039】
有利には、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素がガス中に存在し、対して、二酸化炭素及び反応イオン、ネオン及び反応イオン、ヘリウム及び反応イオン、メタン及び反応イオン、並びにクリプトン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成されない事例では、反応物質は、イオン化方法の実行中に、イオン化源内でのまた特には反応ボリューム内での反応条件下で、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素及び反応イオンの付加物である付加イオンが選択的に形成されることになるように、選定される。これは、分析に基づいてガスが少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むか否かを決定することが大幅に単純化されることになるように、二酸化炭素、ネオン、ヘリウム、メタン、及びクリプトンである空気の微量成分がイオン化されない、という利点を有する。
【0040】
イオン化源及びイオン化方法が付加イオン化に依存するこれらの変形形態に対しての好適な代替的変形形態では、イオン化源及びイオン化方法は、陽子移動又は電子移動である電荷担体移動に依存し、ここでは、陽子又は電子である電荷担体が、それぞれのガス分子又はガス原子をイオン化するために、ガス分子又はガス原子からの、例えば、H3O+イオン、NO+イオン、NH4
+イオンのような試薬イオンまで又は試薬イオンから移動する。
【0041】
付加イオン化及び電荷担体移動に対しての別法として、イオン化源及びイオン化方法は、励起原子又は励起分子とのガスの反応に依存する。
【0042】
好適には、分析装置はイオン移動度分析装置を含み、この分析方法では、イオンがそれらの移動度に従ってイオン移動度分析装置内で分離する。したがって、1つ又は複数の物理的特性のうちの1つの物理的特性はイオンの移動度である。これは、ガスが少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むか否かを決定するために効率的で高い信頼性の手法でイオンが分析され得るという利点を有する。
【0043】
有利には、分析装置は質量分析装置を含み、この分析方法では、イオンがその質量対電荷比に従って質量分析装置内で分離する。したがって、1つ又は複数の物理的特性のうちの1つの物理的特性はイオンの質量対電荷比である。これは、ガスが少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むか否かを決定するために効率的で高い信頼性の手法でイオンが分析され得るという利点を有する。
【0044】
好適な変形形態では、分析装置がイオン移動度分析装置及び質量分析装置を含み、この分析方法では、イオンがその移動度に従ってイオン移動度分析装置内で分離し、その質量対電荷比に従って質量分析装置内で分離する。別の変形形態では、分析装置がイオン移動度分析装置を含むが質量分析装置を含まず、この分析方法では、イオンはその移動度に従ってイオン移動度分析装置内で分離し、対してイオンはその質量対電荷比に従っては分離しない。別の変形形態では、分析装置が質量分析装置を含むがイオン移動度分析装置を含まず、この分析方法では、イオンはその質量対電荷比に従って質量分析装置内で分離し、対してイオンはその移動度に従っては分離しない。
【0045】
これらの変形形態に対しての別法として、分析装置がイオン移動度分析装置及び質量分析装置のいずれも含まず、この分析方法では、イオンはその移動度に従っても又はその質量対電荷比に従っても分離しない。
【0046】
有利には、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素が、少なくとも1つの電気化学セルの電解液である。電気化学セルの電解液が空気の一般的な成分ではないことを理由として、ガスの分析に基づいてガスが電解液の痕跡を含むか否かを決定することによりバッテリ・エンクロージャ内での漏洩が効率的に検出され得る。
【0047】
有利には、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素は炭酸エステルであり、特には、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸エチレン(EC)、及び/又は六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)である。炭酸エステル、及び特には、DMC、DEC、EMC、EC、及びLiPF6は、しばしば、電気化学セルの、また特にはリチウム・イオンに基づく電気化学セルの、電解液に含まれる。炭酸エステルは揮発性有機化合物であることから、任意の漏洩を介して高い可能性で通過(penetrate)する。これに関して、DMCは、その蒸発速度が比較的高いことを理由として、任意の漏洩を介して特に高い可能性で通過する。さらに、空気は通常は炭酸エステル又はDMCを含まないことから、炭酸エステル又はDMCは、バッテリ・エンクロージャ内に格納された少なくとも1つの電気化学セルを含むバッテリのバッテリ・エンクロージャ内での1回又は複数回の漏洩の迅速であるが高い信頼性の検出のための、或いは、バッテリ・エンクロージャにあるか又はバッテリ・エンクロージャから分離している少なくとも1つの電気化学セル内での1回又は複数回の漏洩の検出のための、少なくとも1つの構成要素として適切な物質である。
