(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】電子ビームおよび液滴ベースの極紫外線光源装置
(51)【国際特許分類】
H01J 63/08 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
H01J63/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515716
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 KR2022013487
(87)【国際公開番号】W WO2023038448
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0121130
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513311848
【氏名又は名称】慶熙大學校産學協力團
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY-INDUSTRY CO OPERATION GROUP OF KYUNG HEE UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】1732, DEOGYEONG-DAERO,GIHEUNG-GU, YONGIN-SI, GYEONGGI-DO, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】パク,ギュ・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,スン・テ
(57)【要約】
本発明の一実施例による光源装置は、電子ビームおよび金属液滴(droplet)ベースで極紫外線光源を出力する光源装置であって、チャンバと、カソード電極と、炭素系物質を含み、カソード電極上に離隔配置された複数のエミッタとをそれぞれ備え、チャンバの内部で電子ビームを生成する電子ビーム放出部と、チャンバの内部に位置しかつ、電子ビーム放出部から離隔して位置するアノード電極と、チャンバの内部のうち電子ビーム放出部とアノード電極との間の空間に金属液滴を噴射する液滴生成装置と、を含み、チャンバ内でアノード電極に向かう電子ビームによって液滴がイオン化されてプラズマが発生し、プラズマから極紫外線が生成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームおよび金属液滴ベースで極紫外線光源を出力する光源装置であって、
チャンバと、
前記チャンバの内部で電子ビームを生成する電子ビーム放出部であって、カソード電極と、炭素系物質とを含み、前記カソード電極上に離隔配置された複数のエミッタとをそれぞれ備える、電子ビーム放出部と、
前記チャンバの内部に位置しかつ、前記電子ビーム放出部から離隔して位置するアノード電極と、
前記チャンバの内部のうち前記電子ビーム放出部と前記アノード電極との間の空間に金属液滴を噴射する液滴生成装置と、を含み、
前記チャンバ内で前記アノード電極に向かう前記電子ビームによって前記液滴がイオン化されてプラズマが発生し、前記プラズマから極紫外線が生成される光源装置。
【請求項2】
前記電子ビーム放出部は、複数個が備えられ、
複数の前記電子ビーム放出部で生成された各電子ビームは、少なくとも1つのアノード電極に向かって互いに異なる角度または方向に進行しかつ、1つずつ出力されるか、または同時に複数個が出力される、請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記各電子ビーム放出部は、前記チャンバ内の一側に配置され、
前記アノード電極は、前記極紫外線光源の出口が位置した前記チャンバ内の他側に配置される、請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記アノード電極は、前記他側で前記出口を挟んでその周辺に配置され、前記出口に対応する開口を備えた、請求項3に記載の光源装置。
【請求項5】
前記チャンバ内の一側および他側は、互いに対向するアーチ形状を有し、
前記アノード電極は、前記他側のアーチ形状に対応する形状を有する、請求項3または4に記載の光源装置。
【請求項6】
前記チャンバ内の一側で前記各電子ビーム放出部を挟んでその周辺に配置されかつ、前記各電子ビーム放出部の間の空間にも配置されて、前記極紫外線を反射する反射層をさらに含む、請求項3または4に記載の光源装置。
【請求項7】
