(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】試料中の標的ポリヌクレオチドを検出するための方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20240822BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20240822BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240822BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/686 Z ZNA
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516382
(86)(22)【出願日】2022-09-11
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 US2022043169
(87)【国際公開番号】W WO2023039228
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524094790
【氏名又は名称】ネクスジェン キャンサー ディテクション エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン, マシュー
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA17
4B063QQ03
4B063QQ12
4B063QQ28
4B063QQ42
4B063QR32
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS36
(57)【要約】
標的ポリヌクレオチドと参照ポリヌクレオチドとの混合物を含む試料中の参照ポリヌクレオチドに対する遺伝子改変を含む標的ポリヌクレオチドを検出するための方法が開示される。この方法は、標的ポリヌクレオチドが混合物の低い割合を表す、参照ポリヌクレオチドと標的ポリヌクレオチドとの混合物中の標的ポリヌクレオチドを高選択性で検出するために利用され得る。この方法は、遺伝子改変に関連する疾患または障害を有する対象の診断、予後判定、及び治療に適応され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的ポリヌクレオチドと参照ポリヌクレオチドとの混合物を含む試料中の、遺伝子改変を欠く前記参照ポリヌクレオチドに対する前記遺伝子改変を含む前記標的ポリヌクレオチドを検出するための方法であって、
(a)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅を実施して、
(i)前記試料、
(ii)5’→3’ヌクレアーゼ活性を欠き、3’→5’ヌクレアーゼ活性を備える、高忠実度DNAポリメラーゼ、
(iii)前記遺伝子改変に隣接する一対のプライマー、及び
(iv)前記遺伝子改変を欠く前記参照ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイゼーションして、ブロッキング二本鎖を形成するブロッキングオリゴヌクレオチドを含む反応混合物中で、増幅産物を得ることと、
(b)前記増幅産物を配列決定し、前記増幅産物中の前記遺伝子改変を検出し、それによって、前記試料中の前記遺伝子改変を含む前記標的ポリヌクレオチドを検出することと、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記標的ポリヌクレオチドが、前記混合物の約3%、2%、1%、0.5%、0.25%、または0.125%以下を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的ポリヌクレオチドが、前記試料中に約30、20、または10未満のコピー数で存在する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記PCR増幅が、60、50、40、または30サイクル以下実施される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記DNAポリメラーゼが、10
-5、10
-6、または10
-7未満のエラー率を有する、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記増幅産物を配列決定して、複数のリードを得、前記遺伝子改変が、前記複数のリードの少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、または99%に存在する、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記遺伝子改変が、前記増幅産物の少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、または99%に存在する、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記増幅産物を配列決定する前に、前記増幅産物から前記ブロッキングオリゴヌクレオチドを除去することを含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
0.1%、0.05%、0.02%、または0.01%以下の割合で前記混合物中に存在する標的ポリヌクレオチドを検出するために必要なPCRサイクルの最小数を決定することをさらに含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記ブロッキングオリゴヌクレオチドが、前記ブロッキングオリゴヌクレオチド及び前記参照ポリヌクレオチドによって形成される前記二本鎖の安定性を高める1つ以上の修飾ヌクレオチドを含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記ブロッキングオリゴヌクレオチドが、前記標的ポリヌクレオチドと比較して、前記参照ポリヌクレオチドにハイブリダイゼーションするための前記ブロッキングオリゴヌクレオチドの選択性を高める1つ以上の修飾ヌクレオチドを含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記ブロッキングオリゴヌクレオチドが、メチレン基を介して4’-Cにコンジュゲートされた2’-Oを有する糖部分を含む1つ以上のロック核酸(LNA)を含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記ブロッキングオリゴヌクレオチドの前記ヌクレオチドの全てが、LNAである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ブロッキングオリゴヌクレオチドが、約20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、または10ヌクレオチド以下の長さを有する、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記遺伝子改変が、置換を含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記遺伝子改変が、欠失を含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記遺伝子改変が、挿入を含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記遺伝子改変が、PIK3CA、KRAS、APC、FAT4、KMT2D、KMT2C、及びBRAFから選択される遺伝子座に存在する、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
2つ以上の標的ポリヌクレオチドと参照ポリヌクレオチドとの混合物を含む試料中の、遺伝子改変を欠く前記参照ポリヌクレオチドに対して異なる遺伝子改変を各々含む、前記2つ以上の標的ポリヌクレオチドを検出するための方法であって、
(a)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅を実施して、
(i)前記試料、
(ii)5’→3’ヌクレアーゼ活性を欠き、3’→5’ヌクレアーゼ活性を備えるDNAポリメラーゼ、
(iii)2つ以上のプライマー対であって、各プライマー対が前記異なる遺伝子改変の1つに隣接する、前記2つ以上のプライマー対、及び
(iv)前記異なる遺伝子改変を欠く前記参照ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイゼーションして、2つ以上のブロッキング二本鎖を形成する2つ以上のブロッキングオリゴヌクレオチドを含む反応混合物中で、増幅産物を得ることと、
(b)前記増幅産物を配列決定し、前記増幅産物中の前記異なる遺伝子改変を検出し、それによって、前記試料中の前記異なる遺伝子改変を含む前記2つ以上の標的ポリヌクレオチドを検出することと、を含む、前記方法。
