(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】スパッタリングターゲット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
C23C14/34 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515939
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-04-03
(86)【国際出願番号】 CN2022119247
(87)【国際公開番号】W WO2023041017
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202111086210.3
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517002878
【氏名又は名称】プランゼー シャンハイ ハイ パフォーマンス マテリアル リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】390040486
【氏名又は名称】プランゼー エスエー
(71)【出願人】
【識別番号】517071416
【氏名又は名称】プランゼージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チァォ
(72)【発明者】
【氏名】ルゥー,ヂィェンドォン
(72)【発明者】
【氏名】リンケ,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】国谷 勉
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ヘンリク
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029BA02
4K029BA11
4K029CA05
4K029DC02
4K029DC12
4K029DC13
4K029DC21
4K029DC22
4K029DC24
(57)【要約】
本発明は、スパッタリングターゲット及びスパッタリングターゲットの製造方法を提供する。スパッタリングターゲットは、その軸が軸方向として定義され、半径方向が存在する平面が前記軸方向に垂直である管状バッキングチューブ;前記軸方向に沿って前記管状バッキングチューブ上に並置された少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメント;及び前記管状バッキングチューブと前記少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメントとの間に配置された接着材料を含む。互いに対向する前記少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメントの少なくとも2つの端部は、半径方向及び/又は軸方向から見たときに、相隣接する2つの円筒状ターゲットセグメントの一方の端部における少なくとも1つのさねが、対応する他方の端部における少なくとも1つの溝と重なり合うように、互いに本ざねはぎを形成し、このとき、前記重なり合いは、前記対応する端部の円周の少なくとも一部に沿って延在する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その軸が軸方向として定義され、半径方向が存在する平面が前記軸方向に垂直である管状バッキングチューブ;
前記軸方向に沿って前記管状バッキングチューブ上に並置された少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメント;及び
前記管状バッキングチューブと前記少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメントとの間に配置された接着材料
を含有してなるスパッタリングターゲットであって、
互いに対向する前記少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメントの少なくとも2つの端部は、半径方向及び/又は軸方向に見たときに、相隣接する2つの円筒状ターゲットセグメントの一方の端部における少なくとも一つのさねが対応する他端における少なくとも1つの溝と重なり合うように、互いに本ざねはぎを形成し、このとき、前記重なり合いが前記対応する端部の円周の少なくとも一部に沿って延在する、
スパッタリングターゲット。
【請求項2】
互いに対向する前記少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメントの前記少なくとも2つの端部が、前記半径方向及び/又は前記軸方向に見たときに、前記1つの端部の1つのさねが、相隣接する2つの円筒状ターゲットセグメントの前記対応する他の端部の1つの溝と重なり合うように、互いに本ざねはぎを形成する、請求項1に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項3】