前記チャンバ内の一側および他側は、互いに対向するアーチ形状を有し、
前記反射層は、前記一側のアーチ形状に対応する形状を有する、請求項6に記載の光源装置。
【請求項8】
前記アノード電極は、前記各電子ビームによって発生してその開口を通過する複数の極紫外線光源に対して中間集光(IF)の役割を果たす、請求項4に記載の光源装置。
【請求項9】
前記複数のエミッタは、先の尖ったエミッタチップを含み、前記炭素系物質は、カーボンナノチューブを含む、請求項1に記載の光源装置。
【請求項10】
前記電子ビーム放出部は、前記エミッタ上に離隔配置されたゲート電極をさらに含む、請求項1に記載の光源装置。
【請求項11】
前記ゲート電極のうち前記複数のエミッタに対向する部分は、伝導性材質のメッシュ構造を含む、請求項10に記載の光源装置。
【請求項12】
前記電子ビーム放出部は、前記ゲート電極上に離隔配置されて、負の電圧が印加されて電子ビームを集束する少なくとも1つの集束電極をさらに含む、請求項10に記載の光源装置。
【請求項13】
前記集束電極は、第1集束電極と、前記第1集束電極上に離隔配置された第2集束電極とを含み、
前記第1および第2集束電極は、電子ビームが通過するように互いに対向する開口をそれぞれ備えかつ、前記第2集束電極の開口が前記第1集束電極の開口より小さい、請求項12に記載の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビームおよび液滴ベースの極紫外線光源装置に関し、より詳しくは、電子ビームと液滴を用いて極紫外線光源を出力する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
極紫外線(extreme ultraviolet、EUV)は、X線と深紫外線(deep ultraviolet、DUV)領域との間である約10nmから100nmに至る波長帯域の電磁波である。最近、極紫外線領域を扱う応用分野において、コンパクト(compact)な極紫外線光源装置の開発に多くの研究が集中している。
【0003】
例えば、半導体製造のためのナノメートルサイズの微細パターン工程に極紫外線リソグラフィ(lithography)装置が用いられている。しかし、現在、極紫外線リソグラフィ装置は、高出力のレーザをベースとし、海外の特定会社の製品としてのみ販売されている。特に、このような極紫外線リソグラフィ装置はレーザベースであるので、非常に高価であり、内部構造が複雑であり、大きな体積を占めるだけでなく、その出力特性による非常に高出力のレーザによって、多くのくず(debris)が発生して維持補修が難しい問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、内部構造が単純であり、コンパクトな大きさを有し、製造費用を低減できる極紫外線光源技術を提供することを目的とする。
【0005】
また、本発明は、レーザに比べて低出力の電子ビームを用いることにより、くず(debris)を減らして維持補修に有利な極紫外線光源技術を提供することを他の目的とする。
【0006】
さらに、本発明は、より効率的に複数の電子ビームを活用して光量の出力が向上した極紫外線光源技術を提供することをさらに他の目的とする。
【0007】
ただし、本発明が解決しようとする課題は以上に言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は以下の記載から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための、本発明の一実施例による光源装置は、電子ビームおよび金属液滴(droplet)ベースで極紫外線光源を出力する光源装置であって、チャンバと、カソード電極および炭素系物質を含む、カソード電極の上に離隔配置された複数のエミッタとをそれぞれ備え、チャンバの内部で電子ビームを生成する電子ビーム放出部と、チャンバの内部に位置しかつ、電子ビーム放出部から離隔して位置するアノード電極と、チャンバの内部のうち電子ビーム放出部とアノード電極との間の空間に金属液滴を噴射する液滴生成装置と、を含み、チャンバ内でアノード電極に向かう電子ビームによって液滴がイオン化されてプラズマが発生し、プラズマから極紫外線が生成される。
【0009】
電子ビーム放出部は、複数個が備えられ、複数の電子ビーム放出部で生成された各電子ビームは、少なくとも1つのアノード電極に向かって互いに異なる角度または方向に進行しかつ、1つずつ出力されるか、同時に複数個が出力される。
【0010】
各電子ビーム放出部は、チャンバ内の一側に配置され、アノード電極は、極紫外線光源の出口が位置したチャンバ内の他側に配置される。
