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特表2024-531729pH測定機器のための較正用基準要素、較正用基準システム、較正用基準要素のための保持具、およびpH測定機器の較正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】pH測定機器のための較正用基準要素、較正用基準システム、較正用基準要素のための保持具、およびpH測定機器の較正方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/26 20060101AFI20240822BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
G01N27/26 381D
G01N27/26 381A
G01N27/416 353Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516480
(86)(22)【出願日】2022-09-13
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 CH2022050025
(87)【国際公開番号】W WO2023039683
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】CH070284/2021
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599082218
【氏名又は名称】メトラー-トレド ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】リュティ,シィルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】クルト,パトリック
(57)【要約】
pH測定機器のための較正用基準要素(10)は、規定のpH値を有する基準液(17)と、基準液を封入しているチューブ袋(1)とを含む。チューブ袋は、多くとも3箇所の封止縁部(11、12、13)に沿って封止されている箔フィルムから成る。較正用基準システムは、pH値の異なる基準液を有する少なくとも2つのこのような較正用基準要素(10)を含む。較正用基準要素のための保持具(2)は、基準液を較正のために楽に使えるよう、較正用基準要素を立てることを可能にする。これに相応して較正セットは、保持具と、較正用基準要素(10)または較正用基準システムとを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
規定のpH値を有する基準液(17)と、チューブ袋(1)とを含む、pH測定機器のための較正用基準要素(10)であって、前記基準液が前記チューブ袋に封入されており、前記チューブ袋が、箔フィルムからなり、かつ1箇所または複数箇所の封止縁部(11、12、13)に沿って封止されており、前記封止縁部の数が多くとも3つであり、前記チューブ袋が少なくとも部分的に前記基準液で充填されている、較正用基準要素(10)。
【請求項2】
前記チューブ袋(1)が部分的にのみ前記基準液(17)で充填されており、残留体積が空気または保護ガスで充填されている、請求項1に記載の較正用基準要素。
【請求項3】
前記チューブ袋(1)が2つの向かい合う端面にそれぞれ1つの封止縁部(11、12)を有し、前記封止縁部の各々が、前記チューブ袋の長手の延びを横切って走っていて、それぞれ前記端面側封止縁部の縦縁(111、121)によって画定されている長手の延びを有し、前記チューブ袋が、周方向には継ぎ目がないか、または1つの長手側封止縁部(13)を有し、前記長手側封止縁部(13)が、前記端面側封止縁部の前記縦縁から周方向にずれているか、または前記端面側封止縁部(11、12)の隣接する前記縦縁(111、121)から離れるように周方向に折り畳まれている、請求項1または2に記載の較正用基準要素。
【請求項4】
前記チューブ袋(1)が、少なくとも2つの材料層を有する箔フィルムからなり、前記チューブ袋の内側にある層が第1の素材からなり、前記チューブ袋の外側にある層が第2の素材からなる、請求項1から3のいずれか一項に記載の較正用基準要素。
【請求項5】
