IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ドンア ユニバーシティー リサーチ ファウンデーション フォー インダストリー・アカデミー コーオペレイションの特許一覧

特表2024-531658有機発光素子の光学特性向上のための光学補償フィルム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】有機発光素子の光学特性向上のための光学補償フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240822BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20240822BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240822BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K50/86
H10K59/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515547
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 KR2022095125
(87)【国際公開番号】W WO2023043301
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0124667
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524089833
【氏名又は名称】ドンア ユニバーシティー リサーチ ファウンデーション フォー インダストリー・アカデミー コーオペレイション
【氏名又は名称原語表記】DONG-A UNIVERSITY RESEARCH FOUNDATION FOR INDUSTRY-ACADEMY COOPERATION
【住所又は居所原語表記】Dong-A University Research Foundation For Industry-Academy Cooperation 37, Nakdong-daero 550beon-gil Saha-gu Busan 49315 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】イ、ギドン
(72)【発明者】
【氏名】カン、ボンスン
(72)【発明者】
【氏名】イ、チャンヒ
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
【Fターム(参考)】
2H149AA18
2H149AB05
2H149BA02
2H149DA02
2H149DA12
2H149DA18
2H149DA27
2H149DA32
2H149EA02
2H149FD03
2H149FD05
2H149FD10
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107CC37
3K107EE26
3K107FF06
(57)【要約】
本発明は、有機発光素子の光学特性向上のための光学補償フィルムに関するもので、ポジティブCプレートと、前記Cプレート上に積層され、逆波長分散性を有する負の二軸性位相差フィルムと、前記負の二軸性位相差フィルム上に積層される偏光子と、を含むことを技術的要旨とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポジティブCプレートと、
前記Cプレート上に積層され、逆波長分散性を有する負の二軸性位相差フィルムと、
前記負の二軸性位相差フィルム上に積層される偏光子と、を含む、有機発光素子の光学特性向上のための光学補償フィルム。
【請求項2】
波長380~780nmの光に対して70゜の傾斜角と0~360゜の方位角で測定される反射率の平均が0.0377~0.0597であることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子の光学特性向上のための光学補償フィルム。
【請求項3】
前記Cプレートは、下記数式1で表される位相差値が30~191nmであることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子の光学特性向上のための光学補償フィルム。
(数式1)
Δnd=(n-n)×d
(式中、Δndは前記Cプレートの位相差値であり、nは前記Cプレートの異常屈折率であり、nは前記Cプレートの正常屈折率であり、dは前記Cプレートの厚さである。)
【請求項4】
前記位相差フィルムは、波長380~780nmでの下記数式2で表される屈折率比が1~1.5であることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子の光学特性向上のための光学補償フィルム。