【0011】
アノード電極は、他側で出口を挟んでその周辺に配置され、出口に対応する開口を備えることができる。
【0012】
チャンバ内の一側および他側は、互いに対向するアーチ形状を有し、アノード電極は、他側のアーチ形状に対応する形状を有することができる。
【0013】
本発明の一実施例による光源装置は、チャンバ内の一側で各電子ビーム放出部を挟んでその周辺に配置されかつ、各電子ビーム放出部の間の空間にも配置されて、極紫外線を反射する反射層をさらに含むことができる。
【0014】
チャンバ内の一側および他側は、互いに対向するアーチ形状を有し、反射層は、一側のアーチ形状に対応する形状を有することができる。
【0015】
アノード電極は、各電子ビームによって発生してその開口を通過する複数の極紫外線光源に対して中間集光(Intermediate Focus;IF)の役割を果たすことができる。
【0016】
複数のエミッタは、先の尖ったエミッタチップを含み、炭素系物質は、カーボンナノチューブを含むことができる。
【0017】
電子ビーム放出部は、エミッタ上に離隔配置されたゲート電極をさらに含むことができる。
【0018】
ゲート電極のうち複数のエミッタに対向する部分は、伝導性材質のメッシュ(mesh)構造を含むことができる。
【0019】
電子ビーム放出部は、ゲート電極上に離隔配置されて、負の電圧が印加されて電子ビームを集束する少なくとも1つの集束電極をさらに含むことができる。
【0020】
集束電極は、第1集束電極と、第1集束電極上に離隔配置された第2集束電極とを含み、第1および第2集束電極は、電子ビームが通過するように互いに対向する開口をそれぞれ備えかつ、第2集束電極の開口が第1集束電極の開口より小さい。
【発明の効果】
【0021】
上記のように構成される本発明は、電子ビームをベースとし、電子ビーム放出部とは別に実現されたアノード電極を用いて極紫外線光源を発生させるので、内部構造が単純であり、コンパクトな大きさを有し、製造費用を低減できるという利点がある。
【0022】
また、本発明は、レーザに比べて低出力の電子ビームを用いることが可能で、アノード電極への悪影響を低減してくず(debris)などを減らして維持補修に有利という利点があり、複数の電子ビームを用いて極紫外線光量を増加させることができる効果がある。
【0023】
さらに、本発明は、チャンバ内の一側のアーチ形状である反射層の構造と、チャンバ内の他側のアーチ形状であるアノード電極の構造とによって、極紫外線光源に対する反射機能および集光機能が相互補完的に同時に実現され、光量の出力が向上できるという利点がある。
【0024】
本発明から得ることのできる効果は以上に言及した効果に制限されず、言及されていない他の効果は以下の記載から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施例による極紫外線光源装置10の構成図を示す。
【
図2】本発明の一実施例による極紫外線光源装置10の構成図を示す。
【
図3】本発明の一実施例による極紫外線光源装置10の構成図を示す。
【
図4】電子ビーム放出部200の詳細な構成を示す。
【
図5】
図5(a)および
図5(b)は、電子ビーム放出部200の一実施例であって、その斜視図および断面図を示す。
【
図6】電子ビーム放出部200の他の例であって、
図4にて集束電極251、252が追加された場合のその断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の上記の目的と手段およびそれによる効果は、添付した図面に関する以下の詳細な説明を通じてより明らかになり、それによって本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明の技術的思想を容易に実施することができる。また、本発明を説明するにあたり、本発明にかかる公知の技術に関する具体的な説明が本発明の要旨を不必要にあいまいにしうると判断された場合、その詳細な説明を省略する。
【0027】
他に定義がなければ、本明細書で使用されるすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に共通して理解できる意味で使用できる。また、一般的に使用される辞書に定義されている用語は、明らかに特に定義されていない限り、理想的にまたは過度に解釈されない。
【0028】
以下、添付した図面を参照して、本発明による好ましい一実施例を詳細に説明する。
【0029】
図1~
図3は、本発明の一実施例による極紫外線光源装置10の構成図を示す。ただし、
図1は、複数の電子ビーム放出部200が同時に電子ビームを放出する場合を示し、
