(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】反応器をフラッシングする方法
(51)【国際特許分類】
C07C 7/00 20060101AFI20240822BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20240822BHJP
C08F 2/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C07C7/00
C08F10/00 510
C08F2/00 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515522
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2022074712
(87)【国際公開番号】W WO2023036767
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(71)【出願人】
【識別番号】507055615
【氏名又は名称】リンデ・ゲー・エム・ベー・ハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カディア,スプラユディ・エス
(72)【発明者】
【氏名】ムタイリ-アル,ヤッセル・バッタル
(72)【発明者】
【氏名】ザイーディ-アル,アブドゥラ・エイチ
【テーマコード(参考)】
4H006
4J011
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AD10
4H006BB11
4H006BD80
4J011EA03
4J011EA09
4J011EC09
(57)【要約】
本開示は、反応器の底部近傍にある気体分配器と、反応器の最上部近傍にある内部凝縮器とを含む反応器から、ポリマーのファウリングを除去するためのフラッシング方法であって、第1のフラッシング期間にわたり、フラッシング溶媒を反応器内に注入するステップ、フラッシング溶媒の上昇移動を誘発させるように、内部凝縮器近傍の反応器出口からフラッシング溶媒を引き出すステップ、ここで、引き出されたフラッシング溶媒は第1のポリマー含量を含むこと、を含む方法を提供する。第1のフラッシング期間が完了した後、第2のフラッシング期間にわたり、方法は、フラッシング溶媒を反応器内に注入し、フラッシング溶媒の下降移動を誘発させるように、フラッシング溶媒を、気体分配器近傍の反応器出口から引き出すステップを含み、この引き出されたフラッシング溶媒は第2のポリマー含量を含有するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器の底部近傍にある気体分配器と、反応器の最上部近傍にある内部凝縮器とを含む反応器から、ポリマーのファウリングを除去するためのフラッシング方法であって、
(a) 気体分配器と内部凝縮器との間の位置で、反応器内にフラッシング溶媒を注入するステップ、
(b) 反応器内でフラッシング溶媒の上昇移動を誘発させるように、内部凝縮器近傍の反応器出口からフラッシング溶媒を引き出すステップ、ここで、引き出されたフラッシング溶媒が第1のポリマー含量を含有し、
(c) (a)注入するステップ及び(b)引き出すステップを、第1のフラッシング期間にわたり継続するステップ、
(d) 第1のフラッシング期間が完了した後、フラッシング溶媒を、気体分配器と内部凝縮器との間の位置で反応器内に注入するステップ、
(e) 反応器内でフラッシング溶媒の下降移動を誘発させるように、フラッシング溶媒を、気体分配器近傍の反応器出口から引き出すステップ、ここで、引き出されたフラッシング溶媒が第2のポリマー含量を含有し、及び
(f) (d)注入するステップ及び(e)引き出すステップを、第2のフラッシング期間にわたり継続するステップ
を含む、フラッシング方法。
【請求項2】
反応器内に注入されたフラッシング溶媒が、約150℃又はそれよりも高い温度及び大気圧よりも上の圧力である、請求項1に記載のフラッシング方法。
【請求項3】
反応器が、ノーマル生成モード及びフラッシングモードで動作し、フラッシング方法がフラッシングモード中に行われる、請求項1又は2のいずれか一項に記載のフラッシング方法。
【請求項4】
凝縮器近傍の差圧及び気体分配器近傍の差圧の1つ又は両方が、ノーマル生成モード中にモニターされ、フラッシングモードは、ノーマル生成モード中に所定の閾値まで上昇するいずれかの差圧に基づいて開始される、請求項3に記載のフラッシング方法。
【請求項5】
凝縮器近傍の差圧に関する所定の閾値が、約50mbar若しくはそれよりも高く、及び/又は気体分配機器近傍の差圧に関する所定の閾値が、約10mbar若しくはそれよりも高い、請求項4に記載のフラッシング方法。
【請求項6】
反応器が、エチレンオリゴマー化気泡塔反応器であり、ノーマル生成モードが、エチレンガスを気体分配器に通して溶媒及び触媒を含む液体混合物中にバブリングすることにより少なくとも1種の直鎖アルファオレフィンを含む反応生成物を生成すること、及び直鎖アルファオレフィンを含む生成物流を反応器から引き出すことを含み、ポリマーのファウリングがポリエチレンを含む、請求項4に記載のフラッシング方法。
【請求項7】
反応器に注入されたフラッシング溶媒が、フラッシング溶媒タンクから注入され、任意選択的にフラッシング溶媒タンク内のフラッシング溶媒中の初期ポリマー濃度が、フラッシング方法の開始時に約200ppm以下である、請求項1~6のいずれかに記載のフラッシング方法。
【請求項8】
フラッシング溶媒タンク内のフラッシング溶媒が、フラッシング方法の間、約5.0~約6.0bargの間の圧力及び約150~約160℃の温度の1つ又は両方で維持される、請求項7に記載のフラッシング方法。
【請求項9】
