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特表2024-531733カートリッジ、インクジェットプリントヘッド、及びインクジェットプリンタ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】カートリッジ、インクジェットプリントヘッド、及びインクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20240822BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B41J2/175 171
B41J2/175 141
B41J2/175 101
B41J2/14 205
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024516518
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2022075539
(87)【国際公開番号】W WO2023041589
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】21197271.6
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】311007051
【氏名又は名称】シクパ ホルディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH-1008 Prilly, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】モレロ, ジョヴァンニ
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056FA03
2C056KC11
2C056KC25
2C056KC27
2C057AG12
2C057AG46
2C057BA04
2C057BA13
(57)【要約】
本発明はインクジェット印刷技術の分野に関する。インクリザーバが通気孔を通して外部環境と連通しているカートリッジは、インク充填後に外圧が大きく変化するとインク漏れが発生する。本発明は、カートリッジ本体(4)と、カートリッジ蓋(15)と、カートリッジ蓋(15)とカートリッジ本体(4)の開口部(38)との間にある軟質部材(101)と、を備え、カートリッジ蓋(15)がカートリッジ本体(4)に装着されるとき、カートリッジ蓋(15)の複数のリブ(23)が軟質部材(101)に突き当たり、その結果これらの間に封止接触部が形成されて、インクリザーバから排出されたインクの全部又は大部分を収容できる拡張空間(25)が形成される、カートリッジ(37)を提供する。本発明はまた、インクジェットプリントヘッド及びインクジェットプリンタも提供する。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部及びインク流開口を有するカートリッジ本体であって、前記カートリッジ本体内に、インクを収容するためのインクリザーバが形成されている、前記カートリッジ本体と、
前記開口部を覆うためのカートリッジ蓋であって、前記カートリッジ蓋にはインク充填孔及び通気孔が設けられており、前記カートリッジ蓋の内面には複数のリブが設けられている、前記カートリッジ蓋と、
前記カートリッジ蓋と前記開口部との間に設けられており、前記通気孔に重なるが前記インク充填孔には重ならない、軟質部材と、
を備え、前記カートリッジ蓋が前記カートリッジ本体に装着され前記開口部を覆うとき、前記複数のリブが前記軟質部材に突き当たり、その結果、前記複数のリブと前記軟質部材との間には封止接触部が形成され、前記カートリッジ蓋と前記軟質部材との間には拡張空間が形成され、前記拡張空間が前記インクリザーバから前記拡張空間へとインクが流入可能な入口を有し、前記拡張空間は前記通気孔を通して外部環境と連通している、
カートリッジ。
【請求項2】
前記カートリッジが、前記インクリザーバに挿入される多孔質部材及び/又は繊維部材を備え、前記軟質部材が、前記多孔質部材又は前記繊維部材の直上で前記カートリッジ本体内に正確に収納されるようなサイズであり、前記インク充填孔に対応する開放空間を備えている、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記軟質部材には、前記軟質部材の周縁部まで延びる前記開放空間が形成されるように、前記軟質部材の一端に、離間された2つの翼部が設けられている、請求項2に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記軟質部材には、前記インク充填孔と位置合わせされた貫通孔が設けられている、請求項2に記載のカートリッジ。
【請求項5】
前記軟質部材がゴムで製作されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記軟質部材が厚さ1mm~2mmの板状部材である、請求項5に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記拡張空間には多孔質材料が収容されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項8】
前記拡張空間が遠回りの拡張回路である、請求項1~4のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項9】
前記拡張空間が、狭い連通通路を通して流体連通している複数の拡張チャンバを備え、各拡張チャンバが、前記カートリッジ蓋に接続されており前記軟質部材に突き当たる前記複数のリブによって取り囲まれている、請求項1~4のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項10】
前記複数のリブが、前記通気孔を取り囲む2つの曲線的なリブを含む、請求項9に記載のカートリッジ。
