(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】電気機械の回転子のための巻線ガイド
(51)【国際特許分類】
H02K 3/46 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
H02K3/46 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516377
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-08
(86)【国際出願番号】 EP2022074916
(87)【国際公開番号】W WO2023041403
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524017168
【氏名又は名称】アンペア エス.ア.エス.
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】モット, エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ビバス-マルケス, ダニエラ
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB03
5H604BB14
5H604CC02
5H604CC05
5H604CC15
5H604DB01
(57)【要約】
本発明は、長手方向軸周りのほぼ円形のベースと、ベースから径方向に立ち上がった歯(12)と、歯の自由端から延びて歯から片持ちで突き出たヘッド(13)とを備える電気機械の回転子のための巻線ガイドに関する。本発明によれば、ヘッドのうちの少なくとも1つは、ベースの方に向いた内面(14)であって、長手方向軸に対して厳密に0度より大きい第1の角度で傾斜した平らな主部(141)と、主部から突出して延びるリブ(142)であって、その頂部(142A)は平坦であり、ゼロ度以上かつ第1の角度未満である第2の角度(β)で長手方向軸に対して傾斜したリブ(142)とを備える内面(14)を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 長手方向軸(A1)周りのほぼ円形のベース(11)と、
- 前記ベース(11)から径方向に立ち上がった歯(12)と、
- 前記歯(12)の自由端から延びて前記歯(12)から片持ちで突き出たヘッド(13)と
を備える電気機械の回転子のための巻線ガイド(10)であって、
前記ヘッド(13)のうちの少なくとも1つが、前記ベース(11)の方に向いた内面(14)であって、
- 前記長手方向軸(A1)に対して厳密に0度より大きい第1の角度(α)で傾斜した平らな主部(141)と、
- 前記主部(141)から突出して延びるリブ(142)であって、その頂部(142A)は平坦であり、ゼロ度以上かつ前記第1の角度(α)未満である第2の角度(β)で前記長手方向軸(A1)に対して傾斜したリブ(142)と
を備える内面(14)を有することを特徴とする、巻線ガイド(10)。
【請求項2】
前記第1の角度(α)が1度より大きく、好ましくは1.5度から2.5度の間である、請求項1に記載の巻線ガイド(10)。
【請求項3】
前記第2の角度(β)が0.5度未満であり、好ましくは0度から0.2度の間である、請求項1または2に記載の巻線ガイド(10)。
【請求項4】
前記ヘッド(13)が前記歯(12)の側方から延び、前記歯(12)と連関する第1の縁部(143)と、それとは反対側の第2の自由縁部(144)とを有しており、前記リブ(142)が、その全数のうちの少なくとも一部で前記第1の縁部(143)から前記第2の自由縁部(144)の方に長さ方向に延びる、請求項1から3のいずれか一項に記載の巻線ガイド(10)。
【請求項5】
前記リブ(142)が、前記第1の縁部(143)レベルでほぼゼロの厚さを有する、請求項4に記載の巻線ガイド(10)。
【請求項6】
前記リブ(142)が互いに平行に延びる、請求項1から5のいずれか一項に記載の巻線ガイド(10)。
【請求項7】
