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特表2024-531696セラミックペーパー及びその製造方法
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  • 特表-セラミックペーパー及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】セラミックペーパー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20240822BHJP
   B28B 5/02 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B28B1/30 101
B28B5/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515912
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 KR2022007881
(87)【国際公開番号】W WO2023042997
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0122160
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523409027
【氏名又は名称】エンバイオニア・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・チョル・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ウン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・ジュン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ス・ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ギ・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・ヨン・タク
【テーマコード(参考)】
4G052
4G054
【Fターム(参考)】
4G052DA03
4G052DA04
4G052DB00
4G054AA00
4G054AC00
4G054CA01
(57)【要約】
本発明は、セラミックペーパー及びその製造方法に関し、より詳細には、多結晶性アルミナファイバー、バインダー、保留剤、分散剤及び増粘剤を含むことを特徴とするセラミックペーパー及びその製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶性アルミナファイバー、バインダー、保留剤、分散剤及び増粘剤を含むセラミックペーパー。
【請求項2】
前記バインダーは、有機バインダー及び無機バインダーからなり、
前記保留剤は、PAC(polyaluminium chloride)及びC-PAM(Cationic-Polyacrylamide)からなる、請求項1に記載のセラミックペーパー。
【請求項3】
前記多結晶性アルミナファイバーは、アルミナ含有量が70%以上、繊維直径が4μm~10μm、LOI(Loss of Ignition)が0.1%以下、熱伝導率が1,200℃で0.44W/m/K以下の範囲に該当し、
前記有機バインダーは、チョップドファイバー形状を有するPVA(Polyvinyl alcohol)で、繊度が0.3dtex~3.0dtex、繊維長が2mm~6mm、水での溶解温度が60℃~80℃の範囲に該当し、
前記無機バインダーは、シリカゾル又はアルミナゾルで、
前記分散剤は、PEG(Poly Ethylene Glycol)系非イオン界面活性剤で、
前記増粘剤は、PEO(ポリエチレンオキシド)である、請求項2に記載のセラミックペーパー。
【請求項4】
前記多結晶性アルミナファイバー、前記有機バインダー、前記無機バインダー、前記PAC、前記C-PAM、前記分散剤及び前記増粘剤は、70~95:3~18:3~12:2~6:1~2:1~3:0.2~2.0の重量比で混合される、請求項3に記載のセラミックペーパー。
【請求項5】
前記多結晶性アルミナファイバー、前記有機バインダー、前記無機バインダー、前記PAC、前記C-PAM、前記分散剤及び前記増粘剤は、73~92:3~17:3~12:2~4:1.2~1.8:1.2~2.7:0.3~1.7の重量比で混合される、請求項4に記載のセラミックペーパー。