【請求項11】
隣接する2つのリブが互いから離間されて前記狭い連通通路が形成されている、請求項9に記載のカートリッジ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のカートリッジを備える、インクジェットプリントヘッド。
【請求項13】
前記インクジェットプリントヘッドが、前記カートリッジに取り付けられたマイクロ流体デバイスを備えるサーマルインクジェットプリントヘッドであり、前記マイクロ流体デバイスが、
複数の抵抗器と、
前記複数の抵抗器の上方に配設され、前記インク流開口と流体連通している複数の吐出チャンバと、
前記複数の吐出チャンバを覆っており、前記複数の吐出チャンバからインクを噴射するための複数の吐出ノズルが設けられているノズルプレートと、
を備える、請求項12に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項14】
請求項12又は13に記載のインクジェットプリントヘッドを備える、インクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
[0001]本発明はインクジェット印刷技術の分野に関し、詳細には、インクジェットプリントヘッドの輸送及び/又は工場とは異なる高度での使用に起因する、通気孔からカートリッジの外側へのインク漏れを防止することに関し、より詳細には、カートリッジ、インクジェットプリントヘッド、及びインクジェットプリンタに関する。
【発明の背景】
【0002】
[0002]図1a、図1b、及び図2に示すように、インクジェットプリントヘッドのカートリッジ37は、カートリッジ本体4と、カートリッジ本体4の開口部38を覆うためのカートリッジ蓋15と、を備える。カートリッジ本体4内には、インクを収容するためのインクリザーバ10が形成されている。カートリッジ本体4は、インクリザーバ10とインクジェットプリントヘッドの吐出チャンバとを連通するインク流開口13をさらに備え、インク流開口13は、フィルタ12及びパイプ11を通してインクリザーバ10と連通している。
【0003】
[0003]インクジェットプリントヘッドの吐出チャンバの吐出ノズルを通るインク流は、インクジェットプリンタによるハイエンド品質の印刷を達成するための不可欠な前提条件の1つであるため、正確に制御されねばならない。インク流のこの量の制御を行うのを支援する1つのシステムは、インクジェットプリントヘッドのカートリッジのインクリザーバ内に収容された液体中にわずかに負圧をもたらす背圧システムである。液体中の負圧によって、インクの意図しない漏れが防止される。そうでなければ、インクを使用するインクジェットプリントヘッドがアイドル状態にあるとき又はカートリッジが取り扱い中に突然の加速を受けたときに、そのような漏れが発生する可能性がある。
【0004】
[0004]図1a、図1b、及び図2に示すように、当技術分野でよく知られている可能な背圧システムは、欧州特許第3302983B1号に記載されているように、カートリッジ37のインクリザーバ10に挿入される多孔質部材14(例えば、オープンセル発泡体)、繊維部材、又はこれら2つの部材の組合せを利用して、インクリザーバ10内に収容されている液体に、細孔の網の又は繊維間の毛細管効果が生み出す負圧を生じさせる。
【0005】
[0005]インクリザーバ10に挿入された多孔質部材14に由来する毛細管力によって背圧が生成される場合、インクリザーバ10は外部環境と連通していなければならない。言い換えれば、多孔質部材14内の境界液面は大気圧でなければならない。インクリザーバ10が外部環境と連通していない場合、印刷中のインク吐出に起因してインクリザーバ10内のインクレベルが低下する一方で、インクリザーバ10内に収容された液体の圧力が適切な背圧値をはるかに超えて降下することになり、インクジェットプリントヘッドのそれ以上の吐出が防止される。
【0006】
[0006]外部環境との適切な連通を実現するために、カートリッジ蓋15には一般に、インク充填孔16を除いて通気孔17が設けられる。詳細には、図1a、図1b、図2図3a、及び図3bに示すように、カートリッジ蓋15には、インクリザーバ10にインクを充填するために多孔質部材14の大部分を貫通する針が通される、インク充填孔16と、インクリザーバ10を外部環境と連通させるための通気孔17と、が設けられる。通気孔17は、カートリッジ蓋15の外面に成形される浅い蛇行した通気チャネル18の一端に配設される。インク充填孔16はかなり大きく、インクの過剰な蒸発を防止するために接着ラベル19又はプラグ(図示せず)を用いて(インク)充填後に閉じられる。接着ラベル19は、インク充填孔16だけでなく、通気孔17にも重なる。接着ラベル19は、浅い蛇行した通気チャネル18の最上部を閉鎖し、天井面として機能する。浅い蛇行した通気チャネル18の最端部の通気出口20は覆われないままであり、このことによりインクリザーバ10が外部環境と連通することが可能になる。浅い蛇行した通気チャネル18の小さな断面及び適切な長さによって、蒸発速度が低く保たれ、同時に、印刷中であってもインクリザーバ10の内側と外側との間の圧力バランスが維持される。当然ながら、インク充填孔16及び通気孔17にはそれぞれ、別個の2枚のラベル(図示せず)を好適に用いることもできる。図4に示すように、カートリッジ蓋15の内面には、インク充填孔16及び通気孔17に加えて、一般に、カートリッジ本体4との超音波接合に適した外周封止フレーム22と、カートリッジ蓋15を適切に強化してカートリッジ蓋15の何らかの変形又は破損を防止するように設計されている、複数のリブ23及び追加の外周補強フレーム41と、が設けられる。通常、そのようなリブ23及び外周補強フレーム41は、カートリッジ蓋15の成形プロセス中に一度に得られる。
【0007】