前記チューブ袋(1)が、少なくとも2つの材料層を有する箔フィルムからなり、前記チューブ袋の内側にある層と前記チューブ袋の外側にある層との間に、金属箔フィルム、とりわけアルミニウム箔フィルムからできた中間層が配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の較正用基準要素。
【請求項6】
少なくとも2つの請求項1から5のいずれか一項に記載の較正用基準要素を含む較正用基準システムであって、前記較正用基準要素の少なくとも2つが、pH値の異なる基準液を内包し、前記pH値の異なる基準液を有する較正用基準要素が、とりわけ異なる色で符号化されている、較正用基準システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の較正用基準要素のための保持具(2)であって、前記保持具が、少なくとも部分的に三角柱の形状を有し、前記角柱が少なくとも1つの陥凹部(21a、21b 21c)を有し、前記陥凹部が、前記角柱の1つの側辺(18)から、前記側辺に隣接する前記角柱の側面を経て、前記側辺に向かい合う前記角柱の側面(29)の方向に延びており、かつ前記側辺(28)が前記保持具の上縁を規定し、前記側辺(28)に向かい合う前記角柱の前記側面(29)が前記保持具の下面を規定し、
前記陥凹部が前記上縁で開口しており、前記上縁(28)に平行な前記陥凹部の広さ(23)が、前記上縁から前記下面(29)に向かって最小広さまで縮小しており、かつ前記最小広さが、前記上縁から遠位にある前記陥凹部の下部領域(22)では、前記上縁から前記下面に向かう方向に沿って保たれている、保持具(2)。
【請求項8】
前記上縁に平行な前記陥凹部の最大広さが、円周が前記チューブ袋の内周と同じである円の直径の75%以上~100%以下である、請求項7に記載の保持具。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか一項に記載の較正用基準要素または請求項6に記載の較正用基準システムと、請求項7または8に記載の保持具とを含む較正セット。
【請求項10】
請求項9に記載の少なくとも1つの較正セットを使用したpH測定機器またはpHセンサの較正方法であって、前記保持具(2)を、前記上縁(28)を上にして土台上に置くステップ、少なくとも1つの較正用基準要素(10)を、前記チューブ袋の一方の端面の近くで開封するステップ、前記開封された較正用基準要素を、前記チューブ袋の閉じている端面を下にして、前記保持具の前記少なくとも1つの陥凹部(21a、21b、21c)に嵌め込み、このとき前記チューブ袋の壁が前記陥凹部の縁辺によって支持され、これにより前記陥凹部内の前記チューブ袋が、上が開口した入れ物となっているステップ、およびpH測定のためのセンサ(3)を、前記チューブ袋の上の開口部を通って前記基準液(17)に浸すステップ、ならびに読み取られた測定値を、前記基準液の前記規定のpH値と比較するステップを含む較正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、特許請求の範囲において特徴づけられた種類の較正用基準要素に関する。本明細書はさらに、上記の種類の較正用基準要素を使用した較正用基準システム、このような較正用基準要素のための保持具、および上記の対象を使用したpH測定機器の較正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測定値捕捉の際に、物理量を電気信号に変換する測定値変換器が用いられる場合、生成された電気信号と実際の物理量との関係性を知っていることが必須である。多くの測定値変換器またはセンサでは、測定された電気信号に基づいて物理量の正確な値が確定され得るように、つまり測定機器によって表示されるように、この関係性が、時おり較正の範疇で検証されなければならず、つまり改めて確定されなければならない。このために、確定すべき物理量の、それぞれ1つの規定された基準値が提供され、または順々に複数の規定された基準値が提供され、そして相応の電気的測定値が確定され、つまり測定機器がこの物理量に対してそれぞれ正確な値が表示されるように調整される。
【0003】
これは、例えばpH値を決定するためのセンサまたは測定機器にも該当する。これに関してはpH値センサが、規定されたpH値が異なる緩衝液に順々に浸され、例えば測定機器が、それぞれ正確なpH値を表示するように調整される。
【0004】