【請求項6】
坪量が39g/m~40g/mであるとき、厚さ275μm~300μm、気孔率6.8cm/g~7.2cm/g、及び密度13kg/m~15kg/mを満足する、請求項5に記載のセラミックペーパー。
【請求項7】
(a)原料を準備する段階;
(b)準備した前記各原料を混合し、原料混合物を準備する段階;
(c)前記原料混合物をメッシュベルトに積層する段階;
(d)前記メッシュベルトに積層された前記原料混合物を脱水する段階;及び
(e)前記原料混合物を乾燥させる段階;を含み、
前記原料は、多結晶性アルミナファイバー、バインダー、保留剤、分散剤及び増粘剤を含むセラミックペーパーの製造方法。
【請求項8】
前記(b)段階では、溶媒としての水9,900重量部~11,000重量部、前記多結晶性アルミナファイバー70重量部~95重量部、有機バインダー3重量部~18重量部、無機バインダー3重量部~12重量部、PAC(polyaluminium chloride)2重量部~6重量部、C-PAM(Cationic-Polyacrylamide)1重量部~2重量部、前記分散剤1重量部~3重量部、及び前記増粘剤0.2重量部~2.0重量部の比率で混合される、請求項7に記載のセラミックペーパーの製造方法。
【請求項9】
前記(b)段階では、前記多結晶性アルミナファイバーと前記有機バインダーを同時に混合した後、前記無機バインダー、前記PAC(polyaluminium chloride)及び前記C-PAM(Cationic-Polyacrylamide)を順次混合する、請求項8に記載のセラミックペーパーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年9月14日付の韓国特許出願第2021-0122160号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、セラミックペーパー及びその製造方法に関し、より詳細には、耐熱性及び成形加工性に優れると共に、厚さが薄いために、バッテリーモジュールやバッテリーパックへの装着時に体積増加を最小化できるセラミックペーパー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
既存の火炎を遅延させる放熱材や断熱材のほとんどの製品は、アルミノシリケート(Alumino-silicate)セラミックファイバーをベースにした不織布(Non-woven fabric)の形態を有する。
【0004】
これは、乾式(Dry-laid)方式を用いてニードルパンチ(Needle punching)やカード(Carding)方法を通じて織物として作られたり、ラミネーティング及びモールドの形態を有するが、生産性の低下以外にも、大きな体積による移送の難しさ、使用時のセラミックの微細粉塵による大気汚染、及び作業者の健康を害するなどの問題を有する。
【0005】
一方、セラミックペーパーは、ガスケットのシーリング材、耐火断熱壁の膨張パッド充填材、溶融金属温度センサーの保護管、各種耐火物の充填材、自動車排気ガス浄化装置の断熱材などの耐熱及び断熱性が要求される部品として使用されてきた。
【0006】
しかし、近年の環境問題と関係して、モビリティーのエネルギー源に対する大転換が進められている時点で内燃機関自動車の需要が減少する一方で、電気自動車又は燃料電池自動車(PHEV、BEV、ハイブリッド、水素自動車)に対する需要が増加している状況にある。しかし、二次電池ベースの電気自動車の場合、充電用バッテリーの火災発生により、財産上の被害のみならず、人命被害まで発生している状況にある。
【0007】
したがって、熱暴走(Thermal Runaway barrier)による火災の発生時に現場から逃げ得る時間を確保できるように、バッテリー火災を防止し、火炎の移動を最小化できる部品や素材の開発が切実に要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許公報第2006-0078683号
【特許文献2】韓国公開特許公報第1991-0006187号
【特許文献3】韓国公開特許公報第2015-0066857号