前記リブ(142)同士が、前記歯(12)の周りに巻く電線の直径の3倍未満の間隔で隔てられている、請求項6に記載の巻線ガイド(10)。
【請求項8】
前記ヘッド(13)とほぼ平行に前記ベース(11)から立ち上がって前記ヘッドとともに電線の巻回スペースの境界を画定するストッパ(18)が設けられ、前記ストッパ(18)のうちの少なくとも1つが、前記長手方向軸(A1)に対して厳密に0度より大きい第3の角度(δ)で傾斜した側面(181)を備える外面と、その側面(181)から突出して延びる少なくとも1つのリブ(182)であって、その頂部が平坦で、前記長手方向軸(A1)に対してゼロ度以上かつ前記第3の角度未満である第4の角度(ε)で傾斜したリブ(182)とを備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の巻線ガイド(10)。
【請求項9】
溝(4)によって2つずつに分割された磁極要素(3)であって、長手方向軸(A1)の周りに振り分けられた磁極要素(3)を有する巻枠(1A)を備える、電気機械のための回転子(1)において、前記巻枠(1A)が、その端部のうちの少なくとも1つに、請求項1から8のいずれか一項に記載の巻線ガイド(10)であって、その歯(12)が前記磁極要素(3)の延長線上に延びる巻線ガイド(10)を備えること、ならびに前記巻枠(1A)が、それぞれの前記磁極要素(3)および対応する前記歯(12)の周りに巻き付けられた導線のコイル(20)を備えることを特徴とする、回転子(1)。
【請求項10】
請求項9に記載の回転子(1)を備えることを特徴とする、固定子を備える電気機械。
【請求項11】
車輪と、少なくとも前記車輪の一部を回転駆動するためのパワートレインとを備える自動車両であって、前記パワートレインが請求項10に記載の電気機械を備えることを特徴とする、自動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に電気機械に関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、
- 長手方向軸周りのほぼ円形のベースと、
- ベースから径方向に立ち上がった歯と、
- 歯の自由端から延びて歯から片持ちで突き出たヘッドと
を備える電気機械の回転子のための巻線ガイドに関する。
【0003】
本発明は、そのような巻線ガイドを備える回転子、そのような回転子を備える電気機械、およびそのような電気機械を備える自動車両にも関する。
【0004】
本発明は、巻線回転子同期電気機械の実現、特に自動車両用の駆動モータの実現にとりわけ有利な用途を見出すものである。
【背景技術】
【0005】
モータのような電気機械は、一般に回転子と固定子とを備える。回転子は回転部品であり、固定子は固定部品である。
【0006】
自動車両の駆動モータ内の回転子の回転速度は、毎分10,000回転より大きく、それによって大きな機械的応力が発生する。
【0007】
そうした応力に耐えることができる巻線型回転子については、たとえば文献WO2020020551に記載がある。
【0008】
この文献では、回転子は、その中心軸の周りを回転する回転軸と、その軸上に同心状に取り付けられた薄板の積層とを備えている。それらの薄板は、管状の本体と、その本体に対して径方向に突き出る形で延びる磁極とを備える巻枠を形成する。
【0009】
そのため、それぞれの磁極の周りに巻くように電線の巻線が用意される。それぞれの磁極の周りへのその電線の自動的な巻回が容易に行われるようにするため、重畳された薄板のそれぞれの端部に巻線ガイドが用意される。
【0010】
それらのガイドはそれぞれ、(管状の本体の延長上に延びる)円形のベースと、その円形のベースから(磁極の延長上に)延びる歯であって、それぞれがヘッドを片持ちで支える歯とを備える。電線は、それぞれの歯および対応する磁極の周りに巻き付けられるように用意される。ヘッドは、電線の巻線を容易にするとともに、回転子が回転するときに巻線を径方向に保持することができる。
【0011】
巻線ガイドの形状は、電線が磁極および歯の周りに正しく位置決めされながら自動的に巻き付けられるように設計される。