その代わりに、センサによって出力された電気信号をpH値に依存して記録してもよく、これによりその後、測定物のpH値が未知の場合に、電気信号からpH値を類推することができる。基準液としてpH緩衝液を使用することにより、基準pH値の維持が保証される。ただし緩衝液の取扱いは、実際にまったく問題がないわけではない。つまり、一部では強酸性または強塩基性の、したがって刺激が強い緩衝液は、少なくとも然るべき注意を払って開封する際および扱う際に緩衝液がこぼれるのをできるだけ簡単に防止する容器内で提供されることが望ましい。さらに、緩衝液が入った容器が、較正中に確実に保持されて、センサのためのできるだけ邪魔されない進入口を提供する場合が望ましいことが分かっている。経済的な理由からも、廃水に関して問題がなくはない緩衝液の処分の理由からも、さらに望ましいのは、基準緩衝液を、それぞれできるだけ少量が必要とされるように提供することであり、さらに、基準緩衝液が場所を取らずに輸送および貯蔵され得ることである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書は冒頭で説明した対象に関する。本明細書の1つの態様に基づき、pH測定機器を較正する際のできるだけ簡単で確実な取扱いを可能にする、pH測定機器のための較正用基準要素または較正用基準システムが提示される。さらに、簡単なやり方で較正用基準要素の確実な保持を保証する、このような較正用基準要素のための保持具が提示される。さらに、上記の対象を使用したpH測定機器またはpHセンサの較正方法が説明される。
【0006】
ここで説明される対象のさらなる効果および利点は、明示的に記載されている否かにかかわらず、本明細書に照らして明らかである。
【0007】
これは、請求項1に示した較正用基準要素およびさらなる独立請求項で説明されている対象によって達成される。特許請求される対象の個別的な実施形態は、従属請求項から明らかである。
【0008】
したがって、規定のpH値を有する基準液と、チューブ袋とを含む、pH測定機器のための較正用基準要素が説明され、この基準液はチューブ袋に封入されている。チューブ袋は、箔フィルムからなり、かつ3箇所以下の封止縁部に沿って封止されており、このチューブ袋は少なくとも部分的に基準液で充填されている。上で説明したように、基準液としてとりわけpH緩衝液が使用される。チューブ袋が部分的にのみ基準液で充填されており、チューブ袋内のまだある残留体積が空気または保護ガスで充填されていることが企図されていてもよい。これにより、チューブ袋が上になっている端部で開封される場合、開封時に液体がこぼれるのが防がれる。保護ガスは基準液の貯蔵寿命を改善できる。さらにチューブ袋は、チューブ袋が規定通りに較正中に実現された構成において配置されている場合に、開封されたチューブ袋内の充填レベルが、このように配置されたチューブ袋の内部体積の高さの30%以上~90%以下、好ましくは50%~80%の間になるような量のみ、液体を内包することが企図されていてもよい。規定通りに較正中に実現された構成は、下で説明するように、特にこの較正用基準要素と共に使用するために用意された保持具との関連で導き出され得る。内部体積の高さは、利用者がそれに沿ってチューブ袋を開封すべき線がチューブ袋の外面に印され得ることから、または既に、適切な装置によりそのような線、例えば切り取り線が設けられ得ることから判明する。
【0009】
さらに、チューブ袋が印字フィールド内に、基準液のpH値を提示する印字を有することが企図されていてもよく、この印字領域は、チューブ袋が規定通りに較正中に実現された構成において配置されている場合に、保持具の上縁より上に、かつ利用者がそれに沿ってチューブ袋を開封すべき線より下に配置されている。規定通りに較正中に実現された構成は、下で説明するように、特に較正用基準要素と共に使用するために用意された保持具との関連で導き出され得る。これに加えて印字領域内の印字に、色分けに対応した色を付けることが好ましい。こうすることで、利用者は測定中も基準液のpH値を楽に読み取れる。
【0010】
この関連でpH測定機器の較正とは、冒頭で説明したセンサの電気的出力信号とpH値との関係性を記録する工程のことでもあり得ることは自明である。したがってpH測定機器の較正は、測定機器を正しいpH値が出力されるよう調整することに限定されるのではなく、上述したセンサの電気的出力信号と測定物のpH値との関係性の記録も含む。選ばれている表現は、pH値の測定に用いられる装置の較正に役立つあらゆる工程を含むように幅広く理解されるべきである。