図2および
図3は、複数の電子ビーム放出部200が
図1と異なる方向に電子ビームを放出する場合を示す。特に、
図2および
図3は、複数の電子ビーム放出部200が1つずつ順次に電子ビームを放出する場合をそれぞれ示す。
【0030】
図1を参照すれば、本発明の一実施例による極紫外線光源装置10は、チャンバ100と、チャンバ100の内部に位置する電子ビーム放出部200と、アノード電極300と、液滴生成装置400とを含む。例えば、極紫外線光源装置10は、半導体製造のための微細パターン工程でリソグラフィ装置として用いられるが、これに限定されるものではない。
【0031】
チャンバ100は、電子ビームの入射による金属液滴(droplet)のイオン化によって発生するプラズマを維持する。チャンバ100の内部空間のうちプラズマが維持される領域を、便宜上、「プラズマ領域」と称する。チャンバ100は、プラズマ領域で発生する極紫外線(extreme ultraviolet;EUV)の光源が出力される出口110を含むことができる。チャンバ100の内部は、真空状態であってもよい。
【0032】
図4は、電子ビーム放出部200の詳細な構成を示す。また、
図5(a)および
図5(b)は、電子ビーム放出部200の一実施例であって、その斜視図および断面図を示し、
図6は、電子ビーム放出部200の他の例であって、
図4にて集束電極251、252が追加された場合のその断面図を示す。
【0033】
電子ビーム放出部200は、電子ビーム(electron beam、e-)を生成して放出する構成である。この時、電子ビーム放出部200は、レーザベースではない、電界によって電子を放出する炭素系のエミッタ230をベースとする。
【0034】
電子ビーム放出部200は、チャンバ100の内部に位置し、チャンバ100内で電子ビーム放出部200と離隔して設けられたアノード電極300に向かって電子ビームを照射する。
図4~
図6を参照すれば、電子ビーム放出部200は、カソード電極210と、カソード電極210上に位置する複数のエミッタ230と、複数のエミッタ230と離隔して複数のエミッタ230上に位置するゲート電極240を含む。
【0035】
カソード電極210およびアノード電極300は、伝導性材質を含み、通常用いられる負極および正極である。例えば、カソード電極210およびアノード電極300は、Al、Au、Ni、Ti、Crなどの金属、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、AZO(aluminum zinc oxide)、IZTO(indium zinc tin oxide)などの透明伝導性酸化物(TCO)、導電性ポリマー、またはグラフェンなどを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
従来技術の場合、電子ビーム放出部内にカソード電極、エミッタ、およびアノード電極が共に備えられる場合が一般的であり、この場合、電子ビーム放出部の体積が大きくなりうる。これに対し、本発明は、アノード電極300が電子ビーム放出部200内に備えられず、チャンバ100の内部で電子ビーム放出部200と離隔して別の構成として設けられる。これによって、本発明は、複数の電子ビーム放出部200を備えても全体的な体積を低減できるという利点がある。
【0037】
また、本発明は、複数の電子ビーム放出部200がチャンバ100内に別に備えられた共通のアノード電極300を用いて電子ビームを放出可能なため、カソード電極、エミッタ、およびアノード電極が電子ビーム放出部内に共に備えられる場合より、内部構造が単純であり、コンパクトな大きさを有し、製造費用を低減できるという利点がある。
【0038】
複数のエミッタ230は、カソード電極210から供給された電子をアノード電極300に向かって放出させる構成である。エミッタ230は、先の尖ったエミッタチップで構成されるか、平らなエミッタ層で構成されてもよい。この時、エミッタチップは、針状の形状以外にも、錐形、三角形などの多様な形状に形成されてもよい。例えば、エミッタ230は、カソード電極210上に横方向および縦方向にそれぞれ一定の間隔をもって配列される。
【0039】
エミッタ230は、炭素系物質を含むことができる。例えば、炭素系物質は、カーボンナノチューブ(Carbon nanotube、CNT)、カーボンナノワイヤ、半導体ナノワイヤ、酸化亜鉛ナノワイヤ、カーボンナノファイバー、導電性ナノロッド、グラファイト、またはナノグラフェンなどを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