【0012】
基本的な考え方は、電線の一巻き一巻きは、割り当てられたスペース全体にわたって隣り合せに整列して巻かれ、それが何層にも重なり合うようにされるというものである。
【0013】
そのため、一巻き一巻きの構成は、割り当てられたスペースの径方向の寸法によって条件づけられ、そのスペースの境界は、巻線ガイドのそれぞれの歯のヘッドとベースとの間で画定される。
【0014】
理想は、割り当てられたスペース全体でその径方向の寸法が一定であり、一巻き一巻きの層が整列するためにいずれも同じスペースを確保されることであろう。
【0015】
現在、巻線ガイドが射出作業によるプラスチック材料で製作される場合には、この目的は達成されていない。
【0016】
実際、射出によるこうした製造方法は、巻線ガイドの離型を行えるように設計しなければならない形状の金型によって行われる。
【0017】
そのため、巻線ガイドのいずれの面も垂直であってはならない。さもなければ、離型が妨げられることになる。逆に、現在知られている巻線ガイドのヘッドの面は、その離型が可能となるようにわずかに傾斜している。抜き勾配と呼ばれるものである。
【0018】
しかし、このような勾配は、たとえわずかなものであっても、電線の巻回欠陥を生じさせることになる。実際、抜き勾配は電線の受けスペースの拡大をもたらし、その割り当てられたスペースの中で電線の一巻き一巻きが不規則に重なり合う様子が見られる。
【0019】
一巻き一巻きのずれが結果として電気機械の性能の低下を招くことは理解されるところである。
【発明の概要】
【0020】
背景技術におけるこうした欠点を正すため、本発明は、別の製造方法による巻線ガイドの製作を提案するのではなく、射出による製造方法の上述の欠点を考慮に入れた形でガイドを設計することを提案するものである。
【0021】
より具体的には、本発明によれば、緒言で定義したような巻線ガイドにおいて、ヘッドのうちの少なくとも1つが、ベースの方に向いた内面であって、
- 長手方向軸に対して厳密に0度より大きい第1の角度(抜き勾配)で傾斜した平らな主部と、
- 主部から突出して延びるリブあって、その頂部は平坦であり、値域に含まれる下限がゼロ度で、値域に含まれない上限が第1の角度である、値域に含まれる第2の角度で長手方向軸に対して傾斜したリブと
を備える内面を有するようにされた巻線ガイドが提案される。
【0022】
したがって、その考え方は、ヘッドの内面の大半の部分については部品の離型を可能にするのに十分な抜き勾配で傾斜させつつ、電線を押止することができる狭い小さな表面(リブの頂部)のレベルで離型に必要な抜き勾配をごく局所的に減らすというところにある。
【0023】
言い方を代えれば、本発明では、小さなサイズのリブは、抜き勾配をもたないか、またはほとんどもたないにもかかわらず、十分に小さなその寸法によって離型の障害とならずにすませることができる。これらのリブのおかげで、ベースとリブの頂部との間に境界を画定される巻線のスペースは一定の幅をなし、それによって電線の一巻き一巻きをよりよく整列させることができる。
【0024】
本発明による巻線ガイドのその他の有利な特徴や限定的でない特徴を個別に、または技術的に可能なすべての組合せで挙げると以下のようになる。
- 第1の角度(α)は1度より大きく、好ましくは1.5度から2.5度の間である。
- 第2の角度は0.5度未満であり、好ましくは0度から0.2度の間である。
- ヘッドは歯の側方から延び、歯と連関する第1の縁部と、それとは反対側の第2の自由縁部とを有しており、前記リブが、その全数のうちの少なくとも一部で第1の縁部から第2の縁部の方に長さ方向に延びる。
- 前記リブは、第1の縁部レベルでほぼゼロの厚さを有する。
- 前記リブは互いに平行に延びる。
- 前記リブ同士は、歯の周りに巻く電線の直径の3倍未満の間隔で隔てられている。
- ヘッドとほぼ平行にベースから立ち上がってヘッドとともに電線の巻回スペースの境界を画定するストッパが設けられる。