[0007]インクリザーバ10に充填されたインクによって、多孔質部材14の大部分が浸される。毛細管力により、インクが多孔質部材14の外に出ることが防止される。それにもかかわらず、インクは、特に多孔質部材14が繊維方向に沿ったインク移動を容易に可能にする繊維部材である場合に、多孔質部材14にわたって一定量の内部移動性を有する。そのため、インクが充填されたインクジェットプリントヘッドを取り扱うと、多孔質部材14中にある程度の空気が捕捉される可能性がある。この捕捉された空気は、場合によってはインクで取り囲まれる可能性さえある。インク充填段階中のインク充填孔16と針との間のあり得る不適切な動作又は密閉封止の欠如に起因して、パイプ11内にある程度の更なる空気の捕捉が生じさえし得る。簡単に言えば、インクジェットプリントヘッドでは、インク内にいくつかの空気の島が捕捉されたままとなる可能性が、ある程度存在する。
【0008】
[0008]充填後は、インクジェットプリントヘッドを取り囲む大気圧がインクリザーバ10のインクのない部分内にも存在し、このときインクジェットプリントヘッドに収容されている液体においては、結果として生じる圧力は大気圧によるものであり、液柱の静水圧によって増大し、多孔質部材14の毛細管圧によって減少する。多孔質部材14の毛細管作用は、孔のサイズ、並びにインクの表面張力及び多孔質部材材料の濡れ性に依存し、インクリザーバに収容される液体における圧力が外部環境に対してより低くなるように慎重に設計される。
【0009】
[0009]インクジェットプリントヘッドの輸送の準備が完了する前に、インクの蒸発を防止するために及び粒子汚染又は機械的な傷から吐出ノズルを保護するために、吐出ノズルが適切な接着テープで封止される。インクジェットプリントヘッドは、最終的にプラスチックカップ内に設置され、プラスチック-アルミニウム二重層パッキングカバーで熱的に封止される。結果として、インクジェットプリントヘッドは、工場の大気圧と同じ内圧の密閉容器に封入されることになる。
【0010】
[0010]しかしながら、インクジェットプリントヘッドの輸送中、又はインクジェットプリントヘッドが高所で使用されることになる場合、密閉容器は大きな圧力変化を受ける可能性がある。例えば、空輸の場合、飛行中に貨物倉が低圧になる可能性がある。別の例では、インクジェットプリントヘッドの最終目的地が、異なる高度に起因して、工場の環境圧力とは非常に異なる環境圧力にある可能性がある。密閉容器の環境圧力が変化すると、密閉容器の内圧と環境圧力との間の不均衡が引き起こされ得る。密閉容器の不均衡な内圧によってパッキングカバーが外側に引っ張られ、その結果、密閉容器の内圧が工場内の当初の圧力に対して低下する。
【0011】
[0011]インクリザーバは通気孔を介してカートリッジの外側の領域と連通しているため、環境が工場の圧力よりも低い圧力にある場合、多孔質部材内に捕捉された空気が膨張し、カートリッジが密閉容器内にあるとき又は最終使用者がパッキングカバーをめくり取るときのいずれかにおいて、インクが引き出され、このインクが通気孔から漏れ出す可能性がある。
【0012】
[0012]追加のラベル又は取り外し可能なプラグによる通気出口の封止は、封止されたカップ内でのインクの漏れを防止する機能しかもち得ず、最終目的地の圧力が工場の圧力よりも著しく低い場合には機能しない。すなわち、追加のラベル又はプラグを取り外すと内圧の突然の不均衡が生じ、インクが通気出口の外側に噴出する。そのような現象は、多孔質部材内に空気が捕捉されない場合にも起こり得る。いずれにせよ、密閉容器の内圧の急激な変動により通気孔からのインク噴出が容易に生じ得るが、その理由は、インクリザーバ内の液面と外部との間の連通が短い距離を介して行われ、インクがほぼ直接的に外向きに流れることができるからである。
【0013】
[0013]インクが通気孔17から噴出する状況が図2に概略的に示されている。インクリザーバ10及びカートリッジ蓋15の相互の位置が分解図で示されており、圧力不均衡によって引き起こされる急激なインクの流れ21が、矢印で概略的に表されている。インクは、カートリッジ蓋5のインク充填孔16及び通気孔17に向かう短い直接的な行程を急速に移動する。インク充填孔16は接着ラベル19(図3b)によって封止されるが、接着ラベル19は通気孔17及び浅い蛇行した通気チャネル18の大部分にも重なり、外部と連通する通気出口20が残される。接着ラベル19の下にある浅い蛇行した通気チャネル18の容積は非常に小さく、インクで短時間に充填され得、インクは結果的に、浅い蛇行した通気チャネル18の最端部にある通気出口20から噴出することになる。
【発明の概要】
【0014】
[0014]上記の技術的問題を解決するために、本発明の解決法は、環境圧力の変化に起因するインクリザーバの内圧とインクリザーバの外側の環境圧力との間の不均衡によって引き起こされる、生じ得るあらゆるインクの流れを集めて、インクがカートリッジの外側に漏れるのを防止する目的で、通気孔と接続されている拡張空間を有するカートリッジを提供することから成る。
【0015】
[0015]本発明の第1の態様では、カートリッジが提供される。カートリッジは、開口部及びインク流開口を有するカートリッジ本体であって、カートリッジ本体内に、インクを収容するためのインクリザーバが形成されている、カートリッジ本体と、開口部を覆うためのカートリッジ蓋であって、カートリッジ蓋にはインク充填孔及び通気孔が設けられており、カートリッジ蓋の内面に複数のリブが設けられている、カートリッジ蓋と、カートリッジ蓋と開口部との間に設けられており、通気孔に重なるがインク充填孔には重ならない、軟質部材と、を備え、カートリッジ蓋がカートリッジ本体に装着され開口部を覆うとき、複数のリブが軟質部材に突き当たり、その結果、複数のリブと軟質部材との間には封止接触部が形成され、カートリッジ蓋と軟質部材との間には拡張空間が形成され、拡張空間がインクリザーバから拡張空間へとインクが流入可能な入口を有し、拡張空間は通気孔を通して外部環境と連通している。
【0016】