【請求項20】
前記試料が、対象由来の生体試料である、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記試料が、対象由来の血液試料である、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記試料が、無細胞血液試料であり、及び/または前記血液試料が、PCR増幅を実施する前に細胞を除去するように処理されている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が実施される前に、前記試料が試薬で処理されており、前記試薬は、非メチル化シトシン残基を選択的に修飾して検出可能な修飾残基を生成するが、メチル化シトシン残基を修飾しない、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記遺伝子改変が、対象におけるがんと関連している、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
ステップ(a)を実施する前に、前記対象由来のがん試料を配列決定することと、前記がん試料中の前記遺伝子改変を検出することと、を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記参照ポリヌクレオチドが、前記遺伝子改変に関して野生型配列を含み、前記遺伝子改変が、前記標的ポリヌクレオチドに存在する遺伝子変異である、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記試料が、がんを有するか、またはがんを発症するリスクがある対象から得られる、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記対象が、がんと診断されており、前記対象が、現在寛解している、請求項1~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前述の方法のうちのいずれかを実施するための1つ以上の構成要素を含む、キット。
【請求項30】
(i)5’→3’ヌクレアーゼ活性を欠き、3’→5’ヌクレアーゼ活性を備えるDNAポリメラーゼ、(ii)遺伝子改変に隣接する一対のプライマー、及び(iii)前記遺伝子改変を欠く参照ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイゼーションしてブロッキング二本鎖を形成し、増幅された断片試料を得るブロッキングオリゴヌクレオチドを含む、請求項29に記載のキット。
【請求項31】
(i)5’→3’ヌクレアーゼ活性を欠き、3’→5’ヌクレアーゼ活性を備えるDNAポリメラーゼ、(ii)PIK3CA、KRAS、APC、FAT4、KMT2D、KMT2C、及びBRAFから選択される遺伝子座における遺伝子改変に隣接する一対のプライマー、及び(iii)前記遺伝子改変を欠く参照ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイゼーションしてブロッキング二本鎖を形成し、増幅された断片試料を得るブロッキングオリゴヌクレオチドを含む、請求項29に記載のキット。
【請求項32】
前記ブロッキングオリゴヌクレオチドが、LNAからなり、前記ブロッキングオリゴヌクレオチドが、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、または10ヌクレオチド以下である、請求項29~31のいずれかに記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月13日に出願された米国仮出願第63/243,390号に対する米国特許法第119条(e)に基づく優先権の利益を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の分野は、標的ポリヌクレオチドと非標的ポリヌクレオチドとの混合物を含む試料中の標的ポリヌクレオチドを検出するための方法に関する。具体的には、本発明の分野は、標的ポリヌクレオチドと参照ポリヌクレオチドとの混合物を含む試料中の参照ポリヌクレオチドに対する遺伝子改変を含む標的ポリヌクレオチドを検出するための方法に関し、標的ポリヌクレオチドは、混合物の比較的小さな割合を表す。この方法は、遺伝子改変に関連する疾患または障害を有する対象の診断、予後判定、及び治療に適応され得る。
【背景技術】
【0003】
遺伝子変異及びエピジェネティック修飾は、がん及び他の疾患に関連することが知られている。低侵襲試料を使用してセルフリーDNAにおける遺伝子変異エピジェネティック修飾を検出する能力は、コンパニオン診断、最小残存疾患のモニタリング、がん再発のモニタリングなどの多くの異なる診断領域において、またはがんの診断における前向きな補助として使用され得る。
【0004】
具体的には、がん、がん再発、または治療抵抗性変異の早期診断は、患者の転帰を改善することができる。変異DNAは、野生型DNAと比較して生体試料中で小さな割合のDNAを表すため、低い感度は、早期診断にとって重要である。偽陽性診断に基づく化学療法など、患者が不必要ながん治療を受けるとき、患者の健康に悪影響を及ぼすため、高い特異性も重要である。
【0005】
変異DNAが、変異DNAと野生型DNAとの混合物を含む試料中の野生型DNAと比較して非常に低い濃度で存在し得るとき、遺伝的診断への1つの課題は、変異の存在または不在を正確に決定することに留まる。デジタル液滴PCR、修飾オリゴヌクレオチドを用いたRT-PCR、BEAMing、ディープシーケンシング、次世代シーケンシング(NGS)などの、低頻度変異を検出するために開発された多くの方法が存在する。これらの方法は非常に低い感度を有することが示されているが、これらの方法の1つの欠点は、それらが高感度と組み合わせた低い特異性を達成し得ないことである。具体的には、次世代シーケンシング(NGS)単独では、部分的には、単一塩基変異のエラー率が高すぎるため、NGSを有する低割合のバリアントの存在または不在を正確に決定することができない。豊富な野生型DNA中の変異DNAの存在を正確に決定するための全ての試みにもかかわらず、より良い方法の必要性が依然として存在する。
【0006】
精度には、偽陽性を低減する特異性及び偽陰性を低減する感度の両方が含まれる。閾値は、変異が存在しない陰性試料と変異が存在する陽性試料との間の障壁を定義するために使用される。この閾値は、変異を検出するために使用される方法の特異性及び感度を計算するために使用される。同様に、信号対雑音比を使用して、方法の精度を評価することができ、信号は、変異が存在するときの結果を表し、雑音は、変異が存在しないときの結果を表す。信号及び雑音の分離が大きくなるにつれて、方法はより正確になる。
【0007】
信号対雑音比を増加させるための1つのアプローチは、変異体について試料を濃縮することである。濃縮は、PCR中に、変異DNAに対する野生型DNAの複製を優先的に阻害または防止することを含み得る。そのような濃縮では、PCRの各サイクルは、変異体が、前のサイクルと比較して高い割合で存在することをもたらす。しかしながら、これまでのところ、濃縮方法は、適切な感度及び特異性を達成することができなかった。
【0008】
そのため、変異DNAセグメントが低い割合で存在する場合、変異DNAセグメントを正確に検出する必要性が残っている。これは、液体生検を使用してがんに関連する特定の変異の有無を決定することによって、特にがんの診断に関して、患者に利益をもたらすであろう。これは、コンパニオン診断、最小残存疾患、がん再発、またはがん診断の前向き支援などの、様々ながん診断領域に適用され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、標的ポリヌクレオチドと非標的ポリヌクレオチドとの混合物を含む試料中の標的ポリヌクレオチドを検出するための方法を発見し、標的ポリヌクレオチドは、混合物の比較的小さい割合を表す。本発明者の方法を利用して、非標的ポリヌクレオチドに対する増幅を介して標的ポリヌクレオチドを選択的に濃縮し、標的ポリヌクレオチドが10未満のコピー数で存在し、標的ポリヌクレオチドが、標的ポリヌクレオチド及び非標的ポリヌクレオチドを含む混合物の約0.125%未満を表す場合に、配列決定を介して標的ポリヌクレオチドを正確に検出することができる。いくつかの実施形態では、本発明者の方法は、試料が、本発明者の増幅方法に供され、配列決定された後、標的ポリヌクレオチドが、配列決定された増幅産物の約99%超(すなわち、配列決定リードの約99%超)を表し、700倍を超える濃縮である濃縮を達成する。
【0010】
