(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】均一な膨張を伴うバルーン拡張型送達システム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/958 20130101AFI20240822BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20240822BHJP
【FI】
A61F2/958
A61M25/10 530
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515517
(86)(22)【出願日】2022-09-08
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 US2022042893
(87)【国際公開番号】W WO2023039055
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン、ジェームズ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ハベル、ジョシュア ステファン
(72)【発明者】
【氏名】グローベンダー、アダム デイビッド
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA05
4C267AA09
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB08
4C267BB09
4C267BB30
4C267BB40
4C267GG03
4C267GG04
4C267GG05
4C267GG06
4C267GG07
4C267GG08
4C267GG09
4C267GG22
4C267GG23
4C267GG24
(57)【要約】
拡張可能な医療器具を送達するための送達システムが提供される。送達システムは、カテーテルシャフトと、カテーテルシャフトに結合された近位側ストップと、近位側ストップに結合されるとともに近位側ストップから遠位に延在する内側チューブと、内側チューブに結合された遠位側ストップと、遠位側ストップ、内側チューブ、および近位側ストップにわたって配置されたバルーンとを含む。内側チューブは膨張管腔を画定するとともに、内側チューブの側壁を貫通して膨張管腔内に延びる複数の開口部を有している。遠位側ストップは、遠位側ストップの側壁を貫通して管腔内に延びる少なくとも1つのチャネルを含む。遠位側ストップは、膨張流体が内側チューブおよび少なくとも1つのチャネルを介してバルーンの遠位領域内に流れることを可能にするように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張可能な医療装置のための送達システムであって、
カテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトに結合された近位側ストップと、
前記近位側ストップに結合されるとともに前記近位側ストップから遠位に延在する内側チューブであって、膨張管腔を画定するとともに、前記内側チューブの側壁を貫通して前記膨張管腔内に延びる複数の開口部を有する前記内側チューブと、
前記内側チューブに結合された遠位側ストップであって、管腔と、前記遠位側ストップの側壁を貫通して前記管腔内に延びる少なくとも1つのチャネルとを有する前記遠位側ストップと、
前記遠位側ストップ、前記内側チューブ、および前記近位側ストップにわたって配置された膨張可能なバルーンと、
を備え、
前記遠位側ストップは、膨張流体が前記内側チューブおよび前記少なくとも1つのチャネルを介して前記バルーンの遠位端領域内に流れることを可能にするように構成されている、送達システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのチャネルが前記遠位側ストップ内の前記管腔から前記遠位側ストップの外面における開口部まで傾斜して遠位に延在している、請求項1に記載の送達システム。
【請求項3】
前記開口部が前記バルーンの前記遠位端領域の下に位置している、請求項2に記載の送達システム。
【請求項4】
前記遠位側ストップの近位端が外向きに広がっており、前記内側チューブの外面と前記遠位側ストップの内面との間に遠位側ギャップを画定している、請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項5】
前記遠位側ストップの前記近位端が、前記遠位側ストップの長手方向軸から径方向外向きに傾斜した複数の離間したフィンガーを画定している、請求項4に記載の送達システム。
【請求項6】
前記内側チューブを貫通する前記複数の開口部が、前記内側チューブの近位端領域を貫通する近位側開口部と、前記内側チューブの遠位端領域を貫通する遠位側開口部とを含む、請求項5に記載の送達システム。
【請求項7】
前記近位端領域と前記遠位端領域との間の前記内側チューブの中央領域は開口部を有していない、請求項6に記載の送達システム。
【請求項8】
前記近位側ストップの遠位端が外向きに広がっており、前記内側チューブの外面と前記近位側ストップの内面との間に近位側ギャップを画定している、請求項6に記載の送達システム。
【請求項9】
前記内側チューブの遠位端が前記少なくとも1つのチャネルに隣接している、請求項8に記載の送達システム。
【請求項10】
前記内側チューブを貫通する前記複数の開口部のうちの少なくともいくつかが前記遠位側ギャップ内に位置するとともに、いくつかの開口部が前記近位側ギャップ内に位置している、請求項8に記載の送達システム。
【請求項11】
前記内側チューブの外面が、隆起した螺旋コイルを画定している、請求項1~10のうちのいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項12】
前記内側チューブの外面が、複数の長手方向溝を画定している、請求項1~10のうちのいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項13】
前記バルーンの近位側くびれ部が前記カテーテルシャフトに固定されており、前記バルーンの遠位側くびれ部が前記少なくとも1つのチャネルよりも遠位側で前記遠位側ストップに固定されている、請求項1~12のうちのいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項14】