- 前記ストッパのうちの少なくとも1つが、長手方向軸に対して厳密に0度より大きい第3の角度で傾斜した主部を備える外面と、その主部から突出して延びる少なくとも1つのリブであって、その頂部が平坦で、長手方向軸に対してゼロ度以上かつ第3の角度未満である第4の角度で傾斜したリブとを備える。
【0025】
本発明は、巻枠を備える電気機械用の回転子において、その巻枠が、
- 溝によって2つずつに分割された磁極要素であって、長手方向軸の周りに振り分けられた磁極要素と、
- その端部のうちの少なくとも1つに、前述のとおりの巻線ガイドであって、その歯が磁極要素の延長線上に延びる巻線ガイドと、
- それぞれの磁極要素および対応する歯の周りに巻き付けられた導線のコイルと
を備える、電気機械のための回転子にも関する。
【0026】
本発明は、固定子および上述のような回転子を備える電気機械にも関する。
【0027】
本発明は、最後に、車輪と、少なくとも前記車輪の一部を回転駆動するためのパワートレインとを備える自動車両であって、前述の電気機械を備える自動車両に関する。
【0028】
当然のことながら、本発明の様々な特徴、変形および実施形態は、それぞれが両立しないものであるか、またはそれぞれが排他的であるのでない限りにおいて、互いに様々に組み合わせることができる。
【0029】
限定的でない例として示した添付の図面を参照しながら以下に行う説明により、本発明がいかなる内容をなすものであり、本発明がいかにして実現されるものであるかがよく理解されよう。
【0030】
添付の図面はそれぞれ以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明による電気機械の回転子の巻枠の概略斜視図である。
【
図2】
図1の巻枠の巻線ガイドの一部分の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
【0033】
この電気機械は発電機であることができよう。ここでは、どちらかと言えば自動車両の駆動モータであるが、そのモータは時として、車両のある特定の動作モードによっては発電機の機能をもつものであることができる。
【0034】
その場合、モータは、自動車両のシャーシに設置されたパワートレインの一部をなし、その車両の車輪に結合される。
【0035】
そのモータは様々な構成要素を備えるが、その中には固定子および回転子を収容したハウジングが含まれる。固定子がハウジング内に固定されるのに対して、回転子は長手方向軸A1の周りを回転するように取り付けられる。
【0036】
回転子はコイル型(
図4参照)である。そのため、回転子は巻枠1Aと、その巻枠1Aに巻き付けられた電線のコイル20とを備える。
【0037】
【0038】
この巻枠1Aは、長手方向軸A1の周りを回転するように取り付けられた回転軸6を備える。巻枠はまた、回転軸に同軸状に取り付けられた同一の薄板の積層2を備える。
【0039】
その積層2の薄板は、長手方向軸A1に対して垂直をなす径方向の平面内に広がる。その径方向の平面内で薄板はすべて同一の輪郭を有しており、回転軸6を通すための穴があけられた円板の形の本体3Aと、長手方向軸A1の周りに規則的に振り分けられた複数の磁極突起とをもつ。
【0040】
薄板は、それぞれの磁極突起が延長線上で互いに重なり合うことで「磁極3」を形成するように、回転子の回転軸6の外側面に収縮ばめによって取り付けられる。
【0041】
図示されている実施例では、積層2は、8つの磁極3を備えている。しかし、少なくとも2以上の、それとは異なる数の磁極を備えるものであってもよい。
【0042】
それぞれの磁極3はキノコの形をしており、回転子の外に向かって径方向に延びる軸の部分3Bと、その軸の部分3Bの両側に横方向に突き出した2つのリブを形成する傘の部分3Cとを有する。リブ3Cの役割は、回転子1の回転時に導線の巻線(これについてはこの明細書の先の方で詳しく説明する)が被る遠心力に抗して巻線を径方向に保持することなどにある。
【0043】
また、この積層2の端部のうちの少なくとも1つには、積層2の薄板とは異なる要素(ここで「巻線ガイド10」と呼ぶもの)が設けられる。
【0044】
薄板の積層2の両端部には同一の2つの巻線ガイド10が設けられることが好ましいが、ここではそのうちの1つだけについて説明する。