【0048】
別法として、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素は、炭酸エステル以外の、さらにはDMC、DEC、EMC、EC、及びLiPF6以外の、またさらには電解液以外の、少なくとも1つの電気化学セルの別の構成要素であってもよい。例えば、少なくとも1つの電気化学セルの少なくとも1つの構成要素は、少なくとも1つの電気化学セルの絶縁体であってもよい。
【0049】
有利には、バッテリの周囲から或いはバッテリ・エンクロージャ内にあるか又はバッテリ・エンクロージャから分離している少なくとも1つの電気化学セルの周囲からそれぞれガス、また特には空気が採取されるとき、バッテリの周囲或いはバッテリ・エンクロージャ内にあるか又はバッテリ・エンクロージャから分離している少なくとも1つの電気化学セルの周囲は、それぞれ、少なくとも10000Paの、好適には少なくとも50000Paの、最も好適には少なくとも90000Paのガス圧力である。したがって、有利には、バッテリの周囲からガス、また特には空気が採取されるとき、バッテリが、少なくとも10000Paの、好適には少なくとも50000Paの、最も好適には少なくとも90000Paのガス圧力を有する環境内で維持されるか、又は、有利には、少なくとも1つの電気化学セルの周囲からガス、また特には空気が採取されるとき、少なくとも1つの電気化学セルが、少なくとも10000Paの、好適には少なくとも50000Paの、最も好適には少なくとも90000Paのガス圧力を有する環境内で維持される。結果として、特定の好適な変形形態では、バッテリ又は少なくとも1つの電気化学セルの周囲からそれぞれガス、また特には空気が採取されるとき、バッテリ又は少なくとも1つの電気化学セルが、それぞれ、大気圧で維持される。これは、バッテリが製造されるところである製造ラインにおいて、新たに製造されたバッテリを漏洩のために検査するのに、バッテリのバッテリ・エンクロージャ内での1回又は複数回の漏洩を検出するための方法が使用される事例において特に有利である。したがって、好適な変形形態では、バッテリの周囲からガス、また特には空気が採取されるとき、バッテリの周囲は、200000Pa未満の、特に好適には150000Pa未満のガス圧力にある。しかし、別法として、バッテリの周囲からガス、また特には空気が採取されるとき、バッテリの周囲は、200000Pa以上の又は50000Pa未満のガス圧力にある。同じ意味で、これは、電気化学セルが製造されるところである製造ラインにおいて、又はバッテリ製造中にバッテリ・エンクロージャ内に電気化学セルが格納される前に、新たに製造された電気化学セルを漏洩のために検査するのに、バッテリ・エンクロージャ内にあるか又はバッテリ・エンクロージャから分離している少なくとも1つの電気化学セル内での1回又は複数回の漏洩を検出するための方法が使用される事例において特に有利である。したがって、好適な変形形態では、少なくとも1つの電気化学セルの周囲からガス、また特には空気が採取されるとき、少なくとも1つの電気化学セルの周囲は、200000Pa未満の、特に好適には150000Pa未満のガス圧力にある。しかし、別法として、少なくとも1つの電気化学セルの周囲からガス、また特には空気が採取されるとき、少なくとも1つの電気化学セルの周囲は、200000Pa以上の又は50000Pa未満のガス圧力にある。
【0050】
以下の詳細な説明及び特許請求の範囲の全体から特徴の他の有利な実施例及び組み合わせが明らかとなる。
【0051】
実施例を説明するのに図面を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本発明による方法を用いてバッテリのバッテリ・エンクロージャ内での1回又は複数回の漏洩を検出するための或いは電気化学セル内での1回又は複数回の漏洩を検出するための装置を示す単純化された概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図では、同じ構成要素には同じ参照符号が与えられる。
【0054】
図1は、本発明による方法を用いてバッテリ100のバッテリ・エンクロージャ101内での1回又は複数回の漏洩を検出するための(ここでは、バッテリ100は、バッテリ・エンクロージャ101内に格納された少なくとも1つの電気化学セル102を含む)、或いは、上記バッテリ・エンクロージャ101内にあるか又は上記バッテリ・エンクロージャ101から分離している少なくとも1つの電気化学セル102内での1回又は複数回の漏洩を検出するための、装置1の単純化された概略図を示す。これに関して、本発明による方法は装置1の記述の文脈で説明される。
【0055】