【0011】
「ein(1つ)」または「eine(1つ)」は、本明細書の枠内では、例えば「genau ein(正確に1つ)」または「genau eine(正確に1つ)」の使用によって明確に別の意味が示されていない場合には、不定冠詞と理解すべきであり、数詞と理解すべきではない。
【0012】
さらに、チューブ袋は2つの向かい合う端面にそれぞれ1つの封止縁部を有することが企図されている。この封止縁部の各々は、チューブ袋の長手の延びを横切って走っていて、それぞれこの端面側封止縁部の縦縁によって画定されている長手の延びを有する。周方向ではチューブ袋はとりわけ継ぎ目がないか、または1つの長手側封止縁部を有し、この長手側封止縁部は、端面側封止縁部の縦縁から周方向にずれているか、または端面側封止縁部の隣接する縦縁から離れるように周方向に折り畳まれている。こうすることで、袋の向かい合う側に走る2つの長手側封止縁部を有する既知の包材の場合のように、長手側封止縁部が、開封された袋を平たい形状にしてしまう形状剛性の原因となることが、効果的に回避される。これに対し、長手側封止縁部の領域でのチューブ袋の材料が予め成形されていることで、上側で開封されたチューブ袋が、上縁では断面形状に関して比較的低い形状剛性のみを有し、したがって、閉じている下側で突っ張ってその他では適切に保持されている場合、勝手に楕円形から少なくともほぼ円形の幾何形状になり、この幾何形状は、開封されたチューブ袋の内部の基準液へのセンサの簡単な進入を可能にする。チューブ袋のおよびその内側の周長は、例示的な実施形態では70mm以上~80mm以下である。これは、約23~27mmの範囲内の等価直径に相当し、これが例えば直径12mmのセンサの良好な進入を可能にする。2つの端面の間の充填可能な内部体積の長さは、例示的な実施形態では90mm以上~120mm以下であり、かつある領域における液体の充填量は15ml以上~30ml以下の範囲内である。とりわけ、充填可能な内部体積の長さは110mm~115mmの間であり、かつ充填量は約20mlである。これらのパラメータにより、袋が開封されて規定通りに配置されている場合、この充填高さに基づき、開封されたチューブ袋の上縁に対し、センサを浸しても液体が溢れるのを防止するのに十分な間隔を提供する一方で、閉じているチューブ袋は貯蔵および輸送ならびに取扱いのために十分にコンパクトである基準要素が生じる。同時に、正しい測定を保証する、基準液中にセンサを浸す深さが保証され得る。
【0013】
長手側封止縁部は一方の端面側封止縁部から他方の端面側封止縁部へと延びており、それも、両方の端面側封止縁部が存在し、かつ閉じている場合に限ってチューブ袋が密封状態で閉じられているように延びていることを念のため補足しておく。チューブ袋の開封は、とりわけ、チューブ袋をその長手の延びを横切って、端面側封止縁部の一方の近くで切断することによって行われる。さらに、チューブ袋との関連で、その長手方向および短手方向ならびに端面は、チューブ状の幾何形状によって暗示的に予め定められていることを補足しておく。
【0014】
特定の実施形態では、チューブ袋が、少なくとも2つの材料層を有する箔フィルムから成る。これらの材料層の1つはチューブ袋の内側にあり、第2の層はチューブ袋の外側にある。内側の層は、第1の素材、例えば第1のプラスチックから成り、外側の層は、第2の素材、例えば第2のプラスチックから成り、これらの素材はとりわけ互いに相違している。第1の素材は、とりわけ基準液に対する安定性を保証するよう選択することができ、その一方で外側の層の第2の素材は、とりわけ環境条件および機械的損傷に対抗するよう選択されており、さらに造形的機能を担い得る。この他の実施形態では、チューブ袋の内側にある層とチューブ袋の外側にある層とが同じ素材からなってもよい。
【0015】
さらに、チューブ袋の内側にある層とチューブ袋の外側にある層との間に、金属箔フィルムから成る中間層が配置されていることが企図されていてもよい。金属箔フィルムがアルミニウム箔フィルムであることが好ましい。金属箔フィルムは、なかでも貯蔵および輸送の際の基準液の安定性を改善する。とりわけ、チューブ袋の外側にある箔フィルムの層と、アルミニウム箔フィルムから成る中間層とに切り取り線を付けることができ、とりわけレーザで切り取り線を付けることができ、したがって切り取り線が生じている。これは、規定の線に沿ったチューブ袋の簡単な開封を可能にし、この規定の線から内部体積の高さが判明する。これに対し、チューブ袋の箔フィルムの、少なくともチューブ袋の内側にある層は、まったくまたは不完全にしか切り取り線を付けられない。