ただし、エミッタ230がカーボンナノチューブで実現された場合、カーボンナノチューブ特有の高効率電界放出特性を得ることができる。例えば、このようなカーボンナノチューブのエミッタ230は、レーザ気相蒸着法(laser vaporization)、アーク放電法(arc discharge)、熱-CVD(thermal-CVD)、プラズマ-CVD、HF-CVD(hot filament chemical vapor desposition)などの方法で形成できるが、これに限定されるものではない。
【0041】
一方、エミッタ230は、電界放出基板220上に設けられる。この時、電界放出基板220は、電界放出素子においてエミッタを備えるように設けられる通常のウェハであってもよい。すなわち、電界放出基板220は、カソード 電極 210上に設けられてエミッタ230を実装する。
【0042】
ゲート電極240は、入力される電圧に応じてエミッタ230から放出される電子の流れを調整する構成である。ゲート電極240のうち複数のエミッタ230と向かい合う部分、すなわち複数のエミッタ230に対向する部分は、伝導性材質(例えば、金属など)のメッシュ(mesh)構造241を含むことができる。例えば、メッシュ構造241は、薄い金属線が互いに距離をおいて網(net)状に織り込まれた構成であるか、金属板において複数の開口が形成された構成であってもよい。ゲート電極240は、このようなメッシュ構造241の金属線間の空間または複数の開口を通して電子ビームを通過させながら、エミッタ230から放出された電子を拡散させることができる。
【0043】
ゲート電極240は、導電性材質を含む。例えば、ゲート電極240は、Al、Au、Ni、Ti、Crなどの金属、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、AZO(aluminum zinc oxide)、IZTO(indium zinc tin oxide)などの透明伝導性酸化物(TCO)、導電性ポリマー、またはグラフェンなどを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
複数のエミッタ230周囲のカソード電極210とゲート電極240との間には、図示しない絶縁層(または絶縁スペーサ)が位置してもよい。この時、絶縁層の厚さは、複数のエミッタ230それぞれの高さより大きく作製されて、ゲート電極240が複数のエミッタ230と接触しないようにする。ゲート電極240は、このような絶縁層によってカソード電極210および複数のエミッタ230と絶縁状態を維持することができる。
【0045】
カソード電極210には低電圧(負の電圧)が印加されるか、または接地が連結され、アノード電極300には5kV以上の高電圧(正の電圧)が印加される。また、ゲート電極240にはパルス電圧が印加される。すなわち、カソード電極210とゲート電極240との電圧差によって複数のエミッタ230の周囲に電界が形成され、この電界によって複数のエミッタ230から電子ビームが放出され、放出された電子ビームは、アノード電極300の高電圧に引かれて加速される。
【0046】
この時、ゲート電極240のパルス電圧は、高い周波数または低いパルス幅を有する電圧であって、例えば、100kHz以上の高周波数特性を有することができる。このようなパルス電圧は、電子ビームの高速スイッチングを可能にし、駆動電力を低下させる効果につながる。
【0047】
図5に示されるように、電子ビーム放出部200は、集束電極251、252なしに実現されてもよく、
図6に示されるように、ゲート電極240上に離隔配置された少なくとも1つ以上の集束電極251、252を含むように実現されてもよい。例えば、ゲート電極240上に離隔配置された第1集束電極251と、第1集束電極251上に離隔配置された第2集束電極252とが備えられる。
【0048】
電子ビーム放出部200は、複数のエミッタ230に対応するメッシュ構造241の周縁に固定されてメッシュ構造241を支持する支持体242を含むことができる。また、複数のエミッタ230周囲のカソード電極210と支持体242との間に第1絶縁層261が位置することができる。
【0049】
第2絶縁層262がゲート電極240と第1集束電極251との間に位置してゲート電極240と第1集束電極251とを絶縁させることができ、第3絶縁層263が第1集束電極251と第2集束電極252との間に位置して第1集束電極251と第2集束電極252とを絶縁させることができる。もちろん、第4絶縁層(図示せず)が第2集束電極252上に位置して第2集束電極252の上部を絶縁させてもよい。
