(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】腹圧性尿失禁及び便失禁の治療、軽減及び/又は予防のための成長及び修復促進化合物の局所送達
(51)【国際特許分類】
A61K 31/568 20060101AFI20240822BHJP
A61P 5/24 20060101ALI20240822BHJP
A61P 5/26 20060101ALI20240822BHJP
A61P 5/30 20060101ALI20240822BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20240822BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240822BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20240822BHJP
A61K 31/5685 20060101ALI20240822BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240822BHJP
A61K 38/25 20060101ALI20240822BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61K31/568
A61P5/24
A61P5/26
A61P5/30
A61P13/02
A61P15/00
A61P19/00
A61K31/5685
A61P43/00 121
A61K38/25
A61K38/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515593
(86)(22)【出願日】2022-09-09
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 US2022076156
(87)【国際公開番号】W WO2023039500
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524090909
【氏名又は名称】スタテラ ファーマ インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】エブラーヒーム ベルシ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス シドル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA02
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(57)【要約】
本発明は、骨盤組織の完全性を高めるための組成物及び局所送達方法、ならびに骨盤底の衰弱に起因する腹圧性尿失禁[SUI]及び便失禁[FI]の治療、軽減及び/又は予防に関する。治療は、骨盤底障害を治療するために、膣、肛門直腸管に送達し、又はこれらの内臓の粘膜を通じて送達するための、アンドロゲン、アンドロゲン受容体モジュレータ、グレリン、グレリン類似体、エストロゲン、エストロゲン受容体モジュレータ、又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない成長及び/又は修復促進化合物(複数可)[GRPC]を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象の骨盤底障害を治療するための少なくとも1つの治療化合物の局所送達方法であって、前記少なくとも1つの治療化合物は、成長及び/又は修復促進化合物[GRPC]である、方法。
【請求項2】
前記GRPCは、グレリンの活性型、グレリン類似体、アンドロゲン、エストロゲン、選択的エストロゲン受容体モジュレータ、アンドロゲン受容体モジュレータ及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記骨盤底障害は、便失禁、腹圧性尿失禁、骨盤臓器脱、直腸脱及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記局所送達は、膣への挿入、膣壁への挿入又は膣壁を通じた挿入、肛門管壁への挿入及び/又は肛門管壁を通じた挿入、直腸への挿入、直腸壁への挿入及び/又は直腸壁を通じた挿入、会陰上の挿入又は会陰を通じた挿入、ならびに膀胱壁上の挿入又は膀胱壁を通じた挿入からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒト対象は、男性又は女性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒト対象は女性であり、前記骨盤底障害は、子宮膣脱、膣円蓋脱出、前膣壁脱出、膀胱瘤、後膣壁脱出、直腸瘤及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記治療化合物は、経粘膜送達のための送達システム内にあり、リング、ペッサリー、ゲル、クリーム、軟膏、座薬、又はマイクロアレイニードルシステムの形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの治療化合物は、前記膣壁を通じて吸収される送達システム内にあり、膣