いくつかの実施形態では、開示される方法は、標的ポリヌクレオチドと参照ポリヌクレオチドとの混合物を含む試料中の参照ポリヌクレオチドに対する遺伝子改変を含む標的ポリヌクレオチドを検出するために実施されてもよく、参照ポリヌクレオチドは、開示される方法において非標的ポリヌクレオチドである。本方法は、標的ポリヌクレオチドが試料中に比較的低濃度(例えば、10コピー未満)で存在する標的ポリヌクレオチドと参照ポリヌクレオチドとの混合物中の標的ポリヌクレオチドを高感度及び高選択性で検出するために利用され得、標的ポリヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチドと参照ポリヌクレオチドを含む混合物の低い割合(例えば、混合物の約0.125%未満)を表す。この方法は、検出された遺伝子改変に関連する疾患または障害を有する対象を診断、予後判定、及び治療するために適合され得る。
【0011】
開示される方法は、典型的には、標的ポリヌクレオチドを検出するために、その後配列決定されるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅産物を実施することを含む。PCR反応は、典型的には、(i)試料または試料の画分、(ii)5’→3’ヌクレアーゼ活性を欠き、3’→5’ヌクレアーゼ活性(すなわち、3’→5’校正活性)を備え、好ましくは、約10-6未満のエラー率(すなわち、高忠実度DNAポリメラーゼ)を有する熱安定性DNAポリメラーゼ、(iii)本方法で検出される遺伝子改変に隣接する一対のプライマー、及び(iv)遺伝子改変を欠く参照ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイゼーションしてブロッキング二本鎖を形成するブロッキングオリゴヌクレオチド(参照ポリヌクレオチドは非標的ポリヌクレオチドである)を含み、それによって、参照ポリヌクレオチドの選択的ブロックキング増幅及び標的ポリヌクレオチドの増幅を強化する。増幅が実施された後、そのように得られた増幅産物を、標的ポリヌクレオチドを検出するために配列決定に供してもよい。開示される方法は、顕著なレベルの濃縮を達成し、標的ポリヌクレオチドは、700倍超の濃縮を表す、配列決定された増幅産物の99%超(すなわち、配列決定リードの約99%超)を表し得る。
【0012】
また、開示される方法を実施するためのキットも本明細書に開示される。開示されるキットは、開示される方法を実施するための、(i)5’→3’ヌクレアーゼ活性を欠き、3’→5’ヌクレアーゼ活性(すなわち、3’→5’校正活性)を備え、好ましくは約10-6未満のエラー率(すなわち、高忠実度DNAポリメラーゼ)を有する熱安定性DNAポリメラーゼ、(iii)方法で検出される遺伝子改変に隣接する一対のプライマー、及び(iv)遺伝子改変を欠く参照ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイゼーションしてブロッキング二本鎖を形成するブロッキングオリゴヌクレオチド(参照ポリヌクレオチドは非標的ポリヌクレオチドである)であって、それによって参照ポリヌクレオチドの増幅を選択的にブロックし、標的ポリヌクレオチドの増幅を増加させるブロッキングオリゴヌクレオチド、から選択される、1つ以上の構成要素を含んでもよい。
【0013】
開示される方法及びキットは、疾患または障害を有するまたは有する疑いのある対象など、診断、予後判定、及び治療を必要とする対象のために利用することができる。具体的には、開示される方法及びキットは、がんを有する対象、またはがんを有することが疑われる対象を診断、予後判定、及び治療するために利用され得る。本開示の方法に好適な対象は、現在寛解しているがん患者を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】0.25%未満のKRAS G12C DNA及び99.75%超のKRAS野生型DNAを含む混合試料を、ブロッキングオリゴヌクレオチドの不存在下で増幅し、配列決定した。174398のリードは、野生型ヌクレオチドを含有することが決定され(99.69%)、490のリードは、KRAS G12C ヌクレオチドを含有し(0.28%)、52のリードは、野生型ヌクレオチドもKRAS G12Cヌクレオチドも含有しない(0.03%)。
【0015】
【
図2】0.25%未満のKRAS G12C DNA及び99.75%超のKRAS野生型DNAを含む混合試料を、ブロッキングオリゴヌクレオチドの存在下で増幅し、配列決定した。464のリードは、野生型ヌクレオチドを含有すると決定され(0.6%)、76842のリードは、KRAS G12Cヌクレオチドを含有し(99.37%)、31のリードは、野生型ヌクレオチドもKRAS G12Cヌクレオチドも含有しない(0.04%)。これらの結果は、LNAブロッカーの存在が、試料を約354倍濃縮し、生のリードを約157倍増加させたことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、以下に記載されるいくつかの定義を使用して、本出願を通して本明細書に記載される。
【0017】
文脈によって別段の指定または指示がない限り、「a」、「an」、及び「the」という用語は、「1つ以上」を意味する。例えば、「標的核酸(a target nucleic acid)」は、「1つ以上の標的核酸」を意味すると解釈されるべきである。
【0018】
本明細書で使用される場合、「約」、「およそ」、「実質的に」、及び「有意に」は、当業者によって理解され、それらが使用される文脈においてある程度変化する。これらの用語が、それらが使用される文脈において当業者に不明確に使用される場合、「約」及び「およそ」は、特定の用語のプラスまたはマイナス10%以下を意味し、「実質的に」及び「有意に」は、特定の用語のプラスまたはマイナス10%超を意味する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「含む(include)」及び「含む(including)」という用語は、「含む(comprise)」及び「含む(comprising)」という用語と同じ意味を有する。例えば、「ステップを含む(include)方法」は、「ステップを含む(comprises)方法」を意味すると解釈されるべきである。「含む(comprise)」及び「含む(comprising)」という用語は、特許請求の範囲に列挙されるそれらの構成要素にさらに追加の構成要素を含めることを可能にする「オープンな」移行用語であると解釈されるべきである。「からなる(consist)」及び「からなる(consisting of)」という用語は、特許請求の範囲に列挙された構成要素以外の追加の構成要素を含めることを許可しない「クローズドな」移行用語であると解釈されるべきである。「から本質的になる」という用語は、部分的にクローズドであり、特許請求される主題の性質を根本的に変更しない追加の構成要素のみを含めることを可能にすると解釈されるべきである。
【0020】
また、反対であるとの明確な指示がない限り、2つ以上のステップまたは行為を含む本明細書に特許請求される任意の方法において、方法のステップまたは行為の順序は、必ずしも方法のステップまたは行為が列挙される順序に限定されないことも理解されたい。
【0021】
活動詞「may」は、いくつかの記載された実施形態またはその中に含まれる特徴のうちの1つ以上のオプションまたは選択の好ましい使用または選択を指す。特定の実施形態またはその中に含まれる特徴に関してオプションまたは選択肢が開示されていない場合、活動詞「may」は、記載された実施形態またはその中に含まれる特徴の態様をどのように作成または使用するかに関する肯定的行為、または記載された実施形態またはその中に含まれる特徴に関する特定のスキルを使用する決定的な決定を指す。この後者の文脈では、活動詞「may」は、補助動詞「can」と同じ意味及び含意を有する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「患者」または「個体」という用語と互換的に使用され得る「対象」という用語は、医療ケア、処置または治療を受け、ヒト対象を包含し得るものを指す。本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、疾患または障害に関連する遺伝子の変異など、疾患または障害に関連する1つ以上の遺伝子座における核酸の変化によって特徴付けられる疾患または障害を有する、及び/またはそれを発症するリスクがある人を包含することを意味する。「対象」という用語は、がんなどの細胞増殖性疾患または障害を有する、及び/またはそれを発症するリスクがある人を包含することを意味する。「対象」という用語は、がんと診断され、かつ現在寛解していると診断されている人を包含することを意味する。それは、疾患または障害に関連するか、または疾患または障害に関連する遺伝子変異を特徴とする1つ以上の遺伝子のメチル化状態をもたらす。遺伝子の「メチル化状態」は、例えば、対照遺伝子に対する遺伝子のプロモーターの「メチル化状態」を含み得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、それを必要とする対象は、細胞増殖性疾患または障害(例えば、乳癌、前立腺癌、結腸癌、肺癌、胆嚢癌、脳癌、子宮癌、卵巣癌、頭頚部癌、胃癌、肝臓癌、白血病、及びリンパ腫などのがん)、神経変性疾患または障害(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、及びハンチントン病)、精神疾患または障害(例えば、統合失調症及びうつ病)、代謝疾患または障害(例えば、1型または2型糖尿病)、心血管疾患または障害(例えば、心筋梗塞または脳卒中)、炎症性疾患または障害(例えば、関節炎)、ならびに免疫疾患または障害を含むがこれらに限定されない、疾患または障害を有するか、またはそれを発症するリスクがある対象を含み得る。いくつかの実施形態では、対象は、がんと診断されており、現在、寛解していると診断されている。
