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特表2024-531717ピリミジン誘導体およびその薬学的に許容される塩の多形体ならびに使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ピリミジン誘導体およびその薬学的に許容される塩の多形体ならびに使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20240822BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P37/02
A61K31/506
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516405
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 CN2022118594
(87)【国際公開番号】W WO2023040863
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202111079644.0
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519157967
【氏名又は名称】上海海雁醫藥科技有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】517202157
【氏名又は名称】ヤンツェー リバー ファーマシューティカル グループ カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】1 South Yangtze River Road Taizhou,Jiangsu,225321 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】趙 双▲ニイ▼
(72)【発明者】
【氏名】江 濤濤
(72)【発明者】
【氏名】王 吉標
(72)【発明者】
【氏名】陶 涛
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC42
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZB07
4C086ZB26
4C086ZC01
4C086ZC42
(57)【要約】
本発明は、ピリミジン誘導体およびその薬学的に許容される塩の多形体ならびに使用を提供する。本発明は、A2A/A2B受容体二重拮抗薬であり、化学名が、3-(4-アミノ-5-フルオロ-6-(1-((6-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-2-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ピリミジン-2-イル)-2-メチルベンゾニトリルである当該ピリミジン誘導体およびその薬学的に許容される塩の多形体、ならびに使用を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Xで示される化合物の多形体または前記式Xで示される化合物の薬学的に許容される塩の多形体であって、
【化1】

前記薬学的に許容される塩は、無機塩である、多形体。
【請求項2】
前記薬学的に許容される塩は、塩酸、硫酸、および臭化水素酸からなる群から選択されるいずれか一種である、請求項1に記載の多形体。
【請求項3】
前記式Xで示される化合物の多形体は、
粉末X線回折スペクトルが18.08±0.2、21.41±0.2および24.83±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する前記式Xで示される化合物の遊離塩基結晶形Iと、
粉末X線回折スペクトルが13.04±0.2、15.80±0.2、16.46±0.2および23.89±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する前記式Xで示される化合物の遊離塩基結晶形IVと、
粉末X線回折スペクトルが6.17±0.2、9.37±0.2、10.39±0.2、11.65±0.2、14.35±0.2、15.74±0.2および17.21±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する前記式Xで示される化合物の遊離塩基結晶形Vと、
粉末X線回折スペクトルが12.55±0.2、14.86±0.2、16.15±0.2、17.69±0.2、21.08±0.2、21.58±0.2、24.53±0.2および25.01±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する前記式Xで示される化合物の遊離塩基結晶形VIと、
粉末X線回折スペクトルが14.92±0.2、16.13±0.2、17.59±0.2、20.87±0.2、21.20±0.2、21.71±0.2、24.12±0.2、24.62±0.2および25.12±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する前記式Xで示される化合物の遊離塩基結晶形VIIと、
からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項1~2のいずれか一項に記載の多形体。
【請求項4】
前記式Xで示される化合物の多形体は、
粉末X線回折スペクトルが12.90±0.2、15.26±0.2、16.47±0.2、17.81±0.2、19.57±0.2、22.01±0.2および25.43±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記遊離塩基結晶形Iと、
粉末X線回折スペクトルが6.32±0.2、9.08±0.2、9.58±0.2、14.12±0.2、20.14±0.2、20.59±0.2および27.53±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記遊離塩基結晶形IVと、
粉末X線回折スペクトルが21.65±0.2、22.31±0.2、24.55±0.2、24.86±0.2、25.70±0.2、26.08±0.2および27.31±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記遊離塩基結晶形Vと、
粉末X線回折スペクトルが9.04±0.2、9.68±0.2、13.37±0.2、18.53±0.2、19.19±0.2、19.64±0.2、19.97±0.2、23.69±0.2、27.55±0.2、30.34±0.2および31.46±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記遊離塩基結晶形VIと、
粉末X線回折スペクトルが6.17±0.2、9.07±0.2、9.67±0.2、10.37±0.2、12.61±0.2、14.39±0.2、19.21±0.2、19.73±0.2および20.05±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記遊離塩基結晶形VIIと、
からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項3に記載の多形体。
【請求項5】
前記式Xで示される化合物の多形体は、
粉末X線回折スペクトルが9.50±0.2、10.13±0.2、12.53±0.2、18.89±0.2、19.94±0.2および20.33±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記遊離塩基結晶形Iと、
粉末X線回折スペクトルが7.64±0.2および8.34±0.2からなる群から選択される1個または2個の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記遊離塩基結晶形IVと、
粉末X線回折スペクトルが6.91±0.2、8.08±0.2、8.70±0.2、12.77±0.2および13.25±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記遊離塩基結晶形Vと、
粉末X線回折スペクトルが7.24±0.2および12.07±0.2からなる群から選択される1個または2個の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記遊離塩基結晶形VIと、
粉末X線回折スペクトルが27.25±0.2、27.39±0.2、27.76±0.2、28.97±0.2、30.36±0.2、31.25±0.2および31.67±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記遊離塩基結晶形VIIと、
からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項4に記載の多形体。
【請求項6】
前記遊離塩基結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは基本的に図1で表され、
前記遊離塩基結晶形IVの粉末X線回折スペクトルは基本的に図4で表され、
前記遊離塩基結晶形Vの粉末X線回折スペクトルは基本的に図6で表され、
前記遊離塩基結晶形VIの粉末X線回折スペクトルは基本的に図8で表され、
前記遊離塩基結晶形VIIの粉末X線回折スペクトルは基本的に図10で表される、
請求項1~5のいずれか一項に記載の多形体。
【請求項7】
Cu-Kα線を使用して、各粉末X線回折スペクトルを得る、請求項1~6のいずれか一項に記載の多形体。
【請求項8】
前記遊離塩基結晶形Iの示差走査熱量曲線は190.15±3℃に吸熱ピークを有し、
前記遊離塩基結晶形IVの示差走査熱量曲線は189.64±3℃に吸熱ピークを有し、
前記遊離塩基結晶形Vの示差走査熱量曲線は189.94±3℃に吸熱ピークを有し、
前記遊離塩基結晶形VIの示差走査熱量曲線は189.33±3℃に吸熱ピークを有し、
前記遊離塩基結晶形VIIの示差走査熱量曲線は189.36±3℃に吸熱ピークを有する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の多形体。
【請求項9】
前記遊離塩基結晶形Iは、
(1)TGA-DSCスペクトルが基本的に図2で表されることと、
(2)DVSスペクトルが基本的に図3で表されることと、
(3)赤外スペクトルが基本的に図20で表されることと、
からなる群から選択される一つまたは複数の特徴を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の多形体。
【請求項10】
前記式Xで示される化合物の薬学的に許容される塩の多形体は、
粉末X線回折スペクトルが13.12±0.2、13.91±0.2、17.62±0.2、22.58±0.2および26.51±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する前記式Xで示される化合物の塩酸塩結晶形Iと、
粉末X線回折スペクトルが15.13±0.2、19.64±0.2および23.48±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する前記式Xで示される化合物の硫酸塩結晶形Iと、
粉末X線回折スペクトルが16.70±0.2、23.51±0.2および23.96±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する前記式Xで示される化合物の臭化水素酸塩結晶形Iと、
からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項1~2に記載の多形体。
【請求項11】
前記式Xで示される化合物の薬学的に許容される塩の多形体は、
粉末X線回折スペクトルが8.39±0.2、10.18±0.2、15.25±0.2、18.64±0.2、20.96±0.2、25.52±0.2、27.01±0.2および29.48±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記塩酸塩結晶形Iと、
粉末X線回折スペクトルが11.62±0.2、12.77±0.2、13.13±0.2、22.25±0.2、24.80±0.2および26.09±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記硫酸塩結晶形Iと、
粉末X線回折スペクトルが11.84±0.2、12.79±0.2、19.34±0.2、20.23±0.2、23.09±0.2、24.34±0.2、25.37±0.2、26.21±0.2、26.99±0.2、28.04±0.2、33.22±0.2および35.96±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記臭化水素酸塩結晶形Iと、
からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項10に記載の多形体。
【請求項12】
前記式Xで示される化合物の薬学的に許容される塩の多形体は、
粉末X線回折スペクトルが11.44±0.2、12.63±0.2、17.27±0.2、18.97±0.2、20.12±0.2、21.61±0.2、23.29±0.2および29.15±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記塩酸塩結晶形Iと、
粉末X線回折スペクトルが12.19±0.2、16.45±0.2および21.71±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記硫酸塩結晶形Iと、
粉末X線回折スペクトルが11.48±0.2、13.64±0.2、15.46±0.2、15.96±0.2、17.66±0.2、18.71±0.2、20.99±0.2、21.51±0.2、31.60±0.2、31.90±0.2、35.52±0.2、36.98±0.2、37.81±0.2、39.29±0.2および39.73±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記臭化水素酸塩結晶形Iと、
からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項11に記載の多形体。
【請求項13】
前記塩酸塩結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは基本的に図13で表され、
前記硫酸塩結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは基本的に図15で表され、
前記臭化水素酸塩結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは基本的に図17で表される、
請求項10~12のいずれか一項に記載の多形体。
【請求項14】
Cu-Kα線を使用して、各粉末X線回折スペクトルを得る、請求項10~13のいずれか一項に記載の多形体。
【請求項15】
前記塩酸塩結晶形Iの示差走査熱量曲線は225.37±3℃に吸熱ピークを有し、
前記硫酸塩結晶形Iの示差走査熱量曲線は205.20±3℃に吸熱ピークを有する、請求項10~14のいずれか一項に記載の多形体。
【請求項16】
式Xで示される化合物の多形体の調製方法であって、前記式Xで示される化合物の構造は式Xに示され、
【化2】

前記調製方法は、
溶媒の存在下で、前記式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、溶液を形成するステップと、
前記溶液に対して結晶化処理を行い、前記式Xで示される化合物の多形体を調製するステップと、
を含む、多形体の調製方法。
【請求項17】
前記式Xで示される化合物の多形体は遊離塩基結晶形Iである、請求項16に記載の多形体の調製方法。
【請求項18】
前記溶媒は、アセトニトリル、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、50%(v/v)エタノール/水の混合溶媒、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフランおよびそれらの混合物から選択される、請求項16または17に記載の多形体の調製方法。
【請求項19】
(Ia)前記溶媒はアセトニトリル、イソプロパノール、エタノール、酢酸エチル、または50%(v/v)エタノール/水の混合溶媒であり、前記結晶化処理の方法は降温による結晶化であることと、
(Ib)前記溶媒は50%(v/v)エタノール/水の混合溶媒であり、前記結晶化処理の方法は揮発による結晶化であることと、
(Ic)前記溶媒はジメチルスルホキシドまたはN,N-ジメチルアセトアミドであり、前記結晶化処理の方法は逆溶媒による結晶化であることと、
からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項16~18のいずれか一項に記載の多形体の調製方法
【請求項20】
イソプロパノール、エタノール、酢酸エチルまたは50%(v/v)エタノール/水の混合溶媒に、50±5℃で前記式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、前記溶液を形成するステップと、
前記溶液を0℃~4℃まで降温し、結晶を析出させるステップと、
を含む、請求項16~19のいずれか一項に記載の多形体の調製方法。
【請求項21】
アセトニトリルに、75±5℃で前記式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、前記溶液を形成するステップ、またはエタノールに、70±5℃で前記式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、前記溶液を形成するステップと、
前記溶液を室温まで降温し、結晶を析出させるステップと、
を含む、請求項16~19のいずれか一項に記載の多形体の調製方法。
【請求項22】
(a)請求項1~15のいずれか一項に記載の多形体、または請求項16~21のいずれか一項に記載の調製方法により調製された多形体と、
(b)薬学的に許容される担体と、
を含む、医薬組成物。
【請求項23】
アデノシンA2A受容体によって媒介され、アデノシンA2B受容体によって媒介され、またはアデノシンA2A受容体とアデノシンA2B受容体の両方によって媒介される腫瘍または免疫関連疾患を予防および/または治療する薬物の調製における、請求項1~15のいずれか一項に記載の多形体、または請求項16~21のいずれか一項に記載の調製方法により調製された多形体、または請求項22に記載の医薬組成物の使用。
【請求項24】
式Xで示される化合物はA2A/A2B受容体拮抗薬として使用される、請求項23に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年9月15日に提出された、出願番号がCN202111079644.0であり、発明名称が「ピリミジン誘導体ならびにその薬学的に許容される塩の多形体および使用」である中国特許出願の優先権を主張し、その全内容を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、医薬技術分野に関し、特に、ピリミジン誘導体およびその薬学的に許容される塩の多形体(polymorph)ならびに使用に関し、3-(4-アミノ-5-フルオロ-6-(1-((6-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-2-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ピリミジン-2-イル)-2-メチルベンゾニトリルおよびその薬学的に許容される塩の多形体ならびに使用に関する。
【背景技術】
【0003】
アデノシン(Adenosine)は、ヒトの細胞全体に存在する内因性ヌクレオシドであり、アデニンとリボースから構成され、細胞内と細胞外に広く分布している。アデノシンは体内のさまざまな生理学的および生化学的機能に関与しており、例えば、アデノシンは心筋に直接侵入し、リン酸化により、アデノシン三リン酸(Adenosine triphosphate、ATP)を生成し、心筋のエネルギー代謝に関与する。中枢神経系(Central Nervous System、CNS)では、アデノシンは神経伝達物質の放出とシナプス後ニューロンの反応を制御し、運動の調節、ニューロンの保護、睡眠および覚醒などの重要な生命プロセスに影響を与える役割を果たす。病理学的条件下では、腫瘍または低酸素条件下で細胞外アデノシン濃度が大幅に増加する。アデノシンは、腫瘍の血管の新生、増殖、発達、および腫瘍の転移を促進することにより、腫瘍の免疫抑制において重要な役割を果たす。