(数式2)
=(n-n)/(n-n
(式中、Nは前記位相差フィルムの屈折率比であり、n、n、nはそれぞれ前記位相差フィルムのx軸、y軸、z軸方向の屈折率である。)
【請求項5】
前記偏光子の吸収軸と前記位相差フィルムの光学軸とがなす角度は、43~47゜または133~137゜である、請求項1に記載の有機発光素子の光学特性向上のための光学補償フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子の光学特性向上のための光学補償フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子(Organic Light Emitting Diode、以下「OLED」)は、LCDとは異なり、バックライトが不要であるため軽く、薄膜化が可能であり、色再現力に優れるうえ、応答速度が速いという利点を持っており、スマートフォンやテレビなどの多様な装置に適用されて使用されている。
【0003】
但し、有機発光素子は、外部から日光などの外部光が流入する場合、外部光が有機発光素子の金属電極を含む反射体によって反射されて有機発光素子の外部に漏れることにより、外部光の反射によって有機発光素子の視認性とコントラスト比が低下して表示品質が劣るという問題があった。
【0004】
これを解決するために、従来は、線偏光板と位相差板とからなる円偏光板を用いて、反射された外部光が有機発光素子の外部に漏れるのを防止した。
【0005】
但し、従来技術による円偏光板は、前述した外部光による問題を正面から眺める場合については解決できたが、視野角依存性が強いため、側面視野角では反射された外部光が外部に漏れるのを防止する性能、いわゆる反射防止性能が低下して有機発光素子の視認性が劣るという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためのもので、その目的は、有機発光素子の外部光の反射を防止するとともに、側面視野角においても外部光の反射による問題を防止することができるように負の二軸性位相差フィルムとポジティブC-プレートとを含む、有機発光素子の光学特性向上のための光学補償フィルムを提供することにある。
【0007】
本発明の目的は、上述した目的に限定されず、上述していない別の目的は、以降の記載から明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための、本発明の一態様による有機発光素子の光学特性向上のための光学補償フィルムは、ポジティブCプレートと、前記Cプレート上に積層され、逆波長分散性を有する負の二軸性位相差フィルムと、前記負の二軸性位相差フィルム上に積層される偏光子と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
上述した構成による本発明の実施例による有機発光素子の光学特性向上のための光学補償フィルムは、正面から眺めるときに有機発光素子の反射体に外部光が反射されることによる問題を解決するとともに、側面視野角においても外部光の反射による問題を防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】従来技術による有機発光素子の断面を示す断面図である。
図2】本発明の一実施例による有機発光素子の光学特性向上のための光学補償フィルムの断面を示す断面図である。
図3】本発明の一実施例による有機発光素子の光学特性向上のための光学補償フィルムを従来技術による有機発光素子に積層した状態を示す断面図である。
図4】実施例1による光学補償フィルムの試験例1による反射率平均測定結果を示す図である。
図5】実施例2による光学補償フィルムの試験例1による反射率平均測定結果を示す図である。
図6】実施例3による光学補償フィルムの試験例1による反射率平均測定結果を示す図である。
図7】実施例4による光学補償フィルムの試験例1による反射率平均測定結果を示す図である。
図8】実施例5による光学補償フィルムの試験例1による反射率平均測定結果を示す図である。
図9】実施例6による光学補償フィルムの試験例1による反射率平均測定結果を示す図である。
図10】実施例7による光学補償フィルムの試験例1による反射率平均測定結果を示す図である。
図11】実施例8による光学補償フィルムの試験例1による反射率平均測定結果を示す図である。
図12】比較例1による光学補償フィルムの試験例1による反射率平均測定結果を示す図である。
図13】比較例2による光学補償フィルムの試験例1による反射率平均測定結果を示す図である。
図14】比較例3による光学補償フィルムの試験例1による反射率平均測定結果を示す図である。
図15】比較例4による光学補償フィルムの試験例1による反射率平均測定結果を示す図である。
