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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】生体模倣角膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/24 20060101AFI20240822BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20240822BHJP
   C07K 14/78 20060101ALN20240822BHJP
【FI】
A61L27/24
A61L27/18
C07K14/78 ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516493
(86)(22)【出願日】2022-06-20
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 CN2022099756
(87)【国際公開番号】W WO2023035721
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】202111059840.1
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524095672
【氏名又は名称】熹微(▲蘇▼州)生物医▲薬▼科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 崇宇
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 加慧
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 沐▲栄▼
(72)【発明者】
【氏名】何 超先
【テーマコード(参考)】
4C081
4H045
【Fターム(参考)】
4C081AB21
4C081BB08
4C081CA18
4C081CD12
4C081DA02
4H045AA30
4H045BA57
4H045EA20
4H045FA10
4H045GA10
(57)【要約】
本願は、生体模倣角膜及びその製造方法に関し、バイオ技術分野に属する。本願は、生体模倣角膜を提供する。前記生体模倣角膜は、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質を原料としており、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質は、コラーゲン様タンパク質と、コラーゲン様タンパク質に修飾されたPEG-40k及びPEG-20kと、を含む。PEG-40k及びPEG-20kを修飾することにより、コラーゲン様タンパク質の架橋性を顕著に向上させ、本願の角膜の強度を、コラーゲン様タンパク質を用いて製造された角膜の強度よりも約20倍、従来の他のポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質を用いて製造された角膜の強度よりも約12倍向上させ、よって、本願の角膜の角膜移植分野における将来性が極めて期待できる。PEG-40kとPEG-20kとのモル比が2~3:1である。このモル比のPEG修飾により、コラーゲン様タンパク質の架橋性を向上させる効果がより高く、本願の角膜の強度がさらに向上する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質を原料としており、前記ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質は、コラーゲン様タンパク質と、コラーゲン様タンパク質に修飾されたポリエチレングリコール誘導体と、を含み、前記ポリエチレングリコール誘導体は、PEG-40k及びPEG-20kを含む、ことを特徴とする生体模倣角膜。
【請求項2】
ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質を架橋して硬化させることにより得られる、ことを特徴とする請求項1に記載の生体模倣角膜。
【請求項3】
前記コラーゲン様タンパク質のアミノ酸配列はSEQ ID NO.1で示される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の生体模倣角膜。
【請求項4】
前記PEG-40kとPEG-20kとのモル比は0.5~6:1である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の生体模倣角膜。
【請求項5】
前記PEG-40kとPEG-20kとのモル比は2~3:1である、ことを特徴とする請求項4に記載の生体模倣角膜。
【請求項6】
前記PEG-40kの活性化基数は、8-arm、4-arm、2-arm、又は1-armのうちの1つ又は複数であり、前記PEG-20kの活性化基数は、8-arm、4-arm、2-arm、又は1-armのうちの1つ又は複数である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の生体模倣角膜。
【請求項7】
前記PEG-40kの活性化基数は4-arm、又は8-armであり、前記PEG-20kの活性化基数は4-arm、又は8-armである、ことを特徴とする請求項6に記載の生体模倣角膜。
【請求項8】
前記PEG-40kの活性化基は、-MAL、-NHS、-SG、-SPA、-SS、又は-EDCのうちの1つ又は複数であり、前記PEG-20kの活性化基は、-MAL、-NHS、-SG、-SPA、-SS、又は-EDCのうちの1つ又は複数である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の生体模倣角膜。
【請求項9】
前記PEG-40kの活性化基は、-MALであり、前記PEG-20kの活性化基は、-MALである、ことを特徴とする請求項8に記載の生体模倣角膜。
【請求項10】
前記コラーゲン様タンパク質の一端にlinkerが連結されており、前記ポリエチレングリコール誘導体は、活性化基を通じてlinkerに修飾されている、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の生体模倣角膜。
【請求項11】
前記linkerは、コラーゲン様タンパク質のN末端に連結されている、ことを特徴とする請求項10に記載の生体模倣角膜。
【請求項12】
前記linkerのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.2又はSEQ ID NO.3で示される、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の生体模倣角膜。
【請求項13】
前記ポリエチレングリコール誘導体のlinkerへの修飾部位は、メルカプト、アミノ、カルボキシ、又はイミダゾリルのうちの1つ又は複数である、ことを特徴とする請求項12に記載の生体模倣角膜。
【請求項14】
linkerのアミノ酸配列がSEQ ID NO.2で示される場合、前記ポリエチレングリコール誘導体のlinkerへの修飾部位はメルカプトであり、linkerのアミノ酸配列がSEQ ID NO.3で示される場合、前記ポリエチレングリコール誘導体のlinkerへの修飾部位はアミノである、ことを特徴とする請求項13に記載の生体模倣角膜。
【請求項15】
コラーゲン様タンパク質とポリエチレングリコール誘導体をpH 4.0~10.0、温度2~40℃の条件で1~48h反応させて、反応生成物を得る反応ステップと、
反応生成物を凍結乾燥させ、凍結乾燥製剤を得る凍結乾燥ステップと、