【特許文献4】韓国公開特許公報第2006-0084124号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決するために導出されたものであって、耐熱性及び成形性に優れたセラミックペーパー及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、厚さが薄いと共に、柔軟性を有するセラミックペーパー及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような技術的課題を解決するために、本発明に係るセラミックペーパーは、多結晶性アルミナファイバー、バインダー、保留剤、分散剤及び増粘剤を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明のセラミックペーパーにおいて、前記バインダーは、有機バインダー及び無機バインダーからなり、前記保留剤は、PAC(polyaluminium chloride)及びC-PAM(Cationic-Polyacrylamide)からなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のセラミックペーパーにおいて、前記多結晶性アルミナファイバーは、アルミナ含有量が70%以上、繊維直径が4μm~10μm、LOI(Loss of Ignition)が0.1%以下、熱伝導率(Thermal Conductivity)が1,200℃で0.44W/m/K以下の範囲に該当し、前記有機バインダーは、チョップドファイバー(Chopped fiber)形状を有するPVA(Polyvinylalcohol)で、繊度が0.3dtex~3.0dtex、繊維長が2mm~6mm、水での溶解温度が60℃~80℃の範囲に該当し、前記無機バインダーは、シリカゾル又はアルミナゾルで、前記分散剤は、PEG(Poly Ethylene Glycol)系非イオン界面活性剤で、前記増粘剤は、PEO(ポリエチレンオキシド)であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のセラミックペーパーにおいて、前記多結晶性アルミナファイバー、有機バインダー、無機バインダー、PAC、C-PAM、分散剤及び増粘剤は、70~95:3~18:3~12:2~6:1~2:1~3:0.2~2.0の重量比で混合されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のセラミックペーパーにおいて、前記多結晶性アルミナファイバー、有機バインダー、無機バインダー、PAC、C-PAM、分散剤及び増粘剤は、73~92:3~17:3~12:2~4:1.2~1.8:1.2~2.7:0.3~1.7の重量比で混合されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のセラミックペーパーにおいて、坪量が39g/m~40g/mであるとき、厚さ275μm~300μm、気孔率6.8cm/g~7.2cm/g、密度13kg/m~15kg/mを満足することを特徴とする。
【0016】
また、本発明のセラミックペーパーの製造方法は、(a)原料を準備する段階;(b)準備した各原料を混合し、原料混合物を準備する段階;(c)原料混合物をメッシュベルトに積層する段階;(d)メッシュベルトに積層された原料混合物を脱水する段階;及び(e)原料混合物を乾燥させる段階;を含み、前記原料は、多結晶性アルミナファイバー、バインダー、保留剤、分散剤及び増粘剤を含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明のセラミックペーパーの製造方法において、前記(b)段階では、溶媒としての水9,900重量部~11,000重量部、多結晶性アルミナファイバー70重量部~95重量部、有機バインダー3重量部~18重量部、無機バインダー3重量部~12重量部、PAC(polyaluminium chloride)2重量部~6重量部、C-PAM(Cationic-Polyacrylamide)1重量部~2重量部、分散剤1重量部~3重量部、及び増粘剤0.2重量部~2.0重量部の比率で混合されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明のセラミックペーパーの製造方法において、前記(b)段階では、多結晶性アルミナファイバーと有機バインダーを同時に混合した後、無機バインダー、PAC(polyaluminium chloride)及びC-PAM(Cationic-Polyacrylamide)を順次混合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明のセラミックペーパー及びその製造方法によると、アルミナ含有量が70%以上である結晶性繊維を主成分として使用しており、耐熱性に優れるという利点がある。