前記近位側ストップと前記遠位側ストップとの間の前記内側チューブ上で前記バルーンに圧着された人工心臓弁をさらに備える請求項1~13のうちのいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項15】
拡張可能な医療装置のための送達システムであって、
カテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトに結合された近位側ストップと、
前記近位側ストップに結合された近位端を有し、膨張管腔を画定する内側チューブと、
前記内側チューブの遠位端に結合された遠位側ストップであって、前記遠位側ストップの側壁を貫通して延びるとともに前記内側チューブの前記膨張管腔と流体連通する少なくとも1つのチャネルを有する前記遠位側ストップと、
前記カテーテルシャフトに固定された近位端と、前記少なくとも1つのチャネルよりも遠位側で前記遠位側ストップに固定された遠位端とを有する膨張可能なバルーンと、
を備え、
前記内側チューブは、前記内側チューブの側壁を貫通する複数の開口部を含み、前記複数の開口部は、前記近位側ストップによって少なくとも部分的に覆われた前記内側チューブの近位端領域内の近位側開口部と、前記遠位側ストップによって少なくとも部分的に覆われた前記内側チューブの遠位端領域内の遠位側開口部とを含み、
前記近位側ストップおよび前記遠位側ストップは、前記バルーンの均一な膨張のために、膨張流体が、前記膨張管腔から前記近位側開口部および前記遠位側開口部を介して、さらには前記少なくとも1つのチャネルを介して、前記バルーンの近位領域および遠位領域に流れることを可能にするように構成されている、送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療装置に関し、より具体的には、バルーン拡張型医療装置送達システムおよびそのような医療装置を使用するための方法に関する。本出願は、2021年9月9日に出願された米国仮出願第63/242,206号の優先権の利益を主張するものであり、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
バルーン拡張型医療装置を送達および展開するための多種多様な医療処置および送達システムが開発されている。これらのシステムのいくつかは、ステントおよびステント要素を有する人工心臓弁を含む。これらの装置およびシステムは、種々の方法のうちのいずれか1つにしたがって使用され得る。既知の医療装置および方法の各々は、特定の利点および欠点を有する。代替的な医療装置およびシステム、ならびに医療装置を製造および使用するための代替的な方法を提供することが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、医療装置およびシステムのための設計、材料、製造方法、および使用代替物を提供する。拡張可能な医療装置のための例示的な送達システムは、カテーテルシャフトと、前記カテーテルシャフトに結合された近位側ストップと、前記近位側ストップに結合されるとともに前記近位側ストップから遠位に延在する内側チューブであって、膨張管腔を画定するとともに、前記内側チューブの側壁を貫通して前記膨張管腔内に延びる複数の開口部を有する前記内側チューブと、前記内側チューブに結合された遠位側ストップであって、管腔と、前記遠位側ストップの側壁を貫通して前記管腔内に延びる少なくとも1つのチャネルとを有する前記遠位側ストップと、前記遠位側ストップ、前記内側チューブ、および前記近位側ストップにわたって配置された膨張可能なバルーンと、を備え、前記遠位側ストップは、膨張流体が前記内側チューブおよび前記少なくとも1つのチャネルを介して前記バルーンの遠位端領域内に流れることを可能にするように構成されている。
【0004】
上記実施形態に対して代替的にまたは追加的に、前記少なくとも1つのチャネルは、前記遠位側ストップ内の前記管腔から前記遠位側ストップの外面における開口部まで傾斜して遠位に延在している。
【0005】
上記実施形態のいずれかに対して代替的にまたは追加的に、前記開口部は、前記バルーンの前記遠位端領域の下に位置している。
上記実施形態のいずれかに対して代替的にまたは追加的に、前記遠位側ストップの近位端は外向きに広がっており、前記内側チューブの外面と前記遠位側ストップの内面との間に遠位側ギャップを画定している。
【0006】
上記実施形態のいずれかに対して代替的にまたは追加的に、前記遠位側ストップの前記近位端は、前記遠位側ストップの長手方向軸から径方向外向きに傾斜して複数の離間したフィンガーを画定している。
【0007】
上記実施形態のいずれかに対して代替的にまたは追加的に、前記内側チューブを貫通する前記複数の開口部は、前記内側チューブの近位端領域を貫通する近位側開口部と、前記内側チューブの遠位端領域を貫通する遠位側開口部と、を含む。
【0008】
上記実施形態のいずれかに対して代替的にまたは追加的に、前記近位端領域と前記遠位端領域との間の前記内側チューブの中央領域は開口部を有していない。
上記実施形態のいずれかに対して代替的にまたは追加的に、前記近位側ストップの遠位端は外向きに広がっており、前記内側チューブの外面と前記近位側ストップの内面との間に近位側ギャップを画定している。
【0009】
上記実施形態のいずれかに対して代替的にまたは追加的に、前記内側チューブの遠位端は前記少なくとも1つのチャネルに隣接している。
上記実施形態のいずれかに対して代替的にまたは追加的に、前記内側チューブを貫通する前記複数の開口部のうちの少なくともいくつかは前記遠位側ギャップ内に位置しており、いくつかの開口部は前記近位側ギャップ内に位置している。
【0010】
上記実施形態のいずれかに対して代替的にまたは追加的に、前記内側チューブの外面は、隆起した螺旋コイルを画定している。
上記実施形態のいずれかに対して代替的にまたは追加的に、前記内側チューブの外面は、複数の長手方向溝を画定している。
【0011】
上記実施形態のいずれかに対して代替的にまたは追加的に、前記バルーンの近位側くびれ部は前記カテーテルシャフトに固定されており、前記バルーンの遠位側くびれ部は前記少なくとも1つのチャネルよりも遠位側で前記遠位側ストップに固定されている。
【0012】
上記実施形態のいずれかに対して代替的にまたは追加的に、前記送達システムは、前記近位側ストップと前記遠位側ストップとの間の前記内側チューブ上で前記バルーンに圧着された人工心臓弁をさらに含む。