凍結乾燥製剤を緩衝液に溶解し、溶解液を得て、溶解液とMPC母液を混合し、混合液1を得て、混合液1とDMTMM母液を混合し、混合液2を得る架橋ステップと、
混合液2を角膜の金型に注入して静置し、角膜の粗品を得る硬化ステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載の生体模倣角膜の製造方法。
【請求項16】
前記反応ステップは、コラーゲン様タンパク質とポリエチレングリコール誘導体をpH6.0~8.0、温度2~8℃の条件で5~8h反応させることである、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記反応ステップでは、コラーゲン様タンパク質及びポリエチレングリコール誘導体の供給モル数の比は1~16:1である、ことを特徴とする請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記反応ステップでは、コラーゲン様タンパク質及びポリエチレングリコール誘導体の供給モル数の比は8~12:1である、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記反応ステップでは、コラーゲン様タンパク質及びポリエチレングリコール誘導体の反応溶媒は水又は希塩酸溶液である、ことを特徴とする請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記希塩酸溶液の濃度は1~10mmol/Lであり、前記希塩酸溶液のpHが希アルカリ溶液で6.0~8.0に調整される、ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記反応ステップでは、コラーゲン様タンパク質の反応溶媒中の供給濃度は1~15mg/mLである、ことを特徴とする請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記反応ステップでは、コラーゲン様タンパク質の反応溶媒中の供給濃度は8~10mg/mLである、ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記凍結乾燥ステップは、反応生成物と凍結乾燥保護剤を混合して凍結乾燥させ、凍結乾燥製剤を得ることである、ことを特徴とする請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記凍結乾燥保護剤は、マンニトール、スクロース、又はアラニンのうちの1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
架橋ステップでは、前記緩衝液のpHは5.5~8.0である、ことを特徴とする請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
架橋ステップでは、前記緩衝液のpHは、6.5~7.5である、ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
架橋ステップでは、前記緩衝液において、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質の濃度は、5~40g/mLである、ことを特徴とする請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
架橋ステップでは、前記緩衝液において、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質の濃度は、12~18g/mLである、ことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
架橋ステップでは、前記溶解液とMPC母液との混合質量比は、2:1~4:1である、ことを特徴とする請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
架橋ステップでは、前記混合液1とDMTMM母液との混合質量比は、5:1~7:1である、ことを特徴とする請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記架橋ステップは、25~60℃で行われる、ことを特徴とする請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記架橋ステップは、45~55℃で行われる、ことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
硬化ステップでは、前記静置温度は、4~35℃である、ことを特徴とする請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記MPC母液の成分は、MPC、PEGDA、TEMED、及び溶媒を含む、ことを特徴とする請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記MPC母液において、MPCの濃度は15~40g/mLであり、前記MPC母液において、PEGDAの濃度は0.6~15体積%であり、TEMEDの濃度は0.05~2体積%である、ことを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記MPC母液において、PEGDAの濃度は8~12%である、ことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記MPC母液の溶媒は緩衝液であり、前記緩衝液のpHは6.0~8.0である、ことを特徴とする請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記DMTMM母液の成分は、DMTMM、APS、及び溶媒を含む、ことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記DMTMM母液において、DMTMMの濃度は5~20g/mLであり、APSの濃度は0.5~5g/mLである、ことを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記DMTMM母液の溶媒は緩衝液であり、前記緩衝液のpHは6.0~8.0である、ことを特徴とする請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
硬化ステップの後、
角膜の粗品を金型とともに緩衝液に入れて第1浸漬を行い、第1浸漬終了後、金型を開いて、第2浸漬を行い、第2浸漬終了後、離型し、角膜の完成品を得る浸漬ステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
浸漬ステップでは、前記緩衝液のpHは5.5~8.0である、ことを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記第1浸漬は、温度が4~35℃、時間が5~24hである、ことを特徴とする請求項41又は42に記載の方法。
【請求項44】
前記第2浸漬は、温度が4~35℃、時間が3~10hである、ことを特徴とする請求項41~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
反応ステップの後かつ凍結乾燥ステップの前、
反応生成物中の分子量が30,000Da以上の物質を濾過により遮断し、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質を得る精製ステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2021年9月13日に中国特許庁に提出された、出願番号が202111059840.1、発明の名称が「生体模倣角膜及びその製造方法」の中国特許出願の優先権を主張しており、当該出願のすべての内容は、引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
