(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】鉄鋼プラントのための直接還元鉄の製造方法
(51)【国際特許分類】
C21B 13/00 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
C21B13/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515575
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2022062352
(87)【国際公開番号】W WO2023036474
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ヴルツェル,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】グラント,ミカエル
【テーマコード(参考)】
4K012
【Fターム(参考)】
4K012DA03
4K012DA05
(57)【要約】
【解決手段】 直接鉱石還元ゾーン(4a)と鉄回収ゾーン(4b)とを含む直接還元ユニット(1)内で鉄鉱石(2)を連続的に直接還元する方法であって、アンモニア(19)が鉄回収ゾーン(4b)に供給され、アンモニア(19)が窒素と水素に分解され、窒素と水素が鉄回収ゾーン(4b)から直接鉱石還元ゾーン(4a)に移され、鉄鉱石(2)が前記水素を含む1種以上の還元剤で還元される、方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接鉱石還元ゾーン(4a)と鉄回収ゾーン(4b)とを含む直接還元ユニット(1)内で鉄鉱石(2)を連続的に直接還元する方法であって、
(a)前記鉄鉱石(2)と、1種以上の還元剤を含む還元ガス(3a)とを前記直接鉱石還元ゾーン(4a)に供給するステップと、
(b)前記直接鉱石還元ゾーン(4a)内で前記1種以上の還元剤で前記鉄鉱石(2)を還元して、直接還元鉄(4)を得るステップと、
(c)ステップ(b)で得られた前記直接還元鉄(4)を前記直接鉱石還元ゾーン(4a)から前記鉄回収ゾーン(4b)に搬送するステップと
を含み、
前記方法が、
(d)前記鉄回収ゾーン(4b)にアンモニア(19)を供給するステップであって、前記アンモニア(19)に前記直接還元鉄(4)を触媒的に接触させて分解反応(1)
2NH
3→N
2+3H
2(1)
を受けさせることで窒素と水素を得るステップと、
(e)前記窒素及び水素を前記鉄回収ゾーン(4b)から前記直接鉱石還元ゾーン(4a)に搬送するステップと
を更に含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記直接鉱石還元ゾーン(4a)が鉱石還元チャンバー内に配置され、前記鉄回収ゾーン(4b)が鉄回収チャンバー内に配置され、前記鉱石還元チャンバーと前記鉄回収チャンバーとが、
直接還元鉄(4)を前記鉱石還元チャンバーから前記鉄回収チャンバーに搬送するための第1のダクトと、窒素及び水素を前記鉄回収チャンバーから前記鉄鉱石還元チャンバーに搬送するための第2ダクトとを介して、又は
直接還元鉄(4)を前記鉱石還元チャンバーから前記鉄回収チャンバーへの搬送と、窒素及び水素を前記鉄回収チャンバーから前記鉄鉱石還元チャンバーへの搬送とを組み合わせて行うためのダクトを介して、
相互に連通している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記直接鉱石還元ゾーン(4a)が、シャフト反応器、好ましくは移動床シャフト反応器、好ましくは向流移動床シャフト反応器内に配置される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記直接鉱石還元ゾーン(4a)と前記鉄回収ゾーン(4b)が、共通の反応器シェル内に位置する別個のゾーンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記直接鉱石還元ゾーン(4a)と前記鉄回収ゾーン(4b)が、シャフト反応器、好ましくは向流移動床シャフト反応器の別個のゾーンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)で得られる前記直接還元鉄(4)が、750℃~1050℃、好ましくは850℃~950℃の温度で前記直接鉱石還元ゾーン(4a)から前記鉄回収ゾーン(4b)に搬送される、及び/又は
前記還元ガス(3a)が、ステップ(b)で得られる前記直接還元鉄(4)が前記直接鉱石還元ゾーン(4a)から前記鉄回収ゾーン(4b)に搬送される温度に少なくとも等しい、好ましくはそれより高い温度で前記直接鉱石還元ゾーン(4a)に供給される、及び/又は
前記還元ガス(3a)が、850℃~1100℃、好ましくは950℃~1050℃の温度で前記直接鉱石還元ゾーン(4a)に供給され、
より好ましくは:
ステップ(b)で得られた前記直接還元鉄(4)が、750℃~1050℃、好ましくは850℃~950℃の温度で、前記直接鉱石還元ゾーン(4a)から前記鉄回収ゾーン(4b)に搬送され、及び
前記還元ガス(3a)が、850℃~1100℃、好ましくは950℃~1050℃の温度で前記直接鉱石還元ゾーン(4a)に供給され、前記還元ガス(3a)が前記直接鉱石還元ゾーン(4a)に供給される前記温度が、好ましくは、ステップ(b)で得られた前記直接還元鉄(4)が前記直接鉱石還元ゾーン(4a)から前記鉄回収ゾーン(4b)に搬送される温度に少なくとも等しく、より好ましくはステップ(b)で得られた前記直接還元鉄(4)が前記直接鉱石還元ゾーン(4a)から前記鉄回収ゾーン(4b)に搬送される温度よりも大きい、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
(f)前記直接還元鉄(4)を前記鉄回収ゾーン(4b)から鉄冷却ゾーン(26)に搬送するステップと、
(g)好ましくは冷却ガス(27)により、前記鉄冷却ゾーン(26)内で前記直接還元鉄(4)を冷却するステップと
を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(d)で得られる窒素及び水素に加えて、好ましくは追加の水素及び/又は一酸化炭素を含む追加の還元剤が前記直接鉱石還元ゾーン(4a)に供給される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