図16】比較例5による光学補償フィルムの試験例1による反射率平均測定結果を示す図である。
図17】比較例6による光学補償フィルムの試験例1による反射率平均測定結果を示す図である。
図18】実施例1による光学補償フィルムの試験例2による偏光状態測定結果をポアンカレ球上に示す図である。
図19】実施例2による光学補償フィルムの試験例2による偏光状態測定結果をポアンカレ球上に示す図である。
図20】実施例3による光学補償フィルムの試験例2による偏光状態測定結果をポアンカレ球上に示す図である。
図21】実施例4による光学補償フィルムの試験例2による偏光状態測定結果をポアンカレ球上に示す図である。
図22】実施例5による光学補償フィルムの試験例2による偏光状態測定結果をポアンカレ球上に示す図である。
図23】実施例6による光学補償フィルムの試験例2による偏光状態測定結果をポアンカレ球上に示す図である。
図24】実施例7による光学補償フィルムの試験例2による偏光状態測定結果をポアンカレ球上に示す図である。
図25】実施例8による光学補償フィルムの試験例2による偏光状態測定結果をポアンカレ球上に示す図である。
図26】比較例1による光学補償フィルムの試験例2による偏光状態測定結果をポアンカレ球上に示す図である。
図27】比較例2による光学補償フィルムの試験例2による偏光状態測定結果をポアンカレ球上に示す図である。
図28】比較例3による光学補償フィルムの試験例2による偏光状態測定結果をポアンカレ球上に示す図である。
図29】比較例4による光学補償フィルムの試験例2による偏光状態測定結果をポアンカレ球上に示す図である。
図30】比較例5による光学補償フィルムの試験例2による偏光状態測定結果をポアンカレ球上に示す図である。
図31】比較例6による光学補償フィルムの試験例2による偏光状態測定結果をポアンカレ球上に示す図である。
図32】試験例2による測定結果における離脱角度を説明するための図である。
【発明を実施するための最善の形態】
【0011】
前述した目的を達成するための、本発明の一態様による有機発光素子の光学特性向上のための光学補償フィルムは、ポジティブCプレートと、前記Cプレート上に積層され、逆波長分散性を有する負の二軸性位相差フィルムと、前記負の二軸性位相差フィルム上に積層される偏光子と、を含む。
【0012】
前記有機発光素子の光学特性向上のための光学補償フィルムは、波長380~780nmの光に対して70゜の傾斜角と0~360゜の方位角で測定される反射率の平均が0.0377~0.0597であることを特徴とする。
【0013】
前記Cプレートは、下記数式1で表される位相差値が30~191nmであることを特徴とする。
(数式1)
Δnd=(n-n)×d
式中、Δndは前記Cプレートの位相差値であり、nは前記Cプレートの異常屈折率であり、nは前記Cプレートの正常屈折率であり、dは前記Cプレートの厚さである。
【0014】
前記位相差フィルムは、波長380~780nmでの下記数式2で表される屈折率比が1~1.5であることを特徴とする。
(数式2)
=(n-n)/(n-n
【0015】
式中、Nは前記位相差フィルムの屈折率比であり、n、n、nはそれぞれ前記位相差フィルムのx軸、y軸、z軸方向の屈折率である。
【0016】
前記偏光子の吸収軸と前記位相差フィルムの光学軸とがなす角度は、43~47゜または133~137゜であることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の利点、特徴、およびこれらの達成方法は、添付図面と共に、詳細に後述されている実施例を参照すると明らかになるであろう。ところが、本発明は、以下に開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態で実現されるものである。但し、本実施例は、本発明の開示を完全たるものにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。一方、本明細書で使用された用語は、実施例を説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。本明細書において、単数形は、文脈で特に断りのない限り、複数形も含む。
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施例による有機発光素子の光学特性向上のための光学補償フィルムを説明する。
【0019】
一方、図1図3を参照すると、本発明の一実施例による有機発光素子の光学特性向上のための光学補償フィルム20は、有機発光素子10に積層できる。
【0020】
このとき、有機発光素子10は、従来技術による構造を有するものであってもよく、例えば、アノード11、有機発光層12およびカソード13を含むものであってもよい。
【0021】