[0016]本発明のカートリッジは、インクが直接の連通によって短い移動でカートリッジの外側の領域に到達するのを防止することができる。逆に、インクは強制的により長い拡張空間の中を通ることになり、生じ得る噴出の激しさが緩和され、圧力の不均衡に起因してインクリザーバから排出されたインクの全部又は大部分を収容できる内部拡張容積又は内部拡張空間が提供される。さらに、軟質部材はわずかに柔軟性があり、カートリッジ蓋上の複数のリブと非常に良好に適合し得るので、拡張空間はカートリッジ蓋の複数のリブと軟質部材との間の封止接触部によって単純に形成され、カートリッジ蓋と軟質部材との間の実体のある接合部は必要なく、したがって、製造工程はより単純であり、製造ラインへの導入が容易であり、コスト効率が良い。
【0017】
[0017]カートリッジは、インクリザーバに挿入される多孔質部材及び/又は繊維部材を備え、軟質部材は多孔質部材又は繊維部材の直上でカートリッジ本体内に正確に収納されるようなサイズであり、インク充填孔に対応する開放空間を備えるのが好ましい。
【0018】
[0018]この実装形態では、軟質部材は、多孔質部材及び/又は繊維部材の挿入後、カートリッジ本体に単純に挿入され、多孔質部材及び/又は繊維部材の上に設置されて、何ら位置合わせの必要はない。その後、カートリッジ蓋をカートリッジ本体に装着することができる。装着中、カートリッジ蓋上の複数のリブにはいくらかの圧力がかかり、その圧力は部分的に軟質部材に伝えられ、封止接触部が実現される。またさらに、軟質部材は滑り落ちる可能性がなく、カートリッジの取り扱い中であってもその安定位置に留まり、上にあるカートリッジ蓋上の複数のリブとの適正な接触が保証される。
【0019】
[0019]軟質部材には、軟質部材の周縁部まで延びる開放空間が形成されるように、軟質部材の一端に、離間された2つの翼部が設けられるのが好ましい。この実装形態により、カートリッジのインク充填はより単純になる。
【0020】
[0020]軟質部材にインク充填孔と位置合わせされた貫通孔が設けられるのが好ましい。
【0021】
[0021]軟質部材はゴムで製作されるのが好ましい。
【0022】
[0022]軟質部材は厚さ1mm~2mmの板状部材であるのが好ましい。1mm~2mmの厚さは、カートリッジ蓋及び軟質部材によって拡張空間を形成するのに十分である。またさらに、蓋の成形工程において導入されるリブ縁部の小さな凹凸さえも補償され得る。
【0023】
[0023]拡張空間には多孔質材料が収容されるのが好ましい。多孔質材料は、外部との流体連通を損なうことなく、インク流の激しさの減衰を向上させることができる。
【0024】
[0024]拡張空間は遠回りの拡張回路であるのが好ましい。拡張空間を遠回りな形状にすることで、ダンピング効果及び通過に必要な利用可能容積の両方を高めることができる。遠回りの拡張回路によって、入口から拡張空間に流入したインクには強制的に、通気孔から噴出するまでにより長い流路を通過しより多くの時間を要する必要が生じる。
【0025】
[0025]拡張空間は、狭い連通通路を通して流体連通している複数の拡張チャンバを備え、各拡張チャンバは、カートリッジ蓋に接続されており軟質部材に突き当たる複数のリブによって取り囲まれているのが好ましい。狭い連通通路に起因する、拡張回路に沿った幅の急激な変化は、流れの減衰に寄与する。
【0026】
[0026]複数のリブには通気孔を取り囲む2つの曲線的なリブが含まれるのが好ましい。
【0027】
[0027]好ましくは、隣接する2つのリブは互いから離間されて、狭い連通通路を形成する。
【0028】
[0028]狭い連通通路(複数可)は複数のリブに形成されるのが好ましい。
【0029】
[0029]本発明の第2の態様では、インクジェットプリントヘッドが提供される。インクジェットプリントヘッドは上述したカートリッジを備える。
【0030】
[0030]インクジェットプリントヘッドは、カートリッジに取り付けられたマイクロ流体デバイスを備えるサーマルインクジェットプリントヘッドであり、マイクロ流体デバイスは、複数の抵抗器と、複数の抵抗器の上方に配設され、インク流開口と流体連通している複数の吐出チャンバと、複数の吐出チャンバを覆っており、複数の吐出チャンバからインクを噴射するための複数の吐出ノズルが設けられているノズルプレートと、を備えるのが好ましい。
【0031】
[0031]本発明の第3の態様では、インクジェットプリンタが提供される。インクジェットプリンタは上述したインクジェットプリントヘッドを備える。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の非限定的且つ非網羅的な実施形態について、以下の図面を参照して例を用いて説明する。
図1a】知られているカートリッジの分解図である。
図1b】知られているカートリッジの分解図である。
図2図1a及び図1bのカートリッジの概略図である。
図3a】粘着ラベルが取り外されている、図1a及び図1bのカートリッジのカートリッジ蓋の外面の概略図である。
図3b図1a及び図1bのカートリッジのカートリッジ蓋の外面の概略図である。
図4】知られているカートリッジのカートリッジ蓋の底面図である。
図5】本発明のある実施形態に係るインクジェットプリントヘッドの概略斜視図である。
図6a図5のインクジェットプリントヘッドのカートリッジの分解図である。
図6b図5のインクジェットプリントヘッドのカートリッジの分解図である。
図7図5のインクジェットプリントヘッドのマイクロ流体デバイスの概略部分断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係るカートリッジ蓋の概略斜視図である。
図9】本発明の一実施形態に係るカートリッジ蓋の底面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る軟質部材の概略斜視図である。
図11】本発明の一実施形態に係る軟質部材の底面図である。
図12】本発明の別の実施形態に係るカートリッジ蓋の概略斜視図である。
図13】本発明の別の実施形態に係るカートリッジ蓋の底面図である。