【0016】
少なくとも2つの上述の種類の較正用基準要素を含む較正用基準システムも開示されている。較正用基準システムの全ての較正用基準要素の総数のうち少なくとも2つが、互いにpH値の異なる基準液を内包する。とりわけ、pH値の異なる基準液を有する較正用基準要素は異なる色で符号化され得る。これは、適用時の個々の基準要素のpH値の素早い認識を可能にする。特定の実施形態では、較正用基準システムは、pH値の異なる3つ~5つの較正用基準要素からなる。
【0017】
上述の種類の較正用基準要素のための適切な保持具は、少なくとも部分的に三角柱の形状を有する。三角柱は、三角形の底面をもつ角柱である。上記の角柱には少なくとも1つの陥凹部があり、この陥凹部は、角柱の1つの側辺から、この側辺に隣接する角柱の側面を経て、この側辺に向かい合う角柱の側面の方向に延びている。これに関し、上記の側辺が保持具の上縁を規定し、上記の側辺に向かい合う角柱の側面が保持具の下面を規定する。陥凹部は上縁で開口している。上縁では陥凹部が、上縁に平行な最大広さを有し、その一方でこの広さは上縁から下面に向かって最小広さまで縮小する。この最小広さは、上縁から遠位にある陥凹部の下部領域では、上縁から下面に向かう方向に沿って一定に保たれている。陥凹部の上の領域の、下に向かって先細りしていく形状により、陥凹部に嵌め込まれた上述の種類の基準要素は、その下の領域では確実に案内および支持されるにもかかわらず、上の開口している端部では広く開き得る。上縁に平行な陥凹部の最大広さは、とりわけ、円周がチューブ袋の内周と同じである円の直径の75%以上~100%以下に相当する。保持具を、下面を下にして上側を上にして土台上に置き、かつ開封された基準要素を、閉じている下側で陥凹部に嵌め込み、このとき陥凹部の縁が、上縁に平行な方向で、開封されたチューブ袋を支えることが企図されている。これに関し、下面から上縁へと測定した保持具の高さは、特定の実施形態では、嵌め込まれた開封されたチューブ袋が上側で保持具から突き出るように決められている。この高さは、例えば、開封されたチューブ袋がその長さの10%~50%の間で保持具の上縁から突き出るように決められている。この幾何形状により、保持具に嵌め込まれたチューブ袋の開口した上端が、上述の楕円形のまたは少なくともほぼ円形の断面形状になることが達成される。pH値の異なる液体を有する基準要素を収容するためのとりわけ2つ以上の陥凹部が、保持具の上縁の延びに沿って配置され得る。陥凹部の数は、基準要素の1セットまたはシステム内の、pH値の異なる基準要素の数と同じであり得る。pH値の異なる基準要素が上述のように色分けされる場合には、保持具内の陥凹部も相応に色分けされ得る。
【0018】
較正セットは、較正用基準要素と、本発明による保持具とを含む。この較正セットは、pH測定機器の特に楽で確実な較正を可能にする。
【0019】
較正セットが、較正用基準システムと、保持具とを含むことが好ましく、この保持具が、較正用基準システム内にあるpH値の異なる基準液を有する較正用基準要素と同数以上の陥凹部を有することが特に好ましい。つまり利用者にとっては、多点較正のための全ての基準要素が楽に確実に使える。
【0020】
上記の対象を使用したpH測定機器またはpHセンサの較正方法は、保持具を、上縁を上にして土台上に置くことを含む。少なくとも1つの較正用基準要素が、チューブ袋の一方の端面の近くで開封される。開封された較正用基準要素が、チューブ袋の閉じている端面を下にして、保持具の少なくとも1つの陥凹部に嵌め込まれ、このときチューブ袋の壁が陥凹部の縁辺によって支持される。これにより陥凹部内のチューブ袋は、上が開口した入れ物となっている。pH測定のためのセンサが、チューブ袋の上の開口部を通って基準液に浸される。その後、読み取られた測定値(センサの電気的出力量としての、または既に測定機器内でpH値に換算された)が、基準液の規定のpH値と比較される。次いで、基準pH値に割り当てられた測定値が書き留められ得るか、または測定機器が、基準pH値に相当する値を表示するよう調整され得る。この工程が、さらなる異なる基準pH値に対して繰り返され得る。そのために、保持具には基準pH値の異なる複数の基準要素を嵌め込むことができ、これらの基準要素にセンサが順々に浸される。