【0050】
第2絶縁層262、第1集束電極251、第3絶縁層263、第2集束電極252、および第4絶縁層(図示せず)は、電子ビーム通過のための各々の開口を備える。この時、第2絶縁層262と第3絶縁層263の開口は、同じ大きさに形成されてもよい。
【0051】
第1集束電極251の開口271は、その直径がゲート電極240のメッシュ構造241の全体直径より小さい大きさであってもよく、第2集束電極252の開口272は、その直径が第1集束電極251の開口271の直径より小さくてもよい。もちろん、第2集束電極252上に離隔配置された追加的な集束電極(図示せず)が備えられてもよいし、この場合、当該集束電極の開口は、その直径が第2集束電極252の開口272の直径より小さくてもよい。すなわち、第1集束電極251および第2集束電極252の順(すなわち、上側方向の順)に小さい大きさの開口が備えられる。
【0052】
第1および第2集束電極251、252には負(-)の電圧が印加される。これによって、ゲート電極240のメッシュ構造241を通過した電子ビームは、第1集束電極251の開口271と第2集束電極252の開口272とを順次に経て、第1および第2集束電極251、252の加える斥力によって集束できる。
【0053】
このような構造によって、電子ビーム放出部200は、その内部構造の単純化が可能であり、コンパクトな大きさを有し、製造費用を低減できるという利点がある。このような利点は、アノード電極300が、従来技術とは異なり、別にチャンバ100の内部に設けられることにより、さらに倍加される。
【0054】
すなわち、第1および第2集束電極251、252を備えた電子ビーム放出部200は、電子ビームを集束してアノード電極300に到達する電子ビームの大きさを低減することができ、その結果、金属くず(Debris)の生成を減らしてアノード電極300の使用寿命を伸ばすことができる。
【0055】
液滴生成装置400は、チャンバ100の内部に金属液滴(droplet、D)を噴射する装置である。特に、液滴生成装置400は、チャンバ100の内部のうち電子ビーム放出部200とアノード電極300との間の空間に金属液滴(D)を噴射する。これによって、電子ビーム放出部200から放出されてアノード電極300に向かって加速進行する電子ビームは、その経路の途中に噴射された金属液滴(D)に入射(照射)しながら金属液滴を気化させる。電子ビームによって気化した金属液滴はイオン化されてプラズマを発生させ、このような金属液滴の周囲を取り囲むプラズマ領域で極紫外線(EUV)が生成される。すなわち、電子ビームによって金属液滴(D)から発生したプラズマが極紫外線(EUV)を生成する光源として機能する。このように生成された極紫外線光源(EUV)は、チャンバ100の出口110を通してチャンバ100の外部に出力される。
【0056】
すなわち、金属液滴(D)は、電子ビームの入射時にプラズマを発生させる金属放射物質を含むことができる。例えば、金属放射物質は、スズ(Sn)、リチウム(Li)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、Tb(テルビウム)、Gd(ガドリニウム)およびアルミニウム(Al)のうちの1つ以上の金属を含むことができる。例えば、液滴生成装置400は、予め設定された体積のスズなどの金属液滴(D)を予め設定された時間周期によって落下させる構成からなる。
【0057】
図1~
図3を参照すれば、電子ビーム放出部200は、複数個が備えられる。この時、複数の電子ビーム放出部200で生成された各電子ビームは、少なくとも1つのアノード電極300に向かって互いに異なる角度または方向に進行することができる。また、各電子ビームは、1つずつ出力されるか、同時に複数個が出力される。
【0058】
すなわち、複数の電子ビーム放出部200は、各ゲート電極240に印加されるゲート電圧のパルス駆動によって1つずつ順次に電子ビームを生成するか、同時に複数個が電子ビームを生成することができる。この時、制御部(図示せず)を介して、複数の電子ビーム放出部200で1つずつ順次に電子ビームを生成するようにするか、または同時に複数の電子ビームを生成するようにするなどの制御が可能である。これによって、金属液滴(D)が存在する領域には、複数の電子ビーム放出部200によって生成された各電子ビームが1つずつ入射するか、同時に複数個が入射することができる。
【0059】
例えば、
図1~
図3を参照すれば、各電子ビーム放出部200は、チャンバ100内の一側に配置され、アノード電極300は、チャンバ100内の他側、すなわちチャンバ100の出口110が位置した側に配置される。