図14】本発明のさらに別の実施形態に係るカートリッジ蓋の内面の概略図である。
図15】カートリッジ蓋の断面図である。
【実施形態の詳細な説明】
【0033】
[0049]本発明の上記の及び他の特徴及び利点をより明確にするために、添付の図面と組み合わせて以下で本発明をさらに説明する。本発明の具体的な実施形態は例示的なものであり、制限的なものとなることは意図していないことを理解されたい。
【0034】
[0050]本発明は、カートリッジ、インクジェットプリントヘッド、及びインクジェットプリンタを提供する。図5は、本発明のある実施形態に係るインクジェットプリントヘッド1の概略斜視図を示す。本実施形態では、インクジェットプリントヘッド1は、バブルインクジェットプリントヘッドなどのサーマルインクジェットプリントヘッドである。他の実施形態では、インクジェットプリントヘッド1は圧電式インクジェットプリントヘッドであってもよい。
【0035】
[0051]インクジェットプリントヘッド1は1つ又は複数のカートリッジ37を備える。カートリッジ37はそれぞれ異なる色のインクを収容し得る。図6a及び図6bは、図5のインクジェットプリントヘッドのカートリッジの分解図を示す。図6a及び図6bに示すように、カートリッジ37は、一般にプラスチック材料で製作される、カートリッジ本体4を備える。カートリッジ本体4には開口部38とインク流開口13とがある。カートリッジ本体4内には、インクを収容するためのインクリザーバ10が形成されている。インク流開口13とインクリザーバ10との間にはフィルタリングデバイス12が設けられている。この実施形態では、フィルタリングデバイス12はメッシュフィルタである。任意選択として、フィルタリングデバイス12は、インクリザーバ10との境界でフィルタリングデバイス12を上端とし、他端はインク流開口13で終端する、パイプ11(例えばスタンドパイプ)を通して、インク流開口13と連通する。
【0036】
[0052]図5に示すように、インクジェットプリントヘッド1は、カートリッジ37に取り付けられたマイクロ流体デバイス2をさらに備える。例えば、マイクロ流体デバイス2は、マイクロ流体デバイス2とカートリッジ37との間の接合部に機械的強度と密閉性の両方をもたらす封止糊着剤を介して、カートリッジ37のカートリッジ本体4に接着される。マイクロ流体デバイス2はカートリッジ37のインク流開口13と流体連通しており、カートリッジ37のインクリザーバ10内に収容されているインクが、インク流開口13を介してマイクロ流体デバイス2へと流れることができるようになっている。マイクロ流体デバイス2は接触パッド3を通して電気的に起動される。
【0037】
[0053]図7は、図5のインクジェットプリントヘッドのマイクロ流体デバイスの概略部分断面図を示す。図7に示すように、マイクロ流体デバイス2は、複数の吐出チャンバ6と、複数の吐出チャンバ6に対応する複数の抵抗器5と、を備える。吐出チャンバ6は抵抗器5の上方に配設されており、カートリッジ37のインク流開口13と流体連通している流体迂回路7の一部である。したがって、吐出チャンバ6はインク流開口13と流体連通しているということができる。インク流開口13からのインクは流体迂回路7を流れ、吐出チャンバ6に到達する。流体迂回路7は、バリア層39と呼ばれる適切なポリマー層でパターニングされている。バリア層39上にはノズルプレート8が配設されており、これがマイクロ流体デバイス2の頂部を閉鎖している。ノズルプレート8は吐出チャンバ6も覆っている。ノズルプレート8には、吐出チャンバ6ごとに吐出ノズル9が設けられている。吐出ノズル9は、吐出チャンバ6からインクを噴射するために使用される。詳細には、要求に応じて抵抗器5を通して瞬時の電流パルスを印加して、インクの薄層を急速に蒸発させることができる。高い値の蒸気圧によって蒸気泡の膨張が引き起こされ、このことによりインクが吐出ノズル9から上方に引き出され、その結果インク滴の吐出が生じる。吐出後、インクリザーバ10から新しいインクが回収され、吐出チャンバ6及び吐出ノズル9に再びインクが充填し直される。
【0038】
[0054]上述したように、インクジェットプリントヘッド1には、インク流の制御を行うのを支援するための背圧システムが使用されている。この実施形態では、図6a及び図6bに示すように、多孔質部材14(例えば、オープンセルフォーム)及び/又は繊維部材をインクリザーバ10に挿入して、インクリザーバ10内に収容されている液体に、細孔の網の又は繊維間の毛細管効果が生み出す負圧を生じさせることができる。ただし、液体に適切な背圧を生じさせるために、他の方法を用いてもよい。例えば、パイプ及び吐出チャンバと流体連通している開口部を有するブリスタを使用してもよく、ブリスタのシェルは金属ばね又は何らかの他の弾性要素によって、機械的に外向きに付勢される。ブリスタは、パイプとの連通開口部を除いて、外部環境から流体に関して隔離されている。インクジェットプリントヘッドの寿命期間全体にわたって適切な背圧を提供するために、弾性構成要素は慎重に較正されねばならない。
【0039】
[0055]図6a及び図6bに示すように、カートリッジ37は、カートリッジ本体4の開口部38を覆うためのカートリッジ蓋15をさらに備える。カートリッジ蓋15はカートリッジ本体4に取り外し可能に装着され得る。カートリッジ蓋15はまた、例えば糊着、超音波溶着、又は任意の他の適切な方法によって、カートリッジ本体4に永続的に装着されても、言い換えれば、接合されてもよい。詳細には、本発明の一実施形態によるカートリッジ蓋の概略斜視図及び底面図をそれぞれ示す図8及び図9に示すように、カートリッジ本体4の開口部38がカートリッジ蓋15によって覆われるように、カートリッジ本体4にカートリッジ蓋15の外周封止フレーム22を接合してもよい。図6a、図6b、図8、及び図9に示すように、カートリッジ蓋15にはインク充填孔16と通気孔17とが設けられている。充填孔16はインクリザーバ10にインクを充填するために使用される。通気孔17はインクリザーバ10を外部環境と連通させるために使用される。通気孔17は、カートリッジ蓋15の外面に成形される浅い蛇行した通気チャネル18の一端に配設される。インク充填孔16は大きく、インクリザーバ10にインクを充填するためのインク充填ツール、例えば針を通すことができる。またさらに、カートリッジ蓋15の内面にはリブ23が設けられている。本明細書における「外側」、「内側」、「上側」、及び「下側」などの位置関係を説明する用語は、カートリッジ蓋15がカートリッジ本体4の開口部38を覆う場合を基準として説明していることに留意されたい。一方で、リブ23は、カートリッジ蓋15を適切に強化してカートリッジ蓋15の何らかの変形又は破損を防止するように設計されており、他方で、リブ23は、拡張空間25のチャンバ壁を形成しているが、このことについては以下で詳細に記載する。