アノード11は、正孔(hole)が注入される電極であってもよく、仕事関数(work function)の高い導電物質で製造できる。
【0022】
カソード13は、電子が注入される電極であってもよく、仕事関数の低い導電物質で製造できる。
【0023】
有機発光層12は、アノード11とカソード13に電圧が印加されたときに光を発することが可能な有機物質を含むことができる。
【0024】
このとき、アノード11とカソード13の少なくとも一つが金属電極であれば、金属電極に対応するものが反射体として作用して、有機発光素子10の内部に入った外部光を反射することができる。
【0025】
また、有機発光層12は、光を反射させることが可能な無機物を含むことができるが、有機発光層12が光を反射させることが可能な無機物を含む場合、有機発光層12も反射体として作用して、有機発光素子10の内部に入った外部光を反射することができる。
【0026】
すなわち、アノード11、有機発光層12およびカソード13の少なくとも一つが反射体として作用することにより、内部に入った外部光が反射されて有機発光素子10の明るさおよび視認性が低下する可能性がある。
【0027】
本発明の一実施例による有機発光素子の光学特性向上のための光学補償フィルム20は、有機発光素子10のカソード13よりも相対的に上部に積層されるものであってもよく、好ましくは、カソード13に積層されるものであってもよい。
【0028】
本発明の一実施例による有機発光素子の光学特性向上のための光学補償フィルム20は、Cプレート100、位相差フィルム200および偏光子300を含むことができる。
【0029】
Cプレート100は、nx1=ny1<nz1の正の一軸性位相差光学素子であり得る。
【0030】
x1は、Cプレート100のx軸方向の屈折率(refractive index)、nny1は、Cプレート100のy軸方向の屈折率、nnz1は、Cプレート100のz軸方向の屈折率であり得る。
【0031】
Cプレート100は、nx1=ny1<nz1の正の一軸性位相差フィルムであり得る。
【0032】
すなわち、Cプレート100は、ポジティブCプレートであり得る。
【0033】
Cプレート100は、下面が有機発光素子10に付着して積層されるものであってもよく、好ましくは、Cプレート100は、カソード13に積層されるものであってもよい。
【0034】
Cプレート100は、内部に液晶が配向されたフィルムを意味するものであってもよく、商業的に市販されるものを用いることができ、当業者に自明な通常の製造方法で製造したものを用いることができる。
【0035】
Cプレート100は、液晶組成物を用いて製造したものであってもよく、液晶組成物を固化させて製造したものであってもよく、液晶組成物を硬化させて製造したものであってもよい。
【0036】
一方、有機発光素子10に位相差フィルム200と偏光子300とからなるフィルムが貼り付けられると、有機発光素子10の正面方向での外部光の反射は防止することができるが、側面視野角で外部光反射防止性能が多少劣って有機発光素子10の視認性が低下して視野角特性が悪くなるという問題がある。
【0037】
Cプレート100は、有機発光素子10の側面視野角特性を改善させるためのものである。Cプレート100が位相差フィルム200と偏光子300を含む光学補償フィルム20が有機発光素子10に積層されると、有機発光素子10の側面視野角においても外部光反射防止性能の低下が相対的に行われないことがある。
【0038】
Cプレート100の厚さは、通常用いられるCプレート100が有する厚さであれば制限されず、本発明の目的に応じて調節できるが、好ましくは2~5μmであり得る。
【0039】
Cプレート100の厚さが2~5μmであれば、光学補償フィルム20の側面視野角で外部光反射防止性能の向上がさらに効果的に行われることができる。
【0040】
位相差フィルム200は、負の二軸性位相差フィルムであり得る。
【0041】
より詳細には、位相差フィルム200は、nx2>ny2>nz2の負の二軸性位相差フィルム(negative biaxial retardation film)であり得る。
【0042】
x2は位相差フィルム200のx軸方向の屈折率であり、ny2は位相差フィルム200のy軸方向の屈折率であり、nz2は位相差フィルム200のz軸方向の屈折率であり得る。
【0043】
位相差フィルム200は、入射光の波長が長くなるほど位相差が増加する逆波長分散(reverse wavelength dispersion)特性を有する負の二軸性位相差フィルムであり得る。
【0044】
このとき、波長は、可視光領域に対応するものであってもよく、例えば380~780nmであり得る。
【0045】
位相差フィルム200が逆波長分散特性を有する負の二軸性位相差フィルムであれば、本発明の実施例による光学補償フィルム20が、正面のみならず、側面視野角においても優れた外部光反射防止性能を有することができる。