リング、膣ペッサリー、ゲル、クリーム、軟膏、膣座薬、又はマイクロアレイニードルシステムの前記形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記治療化合物は、膣への注射、膣壁への注射又は膣壁を通じた注射、肛門管壁への注射及び/又は肛門管壁を通じた注射、直腸への注射、直腸壁への注射及び/又は直腸壁を通じた注射、会陰を通下注射及び膀胱壁を通じた注射によって送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの治療化合物の局所送達は、全身曝露の潜在的な悪影響を最小限に抑え、全身循環ではなく骨盤組織に到達し、それによって血漿濃度が骨盤組織濃度よりも比較的低くなる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの治療化合物は、アンドロゲンとエストロゲンの両方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記アンドロゲンは、硫酸デヒドロエピアンドロステロン(DHEAS)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、アンドロステンジオン(A)、テストステロン(T)、又はジヒドロテストステロンであり、前記エストロゲンは、エストロン、エストラジオール、又はエストリオールである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
グレリン又はグレリン類似体を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの治療化合物の局所送達は、全身曝露の潜在的な悪影響を最小限に抑え、全身循環に入る前に骨盤組織に到達し、それによって骨盤組織濃度と比較して血漿濃度を低下させる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
ヒト対象における骨盤底障害の治療のための薬剤における治療化合物としての少なくとも1つの成長及び/又は修復促進化合物(GRPC)の使用。
【請求項16】
前記GRPCは、グレリンの活性型、グレリン類似体、アンドロゲン、エストロゲン、選択的エストロゲン受容体モジュレータ、アンドロゲン受容体モジュレータ及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記骨盤底障害は、便失禁、腹圧性尿失禁、骨盤臓器脱及び直腸脱からなる群から選択される、請求項15に記載の使用。
【請求項18】
前記局所送達は、膣への挿入、膣壁への挿入又は膣壁を通じた挿入、肛門管壁への挿入及び/又は肛門管壁を通じた挿入、直腸への挿入、直腸壁への挿入及び/又は直腸壁を通じた挿入、会陰を通じた挿入、ならびに膀胱壁を通じた挿入からなる群から選択される、請求項15に記載の使用。
【請求項19】
前記少なくとも15つの治療化合物は、前記膣壁を通じて吸収される送達システム内にあり、膣リング、膣ペッサリー、ゲル、クリーム、軟膏、膣座薬、又はマイクロアレイニードルシステムの形態である、請求項15に記載の使用。
【請求項20】
前記ヒト対象は女性であり、前記骨盤底障害は、子宮膣脱、膣円蓋脱出、前膣壁脱出、膀胱瘤、後膣壁脱出及び直腸瘤からなる群から選択される、請求項15に記載の使用。
【請求項21】
前記治療化合物は、経粘膜送達のための送達システム内にあり、膣リング、膣ペッサリー、ゲル、クリーム、軟膏、座薬、又はマイクロアレイニードルシステムの前記形態である、請求項15に記載の使用。
【請求項22】
前記治療化合物は、膣への注射、膣壁への注射又は膣壁を通じた注射、肛門管壁への注射及び/又は肛門管壁を通じた注射、直腸への注射、直腸壁への注射及び/又は直腸壁を通じた注射、会陰を通下注射及び膀胱壁を通じた注射によって送達される、請求項15に記載の使用。
【請求項23】
前記少なくとも1つの治療化合物の局所送達は、全身曝露の潜在的な悪影響を最小限に抑え、全身循環に入る前に骨盤組織に到達し、それによって骨盤組織濃度と比較して血漿濃度を低下させる、請求項15に記載の使用。
【請求項24】
前記少なくとも1つの治療化合物は、アンドロゲンとエストロゲンの両方を含む、請求項15に記載の使用。
【請求項25】
前記アンドロゲンは、硫酸デヒドロエピアンドロステロン(DHEAS)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、アンドロステンジオン(A)、テストステロン(T)、又はジヒドロテストステロンであり、前記エストロゲンは、エストロン、エストラジオール、又はエストリオールである、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
グレリン又はグレリン類似体を更に含む、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
ヒト対象の骨盤底障害を治療するための組成物であって、前記組成物は、成長及び/又は修復促進化合物[GRPC]である少なくとも1つの治療化合物を含む、組成物。
【請求項28】