アンモニアに加えて、好ましくは追加の水素及び/又は一酸化炭素を含む追加の還元剤が前記鉄回収ゾーン(4b)に供給される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記追加の還元剤が、前記直接還元ユニット(1)からの塔頂ガス又はその水素含有留分、改質ガス状炭化水素、コークス炉ガス、又は前記ガスの少なくとも2つの組み合わせのうちの1つ以上を含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
1種以上の炭化水素が、前記鉄回収ゾーン(4b)に供給され、前記鉄回収ゾーン(4b)において前記直接還元鉄(4)と触媒的に接触して改質されて、追加の還元剤CO及び水素を与え、前記追加の還元剤が、ステップ(e)において、分解反応(1)によって生成した前記窒素及び水素と共に前記鉄回収ゾーン(4b)から前記直接鉄還元ゾーン(4a)に搬送される、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記1種以上の炭化水素が、ガス状炭化水素、好ましくはメタン、エタン、プロパン、ブタン、及びペンタンからなる群から選択される炭化水素又は前記炭化水素の2種以上の組み合わせを含むガス状炭化水素であり、好ましくは天然ガスである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記鉄回収ゾーン(4b)における1種以上の炭化水素の改質を補助するために蒸気及び/又はCO
2が前記鉄回収ゾーン(4b)に供給される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記直接還元ユニット(1)からの塔頂ガス(5)が、前記直接還元ユニット(1)の上流の炭化水素改質器を加熱すること、前記直接還元ユニット(1)の上流の予熱器(25)において前記アンモニア(19)及び/又は1種以上の他の流体を予熱することから選択される1つ以上の目的のための加熱燃料として使用される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
鋼の製造のための方法であって、請求項1~14のいずれか一項に記載の直接鉄鉱石還元プロセスによって製造された直接還元鉄(4)が、排出された直接還元鉄(30)として前記直接還元ユニット(1)から排出され、前記排出された直接還元鉄(30)から、任意選択的には前記直接還元鉄(30)がブリケット化された後に、鋼を製造するためのアーク炉又は他のDRI溶融装置において鋼が製造される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接還元による鉄の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
生成する鉄の融点未満で鉄鉱石中の酸化鉄を還元することによって鉄を製造するプロセスは、直接還元プロセスとして知られている。それによって得られる生成物は、直接還元鉄又はDRIとして知られている。直接還元鉄は、比表面積が非常に大きい構造のため、海綿鉄とも呼ばれている。
【0003】
実際には、DRIは、当該技術分野においてホットブリケットアイアン又はHBIと呼ばれる、より高密度のブリケットへと圧縮されることが多い。実際、圧縮されていないDRIは比表面積が大きいため、自然発火しやすく、そのため水と反応する場合に輸送が危険である。不動態化は、DRIを、主にはるかに小さい比表面積を有するはるかに高密度のブリケットにブリケット化することによって少なくともある程度は達成される。
【0004】
反応器又は設備の鉄鉱石還元ゾーン内で生成する還元ガスと接触させて鉄鉱石を直接還元する直接還元プロセスは、当該技術分野で公知である。
【0005】
そのような公知の直接還元プロセスの例はクルップ-レンプロセスであり、このプロセスでは、鉄鉱石は、ロータリーキルンに導入される前に、粉炭や粉コークスなどの微粉化された炭素質物質と混合される。キルンの直接鉱石還元ゾーンでは、炭素質材料がCO2と反応してブードゥアール反応により還元ガスCOを形成し、鉄鉱石が前記還元ガスCOにより直接還元された後に、DRIが回転炉のルッペンゾーンで回収される。
【0006】
シャフト炉の直接鉱石還元ゾーン内で石炭を使用して還元ガスを生成するプロセスの追加の公知の例は、鉄鉱石、石炭、及び石灰石がシャフト炉の頂部に導入され、炉壁の電極によって加熱されるMidrex EDRプロセスである。DRI、チャー、及び使用済み石灰石は、シャフト炉の底部で回収される。
【0007】
鉄鋼業はCO2排出の主な原因となっている。これは、高炉による伝統的な製鉄に特に当てはまる。高炉で鉄を製造し、その後転炉で鋼を製造する場合と比較して、鉄鉱石を直接還元し、その後アーク炉(EAF)で溶融することによる鋼製造では、CO2排出量が少ない。
【0008】
DRI製造時に発生するCO2排出量を削減するために、MIDREX NG(商標)プロセス(「NG」は天然ガスを意味する)などのプロセスが提案されてきた。これらのプロセスでは、鉄鉱石は還元ガスと接触して直接還元され、この還元ガスは、例えば鉄鉱石還元反応器又は炉の上流の改質器で天然ガスを改質することによって、鉄鉱石還元反応器又は炉の上流で生成される。
【0009】
このタイプのプロセスの重大な欠点は、直接還元反応器又は炉の近傍に還元ガス生成ユニットを構築する必要があることであり、これには利用可能なスペースと設備投資(CAPEX)が必要である。
【0010】
将来的には、再生可能な資源から水素を製造し、炭化水素ベースの還元ガスの一部又は全部を前記水素で置き換えることによって、CO2排出量を更に削減できると予測されている。例えば、グリーン水素が、補助還元ガスとしてMIDREX NG(商標)プロセスにおける鉄鉱石還元反応器又は炉に供給され得ると予測されている。更に、DRIプロセスの還元ガスとしてグリーン水素のみを使用するMIDREX H2(商標)プロセス(「H2」は水素を意味する)の開発に向けた取り組みが進行中であるとされている。
【0011】
上述の公知の及び予測されているプロセスは、連続的な鉄鉱石の還元プロセスである。
【0012】
直接還元プロセスは、還元ガスの生成に使用される原料に応じて、適切な鉄鉱石と、非粘結炭、天然ガス、及び/又は再生可能エネルギー、例えば水力発電の安価な資源とを利用できる地域で注目されている。
【0013】
水素は、原則的には水と電力が利用できるいずれの場所でも生成することができる。しかしながら、工業スケールで水素を生成するのに十分なエネルギー源がある場所の数は限定的であり、直接還元に適した鉄鉱石の鉱床及び/又は工業地帯から遠く離れた場所にあることが多い。これは、より具体的には、グリーン水素の生成に必要な再生可能エネルギーのエネルギー源に当てはまる。