図1に示される装置1は、バッテリ100の周囲から或いはバッテリ・エンクロージャ101内にあるか又はバッテリ・エンクロージャ101から分離している少なくとも1つの電気化学セル102の周囲から空気及びひいてはガスを採取するためのガス採取ユニット2を形成する入口を備えるチューブを含む。バッテリ100のバッテリ・エンクロージャ101内での1回又は複数回の漏洩を検出するために、装置1はバッテリ100の周囲から装置1の中へ空気を吸引することができ、この間、入口を備えるチューブはバッテリ・エンクロージャ101の表面に沿って移動させられる。バッテリ・エンクロージャ101内にあるか又はバッテリ・エンクロージャ101から分離している少なくとも1つの電気化学セル102内での1回又は複数回の漏洩を検出するために、装置1は少なくとも1つの電気化学セル102の周囲から装置1の中へ空気を吸引することができ、この間、入口を備えるチューブは少なくとも1つの電気化学セル102の表面に沿って移動させられる。
【0056】
これに関して、バッテリ100の周囲又は少なくとも1つの電気化学セル102の周囲は、それぞれ、大気圧にあり、したがって約100000Paのガス圧力にある。しかし、変形形態では、バッテリ100の周囲又は少なくとも1つの電気化学セル102の周囲は、それぞれ、例えば10000Pa、50000Pa、又は90000Paなどのより低いガス圧力にある。
【0057】
変形形態では、少なくとも1つの電気化学セル102がハウジングの中に置かれ、その後、ハウジングがパージ・ガスでパージされ、その後、このパージ・ガスがハウジングから及びひいては少なくとも1つの電気化学セル102の周囲から採取される。次いで、この採取されたパージ・ガスが、それぞれの電気化学セル102内で漏洩が存在するか否かを決定することを目的としてガスが少なくとも1つの電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むか否かを決定するために分析されるガスとして、分析される。この変形形態では、少なくとも1つの電気化学セル102の周囲から空気及びひいてはガスを採取するためのガス採取ユニット2を形成する入口を備えるチューブが、ハウジングの内部からガスを採取するためにハウジングの内部に接続される。したがって、パージ・ガスは例えば空気又は純窒素となり得る。一変形形態では、ハウジングはバッテリ・エンクロージャ101である。しかし、別の変形形態では、ハウジングはバッテリ・エンクロージャ101とは異なる。ハウジングがバッテリ・エンクロージャ101であるか否かに関係なく、少なくとも1つの電気化学セルのうちの1つ又は複数の電気化学セルがハウジングの中に置かれ得、漏洩のために分析され得る。実例では、6個の電気化学セル102、12個の電気化学セル102、18個の電気化学セル102、又はさらには18個以上の電気化学セル102がハウジングの中に置かれ、漏洩のために同時に分析され得る。ハウジング内の電気化学セル102の数とは無関係に、少なくとも1つの電気化学セル102がハウジングの中に置かれる後で且つハウジングがパージ・ガスでパージされる前に、ハウジング内のガス圧力が、10kPa(100mbar)未満まで、1kPa(10mbar)未満まで、又はさらには0.1kPa(1mbar)未満まで、低減される。したがって、電気化学セル102内での任意の漏洩を通して漏洩検出ガスが電気化学セル102からより迅速に逃げるようになり、それにより電気化学セル102内での漏洩のより効率的な検出が可能となる。電気化学セル102をハウジングの中に置き、ハウジング内のガス圧力を低減した後で且つガスを分析するためにハウジングからガスを採取する前にハウジングをパージすることは、ハウジング内で電気化学セル102の一群が約3秒以内で漏洩のために分析され得るという利点を有する。したがって、ハウジング内の電気化学セル102の数を3秒で割ったものである漏洩分析レートが達成され得る。したがって、電気化学セル102を製造するための製造ラインで本方法を採用するための十分に高いスループットが容易に達成され得る。
【0058】
しかし、本発明による方法はハウジング内の圧力を低下させずにも済まされ得、さらには、電気化学セル102をハウジングの中に置かなくても済まされ得る。
【0059】
ガス採取ユニット2を通して吸引された空気を分析するために、装置1は、分析方法を用いてガスを分析することによりガスの分析を実現するための分析エンティティ3を含む。この分析エンティティ3は、イオン化方法を用いてガスをイオン化してイオンにするためのイオン化源31を含む。この点に関して、イオン化源31は、ガスをイオン化してイオンにするために、ガス採取ユニット2を用いてバッテリ100の周囲又は少なくとも1つの電気化学セル102の周囲からそれぞれ採取されたガスを受け取るためにガス採取ユニット2に流体的に連結される。
【0060】