前記互いに対向する少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメントの前記少なくとも2つの端部が、半径方向及び/又は軸方向に見たときに、2つ以上のさね及び/又は溝を有する一方の端部が2つ以上の溝及び/又はさねを有する他方の端部と重なり合い、その結果、各さねが対応する対向する溝と重なり合うか又は各溝が対応する対向するさねと重なり合うように、互いに本ざねはぎを形成する請求項1に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項4】
前記一つの端部の少なくとも一つのさね及び対応する他の端部の少なくとも一つの溝部が、前記半径方向に見て、相隣接する2つの円筒状ターゲットセグメントの前記対応する端部の半径方向平面において、最大厚さの75%の内側範囲内に配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項5】
前記重なり合いが、前記半径方向平面から見て、相隣接する2つのターゲットセグメントの全周に沿って延在して本ざねはぎを提供する、請求項1~4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項6】
前記さねが矩形断面と2枚の平行な側壁とを有する隆起部であり、前記溝が矩形断面と2枚の平行な側壁とを有するトラフであることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項7】
前記本ざねはぎが、半径方向及び/又は軸方向に見て、相隣接する2つのターゲットセグメントの円周に沿ってセグメントごとに確立される、請求項1~6のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項8】
前記さね及び溝の一方の部材には突起部が配設され、前記さね及び溝の他方の部材には対応するトラフが配設され、前記突起部及び前記トラフが相隣接する2つのターゲットセグメント間の相対回転により係合可能である、請求項1~7のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項9】
更に、相隣接する2つのターゲットセグメント間のギャップに沿って円周方向に延在する円周方向の封止部材を含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項10】
前記円周方向の封止部材が相隣接する2つのターゲットセグメントに形成されたトラフ内に配置されている請求項9に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項11】
前記ターゲットセグメントが金属材料からなる請求項1~10のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項12】
前記ターゲットセグメントがモリブデン系及び/又はタングステン系材料からなる請求項11に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項13】
前記接着材料がはんだであることを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項14】
前記接着材料がインジウムはんだ又はインジウム合金はんだである請求項13に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項15】
更に、前記管状バッキングチューブ上に配置された少なくとも1つの円筒状ターゲットセグメントであって、前記少なくとも1つの円筒状ターゲットセグメントの全長の少なくとも90%に亘って前記軸方向に沿って延在する円筒状ターゲットセグメント;
前記管状バッキングチューブと一体的に形成され、前記管状バッキングチューブに沿って半径方向に突出し、少なくとも前記管状バッキングチューブの円周の一部に沿って延在する前記管状バッキングチューブの軸方向端部領域の停止部材;及び
前記停止部材と前記隣接するターゲットセグメントとの間に挿入され、前記接着材料の漏洩を防止する円周方向封止部材
を含有する請求項1に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項16】
以下の工程を有するスパッタリングターゲットの製造方法。
管状バッキングチューブ及び少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメントを準備する工程であって、ここで、前記管状バッキングチューブの軸が軸方向として定義され、半径方向が存在する平面は前記軸方向に対して垂直であり、前記ターゲットセグメントの端部は少なくとも1つのさね又は少なくとも1つの溝を有する;