第1のポリマー含量を含有する、引き出されたフラッシング溶媒と、第2のポリマー含量を含有する、引き出されたフラッシング溶媒とを処理して、フラッシング溶媒をポリマー含量の少なくとも一部から分離し、フラッシング溶媒を、当該処理後にフラッシング溶媒タンクにリサイクルすることをさらに含む、請求項7に記載のフラッシング方法。
【請求項10】
前記処理が、引き出されたフラッシング溶媒を1つ以上の蒸留塔に通すことを含む、請求項9に記載のフラッシング方法。
【請求項11】
フラッシング方法の間、フラッシング溶媒タンク中のポリマー濃度をモニタリングすること、及び新鮮なフラッシング溶媒をフラッシング溶媒タンク内に導入して、フラッシング溶媒タンク中のポリマー濃度を約200ppm以下のレベルで維持することをさらに含む、請求項9に記載のフラッシング方法。
【請求項12】
第1のフラッシング期間及び第2のフラッシング期間のそれぞれが、独立して、約12時間~約85時間の間、例えば独立して約24時間~約60時間の間である、請求項1~11のいずれか一項に記載のフラッシング方法。
【請求項13】
第1のフラッシング期間が完了した後、第2のフラッシング期間を開始する前に、反応器内に残っているフラッシング溶媒を少なくとも部分的に排出することをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のフラッシング方法。
【請求項14】
気体分配器が、気体分散板及び気体バブラーの1つ又は両方を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のフラッシング方法。
【請求項15】
フラッシング溶媒が、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、及びこれらの組合せからなる群から選択され、例えばフラッシング溶媒はトルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、n-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載のフラッシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直鎖アルファオレフィン生成物を生成するように適合された反応器などの反応器から、ポリマーのファウリングをフラッシングするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直鎖オレフィンは、石油化学工業における原材料として有用な炭化水素の一種であり、これらの中で、その二重結合が鎖の末端に位置付けられている非分岐状オレフィンである、直鎖アルファオレフィンは、重要な下位クラスを形成する。直鎖アルファオレフィンは、ヒドロホルミル化によって直鎖第1級アルコールに変換することができる。ヒドロホルミル化は、アルデヒドを調製するのに使用することもできる。これは、このアルデヒドを酸化して、合成脂肪酸、特に潤滑剤の製造に有用な奇数の炭素を有する合成脂肪酸を得ることができる。直鎖アルファオレフィンは、直鎖アルキルベンゼンスルホネートなどの洗浄剤の製造でも使用される。ベンゼンと直鎖オレフィンとのFiedel-Crafts反応及びその後のスルホン化により調製される。
【0003】
アルファオレフィンの調製は、主にエチレンのオリゴマー化に基づく。これは生成されたアルファ-オレフィンは偶数の炭素原子を有するという結果を有する。エチレンに関するオリゴマー化プロセスは、有機アルミニウム化合物又は遷移金属を触媒として主に利用する。オリゴマー化法は、テトライソ酪酸ジルコニウムなどのジルコニウム化合物、及びセスキ塩化エチルアンモニウムなどの活性化剤としてのアルミニウム成分を含む触媒の存在下で典型的には実施される。典型的には、直鎖アルファオレフィンを生成するのに使用される反応器からの流出物は、1つ以上の蒸留塔に向けられて、直鎖アルファオレフィンの様々な画分を分離する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ある特定のタイプのエチレンオリゴマー化反応器は、反応器の底部近傍に気体分配器と、反応器の最上部近傍に内部凝縮器とを備える。オリゴマー化反応に関連する1つの問題は、内部凝縮器の両方の領域及び気体分配器の領域でのポリマーのファウリングである。そのようなファウリングは、望ましくない反応器の停止をもたらす可能性があり、除去に関する難題を提示する。そのような反応器内でのポリマーのファウリングに対処するため、改善された反応器フラッシング技法が当技術分野では引き続き求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本開示の例示的な実現例は、反応器からポリマーのファウリングをフラッシングするための方法を対象とする。特に本発明の方法では、フラッシング溶媒の上昇流を第1の段階で反応器内で発生させ、その後、第2の段階で反応器内でフラッシング溶媒の下降流を発生させる、多段階フラッシング技法がなされる。記述される方法は、ある特定の閾値を超える差圧値の増加を示すセンサーを使用して反応器内のポリマーのファウリングに関する指標を提供する点が、有利である。これは反応器を大気に向けて開放することなくノーマルモードからフラッシングモードへの反応器の切換えを可能にする。これにより反応器の停止時間を短縮しかつ効率が向上する。さらに、システムの柔軟性は、反応器内のポリマーのファウリングの検査を改善できる追加のセンサーを含む可能性によって、向上する可能性がある。記述される方法は、各フラッシング段階中の反応器内のレベルをモニタリングする際の追加の利点を提供し、反応器内へのフラッシング溶媒の流れを調節してある特定のレベルを実現する。したがって多段階フラッシング方法は、その他のフラッシング技法と比較して、反応器内のポリマーのファウリングの清浄化を強化し得ることが発見された。本開示のフラッシング方法の使用は、反応器のダウンタイムを短縮し、機械式反応器清浄化コストを削減し、化学消費コストを削減し、生成中のファウリング速度を最小限に抑えることが観察された。