【0020】
また、本発明のセラミックペーパー及びその製造方法によると、成形加工が容易になり、製造されたペーパーの厚さが薄いために、バッテリーモジュールやバッテリーパックへの装着時に体積増加を最小化できるという長所がある。
【0021】
さらに、本発明のセラミックペーパー及びその製造方法によると、密度及び気孔率に優れるので、自動車用バッテリーモジュールなどへの適用時、軽量化を通じた燃費改善にも寄与できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の好適な実施例に係るセラミックペーパーの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施例及び図面を参照して本発明をより具体的に説明する。これは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できる程度に詳細に説明するためのものであって、これによって本発明の技術的な思想及び範疇が限定されることを意味しない。
【0024】
また、他の方式で定義されない限り、技術的又は科学的な用語を含めて、ここで使用される全ての用語は、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有している。一般的に使用される事前に定義されている各用語は、関連技術の文脈上の意味と一致する意味を有するものと解釈しなければならなく、本出願で明らかに定義しない限り、理想的又は過度に形式的な意味に解釈しない。
【0025】
以下、本発明に係るセラミックペーパー及びその製造方法に関して詳細に説明する。
【0026】
まず、本発明のセラミックペーパーは、セラミックファイバー、バインダー、保留剤、分散剤及び増粘剤を含んで構成される。
【0027】
セラミックファイバーは、アルミナシリカを主成分とした人造無機繊維を総称し、アルミナ含有量が40%~60%である非結晶繊維(Amorphous fiber)と、アルミナ含有量が70%以上である結晶性繊維(polycrystalline fiber)とに分類され、また、合成方法によってアルミナファイバーとムライトファイバーとに区分されるが、これらを総合してアルミナファイバーと言う。
【0028】
本発明では、アルミナ含有量が70%以上である結晶性繊維を使用する。また、繊維直径が4μm~10μm、より好ましくは5μm~7μm、LOI(Loss of Ignition)が0.1%以下、製品の外観特性及び品質の低下を引き起こすショット含有量(Shot content)(%)が2%、熱伝導率(Thermal Conductivity、W/m/K)が600℃で0.15以下、1,000℃で0.31以下、1,200℃で0.44以下に該当し、さらに、熱収縮(Heat Shrinkage)が1,400℃及び8hrで1%以下、1,600℃及び8hrで1%以下に該当する結晶性繊維であると良い。
【0029】
バインダーは、ペーパーの機械的強度を向上させるためのものであって、有機バインダーと無機バインダーを共に使用すると良いが、これは、ウェブ(web)形成時の強度を維持し、紙切れの発生を抑制し、特に、無機バインダーがセラミックファイバーの結束力を向上できるためである。
【0030】
ここで、有機バインダーとしては、チョップドファイバーの形態を有するポリビニルアルコール(PVA、Polyvinylalcohol)を使用すると良いが、これは、液状製品の場合、使用時の保留度が低いために投入量が増大し、その結果、脱水が低下し、廃水負荷増加による処理費用が増加し、長期保管・使用上の腐敗などの品質低下が発生するためである。このようなチョップドファイバーの繊度は、0.3dtex~3.0dtex、より好ましくは1.0dtex~2.0dtex、繊維長は、2mm~6mm、より好ましくは3mm~5mm、水での溶解温度は60℃~80℃の範囲であると良い。
【0031】
無機バインダーとしてシリカゾルやアルミナゾルを使用することによって、高温でも安定的な結合力を発揮できるようにする。
【0032】
保留剤(retention Aids)は、乾燥及び脱水などの製造過程で高価なセラミックファイバーが流出しないように保留させる目的で添加する。
【0033】