前記GRPCは、グレリンの活性型、グレリン類似体、アンドロゲン、エストロゲン、選択的エストロゲン受容体モジュレータ、アンドロゲン受容体モジュレータ及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記骨盤底障害は、便失禁、腹圧性尿失禁、骨盤臓器脱及び直腸脱からなる群から選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
前記局所送達は、膣への挿入、膣壁への挿入又は膣壁を通じた挿入、肛門管壁への挿入及び/又は肛門管壁を通じた挿入、直腸への挿入、直腸壁への挿入及び/又は直腸壁を通じた挿入、会陰を通じた挿入、ならびに膀胱壁を通じた挿入からなる群から選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項31】
前記少なくとも1つの治療化合物は、アンドロゲンとエストロゲンの両方を含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項32】
前記アンドロゲンは、硫酸デヒドロエピアンドロステロン(DHEAS)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、アンドロステンジオン(A)、テストステロン(T)、又はジヒドロテストステロンであり、前記エストロゲンは、エストロン、エストラジオール、又はエストリオールである、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
グレリン又はグレリン類似体を更に含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記少なくとも1つの治療化合物は、1用量あたり約0.2mg~1用量あたり約200mgの範囲の量で存在する、請求項27に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月10日に出願された米国仮特許出願第63/242,566号に対する優先権を主張し、その内容は,あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、骨盤組織の完全性を高めるための組成物及び局所送達方法、ならびに骨盤底及び関連構造の衰弱又は損傷に起因する腹圧性尿失禁[SUI]及び便失禁[FI]の治療、軽減及び/又は予防に関する。治療は、骨盤底障害を治療するために、膣、肛門直腸管に送達し、又はこれらの内臓の粘膜を通じて送達するための、アンドロゲン、アンドロゲン受容体モジュレータ、グレリン、グレリン類似体、エストロゲン、エストロゲン受容体モジュレータ、又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない成長及び/又は修復促進化合物(複数可)[GRPC]を含む。
【背景技術】
【0003】
腹圧性尿失禁[SUI]及び便失禁[FI]は、咳やくしゃみなどの腹腔内圧の上昇を引き起こす活動中に発生する。これらは、「ストレス」活動と呼ばれる腹腔内圧の上昇中に、通常は尿や便の抑制を確保する複数の制御メカニズムのうちの1つ、又はより頻繁にいくつかの機能が失敗することによって生じる。これらの制御メカニズムは、構造的な解剖学的特徴、無傷の神経学的メカニズム、完全に機能する局所血管系、尿道、膀胱頸部及び肛門管の領域における全ての構成組織の解剖学的完全性を含む。これらは全て、「機能的な」尿道括約筋又は肛門括約筋として協調して機能する。(1)
【0004】
SUI/FIの病因には、出産時の失禁制御メカニズムのいずれかに対する外傷性損傷と、閉経後のホルモン欠乏及び成長ホルモン分泌の低下を含むがこれらに限定されない老化プロセスの他の複雑な部分によって引き起こされる組織完全性の低下の両方が関与する。
【0005】
尿失禁は膀胱頸部のレベルで維持されるが(2、3)、これが失敗した場合でも、横紋括約筋や骨盤底(挙筋)の筋肉組織を含む尿道の構成要素と神経供給の制御によって尿道の失禁が維持される。更に、血管、コラーゲン、結合組織、尿道粘膜接合も全て自制メカニズムに寄与している。大まかに言って、尿道欠損症は、尿道の過剰可動性又は内因性括約筋欠損症として分類され得る。実際、患者は様々な程度の重症度で両方の症状を示す。(2、3、4)。
【0006】
現在、SUIの一般的な治療は、ライフスタイルの変化、骨盤底運動(ケーゲル)、括約筋の緊張を増強するための薬物治療、膀胱頸部の閉鎖を増強するための増量剤の注射、尿道の横紋括約筋への幹細胞の注射、及び様々な失禁手術を含む。(4)これらの外科的処置は、骨盤の解剖学的構造の支持及び位置決めの欠陥を補償もしくは回復すること、又は効果のない膀胱もしくは肛門括約筋の閉鎖を増強することを試みる。外科的処置は、腹腔内圧の上昇中に膀胱頸部及び近位尿道を持ち上げたり、尿道を安定させたりするための処置、括約筋形成術及び骨盤底弛緩などの併存状態の矯正を含む。
【0007】
便失禁を引き起こすメカニズムは、尿失禁を引き起こすメカニズムと似ている。内外肛門括約筋と肛門挙筋は全て役割を果たすが、それに加えて、便の物理的性質も重要である。
【0008】
FIの場合、外科的処置は、関連する骨盤の解剖学的構造の支持及び位置決めの欠陥を回復したり、効果のない肛門括約筋の閉鎖を増強したりすることも試みる。治療法は、スリング手術、括約筋形成術、人工括約筋、神経調節及び直腸脱などの併存状態の矯正を含む。(5、6)。
【0009】