【0014】
鉄鋼業界におけるCO2排出量削減の動きが加速するのに伴い、直接還元プロセス、特にカーボンフットプリントが最も低いプロセスの重要性が高まることが予想される。したがって、DRIプロセス、特にCO2フットプリントが少ないDRIプロセスを、より広い地域でより魅力的なものにする必要がある。
【0015】
還元ガスを系内で発生させる直接鉱石還元法の最近の例は、中国特許出願公開第A-112921143号明細書に記載されている。前記方法は、鉄鉱石を含む縦型バッチ式炉内で還元ガスを生成するためにガス状アンモニアを使用する。開示された方法は、具体的には以下のステップを含む:
1.縦型炉の還元セクションを800℃~900℃に加熱し、
- 縦型炉に鉄鉱石を装入し、
- 縦型炉に窒素を充填して還元セクションに存在するガスを置換し、
- 還元セクションを890℃~910℃に加熱し、この温度を30分以上保持するステップ、
2.アンモニアを40%~60%含有するアンモニアと窒素との混合ガスを850℃~950℃に予熱し、
- 予熱された混合ガスを還元セクションに導入するステップ、
3.890℃~910℃の一定温度を3時間以上保持し、その間に鉄鉱石中の酸化鉄の触媒作用でアンモニアガスを部分的に水素と窒素とに分解し、水素と未分解のアンモニアを鉄鉱石と反応させて高温の海綿鉄と水蒸気を生成するステップ、
4.反応完了後、還元セクションに窒素ガスを通すことによって還元セクションを室温まで冷却するステップ。
【0016】
したがって、このプロセスはバッチ式プロセスである。
【0017】
バッチ式直接還元プロセスの主な不都合な点は、生産性が比較的低く、管理が複雑であることである。そのため、商業的な成功は限定的である。
【0018】
鉄鉱石還元反応器又は炉に供給される還元ガスとして水素を使用する場合と比較して、アンモニアは安全に保管及び輸送することが容易及び安価である。したがって、アンモニアの使用は、大量の再生可能エネルギーを利用可能な場所で低カーボンフットプリントのアンモニアを生成できる点で、DRIプロセスの地理的な広がりの増加に貢献する可能性がある。このアンモニアは、その後、直接還元プロセスにおける還元ガス源として使用するために、様々な場所にある鉄鉱石還元反応器又は炉に輸送できるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、バッチ式プロセスを使用して高い生産性を達成することが難しいため、工業スケールのDRIプロセス、特に低カーボンフットプリントのDRIプロセスの地理的な広がりを増加させることは、バッチ式DRIプロセスでは現実的ではない。更に、バッチ式プロセスは連続プロセスよりも多くのスペースと高い資本経費を必要とする。
【0020】
したがって、(バッチ式直接還元とは対照的に)連続直接還元の利点を併せ持ち、再生可能エネルギーの利用が制限される場所を含め、鉄鉱石の直接還元のための還元ガス源としてアンモニアを使用することができる直接還元プロセスが必要とされている。
【0021】
本発明の目的は、そのような連続直接還元プロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明によれば、鉄鉱石を連続的に直接還元する方法が提供される。鉄鉱石の前記直接還元は直接還元ユニット内で行われ、この直接還元ユニットは、ユニットの2つの異なるゾーンとして、少なくとも
i.直接鉱石還元ゾーン、及び
ii.鉄回収ゾーン
を含む。
【0023】
鉄鉱石と還元ガスは、ユニットの直接鉱石還元ゾーンに供給される(ステップa)。還元ガスは、1種以上の還元剤を含む。
【0024】
直接鉱石還元ゾーン内では、鉄鉱石は還元ガスと直接接触する。鉄鉱石は、1種以上の還元剤による還元を受ける。その結果、DRIが得られる(ステップb)。
【0025】
得られたDRIは、ユニットの直接鉱石還元ゾーンから鉄回収ゾーンに搬送される(ステップc)。
【0026】
本発明によれば、アンモニアは鉄回収ゾーンに供給される。前記鉄回収ゾーン内で、アンモニアはDRIと接触し、その結果として、アンモニアは前記鉄回収ゾーン内で以下の触媒的分解反応(反応(1)):
2NH3→N2+3H2(1)
を受け、その結果窒素と水素が生成する(ステップd)。
【0027】
このようにして得られた窒素と水素は、ユニットの鉄回収ゾーンから直接鉱石還元ゾーンに搬送される(ステップe)。
【0028】
したがって、アンモニアの分解反応によって(窒素と組み合わせて)生成された水素は、方法のステップaに関して説明したように、還元ガスとして直接鉱石還元ゾーンに供給される。
【0029】
直接鉱石還元ゾーン内では、方法のステップbに関して前述したように、鉄鉱石の直接還元に水素が還元剤として介在する。
【0030】
鉄鉱石は、特に塊及び/又はペレットの形態でDRI反応器に供給され得る。
【0031】
生成した水素とは対照的に、生成した窒素は鉄鉱石の直接の還元に化学的に介在しない。窒素は化学反応を起こさずに直接鉱石還元ユニットから出る。したがって、窒素は還元剤ではなく直接還元反応中のバラストガスとして機能する。
【0032】
水素と比較して、窒素はNm3あたりの優れた熱媒体である。Nm3は、温度0℃、絶対圧力1atmで1立方メートルを占める気体の量として定義される。反応器内の還元された、部分的に還元された、及び未還元の鉄鉱石は、熱を供給するための高温の還元ガスに依存することから、窒素は100%H2よりも多くの熱を(所定の温度で)保持できるため、プロセスに熱バラストを提供する。
【0033】
直接鉱石還元ゾーン内のガス雰囲気は、本質的に還元性である。そのため、前記雰囲気は、環境上非常に望ましくない汚染物質であるNOxの形成に寄与しない。
【0034】
直接鉱石還元ゾーンは、有利には、鉄回収ゾーンよりも高いレベルに配置される。この形式では、DRIを、これが生成する直接鉱石還元ゾーンから、重力によって下側の鉄回収ゾーンに移すことができる。
【0035】
鉄回収ゾーンで生成した窒素及び水素は、有利には、直接還元ユニット内の上向きドラフトの影響下で直接鉱石還元ゾーンに移される。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、直接鉱石還元ゾーンは鉱石還元チャンバー内に配置され、鉄回収ゾーンは別の鉄回収チャンバー内に配置される。
【0037】
その場合、一方では直接還元鉄を鉱石還元チャンバーから鉄回収チャンバーに搬送するための手段が設けられ、他方では窒素-及び水素-含有還元ガスを鉄回収チャンバーから鉱石還元チャンバーに搬送するための手段が設けられる。
【0038】