【0013】
拡張可能な医療装置のための別の例示的な送達システムは、カテーテルシャフトと、前記カテーテルシャフトに結合された近位側ストップと、前記近位側ストップに結合された近位端を有し、膨張管腔を画定する内側チューブと、前記内側チューブの遠位端に結合された遠位側ストップであって、前記遠位側ストップの側壁を貫通して延びるとともに前記内側チューブの前記膨張管腔と流体連通する少なくとも1つのチャネルを有する前記遠位側ストップと、前記カテーテルシャフトに固定された近位端と、前記少なくとも1つのチャネルよりも遠位側で前記遠位側ストップに固定された遠位端と、を有する膨張可能なバルーンと、を含む。前記内側チューブは、前記内側チューブの側壁を貫通する複数の開口部を含み、前記複数の開口部は、前記近位側ストップによって少なくとも部分的に覆われた前記内側チューブの近位端領域内の近位側開口部と、前記遠位側ストップによって少なくとも部分的に覆われた前記内側チューブの遠位端領域内の遠位側開口部とを含み、前記近位側ストップおよび前記遠位側ストップは、前記バルーンの均一な膨張のために、膨張流体が、前記膨張管腔から前記近位側開口部および前記遠位側開口部を介して、さらには前記少なくとも1つのチャネルを介して、前記バルーンの近位領域および遠位領域に流れることを可能にするように構成されている。
【0014】
上記実施形態のいずれかに対して代替的にまたは追加的に、各チャネルは、前記遠位側ストップの内面から前記遠位側ストップの外面における開口部まで傾斜して遠位に延在している。
【0015】
上記実施形態のいずれかに対して代替的にまたは追加的に、前記遠位側ストップの近位端は外向きに広がっており、前記内側チューブの外面と前記遠位側ストップの内面との間に遠位側ギャップを画定し、前記内側チューブの前記遠位側開口部は前記遠位側ギャップ内に位置している。
【0016】
上記実施形態のいずれかに対して代替的にまたは追加的に、前記近位側ストップの遠位端は外向きに広がっており、前記内側チューブの外面と前記近位側ストップの内面との間に近位側ギャップを画定し、前記内側チューブの前記近位側開口部は前記近位側ギャップ内に位置している。
【0017】
上記実施形態のいずれかに対して代替的にまたは追加的に、前記内側チューブの外面は、隆起した螺旋コイルを画定している。
拡張可能な医療装置のためのさらなる例示的な送達システムは、カテーテルシャフトと、前記カテーテルシャフトに結合された近位側ストップと、前記近位側ストップに結合された内側チューブであって、前記内側チューブは膨張管腔を画定し、かつ、前記内側チューブは前記内側チューブの側壁を貫通して延びる複数の近位側開口部を有し、前記複数の近位側開口部のうちの少なくともいくつかが前記内側チューブの外面と前記近位側ストップの内面との間の近位側ギャップ内において前記近位側ストップの遠位端の下に位置している前記内側チューブと、前記内側チューブの遠位端に結合された管腔を有する遠位側ストップであって、前記遠位側ストップの側壁を貫通し、傾斜して遠位に延在する少なくとも1つのチャネルを有する前記遠位側ストップと、前記遠位側ストップ、前記内側チューブ、および前記近位側ストップにわたって配置された膨張可能なバルーンと、を含む。前記遠位側ストップは、膨張流体が前記内側チューブおよび前記少なくとも1つのチャネルを介して前記バルーンの遠位端領域内に流れることを可能にするように構成されている。
【0018】
上記したいくつかの実施形態、態様、および/または実施例の概要は、本開示の各実施形態またはすべての実装形態を説明することを意図するものではない。図面および詳細な説明は、これらの実施形態をより具体的に例示するものである。
【0019】
本開示は、添付の図面に関連した以下の様々な実施形態の詳細な説明を考慮することで、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、例示的なバルーン拡張型送達システムを例示する図である。
【
図3】
図3は、
図1の遠位側ストップおよびノーズコーンの断面図である。
【
図4】
図4は、
図1の遠位側ストップ、ノーズコーン、および内側チューブの一部の断面図である。
【
図5】
図5は、収縮したバルーン上に医療装置がクランプされている送達構成における
図1のシステムの断面図である。
【
図6】
図6は、拡張構成における
図5のシステムの断面図である。
【
図8】
図8は、別の例示的な内側チューブの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の態様は、種々の変更形態および代替形態が可能であるが、本開示の特定の形態が図面において例として示されており、以下で詳細に説明される。しかしながら、以下に説明する特定の実施形態に本開示の態様を限定することを意図しない。さらには、本開示の思想および範囲に含まれるすべての変更形態、均等物、および代替形態を包含することが意図される。
【0022】
以下に定義する用語について、特許請求の範囲または本明細書の他の箇所において異なる定義が与えられない限り、これらの定義が適用されるものとする。
すべての数値は、本明細書において明示的に示されているか否かにかかわらず、用語「約」によって修飾されていると仮定される。用語「約」は、数値の文脈において、列挙された値と同等である(例えば、同じ機能または結果を有する)と当業者が一般に考え得る数値の範囲を指す。多くの場合、用語「約」は、最も近い有効数字に丸められた数を含み得る。用語「約」の(例えば、数値以外の文脈における)他の使用は、別段の指定がない限り、本明細書の文脈から理解されるとともにその文脈と一致するそれらの通常の慣例的な定義(1つまたは複数)を有するものと仮定され得る。
【0023】
端点による数値範囲の列挙は、端点を含むその範囲内のすべての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)。種々の構成要素、特徴、および/または仕様に関するいくつかの好適な寸法、範囲、および/または値が開示されるが、本開示に触れた当業者は、所望の寸法、範囲、および/または値が、明示的に開示されたものから逸脱し得ることを理解し得る。
【0024】