【0006】
本開示は、限定するものではないが下記の実施形態を含む。
【0007】
実施形態1:反応器の底部近傍にある気体分配器と、反応器の最上部近傍にある内部凝縮器とを含む反応器から、ポリマーのファウリングを除去するためのフラッシング方法であって、
(a) 気体分配器と内部凝縮器との間の位置で、反応器内にフラッシング溶媒を注入するステップ、
(b) 反応器内でフラッシング溶媒の上昇移動を誘発させるように、内部凝縮器近傍の反応器出口からフラッシング溶媒を引き出すステップ、ここで、引き出されたフラッシング溶媒が第1のポリマー含量を含有し、
(c) (a)注入するステップ及び(b)引き出すステップを、第1のフラッシング期間にわたり継続するステップ、
(d) 第1のフラッシング期間が完了した後、フラッシング溶媒を、気体分配器と内部凝縮器との間の位置で反応器内に注入するステップ、
(e) 反応器内でフラッシング溶媒の下降移動を誘発させるように、フラッシング溶媒を、気体分配器近傍の反応器出口から引き出すステップ、ここで、引き出されたフラッシング溶媒が第2のポリマー含量を含有し、及び
(f) (d)注入するステップ及び(e)引き出すステップを、第2のフラッシング期間にわたり継続するステップ
を含む、フラッシング方法。
【0008】
実施形態2:反応器内に注入されたフラッシング溶媒が、約150℃又はそれよりも高い温度及び大気圧よりも上の圧力である、実施形態1のフラッシング方法。
【0009】
実施形態3:反応器が、ノーマル生成モード及びフラッシングモードで動作し、フラッシング方法がフラッシングモード中に行われる、実施形態1又は2のいずれか1つのフラッシング方法。
【0010】
実施形態4:凝縮器近傍の差圧及び気体分配器近傍の差圧の1つ又は両方が、ノーマル生成モード中にモニターされ、フラッシングモードは、ノーマル生成モード中に所定の閾値まで上昇するいずれかの差圧に基づいて開始される、実施形態1~3のいずれか1つのフラッシング方法。
【0011】
実施形態5:凝縮器近傍の差圧に関する所定の閾値が、約50mbar又はそれよりも高い、実施形態1~4のいずれか1つのフラッシング方法。
【0012】
実施形態6:気体分配器近傍の差圧に関する所定の閾値が、約10mbar又はそれよりも高い、実施形態1~5のいずれか1つのフラッシング方法。
【0013】
実施形態7:反応器が、エチレンオリゴマー化気泡塔反応器であり、ノーマル生成モードが、エチレンガスを気体分配器に通して溶媒及び触媒を含む液体混合物中にバブリングすることにより少なくとも1種の直鎖アルファオレフィンを含む反応生成物を生成すること、及び直鎖アルファオレフィンを含む生成物流を反応器から引き出すステップを含む、実施形態1~6のいずれか1つのフラッシング方法。
【0014】
実施形態8:反応器内に注入されたフラッシング溶媒が、フラッシング溶媒タンクから注入される、実施形態1~7のいずれか1つのフラッシング方法。
【0015】
実施形態9:フラッシング溶媒タンク内のフラッシング溶媒が、フラッシング方法の間、約5.0~約6.0bargの間の圧力及び約150~約160℃の温度の1つ又は両方で維持される、実施形態1~8のいずれか1つのフラッシング方法。
【0016】
実施形態10:フラッシング溶媒タンク内のフラッシング溶媒中の初期ポリマー濃度が、フラッシング方法の開始時に約200ppm以下である、実施形態1~9のいずれか1つのフラッシング方法。
【0017】
実施形態11:第1のポリマー含量を含有する、引き出されたフラッシング溶媒と、第2のポリマー含量を含有する、引き出されたフラッシング溶媒とを処理して、フラッシング溶媒をポリマー含量の少なくとも一部から分離し、フラッシング溶媒を、処理後にフラッシング溶媒タンクにリサイクルすることをさらに含む、実施形態1~10のいずれか1つのフラッシング方法。
【0018】
実施形態12:処理が、引き出されたフラッシング溶媒を1つ以上の蒸留塔に通すことを含む、実施形態1~11のいずれか1つのフラッシング方法。
【0019】
実施形態13:フラッシング方法の間、フラッシング溶媒タンク中のポリマー濃度をモニタリングすること、及び新鮮なフラッシング溶媒をフラッシング溶媒タンク内に導入して、フラッシング溶媒タンク中のポリマー濃度を約200ppm以下のレベルで維持することをさらに含む、実施形態1~12のいずれか1つのフラッシング方法。
【0020】
実施形態14:第1のフラッシング期間及び第2のフラッシング期間のそれぞれが、独立して、約12時間~約85時間の間である、実施形態1~13のいずれか1つのフラッシング方法。
【0021】
実施形態15:第1のフラッシング期間及び第2のフラッシング期間のそれぞれが、独立して約24時間~約60時間の間である、実施形態1~14のいずれか1つのフラッシング方法。
【0022】
実施形態16:ポリマーのファウリングがポリエチレンを含む、実施形態1~15のいずれか1つのフラッシング方法。
【0023】
実施形態17:第1のフラッシング期間が完了した後、第2のフラッシング期間を開始する前に、反応器内に残っているフラッシング溶媒を少なくとも部分的に排出することをさらに含む、実施形態1~16のいずれか1つのフラッシング方法。
【0024】
実施形態18:気体分配器が、気体分散板及び気体バブラーの1つ又は両方を含む、実施形態1~17のいずれか1つのフラッシング方法。
【0025】
実施形態19:フラッシング溶媒が、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、及びこれらの組合せからなる群から選択される、実施形態1~18のいずれか1つのフラッシング方法。
【0026】
実施形態20:フラッシング溶媒が、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、n-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、及びこれらの組合せからなる群から選択される、実施形態1~19のいずれか1つのフラッシング方法。