【0004】
アデノシン受容体(Adenosine Receptor、AR)はGタンパク質共役型受容体(Guanosine-binding Protein Coupled Receptor、GPCR)ファミリーに属し、その内因性リガンドはアデノシンである。現在知られているアデノシン受容体は、A1、A2、A2およびA3の4種類のサブタイプ受容体で構成されている。ここで、アデノシンは、A1またはA3受容体に結合すると、環状アデノシン一リン酸(cAMP)の生成を阻害するが、A2またはA2受容体に結合すると、アデノシン活性化酵素が活性化され、それによってcAMPのレベルが増加し、さらなる生理学的調節効果が発揮される。
【0005】
A1とA3の2種類の受容体は主に中枢神経系で発現するのに対し、A2とA2の2種類のアデノシン受容体は中枢神経系と末梢神経系の両方で発現する。腫瘍微小環境において、A2とA2の2種類のアデノシン受容体は、免疫細胞で広く発現されており、強力な免疫抑制機能を持っている。したがって、これら2つの標的を中心として、腫瘍または免疫関連疾患を予防または治療する薬物を開発することは非常に価値がある。
【0006】
市場のニーズにさらに応えるために、A2A/A2B受容体アンタゴニスト活性を有する化合物、その薬学的に許容される塩、およびその多形体をさらに開発して、さらなる薬物開発に寄与する。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、A2/A2B受容体拮抗薬またはその薬学的に許容される塩の多形体ならびに使用を提供することを含む。
【0008】
本発明の第一の態様では、式Xで示される化合物または前記式Xで示される化合物の薬学的に許容される塩の多形体を提供し、前記式Xで示される化合物はピリミジン誘導体であり、式Xに示される構造を有する。
【0009】
【化1】

本発明の第一の態様では、式Xで示される化合物の多形体も含まれ、式Xで示される化合物の薬学的に許容される塩の多形体も含まれる。
【0010】
前記薬学的に許容される塩は、式Xで示される化合物および酸から塩になるため、式Xで示される化合物および酸成分を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記薬学的に許容される塩は無機塩である。それに応じて、塩の形成に使用される酸は無機酸である。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記薬学的に許容される塩は、塩酸塩、硫酸塩および臭化水素酸塩からなる群から選択される。それに応じて、塩の形成に使用される酸は塩酸、硫酸および臭化水素酸からなる群から選択される。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記式Xで示される化合物の多形体および式Xで示される化合物の薬学的に許容される塩の多形体はそれぞれ独立して、無水物形態、水和物形態または溶媒和物形態である。
【0014】
いくつかの実施形態において、Cu-Kα線を使用して、粉末X線回折スペクトルを得る。
【0015】
本発明にかかる各粉末X線回折スペクトルはそれぞれ独立して、Cu-Kα線を使用して得られることができる。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記多形体は式Xで示される化合物のI型結晶、即ち遊離塩基結晶形Iであり、その粉末X線回折スペクトルは、18.08±0.2、21.41±0.2および24.83±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは、12.90±0.2、15.26±0.2、16.47±0.2、17.81±0.2および19.57±0.2からなる群から選択される少なくとも1個の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは22.01±0.2および25.43±0.2からなる群から選択される少なくとも1個の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは、18.08±0.2、21.41±0.2および24.83±0.2の回折角2θ(°)にピークを有し、12.90±0.2、15.26±0.2、16.47±0.2、17.81±0.2、19.57±0.2、22.01±0.2および25.43±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは、9.50±0.2、10.13±0.2、12.53±0.2、18.89±0.2、19.94±0.2および20.33±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは7.73±0.2、13.94±0.2および16.94±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは、27.84±0.2、28.49±0.2、29.27±0.2、30.38±0.2、30.86±0.2および32.03±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは表1に示される2θ(°)に回折ピークを有し、各回折ピークの相対強度は表1に示される。
【0024】
【表1】
【0025】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは基本的に図1で表される。
【0026】
一つの実施例において、前記遊離塩基結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは図1で表される。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形Iは無水物形態である。
【0028】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形Iの示差走査熱量曲線は、190.15℃±3℃に吸熱ピークを有し、融解熱量は約100.48J/gである。
【0029】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形Iの示差走査熱量曲線は、190.15℃±1℃に吸熱ピークを有する。
【0030】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形Iの示差走査熱量曲線は、190.15℃±0.5℃に吸熱ピークを有する。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形IのTGAスペクトルは、150℃まではほとんど重量損失がなく、150℃~210℃では0.123%の重量損失を示す。
【0032】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形Iは、基本的に図2に示されるTGA-DSCスペクトルを有する。
【0033】
一つの実施例において、前記遊離塩基結晶形Iは、図2に示されるTGA-DSCスペクトルを有する。
【0034】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形Iは、25℃条件下、相対湿度0%~80%Rhの変化過程中に、吸着による重量変化は0.2%未満であり、吸湿性がほとんどなく、前記重量変化の百分率「%」は重量百分率である。
【0035】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形Iは、基本的に図3に示される動的水分吸着スペクトル(DVSスペクトル)を有する。
【0036】
一つの実施例において、前記遊離塩基結晶形Iは図3に示されるDVSスペクトルを有する。
【0037】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形Iの赤外スペクトルでは、約3490cm-1、約3280cm-1、約3132cm-1、約2972cm-1、約2931cm-1、約2210cm-1、約1636~1451cm-1、約1399cm-1、約1366cm-1、約855cm-1、約799cm-1および約769cm-1に吸収ピークが存在する。ここでの「約」はそれぞれ独立して±5cm-1、±3cm-1または±1cm-1であってもよい。
【0038】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形Iの赤外スペクトルは基本的に図20で表される。
【0039】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形Iは図20で表される赤外スペクトルを有する。
【0040】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形Iは、
(1)TGA-DSCスペクトルが基本的に図2で表されることと、
(2)DVSスペクトルが基本的に図3で表されることと、
(3)赤外スペクトルが基本的に図20で表されることと、
からなる群から選択される一つまたは複数の特徴を有する。
【0041】
いくつかの実施形態において、前記多形体は式Xで示される化合物のIV型結晶、即ち遊離塩基結晶形IVであり、その粉末X線回折スペクトルは、13.04±0.2、15.80±0.2、16.46±0.2および23.89±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する。
【0042】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形IVの粉末X線回折スペクトルは、6.32±0.2、9.08±0.2、9.58±0.2および14.12±0.2からなる群から選択される少なくとも1個の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0043】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形IVの粉末X線回折スペクトルは、20.14±0.2、20.59±0.2、23.89±0.2および27.53±0.2からなる群から選択される少なくとも1個の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0044】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形IVの粉末X線回折スペクトルは、13.04±0.2、15.80±0.2、16.46±0.2および23.89±0.2の回折角2θ(°)にピークを有し、6.32±0.2、9.08±0.2、9.58±0.2、14.12±0.2、20.14±0.2、20.59±0.2、23.89±0.2および27.53±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形IVの粉末X線回折スペクトルは、13.04±0.2、15.80±0.2、16.46±0.2および23.89±0.2の回折角2θ(°)にピークを有し、6.32±0.2、9.08±0.2、9.58±0.2、14.12±0.2、20.14±0.2、20.59±0.2、23.89±0.2、27.53±0.2および37.76±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形IVの粉末X線回折スペクトルは7.64±0.2および8.34±0.2からなる群から選択される1個または2個の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形IVの粉末X線回折スペクトルは表2に示される2θ(°)にピークを有し、各ピークの相対強度は表2に示される。
【0048】
【表2】
【0049】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形IVの粉末X線回折スペクトルは基本的に図4で表される。
【0050】
一つの実施例において、前記遊離塩基結晶形IVの粉末X線回折スペクトルは図4で表される。
【0051】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形IVの示差走査熱量曲線は、189.64℃±3℃に吸熱ピークを有する。
【0052】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形IVの示差走査熱量曲線は、189.64℃±1℃に吸熱ピークを有する。
【0053】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形IVの示差走査熱量曲線は、189.64℃±0.5℃に吸熱ピークを有する。
【0054】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形IVは基本的に図5に示される示差走査熱量曲線を有する。
【0055】
一つの実施例において、前記遊離塩基結晶形IVは図5に示される示差走査熱量曲線を有する。
【0056】
いくつかの実施形態において、前記多形体は式Xで示される化合物のV型結晶、即ち遊離塩基結晶形Vであり、その粉末X線回折スペクトルは、6.17±0.2、9.37±0.2、10.39±0.2、11.65±0.2、14.35±0.2、15.74±0.2および17.21±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する。
【0057】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形Vの粉末X線回折スペクトルは、21.65±0.2、22.31±0.2、24.55±0.2、24.86±0.2、25.70±0.2、26.08±0.2および27.31±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0058】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形Vの粉末X線回折スペクトルは38.71±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する。
【0059】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形Vの粉末X線回折スペクトルは38.71±0.2および43.60±0.2からなる群から選択される1個または2個の回折角2θ(°)でのピークを含む。
【0060】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形Vの粉末X線回折スペクトルは6.91±0.2、8.08±0.2、8.70±0.2、12.77±0.2および13.25±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形Vの粉末X線回折スペクトルは、19.01±0.2、19.43±0.2、21.35±0.2、23.15±0.2、29.38±0.2、32.03±0.2、32.29±0.2、35.08±0.2、39.80±0.2および40.19±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形Vの粉末X線回折スペクトルは、19.01±0.2、19.43±0.2、21.35±0.2、23.15±0.2、29.38±0.2、32.03±0.2、32.29±0.2、35.08±0.2、37.43±0.2、39.80±0.2および40.19±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)のピークを含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形Vの粉末X線回折スペクトルは表3に示される2θ(°)にピークを有し、各ピークの相対強度は表3に示される。
【0064】
【表3】
【0065】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形Vの粉末X線回折スペクトルは基本的に図6で表される。
【0066】
一つの実施例において、前記遊離塩基結晶形Vの粉末X線回折スペクトルは図6で表される。
【0067】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形Vの示差走査熱量曲線は、189.94℃±3℃に吸熱ピークを有する。
【0068】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形Vの示差走査熱量曲線は、189.94℃±1℃に吸熱ピークを有する。
【0069】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形Vの示差走査熱量曲線は、189.94℃±0.5℃に吸熱ピークを有する。
【0070】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形Vは基本的に図7に示される示差走査熱量曲線を有する。
【0071】
一つの実施例において、前記遊離塩基結晶形Vは図7に示される示差走査熱量曲線を有する。
【0072】
いくつかの実施形態において、前記多形体は式Xで示される化合物のVI型結晶、即ち遊離塩基結晶形VIであり、その粉末X線回折スペクトルは、12.55±0.2、14.86±0.2、16.15±0.2、17.69±0.2、21.08±0.2、21.58±0.2、24.53±0.2および25.01±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する。
【0073】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形VIの粉末X線回折スペクトルは、9.04±0.2、9.68±0.2、13.37±0.2、18.53±0.2、19.19±0.2、19.64±0.2および19.97±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0074】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形VIの粉末X線回折スペクトルは23.69±0.2、27.55±0.2、30.34±0.2および31.46±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形VIの粉末X線回折スペクトルは、9.04±0.2、9.68±0.2、13.37±0.2、18.53±0.2、19.19±0.2、19.64±0.2、19.97±0.2、23.69±0.2、27.55±0.2、30.34±0.2、31.46±0.2および37.42±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0076】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形VIの粉末X線回折スペクトルは7.24±0.2および12.07±0.2からなる群から選択される1個または2個の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形VIの粉末X線回折スペクトルは表4に示される2θ(°)にピークを有し、各ピークの相対強度は表4に示される。
【0078】
【表4】
【0079】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形VIの粉末X線回折スペクトルは基本的に図8で表される。
【0080】
一つの実施例において、前記遊離塩基結晶形VIの粉末X線回折スペクトルは図8で表される。
【0081】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形VIの示差走査熱量曲線は、189.33℃±3℃に吸熱ピークを有する。
【0082】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形VIの示差走査熱量曲線は、189.33℃±1℃に吸熱ピークを有する。
【0083】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形VIの示差走査熱量曲線は、189.33℃±0.5℃に吸熱ピークを有する。
【0084】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形VIは基本的に図9に示される示差走査熱量曲線を有する。