【0046】
位相差フィルム200の面上位相差値と厚さ方向位相差値は、それぞれ下記数式1と数式2で表される。
[数式1]
in=(nx2-ny2)×d
【0047】
式中、Rinは位相差フィルム200の面上位相差値であり、nx2は位相差フィルム200のx軸方向の屈折率であり、ny2は位相差フィルム200のy軸方向の屈折率であり、dは位相差フィルム200の厚さであり得る。
[数式2]
th={((nx2+ny2)/2)-nz2}×d
【0048】
式中、Rthは位相差フィルム200の厚さ方向の位相差値であり、nx2は位相差フィルム200のx軸方向の屈折率であり、ny2は位相差フィルム200のy軸方向の屈折率であり、nz2は位相差フィルム200のz軸方向の屈折率であり、dは位相差フィルム200の厚さであり得る。
【0049】
位相差フィルム200の面上位相差値は5~15μmであり、厚さ方向位相差値は0超過20μm以下であり得る。
【0050】
位相差フィルム200の面上位相差値と厚さ方向位相差値がそれぞれ上記の範囲を満たすと、光学補償フィルム20が有機発光素子10の外部光の反射に対する問題をより効果的に改善することができ、側面における反射率防止性能の低下をより効果的に防止することができる。
【0051】
位相差フィルム200の屈折率比Nは下記数式3で表され、位相差フィルム200の屈折率比は1~1.5であり得る。
[数式3]
=(nx2-nz2)/(nx2-ny2
【0052】
式中、Nは位相差フィルム200の面上位相差値に対する位相差フィルム200の厚さ方向位相差値の比であり、nx2は位相差フィルム200のx軸方向の屈折率であり、ny2は位相差フィルム200のy軸方向の屈折率であり、nz2は位相差フィルム200のz軸方向の屈折率であり得る。
【0053】
位相差フィルム200の面上位相差値に対する位相差フィルム200の厚さ方向位相差値の比が1未満であれば、位相差が小さいため、位相差フィルム200を透過した光が円偏光に到達しないため、光学補償フィルム20が有機発光素子10の外部光反射を円滑に防止することができず、1.5超過であれば、光が位相差フィルム200を透過するときに乱反射が起こるため、光学補償フィルム20が有機発光素子10の外部光反射を効果的に防止することができない。
【0054】
位相差フィルム200の厚さは、通常用いられる位相差フィルム200が有する厚さであれば制限されず、本発明の目的に応じて調節できるが、好ましくは30~500μmであり得る。
【0055】
位相差フィルム200の厚さが30~500μmであれば、光学補償フィルム20が有機発光素子10の外部光反射を効果的に防止することができる。
【0056】
一方、Cプレート100は、下記数式4で表される位相差値Δndを有するものであってもよく、このとき、位相差値Δndは、30~191nmであってもよく、30~100nmであってもよく、45~115nmであってもよく、65~137nmであってもよく、84~155nmであってもよく、104~175nmであってもよく、122~191nmであってもよい。
[数式4]
Δnd=(n-n)×d
式中、ΔndはCプレート100の位相差値であり、nはCプレート100の異常屈折率(extraordinary refractive index)であり、nはCプレート100の正常屈折率(ordinary refractive index)であり、dはCプレート100の厚さであり得る。
【0057】
Cプレート100の位相差値Δndが上記の範囲に対応する値を外れると、Cプレート100を通過した光が円偏光ではなく楕円偏光状態を有するため、光学補償フィルム20が有機発光素子10の外部光反射による問題を改善することができないだけでなく、側面視野角で外部光反射防止性能が低下することがあり、上記の範囲に対応する値を有すると、光学補償フィルム20が有機発光素子10の正面方向で外部光反射を防止することができるだけでなく、側面視野角で外部光反射を効果的に防止することができる。
【0058】
Cプレート100の位相差値Δndと位相差フィルム200の屈折率比Nは比例するものであってもよく、このとき、光学補償フィルム20が有機発光素子10の外部光反射をより効果的に防止することができるように、位相差フィルム200の屈折率比Nの単位増加量1に対して、Cプレート100の位相差値Δndは150~220nm増加することができる。
【0059】
但し、このとき、位相差フィルム200の屈折率比Nが1であるときのCプレート100の位相差値Δndは30~100nmであり得る。
【0060】
すなわち、Cプレート100の位相差値Δndと位相差フィルム200の屈折率比Nは、下記数式5を満たす関係にあるものであってもよい。
[数式5]
Δnd=(Δnd)+αβ
【0061】