ガスから採取されたイオンを分析するために、分析エンティティ3は、イオン化源31からイオンを受け取るためにイオン化源31に流体的に連結された分析装置32を含む。これに関して、イオンは、1つ又は複数の物理的特性に従って分離することにより分析装置32で分析される。より正確には、分析装置32は、その移動度に従ってイオン移動度分析装置33内でイオンを分離するように及びその質量対電荷比に従って質量分析装置34内でイオンを分離するように、イオン移動度分析装置33及び質量分析装置34を含む。したがって、質量分析装置34は、イオン移動度分析装置201のイオン検出器として構成される。言い換えると、分析装置32は、質量分析計と組み合わされたイオン移動度分析計である。このような組み合わせの分析装置は当技術分野で知られている。この分析装置32を用いて、本分析方法において、化学イオン化方法であるイオン化方法を用いてイオン化源31によりガスがイオン化されてイオンとなり、その移動度及びその質量対電荷比である1つ又は複数の物理的特性に従って分離することによりイオンが分析装置32で分析される。
【0061】
装置1は、分析に基づいてガスが少なくとも1つの電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むか否かを決定するように適合された漏洩決定ユニット4をさらに含み、痕跡がガス中での少なくとも1つの電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素の存在を示す。この実例では、少なくとも1つの電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素は少なくとも1つの電気化学セルの電解液である。実例では、電解液は、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸エチレン(EC)、及び/又は六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を含む。電解液は一般に空気中では存在しないことから、バッテリ100の周囲から採取されるガス中での電解液及びひいては電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素の痕跡の検出はバッテリ・エンクロージャ101内での漏洩のための良好な指標であり、対して、少なくとも1つの電気化学セル102の周囲から採取されるガス中での電解液及びひいては電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素の痕跡の検出は少なくとも1つの電気化学セル102内での漏洩のための良好な指標である。この理由から、分析に基づいて漏洩決定ユニット4によりガスが少なくとも1つの電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むと決定される事例では、バッテリ100のバッテリ・エンクロージャ101内での漏洩又は少なくとも1つの電気化学セル102内での漏洩がそれぞれ検出される。したがって、分析に基づいてガスが少なくとも1つの電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むか否かを決定するために、漏洩決定モジュール4により、イオンの画分が、イオン化方法の実行中にイオン化源31の反応ボリューム35内での反応条件下で少なくとも1つの電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素から採取されるイオンと同じ値の1つ又は複数の物理的特性を有するか否かが評価され、ここでは、この画分が閾値を超える事例では、ガスが少なくとも1つの電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むと決定される。
【0062】
イオン化源31は化学イオン化源であり、イオン化方法は化学イオン化方法である。イオン化源31及びイオン化方法は、両方、付加イオン化に依存し、ここでは、ガスのイオン化中に付加イオンが形成され、これらの付加イオンはガスの付加物及び反応イオンである。これに関して、イオン化源31は反応ボリューム35を含み、反応ボリューム35内で付加イオンが形成される。第1の変形形態では、ガスをイオン化するために、ガスが、付加イオンを形成することを目的として反応イオンと反応するために反応ボリューム35の中に導入される。この第1の変形形態の一実例では、反応イオンはI-である。別の実例では、反応イオンはH3O+である。別の実例では、反応イオンはNH4
+である。他の実例では、反応イオンは、Br-、Cl-、CF3O-、NO3
-、アセテート-、NO+、アミン+、アセトン+、エタノール+、及びベンゼン+、のうちの1つである。他の実例では、他の反応イオンが使用される。第2の変形形態では、反応イオン及び別の化合物から形成される化合物イオンが反応ボリューム35内で利用可能とされ、ここでは、ガスをイオン化するために、ガスが、付加イオン及び1つ又は複数の中性副生成物を形成することを目的として化合物イオンと反応するために反応ボリューム35の中に導入される。実例では、化合物イオンはアセトニトリルと結合したI-である。この実例では、化合物イオンは、I(C2H3N)-と書かれ得るI(アセトニトリル)-である。この事例では、付加イオンに加えてガスのイオン化中に形成される中性副生成物がアセトニトリルである。他の実例では、化合物イオンは、水、エタノール、メタノール、ベンゼン、アセトン、ギ酸、乳酸、及び硝酸のうちの1つと組み合わされた上で言及した反応イオンのうちの1つであるか、或いは、酸部分、過酸化物部分、アルコール部分、又はケトン部分を含む任意の他の分子である。