【0024】
開示される方法は、対象から得られる試料中の疾患または障害に関連する1つ以上の遺伝子座の変化を検出することに基づいて、診断または予後判定を必要とする対象にそれを行うために利用され得る。本明細書で使用される場合、「診断する」、「診断」、または「診断すること」という用語は、疾患、症候群、もしくは状態を区別または識別すること、または特定の疾患、症候群、もしくは状態を有するか、もしくはそれを発症するリスクがある対象を区別または識別することを指す。本明細書で使用される場合、「予後(prognose)」または「予後(prognosis)」または「予後判定」という用語は、対象における疾患、症候群、状態、または治療レジメンの転帰を予測することを指す。
【0025】
開示される方法は、それを必要とする対象を治療するために利用され得る。例えば、開示される方法は、疾患または障害に関連するか、または疾患または障害に関連する1つ以上の変異を特徴とする1つ以上の遺伝子のプロモーター領域のメチル化状態に基づいて、診断または予後判定を必要とする対象にそれを行うために利用され得る。診断または予後に続いて、対象は、疾患または障害の診断または予後に基づいて適切な治療を施され得る。
【0026】
開示される方法は、対象の試料中の核酸を特徴付けるために利用され得る。「試料」または「対象の試料」という用語は、組織(例えば、生検から得られた組織)及び体液などの生体試料を含むことを意図している。「体液」には、血液、血清、血漿、唾液、脳脊髄液、胸膜液、涙液、乳管液、リンパ液、痰、及び精液が含まれ得るが、これらに限定されない。試料は、核酸、タンパク質、またはその両方を含み得る。
【0027】
本明細書に開示される方法は、ヌクレオチド試料のDNA増幅を実施するときに適用してもよい。具体的には、本明細書に開示される方法は、遺伝子改変を含む標的ポリヌクレオチドと、遺伝子改変を欠く参照ポリヌクレオチド(参照ポリヌクレオチドが非標的ポリヌクレオチドである場合)との混合物を含む試料のDNA増幅を実施するときに適用され得る。開示された増幅方法で分析される試料は、野生型ポリヌクレオチド(すなわち、変異体ポリヌクレオチド)と比較して、1つ以上の位置に1つ以上の遺伝子改変を有する標的ポリヌクレオチドと、野生型ポリヌクレオチド(野生型ポリヌクレオチドは非標的ポリヌクレオチドである)とを含む混合物を含み得る。
【0028】
本明細書に開示される方法は、ヌクレオチド試料のDNA配列解析を実施するときに適用してもよい。具体的には、本明細書に開示される方法は、遺伝子改変を含む標的ポリヌクレオチドと、遺伝子改変を欠く参照ポリヌクレオチド(参照ポリヌクレオチドが非標的ポリヌクレオチドである場合)との混合物を含む試料のDNA配列解析を実施するときに適用され得る。開示された増幅方法で分析される試料は、野生型ポリヌクレオチド(すなわち、変異体ポリヌクレオチド)と比較して、1つ以上の位置に1つ以上の遺伝子改変を有する標的ポリヌクレオチドと、野生型ポリヌクレオチド(野生型ポリヌクレオチドは非標的ポリヌクレオチドである)とを含む混合物を含み得る。
【0029】
本明細書に開示される方法は、メチル化分析を実施するときに適用してもよい。例えば、本明細書に開示される方法は、試料が、例えば亜硫酸水素塩薬剤などの、非メチル化シトシン残基を選択的に修飾するがメチル化シトシン残基を選択的に修飾しない薬剤で処理された後、ポリヌクレオチド試料を増幅及び配列決定するときに適用され得る。亜硫酸水素塩処理は、一般に、ポリヌクレオチド試料中の非メチル化シトシン残基をウラシル残基に変換するために実施される。次いで、処理されたポリヌクレオチド試料を、ウラシル残基が最終的にチミジン残基に変換されるDNA合成のための鋳型として(例えば、PCR増幅または配列決定反応において)利用することができる。処理されたポリヌクレオチド試料の配列決定を実施することによって、シトシン残基に対する所与の位置でのチミジン残基の検出は、それぞれ、元の試料中の非メチル化シトシンまたは元の試料中のメチル化シトシンを示すであろう。したがって、開示される増幅方法で分析される試料は、1つ以上の各位置にT/UまたはCを有する非標的ポリヌクレオチドと比較して、それぞれ1つ以上の位置にCまたはT/Uを有する標的ポリヌクレオチドを含む混合物を含み得る。
【0030】
本明細書に開示される方法は、多種多様な配列決定方法に適用することができる。配列決定方法は、高スループットまたは超高スループット配列決定方法を含み得る。開示される方法に適した、または適応可能なDNA配列決定プロセスは、限定されないが、合成による配列決定、単一分子リアルタイム配列決定、イオン半導体配列決定、ピロ配列決定、ライゲーションによる配列決定、鎖終結配列決定、大規模並列シグネチャ配列決定、ポロニー配列決定、DNAナノボール配列決定、ヘリスコープ単一分子配列決定、Nanopore DNA配列決定、ハイブリダイゼーションによる配列決定、質量分析による配列決定、マイクロ流体Sanger配列決定、及び顕微鏡ベースの配列決定技術を含み得る。したがって、開示される方法は、いわゆる「第一世代」DNAシーケンシング技術である、Sangerシーケンシング法またはMaxam及びGilbertシーケンシング法、ならびにいわゆる「第二世代」及び「第三世代DNAシーケンシング技術」である高スループット分析により適合する方法、に基づく従来のDNAシーケンシング方法に適用され得る。(例えば、Mardis,Ann.Rev.Genomics and Human Genetics,Vol.9:387-402(2008)、Metzker,Genome Research,(2005)15:1767-1776、Moorthie et al.,Hugo J.v.5(1-4),Dec.(2011)、及びSchadt et al.,Human Molecular,Genetics,Vol.19,No.R2,pp.R227-2490,September 21,2010、及びShendure et al.,Nature Biotechnology 26,1135-1145(2008)を参照されたい。
【0031】
開示される技術は、核酸、ならびに疾患及び障害を診断、予後判定、及び/または治療するための核酸の使用に関する。「核酸」及び「オリゴヌクレオチド」ならびに「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書で使用される場合、ポリデオキシリボヌクレオチド(2-デオキシ-リボースを含有する)、ポリリボヌクレオチド(リボースを含有する)、ならびにプリンまたはピリミジン塩基のNグリコシドである任意の他のタイプのポリヌクレオチドを指す。本明細書で使用される場合、「A」、「T」、「C」、「G」、及び「U」という用語は、それぞれ、ヌクレオチド塩基としてのアデニン、チミン、シトシン、グアニン、ウラシルを指す。「核酸」、「オリゴヌクレオチド」、及び「ポリヌクレオチド」という用語の間には、長さにおいて意図された区別はなく、これらの用語は、互換的に使用される。これらの用語は、分子の一次構造のみを指す。したがって、これらの用語には、二本鎖及び一本鎖DNA、ならびに二本鎖及び一本鎖RNAが含まれる。本発明で使用するために、オリゴヌクレオチドはまた、塩基、糖またはリン酸骨格が修飾されているヌクレオチド類似体、ならびに非プリンまたは非ピリミジンヌクレオチド類似体を含むことができる。
【0032】
開示される方法で利用されるオリゴヌクレオチドは、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチド修飾には、限定されないが、ロック核酸(LNA)または架橋核酸(BNA)、ペプチド核酸、グリコール核酸、及びスレオース核酸が含まれ得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドの「断片」は、参照配列と配列が同一であるが、長さが短いポリヌクレオチド配列の一部である。断片は、最大、参照配列の全長マイナス少なくとも1つのヌクレオチドを含むことができる。例えば、断片は、参照ポリヌクレオチドの5~1000個の連続したヌクレオチドを含んでもよい。いくつかの実施形態では、断片は、参照ポリヌクレオチドの少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、250、または500個の連続したヌクレオチドを含み得、他の実施形態では、断片は、参照ポリヌクレオチドの5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、250、または500個以下の連続したヌクレオチドを含み得、さらなる実施形態では、断片は、前述の値のいずれかによって囲まれた参照ポリヌクレオチドの連続したヌクレオチドの範囲を含み得る(例えば、参照ポリヌクレオチドの20~50個の連続したヌクレオチドを含む断片)。断片は、分子の特定の領域から優先的に選択され得る。「少なくとも1つの断片」という用語は、完全長ポリヌクレオチドを包含する。参照ポリヌクレオチド配列の「バリアント」、「変異体」、または「誘導体」は、参照ポリヌクレオチド配列の断片を含み得る。