本明細書および特許請求の範囲において使用される「1つ」という単数形は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。本明細書および特許請求の範囲で使用される用語「または」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、一般に「および/または」を含む意味で用いられる。なお、理解を容易にするために、本開示のいくつかの特徴は、それらの特徴が開示された実施形態(1つまたは複数)において複数または繰り返しであり得る場合であっても、単数形で説明される場合がある。特徴の各例は、明示的に反対のことが述べられていない限り、単数の開示を含み得るおよび/または単数の開示によって包含され得る。簡潔かつ明確にするために、本開示のすべての要素が必ずしも各図に示されているわけではなく、あるいは以下で詳細に説明されるわけではない。しかしながら、以下の説明は、明示的に反対のことが述べられていない限り、2つ以上存在する複数の構成要素のうちのいずれかおよび/またはすべてに等しく適用され得ることが理解され得る。また、明確にするために、いくつかの要素または特徴のすべての例が各図に示されているわけではない。
【0025】
「近位」、「遠位」、「前進」、「後退」、それらの変形語などの相対的用語は、概して、装置のユーザ/オペレータ/操縦者に対する種々の要素の位置付け、方向、および/または動作に関して考慮され得るものであり、「近位」および「後退」は、ユーザにより近い、またはユーザに向かうことを示すかあるいはそれを指し、「遠位」および「前進」は、ユーザからより遠い、またはユーザから離れることを示すかあるいはそれを指す。いくつかの例において、「近位」および「遠位」という用語は、本開示の理解を容易にするために任意に割り当てられ得るものであり、そのような例は、当業者に容易に明らかとなり得る。「上流」、「下流」、「流入」、「流出」などの他の相対的用語は、体管腔、血管などの管腔内、または装置内の流体の流れの方向を指す。
【0026】
用語「範囲」は、対象とする範囲または寸法が、記載または識別された寸法の最小測定値を意味すると理解され得る「最小」によって先行されるかあるいは「最小」として特定されない限り、記載または特定された寸法の最大測定値を意味すると理解され得る。例えば、「外側範囲」は、最大外側寸法を意味すると理解され得る。また、例えば、「径方向範囲」は、最大半径方向寸法を意味すると理解され得る。また、例えば、「長手方向範囲」は、最大長手方向寸法を意味すると理解され得る。「範囲」の各例は様々(例えば、軸方向、長手方向、横方向、径方向、周方向など)であってよく、個々の使用の文脈から当業者には明らかであり得る。概して、「範囲」は、意図された使用にしたがって測定された最大の可能な寸法と考えることができ、「最小範囲」は、意図された使用にしたがって測定された最小の可能な寸法と考えることができる。いくつかの例において、「範囲」は、概して、平面内および/または断面内で直角に測定され得るが、特定の文脈から明らかとなり得るように、ある角度で、径方向に、周方向に(例えば、弧に沿って)などのように、これらに限定されることなく様々に測定され得る。
【0027】
用語「モノリシック」および「単一」は、概して、単一の構造またはベースユニット/要素から作製されるあるいはそれからなる1つまたは複数の要素を指す。モノリシックおよび/または単一の要素は、複数の別個の要素を一緒に組み立てるかまたは接合することによって作製される構造および/または機構を除外するものとする。
【0028】
なお、本明細書における「実施形態」、「いくつかの実施形態」、「他の実施形態」などへの言及は、説明される実施形態が特定の特徴、構造、または特性を含み得るが、すべての実施形態が必ずしもその特定の特徴、構造、または特性を含まないことを示す。また、そのような語句は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、ある実施形態に関連して特定の特徴、構造、または特性が記載されている場合、明示的に記載されているか否かにかかわらず、明確に反対のことが述べられていない限り、他の実施形態に関連して特定の特徴、構造、または特性をもたらすことを当業者ならば認識し得る。すなわち、以下に記載される様々な個々の要素は、特定の組み合わせで明示的に示されていない場合であっても、当業者ならば理解し得るように、他の追加の実施形態を形成するために、あるいは記載された実施形態を補完および/または強化するために、互いに組み合わせ可能または互いに配置可能であることが意図される。
【0029】
明確化を目的として、明細書および/または特許請求の範囲の全体を通じて、ある特定の数値命名法(例えば、第1、第2、第3、第4など)が、様々な説明される特徴同士および/または特許請求の範囲の特徴同士を命名および/または区別するために使用され得る。この数値命名法は、限定を意図するものではなく、単なる例示である。いくつかの実施形態では、簡潔化および明確化のために、先行使用された数値命名法の変更およびそれからの逸脱が行われる場合がある。すなわち、「第1の」要素として識別された特徴が、後に「第2の」要素、「第3の」要素などと称される場合、あるいは完全に省略される場合があり、および/または異なる特徴が「第1の」要素と称される場合がある。各例における意味および/または指定は、当業者ならば明らかとなり得る。
【0030】
以下の説明は図面を参照して読まれるべきものであり、図面は必ずしも縮尺通りではないが、異なる図面において同様の要素には同じ番号が付されている。詳細な説明および図面は、本開示を限定するのではなく、例示することを意図している。当業者ならば、説明および/または図示された様々な要素が、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な組み合わせおよび構成で配置され得ることを認識し得る。詳細な説明および図面は、本開示の例示的な実施形態を示す。しかしながら、明確化および理解の容易化のために、すべての特徴および/または要素が各図面に示されていない場合があり、特徴および/または要素は、別段の指定がない限り、関係なく存在することが理解され得る。
【0031】