前記管状バッキングチューブと前記少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメントとの間に接着材料を供給する工程;
前記管状バッキングチューブ上に前記軸方向に沿って、円筒状ターゲットセグメントを並置する工程であって、ここで、互いに対向する前記少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメントの少なくとも2つの端部は、半径方向及び/又は軸方向に見て、相隣接する2つの円筒状ターゲットセグメントの一方の端部における少なくとも1つのさねが対応する他方の端部における少なくとも1つの溝と重なり合うように、互いに本ざねはぎを形成し、このとき、前記重なり合いは、前記対応する端部の円周の少なくとも一部に沿って延在する;及び
前記少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメントを前記管状バッキングチューブに接着する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリングターゲット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリングは、固体ターゲット中の原子が(通常、プラズマからの)高エネルギーイオンによって衝撃を受け、その固体から気体中に放出される物理的プロセスを指す物理蒸着技術である。
スパッタリングは、一般に、不活性ガスで満たされた真空システム内で行なわれる。高電圧電場の動作下で、アルゴンガスがイオン化されてアルゴンイオン流を発生させ、これがターゲット陰極に衝撃を与える。スパッタされたターゲット材料の原子又は分子は、半導体チップ、ガラス又はセラミック上に堆積されて、薄膜を形成する。スパッタリングは、低温で高融点材料の薄膜を製造することができ、合金及び化合物の薄膜を製造するプロセス中に元の組成を維持することができるという利点を有する。そのため、半導体デバイスや集積回路の製造にスパッタリングが広く用いられてきた。
【0003】
スパッタリングターゲット材料は、スパッタリングにより薄膜を生成する材料であり、金属やセラミックスから製造される。近年、電子部品の更なる低消費電力化及び高速度化の要求があり、これらの要求を達成するために、種々の高品質スパッタリングターゲット材料が必要となっている。
【0004】
一般的に、スパッタリングターゲット材料は、主に、ターゲットブランク、バッキングプレート及びその他の部品で構成されている。ターゲットブランクは、高速イオンビーム流が照射されるターゲット材料で、スパッタリングターゲット材料のコア部分に属する。スパッタリング被覆プロセスでは、ターゲットブランクにイオンが衝突した後、その表面原子をスパッタリングして飛散させ、基板上に堆積させて電子膜を形成する。高純度金属の強度が低いため、スパッタリングプロセスを完成させるためには、スパッタリングターゲット材料は、特殊な機械中に設置する必要がある。機械内部は高電圧、高真空環境になっている。このため、超高純度金属のスパッタリングターゲットブランクは、種々の溶接工程を介してバッキングプレートと接合する必要がある。バッキングプレートは、主に、スパッタリングターゲット材料を固定する役割を果たし、良好な電気伝導性及び熱伝導性を有する必要がある。
【0005】
従来技術では、管状ターゲット材料が提供される。管状ターゲット材料は、凹部を有する管状ターゲット本体と、この凹部と係合するフランジを有する2つの接続部材と、を含む。接続部材は、管状ターゲット本体を接続部材に接続するために、はんだが存在する窪みを有する。しかし、このターゲット材料では、温度が上昇するにつれて、ターゲット材料の接合部からはんだが漏れやすくなる。
【0006】
従来技術では、ターゲット材料組立体及びターゲット材料ユニットが更に設けられている。ターゲット材料組立体は、複数のターゲット材料ユニットと複数の接合部品とを含む。複数のターゲット材料ユニットの各々は、円筒状ターゲット材料及び円筒状基体を有する。円筒状基体は、円筒状ターゲット材料の内側に係合される。前記接合部は、複数のターゲット材料ユニットの内部に位置しており、複数のターゲット材料ユニットのそれぞれは、それらの間に空隙を有する。しかし、このターゲット材料では、温度が上昇するにつれて、ターゲット材料の接合部からもはんだが漏れやすくなる。
【0007】
従来技術では、ターゲット装着機構が更に設けられている。ターゲット装着機構には、円筒状の支持管及びこの支持管を覆うターゲット材料が装着され、接合領域を含んでいて円筒状のターゲットはクランプに接続されている。しかし、このターゲット材料では、温度が上昇するにつれて、ターゲット材料の接合部からもはんだが漏れやすくなる。
【0008】