【0085】
一つの実施例において、前記遊離塩基結晶形VIは図9に示される示差走査熱量曲線を有する。
【0086】
いくつかの実施形態において、前記多形体は式Xで示される化合物のVII型結晶、即ち遊離塩基結晶形VIIであり、その粉末X線回折スペクトルは、14.92±0.2、16.13±0.2、17.59±0.2、20.87±0.2、21.20±0.2、21.71±0.2、24.12±0.2、24.62±0.2および25.12±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する。
【0087】
いくつかの実施形態において、前記多形体は式Xで示される化合物のVII型結晶、即ち遊離塩基結晶形VIIであり、その粉末X線回折スペクトルは、14.92±0.2、16.13±0.2、17.59±0.2、20.87±0.2、21.20±0.2、21.71±0.2、24.12±0.2、24.62±0.2、25.12±0.2、37.40±0.2および43.55±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する。
【0088】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形VIIの粉末X線回折スペクトルは、6.17±0.2、9.07±0.2、9.67±0.2、10.37±0.2、12.61±0.2、14.39±0.2、19.21±0.2、19.73±0.2および20.05±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形VIIの粉末X線回折スペクトルは、27.25±0.2、27.39±0.2、27.76±0.2、28.97±0.2、30.36±0.2、31.25±0.2および31.67±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0090】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形VIIの粉末X線回折スペクトルは、5.00±0.2、6.91±0.2、7.19±0.2、11.58±0.2、13.46±0.2、33.47±0.2および34.98±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形VIIの粉末X線回折スペクトルは表5に示される2θ(°)にピークを有し、各ピークの相対強度は表5に示される。
【0092】
【表5】
【0093】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基結晶形VIIの粉末X線回折スペクトルは基本的に図10で表される。
【0094】
一つの実施例において、前記遊離塩基結晶形VIIの粉末X線回折スペクトルは図10で表される。
【0095】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形VIIの示差走査熱量曲線は、189.36℃±3℃に吸熱ピークを有する。
【0096】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形VIIの示差走査熱量曲線は、189.36℃±1℃に吸熱ピークを有する。
【0097】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形VIIの示差走査熱量曲線は、189.36℃±0.5℃に吸熱ピークを有する。
【0098】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形VIIは基本的に図11に示される示差走査熱量曲線を有する。
【0099】
一つの実施例において、前記遊離塩基結晶形VIIは図11に示される示差走査熱量曲線を有する。
【0100】
いくつかの実施形態において、前記遊離塩基多形体は式Xで示される化合物の塩酸塩のI型結晶、即ち塩酸塩結晶形Iであり、その粉末X線回折スペクトルは、13.12±0.2、13.91±0.2、17.62±0.2、22.58±0.2および26.51±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する。
【0101】
いくつかの実施形態において、前記塩酸塩結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは、8.39±0.2、10.18±0.2、15.25±0.2、18.64±0.2、20.96±0.2、25.52±0.2、27.01±0.2および29.48±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0102】
いくつかの実施形態において、前記塩酸塩結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは、11.44±0.2、12.63±0.2、17.27±0.2、18.97±0.2、20.12±0.2、21.61±0.2、23.29±0.2および29.15±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0103】
いくつかの実施形態において、前記塩酸塩結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは表6に示される2θ(°)にピークを有し、各ピークの相対強度は表6に示される。
【0104】
【表6】
【0105】
いくつかの実施形態において、前記塩酸塩結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは基本的に図13で表される。
【0106】
一つの実施例において、前記塩酸塩結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは図13で表される。
【0107】
いくつかの実施例において、前記塩酸塩結晶形Iの示差走査熱量曲線は、225.37℃±3℃に吸熱ピークを有する。
【0108】
いくつかの実施例において、前記塩酸塩結晶形Iの示差走査熱量曲線は、225.37℃±1℃に吸熱ピークを有する。
【0109】
いくつかの実施例において、前記塩酸塩結晶形Iの示差走査熱量曲線は、225.37℃±0.5℃に吸熱ピークを有する。
【0110】
いくつかの実施例において、前記塩酸塩結晶形Iは基本的に図14に示される示差走査熱量曲線を有する。
【0111】
一つの実施例において、前記塩酸塩結晶形Iは図14に示される示差走査熱量曲線を有する。
【0112】
いくつかの実施形態において、前記多形体は式Xで示される化合物の硫酸塩のI型結晶、即ち硫酸塩結晶形Iであり、その粉末X線回折スペクトルは、15.13±0.2、19.64±0.2および23.48±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する。
【0113】
いくつかの実施形態において、前記硫酸塩結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは11.62±0.2、12.77±0.2、13.13±0.2、22.25±0.2、24.80±0.2および26.09±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0114】
いくつかの実施形態において、前記硫酸塩結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは12.19±0.2、16.45±0.2および21.71±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0115】
いくつかの実施形態において、前記硫酸塩結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは表7に示される2θ(°)にピークを有し、各ピークの相対強度は表7に示される。
【0116】
【表7】
【0117】
いくつかの実施形態において、前記硫酸塩結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは基本的に図15で表される。
【0118】
一つの実施例において、前記硫酸塩結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは図15で表される。
【0119】
いくつかの実施例において、前記硫酸塩結晶形Iの示差走査熱量曲線は、205.20℃±3℃に吸熱ピークを有する。
【0120】
いくつかの実施例において、前記硫酸塩結晶形Iの示差走査熱量曲線は、205.20℃±1℃に吸熱ピークを有する。
【0121】
いくつかの実施例において、前記硫酸塩結晶形Iの示差走査熱量曲線は、205.20℃±0.5℃に吸熱ピークを有する。
【0122】
いくつかの実施例において、前記硫酸塩結晶形Iは基本的に図16に示される示差走査熱量曲線を有する。
【0123】
一つの実施例において、前記硫酸塩結晶形Iは図16に示される示差走査熱量曲線を有する。
【0124】
いくつかの実施形態において、前記多形体は式Xで示される化合物の臭化水素酸塩のI型結晶、即ち臭化水素酸塩結晶形Iであり、その粉末X線回折スペクトルは、16.70±0.2、23.51±0.2および23.96±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する。
【0125】
いくつかの実施形態において、前記臭化水素酸塩結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは、11.84±0.2、12.79±0.2、19.34±0.2、20.23±0.2、23.09±0.2、24.34±0.2、25.37±0.2、26.21±0.2、26.99±0.2、28.04±0.2、33.22±0.2および35.96±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0126】
いくつかの実施形態において、前記臭化水素酸塩結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは、11.48±0.2、13.64±0.2、15.46±0.2、15.96±0.2、17.66±0.2、18.71±0.2、20.99±0.2、21.51±0.2、31.60±0.2、31.90±0.2、35.52±0.2、36.98±0.2、37.81±0.2、39.29±0.2および39.73±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む。
【0127】
いくつかの実施形態において、前記臭化水素酸塩結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは表8に示される2θ(°)にピークを有し、各ピークの相対強度は表8に示される。
【0128】
【表8】
【0129】
いくつかの実施形態において、前記臭化水素酸塩結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは基本的に図17で表される。
【0130】
一つの実施例において、前記臭化水素酸塩結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは図17で表される。
【0131】
本発明の第二の態様では、前記式Xで示される化合物およびその薬学的に許容される塩の多形体の調製方法を提供し、第一の態様に記載される多形体の調製に使用することができる。
【0132】
本発明の第二の態様では、式Xで示される化合物の構造が上記と一致する。
【0133】
本発明の第二の態様では、
(a0)溶媒に、前記式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、溶液を形成するステップと、
(b0)前記溶液に対して結晶化処理を行い、前記式Xで示される化合物の多形体を調製するステップと、
を含む、前記式Xで示される化合物の多形体の調製方法を提供する。
【0134】
本明細書において、「透明になるまで溶解する」ことを実現するために、式Xで示される化合物を完全に溶解させることを適切として、対応する溶媒の量を適切に制御する必要がある。用量が低すぎると、透明な溶液が得られず、用量が多すぎると、結晶化処理を行う際、結晶が析出できないおそれがある。
【0135】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(a0)では、前記溶媒は、アセトニトリル、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、50%(v/v)エタノール/水の混合溶媒、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフランおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0136】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(b0)では、前記結晶化処理の方法は、降温による結晶化、揮発による結晶化および逆溶媒による結晶化からなる群から選択される。
【0137】
本明細書において、前記降温による結晶化における重要なステップは、降温により、結晶を析出させることである。
【0138】
本明細書において、前記揮発による結晶化における重要なステップは、溶媒を揮発させ、結晶を析出させることである。
【0139】
本明細書において、前記逆溶媒による結晶化における重要なステップは「逆溶媒の添加」であり、即ち逆溶媒、貧溶媒または逆溶媒と貧溶媒の組み合わせを添加して、結晶を析出させることである。好ましくは逆溶媒を添加する。
【0140】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(b0)では、前記結晶化処理の方法はゆっくりと降温すること、ゆっくりと揮発させること、または逆溶媒の添加である。
【0141】
本明細書において、ゆっくりと降温する例として、室温まで自然降温することが挙げられる。
【0142】
本明細書において、ゆっくりと揮発させる例として、室温での自然揮発が挙げられる。
【0143】
いくつかの実施形態において、調製された多形体は前記遊離塩基結晶形Iであり、前記結晶化処理は、降温による結晶化、揮発による結晶化または逆溶媒による結晶化によって行われる。
【0144】
いくつかの実施例において、
(a1)溶媒の存在下で、式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、溶液を形成するステップと、
(b1)前記溶液に対して結晶化処理を行うステップと、
を含む、前記遊離塩基結晶形Iの調製方法を提供する。
【0145】
いくつかの実施形態において、ステップ(a1)では、前記溶媒は、アセトニトリル、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、50%エタノール(即ち50%(v/v)エタノール/水の混合溶媒)、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフランおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0146】
いくつかの実施形態において、ステップ(a1)では、前記溶媒はアセトニトリル、イソプロパノール、エタノール、酢酸エチル、50%エタノール、ジメチルスルホキシドまたはN,N-ジメチルアセトアミドである。
【0147】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(a1)では、温度T1の条件下で、前記式Xで示される化合物を透明になるまで溶解する。いくつかの好ましい実施形態において、前記温度T1が室温よりも高いことが好ましい。例えば、式Xで示される化合物を溶媒に入れ、温度T1まで加熱した後、一定時間維持して混合系を清澄させ(式Xで示される化合物を透明になるまで溶解することを実現する)、得られた清澄な系が前記溶液である。前記温度T1は恒温条件(一定の温度に維持する)であってもよく、温度範囲(一定の温度範囲に維持する)であってもよい。いくつかの実施形態において、前記「前記式Xで示される化合物を透明になるまで溶解するステップ」は、温度T1の条件下で行われ、前記温度T1は45℃~120℃、50℃~100℃、50℃~80℃、および70℃~80℃の温度範囲からなる群から選択されるいずれか一つである。いくつかの実施例において、溶液を45℃~120℃まで昇温した後、一定時間維持して、式Xで示される化合物を透明になるまで溶解する。いくつかの実施例において、溶液を50℃~100℃まで昇温する。いくつかの実施例において、溶液を50℃~80℃に昇温する。いくつかの実施例において、溶液を50℃前後(例えば、50±5℃)まで昇温する。いくつかの実施例において、溶液を70℃~80℃まで昇温する。いくつかの実施例において、前記温度T1は約、48℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃および80℃のうちのいずれか一つの温度であり、挙げられた温度で一定温度に維持されてもよく、ある範囲内、例えば、±1℃、±2℃、±3℃、±4℃、±5℃などで変動してもよい。いくつかの好ましい実施例において、前記温度T1は恒温条件である。
【0148】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(b1)では、前記溶液に対して、降温、揮発または逆溶媒の添加により、結晶化処理を行う。
【0149】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(b1)では前記結晶化処理の方法は降温による結晶化であり、即ち、降温による結晶化の方法で結晶化処理を行う。前記降温は、ステップ(a1)中の温度T1を基準とするものである。いくつかの実施形態において、前記溶液を温度T2まで降温した後、一定時間維持して、結晶を析出させる。前記温度T2は恒温条件(一定の温度に維持する)であってもよく、温度範囲(一定の温度範囲に維持する)であってもよい。いくつかの実施形態において、前記温度T2は、-10℃~室温、30℃~20℃、25℃~15℃、0℃~5℃、0℃~4℃、0℃以下、および0℃~-5℃の温度範囲からなる群から選択されるいずれか一つである。いくつかの実施形態において、前記温度T2は、-10℃~室温、30℃~20℃、25℃~15℃、0℃~5℃、0℃~4℃、0℃以下、および0℃~-5℃の温度範囲中の任意温度から選択される。いくつかの実施例において、溶液を-10℃~室温の範囲内の任意温度まで降温し、いくつかの実施例において、溶液を室温まで降温し、いくつかの実施例において、溶液を30℃~20℃まで降温し、いくつかの実施例において、溶液を25℃~15℃まで降温し、いくつかの実施例において、溶液を0℃~5℃まで降温し、いくつかの実施例において、溶液を0℃または0℃以下まで降温し、いくつかの実施例において、溶液を0℃~-5℃まで降温する。いくつかの実施例において、前記温度T2は約、-5℃、-4℃、-2℃、0℃、5℃、10℃、15℃、20℃および25℃のうちのいずれか一つの温度であり、挙げられた温度で一定温度に維持されてもよく、ある範囲内、例えば、±1℃、±2℃、±3℃、±5℃などで変動してもよい。いくつかの好ましい実施例において、前記温度T2は恒温条件である。
【0150】
いくつかの実施形態において、
(Ia)前記溶媒はアセトニトリル、イソプロパノール、エタノール、酢酸エチル、または50%(v/v)エタノール/水の混合溶媒であり、前記結晶化処理の方法は降温による結晶化であることと、
(Ib)前記溶媒は50%(v/v)エタノール/水の混合溶媒であり、前記結晶化処理の方法は揮発による結晶化であることと、
(Ic)前記溶媒はジメチルスルホキシドまたはN,N-ジメチルアセトアミドであり、前記結晶化処理の方法は逆溶媒による結晶化であることと、
のうちのいずれかの方法により、前記遊離塩基結晶形Iを調製する。
【0151】
いくつかの実施形態において、アセトニトリル、イソプロパノール、エタノール、酢酸エチルまたは50%エタノールを用いて、式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、降温による結晶化の方法により、結晶化処理を行い、本発明の遊離塩基結晶形Iを得る。