閉経後の移行が完了すると、エストロゲンの利用可能量は通常90%低下するため、エストロゲン欠乏症は閉経後の全ての女性に共通する。しかし、加齢に伴う重大なホルモン低下はこれだけではない。女性のアンドロゲンレベルも大幅に低下することは見落とされがちである。閉経後も、アンドロゲンの供給源はある程度、依然として卵巣(7)と、他のより強力なアンドロゲンの前駆体となるアンドロステンジオン(A4)とデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)の両方を生成する副腎である。(8)しかし、卵巣からのテストステロン出力は加齢とともに減少し、女性では閉経前でも20代半ばから副腎出力が減少し始める。その結果、多くの閉経後の女性のアンドロゲンレベルは非常に低くなる。成長ホルモンと関連するGRPCも加齢とともに低下し、加齢が失禁メカニズムに及ぼす悪影響の一部であり得る。(9)
【0010】
尿失禁やその他の下部尿路症状の有病率は閉経後に増加し、60歳以上の女性の38%~55%が罹患している。(10、11)地域在住の女性において報告されているFIの有病率は2.2%~24%と大きく異なり、年齢が上がるにつれて増加する。(12)
【0011】
従って、骨盤底機能不全は、老化プロセスと閉経後のホルモン欠乏の両方に起因し得、本発明者らは、これはエストロゲン、アンドロゲン及び成長ホルモン軸の活性低下の結果であると理論化している。
【0012】
閉経後に失われた膣の構造的完全性と機能を回復するためのエストロゲンの投与は、確立された処置である。この方法は、エストロゲン欠乏症に関連する膣上皮の変化を正常に修復するが、SUIに対する影響は様々で、場合によっては有害である。(13)更に、いくつかの疫学研究は、一部の女性におけるFIに対するエストロゲンの悪影響を示唆する。(12)従って、質の高い研究がほとんどなく、FIの医学的管理について合意されたコンセンサスがないため、FIに対する薬物治療の有効性に関する現在の証拠は一貫しない。
【0013】
一例として、エストロゲン治療は経口投与で骨盤組織に良い効果をもたらす可能性があるが、これは、様々な理由で望ましくない可能性のある身体への影響を前提としているが、特にその理由としては、証拠に基づくかどうかに関係なく、がんや心血管疾患に関連した懸念が表明されている。
【0014】
従来技術の欠点を考慮して、本発明は、SUI及び/又はFIを治療及び/又は予防するための新規かつ独創的な方法及び組成物を提供する。
【発明の概要】
【0015】
SUI及び/又はFIに対する以前の治療の欠点を克服するために、本発明は、治療対象の骨盤底と接触する領域への成長及び/又は修復促進化合物(複数可)[GRPC]の局所送達によって骨盤組織の完全性を高める治療及び方法を提供する。また、組織の成長と修復を適切に刺激することにより、単独で、又は骨盤底筋運動と組み合わせることにより、手術の必要性がなくなる可能性がある。
【0016】
一態様では、本発明は、ヒト対象における骨盤底障害を治療するための少なくとも1つの治療化合物の局所送達方法を提供し、治療化合物は、グレリンの活性型、グレリン類似体、アンドロゲン、エストロゲン、選択的エストロゲン受容体モジュレータ、アンドロゲン受容体モジュレータ、又はそれらの組み合わせからなる群から選択され、骨盤底障害は、便失禁、腹圧性尿失禁、骨盤臓器脱、直腸脱及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましい組み合わせは、硫酸デヒドロエピアンドロステロン(DHEAS)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、アンドロステンジオン(A)、テストステロン(T)、及びジヒドロテストステロンなどのアンドロゲンと、エストロン、エストラジオール又はエストリオールを含むがこれらに限定されないエストロゲンの両方を含む。
【0017】
ヒト対象の骨盤底障害を治療するための少なくとも1つの治療化合物の局所送達は、膣への挿入、膣壁への挿入又は膣壁を通じた挿入、肛門管壁への挿入及び/又は肛門管壁を通じた挿入、直腸への挿入、直腸壁への挿入及び/又は直腸壁を通じた挿入、会陰及び膀胱壁を通じた挿入からなる群から選択される。
【0018】
本発明は、女性対象の骨盤底障害を治療するために、上で開示した少なくとも1つの治療化合物の局所送達を提供し、骨盤底障害は、子宮膣脱、膣円蓋脱出、前膣壁脱出、膀胱瘤、後膣壁脱出及び直腸瘤からなる群から選択される。
【0019】
更に、別の態様では、本発明は、ヒト対象の骨盤底障害の治療のための薬剤における治療化合物としての少なくとも1つの成長及び/又は修復促進化合物(GRPC)の使用を提供し、骨盤底障害は、便失禁、腹圧性尿失禁、骨盤臓器脱、直腸脱及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、少なくとも1つの治療化合物は、グレリンの活性型、グレリン類似体、アンドロゲン、エストロゲン、選択的エストロゲン受容体モジュレータ、アンドロゲン受容体モジュレータ、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0020】