従来技術では、インターロック用の円筒状マグネトロン陰極及びターゲット材料が更に提供されている。マグネトロン組立体は、ターゲット材料を陰極本体から除去することを可能にする第1のユニットを含む。しかしながら、このターゲット材料では、温度が上昇するにつれて、ターゲット材料の接合部からもはんだが漏れやすくなる。
【0009】
従来技術では、管状ターゲットが更に備えられる。管状ターゲットは、支持管とスパッタリング材料管とで構成されている。支持管は、ねじ接続によってスパッタリング材料管に接続される。O-リング封止が、支持管とスパッタリング材料管との間に配置されている。しかしながら、このターゲット材料では、温度が上昇するにつれて、ターゲット材料の接合部からもはんだが漏れやすくなる。
【0010】
上記から、従来技術の欠点を考慮して、改良されたスパッタリングターゲットを提供できることが、当業者にとって解決が最も必要な技術上の困難な問題であることが分かる。そのスパッタリングターゲットは、ターゲット材料の接合部からのはんだの漏洩を防止し、組立精度及び組立安定性を著しく改善し、安定した品質、高い歩留まり率及びコストの節約を達成することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本出願の目的は、従来技術の欠点を克服し、改善されたスパッタリングターゲット及びスパッタリングターゲットを製造するための方法を提供することである。本出願明細書に提供される改善されたスパッタリングターゲット及びスパッタリングターゲットの製造方法によれば、安定した品質、高い歩留まり率及びコストの節約が達成される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願の第1の局面は、スパッタリングターゲットに関する。スパッタリングターゲットは:
その軸が軸方向として定義され、半径方向が存在する平面が前記軸方向に垂直である管状バッキングチューブ;
前記軸方向に沿って前記管状バッキングチューブ上に並置された少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメント;及び
前記管状バッキングチューブと前記少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメントとの間に配置された接着材料を含有してなり、
ここで、互いに対向する前記少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメントの少なくとも2つの端部は、半径方向及び/又は軸方向に見たときに、相隣接する2つの円筒状ターゲットセグメントの一方の端部における少なくとも一つのさねが対応する他端における少なくとも1つの溝と重なり合うように、互いに本ざねはぎを形成し、このとき、前記重なり合いが前記対応する端部の円周の少なくとも一部に沿って延在する。
【0013】
いくつかの実施形態では、互いに対向する少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメントの少なくとも2つの端部は、半径方向及び/又は軸方向に見たときに、一方の端部における一つのさねが、相隣接する2つの円筒状ターゲットセグメントの対応する他方の端部における一つの溝と重なるように、互いに本ざねはぎを形成する。
【0014】
いくつかの実施形態では、互いに対向する少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメントの少なくとも2つの端部は、1つより多いさね及び/又は溝を有する一方の端部が、1つより多いさね及び/又は溝を有する他方の端部と重なるように、互いに本ざねはぎを形成するが、このとき、半径方向に見たときに、各さねが対応する対向溝と重ね合わされるか、又は、各溝が対応する対向さねと重ね合わされる。
【0015】
いくつかの実施形態では、一つの端部の少なくとも一つのさね及び他の端部の少なくとも一つの溝は、半径方向に見たときに、相隣接する2つの円筒状ターゲットセグメントの対応する端部の半径方向平面において、最大厚さの75%の内側範囲内に配置される。
【0016】
いくつかの実施形態では、重なり合いは、半径方向平面内で見たときに、相隣接する2つのターゲットセグメントの全周に沿って延在して、本ざねはぎを提供する。
【0017】
いくつかの実施形態では、さねは、長方形の断面及び2つの平行な側壁を有する隆起部であり、溝は、長方形の断面及び2つの平行な側壁を有するトラフである。
【0018】
いくつかの実施形態では、本ざねはぎは、半径方向及び/又は軸方向に見て、相隣接する2つのターゲットセグメントの円周に沿ってセグメントごとに確立される。
【0019】
いくつかの実施形態では、突起が、さね及び溝の一方の部材に配置され、対応するトラフが、さね及び溝の他の部材に配置され、突起及びトラフは、相隣接する2つのターゲットセグメント間の相対回転によって係合可能である。