【0045】
それぞれの巻線ガイド10が用意されるのは、基本的に磁極3の周りへの電線の巻き付けを容易にするためである。
【0046】
図1に示した例では、それぞれの巻線ガイド10は、金属製芯材10Aの上にプラスチック製構造物10Bをオーバーモールドしたものからなるという特徴をもつ。
【0047】
変形形態として、また好ましくもある形として、巻線ガイドはプラスチック材料製の単一部品で製作することができよう。
【0048】
図1では、金属製芯材10Aを図示するため、プラスチック製構造物10Bは半分だけを示している。
【0049】
案内フランジ10の金属製芯材10Aは、積層2の薄板と同様の形状を有しており、回転軸6を通すための穴があけられた円形のベースであって、回転子の回転軸の長手方向軸A1に対して垂直な径方向平面内に広がるベースと、磁極突起とを有する。ただし、ここでは、磁極突起は前方に向けて直角に折り返された舌状体の形をなす。
【0050】
ここに至って、当該の巻線ガイド10が存在する側を回転子の前方と定義することができる。後方はその反対側である。「内」または「内側」という用語は、長手方向軸A1に向かう側を指し、「外」または「外側」という用語はその反対側を指す。
【0051】
図1および
図2に示すように、プラスチック製構造物10Bは、円形のベース11と、そのベース11に対して径方向に立ち上がる歯12とを、金属製芯材10Aとともに形成する。プラスチック製構造物10Bはまた、それぞれの歯12の端部に、歯12の両側から前方に突き出たヘッド13を形成する。
【0052】
歯12およびヘッド13はここではすべて同一であるが、前側と反対側とで非対称であることもできる。そこで、
図2に従って、その歯のうちの1つ、そのヘッドのうちの1つのみについて記す。
【0053】
この
図2からは、歯12は、(歯が立ち上がる径方向の軸と直交する平面内に)全体的に長方形の断面を、丸みを帯びた2つの前方稜部ととともに有していることが見て取れる。丸みを帯びたこれらの稜部には、歯12の周りに巻き付けられる電線の一巻き一巻きの第1の層を案内するように線溝が付けられている。
【0054】
ここでは、ヘッド13は歯12の自由端から延びており、前方に向かって、歯の側面に片持ちで突き出ている。つまり、ほぼ平らな長方形のプレートの形をなすヘッド13は、概ね歯12の径方向軸と直交する平面内を延びる。
【0055】
そのため、それぞれのヘッド13は、ベース11と向い合せに位置する内面14をもつ。
【0056】
一方、
図3および
図4が示すように、ベース11はストッパ18を備え、そのうちの2つは、それぞれのヘッド13と向い合せに延びて、ヘッド13とともに巻線スペース19の境界を画定する。
図4は、ストッパ18とヘッド13との間のその巻線スペースに電線のコイル20が巻き付けられたところを示している。
【0057】
本発明の目的は、その巻線スペース19の幅(長手方向軸A1に対して径方向に測定したもの)がスペースの高さ全体にわたって(高さは軸方向に測定)ほぼ一定となるようにすることにある。
【0058】
別の目的は、巻線ガイドをプラスチックで製作できるようにして電線の絶縁を容易にし、電線の損傷を防ぐことにある。プラスチックの製作方法として最も普及しているのは射出成形であり、その利用が可能であることが望まれる。ここでは、射出成形が、長手方向軸A1と平行な軸に沿って別れる2分割の金型の中で行われるものとする。
【0059】
その2つの目的を達成するため、ヘッド13の内面14は(ゼロでない抜き勾配をもつ)歯12に対して直角ではなく、完全な平面でもない。
【0060】
より具体的には、その内面14は、主部141(
図2参照)と呼ぶ主要部分であって、平らで、長手方向軸に対してゼロでない抜き勾配αで傾斜した主要部分と、主部141から突き出した形で延びるリブ142であって、その頂部142Aが平坦で、長手方向軸A1に対して0から(0を含む)抜き勾配αまで(αを除く)の小角度βで傾斜したリブ142とを備える。
【0061】
抜き勾配αは、歯12と連関するヘッド13の縁143から反対の自由縁144へと向かうにつれてヘッド13が細くなる向きをなす。小角度βの向きも同様である。