【0027】
本開示の特徴、態様、及び利点は、添付図面と一緒に、以下の詳細の説明を読むことから明らかされよう。以下に簡単に記述する。本開示は、そのような特徴又は要素が明らかに組み合わされているか又はそうでない場合には本明細書に記述される特定の例示的な実現例で列挙されているかに関わらず、本開示で述べられる2、3、4つ、又はそれよりも多くの特徴又は要素の任意の組合せを含む。本開示は、本開示の任意の分離可能な特徴又は要素がその態様及び例示的な実現例のいずれかにおいて、本開示の文脈がその他の内容を明示しない限り組合せ可能であると見られるべきであるように、全体として読まれるものとする。
【0028】
したがってこの簡単な概要は、本開示のいくつかの態様の基本的な理解をもたらすように、いくつかの例示的な実現例をまとめることを目的とするだけであることが理解されよう。したがって上述の例示的な実現例は単なる例であり、本開示の範囲又は精神を如何様にも狭めて解釈されるべきではないことが理解されよう。その他の例示的な実現例、態様、及び利点は、いくつかの記述される例示的な実現例の原理を単なる例として示す、添付図面と併せて解釈される以下の詳細な記述から明らかにされよう。
【0029】
本開示の態様を前述の一般的用語で記述したが、ここで次に添付図面を参照する。これは必ずしも縮尺通りに描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本開示の例示的な実現例による、エチレンオリゴマー化システムのブロック図である。
【
図2】本開示による例示的なエチレンオリゴマー化反応器の、単純化された概略図である。
【
図3】本開示による反応器フラッシング方法の例示的な実現例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に本開示のいくつかの実現例について、本開示の全てではないがいくつかの実現例が示されている添付図面を参照しながら、以下でより詳しく説明される。事実、本開示の様々な実現例は、多くの種々の形で具体化されてもよく、本明細書に記述される実現例に限定されると解釈されるべきではなく;むしろ例示的な実現例は、本開示が徹底的に完全になるように、かつ当業者に本開示の範囲を十分伝えるように提供される。同様の参照符号は、全体を通して同様の要素を指す。
【0032】
その他の内容が指定されない限り又は文脈から明らかにされない限り、第1、第2、又は同様のものに対する言及は、特定の順序を示唆すると解釈すべきではない。別の特徴の上にあるとして記述される特徴(他に指定されない限り又は文脈から明らかではない限り)は、下であってもよく、及びその逆であってもよく;同様に、別の特徴の左にあると記述される特徴は、代わりに右にあってもよく、及びその逆であってもよい。また、定量的尺度、値、幾何学的関係、又は同様のものを本明細書では参照し得るが、他に指示しない限り、これらの全部ではないとしてもいずれか1つ以上は、設計製作上の許容範囲又は同様のものに起因するものなど、生じ得る許容されるばらつきを説明するのに絶対的であっても近似的であってもよい。
【0033】
本明細書に開示される全ての範囲は端点を包含し、それら端点は独立して互いに組合せ可能である(例えば、「最大25重量%、又はより特別には5重量%~20重量%」の範囲は、「5重量%~25重量%」の範囲の端点と全ての中間値を包含するなど)。「組合せ」は、ブレンド、混合物、合金、反応生成物、及び同様のものを包含する。
【0034】
他に指定されない限り又は文脈から明らかにされない限り、本明細書で使用される一組のオペランドの「又は」は「包含し又は」であり、それによって、オペランドの全てが真であるときに偽である「排他的又は」と対照的に、オペランドの1つ以上が真になる場合又はなる場合に限り真になる。このように例えば、「[A]又は[B]」は、[A]が真である場合又は[B]が真である場合、又は[A]及び[B]の両方が真である場合に、真である。さらに冠詞「a」及び「an」は、他に指定しない限り又は単数形を対象とすることが文脈から明らかにされない限り、「1つ以上」を意味する。
【0035】
エチレンオリゴマー化プロセス及びシステム
直鎖アルファオレフィン(LAO)は、化学式がCxH2xであるオレフィンであり、炭化水素鎖の直鎖性及び第1級又はアルファ位にある二重結合の位置により同様の分子式を持つその他のモノオレフィンと区別される。直鎖アルファオレフィンは、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、並びにC20~C24、C24~C30、及びC20~C30オレフィンの高級ブレンドを含む、工業的に重要なアルファ-オレフィンの種類を含む。直鎖アルファオレフィンは、洗浄剤、合成潤滑剤、コポリマー、可塑剤、及び多くのその他の重要な生成物の製造に有用な中間体である。
【0036】
直鎖アルファオレフィンを生成するための既存のプロセスは、典型的にはエチレンのオリゴマー化に依拠する。例えば直鎖アルファオレフィンは、Ziegler-Natta型触媒又は非Ziegler-Natta型触媒の存在下、エチレンの触媒オリゴマー化によって調製することができる。
【0037】
オリゴマー化は、10~200℃、例えば20~100℃、例えば50~90℃、例えば55~80℃、例えば60~70℃の温度で引き起こすことができる。動作圧力は、1~5メガパスカル(MPa)、例えば2~4MPaとすることができる。プロセスは継続することができ、平均滞留時間は10分~20時間、例えば30分~4時間、例えば1~2時間とすることができる。滞留時間は、高い選択性で所望の変換を実現するように選択することができる。
【0038】