【0063】
言及したように、ガスのイオン化中に反応ボリューム35内で付加イオンが形成され、これらの付加イオンはガスの付加物及び反応イオンである。したがって、ガスは、付加イオンを形成することを目的として反応イオンと反応するために、又は、反応イオン及び他の化合物から形成された化合物イオンと反応するために、反応ボリューム35の中に導入される。いずれの事例でも反応イオンは反応物質のイオンであり、ここでは、反応物質は、少なくとも1つの電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素がガス中に存在する事例においてイオン化源31内でのガスのイオン化中に少なくとも1つの電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素及び反応イオンの付加物である付加イオンが形成されることになるように、選定される。
【0064】
したがって、少なくとも1つの電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素がガス中に存在し、対して、窒素及び反応イオン、酸素及び反応イオン、水蒸気及び反応イオン、並びにアルゴン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成されない事例では、反応物質は、イオン化方法の実行中に、反応ボリューム35内での反応条件下で、少なくとも1つの電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素及び反応イオンの付加物である付加イオンが選択的に形成されることになるように、選定される。さらに、少なくとも1つの電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素がガス中に存在し、対して、二酸化炭素及び反応イオン、ネオン及び反応イオン、ヘリウム及び反応イオン、メタン及び反応イオン、並びにクリプトン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成されない事例では、反応物質は、イオン化方法の実行中に、反応ボリューム35内での反応条件下で、少なくとも1つの電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素及び反応イオンの付加物である付加イオンが選択的に形成されることになるように、選定される。
【0065】
しかし、第1の変形形態では、反応物質は、イオン化方法の実行中に、反応ボリューム35内での反応条件下で、少なくとも1つの電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素及び反応イオンの付加物である付加イオンが、窒素及び反応イオン、酸素及び反応イオン、水蒸気及び反応イオン、並びにアルゴン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成される可能性より約2,000倍以上の可能性で形成されることになるように、選定される。第2の変形形態では、反応物質は、イオン化方法の実行中に、反応ボリューム35内での反応条件下で、少なくとも1つの電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素及び反応イオンの付加物である付加イオンが、窒素及び反応イオン、酸素及び反応イオン、水蒸気及び反応イオン、並びにアルゴン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成される可能性より約20,000倍以上の可能性で形成されることになるように、選定される。第3の変形形態では、反応物質は、イオン化方法の実行中に、反応ボリューム35内での反応条件下で、少なくとも1つの電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素及び反応イオンの付加物である付加イオンが、窒素及び反応イオン、酸素及び反応イオン、水蒸気及び反応イオン、並びにアルゴン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成される可能性より約200,000倍以上の可能性で形成されることになるように、選定される。
【0066】
別の変形形態では、反応物質は、イオン化方法の実行中に、反応ボリューム35内での反応条件下で、少なくとも1つの電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素及び反応イオンの付加物である付加イオンが、二酸化炭素及び反応イオン、ネオン及び反応イオン、ヘリウム及び反応イオン、メタン及び反応イオン、並びにクリプトン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成される可能性より約20倍以上の可能性で形成されることになるように、選定される。