【0062】
好ましくは、
図3に示すように、抜き勾配αは、1.5度より大きく2度前後である。このような角度は、巻線ガイドの離型を容易にすることができる。
【0063】
一方、小角度βは0.5度以下であり、好ましくは0度から0.2度前後である。この小角度では、巻線スペース19がその高さ全体にわたってほぼ一定の幅をもち、それによって望ましい形状での電線の巻線が保証される。
【0064】
図2に示すように、実際上、リブ142は、すべて同一であり、互いに平行である。リブは、歯12と連関するヘッド13の縁部143(またはその縁の高さ)からヘッドの反対縁144に向かって長さ方向に延びる。
【0065】
リブは、それぞれのリブを互いに隔てる距離に満たないわずかな幅で延びる。その幅は、ヘッドの全幅が40から60mm前後のときで3mm程度である。
【0066】
リブは、ヘッド13の縁部143(歯12の側に位置する縁部)レベルでほぼゼロの厚さを有する。その厚さは、ヘッド13の自由縁144の方に向かって直線的に増大する。
【0067】
リブの縁部は、直線ではなく、同様に明瞭な抜き勾配をもつ。
【0068】
リブ142は、互いに間隔をあけて配置される。その間隔は、巻き付けられる電線の直径の最大3倍であり、そうすることで巻き付けられた電線がリブの間でたわむことがないようにする。その間隔は、その直径の2倍から3倍の間であることが好ましい。
【0069】
歯13の内面14の面積全体に対してリブ142が占める面積の割合は、50%より大きいことが好ましい。
【0070】
しかし、リブ同士の間のスペース(したがってその比率)は、巻線を作る電線の直径に大きく左右されることは理解されよう。
【0071】
巻線スペース19のヘッド13と反対側には、
図4に示すように、ここでは小突起の形状をなす2つのストッパ18が設けられている。当然のことながら、これらのストッパは、別の形状をなすことができよう(たとえば、
図1は、ストッパが小突起でなく、壁の形をしたガイドの変形実施形態の例を示している)。
【0072】
図3および
図4に示した好ましい実施形態では、小突起は頂部の角度の小さな円錐台形の形状をなす。そのため、それぞれの小突起は、
図3に示すように、ヘッド13の方に向かう側面181であって、長手方向軸A1に対して抜き勾配α以上の角度δで傾斜した側面181を有する。
【0073】
リブ182は、小突起のその側面181から突き出るように立ち上がる。リブは、ここではヘッド13のリブ142のものと同じ形状を有する。そのため、このリブ182は、長手方向軸A1に対して、0度から0.5度(両端を含む)の間であることが好ましいわずかな角度εの傾斜をもつ平坦な頂部を有する。
【0074】
そのため、
図3でよくわかるように、歯12から前方に向かう巻線スペース19の幅L1の増大はごくわずかである。
【0075】
そこで、回転子1の組立ては、2つの巻線ガイド10を巻枠1Aの薄板の端部に位置決めして、それぞれの歯12が磁極3の延長上に延びるようにした後、軸方向に対向する各対の歯12およびその歯12の間に位置する磁極の周りにコイル20を形成するように電線を巻き付けることからなる。
【0076】
この巻回の際には、一巻き一巻きの電線は隣り合せに、何層にもわたって自動的に位置決めされる。角度βおよびεの値が小さいため、一巻き一巻きのそれぞれの層の幅L1が変わることはほとんどなく、それによって信頼性の高い電線の自動巻回を果たすことができる。
【0077】
回転子は動作時には高速で回転し、それによってコイル20には強い遠心力F1がかかる(
図4参照)。正しく巻かれた巻線では、電線の2層に1層が巻線ガイド10のヘッド13に押支されることができ、それによって電線のコイル20の強固な保持が果たされる。
【0078】
本発明は、ここに説明し、図示した実施形態に全く限定されるものではなく、当業者であれば、そこに本発明に適合したあらゆる変形形態を加えることができよう。
【0079】
たとえば、リブ同士が平行でないものや、リブが互いに異なるもの、またはリブの幅がまちまちであるものなどが考えられよう。
【国際調査報告】