ステントまたは置換心臓弁などのバルーン拡張型医療装置を送達することは、医療装置の展開を達成するためにバルーンを膨張させることを必要とする。医療装置の正確な配置は、バルーンの均一なまたは対称的な膨張に依存し得る。多くのバルーンカテーテルは、バルーンの近位端で終端する膨張管腔からバルーンを膨張させることに依存しており、これは結果としてバルーンの近位端が遠位端よりも先に膨張するものとなる。したがって、医療装置は近位から遠位への向きで展開され得るものとなり、これは医療装置の望ましくない留置をもたらし得る。膨張管腔がバルーン内に配置される流体ポートを有する場合でも、装置が該装置下の膨張ポートを塞ぐ場合にはバルーンの近位端が最初に膨張することとなり、膨張管腔上にクランプまたは圧着された医療装置の対称的な展開が達成されない場合がある。特に、経カテーテル大動脈弁移植(TAVI)などにおいて置換心臓弁を展開するとき、適切な位置合わせが望まれる。非対称的なバルーン膨張は、展開中に弁の位置合わせ不良をもたらし得る。
【0032】
図1は、バルーン拡張型医療装置を展開するための例示的な送達システム100のいくつかの要素を示す。送達システム100は、カテーテルシャフト105と、カテーテルシャフトに結合された近位側ストップ130と、近位側ストップ130に結合された内側チューブ110と、内側チューブ110の遠位端に結合された遠位側ストップ120とを含み得る。ノーズコーン150は、遠位側ストップ120の遠位端に結合され得る。膨張可能なバルーン140は、遠位側ストップ120、内側チューブ110、および近位側ストップ130にわたって配置され得る。遠位側ストップ120は、膨張流体をバルーン140の遠位端領域142に送達するように構成された少なくとも1つのチャネル122を含み得る。バルーン140の遠位側ネックは、チャネル122よりも遠位の位置で遠位側ストップ120に結合され得る。いくつかの実施形態では、バルーン140の遠位側ネックは、遠位側ストップ120の拡大遠位端領域127に結合され得る。近位側歪み緩和要素107は、近位側ストップ130の近位端およびカテーテルシャフト105に結合され得る。バルーン140の近位側ネックは、歪み緩和要素107またはカテーテルシャフト105に結合され得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のマーカーバンド109が、遠位側ストップ120、近位側ストップ130、または送達システムの任意の他の領域上に設けられ得る。
【0033】
図2には遠位側ストップ120の詳細が示されている。遠位側ストップ120は、内側チューブ110の遠位端を受容するように構成された管腔121と、外面における開口部123から側壁を貫通して管腔121内に延びる少なくとも1つのチャネル122とを画定し得る。
図2に示された例では、遠位側ストップ120は、外周の周りに離間した3つのチャネル122を有している。遠位側ストップ120は、バルーンの遠位側ネックが接合され得る拡大遠位端領域127を有し得る。遠位側ストップ120の近位端124は外向きに広がる形状であってよい。また、遠位側ストップ120は、該遠位側ストップの長手方向軸から径方向外向きに傾斜した複数の離間したフィンガー125を含み得る。いくつかの実施形態において、フィンガー125は圧縮性を有していてよく、軟質エラストマー材料から作製され得る。一例において、フィンガー125を含む遠位側ストップ120は、65~75のショアDを有する材料から作製され得る。例示的な材料は、3D印刷においてしばしば使用される、71のショアDを有する可撓性ポリウレタン(FPU50)である。
【0034】
図3の断面図は、
図2に示された遠位側ストップ120の管腔121および1つのチャネル122を示す。各チャネル122は、管腔121から遠位側ストップ120の外面における開口部123まで傾斜して遠位に延在し得る。また、遠位側ストップ120は、該遠位側ストップの長さに沿って延在するガイドワイヤ管腔129を画定し得る。遠位端は、ノーズコーン150に係合するように構成された係合要素128を含み得る。いくつかの実施形態において、係合要素128は、ノーズコーン150とのスナップ嵌めを提供するように構成された1つまたは複数のリッジを含む。他の実施形態では、係合要素128は、ノーズコーン上のねじ切りと嵌合するように構成されたねじ切りを含み得る。任意のスナップ嵌めまたはねじ接続に加えて、またはその代替として、接着剤またはポリマー結合がノーズコーン150を遠位側ストップ120上に固定するために使用され得る。
【0035】
図4には、内側チューブ110の遠位端がチャネル122に隣接した状態で遠位側ストップ120の管腔内に挿入されていることが示されている。内側チューブ110は、膨張管腔111と、側壁を貫通して膨張管腔111内に延びる複数の開口部112とを画定し得る。チャネル122は、膨張管腔111の遠位端と流体連通することで、膨張流体が内側チューブ110の遠位端から流出し、チャネル122を介してバルーンの遠位端領域142内に移動することを可能にする。広がった形状を有する遠位側ストップの近位端124は、内側チューブ110の外面と遠位側ストップの内面との間に遠位側ギャップ126を画定し得る。いくつかの実施形態において、複数の開口部112のうちの少なくともいくつかは遠位側ストップによって少なくとも部分的に覆われ得る一方、遠位側ギャップ126は、開口部112から流出した膨張流体が内側チューブ110の外面に沿って近位に流動し、バルーン内に流入するための空間を提供し得る。
【0036】
図5は、収縮されたバルーン140と、近位側ストップ130と遠位側ストップ120との間の内側チューブ110上でそのバルーンに対して押し付けられた医療装置170とを備える送達システム100を示す。遠位側ストップ120および近位側ストップ130は、医療装置170に重なるようには構成されておらず、および/または医療装置170を保持するようには構成されていない。医療装置170は、バルーン140および内側チューブ110の周囲に圧着または押し付けられることによって定位置に保持されている。内側チューブ110の近位端は、近位側ストップ130内に配置され得る。内側チューブ110を貫通する複数の開口部112は、該内側チューブの近位端領域を貫通する近位側開口部112Pと、該内側チューブの遠位端領域を貫通する遠位側開口部112Dとを含み得る。近位側ストップ130の遠位端134は、内側チューブ110の外面と近位側ストップ130の内面との間に近位側ギャップ136を画定する外向きに広がる形状であってよい。いくつかの実施形態において、近位側開口部112Pのうちの少なくともいくつかは近位側ストップ130によって少なくとも部分的に覆われ得る一方、近位側ギャップ136は、近位側開口部112Pから流出した膨張流体が内側チューブ110の外面に沿って遠位に流動し、バルーン内に流入するための空間を提供し得る。内側チューブを貫通する遠位側開口部112Dのうちの少なくともいくつかは遠位側ギャップ126内に位置し得る。また、いくつかの近位側開口部112Pは近位側ギャップ136内に位置し得る。いくつかの実施形態において、内側チューブの近位端領域と遠位端領域との間の内側チューブ110の中央領域114は、いかなる開口部も有していなくてよい。