【0152】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形Iの調製方法は、イソプロパノール、エタノール、酢酸エチルまたは50%(v/v)エタノール/水の混合溶媒に、50±5℃で前記式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、前記溶液を形成し、前記溶液を0℃~4℃まで降温した後、一定時間維持して、結晶を析出させるステップを含む。いくつかの好ましい実施例において、前記溶液を室温まで自然降温して、0℃~4℃に置いて、固体を析出させる。
【0153】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形Iの調製方法は、エタノールに、75±5℃で前記式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、前記溶液を形成し、前記溶液を室温まで降温し、結晶を析出させるステップを含む。
【0154】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形Iの調製方法は、エタノールに、70±5℃で前記式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、前記溶液を形成し、前記溶液を室温まで降温し、結晶を析出させるステップを含む。いくつかの好ましい実施例において、自然降温により、前記溶液を室温まで降温する。
【0155】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形Iの調製方法は、アセトニトリルに、75±5℃で前記式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、前記溶液を形成し、前記溶液を室温まで降温し、結晶を析出させるステップを含む。いくつかの好ましい実施例において、自然降温により、前記溶液を室温まで降温する。
【0156】
いくつかの実施形態において、50%エタノールを用いて、式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、揮発による結晶化の方法により、結晶化処理を行い、遊離塩基結晶形Iを得る。
【0157】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形Iの調製方法は、50%(v/v)エタノール/水の混合溶媒に、前記式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、前記溶液を形成し、室温で、前記溶液に対して、揮発による結晶化を行うステップを含む。いくつかの好ましい実施例において、室温で自然揮発により、前記溶液に対して、揮発による結晶化を行う。
【0158】
いくつかの実施例において、前記遊離塩基結晶形Iの調製方法は、ジメチルスルホキシドまたはN,N-ジメチルアセトアミドに、前記式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、溶液を形成し、前記溶液にn-ヘプタンを入れ、結晶を析出させるステップを含む。
【0159】
いくつかの実施形態において、ジメチルスルホキシドまたはN,N-ジメチルアセトアミドを用いて、式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、逆溶媒による結晶化の方法により(または逆溶媒の添加の方法により)、結晶化処理を行い、遊離塩基結晶形Iを得る。そのうちのいくつかの実施形態において、前記逆溶媒の添加に使用される逆溶媒はn-ヘプタンである。
【0160】
いくつかの実施例において、前記式Xで示される化合物の多形体は前記遊離塩基結晶形IVであり、前記結晶化処理は揮発または逆溶媒の添加により行われる。
【0161】
第二の態様の調製方法で得られた遊離塩基結晶形Iは、本明細書の特徴付け方法いずれかに適合することが好ましい。前記特徴付け方法は、粉末X線回折スペクトル、粉末X線回折スペクトルの回折角2θ(°)の特徴的なピークの組み合わせ、示差走査熱量曲線、示差走査熱量曲線の吸熱ピーク、およびTGA-DSC図を含むが、それらに限られない。
【0162】
いくつかの実施例において、遊離塩基結晶形IVの調製方法を提供し、前記調製方法は、
(a2)溶媒の存在下で、式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、溶液を形成するステップと、
(b2)前記溶液に対して、揮発または逆溶媒の添加により、結晶化処理を行うステップと、
を含む。
【0163】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(a2)では、前記溶媒は、アセトニトリル、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフランおよびそれらの混合物からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、前記溶媒はアセトン、アセトニトリル、エタノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0164】
いくつかの実施形態において、アセトンを用いて、式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、揮発による結晶化の方法(例えば、ゆっくりと揮発させること)により、結晶化処理を行い、遊離塩基結晶形IVを得る。
【0165】
いくつかの実施形態において、エタノールまたはアセトニトリルを用いて、式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、逆溶媒の添加により、結晶化処理を行い、遊離塩基結晶形IVを得る。そのうちのいくつかの実施形態において、使用される逆溶媒はn-ヘプタンである。
【0166】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(b2)では、前記溶液に対して、ゆっくりと揮発させることまたは逆溶媒の添加により、結晶化処理を行う。
【0167】
いくつかの実施例において、前記式Xで示される化合物の多形体は前記遊離塩基結晶形Vであり、前記結晶化処理は揮発により行われる。いくつかの実施例において、前記結晶化処理は、ゆっくりと揮発させることにより行われる。
【0168】
いくつかの実施例において、遊離塩基結晶形Vの調製方法を提供し、前記調製方法は、
(a3)溶媒の存在下で、式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、溶液を形成するステップと、
(b3)前記溶液に対して、揮発により、結晶化処理を行うステップと、
を含む。
【0169】
いくつかの実施形態において、ステップ(a3)では、前記溶媒はエタノールである。
【0170】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(b3)では、前記溶液に対して、ゆっくりと揮発させることにより、結晶化処理を行う。
【0171】
いくつかの実施例において、前記式Xで示される化合物の多形体は前記遊離塩基結晶形VIであり、前記結晶化処理は揮発により行われる。
【0172】
いくつかの実施例において、結晶形VIの調製方法を提供し、前記調製方法は、
(a4)溶媒の存在下で、式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、溶液を形成するステップと、
(b4)前記溶液に対して、揮発により、結晶化処理を行うステップと、
を含む。
【0173】
いくつかの実施形態において、ステップ(a4)では、前記溶媒はアセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドまたはN,N-ジメチルアセトアミドである。
【0174】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(b4)では、前記溶液に対して、ゆっくりと揮発させることにより、結晶化処理を行う。
【0175】
いくつかの実施例において、前記式Xで示される化合物の多形体は前記遊離塩基結晶形VIIであり、前記結晶化処理は、逆溶媒の添加により行われる。
【0176】
いくつかの実施例において、遊離塩基結晶形VIIの調製方法を提供し、前記調製方法は、
(a5)溶媒の存在下で、式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、溶液を形成するステップと、
(b5)前記溶液に対して、逆溶媒の添加により、結晶化処理を行うステップと、
を含む。
【0177】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(a5)では、前記溶媒はメタノールである。
【0178】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(b5)では、前記逆溶媒の添加に使用される逆溶媒はn-ヘプタンである。
【0179】
本発明の第二の態様では、
(a′0)溶媒に、前記式Xで示される化合物を酸と混合し、溶液を形成するステップと、
(b′0)前記溶液に対して、結晶化処理を行うステップと、
を含む、前記式Xで示される化合物の薬学的に許容される塩の多形体の調製方法をさらに提供する。
【0180】
前記酸の種類は、薬学的に許容される塩の種類に従って選択され、式Xで示される化合物と塩を形成するために使用される。
【0181】
酸の用量により、薬学的に許容される塩における式Xで示される化合物と酸成分とのモル比を制御する。好ましくは、過剰の酸を使用する。
【0182】
いくつかの実施例において、前記酸は、塩酸、硫酸、および臭化水素酸からなる群から選択される。
【0183】
いくつかの実施例において、一塩基酸が使用され、一塩基酸と式Xで示される化合物とのモル比は1.2:1である。
【0184】
いくつかの実施例において、二塩基酸が使用され、二塩基酸と式Xで示される化合物とのモル比は0.6:1である。
【0185】
いくつかの実施例において、前記式Xで示される化合物の薬学的に許容される塩の多形体は前記塩酸塩結晶形Iであり、前記酸は塩酸であり、前記結晶化処理は、降温、揮発または逆溶媒の添加により行われる。
【0186】
いくつかの実施例において、前記式Xで示される化合物の薬学的に許容される塩の多形体は前記塩酸塩結晶形Iであり、前記酸は塩酸であり、前記結晶化処理は、ゆっくりと降温すること、ゆっくりと揮発させること、または逆溶媒の添加により行われる。
【0187】
いくつかの実施例において、塩酸塩結晶形Iの調製方法を提供し、前記調製方法は、
(a6)溶媒の存在下で、式Xで示される化合物および希塩酸溶液(例えば、1Mの塩酸水溶液)を混合し、溶液を形成するステップと、
(b6)前記溶液に対して、降温、揮発または逆溶媒の添加により結晶化処理を行うステップと、
を含む。
【0188】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(a6)では、前記溶媒は、アセトニトリル、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフランおよびそれらの混合物からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、前記溶媒はイソプロパノールまたはアセトンである。
【0189】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(a6)では、前記酸は1Mの塩酸である。
【0190】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(a6)では、前記酸は1Mの塩酸水溶液である。
【0191】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(b6)では、前記溶液に対して、ゆっくりと降温すること、ゆっくりと揮発させることまたは逆溶媒の添加により、結晶化処理を行う。
【0192】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(b6)では、逆溶媒の添加により、結晶化処理を行い、使用される逆溶媒はn-ヘプタンである。
【0193】
いくつかの実施例において、前記式Xで示される化合物の薬学的に許容される塩の多形体は前記硫酸塩結晶形Iであり、前記酸は硫酸であり、前記結晶化処理は降温(好ましくはゆっくりと降温すること)または逆溶媒の添加により行われる。
【0194】
いくつかの実施例において、硫酸塩結晶形Iの調製方法を提供し、前記調製方法は、
(a7)溶媒の存在下で、式Xで示される化合物および希硫酸溶液(例えば0.5Mの硫酸水溶液)を混合し、溶液を形成するステップと、
(b7)前記溶液に対して、降温、または逆溶媒の添加により結晶化処理を行うステップと、
を含む。
【0195】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(a7)では、前記溶媒は、アセトニトリル、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフランおよびそれらの混合物からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、前記溶媒は、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチルおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0196】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(a7)では、前記酸は0.5Mの硫酸である。
【0197】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(a7)では、前記酸は0.5Mの硫酸水溶液である。
【0198】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(b7)では、前記溶液に対して、ゆっくりと降温すること、または逆溶媒の添加により、結晶化処理を行う。
【0199】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(b7)では、前記結晶化処理は、逆溶媒の添加により行われ、使用される逆溶媒はn-ヘプタンである。
【0200】
いくつかの実施例において、前記式Xで示される化合物の薬学的に許容される塩の多形体は前記臭化水素酸塩結晶形Iであり、前記酸は臭化水素酸であり、前記結晶化処理は降温(好ましくはゆっくりと降温すること)により行われる。
【0201】
いくつかの実施例において、臭化水素酸塩結晶形Iの調製方法を提供し、前記調製方法は、
(a8)溶媒の存在下で、式Xで示される化合物および臭化水素酸を混合し、溶液を形成するステップと、
(b8)前記溶液に対して、ゆっくりと降温することにより、結晶化処理を行うステップと、
を含む。
【0202】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(a8)では、前記溶媒は、アセトニトリル、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフランおよびそれらの混合物からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、前記溶媒は、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチルおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0203】
いくつかの実施形態において、前記ステップ(b8)では、前記溶液に対して、ゆっくりと降温することにより、結晶化処理を行う。
【0204】
いくつかの実施形態において、前記の多形体の調製方法はさらに前記式Xで示される化合物を調製する以下のステップを含む。
【化2】
【0205】
有機溶媒で、化合物1-5と化合物V2との反応により、前記式Xで示される化合物を生成する。
【0206】
前記有機溶媒の例はテトラヒドロフラン(THF)を含むが、これに限定されない。
【0207】
いくつかの実施形態において、前記多形体の調製方法はさらに前記化合物1-5を調製する以下のステップを含む。
【化3】
【0208】
化合物1-3と化合物V1との反応により、化合物1-4を生成し、そしてTIPSを除去し、前記化合物1-5を生成し、前記TIPSはトリイソプロピルシリル基である。
【0209】
当業者がTIPSの除去方法を知っているため、ここでは贅言しない。
【0210】
本発明の第三の態様では、医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、
(a)本発明の第一の態様におけるいずれかの多形体(式Xで示される化合物またはその薬学的に許容される塩の多形体)および(b)薬学的に許容される担体を含む。
【0211】
本発明の第四の態様では、アデノシンA2A受容体によって媒介され、アデノシンA2B受容体によって媒介され、またはアデノシンA2A受容体とアデノシンA2B受容体の両方によって媒介される疾患を予防および/または治療する薬物の調製における、本発明の第一の態様に記載の多形体(式Xで示される化合物またはその薬学的に許容される塩の多形体)、または本発明の第三の態様に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【0212】
いくつかの実施形態において、式Xで示される化合物はA2A/A2B受容体拮抗薬として使用される。
【0213】
いくつかの実施形態において、前記疾患は腫瘍または免疫関連疾患である。
【0214】
いくつかの実施形態において、前記疾患は腫瘍である。本発明において、腫瘍はがんを含むが、これに限定されない。
【0215】
いくつかの実施形態において、前記疾患はがんである。
【0216】
いくつかの実施形態において、前記腫瘍は、前立腺がん、結腸がん、直腸がん、膵臓がん、子宮頸がん、胃がん、子宮内膜がん、脳がん、肝臓がん、膀胱がん、卵巣がん、精巣がん、頭部がん、頸部がん、黒色腫、基底がん、中皮内壁がん、白血球がん、食道がん、乳がん、筋肉がん、結合組織がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、副腎がん、甲状腺がん、腎臓がん、および骨がんから選択され、神経膠腫、中皮腫、腎細胞がん、胃がん、肉腫、絨毛がん、皮膚基底細胞がん、および精巣セミノーマから選択されてもよい。
【0217】
いくつかの実施形態において、前記疾患は免疫関連疾患である。
【0218】
いくつかの実施形態において、前記免疫関連疾患は、関節リウマチ、腎不全、狼瘡、喘息、乾癬、大腸炎、膵炎、アレルギー、線維症、貧血性線維筋痛症、アルツハイマー病、うっ血性心不全、脳卒中、大動脈弁狭窄症、動脈硬化症、骨粗鬆症、パーキンソン病、感染症、クローン病、潰瘍性大腸炎、アレルギー性接触皮膚炎およびその他の湿疹、全身性硬化症および多発性硬化症から選択される。
【0219】
本発明の第五の態様では、アデノシンA2A受容体によって媒介され、アデノシンA2B受容体によって媒介され、またはアデノシンA2A受容体とアデノシンA2B受容体の両方によって媒介される関連疾患を予防および/または治療する方法を提供し、必要とされる患者に、治療有効量の本発明における第一の態様に記載の多形体(式Xで示される化合物の多形体または式Xで示される化合物の薬学的に許容される塩の多形体)、または本発明における第三の態様に記載の医薬組成物を投与することを含む。
【0220】
理解すべきことは、本発明の範囲内において、本発明を実施することができる限り、本発明の上述の各技術的特徴および以下(実施例を含むがこれに限定されない)に説明される各技術的特徴の間は任意の適切な方法で互いに組み合わせ、新しいまたは好ましい技術案を構成することができる。紙面の都合上、贅言はしない。本発明の式Xで示される化合物は良好な関連する薬理活性を有する。
【0221】