【0040】
[0056]カートリッジ37内の圧力とカートリッジ37の外側の圧力との間の不均衡の影響を排除、又は少なくとも緩和するために、特定のインク拡張容積又は拡張空間25が形成される。図6a及び図6bに示すように、カートリッジ37は、カートリッジ蓋15とカートリッジ本体4の開口部38との間に設けられており且つ通気孔17に重なる、軟質部材101をさらに備える。軟質部材101がインク充填孔16に重ならないのは、インク充填孔16を通したインク充填に影響しないようにするためであることが理解できる。カートリッジ蓋15がカートリッジ本体4に装着されカートリッジ本体4の開口部38を覆うとき、カートリッジ蓋15の内面上に設けられたリブ23が軟質部材101に突き当たり、その結果、リブ23と軟質部材101との間には封止接触部が形成され、カートリッジ蓋15と軟質部材101との間には拡張空間25が形成される。図8及び図9に示すように、拡張空間25はインクリザーバ10から拡張空間25へとインクが流入可能な入口26を有し、拡張空間25は通気孔17を通して外部環境と連通している。入口26を通気孔17から遠く離して設けてもよい。任意選択として、入口26を軟質部材101に設けてもよい。別法として、入口26をカートリッジ蓋15と軟質部材101との間に設けてもよい。カートリッジ蓋15がカートリッジ本体4の開口部38を覆うと、入口26によってインクリザーバ10からのインクを拡張空間25に流入することが可能になり、通気孔17によって拡張空間25が外部環境と連通する。カートリッジ蓋15の内面(例えば下面)は拡張空間25の天井として機能し、一方、軟質部材101の外面(例えば上面)は拡張空間25の床として機能する。1つの可能な実施形態では、軟質部材101はカートリッジ蓋15と平行である。
【0041】
[0057]拡張空間25を形成する目的は、インクが直接の連通により短い移動でカートリッジ37の外側の領域に到達するのを防止することである。逆に、インクは通気孔17に到達する前により長い拡張空間25、特に遠回りの拡張経路又は拡張回路の中を通ることを余儀なくされ、生じ得る噴出の激しさが緩和され、圧力の不均衡に起因してインクリザーバから排出されたインクの全部又は大部分を収容できる内部拡張容積又は内部拡張空間25が提供される。
【0042】
[0058]軟質部材101はゴム(特にシリコーンゴム)などの軟質材料で製作される。図10及び図11はそれぞれ、本発明の一実施形態に係る軟質部材の概略斜視図及び底面図を示す。図10及び図11に示すように、軟質部材101は板状部材であってもよく、その厚さは、カートリッジ蓋15がカートリッジ本体4に装着、例えば超音波接合されたときに、いくらかの圧力でカートリッジ蓋15上のリブ23と接触するのに十分な高さである。軟質部材101はわずかに柔軟性があり、カートリッジ蓋15上のリブ23と非常に良好に適合し得るので、軟質部材101をカートリッジ蓋15に取り付けるために何らかの接着剤又は糊着剤を使用する必要なく、すなわち、カートリッジ蓋15と軟質部材101との間に実体のある接合部を必要とすることなく、軟質部材101の機械的干渉及び軟質性によって良好な封止接触部を実現することができ、したがって、製造工程はより単純であり、製造ラインへの導入が容易であり、コスト効率が良い。一般に、板状の軟質部材101の厚さは1mm~2mmであるが、これはカートリッジ蓋15と共に拡張空間25を形成するのに十分であり、蓋の成形工程において導入されるリブ縁部の小さな凹凸をも補償し得る。
【0043】
[0059]原理的には、軟質部材101は、通気孔17を含むカートリッジ蓋15の一部、例えば、図8に示すカートリッジ蓋15の右半部に重なるだけでよいが、軟質部材101はカートリッジ蓋15に取り付けられていないので、製造工程でのカートリッジの取り扱い中に軟質部材101が前後に滑る可能性があり、拡張空間25の一部が完全に閉じられないままとなるリスクがある。
【0044】
[0060]好ましい実施形態では、軟質部材101は図10及び図11に示すような形状である。軟質部材101は、多孔質部材14又は繊維部材の直上でカートリッジ本体4内に正確に収納されるようなサイズである。多孔質部材14又は繊維部材の上方の軟質部材101の位置は、カートリッジ本体4内で自己調整される。言い換えれば、カートリッジ本体4の開口部38は、軟質部材101を多孔質部材14又は繊維部材の直上に正確に収容することができる。多孔質部材14又は繊維部材が、軟質部材101が及ぼす圧力に効果的に対抗できるようないくらかの剛性を有するべきであることは、強調しておく価値がある。例えば、繊維部材は1つの繊維体であり、繊維方向に沿って圧縮されるとかなりの剛性を有する。またさらに、圧縮発泡体も十分な剛性を有し得る。
【0045】
[0061]軟質部材101には、インク充填孔16に対応する開放空間103が設けられている。拡張空間25の入口26は、開放空間103を通してインクリザーバ10と連通し得る。このようにして、軟質部材101は、多孔質部材14及び/又は繊維部材の挿入後、カートリッジ本体4に単純に挿入され、多孔質部材14及び/又は繊維部材の上に設置されて、何ら位置合わせの必要はない。その後、カートリッジ蓋15をカートリッジ本体4に装着することができる。装着中、カートリッジ蓋15上のリブ23にはいくらかの圧力がかかり、その圧力は部分的に軟質部材101に伝えられ、封止接触部が実現される。またさらに、軟質部材101は滑り落ちる可能性がなく、カートリッジの取り扱い中であってもその安定位置に留まり、上にあるカートリッジ蓋15上のリブ23との適正な接触が保証される。