別の変形形態では、反応物質は、イオン化方法の実行中に、反応ボリューム35内での反応条件下で、少なくとも1つの電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素及び反応イオンの付加物である付加イオンが、二酸化炭素及び反応イオン、ネオン及び反応イオン、ヘリウム及び反応イオン、メタン及び反応イオン、並びにクリプトン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成される可能性より約200倍以上の可能性で形成されることになるように、選定される。別の変形形態では、反応物質は、イオン化方法の実行中に、反応ボリューム35内での反応条件下で、少なくとも1つの電気化学セル102の少なくとも1つの構成要素及び反応イオンの付加物である付加イオンが、二酸化炭素及び反応イオン、ネオン及び反応イオン、ヘリウム及び反応イオン、メタン及び反応イオン、並びにクリプトン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成される可能性より約2,000倍以上の可能性で形成されることになるように、選定される。
【0067】
変形形態では、イオン化源及びイオン化方法は、付加イオン化ではなく、陽子移動又は電子移動である電荷担体移動に依存し、ここでは、陽子又は電子である電荷担体が、それぞれのガス分子又はガス原子をイオン化するために、ガス分子又はガス原子からの、例えば、H3O+イオン、NO+イオン、NH4
+イオンのような試薬イオンまで又は試薬イオンから移動する。
【0068】
有利な変形形態では、本発明による方法及び本発明による装置は、上述したように、電気化学セルの製造で使用される。したがって、本発明による方法は、上述した予備的な漏洩検出手順を含む。したがって、予備的な漏洩検出手順では、例えば18個の電気化学セルである複数の電気化学セルのエンクロージャがハウジングの中に置かれ得、上述したようにエンクロージャ内での漏洩のために同時に分析され得る。これにより、漏洩のために1分間に最大360個の電気化学セルを又はさらには1分間にさらに多くの電気化学セルを分析することが可能となる。
【0069】
本発明による方法がこの予備的な漏洩検出手順を含むか否かに関係なく、例えば18個の電気化学セルなどの複数の電気化学セルがハウジングの中に置かれ得、本発明による方法を用いて漏洩のために同時に分析され得る。これにより、1分間に最大360個の電気化学セルを又はさらには1分間にさらに多くの電気化学セルにおいて、これらの電気化学セルが何らかの漏洩を含むか否かを決定することが可能となる。
【0070】
本発明は、
図1の文脈で説明される方法及び装置1のみに限定されない。むしろ、当業者には本方法及び本装置の変形形態及び変化形態が容易に利用可能となろう。
【0071】
総括すると、バッテリ・エンクロージャ内に格納された少なくとも1つの電気化学セルを含むバッテリのバッテリ・エンクロージャ内での1回又は複数回の漏洩の迅速であるが高い信頼性の検出を可能にする、冒頭で言及した技術分野に関連する方法及び装置が提供されることに留意されたい。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ・エンクロージャ(101)内に格納された少なくとも1つの電気化学セル(102)を含むバッテリ(100)の前記バッテリ・エンクロージャ(101)内での1回又は複数回の漏洩を検出するための、或いは、前記バッテリ・エンクロージャ(101)内にあるか又は前記バッテリ・エンクロージャ(101)から分離している前記少なくとも1つの電気化学セル(102)内での1回又は複数回の漏洩を検出するための方法であって、
a)前記バッテリ(100)の周囲から或いは前記バッテリ・エンクロージャ(101)内にあるか又は前記バッテリ・エンクロージャ(101)から分離している前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の周囲からそれぞれガ
スを採取するステップと、
b)分析方法を用いて前記ガスを分析することにより前記ガスの分析を実現するステップと、
c)前記分析に基づいて前記ガスが前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むか否かを決定するステップであって、前記痕跡が前記ガス中での前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素の存在を示す、ステップと、
を含み、
前記分析に基づいて前記ガスが前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素の前記痕跡を含むと決定された場合、前記バッテリ(100)の前記バッテリ・エンクロージャ(102)内での或いは前記バッテリ・エンクロージャ(101)内にあるか又は前記バッテリ・エンクロージャ(101)から分離している前記少なくとも1つの電気化学セル(102)内での漏洩がそれぞれ検出され、
前記分析方法では、前記ガスがイオン化方法を用いてイオン化源(31)によってイオン化されてイオンとなり、前記イオンが1つ又は複数の物理的特性に従って分離することにより分析装置(32)で分析され、前記イオン化源(31)が化学イオン化源であり、前記イオン化方法が化学イオン化方法である、方法。
【請求項2】