【0034】
標的ポリヌクレオチド及び/または非標的ポリヌクレオチド(すなわち、参照ポリヌクレオチド)の断片は、PCR増幅反応を介して生成され得る。増幅産物は、標的ポリヌクレオチド及び/または非標的ポリヌクレオチド(すなわち、参照ポリヌクレオチド)の増幅断片を含み得る。増幅産物は、標的ポリヌクレオチド及び/または非標的ポリヌクレオチド(すなわち、参照ポリヌクレオチド)の増幅断片の混合物を含み得る。
【0035】
ポリヌクレオチド配列に関して、「改変」、「バリアント」、「変異体」、または「誘導体」は、野生型配列を含み得る参照配列に対して異なる核酸配列を有する核酸配列として定義され得る。「改変」、「バリアント」、「変異体」、または「誘導体」は、1つ以上のヌクレオチドの置換(例えば、G→t塩基転換)、1つ以上のヌクレオチドの欠失、及び/または1つ以上のヌクレオチドの挿入を含み得る。
【0036】
標的ポリヌクレオチドは、非標的ポリヌクレオチドである参照配列に対する変化を含み得る。例えば、標的ポリヌクレオチドは、野生型参照配列に対する変異を含んでもよい。開示される方法において、野生型参照ポリヌクレオチドであり得る非標的ポリヌクレオチドに対して、標的ポリヌクレオチドを選択的に増幅し、検出する。
【0037】
本明細書に開示される核酸は、「実質的に単離または精製され」てもよい。「実質的に単離または精製された」という用語は、その天然環境から取り出され、天然に会合している他の成分を少なくとも60%含まず、好ましくは少なくとも75%含まず、より好ましくは少なくとも90%含まず、さらにより好ましくは少なくとも95%含まない核酸を指す。いくつかの実施形態では、開示される方法で利用される試料は、実質的に単離または精製された核酸試料を含んでもよい。
【0038】
本開示の方法は、動物由来の供給源及び/または環境由来の供給源を含む、任意の供給源由来の核酸を含む試料を利用し得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド試料は、ゲノムDNAを含む。さらなる実施形態では、ゲノムDNAは、配列決定の前に試薬で処理されており、この試薬は、DNA中の非メチル化シトシン残基を選択的に修飾して検出可能な修飾残基を生成するが、メチル化シトシン残基は修飾しない。なおもさらなる実施形態では、ポリヌクレオチド試料のヌクレオチド位置にあるヌクレオチドは、メチル化シトシンまたは修飾残基であり、ポリヌクレオチド断片のセットは、ポリヌクレオチド試料のヌクレオチド位置に、シトシンまたはチミンを有する2つ以上の異なるポリヌクレオチド断片を含む。
【0039】
開示される方法は、標的ポリヌクレオチド及び/または非標的ポリヌクレオチド(すなわち、参照ポリヌクレオチド)に相補的であるプライマーを利用し得る。開示される方法はまた、非標的ポリヌクレオチドに相補的であり、1つ以上のヌクレオチド位置において標的ポリヌクレオチドに相補的ではないブロッキングオリゴヌクレオチドを利用してもよい。本明細書で使用される場合、第1のポリヌクレオチド配列及び第2のポリヌクレオチド配列に関して「相補的な」という用語は、第1のポリヌクレオチド配列が、ミスマッチすることなくヌクレオチドの伸長を通して第2のポリヌクレオチド配列と正確に塩基対になることを意味する。「同族」という用語は、第1のポリヌクレオチド配列及び第2のポリヌクレオチド配列に関連して、第1のポリヌクレオチド配列が、ヌクレオチドのストレッチを通して第2のポリヌクレオチド配列と塩基対になるが、ヌクレオチドのストレッチ内に1つ以上のミスマッチを含み得ることを意味する。本明細書で使用される場合、「相補的」という用語は、第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドのヌクレオチド対(例えば、A:T、A:U、C:G、G:C、G:U、T:A、U:A、及びU:G)の間の塩基対相互作用によって、第1のポリヌクレオチドが第2のポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションする能力を指し得る。
【0040】
本明細書で使用される「ハイブリダイゼーション」という用語は、相補的塩基対合による2つの一本鎖核酸による二本鎖構造の形成を指す。ハイブリダイゼーションは、完全に相補的な核酸鎖間、または少量のミスマッチの領域を含有する「実質的に相補的な」核酸鎖間で生じ得る。完全に相補的な核酸鎖のハイブリダイゼーションが強く好ましい条件は、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」または「配列特異的ハイブリダイゼーション条件」と称される。実質的に相補的な配列の安定した二本鎖は、よりストリンジェントでないハイブリダイゼーション条件下で達成することができ、許容されるミスマッチの程度は、ハイブリダイゼーション条件の適切な調整によって制御することができる。核酸技術の当業者は、当該技術分野によって提供されるガイダンスに従って、例えば、オリゴヌクレオチドの長さ及び塩基対組成、イオン強度、及びミスマッチ塩基対の発生率を含むいくつかの変数を考慮して、経験的に、二本鎖安定性を決定することができる(例えば、参照により本明細書に取り込まれる、Sambrook et al.,1989,Molecular Cloning-A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York;Wetmur,1991,Critical Review in Biochem.and Mol.Biol.26(3/4):227-259;and Owczarzy et al.,2008,Biochemistry,47:5336-5353を参照されたい)。核酸技術の当業者は、二本鎖の融解温度を決定することができる。
【0041】
混合試料中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法
【0042】
開示される主題は、例えば、参照ポリヌクレオチドが試料中の非標的ポリヌクレオチドである、標的ポリヌクレオチドと、参照ポリヌクレオチドとの混合物を含む試料中の、遺伝子改変を欠く参照ポリヌクレオチドと比較して遺伝子改変を含む標的ポリヌクレオチドを検出するための方法に関する。この方法は、標的ポリヌクレオチドが低コピー数(例えば、約10コピー未満)で存在し、標的ポリヌクレオチドが標的ポリヌクレオチドと参照ポリヌクレオチドとの混合物の低い割合(例えば、約0.125%未満)を表す、参照ポリヌクレオチドと標的ポリヌクレオチドとの混合物中の標的ポリヌクレオチドを、高感度及び高選択性で検出するために利用され得る。この方法は、検出された遺伝子改変に関連する疾患または障害を有する対象を診断、予後判定、及び治療するために適合され得る。
【0043】
開示される方法は、典型的には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅などの増幅産物を産生する増幅ステップを含む。PCR増幅は、典型的には、遺伝子改変を欠く参照ポリヌクレオチドに対して、標的ポリヌクレオチドに存在する遺伝子改変を選択的に増幅するように構成され、参照ポリヌクレオチドは、非標的ポリヌクレオチドである。開示される方法はまた、典型的には、増幅産物が配列決定され、標的ポリヌクレオチドの遺伝子改変が同定される、配列決定ステップを含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、開示される方法は、(a)反応混合物中でポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅を実施し、増幅産物を得ることであって、反応混合物は、(i)試料または試料の画分、(ii)5’→3’ヌクレアーゼ活性を欠き、3’→5’ヌクレアーゼ活性などの校正活性を含む、好ましくは、高忠実度ポリメラーゼ(例えば、約10-6未満のエラー率を有するポリメラーゼ)であるDNAポリメラーゼ、(ii)遺伝子改変に隣接するプライマー対、及び(iii)遺伝子改変を欠く参照ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイゼーションしてブロッキング二本鎖を形成し、増幅断片試料を得るブロッキングオリゴヌクレオチド、を含む、増幅産物を得ること、ならびに(b)増幅産物を配列決定して、増幅産物中の遺伝子改変を検出し、それによって試料中の遺伝子改変を含む標的ポリヌクレオチドを検出すること、を含む。反応混合物は、PCR増幅を実施するための追加の成分(例えば、緩衝液、NTP、二価カチオンなど)をさらに含み得る。