例えば、ユニットは、直接還元鉄を鉱石還元チャンバーから鉄回収チャンバーに搬送するための第1のダクト又はシュートと、生成した窒素-及び水素-含有還元ガスを鉄回収チャンバーから鉱石還元チャンバーに逆方向に搬送するための(第2の)ダクトとを含み得る。
【0039】
或いは、同じダクトが両方の材料の搬送に使用されてもよい。その場合、一方では直接還元鉄が、他方では窒素-及び水素-含有還元ガスが、ダクトを通って反対方向に移動する(向流移動)。
【0040】
好ましい実施形態によれば、鉱石還元チャンバーは移動床シャフト反応器である。気相が鉄鉱石及びDRIの固体装入物と向流で流れる向流移動床シャフト炉は、そのような移動床シャフト炉の特に有用な例である。
【0041】
直接鉱石還元ゾーンと鉄回収ゾーンは、好ましくは、共通の反応器シェル内に位置する別個の、すなわち独立したゾーンである。
【0042】
その特定の実施形態によれば、直接鉱石還元ゾーンと鉄回収ゾーンは同じ移動床シャフト反応器内に位置し、直接鉱石還元ゾーンは鉄回収ゾーンの上方に位置する。
【0043】
その場合、鉄鉱石はシャフト反応器の頂部にある直接鉱石還元ゾーンに供給される。鉄鉱石はシャフト反応器内を下向きに移動しながら、上向きに移動する還元ガスと接触して徐々に還元される。使用済み還元ガスは、シャフト反応器の上端又はその近傍でシャフト反応器から排出される。生成したDRIは、直接鉱石還元ゾーンから、移動床の一部として鉄回収ゾーンまで更に下方に移動する。
【0044】
アンモニアは、DRIと密接に接触するような形で鉄回収ゾーンに供給される。更に、アンモニアは、典型的には鉄回収ゾーンの下半分に供給される。アンモニアとDRIとの間の接触を改善するために、鉄回収ゾーンへのアンモニアの注入は、好ましくは、例えばバッスルパイプと複数の羽口によって、鉄回収ゾーンの高さでシャフト反応器の周囲に分配される。
【0045】
直接還元ユニットは、アンモニア分解反応に関与した後のDRIが冷却される、DRI冷却ゾーンを更に含み得る。その場合、本発明による方法は、DRIを鉄回収ゾーンから鉄冷却ゾーンに搬送するステップ(ステップf)と、前記鉄冷却ゾーン内でDRIを冷却するステップ(ステップg)とを更に含む。
【0046】
鉄冷却ゾーンでDRIを冷却するために、有利には冷却ガスを使用することができる。
【0047】
鉄冷却ゾーンは、別個の冷却チャンバー内に配置されてもよい。
【0048】
或いは、鉄回収ゾーン及び鉄冷却ゾーン、更には直接鉱石還元ゾーン、鉄回収ゾーン、及び鉄冷却ゾーンは、共通の反応器シェル内に位置する別個のゾーンであってもよい。
【0049】
特定の実施形態によれば、直接鉱石還元ゾーン、鉄回収ゾーン、及び鉄冷却ゾーンは、同じ移動床シャフト反応器などの同じシャフト反応器内の独立した、すなわち別個のゾーンである。その場合、直接鉱石還元ゾーンで生成したDRIは、移動床の一部として、最初に直接鉱石還元ゾーンから鉄回収ゾーンに移動し、次に鉄回収ゾーンから鉄冷却ゾーンに移動する。
【0050】
いずれの場合も、アンモニアの分解反応は吸熱反応であるため、DRIがステップfで鉄回収ゾーンから鉄冷却ゾーンに移動する前に、したがってDRIが方法のステップgで冷却される前に、鉄回収ゾーン内でアンモニアがDRIと接触するように、アンモニアは鉄回収ゾーンに供給される。
【0051】
鉄冷却ゾーンでDRIを冷却するために冷却ガスが使用される場合、アンモニアの分解が起こる鉄回収ゾーンに鉄冷却ゾーンから冷却ガスが侵入することを避けるために、或いは少なくとも最小限に抑えるように注意が払われる。
【0052】
例えば、鉄回収ゾーンと鉄冷却ゾーンがそれぞれ同じシャフト反応器内の別個のゾーンである場合、直接鉱石還元ゾーン、鉄回収ゾーン、及び鉄冷却ゾーンが同じシャフト反応器内の別個のゾーンである場合、冷却ガスを鉄冷却ゾーンに注入することができる一方で、使用済み冷却ガスは強制的に抜き出されることによって鉄冷却ゾーンから再度抜き出される。
【0053】
アンモニアは、純粋なアンモニアとして、又は混合物の一部として、特に1種以上の追加の還元ガス前駆体、例えばガス状炭化水素(天然ガスなど)、CO2、及びH2O、並びに/又は1種以上の追加の還元剤、特にH2及びCOを含む混合物として、鉄還元ユニットに注入することができる。
【0054】
実際、方法のステップdで得られる窒素と水素に加えて、鉱石の還元を最適化するために、及び/又は炭素を含む生成されるDRI生成物の特性を調整するために、1種以上の還元剤を含む追加の還元ガス(「追加の還元剤」と呼ばれる)が直接還元ユニットに供給されてもよい。炭素は、アーク炉の溶融プロセスに非常に有用である。
【0055】
鉄回収ゾーンにおけるアンモニアの分解によって生成されない水素(いわゆる補助水素)を、追加の還元ガス/還元剤として使用してもよい。この補助水素は、好ましくは、例えば再生可能エネルギー源からの電気による電気分解によって生成する水素、特にブルー水素又はグリーン水素など、低カーボンフットプリントである。
【0056】
追加の還元剤としての補助水素の別の有用な供給源は、コークス炉ガスである。
【0057】
補助水素の更なる供給源は合成ガスであり、これは直接還元ユニットの上流にある改質器で生成することができる。合成ガスは、好ましくは炭化水素、特にCH4/天然ガスなどのガス状炭化水素の乾式改質又は水蒸気改質によって、好ましくは接触乾式改質又は接触水蒸気改質によって生成する。合成ガスは、好ましくは燃焼酸化剤として工業的に純粋な酸素、すなわち少なくとも90体積%及び100体積%までの純度を有する酸素を用いて、炭化水素の部分燃焼によって生成することもできる。
【0058】
したがって、コークス炉ガス及び合成ガスを追加の還元ガスとして使用することができる。コークス炉ガス及び合成ガスは、更にCOも含んでおり、これは鉄鉱石中の酸化鉄を直接還元するための追加の還元剤としても有用である。コークス炉ガスは炭化水素も含んでおり、これはCO2及び/又はH2Oの存在下で改質され、追加の還元剤としての追加のCO及びH2を生成する。したがって、これらの炭化水素は、これらの追加の還元剤の前駆体として機能する。
【0059】
上述したコークス炉ガス及び合成ガスに加えて、直接還元ユニットからのリサイクルされた塔頂ガス又は排ガスは、追加の還元剤としての補助H2の更に有用な供給源である。本発明との関係において、「塔頂ガス」又は「排ガス」という表現は、直接鉱石還元ゾーン内で鉄鉱石の還元に使用された後、前記ゾーンから排出される使用済み還元ガスを指す。多くの場合、塔頂ガスはCOも含む。
【0060】
CO又はCO含有ガスも、本発明による方法における追加の還元ガスとして使用することができ、COはアンモニアの分解によって生成するH2に加えての追加の還元剤として使用することができる。