【0037】
図6には、膨張中に内側チューブ110を介してバルーン140内に移動する膨張流体の方向が示されている。矢印200は、遠位側開口部112Dから流出し、遠位側ギャップを介してバルーン内へ移動する膨張流体の方向を示している。矢印205は、近位側開口部112Pから流出し、近位側ギャップを介してバルーン内へ移動する膨張流体の方向を示している。矢印207は、バルーンの遠位端領域142の下に位置するチャネルの開口部123から流出する膨張流体の方向を示している。遠位側開口部112Dとチャネル122との組み合わせにより膨張流体がバルーンの遠位端に提供される。近位側開口部112Pから流出する膨張流体に加えて、この遠位に方向付けられた膨張流体は、バルーン140を対称的に膨張させて該バルーンの遠位領域および近位領域を同時に膨張させ得る。
【0038】
図1および
図4~
図6に示された内側チューブ110の外面は滑らかなものであるが、この外面は任意の表面構造を有し得る。
図7A~
図7Cは、内側チューブ110の様々な表面構造を示す。
図7Aに示されるように、いくつかの実施形態において、内側チューブ210の外面は、隆起した螺旋コイルを画定し得る。この隆起したコイルは、押し付けられた医療装置の装置保持の改善をもたらすことができる。また、この隆起したコイルは、医療装置170が内側チューブ210上に押し付けられたときに内側チューブが押しつぶされないように柱強度および圧縮抵抗を増大させることができる。
図7Bに示された実施形態では、内側チューブ310の外面は、複数の長手方向溝を画定している。これらの溝は、柱強度および圧縮抵抗の増大をもたらすことに加えて、膨張流体の流動を方向付けるためのチャネルとして作用し得る。
図7Cは、内側チューブの外面410が複数のバンプまたは突起を画定する実施形態を示す。複数の溝および複数の隆起または突起は、柱強度および圧縮抵抗の増大をもたらし、システム上への医療装置の押圧中に内側チューブが損傷することを防止し得る。
【0039】
図7A~
図7Cに示された表面構造に加えて、またはその代替として、内側チューブ510は、側壁を貫通して管腔内に延びる複数の開口部512を有し得る。これらの開口部512は、上述した内側チューブ110の開口部112に追加されてもよいし、またはその代替とされてもよい。
図8に示されるように、開口部512は、内側チューブ510の全長に沿って延在してもよいし、あるいは遠位領域および/または端部領域上のみに存在してもよい。
【0040】
なお、上記の例に関連して説明した寸法および角度は例示的なものにすぎず、遷移区域の他の寸法および角度も意図される。本明細書に開示された送達システム(および/または本明細書に開示された他のシステムもしくは構成要素)の種々の構成要素およびそれらの構成要素の種々の要素に使用可能な材料は、一般に医療装置と関連したものを含み得る。以下の説明では、簡潔化のために、送達システム100(および本明細書に開示された変形例、システム、または構成要素)を参照する。しかしながら、これは本明細書に記載された装置および方法を限定することを意図しておらず、この説明は、本明細書に開示された他の要素、部材、構成要素、または装置にも適用可能である。
【0041】
いくつかの実施形態において、遠位側ストップ120、内側チューブ110、近位側ストップ130、および近位側歪み緩和要素107は、多くの場合、3D印刷で使用される、可撓性ポリウレタン(FPU50)などの71のショアDを有する材料から作製され得る。遠位側のノーズコーン150、およびいくつかの実施形態における内側チューブ110は、ポリウレタンエラストマーEPU40などの70のショアAを有する熱可塑性ポリウレタンから作製され得る。
【0042】
いくつかの実施形態において、送達システム100(および本明細書に開示されたその変形例、システム、または構成要素)の部分は、金属、金属合金、ポリマー(そのいくつかの例が以下に開示される)、金属-ポリマー複合材、それらの組み合わせ、または他の好適な材料等から作製され得る。好適な金属および金属合金のいくつかの例には、444V、444L、および314LVステンレス鋼などのステンレス鋼、軟鋼、線形弾性および/または超弾性ニチノールなどのニッケル-チタン合金、コバルトクロム合金、チタンおよびその合金、アルミナ、ダイヤモンド状コーティング(DLC)または窒化チタンコーティングを有する金属、ニッケル-クロム-モリブデン合金などの他のニッケル合金(例えば、INCONEL(登録商標)625などのUNS:N06625、HASTELLOY(登録商標)C-22(登録商標)などのUNS:N06022、HASTELLOY(登録商標)C276(登録商標)などのUNS:N10276、他のHASTELLOY(登録商標)合金など)、ニッケル-銅合金(例えば、MONEL(登録商標)400などのUNS:N04400、NICKELVAC(登録商標)400、NICORROS(登録商標)400など)、ニッケル-コバルト-クロム-モリブデン合金(例えば、MP35-N(登録商標)などのUNS:R44035など)、ニッケル-モリブデン合金(例えば、HASTELLOY(登録商標)ALLOY B2(登録商標)などのUNS:N10665など)、他のニッケル-クロム合金、他のニッケル-モリブデン合金、他のニッケル-コバルト合金、他のニッケル-鉄合金、他のニッケル-銅合金、他のニッケル-タングステンまたはタングステン合金、コバルト-クロム合金、コバルト-クロム-モリブデン合金(例えば、ELGILOY(登録商標)、PHYNOX(登録商標)などのUNS:R44003など)、白金富化ステンレス鋼、チタン、白金、パラジウム、金、これらの組み合わせ、又は他の任意の好適な材料が含まれる。
【0043】