具体的には、ポリ塩化アルミニウム(polyaluminium chloride、PAC)、C-PAM(Cationic-Polyacrylamide)の2つを単独で又は混合して使用できるが、ポリ塩化アルミニウム(polyaluminium chloride、PAC)とC-PAM(Cationic-Polyacrylamide)を共に使用するときには、C-PAMの使用量を減少させ得るので、原価を節減し、廃水負荷を減少させることができる。また、系内のアニオン性(Anionic)物質によるC-PAMの効果減少を抑制できるので、単独で使用するよりは、二種を混合して使用するときにセラミックファイバーの保留率を高めることができる。
【0034】
ここで、PACの固形分含有量は、10%~18%、好ましくは10%であると良い。
【0035】
また、C-PAMの重量平均分子量(Mw)は、6百万~千万、好ましくは千万前後であると良い。
【0036】
セラミックファイバーの水中分散を円滑に誘導し、バンドル現象を抑制するための分散剤としては、界面活性剤、より具体的にはエチレンオキシド(Etylene Oxide、EO)が7mole~9mole含有されたPEG(Poly Ethylene Glycol)系非イオン界面活性剤を使用すると良い。
【0037】
増粘剤は、分散の効果を極大化する目的で添加し、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide、PEO)であり得る。通常の製紙工程では、分子量が2百万~3百万であるポリエチレンオキシド製品を使用する一方で、本発明では、約500万前後の分子量を有するポリエチレンオキシドを使用するが、これは、セラミックファイバーの比重が高いだけでなく、これによって保留が難しくなるためである。
【0038】
一方、上述した各原料であるセラミックファイバー、有機バインダー、無機バインダー、PAC、C-PAM、分散剤及び増粘剤は、溶媒としての水10,000Lを基準にして70~95:3~18:3~12:2~6:1~2:1~3:0.2~2.0の重量比で混合されることが好ましく、73~92:3~17:3~12:2~4:1.2~1.8:1.2~2.7:0.3~1.7の重量比で混合されることがより好ましい。
【0039】
セラミックファイバーが前記範囲を逸脱する場合は、不織布の通気度が低くなり、商品化が難しくなる一方で、セラミックファイバーが前記範囲より大きい場合は、分散性が低くなるために、表面の地合いが不均一になり、紙粉が発生するので、セラミックファイバーの含有量は前記範囲であることが好ましい。
【0040】
有機バインダーが前記範囲を逸脱する場合は、湿潤強度が低いために、紙切れが発生したり、無機繊維の分散及び脱水を妨害し、生産性の低下及び製品の地合いの阻害をもたらし得るので、有機バインダーの含有量は前記範囲であることが好ましい。
【0041】
無機バインダーが前記範囲を逸脱する場合は、製品の耐熱性が低下したり、製品の脱水低下及び製品の密度低下をもたらすおそれがあるので、無機バインダーの含有量は前記範囲であることが好ましい。
【0042】
PACが前記範囲を逸脱する場合は、高価なC-PAMの投入量が増加し、原価及び脱水に悪影響を及ぼしたり、C-PAMの効果を低下させるおそれがあるので、PACの含有量は前記範囲であることが好ましい。
【0043】
C-PAMが前記範囲を逸脱する場合は、無機繊維の脱水低下及び地合いの低下が発生したり、無機繊維の分散を阻害し、バンドル(Bundle)現象の増大による地合い及び強度を低下させ得るので、C-PAMの含有量は前記範囲であることが好ましい。
【0044】
分散剤が前記範囲を逸脱する場合は、無機繊維の分散低下による品質低下が発生したり、分散剤による系内汚染と原料の分散低下をもたらすので、分散剤の含有量は前記範囲であることが好ましい。
【0045】
増粘剤が前記範囲を逸脱する場合は、系内溶媒の粘度が低いために、無機繊維の分散を阻害したり、脱水が低下し、原料のバンドル現象の増加によって地合い品質が低下するので、増粘剤の含有量は前記範囲であることが好ましい。
【0046】
結果的に、前記配合範囲を満足する場合は、セラミックペーパーに要求される薄い厚さ、高い湿潤引張強度、高い保留率、低い気孔率及び低い密度などの物性を充足する。
【0047】
続いて、本発明に係るセラミックペーパーの製造方法に関して説明する。
【0048】
図1は、本発明の好ましい実施例に係るセラミックペーパーの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0049】
図1に示したように、本発明のセラミックペーパーは、(a)原料を準備する段階、(b)準備した各原料を混合し、原料混合物を準備する段階、(c)原料混合物をメッシュベルトに積層する段階、(d)メッシュベルトに積層された原料混合物を脱水する段階、及び(e)原料混合物を乾燥させる段階を含んで構成される。