【0045】
開示される方法は、試料中の標的ポリヌクレオチドと参照ポリヌクレオチドとの混合物の約3%、2%、1%、0.5%、0.25%、0.125%以下を表す標的ポリヌクレオチドを検出するために実施されてもよい。開示される方法のいくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、試料中の標的ポリヌクレオチドと参照ポリヌクレオチドとの混合物の約0.125%以下を表す。
【0046】
本開示の方法は、比較的低いエラー率を有するポリメラーゼを利用し得る。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、約10-5、10-6、または10-7未満のエラー率を有する。
【0047】
開示される方法は、典型的には、いくつかの増幅サイクルを含む増幅ステップを含む。開示される方法のいくつかの実施形態では、方法は、PCR増幅が60、50、40、または30サイクル以下実施されるPCR増幅ステップを含む。
【0048】
開示される方法では、標的ヌクレオチドの遺伝子改変が、選択的に増幅または濃縮される。開示される方法のいくつかの実施形態では、遺伝子改変は、配列決定された増幅産物の少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、または99%において検出される。開示される方法のいくつかの実施形態では、増幅産物は、複数のリードから配列決定され、遺伝子改変は、複数のリードのうちの少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、または99%において検出される。
【0049】
開示される方法において、標的ポリヌクレオチドの遺伝子改変は、選択的に濃縮され、検出される。開示される方法のいくつかの実施形態では、試料中の遺伝子改変を含む標的ポリヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチドと、一般的な変化(generic alteration)を欠く参照ポリヌクレオチドとの混合物の約0.125%以下を表す。開示される方法が実施された後、いくつかの実施形態では、増幅産物は、複数のリードから配列決定され、遺伝子改変は、複数のリードの少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、または99%において検出され、少なくとも約720倍(すなわち、90%/0.125%=720)の濃縮を表す。
【0050】
開示される方法は、典型的には、増幅産物の配列決定を含む。開示される方法のいくつかの実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、増幅産物を配列決定する前に、増幅産物から除去される。
【0051】
開示される方法は、典型的には、標的ヌクレオチド及び参照ポリヌクレオチドを含む混合試料中に存在する、標的ヌクレオチドを検出する。いくつかの実施形態では、開示される方法は、標的ポリヌクレオチドが相対的に低い割合で混合物中に存在するとき(例えば、標的ポリヌクレオチドが0.1%、0.05%、0.02%、または0.01%以下の割合で混合物中に存在するとき)、標的ポリヌクレオチドを検出するために必要な最小数のPCRサイクルを決定するステップを含む。
【0052】
開示される方法において、標的ポリヌクレオチドは、試料中に相対的に低い濃度で存在し得る。いくつかの実施形態では、標的ヌクレオチドは、約10000、1000、100、10以下のコピー数で試料中に存在し得る。いくつかの実施形態では、開示される方法は、標的ポリヌクレオチドが約10000、1000、100、10またはそれ以下のコピー数で試料中に存在するときに、標的ポリヌクレオチドを検出するために必要なPCRサイクルの最小数を決定するステップを含む。
【0053】
開示される方法では、標的ヌクレオチドの遺伝子改変が、選択的に増幅または濃縮される。遺伝子改変は、参照ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイゼーションしてブロッキング二本鎖を形成するブロッキングオリゴヌクレオチドを含むようにPCR増幅反応を構成することによって選択的に増幅または濃縮されてもよく、参照ポリヌクレオチドは一般的な変化(generic alteration)を欠き、参照ポリヌクレオチドは非標的ポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、ブロッキングオリゴヌクレオチド及び参照ポリヌクレオチドによって形成される二本鎖の安定性を高める、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチドと比較して、参照ポリヌクレオチドにハイブリダイゼーションするためのブロッキングオリゴヌクレオチドの選択性を高める、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含む。
【0054】
ブロッキングオリゴヌクレオチドは、遺伝子改変を欠く(すなわち、参照ポリヌクレオチドが非標的ポリヌクレオチドである)参照ポリヌクレオチドと第1の二本鎖を形成し得、第1の二本鎖は、第1の融解温度T1を有する。ブロッキングオリゴヌクレオチドは、遺伝子改変を含む標的ポリヌクレオチドと第2の二本鎖を形成し得、第2の二本鎖は第1の融解温度T2を有する。好ましくはT1>T2である。いくつかの実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、T1が、T2よりも少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15℃高い(すなわち、T1-T2が、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15℃よりも高い)ように構成される。
【0055】
開示される方法では、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドを含み得るかまたはそれからなり得る。修飾ヌクレオチドには、限定されないが、ロック核酸(LNA)またはブリッジ核酸(BNA)、ペプチド核酸、グリコール核酸、及びスレオース核酸が含まれ得る。ブロッキングオリゴヌクレオチド中の修飾ヌクレオチドの存在により、T1またはT2が変化し得る。好ましくは、ブロッキングオリゴヌクレオチド中の修飾ヌクレオチドの存在は、T1を増加させる。好ましくは、ブロッキングオリゴヌクレオチド中の修飾ヌクレオチドの存在は、T1とT2との間の差を増加させる。
【0056】
開示される方法では、PCR反応混合物の温度を上げて一本鎖DNAを形成するために、標的ポリヌクレオチド及び参照ポリヌクレオチドを溶解してもよい。次に、温度は、ブロッキングオリゴヌクレオチドが標的ポリヌクレオチドにハイブリダイゼーションされたときにより低い融解温度を有するように構成されているため、ブロッキングオリゴヌクレオチドが選択的に参照ポリヌクレオチドにハイブリダイゼーションするポイントまで低下され得る。したがって、標的ポリヌクレオチドの割合と比較して、より高い割合の参照ポリヌクレオチドがブロッキングオリゴヌクレオチドとハイブリダイゼーションされる。次に、ブロッキングオリゴヌクレオチドがハイブリダイゼーションする位置に隣接するプライマーオリゴヌクレオチドを使用して、標的オリゴヌクレオチド及び参照オリゴヌクレオチドを増幅する。PCR増幅中に、ブロッキングオリゴヌクレオチドの参照ポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションは、ポリメラーゼの伸長を阻害する。その結果、標的ポリヌクレオチドが存在する場合、標的ポリヌクレオチドは、参照ポリヌクレオチドと比較してより高い程度まで増幅される。結果として、各PCRサイクル後、標的ポリヌクレオチドの増幅産物が濃縮される。標的ポリヌクレオチドの遺伝子改変を検出するために、標的ポリヌクレオチドの増幅産物のコピーの総数を配列決定を実施することができるポイントまで増加させるために、複数のPCRサイクルを実施してもよい。
【0057】
好ましくは、開示される方法では、増幅中の伸長は、ブロッキングオリゴヌクレオチドが試料中の参照ポリヌクレオチド(非標的ポリヌクレオチドである)の比較的高い割合にハイブリダイゼーションされる温度、例えば、ブロッキングオリゴヌクレオチドが試料中の参照ポリヌクレオチド(非標的ポリヌクレオチドである)の約50%超、60%、70%、80%、90%、95%またはそれを超えてハイブリダイゼーションされる温度で実施される。好ましくは、開示される方法では、増幅中の伸長は、ブロッキングオリゴヌクレオチドが試料中の比較的低い割合の標的ポリヌクレオチドにハイブリダイゼーションされる温度、例えば、ブロッキングオリゴヌクレオチドが試料中の標的ポリヌクレオチドの約50%未満、40%、30%、30%、またはそれ未満にハイブリダイゼーションされる温度で実施される。