[技術分野]
本願は、生体模倣角膜及びその製造方法に関し、バイオ技術分野に属する。
【背景技術】
【0003】
角膜(Cornea)は、目の最も前にある凸状の透明度の高い物質で、横長の楕円形をしており、虹彩、瞳孔、前房を覆い、目の屈折力の大部分を担っている。水晶の屈折力と組み合わせることで、光は網膜上に正確に焦点を合わせて画像を形成することができる。角膜には非常に敏感な神経終末があり、異物が角膜に接触すると、目を守るためにまぶたが無意識に閉じる。透明性を維持するために、角膜には血管がなく、涙と房水を通じて栄養と酸素を得る。
【0004】
角膜は非常に壊れやすく、眼の外傷、炎症、アレルギー反応、物理的損傷、化学火傷、激しい運動、目の使い過ぎなどはすべて角膜の病変を引き起こす可能性がある。角膜が病気になると、目の痛み、羞明、流涙、視力低下などの明らかな目の症状が現れ、重度の場合は失明につながる。
【0005】
角膜移植は、患者の既存の病気の角膜を正常な角膜に置き換えて、病気に罹患した目の視力を回復したり、角膜の病変を制御したり、視力を改善したり、特定の角膜疾患を治療したりする治療法である。患者に重度の視覚障害や失明を引き起こす一部の角膜疾患の場合、角膜移植は完全な治療を達成させ、これらの不幸な患者の痛みを解消することができる。角膜自体には血管がなく、「免疫寛容」状態にあるため、角膜移植の成功率は他の同種臓器移植の中でも高い。
【0006】
しかしながら、角膜の資源は限られており、患者のニーズを満たすことができない。この問題を解決するために、一部の研究者は人工角膜移植術を提案した。人工角膜移植術は、透明な医療用ポリマー材料を用いて製造された特別な光学装置を角膜組織に外科的に埋め込めて、角膜瘢痕組織の一部を置換することで、視力を回復する外科的方法である。角膜組織による合成材料の拒絶反応などの問題がまだ解決されておらず、長期成績が悪く、移植部位での房水の漏出や移植片の剥離を引き起こすことが多いため、広く使用することができないのが現状である。現在、人工角膜が適しているのは、さまざまな重篤な角膜疾患を患った後の両眼失明者、特に重度の化学熱傷による角膜白板症を患った人、複数回の角膜移植に失敗し他の手術を受けることができない人だけである。
【0007】
研究者は人工角膜に基づいて、生体模倣角膜を提案している。例えば、文献「再生促進角膜インプラントにおけるコラーゲンの代替としての短いペプチド類似体(Short peptide analogs as alternatives to collagen in pro-regenerative corneal implants)」において、Jangamreddy、Jaganmohan R.らはポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質を提案しており、このポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質を化学的に架橋すると、生体模倣角膜が得られる。この生体模倣角膜は、優れた生体適合性を備えており、人工合成材料に対する角膜組織の強い拒絶反応の問題を効果的に解決できる。
【0008】
しかし、この生体模倣角膜の強度は0.022MPaと非常に低く、この生体模倣角膜を角膜移植に使用した場合、移植が困難であることや円錐角膜を引き起こす可能性があるなどの問題が残されている。
【発明の概要】
【0009】
従来の生体模倣角膜の強度が低いという問題を解決するために、本願は、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質を原料としており、前記ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質は、コラーゲン様タンパク質と、コラーゲン様タンパク質に修飾されたポリエチレングリコール誘導体と、を含み、前記ポリエチレングリコール誘導体は、PEG-40k及びPEG-20kを含む、生体模倣角膜を提供する。
【0010】
本願の一実施形態では、前記生体模倣角膜は、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質を架橋して硬化させることにより得られる。
【0011】
本願の一実施形態では、前記ポリエチレングリコール誘導体は、PEG-40k及びPEG-20kからなる。
【0012】
本願の一実施形態では、前記コラーゲン様タンパク質のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.1で示される。SEQ ID NO.1において、Xは4Hyp(4-ヒドロキシプロリン)であり、すなわち、
SEQ ID NO.1のアミノ酸配列は以下の通りである。
H-Pro-Lys-Gly-Pro-Lys-Gly-Pro-Lys-Gly-Pro-Lys-Gly-Pro-Hyp-Gly-Pro-Hyp-Gly-Pro-Hyp-Gly-Pro-Hyp-Gly-Asp-Hyp-Gly-Asp-Hyp-Gly-Asp-Hyp-Gly-Asp-Hyp-Gly-OH
【0013】
本願の一実施形態では、前記PEG-40kとPEG-20kとのモル比は0.5~6:1である。
【0014】
本願の一実施形態では、前記PEG-40kとPEG-20kとのモル比は2~3:1である。本願の一実施形態では、前記PEG-40kの活性化基数は8-arm、4-arm、2-arm、又は1-armのうちの1つ又は複数であり、前記PEG-20kの活性化基数は8-arm、4-arm、2-arm、又は1-armのうちの1つ又は複数である。
【0015】
本願の一実施形態では、前記PEG-40kの活性化基数は4-arm、又は8-armであり、前記PEG-20kの活性化基数は、4-arm、又は8-armである。
【0016】
本願の一実施形態では、前記PEG-40kの活性化基は、-MAL、-NHS、-SG、-SPA、-SS、又は-EDCのうちの1つ又は複数であり、前記PEG-20kの活性化基は、-MAL、-NHS、-SG、-SPA、-SS、又は-EDCのうちの1つ又は複数である。
【0017】
本願の一実施形態では、前記PEG-40kの活性化基は、-MALであり、前記PEG-20kの活性化基は、-MALである。
【0018】
本願の一実施形態では、前記コラーゲン様タンパク質の一端にlinkerが連結されており、前記ポリエチレングリコール誘導体は、活性化基を通じてlinkerに修飾されている。
【0019】
本願の一実施形態では、前記linkerは、コラーゲン様タンパク質のN末端に連結されている。
【0020】
本願の一実施形態では、前記linkerのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.2又はSEQ ID NO.3で示される。
【0021】
本願の一実施形態では、前記ポリエチレングリコール誘導体のlinkerへの修飾部位は、メルカプト、アミノ、カルボキシ、又はイミダゾリルのうちの1つ又は複数である。
【0022】
本願の一実施形態では、linkerのアミノ酸配列がSEQ ID NO.2で示される場合、前記ポリエチレングリコール誘導体のlinkerへの修飾部位はメルカプトであり、linkerのアミノ酸配列がSEQ ID NO.3で示される場合、前記ポリエチレングリコール誘導体のlinkerへの修飾部位はアミノである。
【0023】
本願の一実施形態では、前記ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質のコアコンホメーションは、HG又はTPのうちの1つ又は複数である。