腫瘍微小環境において、A2AとA2Bの二種類のアデノシン受容体は、免疫細胞で広く発現されており、強力な免疫抑制機能を持っている。細胞外アデノシン濃度の増加は、腫瘍細胞の免疫逃避の重要なメカニズムの一つであり、その濃度レベルはATPレベルとCD39およびCD73の発現レベルによって共に決定される。細胞外アデノシン濃度の増加は、腫瘍微小環境における細胞死または低酸素による大量のATP放出に関連しており、その濃度は正常な組織の10~20倍に達することができる。アデノシンは腫瘍微小環境のアデノシン受容体に結合し、例えば、CD8+T細胞の機能の阻害、免疫反応を抑制する制御性T細胞の機能の増強、樹状細胞による抗原提示細胞の機能の阻害などの抗腫瘍応答を阻害することができる。いくつかの研究では、A2A受容体への結合がナチュラルキラー細胞の腫瘍殺傷効果も阻害する可能性があることが示されている。さらなる研究では、A2Aアデノシン受容体拮抗薬は、樹状抗原提示細胞、T細胞、およびナチュラルキラー細胞の活性および殺傷能力を高め、制御性T細胞(T-reg)、骨髄由来抑制細胞(MDSCs)および腫瘍関連マクロファージ(TAM)の機能を阻害し、腫瘍の免疫寛容を排除し、腫瘍免疫応答の発生を促進し、これにより、腫瘍の増殖が抑制され、マウスの生存期間が延長される。また、A2B受容体はマウス黒色腫およびトリプルネガティブ乳がんモデルにおいて腫瘍移動を促進することも報告されているため、A2B受容体拮抗薬も効果的な腫瘍治療標的である。したがって、アデノシンシグナル経路の活性化を遮断して免疫抑制を軽減または解消し、免疫細胞(特にT細胞の抗腫瘍機能)を強化することは、腫瘍治療の効果的な手段の一つであると考えられている。
【0222】
本発明の式Xで示される化合物およびその薬学的に許容される塩の多形体(即ち、式Xで示される化合物の多形体および式Xで示される化合物の薬学的に許容される塩の多形体)が良好な安定性を有するため、さらに薬物に開発する見込みがある。
【図面の簡単な説明】
【0223】
図1図1は本発明の一つの実施例における遊離塩基結晶形Iの粉末X線回折(XRPD)スペクトルであり、Cu-Kα線を使用し、横座標は角度2θ(°)であり、縦座標は強度(Intensity)であり、縦座標の単位はカウント数(counts)である。
図2図2は本発明の一つの実施例における遊離塩基結晶形IのTGA-DSC(熱重量分析-示差走査熱量分析)スペクトルであり、横座標は温度(℃)であり、左側の縦座標は重量変化(%)であり、右側ぼ縦座標軸は熱流(Heat Flow(Normalized)Q)(W/g)である。
図3図3は本発明の一つの実施例における遊離塩基結晶形Iの動的水分吸着(DVS)スペクトルであり、横座標は相対湿度(%)(Target RH(%))であり、縦座標はサンプル重量変化(%)(Change In mass(%)-Ref)である。
図4図4は本発明の一つの実施例における遊離塩基結晶形IVの粉末X線回折(XRPD)スペクトルであり、Cu-Kα線を使用し、横座標は角度2θ(°)であり、縦座標は強度(Intensity)であり、縦座標の単位はカウント数(counts)である。
図5図5は本発明の一つの実施例における遊離塩基結晶形IVの示差走査熱量分析(DSC)スペクトルであり、横座標は温度(℃)であり、縦座標は熱流(Heat Flow(Normalized)Q)(W/g)である。
図6図6は本発明の一つの実施例における遊離塩基結晶形Vの粉末X線回折(XRPD)スペクトルであり、Cu-Kα線を使用し、横座標は角度2θ(°)であり、縦座標は強度(Intensity)であり、縦座標の単位はカウント数(counts)である。
図7図7は本発明の一つの実施例における遊離塩基結晶形Vの示差走査熱量分析(DSC)スペクトルであり、横座標は温度(℃)であり、縦座標は熱流(Heat Flow(Normalized)Q)(W/g)である。
図8図8は本発明の一つの実施例における遊離塩基結晶形VIの粉末X線回折(XRPD)スペクトルであり、Cu-Kα線を使用し、横座標は角度2θ(°)であり、縦座標は強度(Intensity)であり、縦座標の単位はカウント数(counts)である。
図9図9は本発明の一つの実施例における遊離塩基結晶形VIの示差走査熱量分析(DSC)スペクトルであり、横座標は温度(℃)であり、縦座標は熱流(Heat Flow(Normalized)Q)(W/g)である。
図10図10は本発明の一つの実施例における遊離塩基結晶形VIIの粉末X線回折(XRPD)スペクトルであり、Cu-Kα線を使用し、横座標は角度2θ(°)であり、縦座標は強度(Intensity)であり、縦座標の単位はカウント数(counts)である。
図11図11は本発明の一つの実施例における遊離塩基結晶形VIIの示差走査熱量分析(DSC)スペクトルであり、横座標は温度(℃)であり、縦座標は熱流(Heat Flow(Normalized)Q)(W/g)である。
図12図12は本発明の一つの実施例における遊離塩基結晶形Iの40℃/75%RH条件下でのXRPDスペクトルの比較であり、横座標は角度2θ(°)であり、縦座標は強度(Intensity)であり、縦座標単位はカウント数(counts)である。
図13図13は本発明の一つの実施例における塩酸塩結晶形Iの粉末X線回折(XRPD)スペクトルであり、Cu-Kα線を使用し、横座標は角度2θ(°)であり、縦座標は強度(Intensity)であり、縦座標の単位はカウント数(counts)である。
図14図14は本発明の一つの実施例における塩酸塩結晶形Iの示差走査熱量分析(DSC)スペクトルであり、横座標は温度(℃)であり、縦座標は熱流(Heat Flow(Normalized)Q)(W/g)である。
図15図15は本発明の一つの実施例における硫酸塩結晶形Iの粉末X線回折(XRPD)スペクトルであり、Cu-Kα線を使用し、横座標は角度2θ(°)であり、縦座標は強度(Intensity)であり、縦座標の単位はカウント数(counts)である。
図16図16は本発明の一つの実施例における硫酸塩結晶形Iの示差走査熱量分析(DSC)スペクトルであり、横座標は温度(℃)であり、縦座標は熱流(Heat Flow(Normalized)Q)(W/g)である。
図17図17は本発明の一つの実施例における臭化水素酸塩結晶形Iの粉末X線回折(XRPD)スペクトルであり、Cu-Kα線を使用し、横座標は角度2θ(°)であり、縦座標は強度(Intensity)であり、縦座標の単位はカウント数(counts)である。
図18図18は本発明の一つの実施例における塩酸塩結晶形Iのそれぞれ60℃条件下、40℃/75%RH条件下でのXRPDスペクトルの比較であり、横座標はTwo-Theta(2θ)であり、横座標の単位は角度(°)であり、縦座標は強度(Intensity)であり、縦座標の単位はカウント数(counts)である。
図19図19は本発明の一つの実施例における硫酸塩結晶形Iのそれぞれ60℃条件下、40℃/75%RH条件下でのXRPDスペクトルの比較であり、横座標はTwo-Theta(2θ)であり、横座標の単位は角度(°)であり、縦座標は強度(Intensity)であり、縦座標単位はカウント数(counts)であり、ここで、「HY80****」は当該硫酸塩化合物のサンプル番号である。
図20図20は本発明の一つの実施例における遊離塩基結晶形Iの赤外スペクトルであり、横座標は波数(wavenumber)(cm-1)であり、縦座標は透過率(Transmittance)である。
【発明を実施するための形態】
【0224】
以下では、いくつかの図面、実施形態および実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。理解すべきことは、これらの実施形態および実施例は、本発明を説明するためであり、本発明の範囲を限定するためのものではなく、これらの実施形態および実施例を提供する目的は、本発明に開示される内容を完全かつ詳細に理解させるためである。さらに理解すべきことは、本発明は、様々な形態で実現することができ、本明細書に記載される実施形態および実施例に限定されるものではなく、当業者であれば、本願の趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更や修正を加えることができ、得られた等価な形態も本発明の保護範囲に含まれる。また、理解すべきことは、以下の説明において、本発明をさらに十分に理解させるために、大量の細部が与えられるが、これらの細部の一つまたは複数がなくても本発明が実施できる。
【0225】
特に断りのない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。本発明では、本明細書で使用される用語は実施形態および実施例を便利に説明するためのものであり、本発明を限定することを意図したものではない。
【0226】
用語
特に断りのなく、または矛盾しない限り、本明細書に使用される用語または短句は以下の意味を持つ。
【0227】
本発明において、「および/または」、「または/および」、「と/または」の選択範囲は、二つまたは二つ超の関連する記載事項のいずれか一つの事項を含み、関連する記載事項の任意の組み合わせ、およびすべての組み合わせも含み、前記任意の組み合わせ、およびすべての組み合わせは、任意の二つの関連する記載事項の組み合わせ、任意の二つ超の関連する記載事項の組み合わせ、またはすべての関連する記載事項の組み合わせを含む。なお、理解すべきことは、「および/または」、「または/および」、「と/または」からなる群から選択される少なくとも二つの接続詞の組み合わせにより少なくとも三つの事項を接続する場合、本発明において、当該技術案は明らかに、すべてが「論理積」で接続される技術案を含み、さらに明らかに、すべてが「論理和」で接続される技術案を含む。例えば、「Aおよび/またはB」は、A、B、およびA+Bの三種類の並列技術案を含む。別の例として、「A、および/または、B、および/または、C、および/または、D」の技術案は、A、B、C、Dのうちのいずれか一つ(即ちすべてが「論理和」で接続される技術案)を含み、A、B、C、Dの任意の組み合わせおよびすべての組み合わせを含み、即ち、A、B、C、Dのうちのいずれか二つまたは三つの組み合わせを含み、A、B、C、Dの四つの組み合わせ(即ちすべてが「論理積」で接続される技術案)を含む。
【0228】
本発明において、「それらの組み合わせ」、「それらの任意の組み合わせ」、「それらを組み合わせる任意の方法」などは、記載事項中のいずれか二つまたはいずれか二つ超の事項のすべての適切な組み合わせる方法を含む。
【0229】
本発明において、「適切な組み合わせる方法」、「適切な方法」、「任意の適切な方法」などに記載の「適切」とは、本発明の技術案を実施し、本発明の技術的課題を解決し、本発明に期待される技術的効果を解決することができることを基準とする。
【0230】
本発明において、理解すべきことは、「好ましい」、「よりよい」、「より優れる」、「適切とする」とは、効果がより良い実施形態または実施例を説明するためにのみ使用されており、本発明の保護範囲を限定するものではない。
【0231】
本発明において、「任意に」、「任意の」、「任意」とは、あってもなくてもよいことを指し、即ち、「あり」または「なし」の二つの並列技術案から選択される一つを指す。特に断りのなく、且つ矛盾または相互に制限する関係のない限り、一つの技術案に複数の「任意」がある場合、各「任意」はそれぞれ独立する。
【0232】
本発明において、「第一の態様」、「第二の態様」、「第三の態様」、「第四の態様」等における用語「第一」、「第二」、「第三」、「第四」などは説明のみを目的としており、相対的な重要性または量を示しまたは暗示すると理解できず、示された技術的特徴の重要性または量を暗黙的に示すと理解できない。そして、「第一」、「第二」、「第三」、「第四」などは非網羅的な列挙および説明のみを目的としており、数量に対する閉鎖形式の限定にならないことを理解すべきである。
【0233】
本発明において、開放形式で記載される技術的特徴は、列挙された特徴からなる閉鎖形式の技術案を含み、列挙された特徴を含む開放形式の技術案を含む。
【0234】
本発明において、特に断りのない限り、数値区間(即ち数値範囲)に関し、選択できる数値の分布は、上記の数値区間内で連続しているとみなされ、且つ数値範囲の二つの数値端点(即ち、最小値と最大値)、および二つの数値端点の間のすべての値を含む。特に断りのない限り、数値区間が当該数値区間内の整数のみを指す場合、当該数値範囲の二つの端点の整数、および二つ端点の間の各整数が含まれる。また、機能または特性を説明するために複数の範囲が提供される場合、これらの範囲を組み合わせることができる。換言すれば、特に断りのない限り、本明細書に開示される範囲は、その中に含まれるあらゆるサブ範囲を含むと理解すべきである。
【0235】
本発明において、特に断りのない限り、「M」、「nM」、「μM」および「mM」が濃度を示す場合、それらはそれぞれmol/L、nmol/L、μmol/L、およびmmol/Lに相当する。
【0236】
本発明において、「有する(have)」は開放形式の記載である。例えば、「スペクトルの特定の位置にピークを有する」ことは、スペクトルのこれらの位置にピークを有することを意味し、且つスペクトルの他の位置にピークの存在を排除するものではない。
【0237】
広範かつ詳細な研究の後、発明者は式Xで示される化合物を発見し、それがアデノシンA2A受容体、アデノシンA2B受容体、または両方の受容体に対して高い阻害活性を有することを発見した。これに基づいて、さらなる研究を通じて、式Xで示される化合物およびその薬学的に許容される塩の一連の多形体を意外に発見し、これらの多形体は、より優れた安定性を有するだけでなく、より優れた生体内および生体外の関連する薬理活性があるため、さらに薬物に開発する見込みがある。
【0238】
本発明の化合物
本発明において、式Xで示される化合物は3-(4-アミノ-5-フルオロ-6-(1-((6-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-2-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ピリミジン-2-イル)-2-メチルベンゾニトリルであり、式(X)に示される構造を有する。
【0239】
【化4】
【0240】
前記式Xで示される化合物は、構造の観点からはピリミジン誘導体である。当該式Xで示される化合物はA2A/A2B受容体二重拮抗薬であり、A2AおよびA2Bの二種類の受容体の活性化を同時に遮断でき、アデノシンA2A受容体、アデノシンA2B受容体またはこの二種類の受容体に対して高い阻害活性を有する。メカニズム的に言えば、それはさまざまな免疫細胞群を調節し、微小環境におけるアデノシンによる免疫抑制効果を包括的に遮断し、腫瘍治療において広範囲にわたる臨床応用価値があり、腫瘍関連疾患、免疫関連疾患、または腫瘍・免疫関連疾患の治療に用いることができる。
【0241】
本発明において、「A2A/A2B受容体拮抗薬」は、A2A受容体拮抗薬でもあり、A2B受容体拮抗薬でもあることを示し、A2A受容体の活性化を遮断し、A2B受容体の活性化を遮断することができる。
【0242】
本発明はさらに式Xで示される化合物およびその薬学的に許容される塩の多形体を含み、薬学的に許容される塩は特に限定されず、塩酸塩、硫酸塩、および臭化水素酸塩から選択されることが好ましい。
【0243】
本発明において、多形体は、遊離塩基の多形体、薬学的に許容される塩の多形体を含むが、これらに限定されない。
【0244】
本発明において、特に断りのない限り、式Xで示される化合物の多形体は式Xで示される化合物の遊離塩基の多形体を指し、本発明における遊離塩基結晶形I、遊離塩基結晶形IV、遊離塩基結晶形V、遊離塩基結晶形VIおよび遊離塩基結晶形VIIを含むが、これらに限定されない。
【0245】
本発明において、式Xで示される化合物およびその薬学的に許容される塩の多形体は、式Xで示される化合物の遊離塩基結晶形I、遊離塩基結晶形IV、遊離塩基結晶形V、遊離塩基結晶形VI、遊離塩基結晶形VII、塩酸塩結晶形I、硫酸塩結晶形I、および臭化水素酸塩結晶形Iを含むが、これらに限定されない。
【0246】
本発明において、式Xで示される化合物のI型結晶と式Xで示される化合物の遊離塩基結晶形Iは同じ意味を有し、交換して使用することができる。特に断りのない限り、本発明における遊離塩基結晶形Iは式Xで示される化合物の結晶形Iを指す。
【0247】
本発明において、式Xで示される化合物のIV型結晶と式Xで示される化合物の遊離塩基結晶形IVは同じ意味を有し、交換して使用することができる。特に断りのない限り、本発明における遊離塩基結晶形IVは式Xで示される化合物の結晶形IVを指す。
【0248】
本発明において、式Xで示される化合物のV型結晶と式Xで示される化合物の遊離塩基結晶形Vは同じ意味を有し、交換して使用することができる。特に断りのない限り、本発明における遊離塩基結晶形Vは式Xで示される化合物の結晶形Vを指す。
【0249】
本発明において、式Xで示される化合物のVI型結晶と式Xで示される化合物の遊離塩基結晶形VIは同じ意味を有し、交換して使用することができる。特に断りのない限り、本発明における遊離塩基結晶形VIは式Xで示される化合物の結晶形VIを指す。
【0250】
本発明において、式Xで示される化合物のVII型結晶と式Xで示される化合物の遊離塩基結晶形VIIは同じ意味を有し、交換して使用することができる。特に断りのない限り、本発明における遊離塩基結晶形VIIは式Xで示される化合物の結晶形VIIを指す。
【0251】
本発明において、式Xで示される化合物の塩酸塩のI型結晶と式Xで示される化合物の塩酸塩結晶形Iは同じ意味を有し、交換して使用することができる。特に断りのない限り、本発明における塩酸塩結晶形Iは式Xで示される化合物の塩酸塩結晶形Iを指す。
【0252】
本発明において、式Xで示される化合物の硫酸塩のI型結晶と式Xで示される化合物の硫酸塩結晶形Iは同じ意味を有し、交換して使用することができる。特に断りのない限り、本発明における硫酸塩結晶形Iは式Xで示される化合物の硫酸塩結晶形Iを指す。
【0253】
本発明において、式Xで示される化合物の臭化水素酸塩のI型結晶と式Xで示される化合物の臭化水素酸塩結晶形Iは同じ意味を有し、交換して使用することができる。特に断りのない限り、本発明における臭化水素酸塩結晶形Iは式Xで示される化合物の臭化水素酸塩結晶形Iを指す。
【0254】
本明細書に使用されたように、「薬物」は生体内または生体外で生理学的効果、薬理学的効果、または生理学的効果と薬理学的効果をもたらし、通常、有益な効果をもたらす任意の薬剤、化合物、組成物または混合物を含む。前記「薬物」が生体内で生理学的効果、薬理学的効果、または生理学的効果と薬理学的効果を発見する範囲は特に限定されず、全身的な効果を有してもよく、局所的な効果を有してもよい。前記「薬物」の活性は特に限定されず、他の物質と相互作用する活性物質であってもよく、相互作用しない不活性物質であってもよい。
【0255】
本明細書に使用されたように、「治療有効量」とは、個体において生物学的または医学的反応を引き起こす本発明の化合物の量を指し、例えば、個人に生理学的、薬理学的、または生理学的と薬理学的なプラスの効果をもたらす量であり、前記生理学的、薬理学的、または生理学的と薬理学的なプラスの効果は、酵素もしくはタンパク質の活性の低下もしくは阻害、症状の改善、病症の緩和、疾患の進行を遅らせるもしくは遅延させること、または疾患の予防などを含むが、これらに限定されない。
【0256】
本明細書に使用されたように、「薬学的に許容される」とは、合理的な医学的判断の範囲内で患者に投与するのに適し、且つ合理的な利益/リスク比に適合しており、薬学的リガンド、材料、組成物または剤形に適用できることを指す。
【0257】
本明細書に使用されたように、「薬学的に許容される担体」は、原則として無毒で不活性であるべきである。「薬学的に許容される担体」の形態は特に限定されず、固体、半固体、液体等を含むが、これらに限定されない。前記薬学的に許容される担体は患者に適合しなくてはならず、前記患者は哺乳動物が好ましく、より好ましくはヒトである。前記薬学的に許容される担体の機能の一つは、活性剤の活性を停止させることなく、活性剤を意図した標的に送達するのに適していることである。本明細書に使用されたように、用語「薬学的に許容される担体」には、薬物投与に適合する緩衝剤、注射用滅菌水、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。各担体は、製剤の他の成分と適合し、患者に無害であるという観点から、「薬学的に許容される」ものでなければならない。
【0258】
本明細書に使用されたように、「薬学的に許容される塩」とは、示された構造のいずれかの化合物と、酸または塩基で形成された、薬物としての使用に適した塩を指す。本明細書において、主に式Xで示される化合物と酸で形成された、薬物としての使用に適した塩を指す。
【0259】
本明細書に使用されたように、「患者」とは動物であり、哺乳動物が好ましく、ヒトがさらに好ましい。用語「哺乳動物」は、主に、温血脊椎動物を指し、ネコ、イヌ、ウサギ、クマ、キツネ、オオカミ、サル、シカ、ネズミ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマおよびヒトを含むが、これらに限定されない。
【0260】