GRPCという用語は、性ホルモン及び成長因子、例えば、骨盤組織にプラス効果を及ぼす成長ホルモン分泌促進物質、類似体又は模倣物を含むが、これらに限定されない。必要性は骨盤底組織に局所的であり、場合によっては全身曝露が望ましくない場合があるため、「局所」療法が望ましい。重要なことは、本発明は、全身曝露の潜在的な悪影響を克服し、局所的に吸収されたホルモンが全身循環に入る前に骨盤組織に到達するため、局所療法の使用によって標的組織への治療薬のより高い曝露を可能にする可能性があることである。その結果、血漿濃度は骨盤組織濃度よりも低くなる。
【0021】
本発明の送達システムは、患者の利便性を最大限に高め、全身曝露、ひいては副作用の影響を最小限に抑えながら、媒体又は装置から標的組織へのGRPCの最適な移送を可能にする。この送達は膣もしくは肛門直腸管内で行われ、吸収は膣もしくは肛門直腸粘膜を通じて、又は骨盤組織への注射によって行われる。経粘膜治療の場合、送達システムは、膣リング、膣ペッサリー、ゲル、クリーム、軟膏、座薬、又はマイクロアレイニードルシステムであり得る。
【0022】
別の態様では、本発明は、前記GRPCは、グレリンの活性型、グレリン類似体、アンドロゲン、エストロゲン、選択的エストロゲン受容体モジュレータ、アンドロゲン受容体モジュレータ、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの治療化合物を含む組成物を提供する。好ましくは、組成物は少なくともエストロゲン及びアンドロゲンを含む。更に、組成物はグレリン又はその類似体を含み得る。組成物は、薬学的に許容される担体を含み得る。
【0023】
組成物中に存在する活性な治療化合物の量は、最終組成物の強度に依存する。一実施形態では、少なくとも1つの治療化合物は、1用量あたり約0.2mg~1用量当たり約200mg、好ましくは1用量あたり約1mg~約30mg、好ましくは1用量あたり約2mg~約20mg、より好ましくは1用量あたり約10mg~約20mgの範囲の量で存在する。特定の座薬剤形では、少なくとも1つの治療化合物は、1用量あたり約1mg~約30mg、好ましくは1用量あたり約10mg~約20mgの量で存在する。特定のクリーム又はゲル剤形では、少なくとも1つの治療化合物は、1用量あたり約1mg~約50mg、好ましくは1用量あたり約10mg~約30mgの量で存在する。
【0024】
組成物は、投与様式に応じて、毎日、週に2回、又は週に1回、少なくとも3か月間、好ましくは少なくとも12か月間投与され得る。
【0025】
本発明の組成物及び重要な局所送達は、経口投与経路と比較した場合、より低い血清濃度及びより少ない全身性副作用により、全身性副作用を軽減しながら、高い局所効果を有し、従って、理想的な投与経路として骨盤底領域への局所送達となる。
【0026】
本発明のこれら及び他の態様については、以下の詳細な説明で更に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本処置は、SUI及びFIの治療におけるGRPCの局所投与の使用を教示する。GRPCは、組織の成長及び修復に最適な性ホルモン[エストロゲン/アンドロゲン]環境を確保するために、又は追加の成長因子、グレリンの形態、又はグレリン受容体システムに局所的に結合するグレリン類似体を添加するために、必要に応じて単独療法又は併用療法として投与され、その結果、GRPCの組み合わせ全体が、骨盤組織の成長及び/又は修復を最適に刺激し、閉経及び/又は老化変化を逆転させることができる。目的は、全ての骨盤底組織、特に肛門挙筋、尿道周囲組織、膀胱頸部領域、及び尿失禁や便失禁に寄与する全ての構造の組織構造と機能を改善し、SUI又はFIを予防又は治療することである。
【0028】
本明細書で使用される用語は、一般に、本発明の文脈内及び各用語が使用される特定の文脈において、当該技術分野における通常の意味を有する。本発明の組成物及び方法、ならびにそれらの使用方法を説明する際のさらなる指針を提供するために、特定の用語を以下に定義する。
【0029】
定義
「エストロゲン受容体」という用語は、エストロゲンに結合する核受容体遺伝子ファミリー内の任意のタンパク質を指す。本発明におけるヒトエストロゲン受容体は、生化学分野の当業者によって認識される任意の追加のアイソフォームに加えて、アルファ受容体アイソフォーム(本明細書では「ER-アルファ」と呼ぶ)を含む。
【0030】
「選択的エストロゲン受容体モジュレータ」(又は「SERM」)という用語は、組織依存的にエストロゲン受容体(例えば、ER-α)のアゴニスト又はアンタゴニストとしての活性を示す化合物である。従って、生化学分野の当業者には明らかなように、SERMとして機能する本発明の化合物は、一部の組織(例えば、骨、膣、膀胱、尿道)ではエストロゲン受容体アゴニストとして作用し、乳房などの他の組織型ではアンタゴニストとして作用することができる。
【0031】
「約」又は「大体」という用語は、当業者が測定した特定の値の許容誤差範囲内であることを意味し、それは、値の測定又は決定方法、即ち、測定システムの制限に部分的に依存する。例えば、「約」は、当技術分野の慣例に従って、3標準偏差以内又は3を超える標準偏差を意味し得る。あるいは、「約」は、所定の値の最大20%、好ましくは最大10%、より好ましくは最大5%、更により好ましくは最大1%の範囲を意味し得る。あるいは、特に生物学的システム又はプロセスに関して、この用語は、値の桁内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。特に指定しない限り、本明細書で提供される全ての値は、「約」という用語を含むと想定できる。