【0061】
多くの場合、塔頂ガスはCOも含む。そのような場合、直接還元ユニットからリサイクルされた塔頂ガスは、追加の還元剤としてのCOの更なる有用な供給源として使用することができる。
【0062】
したがって、コークス炉ガス及び/又は合成ガス及び/又はリサイクルされた塔頂ガスなどのCO含有ガスは、アンモニア含有流と混合することができる。
【0063】
追加の還元剤を直接還元ユニットに供給することに加えて、又はその代わりに、本発明によれば、追加の還元剤、特にH2及び/又はCOは、上述したアンモニアの分解以外のプロセスによって直接還元ユニット自体の内部で生成させることもできる。
【0064】
好ましくは、COとH2の両方を含む合成ガスが直接還元ユニット内で生成する。その場合、アンモニア以外の追加の還元剤の前駆体又は前駆体の組み合わせが、典型的には直接還元反応器の鉄回収ゾーンに供給される。鉄回収ゾーン内では、その後前駆体又は前駆体の組み合わせが改質されて、1種以上の追加の還元剤が生成する。このようにして生成した追加の還元剤は、アンモニア分解反応によって生成したN2及びH2と共に、前述したように鉄回収ゾーンから直接鉱石還元ゾーンに搬送される。直接鉱石還元ゾーン内では、アンモニアの分解によって生成した水素と1種以上の追加の還元剤が、それぞれ鉄鉱石から金属鉄への還元に関与する。
【0065】
前駆体又は前駆体の組み合わせは、供給されるアンモニアとの混合物の形態で、及び/又は供給されたアンモニアとは別個に、鉄回収ゾーンに供給することができる。
【0066】
合成ガスが鉄回収ゾーン内で追加の還元剤として生成される場合、CH4/天然ガスなどのガス状炭化水素が、好ましくはCO2と組み合わせて(いわゆる「乾式改質」によって合成ガスを生成する場合)、又は水蒸気と組み合わせて(いわゆる「水蒸気改質」によって合成ガスを生成する場合)、前駆体として鉄回収ゾーンに供給されることが有利である。
【0067】
先に示したように、鉄回収ゾーンにおける合成ガスの生成の代わりに、又はそれと組み合わせて、別途生成した合成ガス(すなわち直接還元ユニットの上流で生成した合成ガス)を、鉄鉱石の直接還元のための追加の還元剤としてプロセスに供給することもできる。
【0068】
先に示したように、直接還元ユニットからの塔頂ガスは、追加の還元ガスとして再利用することができる。
【0069】
そのような塔頂ガス又はその一部は、加熱燃料として使用することもできる。例えば、合成ガスが直接還元ユニットの上流の改質器で生成される場合、改質器を加熱するために塔頂ガスを燃焼させることができる。同様に、アンモニア/追加の還元ガス/追加の還元剤の前駆体又は前駆体の組み合わせを上で開示した直接還元ユニットに供給する前に、これらを予熱するために塔頂ガスの燃焼によって発生する熱を使用することもできる。
【0070】
塔頂ガス中のH2及び任意選択的なCOの濃度を高めるために、塔頂ガスが燃料として使用される前に、及び/又は還元ガスとしてリサイクルされる前に、典型的には凝縮によって塔頂ガスから水が任意選択的に除去されてもよい。
【0071】
同様に、塔頂ガスが大量のCO2を含む場合、塔頂ガスが燃料として使用される前、及び/又は還元ガスとしてリサイクルされる前、特に塔頂ガスが還元ガスとしてリサイクルされる前に、CO2も塔頂ガスから除去されても除去されなくてもよい。そのようなCO2除去が適切か否かは、プロセスの具体的な状況に依存する。例えば、アンモニアの分解に加えて、鉄回収ゾーン内で合成ガスが生成する場合、リサイクルされた塔頂ガス(部分)中に存在するCO2は、前記ゾーン内で炭化水素を合成ガスに改質するために効果的に使用することができる。
【0072】
追加の還元ガス/還元剤は、特に、ユニットの直接鉱石還元ゾーンに直接、すなわち最初に鉄回収ゾーンを通過させることなしに導入することができる。
【0073】
或いは、又はそれと組み合わせて、追加の還元ガス/還元剤をユニットの鉄回収ゾーンに供給し、生成したN2及びH2と共に鉄回収ゾーンから直接鉱石還元ゾーンに搬送することもできる。この場合、追加の還元ガス/還元剤は、アンモニアとの混合物の形態で、或いはアンモニアとは別に、更には一部はアンモニアと混合して一部はアンモニアとは別に、鉄回収ゾーンに供給することができる。
【0074】
COなどの炭素を含有する追加の還元剤、及びガス状炭化水素やCO2を含有する組み合わせなどの還元剤前駆体又は前駆体の組み合わせを直接還元反応器へ供給することは、特に、炭素を含有するか又は増加した炭素レベルを示すDRIの製造に有用であることができ、DRI中のそのような炭素の存在は、例えば、DRIがアーク炉溶融プロセスで鋼を製造するために使用される場合に有用であることができる。還元剤前駆体又は前駆体の組み合わせとして使用され得るガス状炭化水素の例は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、及びペンタンからなる群から選択される炭化水素、又は前記炭化水素の2種以上の組み合わせ、好ましくは天然ガスである。
【0075】
追加の還元ガス/還元剤、又は還元剤前駆体又は前駆体の組み合わせが使用される場合、好ましくは、直接還元プロセス又は鉄鉱石還元プロセスとそれに続く鋼製造プロセスとの組み合わせのカーボンフットプリントを増加させないように、或いは前記カーボンフットプリントを過剰に増加させないように注意を払う必要がある。
【0076】
本発明は、鋼の製造方法にも関する。前記方法によれば、上述したプロセスの任意の実施形態によって鉄鉱石から直接還元鉄が製造され、例えばサブマージアーク炉として当該技術分野で公知のアーク炉の形態を含むアーク炉において、或いは任意選択的に直接還元鉄(30)がブリケット化された後に、鋼を製造するための別のDRI溶融装置において直接還元鉄が溶融する鋼製造プロセスによって、前記直接還元鉄から鋼が製造される。先に示したように、直接還元鉄は、鋼の製造に使用される前にブリケット化されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1】本発明による方法及びそれに適した設備の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
以降で、本発明とその利点が、以降の実施例と、本発明による方法及びそれに適した設備の実施形態の概略図である添付の[
図1]を参照することによって非限定的な形で説明される。
【0079】
図示の実施形態では、直接還元ユニットは移動床DRI反応器1の形態であり、鉄鉱石2は反応器の上部でDRI反応器1に供給され、その後DRI反応器1内を下方に移動する。
【0080】