式中、(Δnd)は、位相差フィルム200の屈折率比Nが1であるときのCプレート100の位相差値Δndであって、30~100nmであり、αは、位相差フィルム200の屈折率比Nの単位増加量に対するCプレート100の位相差値Δndの増加量であって、150~220nmであり、βは、位相差フィルム200の屈折率比Nの増加量であり得る。
【0062】
すなわち、数式5によって算出されるCプレート100の位相差値Δndは、位相差フィルム200の屈折率比Nが1+βであるきの位相差値Δndであり得る。
【0063】
例えば、数式5を参照すると、(Δnd)が100nmであり、αが150nmであり、βが0.1であれば、位相差フィルム200の屈折率比Nが1.1であるときのCプレート100の位相差値Δndは115nmと算出できる。
【0064】
Cプレート100の位相差値Δndと位相差フィルム200の屈折率比Nが数式5を満たす関係にあれば、光学補償フィルム20が有機発光素子10の正面方向で外部光反射を防止することができるだけでなく、側面視野角においても外部光反射防止性能が低下しないことができる。
【0065】
偏光子300は、位相差フィルム200上に積層されるものであり得る。
【0066】
偏光子300は、通常用いられる線偏光子(linear polarizer)であってもよく、透過する光をいずれかの方向に振動するように線偏光するものであってもよい。
【0067】
偏光子300は、通常の線偏光子であれば制限されず、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂のフィルムから構成されるヨウ素系の偏光子、および二色染料系の偏光子などが用いられることができる。
【0068】
偏光子300の吸収軸と位相差フィルム200の光学軸とは傾斜配向されるものであってもよく、偏光子300の吸収軸と位相差フィルム200の光学軸とがなす角度は、43~47゜であってもよく、133~137°であってもよい。
【0069】
光学補償フィルム20のCプレート100と位相差フィルム200、および位相差フィルム200と偏光子300は、通常用いられる粘着剤と接着剤の少なくとも一つを介して接着されることにより、積層された状態を維持することができ、このとき、粘着剤と接着剤としては、それぞれ光学透明粘着剤と光学透明接着剤を用いることができる。
【0070】
それだけでなく、光学補償フィルム20のCプレート100と位相差フィルム200、および位相差フィルム200と偏光子300は直接コーティングによって互いに積層されてもいてもよい。
【0071】
<実施例1>
Cプレート100と、Cプレート100上に積層される位相差フィルム200と、位相差フィルム200上に積層される偏光子300とを含む光学補償フィルム20を用意した。
【0072】
このとき、Cプレート100は、数式4で表される位相差値Δndが70nmであるポジティブCプレートを用いた。
【0073】
位相差フィルム200としては、数式3で表される屈折率比Nが1であり、逆波長分散特性を有する負の二軸性位相差フィルムを用いた。
【0074】
偏光子300としては、一方向に吸収軸を有するPVA系線偏光子を用いるが、吸収軸が位相差フィルム200の光学軸と45゜角度をなすものを用いた。
【0075】
<実施例2>
実施例1と同様の方法で光学補償フィルム20を用意した。
【0076】
但し、Cプレート100として、位相差値Δndが70nmであるポジティブCプレートの代わりに、位相差値Δndが30nmであるポジティブCプレートを用いて、光学補償フィルム20を用意した。
【0077】
<実施例3>
実施例1と同様の方法で光学補償フィルム20を用意した。
【0078】
但し、Cプレート100として、位相差値Δndが70nmであるポジティブCプレートの代わりに、位相差値Δndが100nmであるポジティブCプレートを用いて、光学補償フィルム20を用意した。
【0079】
<実施例4>
実施例1と同様の方法で光学補償フィルム20を用意した。
【0080】
但し、Cプレート100として、位相差値Δndが70nmであるポジティブCプレートの代わりに、位相差値Δndが90nmであるポジティブCプレートを用い、位相差フィルム200として、屈折率比Nが1である負の二軸性位相差フィルムの代わりに、屈折率比Nが1.1である負の二軸性位相差フィルムを用いて、光学補償フィルム20を用意した。
【0081】
<実施例5>
実施例1と同様の方法で光学補償フィルム20を用意した。
【0082】
但し、Cプレート100として、位相差値Δndが70nmであるポジティブCプレートの代わりに、位相差値Δndが109nmであるポジティブCプレートを用い、位相差フィルム200として、屈折率比Nが1である負の二軸性位相差フィルムの代わりに、屈折率比Nが1.2である負の二軸性位相差フィルムを用いて、光学補償フィルム20を用意した。
【0083】
<実施例6>