【0032】
「薬学的に許容される」という語句は、「一般に安全とみなされている」(GRAS)分子実体及び組成物を指し、例えば、生理学的に許容可能であり、典型的には、動物に投与した場合、胃のむかつき、めまいなどのアレルギー反応や同様の好ましくない反応を引き起こさない。好ましくは、本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、動物での使用について、連邦政府又は州政府の規制当局によって承認されているか、米国薬局方又はその他の一般に認められている薬局方に記載されていることを意味する。
【0033】
「担体」という用語は、化合物と一緒に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指す。このような医薬担体は、水、石油、動物、植物又は合成由来のものを含む油、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などに対する溶解度が高いため、滅菌液体であり得る。ミセル又はデキストランなどの担体を使用して、薬剤を水溶液又は懸濁液として送達することができる。E.W.Martinは、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」の中で適切な医薬担体について説明している。
【0034】
本明細書で使用される「量(amount)」という用語は、文脈に応じて量(quantity)又は濃度(concentration)を指す。治療有効量を構成する薬物の有効量は、特定の薬物の効力、製剤の投与経路及び製剤の投与に使用される機械システムなどの要因に応じて変化する。特定の薬物の治療有効量は、当業者であれば、そのような要因を十分に考慮して選択することができる。
【0035】
本発明の局所療法の送達は、全身療法によって達成できるよりも高い曝露を伴う局所組織への治療効果を主に限定し、これは膣及び/又は肛門直腸粘膜を介した投与によって達成され得る。このような方法により、全体の用量をより低くして効果を発揮することも可能になり、この方法は最良の医療行為に従ったものである。この標的を絞った方法は、骨盤以外の組織は治療にさらされないか、限定されているため、より安全であり得る。
【0036】
アンドロゲンは筋肉、血管系、コラーゲン代謝、神経機能に影響を与える可能性があるため、膀胱頸部及び直腸/肛門周囲領域の組織の完全性にプラス影響を与える可能性があるが、SUI又はFIの治療手段の一部としてアンドロゲン治療を使用することは現在行われない。
【0037】
失禁に対する「加齢」の影響は、局所的に成長ホルモンの利用可能性が減少することによって部分的に媒介され得る。成長ホルモン分泌促進物質であるグレリンは、食欲への効果でよく知られているが、組織の完全性を維持する役割を果たしており、これは骨盤底組織にも当てはまる可能性がある。
【0038】
本発明は、骨盤底組織の完全性を改善する物質が骨盤底障害の治療のための治療薬として使用されることを教示する。骨盤底障害は、失禁(尿及び/又は便)及び/又は骨盤臓器脱(尿管膣及び/又は直腸)を含む。本発明の治療剤は、成長及び/又は修復促進化合物(複数可)(GRPC)として広く分類でき、性ホルモン、性ホルモン受容体モジュレータ、及び骨盤組織にプラス効果を及ぼす成長ホルモン分泌促進物質、類似体又は模倣物などの成長因子などの様々な薬剤を含むがこれらに限定されない。これらの薬剤は、異なる作用機序を持つ複数の治療化合物の投与、併用療法が相加効果及び/又は相乗効果を示すことを考慮すると、単独療法として効果的であり得る。
【0039】
本発明の1つの広範な態様では、強力なアンドロゲンは単独で、又は強力なエストロゲンと組み合わせて、活性型グレリン(例えば、組織の完全性を改善することによって骨盤底機能不全を治療するために、骨盤組織の構造と機能を最適化することを目的とした、n-オクタノイルグレリン[NAG]又はデスアシルグレリン[DAG]又はその類似体)を添加又は添加せずに使用され得る。
【0040】
強力なアンドロゲンはジヒドロテストステロン[DHT]であり、強力なエストロゲンはエストラジオール[E2]であり得る。女性の場合、E2は閉経前の主な循環エストロゲンであり、最も強力なエストロゲンであるため、これがエストロゲン欠乏症の変化の治療の論理的な候補である。
【0041】
DHTの選択は、効力、受容体結合活性及びテストステロンのエストラジオールへの芳香族化の問題に基づいている。アンドロゲングループは、ジヒドロテストステロン(DHT)、テストステロン、アンドロステンジオン、デヒドロエピアンドロステロンの4つのホルモンで構成される。これらのアンドロゲンの相対的な効力は、それぞれ約300%、100%、10%、5%であり、これらの相対的な効力は、研究対象の種及び使用されるアッセイ方法の違いによって概算値となる。(14)
【0042】
主な循環アンドロゲンはテストステロンである。しかし、テストステロンは、特定の標的組織に吸収されると、5-アルファレダクターゼ酵素によってジヒドロテストステロン[DHT]に変換され、それらの組織ではアンドロゲン作用がDHTを介して優先的に媒介される。アンドロゲン受容体[AR]はテストステロンとDHTの両方に結合するが、DHTに対するARの親和性がテストステロンよりも約4倍高いため、DHTの効力はテストステロンよりも大きくなる。(15、16)どちらのアンドロゲンも、[受容体メカニズムを介して]ゲノム効果と、[他のメカニズムを介して]非ゲノム効果を発揮する。(17)DHTが関連するアンドロゲンであり、5-アルファレダクターゼの活性が低い組織では、結果としてテストステロンの活性が制限され、テストステロンではなくDHTを投与することで最大の効果が保証される。