プロセスは、不活性溶媒を使用する溶液中で実行することができる。これは、触媒組成物に対して非反応性である。所望の有機溶媒の例は、非置換又はハロゲンで置換することができる芳香族炭化水素溶媒、例えばトルエン、ベンゼン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン;脂肪族パラフィン炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン;脂環式炭化水素化合物、例えばシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン;及びハロゲン化アルカン、例えばジクロロエタン及びジクロロブタンを含むことができるがこれらに限定されない。
【0039】
プロセスは、ループ反応器、プラグ流反応器、又は気泡塔反応器など、任意の反応器で実施することができる。エチレンのオリゴマー化は、エチレンの余分な流れにより冷却され得る、発熱反応である。反応器の最上部から離れる気体は、一連の外部冷却器及び/又は凝縮器を使用して冷却することができる。さらなる冷却後の気相を、リサイクルすることができる。
【0040】
底部からオリゴマー化反応器を離れる底部流は、活性触媒及び未反応のエチレンを含有することができる。反応は、苛性水性相による抽出を通して有機相から触媒成分を除去することにより、望ましくない副反応を回避するよう終了させることができる。苛性水性相との接触は、触媒成分に対応した未反応の無機物の形成をもたらす可能性がある。
【0041】
触媒除去システムを通した後の有機相は、モレキュラーシーブ吸収床を通ることができ、次いで蒸留塔に供給されて、溶解したエチレンを回収することができる。回収されたエチレンは、エチレンリサイクルループを介してリサイクルすることができ、一方、生成物は中間槽に供給され、その後、生成物を分離セクションに供給することができる。ある特定の実施形態では、反応器から生成された直鎖アルファオレフィンは、分離装置列に向けることができる。
【0042】
図1に示されるように、システム10は、反応器12、トルエン(又はその他の溶媒)供給源14、及び分離装置列16を含むことができる。ノーマル生成モードでは、エチレン、溶媒、及び触媒などの反応物18を反応器12内に供給して、直鎖アルファオレフィン及びポリマー副生成物材料を生成することができる。反応後、放出流20を分離装置列16内に向けることができ、その放出流は、未反応の反応物、C
4~C
20+などの生成された直鎖アルファオレフィン、溶媒、及び触媒を含むことができる。分離装置列16は、直鎖アルファオレフィンを溶媒、触媒、及び任意の未反応のエチレンから分離するように構成することができる。分離装置列16は、各直鎖アルファオレフィンを分離することができ、例えばC
4流、C
5流、C
6流、及び同様のものをもたらす。分離装置列16は、直鎖アルファオレフィンを、C
4~C
10画分、C
11~C
17画分、C
18~C
20画分、C
20+画分、又は任意のその他の所望の画分など、ある特定の画分に分離することもできる。
【0043】
直鎖アルファオレフィン生成物は、水性苛性触媒クエンチ及びその後に続く水洗、及び蒸留による最終的な生成物回収を含む手順を使用して単離することができる。例えば、溶解したエチレンと共に溶媒(例えば、トルエン)を含む液体生成物を、上述のように分離装置列16に供給することができる。第1の塔では、消費されていないエチレンを直鎖アルファオレフィン生成物及び溶媒から分離することができる。エチレンは、元の反応器にリサイクルすることができる。より重い画分は、後続の分離セクションに通すことができ、そこで、より重い画分を種々の直鎖アルファオレフィン画分(例えば、C8、C10、>C12)に分割することができる。溶媒を回収し、元の反応器にリサイクルすることもできる。
【0044】
反応器内のポリマーのファウリングは、オリゴマー化反応プロセス中に生じる可能性がある。そのようなファウリングは、典型的には例えば、低下した流出液流量、低下した内部凝縮器性能、反応器内の様々な部位で増加した差圧、及び同様のものによって検出される。そのようなファウリングは、ポリマー材料副生成物を除去するため、トルエン又は別の溶媒による反応器のフラッシングによって処理ができる。ポリマー材料を含む、フラッシュされたトルエンは、直鎖アルファオレフィン反応副生成物を含む分離装置列に向けることができる。ポリマー材料は、直鎖アルファオレフィンの少なくとも1種に可溶であり、したがってフラッシュされたトルエンは、ポリマー材料が本質的にない状態で分離装置列から出て行くことができるようになり、後続の反応器のフラッシング用に元のトルエン供給源にリサイクルすることができるようになる。フラッシュされた、分離装置列から出て行くトルエンは、150ppm未満又はそれに等しい、例えば100ppm未満又はそれに等しい、例えば80ppm未満又はそれに等しい、例えば60ppm未満又はそれに等しい、例えば50ppm未満又はそれに等しいポリマー材料を含むことができる。
【0045】
したがってフラッシングモードでは、反応器12は、供給源14からのトルエン又は別の溶媒でフラッシングされて、反応器設備内のポリマー副生成物の構築を除去することができる。ポリマー材料を含む、フラッシングされたトルエンは、ライン22を介して分離装置列16内に向けることができる。ポリマー材料は、トルエンよりもC20+直鎖アルファオレフィンに、より可溶性であるので、ポリマー材料を、C20+直鎖アルファオレフィンに溶解することによって、フラッシングされたトルエン及びC4~C18画分から分離することができる。その結果、ある特定の実施形態では、分離装置列16で分離された、フラッシングされたトルエンは、さらなる精製を必要とすることなく、さらなるフラッシングのために元のトルエン供給源にリサイクルすることができる。本開示の特定のフラッシング方法について以下に述べる。
【0046】
気泡塔反応器
実施形態では、オリゴマー化プロセスは、気泡塔反応器で実施することができる。