【0046】
[0062]詳細には、図10及び図11に示すように、軟質部材101には、軟質部材101の一端に、互いから離間されている2つの翼部102が設けられている。軟質部材101の2つの翼部102の目的は、カートリッジ蓋15のインク充填孔16を通してインクリザーバ10を何の支障もなく充填できるようにするための上述した開放空間103を形成し、同時に、カートリッジ本体4内の多孔質部材14又は繊維部材の上方での軟質部材101の位置安定性をもたらすことである。明らかに見て取れるように、開放空間103は軟質部材101の周縁部まで延びている。実際には、開放空間103は軟質部材101の周縁部まで延びる必要はなく、カートリッジ蓋15のインク充填孔16を通してインクリザーバ10を何の支障もなく充填できるようにするためには、軟質部材101に設けられ上にあるインク充填孔16と位置合わせされている単純な内部貫通孔で十分であり得るが、本出願人は、翼部の解決法を採用すれば、インクリザーバ10のインク充填がより単純になることを発見した。
【0047】
[0063]拡張空間25は遠回りの拡張回路であるのが好ましい。拡張空間25を遠回りな形状にすることで、ダンピング効果及び通過に必要な利用可能容積の両方を高めることができる。遠回りの拡張回路によって、入口26から拡張空間25に流入したインクには強制的に、通気孔17から噴出するまでにより長い流路を通過しより多くの時間を要する必要が生じる。
【0048】
[0064]ある種の遠回りの拡張回路は、狭い連通通路を通して連通させた一連の拡張チャンバと考えることができる。詳細には、図8及び図9に示すように、拡張空間25は、狭い連通通路を通して流体連通している複数の拡張チャンバを備え得る。例えば、図14を参照すると、拡張チャンバ31及び32は、狭い連通通路33を通して連通されている。複数の狭い連通通路33に起因する、拡張回路に沿った幅の急激な変化は、流れの減衰に寄与する。
【0049】
[0065]拡張チャンバを、カートリッジ蓋15に順に接続されており軟質部材101に突き当たるチャンバ壁、すなわちリブ23によって取り囲むことができる。拡張チャンバをまた、カートリッジ蓋15に順に接続されており軟質部材101に突き当たる外周補強フレーム41によって取り囲むこともできる。外周補強フレーム41は外周封止フレーム22よりも突出している。チャンバ壁は、既存のカートリッジ蓋のリブ設計(それらのうちの1つを図4に示す)を、拡張チャンバのチャンバ壁が形成されるように追加部品を追加するか又は既存のリブ23の長さ及び位置を変更することで修正することによって、実現することができる。チャンバ壁及び外周補強フレーム41は、何らかの適切な糊着剤若しくは接着剤、又は超音波溶着、又は当技術分野でよく知られている任意の他の方法を用いて、カートリッジ蓋15に接続することができる。
【0050】
[0066]任意選択として、拡張空間25には何らかの多孔質材料が収容されてもよい。例えば、図12及び図13に示す別の実施形態では、外部との流体連通を損なうことなく、インク流の激しさの減衰を向上させるために、拡張空間25の一部に何らかの多孔質材料28を収容することさえできる。多孔質材料28はただ1つの拡張チャンバ内に収容されてもよいし、複数の拡張チャンバ内に、又はさらに全ての拡張チャンバ内に収容されてもよい。
【0051】
[0067]さらに別の実施形態では、図14に示すように、拡張チャンバのいくつかのチャンバ壁は、直線的なプロファイルではなく湾曲したプロファイルを有する。この実施形態では、チャンバ壁は、通気孔17を取り囲む2つの曲線的な壁29を備える。2つの曲線的な壁29は、インク用の2つの狭い連通通路30が形成されるように、互いから離間されている。
【0052】
[0068]図15に示すように、狭い連通通路は様々な様式で得ることができる。カートリッジ蓋15の断面には、狭い連通通路を得るための可能な様々な様式が示されている。例えば、2つの隣り合うチャンバ壁が互いから離間され、狭い連通通路34が2つの隣り合うチャンバ壁の間の間隙によって生み出され、この場合間隙はカートリッジ蓋15から軟質部材101まで延びている。別の例として、間隙として構成された狭い連通通路35がチャンバ壁に設けられており、この間隙はカートリッジ蓋15に達しておらず、間隙の2つの側面を接続する立ち上がり部があり、その結果浅い間隙となっている。さらに別の例として、狭い連通通路36は完全にチャンバ壁内に設けられ、チャンバ壁を貫通する穴となるように構成されている。最初の2つの変形形態は標準的な成形工程で容易に得ることができるが、最後の1つはより複雑な製造工程を必要とする。いずれにせよこれらは全て有益に採用することができる。
【0053】
[0069]説明した実施形態は本発明の概念の例に過ぎない。拡張空間又は拡張回路の詳細な特徴は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な解決法に応じて適切に変更又は統合され得る。インクジェットプリントヘッドのカートリッジに対するカートリッジ蓋に組み込まれた拡張空間は、インクリザーバの内側と外側との間の圧力不均衡が引き起こす問題に効果的に対処し、物流上の欠点を解決し、様々な高度でのインクジェットプリントヘッドの適正な使用を可能にする。
【0054】
[0070]上記した様々な技術的特徴を任意に組み合わせることができる。様々な技術的特徴の可能な組合せの全てが記載されているわけではないが、これらの技術的特徴の全ての組合せは、それらが矛盾しない限り、本明細書に記載されている範囲内にあると考えるべきである。
【0055】