【0020】
いくつかの実施形態では、相隣接する2つのターゲットセグメント間のギャップに沿って円周方向に延在するように、円周方向封止部材が更に含まれる。
いくつかの実施形態では、円周方向封止部材は、相隣接する2つのターゲットセグメントに形成されたトラフ内に配置される。
【0021】
いくつかの実施形態では、ターゲットセグメントは、金属材料で作製される。
いくつかの実施形態では、ターゲットセグメントは、モリブデン系及び/又はタングステン系材料から作製される。
【0022】
いくつかの実施形態では、接着材料は、はんだである。
いくつかの実施形態では、接着材料は、インジウムはんだ又はインジウム合金はんだである。
【0023】
いくつかの実施形態では、スパッタリングターゲットは、管状バッキングチューブ上に配置された少なくとも1つの円筒状ターゲットセグメントを、更に含む。管状バッキングチューブは、少なくとも1つの円筒状ターゲットセグメントの全長の少なくとも90%に亘って軸方向に沿って延在する。
【0024】
いくつかの実施形態では、スパッタリングターゲットは、更に、停止部材に隣接するターゲットセグメントのための停止部材を含み、この停止部材は、管状バッキングチューブの軸方向端部領域で管状バッキングチューブと一体的に形成され且つこれから半径方向に突出し、少なくとも管状バッキングチューブの円周の一部に沿って延在する。
【0025】
いくつかの実施形態では、スパッタリングターゲットは、更に、接着材料の漏洩を防止するために、停止部材と隣接するターゲットセグメントとの間に挿入された円周方向封止部材を含む。
【0026】
本出願の第2の局面は、スパッタリングターゲットの製造方法に関する。
本方法は、以下の工程を有する。
管状バッキングチューブ及び少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメントを準備する工程であって、ここで、管状バッキングチューブの軸が軸方向として定義され、半径方向が存在する平面は前記軸方向に対して垂直であり、前記ターゲットセグメントの前記端部は少なくとも1つのさね又は少なくとも1つの溝を有する工程;
前記管状バッキングチューブと前記少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメントとの間に接着材料を供給する工程;
前記管状バッキングチューブ上に前記軸方向に沿って、円筒状ターゲットセグメントを並置する工程であって、ここで、前記互いに対向する少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメントの少なくとも2つの端部は、半径方向及び/又は軸方向に見て、相隣接する2つの円筒状ターゲットセグメントの一方の端部における少なくとも1つのさねが対応する他方の端部における少なくとも1つの溝と重なり合うように、互いに本ざねはぎを形成し、このとき、前記重なり合いは、対応する端部の円周の少なくとも一部に沿って延在する;及び
前記少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメントを前記管状バッキングチューブに接着する工程。
【発明の効果】
【0027】
本出願の実施形態では、スパッタリングターゲットは、ターゲット材料の接合部からのはんだ漏洩を防止し、組立精度及び組立安定性を著しく改善し、安定した品質、高い歩留まり率及びコスト節約を達成することができる。
【0028】
実施形態によれば、スパッタリングターゲットの製造方法は、コストを節約しつつ、安定した品質と歩留まりの高い製品を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本出願の第1の実施形態によるスパッタリングターゲットの概略図である。
【
図2】
図2は、
図1のスパッタリングターゲットにおける部位Bの部分拡大図である。
【
図3】
図3は、
図1のスパッタリングターゲットにおける部位Aの部分拡大図である。
【
図4】
図4は、本出願の第2の実施形態によるスパッタリングターゲット製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本出願による技術的解決策は、添付の図面を参照して以下で明確且つ完全に説明され、説明された実施形態は、本出願のすべての実施形態ではなく、本出願の実施形態の一部であることが明らかである。本出願の実施形態に基づいて、発明の努力をすることなく当業者によって得られる他の全ての実施形態は、本出願の保護の範囲内に入る。
【0031】
本出願の説明において、用語「中心」、「上」、「下」、「頂」、「底」、「内」、「外」などによって示される方向又は位置関係は、添付の図面に示される方向又は位置関係に基づいており、これらは、本出願を説明し説明を簡略化する便宜だけのためのものであり、参照されるデバイス又は要素が特定の方向を有し、特定の方向で構築され操作されなければならないことを明示したり又は暗示したりするのではなく、従って、本出願を限定するものとして解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0032】