図2は、本開示で使用されるための例示的な気泡塔反応器24を示す。エチレンは、供給流26を使用して、気泡塔反応器の底部セクションに取着された気体分配システムを介して、反応器24へ導入することができる。これは、気体分散板30及び気体バブラー32の一方又は両方を含んでいてもよい。気体分配システムは、反応器24全体にわたり気状エチレンを均等に分散させる。気状エチレンは、反応器24内の液体組成物40を通して上昇する。これは通常、直鎖アルファオレフィン、トルエンなどの溶媒、及び触媒を含む。例えば触媒は、触媒注入流42を通して反応器24に進入することができる。トルエン又は別の溶媒は、溶媒注入流44を通して反応器24に進入することができる。オリゴマー化反応は、気状エチレンが液体組成物と相互作用するにつれて生じることができ、ポリマーの液滴及び直鎖アルファオレフィンの液滴を含むことができる反応生成物が生成される。
【0047】
液体重質直鎖アルファオレフィンは、溶媒及び触媒と一緒に、反応器24の底部セクションから、底部流出液流34を介して引き出すことができる。形成された直鎖アルファオレフィンの一部は、反応条件下で気状である、内部凝縮器36を使用して反応器の最上部で凝縮することができ、それぞれの蒸発熱を利用して冷却の目的で還流として作用することができる。気状エチレン及び軽質直鎖アルファオレフィンは、気泡塔反応器の最上部で最上部の流出液流38を介して除去することができる。1つ又は両方の流出液流は、凝縮器、熱交換器、蒸留塔、及び同様のものなどの追加の下流処理ユニットを使用してさらに処理ができる。例えば
図1に示される分離装置列は、流出液流を様々な生成物及び/又はリサイクル可能な流れに精製するのに使用することができる。
【0048】
反応器は典型的には、様々な位置に位置決めされたいくつかの種々の圧力センサーを含む。例えば、異なる圧力センサー50を、内部凝縮器の領域での差圧を決定するのに位置決めすることができる。簡単にするために、このセンサーは単に、点線により反応器24の凝縮器領域に接続されるとして示される。差圧を決定するのに使用される、各圧力測定の正確な位置は、各測定の位置で操作員が凝縮器の全て又は一部にわたり圧力降下を決定することができる限り、様々にすることができる。この手法で、操作員は反応器24の凝縮器領域でのファウリングのレベルをモニターすることができる。
【0049】
差圧センサー52は、気体分配システムの領域での差圧を決定するように位置決めすることができる。簡略化のため、このセンサーは単に、反応器24の気体分配領域に点線によって接続されるとして示される。差圧を決定するのに使用される各圧力測定の正確な位置は、各測定の位置で操作員が気体分配システムの全て又は一部にわたる圧力降下を決定できる限り、様々にすることができる。この手法で、操作員は反応器24の気体分配領域でのファウリングのレベルをモニターすることができる。
【0050】
さらになお、反応器24は、反応器内のレベルの指標を提供するように位置決めされた差圧センサー56を含むこともできる。この場合も、差圧を決定するのに使用される各圧力測定の正確な位置は、その位置が反応器レベルに相関する差圧の読取りを提供する限り、様々にすることができる。この差圧センサー56は、典型的には反応器24の中心領域にわたる圧力を測定することになる。
【0051】
フラッシング方法
上述のように、フラッシュされることになる反応器は、典型的にはノーマル生成モード及びフラッシングモードで動作することになる。典型的には、例えばエチレンオリゴマー化プロセスで利用される気泡塔反応器などの反応器は、反応器の底部近傍に気体分配器を、及び反応器の最上部近傍に内部凝縮器を含むことになる。そのようなプロセスのためのノーマル生成モードは、典型的にはエチレンガスを気体分配器に通してバブリングして、溶媒及び触媒を含む液体混合物にして、少なくとも1種の直鎖アルファオレフィンを含む反応生成物を生成し、直鎖アルファオレフィンを含む生成物流を反応器から引き出すステップを含むことになる。そのような反応器に関する例示的気体分配器は、気体分散板及び気体バブラーの一方又は両方を含むことになる。
【0052】
フラッシングモードは、典型的には、反応器内のポリエチレンファウリングなどのポリマーのファウリングの証拠に基づいて開始される。ある特定の実施形態では、そのようなファウリングの存在は、ノーマル生成モードでの、凝縮器近傍の差圧及び気体分配器近傍の差圧の一方又は両方のモニタリングに基づいて決定される。例えば、反応器のフラッシングは、凝縮器近傍の差圧が所定の閾値に、例えば約50mbar若しくはそれよりも高い、約60mbar若しくはそれよりも高い、約70mbar若しくはそれよりも高い、又は約80mbar若しくはそれよりも高い値に達したときに開始することができる。あるいは反応器のフラッシングは、例えば気体分配器近傍の差圧が所定の閾値に、例えば約10mbar若しくはそれよりも高い、約15mbar若しくはそれよりも高い、約20mbar若しくはそれよりも高い、又は約25mbar若しくはそれよりも高い値に達したときに、開始することができる。
【0053】
本開示のフラッシング方法は、フラッシングするための溶媒を利用する。溶媒は、様々にすることができ、エチレンオリゴマー化プロセスで使用するための本明細書に記載される溶媒のいずれかを含むことができる。ある特定の実施形態では、フラッシング溶媒は、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、及びこれらの組合せから選択される。特定の実施例は、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、n-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、及びこれらの組合せを含む。
【0054】
フラッシング方法で使用されるフラッシング溶媒は、典型的には、