【0058】
ブロッキングオリゴヌクレオチドは、架橋核酸(BNA)としても知られるロック核酸(LNA)を含み得る。LNAは、糖部分(例えば、リボース)が、2’酸素及び4’炭素を接続する架橋(すなわち、2’-O及び4’-Cが架橋部分を介してコンジュゲートされる)で修飾される修飾ヌクレオチドである。この橋は、A型二本鎖によく見られる3’-endo(North)立体構造で糖部分を「ロック」する。この構造は、酵素分解に対する安定性の向上をもたらし、オリゴヌクレオチドの構成成分としての塩基対合における特異性及び親和性の向上ももたらす。LNAヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド中のDNAまたはRNA残基と混合することができる。LNAの架橋部分は、アルキレン部分(例えば、メチレン架橋部分)及びアミノアルキレン部分(例えば、アミノメチレン架橋部分)を含み得る。LNAは、+A、+G、+C、または+Tという名称で言及されてもよい。ブロッキングオリゴヌクレオチドのいくつかの実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドのヌクレオチドの全ては、LNAである。
【0059】
開示される方法は、比較的短い長さのブロッキングオリゴヌクレオチドを利用してもよい。いくつかの実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、約20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、または10ヌクレオチド以下の長さを有する。
【0060】
開示される方法は、参照ポリヌクレオチドに対して遺伝子改変を含む標的ポリヌクレオチドを検出するために実施されてもよく、参照ポリヌクレオチドは非標的ポリヌクレオチドである。遺伝子改変は、例えば、標的ポリヌクレオチドが変異を含み、参照ポリヌクレオチドが野生型配列を含み、参照ポリヌクレオチドが非標的野生型ポリヌクレオチドである、野生型配列に対する変異を含み得る。開示される方法で検出される遺伝子改変は、置換、欠失、挿入、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0061】
開示される方法で検出された遺伝子改変は、選択された遺伝子座に存在し得る。いくつかの実施形態では、遺伝子改変は、PIK3CA、KRAS、APC、FAT4、KMT2D、KMT2C、及びBRAFのうちの1つ以上から選択される遺伝子座に存在する。
【0062】
開示される方法のいくつかの実施形態では、方法は、内部対照としての対照配列を増幅する追加的なプライマー対を利用する。内部対照を利用して、開示される方法のステップが意図されたとおりに行われていること及び/またはブロッキングオリゴヌクレオチドが意図されたとおりに参照ポリヌクレオチドの指数関数的増幅をブロックしている場合を示すことができる。
【0063】
開示される方法は、参照ポリヌクレオチドに対して異なる遺伝子改変を含む複数の標的ポリヌクレオチドを検出するために構成され得る。いくつかの実施形態では、開示される方法は、多重解析を実施するように構成される。
【0064】
いくつかの実施形態では、開示される方法は、各々が、2つ以上の標的ポリヌクレオチドと、参照ポリヌクレオチドとの混合物を含む試料中の、遺伝子改変を欠く参照ポリヌクレオチド(参照ポリヌクレオチドが試料中の非標的ポリヌクレオチドである)に対して異なる遺伝子改変を含む、2つ以上の標的ポリヌクレオチドを検出するように構成される。開示される方法は、(a)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅を実施して、(i)試料または試料の画分、(ii)5’→3’ヌクレアーゼ活性及び3’→5’ヌクレアーゼ活性を欠くDNAポリメラーゼ(例えば、3’→5’ヌクレアーゼ活性を含む熱安定性ポリメラーゼ)、好ましくは、高忠実度ポリメラーゼ(例えば、約10-6未満のエラー率を有する熱安定性ポリメラーゼ)であるDNAポリメラーゼ、(iii)各プライマー対が、異なる遺伝子改変のうちの1つに隣接する、2つ以上のプライマー対、及び(iv)各々が、異なる遺伝子改変を欠く参照ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイゼーションして、2つ以上のブロッキング二本鎖を形成するように構成される、2つ以上のブロッキングオリゴヌクレオチドと、を含む、反応混合物中の増幅産物を得ることと、(b)増幅産物を配列決定し、増幅産物中の異なる遺伝子改変を検出し、それによって、試料中の異なる遺伝子改変を含む、2つ以上の標的ポリヌクレオチドを検出することと、を含み得る。反応混合物は、PCR増幅を実施するための追加の成分(例えば、緩衝液、NTP、二価カチオンなど)をさらに含み得る。
【0065】
開示される方法は、試料中の標的ポリヌクレオチドを検出するために実施され得る。好適な試料には、生体試料または環境試料が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0066】
いくつかの実施形態では、試料は、血液試料または血液製剤試料(例えば、血漿または血清)である。いくつかの実施形態では、試料は、無細胞血液試料などの無細胞試料であり、例えば、血液試料は、開示される方法を実施する前に細胞を除去するように処理されている。
【0067】
開示される方法は、参照ポリヌクレオチドに対する標的ポリヌクレオチドの遺伝子改変を検出するために実施され得る。いくつかの実施形態では、開示される方法は、参照ポリヌクレオチドに対する標的ポリヌクレオチドのメチル化を検出するために実施されてもよい。開示される方法のいくつかの実施形態では、方法が実施される前に、試料は、亜硫酸水素塩試薬などの試薬で処理されており、この試薬は、非メチル化シトシン残基を選択的に修飾して検出可能な修飾残基(例えば、ウラシル残基)を生成するが、メチル化シトシン残基を修飾しない。いくつかの方法では、標的ポリヌクレオチド及び参照ポリヌクレオチドは、検出可能な修飾残基(例えば、ウラシルまたはチミジン)と、メチル化シトシン残基との存在に基づいて異なり得る。
【0068】
開示される方法は、参照ポリヌクレオチドに対する標的ポリヌクレオチドの遺伝子改変を検出するために実施され得る。いくつかの実施形態では、遺伝子改変は、対象におけるがん、例えば、対象におけるがんに関連する変異に関連する。いくつかの実施形態では、開示される方法の最初のステップを実施する前に、方法は、対象からのがん試料を配列決定することと、がん試料中の遺伝子改変を検出することと、がんが遺伝子改変に関連していることを決定することと、を含む。開示される方法は、次いで、対象における遺伝子改変の存在をモニタリングするために実施されてもよく、遺伝子改変の存在は、対象におけるがんの進行を示す。
【0069】
開示される方法のいくつかの実施形態では、試料は、がんを有するか、またはがんを発症するリスクがある対象から得られる。開示される方法のいくつかの実施形態では、対象は、がんと診断されており、現在、例えば、対象が診断されたがんの治療を受けた後に寛解している。開示される方法は、対象におけるがんの再発を監視するために実施され得、対象における遺伝子改変の検出は、がんが再発したことを示す。
【0070】
また、開示される方法を実施するためのキットも本明細書に開示される。開示されたキットは、開示される方法を実施するための1つ以上の構成要素を含み得る。いくつかの実施形態では、キットは、(i)5’→3’ヌクレアーゼ活性を欠き、3’→5’ヌクレアーゼ活性を備え、好ましくは、DNAポリメラーゼが高忠実度ポリメラーゼ(例えば、約10-6未満のエラー率を有する熱安定性ポリメラーゼ)であるDNAポリメラーゼ、(ii)遺伝子改変に隣接する1つ以上のプライマー対、及び/または(iii)遺伝子改変を欠く参照ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイゼーションしてブロッキング二本鎖を形成する1つ以上のブロッキングオリゴヌクレオチド、のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、キットは、(i)5’→3’ヌクレアーゼ活性を欠き、3’→5’ヌクレアーゼ活性備えるDNAポリメラーゼ、(ii)PIK3CA、KRAS、APC、FAT4、KMT2D、KMT2C、及びBRAFから選択される遺伝子座における、遺伝子改変に隣接する1つ以上のプライマー対、及び/または(iii)遺伝子改変を欠いている参照ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイゼーションして、ブロッキング二本鎖を形成し、増幅された断片試料(すなわち、対応する遺伝子改変の位置で野生型PIK3CA、KRAS、APC、FAT4、KMT2D、KMT2C、及びBRAFのうちの1つ以上にハイブリダイゼーションするブロッキングオリゴヌクレオチド)を得る1つ以上のブロッキングオリゴヌクレオチド、のうちの1つ以上を含む。開示されるキットは、LNAからなるブロッキングオリゴヌクレオチドを含み得、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、または10ヌクレオチド以下であってよい。