本明細書で言及されるように、市販のニッケル-チタンまたはニチノール合金のファミリーには、「線形弾性」または「非超弾性」と呼ばれる部類の、従来の形状記憶性および超弾性の種類に化学的には類似するが、種類が異なる有用な機械的性質を示し得るものがある。線形弾性および/または非超弾性ニチノールは、その応力/歪み曲線において超弾性ニチノールが示すような実質的な「超弾性プラトー」または「フラグ領域」を示さないという点において、超弾性ニチノールとは区別され得る。その代わりに、線形弾性および/または非超弾性ニチノールは、復元可能な歪みが増加するにつれて実質的に線形に、または必ずしも完全な線形ではないが幾分か線形の関係で、塑性変形が始まるまで、あるいは少なくとも超弾性ニチノールに見られる超弾性プラトーおよび/またはフラグ領域よりも線形の関係で、応力が増加し続ける。したがって、本開示の目的のために、線形弾性および/または非超弾性ニチノールは、「実質的に」線形弾性および/または非超弾性ニチノールとも呼ばれ得る。
【0044】
いくつかの場合において、超弾性ニチノールは塑性変形前に最大約8%の歪みを許容し得るのに対して、線形弾性および/または非超弾性ニチノールは、実質的に弾性を維持しながら(例えば、塑性変形前に)最大約2~5%の歪みを許容し得るという点で、超弾性ニチノールと区別され得る。これらの材料はともに、塑性変形前に約0.2~0.44パーセントの歪みしか許容し得ないステンレス鋼などの他の線形弾性材料とは区別され得る(これは、その組成に基づいても区別され得る)。
【0045】
いくつかの実施形態において、線形弾性および/または非超弾性ニッケル-チタン合金は、広い温度範囲にわたって示差走査熱量測定(DSC)および動的金属熱分析(DMTA)によって検出可能な、いかなるマルテンサイト/オーステナイト相変化をも示さない合金である。例えば、いくつかの実施形態において、線形弾性および/または非超弾性ニッケル-チタン合金は、約-60度(℃)~約120℃の範囲でDSCおよびDMTAによって検出可能なマルテンサイト/オーステナイト相変化が存在しない。したがって、このような材料の機械的曲げ特性は一般に、この非常に広い温度範囲にわたって温度の影響をほとんど受けない場合がある。いくつかの実施形態において、周囲温度または室温における線形弾性および/または非超弾性ニッケル-チタン合金の機械的曲げ特性は、例えばそれらが超弾性プラトーおよび/またはフラグ領域を示さないという点において、体温における機械的特性と実質的に同じである。例えば、線形弾性および/または非超弾性ニッケル-チタン合金は、広い温度範囲にわたって、その線形弾性および/または非超弾性の特性および/または性質を維持する。
【0046】
いくつかの実施形態において、線形弾性および/または非超弾性ニッケル-チタン合金は、約50~約60重量パーセントの範囲でニッケルであってよく、残りは本質的にチタンである。いくつかの実施形態では、その組成は、約54~約57重量パーセントの範囲でニッケルである。好適なニッケル-チタン合金の一例は、日本国神奈川県に所在する古河テクノマテリアル社から市販されているFHP-NT合金である。他の好適な材料としては、ULTANIUM(商標)(ネオメトリクス(Neo-Metrics)社から入手可能)およびGUM METAL(商標)(豊田(Toyota)社から入手可能)を挙げることができる。いくつかの他の実施形態において、超弾性合金、例えば超弾性ニチノールは、所望の特性を達成するために使用され得る。
【0047】
少なくともいくつかの実施形態において、送達システム100(および本明細書に開示されたその変形例、システム、または構成要素)の一部または全部は、放射線不透過性材料が添加されるか、その材料から作製されるか、またはその材料を含み得る。放射線不透過性材料は、医療処置中にX線透視スクリーンまたは別の画像化技術で比較的明るい画像を生成することができる材料として知られている。この比較的明るい画像は、送達システム100(および本明細書に開示されたその変形例、システム、または構成要素)の場所を決定する際にユーザの助けとなる。放射線不透過性材料のいくつかの例としては、金、白金、パラジウム、タンタル、タングステン合金、放射線不透過性充填剤が添加されたポリマー材料等を挙げることができるが、それらに限定されない。また、同様の結果を達成するために、送達システム100(および本明細書に開示されたその変形例、システム、または構成要素)の設計に他の放射線不透過性マーカーバンドおよび/またはコイルが組み込まれてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態において、送達システム100(および本明細書に開示されたその変形例、システム、または構成要素)および/またはその一部は、ポリマーまたは他の好適な材料から作製されるか、またはそれを含み得る。好適なポリマーのいくつかの例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリオキシメチレン(POM、例えば、デュポン(DuPont)社から入手可能なDELRIN(登録商標))、ポリエーテルブロックエステル、ポリウレタン(例えば、ポリウレタン85A)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテル-エステル(例えば、DSMエンジニアリングプラスチック(DSM Engineering Plastics)社から入手可能なARNITEL(登録商標))、エーテルまたはエステル系コポリマー(例えば、ブチレン/ポリ(アルキレンエーテル)フタレート、および/またはデュポン社から入手可能なHYTREL(登録商標)などの他のポリエステルエラストマー)、ポリアミド(例えば、バイエル(Bayer)社から入手可能なDURETHAN(登録商標)またはエルフアトケム(Elf Atochem)社から入手可能なCRISTAMID(登録商標))、エラストマーポリアミド、ブロックポリアミド/エーテル、ポリエーテルブロックアミド(PEBA、例えば、PEBAX(登録商標)の商品名で入手可能)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、シリコーン、ポリエチレン(PE)、Marlex(登録商標)高密度ポリエチレン、Marlex(登録商標)低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(例えば、REXELL(登録商標))、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(例えば、KEVLAR(登録商標))、ポリスルホン、ナイロン、ナイロン-12(EMSアメリカングリロン(EMS American Grilon)社から入手可能なGRILAMID(登録商標)など)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PFA)、エチレンビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリスチレン、エポキシ、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)(例えば、SIBSおよび/またはSIBS50A)、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリウレタンシリコーンコポリマー(例えば、エイオールテックバイオマテリアル(AorTech Biomaterials)社のElast-Eon(登録商標)またはアドバンソースバイオマテリアル(AdvanSource Biomaterials)社のChronoSil(登録商標))、生体適合性ポリマー、他の好適な材料、これらの混合物や組み合わせやコポリマー、ポリマー/金属複合材料等が含まれ得る。