本発明において、化合物、多形体、医薬組成物または薬剤等の投与方法は特に制限されない。代表的な投与方法は、経口、腫瘍内、直腸、非経口(静脈内、筋肉内、または皮下)注射、および局所投与を含むが、これらに限定されない。
【0261】
本明細書に使用されたように、「治療」とは、既存の疾患または病症(例えば、がん)を緩和し、進行遅延し、軽減し、予防し、または維持することを指す。治療は、疾患または病症の一つまたは複数の病症を治癒すること、進行を予防すること、またはある程度まで緩和することをさらに含む。
【0262】
本発明において、「予防および/または治療」は予防、治療、または、予防および治療を示す。ここで、「予防および治療」は予防と治療の効果を同時に有することを示す。
【0263】
本発明において、「Cu-Kα線を使用する」とは、対応するスペクトルがCuターゲットのKα線によって検出されることを意味し、他の方法で測定する場合、各回折ピークには当該技術分野で許容される範囲内の偏差を有してもよく、本発明の制限として理解されるべきではない。
【0264】
多形体
固体は、アモルファス、結晶、または半結晶の形で存在する。低分子(分子量が1000Da以下であることが好ましい)の有機化合物は主にアモルファスまたは結晶の形で存在する。結晶の形の場合、分子は三次元格子サイト内に配置される。化合物が溶液またはスラリーから結晶化する場合、異なる空間格子配置で結晶化し(「多形」(Polymorphism)として知られる特性)、異なる結晶形の結晶を形成することができ、このような結晶形は「多形体」と呼ばれる。所定の物質の異なる多形体は、一つまたは複数の物理的特性(例えば、溶解度、溶解速度、真比重、結晶形、充填のパターン、流動性、固体状態の安定性のうちの一つまたは複数)において互いに異なる場合がある。
【0265】
結晶
生産規模の結晶化は、目的の化合物の溶解限界を超えるように溶液を操作することによって達成できる。これは、例えば、比較的高温で化合物を溶解し、その後溶液を飽和限界以下に冷却すること、沸騰、大気圧で蒸発、真空乾燥、または他の方法で液体の体積を減らすこと、または逆溶媒を添加すること、化合物の溶解度が低い貧溶媒を添加すること、このような逆溶媒もしくは貧溶媒の混合物を添加することによって目的の化合物の溶解度を低下させることによって達成できる。別の選択できる方法は、pHを調整して溶解度を低下させることである。結晶に関する詳細な説明は、Crystallization,第三版,J W Mullens,Butterworth-Heineman Ltd.,1993,ISBN0750611294を参照する。
【0266】
結晶形の同定と性質
本発明において、式Xで示される化合物の結晶形を調製し、さらに以下を含むがこれらに限定されない複数の方法および装置により、その性質に対して研究を行った。
【0267】
粉末X線回折(XRPD)
結晶形の粉末X線回折を測定する方法は当分野で知られている。XRPDは、結晶形の変化、結晶化度、結晶構造状態などの情報を測定でき、結晶形を識別するための一般的な方法である。XRPDスペクトルのピーク位置は主に結晶形の構造に依存する。XRPDスペクトルの2θ(Two-Theta)の測定は、異なる装置の間でわずかに異なる場合があるため、XRPDスペクトルにおける特徴的なピークの2θの値は絶対的なものとは見なされない。本発明の試験で使用される装置の条件に応じて、回折ピークにはある程度の誤差(例えば±0.2°)が許容される。理解できるように、測定装置および測定条件が異なる場合、誤差範囲は絶対的なものではない。本発明の式Xで示される化合物の結晶形は、特定の結晶形態を有し、XRPDスペクトルにおいて特定の特徴的なピークを有する。
【0268】
示差走査熱量分析(DSC)
「示差熱量走査分析」とも呼ばれ、これは、加熱過程における被測定物質と基準物質のエネルギー差と温度との関係を測定する技術である。DSCスペクトルにおけるピークの位置、形状およびピークの数は物質の性質と関連しているため、物質を定性的に識別するために使用できる。当分野では、一般的にこの方法を使用して、物質の相転移温度、ガラス転移温度、反応熱などのさまざまなパラメータを検出する。異なる装置の間、DSCスペクトルのピークの位置は、わずかに異なる場合があるため、DSCスペクトルにおけるDSC吸熱ピークのピーク位置の値は絶対的なものとは見なされない。本発明の試験で使用される装置の条件に応じて、実験の誤差または差異の数値も絶対的なものではなく、その数値は、5℃でありもしくは5℃より小さく、4℃でありもしくは4℃より小さく、3℃でありもしくは3℃より小さく、2℃でありもしくは2℃より小さく、または1℃でありもしくは1℃より小さい。
【0269】
熱重量分析(TGA)
TGAはプログラム制御により、物質の質量が温度に応じた変化を測定する技術であり、結晶中の溶媒の減少または試料の昇華、分解の過程を確認するのに適しており、結晶中に含まれる結晶水または結晶中に含まれる溶媒の状況を推測できる。TGA曲線に示された質量変化は試料の調製および装置などの多くの要因に依存し、異なる装置の間では、TGAで測定された質量変化はわずかに異なる。本発明の試験で使用される装置の条件に応じて、質量変化の誤差は、絶対的なものではなく、ある程度の誤差(例えば±0.1%)が許容される。
【0270】
本発明に記載の「粉末X線回折スペクトルが特定の回折角2θ(°)にピークを有する」について、前記ピークは回折ピークを指し、上記の記載は、当該ピークのピーク値が示された数値範囲内、示された数値点、示された数値範囲付近、または示された数値点の付近にあることを意味する。測定装置および測定条件などの測定要素の違いにより、実際に得られた粉末X線回折スペクトルにおけるあるピークの位置またはいくつかのピーク値の位置がわずかに異なる場合があり、つまり、本発明に示された特徴的なピークの組み合わせまたは粉末X線回折スペクトルとはわずかに異なる場合がある。しかし、理解できるように、当業者であれば、全体として、わずかな違いがある特徴的なピークの組み合わせまたは粉末X線回折スペクトルが実質的に本発明に記載の結晶形に一致するかどうかを確認することができる。そのため、実質的に本発明の結晶形に一致すると確認されるものは、本発明の保護範囲内にあると認定されるべきである。例えば、「粉末X線回折スペクトルが16.63°±0.2°の回折角にピークを有する」ことは、当該ピークのピーク値が、全体として、結晶形の識別を妨げなければ、16.63°±0.2°の範囲内および当該範囲の近傍にあってもよいことを示す。また、ここでの「±0.2°」は、単にピーク値の回折角位置の誤差を表すものであり、当該ピークのピーク形状、ピーク幅等の他の要素とは無関係である。
【0271】
本発明において、「粉末X線回折スペクトルは基本的に特定の図面で表される」における「基本的に」も、同様に理解されるべきであり、全体として、ある粉末X線回折スペクトルが本発明に記載の粉末X線回折スペクトルに実質的に一致すると認定できる限り、それが本発明の保護範囲内にあるものと認定されるべきである。
【0272】
理解できるように、本発明における示差走査熱量測定(DSC)曲線およびその中に示された吸熱ピークの位置も、同様に理解されるべきであり、本発明に開示されたある数値またはある数値範囲またはあるスペクトルの間にわずかな違いが許容され、全体として、示差走査熱量測定曲線における一部もしくは全部の吸熱ピークの位置、または曲線全体が本発明に実質的に一致すると認定できる限り、それが本発明の保護範囲内にあるものと認定されるべきである。
【0273】
理解できるように、その他の結晶形を特徴付けるスペクトル(例えば赤外スペクトル)についても、同様に理解されるべきである。
【0274】
本発明に記載の「透明になるまで溶解する」ことは、溶媒を使用して式Xで示される化合物またはその薬学的に許容される塩を完全に溶解することを指す。
【0275】
本発明に記載の「溶媒の存在下」とは、化合物またはその塩を透明になるまで溶解する系が溶媒を含み、さらに非溶媒の可溶性成分、不溶性成分または可溶成分および不可溶成分の存在が許容されることを指す。本発明に記載の「溶媒の存在下」は、少なくとも「溶媒中」という技術案を含む。そして、「溶媒中」という記載も開放形式の記載であり、「溶媒」のみを使用して透明になるまで溶解する閉鎖形式を含み、「溶媒中」にさらに溶解補助成分が存在する開放形式の場合を含む。
【0276】
本発明に記載の「降温」とは、溶媒を使用して、式Xで示される化合物またはその薬学的に許容される塩を比較的に高い温度で透明になるまで溶解し、そして一定の温度下で冷却し、結晶を得る方法である。
【0277】
本発明に記載の「揮発」とは、式Xで示される化合物またはその薬学的に許容される塩を含有する溶液を一定の温度下に置き、溶媒を揮発させ、結晶を得る方法である。
【0278】
本発明に記載の「逆溶媒の添加」とは、式Xで示される化合物またはその薬学的に許容される塩を含有する溶液に別の適切な溶媒を入れ、結晶を析出させる方法である。当該適切な溶媒は、逆溶媒、貧溶媒またはそれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施例において、逆溶媒が好ましい。
【0279】
結晶化と同時に塩の形成が起こることが望ましい場合、塩が原料よりも反応媒体中での溶解度が低い場合、適切な酸または塩基の添加により、所望の塩の直接結晶化をもたらすことができる。同様に、最終的な所望の形態が反応物より溶解度が低い場合、合成反応の完了が最終生成物の直接結晶化をもたらすことができる。
【0280】
結晶化の最適化は、所望の形態の結晶を種結晶として、結晶化媒体に接種することを含む。なお、多くの結晶化方法では、上記の手段の組み合わせを使用できる。一例としては、目的の化合物を高温で溶媒に溶かし、その後、制御された方法で適切な体積のアンチソルベントを添加して、系をちょうど飽和レベルにする。ここで、所望の形態の種結晶を入れ(種結晶の完全性を維持して)、系を冷却し、結晶化を完了する。
【0281】
本明細書に使用されたように、用語「室温」は、通常4℃~30℃を指し、さらに20℃±5℃を指しても良い。本発明のいくつかの実施例において、室温とは、20℃~30℃を指す。
【0282】
特に断りのない限り、本発明における温度パラメータは、恒温処理でも、一定の温度区間内で変動しても許容される。理解すべきことは、前記恒温処理は、装置に制御される精度の範囲内で温度が変動することが許容される。
【0283】
本発明において、「それらの混合物」を使用して、二つまたはより多くの列挙された物質からなる混合物を表すことが許容される。例えば、「前記溶媒はアセトニトリル、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、50%(v/v)エタノール/水の混合溶媒、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフランおよびそれらの混合物からなる群から選択される」における「それらの混合物」とは、前記列挙された溶媒はいずれの適切な方法で形成された混合溶媒を指し、まず、形成された混合物は依然として溶媒として使用可能である必要があり、そして、理解できるように、それが実現できる混合溶媒のみを指す。
【0284】
本発明において、「%(v/v)」は体積百分率を意味する。例えば、「50%(v/v)エタノール/水の混合溶媒」は、エタノールと水を1:1の体積比で混合してなる混合物を意味する。
【0285】
本発明において、特に断りのない限り、50%エタノールとは、無水エタノールと水が体積比1:1で形成した混合溶媒を指し、50%(v/v)エタノール/水の混合溶媒と略記してもよい。
【0286】
多形体の同定と性質
本発明において、式Xで示される化合物の多形体を調製した後、以下を含むがこれらに限定されない複数の方法および装置により、その性質に対して研究を行った。
【0287】
粉末X線回折
本発明の式Xで示される化合物の薬学的に許容される塩の多形体は、特定の結晶形態を有し、粉末X線回折スペクトル(XPRD)において、特定の特徴的なピークを有する。実施形態の一つとして、本発明のいくつかの例では、XPRDスペクトルがEquinox3000S/N粉末X線回折分析装置で収集され、XPRDパラメータが表9に示される。
【0288】
【表9】
【0289】
2Thetaは2θであり、「」を単位とし、当該単位は「deg」で記載してもよい。
【0290】
粉末X線回折スペクトルにおいて、ピークの位置は2θ()で決定される。理解できるように、異なる装置、異なる条件または異なる装置と条件により、得られたデータがわずかに異なり、各ピークの位置および相対強度が変化する場合がある。当業者が理解すべきことは、XRPDスペクトルにより結晶形を判断する場合、低回折角でのピークおよびその強度、ピーク形状の完全性等の要素は比較的に参照上の重要性がある。本発明では、さらなる研究の結果、出願人は、上記の装置でXRPDスペクトルを測定する場合、高い回折角での2θ(°)値が37.4°および43.6°である二箇所の付近では、ブランク金属パンによる強いバックグラウンドピークが現れることがあると発見した。例えば、図4では、37°付近のピークはブランク金属パンによるピーク(例えば、表2における37.76°のピーク)と推測され、図6では、37°付近のピークおよび43°付近のピークはブランク金属パンによるピーク(例えば、表3における37.43°、43.60°のピーク)と推測され、図8では、37°付近のピークはブランク金属パンによるピーク(例えば、表4における37.42°のピーク)と推測され、図10では、37°付近のピークおよび43°付近のピークはブランク金属パンによるピーク(例えば、表5における37.40°、43.55°のピーク)と推測される。ピークの強度区分は、各位置のピークのおおよその大きさのみを反映する。本発明において、各結晶形の回折ピークを分析する場合、いずれも前記方法により得られたXRPDスペクトル中のピーク高さが最も高い回折ピークをベースピークとし、その相対強度を100%と定義し、I(例えば、本発明のいくつかの実施例において、遊離塩基結晶形IのXRPDスペクトル中の2θ()値が21.41であるピークをベースピークとし、遊離塩基結晶形IVのXRPDスペクトル中の2θ()値が16.46であるピークをベースピークとし、遊離塩基結晶形VのXRPDスペクトル中の2θ()値が14.35であるピークをベースピークとし、遊離塩基結晶形VIのXRPDスペクトル中の2θ()値が24.53であるピークをベースピークとし、遊離塩基結晶形VIIのXRPDスペクトル中の2θ()値が37.40であるピークをベースピークとし、塩酸塩結晶形IのXRPDスペクトル中の2θ()値が22.58であるピークをベースピークとし、硫酸塩結晶形IのXRPDスペクトル中の2θ()値が23.48であるピークをベースピークとし、臭化水素酸塩結晶形IのXRPDスペクトル中の2θ()値が23.51であるピークをベースピークとする)とし、その他の各ピークはそのピーク高さとベースピークの高さとの比をその相対強度I/Iとする。本発明において、各ピークの相対強度の区分の定義が表10に示される。
【0291】
【表10】
【0292】
示差走査熱量(DSC)
実施形態の一つとして、本発明のいくつかの実施例では、DSCスペクトルがDISCOVERY DSC25示差走査熱量装置で収集され、測定パラメータが表11に示される。
【0293】
【表11】
【0294】
熱重量分析(TGA)
実施形態の一つとして、本発明のいくつかの実施例では、TGAスペクトルがDISCOVERY TGA550熱重量分析装置で収集され、測定パラメータが表12に示される。
【0295】
【表12】
【0296】
赤外スペクトル(IR)分析
Agilent Cary 630 FTIR赤外分光光度計を使用し、固体臭化カリウム(KBr)錠剤法を使用して、測定を行う。
【0297】
理解できるように、上記の装置と同じ機能がある他のタイプの装置を使用する場合、または本発明と異なる測定条件を使用する場合、異なる数値を得ることがあるため、引用された数値は絶対的な数値とみなされるべきではない。
【0298】
当業者が理解できるように、装置の誤差または操作者の違いにより、結晶の物理的特性を特徴付けるために使用されるパラメータにはわずかな違いがある可能性があり、上記のパラメータは、本発明で提供される多形体を特徴付けるための補助のみに使用され、本発明の多形体に対する制限とみなされるべきではない。
【0299】
以下ではさらにいくつかの実施例を提供する。
【0300】
以下では、いくつかの実施例を参照して、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、本発明を説明するために使用され、本発明の範囲を制限するものではないことを理解すべきである。以下の例で詳細な条件を明示していない実験方法については、本明細書に記載されているガイドラインが優先されるが、当該分野の実験マニュアル、従来の条件に従うこともでき、当該分野で知られている他の実験方法を参照することもでき、またはメーカーが推奨する条件に従ってもできる。
【0301】
特に断りのない限り、本発明に係る百分率含有量は、ガス-ガス混合物なら体積百分率を、固相-固相混合物なら質量百分率wt%を、液相-液相混合物なら体積百分率%(v/v)を、固液混合物なら質量百分率wt%または固液百分率%(w/v)を指す。
【0302】
以下実施例において、50%エタノールとは、50%(v/v)のエタノール/水の混合溶媒を指す。
【0303】
試薬および装置
本発明において、化合物の構造および純度は、核磁気共鳴(H NMR)および、または液体クロマトグラフィー/質量分析(LC-MS)によって決定される。H NMR:BrukerAVANCE-400核磁気共鳴装置、内部基準物質はテトラメチルシラン(TMS)である。LC-MS:Agilent 1200 HPLC System/6140 MS液体クロマトグラフィー/質量分析装置(メーカー:アジレント・テクノロジー)、カラム:WatersX-Bridge、150mm×4.6mm、3.5μm。
【0304】
XPRD測定は表9に示されるパラメータを使用する。
【0305】
DSC測定は表11に示されるパラメータを使用する。
【0306】
本発明では、既知の出発原料は、当技術分野で既知の方法を使用して、もしくはそれに従って合成することができ、またはABCR GmbH&Co.KG,Acros Organics、Aldrich Chemical Company、韶遠化学科技(Accela ChemBio Inc)、および達瑞化学品などの会社から購入することができる。
【0307】
本明細書に使用されたように、DCMはジクロロメタンを示し、DMFはジメチルホルムアミドを示し、DMSOはジメチルスルホキシドを示し、THFはテトラヒドロフランを示し、EAは酢酸エチルを示し、PEは石油エーテルを示し、EtNはトリエチルアミンを示し、NHFはフッ化アンモニウムを示し、t-BuOHはtert-ブチルアルコールを示し、Pd(dppf)Clは[1,1′-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)を示し、CuIはヨウ化第一銅を示し、Pd(PPhClはビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドを示し、DPPAはジフェニルリン酸アジドを示し、DBUは1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エンを示す。
【0308】
本明細書に使用されたように、カプチゾール(Captisol)はスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンを示す。
【0309】
以下の実施例において、塩酸溶液、硫酸溶液および臭化水素酸溶液はいずれも水溶液を指す。
【0310】
中間体V1の調製
【化5】
【0311】
2-メチル-3-ブロモベンゾニトリル(15g)、ビス(ピナコラート)ジボロン(23.32g)、酢酸カリウム(15.02g)およびPd(dppf)Cl(2.80g)をDMSO(20mL)およびジオキサン(100mL)の混合溶液に溶かし、窒素ガス保護下、100℃で3.5h撹拌した。完全に反応した後、減圧で溶媒を蒸発乾固させ、固体生成物が得られ、カラムクロマトグラフィー(EA:PE=15%~40%、体積比)で分離し、化合物V1(21.05g)が得られた。MS(ESI):244.1[M+H]
【0312】
中間体V2の調製
【化6】
【0313】
ステップ1:6-(ヒドロキシメチル)ピコリン酸メチル(50g)をTHF(800mL)に溶かし、アルゴンガス保護下で臭化メチルマグネシウム(3.0M、398.82mL)に滴下し、温度を0℃~15℃に制御し、大量のガスが発生し、そして室温で一晩撹拌した。反応液を固体の氷にゆっくりと入れ、そして、塩化アンモニウム飽和溶液を入れ、DCM(300mL×10)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧で濃縮乾固し、シリカゲルカラムで分離精製し(EA:PE=0%~100%、体積比)、無色油状物である2-(6-(ヒドロキシメチル)ピリジン-2-イル)プロパン-2-オール(30g)が得られた。MS(ESI):168.1[M+H]