図1のトルエン供給源14などのフラッシング溶媒タンクに収容される。フラッシング溶媒は、ある特定の最小圧力で及び反応器からのファウリングの除去を容易にする温度で、有利に維持される。例えばフラッシング溶媒は、約150℃又はそれよりも高い温度及び大気圧よりも上の圧力で、例えば約5.0~約6.0bargの間の圧力(例えば、約5.6~約5.8barg)及び約150~160℃の温度(例えば、約155~約158℃)で維持することができる。フラッシングに使用される溶媒は、フラッシングプロセスの開始時に、約200ppm以下(例えば、約150ppm以下又は約100ppm以下)の、フラッシング溶媒タンク内の初期ポリマー濃度を有する溶媒など、フラッシングプロセスの開始時にポリマー含量を比較的含まないべきである。
【0055】
フラッシングモードが開始されると、
図3は、本開示のフラッシング方法の例示的な実現例を示す。フラッシングは有利には、フラッシング溶媒の上昇移動が誘発される第1の段階及びフラッシング溶媒の下降移動が誘発される第2の段階を含む2段階で生ずる。
【0056】
一実施形態では、
図3に示されるように、段階1のフラッシュは、フラッシング溶媒60を反応器内に、典型的には気体分配器と内部凝縮器との間の位置で注入するステップを含む。正確な位置は、注入位置が反応器内のフラッシング溶媒の上昇移動を可能にする限り、様々であってもよい。溶媒は典型的には、注入ノズルを通して注入される。このノズルは、渦巻き動作も溶媒に与えられるように、反応器内で任意に角度が付けられる。フラッシング溶媒は、望む場合には反応器内の複数の注入ノズルから注入することができる。
【0057】
フラッシング溶媒は、典型的にはフラッシング溶媒を、反応器の最上部にある又は最上部付近にある内部凝縮器近傍の反応器出口から引き出すステップによって、フラッシング溶媒の上昇移動を誘発させながら、引き出される62。段階1のフラッシュの注入60及び引出し62は、第1のフラッシング期間にわたり継続することができる64。第1のフラッシング期間は、様々にすることができ、典型的には約12時間~約85時間、例えば約24時間~約60時間の間になる。
【0058】
第1のフラッシング期間は、気体分配器又は内部凝縮器のいずれかの領域で測定された差圧レベルに基づくフラッシング期間の事前選択など、フラッシングモードが開始される時の反応器内のポリマーのファウリングのレベルに基づいて事前に選択することができる。あるいは第1のフラッシング期間は、フラッシングプロセス中に気体分配器又は内部凝縮器の領域で差圧測定値をモニターするのを継続し、所定レベルの差圧に達したときにフラッシング期間を終わりにすることによって、設定することができる。
【0059】
第1のフラッシング期間が完了したら、反応器から任意選択的に少なくとも部分的に排出させて、反応器内に残されたフラッシング溶媒を除去する。その後、第2段階のフラッシングを開始する。これは典型的には、第1の段階のフラッシュに関連して既に記述されたものと同じ一般的な手法で、気体分配器と内部凝縮器と間の位置でフラッシング溶媒を反応器内に注入するステップ66を含む。フラッシング溶媒は、典型的には反応器の底部にある又は底部付近にある気体分配器近傍の反応器出口からフラッシング溶媒を、引き出すステップによって、フラッシング溶媒の下降移動を誘導させながら、引き出される68。段階2のフラッシュの注入66及び引出し68は、第2のフラッシング期間にわたり継続することができる70。第2のフラッシング期間は様々にすることができ、典型的には約12時間~約85時間、例えば約24時間~約60時間の間である。
【0060】
第2のフラッシング期間は、フラッシングモードが開始された時の反応器内のポリマーのファウリングのレベルに基づいて、事前に選択することができ、例えば気体分配器又は内部凝縮器のいずれかの領域で測定された差圧レベルに基づいてフラッシング期間を事前に選択する。あるいは、第2のフラッシング期間は、フラッシングプロセス中の気体分配器又は内部凝縮器の領域での差圧測定値のモニターを継続し、所定レベルの差圧に達したときにフラッシング期間を終わらせることによって、設定することができる。
【0061】
両方のフラッシュ段階から引き出されたフラッシング溶媒は、ある特定の量のポリマー含量を含有することになる。したがってここで、引き出されたフラッシング溶媒は、フラッシング溶媒をフラッシング溶媒タンクにリサイクルする前に、ポリマー含量の少なくとも一部を分離する処理を必要とすることになる。典型的には、この処理プロセスは、引き出されたフラッシング溶媒を1つ以上の蒸留塔に通すことを含むことになる。例えばフラッシング溶媒は、
図1に関して記述された分離装置列16で処理ができる。
【0062】
フラッシングプロセスが進行するとき、約1000ppm以下、約750ppm以下、約500ppm以下、約250ppm以下、又は約200ppm以下のレベルなど、事前に選択された最大レベルよりも下でフラッシング溶媒タンク内のポリマー含量を維持するステップをとることができるように、フラッシング溶媒タンクのポリマー濃度をモニターすることは有利である。新たに構成されたフラッシング溶媒は、所望のレベルでタンク内のポリマー含量を維持するため、必要に応じてフラッシング溶媒タンク内に導入することができる。
【0063】
ある特定の実施形態では、各フラッシング段階中に反応器内のレベルをモニターし、反応器内へのフラッシング溶媒の流れを調節してある特定のレベルを実現するのが有利とすることができる。例えば一実施形態では、
図2に示される差圧センサー56は、反応器内のフラッシング溶媒レベルの変化を決定するのにモニターされる。例えば第1のフラッシュ段階(フラッシング溶媒の上昇移動)中、差圧は、約330~約365mbarの範囲で維持することができた。例えば第2のフラッシュ段階(フラッシング溶媒の下降移動)中、差圧は約270~約285mbarの範囲で維持することができた。
【0064】