【0024】
本願の一実施形態では、前記ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質中のポリエチレングリコール誘導体のコアコンホメーションはTPである。
【0025】
本願の一実施形態では、前記ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質中のコラーゲン様タンパク質のアミノ酸配置は、D型又はL型のうちの1つ又は複数である。
【0026】
本願の一実施形態では、前記ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質の分子量は、15,000~75,000Daである。
【0027】
本願の一実施形態では、前記ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質の分子量は、30,000~75,000Daである。
【0028】
本願はまた、
コラーゲン様タンパク質とポリエチレングリコール誘導体をpH 4.0~10.0、温度2~40℃の条件で1~48h反応させて、反応生成物を得る反応ステップと、
反応生成物を凍結乾燥させ、凍結乾燥製剤を得る凍結乾燥ステップと、
凍結乾燥製剤を緩衝液に溶解し、溶解液を得て、溶解液とMPC母液を混合し、混合液1を得て、混合液1とDMTMM母液を混合し、混合液2を得る架橋ステップと、
混合液2を角膜の金型に注入して静置し、角膜の粗品を得る硬化ステップと、を含む、上記の生体模倣角膜の製造方法を提供する。
【0029】
本願の一実施形態では、前記反応ステップは、コラーゲン様タンパク質とポリエチレングリコール誘導体をpH 6.0~8.0、温度2~8℃の条件で5~8h反応させることである。
【0030】
本願の一実施形態では、前記反応ステップでは、コラーゲン様タンパク質及びポリエチレングリコール誘導体の供給モル数の比は1~16:1である。
【0031】
本願の一実施形態では、前記反応ステップでは、コラーゲン様タンパク質及びポリエチレングリコール誘導体の供給モル数の比は8~12:1である。
【0032】
本願の一実施形態では、前記反応ステップでは、コラーゲン様タンパク質及びポリエチレングリコール誘導体の反応溶媒は水又は希塩酸溶液である。
【0033】
本願の一実施形態では、前記希塩酸溶液の濃度は1~10mmol/Lであり、前記希塩酸溶液のpHが希アルカリ溶液で6.0~8.0に調整される。
【0034】
本願の一実施形態では、前記希アルカリ溶液は、pH9.0~11.0の水酸化ナトリウム溶液又はアンモニア水である。
【0035】
本願の一実施形態では、前記反応ステップでは、コラーゲン様タンパク質の反応溶媒中の供給濃度は1~15mg/mLである。
【0036】
本願の一実施形態では、前記反応ステップでは、コラーゲン様タンパク質の反応溶媒中の供給濃度は8~10mg/mLである。
【0037】
本願の一実施形態では、前記凍結乾燥ステップは、反応生成物と凍結乾燥保護剤を混合して凍結乾燥させ、凍結乾燥製剤を得ることである。
【0038】
本願の一実施形態では、前記凍結乾燥保護剤は、マンニトール、スクロース、又はアラニンのうちの1種又は複数種である。
【0039】
本願の一実施形態では、前記凍結乾燥は、以下の段階を含む。
段階1:温度が-45℃、真空度(vacuum)が500m Torrの条件で6h凍結乾燥させる。
段階2:温度が-30℃、真空度(vacuum)が100m Torrの条件で17h凍結乾燥させる。
段階3:温度が25℃、真空度(vacuum)が100m Torrの条件で7h凍結乾燥させる。
【0040】
本願の一実施形態では、架橋ステップでは、前記緩衝液のpHは5.5~8.0である。本願の一実施形態では、架橋ステップでは、前記緩衝液のpHは6.5~7.5である。本願の一実施形態では、架橋ステップでは、前記緩衝液の濃度は0.5~0.7mol/Lである。
【0041】
本願の一実施形態では、架橋ステップでは、前記緩衝液は、MOPS Buffer、MES Buffer、又はPBS Bufferである。
【0042】
本願の一実施形態では、架橋ステップでは、前記緩衝液において、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質の濃度は5~40g/mLである。
【0043】
本願の一実施形態では、架橋ステップでは、前記緩衝液において、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質の濃度は12~18g/mLである。
【0044】
本願の一実施形態では、架橋ステップでは、前記緩衝液において、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質の濃度は15g/mLである。
【0045】
本願の一実施形態では、架橋ステップでは、前記溶解液とMPC母液との混合質量比は2:1~4:1である。
【0046】
本願の一実施形態では、架橋ステップでは、前記混合液1とDMTMM母液との混合質量比は5:1~7:1である。
【0047】
本願の一実施形態では、前記架橋ステップは、25~60℃で行われる。本願の一実施形態では、前記架橋ステップは、45~55℃で行われる。
【0048】
本願の一実施形態では、硬化ステップでは、前記静置温度は4~35℃である。本願の一実施形態では、硬化ステップでは、前記静置温度は4~25℃である。本願の一実施形態では、硬化ステップでは、前記静置時間は8~20hである。本願の一実施形態では、前記MPC母液の成分は、MPC(2-メタクリロイルオキシエチルホスホコリン)、PEGDA(ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート)、TEMED(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)及び溶媒を含む。
【0049】
本願の一実施形態では、前記MPC母液において、MPCの濃度は15~40g/mLであり、前記MPC母液において、PEGDAの濃度は0.6~15体積%であり、TEMEDの濃度は0.05~2体積%である。
【0050】
本願の一実施形態では、前記MPC母液において、PEGDAの濃度は8~12%である。本願の一実施形態では、前記MPC母液において、PEGDAの濃度は10%である。本願の一実施形態では、前記MPC母液の溶媒は緩衝液であり、前記緩衝液のpHは6.0~8.0である。
【0051】
本願の一実施形態では、MPC母液において、前記緩衝液のpHは6.5~7.5である。本願の一実施形態では、MPC母液において、前記緩衝液の濃度は0.5~0.7mol/Lである。
【0052】
本願の一実施形態では、MPC母液において、前記緩衝液は、MOPS Buffer、MES Buffer、又はPBS Bufferである。
【0053】
本願の一実施形態では、前記DMTMM母液の成分は、DMTMM(4-(4,6-ジメトキシトリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリン塩酸塩)、APS(過硫酸アンモニウム)及び溶媒を含む。
【0054】
本願の一実施形態では、前記DMTMM母液において、DMTMMの濃度は5~20g/mLであり、APSの濃度は0.5~5g/mLである。
【0055】
本願の一実施形態では、前記DMTMM母液の溶媒は緩衝液であり、前記緩衝液のpHは6.0~8.0である。
【0056】
本願の一実施形態では、DMTMM母液において、前記緩衝液のpHは6.5~7.5である。
【0057】
本願の一実施形態では、DMTMM母液において、前記緩衝液の濃度は0.5~0.7mol/Lである。
【0058】