【0043】
グレリン及びその類似体は組織の修復と成長を促進すると考えられるため、GRPCとして分類できる。SUI及びFIにGRPCを使用するという概念は、出産時の外傷から骨盤支持構造、加齢[成長ホルモンの効果の喪失を伴う]による男性更年期、閉経[その結果、性ホルモンの深刻な欠乏を伴う]という3つの要因によって、排尿及び便の失禁を維持する骨盤組織及び構造の機能低下が生じるという、広く受け入れられている理解に基づいている。これら3つのメカニズムのそれぞれによる治療には治療効果があり、そのような組み合わせによって相加効果又は相乗効果を示すことができる。
【0044】
局所治療の理論的根拠は、薬剤が体全体ではなく、目的の組織を標的とするということである。これには、全身投与に必要な用量よりも少ない用量が必要となる可能性があり、オフターゲット効果の結果としての副作用が制限されるはずである。経膣又は経肛門又は経直腸的治療送達を容易にする適切な送達ビヒクルを、そのような治療に使用され得る。
【0045】
尿失禁やある程度の便失禁の従来の治療に対して(18)、結果はまちまちではあるものの、局所的なエストロゲン治療が採用されている。しかし、アンドロゲン補給の可能性は、これまで治療として使用されておらず、考慮されなかった。現在、失禁を含む骨盤底障害の治療にグレリンを使用する人体での研究は発見されておらず、発明者らによって注目されない。
【0046】
SUI又はFIの外科的再建が成功するかどうかは、適切な組織の存在と、支持のための適切な組織強度に依存する。記載されている治療によって組織の完全性が改善され、従って、外科的成果が向上すると考えられている。更に、肛門挙筋、尿道及び肛門括約筋などの骨盤底筋組織を含む骨盤組織の完全性の改善によるGRPCの使用は、骨盤底筋運動などの非外科的治療に極めて重要な貢献をする可能性がある。
【0047】
最も成功する局所適用方法は患者ごとに異なり得、薬物送達方法が受け入れられるかどうかが治療コンプライアンスにとって重要であり得る。膣粘膜/上皮を介して吸収されるエストロゲン製剤を毎日投与することが好ましい送達方法である。膣は尿道及び膀胱頸部と密接に関係するため、経膣分娩は下部尿路にも影響を与えることができる。しかし、一部の女性では、男性の場合と同様に、肛門直腸管を介して治療薬を送達することが必要であるか、好ましい場合がある。
【0048】
直腸又は膣投与用の製剤は、適切な担体を備えた座薬又はペッサリーとして提供され得る。信頼性が高く持続的な薬物送達のための別の方法は、ホルモンの一貫した毎日又は慢性的な放出を送達するための治療化合物のリザーバーを含む膣リングの使用によって得られることが理論化される。
【0049】
マイクロニードルアレイや徐放性ホルモン製剤又は微粉化ホルモン製剤の間欠注射は、患者に支持されたり、臨床現場で非常に効果的であることが判明したりすることができる。
【0050】
医薬組成物は、1つ以上の添加剤、薬学的に許容される担体に応じて、防腐剤(酸化防止剤を含む)、染料、結合剤、懸濁剤、増粘剤、結合剤、緩衝剤、分散剤、着色剤、崩壊剤、賦形剤、希釈剤、潤滑剤、可塑剤、油、又はこれらの組み合わせを含み得る。特定の実施形態では、シリカゲルが懸濁剤として使用される。懸濁剤の量は、用量及び適用量に依存し、約0.01gから約1gmまで変化する。しかし、当業者であれば、そのような添加剤の量を最もよく決定することができる。追加の添加剤の例は、ソルビトール、タルク、ステアリン酸及び第二リン酸カルシウムを含むが、これらに限定されない。
【0051】
適切な薬学的に許容される添加剤は、水、グリセロール、アロエベラジェル、アラントイン、グリセリン、ビタミンAとE油、鉱油、PPG2プロピオン酸ミリスチル、植物油及びソルケタールを含むが、これらに限定されない。
【0052】
適切な結合剤は、スターチ、ゼラチン、グルコース、スクロース、ラクトースなどの天然糖、トウモロコシ甘味料、アカシア、トラガカント、植物性ガム、アルギン酸ナトリウムなどの天然及び合成ガム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどを含むが、これらに限定されない。
【0053】
適切な潤滑剤は、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、酢酸ナトリウムなどを含むが、これらに限定されない。
【0054】
組成物はまた、適切な防腐剤、例えば安息香酸ナトリウム、及び組成物を適用により適したものにし得る他の添加剤、例えば製剤の浸透圧に影響を与える塩化ナトリウムを含み得る。
【0055】
適切な分散剤及び懸濁剤は、ベンタイト、植物ゴム、トラガカント、アカシア、アルギン酸塩、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチンなどの合成ゴム及び天然ゴムを含むが、これらに限定されない。
【0056】
適切な医薬希釈剤は水であるが、これに限定されない。
【0057】