なお、本出願の説明において、特に明記し又は制限されない限り、「配置する」、「接続する」及び「接合する」という用語は、広く解釈されるべきものであり、例えば、固定的に接続され、着脱可能に接続され又は一体的に接続されてもよい。本出願における上記用語の具体的な意味は、当業者によって詳細に理解され得る。
【0033】
また、以下に説明する本出願の異なる実施形態に係る技術的特徴は、互いに矛盾しない限りにおいて、互いに組み合わせることができる。
【0034】
図1は、本出願の第1の実施形態によるスパッタリングターゲットの概略図である。
図1に示すように、スパッタリングターゲットは、管状のバッキングチューブ1並びに円筒状のターゲットセグメント2及び3を備えている。ターゲットセグメントの数は、2つに限定されず、3つ以上であってもよい。バッキングチューブ1の軸は、軸方向(
図1における頂部-底部方向)として定義される。バッキングチューブ1の半径方向(
図1における左-右方向)が存在する平面は、軸方向に対して垂直である。円筒状ターゲットセグメント2及び3は、ターゲットセグメント2及び3の全長に亘って軸方向に沿って延在するバッキングチューブ1上に配置される。いくつかの実施形態では、ターゲットセグメント2及び3は、金属材料、例えば、モリブデン系及び/又はタングステン系材料、で作製される。バッキングチューブ1とターゲットセグメント2及び3との間には、接着材料が配置されている。いくつかの実施形態では、接着材料は、インジウムはんだ又はインジウム合金はんだなどの、はんだである。ターゲットセグメント3の下部(
図1における部位A)には、停止部材が配置されている。
【0035】
図2は、
図1の部位Bにおける部分拡大図である。
図2に示すように、互いに対向するターゲットセグメント2及び3の2つの端部は、半径方向及び/又は軸方向に見て、ターゲットセグメント2の端部における一つのさね6がターゲットセグメント3の対応する他方の端部における一つの溝7と重なり合うように、互いに本ざねはぎを形成し、この重なり合いは、対応する端部の円周の一部に沿って延在する。なお、さね6及び溝7の数は、1つに限定されない。或いは、複数のさね6及び溝7を設けてもよい。例えば、本ざねはぎは、相隣接する2つのターゲットセグメントの円周に沿ってセグメントごとに確立される(特に、以下に説明する係合機構との組合せの場合)。いくつかの実施形態では、重なり合いは、対応する端部の全周に沿って延在する。いくつかの実施形態では、さね6は、長方形の断面と2つの平行な側壁とを有する隆起部であり、溝7は、長方形の断面と2つの平行な側壁とを有するトラフであるが、これらに限定されない。さね6及び溝7は、テーパ状又は円錐状の断面を有するさね及び対応するテーパ状又は円錐状の溝などの、他の適切な構造であってもよい。いくつかの実施形態では、さね6が突起部を備えて配置され、溝7が対応するトラフを備えて配置されるか、又はさね6がトラフを備えて配置され、溝7が対応する突起部を備えて配置される。従って、ターゲットセグメント2及び3の間の相対回転により、突起部は、バヨネット構造に係合される、即ち、バヨネット構造で組み合わされるが、これに限定されない。さね6及び溝7は、溝/トラフ/段差を備えてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、さね6及び溝7は、ターゲットセグメント2及び3のそれぞれ対応する端部の半径方向平面内の最大厚さの75%の内側範囲内に配置されるが、これに限定されない。さね6及び溝7は、他の適切な位置に配置されてもよい。
【0037】
図3は、
図1の部位Aにおける部分拡大図である。
図3に示すように、停止部材4は、バッキングチューブ1の軸方向端部領域において、バッキングチューブ1と一体的に形成され、それに沿って半径方向に突出し、バッキングチューブ1の円周の少なくとも一部に沿って延在する。即ち、停止部材4はバッキングチューブ1の一体的部分であり、停止部材4と隣接するターゲットセグメント3とは、本ざねはぎを形成している。「一体的に形成された」は、同一材料から1段階で形成すること、又は溶接、接着などによって接合することを含むものとする。円周方向封止部材5は、停止部材4とターゲットセグメント3との間に挿入され接着材料の漏洩を防止する。いくつかの実施形態では、停止部材4は、バッキングチューブ1の円周に沿って連続的に延在する。いくつかの実施形態では、封止部材5は、エラストマー材料で作製され、ターゲットセグメント3と停止部材4との間で圧縮されるOリングであるが、これに限定されない。他の適切な構造も使用することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、停止部材4は、突出する段差部であるが、これに限定されない。他の適切な構造も使用することができる。突出段差部は、2つの平行な側壁を有する実質的に長方形の断面を含む、2つの平行な側壁を有する突出隆起部であってもよいが、これに限定されない。他の適切な構造、例えば、テーパ状又は円錐状の断面と対応するテーパ状又は円錐状の溝とを備えた段差部を採用することもできる。