本願の一実施形態では、DMTMM母液において、前記緩衝液は、MOPS Buffer、MES Buffer、又はPBS Bufferである。
【0059】
本願の一実施形態では、硬化ステップの後、前記方法は、角膜の粗品を金型とともに緩衝液に入れて第1浸漬を行い、第1浸漬終了後、金型を開いて、第2浸漬を行い、第2浸漬終了後、離型し、角膜の完成品を得る浸漬ステップをさらに含む。
【0060】
本願の一実施形態では、浸漬ステップでは、前記緩衝液のpHは5.5~8.0である。本願の一実施形態では、浸漬ステップでは、前記緩衝液のpHは6.5~7.5である。
【0061】
本願の一実施形態では、浸漬ステップでは、前記緩衝液の濃度は0.05~1mol/Lである。
【0062】
本願の一実施形態では、浸漬ステップでは、前記緩衝液は、MOPS Buffer、MES Buffer、又はPBS Bufferである。
【0063】
本願の一実施形態では、前記第1浸漬は、温度が4~35℃、時間が5~24hである。
【0064】
本願の一実施形態では、前記第2浸漬は、温度が4~35℃、時間が3~10hである。
【0065】
本願の一実施形態では、反応ステップの後かつ凍結乾燥ステップの前、
前記方法は、反応生成物中の分子量が30,000Da以上の物質を濾過により遮断し、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質を得る精製ステップをさらに含む。
【0066】
本願の一実施形態では、前記濾過は、透析又は限外濾過である。
【発明の効果】
【0067】
本願の技術的解決手段は、以下の利点を有する。
【0068】
1.本願は、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質を原料としており、前記ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質は、コラーゲン様タンパク質と、コラーゲン様タンパク質に修飾されたPEG-40k及びPEG-20kと、を含む、生体模倣角膜を提供する。PEG-40k及びPEG-20kを修飾することにより、コラーゲン様タンパク質の架橋性を顕著に向上させ、本願の角膜の強度を、コラーゲン様タンパク質を用いて製造された角膜の強度よりも約20倍、従来の他のポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質を用いて製造された角膜の強度よりも約12倍向上させることができ(文献「再生促進角膜インプラントにおけるコラーゲンの代替としての短いペプチド類似体(Short peptide analogs as alternatives to collagen in pro-regenerative corneal implants)におけるポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質を用いて製造された角膜の強度は、わずか0.022MPaである。)、よって、本願の角膜の角膜移植分野における将来性が極めて期待できる。
【0069】
さらに、前記PEG-40kとPEG-20kとのモル比は、2~3:1である。このモル比のPEG修飾により、コラーゲン様タンパク質の架橋性を向上させる効果がより良好であり、本願の角膜の強度をさらに向上させることができる。
【0070】
さらに、前記PEG-40kは、8-arm-PEG-40k-MALであり、前記PEG-20kは、4-arm-PEG-20k-MALである。この構成のPEG修飾により、コラーゲン様タンパク質の架橋性を向上させる効果がより良好であり、本願の角膜の強度をさらに向上させることができる。
【0071】
2.本願は、上記の生体模倣角膜の製造方法を提供し、前記方法は、反応ステップと、凍結乾燥ステップと、架橋ステップと、硬化ステップとの4つのステップを含み、前記反応ステップは、コラーゲン様タンパク質とPEG誘導体を、pH 6.0~8.0、温度2~8℃の条件で反応させて、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質を得ることである。この反応ステップで製造されたポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質は、より優れた架橋性を有し、製造された角膜の強度をさらに向上させることができる。さらに、他の従来のポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質の製造方法と比較して、この反応ステップの反応時間は短く、角膜を形成するためのヒドロゲルにすることができるポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質が得られるまでにわずか5~8時間しかかからない(文献「再生促進角膜インプラントにおけるコラーゲンの代替としての短いペプチド類似体(Short peptide analogs as alternatives to collagen in pro-regenerative corneal implants)」では、角膜を形成するためのヒドロゲルにすることができるポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質の調製に4週間かかる。)、角膜の大規模工業生産に貢献する。
【0072】
さらに、前記反応ステップでは、コラーゲン様タンパク質とポリエチレングリコール誘導体との供給モル数の比は8~12:1である。この供給モル比で製造されたポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質は、より優れた架橋性を有し、製造された角膜の強度をさらに向上させることができる。
【0073】
さらに、前記反応ステップでは、コラーゲン様タンパク質の反応溶媒中の供給濃度は8~10mg/mLである。この供給濃度で製造されたポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質は、より優れた架橋性を有し、製造される角膜の強度をさらに向上させることができる。
【0074】
さらに、前記架橋ステップでは、凍結乾燥製剤をpH6.5~7.5、温度45~55℃の条件で架橋させて、生体模倣角膜を製造する。この架橋条件下で製造された生体模倣角膜は、より高い強度を有する。
【0075】
さらに、前記架橋ステップでは、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質の濃度を12~18g/mLに制御する。このポリエチレン化コラーゲン様タンパク質の濃度で製造された生体模倣角膜は、より高い強度を有する。
【0076】
さらに、前記架橋ステップでは、MPC母液中のPEGDAの濃度を8~12%に制御する。このPEGDA濃度で製造された生体模倣角膜は、より高い強度を有する。
【0077】
さらに、前記凍結乾燥ステップは、凍結乾燥保護剤の保護下でポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質を凍結乾燥させることである。凍結乾燥保護剤は、凍結乾燥プロセス中にポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質の構造が破壊されないようにポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質を保護することができ、それにより凍結乾燥製剤の架橋性を向上させ、製造される角膜の強度をさらに向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0078】