一般に本発明は、本明細書に開示される任意の適切な構成要素を交互に含んでもよく、それらの構成要素からなるものであってもよく、又はそれらの構成要素から本質的になるものであってもよい。本発明は、さらに又は代わりに、従来技術の組成物で使用されるあるいはそうでない場合には本発明の機能及び/又は目的の実現に必要とされない任意の構成要素、材料、成分、アジュバント、又は種が無いように又は実質的に含まないように定式化されてもよい。
【0065】
本開示の多くの修正例及びその他の実現例は、前述の説明及び関連ある図面に提示される教示の利益を有するものを、本開示が関係する技術分野の当業者なら思い浮かべるであろう。したがって本開示は、本明細書に開示される特定の実現例に限定されないこと、並びに修正例及びその他の実現例は添付される特許請求の範囲内に含まれるものであることが理解されよう。特定の用語が本明細書では用いられるが、それらは全般的な及び記述的な意味でのみ使用され、限定する目的ではない。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器の底部近傍にある気体分配器と、反応器の最上部近傍にある内部凝縮器とを含む反応器から、ポリマーのファウリングを除去するためのフラッシング方法であって、
(a) 気体分配器と内部凝縮器との間の位置で、反応器内にフラッシング溶媒を注入するステップ、
(b) 反応器内でフラッシング溶媒の上昇移動を誘発させるように、内部凝縮器近傍の反応器出口からフラッシング溶媒を引き出すステップ、ここで、引き出されたフラッシング溶媒が第1のポリマー含量を含有し、
(c) (a)注入するステップ及び(b)引き出すステップを、第1のフラッシング期間にわたり継続するステップ、
(d) 第1のフラッシング期間が完了した後、フラッシング溶媒を、気体分配器と内部凝縮器との間の位置で反応器内に注入するステップ、
(e) 反応器内でフラッシング溶媒の下降移動を誘発させるように、フラッシング溶媒を、気体分配器近傍の反応器出口から引き出すステップ、ここで、引き出されたフラッシング溶媒が第2のポリマー含量を含有し、及び
(f) (d)注入するステップ及び(e)引き出すステップを、第2のフラッシング期間にわたり継続するステップ
を含む、フラッシング方法。
【請求項2】
反応器内に注入されたフラッシング溶媒が、約150℃又はそれよりも高い温度及び大気圧よりも上の圧力である、請求項1に記載のフラッシング方法。
【請求項3】
反応器が、ノーマル生成モード及びフラッシングモードで動作し、フラッシング方法がフラッシングモード中に行われる、請求項
1に記載のフラッシング方法。
【請求項4】
凝縮器近傍の差圧及び気体分配器近傍の差圧の1つ又は両方が、ノーマル生成モード中にモニターされ、フラッシングモードは、ノーマル生成モード中に所定の閾値まで上昇するいずれかの差圧に基づいて開始される、請求項3に記載のフラッシング方法。
【請求項5】
凝縮器近傍の差圧に関する所定の閾値が、約50mbar若しくはそれよりも高く、及び/又は気体分配機器近傍の差圧に関する所定の閾値が、約10mbar若しくはそれよりも高い、請求項4に記載のフラッシング方法。
【請求項6】
反応器が、エチレンオリゴマー化気泡塔反応器であり、ノーマル生成モードが、エチレンガスを気体分配器に通して溶媒及び触媒を含む液体混合物中にバブリングすることにより少なくとも1種の直鎖アルファオレフィンを含む反応生成物を生成すること、及び直鎖アルファオレフィンを含む生成物流を反応器から引き出すことを含み、ポリマーのファウリングがポリエチレンを含む、請求項4に記載のフラッシング方法。
【請求項7】
反応器に注入されたフラッシング溶媒が、フラッシング溶媒タンクから注入され、任意選択的にフラッシング溶媒タンク内のフラッシング溶媒中の初期ポリマー濃度が、フラッシング方法の開始時に約200ppm以下である、請求項1~6のいずれかに記載のフラッシング方法。
【請求項8】
フラッシング溶媒タンク内のフラッシング溶媒が、フラッシング方法の間、約5.0~約6.0bargの間の圧力及び約150~約160℃の温度の1つ又は両方で維持される、請求項7に記載のフラッシング方法。
【請求項9】
第1のポリマー含量を含有する、引き出されたフラッシング溶媒と、第2のポリマー含量を含有する、引き出されたフラッシング溶媒とを処理して、フラッシング溶媒をポリマー含量の少なくとも一部から分離し、フラッシング溶媒を、当該処理後にフラッシング溶媒タンクにリサイクルすることをさらに含む、請求項7に記載のフラッシング方法。
【請求項10】
前記処理が、引き出されたフラッシング溶媒を1つ以上の蒸留塔に通すことを含む、請求項9に記載のフラッシング方法。
【請求項11】
フラッシング方法の間、フラッシング溶媒タンク中のポリマー濃度をモニタリングすること、及び新鮮なフラッシング溶媒をフラッシング溶媒タンク内に導入して、フラッシング溶媒タンク中のポリマー濃度を約200ppm以下のレベルで維持することをさらに含む、請求項9に記載のフラッシング方法。
【請求項12】
第1のフラッシング期間及び第2のフラッシング期間のそれぞれが、独立して、約12時間~約85時間の間、例えば独立して約24時間~約60時間の間である、請求項
1に記載のフラッシング方法。
【請求項13】
第1のフラッシング期間が完了した後、第2のフラッシング期間を開始する前に、反応器内に残っているフラッシング溶媒を少なくとも部分的に排出することをさらに含む、請求項
1に記載のフラッシング方法。
【請求項14】
気体分配器が、気体分散板及び気体バブラーの1つ又は両方を含む、請求項
1に記載のフラッシング方法。
【請求項15】
フラッシング溶媒が、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、及びこれらの組合せからなる群から選択され、例えばフラッシング溶媒はトルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、n-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項
1に記載のフラッシング方法。
【国際調査報告】