鉱石は上部の直接鉱石還元ゾーン4aに入り、そこで鉱石は鉄の融点よりも低い温度で、還元剤である水素を含む還元ガス3aとの接触により、直接還元鉄(DRI)4へと還元される。
【0081】
還元剤としての水素を用いた鉄鉱石2の前記還元は、以下の反応を含む:
3Fe2O3+H2(g)⇔2Fe3O4+H2O(g),T=400-700℃ (j)
2Fe3O4+2H2(g)⇔6FeO+2H2O(g),T=700-900℃ (k)
6FeO+6H2(g)⇔6Fe+6H2O(g),T=850-1000℃ (l)。
【0082】
このようにして製造されたDRI4は、直接鉱石還元ゾーン4aから、750℃~1050℃、より好ましくは850℃~950℃の温度で、直接鉱石還元ゾーン4aの直下に位置する鉄回収ゾーン4bまで更に下方に移動する。還元ガスが鉄回収ゾーン4bに供給される際の温度は、好ましくは、鉄回収ゾーン4bに供給されるDRIの温度と少なくとも等しく、より好ましくはそれよりも高い。還元ガスは850℃~1100℃、より好ましくは950℃~1050℃の温度で鉄回収ゾーン4bに供給されることが有利である。
【0083】
直接鉱石還元ゾーン4bを出たDRI4は、実際には、未還元の酸化鉄と、部分的に還元された酸化鉄と、金属鉄、すなわち完全に還元された酸化鉄との混合物を含有する。
【0084】
典型的には、DRI生成物中の鉄含有量の85%~99%、好ましくは90%~97%、より好ましくは94%~97%が金属鉄であり、残りの鉄は非金属酸化鉄(FexOy)の形態である。
【0085】
原理的には望ましいものの、鉄鉱石を完全に反応させて鉄鉱石に含まれる鉄を100%金属鉄とすることは、そのような実現はDRIプロセスの生産性を大幅に低下させ、プロセスの還元ガス消費量を大幅に増加させることになるため、実際には通常は非現実的である。したがって、鉄鉱石の還元の度合いに関しては妥協が必要である。
【0086】
鉄回収ゾーン4bの内部では、DRI4が還元ガス生成のための触媒として使用される。
【0087】
予熱されたアンモニア含有ガス流25cは、バッスル管3を介して鉄回収ゾーン4bに供給される。バッスル管3はガス流25cを分配するためのマニホールドとして機能し、そこから、DRI反応器1の円周上に等間隔で配置された複数のインジェクター(図示せず)が鉄回収ゾーン4bに通じている。
【0088】
ガス供給流25cは、0体積%超100体積%以下、好ましくは50体積%~100体積%の流れ25cの割合でアンモニア19を含む。
【0089】
鉄回収ゾーン4bの内部では、アンモニアクラッキングとも呼ばれるアンモニアの分解が起こる。より具体的には、ガス流25cのアンモニア19が分解反応(1):
2NH3⇔3H2+1N2 (1)
を受け、その際、前記ゾーン4bに存在するDRI4中の金属鉄が、分解反応(1)の触媒として作用する。
【0090】
鉄鉱石2の還元のためには水素が還元剤として作用するため、アンモニアの分解反応により、前記水素を還元剤として含む還元ガス3aが生成する。
【0091】
このようにして生成した還元ガス3aは、鉄回収ゾーン4bから直接鉱石還元ゾーン4aへと上方に移動し、その際に還元ガス3aは下降する鉄鉱石2と接触する。この接触により、鉄鉱石2中の酸化鉄が、未還元の酸化鉄と、部分的に還元された酸化鉄と、完全に還元された酸化鉄、すなわち鉄の融点未満の温度の金属鉄(上述)との混合物4へと還元される。この混合物は直接還元鉄又はDRI4と呼ばれる。
【0092】
まだ高温のDRI4は、鉄回収ゾーン4bから、更に下方のDRI反応器1の鉄冷却ゾーン26へと移動する。
【0093】
冷却ゾーン26の内部では、DRIは、冷却ガス27によって、DRI反応器1からの排出後の排出されたDRI30の即時使用に依存する温度まで冷却される。
【0094】
排出されたDRI30が、400℃~800℃、より好ましくは600℃~800℃の範囲の温度で、隣接するEAF(図示せず)に直ちに装入される場合、排出されたDRI30に既に/まだ存在する顕熱を利用しながら、EAFへのDRI30の安全な搬送に必要な冷却に制限することが有利である。
【0095】
或いは、DRI30は、DRIの保管及び/又は搬送のために、周囲温度に近いかなり低い温度まで冷却されてもよい。好ましい実施形態によれば、DRI4は、例えば鉄冷却ゾーン26の内部で、排出されたDRI30がブリケット(HBI)へと形成される前に限定的な冷却を受ける。このようなブリケット化により、ブリケットを更に冷却した後のDRI30が、ブリケット化されていないDRIよりも、保管及び/又はDRI反応器1から離れて位置する(EAF)場所への搬送により適したものになる。
【0096】
冷却ガス27は、高温のDRI4と反応しないように実質的に不活性とすることができる。冷却ガス27は、冷却中にDRI4に望まれる特性を付与するガスであってよく、或いはそのようなガスを含んでいてもよい。そのようなガスの例は、反応(b)に従ってクラッキングして炭素をDRI4内に析出させ、そこで炭素が固溶体として鉄に熔解することができる天然ガスである。上で述べたように、炭素はDRIの溶融中にEAFプロセスに運転上の利点とエネルギー節約上の利点をもたらす。冷却ガス27は、DRI反応器1からの塔頂ガス5の一部を含むこともできる。
【0097】
DRI反応器1の冷却ゾーン26の頂部で、使用済み冷却ガス27が冷却ゾーン26から使用済み冷却ガス流28として抜き出され、その後、流れ28は、必要に応じて補給冷却ガスで強化される前に冷却され、冷却ゾーン26の底部で再注入するために圧縮される。DRI30は、円錐形の冷却ゾーン26の底部でDRI反応器1から、その後の使用に最も適した温度で抜き出される(上で説明した通り)。
【0098】
図示の実施形態では、アンモニア含有ガス供給流24は、複数の副流へと分割され、それらはガス予熱器25に別個に供給される。ガス予熱器25の内部では、例えば750℃~1100℃の温度で予熱されたガス副流25a、25bが得られるように、ガス副流24a、24bが加熱される。次いで、予熱された副流24a及び25bは、再度合わされて予熱されたアンモニア含有ガス流25cを形成し、これがDRI反応器1の鉄回収ゾーン4bに供給される。ガス予熱器25の性質及び構造に応じて、供給流24は、副流に分割されずにガス予熱器25に供給されてもよく、或いはガス予熱器25に供給される前に2つ以上の副流に分割されてもよいことが理解されるであろう。
【0099】
この特定の場合、予熱器25は、DRI反応器1から排出された塔頂ガス5の任意選択的に脱水されていてもよいフラクション11の燃焼によって加熱される。
【0100】