前記分析に基づいて前記ガスが前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素の前記痕跡を含むか否かを決定するために、イオンの画分が、イオン化方法の実行中に、前記イオン化源(31)内での反応条件下で、前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素から採取されるイオンと同じ値の前記1つ又は複数の物理的特性を有するか否かが評価され、前記画分が閾値を超える事例では、前記ガスが前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素の前記痕跡を含むと決定され
る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イオン化源(31)及び前記イオン化方法が付加イオン化に依存し、前記ガスのイオン化中に付加イオンが形成され、前記付加イオンが前記ガスの付加物及び反応イオンであ
る、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記イオン化源(31)及び前記イオン化方法において、前記反応イオンが反応ボリューム(35)内で利用可能とされ、前記ガスをイオン化するために、前記ガスが、前記付加イオンを形成することを目的として前記反応イオンと反応するために前記反応ボリューム(35)の中に導入され
る、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記イオン化源(31)及び前記イオン化方法において、前記反応イオン及び別の化合物から形成された化合物イオンが反応ボリューム(35)内で利用可能とされ、前記ガスをイオン化するために、前記ガスが、前記付加イオン及び1つ又は複数の中性副生成物を形成することを目的として前記化合物イオンと反応するために前記反応ボリューム(35)の中に導入され
る、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記反応イオンが反応物質のイオンであり、前記反応物質が、前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素が前記ガス中に存在する事例において前記イオン化源(35)での前記ガスのイオン化中に前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも構成要素及び前記反応イオンの付加物である付加イオンが形成されることになるように、選定され
る、請求項
3に記載の方法。
【請求項7】
前記反応物質が、前記イオン化方法の実行中に、前記イオン化源(31)内での反応条件下で、前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素及び前記反応イオンの前記付加物である前記付加イオンが、窒素及び反応イオン、酸素及び反応イオン、水蒸気及び反応イオン、並びにアルゴン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成される可能性より、1,000倍以
上の可能性で形成されることになるように、選定され
る、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素が前記ガス中に存在し、対して、窒素及び反応イオン、酸素及び反応イオン、水蒸気及び反応イオン、並びにアルゴン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成されない事例では、前記反応物質が、前記イオン化方法の実行中に、前記イオン化源(31)内での反応条件下で、前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素及び前記反応イオンの付加物である付加イオンが選択的に形成されることになるように、選定され
る、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記反応物質が、前記イオン化方法の実行中に、前記イオン化源(31)内での反応条件下で、前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素及び前記反応イオンの前記付加物である前記付加イオンが、二酸化炭素及び反応イオン、ネオン及び反応イオン、ヘリウム及び反応イオン、メタン及び反応イオン、並びにクリプトン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成される可能性より、10倍以
上の可能性で形成されることになるように、選定され
る、請求項
6に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素が前記ガス中に存在し、対して、二酸化炭素及び反応イオン、ネオン及び反応イオン、ヘリウム及び反応イオン、メタン及び反応イオン、並びにクリプトン及び反応イオン、の付加物である付加イオンが形成されない事例では、前記反応物質が、前記イオン化方法の実行中に、前記イオン化源(31)内での反応条件下で、前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素及び前記反応イオンの付加物である付加イオンが選択的に形成されることになるように、選定され