実施例1と同様の方法で光学補償フィルム20を用意した。
【0084】
但し、Cプレート100として、位相差値Δndが70nmであるポジティブCプレートの代わりに、位相差値Δndが126nmであるポジティブCプレートを用い、位相差フィルム200として、屈折率比Nが1である負の二軸性位相差フィルムの代わりに、屈折率比Nが1.3である負の二軸性位相差フィルムを用いて、光学補償フィルム20を用意した。
【0085】
<実施例7>
実施例1と同様の方法で光学補償フィルム20を用意した。
【0086】
但し、Cプレート100として、位相差値Δndが70nmであるポジティブCプレートの代わりに、位相差値Δndが142nmであるポジティブCプレートを用い、位相差フィルム200として、屈折率比Nが1である負の二軸性位相差フィルムの代わりに、屈折率比Nが1.4である負の二軸性位相差フィルムを用いて、光学補償フィルム20を用意した。
【0087】
<実施例8>
実施例1と同様の方法で光学補償フィルム20を用意した。
【0088】
但し、Cプレート100として、位相差値Δndが70nmであるポジティブCプレートの代わりに、位相差値Δndが160nmであるポジティブCプレートを用い、位相差フィルム200として、屈折率比Nが1である負の二軸性位相差フィルムの代わりに、屈折率比Nが1.5である負の二軸性位相差フィルムを用いて、光学補償フィルム20を用意した。
【0089】
<比較例1>
実施例1と同様の方法で光学補償フィルムを用意した。
【0090】
但し、Cプレート100として、位相差値Δndが70nmであるポジティブCプレートの代わりに、位相差値Δndが-70nmであるネガティブCプレートを用いて、光学補償フィルムを用意した。
【0091】
<比較例2>
実施例1と同様の方法で光学補償フィルムを用意した。
【0092】
但し、Cプレートを備えず、位相差フィルム200と位相差フィルム200上に積層される偏光子300とから構成される光学補償フィルムを用意した。
【0093】
<比較例3>
実施例1と同様の方法で光学補償フィルムを用意した。
【0094】
但し、Cプレート100として、位相差値Δndが70nmであるポジティブCプレートの代わりに、位相差値Δndが10nmであるポジティブCプレートを用いて、光学補償フィルム20を用意した。
【0095】
<比較例4>
実施例1と同様の方法で光学補償フィルムを用意した。
【0096】
但し、Cプレート100として、位相差値Δndが70nmであるポジティブCプレートの代わりに、位相差値Δndが120nmであるポジティブCプレートを用いて、光学補償フィルム20を用意した。
【0097】
<比較例5>
実施例1と同様の方法で光学補償フィルムを用意した。
【0098】
但し、位相差フィルム200として、屈折率比Nが1である負の二軸性位相差フィルムの代わりに、屈折率比Nが0.5である負の二軸性位相差フィルムを用いて、光学補償フィルム20を用意した。
【0099】
<比較例6>
実施例1と同様の方法で光学補償フィルムを用意した。
【0100】
但し、位相差フィルム200として、屈折率比Nが1である負の二軸性位相差フィルムの代わりに、屈折率比Nが2である負の二軸性位相差フィルムを用いて、光学補償フィルム20を用意した。
【0101】
下記表1に、実施例1~8と比較例1~6による光学補償フィルムに使用されたCプレート100の条件と位相差フィルム200の条件についてまとめた。
【0102】
【表1】
【0103】
<試験例1>
試験例1では、実施例1~8による光学補償フィルム20と比較例1~6による光学補償フィルムの波長380~780nmの光に対して全方位角(0~360゜)と最大90゜の傾斜角での反射率平均をシミュレータ(Techwiz 1D plus、(株)サナイシステム製)でシミュレーションした。
【0104】
試験例1による試験のために、シミュレータを、実施例1~8による光学補償フィルム20と比較例1~6による光学補償フィルムが複数の有機発光素子10にそれぞれ積層される構造に設定した。
【0105】
このとき、ポジティブCプレート100の下面が有機発光素子10に取り付けられるようにしたとともに、ポジティブCプレート100を備えない場合、位相差フィルム200の下面が有機発光素子10に当接して積層されるようにした。
【0106】
試験結果を図4図17に示す。
【0107】
図4図17は、それぞれ実施例1~8による光学補償フィルム20と比較例1~6による光学補償フィルムの試験例1による全方位反射率シミュレーション結果を示す図である。
【0108】
より詳細には、図4図17を参照すると、円の中心は正面(傾斜角0°、方位角0°)を意味し、円の中心から円周方向に行くほど最小0°から最大90°まで傾斜角が増加することを示す。
【0109】