アンモニアに加えて、ガス供給流25cは、天然ガス又はコークス炉ガス又はそれらの混合物などの炭化水素含有ガス20を更に含んでいてもよい。炭化水素含有ガス20中の天然ガス及びコークス炉ガスのそれぞれの割合は、0~100体積%とすることができる。流れ25c中の炭化水素含有ガス20の割合は、0体積%~50体積%で変化し得る。ガス供給流25cは、追加のガス状水素21(グレーH2など、好ましくはブルーH2、より好ましくはグリーンH2)も、特に流れ25cの0体積%~50体積%の割合で含んでいてもよい。グリーンH2は、例えば再生可能電力を使用した水の電気分解などにより、CO2排出ゼロで生成されるH2である。ブルーH2は、最大0.97kg CO2/kg H2の排出強度を示し、例えば、炭素回収を伴う水蒸気メタン改質によって生成することができる。グレーH2は、最大9.3kg CO2/kg H2の排出強度を有し、炭素回収なしの水蒸気メタン改質によって生成することができる。(van Cappellen,L.,Croezen,H.&Rooijers,F.“Feasibility Study into Blue Hydrogen”.CE Delft,2018)。
【0101】
ガス供給流25cは、追加の蒸気22も含んでいてもよい。そのような追加の蒸気は、DRI反応器1の鉄回収ゾーン4bの内部で、そこに含まれる任意のガス状炭化水素含有ガス20(天然ガス及び/又はコークス炉ガスなど)を改質するために、流れ25cの中に適切な量の水素を供給するように添加することができる。
【0102】
ガス供給流25cは、0体積%~50体積%で変動し得る流れ25cの割合で合成ガス23も含み得る。
【0103】
ガス供給流25cは、鉄回収ゾーン4bにおける還元ガス生成の効率を向上させるために、或いはより一般的には直接鉱石還元ゾーン4a内の鉱石還元の効率を向上させるために、及び/又は前述のように生成したDRI4への炭素析出を促進又は引き起こすために有利に添加することができる、リサイクルされた塔頂ガス10aなどの任意の他のガスも含み得る。
【0104】
ガス供給流25cの成分の割合の合計は、ガス供給流25cの厳密に100体積%に相当し、アンモニア19以外のガス供給流25cの任意の化合物の割合の合計は、必然的に100体積%未満に相当し、残部(合計で100体積%を形成)はアンモニア19であることが理解されるであろう。
【0105】
予熱されたガス流25cがメタンなどの少なくとも1種の炭化水素を含む場合、前記炭化水素は鉄回収ゾーン4bで改質される。流れ25c(又は鉄回収ゾーン4bに供給される追加のガス)の組成に応じて、鉄回収ゾーン4bは、前記炭化水素の水蒸気改質器として、又は乾式改質器として機能することができる(反応(a))及び(.c)又は(f.)を参照)。
CH4+H2O⇔CO+3H2 (a)
CH4⇔C(s)+2H2 (b)
CO2+CH4⇔2H2+2CO (c)
C(s)⇔[C] (d)
3Fe+[C]⇔Fe3C (e)
2CO+2H2⇔CH4+CO2 (f)
【0106】
ここでも同様に、鉄回収ゾーン4bに存在するDRI4は、炭化水素の改質中に触媒として作用すると考えられる。
【0107】
炭化水素改質によって生成するH2-及びCO-含有合成ガスは、アンモニア分解生成物3aと共に鉄回収ゾーン4bから直接鉱石還元ゾーン4aに移動する。直接鉱石還元ゾーン4aの内部では、合成ガスのH2とCOの両方が鉄鉱石2を還元するための追加の還元剤として作用する。
【0108】
そのようなCO含有還元ガスが直接鉱石還元ゾーン4aで鉄鉱石2と接触するときに起こる追加の還元反応は、反応(g~i)に記載されている。
3Fe2O3+CO(g)⇔2Fe3O4+CO2(g),T=400-700℃ (g)
2Fe3O4+2CO(g)⇔FeO+2CO2(g),T=700-900℃ (h)
FeO+CO(g)⇔Fe+CO2(g),T=850-1000℃ (i)
【0109】
DRI反応器1、特にその直接鉱石還元ゾーン4aは、直接鉱石還元ゾーン4a内の鉄鉱石2及び還元ガス3aを、そこで起こる鉱石還元反応に適した/最適化された温度範囲内に維持するために、加熱手段(図示せず)を備えていてもよい。
【0110】
使用済み還元ガス5(「塔頂ガス」とも呼ばれる)は、100℃~600℃、好ましくは250℃~500℃、より好ましくは300℃~450℃の温度で、その頂部又はその近傍でDRI反応器1を出る。
【0111】
先に示したように、ガス供給流25cは、リサイクルされた塔頂ガス10aを含んでいてもよい。更に、排気された塔頂ガス5は、ダストキャッチャー及び/又はスクラバー6内で除塵されてもよい。[
図1]に示される有利な実施形態によれば、任意選択的に除塵された塔頂ガス6aは、その後熱回収システム7に移動し、そこで、塔頂ガスの温度が、25℃~100℃、しかし好ましくは25℃~40℃の設定温度まで制御された形で下げられる。選択された設定温度は、必ずしも必要であるわけではないものの、リサイクルされた塔頂ガス10a中の水の分圧を調節するように選択することができる(以下を参照)。熱回収システム7で回収されたエネルギーは、様々な任意の目的のために使用することができ、例えば、限定するものではないが、蒸気を生成するため、又はガス予熱器25で使用され得る燃焼酸化剤及び/若しくは燃料を予熱するために使用することができる。
【0112】
冷却された塔頂ガス7aは、必要選択的に凝縮器8内で脱水され、脱水され冷却された塔頂ガス流8aを生成する。
【0113】
水蒸気改質が、鉄回収ゾーン4bで炭化水素から合成ガスを製造するための望ましい方法である場合、水蒸気改質プロセスを改善するために、通常CO2分離ステップ10が使用される。
【0114】
乾式改質が、鉄回収ゾーン4bで炭化水素から合成ガスを製造するための望ましい方法である場合、CO2が反応(c)に関与し、したがって鉄回収ゾーン24bでの還元ガスの生成に寄与するため、CO2分離ステップ10を省略することもでき、或いはステップ10において流れ9から除去されるCO2の量を制限することができる。その場合、反応(b)を回避又は制限するために十分な注意が払われる。
【0115】
前記脱水され冷却された塔頂ガス流8aの少なくとも一部はコンプレッサー9で圧縮され、その後、CO2除去ユニット10で圧縮された塔頂ガス9aからCO2が除去される。
【0116】
真空圧力スイング吸着(VPSA)装置又は圧力スイング吸着(PSA)装置を使用して流れ9aからCO2を分離してCO2が希薄な流れ10aを生成するためには、流れ9aは2~10Bar、好ましくは4~8Barの圧力である必要がある。更なる選択肢は、化学吸収ユニットを使用して流れ9aからCO2を分離し、例えばアミンの使用によってCO2が希薄な10aを生成することである。これは、必要に応じてより低い圧力で行うこともできる。CO2は、高分子膜又は極低温分離によって流れ9aから分離することもできる。