【0021】
上で挙げた個別的な実施形態は互いに組み合わされ得る。この文書の教示のさらなる個別には開示されていない実施形態は、当業者には問題なく推察される。
【0022】
ここで説明している事実関係を、以下に、選出されて図面に示された例示的実施形態に基づいてより詳しく解説する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ここで説明している基準要素の一例の2つの向かい合う面を示す図であり、この場合は基準要素のチューブ袋は閉じている。
図2図1からの基準要素を上から見た図であり、この場合は基準要素のチューブ袋が上端の近くで開封されている。
図3】チューブ袋が開封されている基準要素の別の一実施形態を上から見た図である。
図4】ここで説明している種類の基準要素と共に使用するために用意された保持具の側面図であり、この場合は幾つかの基準要素が規定通りに嵌め込まれている。
図5】規定通りに嵌め込まれた基準要素を備えた図4からの保持具の前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面は非常に簡略化されている。説明している対象の理解に必要ない細部は省かれている。さらに図面は、選出した例示的実施形態だけを示しており、特許請求の範囲で書き改められた対象の減縮のために考慮に入れてはならない。図示していない実施形態は完全に特許請求の範囲によってカバーされ得る。
【0025】
図1は、チューブ袋1が閉じているここで説明している種類の基準要素10を示しており、図1aおよび図1bは、基準要素10の2つの向かい合う面を示している。チューブ袋1は、2つの端面側封止縁部11および12を含む。
【0026】
封止縁部11は、以下では上の封止縁部とも言い、封止縁部12は下の封止縁部とも言う。端面側封止縁部11および12はそれぞれ、チューブ袋の長手の延びを横切って延びている長手の延びを有する。したがってチューブ袋の長手の延びは、端面側封止縁部11と12の間に延びている。チューブ袋の向きまたは方向のこの名称は、正式ではなく、チューブ袋が切り取り線14に沿って開封されている基準要素10を上から見た図を示す図2との関連で付けられている。端面側封止縁部11および12は、長手の延びの方向では、その縦縁111および121によって画定されている。
【0027】
チューブ袋1または基準要素10は、さらに長手側封止縁部13を含み、長手側封止縁部13は、図1bの表現でのみ見えるように、端面側封止縁部11および12のそれぞれ隣接する縦縁から離れるように折り畳まれており、図2との関連でさらに解説する。例で示したチューブ袋1は、折り重ねて封止縁部に沿って封止された、例えば溶接または接着された箔フィルム要素から成っている。チューブ袋1は、1枚の箔フィルム要素だけから成っているので、3箇所だけの封止縁部によって密封状態に封止され得る。さらなる不図示の一実施形態では、チューブ袋を、閉じた円筒形の箔フィルム要素から製造することができ、この場合には端面側封止縁部のみを必要とする。チューブ袋1内には、チューブ袋を完全に封止する前に充填された、規定のpH値を有する基準液、例えばpH緩衝液がある。チューブ袋は、全体的に基準液で満たされているのではなく、さらに空気または保護ガスも内包することが企図されていてもよい。これは、基準液をこぼすことなく基準要素を開封することを可能にする。箔フィルム要素を成している箔フィルムは多層であり得る。これに関し、チューブ袋の内部にきている箔フィルム層は、基準液に対して化学耐性のある素材から成ることができ、その一方でチューブ袋の外側になっている箔フィルム層は、周囲の影響および機械的影響に対して耐性のある素材から成ることができる。両方の挙げた層の間にさらに、例えばアルミニウム箔フィルムから成るまた別の層が配置され得る。この中間層は、なかでも、チューブ袋を機械的に補強するために役立つ。このように多層のチューブ袋の、外側の層の少なくとも1つが、図示した例示的実施形態では上の封止縁部11の近くの切り取り線14に沿って、切り取り線を付けられている。この線に沿って、基準要素を適用する際にチューブ袋を開封することで、内包された基準液への進入口をつくる。チューブ袋1の片面にはさらに印字フィールド18が配置されており、印字フィールド18には基準要素についての情報、例えばチューブ袋に内包された基準液のpH値、バッチ番号、およびそれに類することが記され得る。
【0028】