【0071】
開示される方法及びキットは、疾患または障害を有するまたは有する疑いのある対象など、それを必要とする対象を診断、予後判定、及び治療するために利用することができる。開示される方法は、診断及び/または予後判定を必要とする対象を診断及び/または予後判定することを含んでもよく、さらに、その後、対象を診断及び/または予後判定した後に、それを必要とする対象に治療を施すことを含んでもよい。本明細書で企図される方法は、(a)遺伝子改変を含む標的ポリヌクレオチドを検出する分析を要求することと、(2)その後、分析の結果に基づいて治療を対象に投与することと、を含み得る。
【実施例】
【0072】
以下の実施例は例示的なものであり、特許請求の範囲される主題の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0073】
実施例1
【0074】
この実施例は、どのように低頻度バリアントが濃縮され検出されたかを説明する。この例では、低頻度バリアントは、いくつかのがんに関連するか、または存在することが知られているKRAS G12C変異である。
【0075】
KRAS野生型(カタログHD710)及びKRAS G12C(カタログHD269)のDNAは、Horizon Discoveryから購入した。プライマー及びブロッカーを含むオリゴヌクレオチドを、Integrated DNA Technologiesから購入した。Q5 High-Fidelity 2X Master Mix(カタログM0492S)及びMonarch PCR及びDNAクリーンアップキット(T1030S)は、New England Biolabsから購入した。
【0076】
KRAS野生型配列は、配列番号1:
【0077】
(配列番号1)
【0078】
【0079】
KRAS G12C配列は、配列番号2によって提供され、G→t塩基転換:
【0080】
(配列番号2)
【0081】
【0082】
プライマーは以下のように設計した。
【0083】
フォワードプライマー(配列番号3):CTTATGTGTGACATGTTC
【0084】
リバースプライマー(配列番号4)GATTCTGAATTAGCTGTATC
【0085】
オリゴヌクレオチドブロッカーは、以下のようにLNA(+A、+G、+C、または+Tと表記)からなる:
【0086】
オリゴヌクレオチドブロッカー(配列番号5)
【化3】
【0087】
以下のように100μlの総反応体積を調製した。
・フォワードプライマー:0.1μMの作動濃度(1μlの10uMストック)
・リバースプライマー:0.1μMの作動濃度(1μlの10μMストック)
・野生型:50ng(14500コピー)(1μlの50ng/ul)
・ヘテロ接合性KRAS G12C:0.25ng(36コピー、18コピーの変異体及び18の野生型)(0.5ng/ulの0.5μl)
・ブロッカー:0.2μM(作動濃度(1μlの20uMストック)
・2x Q5 Master Mix:1×の作動濃度(50uμlの2x Master Mix)
・水(45.5μl)
【0088】
フォワードプライマー(配列番号3)及びリバースプライマー(配列番号4)は、0.1μMの最終濃度であった。ブロッカー(配列番号5)は、0.2μMの濃度であった。Q5 High-Fidelity 2X Master Mixは1×濃度であった。50ngのKRAS野生型DNAを添加し、0.25ngのKRAS G12C DNAを添加して混合物を作製した。KRAS G12C DNAは、ヘテロ接合性であったため、KRAS G12C変異を有するDNAが混合物の0.25%未満(すなわち、0.25ng/2=0.125ng KRAS G12C DNA/(50ng+0.25ng)<0.25%)を表した。KRAS野生型NAの量は14500コピーを含み、KRAS G12C DNAの量は36コピーを含み、そのうち18は変異DNAであり、そのうち18はKRAS G12C DNAのヘテロ接合性による野生型DNAであった。作動溶液を短時間ボルテックスし、25μlを薄肉PCRチューブにアリコートした。したがって、各チューブは、9コピーのKRAS G12C変異DNAを含有した。
【0089】
PCRプロトコルを以下のように実施した。95℃で60秒、55サイクル(95℃で10秒、70℃で5秒、55℃で25秒)、70℃で60秒。PCR生成物を、Monarch PCRクリーンアッププロトコルを使用して精製した。精製生成物を20ng/ulに希釈し、Azenta Genewiz Amplicon EZサービスを使用して配列決定した。
【0090】
生のシークエンスリードを、変異体及び野生型配列にアラインさせた。リードを、KRAS G12C突然変異の外側のリードに追加の突然変異が存在するか、または存在しない3つのカテゴリー(野生型ヌクレオチド(G)、KRAS G12Cヌクレオチド(t)、または他のヌクレオチド)に分離した。出発混合物は、<0.25%の変異KRAS G12C DNAを有した。濃縮後、KRAS G12C変異を含有するリードは、クオリティリードの95%超を表した。
【0091】
図1は、対照反応の結果を示す。0.25%未満のKRAS G12C DNA及び99.75%超のKRAS野生型DNAを含む混合試料を、ブロッキングオリゴヌクレオチドの不存在下で増幅し、配列決定した。174398リードは、野生型ヌクレオチドを含有すると決定され(99.69%)、490リードは、KRAS G12Cヌクレオチドを含有し(0.28%)、52リードは、野生型ヌクレオチドもKRAS G12Cヌクレオチドも含有しない(0.03%)。
【0092】
図2は、ブロッキングオリゴヌクレオチドとの試験反応の結果を示す。0.25%未満のKRAS G12C DNA及び99.75%超のKRAS野生型DNAを含む混合試料を、ブロッキングオリゴヌクレオチド(配列番号5)の存在下で増幅し、配列決定した。464リードは、野生型ヌクレオチドを含有すると決定され(0.6%)、76842リードは、KRAS G12Cヌクレオチドを含有し(99.37%)、31リードは、野生型ヌクレオチドもKRAS G12Cヌクレオチドも含有しない(0.04%)。
【0093】
上記の説明では、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本明細書に開示される本発明に様々な置換及び修正が行われ得ることが当業者には容易に明らかであろう。本明細書に例示的に記載される本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素または複数の要素、限定または複数の限定の不在下で実施され得る。使用されている用語及び表現は、限定ではなく、説明の用語として使用され、そのような用語及び表現の使用において、示され、説明される、特徴、またはその一部の任意の等価物を除外することは意図されず、本発明の範囲内で様々な変更が可能であることが認識される。したがって、本発明は特定の実施形態及び任意の特徴によって示されているが、本明細書に開示される概念の修正及び/または変形は、当業者によってなされ得、そのような修正及び変形は、本発明の範囲内であるとみなされることを理解されたい。
【0094】
いくつかの特許及び非特許参考文献への引用が本明細書で行われる。引用される参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。引用文献における用語の定義と比較して、本明細書における用語の定義との間に矛盾がある場合、用語は、本明細書における定義に基づいて解釈されるべきである。
配列表
<110>NexGen Cancer Detection LLC
<120>METHODS FOR DETECTING A TARGET POLYNUCLEOTIDE IN A MIXED SAMPLE
<130>NG.2021-09-13.PCT
<150>US63/243,390
<151>2021-09-13
<160>5
<170>PatentIn version 3.5
<210>1
<211>143
<212>DNA
<213>ホモ・サピエンス
<400>1
【化4】
<210>2
<211>143
<212>DNA
<213>ホモ・サピエンス
<400>2
【化5】
<210>3
<211>18
<212>DNA
<213>人工
<220>
<223>ヒトKRASのフォワードプライマー
<400>3
【化6】
<210>4
<211>20
<212>DNA
<213>人工
<220>
<223>KRASのリバースプライマー
<400>4
【化7】
<210>5
<211>10
<212>DNA
<213>人工
<220>
<223>KRASのブロッキングオリゴヌクレオチド
<400>5
【化8】
【配列表】
【国際調査報告】