【0050】
まず、原料を準備する(a)段階に関してより具体的に説明すると、(a)段階は、セラミックファイバー、有機バインダー、無機バインダー、PAC、C-PAM、分散剤、増粘剤及び溶媒をそれぞれ準備する段階である。
【0051】
ここで、溶媒は、各原料を均一に混合させるためのものであって、水であり得る。
【0052】
セラミックファイバー、有機バインダー、無機バインダー、PAC、C-PAM、分散剤及び増粘剤と関連した具体的な物質などは上述した通りであるので、これについての重複する説明は省略する。
【0053】
準備した各原料を混合し、原料混合物を準備する(b)段階では、まず、水、分散剤及び増粘剤をパルパー(Pulper)に投入してから一定の時間にわたって撹拌するが、これは、セラミックファイバーがバンドルの形成なしで個々に分散され得る環境を作るためである。
【0054】
その後、セラミックファイバーと有機バインダーを同時に投入した後、8分~12分間700rpm~800rpmで撹拌する。ここで、セラミックファイバーと有機バインダーを同時に投入する理由は、セラミックファイバーと有機バインダーの撹拌時間を確保することによってミキシング効果を高め、また、未分散原料の最小化及び現場作業時間の短縮を通じて生産性を高めることができるためである。
【0055】
その後、無機バインダーと保留剤を追加的に供給し、再度8分~12分間700rpm~800rpmで撹拌することによって原料混合物を準備するが、このとき、無機バインダー、PAC及びC-PAMを順次、すなわち、一定の時間間隔を置いて注入すると良い。
【0056】
ここで、これらの無機バインダー、PAC及びC-PAMを順次供給する理由は、各原料を水中で十分に分散させ、特に、高分子物質の溶解性を確保することによって、高分子鎖を十分にオープンし、これを通じて反応性の極大化を図るためである。
【0057】
ここで、セラミックファイバー、有機バインダー、無機バインダー、PAC、C-PAM、分散剤及び増粘剤は、溶媒としての水10,000Lを基準にして70~95:3~18:3~12:2~6:1~2:1~3:0.2~2.0の重量比で混合されることが好ましく、73~92:3~17:3~12:2~4:1.2~1.8:1.2~2.7:0.3~1.7の重量比で混合されることがより好ましい。
【0058】
一方、溶媒としての水は、25℃~45℃に予め加温しておくことが好ましいが、これは、水温が前記範囲より低い場合は、分散性及び脱水性が低下する一方で、水温が前記範囲より高い場合は、原料混合物と(c)段階でのメッシュなどに無理がかかるので、溶媒の水温は前記範囲であることが好ましい。
【0059】
原料混合物をメッシュベルトに積層する(c)段階は、上記のような配合比で準備されたスラリー状態の原料混合物をメッシュベルトに積層する段階である。より詳細には、1分当たり15m~30mの速度で移動するメッシュベルトに原料混合物を供給し、供給量は1分当たり9,000L~10,000Lであることが好ましい。
【0060】
メッシュベルトに積層された原料混合物を脱水する(d)段階は、メッシュベルトに積層された原料混合物を脱水し、溶媒としての水を1次的に除去する段階である。
【0061】
このとき、脱水は、原料混合物がメッシュベルトに積層される瞬間に1次真空を加えながら行い、続いて、2次真空を追加的に付与しながら脱水工程を行う。
【0062】
1次真空脱水過程では、4段階の真空圧を加えるようになり、1段階では0cmHg~5cmHg、2段階では10cmHg~20cmHg、3段階では30cmHg~40cmHg、4段階では50cmHg~65cmHgの範囲の真空圧を加えるようになる。また、この過程で、脱水を通じて各繊維間の結合を誘導し、結果的に不織布タイプのセラミックペーパーが形成される。
【0063】
2次真空脱水過程では、約18cmHg~22cmHgの範囲の真空圧を加えながら残余水分を除去すると同時に、各繊維間の結合をさらに緻密にする。
【0064】
最後に原料混合物を乾燥させる(e)段階は、残余水分を完全に除去する段階であって、原料混合物を熱風乾燥器とドラムドライヤーに順次通過させることによって達成される。具体的には、原料混合物を100℃~170℃、より好ましくは110℃~130℃で運転される熱風乾燥器で1次的に乾燥させ、135℃~145℃で2次的に熱風乾燥させ、100℃~110℃で3次的に熱風乾燥させた後、135℃~145℃で4次的にドラムドライヤーに通過させる過程が順次行われる。