いくつかの実施形態において、シースは、液晶ポリマー(LCP)と混合可能である。例えば、混合物は最大約6%のLCPを含有可能である。
【0049】
本開示は、多くの点で単なる例示であると理解されるべきである。本開示の範囲を超えることなく、特に形状、サイズ、および段の配置に関して細部において変更が行われ得る。これは適切な範囲において、ある例示的な実施形態の任意の特徴が他の実施形態で使用されることを含み得る。本開示の範囲は当然ながら、添付の特許請求の範囲の文言により定義される。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張可能な医療装置のための送達システムであって、
カテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトに結合された近位側ストップと、
前記近位側ストップに結合されるとともに前記近位側ストップから遠位に延在する内側チューブであって、膨張管腔を画定するとともに、前記内側チューブの側壁を貫通して前記膨張管腔内に延びる複数の開口部を有する前記内側チューブと、
前記内側チューブに結合された遠位側ストップであって、管腔と、前記遠位側ストップの側壁を貫通して前記管腔内に延びる少なくとも1つのチャネルとを有する前記遠位側ストップと、
前記遠位側ストップ、前記内側チューブ、および前記近位側ストップにわたって配置された膨張可能なバルーンと、
を備え、
前記遠位側ストップは、膨張流体が前記内側チューブおよび前記少なくとも1つのチャネルを介して前記バルーンの遠位端領域内に流れることを可能にするように構成されている、送達システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのチャネルが前記遠位側ストップ内の前記管腔から前記遠位側ストップの外面における開口部まで傾斜して遠位に延在している、請求項1に記載の送達システム。
【請求項3】
前記開口部が前記バルーンの前記遠位端領域の下に位置している、請求項2に記載の送達システム。
【請求項4】
前記遠位側ストップの近位端が外向きに広がっており、前記内側チューブの外面と前記遠位側ストップの内面との間に遠位側ギャップを画定している、
請求項1に記載の送達システム。
【請求項5】
前記遠位側ストップの前記近位端が、前記遠位側ストップの長手方向軸から径方向外向きに傾斜した複数の離間したフィンガーを画定している、請求項4に記載の送達システム。
【請求項6】
前記内側チューブを貫通する前記複数の開口部が、前記内側チューブの近位端領域を貫通する近位側開口部と、前記内側チューブの遠位端領域を貫通する遠位側開口部とを含む、請求項5に記載の送達システム。
【請求項7】
前記近位端領域と前記遠位端領域との間の前記内側チューブの中央領域は開口部を有していない、請求項6に記載の送達システム。
【請求項8】
前記近位側ストップの遠位端が外向きに広がっており、前記内側チューブの外面と前記近位側ストップの内面との間に近位側ギャップを画定している、請求項6に記載の送達システム。
【請求項9】
前記内側チューブの遠位端が前記少なくとも1つのチャネルに隣接している、請求項8に記載の送達システム。
【請求項10】
前記内側チューブを貫通する前記複数の開口部のうちの少なくともいくつかが前記遠位側ギャップ内に位置するとともに、いくつかの開口部が前記近位側ギャップ内に位置している、請求項8に記載の送達システム。
【請求項11】
前記内側チューブの外面が、隆起した螺旋コイルを画定している、
請求項1に記載の送達システム。
【請求項12】
前記内側チューブの外面が、複数の長手方向溝を画定している、
請求項1に記載の送達システム。
【請求項13】
前記バルーンの近位側くびれ部が前記カテーテルシャフトに固定されており、前記バルーンの遠位側くびれ部が前記少なくとも1つのチャネルよりも遠位側で前記遠位側ストップに固定されている、
請求項1に記載の送達システム。
【請求項14】
前記近位側ストップと前記遠位側ストップとの間の前記内側チューブ上で前記バルーンに圧着された人工心臓弁をさらに備える請求項1~13のうちのいずれか一項に記載の送達システム。
【請求項15】
拡張可能な医療装置のための送達システムであって、
カテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトに結合された近位側ストップと、
前記近位側ストップに結合された近位端を有し、膨張管腔を画定する内側チューブと、
前記内側チューブの遠位端に結合された遠位側ストップであって、前記遠位側ストップの側壁を貫通して延びるとともに前記内側チューブの前記膨張管腔と流体連通する少なくとも1つのチャネルを有する前記遠位側ストップと、
前記カテーテルシャフトに固定された近位端と、前記少なくとも1つのチャネルよりも遠位側で前記遠位側ストップに固定された遠位端とを有する膨張可能なバルーンと、
を備え、
前記内側チューブは、前記内側チューブの側壁を貫通する複数の開口部を含み、前記複数の開口部は、前記近位側ストップによって少なくとも部分的に覆われた前記内側チューブの近位端領域内の近位側開口部と、前記遠位側ストップによって少なくとも部分的に覆われた前記内側チューブの遠位端領域内の遠位側開口部とを含み、
前記近位側ストップおよび前記遠位側ストップは、前記バルーンの均一な膨張のために、膨張流体が、前記膨張管腔から前記近位側開口部および前記遠位側開口部を介して、さらには前記少なくとも1つのチャネルを介して、前記バルーンの近位領域および遠位領域に流れることを可能にするように構成されている、送達システム。
【国際調査報告】