以下の実施例は、本願をよりよく理解するために提供されたものであり、前述の最良の実施形態に限定されるものではなく、本願の内容及び保護範囲を制限するものではなく、本願の示唆又は本願と他の従来技術の特徴を組み合わせて得られた、本願と同一又は類似する如何なる製品も、本願の保護範囲内に入る。
【0079】
以下の実施例において特定の実験ステップまたは条件が明記されていない場合、当該分野の文献に記載されている従来の実験ステップの操作または条件に従って実行することができる。使用した試薬や機器の製造元が明記されていない場合、それらはすべて市販されている従来の試薬製品である。以下の実施例では、コラーゲン様タンパク質の合成、およびコラーゲン様タンパク質とlinkerとの連結は、上海昂博生物技術有限公司(AmbioPharm.InC.)によって行われる。下記の実施例におけるPEG誘導体は、すべて厦門賽諾邦格生物科技股▲ふん▼有限公司から購入する。
【実施例
【0080】
実施例1:生体模倣角膜及びその製造
本実施例は、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質を架橋して硬化させることより得られた生体模倣角膜を提供する。前記ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質は、アミノ酸配列がSEQ ID NO.1で示されるコラーゲン様タンパク質と、コラーゲン様タンパク質 N末端に連結されたアミノ酸配列がSEQ ID NO.2で示されるlinkerと、linkerのメルカプト上に修飾された8-arm-PEG-40k-MAL及び4-arm-PEG-20k-MALとからなる。ここで、8-arm-PEG-40k-MALと4-arm-PEG-20k-MALとのモル比は2:1であり、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質中のポリエチレングリコール誘導体のコアコンホメーションはTPであり、かつ、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質の分子量は30,000~75,000Daである。この生体模倣角膜は、生体模倣角膜1と命名される。
上記の生体模倣角膜1の製造方法は、以下のステップを含む。
反応ステップ:コラーゲン様タンパク質とポリエチレングリコール誘導体を濃度5mmol/Lの希塩酸溶液(希塩酸溶液のpHは、pH11.0の水酸化ナトリウム溶液で6.5に調整)に溶解し、希塩酸溶液中のコラーゲン様タンパク質及びポリエチレングリコール誘導体のモル濃度をそれぞれ2.4mmol/L及び0.3mmol/Lにし、反応系を得た。反応系をpH6.5、温度5℃の条件で12h反応させ、反応生成物を得た。
精製ステップ:反応生成物を孔径30,000Daの限外濾過膜により5℃で限外濾過し、反応生成物中の分子量が30,000Da以上の物質を遮断し、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質を得た。
凍結乾燥ステップ:ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質とマンニトールを質量比1:5で混合し、凍結乾燥系を得た。凍結乾燥系を凍結乾燥させ、凍結乾燥製剤を得た。
架橋ステップ:凍結乾燥製剤を濃度0.5mol/L、pH5.5のMES Bufferに溶解し、MES Buffer中のポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質の濃度を12.5g/mLとし、溶解液を得た。溶解液とMPC母液を質量比5:1で混合し、混合液1を得た。混合液1とDMTMM母液を質量比7:1で混合し、混合液2を得た。架橋全体は、45℃で行われた。
硬化ステップ:混合液2を角膜金型に注入して、25℃で12h静置し、角膜の粗品を得た。
浸漬ステップ:角膜の粗品を(金型とともに)濃度0.1mol/L、pH5.5のPBS Bufferに添加し、4℃で24h浸漬した後、金型を開いて、4℃でさらに4h浸漬し、離型し、生体模倣角膜1を得た。
ここで、MPC母液の処方:30g/mL MPC、10%PEGDA(v/v)、1%TEMED(v/v)、溶媒 0.5mol/L、pH5.5のMOPS Buffer
DMTMM母液の処方:10g/mLDMTMM、15g/mL APS、溶媒0.5mol/L、pH5.5のMOPS Buffer
凍結乾燥は、以下の段階を含む。
段階1:温度が-45℃、真空度(vacuum)が500m Torrの条件で6h凍結乾燥させる。
段階2:温度が-30℃、真空度(vacuum)が100m Torrの条件で17h凍結乾燥させる。
段階3:温度が25℃、真空度(vacuum)が100m Torrの条件で7h凍結乾燥させる。
【0081】
実施例2:生体模倣角膜及びその製造
本実施例は、生体模倣角膜を提供し、前記生体模倣角膜は、実施例1の生体模倣角膜1を基にして、使用したPEG処方(モル比が2:1の8-arm-PEG-40k-MAL、及び4-arm-PEG-20k-MAL)をそれぞれ以下のものに置換する。
モル比が1:0の8-arm-PEG-40k-MAL及び4-arm-PEG-20k-MAL
モル比が0:1の8-arm-PEG-40k-MAL及び4-arm-PEG-20k-MAL
モル比が6:1の8-arm-PEG-40k-MAL及び4-arm-PEG-20k-MAL
モル比が4:1の8-arm-PEG-40k-MAL及び4-arm-PEG-20k-MAL
モル比が2:1の8-arm-PEG-40k-MAL及び4-arm-PEG-40k-MAL
モル比が4:2:1の8-arm-PEG-40k-MAL、4-arm-PEG-20k-MAL、及び4-arm-PEG-40k-MAL
モル比が2:2:1の8-arm-PEG-40k-MAL、4-arm-PEG-40k-MAL、及び4-arm-PEG-20k-MAL
モル比が2:2:1の8-arm-PEG-40k-MAL、4-arm-PEG-40k-MAL、及び8-arm-PEG-20k-MAL
上記の生体模倣角膜タンパク質は順次生体模倣角膜2~9と命名される。
上記の生体模倣角膜2~9の製造方法は、生体模倣角膜1と同様である。
【0082】
実施例3:生体模倣角膜及びその製造
本実施例は、生体模倣角膜を提供し、前記生体模倣角膜は、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質を架橋して硬化させることにより得られ、前記ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質は、アミノ酸配列がSEQ ID NO.1で示されるコラーゲン様タンパク質と、コラーゲン様タンパク質のN末端に連結されたアミノ酸配列がSEQ ID NO.3で示されるlinkerと、linkerアミノ上に修飾された8-arm-PEG-40k-MAL及び4-arm-PEG-20k-MALと、からなり、8-arm-PEG-40k-MALと4-arm-PEG-20k-MALとのモル比は2:1であり、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質中のポリエチレングリコール誘導体のコアコンホメーションはTPであり、かつポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質の分子量は30,000~75,000Daである。この生体模倣角膜は生体模倣角膜10と命名される。
上記の生体模倣角膜10の製造方法は生体模倣角膜1と同様である。
【0083】
実施例4:生体模倣角膜及びその製造
本実施例は、生体模倣角膜を提供し、前記生体模倣角膜は、実施例1の生体模倣角膜1を基にして、反応ステップの反応温度(5℃)をそれぞれ2℃、8℃、25℃、37℃に変更した。
上記の生体模倣角膜は順次生体模倣角膜11~14と命名される。