【0314】
ステップ2:化合物2-(6-(ヒドロキシメチル)ピリジン-2-イル)プロパン-2-オール(30g)をDCM(100mL)に溶かし、アルゴンガス保護下で、室温で撹拌しながらDPPA(54.31g)を入れ、そして氷浴条件下でDBU(40.17mL)をゆっくりと滴下し、滴下完了後、50℃に昇温し、一晩撹拌した。上記の反応液を100mLの水に入れ、DCM(200mL×2)、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧で濃縮乾固し、シリカゲルカラムで分離(EA:PE=0%~30%、体積比)精製し、化合物V2(30g)が得られた。MS(ESI):193[M+H]
【0315】
実施例1.式Xで示される化合物(即ち化合物X)の調製
【化7】
【0316】
ステップ1:化合物1-1(2,4,6-トリクロロ-5-フルオロピリミジン、40g)、トリイソプロピルシリルアセチレン(38.03g)をTHF(400mL)に溶かし、アルゴンガス保護下で0℃まで降温し、CuI(3.78g)およびPd(PPhCl(6.97g)をこの順で入れ、そしてEtN(60.17g、595.79mmol)をゆっくりと滴下した。滴下完了後、0℃で2時間撹拌し、室温に昇温し、6時間撹拌し続け、そして0℃まで降温し、NH/HO(アンモニア水溶液、120g、濃度80%)を滴下し、そして室温で一晩撹拌した。LC-MSで完全に反応したことを検出し、化合物1-2が得られた。MS(ESI):347[M+H]
【0317】
ステップ2:ステップ1で最終的に得られた反応液に大量の水を入れ、DCM(200mL×3)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧で濃縮し、大量の固体が析出し、撹拌しながら石油エーテル60mLを入れ、ろ過し、化合物1-3(31g)が得られ、残りの母液をシリカゲルカラムで分離精製し(DCM:PE=30%~80%、体積比)、化合物1-3(43g)が得られた。MS(ESI):328.1[M+H]
【0318】
ステップ3:化合物1-3(41g)および化合物V1(42.56g)をジオキサン(400mL)および水(60mL)の混合溶媒に溶かし、アルゴンガス保護下で、室温で撹拌しながらNaCO(26.51g)およびPd(dppf)Cl(4.57g)をこの順で入れ、そして100℃に昇温し、24時間撹拌した。反応液を氷水に注ぎ、DCM(300mL×2)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧で濃縮乾固し、シリカゲルカラムで分離精製し、化合物1-4(44g)が得られた。MS(ESI):409.2[M+H]
【0319】
ステップ4:化合物1-4(44g)をメタノール(400mL)に入れ、室温で撹拌しながら、NHF(47.60g)を入れ、アルゴンガス保護下で70℃に昇温し、8時間撹拌した。反応液を撹拌しながら大量の水を入れ、大量の固体が析出し、ろ過し、褐色の化合物1-5(27g)が得られた。MS(ESI):253.1[M+H]
【0320】
ステップ5:化合物1-5(27g)および中間体V2(22g)をTHF(200mL)およびt-BuOH(200mL)の混合溶媒に溶かし、アルゴンガス保護下、室温で撹拌し、CuSO・5HO(2.87g)の水溶液(200mLの水)、アスコルビン酸ナトリウム(4.56g)をこの順で入れ、そして、60℃に昇温し、24時間撹拌した。反応液を水に注ぎ、飽和炭酸ナトリウムを入れ、DCM(300mL×3)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、シリカゲルカラムで分離精製し(DCM(2%のトリエチルアミン含有):EA=0~10%、体積比)、30gの化合物Xが得られた。H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):8.78(s,1H),7.92(d,J=7.8Hz,1H),7.83(dd,J=7.7,1.2Hz,1H),7.76(t,J=7.8Hz,1H),7.60-7.48(m,3H),7.45(t,J=7.5Hz,1H),7.10(d,J=6.9Hz,1H),5.77(s,2H),5.18(s,1H),2.63(s,3H),1.34(s,6H)。MS(ESI):445.2[M+H]。得られた固体化合物Xに対してXRPD測定を行い、その粉末X線回折スペクトルに特徴的なピークがないため、この例で得られた化合物Xはアモルファスの形であった。
【0321】
実施例2.遊離塩基結晶形Iの調製
2.1.方法一
約20mgの化合物X(アモルファス)をガラスバイアルに量り取り、適量のイソプロパノール、エタノール、酢酸エチルまたは50%エタノールを添加し、50℃前後の条件下で透明になるまで溶解するように加熱し、ガラスバイアルを取り出し、室温で降温し、室温まで降温した後、さらに冷蔵庫に入れ、0℃~4℃まで降温し、固体が析出した後、遠心分離し、上清を捨て、固体をオーブンで乾燥し、XPRD測定を行った。得られた固体生成物のXPRDスペクトルを図1に示し、本発明では遊離塩基結晶形Iと定義した。遊離塩基結晶形IのDSCスペクトルを図2に示し、そのうち、吸熱ピークは190.36℃であった。遊離塩基結晶形IのDVSスペクトルを図3に示し、そのうち、遊離塩基結晶形Iは、25℃、相対湿度0%~80%RHの変化過程中に、吸着による重量変化は0.2%未満であり、吸湿性がほとんどなかった。
【0322】
2.2.方法二
約30gの化合物X(アモルファス)をガラスバイアルに量り取り、150Mlのアセトニトリルまたはエタノールを入れ、還流まで加熱した。室温まで降温し、固体が析出し、ろ過し、固体生成物が得られた。得られた固体に対してXPRD測定を行い、遊離塩基結晶形Iが得られた。
【0323】
2.3.方法三
約20mgの化合物X(アモルファス)をガラスバイアルに量り取り、適量の50%エタノールを入れ、透明になるまで溶解し、溶液を室温下に置き、ゆっくりと揮発させ、揮発により得られた固体に対して、XPRD測定を行い、遊離塩基結晶形Iが得られた。
【0324】
2.4.方法四
20mgの化合物X(アモルファス)をガラスバイアルに量り取り、ジメチルスルホキシドまたはN,N-ジメチルアセトアミドを入れ、透明になるまで溶解し、溶液に逆溶媒のn-ヘプタンを入れ、固体粒子が析出した。得られた固体に対してXPRD測定を行い、遊離塩基結晶形Iが得られた。
【0325】
実施例3.遊離塩基結晶形IVの調製
3.1.方法一
20mgの化合物X(アモルファス)をガラスバイアルに量り取り、適量のアセトンを入れ、透明になるまで溶解し、溶液を室温下に置き、ゆっくりと揮発させ、固体が得られた。得られた固体生成物のXPRDスペクトルを図4に示し、本発明では遊離塩基結晶形IVと定義した。遊離塩基結晶形IVの示差走査熱量分析スペクトルは図5に示し、遊離塩基結晶形IVは156.16℃に発熱ピークを有し、189.64℃に吸熱ピークを有し(吸熱ピークの位置は遊離塩基結晶形Iに似ている)、これは、遊離塩基結晶形IVが準安定結晶形であり、昇温の過程中に遊離塩基結晶形Iに変化する可能性があることを示している。
【0326】
3.2.方法二
20mgの化合物X(アモルファス)をガラスバイアルに量り取り、適量のエタノールまたはアセトニトリルを入れ、透明になるまで溶解し、溶解後に逆溶媒のn-ヘプタンを添加し、固体粒子が析出し、得られた固体に対してXPRD測定を行い、遊離塩基結晶形IVであると判明した。
【0327】
実施例4.遊離塩基結晶形Vの調製
約20mgの化合物X(アモルファス)をガラスバイアルに量り取り、適量のエタノールを入れ、透明になるまで溶解し、溶液を室温下に置き、ゆっくりと揮発させ、揮発により得られた固体に対して、XPRD測定を行い、得られた固体生成物のXPRDスペクトルを図6に示し、本発明では遊離塩基結晶形Vと定義した。遊離塩基結晶形VのDSCスペクトルを図7に示し、遊離塩基結晶形Vはそれぞれ128.28℃に一つの発熱ピークを有し(結晶が完全に乾燥しておらず、結晶水が残っている可能性がある)、164.51℃に一つの結晶発熱ピークを有し、189.94℃に吸熱ピークを有し(吸熱ピークの位置は遊離塩基結晶形Iに似ている)、これは、遊離塩基結晶形Vが準安定結晶形であり、昇温の過程中に遊離塩基結晶形Iに変化する可能性があることを示している。
【0328】
実施例.5遊離塩基結晶形VIの調製
それぞれ約20mgの化合物X(アモルファス)をガラスバイアルに量り取り、それぞれアセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドまたはN,N-ジメチルアセトアミドを入れ、透明になるまで溶解し、溶液を室温下に置き、ゆっくりと揮発させ、揮発により得られた固体を採取し、XPRD測定を行った。得られた固体生成物のXPRDスペクトルを図8に示し、本発明では、遊離塩基結晶形VIと定義した。遊離塩基結晶形VIのDSCスペクトルを図9に示し、遊離塩基結晶形VIは159.40℃に一つの結晶発熱ピークを有し、189.33℃に吸熱ピークを有し(吸熱ピークの位置は遊離塩基結晶形Iに似ている)、これは、遊離塩基結晶形VIが準安定結晶形であり、昇温の過程中に遊離塩基結晶形Iに変化する可能性があることを示している。
【0329】
実施例6.遊離塩基結晶形VIIの調製
20mgの化合物X(アモルファス)をガラスバイアルに量り取り、メタノールを入れ、透明になるまで溶解し、逆溶媒のn-ヘプタンを入れ、固体粒子が析出した。得られた固体に対してXPRD測定を行った。得られた固体生成物の粉末X線回折スペクトルを図10に示し、本発明では遊離塩基結晶形VIIと定義した。遊離塩基結晶形VIIの示差走査熱量分析スペクトルを図11に示し、遊離塩基結晶形VIIは189.36℃に吸熱ピークを有し(吸熱ピークの位置は遊離塩基結晶形Iに似ている)、これは、遊離塩基結晶形VIIは準安定結晶形であり、昇温の過程中に遊離塩基結晶形Iに変化する可能性があることを示している。
【0330】
実施例7.懸濁・振とう
約20mgの化合物X(遊離塩基結晶形I)をガラスバイアルに量り取り、各実験群に1Mlの以下の表の溶媒を入れ、ガラスバイアルを室温下で24h懸濁・振とうした後、遠心し、上清を捨て、固体をオーブンで乾燥し、XPRD測定を行った。各実験群の実験結果を表13に示し、遊離塩基結晶形Iは、示された7種類の溶媒中に懸濁・振とうした後で結晶形がいずれも変化しなかった。
【0331】
【表13】
【0332】
実施例8.結晶形の競合実験
化合物Xの最も安定な結晶形を測定するために、結晶形の競合実験を行った。それぞれ10mgの遊離塩基結晶形I、遊離塩基結晶形IV、遊離塩基結晶形V、遊離塩基結晶形VI、遊離塩基結晶形VIIを量り取り、充分に混合し、20mgの混合後の結晶形をガラスバイアルに量り取り、それぞれ1Mlの表14の溶媒を入れ、室温下で24h懸濁・振とうした後、遠心し、沈殿を回収し、乾燥した後にXPRD測定を行った。XPRDの結果によると、混合後の結晶形がそれぞれ異なる溶媒中で24h混合・振とうした後、いずれも遊離塩基結晶形Iに変化したため、遊離塩基結晶形Iが安定な結晶形であると判断した。
【0333】
【表14】
【0334】
実施例9.遊離塩基結晶形Iの安定性実験
それぞれ約20mgの遊離塩基結晶形Iをガラスバイアルに量り取り、加速条件(40℃、75%RH)下で蓋を開けて放置し、それぞれ、1週間、2週間、1か月、2か月、および4か月後にサンプルを取り、XPRD測定を行った。図12から分かるように、遊離塩基結晶形Iは物理的安定性が良好で、異なるサンプリング時間で得られたXPRDスペクトルは強一貫性があった。
【0335】
実施例10.塩酸塩結晶形I
10.1.方法一
20mgの化合物X(アモルファス)を量り取り、酸と化合物Xのモル比が1.2:1になるように1Mの塩酸溶液を入れ、そして2Mlのアセトンまたはイソプロパノールを入れ、加熱と超音波により透明になるまで溶解し、50℃に維持して4h反応させ、そしてゆっくりと降温し、固体を析出させ、遠心し、固体を回収した。得られた固体は溶媒を除去した後にXRPD測定を行い、その粉末X線回折スペクトルを図13に示し、本発明では塩酸塩結晶形Iと定義した。塩酸塩結晶形Iの示差走査熱量分析スペクトルを図14に示し、225.37℃に吸熱ピークを有する。
【0336】
10.2.方法二
20mgの化合物X(アモルファス)を量り取り、酸と化合物Xのモル比が1.2:1になるように1Mの塩酸溶液を入れ、そして2Mlのアセトンまたはイソプロパノールを入れ、加熱と超音波により清澄させ、50℃に維持して4h反応させ、室温まで降温し、逆溶媒のn-ヘプタンを入れ、固体を析出させ、遠心し、固体を回収し、得られた固体の溶媒を除去し、塩酸塩結晶形Iが得られた。
【0337】
実施例11.硫酸塩結晶形I
11.1.方法一
20mgの化合物Xを量り取り、酸と化合物Xのモル比が0.6:1になるように0.5Mの硫酸溶液を入れ、そして2Mlのイソプロパノール、エタノールまたはアセトンを入れ、加熱と超音波により清澄させ、50℃に維持して4h反応させた後、ゆっくりと降温し、固体を析出させ、遠心し、固体を回収した。得られた固体は溶媒を除去した後にXRPD測定を行い、その粉末X線回折スペクトルを図15に示し、本発明では硫酸塩結晶形Iと定義した。硫酸塩結晶形Iの示差走査熱量分析スペクトルを図16に示し、硫酸塩結晶形Iは205.20℃に吸熱ピークを有する。
【0338】
11.2.方法二
20mgの化合物Xを量り取り、酸と化合物Xのモル比が0.6:1になるように0.5Mの硫酸溶液を入れ、そして2Mlの酢酸エチルを入れ、加熱と超音波により清澄させ、50℃に維持して4h反応させ、室温まで降温し、逆溶媒のn-ヘプタンを入れることにより、透明な溶液から硫酸塩結晶形Iが得られた。
【0339】
11.3.方法三
300mgの化合物X(アモルファス)を小さいビーカーに量り取り、5Mlのアセトンを入れ、超音波により溶解させた。50℃の条件下で、撹拌しながら0.5Mの硫酸溶液900Mlをゆっくりと滴下し、温度を維持して4h反応させ、溶液は濁った。遠心し、上清を捨て、固体を分離し、アセトンで3~5回洗浄した。40℃条件下で一晩真空乾燥し、硫酸塩結晶形Iが得られた。
【0340】
実施例12.臭化水素酸塩結晶形I
20mgの化合物Xを量り取り、酸と化合物Xのモル比が1.2:1になるように1mol/Lの臭化水素酸を入れ、そして1Ml~3Mlのイソプロパノール、エタノール、アセトンまたは酢酸エチルを入れ、加熱と超音波により清澄させ、50℃に維持して4h反応させた後、ゆっくりと降温し、固体を析出させ、遠心し、固体を回収した。得られた固体は溶媒を除去した後にXRPD測定を行った。その粉末X線回折スペクトルを図17に示し、本発明では臭化水素酸塩結晶形Iと定義した。
【0341】
実施例13.塩酸塩結晶形Iおよび硫酸塩結晶形Iの安定性実験
それぞれ適量の塩酸塩結晶形Iおよび硫酸塩結晶形Iサンプルを量り取り、加速(40℃/75%RH)、蓋を開けた条件下で放置し、および高温(60℃)条件下、密閉で放置し、9日間、14日間および28日間後にそれぞれXPRD測定を行った。結果は、図18及び図19に示す。図18および図19から分かるように、塩酸塩結晶形Iおよび硫酸塩結晶形Iは良好な結晶形安定性を有し、図18および図19では、異なるサンプリング時間で得られたXPRDスペクトルはいずれも強一貫性があった。
【0342】
生物測定
以下の試験例において、使用されたサンプルは化合物Xであり、さらに対照品として化合物D1を使用した。
【0343】
試験例1:A2A受容体およびA2B受容体に対する阻害活性
CHO-K1/ADORA2A/Gα15(GenScript、M00246)およびCHO-K1/ADORA2B/Gα15(GenScript、M00329)細胞をHam’sF-12(Gibco、31765092)培地で培養した。培地条件は10%FBS、200μg/Mlゼオシン(ブレオマイシン)および100μg/MlHygromycinB(ハイグロマイシンB)であり、または10%FBS、400μg/MlG418および100μg/MlハイグロマイシンBであり、培養条件の詳細は対応の説明書を参照する。選別ステップは以下のとおりである。
【0344】
1.無血清培地を使用して細胞密度を6×10個/Mlに調整した。
【0345】
2.384ウェルプレート(Greiner Bio-One、784075)の各ウェルにそれぞれ5Mlの細胞液、2.5MlのNECA(Sigma、119140-10MG)および2.5Mlの化合物溶液を入れ、NECAの最終濃度は50Nm(CHO-K1/ADORA2A)または10Nm(CHO-K1/ADORA2B)であり、化合物の最終濃度は開始濃度3μMを三倍希釈して得られたものであった。
【0346】
3.37℃のインキュベーターに入れ、30分間静置、培養した。
【0347】
4.5MlのCamp-dおよび5MlのCamp-ab(Cisbio、62AM4PEB)をこの順で入れた。
【0348】
5.384ウェルプレートを暗所に室温で1時間放置した。
【0349】
6.プレートを読み取り(Victor X5、PerkinElmer)、データに対してXlfit非線形回帰分析を行い、化合物のIC50を計算した。結果は表15に示した。
【0350】
【表15】
【0351】
表15から分かるように、本発明化合物XはA2A受容体およびA2B受容体に対していずれも高い阻害活性を有する。
【0352】
試験例2:A2A受容体およびA2B受容体に対する阻害活性
CHO-K1/ADORA2A/Gα15(GenScript、M00246)およびCHO-K1/ADORA2B/Gα15(GenScript、M00329)細胞をHam’s F-12(Gibco、31765092)培地で培養した。培地条件は10%FBS、200μg/Mlゼオシンおよび100μg/MlハイグロマイシンBであり、または10%FBS、400μg/MlG418および100μg/MlハイグロマイシンBであり、培養条件の詳細は対応の説明書を参照する。選別ステップは以下のとおりである。
【0353】
1.無血清培地を使用して細胞密度を6×10個/Mlに調整した。
【0354】
2.384ウェルプレート(Greiner Bio-One、784075)の各ウェルにそれぞれ5μLの細胞液、2.5μLのNECA(Sigma、119140-10MG)および2.5μLの化合物溶液を入れ、NECAの最終濃度は1μM(CHO-K1/ADORA2A)または0.1μM(CHO-K1/ADORA2B)であり、化合物の最終濃度は開始濃度3μMを三倍希釈して得られたものであった。
【0355】
3.37℃のインキュベーターに入れ、30分間静置、培養した。
【0356】
4.5μLのcAMP-dおよび5μLのcAMP-ab(Cisbio、62AM4PEB)をこの順で入れた。
【0357】
5.384ウェルプレートを暗所に室温で1時間放置した。
【0358】
6.プレートを読み取り(Victor X5、PerkinElmer)、データに対してXLfit非線形回帰分析を行い、化合物のIC50を計算した。結果は表16に示した。
【0359】
【表16】
【0360】
CAS号が2239273-34-6である化合物D1の構造を以下に示した。サプライヤー:蘇州楚凱薬業有限公司、バッチ番号:2009010AHP07であった。
【0361】
【化8】
【0362】
試験例3:生体内薬物動態試験
LC/MS/MS法により、マウスにそれぞれ静脈内注射投与および強制経口投与で本発明の化合物Xを投与した後、異なる時間の血漿中の薬物濃度を測定し、本発明の化合物Xのマウス生体内での薬物動態挙動を研究し、その薬物動態の特徴を評価した。
【0363】
試験案:
試験動物:健康な成年雄性ICRマウス(体重25g~40g、12匹、静脈内注射群は水と餌を自由に摂取し、強制経口投与群は一晩絶食、投与4時間後は水と餌を自由に摂取する)は北京維通利華実験動物技術有限公司から提供された。
【0364】
投与方法と投与量:投与前に実験要求を満たす動物を選択し、重量を測定してマークを付ける。ICRマウスに対して尾静脈投与(2mg/kg、5%DMSO、pH4.5、20%Captisol)および強制経口投与(10mg/kg、5%DMSO、pH4.5、20%Captisol)を行った。
【0365】