【0060】
この時、アノード電極300は、チャンバ100内の他側で出口110を挟んでその周辺に配置され、当該出口110に対応する開口を備えることができる。すなわち、アノード電極300は、チャンバ100内の他側で出口110の周辺に配置され、その開口が出口110に対応するように配置される。
【0061】
特に、チャンバ100内の一側および他側は、互いに対向するアーチ形状に形成される。この場合、アノード電極300は、当該他側のアーチ形状に対応するアーチ形状に配置される。このような構造によって、アノード電極300は、各電子ビームによって発生してチャンバ100内の他側方向に進行してその開口を通過する複数のEUVに対して中間集光(Intermediate Focus;IF)の役割を果たすことができる。
【0062】
すなわち、複数の電子ビーム放出部200の各電子ビームによって発生した複数のEUVがアノード電極300の開口を経て、アノード電極300の電磁的斥力によって集光できる。このような各電子ビームは、当該電子ビーム放出部200のゲート電極に印加される駆動パルス電圧に応じて、
図2および
図3に示されるように、1つずつ放出されるか、
図1に示されるように、複数個が同時に放出される。
【0063】
また、EUVを反射する反射層500がチャンバ100内に追加的に備えられてもよい。例えば、ある電子ビームの入射によって発生したEUVは、チャンバ100の出口110に直に出力されず、反射層500によって少なくとも1回反射した後に、チャンバ100の出口110に出力される。このような反射機能がアーチ形状に適用されることにより、複数の電子ビームによって発生した各EUVは、チャンバ100の出口110に向かう方向に集光可能であり、これによって出口110を透過するEUVの強度が高くなる。
【0064】
このような反射機能の円滑な作用のために、反射層500は、チャンバ100内の一側に配置されるが、その一側に位置した各電子ビーム放出部200を挟んでその周辺に配置される。もちろん、反射層400は、互いに離隔した各電子ビーム放出部200の間の空間にも配置可能である。
【0065】
また、チャンバ100内の一側および他側が互いに対向するアーチ形状に形成され、反射層500も、当該一側のアーチ形状に対応する形状に形成される。この場合、反射層500による上述したEUVに対する反射機能と、チャンバ100内の他側のアーチ形状のアノード電極300によるEVUに対する集光機能とが相互補完的に同時に実現され、光量の出力が向上できるという利点がある。
【0066】
この時、反射層500は、チャンバ100の出口110に向かう方向への凹んだ反射面を含む。例えば、反射層500としては、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)とが交互に多層積層されたものを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0067】
本発明の詳細な説明では具体的な実施例に関して説明したが、本発明の範囲を逸脱しない限度内で様々な変形が可能であることはもちろんである。そのため、本発明の範囲は説明された実施例に限らず、後述する特許請求の範囲およびこの特許請求の範囲と均等なものによって定められなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
上述のように構成される本発明は、電子ビームをベースとし、電子ビーム放出部とは別に実現されたアノード電極を用いて極紫外線光源を発生させるので、内部構造が単純であり、コンパクトな大きさを有し、製造費用を低減できるという利点がある。また、本発明は、レーザに比べて低出力の電子ビームを用いることが可能で、アノード電極への悪影響を低減してくず(debris)などを減らして維持補修に有利という利点があり、複数の電子ビームを用いて極紫外線光量の出力を向上させることができる効果がある。さらに、本発明は、チャンバ内の一側のアーチ形状である反射層の構造と、チャンバ内の他側のアーチ形状であるアノード電極の構造とによって、極紫外線光源に対する反射機能および集光機能が相互補完的に同時に実現され、光量の出力が向上できるという利点がある。
【符号の説明】
【0069】
10 :極紫外線光源装置
100:チャンバ
110:出口
200:電子ビーム放出部
210:カソード電極
220:電界放出基板
230:エミッタ
240:ゲート電極
241:メッシュ構造
242:支持体
251、252:集束電極
261、262、263:絶縁層
300:アノード電極
400:液滴生成装置
500:反射層
【国際調査報告】