【0117】
上流のガス改質器が流れ23を生成するために使用され、反応(c)に関与する場合、CO2は還元ガスの生成に有利に寄与することから、CO2分離ステップ10を省略することもでき、或いはステップ10において流れ9から除去されるCO2の量を制限することができる。
【0118】
CO2の除去が必要又は有用であるか否かは、特に(a)塔頂ガス5中に存在するCO2濃度に依存し、これは、ひいてはDRI反応器1に供給されるガス(DRI反応器1の冷却ゾーン26から抜き出される冷却ガス27を除く)の性質及び相対量と、(b)ガス供給流25c中のCO2の存在が、例えばDRI反応器1の鉄回収ゾーン4b内の炭化水素改質の目的のために有用であるかどうか、及びどの程度有用であるかと、に依存する。
【0119】
得られた処理済み塔頂ガス10aは、図示の実施形態では、その後ガス供給流25cの他の成分と混合される。
【0120】
しかしながら、塔頂ガス5は、ガス供給流25cへの添加の代わりに、或いはそれに加えて、加熱燃料として使用することもできる。
【0121】
[
図1]に示されているように、冷却され脱水された塔頂ガス流8aは、リサイクル副流9と追加の副流11とに分割されてもよい。副流11の流量は、流れ8aの0~100体積%とすることができるが、好ましくは流れ8aの20体積%~90体積%であり、より好ましくは流れ8aの30体積%~80体積%である。図示の実施形態では、副流11は、予熱された供給流25cを得るためにガス流24を予熱するための燃料として使用される。流れ11の発熱量を変更するために、必要に応じて、天然ガス8b及び/又は更にはアンモニア8cなどの可燃性ガスが流れ11に添加されてもよい。この予熱は、複数の燃焼チャンバー11a、11b、11cと、加熱されるガスのための複数の流路とを備える加熱器25内で行われ、前記流路は熱交換壁によって燃焼チャンバーから分離されている。
【0122】
前述したように、ガス流24は、個々の副流24a及び24bへと分割される。各副流24a、24bは、ヒーター25を通過する別の流路に沿って流れるようにされる。
【0123】
塔頂ガス副流11も同様に、ヒーター25の個々の燃焼チャンバー11a、11b、11cへと分割され、そこで適切な酸化剤を用いて燃焼される。この形式では、各燃焼チャンバー11a、11b、11c内で熱が発生し、前記熱が個々の副流24a、24bを予熱された副流25a、25bへと加熱するために使用され、これらはその後予熱されたガス供給流25cを得るために1つに合わせられる。
【0124】
図に示されているように、燃焼チャンバー11a、11b、11cから出る燃焼排ガス13a、13b、13cは、任意選択的な熱交換器12を通過して流れ11を予熱すると共により低温の排ガス流13を生成し、その後排ガス流13は煙突14へ流れ、そこで大気15に出る。天然ガス、コークス炉ガス、又はその他のガス状炭化水素が副流11の一部として使用される場合、排ガス13にはCO2が含まれることになり、これは、好ましくは大気15中に放出される前に流れ13から抜き出す必要がある(抜き出しは図示せず)。
【0125】
本発明の特に有利で特徴的な実施形態によれば、ガス供給流25cのアンモニア19は、ブルーアンモニア(ブルー水素を使用して合成される)、又は好ましくはグリーンアンモニア(グリーン水素を使用して合成される)19であり、そのため、従来の炭化水素ベースのDRI運転と比較して、CO2排出量/カーボンフットプリントの大幅な削減をもたらす。
【0126】
DRI反応器1のバッスル管3に導入する前に供給流25cの温度及び組成を更に調整するために、追加のガス状炭化水素23b及び/又は酸素などの燃焼酸化剤23aがDRI反応器1の上流のガス供給流25cに添加されてもよい。
【0127】
本発明による方法の利点及び特筆すべき特徴には、以下の事項が含まれる:
・ブルーアンモニア又はグリーンアンモニアは、炭素含有炭化水素の一部又は全部を置き換えるために使用することができ、そのため、DRI反応器並びに鉄鋼プラントのCO2排出量を削減することができる。
・ブルーアンモニア又はグリーンアンモニアは、DRI反応器への還元剤としてのブルー又はグリーン水素の供給の一部又は全部を置き換えるために使用することができる。
【0128】
(ブルー/グリーン)水素と比較して、(ブルー/グリーン)アンモニアは、より容易に貯蔵することができ、また(ブルー/グリーン)水素を生成するための天然資源を持たない世界中の各地に船舶輸送することができる。
【0129】
水素(液体形態)の船舶輸送のためには極低温(-253℃)が必要なため、長期航海の間に水素の条件を整えて貯蔵することには非常にコストがかかる。アンモニア(沸点-33℃)は、水素よりもかなり高い温度で液体である。液体アンモニアの貯蔵温度及び輸送温度は高いため、船舶輸送コストが低くなる。したがって、輸送及び貯蔵前に(ブルー/グリーン)水素を(ブルー/グリーン)アンモニアに変換することにより、地理的にはるかに広い地域で、DRI製造における前記(ブルー/グリーン)水素の商業的に実行可能な利用が可能になる。
・反応(n)により、望まれる及び制御可能な/制御された量の溶解炭素(固溶体)及び/又は炭化鉄(Fe3C)を有利に含むDRIを製造するために、アンモニアは、DRI反応器へのアンモニア含有供給流の最大90体積%の割合で、天然ガス、コークス炉ガス、蒸気、及び合成ガスなどのガス状炭化水素と混合することができる。DRIの望まれる炭素含有量は、DRIの最終用途に依存する。DRI中の望まれる炭素含有量が高い(>3%)場合、ガス状炭化水素、コークス炉ガス、水蒸気、及び合成ガスと混合されるアンモニアの割合は、90%未満まで下げることが有効な場合がある。
・DRI反応器は、改質プロセス中の炭化水素、天然ガス、コークス炉ガス、及び/又はその他の炭素含有ガスを100%アンモニアで置き換えることにより、有利なことに、直接のCO2排出を100%なくしながら運転することができる。
【0130】
注:別段の指示がない限り、本明細書では、ガス流中の化合物のパーセントは体積パーセント(体積%)として示される。
【0131】
連続運転式DRI反応器/プロセスとバッチ式DRI反応器/プロセスは区別される。連続運転式DRI反応器に注入されるガス流は、通常DRI反応器の運転中に連続的に注入される。
【0132】
グリーンアンモニア、又はグリーンアンモニアと天然ガス及び適切な量の水蒸気との制御された混合物からなるガス供給流25cが本発明による方法で使用される場合、制御可能な炭素含有量を有するDRIを、CO2排出量を削減しながら製造することができる。
【国際調査報告】