る、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記分析装置(32)がイオン移動度分析装置を含むこと、及び、前記分析方法において、前記イオンがその移動度に従って前記イオン移動度分析装置内で分離す
る、請求項
1に記載の方法。
【請求項12】
前記分析装置(32)が質量分析装置を含むこと、及び、前記分析方法において、前記イオンがその質量対電荷比に従って前記質量分析装置内で分離す
る、請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素が前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の電解液であ
る、請求項
1に記載の方法。
【請求項14】
前記バッテリ(100)の前記周囲から或いは前記バッテリ・エンクロージャ(101)内にあるか又は前記バッテリ・エンクロージャ(101)から分離している前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記周囲からそれぞれ前記ガ
スが採取されるとき、前記バッテリ(100)の周囲或いは前記バッテリ・エンクロージャ(101)内にあるか又は前記バッテリ・エンクロージャ(101)から分離している前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記周囲は、それぞれ、少なくとも10000Pa
のガス圧力であ
る、請求項
1に記載の方法。
【請求項15】
前記ガスは空気である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
請求項
1に記載の方法を用いて、バッテリ・エンクロージャ(101)内に格納された少なくとも1つの電気化学セル(102)を含むバッテリ(100)の前記バッテリ・エンクロージャ(101)内での1回又は複数回の漏洩を検出するための、或いは、前記バッテリ・エンクロージャ(101)内にあるか又は前記バッテリ・エンクロージャ(101)から分離している少なくとも1つの電気化学セル(102)内での1回又は複数回の漏洩を検出するための装置(1)であって、
a)前記バッテリ(100)の周囲から或いは前記バッテリ・エンクロージャ(101)内にあるか又は前記バッテリ・エンクロージャ(101)から分離している前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の周囲からそれぞれガ
スを採取するためのガス採取ユニット(2)と、
b)分析方法を用いて前記ガスを分析することによって前記ガスの分析を実現するための分析エンティティ(3)と、
を含み、
前記分析エンティティ(3)が、イオン化方法を用いて前記ガスをイオン化してイオンにするためのイオン化源(31)を含み、前記イオン化源(31)が化学イオン化源であり、前記イオン化方法が化学イオン化方法であり、前記イオン化源(31)が、前記ガスをイオン化して前記イオンにすることを目的として、前記ガス採取ユニット(2)を用いて前記バッテリ(100)の前記周囲から或いは前記バッテリ・エンクロージャ(101)内にあるか又は前記バッテリ・エンクロージャ(101)から分離している前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記周囲から採取された前記ガスを受け取るために前記ガス採取ユニット(2)に流体的に連結され、
前記分析エンティティ(3)が、1つ又は複数の物理的特性に従って前記イオンを分離することにより前記イオンを分析するための分析装置(32)を含み、前記分析装置(32)が、前記1つ又は複数の物理的特性に従って前記イオンを分離することを目的として前記イオン化源(31)から前記イオンを受け取るために前記イオン化源(31)に流体的に連結され、
前記分析方法では、前記ガスが前記イオン化方法を用いて前記イオン化源(31)によってイオン化されて前記イオンとなり、前記イオンが前記1つ又は複数の物理的特性に従って分離することにより前記分析装置(32)で分析され、
前記装置(1)が、
c)前記分析に基づいて前記ガスが前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の少なくとも1つの構成要素の痕跡を含むか否かを決定するように適合された漏洩決定ユニット(4)、をさらに含み、前記痕跡が前記ガス中での前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素の存在を示し、前記分析に基づいて前記漏洩決定ユニット(4)により、前記ガスが前記少なくとも1つの電気化学セル(102)の前記少なくとも1つの構成要素の前記痕跡を含むと決定された場合、前記バッテリ(100)の前記バッテリ・エンクロージャ(101)内での或いは前記バッテリ・エンクロージャ(101)内にあるか又は前記バッテリ・エンクロージャ(101)から分離している前記少なくとも1つの電気化学セル(102)内での漏洩が検出される、装置(1)。
【請求項17】
前記ガスは空気である、請求項16に記載の装置。
【国際調査報告】