図2は、基準要素10を上から見た図を示しており、このチューブ袋1は図1の切り取り線18に沿って開封されており、さらに、こうして生じたチューブ袋の上の開口部を通ってセンサ3が基準液17に入れられている。この図で良く認識できるように、長手側封止縁部は、この結合部が、開封された袋を平たい形状にしてしまうチューブ袋の形状剛性にまったくまたは少なくとも過度には寄与しないように、周方向に折り畳まれている。これにより開口部は、見て分かるように楕円形のまたは少なくともほぼ円形の幾何形状になることができ、それによりセンサ3が容易に開口部を通り抜けて基準液17に挿入され得る。図3では、長手側封止縁部13が、端面側封止縁部の縦縁に対して周方向にずれている一実施形態が示されており、これが類似の効果をもたらし、つまりチューブ袋の形状剛性が、同様に長手側封止縁部13によって望ましくない影響をまったくまたはあまり有意には及ぼされない。
【0029】
図4および図5は、上述の基準要素と関連して使用するために用意および適合された保持具2内での、説明している基準要素10の適用を図解している。互いに関連する図4および図5から明らかなように、保持具2は、三角柱、つまり三角形の底面をもつ角柱の基本形状を有する。角柱の側面29が保持具の下面を規定しており、その一方でこの側面29に向かい合う側辺28が保持具の上縁を規定している。図4で明らかなように、例示的に示した保持具は、それぞれ保持具の上縁28から下面の方向に延びている3つの陥凹部21a、21b、および21cを有する。陥凹部の各々は、保持具の上縁28に平行な広さ23を有し、広さ23は、陥凹部の上の領域では下面に向かって小さくなっており、ただしそれぞれの陥凹部の下部領域22では一定である。陥凹部が、保持具の下面まで完全には通っていないことが確認できる。陥凹部21aおよび21b内では、チューブ袋の上側が開封された嵌め込まれた基準要素10aおよび10bが示されている。これらの基準要素は、チューブ袋の下の封止縁部12で保持具の下面に向かって突っ張っており、下の領域ではそれぞれの陥凹部の比較的狭い下部領域22内で案内されている。これに対し陥凹部の上の領域では基準要素は、上に向かって末広がりになっている陥凹部の縁により、保持具の上縁28に平行な方向で支えられており、かつ回避された形状剛性に基づき、上に向かって漏斗状に拡がり得る。これに関し、上縁28の領域での陥凹部の最大広さは、チューブ袋の上端で、楕円の短軸と長軸の軸比が例えば0.5~1の間の範囲内の楕円が生じるように決められており、かつチューブ袋の幾何形状に合わせられている。これに基づき、センサが問題なく開口部を通って基準要素の内部に到達することを可能にするチューブ袋の開口部が上端で生じている。チューブ袋内には基準液17の体積があり、とりわけ、チューブ袋10aおよび10b内の基準液は異なるpH値を有することが企図されていてもよい。このように規定通りに使用され、かつ保持具2に嵌め込まれたチューブ袋は、16で記入されている最大限利用可能な充填高さを有する。基準要素10bで明らかなように、基準液17の体積は、基準液17の液面15が存在する実際の充填高さ15aが最大充填高さ16より低いように選択されている。図示した例示的実施形態では、充填された基準液17の体積は、例えば、保持具2内で基準要素を規定通りに配置した場合の実際の充填高さ15aが最大充填高さ16の約60%~75%であるように決められている。センサが基準液17に浸されると、センサの排除作用により、基準要素10aで示されているように液面15が上昇する。しかしながら実際の充填高さ15aと最大充填高さ16との間の安全マージンが十分に大きく選択されていることにより、この場合でもチューブ袋の上縁を越える液体の溢れは防がれている。図5では、保持具2を、嵌め込まれた基準要素10と、基準要素の基準液17に浸されたセンサ3と共に、保持具の前面図において示している。
【0030】
本明細書の対象を、選出された例示的実施形態に基づいて解説してきたが、これらの例示的実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明を減縮させることを意図したものではない。特許請求の範囲は、明示的には示していない実施形態を含み、示した例とは相違する実施形態は依然として特許請求の範囲によってカバーされている。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】