更に、必要に応じて組成物のpHを変更するために、例えば塩酸又は水酸化ナトリウム、及びクエン酸、アスコルビン酸、フマル酸、リンゴ酸などの酸化防止剤を含む様々な薬剤を使用することができる。他の可能な酸化防止剤は、パルミチン酸塩、ブチル化ヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、及びメタ重亜硫酸ナトリウムを含む。特定の実施形態では、クエン酸(0.1%)が使用される。
【0058】
局所投与の形態及び剤形は、当然のことながら、所与の治療用途にとって望ましく有効な本発明の薬剤[複数可]の治療量に影響を与える。
【0059】
要約すると、本発明は、骨盤底障害を治療するために使用され得る治療薬の使用及びその局所送達方法を教示する。従って、本発明は、それ自体で十分な臨床上の利益を提供し、非外科的管理及び外科的管理の結果を改善することができる。
【0060】
参照
これらの引用文献の内容は、その全体があらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
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【手続補正書】
【提出日】2024-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療可能なヒト対象における
腹圧性尿失禁、便失禁、またはその両方の治療のための
医薬組成物であって、前記医薬組成物は、治療化合物としての少なくとも1つの
アンドロゲンを含み、かつ前記治療可能なヒト対象の骨盤底に、又は前記治療可能なヒト対象の骨盤底と接触する領域に、あるいはその両方に局所送達によって投与される、医薬組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのアンドロゲンの局所送達が、全身曝露の潜在的な悪影響を最小限に抑え、全身循環に入る前に骨盤組織に到達し、それによって骨盤組織濃度と比較して血漿濃度を低下させる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記アンドロゲンが、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、アンドロステンジオン(A)、テストステロン(T)、及びジヒドロテストステロン(DHT)からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記アンドロゲンが、テストステロン(T)である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記アンドロゲンが、ジヒドロテストステロン(DHT)である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
腹圧性尿失禁
の治療のための、
請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項7】
便失禁の治療のための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記局所送達は、膣への挿入、膣壁への挿入又は膣壁を通じた挿入、肛門管
への挿入及び/又は肛門管
を通じた挿入、直腸への挿入、直腸壁への挿入及び/又は直腸壁を通じた挿入、
ならびに会陰
上又は会陰を通じた挿入
からなる群から選択される、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項9】
前記膣壁を通じて吸収される送達システム内にあり、膣リング、膣ペッサリー、ゲル、クリーム、軟膏、膣座薬、又はマイクロアレイニードルシステムの形態である、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項10】
前記ヒト対象は女性であ
る、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項11】
経粘膜送達のための送達システム内にあり、膣リング、膣ペッサリー、ゲル、クリーム、軟膏、座薬、又はマイクロアレイニードルシステム
の形態である、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項12】
膣への注射、膣壁への注射又は膣壁を通じた注射、肛門管壁への注射及び/又は肛門管壁を通じた注射、直腸への注射、直腸壁への注射及び/又は直腸壁を通じた注射、
ならびに会陰
上又は会陰を通
じた注射
によって送達される、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項13】
前記アンドロゲンは、
アンドロステンジオン(A)
である、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項14】
治療化合物としてのグレリン又はグレリン類似体を更に含む、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項15】
少なくとも1つの
前記治療化合物は、1用量あたり約0.2mg~1用量あたり約200mgの範囲の量で存在する、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【国際調査報告】