また、図4図17を参照すると、円の直径方向に沿って右側(0°)から反時計回りに行くほど方位角が大きくなることを意味し、円周に沿って記載された角度は方位角を意味する。
【0110】
また、図4図17を参照すると、黒色に近いほど波長380~780nmの光に対する反射率の平均が低いことを意味し、白色に近いほど波長380~780nmの光に対する反射率の平均が高いことを意味することができる。
【0111】
図4図17を参照して、実施例1~8と比較例1~6による光学補償フィルムの波長380~780nmの光に対して70°の傾斜角と0~360°の方位角で測定される反射率の平均を下記表2に示した。
【0112】
【表2】
【0113】
図4図17と表2を参照すると、実施例1~8による光学補償フィルム20よりも、比較例1~6による光学補償フィルムの反射率平均が高いことを確認することができるが、これは、実施例1~8による光学補償フィルム20が比較例1~6による光学補償フィルムよりも優れた外部光反射防止性能を示すことを確認することができる結果である。
【0114】
特に、実施例1~8による光学補償フィルム20の反射率平均よりも、比較例4による光学補償フィルムの反射率平均が高いことを確認することができるが、これは、Cプレート100の位相差値Δndの増加量が位相差フィルム200の屈折率比Nの増加量よりも大きすぎると、光学補償フィルム20の側面視野角で外部光反射防止性能が劣ることを確認することができる結果である。
【0115】
<試験例2>
試験例2では、実施例1~8による光学補償フィルム20と比較例1~6による光学補償フィルムに対角方向(傾斜角45°、方位角45°)に550nmの短波長を有する光を入射させるときの偏光状態をポアンカレ球(poincare sphere)上にシミュレーションして示した。この時、シミュレーションのためのシミュレータは、Techwiz 1D plus((株)サナイシステム製)を用いた。
【0116】
試験例2による試験のために、シミュレータを、実施例1~8による光学補償フィルム20と比較例1~6による光学補償フィルムが複数の有機発光素子10にそれぞれ積層される構造に設定した。
【0117】
試験結果を図18図31に示した。
【0118】
一方、図18図31に示された到着点Aは、光学補償フィルムを透過した光の偏光状態到着点を示すものであり、到着点Aは、S1軸D、S2軸E、S3軸Fに対応する座標値を有することができる。このとき、到着点AがS1軸DとS3軸Fを通る円Bの円周上に位置し、S2軸Eに対応する座標値が0であれば、光学補償フィルム20を透過した光が円偏光状態に達したと判断することができる。
【0119】
実施例1~8による光学補償フィルム20と比較例1~6による光学補償フィルムをそれぞれ透過した光の偏光状態が円偏光状態からずれた程度を判断するために、図18図31を参照して離脱角度θを下記表3に示した。
【0120】
このとき、図32を参照すると、離脱角度θは、座標系の原点と到着点Aを通る線CとS3軸F間の角度を意味することができる。
【0121】
【表3】
【0122】
図18図31および表3を参照すると、実施例1~8による光学補償フィルム20の離脱角度が比較例1および比較例3~6による光学補償フィルムの離脱角度よりも小さいことを確認することができ、これは、実施例1~8による光学補償フィルム20が比較例1および比較例3~6による光学補償フィルムよりも側面視野角での反射防止性能に劣ることを確認することができる結果である。
【0123】
特に、実施例1~8による光学補償フィルム20の離脱角度θよりも比較例4による光学補償フィルムの離脱角度θが大きいことを確認することができるが、これは、Cプレート100の位相差値Δndが位相差フィルム200の屈折率比Nよりも大きすぎると、光学補償フィルム20の正面方向での外部光反射防止性能が劣るばかりでなく、側面視野角での外部光反射防止性能が低下することを確認することができる結果である。
【0124】
本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解することができるであろう。したがって、上述した実施例は、あらゆる面で例示的なもので、限定的なものではないと理解すべきである。本発明の範囲は、上記の詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲およびその均等概念から導出される全ての変更または変形形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、正面から眺めるときに有機発光素子の反射体に外部光が反射されることによる問題を解決するとともに、側面視野角においても外部光の反射による問題を防止することができるため、光学特性が向上した有機発光素子を必要とする産業分野に利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
【国際調査報告】