[0071]実施形態と組み合わせた本発明の説明にかかわらず、当業者は、上記の説明及び図面は単に例示的なものであり、制限的なものではなく、本発明が開示された実施形態に限定されないことを理解するであろう。本発明の概念から逸脱することなく、様々な修正及び変形が可能である。
【符号のリスト】
【0056】
1 インクジェットプリントヘッド
2 マイクロ流体デバイス
3 接触パッド
4 カートリッジ本体
5 抵抗器
6 吐出チャンバ
7 流体迂回路
8 ノズルプレート
9 吐出ノズル
10 インクリザーバ
11 パイプ
12 フィルタリングデバイス
13 インク流開口
14 多孔質材料
15 カートリッジ蓋
16 インク充填孔
17 通気孔
18 浅い蛇行した通気チャネル
19 接着ラベル
20 通気出口
21 インクの流れ
22 外周封止フレーム
23 リブ
25 拡張空間
26 入口
28 多孔質材料
29 曲線的な壁
30 狭い連通通路
31 拡張チャンバ
32 拡張チャンバ
33 狭い連通通路
34 狭い連通通路
35 狭い連通通路
36 狭い連通通路
37 カートリッジ
38 開口部
39 バリア層
41 外周補強フレーム
101 軟質部材
102 翼部
103 開放空間
図1a
図1b
図2
図3a)】
図3b)】
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2023-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部(38)及びインク流開口(13)を有するカートリッジ本体(4)であって、前記カートリッジ本体(4)内に、インクを収容するためのインクリザーバ(10)が形成されている、前記カートリッジ本体(4)と、
前記開口部(38)を覆うためのカートリッジ蓋(15)であって、前記カートリッジ蓋(15)にはインク充填孔(16)及び通気孔(17)が設けられている、前記カートリッジ蓋(15)と、
を備えるカートリッジ(37)であって、
前記カートリッジ蓋(15)の内面には複数のリブ(23)が更に設けられ、
前記カートリッジ(37)は、前記カートリッジ蓋(15)と前記開口部(38)との間に設けられており、前記通気孔(17)に重なるが前記インク充填孔(16)には重ならない、軟質部材(101)更に備え、前記カートリッジ蓋(15)が前記カートリッジ本体(4)に装着され前記開口部(38)を覆うとき、前記複数のリブ(23)が前記軟質部材(101)に突き当たり、その結果、前記複数のリブ(23)と前記軟質部材(101)との間には封止接触部が形成され、前記カートリッジ蓋(15)と前記軟質部材(101)との間には拡張空間(25)が形成され、前記拡張空間(25)が前記インクリザーバ(10)から前記拡張空間(25)へとインクが流入可能な入口(26)を有し、前記拡張空間(25)は前記通気孔(17)を通して外部環境と連通しており前記拡張空間(25)が遠回りの拡張回路である、
ことを特徴とする、カートリッジ(37)
【請求項2】
前記カートリッジが、前記インクリザーバ(10)に挿入される多孔質部材(14)及び/又は繊維部材を備え、前記軟質部材(101)が、前記多孔質部材(14)又は前記繊維部材の直上で前記カートリッジ本体(4)内に正確に収納されるようなサイズであり、前記インク充填孔(16)に対応する開放空間(103)を備えている、請求項1に記載のカートリッジ(37)
【請求項3】
前記軟質部材(101)には、前記軟質部材(101)の周縁部まで延びる前記開放空間(103)が形成されるように、前記軟質部材(101)の一端に、離間された2つの翼部(102)が設けられている、請求項2に記載のカートリッジ(37)
【請求項4】
前記軟質部材(101)には、前記インク充填孔(16)と位置合わせされた貫通孔が設けられている、請求項2に記載のカートリッジ(37)
【請求項5】
前記軟質部材(101)がゴムで製作されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のカートリッジ(37)
【請求項6】
前記軟質部材(101)が厚さ1mm~2mmの板状部材である、請求項5に記載のカートリッジ(37)
【請求項7】
前記拡張空間(25)には多孔質材料(28)が収容されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のカートリッジ(37)
【請求項8】
前記拡張空間(25)が、狭い連通通路(30,33,34,35,36)を通して流体連通している複数の拡張チャンバ(31,32)を備え、各拡張チャンバ(31,32)が、前記カートリッジ蓋(15)に接続されており前記軟質部材(101)に突き当たる前記複数のリブ(23)によって取り囲まれている、請求項1~4のいずれか一項に記載のカートリッジ(37)
【請求項9】
前記複数のリブ(23)が、前記通気孔(17)を取り囲む2つの曲線的なリブ(29)を含む、請求項に記載のカートリッジ(37)
【請求項10】
隣接する2つのリブ(23)が互いから離間されて前記狭い連通通路(30,33,34,35,36)が形成されている、請求項に記載のカートリッジ(37)
【請求項11】
請求項1~1のいずれか一項に記載のカートリッジ(37)を備える、インクジェットプリントヘッド(1)
【請求項12】
前記インクジェットプリントヘッド(1)が、前記カートリッジ(37)に取り付けられたマイクロ流体デバイス(2)を備えるサーマルインクジェットプリントヘッドであり、前記マイクロ流体デバイス(2)が、
複数の抵抗器(5)と、
前記複数の抵抗器(5)の上方に配設され、前記インク流開口(13)と流体連通している複数の吐出チャンバ(6)と、
前記複数の吐出チャンバ(6)を覆っており、前記複数の吐出チャンバ(6)からインクを噴射するための複数の吐出ノズル(9)が設けられているノズルプレート(8)と、
を備える、請求項1に記載のインクジェットプリントヘッド(1)
【請求項13】
請求項1又は1に記載のインクジェットプリントヘッド(1)を備える、インクジェットプリンタ。
【国際調査報告】