【0065】
ここで、乾燥段階初期に乾燥を高温で行う場合は、乾燥が急速に行われ、収縮や紙切れが発生する一方で、乾燥を過度に低温で行う場合は、バインダー繊維の完全なバインディングが行われなく、巻き取り後の残余水分が高いために、以降の工程で毛羽が発生したり、結合力が弱化するなどの否定的な影響を及ぼすので、上記のように1次乾燥から4次乾燥までの4段階の乾燥条件で乾燥を行うことが好ましい。
【0066】
その後、必要に応じて、スリッティング装置でスリッティングした後、保管する過程が追加的に行われ得る。
【0067】
以下、本発明を実施例及び実験例によってより詳細に説明する。ただし、下記の実施例及び実験例は、本発明を例示するものに過ぎなく、本発明の内容が下記の実施例及び実験例によって限定されることはない。
【実施例
【0068】
実施例1
水を10,000L、セラミックファイバーを75kg、有機バインダーを15kg、無機バインダーを10kg、保留剤としてのPAC(polyaluminium chloride)とC-PAM(Cationic-Polyacrylamide)をそれぞれ3kg及び1.5kg、分散剤としてのPEG(PolyEthyleneGlycol)を2.5kg、増粘剤としてのPEO(polyethylene oxide)を1.5kg準備した。
【0069】
ここで、セラミックファイバーは、多結晶性アルミナファイバーであって、アルミナ含有量が72%、繊維直径が4μm~10μm、LOI(Loss of Ignition)が0.1%以下、熱伝導率(W/m/K)が1,200℃で0.44以下、熱収縮(%)が1,600℃及び8hrで1未満である。
【0070】
有機バインダーは、チョップドファイバーの形態を有し、繊度が1.0dtex~2.0dtex、長さが3mm~5mm、溶解温度が60℃~80℃で、無機バインダーとしては、SiO含有量が32%であるシリカゾルを使用した。
【0071】
PAC(polyaluminium chloride)は、固形分含有量が14%で、C-PAM(Cationic-Polyacrylamide)の分子量(Mw)は千万である。また、PEG(PolyEthyleneGlycol)は、EO(Ethylene Oxide)が7mol~9molで、PEO(polyethylene oxide)の分子量(MWCO)は5百万である。
【0072】
まず、水、分散剤及び増粘剤をパルパーに投入してから一定の時間にわたって撹拌した後、多結晶性アルミナファイバーと有機バインダーを同時に投入してから10分間750rpmで撹拌した。その後、無機バインダーと保留剤を順次追加的に供給し、再度10分間750rpmで混合することによって原料混合物を準備した。
【0073】
準備された原料混合物を極細糸メッシュベルトに積層し、このとき、メッシュベルトの移送速度は30m/minで、供給される原料混合物は10,000L/minに維持した。
【0074】
このとき、坪量は、約40g/mになるように調節した。
【0075】
また、原料混合物がメッシュベルトに積層される瞬間に0cmHgの真空圧で1段階の自然脱水を行い、続いて、2段階の10cmHgの真空圧、3段階の30cmHgの真空圧、4段階の50cmHgの真空圧で1次脱水を行った。
【0076】
1次脱水を行った後、20cmHgの真空圧で2次脱水を行った。
【0077】
最後に、原料混合物を110℃~130℃で運転される熱風乾燥器で1次的に乾燥させ、135℃~145℃で2次的に乾燥させ、100℃~110℃で3次的に乾燥させ、135℃~145℃でドラムドライヤーに通過させることによって残余水分を除去し、セラミックペーパーを製造した。
【0078】
実施例2
原料混合物において、多結晶性アルミナファイバーを80kgに、有機バインダーを10kgに、無機バインダーを10kgに、分散剤としてのPEG(PolyEthyleneGlycol)を2.0kgに、増粘剤としてのPEO(polyethylene oxide)を1.0kgに変更したことを除いては、実施例1と同一の条件でセラミックペーパーを製造した。
【0079】
実施例3
原料混合物において、多結晶性アルミナファイバーを90kgに、有機バインダーを5kgに、無機バインダーを5kgに、分散剤としてのPEG(PolyEthyleneGlycol)を1.5kgに、増粘剤としてのPEO(polyethylene oxide)を0.5kgに変更したことを除いては、実施例1と同一の条件でセラミックペーパーを製造した。