【0084】
実施例5:生体模倣角膜及びその製造
本実施例は、生体模倣角膜を提供し、前記生体模倣角膜は、実施例1の生体模倣角膜1を基にして、反応ステップの反応pH(6.5)をそれぞれpH2.5、pH4.5、pH6.0、pH6.5、pH7.0、pH8.0、pH8.5、pH10.5に変更した。
上記の生体模倣角膜は順次生体模倣角膜15~22と命名される。
【0085】
実施例6:生体模倣角膜及びその製造
本実施例は、生体模倣角膜を提供し、前記生体模倣角膜は、実施例1の生体模倣角膜1を基にして、反応ステップ中のコラーゲン様タンパク質及びポリエチレングリコール誘導体の希塩酸溶液中のモル濃度をそれぞれ以下の濃度に変更した。
希塩酸溶液において、コラーゲン様タンパク質及びポリエチレングリコール誘導体のモル濃度をそれぞれ3.0mmol/L及び0.375mmol/Lにする。
希塩酸溶液において、コラーゲン様タンパク質及びポリエチレングリコール誘導体のモル濃度をそれぞれ1.8mmol/L及び0.225mmol/Lにする。
希塩酸溶液において、コラーゲン様タンパク質及びポリエチレングリコール誘導体のモル濃度をそれぞれ1.2mmol/L及び0.15mmol/Lにする。
上記の生体模倣角膜は順次生体模倣角膜23~25と命名される。
【0086】
実施例7:生体模倣角膜及びその製造
本実施例は、生体模倣角膜を提供し、前記生体模倣角膜は、実施例1の生体模倣角膜1を基にして、反応ステップ中の反応時間(12h)をそれぞれ4h、8h、16h、24hに変更した。
上記の生体模倣角膜は順次生体模倣角膜26~29と命名される。
【0087】
実施例8:生体模倣角膜及びその製造
本実施例は、生体模倣角膜を提供し、前記生体模倣角膜は、実施例1の生体模倣角膜1を基にして、凍結乾燥ステップの凍結乾燥保護剤(マンニトール)をそれぞれスクロース、アラニンに変更した。
上記の生体模倣角膜は順次生体模倣角膜30~31と命名される。
【0088】
実施例9:生体模倣角膜及びその製造
本実施例は、生体模倣角膜を提供し、前記生体模倣角膜は、実施例1の生体模倣角膜1を基にして、架橋ステップの架橋温度(45℃)をそれぞれ20℃、25℃、40℃、50℃、55℃、60℃、65℃に変更した。
上記の生体模倣角膜は順次生体模倣角膜32~38と命名される。
【0089】
実施例10:生体模倣角膜及びその製造
本実施例は、生体模倣角膜を提供し、前記生体模倣角膜は、実施例1の生体模倣角膜1を基にして、架橋ステップのBufferのpH(5.5)をそれぞれ5.0、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0に変更した。
上記の生体模倣角膜は順次生体模倣角膜39~46と命名される。
【0090】
実施例11:生体模倣角膜及びその製造
本実施例は、生体模倣角膜を提供し、前記生体模倣角膜は、実施例1の生体模倣角膜1を基にして、架橋ステップのポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質のMES Buffer中の濃度(15g/mL)をそれぞれ1g/mL、5g/mL、10g/mL、20g/mL、25g/mL、30g/mL、35g/mL、40g/mL、45g/mLに変更した。
上記の生体模倣角膜は順次生体模倣角膜47~55と命名される。
【0091】
実施例12:生体模倣角膜及びその製造
本実施例は、生体模倣角膜を提供し、前記生体模倣角膜は、実施例1の生体模倣角膜1を基にして、架橋ステップのPEGDAのMPC母液中の濃度(10%、v/v)をそれぞれ0.5%、0.6%、1%、5%、8%、12%、15%(v/v)に変更した。
上記の生体模倣角膜は順次生体模倣角膜56~62と命名される。
【0092】
実験例1:PEG処方及び製造プロセスが生体模倣角膜の強度に与える影響についての実験
本実験例は、PEG処方及び製造プロセスが生体模倣角膜の強度に与える影響についての実験を提供し、実験の過程は以下の通りである。
生体模倣角膜1の製造方法を参照して、アミノ酸配列がSEQ ID NO.1で示されるコラーゲン様タンパク質をそのまま用いて生体模倣角膜を製造し、この生体模倣角膜をブランクとし、ユニバーサル引張機によって角膜1~62の強度を検出し、検出結果を表1に示す。
【0093】
表1から、PEG修飾処方の組み合わせ及び調製プロセスのいずれも生体模倣角膜の強度に影響を与えることがわかった。中でも、PEG修飾処方の組み合わせは角膜の強度と弾性に大きな影響を与える。反応温度とpHは、コラーゲン様タンパク質とPEG誘導体の結合率に直接関係しており、ポリマーネットワーク構造の形成に影響を与えることによって、修飾生成物をヒドロゲルにして角膜を形成できるかどうかの重要な要素の1つとなる。凍結乾燥賦形剤の組成は、ポリエチレングリコール化コラーゲンのために骨格サポートと保護を提供し、それによってポリマーの空間構造と生物学的活性に影響を与え、その結果、成膜後の硬度に違いがある。ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質の濃度が低すぎると角膜の強度が低下し、濃度が高すぎると角膜の硬化時間が非常に短くなり、その後の注入ステップを完了できなくなる。ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質の等電点は中性であるため、架橋pHが等電点から遠く離れていると、反応に関与する基が互いに近づくことができず、角膜強度が低下したり、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質のゲル化は起こらなかったりする。ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質で製造されたヒドロゲルは、温度に敏感なヒドロゲルであり、温度が低いと溶解性が悪く、角膜の固形分濃度が低くなり、強度が低下し、温度が高いと架橋速度が非常に速くなり、金型に流し込めなくなり、早期にゲル化してしまう。MPC母液中のPEGDAの濃度が低すぎると、角膜の強度が低下し、濃度が高すぎると、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質が過剰に架橋され、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質で製造されたヒドロゲルの脆性と靭性は増加し、靭性は低下し、それによって角膜の強度が低下する。表1では、角膜1~13、16~21、23~31、33~37、39~44、49~53、および56~62は、強度と生体適合性に優れており、角膜移植の分野での応用が期待されている。
【0094】
【表1】
【0095】
明らかに、上記の実施例は、単に明確に説明するための例であり、実施形態を限定するものではない。当業者にとっては、上記の説明に基づいて、他の異なる形の変化または変更が行われてもよい。ここでは、すべての実施形態を網羅的に挙げる必要もなく、また、不可能なことである。そして、そこから引き出された自明な変化又は変動も本願の保護範囲に含まれるものとする。
【配列表】
2024531731000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質を原料としており、前記ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質は、コラーゲン様タンパク質と、コラーゲン様タンパク質に修飾されたポリエチレングリコール誘導体と、を含み、前記ポリエチレングリコール誘導体は、PEG-40k及びPEG-20kを含む、ことを特徴とする生体模倣角膜。
【請求項2】
ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質を架橋して硬化させることにより得られ、及び/又は