【0039】
いくつかの実施形態では、停止部材4は、半径方向に突出する縁を有し停止部材4及び/又はターゲットセグメント3に押し付けられて封止機能を提供する円周方向部材を有するが、これに限定されない。他の適切な構造も使用することができる。即ち、円周方向封止部材は、縁、T字形プロファイル、ホイル、及びバネ機能を有する環状金属片などで、相隣接する2つのターゲットセグメント間の間隙に沿って円周方向に延在する。
【0040】
いくつかの実施形態では、停止部材4は、例えば、軸方向に沿って延在する溝又はさねを含むが、これらに限定されない。他の適切な構造も使用することができる。
【0041】
既存のスパッタリングターゲット材料は、一般に、複数のターゲットセグメントの接続点に平坦な接合部を有し、バッキングチューブの表面には固定ターゲット材料ボスが無い。既存の切断方法と比較して、本出願によるスパッタリングターゲットは、互いに対向するターゲットセグメントの2つの端部の間に本ざねはぎを形成するので、これにより、組立精度及び組立安定性が著しく改善される。ターゲット材料の使用工程中、温度が上昇するにつれてはんだがターゲット材料の接合部から漏れることも防止される。
【実施例】
【0042】
以下、本出願の好適な実施例を説明するが、本出願の実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0043】
<実施例1>
実施例1におけるスパッタリングターゲットは、管状のバッキングチューブ1、モリブデンからなる円筒状のターゲットセグメント2及び3、停止部材4及び封止部材5を備えている。ターゲットセグメント2及び3は、バッキングチューブ1上に配置され、バッキングチューブ1は、ターゲットセグメント2及び3の全長に亘って軸方向に沿って延在する。インジウムはんだが、バッキングチューブ1とターゲットセグメント2及び3との間に配置される。互いに対向するターゲットセグメント2及び3の2つの端部は、半径方向及び軸方向に見て、ターゲットセグメント2の端部の1つのさね6がターゲットセグメント3の対応する他端部の1つの溝7と重なり合うように、互いに本ざねはぎを形成し、重なり合いは、対応する端部の円周の一部に沿って延びる。さね6は、矩形断面及び2つの平行な側壁を有する隆起部である。溝7は、矩形断面と2つの平行な側壁を有するトラフである。さね6は、突出部を備えて配置され、溝7は、対応するトラフを備えて配置される。従って、突起は、ターゲットセグメント2及び3の間の相対回転によってトラフに係合する。停止部材4は、ターゲットセグメント3に配置される。停止部材4は、バッキングチューブ1と同じ材料を用いて、バッキングチューブ1の軸方向端部領域においてバッキングチューブ1と一体的に形成され、バッキングチューブ1に沿って半径方向に突出し、バッキングチューブ1の円周に沿って連続的に延在する。この停止部材4は、突出した段差部であって、2つの平行な側壁を備えた突出した隆起部を有し、2つの平行な側壁を有する略矩形の断面を有する。本出願のスパッタリングターゲットを適用することにより、ターゲット材料の最下端からのはんだの漏洩が防止され、組立精度及び組立安定性が著しく向上し、生産効率が大幅に向上する。
【0044】
<実施例2>
実施例2におけるスパッタリングターゲットは、管状のバッキングチューブ1、タングステン製の円筒状のターゲットセグメント2及び3、停止部材4並びに封止部材5を備えている。ターゲットセグメント2及び3は、バッキングチューブ1上に配置され、バッキングチューブ1は、ターゲットセグメント2及び3の全長に亘って軸方向に沿って延在する。複数のターゲットセグメントが、ターゲットセグメント2及び3の間に配置されてもよい。互いに対向するターゲットセグメントの2つの端部は、半径方向に見て、一方のターゲットセグメントの端部の2つのさねが他方のターゲットセグメントの対応する他方の端部の2つの溝と重なり合うように、互いに本ざねはぎを形成し、重なり合いは、対応する端部の全周に沿って延在する。インジウム合金はんだが、バッキングチューブ1とターゲットセグメント2及び3との間に配置される。停止部材4は、ターゲットセグメント3に配置される。停止部材4は、バッキングチューブ1の軸方向端部領域において、バッキングチューブ1に沿って溶接され半径方向に突出するように、バッキングチューブ1と一体的に形成され、バッキングチューブ1の円周に沿って連続的に延在する。停止部材4は、半径方向に突出する縁を有し停止部材4及び/又はターゲットセグメント3に押し付けられて封止機能を提供する円周方向部材を有する。本出願のスパッタリングターゲットを適用することにより、ターゲット材料の最下端からのはんだの漏洩が防止され、組立精度及び組立安定性が著しく向上し、生産効率が大幅に向上する。