【0080】
実施例4
坪量を60g/mになるように調節したことを除いては、実施例1と同一の条件でセラミックペーパーを製造した。
【0081】
実施例5
坪量を80g/mになるように調節したことを除いては、実施例1と同一の条件でセラミックペーパーを製造した。
【0082】
<比較例>
比較例1
原料混合物において、多結晶性アルミナファイバーの代わりに鉱物綿(Mineral wool)を75kg使用したことを除いては、実施例1と同一の条件でセラミックペーパーを製造した。
【0083】
ここで、鉱物綿は、繊維の平均太さが7μm以下、密度が140Kg/m、熱伝導率が0.044W/mk以下、粒子含有率が4%以下、熱間収縮温度が550℃である。
【0084】
比較例2
原料混合物において、多結晶性アルミナファイバーの代わりにアルカリ土類ケイ酸塩(Alkali earth silicate)を75kg使用したことを除いては、実施例1と同一の条件でセラミックペーパーを製造した。
【0085】
ここで、アルカリ土類ケイ酸塩は、シリカ含有量が73%以上、繊維直径が3μm~12μm、LOIが0.1%以下、熱伝導率が0.61W/m/k以下である。
【0086】
比較例3
原料混合物において、多結晶性アルミナファイバーの代わりにアルミナファイバー(Alumina fiber)を75kg使用したことを除いては、実施例1と同一の条件でセラミックペーパーを製造した。
【0087】
ここで、アルミナファイバーは、アルミナ含有量が70%以上、繊維直径が4μm~10μm、LOIが0.1%以下、熱伝導率が1,200℃で0.44W/m/Kの範囲である。
【0088】
【表1】
【0089】
<実験例>
実施例1乃至5及び比較例1乃至3で製造されたペーパーの物性を測定し、その結果を次の表2に示した。
【0090】
坪量は、TAPPI T 410規格に従って100cmの試料を10個以上採取し、それぞれの重さを測定した後、平均値を求め、これを補正することによって(補正値×100)測定した。
【0091】
不織布の厚さは、TAPPI T 411規格に従って、これに合う厚さ測定機で測定した。
【0092】
湿潤引張強度は、TAPPI T-456方法によって測定した。
【0093】
保留率は、TAPPI T-261 cm-90方法によって測定した。
【0094】
フォーメーションインデックス(Formation index)は、TAPPI T-272方法によって測定し、フォーメーションインデックスの値が低いほど、ペーパーが良いことを意味する。
【0095】
気孔率(Bulk(cm/g))は、TAPPA T-536方法によって測定した。
【0096】
密度(Density)は、TAPPI T-258方法によって測定した。
【0097】
【表2】
【0098】
表2にまとめたように、本発明の好ましい実施例1乃至3の製造方法で製造した、39.5g/m~40.0g/mの秤量を有するペーパーは、厚さ、湿潤引張強度、保留率及びフォーメーションインデックスなどの全体的な物性に非常に優れることを確認することができる。
【0099】
また、坪量を40.0g/m(実施例1)から60.0g/m(実施例4)及び80.0g/m(実施例5)に高める場合、それぞれの厚さは382μm及び482μmに過ぎないために非常に薄いことが分かる。
【0100】
しかし、比較例1乃至3では、坪量が23.1g/m~52.5g/mであるにもかかわらず、厚さが1,900μm~2,200μmの範囲であるために非常に厚く、さらに、気孔率及び密度も本発明の各実施例に比べて遥かに高いことが分かる。
【0101】
このように、現在商業的に販売されている放熱材と比較したとき、本発明に係るペーパーは、厚さが遥かに薄いために体積を減少させることができる。特に、二次電池などのバッテリーモジュールやバッテリーパックにペーパーが放熱材として使用されるとき、密度及び気孔率に優れるので、軽量化を通じた燃費改善にも寄与することができる。
【0102】
以上では、本発明に対してその好ましい各実施例を中心に説明した。本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本発明がその本質的な特性から逸脱しない範囲で変形した形態に具現可能であることを理解できるだろう。そのため、開示された各実施例は、限定的な観点ではなく、説明的な観点で考慮しなければならない。本発明の範囲は、上述した説明ではなく、特許請求の範囲に示されており、それと均等な範囲は、本発明に含まれたものとして解釈すべきであろう。
図1
【国際調査報告】