採血:採血前にマウスを拘束し、投与された各マウスから所定の時点で(静脈内投与:投与後のそれぞれ0.083時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、7.5時間および24時間後の合計9時点で採血し、強制経口投与:投与後のそれぞれ0.083時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、7.5時間、および24時間後の合計9時点で採血する)、頸静脈から約100μLの血液を採取した。予めK2EDTAを加えた1.5mL試験管に血液を移し、4分間遠心(8000rpm、4℃)して、血漿を分離する全工程を採血後15分間以内に完了した。すべてのサンプルは分析まで-20℃の冷蔵庫に保管する必要があった。LC/MS/MS法で薬物濃度を測定した。
【0366】
本発明の化合物Xの静脈内投与方法でのマウス生体内の薬物動態パラメータを表17に示した。
【0367】
【表17】
【0368】
本発明の化合物Xの強制経口投与方法でのマウス生体内の薬物動態パラメータを表18に示した。
【0369】
【表18】
【0370】
試験例4:本発明化合物Xの生体内薬効実験
実験案:本試験例は、以下の内容を考察した。本発明の化合物Xを皮下にマウス結腸がん細胞株MC38(#22)-hpd-L1を移植した腫瘍マウスに、経口投与で投与した後、結腸がんMC38(#22)-hpd-L1腫瘍担持マウスにおける化合物Xの生体内薬効を測定した。
【0371】
実験材料:C57BL/6miceマウス(雌性);マウス結腸がんMC38(#22)-hpd-L1細胞(上海交通大学細胞庫)は、生体外で単層培養し、培養条件は10%牛胎児血清を含むRPMI-1640培地を使用し、37℃、5%COのインキュベーターで培養した。膵臓酵素-EDTAを用いて一般的な消化処理と継代を行った。細胞が指数関数的増殖期にあり、飽和度が80%~90%になった場合、細胞を回収し、計数した。
【0372】
化合物の調製:化合物を量り取り、溶媒(40%captisolの酢酸緩衝液、pH3.8)に加え、10mg/mLのサンプルを調製した。75μLのテセントリク溶液(60mg/mL)に8.925mLのリン酸塩緩衝液(PBS)を入れ、0.5mg/mLのリン酸溶液(リン酸塩緩衝液)を調製した。
【0373】
実験操作:5×10個細胞/mLの密度で細胞をリン酸塩緩衝液に再懸濁した。0.1mLのPBS(5×10個のMC38(#22)-hpd-L1細胞を含む)を各マウスの右背中に皮下接種し、接種当日でマウスの体重に応じて各群10匹ずつランダムに群に分け、投与を開始し、毎日2回投与し、22日間続けた。実験期間を通して、毎日重量を計量し、動物の健康を監視した。腫瘍の直径をノギスで毎週に二回測定した。
【0374】
腫瘍体積Vの計算公式は:V=0.5×a×b、aおよびbはそれぞれ腫瘍の長径および短径を表す。
【0375】
化合物の抗腫瘍効果は、相対腫瘍増殖率T/C(%)によって評価した。相対腫瘍増殖率T/C(%)=Vt/Vc×100%(Vt:治療群の平均腫瘍体積;Vc:陰性対照群の平均腫瘍体積)。VtとVcは同じ日のデータを使用した。結果は表19に示した。
【0376】
【表19】
【0377】
本発明で言及されたすべての文献は、個々の文献が単独に参考として引用されたように、本発明に参考として引用された。本発明の目的または技術案と矛盾しない限り、本発明に係る引用文献は、あらゆる目的のためにその全体が引用された。本発明において引用文献を引用する場合、引用文献における関連する技術的特徴、用語、名詞、語句などの定義も引用する。本発明において引用文献を引用する場合、引用された関連する技術的特徴の例、好ましい形態も、実施可能な範囲でのみ参考として本発明に組み込むことができる。理解すべきことは、引用された内容が本発明の記載と矛盾する場合、本発明を基準とするか、適宜に本発明の記載により訂正する。
【0378】
上述の実施形態および実施例の技術的特徴は、任意に組み合わせることができる。説明を簡略化するために、上述の実施形態および実施例の各技術的特徴のすべての可能な組み合わせを説明することはしないが、技術的特徴の組み合わせに矛盾がない限り、それらは本明細書に記載の範囲内にあるとみなされるべきである。
【0379】
上述の実施例は、本発明を詳細に理解するために本発明のいくつかの実施形態を説明しただけであり、本発明の保護範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。指摘すべきことは、当業者にとって、本発明の構想から逸脱することなく、いくつかの修正および改良を行うことができ、これらはすべて本発明の保護範囲に含まれる。また、理解すべきことは、本発明の上記の記述内容を読んだ後、当業者は本発明に様々な変更または修正を加えることができ、得られる同等の形態も本発明の保護範囲に含まれる。さらに、理解すべきことは、当業者が本発明で提供される技術案に基づき、論理的分析、推理、または有限な試験を通じて得られる技術案はすべて、本発明に添付された特許請求の範囲の保護範囲内にある。したがって、本発明特許の保護範囲は、添付の特許請求の範囲の内容を基準とし、明細書および図面は、特許請求の範囲の内容を解釈するために使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【手続補正書】
【提出日】2024-03-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Xで示される化合物の多形体または前記式Xで示される化合物の薬学的に許容される塩の多形体であって、
【化1】


前記薬学的に許容される塩は、無機塩である、多形体。
【請求項2】
前記薬学的に許容される塩は、塩酸、硫酸、および臭化水素酸からなる群から選択されるいずれか一種である、請求項1に記載の多形体。
【請求項3】
前記式Xで示される化合物の多形体は、
粉末X線回折スペクトルが18.08±0.2、21.41±0.2および24.83±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する前記式Xで示される化合物の遊離塩基結晶形Iと、
粉末X線回折スペクトルが13.04±0.2、15.80±0.2、16.46±0.2および23.89±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する前記式Xで示される化合物の遊離塩基結晶形IVと、
粉末X線回折スペクトルが6.17±0.2、9.37±0.2、10.39±0.2、11.65±0.2、14.35±0.2、15.74±0.2および17.21±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する前記式Xで示される化合物の遊離塩基結晶形Vと、
粉末X線回折スペクトルが12.55±0.2、14.86±0.2、16.15±0.2、17.69±0.2、21.08±0.2、21.58±0.2、24.53±0.2および25.01±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する前記式Xで示される化合物の遊離塩基結晶形VIと、
粉末X線回折スペクトルが14.92±0.2、16.13±0.2、17.59±0.2、20.87±0.2、21.20±0.2、21.71±0.2、24.12±0.2、24.62±0.2および25.12±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する前記式Xで示される化合物の遊離塩基結晶形VIIと、
からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項1に記載の多形体。
【請求項4】
前記式Xで示される化合物の多形体は、
粉末X線回折スペクトルが12.90±0.2、15.26±0.2、16.47±0.2、17.81±0.2、19.57±0.2、22.01±0.2および25.43±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記遊離塩基結晶形Iと、
粉末X線回折スペクトルが6.32±0.2、9.08±0.2、9.58±0.2、14.12±0.2、20.14±0.2、20.59±0.2および27.53±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記遊離塩基結晶形IVと、
粉末X線回折スペクトルが21.65±0.2、22.31±0.2、24.55±0.2、24.86±0.2、25.70±0.2、26.08±0.2および27.31±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記遊離塩基結晶形Vと、
粉末X線回折スペクトルが9.04±0.2、9.68±0.2、13.37±0.2、18.53±0.2、19.19±0.2、19.64±0.2、19.97±0.2、23.69±0.2、27.55±0.2、30.34±0.2および31.46±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記遊離塩基結晶形VIと、
粉末X線回折スペクトルが6.17±0.2、9.07±0.2、9.67±0.2、10.37±0.2、12.61±0.2、14.39±0.2、19.21±0.2、19.73±0.2および20.05±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記遊離塩基結晶形VIIと、
からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項3に記載の多形体。
【請求項5】
前記式Xで示される化合物の多形体は、
粉末X線回折スペクトルが9.50±0.2、10.13±0.2、12.53±0.2、18.89±0.2、19.94±0.2および20.33±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記遊離塩基結晶形Iと、
粉末X線回折スペクトルが7.64±0.2および8.34±0.2からなる群から選択される1個または2個の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記遊離塩基結晶形IVと、
粉末X線回折スペクトルが6.91±0.2、8.08±0.2、8.70±0.2、12.77±0.2および13.25±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記遊離塩基結晶形Vと、
粉末X線回折スペクトルが7.24±0.2および12.07±0.2からなる群から選択される1個または2個の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記遊離塩基結晶形VIと、
粉末X線回折スペクトルが27.25±0.2、27.39±0.2、27.76±0.2、28.97±0.2、30.36±0.2、31.25±0.2および31.67±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記遊離塩基結晶形VIIと、
からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項4に記載の多形体。
【請求項6】
前記遊離塩基結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは基本的に図1で表され、
前記遊離塩基結晶形IVの粉末X線回折スペクトルは基本的に図4で表され、
前記遊離塩基結晶形Vの粉末X線回折スペクトルは基本的に図6で表され、
前記遊離塩基結晶形VIの粉末X線回折スペクトルは基本的に図8で表され、
前記遊離塩基結晶形VIIの粉末X線回折スペクトルは基本的に図10で表される、
請求項に記載の多形体。
【請求項7】
Cu-Kα線を使用して、各粉末X線回折スペクトルを得る、請求項に記載の多形体。
【請求項8】
前記遊離塩基結晶形Iの示差走査熱量曲線は190.15±3℃に吸熱ピークを有し、
前記遊離塩基結晶形IVの示差走査熱量曲線は189.64±3℃に吸熱ピークを有し、
前記遊離塩基結晶形Vの示差走査熱量曲線は189.94±3℃に吸熱ピークを有し、
前記遊離塩基結晶形VIの示差走査熱量曲線は189.33±3℃に吸熱ピークを有し、
前記遊離塩基結晶形VIIの示差走査熱量曲線は189.36±3℃に吸熱ピークを有する、
請求項に記載の多形体。
【請求項9】
前記遊離塩基結晶形Iは、
(1)TGA-DSCスペクトルが基本的に図2で表されることと、
(2)DVSスペクトルが基本的に図3で表されることと、
(3)赤外スペクトルが基本的に図20で表されることと、
からなる群から選択される一つまたは複数の特徴を有する、請求項に記載の多形体。
【請求項10】
前記式Xで示される化合物の薬学的に許容される塩の多形体は、
粉末X線回折スペクトルが13.12±0.2、13.91±0.2、17.62±0.2、22.58±0.2および26.51±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する前記式Xで示される化合物の塩酸塩結晶形Iと、
粉末X線回折スペクトルが15.13±0.2、19.64±0.2および23.48±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する前記式Xで示される化合物の硫酸塩結晶形Iと、
粉末X線回折スペクトルが16.70±0.2、23.51±0.2および23.96±0.2の回折角2θ(°)にピークを有する前記式Xで示される化合物の臭化水素酸塩結晶形Iと、
からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項1に記載の多形体。
【請求項11】
前記式Xで示される化合物の薬学的に許容される塩の多形体は、
粉末X線回折スペクトルが8.39±0.2、10.18±0.2、15.25±0.2、18.64±0.2、20.96±0.2、25.52±0.2、27.01±0.2および29.48±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記塩酸塩結晶形Iと、
粉末X線回折スペクトルが11.62±0.2、12.77±0.2、13.13±0.2、22.25±0.2、24.80±0.2および26.09±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記硫酸塩結晶形Iと、
粉末X線回折スペクトルが11.84±0.2、12.79±0.2、19.34±0.2、20.23±0.2、23.09±0.2、24.34±0.2、25.37±0.2、26.21±0.2、26.99±0.2、28.04±0.2、33.22±0.2および35.96±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記臭化水素酸塩結晶形Iと、
からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項10に記載の多形体。
【請求項12】
前記式Xで示される化合物の薬学的に許容される塩の多形体は、
粉末X線回折スペクトルが11.44±0.2、12.63±0.2、17.27±0.2、18.97±0.2、20.12±0.2、21.61±0.2、23.29±0.2および29.15±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記塩酸塩結晶形Iと、
粉末X線回折スペクトルが12.19±0.2、16.45±0.2および21.71±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記硫酸塩結晶形Iと、
粉末X線回折スペクトルが11.48±0.2、13.64±0.2、15.46±0.2、15.96±0.2、17.66±0.2、18.71±0.2、20.99±0.2、21.51±0.2、31.60±0.2、31.90±0.2、35.52±0.2、36.98±0.2、37.81±0.2、39.29±0.2および39.73±0.2からなる群から選択される2個または2個超の回折角2θ(°)でのピークをさらに含む前記臭化水素酸塩結晶形Iと、
からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項11に記載の多形体。
【請求項13】
前記塩酸塩結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは基本的に図13で表され、
前記硫酸塩結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは基本的に図15で表され、
前記臭化水素酸塩結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは基本的に図17で表される、
請求項10に記載の多形体。
【請求項14】
Cu-Kα線を使用して、各粉末X線回折スペクトルを得る、請求項10に記載の多形体。
【請求項15】
前記塩酸塩結晶形Iの示差走査熱量曲線は225.37±3℃に吸熱ピークを有し、
前記硫酸塩結晶形Iの示差走査熱量曲線は205.20±3℃に吸熱ピークを有する、請求項10に記載の多形体。
【請求項16】
式Xで示される化合物の多形体の調製方法であって、前記式Xで示される化合物の構造は式Xに示され、
【化2】

前記調製方法は、
溶媒の存在下で、前記式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、溶液を形成するステップと、
前記溶液に対して結晶化処理を行い、前記式Xで示される化合物の多形体を調製するステップと、
を含む、多形体の調製方法。
【請求項17】
前記式Xで示される化合物の多形体は遊離塩基結晶形Iである、請求項16に記載の多形体の調製方法。
【請求項18】
前記溶媒は、アセトニトリル、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、50%(v/v)エタノール/水の混合溶媒、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフランおよびそれらの混合物から選択される、請求項16に記載の多形体の調製方法。
【請求項19】
(Ia)前記溶媒はアセトニトリル、イソプロパノール、エタノール、酢酸エチル、または50%(v/v)エタノール/水の混合溶媒であり、前記結晶化処理の方法は降温による結晶化であることと、
(Ib)前記溶媒は50%(v/v)エタノール/水の混合溶媒であり、前記結晶化処理の方法は揮発による結晶化であることと、
(Ic)前記溶媒はジメチルスルホキシドまたはN,N-ジメチルアセトアミドであり、前記結晶化処理の方法は逆溶媒による結晶化であることと、
からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項16に記載の多形体の調製方法
【請求項20】
イソプロパノール、エタノール、酢酸エチルまたは50%(v/v)エタノール/水の混合溶媒に、50±5℃で前記式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、前記溶液を形成するステップと、
前記溶液を0℃~4℃まで降温し、結晶を析出させるステップと、
を含む、請求項16に記載の多形体の調製方法。
【請求項21】
アセトニトリルに、75±5℃で前記式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、前記溶液を形成するステップ、またはエタノールに、70±5℃で前記式Xで示される化合物を透明になるまで溶解し、前記溶液を形成するステップと、
前記溶液を室温まで降温し、結晶を析出させるステップと、
を含む、請求項16に記載の多形体の調製方法。
【請求項22】
(a)請求項1~15のいずれか一項に記載の多形体、または請求項16~21のいずれか一項に記載の調製方法により調製された多形体と、
(b)薬学的に許容される担体と、
を含む、医薬組成物。
【請求項23】
アデノシンA2A受容体によって媒介され、アデノシンA2B受容体によって媒介され、またはアデノシンA2A受容体とアデノシンA2B受容体の両方によって媒介される腫瘍または免疫関連疾患を予防および/または治療する薬物の調製における、請求項1~15のいずれか一項に記載の多形体、または請求項16~21のいずれか一項に記載の調製方法により調製された多形体の使用。
【請求項24】
アデノシンA2A受容体によって媒介され、アデノシンA2B受容体によって媒介され、またはアデノシンA2A受容体とアデノシンA2B受容体の両方によって媒介される腫瘍または免疫関連疾患を予防および/または治療する薬物の調製における、請求項22に記載の医薬組成物の使用。
【請求項25】
式Xで示される化合物はA2A/A2B受容体拮抗薬として使用される、請求項23に記載の使用。
【国際調査報告】