【0045】
<実施例3>
この実施例3におけるスパッタリングターゲットは、管状のバッキングチューブ1、タンタルからなる円筒状のターゲットセグメント2及び3、停止部材4及び封止
部材5を備えている。ターゲットセグメント2及び3は、バッキングチューブ1上に配置され、バッキングチューブ1は、ターゲットセグメント2及び3の全長に亘って軸方向に沿って延在する。複数のターゲットセグメントが、ターゲットセグメント2及び3の間に配置されてもよい。互いに対向するターゲットセグメントの2つの端部は、半径方向及び軸方向に見て、一方のターゲットセグメントの端部における3つのさねが、他方のターゲットセグメントの対応する他方の端部における3つの溝と重なり合うように、互いに本ざねはぎを形成し、重なり合いは、対応する端部の全周に沿って延在する。インジウム合金はんだが、バッキングチューブ1とターゲットセグメント2及び3との間に配置される。停止部材4は、ターゲットセグメント3に配置される。停止部材4は、接着剤で連結されバッキングチューブ1に沿って半径方向に突出するような態様で、バッキングチューブ1の軸方向端部領域においてバッキングチューブ1と一体的に形成され、バッキングチューブ1の円周に沿って連続的に延在する。停止部材4は、バネ機能を有する環状の金属片である。本出願のスパッタリングターゲットを適用することにより、ターゲット材料の最下端からのはんだの漏洩が防止され、組立精度及び組立安定性が著しく向上し、生産効率が大幅に向上する。
【0046】
次に、本出願のスパッタリングターゲットの製造方法について詳細に説明する。
ここでの第2実施形態のスパッタリングターゲットの製造方法は、第1実施形態におけるスパッタリングターゲットの製造方法である。
図4に示すように、ステップS101において、管状バッキングチューブと、少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメントとが、最初に準備される。管状バッキングチューブの軸は、軸方向と定義され、半径方向が存在する平面は、軸方向に垂直である。ターゲットセグメントの端部には、少なくとも1つのさね又は少なくとも1つの溝が設けられている。次に、ステップS102において、接着材料が、管状バッキングチューブと少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメントとの間に配置される。次に、ステップS103において、円筒状ターゲットセグメントが管状バッキングチューブ上に軸方向に沿って並置される。互いに対向する少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメントの少なくとも2つの端部は、半径方向及び/又は軸方向に見て、一方の端部における少なくとも1つのさねが、相隣接する2つの円筒状ターゲットセグメントの対応する他方の端部における少なくとも1つの溝と重なり合うような形で、互いに本ざねはぎを形成し、ここで、重なり合いは、少なくとも、対応する端部の円周の一部に沿って延在する。最後に、ステップS104において、少なくとも2つの円筒状ターゲットセグメントが管状バッキングチューブに接着される。
【0047】
第1実施形態に係るスパッタリングターゲットは、第2実施形態に係る製造方法により製造されたものであり、ターゲット材料の適用の際に、温度が上昇するにつれてターゲット材料の接合部からはんだが漏れやすくなるという問題を効果的に解決するものである。作製したスパッタリングターゲットは、既存のプロセスと比較して安定した品質と高い歩留まりを有する。
【0048】
本出願の第2の実施形態に係る銀タングステンコンタクト材料は、第1の実施形態に係るスパッタリングターゲットに対応する実施形態である。従って、第1の実施形態における実施に係る様々な点は、第2の実施形態に等しく適用可能であり、本明細書では詳細に説明しない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本出願に係るスパッタリングターゲット及びその製造方法によれば、ターゲット材料の適用の際に温度上昇とともにはんだがターゲット材料の接合部から漏洩しやすいという問題が効果的に解決された。安定した品質、高収率及びコスト削減が達成された。
【0050】
本出願をその好ましい実施形態を参照して説明してきたが、本出願の範囲から逸脱することなく、その諸要素について、様々な変更を行なうことができ、代わりに等価物を用いることができることが、当業者によって理解されるであろう。従って、本出願の範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に従うべきものである。
【国際調査報告】