前記コラーゲン様タンパク質のアミノ酸配列はSEQ ID NO.1で示される、ことを特徴とする請求項1に記載の生体模倣角膜。
【請求項3】
前記PEG-40kとPEG-20kとのモル比は0.5~6:1であり、好ましくは2~3:1であり、及び/又は
前記PEG-40kの活性化基数は、8-arm、4-arm、2-arm、又は1-armのうちの1つ又は複数であり、前記PEG-20kの活性化基数は、8-arm、4-arm、2-arm、又は1-armのうちの1つ又は複数であり、好ましくは、前記PEG-40kの活性化基数は4-arm、又は8-armであり、前記PEG-20kの活性化基数は4-arm、又は8-armであり、及び/又は
前記PEG-40kの活性化基は、-MAL、-NHS、-SG、-SPA、-SS、又は-EDCのうちの1つ又は複数であり、前記PEG-20kの活性化基は、-MAL、-NHS、-SG、-SPA、-SS、又は-EDCのうちの1つ又は複数であり、好ましくは、前記PEG-40kの活性化基は、-MALであり、前記PEG-20kの活性化基は、-MALである、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の生体模倣角膜。
【請求項4】
前記コラーゲン様タンパク質の一端にlinkerが連結されており、前記ポリエチレングリコール誘導体は、活性化基を通じてlinkerに修飾されており、好ましくは、前記linkerは、コラーゲン様タンパク質のN末端に連結されている、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の生体模倣角膜。
【請求項5】
前記linkerのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.2又はSEQ ID NO.3で示され、好ましくは、前記ポリエチレングリコール誘導体のlinkerへの修飾部位は、メルカプト、アミノ、カルボキシ、又はイミダゾリルのうちの1つ又は複数であり、より好ましくは、前記linkerのアミノ酸配列がSEQ ID NO.2で示される場合、前記ポリエチレングリコール誘導体のlinkerへの修飾部位はメルカプトであり、linkerのアミノ酸配列がSEQ ID NO.3で示される場合、前記ポリエチレングリコール誘導体のlinkerへの修飾部位はアミノである、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の生体模倣角膜。
【請求項6】
コラーゲン様タンパク質とポリエチレングリコール誘導体をpH 4.0~10.0、温度2~40℃の条件で1~48h反応させて、反応生成物を得る反応ステップと、
反応生成物を凍結乾燥させ、凍結乾燥製剤を得る凍結乾燥ステップと、
凍結乾燥製剤を緩衝液に溶解し、溶解液を得て、溶解液とMPC母液を混合し、混合液1を得て、混合液1とDMTMM母液を混合し、混合液2を得る架橋ステップと、
混合液2を角膜の金型に注入して静置し、角膜の粗品を得る硬化ステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の生体模倣角膜の製造方法。
【請求項7】
前記反応ステップは、コラーゲン様タンパク質とポリエチレングリコール誘導体をpH6.0~8.0、温度2~8℃の条件で5~8h反応させることであり、及び/又は
前記反応ステップでは、コラーゲン様タンパク質及びポリエチレングリコール誘導体の供給モル数の比は1~16:1であり、好ましくは、8~12:1であり、及び/又は
前記反応ステップでは、コラーゲン様タンパク質及びポリエチレングリコール誘導体の反応溶媒は水又は希塩酸溶液であり、好ましくは、前記希塩酸溶液の濃度は1~10mmol/Lであり、前記希塩酸溶液のpHが希アルカリ溶液で6.0~8.0に調整され、及び/又は
前記反応ステップでは、コラーゲン様タンパク質の反応溶媒中の供給濃度は1~15mg/mLであり、好ましくは、コラーゲン様タンパク質の反応溶媒中の供給濃度は8~10mg/mLであり、及び/又は
前記凍結乾燥ステップは、反応生成物と凍結乾燥保護剤を混合して凍結乾燥させ、凍結乾燥製剤を得ることであり、好ましくは、前記凍結乾燥保護剤は、マンニトール、スクロース、又はアラニンのうちの1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項8】
架橋ステップでは、前記緩衝液のpHは5.5~8.0であり、好ましくは、前記緩衝液のpHは、6.5~7.5であり、及び/又は
架橋ステップでは、前記緩衝液において、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質の濃度は、5~40g/mLであり、好ましくは、前記緩衝液において、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質の濃度は、12~18g/mLであり、及び/又は
架橋ステップでは、前記溶解液とMPC母液との混合質量比は、2:1~4:1であり、及び/又は
架橋ステップでは、前記混合液1とDMTMM母液との混合質量比は、5:1~7:1であり、及び/又は
前記架橋ステップは、25~60℃で行われ、好ましくは、45~55℃で行われる、ことを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
硬化ステップでは、前記静置温度は、4~35℃である、ことを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記MPC母液の成分は、MPC、PEGDA、TEMED、及び溶媒を含み、好ましくは、前記MPC母液において、MPCの濃度は15~40g/mLであり、前記MPC母液において、PEGDAの濃度は0.6~15体積%であり、TEMEDの濃度は0.05~2体積%であり、より好ましくは、前記MPC母液において、PEGDAの濃度は8~12%である、ことを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記MPC母液の溶媒は緩衝液であり、前記緩衝液のpHは6.0~8.0であり、好ましくは、前記DMTMM母液の成分は、DMTMM、APS、及び溶媒を含み、より好ましくは、前記DMTMM母液において、DMTMMの濃度は5~20g/mLであり、APSの濃度は0.5~5g/mLである、ことを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記DMTMM母液の溶媒は緩衝液であり、前記緩衝液のpHは6.0~8.0である、ことを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
硬化ステップの後、
角膜の粗品を金型とともに緩衝液に入れて第1浸漬を行い、第1浸漬終了後、金型を開いて、第2浸漬を行い、第2浸漬終了後、離型し、角膜の完成品を得る浸漬ステップをさらに含み、好ましくは、浸漬ステップでは、前記緩衝液のpHは5.5~8.0である、ことを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1浸漬は、温度が4~35℃、時間が5~24hであり、及び/又は、
前記第2浸漬は、温度が4~35℃、時間が3~10hである、ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
反応ステップの後かつ凍結乾燥ステップの前、
反応生成物中の分子量が30,000Da以上の物質を濾過により遮断し、ポリエチレングリコール化コラーゲン様タンパク質を得る精製ステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の方法。
【国際調査報告】